JP2019044198A - 蒸着マスク - Google Patents

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草 昌 人 牛
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谷 勲 宮
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Abstract

【課題】蒸着マスクにシワが生じることを抑制する。【解決手段】蒸着マスク20は、長手方向DLを有するとともに、長手方向DLに沿って配列された複数の有効領域22と、有効領域22と長手方向DLに隣接する隣接領域23と、を備え、有効領域22における長手方向DLの仮想ヤング率をE1、隣接領域23における長手方向DLの仮想ヤング率をE2、有効領域22における長手方向DLの仮想ポアソン比をν1、隣接領域23における長手方向DLの仮想ポアソン比をν2としたときに、E2のE1に対する比(E2/E1)が0.83以上1.25以下であり、ν2とν1との差の絶対値(|ν2−ν1|)が0以上0.04以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、蒸着材料の被蒸着基板への蒸着に用いられる蒸着マスクに関する。
近年、スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置に対して、高精細であること、例えば画素密度が400ppi以上であることが求められている。また、持ち運び可能なデバイスにおいても、ウルトラフルハイビジョンに対応することへの需要が高まっており、この場合、表示装置の画素密度が例えば800ppi以上であることが求められる。
表示装置の中でも、応答性の良さ、消費電力の低さやコントラストの高さのため、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置の画素を形成する方法として、所望のパターンで配列された貫通孔を含む蒸着マスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法が知られている。具体的には、はじめに、有機EL表示装置用の基板(有機EL基板)を蒸着装置に投入し、次に、蒸着装置内で有機EL基板に対して蒸着マスクを密着させ、有機材料を有機EL基板に蒸着させる蒸着工程を行う。
このような蒸着マスクの一例として、特許文献1に開示されているような蒸着マスクが挙げられる。特許文献1に開示された蒸着マスクは、めっき処理を利用して製造されている。まず、絶縁性の基材上に導電性パターンを形成し、その後電解めっき法を用いて導電性パターン上に金属層を形成する。その後、基材及び導電性パターンを除去することにより、金属層を有する蒸着マスクが得られる。この技術では、めっき処理を利用して蒸着マスクを製造するので、薄厚化された蒸着マスクを得られる利点がある。薄厚化された蒸着マスクによれば、蒸着マスクの板面への法線方向に対して大きく傾斜した方向から有機EL基板等の被蒸着基板に向かう蒸着材料を、蒸着マスクの貫通孔内に露出した被蒸着基板上に適切に付着させることができる。
特開2016−148112号公報
特許文献1に開示された技術では、めっき処理を利用して蒸着マスクを製造した後、当該蒸着マスクをフレームに取り付けて蒸着マスク装置を製造している。このとき、蒸着マスク装置のフレームは、蒸着マスクを張った状態に保持している。すなわち、フレームに固定された状態において、蒸着マスクには張力が付与されている。これにより、蒸着マスクに撓みが生じることが抑制される。
しかしながら、薄厚化された蒸着マスクに張力が付与されると、この蒸着マスクにシワや変形が生じやすい。蒸着マスクにシワが生じると、蒸着マスクが被蒸着基板上に適切に配置されず、貫通孔の位置ずれを生じることがある。また、蒸着マスクに被蒸着基板から浮き上がった部分が生じることにより、この部分における蒸着マスクと被蒸着基板との隙間に蒸着材料が侵入し、被蒸着基板上における意図していない箇所に蒸着材料が付着することもある。これらの問題の発生は、有機EL基板等の被蒸着基板の製造工程の歩留りの低下を招き得るため、望ましくない。特許文献1に開示された技術では、蒸着マスクは長手方向を有しており、この蒸着マスクをフレームに取り付ける際には、蒸着マスクの長手方向に沿って張力が付与される。この場合、長手方向と直交する蒸着マスクの幅方向に沿って波打つように変形したシワが生じ得る。
このようなシワの発生原因について、本件発明者らが鋭意検討を進めたところ、以下の知見を得た。特許文献1に開示された蒸着マスクは、長手方向に配列された複数の有効領域と、有効領域と長手方向に隣接する隣接領域と、を備えている。有効領域には、有機EL基板の各画素に対応した所望のパターンで配列された多数の貫通孔が形成されている。これに対して、隣接領域は、貫通孔等が形成されていない、いわゆるベタ部として形成されている。蒸着マスクの有効領域と隣接領域とは、同一の材料で一体的に形成されている。しかしながら、蒸着マスクの有効領域及び隣接領域は、貫通孔の有無等の微細形状の差異により、蒸着マスクの有効領域の巨視的な剛性と隣接領域の巨視的な剛性とは、互いに異なっている。そして、蒸着マスクの有効領域の巨視的な剛性と隣接領域の巨視的な剛性と差が大きいほど、蒸着マスクに大きなシワを生じる。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであって、蒸着マスクにシワが生じることを抑制することを目的とする。
本発明の蒸着マスクは、
長手方向を有するとともに、前記長手方向に沿って配列された複数の有効領域と、前記有効領域と前記長手方向に隣接する隣接領域と、を備え、
前記有効領域における前記長手方向の仮想ヤング率をE、前記隣接領域における前記長手方向の仮想ヤング率をE、前記有効領域における前記長手方向の仮想ポアソン比をν、前記隣接領域における前記長手方向の仮想ポアソン比をνとしたときに、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である。
本発明によれば、蒸着マスクにシワが生じることを抑制することができる。
図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、蒸着マスクを用いた蒸着装置及びこの蒸着装置を用いた蒸着方法を説明するための図である。 図2は、図1に示す蒸着装置で製造された有機EL表示装置の一例を示す断面図である。 図3は、蒸着マスクを有する蒸着マスク装置の一例を概略的に示す平面図である。 図4は、蒸着マスクを示す平面図である。 図5は、蒸着マスクの一部を拡大して示す平面図であって、図4のVが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図である。 図6は、蒸着マスクの断面図であって、図5のVI−VI線に対応する断面を示す図である。 図7は、蒸着マスクの仮想ヤング率及び仮想ポアソン比の算出方法について説明するための図である。 図8は、蒸着マスクの仮想ヤング率及び仮想ポアソン比の算出方法について説明するための図である。 図9は、蒸着マスクの仮想ヤング率及び仮想ポアソン比の算出方法について説明するための図である。 図10は、蒸着マスクの製造方法の一例の一工程を示す図である。 図11は、蒸着マスクの製造方法の一例の一工程を示す図である。 図12は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの形状を示す平面図である。 図13は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの形状を示す側面図である。 図14は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの厚み方向に沿った変位の比較を示す図である。 図15は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの厚み方向に沿った変位の比較を示す図である。 図16は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの厚み方向に沿った変位の比較を示す図である。 図17は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの厚み方向に沿った変位の比較を示す図である。 図18は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクの良否判定基準について説明するための図である。 図19は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクにおける良否判定結果を示す。 図20は、実施例に係る三次元モデル化された蒸着マスクにおける良否判定結果を示す。
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図20は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。以下の実施の形態では、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクを例にあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本発明を適用することができる。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「板」はシートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。
また、「板面(シート面、フィルム面)」とは、対象となる板状(シート状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材(シート状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる面方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に平行な方向のことを指す。また、板状(シート状、フィルム状)の部材に対して用いる法線方向とは、当該部材の板面(シート面、フィルム面)に対する法線方向のことを指す。
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件及び物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」、「同等」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
まず、対象物に蒸着材料を蒸着させる蒸着処理を実施する蒸着装置90について、図1を参照して説明する。図1に示すように、蒸着装置90は、その内部に、蒸着源(例えばるつぼ94)、ヒータ96、及び蒸着マスク装置10を備える。また、蒸着装置90は、蒸着装置90の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備える。るつぼ94は、有機発光材料などの蒸着材料98を収容する。ヒータ96は、るつぼ94を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料98を蒸発させる。蒸着マスク装置10は、るつぼ94と対向するよう配置されている。
図1に示すように、蒸着マスク装置10は、蒸着マスク20と、蒸着マスク20を支持するフレーム15と、を備えている。フレーム15は、蒸着マスク20が撓んでしまうことがないように、蒸着マスク20をその面方向に引っ張った状態で支持する。蒸着マスク20とフレーム15とは、例えばスポット溶接により互いに対して固定されている。蒸着マスク装置10は、図1に示すように、蒸着マスク20が、蒸着材料98を付着させる対象物である被蒸着基板(例えば有機EL基板)92に対面するよう、蒸着装置90内に配置される。
蒸着マスク装置10は、図1に示すように、被蒸着基板92の、蒸着マスク20と反対の側の面に配置された磁石93を備えていてもよい。磁石93を設けることにより、磁力によって蒸着マスク20を磁石93側に引き寄せて、蒸着マスク20を被蒸着基板92に密着させることができる。
図1に示すように、蒸着マスク20は、複数の第1貫通孔(貫通孔)25を有している。また、蒸着マスク20は、第1面20aと、第1面20aと反対側の面をなす第2面20bと、を有している。図示された例では、蒸着マスク20は、被蒸着基板92とるつぼ94との間に配置される。蒸着マスク20は、その第2面20bが被蒸着基板92の下面に対面するようにして、換言するとその第1面20aがるつぼ94と対面するようにして、蒸着装置90内に支持され、被蒸着基板92への蒸着材料98の蒸着に使用される。図1に示す蒸着装置90において、るつぼ94から蒸発して第1面20a側から蒸着マスク20に到達した蒸着材料98は、蒸着マスク20の第1貫通孔25を通って被蒸着基板92に付着する。これによって、蒸着マスク20の第1貫通孔25の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料98を被蒸着基板92の表面に成膜することができる。
図2は、図1の蒸着装置90を用いて製造した有機EL表示装置100を示す断面図である。有機EL表示装置100は、被蒸着基板(有機EL基板)92と、パターン状に設けられた蒸着材料98を含む画素と、を備える。
複数の色によるカラー表示を行いたい場合には、各色に対応する蒸着マスク装置10が搭載された蒸着装置90をそれぞれ準備し、被蒸着基板92を各蒸着装置90に順に投入する。これによって、例えば、赤色用の有機発光材料、緑色用の有機発光材料及び青色用の有機発光材料を順に被蒸着基板92に蒸着させることができる。
蒸着処理は、高温雰囲気となる蒸着装置90の内部で実施される場合がある。この場合、蒸着処理の間、蒸着装置90の内部に保持される蒸着マスク20、フレーム15及び被蒸着基板92も加熱される。この際、蒸着マスク20、フレーム15及び被蒸着基板92は、各々の熱膨張係数に基づいた寸法変化の挙動を示すことになる。この場合、蒸着マスク20やフレーム15と被蒸着基板92の熱膨張係数が大きく異なっていると、それらの寸法変化の差異に起因した位置ずれが生じ、この結果、被蒸着基板92上に付着する蒸着材料の寸法精度や位置精度が低下してしまう。
このような課題を解決するため、蒸着マスク20及びフレーム15の熱膨張係数が、被蒸着基板92の熱膨張係数と同等の値であることが好ましい。例えば、被蒸着基板92としてガラス基板が用いられる場合、蒸着マスク20及びフレーム15の主要な材料として、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。例えば、蒸着マスク20及びフレーム15を構成する部材の材料として、30質量%以上54質量%以下のニッケルを含む鉄合金を用いることができる。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、35質量%以上48質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe−Ni系めっき合金などを挙げることができる。
なお蒸着処理の際に、蒸着マスク20、フレーム15及び被蒸着基板92の温度が高温には達しない場合は、蒸着マスク20及びフレーム15の熱膨張係数を、被蒸着基板92の熱膨張係数と同等の値にしなくてもよい。この場合、蒸着マスク20及びフレーム15を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル−コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
次に、蒸着マスク20について、図1及び図4〜図6を参照してさらに詳述する。図4は、蒸着マスク20を第1面20a側から見て示す平面図であり、図5は、蒸着マスク20の一部を拡大して示す平面図であって、図4のVが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す図であり、図6は、蒸着マスク20の断面図であって、図5のVI−VI線に対応する断面を示す図である。
図3及び図4に示すように、本実施の形態において、蒸着マスク20は、その板面と平行な長手方向D、及び、板面と平行且つ長手方向Dと直交する幅方向Dを有し、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。蒸着マスク20は、金属層21を有し、この金属層21は、長手方向Dに沿って配列された複数の有効領域22と、有効領域22と長手方向Dに隣接する隣接領域23と、有効領域22及び隣接領域23を挟んで蒸着マスク20の長手方向Dの両端部に位置する一対の耳部領域24と、有効領域22及び隣接領域23を挟んで蒸着マスク20の幅方向Dの両端部に位置する一対の側部領域29と、を有している。蒸着マスク20は、各耳部領域24において、フレーム15に取り付けられている。有効領域22には、規則的な配列で複数の第1貫通孔25が形成されている。隣接領域23は、有効領域22を支持するための領域であり、有機EL基板92へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではない。本実施の形態では、図5に示されているように、隣接領域23には、当該隣接領域23の巨視的な剛性を調整するために、複数の第2貫通孔27が形成されている。図示された例では、耳部領域24には、第1貫通孔25、第2貫通孔27のいずれも形成されていない。この蒸着マスク20(金属層21)の厚みは、例えば2.5μm以上30μm以下とすることができる。
有機EL表示装置用の有機発光材料の蒸着に用いられる蒸着マスク20においては、有効領域22は、有機発光材料が蒸着して画素を形成するようになる被蒸着基板92の表示領域となる区域に対面する、蒸着マスク20内の領域である。図示された例では、一つの有効領域22が一つの有機EL表示装置に対応するようになっている。すなわち、図3及び図4に示された蒸着マスク装置10(蒸着マスク20)によれば、被蒸着基板92への蒸着材料98の多面付蒸着が可能となっている。図示された例において、各有効領域22は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有している。なお図示はしないが、各有効領域22は、有機EL基板92の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。例えば各有効領域22は、円形状の輪郭を有していてもよい。
図5に示された例では、各有効領域22に形成された複数の第1貫通孔25は、当該有効領域22において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。とりわけ図示された例では、複数の第1貫通孔25は、各有効領域22内で、蒸着マスク20の長手方向D及び幅方向Dに沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。第1貫通孔25は、蒸発した蒸着材料98が通過して被蒸着基板92へ付着することを意図された貫通孔である。なお、第1貫通孔25は、有機EL表示装置100の画素の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有することができる。
また、図示された例では、各隣接領域23に形成された複数の第2貫通孔27は、当該隣接領域23において、互いに直交する二方向に沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。とりわけ図示された例では、複数の第2貫通孔27は、各隣接領域23内で、蒸着マスク20の長手方向D及び幅方向Dに沿ってそれぞれ所定のピッチで配列されている。第2貫通孔27は、隣接領域23の巨視的な剛性を調整するために設けられるものであり、蒸発した蒸着材料98が通過して被蒸着基板92へ付着することを意図された貫通孔ではない。したがって、隣接領域23は、当該隣接領域23の巨視的な剛性を調整する機能を発揮し得る範囲において、複数の第2貫通孔27に代えて、複数の凹部を有するようにしてもよい。また、隣接領域23は、複数の第2貫通孔27及び複数の凹部を有するようにしてもよい。なお、第2貫通孔27は、隣接領域23の巨視的な剛性を所望の値にするために、様々な形状の輪郭を有することができる。
図示された例において、貫通孔25,27は、平面視において略四角形形状、さらに正確には平面視において略矩形状の輪郭を有する。貫通孔25,27の面方向の最大寸法は、例えば5μm以上100μm以下とすることができる。例えば、貫通孔25,27は、平面視において、円形状や、長手方向及び当該長手方向と直交する幅方向を有するスリット状等の他の形状の輪郭を有していてもよい。貫通孔25,27が、平面視においてスリット状の形状の輪郭を有する場合、当該貫通孔25,27の幅方向に沿った最大幅を、例えば5μm以上100μm以下とすることができる。
第1貫通孔25と第2貫通孔27とは、互いに同一の形状、寸法、配列パターン及び配列ピッチを有してもよいし、互いに異なる形状、寸法、配列パターン及び配列ピッチを有してもよい。また、第1貫通孔25と第2貫通孔27とは、形状、寸法、配列パターン、配列ピッチのうち、一部が互いに同一であり、他の一部が互いに異なっていてもよい。
本実施の形態の蒸着マスク20は、有効領域22における長手方向Dの仮想ヤング率をE、隣接領域23における長手方向Dの仮想ヤング率をE、有効領域22における長手方向Dの仮想ポアソン比をν、隣接領域23における長手方向Dの仮想ポアソン比をνとしたときに、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である。
以下、図7〜図9を参照して、蒸着マスク20の巨視的な剛性を表す、仮想ヤング率E,E、仮想ポアソン比ν,νの算出方法について説明する。
仮想ヤング率E,E及び仮想ポアソン比ν,νは、蒸着マスク20の材料定数としてのヤング率E及びポアソン比νを測定する材料定数測定ステップと、有効領域22内の特定の第1貫通孔25及び隣接領域23内の特定の第2貫通孔を選定する貫通孔選定ステップと、貫通孔選定ステップで選定された第1貫通孔25及び第2貫通孔の形状及び寸法に基づいて三次元モデル40を作成する三次元モデル作成ステップと、有限要素解析ソフトウエア上で三次元モデル40に引張り力を作用させたときの当該三次元モデル40の変形に基づいて、仮想ヤング率E,E及び仮想ポアソン比ν,νを算出する算出ステップと、を実行することにより算出される。以下、各ステップの詳細について説明する。
〔材料定数測定ステップ〕
有限要素解析に用いる材料定数を得るために、蒸着マスク20の耳部領域24から試験片を切り出し、当該試験片を用いて金属層21の材料定数としてのヤング率(以下、真ヤング率とも呼ぶ)E及びポアソン比(以下、真ポアソン比とも呼ぶ)νを測定する。試験片は、一例として、平面視において長辺が70mm、短辺が20mmの矩形状に切り出す。真ヤング率E及び真ポアソン比νは、INSTRON社製のデジタル材料試験機5985型を用いて測定することができる。
〔貫通孔選定ステップ〕
まず、蒸着マスク20のいずれかの有効領域22において、100個の第1貫通孔25を選定する。当該100個の第1貫通孔25は、長手方向Dに沿って10個及び幅方向Dに沿って10個の第1貫通孔25とする。選定された各第1貫通孔25についてその寸法を測定し、その平均を第1貫通孔25についての寸法の代表値とする。また、蒸着マスク20のいずれかの隣接領域23において、100個の第2貫通孔27を選定する。当該100個の第2貫通孔27は、長手方向Dに沿って10個及び幅方向Dに沿って10個の第2貫通孔27とする。選定された各第2貫通孔27についてその寸法を測定し、その平均を第2貫通孔27についての寸法の代表値とする。蒸着マスク20の第1貫通孔25及び第2貫通孔27の寸法は、例えばキーエンス社製レーザー顕微鏡(VK−X260)を用いて測定することができる。
また、有効領域22及び隣接領域23における蒸着マスク20の厚みを測定する。蒸着マスク20の厚みは、例えばミツトヨ社製マイクロメーター(MDH−25M)を用いて測定することができる。
〔三次元モデル作成ステップ〕
次に、有限要素解析ソフトウエア上で、第1貫通孔25及び第2貫通孔27のそれぞれの寸法の代表値及び有効領域22及び隣接領域23における蒸着マスク20の厚みに基づいて、1つの繰り返し最小単位の形状を三次元モデル化する。有限要素解析ソフトウエアとしては、例えばADINA R&D社製ADINA(登録商標)を用いることができる。本実施形態のように、有効領域22における複数の第1貫通孔25がいずれも互いに実質的に同一の形状及び寸法を有する場合には、1つの第1貫通孔25を含む領域を有効領域22における1つの繰り返し最小単位とする。また、隣接領域23における複数の第2貫通孔27がいずれも互いに実質的に同一の形状及び寸法を有する場合には、1つの第2貫通孔27を含む領域を隣接領域23における1つの繰り返し最小単位とする。なお、第1貫通孔25、第2貫通孔27が、複数種類の形状及び/又は寸法を有する複数の貫通孔の組み合わせを一単位として、これを面内で繰り返したパターンで構成される場合には、当該一単位を構成する複数の貫通孔を含む領域を、1つの繰り返し最小単位とする。以下、1つの第1貫通孔25を含む領域、1つの第2貫通孔27を含む領域を、それぞれ1つの繰り返し最小単位とする例について説明する。
図7は、蒸着マスク20における有効領域22の一部を示している。図示された例において、貫通孔選定ステップで選定された第1貫通孔25を中心とする領域(図7の符号VIIIが付された一点鎖線で囲まれた部分)を切り出して三次元モデル40を作成する。図8に、第1貫通孔25を含んで切り出された三次元モデル40の例を示す。三次元モデル40に含まれる第1貫通孔25の寸法は、貫通孔選定ステップで選定された蒸着マスク20の実物の第1貫通孔25の寸法に一致する。平面視において、三次元モデル40の中心は、当該三次元モデル40に含まれる第1貫通孔25の中心に一致する。また、三次元モデル40の長手方向Dに沿った長さL、幅方向Dに沿った長さL、及び、厚みTは、それぞれ、蒸着マスク20の実物の有効領域22における長手方向Dに沿った第1貫通孔25の配列ピッチ、幅方向Dに沿った第1貫通孔25の配列ピッチ、及び、有効領域22における蒸着マスク20の厚み、に一致する。
〔算出ステップ〕
有限要素解析ソフトウエア上で、三次元モデル40に長手方向Dに沿って単位力Fを作用させる(図9参照)。具体的には、三次元モデル40における長手方向Dと直交する面P,P、すなわち長手方向Dに沿った端面P,Pに、三次元モデル40の長手方向Dに沿った引張りの単位力Fを作用させる。ここで、材料定数測定ステップで測定された真ヤング率E及び真ポアソン比νが、三次元モデル40における第1貫通孔25を除く部分のヤング率及びポアソン比として用いられる。有限要素解析ソフトウエア上での弾性解析において、この単位力Fにより、三次元モデル40は、変形して、長手方向Dに沿った長さL’、幅方向Dに沿った長さL’、及び、厚みT’を有するようになる。このとき、三次元モデル40の長手方向Dに沿ったひずみε及び幅方向Dに沿ったひずみεは、それぞれ以下のように表せる。
ε=(L’−L)/L ・・・式(1)
ε=(L’−L)/L ・・・式(2)
また、三次元モデル40全体の長手方向Dに沿った見かけ上のヤング率E、すなわち仮想ヤング率E、及び、三次元モデル40全体の長手方向Dに沿った見かけ上のポアソン比ν、すなわち仮想ポアソン比νは、それぞれ以下のように表せる。
=F/(L・T・ε) ・・・式(3)
ν=−ε/ε ・・・式(4)
以上により、蒸着マスク20の有効領域22における長手方向Dの仮想ヤング率E、及び、有効領域22における長手方向Dの仮想ポアソン比νを算出することができる。
同様にして、蒸着マスク20の隣接領域23における長手方向Dの仮想ヤング率E、及び、隣接領域23における長手方向Dの仮想ポアソン比νも算出することができる。具体的には、まず、貫通孔選定ステップで選定された第2貫通孔27を中心とする領域を切り出して三次元モデルを作成する。このとき、三次元モデルに含まれる第2貫通孔27の寸法は、貫通孔選定ステップで選定された蒸着マスク20の実物の第2貫通孔27の寸法に一致する。平面視において、三次元モデルの中心は、当該三次元モデルに含まれる第2貫通孔27の中心に一致する。また、三次元モデルの長手方向Dに沿った長さL、幅方向Dに沿った長さL、及び、厚みTは、それぞれ、蒸着マスク20の実物の隣接領域23における長手方向Dに沿った第2貫通孔27の配列ピッチ、幅方向Dに沿った第2貫通孔27の配列ピッチ、及び、隣接領域23における蒸着マスク20の厚み、に一致する。
有限要素解析ソフトウエア上で、三次元モデルに長手方向Dに沿って単位力Fを作用させる。具体的には、三次元モデルにおける長手方向Dと直交する面、すなわち長手方向Dに沿った端面に、三次元モデルの外側に向かう引張りの単位力Fを作用させる。この単位力Fにより、三次元モデルは、変形して、長手方向Dに沿った長さL’、幅方向Dに沿った長さL’、及び、厚みT’を有するようになる。このとき、三次元モデルの長手方向Dに沿ったひずみε及び幅方向Dに沿ったひずみεは、それぞれ以下のように表せる。
ε=(L’−L)/L ・・・式(5)
ε=(L’−L)/L ・・・式(6)
また、蒸着マスク20の隣接領域23における、三次元モデル全体の長手方向Dに沿った見かけ上のヤング率E、すなわち仮想ヤング率E、及び、三次元モデル全体の長手方向Dに沿った見かけ上のポアソン比ν、すなわち仮想ポアソン比νは、それぞれ以下のように表せる。
=F/(L・T・ε) ・・・式(7)
ν=−ε/ε ・・・式(8)
本件発明者らは、従来の蒸着マスクにおいて、貫通孔の有無等の微細形状の差異による蒸着マスクの有効領域の巨視的な剛性と隣接領域の巨視的な剛性と差が大きいほど、蒸着マスクに大きなシワを生じていることを知見した。本件発明者らがこの問題についてさらに検討を進めたところ、上述の式(3)、式(4)、式(7)及び式(8)により求められた、有効領域22における長手方向Dの仮想ヤング率E、隣接領域23における長手方向Dの仮想ヤング率E、有効領域22における長手方向Dの仮想ポアソン比ν、隣接領域23における長手方向Dの仮想ポアソン比νを用いて、仮想ヤング率Eの仮想ヤング率Eに対する比(E/E)及び仮想ポアソンνと仮想ポアソンνとの差の絶対値(|ν−ν|)を適切に制御することにより、蒸着マスクに生じ得るシワを低減させることができることを知見するに至った。従来、このような仮想ヤング率E,E、及び仮想ポアソン比ν,νを用いて、蒸着マスクにおけるシワの生じやすさを制御できることは、全く知られていなかった。このような状況下において、本件発明者らは、さらに、具体的な数値範囲として、仮想ヤング率Eの仮想ヤング率Eに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、仮想ポアソン比νと仮想ポアソン比νとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である場合に、蒸着マスクに生じ得るシワを効果的に低減させることができることを明らかにした。
次に、図10及び図11を参照して、蒸着マスク20の製造方法の一例について説明する。図10及び図11では、蒸着マスク20の製造方法の一例の各工程を各部材の断面図で示している。
〔パターン基板準備工程〕
はじめに、蒸着マスク20を製造するために用いられるパターン基板50を作製する方法の一例について説明する。まず、基材51を準備する。絶縁性及び適切な強度を有する限りにおいて、基材51を構成する材料や基材51の厚さが特に限られることはない。
次に、基材51の一面上に導電性パターン52を形成する。図示された例では、導電性パターン52は、後述の成膜工程において形成されるべき蒸着マスク20のパターンに対応したパターンを有して設けられる。例えば、導電性パターン52は、後述の成膜工程において形成されるべき蒸着マスク20のパターンと同一のパターンを有して設けられる。導電性パターン52を構成する材料としては、金属材料や酸化物導電性材料等の導電性材料が適宜用いられる。金属材料の例としては、例えばクロムや銅などを挙げることができる。好ましくは、後述する被覆層に対する高い密着性を有する材料が、導電性パターン52を構成する材料として用いられる。例えば被覆層が、アクリル系光硬化性樹脂を含むレジスト膜など、いわゆるドライフィルムと称されるものをパターニングすることによって作製される場合、導電性パターン52を構成する材料として、銅が用いられることが好ましい。
導電性パターン52は、基材51上に設けられた導電層における、導電性パターン52をなすべき部分以外の箇所を、例えばエッチングにより除去することにより、形成することができる。詳細には、まず、スパッタリングや無電解めっき等により、基材51上に上述の導電性材料からなる導電層を設ける。次に、導電層上に、所定のパターンを有する被覆層を形成する。被覆層を形成する方法としては、フォトリソグラフィー法などが採用され得る。その後、導電層のうち被覆層によって覆われていない部分をエッチングによって除去し、被覆層を除去する。これにより、図10に示すような、蒸着マスク20に対応したパターンを有する導電性パターン52が形成されたパターン基板50を得ることができる。なお、導電性パターン52の厚み(導電層の厚み)は、例えば50nm以上300nm以下とすることができる。
〔成膜工程〕
次に、金属層21を導電性パターン52上に形成する成膜工程を実施する。成膜工程では、第1貫通孔25及び第2貫通孔27が設けられた金属層21を導電性パターン52上に形成する。具体的には、導電性パターン52が形成された基材51上にめっき液を供給して、導電性パターン52上に金属層21を析出させるめっき処理工程を実施する。例えば、導電性パターン52が形成された基材51を、めっき液が充填されためっき槽に浸す。これによって、図11に示すように、導電性パターン52上に、後に蒸着マスク20をなす金属層21を形成することができる。
導電性パターン52上に金属層21を析出させることができる限りにおいて、めっき処理工程の具体的な方法が特に限られることとはない。例えば、めっき処理工程は、導電性パターン52に電流を流すことによって導電性パターン52上に金属層21を析出させる、いわゆる電解めっき処理工程として実施されてもよい。若しくは、めっき処理工程は、無電解めっき処理工程であってもよい。なおめっき処理工程が無電解めっき処理工程である場合、導電性パターン52上には適切な触媒層が設けられていてもよい。電解めっき処理工程が実施される場合にも、導電性パターン52上に触媒層が設けられていてもよい。
用いられるめっき液の成分は、金属層21に求められる特性に応じて適宜定められる。例えば、めっき液として、ニッケル化合物を含む溶液と、鉄化合物を含む溶液との混合溶液を用いることができる。例えば、スルファミン酸ニッケルや臭化ニッケルを含む溶液と、スルファミン酸第一鉄を含む溶液との混合溶液を用いることができる。めっき液には、様々な添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、ホウ酸などのpH緩衝剤、サッカリンナトリウムなどの一次光沢剤、ブチンジオール、プロパギルアルコール、クマリン、ホルマリン、チオ尿素などの二次光沢剤や、酸化防止剤などが用いられ得る。
この成膜工程により、図9に示すような、パターン基板50及び金属層21を有する積層体を作製することができる。図示された例では、積層体は、基材51と、基材51上に設けられた導電性パターン52と、導電性パターン52の基材51と反対側に設けられた金属層21と、を有する。なお、成膜工程後に、蒸着マスク20の外縁となるべき箇所で積層体を切断してもよい。
〔分離工程〕
次に、蒸着マスク20を基材51から分離させる分離工程を実施する。分離工程では、一例として、積層体を、導電性パターン52を選択的にエッチング可能なエッチング液に浸漬する。次に、蒸着マスク20を基材51から引き剥がして分離させる。その後、蒸着マスク20を再度エッチング液に浸漬し、金属層21に付着して残存している導電性パターン52を完全にエッチング除去する。これにより、基材51を金属層21から分離し、金属層21から蒸着マスク20を形成することができる。
図11に示された例において、導電性パターン52は、蒸着マスク20の貫通孔25,27内に露出している。したがって、貫通孔25,27内に浸入したエッチング液により、導電性パターン52は、貫通孔25,27内に露出した面すなわち側面からエッチングされる。図示された例では、導電性パターン52の側面から内側へ向かってエッチングが進行していく。これにより、金属層21と基材51とが分離される。
なお、導電性パターン52のエッチング除去工程において、金属層21と基材51とは完全に分離されていなくてもよい。すなわち金属層21と基材51とが、部分的に導電性パターン52により接続された状態となっていてもよい。この場合、金属層21を、基材51から引き剥がすようにすることにより、金属層21と基材51とを部分的に接続している導電性パターン52を破断して、金属層21を基材51から分離することができる。なお、金属層21に付着して残存した導電性パターン52は、金属層21を再度エッチング液に浸漬することにより、完全にエッチング除去することができる。
以上の工程により、図6に示したような蒸着マスク20を得ることができる。
本実施の形態の蒸着マスク20は、長手方向Dを有するとともに、長手方向Dに沿って配列された複数の有効領域22と、有効領域22と長手方向Dに隣接する隣接領域23と、を備え、有効領域22における長手方向Dの仮想ヤング率をE、隣接領域23における長手方向Dの仮想ヤング率をE、有効領域22における長手方向Dの仮想ポアソン比をν、隣接領域23における長手方向Dの仮想ポアソン比をνとしたときに、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である。
このような蒸着マスク20によれば、隣接領域23における仮想ヤング率E、仮想ポアソン比νが、それぞれ有効領域22における仮想ヤング率E、仮想ポアソン比νに対して、所定の範囲内にあることにより、貫通孔25,27の形状、寸法、配置等の微細形状の差異による、蒸着マスク20の有効領域22の巨視的な剛性と隣接領域23の巨視的な剛性との差を小さくすることができる。これにより、蒸着マスク20に張力を付与したときに、蒸着マスク20の有効領域22の巨視的な剛性と隣接領域23の巨視的な剛性との差に起因して生じ得る蒸着マスク20のシワを効果的に低減させることができる。したがって、蒸着マスク20を被蒸着基板92上に適切に配置することが可能となり、各第1貫通孔25の被蒸着基板92に対する位置が所定の位置からずれることを抑制することができる。また、蒸着マスク20に被蒸着基板92から浮き上がった部分が生じることを抑制することができ、これにより、この部分における蒸着マスク20と被蒸着基板92との隙間に蒸着材料98が侵入し、被蒸着基板92上における意図していない箇所に蒸着材料98が付着することを防止することができる。すなわち、有機EL基板等の被蒸着基板92の製造工程の歩留りの低下を効果的に抑制することができる。
以下、図12〜図20を参照して、蒸着マスクに生じ得る変形を有限要素解析ソフトウエア上でシミュレーションした結果について説明する。図12は、三次元モデル化された蒸着マスク120を、当該蒸着マスク120の法線方向すなわち有限要素解析ソフトウエアのモデル空間での鉛直方向に沿って見た図であり、図13は、蒸着マスク120を、当該蒸着マスク120の幅方向Dすなわち有限要素解析ソフトウエアのモデル空間での水平方向に沿って見た図である。
まず、有限要素解析ソフトウエア上で蒸着マスクの全体形状を三次元モデル化した。三次元モデル化された蒸着マスク120は、長手方向Dに沿って配列された5つの矩形の有効領域122と、有効領域122と長手方向Dに隣接する6つの矩形の隣接領域123と、を有したものとした。この蒸着マスク120の各部の寸法は、図12のように設定した(単位は[mm])。なお、有限要素解析ソフトウエアとしては、ADINA R&D社製ADINAを用いた。
蒸着マスク120の三次元モデルとして、有効領域122における第1貫通孔の配置密度が577ppiであるものと仮定した三次元モデル(モデル番号1〜4)と、有効領域122における第1貫通孔の配置密度が800ppiであるものと仮定した三次元モデル(モデル番号5〜8)と、を作成した。
各モデル(モデル番号1〜8)について、有効領域122における仮想ヤング率E[GPa]、仮想ポアソン比ν、仮想密度ρ[g/cm]及び厚み[μm]、隣接領域123における仮想ヤング率E[GPa]、仮想ポアソン比ν、仮想密度ρ[g/cm]及び厚み[μm]、耳部領域124におけるヤング率E[GPa]、ポアソン比ν、密度ρ[g/cm]及び厚み[μm]、並びに、側部領域129におけるヤング率E[GPa]、ポアソン比ν、密度ρ[g/cm]及び厚み[μm]を、表1のように設定した。モデル1〜8において、耳部領域124及び側部領域129は貫通孔等を有しておらず、いわゆるベタ状に形成されたものとした。モデル1及びモデル5では、隣接領域123は貫通孔等を有しておらず、隣接領域123もいわゆるベタ状に形成されたものとした。したがって、モデル1及びモデル5では、隣接領域123の仮想ヤング率E及び仮想ポアソン比νは、それぞれ耳部領域124及び側部領域129のヤング率E,E及びポアソン比ν,νと同一の値を有している。
モデル1〜8の有効領域122において、当該有効領域122が所定の寸法を有し所定の密度で配置された複数の第1貫通孔を有することを考慮して仮想ヤング率E、仮想ポアソン比ν及び仮想密度ρを設定し、モデル2〜4及び6〜8の隣接領域123において、当該隣接領域123が所定の寸法を有し所定の密度で配置された第2貫通孔を有することを考慮して仮想ヤング率E、仮想ポアソン比ν及び仮想密度ρを設定した。そして、モデル1〜8の有効領域122は、仮想ヤング率E、仮想ポアソン比ν及び厚みを有するベタ状に形成された領域、すなわち貫通孔を有せず一定厚みを有した領域としてモデル化され、全てのモデルの隣接領域123は、仮想ヤング率E、仮想ポアソン比ν及び厚みを有するベタ状に形成された領域、すなわち貫通孔を有せず一定厚みを有した領域としてモデル化された。仮想ヤング率E,E及び仮想ポアソン比ν,νは、第1貫通孔及び第2貫通孔の形状、寸法及び配置ピッチを所定の形状、寸法及び配置ピッチに設定し、これに基づいて、上述の仮想ヤング率E,E、仮想ポアソン比ν,νの算出方法にしたがって算出した。なお、表1には、各モデルにおけるEのEに対する比(E/E)、及び、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)も示している。
Figure 2019044198
有限要素解析ソフトウエアのモデル空間内に、蒸着マスク120を、その板面が水平方向と平行をなすように配置した。また、蒸着マスク120には、所定の重力加速度をモデル空間における鉛直方向下方に向けて、すなわち蒸着マスク120の板面の法線方向に作用させた。図12及び図13に白抜き矢印で示すように、蒸着マスク120の長手方向Dの両端部(耳部領域124)に水平方向に沿った引張り力を与えた。このとき、重力の作用により蒸着マスク120の長手方向Dの中央部に生じるたわみ量Cが100μm以下となるように、引張り力を設定した。
図14〜図17に、蒸着マスク120に上述の引張り力を与えたときに当該蒸着マスク120の上面に生じる変形の様子について示す。図14は、モデル1〜4についての、図13のA−A線に対応する蒸着マスク120の断面における変形の様子を示す。図15は、モデル1〜4についての、図13のB−B線に対応する蒸着マスク120の断面における変形の様子を示す。図16は、モデル5〜8についての、図13のA−A線に対応する蒸着マスク120の断面における変形の様子を示す。図17は、モデル5〜8についての、図13のB−B線に対応する蒸着マスク120の断面における変形の様子を示す。図14〜図17において、横軸は、蒸着マスク120の幅方向Dの中心を原点として、当該原点からの幅方向Dに沿った距離[mm]を示す。また、縦軸は、蒸着マスク120の長手方向Dの両端部の上面の高さを原点として、各断面における蒸着マスク120の上面の高さ[mm]を示す。
図14及び図15に示されているように、モデル1〜4すなわち第1貫通孔が577ppiの密度で配置されたモデルにおいて、蒸着マスク120の長手方向Dに沿った端部近傍に位置する有効領域122(図14参照)及び中央部に位置する有効領域122(図15参照)のいずれにおいても、E/Eの値が1に近く、|ν−ν|の値が0に近いモデルの方が、蒸着マスク120に縦軸方向に沿って生じる変形(シワ)が小さくなっていることがわかる。また、図16及び図17に示されているように、モデル5〜8すなわち第1貫通孔が800ppiの密度で配置されたモデルにおいても、同様に、蒸着マスク120の長手方向Dに沿った端部近傍に位置する有効領域122(図16参照)及び中央部に位置する有効領域122(図17参照)のいずれにおいても、E/Eの値が1に近く、|ν−ν|の値が0に近いモデルの方が、蒸着マスク120に縦軸方向に沿って生じる変形(シワ)が小さくなっていることがわかる。
これらのシミュレーション結果から、E/Eの値を1に近づけ且つ|ν−ν|の値を0に近づけることにより、蒸着マスク120に生じるシワを小さくできることが確認できた。
次に、図18〜図20を参照して、EのEに対する比(E/E)及びνとνとの差(ν−ν)を変化させた複数の蒸着マスク120についての良否判定について説明する。
図18は、蒸着マスク120の良否判定基準について説明する図である。蒸着マスク120の良否判定は、各蒸着マスク120に引張り力を作用させたときに当該蒸着マスク120に生じる変形の量に基づいて行った。図12及び図13を参照して上述したように、重力の作用により蒸着マスク120の長手方向Dの中央部に生じるたわみ量Cが100μm以下となるように、各蒸着マスク120に引張り力を作用させた。このとき、蒸着マスク120の図13のA−A線に対応する断面及びB−B線に対応する断面における、蒸着マスク120の鉛直方向に沿った最高点Pmaxと最低点Pminとの間の距離(最大高さ)Hmax、及び、蒸着マスク120の板面の水平方向に対する傾斜角度の最大値(最大傾斜角度)θmaxに基づいて、当該蒸着マスク120の良否を判定した。具体的には、最大高さHmaxが0.01mm以下であり、且つ、最大傾斜角度θmaxが0.5°以下である場合には、その蒸着マスク120に生じたシワが十分に小さく、当該蒸着マスク120は良品であると判定した。
図19は、第1貫通孔が577ppiの密度で配置された蒸着マスク120における良否判定結果を示す図であり、図20は、第1貫通孔が800ppiの密度で配置された蒸着マスク120における良否判定結果を示す図である。図19及び図20において、記号「○」は、その蒸着マスク120が良品であったことを示している。記号「A」は、図13のA−A線に対応する断面、B−B線に対応する断面の少なくとも一方において、最大高さHmaxが0.01mmを超えたことを示している。記号「B」は、図13のA−A線に対応する断面、B−B線に対応する断面の少なくとも一方において、最大傾斜角度θmaxが0.5°を超えたことを示している。また、記号「A/B」は、図13のA−A線に対応する断面、B−B線に対応する断面に、最大高さHmaxが0.01mmを超えた部分及び最大傾斜角度θmaxが0.5°を超えた部分があったことを示している。
図19及び図20に示されているように、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、且つ、νとνとの差(ν−ν)が−0.04以上0.04以下である、すなわちνとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である場合(図19及び図20の太線で囲まれた範囲内の場合)に、全ての蒸着マスク120が良品であると判定された。これにより、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である場合に、蒸着マスク120に生じ得るシワを効果的に抑制できることが確認できた。
10 蒸着マスク装置
15 フレーム
20 蒸着マスク
20a 第1面
20b 第2面
21 金属層
22 有効領域
23 隣接領域
24 耳部領域
25 第1貫通孔
27 第2貫通孔
29 側部領域
40 三次元モデル
50 パターン基板
51 基材
52 導電性パターン
90 蒸着装置
92 被蒸着基板
93 磁石
98 蒸着材料
100 有機EL表示装置

Claims (1)

  1. 長手方向を有するとともに、前記長手方向に沿って配列された複数の有効領域と、前記有効領域と前記長手方向に隣接する隣接領域と、を備えた蒸着マスクであって、
    前記有効領域における前記長手方向の仮想ヤング率をE、前記隣接領域における前記長手方向の仮想ヤング率をE、前記有効領域における前記長手方向の仮想ポアソン比をν、前記隣接領域における前記長手方向の仮想ポアソン比をνとしたときに、EのEに対する比(E/E)が0.83以上1.25以下であり、νとνとの差の絶対値(|ν−ν|)が0以上0.04以下である、蒸着マスク。
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