JP2019042804A - 据込方法 - Google Patents

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矢野 健太郎
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【課題】 1回の据込みでも座屈を生じることなく、高い鍛造比を得ることができる据込方法を提供する。【解決手段】 初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である円柱状の被鍛造材を挿入して押込金型で圧下する据込方法であって、前記Dpより大きく1.50Dp以下である内接円直径Dsが描ける角形断面の孔部を有し、該孔部の深さLsが前記Lpの1/2より大きい据込金型に前記被鍛造材を挿入して、鍛造比Sが(前記内接円直径Ds/前記初期直径Dp)2により算出される理論鍛造比よりも大きくなるように前記押込金型で圧下する。【選択図】 図1

Description

本発明は、被鍛造材の据込方法に関するものである。
蒸気タービンや航空機の部材に使われるNi基超耐熱合金等からなる鍛造品は、高い信頼性が要求されることから、被鍛造材に据込鍛造が適用されている。そして、これらの鍛造品は、大型化が進むとともに、高い塑性変形量を付与するために、より長尺の円柱状被鍛造材(以下、単に「被鍛造材」ともいう。)が採用され、それらにも据込鍛造が適用されている。
例えば、特許文献1に開示される熱間据込鍛造法は、据込鍛造で高さに相当する自由変形部分の軸長/底面の直径の比が3を超える、通常では座屈が懸念される長尺の被鍛造材に対して、軸方向の一部が径外方向に変形することを阻止して圧下することで、自由変形部の長さを短くして、その問題を解決している。
特開平7−171650号公報
上述した特許文献1に開示される熱間据込鍛造法は、被鍛造材よりも高さの低い据込金型を用いて、据込金型の高さ以上の範囲を自由変形部として圧下するものであり、座屈が懸念される長尺の被鍛造材の据込に対して有効である。
一方、据込金型内部に挿入された被鍛造材の部分については、拘束されているために、高い塑性加工量すなわち鍛造比を得ることが困難になる。そして、高い鍛造比を得るためには、別の据込金型を用いて再据込みしたり、被鍛造材を反転させて再据込みしたり等、据込みを複数回に分けて行なう必要があった。
また、本発明者の検討によると、初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上の被鍛造材の据込鍛造に際し、据込金型の孔部の断面幅を大きくすれば座屈を生じ、一方、据込金型の孔部の断面幅を小さくすれば高い鍛造比が得られないことを確認した。
本発明の目的は、初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である長尺の被鍛造材の据込みに際し、1回の据込みでも座屈を生じることなく、高い鍛造比を得ることができる据込方法を提供することである。
本発明者は、据込金型の孔部の形状を円形ではなく、角形の断面とすることで、1回の据込みでも座屈を生じることなく、高い鍛造比が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の据込方法は、初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である円柱状の被鍛造材を挿入して押込金型で圧下する据込方法であって、前記Dpより大きく1.50Dp以下である内接円直径Dsが描ける角形断面の孔部を有し、該孔部の深さLsが前記Lpの1/2より大きい据込金型に前記被鍛造材を挿入して、鍛造比Sが(前記内接円直径Ds/前記初期直径Dp)により算出される理論鍛造比よりも大きくなるように前記押込金型で圧下する。
前記角形断面は、正多角形であることが好ましい。
また、前記角形断面は、正方形であることがより好ましい。
本発明は、初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である長尺の被鍛造材の据込みに際し、1回の据込みでも座屈を生じることなく、高い鍛造比を得ることができ、上記した鍛造品の製造にとって有用な技術となる。
本発明で用いる据込金型の孔部の断面の一例を示す模式図。 円柱状被鍛造材の横断面の一例を示す模式図。 据込前の一例を示す断面模式図。 据込後の一例を示す断面模式図。
本発明の据込方法で用いる据込金型の孔部の横断面の一例を図1に、また、本発明で用いる円柱状被鍛造材の横断面の一例を図2に示す。そして、本発明の据込前の断面模式図の一例を図3に、据込後の断面模式図の一例を図4に示す。
本発明の据込方法は、角形断面の孔部1を有する据込金型2に、初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である円柱状の被鍛造材3を挿入して、押込金型5で圧下して据込む。
これは、据込金型の孔部の形状を角形断面とすることで、円形断面の孔型に比べ、その幅寸法を同等とし、孔部の各辺部において被鍛造材の座屈を抑制しながら、孔部の各角部において断面積を大きくし、高い鍛造比を得るためである。
ここで、本発明でいう角形断面とは、据込方向に対して垂直な面、すなわち孔部の形状が角形状であるものをいい、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形などの角形断面の孔部を有する据込金型が適用できる。
そして、本発明で用いる据込金型は、孔部の形状が角形断面の中でも、正多角形断面であることが好ましい。これにより、被鍛造材の中心軸から据込金型の各辺までの距離を等距離にすることができ、座屈の抑制に加え、大きな曲りや疵の発生も抑制することができる。
また、本発明で用いる据込金型は、正多角形断面の中でも、角数を少なくすることが好ましく、図3のような正方形断面を採用することにより、高い鍛造比を得ることができるという点でより好ましい。
尚、本発明で用いる据込金型は、角部に面取りやR形状を施すことにより、据込金型や被鍛造材の損傷や温度低下などを防ぐことができる点で好ましい。また、本発明で用いる据込金型は、抜き勾配を付したり、挿入口部に面取りやR形状を施すことにより、被鍛造材の型抜き性を向上させることができる点で好ましい。
また、図3および図4では、据込金型2を底板4上に載置しているが、底板4の有無、形態はこれを特に限定するものではない。
本発明でいう被鍛造材の初期長さLpとは、加工初期に塑性変形が可能な部分の据込方向の長さである。つまり、初期段階で据込金型に密着拘束されて変形できない部分があれば、それ以外の部分で長さを考える。
また、本発明でいう被鍛造材は、厳密に円柱形状である必要はなく、据込方向に直角な断面が円形になるように意図して製造されたものであればよく、製造上のばらつきで部分的に変形や欠けを生じていたり、テーパーが施された円錐や円錐台状になっていたり、角部に面取りやR形状が施されていても構わない。
据込金型の孔部の角形断面に描ける内接円直径Dsは、被鍛造材の初期直径Dpより大きく、1.50Dp以下とする。尚、ここでいう内接円とは、角形断面に描ける最大の円のことをいう。
そして、本発明の据込方法は、DsをDpより大きくすることで、被鍛造材の径外方向への変形が促進され、高い鍛造比を得ることができる。また、Dsを1.50Dp以下とした据込金型を用いることにより、据込時に被鍛造材が座屈することを抑制できる。
尚、据込金型の孔部に抜き勾配などが形成されている場合は、内接円直径Dsは据込金型の深さLsより被鍛造材の初期長さLpが長いときには、据込金型の深さLsの1/2の位置における断面の内接円直径とし、据込金型の深さLsより被鍛造材の初期長さLpが短いときには、被鍛造材の初期長さLpの1/2の位置における断面の内接円直径とする。また、据込金型の深さLsと被鍛造材の初期長さLpが等しいときには、内接円直径Dsを据込金型の深さLsの1/2の位置における断面の内接円直径とする。
また、被鍛造材の長さ方向に抜き勾配などが形成されている場合は、初期直径Dpは据込金型の深さLsより被鍛造材の初期長さLpが長いときには、据込金型の深さLsの1/2の位置における断面の直径とし、据込金型の深さLsより被鍛造材の初期長さLpが短いときには、被鍛造材の初期長さLpの1/2の位置における断面の直径とする。また、据込金型の深さLsと被鍛造材の初期長さLpが等しいときには、初期直径Dpを被鍛造材の初期長さLpの1/2の位置における断面の直径とする。
また、内接円直径Dsは、高い鍛造比を得る観点から、1.05Dp以上であることが好ましい。また、内接円直径Dsは、座屈を抑制する観点から、1.50Dpより小さいことが好ましい。
本発明の据込方法では、据込金型の深さLsを、被鍛造材の初期長さLpの1/2より大きくする。これにより、被鍛造材の初期長さLpの1/2の部分から生じる座屈を抑制できる。また、据込金型の深さLsは、被鍛造材の初期長さLpを超えていても使用可能であるが、被鍛造材の初期長さLpと同じか、それより小さくすることにより、据込金型のハンドリング性や被鍛造材の型抜き性を向上できるという点で好ましい。
本発明の据込方法は、鍛造比Sが(角形断面に描ける内接円直径Ds/被鍛造材の初期直径Dp)により算出される理論鍛造比よりも大きくなるように圧下する。これは、一般的な金属材料は体積一定で塑性変形するとされていることから、座屈の抑制を考慮した上で、角形断面の面積を大きくすることで、上記した理論鍛造比よりも圧下量を増やし、高い鍛造比を得るためである。
本発明の効果を確認するために、本発明例1〜本発明例7、および比較例1〜比較例3として、Transvalor製のForgeを用いて、有限要素法シミュレーションを行なった。シミュレーションの条件として、被鍛造材の材質はAlloy718とし、据込金型および押込金型の材質は剛体とし、据込みは1回とした。そして、被鍛造材の温度は1100℃とし、据込金型および押込金型の温度は250℃とした。また、被鍛造材および据込金型の解析条件を表1に示す。
また、実機による本発明の効果を確認するために、本発明例8として、表1に示す被鍛造材および据込金型を用意して、据込みを行なった。このとき、被鍛造材の材質は、Alloy718とし、据込みは1回とした。そして、被鍛造材の温度は1100℃とし、据込金型および押込金型の温度は300℃とした。そして、その結果を表2に示す。
尚、表2において、据込み後の鍛造材高さは計算により鍛造できた被鍛造材の高さを指し、鍛造比Sは被鍛造材の初期長さを据込み後の鍛造材高さで除して求めた。そして、鍛造比の判定は、上記で得た鍛造比Sと理論鍛造比(角形断面に描ける内接円直径Ds/被鍛造材の初期直径Dp)とを比較し、鍛造比Sが理論鍛造比(Ds/Dp)よりも大きい場合を適合とした。また、座屈の判定は、据込み後の被鍛造材の長さ方法における中心点の水平方向への移動量の最大値を最大曲り量とし、この最大曲り量の初期の被鍛造材の直径Dpに対する比(最大曲り量/Dp)を曲り率とし、この曲り率が大きいと座屈となると考えられるため、この曲り率が0.200以上の場合を不適合とした。そして、総合判定は、鍛造比判定および座屈判定の両方もしくは一方が不適合の場合を不適合とした。
表2の結果から、円形断面の孔部を有する据込金型で円柱状被鍛造材の据込みを行なった比較例1は、座屈が抑制されているものの、得られる鍛造比が低いことがわかる。また、内寸比Ds/Dpが大きすぎる比較例2および比較例3は、高い鍛造比が得られるものの、被鍛造材に座屈が発生してしまい、不適であることがわかる。
これに対して、本発明の据込方法で据込みを行なうと、シミュレーションおよび実機とも、1回の据込みであっても、座屈を生じることなく、高い鍛造比を得ることができ、本発明の有効性が確認できた。
Figure 2019042804
Figure 2019042804
1.孔部
2.据込金型
3.被鍛造材
4.底板
5.押込金型

Claims (3)

  1. 初期長さLpが初期直径Dpの3倍以上である円柱状の被鍛造材を挿入して押込金型で圧下する据込方法であって、前記Dpより大きく1.50Dp以下である内接円直径Dsが描ける角形断面の孔部を有し、該孔部の深さLsが前記Lpの1/2より大きい据込金型に前記被鍛造材を挿入して、鍛造比Sが(前記内接円直径Ds/前記初期直径Dp)により算出される理論鍛造比よりも大きくなるように前記押込金型で圧下する据込方法。
  2. 前記角形断面は、正多角形である請求項1に記載の据込方法。
  3. 前記角形断面は、正方形である請求項2に記載の据込方法。
JP2018137121A 2017-09-01 2018-07-20 据込方法 Pending JP2019042804A (ja)

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