本発明の吸収体は、尿等の体液を吸収するために用いられるものであり、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品に設けられるものである。吸収体は吸収性物品が受けた尿等の体液を吸収し固定し、例えば、吸収性物品のトップシートとバックシートの間に設けられる。以下、本発明の吸収体について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。
図1および図2には、本発明の吸収体の一例を示した。図1は、吸収体を非肌面側から見た平面図を表し、図2は、図1に示した吸収体のA−A断面図(幅方向断面図)の一例を表す。なお図面では、矢印xが幅方向、矢印yが長手方向を表し、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zを表す。厚み方向zにおいて、z1は肌面側を表し、z2は非肌面側を表す。
吸収体において、長手方向yは、吸収体を備えた吸収性物品を着用者が着用した際、着用者の股間の前後方向に延びる方向に相当する。幅方向xは、吸収体と同一面上にあり、長手方向yと直交する方向を意味する。吸収体は、厚み方向zに対して、肌面側と非肌面側を有する。肌面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者側を意味し、吸収体を基準にとるとトップシート側に相当する。非肌面側とは、吸収性物品を着用した際の着用者とは反対側、すなわち外側を意味し、吸収体を基準にとるとバックシート側に相当する。
吸収体1は、吸収性コア2と、吸収性コア2の少なくとも非肌面側に設けられた被覆シート5とを有する。被覆シートは、紙シート(例えば、ティッシュペーパーや薄葉紙)や液透過性不織布等から構成され、吸収性コア2の保形性を高めるために設けられる。
被覆シート5は、吸収性コア2の非肌面側に設けられるとともに、吸収性コア2の肌面側に設けられてもよい。図1および図2に示した吸収体1では、吸収性コア2の非肌面側と肌面側の両方に被覆シート5が設けられている。この場合、吸収性コア2の非肌面側に設けられた被覆シート5Aと肌面側に設けられた被覆シート5Bは同一のシートから形成されてもよく、別々のシートから形成されてもよい。前者の場合、被覆シート5は、吸収性コア2を非肌面側から肌面側にかけて覆うように設けられる。詳細には、被覆シート5は、吸収性コア2の非肌面側で吸収性コア2の幅方向xの全体に延在するとともに、吸収性コア2の幅方向xの両側縁に沿って吸収性コア2の肌面側に折り返され、被覆シート5の幅方向xの両端部が吸収性コア2の肌面側に位置するように設けられることが好ましい。吸収性コア2は、肌面側と非肌面側の全体が被覆シート5によって覆われることが好ましい。
被覆シート5は、セルロース繊維から構成されていることが好ましい。セルロース繊維から構成された被覆シート5としては、ティッシュペーパーや薄葉紙等の紙シートや、レーヨンシート、アセテートシート等が挙げられ、なかでも、被覆シート5として紙シートを用いることが簡便であり好ましい。紙シートとしては、植物繊維を相互に絡ませてシート状に形成したものであれば特に限定なく用いることができる。紙シートは、例えば湿式抄紙法により製造することができる。
被覆シート5の厚みは、例えば、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、また5μm以上が好ましく、10μm以下がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。被覆シートの厚みは、JIS P 8118(2014)に従って測定する。
吸収性コア2は、親水性繊維と吸水性樹脂とを含有する。親水性繊維としては、パルプ繊維等の天然繊維;レーヨン繊維等の再生繊維;アセテート繊維等の半合成繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、PET等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維等の合成繊維であって、界面活性剤等により親水化処理がされた繊維等を用いることができる。吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸系、ポリアスパラギン酸系、セルロース系、デンプン・アクリロニトリル系等の吸水性樹脂を用いることができる。吸収性コア2としては、親水性繊維の集合体に吸水性樹脂が混合されたものを用いることが好ましい。
吸収性コア2の形状(平面形状)は特に限定されない。吸収性コア2の形状は、用途に応じて適宜決定すればよく、例えば、略長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が挙げられる。吸収性コア2は複数の層が積層して形成されてもよい。図面では、吸収性コア2は砂時計形に形成されている。
吸収性コア2の厚みは、例えば、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、また12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、8mm以下がさらに好ましい。なお、ここで説明した吸収性コアの厚みは、吸収性コアの最も厚い部分の厚みを意味する。吸収性コアの厚みはシックネスゲージにより測定することができ、例えば株式会社テクロック製のシックネスゲージSM−130を用いて測定することができる。例えば、吸収性コアをアンビルと測定子の間に挟んで厚みを測定し、その際、シックネスゲージSM−130では、終圧が2.2N以下となるように厚みを測定する。アンビルと測定子は、測定対象との接触面が直径10mmの円形であり、接触面が平らなものを用いる。
吸収性コア2は開口4を有する。吸収性コア2に開口4を設けることにより、開口4が設けられた部分で体液の拡散性が高まり、吸収性コア2がより広範囲にわたって体液の吸収に寄与できるようになる。開口4は、吸収体1の長手方向yに延びるように形成されていることが好ましく、これにより吸収体1の長手方向yへの拡散性が高まり、吸収性コア2の全体が体液の吸収により効果的に寄与できるようになる。なお、長手方向yに延びる開口とは、幅方向xよりも長手方向yに長い形状を有する開口を意味する。開口4は、吸収性コア2を厚み方向に貫通して設けられる。
吸収性コア2には、開口4が1つのみ設けられてもよく、2つ以上設けられてもよいが、吸収性コア2に設けられる開口4の数は、3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1つのみがさらに好ましい。図面に示した吸収体1では、吸収性コア2に開口4が1つのみ設けられている。吸収性コア2に開口が1つのみ設けられる場合は、開口は、吸収性コア2の幅方向xの中央部に、長手方向yに延びるように設けられることが好ましい。吸収性コア2に開口が2つ設けられる場合は、開口は、吸収性コア2の幅方向xの中央部には設けられず、吸収性コア2の幅方向xの中央部を挟んだ一方側と他方側に、それぞれ長手方向yに延びるように設けられることが好ましい。吸収性コア2に開口が3つ設けられる場合は、開口は、吸収性コア2の幅方向xの中央部とその両側に、それぞれ長手方向yに延びるように設けられることが好ましい。なお、吸収性コア2の幅方向xの中央部とは、吸収性コア2の幅方向xの中心線を含み、当該中心線に沿って長手方向yに延びる部分を意味する。
開口4は、幅方向xの長さが、吸収性コア2の最も幅狭な部分における幅方向xの長さの5%以上となることが好ましく、8%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましく、また30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。開口が2つ以上設けられる場合は、吸収性コア2の最も幅狭な部分における開口の合計の幅方向xの長さがこのような割合にあることが好ましい。なお、吸収性コア2の最も幅狭な部分とは、吸収性コア2の長手方向yの両端部を除いて最も幅狭となる部分を意味し、例えば、吸収性コア2を長手方向yに5等分したときに、長手方向yの一方側の1/5と他方側の1/5の部分を除いて、幅方向xに最も狭く形成された部分を意味する。
開口4の幅はまた、5mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、35mm以下が好ましく、25mm以下がより好ましい。開口が2つ以上設けられる場合は、各開口の幅がこのような範囲にあることが好ましい。
開口4は、長手方向yの長さが、吸収性コア2の長手方向yの長さの40%以上となることが好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましく、また90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。なお、開口4は、吸収性コア2の外縁に接しないように設けられることが好ましい。
吸収性コア2が砂時計形に形成される場合は、開口4は、少なくとも砂時計形状のくびれ部に設けられることが好ましい。すなわち、吸収性コア2は長手方向yに一方端部と他方端部とこれらの間の中間部を有し、吸収性コア2の一方端部と他方端部が中間部よりも幅広に形成され、開口4が少なくとも中間部に設けられることが好ましい。開口4は、さらに一方端部および/または他方端部に延在していてもよい。
吸収性コア2の非肌面側には被覆シート5Aが設けられ、この被覆シート5Aの肌面側には、吸収性コア2の開口4と重なる部分に吸水性樹脂6が配されている。このように吸収性コア2の開口4と重なる部分に吸水性樹脂6が配されることで、吸収体1は、吸収性コア2の開口4においても体液の吸収性を有するものとなり、吸収体全体の吸収容量を高めることができる。
ところで上記に説明したように、吸収性コア2に開口4を設けることによって、吸収体1は、開口4において尿等の体液の拡散性を高めることができるが、吸収性コア2の開口4に吸水性樹脂6を配した場合、吸水性樹脂6は尿等の体液を吸収することによって膨潤することから、開口4での尿等の体液の拡散性が阻害される傾向となる。そこで本発明の吸収体1は、吸収性コア2の開口4に吸収性を持たせつつ、開口4での体液の拡散性を確保するために、被覆シート5Aの開口4と重なる部分に配する吸水性樹脂6として、荷重下通液速度が、吸収性コア2に配された吸水性樹脂3の荷重下通液速度よりも速い吸水性樹脂を用いている。このような吸水性樹脂を用いることにより、吸収性コア2の開口4に吸水性樹脂6を配置した場合でも体液の拡散性を確保することができる。
上記のように吸収体1に配する吸水性樹脂を適切に設定することにより、吸収体1は、吸収性コア2そのもの(親水性繊維の集合体部分)よりもその開口4での体液の拡散性が高まる。なお、吸収性コア2の開口4に配した吸水性樹脂6、すなわち被覆シート5Aに配した吸水性樹脂6の荷重下通液速度の具体的な値としては、10秒以下が好ましく、8秒以下がより好ましく、6秒以下がさらに好ましい。吸水性樹脂6の荷重下通液速度の下限は特に限定されないが、例えば1秒以上であってもよく、2秒以上であってもよく、3秒以上であってもよい。
吸水性樹脂の荷重下通液速度は次の方法に従って測定する。容量100mLのガラスビーカーに、吸水性樹脂粉末0.32±0.005gを生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)100mLに浸して60分間放置する。別途、垂直に立てた円筒(内径25.4mm)の開口部の下端に、金網(目開き150μm、株式会社三商販売のバイオカラム焼結ステンレスフィルター30SUS)と、コック(内径2mm)付き細管(内径4mm、長さ8cm)とが備えられた濾過円筒管を用意し、コックを閉鎖した状態で円筒管内に、膨潤した測定試料を含む前記ビーカーの内容物全てを投入する。次いで、目開きが150μmで直径が25mmである金網を先端に備えた直径2mmの円柱棒を濾過円筒管内に挿入して、金網と測定試料とが接するようにし、さらに測定試料に2.0kPaの荷重が加わるようおもりを載せる。この状態で1分間放置した後、コックを開いて液を流し、濾過円筒管内の液面が60mLの目盛り線から40mLの目盛り線に達する(つまり20mLの液が通過する)までの時間T1(秒)を計測する。計測された時間T1(秒)を用い、式:荷重下通液速度(秒)=T1−T0から2.0kPaでの荷重下通液速度を算出する。なお、式中、T0(秒)は、濾過円筒管内に測定試料を入れないで、生理食塩水20mLが金網を通過するのに要する時間を計測した値である。測定は、温度23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に吸水性樹脂を同環境で24時間以上保持した後に測定する。
被覆シート5Aの開口4と重なる部分に配される吸水性樹脂6は、吸収性コア2に配される吸水性樹脂3よりも、ボルテックス法による吸水速度が遅いことも好ましい。このように吸収体1に配する吸水性樹脂を適切に設定することにより、吸収初期においても、吸収性コア2そのもの(親水性繊維の集合体部分)よりもその開口4での体液の拡散性が高まる。
吸水性樹脂のボルテックス法による吸水速度は、JIS K 7224(1996)に従って測定する。具体的には次のようにして吸水速度を求める。容量100mLのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン株式会社製HPS−100)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、生理食塩水を撹拌する。吸水性樹脂2.0gを、撹拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、吸水性樹脂のビーカーへの投入が完了した時点で計時を開始し、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)で計時を止め、その時間(秒)を吸水速度として記録する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とする。測定は、温度23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に吸水性樹脂を同環境で24時間以上保持した後に測定する。
被覆シート5Aにおいて、吸収性コア2の開口4と重なる部分に配される吸水性樹脂6の量は、例えば、5g/m2以上が好ましく、15g/m2以上がより好ましく、30g/m2以上がさらに好ましく、また300g/m2以下が好ましく、200g/m2以下がより好ましく、150g/m2以下がさらに好ましい。このような量で吸水性樹脂6を吸収性コア2の開口4に配することで、吸収性コア2の開口4において尿等の体液の吸収性を向上させることができるとともに、吸収性コア2の開口4における尿等の体液の拡散性を確保しやすくなる。
吸水性樹脂6は、被覆シート5Aに対して自由に移動しないように、被覆シート5Aに固着されていることが好ましい。吸水性樹脂6はホットメルト接着剤など公知の接着手段により被覆シート5Aに固着させることもできるが、吸水性樹脂6は、被覆シート5Aに固着されることによって体液の吸収や吸水性樹脂の膨潤が阻害されないことが好ましく、このような観点から、吸水性樹脂6はアニオン性またはノニオン性の固着剤により被覆シート5Aに固着されることが好ましい。例えば、カチオン性の固着剤を用いた場合は、固着剤が吸水性樹脂に含まれる吸水性官能基(水分子との結合や固定作用を有する官能基)と結合して、吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるところ、アニオン性またはノニオン性の固着剤を用いることにより、固着剤が吸水性樹脂に含まれる吸水性官能基に強く結合せず、吸水性樹脂の吸水性能が好適に発揮されやすくなる。一方、アニオン性またはノニオン性の固着剤を使用した場合に、固着剤が被覆シート5Aにしっかりと付着するようにする点から、被覆シート5Aはセルロース繊維から構成されていることが好ましい。セルロース繊維から構成された被覆シート5Aを用いることにより、アニオン性またはノニオン性の固着剤を使用した場合でも、吸水性樹脂6を被覆シート5Aにしっかりと固定することができる。
アニオン性の固着剤としては、アニオン性ポリマーを用いることが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーを用いることができ、当該酸基としては、カルボン酸基(カルボキシ基)、スルホン酸基(スルホ基)、リン酸基等が挙げられる。これらの酸基は、任意のカチオンによって部分的に中和されていてもよい。なかでも、アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーを用いることが好ましい。アニオン性の固着剤としては、カルボキシメチルセルロース(塩)、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸(塩)共重合体、(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸(塩)共重合体、マレイン酸−(メタ)アクリル酸(塩)共重合体、アスパラギン酸(塩)および/またはグルタミン酸(塩)由来の構成単位を含むポリアミノ酸(塩)等が挙げられる。なお、アニオン性の固着剤として用いるポリアクリル酸(塩)は、吸水性樹脂として使用されるポリアクリル酸とは異なり、基本的に非架橋構造を有しており、非膨潤性である。
ノニオン性の固着剤としては、ノニオン性ポリマーを用いることが好ましく、当該ノニオン性ポリマーは水との親和性が高いものが好ましい。ノニオン性の固着剤としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、デンプン、ガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が好ましく挙げられる。
アニオン性またはノニオン性の固着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アニオン性の固着剤とノニオン性の固着剤を併用してもよい。
アニオン性またはノニオン性の固着剤の塗工量、具体的には、被覆シート5Aにおいて、吸収性コア2の開口4と重なる部分に塗工されるアニオン性またはノニオン性の固着剤の量は、当該開口4と重なる部分に配される吸水性樹脂100質量部に対して、例えば0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、また30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
被覆シート5Aには、吸収性コア2の開口4と重なる部分以外にも吸水性樹脂が配されていてもよい。例えば図1に示すように、被覆シート5Aの肌面側に、吸収性コア2の開口4と重なる部分に吸水性樹脂6が設けられるとともに、開口4と重なる部分から長手方向yに延在して開口4と重ならない部分にも吸水性樹脂6が設けられてもよい。図3には吸収体1の幅方向x断面図の変形例を示したが、図3では、被覆シート5Aの肌面側に、吸収性コア2の開口4と重なる部分の幅方向xの両側にも吸水性樹脂6が配されている。図3では、吸水性樹脂6が、長手方向yに延びるストライプ状に配置されている。このように吸水性樹脂6を配置することにより、吸収体全体の吸収容量を高めることができるとともに、尿等の体液が吸収性コア2の開口4を通って吸収性コア2の非肌面側に達したような場合でも、被覆シート5Aの開口4と重なる部分以外に配された吸水性樹脂6によって体液が吸収されて、吸収性物品の非肌面側からの漏れを防止することができる。
被覆シート5Aに、開口4と重なる部分以外に吸水性樹脂6が配される場合も、当該吸水性樹脂6は上記に説明したアニオン性またはノニオン性の固着剤により被覆シート5に固着させることができる。また、吸水性樹脂6は、開口4と重なる部分に配される分も含めて、被覆シート5Aの肌面側に、被覆シート5Aの長手方向yに延びるストライプ状に配されることが好ましい。このように吸水性樹脂6を配置することにより、尿等の体液が吸収性コア2の開口4を通って吸収性コア2の非肌面側に広がりにくくなるとともに、吸水性樹脂6が被覆シート5の全体に配される場合と比べて、吸収体1の非肌面側のごわつき感や吸水性樹脂6に由来するざらつき感を低減することができる。この場合、体液の漏れ防止の観点から、吸水性樹脂6は、被覆シート5の長手方向yの長さの80%以上の長さを有するストライプ状に配置されることが好ましく、90%以上の長さを有するストライプ状に配置されることがより好ましい。
吸収性コア2の幅方向xの中央部に長手方向yに延びるように開口4が設けられる場合は、吸水性樹脂6は、図3に示すように、吸収性コア2の幅方向xの中央部を含む部分がそれ以外の部分よりも幅広となるストライプ状に配されることが好ましい。これにより、尿等の体液が吸収性コア2の開口4を通って吸収性コア2の非肌面側に移行しにくくなる。
図2や図3に示すように、吸収性コア2の肌面側にも開口4と重なって被覆シート5Bが設けられる場合は、吸収性コア2の非肌面側に設けられた被覆シート5Aと肌面側に設けられた被覆シート5Bとは開口4において互いに接着されていることが好ましい。これにより、被覆シート5が安定して吸収性コア2を挟み込むことができ、吸収体1の保形性を高めることができる。
被覆シート5は吸収性コア2とホットメルト接着剤で接着されていることが好ましい。具体的には、被覆シート5は、吸収性コア2を構成する親水性繊維の集合体とホットメルト接着剤で接着されていることが好ましい。これにより、被覆シート5が吸収性コア2と強固に接合され、被覆シート5と吸収性コア2との一体性が高まる。
ホットメルト接着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA);ポリエステル;アクリル系エラストマー;ポリオレフィン系エラストマー等を用いることができる。これらのホットメルト接着剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ホットメルト接着剤は、網状や線状や散点状等の断続的なパターンで塗布されることが好ましく、これにより吸収性コア2による尿等の体液の吸収がホットメルト接着剤層によって阻害されにくくなる。例えば、接着剤を線状の接着パターンで塗布する場合は、線状の接着パターンは、直線状であってもよく、曲線状(例えば、蛇行線状、オメガ状、スパイラル状)であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
次に本発明の吸収性物品について説明する。本発明の吸収性物品は、本発明の吸収体が設けられている点に特徴を有し、本発明の吸収体がトップシートとバックシートの間に配されている。吸収性物品の態様としては、尿パッド(失禁パッドを含む)、使い捨ておむつ、生理用ナプキン等が示される。本発明の吸収性物品は、上記に説明した吸収体が設けられることにより、尿等の体液の吸収性と拡散性とが両立した優れた吸収性能を有するものとなる。
吸収性物品の形状は特に限定されない。吸収性物品が例えば、尿パッド、生理用ナプキンである場合、吸収性物品の形状としては、長方形、砂時計形、ひょうたん形、羽子板形等が示される。
吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、左右両側に止着部材が備えられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープタイプの使い捨ておむつであってもよく、ウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツタイプの使い捨ておむつであってもよい。パンツタイプの使い捨ておむつは、本発明の吸収体がトップシートとバックシートの間に配された吸収性本体が、パンツ形状に形成された外装部材の肌面側に取り付けられたものであってもよい。
トップシートは、吸収体の肌面側に設けられ、液透過性である。トップシートは、吸収性物品の着用の際、着用者の肌に面するように設けられる。トップシートとしては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布や;ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化されたもの等を用いることができる。また、トップシートとして、織布、編布、孔が形成されたプラスチックフィルムを用いてもよい。
バックシートは、吸収体の非肌面側に設けられ、液不透過性である。バックシートは、吸収性物品の着用の際、着用者とは反対側、すなわち外側に面するように設けられる。バックシートとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド(例えば、ナイロン)等の疎水性繊維から形成された不織布や、プラスチックフィルム等を用いることができる。また、不織布とプラスチックフィルムとの積層体を用いてもよい。
トップシートやバックシートが不織布から構成される場合、不織布としては、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、SMS不織布等を用いることが好ましい。
吸収性物品には、吸収体とバックシートとの間に保護シートが設けられることが好ましい。保護シートとしては、トップシートやバックシートに使用可能なシート材料を用いることができ、不織布、織布、編布等から構成されることが好ましい。吸収体は、吸収性コアの非肌面側の被覆シートに吸水性樹脂が配されているため、吸水性樹脂の存在によって吸収体の非肌面側の表面に微小な凹凸ができやすくなる。そのため、吸収性物品を非肌面側から触れた際に、吸水性樹脂の微小な凹凸によってざらつき感を覚えたり、また、バックシートがプラスチックフィルムから構成される場合などは、吸収体に直接バックシートが接触すると、バックシートが吸水性樹脂の微小な凹凸によって損傷しやすくなるおそれがある。しかし、吸収体とバックシートの間に保護シートを設けることによって、吸収性物品の非肌面側のざらつき感を抑えることできるとともに、バックシートの損傷も起こりにくくすることができる。好ましくは、保護シートは、被覆シートの吸水性樹脂が配された領域よりも幅方向に広く形成されている。
一方、保護シートは、吸収体よりも幅方向に狭く形成されていることが好ましい。これにより、保護シートとバックシートによって吸収性物品の非肌面側の全体が厚く形成されることなく、吸収性物品の非肌面側の柔軟性が低下することが抑えられる。保護シートは、より好ましくは、吸収性コアよりも幅方向に狭く形成されている。
吸収性物品は、肌面側の幅方向の両側に立ち上がりフラップが設けられることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、尿等の体液の横漏れが防止される。立ち上がりフラップは、例えば、トップシートの幅方向の両側に、長手方向に延在するサイドシートを接合し、サイドシートの幅方向内方(立ち上がりフラップが立ち上がったときの上端近傍)に弾性部材を設けることにより形成される。このようにサイドシートと弾性部材とを設けることにより、弾性部材の収縮力によりサイドシートの幅方向内方が着用者の肌に向かって立ち上がり、立ち上がりフラップが形成される。立ち上がりフラップまたはサイドシートは、液不透過性のプラスチックフィルムや液不透過性の不織布等により構成されることが好ましい。
本発明の吸収性物品について、テープタイプの使い捨ておむつを例に挙げ、図4および図5を参照して説明する。なお、本発明の吸収性物品は、図面に示された実施態様に限定されるものではない。図4および図5には、図1および図2に示した吸収体を備えた吸収性物品を示した。図4は、吸収性物品としてテープタイプの使い捨ておむつを肌面側から見た平面図を表し、図5は、図4に示した吸収性物品のB−B断面図を表す。
吸収性物品11は、トップシート12とバックシート13とこれらの間に設けられた吸収体1とを有する。トップシート12は、着用者の肌に面するように配され、尿等の体液を透過する。トップシート12を透過した体液は、吸収体1に収容される。バックシート13は液不透過性であり、体液が外部へ漏れるのを防ぐ。
吸収体1とバックシート13の間には、吸収性コア2の開口4と重なって保護シート14が設けられている。保護シート14を設けることにより、吸収性物品11をバックシート13側から触れた際に、吸収性コア2の開口4に配された吸水性樹脂6のざらつき感を低減することができる。また、吸収性樹脂6によって吸収体1の非肌面側に微小な凹凸が形成される場合など、保護シート14によってバックシート13が損傷することを防ぐことができる。保護シート14は、被覆シート5Aに吸水性樹脂6が配された領域よりも幅方向xに広く形成され、かつ吸収体1よりも幅方向xに狭く形成されることが好ましい。
吸収性物品11には、トップシート12の幅方向xの両側に、長手方向yに延在する液不透過性のサイドシート15が設けられることが好ましい。サイドシート15は、トップシート12と接合部18で接合され、接合部18よりも幅方向xの内方部分がトップシート12から起立可能に形成され、接合部18よりも幅方向xの外方部分がバックシート13に重なって設けられている。サイドシート15の幅方向xの内方部分が起立することにより立ち上がりフラップ16が形成され、これにより尿等の横漏れを防止することができる。なお、サイドシート15の幅方向xの内方部分がトップシート12から起立可能に形成されるために、サイドシート15には、接合部18よりも幅方向xの内方部分に長手方向yに延びる起立用弾性部材17が設けられることが好ましい。
吸収性物品11には、後側部(長手方向yの一方部)の左右側端部にファスニングテープ21が取り付けられている。ファスニングテープ21は基材シート22に留め具23が設けられて構成されている。吸収性物品11は、着用者の股間に当てて、ファスニングテープ21の留め具23を吸収性物品11の前側部(長手方向yの他方部)の外側面(図4ではターゲットテープ24)に接合することで、装着することができる。留め具23としては、フック・ループ・ファスナーのフック部材や粘着剤を用いることができる。
吸収性物品11の幅方向xの両側には、長手方向yに延びる脚用弾性部材19が設けられることが好ましい。脚用弾性部材19により、着用者の脚周りにギャザーを形成して脚周りのフィット性を高めたり、横漏れを防止することができる。
吸収性物品11の長手方向yの端部には、幅方向xに延びるウェスト弾性部材20が設けられることが好ましい。ウェスト弾性部材20により着用者の腰周りに沿ったウェストギャザーが形成され、腹部や背部からの尿等の漏れが防止される。