(1)実施形態
以下では、本実施形態の通信システム10及び通信装置1について、図1〜図7を参照して説明する。
(1−1)全体構成
本実施形態の通信システム10は、例えばマンションなどの集合住宅90に用いられる。
図1に示すように、本実施形態の通信システム10は、複数の通信装置(通信端末)1を備えている。本実施形態の通信システム10は、複数の通信装置1として、制御装置2と、複数(図示では2台)のインターホン親機(住戸親機、住宅情報盤)3と、を備えている。また、本実施形態の通信システム10は、複数の火災感知器4と、インターホン子機5と、を更に備えている。以下では、説明の便宜上、インターホン親機3を「親機3」と略称し、インターホン子機5を「子機5」と略称することがある。
図1に示すように、複数の親機3(の第1通信部31)は、第1伝送路61を介して、制御装置2(の第1通信部21)と接続されている。また、複数の親機3(の第2通信部32)は、第1伝送路61とは異なる第2伝送路62を介して、制御装置2(の第2通信部22)と接続されている。
第1伝送路61は、幹線611と、複数の分岐線612と、を含む。第1伝送路61の幹線611は、制御装置2(の第1通信部21)に接続されている。第1伝送路61の複数の分岐線612は、複数の親機3(の第1通信部31)にそれぞれ接続されている。
第2伝送路62は、幹線621と、複数の分岐線622と、を含む。第2伝送路62の幹線621は、制御装置2(の第2通信部22)に接続されている。第2伝送路62の複数の分岐線622は、複数の親機3(の第2通信部32)にそれぞれ接続されている。
第1伝送路61の複数の分岐線612は、幹線611から分岐している。第2伝送路62の複数の分岐線622は、幹線621から分岐している。第1伝送路61の幹線611と複数の分岐線612との分岐点、第2伝送路62の幹線621と複数の分岐線622の分岐点に、複数の分岐器60が設けられている。
つまり、複数の親機3(の第1通信部31)の各々は、分岐線612と分岐器60と幹線611とを含む第1伝送路61を介して、制御装置2(の第1通信部21)に接続されている。また、複数の親機3(の第2通信部32)の各々は、分岐線622と分岐器60と幹線621とを含む第2伝送路62を介して、制御装置2(の第2通信部22)に接続されている。
本実施形態では、第1伝送路61の幹線611と、第2伝送路62の幹線621とは、同一のシース600で被覆されている。すなわち、第1伝送路61の少なくとも一部と第2伝送路62の少なくとも一部とが、近接して配線されている。
また、制御装置2(の第3通信部23)は、第3伝送路63を介して、子機5(の通信部51)と接続されている。
各親機3(の第3通信部33)は、第4伝送路64を介して、火災感知器4(の通信部41)と接続されている。
第1伝送路61の幹線611及び分岐線612、第2伝送路62の幹線621及び分岐線622、第3伝送路63、及び第4伝送路64は、いずれもツイストペア線である。つまり、実際には第1伝送路61〜第4伝送路64はそれぞれ二線式であって一対の電線を備えているが、各伝送路を構成する二線(ツイストペア線)を1本と数える(図面上も、1本の線として表している)。
(1−2)通信システムに用いられる装置の構成
複数の親機3それぞれは、集合住宅90の複数(図示では2つ)の住戸91内に設置されている。親機3は、この親機3が設置されている住戸91に設置されたセンサから、警報の情報又はセンサが測定した測定値の情報等を含む信号を受信する機能を備えている。本実施形態の親機3は、特に、この親機3が設置されている住戸91内に設置された火災感知器4と第4伝送路64を介して接続されており、この火災感知器4から、第4伝送路64を介して信号を受信する機能を備えている。親機3は、この親機3が設置されている住戸91の玄関に設けられたインターホン子機(図示せず)及び第4伝送路64を介して、火災感知器4と接続されていてもよい。
図2に示すように、親機3は、制御部30と、第1通信部(親機側第1通信部)31と、第2通信部(親機側第2通信部)32と、第3通信部(親機側第3通信部)33と、を備えている。また、親機3は、通話処理部34と、マイクロホン35と、スピーカ36と、映像処理部37と、表示部38と、操作部39と、を更に備えている。
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)と、で構成されている。制御部30は、第1通信部31、第2通信部32、第3通信部33、通話処理部34及び映像処理部37の動作を制御する。
第1通信部31は、第1伝送路61を介して、制御装置2(図1及び図4参照)の第1通信部21と通信する。親機3の第1通信部31と制御装置2の第1通信部21とは、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1を用いて通信する。親機3の第1通信部31と制御装置2の第1通信部21との間で、第1伝送路61を介して第1通信信号S1で伝送される第1伝送データは、映像データ(映像信号)及び/又は音声データ(音声信号)を含む。
第1通信部31は、通話処理部34からの音声信号を含む第1通信信号S1を生成する。第1通信部31は、生成した第1通信信号S1を、第1伝送路61を介して制御装置2の第1通信部21へ送信する。また、第1通信部31は、第1伝送路61を介して、制御装置2の第1通信部21から送信された第1通信信号S1を受信する。第1通信部31は、受信した第1通信信号S1を復調して、映像信号及び/又は音声信号を復元する。
第1通信部31で復元された音声信号(デジタルの音声信号)は、通話処理部34に入力される。第1通信部31で復元された映像信号(デジタルの映像信号)は、映像処理部37に入力される。
また、マイクロホン35で集音された音声は、マイクロホン35により電気信号(アナログの音声信号)に変換され、A/D変換器(図示せず)によりデジタルの音声信号に変換され、通話処理部34に入力される。
通話処理部34は、第1通信部31からの音声信号と、マイクロホン35(A/D変換器)からの音声信号とを処理(信号処理)する。
第1通信部31から通話処理部34に入力された音声信号(デジタルの音声信号)は、D/A変換器(図示せず)でアナログの音声信号に変換されてスピーカ36に入力され、これにより、スピーカ36から音声が出力される。また、マイクロホン35から通話処理部34に入力された音声信号は、通話処理部34で処理された後、第1通信部31へ出力される。
映像処理部37は、第1通信部31からの映像信号に基づいて、映像を表示部38に表示させる。表示部38は、例えば、液晶ディスプレイである。
操作部39は、居住者の操作を受け付ける。操作部39は、タッチパネル又は複数の押ボタンを有する入力装置を備えている。操作部39は、入力装置が操作されたときに、操作に応じた操作信号を、制御部30へ出力する。入力装置は、例えば、子機5との間の通信(通話)を終了させるための終了ボタンを備えている。
第2通信部32は、第2伝送路62を介して、制御装置2の第2通信部22と通信する。親機3の第2通信部32と制御装置2の第2通信部22とは、第2伝送路62を介して伝送される第2通信信号S2を用いて通信する。
第3通信部33は、第4伝送路64を介して、火災感知器4(図1及び図5参照)の通信部41と通信する。親機3の第3通信部33と火災感知器4の通信部41とは、第4伝送路64を介して伝送される第4通信信号S4を用いて通信する。
親機3の制御部30は、第4伝送路64を介して、火災感知器4からの火災の発生を通知する信号(以下、火災報と呼ぶ。)を第3通信部33で受け取る。制御部30は、火災感知器4から火災報を受け取ると、第2通信部32から、第2伝送路62を介して火災報を制御装置2に送信する。
子機5は、ロビーインターホンであって、集合住宅90の共用玄関(ロビー)92に設置されている。
図3に示すように、子機5は、制御部50と、通信部(子機側通信部)51と、マイクロホン52と、スピーカ53と、撮像部54と、操作部55と、を備える。
制御部50は、CPU及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。制御部50は、通信部51及び撮像部54の動作を制御する。
通信部51は、第3伝送路63を介して、制御装置2(図1及び図4参照)の第3通信部23と通信する。子機5の通信部51と制御装置2の第3通信部23とは、第3伝送路63を介して伝送される第3通信信号S3を用いて通信する。子機5の通信部51と制御装置2の第3通信部23との間で、第3伝送路63を介して第3通信信号S3で伝送される第3伝送データは、映像データ(映像信号)及び/又は音声データ(音声信号)を含む。
通信部51は、音声信号、映像信号及び/又は呼出信号を含む第3通信信号S3を生成する。通信部51は、生成した第3通信信号S3を、第3伝送路63を介して制御装置2の第3通信部23へ送信する。また、通信部51は、第3伝送路63を介して、制御装置2の第3通信部23から送信された第3通信信号S3を受信する。通信部51は、受信した第3通信信号S3を復調して音声信号を復元する。
通信部51で復元された音声信号(デジタルの音声信号)は、D/A変換器(図示せず)によりアナログの音声信号に変換されてスピーカ53に入力され、これにより、スピーカ53から音声が出力される。
また、マイクロホン52で集音された音声は、マイクロホン52によりアナログの音声信号(電気信号)に変換され、A/D変換器(図示せず)によりデジタルの音声信号に変換され、通信部51に入力される。
撮像部54は、来訪者を撮像する。撮像部54は、固体撮像素子と、レンズと、信号処理回路とを備えている。固体撮像素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。信号処理回路は、固体撮像素子の出力信号からYUVフォーマットのデジタルの映像信号を生成し、デジタルの映像信号を通信部51へ出力する。
操作部55は、来訪者の操作を受け付ける。操作部55は、タッチパネル又は複数の押ボタンを有する入力装置を備えている。操作部55は、入力装置が操作されたときに、操作に応じた呼出信号を、制御部50へ出力する。この呼出信号は、訪問先の住戸91の番号(住戸番号)を含んでいる。制御部50は、操作部55からの呼出信号を、通信部51へ出力する。
制御装置2は、集合住宅90の管理人室93に設置されている。
制御装置2は、図4に示すように、制御部20と、第1通信部(制御側第1通信部)21と、第2通信部(制御側第2通信部)22と、第3通信部(制御側第3通信部)23と、電圧印加部24と、を備えている。
制御部20は、CPU及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。制御部20は、第1通信部21、第2通信部22及び第3通信部23の動作を制御する。制御部20のメモリには、各住戸91の親機3に割り当てられたアドレスと当該住戸91の住戸番号とが(例えばデータテーブルの形式で)対応付けて記憶されている。
制御装置2の第3通信部23は、第3伝送路63を介して、子機5(図1及び図3参照)の通信部51と通信する。第3通信部23は、第3伝送路63を介して、子機5から送信された第3通信信号S3を受信する。第3通信部23は、受信した第3通信信号S3に含まれた呼出信号(住戸番号)、音声信号及び/又は映像信号を、制御部20へ出力する。また、第3通信部23は、制御部20からの音声信号を変調して第3通信信号S3を生成する。第3通信部23は、生成した第3通信信号S3を、第3伝送路63を介して、子機5の通信部51へ送信する。
制御部20は、第3通信部23から取得した住戸番号に対応付けられたアドレスの親機3を呼び出す。例えば、制御部20は、該当するアドレスの親機3を呼び出すための呼出信号を、第1通信部21へ出力する。また、制御部20は、第3通信部23から取得した音声信号及び/又は映像信号を、第1通信部21へ出力する。
制御装置2の第1通信部21は、制御部20からの呼出信号、音声信号及び/又は映像信号を含む第1通信信号S1を生成する。第1通信部21は、生成した第1通信信号S1を、第1伝送路61を介して親機3の第1通信部31へ送信する。また、第1通信部21は、親機3の第1通信部31から送信された第1通信信号S1を、第1伝送路61を介して受信する。第1通信部21は、受信した第1通信信号S1に含まれている音声信号を、制御部20へ出力する。制御部20は、第1通信部21からの音声信号を、第3通信部23へ出力する。
すなわち、呼出信号を含む第3通信信号S3を子機5から受信すると、制御装置2は、呼出信号に対応付けられたアドレスの親機3を子機5と接続し、両者間での通信(通話)を中継する。
また、制御装置2の制御部20は、親機3の操作部39の操作に応じて、親機3から通信(通話)を終了させるための終了信号を受け取ると、親機3と子機5との接続を解除し、両者間での通話を終了させる。また、制御装置2の制御部20は、子機5から呼出信号を含む第3通信信号S3を受け取ってから、所定の通話時間(例えば90秒)が経過すると、親機3と子機5との接続を解除し、両者間での通話を終了させる。
制御装置2の第2通信部22は、第2伝送路62を介して、複数の親機3(図1及び図2参照)の第2通信部32と通信する。
制御装置2の電圧印加部24は、第2伝送路62(の一対の電線間)に一定の電圧を印加する。
制御装置2の第2通信部22は、第2伝送路62の一対の電線間のインピーダンスを変化させることで、第2伝送路62の電圧(或いは電流)を変化させ、これにより第2伝送路62を介して信号を送信する。
複数の火災感知器4の各々は、例えば、住戸91内の天井材、壁材等に取り付けられる。火災感知器4は、例えば、煙を感知する感知器、及び熱を感知する感知器等である。
図5に示すように、火災感知器4は、制御部40と、通信部(感知器側通信部)41と、検知部42と、を備える。
制御部40は、CPU及びメモリ等のハードウェアと、CPUで実行されるソフトウェア(プログラム)とで構成されている。制御部40は、通信部41及び検知部42の動作を制御する。
火災感知器4の通信部41は、第4伝送路64を介して親機3(図1及び図2参照)の第3通信部33と通信する。
検知部42は、火災を検知する。火災感知器4が煙感知器の場合には、検知部42は、発光素子及び受光素子を備えており、火災の煙を検知することにより火災を検知する。火災感知器4が熱感知器の場合には、検知部42は、熱検知素子を備えており、火災の熱を検知することにより火災を検知する。
制御部40は、検知部42で火災の発生を検知すると、火災報を、通信部41から第4伝送路64に出力する。親機3は、第4伝送路64を介して火災報を受信すると、第2伝送路62を介して火災報を制御装置2に送信する。したがって、制御装置2は、各住戸91に設置された火災感知器4からの火災報を、親機3を介して受信することができる。
(1−3)通信システムの通信方式
本実施形態の通信システム10は、インターホンシステムとしての第1通信システムと、自動火災報知システムとしての第2通信システムと、を備えている。第1通信システム(インターホンシステム)は、親機3、制御装置2、子機5、第1伝送路61及び第3伝送路63によって構成される。第2通信システム(自動火災報知システム)は、親機3、制御装置2、第2伝送路62及び第4伝送路64によって構成される。
本実施形態では、第1通信システムは、第1通信信号S1及び第3通信信号S3を用いて、例えば画像データ及び音声データ等を伝送するための通信システムである。第2通信システムは、第2通信信号S2及び第4通信信号を用いて、例えば火災報等を伝送するための通信システムである。
以下、第1通信システム及び第2通信システムの通信方式について説明する。
制御装置2の第1通信部21と親機3の第1通信部31とは、第1伝送路61を介して、第1通信信号S1を用いて通信する。
本実施形態では、第1通信信号S1は、第1伝送路61を介して、直交周波数分割多重方式(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を用いた伝送方式で伝送される。すなわち、第1通信信号S1は、限られた周波数範囲内(図6参照)で伝送される信号である。
第1通信部21及び第1通信部31の各々は、複数の変調方式で変調を行うことが可能である。第1通信部21(31)は、複数の変調方式のうちの一つの変調方式で変調を行い、第1通信信号S1を生成する。複数の変調方式は、例えば、多値度及び符号化率の異なる複数の変調方式を含み、特に、多値度の異なる複数の変調方式を含む。多値度の異なる複数の変調方式は、例えば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAM、256QAMを含む。例えば、第1通信部21(31)は、制御部20(30)の制御下で、BPSK、QPSK、16QAM、64QAM、256QAMのうちの一つの変調方式で変調を行い、第1通信信号S1を生成する。
制御装置2の第1通信部21と親機3の第1通信部31とは、生成した第1通信信号S1を用いて、互いに通信する。
制御装置2の第3通信部23と子機5の通信部51とは、第3伝送路63を介して、第3通信信号S3を用いて通信する。本実施形態では、第3通信信号S3は、第1通信信号S1と同様に、直交周波数分割多重方式(OFDM)を用いた伝送方式で伝送される。また、第3通信部23(通信部51)は、上記複数の変調方式のうちの一つの変調方式で変調を行い、第3通信信号S3を生成する。例えば、第3通信部23(通信部51)は、制御部20(50)の制御下で、BPSK、QPSK、16QAM、64QAMのうちの一つの変調方式で変調を行い、第3通信信号S3を生成する。第3通信信号S3の変調に用いられる変調方式は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式と同じであってもよいし異なっていてもよい。
制御装置2の第3通信部23と子機5の通信部51とは、生成した第3通信信号S3を用いて、互いに通信する。
制御装置2の第2通信部22と親機3の第2通信部32とは、第2伝送路62を介して、第2通信信号S2を用いて通信する。本実施形態では、制御装置2の第2通信部22と複数の親機3の第2通信部32とは、R型(Record-type)の通信方式で通信する。より詳細には、制御装置2の第2通信部22と複数の親機3の第2通信部32とは、第2伝送路62を介して時分割多重伝送方式により通信する。
第2伝送路62を介して伝送される第2通信信号S2は、例えばベースバンド伝送方式の信号である。すなわち、第2通信信号S2は、第1通信信号S1よりも広い周波数範囲の成分を持つ信号である(図6参照)。図6に示すように、第2通信信号S2の周波数範囲は、第1通信信号S1の周波数範囲全てを含んでいる。
制御装置2の電圧印加部24は、第2伝送路62(の一対の電線間)に所定の電圧(例えば、直流24V)を印加する。制御装置2の第2通信部22は、第2伝送路62の一対の電線間のインピーダンスを変化させることで、第2伝送路62に対して伝送信号を繰り返し送出する。伝送信号は、スタートパルス信号、モードデータ、アドレスデータ、制御データ、チェックサムデータ及び信号返送期間を含む。スタートパルス信号は、信号送出開始を示す信号である。モードデータは、伝送信号のモードを示すデータである。アドレスデータは、複数の親機3(第2通信部32)を各別に呼び出すためのデータである。制御データは、親機3等を制御するためのデータである。チェックサムデータは、伝送誤りを検出するためのデータである。信号返送期間は、親機3の第2通信部32からの返送信号を受信するタイムスロットである。制御装置2の第2通信部22は、通常時にはモードデータをダミーモードとした伝送信号を一定時間間隔で送出する(常時、ポーリングを行っている)。親機3の第2通信部32が、第2伝送路62を介して制御装置2に対して情報を伝送しようとする場合、ダミーモードの伝送信号のスタートパルス信号に同期して第2伝送路62の電圧(或いは電流)を変化させることで、割込信号を発生させる。制御装置2の第2通信部22は、割込信号を受信すると、モードデータを割込ポーリングモードとし、かつアドレスデータの上位の半数のビット(アドレスデータを8ビットとすれば上位4ビット)を順次増加させながら伝送信号を送出する。割込信号を発生した親機3の第2通信部32は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位4ビットが自己(親機3)のアドレスの上位4ビットに一致すると、信号返送期間にアドレスの下位の半数のビットを制御装置2に返送する。制御装置2の第2通信部22は、割込信号を発生した親機3のアドレスを獲得すると、モードデータを監視モードとし、獲得したアドレスのアドレスデータを持つ伝送信号を第2伝送路62に送出する。そして、親機3は、この伝送信号に対して、伝送しようとする情報である監視データを信号返送期間に返送する。これにより、親機3の第2通信部32から制御装置2の第2通信部22へ監視データが伝送される。
親機3の第3通信部33と火災感知器4の通信部41とは、第4伝送路64を介して、第4通信信号S4を用いて通信する。本実施形態では、親機3の第3通信部33と火災感知器4の通信部41とは、P型(Proprietary-type)の通信方式で通信する。第4伝送路64には、親機3から一定の電圧が印加されている。火災感知器4は、第4伝送路64の一対の電線間のインピーダンスを変化させることで、第4通信信号S4を親機3に送信する。
(1−4)通信システムの動作
以下、第1通信システムと第2通信システムとの間の連動動作について説明する。
図6に示すように、本実施形態では、第1通信信号S1の伝送に用いられる周波数帯域と、第2通信信号S2の伝送に用いられる周波数帯域とは、少なくとも一部が重複している。したがって、例えば第1伝送路61と第2伝送路62とが(少なくとも一部において)近接して配線されている場合、第1伝送路61と第2伝送路62との間のクロストークが発生する可能性がある。クロストークが発生する可能性がある場合、各伝送路で伝送される信号の変調に用いられる変調方式として、クロストークの発生を想定した上でエラー率を一定以下に保つことができる多値度の変調方式を、用いる必要がある。
特に、映像データ等の比較的データ量の大きなデータの伝送に用いられる第1伝送路61では、高い上限レート(信号の伝送速度の上限)が求められる。しかし、クロストークが発生する可能性があると、クロストークがない場合に利用可能な上限レートよりも低い上限レートに基づいて、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式が(予め)決定される。このため、第1通信信号S1の伝送速度の上限が、制限されてしまう。
そこで、本実施形態の制御装置2の制御部20は、図4に示すように、変更制御部201と、優先度比較部202と、停止制御部203と、を備えている。
変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を変更させる。変更制御部201は、変更期間T1の間、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を変更させる。変更期間T1が経過すると、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、変更期間T1の前の変調方式に戻す。
変更制御部201は、第1通信信号S1の使用帯域情報と、第1通信信号S1で伝送されるデータの優先度及び第2通信信号S2で伝送されるデータの優先度と、の少なくとも一方に基づいて、変調方式を変更させるか否かを決定する。使用帯域情報は、第1通信信号S1が伝送されるチャネル数の情報、及び/又は予め設定された一定長さの期間に伝送される予定の第1伝送データのデータ量(予定伝送データ量)の情報である。予定伝送データ量は、例えば、制御装置20が子機50から第3伝送路63を介して受け取って制御装置20のバッファ(図示せず)に一定時間の間に蓄積された、第1通信信号S1で伝送される予定の第1伝送データのデータ量である。
停止制御部203は、第2通信部22、32からの第2通信信号S2の伝送を、停止期間T0の間停止させる。停止期間T0が経過すると、停止制御部203は、第2通信信号S2の伝送を再開させる。本実施形態では、停止制御部203は、停止期間T0の間、制御装置2の第2通信部22からの上記伝送信号の送出を停止させる(したがって、親機3の第2通信部32からの、割込信号等の送信も停止される)。停止制御部203は、第1通信信号S1の使用帯域情報と、第1通信信号S1で伝送されるデータの優先度及び第2通信信号S2で伝送されるデータの優先度と、の少なくとも一方に基づいて、第2通信信号S2の伝送を停止させるか否かを決定する。使用帯域情報は、第1通信信号S1が伝送されるチャネル数の情報、及び/又は予め設定された一定長さの期間に伝送される予定の第1伝送データのデータ量(予定伝送データ量)の情報である。
例えば、制御部20は、第1伝送路61を介した通信(通話)数(例えば、1つの親機3と制御装置2との間の通信、親機3間の通信を、それぞれ1つと数える)が、所定の第1閾値よりも小さいか否かを判定する。また、制御部20は、所定期間内に第1伝送路61を介して伝送される予定の第1伝送データのデータ量(予定伝送データ量)が、所定の第2閾値よりも小さいか否かを判定する。
上記通信数が第1閾値よりも小さく、かつ予定伝送データ量が第2閾値よりも小さい場合、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として、第1の変調方式を選択する。第1の変調方式は、比較的多値度の小さな変調方式(例えば、QPSK)である。そして、第1通信部21、31は、変更制御部201によって選択された変調方式(QPSK)で変調を行って第1通信信号S1を生成し、生成した第1通信信号S1を用いて互いに通信する。またこのとき、停止制御部203は、第2通信部22、32からの第2通信信号S2の伝送を停止させることなく、第2通信部22、32を動作させる。
ここで、第1の変調方式として選択される変調方式は、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1が、第2通信信号S2に起因して第1伝送路61内で発生するノイズによって実質的な影響を受けない程度の、多値度を持つ変調方式である。第1の変調方式は、例えば、第2通信部22、32の処理性能(信号の振幅/位相についての分解能)、外来ノイズ等の影響を考慮して予め決定される。例えば、第1の変調方式は、第2通信部22、32が第2通信信号S2の送信を行う動作期間において、第1伝送路61上での第1通信信号S1の強度をシグナル、第2通信信号S2の強度をノイズとした場合のSN比に基づいて予め設定される。このSN比は、動作期間において実測された、第1伝送路61上での、第1通信信号S1の強度と(クロストークに起因する)第2通信信号S2の強度との比であってもよい。
通信数が第1閾値より小さく、予定伝送データ量が第2閾値より小さい時は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として、第1の変調方式が選択されている。
一方、上記通信数が第1閾値以上の場合、及び/又は上記予定伝送データ量が第2閾値以上の場合、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として、第2の変調方式を選択するか否かの判定を行う。第2の変調方式は、第1の変調方式よりも多値度の大きな変調方式(例えば、64QAM)である。また、停止制御部203は、第2通信部22、32に第2通信信号S2の伝送を停止させるか否か、の判定を行う。
より詳細には、上記通信数が第1閾値以上になるか、上記予定伝送データ量が第2閾値以上になると、制御部200の優先度比較部202が、第1伝送データの優先度と第2伝送データの優先度とを比較する。そして、変更制御部201は、第1伝送データの優先度と第2伝送データの優先度との比較結果に応じて、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を第1の変調方式から第2の変調方式に変更するか否かを決定する。また、停止制御部203は、優先度比較部202による第1伝送データの優先度と第2伝送データの優先度との比較結果に応じて、第2通信部22に第2通信信号S2の伝送を停止させるか否かを決定する。
優先度比較部202が、第1伝送データの優先度が第2伝送データの優先度よりも低いと判定した場合、変更制御部201は、第1の変調方式を維持する。また、停止制御部203は、第2通信部22、32による第2通信信号S2の伝送を許可する(停止させない)。
一方、優先度比較部202が、第1伝送データの優先度が第2伝送データの優先度よりも高いと判定した場合、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として、第1の変調方式よりも多値度の大きな第2の変調方式を選択する。また、停止制御部203は、第2通信部22、32に第2通信信号S2の伝送を停止させる。
すなわち、変更制御部201は、停止制御部203による第2通信信号S2の伝送の停止に連動して、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、第2通信信号S2の伝送を停止させる前の変調方式よりも多値度の高い変調方式へ変更する。変更制御部201は、変更期間T1が経過すると、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、変更期間T1の開始前の変調方式に戻す。
ここで、図7に示すように、上記の変更期間T1は、停止制御部203が第2通信部22に第2通信信号S2の伝送を停止させる停止期間T0内に収まることが好ましい。すなわち、変更期間T1の始まりは、停止期間T0の始まり以降(同時でもよい)であることが好ましい。また、変更期間T1の終わりは、停止期間T0の終わり以前(同時でもよい)であることが好ましい。
以下、本実施形態の通信システム10の動作について、より詳細に説明する。
第1通信信号S1を用いて通信する第1通信システムは、本実施形態では上記のようにインターホンシステムである。インターホンシステムでは、来訪者がおらず子機5と親機3との通信(通話)が行なわれていない時は、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として、多値度の小さな第1の変調方式(例えば、QPSK)を選択する。第1通信部21、31は、変更制御部201によって指定された変調方式(QPSK)で変調を行って第1通信信号S1を生成し、生成した第1通信信号S1を用いて互いに通信する。
この状態で、例えば、子機5の操作部55が来訪者によって操作されると、制御部50は操作部55から呼出信号を受け取る。呼出信号を受け取ると、制御部50は、撮像部54に来訪者の撮像を開始させ、撮像部54は、撮像した映像を含む映像信号を通信部51へ出力する。通信部51は、呼出信号、映像信号を含む第3通信信号S3を生成し、第3伝送路63を介して制御装置2の第3通信部23へ送信する。
制御装置2の制御部20は、子機5の通信部51から第3通信信号S3を第3通信部23で受け取ると、受け取った第3通信信号S3に含まれる第3伝送データ(呼出信号、映像信号)に基づき、親機3へ送信する予定の第1伝送データを生成する。そして、制御部20は、第1伝送路61を介した通信数が上記第1閾値以上か否かを判定する。また制御部20は、予定伝送データ量が、上記第2閾値以上か否かを判定する。
通信数が第1閾値より小さく、かつ予定伝送データ量が第2閾値より小さい場合、制御部20は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を第1の変調方式に維持する。第1通信部21は、第1の変調方式を用いて変調を行って第1通信信号S1を生成し、生成した第1通信信号S1(呼出信号、映像信号を含む)を、親機3の第1通信部31に送信する。
一方、通信数が第1閾値以上、及び/又は第1伝送データの予定伝送データ量が第2閾値以上の場合、制御部20の優先度比較部202は、第1伝送データの優先度と第2伝送データの優先度とを比較する。
例えば、集合住宅90に火災等が発生しておらず第2伝送データが火災報等を含まない場合には、第2伝送データの優先度は第1伝送データの優先度よりも低い(第1伝送データの優先度は、第2伝送データの優先度よりも高い)。
第1伝送データの優先度が第2伝送データの優先度よりも高い場合、制御部20の変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、多値度の高い変調方式へ(例えば、QPSKから64QAMへ)変更する。また、制御部20の停止制御部203は、第2通信部22に伝送信号の送出を停止させる。
制御装置2の第1通信部21は、変更制御部201によって指定された変調方式(64QAM)で変調を行って第1通信信号S1を生成し、生成した第1通信信号S1を、第1伝送路61を介して親機3の第1通信部31へ送信する。変更後の変調方式で変調された第1通信信号S1を受け取ると、親機3の第1通信部31は、受け取った第1通信信号S1を復調して呼出信号及び映像信号を復元する。住戸91の居住者は、呼出信号及び映像信号に応じて、操作部39を操作し、マイクロホン35を介して音声を入力する。親機3では、マイクロホン35からの音声信号を通話処理部34が処理し、第1通信部31へ出力する。そして、親機3の第1通信部31は、上記変更後の変調方式(第2の変調方式;64QAM)で変調を行って第1通信信号S1を生成し、第1伝送路61へ伝送する。
この後、制御装置2の第1通信部21と親機3の第1通信部31とは、第1伝送路61を介して、第2の変調方式で変調された第1通信信号S1を用いて通信する。
親機3の操作部39の終了ボタンが押されるか、所定の通話時間が経過すると、制御装置2は、親機3と子機5との接続を解除し、両者間での通話を終了させる。そして、変更制御部201は、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を第1の変調方式に戻し、停止制御部203は、第2通信部22に伝送信号の送出を再開させる。
このように、通信システム10が変更制御部201を備えていることで、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式として多値度の大きな変調方式を用いることが可能となり、第1通信信号S1の上限レートを高めることが可能となる。また、通信システム10が停止制御部203を備えていることで、変更制御部201で第1通信信号S1の上限レートを高めても、(第2通信信号S2の影響を受けることなく)第1通信信号S1を高い信頼性で(低いエラー率で)伝送することが可能となる。
また、第1通信信号S1の使用帯域情報及び/又は第1及び第2伝送データの優先度に基づいて、第2通信信号S2の伝送を停止させるか否かを決定することで、不用意に第2通信信号S2の伝送を停止してしまう可能性を低減することが可能となる。
また、本実施形態の通信システム10では、第1伝送路61を介して行われる通信(通話)数が第1閾値以上の場合に、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を多値度の大きな変調方式に変更している。これにより、多くのデータの送信が必要となるときに、第1伝送路61を介して伝送されるデータ量を増加させることが可能となる。
また、本実施形態の通信システム10では、予定伝送データ量が第2閾値以上の場合に、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を多値度の大きな変調方式に変更している。すなわち、実際に第1伝送路61を介して伝送される予定のデータ量に基づいて、必要に応じて変調方式(上限レート)を変更している。これにより、第1伝送路61での通信品質を保ちながら、第1伝送データの伝送効率を高めることが可能となる。
次に、停止期間T0中における第2通信信号S2の伝送について、説明する。
停止制御部203は、停止期間T0の途中に、第2通信部22、32から、優先度の高い第2伝送データの伝送の要求があった場合、この優先度の高い第2伝送データの伝送を許可する。優先度の高い第2伝送データとは、一例において、所定の閾値よりも優先度の高い伝送データである。優先度の高い第2伝送データとは、別例において、第1通信信号S1で伝送される第1伝送データよりも優先度の高い伝送データである。
例えば、停止制御部203は、ある親機3の第2通信部32から火災報の伝送の要求があった場合、停止期間T0の途中であっても、この第2通信部32に火災報の伝送を許可する。
停止期間T0において、火災報の伝送の要求は、例えば第2伝送路62を介して伝送される。停止期間T0中は、第2通信部22は、伝送信号を送出しておらず、常時ポーリングを行っていない。そこで、火災報の伝送を要求する親機3の第2通信部32は、第2伝送路62を介して所定の割り込み信号を送出する。
制御装置2の制御部20は、割り込み信号を受け取ると、第2通信部32から伝送信号の送出(ポーリング)を(一時的に)再開させる。言い換えれば、制御部20は、停止期間T0を一時的に解除する。そして、火災報の伝送を要求する親機3は、伝送信号を用いて制御装置2と通信し、火災報を伝送する。親機3の第2通信部32からの火災報の伝送が完了すると、制御装置2の第2通信部22は、伝送信号の送出を終了する(停止期間T0の一時的な解除を終了する)。これにより、停止期間T0であっても、優先度の高い第2伝送データの伝送が可能となり、火災報等を即座に制御装置2へ伝送することが可能となる。
また、変更制御部201は、第2通信信号S2の伝送の一時的な再開と連動して、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、停止期間T0で用いられる変調方式よりも多値度の低い変調方式へ変更する。例えば、変更制御部201は、第2通信信号S2の伝送の一時的な再開と連動して、第1伝送路61を介して伝送される第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を、(第2の変調方式から、)停止期間T0の開始前の変調方式(第1の変調方式)へ戻す。この構成によれば、第2通信信号S2の伝送を一時的に再開した場合に、第1通信信号S1の伝送の信頼性が確保され、第1通信信号S1の伝送エラー等が発生する可能性を低減することが可能となる。
さらに、第1伝送路61を介して複数の通信(通話)が行われている場合、制御部20は、何れかの通信を切断してもよい。すなわち、制御部20は、通信制限部204を備えていてもよい(図4参照)。通信制限部204は、第1伝送路61を介して複数組の通信(通話)が行われている状態で、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可するときに、少なくとも1組の第1通信部21、31の間の通信を停止させる。この構成によれば、第2通信信号S2の伝送を一時的に再開した場合に、第1伝送路61で伝送される第1伝送データのデータ量が低減される。したがって、接続が維持される通信においては、第1通信信号S1の伝送エラー等が発生する可能性(エラー率)を低減することが可能となる。
上記のように、停止期間T0においても、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可することで、火災報等の緊急に伝送すべき第2通信信号S2を伝送することが可能となる。
ところで、第2通信部22、32が第2通信信号S2を伝送する動作期間においては、制御装置2の第2通信部22と親機3の第2通信部32とが、第2通信信号S2を用いて第2伝送路62を介して通信を行っている。このため、第2伝送路62に断線等の異常が発生すれば、制御装置2は、第2通信信号S2での異常の発生(通信の不具合等)を検知することで、第2伝送路62の異常を検知することが可能である。しかし、停止期間T0においては、制御装置2の第2通信部22は第2通信信号S2の伝送を停止するので、第2通信信号S2を介しては第2伝送路62の異常を検知することができない。そこで、停止期間T0において、電圧印加部24は、第2伝送路62への電圧の印加を維持してもよい。或いは、停止期間T0において、電圧印加部24は、動作期間とは異なる一定の電圧を第2伝送路62に印加してもよい。そして、複数の親機3(のうちの少なくとも一つ)は、停止期間T0において第2伝送路62の電圧を検出する電圧検出部300を、備えていてもよい(図2参照)。これにより、停止期間T0において、第2伝送路62に断線等の異常が発生しても、親機3が、この第2伝送路62での異常の発生を検知することが可能となる。
さらに、電圧検出部300を備えた親機3の制御部30は、第2伝送路62での異常の発生を検知した場合、第1通信部31から第1伝送路61を介して、第1通信信号S1によりその旨を制御装置2に通知してもよい。これにより、停止期間T0において、第2伝送路62に断線等の異常が発生しても、制御装置2が、この第2伝送路62での異常の発生を知ることが可能となる。
(2)変形例
第1通信システム及び第2通信システムは、インターホンシステム及び自動火災報知システムに限られない。例えば、第1通信システムは、監視カメラ又は防犯カメラで撮影された映像を伝送するための防犯システムであってもよいし、第2通信システムは、照明器具の制御を行うための照明制御システムであってもよい。また、第1伝送路61及び/又は第2伝送路62が電力線であって、第1通信システム及び/又は第2通信システムが電力線搬送通信(PLC:Power Line Communication)システムであってもよい。
第1通信信号S1は、OFDMを用いた伝送方式で伝送されなくてもよく、第2通信信号S2は、ベースバンド伝送方式の信号でなくてもよい。第1通信信号S1の周波数帯域と、第2通信信号S2の周波数帯域とが、少なくとも一部で重なっていればよい。或いは、通信システム10は、第2通信信号S2の伝送が、第1通信信号S1の伝送に少しでも影響を与えるシステムであればよい。
第2通信信号S2の伝送の一時的な再開と連動して変更制御部201が選択する変調方式は、停止期間T0の変調方式(第2の変調方式)よりも上限レート(多値度)の低い変調方式であればよく、停止期間T0の開始前の変調方式(第1の変調方式)でなくてもよい。
変更制御部201は、第2通信信号S2の伝送の一時的な再開と連動して、第1通信信号S1の変調に用いられる変調方式を変更しなくてもよい。すなわち、変更制御部201は、第2通信信号S2の伝送が一時的に再開されても、停止期間T0の変調方式である第2の変調方式を維持させてもよい。
制御装置2の第2通信部22は、停止期間T0の途中に、優先度の高い第2伝送データの伝送の要求があった場合、第2通信部22から伝送信号の送出(ポーリング)を再開しなくてもよい。通信システム10は、優先度の高い第2伝送データの伝送の要求があった場合に、制御装置2がこの第2伝送データを受信できる構成であればよい。
第1の変調方式を決定するためのSN比は、動作期間において実測された、第1伝送路61上での、第1通信信号S1の強度と第2通信信号S2の強度との比でなくてもよい。例えば、通信システム10を模擬した複数のシステムで得られたSN比のワースト値や、シミュレーションで得られたSN比の理論値等を用いて、第1の変調方式を決定してもよい。
第1の変調方式は、例えば、第1通信信号S1の伝送の際にペアとなる2つの第1通信部21、31ごとに、個別に変調方式が設定されてもよい。例えば、ある親機3の第1通信部31と制御装置2の第1通信部21との間の第1の変調方式は、別の親機3の第1通信部31と制御装置2の第1通信部21との間の第1の変調方式と異なっていてもよい。
変更制御部201、優先度比較部202、停止制御部203、通信制限部204は、制御装置2の制御部20以外に備えられていてもよい。変更制御部201、優先度比較部202、停止制御部203、通信制限部204は、一つの通信装置1(制御装置2又は親機3)に備えられていてもよいし、複数の通信装置1に分けて備えられていてもよい。さらに、変更制御部201、優先度比較部202、停止制御部203、通信制限部204は、一以上の通信装置1と、他装置とに分けて備えられていてもよい。
以上説明した実施形態(変形例を含む)は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(3)態様
以上述べた実施形態及び変形例から明らかなように、第1の態様の通信システム(10)は、複数の第1通信部(21、31)と、複数の第2通信部(22、32)と、変更制御部(201)と、停止制御部(203)と、を備える。複数の第1通信部(21、31)は、第1伝送路(61)を介して互いに接続されている。複数の第1通信部(21、31)は、複数の変調方式のうちの一つの変調方式で変調され第1伝送路(61)を介して伝送される第1通信信号(S1)を用いて、互いに通信する。複数の第2通信部(22、32)は、第2伝送路(62)を介して互いに接続されている。複数の第2通信部(22、32)は、第2伝送路(62)を介して伝送される第2通信信号(S2)を用いて互いに通信する。変更制御部(201)は、第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を変更させる。停止制御部(203)は、複数の第2通信部(22,32)からの第2通信信号(S2)の伝送を停止期間(T0)の間停止させる。変更制御部(201)は、停止制御部(203)による第2通信信号(S2)の伝送の停止に連動して、第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を、第2通信信号(S2)の伝送を停止させる前の変調方式よりも多値度の高い変調方式へ変更する。
この構成によれば、停止制御部(203)が停止期間(T0)の間、第2通信信号(S2)の伝送を停止させ、変更制御部(201)が停止期間(T0)に連動して第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を、多値度の高い変調方式へ変更する。これにより、停止期間(T0)中は、第1通信信号(S1)の伝送の信頼性を維持しつつ、第1通信信号(S1)の上限レートを高めることができる。すなわち、必要に応じて信号の伝送速度を高くすることが可能となる。
第2の態様の通信システム(10)では、第1の態様において、変更制御部(201)は、変更期間(T1)が、停止期間(T0)内に収まるように、第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を変更する。変更期間(T1)は、停止制御部(203)による第2通信信号(S2)の伝送の停止に連動して、変更制御部(201)が第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を変更している期間である。
この構成によれば、第2通信部(22、32)が第2通信信号(S2)を伝送する動作期間の間は、第1通信信号(S1)の変調方式として、多値度の低い変調方式(第1の変調方式)が用いられる。したがって、第1通信信号(S1)の伝送エラー等が発生する可能性が低くなり、第1通信信号(S1)の伝送の信頼性の低下を抑制することが可能となる。
第3の態様の通信システム(10)では、第1又は第2の態様において、停止制御部(203)は、以下のように構成される。すなわち、停止制御部(203)は、第1通信信号(S1)の使用帯域情報、及び第1伝送データの優先度及び第2伝送データの優先度の少なくとも一方に基づいて、第2通信信号(S2)の伝送を停止させるか否かを決定する。第1伝送データは、第1通信信号(S1)で伝送されるデータである。第2伝送データは、第2通信信号(S2)で伝送されるデータである。
この構成によれば、不用意に第2通信信号(S2)の伝送を停止してしまう可能性を低減することが可能となる。
第4の態様の通信システム(10)は、第3の態様において、第1伝送データは、映像データ及び音声データの少なくとも一方を含む。上記使用帯域情報は、映像データ及び/又は音声データが伝送されるチャネル数の情報である。
この構成によれば、通信(通話)数に基づいて使用帯域情報を推定することによって、第1通信信号(S1)で伝送される映像データ及び音声データのデータ量を増やすことが可能となる。
第5の態様の通信システム(10)は、第3の態様において、上記使用帯域情報は、予め設定された一定長さの期間に伝送される予定の第1伝送データのデータ量の情報である。
この構成によれば、実際に伝送される予定のデータ量に基づき、必要に応じて第1通信信号(S1)の上限レートを変化させることが可能となる。
第6の態様の通信システム(10)は、第1〜第5の何れかの態様において、停止制御部(203)は、停止期間(T0)の途中に、優先度の高い第2伝送データの伝送の要求があった場合に、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可する。優先度の高い第2伝送データの伝送は、複数の第2通信部(22、32)のうちの少なくとも一つから要求される。優先度の高い第2伝送データは、所定の閾値よりも優先度の高い第2伝送データである。
この構成によれば、第1通信信号(S1)による第1伝送データの伝送効率を高めつつ、優先度の高い第2伝送データの伝送が許容される。したがって、例えば火災報等の伝送を即座に行うことが可能となる。
第7の態様の通信システム(10)は、第1〜第6の何れかの態様において、停止制御部(203)は、停止期間(T0)の途中に、優先度の高い第2伝送データの伝送の要求があった場合に、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可する。優先度の高い第2伝送データの伝送は、複数の第2通信部(22、32)のうちの少なくとも一つから要求される。優先度の高い第2伝送データは、第1通信信号(S1)で伝送される第1伝送データの優先度よりも優先度の高い第2伝送データである。
この構成によれば、第1通信信号(S1)による第1伝送データの伝送効率を高めつつ、優先度の高い第2伝送データの伝送が許容される。したがって、例えば火災報等の伝送を即座に行うことが可能となる。
第8の態様の通信システム(10)は、第6又は第7の態様において、変更制御部(203)は、以下のように構成される。すなわち、変更制御部(203)は、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可するときに、第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式を、停止期間(T0)で用いられる変調方式よりも多値度の低い変調方式へ変更する。
この構成によれば、第2通信部(22、32)が、優先度の高い第2伝送データを含む第2通信信号(S2)を伝送する際には、第1通信信号(S1)の変調方式として、停止期間(T0)よりも多値度の低い変調方式が用いられる。したがって、第1通信信号(S1)の伝送エラー等が発生する可能性が低くなり、第1通信信号(S1)の伝送の信頼性の低下を抑制することが可能となる。
第9の態様の通信システム(10)では、第6〜第8の何れかの態様において、複数の第1通信部(21、31)は、3以上の第1通信部(21、31)である。通信システム(10)は、通信制限部(204)を更に備える。通信制限部(204)は、3以上の第1通信部(21、31)のうちの少なくとも2組の第1通信部の間で第1通信信号(S1)を用いた通信が行われている状態で、優先度の高い第2伝送データの伝送を許可するときに、以下の制御を行う。すなわち、通信制限部(204)は、少なくとも2組の第1通信部の間の通信のうちの、少なくとも1組の第1通信部の間の通信を停止させる。
この構成によれば、第2通信信号(S2)の伝送を一時的に再開した場合に、第1伝送路(61)で伝送される第1伝送データのデータ量が低減される。したがって、接続が維持される通信においては、第1通信信号(S1)の伝送エラー等が発生する可能性(エラー率)を低減することが可能となる。
第10の態様の通信システム(10)は、第1〜第9の何れかの態様において、複数の第1通信部(21、31)は、3以上の第1通信部である。3以上の第1通信部のうちの2つが組となって、第1通信信号(S1)を用いて互いに通信する。第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式は、組となる2つの第1通信部ごとに設定される。
この構成によれば、組となる第1通信部(21、31)のペア毎に、上限レートを設定することが可能となる。
第11の態様の通信システム(10)は、第1〜第10の何れかの態様において、複数の第2通信部(22、32)から第2通信信号(S2)を伝送させる動作期間において第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式は、以下のように設定される。すなわち、上記動作期間において第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式は、第1伝送路(61)上での第1通信信号(S1)の強度をシグナル、第2通信信号(S2)の強度をノイズとした場合のSN比に基づいて設定される。
この構成によれば、動作期間において、第1通信信号(S1)の伝送エラー等が発生する可能性(エラー率)を低減することが可能となる。
第12の態様の通信システム(10)は、第11の態様において、SN比は、動作期間において実測された、第1伝送路(61)上での第1通信信号(S1)の強度と第2通信信号(S2)の強度との比である。
この構成によれば、第1伝送路(61)上での第1通信信号(S1)の強度と第2通信信号(S2)の強度との実測値に基づいて、動作期間において第1通信信号(S1)の変調に用いられる変調方式が設定される。したがって、第1通信信号(S1)の伝送効率を高めつつ、第1通信信号(S1)の伝送エラー等が発生する可能性(エラー率)を低減することが可能となる。
第13の態様の通信システム(10)は、第1〜第12の何れかの態様において、複数の第2通信部(22、32)は、自動火災報知システムの複数の通信端末(1;2,3)にそれぞれ備えられる。
この構成によれば、自動火災報知システムと別の通信システムとを、互いの伝送路を近接させて(例えば同一シース内に)配線することが可能となり、配線コストを抑制しつつ上記別の通信システムの上限レートを向上させることが可能となる。
第14の態様の通信システム(10)は、第13の態様において、第2伝送路(62)は一対の電線を有する。通信システム(10)は、複数の通信端末(1)のうちの少なくとも一つ(2)は、停止期間(T0)中に一対の電線間に所定の試験電圧を印加する電圧印加部(24)を備える。複数の通信端末(1)のうちの別の一つ(3)は、試験電圧を検出する電圧検出部(300)と、複数の第1通信部(21、31)のうちの一つと、を備える。複数の通信端末(1)のうちの上記別の一つ(3)は電圧検出部(300)で検出される試験電圧の検出値が閾値を下回った場合に、異常の発生を示す第1伝送データを含む第1通信信号(S1)を第1通信部(31)によって送信する。
この構成によれば、停止期間(T0)であっても、第2伝送路(62)の異常を検知及び報知可能となる。
第15の態様の通信装置(1;2、3)は、第1〜第14の何れかの態様の通信システム(10)に用いられ、通信システム(10)における複数の第1通信部(21、31)のうちの一つと複数の第2通信部(22、32)のうちの一つとを備える。
この構成によれば、必要に応じて信号の伝送速度を高くすることが可能となる。