特許請求の範囲に記載のイノベーションはそれぞれが、いくつかの側面を有し、その単独の一つのみが、その望ましい属性に対して関与するわけではない。特許請求の範囲を制限することなく、本開示のいくつかの卓越した特徴の概要が以下に記載される。
本開示の一の側面は、キャリアアグリゲーションシステム用のフィルタである。フィルタは弾性表面波デバイスを含み、当該弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたリチウム系圧電層を含む。弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成される。フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるように構成される。
水晶基板は、20°から52°の範囲にあるカット角を有し得る。ここで、カット角はYカットX伝播の回転角である。
リチウム系圧電層は、タンタル酸リチウム層としてよい。弾性表面波デバイスは、波長がλの弾性表面波を生成するように構成される。タンタル酸リチウム層の厚さは、0.15λから1.4λの範囲にあり得る。タンタル酸リチウム層は、10°から50°の範囲にあるカット角を有し得る。
フィルタは、第1帯域が送信帯域であり第2帯域が受信帯域である送信フィルタとしてよい。フィルタは、第1帯域が信帯域であり第2帯域が送信帯域である受信フィルタとしてよい。
フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第3帯域に対応する他の高次スプリアスモードを抑制するように構成することができる。
弾性表面波デバイスは、横波(shear−horizontal)モードで動作するように構成することができる。弾性表面波デバイスは、3,800メートル/秒から4,200メートル/秒の範囲にある音速を有し得る。
リチウム系圧電層は水晶基板に接合することができる。
弾性表面波デバイスはさらに、リチウム系圧電層と水晶基板との間に配置された付加層を含む。付加層は、弾性表面波デバイスの品質係数を増加させるように構成される。
本開示の他の側面は、キャリアアグリゲーションシステム用のフィルタアセンブリである。フィルタアセンブリは、第1フィルタ及び第2フィルタを含む。第1フィルタは弾性表面波デバイスを含み、当該弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたリチウム系圧電層を含む。弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成される。第1フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるように構成される。第2フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域を通過させるように構成される。
第1フィルタを送信フィルタとしてよく、第2フィルタを受信フィルタとしてよい。第1フィルタを受信フィルタとしてよく、第2フィルタを送信フィルタとしてよい。フィルタアセンブリは、第1フィルタ及び第2フィルタを含むマルチプレクサを含む。
本開示の他の側面は、周波数マルチプレクシング回路を含むキャリアアグリゲーションシステムであり、当該周波数マルチプレクシング回路は、キャリアアグリゲーション信号が与えられる端子、及び当該周波数マルチプレクシング回路と通信するマルチプレクサを含む。マルチプレクサは、共通ノードに結合されたフィルタを含む。フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるように構成された第1フィルタを含む。第1フィルタは弾性表面波デバイスを含み、当該弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたリチウム系圧電層を含む。弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成される。
周波数マルチプレクシング回路はダイプレクサとしてよい。マルチプレクサはデュプレクサとしてよい。キャリアアグリゲーションシステムはさらに、電力増幅器、及び当該電力増幅器と第1フィルタとの間に結合されたスイッチを含む。
本開示の他の側面は、キャリアアグリゲーションシステム用のパッケージモジュールである。パッケージモジュールは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるように構成された第1フィルタと、キャリアアグリゲーション信号をフィルタリングするように構成された第2フィルタと、第1フィルタ及び第2フィルタを包囲するパッケージとを含む。第1フィルタは弾性表面波デバイスを含み、当該弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたタンタル酸リチウム層を含む。弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成される。
パッケージモジュールはさらに、第1フィルタ又は第2フィルタの少なくとも一方に無線周波数信号を与えるように構成された電力増幅器を含み得る。請求項のパッケージモジュールは、第1フィルタ及び第2フィルタに結合された多投スイッチを含み得る。多投スイッチは、共通ノードに結合された単投を有してよく、第1フィルタは、当該共通ノードにおいて第2フィルタに結合されてよい。多投スイッチは、第1フィルタに結合された第1投と、第2フィルタに結合された第2投とを有し得る。
本開示の他の側面は、キャリアアグリゲーション信号を受信するように構成されたアンテナと、当該アンテナと通信するマルチプレクサとを含む無線通信デバイスである。マルチプレクサは、共通ノードに結合されたフィルタを含む。フィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるように構成された第1フィルタと、キャリアアグリゲーション信号をフィルタリングするように構成された第2フィルタとを含む。第1フィルタは弾性表面波デバイスを含み、当該弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたタンタル酸リチウム層を含む。弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成される。
無線通信デバイスは携帯電話機としてよい。無線通信デバイスはさらに、共通ノードとアンテナとの間に結合された周波数マルチプレクシング回路を含む。周波数マルチプレクシング回路はダイプレクサ又はトライプレクサとしてよい。無線通信デバイスはさらに、共通ノードとアンテナとの間に結合されたアンテナスイッチを含み得る。アンテナは一次アンテナとしてよい。
本開示の他の側面は、キャリアアグリゲーション信号をフィルタリングする方法である。方法は、弾性表面波デバイスを含むフィルタによりキャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させることを含む。弾性表面波デバイスは、水晶基板、インターデジタルトランスデューサ電極、及び当該水晶基板と当該インターデジタルトランスデューサ電極との間に位置決めされたリチウム系圧電層を含む。方法はまた、第1フィルタにより、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制することも含む。
本開示を要約する目的で、本イノベーションの所定の側面、利点、及び新規な特徴がここに記載されている。理解すべきことだが、そのような利点のすべてが、任意の特定の実施形態により必ずしも達成されるわけではない。すなわち、本イノベーションは、ここに教示される一つの利点又は利点群を達成又は最適化する態様で、ここに教示又は示唆される他の利点を必ずしも達成することはなく具体化又は実行することができる。
所定の実施形態の以下の記載は、特定の実施形態の様々な記載を表す。しかしながら、ここに記載されるイノベーションは、例えば特許請求の範囲によって画定され及びカバーされる多数の異なる態様で具体化することができる。本記載において参照される図面では、同じ参照番号が同一の又は機能的に類似の要素を示し得る。理解されることだが、図面に例示される要素は必ずしも縮尺どおりではない。さらに理解されることだが、所定の実施形態は、図面に例示されるよりも多くの要素を含んでよく、及び/又は図面に例示される要素の部分集合を含んでよい。さらに、いくつかの実施形態は、2以上の図面からの特徴の任意の適切な組み合わせを組み入れてよい。
キャリアアグリゲーションシステムにおいて、弾性表面波フィルタの、相対的に高い品質係数(Q)及び高次スプリアスモード抑制を達成することは困難となり得る。
この困難へのいくつかのアプローチには、相対的に薄いタンタル酸リチウム(LT)層が相対的に高インピーダンスの基板(例えばシリコン基板、窒化アルミニウム基板又はサファイア基板)上に接合された弾性波デバイスが包含される。このようなアプローチは、相対的に高いQを達成し得る。しかしながら、このようなアプローチによれば、相対的に強い高次スプリアスモードが励起され得る。スプリアスモードにより、高い周波数範囲において特定の減衰を達成することが困難となり得る。これが、キャリアアグリゲーションシステムにおいて問題となり得る。例えば、デュプレクサ又はクワッドプレクサのようなマルチプレクサでは、このようなスプリアスモードを有するキャリアアグリゲーションアプリケーションのための減衰仕様を満たすことができないことがある。
本開示の複数の側面は、相対的に高いQを与えるとともに高次スプリアスモードを抑制するべく、タンタル酸リチウム層又はニオブ酸リチウム層のようなリチウム系圧電層、及び水晶基板を含む多層圧電基板を備えた弾性表面波デバイスに関する。弾性表面波デバイスは、水晶基板に接合された相対的に薄いタンタル酸リチウム層を含み得る。高次スプリアスモードは、結晶カット角への漏洩によって抑制することができる。水晶カット角は、R回転YX水晶において20°から52°の範囲にあり得る。タンタル酸リチウム層の厚さは、0.15λから1.4λの範囲にあり得る。ここで、λは、弾性表面波デバイスにより生成される弾性表面波の波長である。
所定の相対的に高インピーダンスの基板に代わりに水晶を基板として使用することにより、高次スプリアスモードを基板側に漏洩させることができる。これは、水晶の異方性の特徴に起因し得る。水晶は、限られた結晶カット角において高インピーダンス基板として振る舞い得る。したがって、水晶基板を覆うタンタル酸リチウム層を含む弾性表面波デバイスのQを、弾性波をタンタル酸リチウム層の中にトラップすることにより、他のデバイスと比べて改善することができる。所定の高インピーダンス基板(例えばシリコン基板、窒化アルミニウム基板又はサファイア基板)は、弾性波をタンタル酸リチウム層の中にトラップすることができる。しかしながら、同時に、高次のスプリアスモード応答も、そのような高インピーダンス基板を伴うタンタル酸リチウム層の中にトラップされ得る。したがって、そのような状況においては、高次スプリアス応答がフィルタ応答に現れることがある。水晶のバルク波速度は、シリコン、窒化アルミニウム及びサファイアのような他の高インピーダンス材料よりも低い。したがって、高次スプリアスモード応答が、他の高インピーダンス材料よりも水晶の中へと漏洩しやすくなり得る。高いモードのスプリアス応答に関連付けられたQ値は、ここに説明される原理及び利点に係る漏洩により、低下し得るので、スプリアスモードのフィルタ応答への影響を抑制することができる。周波数温度係数(TCF)もまた、タンタル酸リチウムのみを使用する場合と比べ、水晶を覆うタンタル酸リチウムを使用することによって改善することができる。
図1Aは、キャリアアグリゲーション信号に関連付けられた周波数帯域に対してフィルタが望ましくない減衰を伴う場合の伝達係数対周波数のグラフである。このグラフは、バンドN及びMが集約される2帯域のキャリアアグリゲーションのケースに対応する。例えば、キャリアアグリゲーション信号は、バンド1及びバンド3を集約することができる。ここで、バンド1は1920メガヘルツ(MHz)〜1980MHzの送信帯域及び2110MHz〜2170MHzの受信帯域を有し、バンド3は1710MHz〜1785MHzの送信帯域及び1805MHz〜1880MHzの受信帯域を有する。図1Aのグラフに対応するフィルタは、バンドN送信周波数帯域を通過させるように構成された送信フィルタである。図1Aに示されるように、このフィルタの周波数応答は、所定のアプリケーションに対し、バンドM受信周波数帯域に対応する不十分な減衰を与える。
図1Bは、キャリアアグリゲーション信号に関連付けられた周波数帯域に対してフィルタが望ましい減衰を伴う場合の伝達係数対周波数のグラフである。図1Bのグラフに対応するフィルタは、バンドN送信周波数帯域を通過させるように構成された送信フィルタである。図1Bに示されるように、このフィルタは、バンドM受信周波数帯域に対応する望ましい減衰を有する。したがって、図1Bのグラフに対応するフィルタは、バンドN及びMを備えたキャリアアグリゲーションのために使用することができる。
ここに説明される原理及び利点に係るフィルタは、図1Bに示された周波数応答と同様の周波数応答を達成することができる。図1Aのグラフは、上述した相対的に高インピーダンスの基板に接合されたタンタル酸リチウム層に関連付けられた従前のアプローチの欠点を例示する。
図1A及び1Bが送信フィルタの周波数応答を例示するが、ここに説明される任意の適切な原理及び利点は、受信フィルタに実装することもできる。バンドN及びMを備えたキャリアアグリゲーション信号にとって、バンドN送信フィルタにおいてバンドM受信周波数帯域には相対的に高い減衰を有することが望ましい。同様に、バンドN及びMを備えたキャリアアグリゲーション信号にとって、バンドN受信フィルタにおいてバンドM送信周波数帯域には相対的に高い減衰を有することが望ましい。
図1A及び1Bは、2帯域キャリアアグリゲーションケースに関する。ここに説明される任意の適切な原理及び利点は、3以上の帯域を備えたキャリアアグリゲーションケースに当てはめることができる。
図2Aは、3つのキャリアを有するキャリアアグリゲーション信号に関連付けられた周波数帯域に対してフィルタが望ましくない減衰を伴う場合の伝達係数対周波数のグラフである。このグラフは、バンドN、M及びPが集約される3帯域キャリアアグリゲーションケースに対応する。例えば、キャリアアグリゲーション信号は、バンド1、バンド3及びバンド7を集約することができる。バンド1は1920MHz〜1980MHzの送信帯域及び2110MHz〜2170MHzの受信帯域を有し、バンド3は1710MHz〜1785MHzの送信帯域及び1805MHz〜1880MHzの受信帯域を有し、バンド7は2500MHz〜2570MHzの送信帯域及び2620MHz〜2690MHzの受信帯域を有し得る。図2Aのグラフに対応するフィルタは、バンドN送信周波数帯域を通過させるように構成された送信フィルタである。図2Aに示されるように、このフィルタの周波数応答は、所定のアプリケーションに対し、バンドM受信周波数帯域及びバンドP受信周波数帯域に対応する不十分な減衰を与え得る。
図2Bは、3つのキャリアを有するキャリアアグリゲーション信号に関連付けられた周波数帯域に対してフィルタが望ましい減衰を伴う場合の伝達係数対周波数のグラフである。図2Bのグラフに対応するフィルタは、バンドN送信周波数帯域を通過するように構成された送信フィルタである。図2Bに示されるように、このフィルタは、バンドM受信周波数帯域及びバンドP受信周波数帯域に対応する望ましい減衰を有する。ここに説明される原理及び利点に係るフィルタは、図2Bに示される周波数応答と同様の周波数応答を達成することができる。
バンドN、M及びPを備えたキャリアアグリゲーション信号にとって、バンドN送信フィルタにおいては、バンドM受信周波数帯域及びバンドP受信周波数帯域に対する相対的に高い減衰を有することが望ましい。同様に、バンドN、M及びPを備えたキャリアアグリゲーション信号にとって、バンドN受信フィルタにおいては、バンドM送信周波数帯域及びバンドP送信周波数帯域に対する相対的に高い減衰を有することが望ましい。
図1A及び2Bに示されたものと同様の周波数応答を達成するべく、フィルタは、ここに開示される弾性表面波デバイスを含み得る。さらに、ここに開示される弾性表面波デバイスは、任意の他の適切な周波数応答を有するフィルタにも実装することができる。
図3Aは、一実施形態に係る弾性表面波デバイス10の断面図である。弾性表面波デバイス10は、水晶基板12、厚さH1を有するタンタル酸リチウム(LiTaO3)層14、並びに厚さh及びピッチLを有するインターデジタルトランスデューサ(IDT)電極16を含む。弾性表面波デバイス10は、キャリアアグリゲーション信号をフィルタリングするべく配列されたフィルタに実装することができる。このようなフィルタは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるとともに、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制することができる。弾性表面波デバイス10は、横波(shear−horizontal(SH))モードで動作するように構成することができる。
水晶基板12は、20°から52°の範囲にあるカット角を有し得る。ここで使用されるように、N°の「カット角」とは、YカットX伝播圧電層におけるN°回転Yカットを称する。したがって、オイラー角(φ,θ,ψ)を有する圧電層にとって、度単位の「カット角」はθマイナス90°となり得る。弾性表面波デバイスは、波長λを有する弾性表面波を生成し、タンタル酸リチウム層14の厚さH1は、0.15λから1.4λの範囲にあり得る。いくつかの例において、タンタル酸リチウム層14の厚さH1は、0.2λから1.2λの範囲にあり得る。タンタル酸リチウム層14は、10°から50°の範囲にあるカット角を有し得る。図8Cに示されるように、このカット角の範囲は、望ましいk2値を与え得る。いくつかのアプリケーションにおいて、タンタル酸リチウム層14は、40°から50°の範囲にあるカット角を有し得る。タンタル酸リチウム層14は水晶基板12に接合することができる。
図3B〜3Eは、弾性表面波デバイス10の様々なタンタル酸リチウム層厚さH1に対する水晶カット角掃引に関連付けられたグラフである。これらのグラフは、タンタル酸リチウム層14が厚さH1を有する42°Y−XのLTであり、及び水晶基板12がオイラー角(0,θ,0)を有する弾性表面波デバイス10に対応する。タンタル酸リチウム層14の厚さH1は、λの単位で表される。ここで、λは、弾性表面波デバイス10により生成される弾性表面波の波長である。λは「L」によって表すことができる。これらのグラフは、カット角が20°から52°の範囲にある水晶が望ましいことを示し、そのカット角は、110°から142°の範囲のθに対応する。図3Bは、タンタル酸リチウム層14の様々な厚さに対し、反共振時の品質係数(Qp)がθ=130°付近にピークを有することを示す。図3Cは、タンタル酸リチウム層14の様々な厚さに対し、共振時の品質係数(Qs)がθ =130°付近にピークを有することを示す。図3Dは、電気機械結合係数k2が、タンタル酸リチウム層14の厚さH1が0.3λ〜0.5λ付近のときに最大となることを示す。図3Eは、タンタル酸リチウム層14の様々な厚さH1に対してTCF対θをプロットする。
図3F〜3Iは、弾性表面波デバイス10の様々なタンタル酸リチウム層厚さH1に対する水晶カット角掃引に関連付けられたグラフである。これらのグラフは、図3B〜3Eとは異なる水晶伝播角度に対応する。図3F〜3Iは、タンタル酸リチウム層14が厚さH1を有する42°Y−XのLTであり、及び水晶基板12がオイラー角(0,θ,90°)を有する弾性表面波デバイス10に対応する。図3Fは、タンタル酸リチウム層14が薄いほどQpが相対的に安定することを示す。図3Gは、タンタル酸リチウム層14が相対的に薄いほどQsが大きくなることを示す。図3Hは、タンタル酸リチウム層14の厚さH1が0.3λ付近のときに電気機械結合係数k2が最大となることを示す。図3Hはまた、タンタル酸リチウム層14が相対的に薄いほど電気機械結合係数k2が低くなることも示す。図3Iは、水晶基板12の伝播角度が90°のときに、水晶基板12の伝播角度が0°のときと比べてTCFが改善され得ることを示す。
図3J〜3Kは、弾性表面波デバイス10に対するタンタル酸リチウムカット角掃引に関連付けられたグラフである。これらのグラフは、タンタル酸リチウム層14のオイラー角が(0,θ,0)かつ厚さH1=0.3λであり、水晶基板12のオイラー角が(0,132,90)であり、及びIDT電極16が厚さ0.08λのアルミニウムを有する弾性表面波デバイス10に対応する。図3Jは、図3Aの弾性表面波デバイス10に対する品質係数対タンタル酸リチウムカット角のグラフである。図3Kは、図3Aの弾性表面波デバイスに対するk2対タンタル酸リチウムカット角のグラフである。図3Kに示されるように、k2は、ほぼθ=120°にピークを有し得る。図3Kは、タンタル酸リチウム層14のカット角が約90°から150°の範囲にあることが好ましいことを示す。
図3Aに戻ると、IDT電極16は、アルミニウムIDT電極としてよい。IDT電極材料は、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、又はこれらの任意の適切な組み合わせを含み得る。例えば、IDT電極16は、所定のアプリケーションにおいてアルミニウム及びモリブデンを含み得る。
図4は、弾性表面波デバイス17の断面図である。弾性表面波デバイス17は、シリコン基板18、厚さH1を有するタンタル酸リチウム層14、並びに厚さH及びピッチLを有するIDT電極16を含む。
図5は、弾性表面波デバイス19の断面図である。弾性表面波デバイス19は、タンタル酸リチウム層14、並びに厚さH及びピッチLを有するIDT電極16を含む。タンタル酸リチウム層14は、底面反射効果が無視できる程度に十分厚くすることができる。例えば、所定のアプリケーションにおいて、タンタル酸リチウム層14の厚さは20λよりも大きい。
図6A〜6Cは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスの特性を比較するグラフである。これらのグラフは、水晶基板12が42°Y−Xの水晶であり、タンタル酸リチウム層14がλ(λ=2マイクロメートル(um))の厚さH1を有する42°Y−XのLTであり、並びにIDT電極16がアルミニウムであって0.08λの厚さH及びλのピッチLを有する弾性表面波デバイス10に対応する。これらのグラフはまた、タンタル酸リチウム層14がλ(λ=2um)の厚さH1を有する42°Y−XのLTであり、並びにIDT電極16がアルミニウムであって0.08λの厚さH及びλのピッチLを有する弾性表面波デバイス17にも対応する。これらのグラフはまた、タンタル酸リチウム層14が42°Y−XのLTであり、並びにIDT電極16がアルミニウムであって0.08λ(λ=2um)の厚さH及びλのピッチLを有する弾性表面波デバイス19にも対応する。
図6Aは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対する周波数応答のグラフである。図6Aは、弾性表面波デバイス17が、高次スプリアスモードに対して相対的に強い応答を有することを示す。図6Aはまた、弾性表面波デバイス10が、高次スプリアス応答を相対的に有していないことを示す。
図6Bは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対するk2対周波数のグラフである。図6Bは、弾性表面波デバイス19に対して電気機械結合係数k2が約9.6%であり、弾性表面波デバイス10に対してk2が約10.0%であり、及び弾性表面波デバイス17に対してk2が約10.2%であることを示す。
図6Cは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対する品質係数対周波数のグラフである。図6Cは、弾性表面波デバイス19に対してQsが約560であり、弾性表面波デバイス10に対してQsが約470であり、及び弾性表面波デバイス17に対してQsが約560であることを示す。図6Cはまた、弾性表面波デバイス19に対してQpが約938であり、弾性表面波デバイス10に対してQpが約1900であり、及び弾性表面波デバイス17に対してQpが約2100であることも示す。
図7Aは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対する、図6A〜6Cのグラフに対応する透過特性のグラフである。図7Aは、弾性表面波デバイス17が、高次スプリアスモードに対して相対的に強い応答を有することと、弾性表面波デバイス10が、高次スプリアス応答を相対的に有していないこととを示す。
図7Bは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対する、図6A〜6Cのグラフに対応する反射特性のグラフである。
図8A、8B及び8Cは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対して掃引されたタンタル酸リチウムカット角のグラフである。これらのグラフは、タンタル酸リチウムカット角が変更される点を除き、図6A〜6Cのグラフに対応する弾性表面波デバイスに対応する。図8A及び8Bは、所定のタンタル酸リチウムカット角が、高いQs及びQpの値をもたらし得ることを示す。図8Bは、利用可能なタンタル酸リチウムカット角が、バルク放射によって制限され得ることを例示する。図8Cは、低いカット角が高い電気機械結合係数をもたらし得ることを示す。
図9A、9B及び9Cは、図3Aの弾性表面波デバイス10に対する水晶カット掃引のグラフである。これらのグラフは、水晶カット角が変更される点を除き、図6A〜6Cのグラフに対応する弾性表面波デバイス10に対応する。図8A及び8Bは、所定の水晶カット角が、高いQs及びQpの値をもたらし得ることを示す。これらのグラフは、20°から52°の範囲にある水晶カット角が望ましいことを示す。
図10A〜10Eは、図3Aの弾性表面波デバイス10に対するタンタル酸リチウム厚さ掃引に関連付けられたグラフである。これらのグラフは、タンタル酸リチウム厚さH1が変更される点を除き、図6A〜6Cのグラフに対応する弾性表面波デバイス10に対応する。図10Aは、周波数応答におけるΔZSH及びΔZSPを例示する。図10Bは、インピーダンス比ΔZSH及びΔZSP対タンタル酸リチウム層14の厚さを示す。図10Bは、1.4λ未満のタンタル酸リチウム厚さH1が望ましいことを示す。図10Cは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスのQs対タンタル酸リチウム層厚さのグラフである。図10Dは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスのQs対タンタル酸リチウム層厚さのグラフである。図10Eは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスの、タンタル酸リチウム層のk2対厚さのグラフである。図10Eは、少なくとも0.15λを超えるタンタル酸リチウム厚さH1が望ましいことを示す。したがって、これらのグラフは、0.15λから1.4λの範囲にあるタンタル酸リチウム厚さH1が望ましいことを示す。タンタル酸リチウム厚さH1が1.4λを上回ると、ΔZSH及びΔZSPに対するインピーダンス比は望ましくない。図10C〜10Eにおいて、タンタル酸リチウム層14に対して一定厚さを有する図5の弾性表面波デバイス19に対応するプロットが使用されたのは、弾性表面波デバイス19に対するタンタル酸リチウム層14が、底面反射効果が無視できる程度に十分厚いからである。
図3Aの弾性表面波デバイス10の水晶基板12の厚さは、例えば、695マイクロメートル(um)未満となり得る。水晶基板12の厚さの上限は、6インチ水晶ウェハに対するSEMI標準規格のようなウェハ曲げ仕様に従い得る。水晶基板12の厚さは少なくともλとしてよい。したがって、水晶基板12の厚さは、λから695umの範囲にあり得る。ここで、λは、弾性表面波デバイス10により生成される弾性表面波の波長である。
図11A〜11Cは、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対するタンタル酸リチウム伝播角度掃引に関連付けられたグラフである。これらのグラフは、伝播角度が変更される点を除き、図6A〜6Cのグラフに対応する弾性表面波デバイスに対応する。図3A、4及び5のタンタル酸リチウム層は、オイラー角φ、θ及びψを有し得る。第2オイラー角θは、上述したカット角プラス90°である。第3オイラー角ψは伝播角度である。図11Aは、Qs対伝播角度のグラフである。図11Bは、Qp対伝播角度のグラフである。図11A及び11Bは、図3Aの弾性表面波デバイス10のQs及びQpが、ψが回転され(例えば増加され)ても、それほど減少しないことを示す。したがって、図3Aの弾性表面波デバイス10のタンタル酸リチウム層14は、10°から10°の範囲にある伝播角度ψを有し得る。図11Cは、k2対伝播角度のグラフである。
図3Aの弾性表面波デバイス10の水晶層12は、オイラー角φ,θ及びψを有し得る。第2オイラー角θは、上述したカット角プラス90°である。第3オイラー角ψは伝播角度である。カット角40°(すなわちθ=130°)及び44°(すなわちθ=134°)の水晶基板を備えた弾性表面波デバイス10のQs、Qp及びk2を分析することにより、水晶基板12のψが−10°から10°の範囲にあることが望ましいことが示される。カット角44°の水晶基板を備えた弾性表面波デバイス10のQs、Qp及びk2を分析することにより、水晶基板12のφが、所定の例において−10°から10°の範囲にあることが望ましいことが示される。
図12は、図3A、4及び5の弾性表面波デバイスに対する音速対タンタル酸リチウム層厚さのグラフである。音速は、3800メートル/秒から4200メートル/秒の範囲にある。音速は、横波(SH)モードに対応する。したがって、ここに説明される弾性表面波デバイスは、SHモードにおいて動作し得る。
図13は、一実施形態に係る弾性表面波デバイス20の断面図である。弾性表面波デバイス20は、弾性表面波デバイス20が、IDT電極16を覆う二酸化シリコン層22を含む点を除き、図3Aの弾性表面波デバイス10と同様である。二酸化シリコン層22は厚さH2を有する。二酸化シリコン層22は、弾性表面波デバイス20のTCFを、図3Aの弾性表面波デバイス10と比べてゼロ近くにすることができる。弾性表面波デバイス20は、温度補償弾性表面波デバイスと称してよい。いくつかの例において、二酸化シリコン層22の代わりに、異なる温度補償層を実装することができる。そのような温度補償層は、正の周波数温度係数を有し得る。これにより、タンタル酸リチウム層14のTCFを補償することができる。代替的な温度補償層は、例えば、二酸化テルル(TeO2)及び/又はシリコンオキシフルオライド(SiOF)を含み得る。
図14A〜14Dは、図13の弾性表面波デバイス20のパラメータのグラフである。これらのグラフは、水晶基板12が42°Y−Xの水晶であり、タンタル酸リチウム層14がλ(λ=2um)の厚さH1を有する42°Y−XのLTであり、IDT電極16がアルミニウムであって0.08λの厚さH及びλのピッチLを有し、並びに二酸化シリコン層22が厚さH2を有する弾性表面波デバイス20に対応する。これらのグラフは、弾性表面波デバイス20のパラメータ対二酸化シリコン層22の厚さH2の曲線を含む。
図14Aは、図13の弾性表面波デバイス20と、水晶基板が存在しない同様の弾性表面波デバイスとの、二酸化シリコン厚さ対TCFのグラフである。図14Aは、二酸化シリコン層22の厚さH2が大きくなると、周波数温度係数(TCF)が改善され得る(すなわちゼロ近くになり得る)ことを示す。
図14Bは、図13の弾性表面波デバイス20と、水晶基板が存在しない同様の弾性表面波デバイスと、水晶基板の代わりにシリコン基板が存在する同様の弾性表面波デバイスとに対する二酸化シリコン厚さ対Qsのグラフである。
図14Cは、図13の弾性表面波デバイス20と、水晶基板が存在しない同様の弾性表面波デバイスと、水晶基板の代わりにシリコン基板が存在する同様の弾性表面波デバイスとに対する二酸化シリコン厚さ対Qpのグラフである。
図14Dは、図13の弾性表面波デバイス20と、水晶基板が存在しない同様の弾性表面波デバイスと、水晶基板の代わりにシリコン基板が存在する同様の弾性表面波デバイスとに対する二酸化シリコン厚さ対k2のグラフである。
図15は、一実施形態に係る弾性表面波デバイス25の断面図である。弾性表面波デバイス25は、弾性表面波デバイス25が水晶基板12とタンタル酸リチウム層14との間に配置された付加層26を含む点を除き、図3Aの弾性表面波デバイス10と同様である。付加層26は、LT/水晶境界での反射を高めて品質係数を改善するべく、相対的に高インピーダンス材料とされ得る。付加層26は、水晶基板12とタンタル酸リチウム層14との間の接着を補強することができる。付加層26は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)層、窒化シリコン(SiN)層、酸化アルミニウム(AlO)層、炭化シリコン(SiC)層、酸窒化シリコン、サファイア層、ダイアモンド層等としてよい。
ここに説明される所定の実施形態が、タンタル酸リチウム層を含む弾性表面波デバイスに関するにもかかわらず、ここに説明される任意の適切な原理及び利点は、タンタル酸リチウム層の代わりに任意の他の適切なリチウム系圧電層を含む弾性表面波デバイスにも当てはめることができる。リチウム系圧電層は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)及びタンタル酸リチウムを含む。
図16Aは、一実施形態に係る弾性表面波デバイス30の断面図である。弾性表面波デバイス30は、弾性表面波デバイス30がタンタル酸リチウム層14の代わりにニオブ酸リチウム層32を含む点を除き、図3Aの弾性表面波デバイス10と同様である。
図16Bは、図3Aの弾性表面波デバイス10と、図16Aの弾性表面波デバイス30との、電気機械結合係数k2対リチウム系圧電層カット角を比較するグラフである。グラフは、h=0.08λ及びH1=0.3λを有する弾性表面波デバイス10及び30に対応する。このグラフの一方の曲線は、オイラー角(0,θ,0)を有するタンタル酸リチウム層14とオイラー角(0, 132、90)を有する水晶基板12とを備えた図3Aの弾性表面波デバイス10に対応する。このグラフの他方の曲線は、オイラー角(0,θ,0)を有するニオブ酸リチウム層32とオイラー角(0, 132、90)を有する水晶基板12とを備えた図16Aの弾性表面波デバイス30に対応する。図16Bに示されるように、図16Aの弾性表面波デバイス30は、図3Aの弾性表面波デバイス10によりも良好なk2を有し得る。図16Bは、約70°から155°の範囲にあるθが、弾性表面波デバイス30の所定の実施形態において好ましいことを示す。
ここに説明される所定の実施形態が、水晶基板を含む弾性表面波デバイスに関するにもかかわらず、ここに説明される任意の適切な原理及び利点は、水晶基板の代わりに任意の他の適切な基板を含む弾性表面波デバイスにも当てはめることができる。他の適切な基板は、弾性波をリチウム系圧電層の中にトラップするように配列するとともに、一以上の高次スプリアスモード応答が当該他の基板に漏洩するのを許容するように配列することもできる。
弾性表面波デバイスは、フィルタに含めることができる。一以上の弾性表面波デバイスを含むフィルタを、弾性表面波フィルタと称することができる。複数の弾性表面波デバイスが、直列共振器及びシャント共振器として配列されて一のラダー型フィルタを形成する。いくつかの例において、一のフィルタが、複数の弾性表面波共振器、及び一以上の他の共振器(例えば一以上のバルク弾性波共振器、一以上のラム波共振器、一以上の弾性境界波共振器等、又はこれらの任意の適切な組み合わせ)を含み得る。
上述したように、ここに開示される弾性表面波デバイスは、キャリアアグリゲーション信号の第1帯域を通過させるとともに、キャリアアグリゲーション信号の第2帯域に対応する高次スプリアスモードを抑制するように構成されたフィルタに実装することができる。キャリアアグリゲーションシステムは、2以上のキャリアを含むキャリアアグリゲーション信号を処理することができる。例えば、キャリアアグリゲーションシステムは、アンテナにより受信されたキャリアアグリゲーション信号を処理することができる。他の例として、キャリアアグリゲーションシステムは、アンテナにより送信されるキャリアアグリゲーション信号を生成することができる。そのようなフィルタを含み得るキャリアアグリゲーションシステムの例が、図17A〜17Dを参照して説明される。
図17Aは、キャリアアグリゲーションシステム40の模式図である。例示のキャリアアグリゲーションシステム40は、電力増幅器42A及び42B、スイッチ43A及び43B、デュプレクサ44A及び44B、スイッチ45A及び45B、ダイプレクサ46、並びにアンテナ47を含む。電力増幅器42A及び42Bはそれぞれが、異なるキャリアに関連付けられた増幅済みRF信号を送信し得る。スイッチ43Aは、帯域選択スイッチとしてよい。スイッチ43Aは、電力増幅器42Aの出力を、デュプレクサ44Aの選択されるデュプレクサに結合し得る。各デュプレクサが、送信フィルタ及び受信フィルタを含み得る。デュプレクサ44A及び44Bのフィルタのいずれかが、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装され得る。スイッチ45Aは、デュプレクサ44Aの選択されるデュプレクサをダイプレクサ46に結合することができる。ダイプレクサ46は、スイッチ45A及び45Bにより与えられたRF信号を組み合わせ、アンテナ47により送信されるキャリアアグリゲーション信号にすることができる。ダイプレクサ46は、アンテナ47により受信されたキャリアアグリゲーション信号の異なる周波数帯域を分離することができる。ダイプレクサ46は、周波数領域マルチプレクサの一例である。他の周波数領域マルチプレクサは、トライプレクサを含む。トライプレクサを含むキャリアアグリゲーションシステムは、3つのキャリアに関連付けられたキャリアアグリゲーション信号を処理することができる。スイッチ45A及び45Bと、デュプレクサ44A及び44Bの選択される受信フィルタとが、周波数帯域が分離されたRF信号を、それぞれの受信経路に与えることができる。
図17Bは、キャリアアグリゲーションシステム50の模式図である。例示のキャリアアグリゲーションシステム50は、電力増幅器42A及び42B、低ノイズ増幅器52A及び52B、スイッチ53A及び53B,フィルタ54A及び54B、ダイプレクサ46、並びにアンテナ47を含む。電力増幅器42A及び42Bはそれぞれが、異なるキャリアに関連付けられた増幅済みRF信号を送信し得る。スイッチ53Aは、送信/受信スイッチとしてよい。スイッチ53Aはフィルタ54Aを、送信モードにおいて電力増幅器42Aの出力に結合し、受信モードにおいて低ノイズ増幅器52Aの入力に結合することができる。フィルタ54A及び/又はフィルタ54Bは、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。ダイプレクサ46は、スイッチ53A及び53Bにより与えられた電力増幅器42A及び42BからのRF信号を組み合わせ、アンテナ47により送信されるキャリアアグリゲーション信号にすることができる。ダイプレクサ46は、アンテナ47が受信したキャリアアグリゲーション信号の異なる周波数帯域を分離することができる。スイッチ53A及び53B、並びにフィルタ54A及び54Bは、分離された周波数帯域を備えたRF信号を、低ノイズ増幅器52A及び52Bそれぞれに与えることができる。
図17Cは、電力増幅器とアンテナとの間の信号経路にマルチプレクサを含むキャリアアグリゲーションシステム60の模式図である。例示のキャリアアグリゲーションシステム60は、低帯域経路、中間帯域経路及び高帯域経路を含む。所定のアプリケーションにおいて、低帯域経路が、周波数が1GHz未満の無線周波数信号を処理し、中間帯域経路が、周波数が1GHzと2.2GHzとの間の無線周波数信号を処理し、高帯域経路が、周波数が2.2GHzを上回る無線周波数信号を処理することができる。
ダイプレクサ46は、RF信号経路とアンテナ47との間に含めることができる。ダイプレクサ46は、周波数が相対的に離れている無線周波数信号を周波数マルチプレクシングすることができる。ダイプレクサ46には、相対的に低損失の受動回路素子を実装することができる。ダイプレクサ46は、キャリアアグリゲーション信号のキャリアを、(送信のために)組み合わせ、(受信のために)分離することができる。
例示のように、低帯域経路は、低帯域無線周波数信号を増幅するように構成された電力増幅器42Aと、帯域選択スイッチ43Aと、マルチプレクサ64Aとを含む。帯域選択スイッチ43Aは、電力増幅器42Aの出力を、マルチプレクサ64Aの選択される送信フィルタに電気的に接続することができる。選択される送信フィルタは、通過帯域が電力増幅器42Aの出力信号の周波数に対応する帯域通過フィルタとしてよい。マルチプレクサ64Aは、任意の適切な数の送信フィルタ、及び任意の適切な数の受信フィルタを含み得る。送信フィルタの一以上、及び/又は受信フィルタの一以上は、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。マルチプレクサ64Aは、受信フィルタと同じ数の送信フィルタを有し得る。いくつかの例において、マルチプレクサ64Aは、受信フィルタとは異なる数の送信フィルタを有し得る。
図17Cに例示されるように、中間帯域経路は、中間帯域無線周波数信号を増幅するように構成された電力増幅器42Bと、帯域選択スイッチ43Bと、マルチプレクサ64Bとを含む。帯域選択スイッチ43Bは、電力増幅器42Bの出力をマルチプレクサ64Bの選択される送信フィルタに電気的に接続することができる。選択される送信フィルタは、通過帯域が電力増幅器42Bの出力信号の周波数に対応する帯域通過フィルタとしてよい。マルチプレクサ64Bは、任意の適切な数の送信フィルタ、及び任意の適切な数の受信フィルタを含み得る。送信フィルタの一以上、及び/又は受信フィルタの一以上は、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。マルチプレクサ64Bは、受信フィルタと同じ数の送信フィルタを有し得る。いくつかの例において、マルチプレクサ64Bは、受信フィルタとは異なる数の送信フィルタを有し得る。
例示のキャリアアグリゲーションシステム60において、高帯域経路は、高帯域無線周波数信号を増幅するように構成された電力増幅器42Cと、帯域選択スイッチ43Cと、マルチプレクサ64Cとを含む。帯域選択スイッチ43Cは、電力増幅器42Cの出力を、マルチプレクサ64Cの選択される送信フィルタに電気的に接続することができる。選択される送信フィルタは、通過帯域が電力増幅器42Cの出力信号の周波数に対応する帯域通過フィルタとしてよい。マルチプレクサ64Cは、任意の適切な数の送信フィルタ、及び任意の適切な数の受信フィルタを含み得る。送信フィルタの一以上、及び/又は受信フィルタの一以上は、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。マルチプレクサ64Cは、受信フィルタと同じ数の送信フィルタを有し得る。いくつかの例において、マルチプレクサ64Cは、受信フィルタとは異なる数の送信フィルタを有し得る。
選択スイッチ65は、中間帯域経路又は高帯域経路からの無線周波数信号をダイプレクサ46に選択的に与えることができる。したがって、キャリアアグリゲーションシステム60は、低帯域と高帯域との組み合わせ又は低帯域と中間帯域との組み合わせのいずれかを備えたキャリアアグリゲーション信号を処理することができる。
図17Dは、電力増幅器とアンテナとの間の信号経路にマルチプレクサを含むキャリアアグリゲーションシステム70の模式図である。キャリアアグリゲーションシステム70は、キャリアアグリゲーションシステム70がスイッチプレクシング特徴部を含む点を除き、図17Cのキャリアアグリゲーションシステム60と同様である。スイッチプレクシングは、ここに説明される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。
スイッチプレクシングは、オンデマンドマルチプレクシングを実装することができる。いくつかの無線周波数システムは、大部分の時間(例えば当該時間の約95%)単一キャリアモードで、小部分の時間(例えば当該時間の約5%)キャリアアグリゲーションモードで動作することができる。スイッチプレクシングは、無線周波数システムが大部分の時間動作し得る単一キャリアモードにおける負荷を、共通ノードに固定接続を有するフィルタを含むマルチプレクサと比べて低減することができる。このような負荷低減は、マルチプレクサに含まれる相対的に多数のフィルタが存在する場合に顕著となり得る。
例示のキャリアアグリゲーションシステム70において、デュプレクサ64B及び64Cは、スイッチ75によってダイプレクサ46に選択的に結合される。スイッチ75は、2以上の投が同時にアクティブになり得るマルチクローズスイッチとして構成される。スイッチ75の多投を同時にアクティブにすることにより、キャリアアグリゲーション信号の送信及び/又は受信を可能とすることができる。スイッチ75はまた、単投が単一キャリアモード中にアクティブになるようにしてよい。例示のように、デュプレクサ44Aの各デュプレクサが、スイッチ75の別個の投に結合される。同様に、例示のデュプレクサ44Bは、スイッチ75の別個の投に結合された複数のデュプレクサを含む。代替的に、図17Dに例示されるようにデュプレクサがスイッチ75の各投に結合される代わりに、一のマルチプレクサの一以上の個別フィルタを、当該マルチプレクサと共通ノードとの間に結合されたスイッチの専用投に結合してもよい。例えば、いくつかのアプリケーションにおいて、そのようなスイッチは、例示のスイッチ75の2倍の数の投を有し得る。
ここに説明されるフィルタは、様々なパッケージモジュールに実装することができる。ここに説明されるフィルタの任意の適切な原理及び利点が実装可能ないくつかのパッケージモジュールの例が、ここで説明される。図18A及び18Bは、所定の実施形態に係るパッケージモジュールを例示する模式的なブロック図である。
図18Aは、電力増幅器42と、スイッチ83と、一以上の実施形態に係るフィルタ84とを含むモジュール80の模式的なブロック図である。モジュール80は、例示の要素を包囲するパッケージを含み得る。電力増幅器42と、スイッチ83と、フィルタ84とは、共通のパッケージ基板に配置することができる。パッケージ基板は、例えば積層基板としてよい。スイッチ83は多投無線周波数スイッチとしてよい。スイッチ83は、電力増幅器42の出力を、フィルタ84の選択されるフィルタに電気的に結合することができる。フィルタ84は、任意の適切な数の弾性表面波フィルタを含み得る。フィルタ84の一以上のフィルタは、ここに開示される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。
図18Bは、電力増幅器42A及び42Bと、スイッチ83A及び83Bと、一以上の実施形態に係るフィルタ84A及び84Bと、アンテナスイッチ88とを含むモジュール85の模式的なブロック図である。モジュール85は、モジュール85が付加RF信号経路を含み、アンテナスイッチ88がフィルタ84A又はフィルタ84Bからの信号をアンテナノードに選択的に結合するべく配列される点を除き、図18Aのモジュール80と同様である。フィルタ84A及び/又は84Bの一以上フィルタは、ここに開示される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。付加RF信号経路は、付加電力増幅器42Bと、付加スイッチ83Bと、付加フィルタ84Bとを含む。異なるRF信号経路を、異なる周波数帯域及び/又は異なる動作モード(例えば異なる電力モード、異なる信号伝達モード等)に関連付けてよい。
図19は、一以上の実施形態に係るフィルタ93を含む無線通信デバイス90の模式的なブロック図である。フィルタ93の一以上の弾性表面波フィルタは、ここに開示される任意の適切な原理及び利点に従って実装することができる。無線通信デバイス90は、任意の適切な無線通信デバイスとしてよい。例えば、無線通信デバイス90は、スマートフォンのような携帯電話機としてよい。例示のように、無線通信デバイス90は、アンテナ91、RFフロントエンド92、送受信器94、プロセッサ95及びメモリ96を含む。アンテナ91は、RFフロントエンド92により与えられたRF信号を送信することができる。このようなRF信号は、キャリアアグリゲーション信号を含み得る。アンテナ91は、受信したRF信号を、処理を目的としてRFフロントエンド92に与え得る。このようなRF信号は、キャリアアグリゲーション信号を含み得る。
RFフロントエンド92は、一以上の電力増幅器、一以上の低ノイズ増幅器、RFスイッチ、受信フィルタ、送信フィルタ、デュプレクスフィルタ、マルチプレクサ、周波数マルチプレクシング回路、又はのこれらの任意の適切な組み合わせを含み得る。RFフロントエンド92は、任意の適切な通信規格に関連付けられたRF信号を送信及び受信することができる。ここに開示される弾性表面波デバイス及び/又はフィルタのいずれも、RFフロントエンド92のフィルタ93に実装することができる。
送受信器94は、増幅及び/又は他の処理を目的としてRF信号をRFフロントエンド92に与えることができる。送受信器94はまた、RFフロントエンド92の低ノイズ増幅器が与えるRF信号を処理することができる。送受信器94はプロセッサ95と通信する。プロセッサ95は、ベース帯域プロセッサとしてよい。プロセッサ95は、無線通信デバイス90のための任意の適切なベース帯域処理機能を与えることができる。メモリ96には、プロセッサ95がアクセス可能である。メモリ96は、無線通信デバイス90のための任意の適切なデータを記憶することができる。
ここに説明される原理及び利点はいずれも、上述されたシステム、モジュール、フィルタ、マルチプレクサ、無線通信デバイス及び方法だけにではなく、他の適切なシステム(例えばキャリアアグリゲーションシステム)、モジュール、チップ、弾性表面波デバイス、フィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサ、無線通信デバイス及び方法にも当てはめることができる。上述した様々な実施形態の要素及び動作は、さらなる実施形態を与えるように組み合わせることができる。ここに説明される原理及び利点はいずれも、周波数が約30kHzから300GHzの範囲、例えば約450MHzから8.5GHzの範囲にある信号を処理するべく構成された無線周波数回路に実装することができる。例えば、ここに説明されるフィルタのいずれも、周波数が約30kHzから300GHzの範囲、例えば約450MHzから8.5GHzの範囲にある信号をフィルタリングすることができる。
本開示の複数の側面は、様々な電子デバイスに実装することができる。電子デバイスの例は、消費者用電子製品、チップ及び/又はパッケージ無線周波数モジュールのような消費者用電子製品の部品、電子試験機器、アップリンク無線通信デバイス、パーソナルエリアネットワーク通信デバイス等を含むがこれらに限られない。消費者用電子製品の例は、スマートフォンのような携帯電話機、スマートウォッチ又はイヤーピースのような装着可能コンピューティングデバイス、電話機、テレビ、コンピュータモニタ、コンピュータ、ルータ、モデム、ハンドヘルドコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、自動車電子システムのような車両電子システム、電子レンジ、冷蔵庫、ステレオシステム、デジタル音楽プレーヤ、デジタルカメラのようなカメラ、携帯型メモリチップ、家電製品等を含んでよいがこれらに限られない。さらに、電子デバイスは、未完成の製品を含んでよい。
さらに、とりわけ「できる」、「し得る」、「してよい」、「かもしれない」、「例えば」、「のような」等のようなここに記載の条件付き言語は一般に、特にそうでないことが述べられ、又は使用の文脈上そうでないことが理解される場合を除き、所定の実施形態が所定の特徴、要素及び/又は状態を含む一方で他の実施形態がこれらを含まないことを伝えるように意図される。ここで一般に使用される用語「結合」は、互いに直接結合されるか又は一以上の中間要素を介して結合されるかのいずれかとなり得る2以上の要素を言及する。同様に、ここで一般に使用される用語「接続」は、直接接続されるか又は一以上の中間要素を介して接続されるかのいずれかとなり得る2以上の要素を言及する。加えて、用語「ここ」、「上」、「下」及び同様の趣旨の用語は、本願において使用される場合、本願全体を言及し、本願の任意の固有部分を言及するわけではない。
所定の実施形態が記載されてきたが、これらの実施形態は、例示により提示されたにすぎないので、本開示の範囲を制限することを意図しない。実際のところ、ここに記載の新規なデバイス、チップ、方法、装置及びシステムは、様々な他の形態で具体化することができる。さらに、ここに記載の方法、装置及びシステムの形態における様々な省略及び変更が、本開示の要旨から逸脱することなくなし得る。例えば、ここに記載される回路ブロックは、削除、移動、追加、細分化、結合、及び/又は修正することができる。これらの回路ブロックはそれぞれが、様々な異なる態様で実装することができる。添付の特許請求の範囲及びその均等物が、本開示の範囲及び要旨に収まる任意のそのような形態又は修正をカバーすることが意図される。