JP2019035911A - 摺動部材およびその製造方法、ならびに、定着装置用摺動部材、定着装置および画像形成装置 - Google Patents

摺動部材およびその製造方法、ならびに、定着装置用摺動部材、定着装置および画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高い熱伝導性および摺動性を併せ持ち、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用することを可能とする摺動部材を得る。【解決手段】摺動部材33は、主表面33sを有し、等方性グラファイトから形成された基材33aと、主表面33s上に設けられ、摺動面33tを構成するコート層33bと、を備え、コート層33bの摺動面33tの摩擦係数は、コート層33bが主表面33s上に設けられずに主表面33sが露出している状態での主表面33sの摩擦係数よりも低い。【選択図】図2

Description

本発明は、摺動部材およびその製造方法、ならびに、定着装置用摺動部材、定着装置および画像形成装置に関する。
摺動部材は、摺動面を有している。摺動部材は、この摺動部材以外の部材と摺動面とが互いに摺動するように配置されることで、種々の機能を発揮することができる。複写機、プリンター、ファクシミリ、および複合機等の画像形成装置は、定着装置を備えている。摺動部材はたとえば、画像形成装置の定着装置の中で、定着装置用摺動部材として用いられる。
定着装置(いわゆるパッド加圧型の定着装置)は、互いに対向して共に回転するローラーおよび無端ベルトと、上記無端ベルトの内周面側に配置される押圧部材と、上記押圧部材と上記無端ベルトとの間に配置される定着装置用摺動部材と、を備える。押圧部材は、定着装置用摺動部材を介して無端ベルトをローラーに対して押圧する。無端ベルトとローラーとの間にニップ部が形成される。記録媒体はニップ部に導かれ、記録媒体上のトナー画像は、ニップ部において加熱および加圧されることにより記録媒体上に定着する。
上記のような構成を備えた定着装置においては、記録媒体がニップ部を通過する際に、記録媒体が無端ベルトおよびローラーに接触する。無端ベルトのうちの記録媒体に接触する部分(たとえば無端ベルトの軸方向における中央部)は、記録媒体によって熱を奪われる。無端ベルトのうちの記録媒体に接触しない部分(端部)は、記録媒体によって熱を奪われることがない。
無端ベルトの軸方向における中央部と端部との間には、温度差が形成されやすい。このような温度差は、無端ベルトの耐用期間に影響し得る。温度差が形成されることにより、無端ベルトの軸方向における中央部に比べて端部が早期に寿命に到達し、結果として、無端ベルト全体としての耐用期間が、無端ベルトの軸方向における端部の寿命に律速されることがあり得る。
下記の特許文献1(特開2016−099590号公報)に開示された定着装置は、ニップ形成部材と称される構成を備えている。このニップ形成部材は、均熱部材を有しており、無端ベルトの内周面に接触するように配置される。特許文献1は、均熱部材を有していることにより、無端ベルトの軸方向における中央部と端部との間の温度差を小さくすることができると述べている。特許文献1の中では、均熱部材の材料として、金、銀、銅、およびグラファイトが挙げられている。
下記の特許文献2(特開2016−114743号公報)に開示された定着装置は、ヒーター部材、第1伝熱部材および第2伝熱部材を備えている。ヒーター部材は、第1伝熱部材を介して無端ベルトの内周面に接触しており、ヒーター部材と第1伝熱部材との間に弾性を有する第2伝熱部材が設けられている。特許文献2の中では、第1伝熱部材の材料として、銅およびアルミが挙げられている。第2伝熱部材の材料として、異方性の熱伝導率を有するグラファイトシートが挙げられている。特許文献2には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料を用いた表面処理が第1伝熱部材に実施されていてもよいとの開示もある。
下記の特許文献3(特開平07−295409号公報)に開示された定着装置においては、フィルムに摺動するように定着用ヒーターが配置されており、定着用ヒーターの絶縁保護膜上に中間層を介して潤滑保護膜が形成されている。潤滑保護膜の構成例としては、ダイヤモンド結晶、グラファイト結晶、およびアモルファス状カーボンの混合物からなるDLC膜(ダイアモンドライクカーボン膜)などが挙げられている。
特開2016−099590号公報 特開2016−114743号公報 特開平07−295409号公報
グラファイト(たとえば、炭素純度が98atom%以上であるグラファイト)は、熱伝導率が高く、耐熱性も高いといった特徴を有している。摺動部材の摺動面を構成する部材にグラファイトを適用した場合には、高い均熱効果を期待でき、たとえば、無端ベルトの軸方向における中央部と端部との間に生じ得る温度差を小さくできる。しかしながら、摺動部材の摺動面がグラファイトそのもの(たとえば、炭素純度が98atom%以上であるグラファイトの単体)から構成されている場合には、摺動面の摩耗が進行しやすく、摺動部材として実用的ではない。
ここで、グラファイトの種類としては、異方性グラファイトと、等方性グラファイトとが挙げられる。異方性グラファイトの熱伝導率は、等方性グラファイトの熱伝導率よりも10倍以上高い。異方性グラファイトは、厚み方向における結合力が弱く、へき開性を有しているため、低摩擦性を示す。異方性グラファイトは、摩擦係数が低く、固体潤滑剤としても機能し得る。異方性グラファイトを摺動部材として利用すれば、高い均熱性を有する摺動部材となりうる。
しかしながら、異方性グラファイトの強度および耐摩耗性は、それぞれ、等方性グラファイトの強度および耐摩耗性よりも1/10以上弱い。したがって、異方性グラファイト単体を摺動部材として用いた場合には、摺動面の摩耗が進行しやすく、摺動部材として実用的ではない。これに対し、等方性グラファイトの熱伝導率は、異方性グラファイトの熱伝導率に比べて低いが、たとえば50〜150W/m・K程度であり、アルミ合金と同等の熱伝導率を有する等方性グラファイトも存在している。
近年、コストダウンおよび省エネルギー化などがますます要請されている。このような要請を実現するために摺動部材においては、高い熱伝導性と高い摺動性とを併せ持つことによって、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用することを可能とする摺動部材が求められている。上述のとおり特許文献1〜3には、グラファイトを用いて摺動部材を構成することが提案されている。
特許文献1,3には、等方性グラファイトや異方性グラファイトに関する具体的な記載はない。特許文献2においては、複数の部材を多層構造にすることにより摺動部材を構成することで、摺動部材が有する均熱性の向上を図っている。第2伝熱部材の材料として、異方性の熱伝導率を有するグラファイトシートが挙げられている。摺動部材が特許文献2に開示されているように複数の部材による多層構造から構成される場合、部材間の密着性が摺動部材の均熱性に影響を及ぼす。部材間の空気層を排除するために、たとえば、導電性グリスなどを摺動部材に塗布することが考えられる。
しかしながら、グリスの基油自体の熱伝導率は低く、仮に、カーボン、グラファイト、および金属など、高い熱伝導性を有するフィラーをグリスに含有させたとしても、摺動部材の熱伝導性とグリスの熱伝導性との間には大きな乖離があるため、摺動部材全体としての十分な均熱効果を得ることは難しい。摺動部材にグラファイトを用いた場合、グリスがグラファイトに浸透して摺動部材が脆くなる可能性もある。高温高圧下で摺動が行なわれるパッド型の定着装置にそのような摺動部材を採用した場合、グラファイトに亀裂が生じる可能性があり、十分な均熱効果を得ることも容易ではない。
本発明は、上述のような実情に鑑みて創作されたものであって、高い熱伝導性と高い摺動性とを併せ持つことによって、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用することを可能とする摺動部材、およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明は併せて、このような目的を実現可能な定着装置用摺動部材、ならびに、そのような定着装置用摺動部材を備えた定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明に基づく摺動部材は、主表面を有し、等方性グラファイトから形成された基材と、上記主表面上に設けられ、摺動面を構成するコート層と、を備え、上記コート層の上記摺動面の摩擦係数は、上記コート層が上記主表面上に設けられずに上記主表面が露出している状態での上記主表面の摩擦係数よりも低い。
上記摺動部材において好ましくは、上記コート層は、アモルファスカーボン膜から形成され、上記等方性グラファイトの炭素純度は、98atom%以上である。
上記摺動部材において好ましくは、上記基材は、上記等方性グラファイトと、上記等方性グラファイト上に設けられ、上記主表面を構成する異方性グラファイト薄層とから形成されている。
上記摺動部材において好ましくは、上記主表面は、上記等方性グラファイトから構成され、上記コート層が上記主表面上に設けられずに上記主表面が露出している状態では、上記等方性グラファイトの上記主表面の表面粗さRaは、1.0未満である。
上記摺動部材においては、上記コート層の上記摺動面に、潤滑剤が塗布されていても構わない。
上記摺動部材においては、上記潤滑剤が、フッ素グリスから構成されていても構わない。
上記摺動部材においては、上記潤滑剤が、シリコーンオイルから構成されていても構わない。
本発明に基づく定着装置用摺動部材は、定着装置に用いられる定着装置用摺動部材であって、上記定着装置は、互いに対向して共に回転するローラーおよび無端ベルトと、上記無端ベルトの内周面側に配置され、上記無端ベルトを上記ローラーへ向けて押圧することにより上記無端ベルトを上記ローラーとの間で挟む押圧部材と、上記押圧部材と上記無端ベルトとの間に配置される上記定着装置用摺動部材とを備え、上記定着装置用摺動部材は、本発明に基づく上記の摺動部材である。
上記定着装置用摺動部材において好ましくは、上記等方性グラファイトの熱伝導率は、100W/(m・K)以上であり、上記等方性グラファイトのヤング率は、10GPa以上である。
上記定着装置用摺動部材において好ましくは、上記等方性グラファイトの厚みは、1mm以上10mm以下である。
本発明に基づく定着装置は、本発明に基づく上記の定着装置用摺動部材を備えるように構成されている。
本発明に基づく画像形成装置は、本発明に基づく上記の定着装置を備えるように構成されている。
本発明のある局面に基づく摺動部材の製造方法は、本発明に基づく上記の摺動部材を製造する、摺動部材の製造方法であって、上記主表面上に、上記アモルファスカーボン膜を製膜により形成する工程を備える。
本発明のある局面に基づく摺動部材の製造方法は、本発明に基づく上記の摺動部材を製造する、摺動部材の製造方法であって、1,000W/(m・K)以上の熱伝導率を有する異方性グラファイトシートを準備する工程と、加熱された上記異方性グラファイトシートが上記等方性グラファイト上に押し付けられた状態でこれらの間に剪断力を発生させることで、上記等方性グラファイト上に上記異方性グラファイト薄層を形成する工程と、を備える。
上記の構成によれば、高い熱伝導性と高い摺動性とを併せ持つことによって、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用することを可能とする摺動部材を得ることができる。
実施の形態における画像形成装置1を示す図である。 実施の形態における定着装置30を示す図である。 実施の形態における定着装置用摺動部材33(摺動部材)を示す断面図である。 図3中のIV線に囲まれた領域を拡大して示す断面図である。 コート層33bが基材33aの主表面33s(等方性グラファイト)上に設けられずに主表面33sが露出している基材33aを示す断面図である。 実施の形態の変形例における定着装置用摺動部材33E(摺動部材)を示す断面図である。 図6中のVII線に囲まれた領域を拡大して示す断面図である。 実施の形態の変形例における定着装置用摺動部材の製造方法を説明するための断面図である。 実施の形態およびその変形例に関する検証実験、およびその結果を示す図である。 実施の形態およびその変形例に関する検証実験で使用した基材Aおよび中間層Aの仕様を示す図である。
実施の形態について、以下、図面を参照しながら説明する。同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。以下の実施の形態は、画像形成装置の定着装置に適用された摺動部材(すなわち、定着装置用摺動部材)に基づいて説明する。
以下の実施の形態で開示する摺動部材としての技術的思想は、定着装置や画像形成装置への適用に限られない。以下の実施の形態で開示する摺動部材としての技術的思想は、摺動部材の摺動面とこの摺動部材以外の部材とが互いに摺動するように構成された摺動部材であれば、任意の技術分野に適用可能である。
[画像形成装置1]
図1は、実施の形態における画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、イメージングカートリッジ10A〜10D、中間転写ベルト21、および定着装置30などを備える。イメージングカートリッジ10A〜10Dの各々は、感光体11、帯電装置12、潜像形成装置13、現像装置14、およびクリーニング装置15を備える。イメージングカートリッジ10A〜10Dの現像装置14は、たとえば、黒色、黄色、マゼンダ色、およびシアン色のトナーをそれぞれ収容している。
イメージングカートリッジ10A〜10Dの各々においては、感光体11の表面が帯電装置12によって帯電される。帯電された感光体11の表面は、潜像形成装置13により露光される。感光体11の表面に、画像情報に応じた静電潜像が形成される。静電潜像に現像装置14からトナーが供給されることで、感光体11の表面にトナー画像が形成される。
中間転写ベルト21は、駆動ローラー20aと回転ローラー20bとに掛け渡される。イメージングカートリッジ10A〜10Dの各々の感光体11の表面に形成されたトナー画像は、感光体11と一次転写ローラー22との間の一次転写部において、中間転写ベルト21の上に順々に転写される。転写後に感光体11の表面に残留したトナーは、クリーニング装置15によって感光体11の表面から除去される。
中間転写ベルト21上で重ね合わされたトナー画像は、中間転写ベルト21の周回移動により、中間転写ベルト21と二次転写ローラー23とが相互に対向している位置(二次転写部)に搬送される。画像形成装置1内に収容された記録媒体Sは、給紙ローラー24およびタイミングローラー25によって適切なタイミングで中間転写ベルト21と二次転写ローラー23との間の位置に導かれる。
中間転写ベルト21上に形成されたトナー画像は、中間転写ベルト21と二次転写ローラー23との間の二次転写部において、記録媒体S上に転写される。転写後に中間転写ベルト21の表面に残留したトナーは、クリーニング装置26によって中間転写ベルト21の表面から除去される。トナー画像が転写された記録媒体Sは、定着装置30に導かれる。記録媒体S上に転写された未定着のトナー画像は、定着装置30において記録媒体S上に定着される。トナー画像が定着された記録媒体Sは、排紙ローラー27によって排紙される。
[定着装置30]
図2は、実施の形態における定着装置30を示す図である。定着装置30は、ローラー31、無端ベルト32、定着装置用摺動部材33、加熱ローラー34、および、押圧部材35を備える。
ローラー31は、芯金31aと弾性層31bとを有する。弾性層31bは、ゴムまたはスポンジから形成され、芯金31aの外周に設けられる。ローラー31および無端ベルト32は、これらの外周面同士が互いに対向するように配置される。ローラー31を回転させることで、ローラー31に接触している無端ベルト32も共に回転する。
定着装置用摺動部材33、加熱ローラー34、および押圧部材35は、無端ベルト32の内周面32s側に配置される。定着装置用摺動部材33は、押圧部材35と無端ベルト32の内周面32sとの間に配置され、無端ベルト32の内周面32sに接触している。押圧部材35は、定着装置用摺動部材33を介して無端ベルト32をローラー31へ向けて押圧する。無端ベルト32は、定着装置用摺動部材33(後述する摺動面33t)とローラー31の外周面との間で挟まれる。ローラー31の外周面と無端ベルト32の外周面との間にニップ部Nが形成される。
定着装置用摺動部材33に対してローラー31とは反対側の位置に、加熱ローラー34が配置される。加熱ローラー34の内部には、ハロゲンランプ等の加熱装置34aが設けられる。無端ベルト32の一部は、加熱ローラー34に架け渡され、加熱ローラー34によって加熱される。無端ベルト32を加熱させる方式は、無端ベルト32をIHで加熱させる方式や、無端ベルト32を抵抗発熱体等で加熱させる方式であってもよい。
トナー画像tが転写された記録媒体Sは、定着装置30のニップ部Nに挿通され、ニップ部Nにおいて加熱および加圧される。上述のとおり、トナー画像tが定着された記録媒体Sは、排紙ローラー27(図1)によって排紙される。
[定着装置用摺動部材33]
図3は、実施の形態における定着装置用摺動部材33(摺動部材)を示す断面図である。図4は、図3中のIV線に囲まれた領域を拡大して示す断面図である。図2から図4に示すように、定着装置用摺動部材33は、基材33aおよびコート層33bを備えている。
(基材33a)
基材33aは、等方性グラファイトから形成され、主表面33sを有している。詳細は後述するが、主表面33s上にはコート層33bが設けられる。等方性グラファイトは、サブミクロンの大きさを有する複数の微粒子から構成され、多孔質状の構造を呈している。
等方性グラファイトの炭素純度は、たとえば98atom%以上である。コート層33bがダイヤモンドライクカーボン(DLC)から構成される場合には、等方性グラファイトの炭素純度が98atom%以上であることにより、基材33a(等方性グラファイト)とコート層33b(ダイヤモンドライクカーボン)との間の結合力が強くなり、コート層33b(ダイヤモンドライクカーボン)の被膜強度を向上させることが可能となる。
図4に示すように、等方性グラファイトの表層部分は、複数のグラファイト微粒子33asから構成されており、数ミクロンの大きさを有する凹凸が形成されている。本実施の形態においては、基材33aの主表面33sは、等方性グラファイト(凹凸を呈する複数のグラファイト微粒子33as)から構成されている。
上述のとおり、グラファイトの種類としては、異方性グラファイトと、等方性グラファイトとが挙げられる。異方性グラファイトは一般的に、十数μm〜数十μmの厚みを有する薄層シートから構成される。異方性グラファイトの平面方向の熱伝導率は、たとえば、1,000W/m・K〜2,000W/m・Kである。一方、異方性グラファイトの厚み方向の熱伝導率は、たとえば1W/m・K〜数十W/m・Kであり、平面方向の熱伝導率に比べて極端に低い。異方性グラファイトは、厚み方向における結合力が弱く、へき開性を有しており、破損しやすいといった特徴を有する。
一方、等方性グラファイトは、ブロック状、シート状、プレート状、半円状など、様々な形状を有するように作製されることが可能である。等方性グラファイトの熱伝導率は、異方性グラファイトの熱伝導率に比べると低く、たとえば50W/m・K〜150W/m・Kである。しかしながら、等方性グラファイトの強度は、異方性グラファイトの強度よりも強く、等方性グラファイトは異方性グラファイトに比べて破損しにくいという特徴を有する。
基材33aに用いる等方性グラファイトとしては、熱伝導率、強度および炭素純度という点で、最適な特性を有するものが選択される。基材33aの均熱性に鑑みると、等方性グラファイトの熱伝導率は、100W/m・K以上であることが好ましい。基材33aの強度に鑑みると、等方性グラファイトのヤング率は、10GPa以上であることが好ましい。コート層33b(ダイヤモンドライクカーボン)の被膜強度に鑑みると、等方性グラファイトの炭素純度は、98atom%以上であることが好ましい。
基材33aに用いる等方性グラファイトの厚みTH1(図3)は、基材33aの剛性および熱容量に鑑みて、たとえば1mm以上10mm以下であることが好ましい。1mm以上である場合には、基材33aの剛性および曲げ強度が向上しやすく、10mm以下である場合には、熱容量が低くなることにより、平面方向の熱伝導率が向上し、均熱性も向上する。ここで述べている等方性グラファイトの厚みTH1とは、定着装置用摺動部材33の断面をSEM観察し、各層の界面のコントラストに基づき基材33aやコート層33bなどを特定した上で、基材33a(等方性グラファイト)の厚みTH1を測定することにより得られる値である。
図5は、コート層33bが基材33aの主表面33s(等方性グラファイト)上に設けられずに主表面33sが露出している基材33aを示す断面図である。基材33a(等方性グラファイト)の表面粗さに関して、コート層33bが基材33aの主表面33s(等方性グラファイト)上に設けられずに主表面33sが露出している状態では(図5に示す状態では)、基材33a(等方性グラファイト)の主表面33sの表面粗さRaは、均一なコート層33bを形成するという観点により、できる限り小さい方が好ましく、たとえば1.0未満である。上述のとおり、等方性グラファイトは多孔質状の構造を呈している。フライス盤による粗研磨によって表面粗さRaを3.0未満に設定可能であり、ホーニング加工およびラッピング加工をさらに施すことによって表面粗さRaを1.0未満に設定可能である。
ここで述べている表面粗さRaの値は、表面粗さ測定機(東京精密社製、SURFCOM 480A)(「SURFCOM」は登録商標)を使用して、カットオフ値を0.8に設定し、測定箇所を10カ所に設定し、一カ所当たりの測定長を0.3に設定し、主表面33sの凸部の表面粗さを測定し、測定されたデータを合算し、測定長を3mmとしてRaを算出することにより得られる値である。
以上のような各特徴を備えることが可能な基材33aの等方性グラファイトは、具体的にはたとえば、東洋炭素社製のISEM−3(熱伝導率が130W/m・K)から作製されることが可能である。たとえば、ブロック状の形状を有する等方性グラファイトを準備し、その表面を切削し、長手方向の長さを360mmに設定し、短手方向の長さを20mmに設定し、厚みを3mmに設定する。等方性グラファイトの表面のうち、主表面33sを構成することが予定されている側の表面(片面)を、フライス加工により粗く研磨した後、ホーニング加工によって仕上げ研磨を行なう。これにより、1未満の表面粗さRaを有する主表面33sが基材33aに形成される。定着装置用摺動部材33の無端ベルト32(図2)に接触する部分のうち、基材33aの入口側に位置する部分と出口側に位置する部分とには、5R(5mm)の曲率半径を有する曲面を設けてもよい。
(コート層33b)
図2〜図4を参照して、上述のとおり、コート層33bは基材33aの主表面33s上に設けられる。コート層33bのうち、主表面33sに結合している側の表面とは反対側の表面は、定着装置用摺動部材33の摺動面33tを構成する。定着装置用摺動部材33は、定着装置用摺動部材33以外の部材と摺動面33tとが互いに摺動するように配置されることで、種々の機能(たとえば、無端ベルト32とローラー31との間にニップ部Nを形成させるという機能)を発揮することができる。
定着装置用摺動部材33においては、摺動面33tは、基材33a(等方性グラファイト)の主表面33sによっては構成されておらず、コート層33bの表面により構成されている。コート層33bの摺動面33tの摩擦係数は、コート層33bが主表面33s上に設けられずに主表面33sが露出している状態(図5に示す状態)での主表面33sの摩擦係数よりも低い。ここでいう摺動面33tの摩擦係数とは、摺動面33tに後述する潤滑剤が塗布されていない状態での摺動面33tの摩擦係数である。コート層33bの摺動面33tの摩擦係数は、たとえば0.1以下であり、コート層33bが主表面33s上に設けられずに主表面33sが露出している状態(図5に示す状態)での主表面33sの摩擦係数は、たとえば約0.2である。
このような特性を発揮可能な低摩擦性を有するコート層33bは、たとえば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)としても知られるアモルファスカーボン膜から形成されることができる。コート層33bは、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、および、PTFEなどのフッ素樹脂から形成されることもできる。コート層33bは、これらのうちのアモルファスカーボン膜(DLC)から形成されているとよい。アモルファスカーボン膜(DLC)は、炭素(基材33a)との間で良好な被膜性を発揮することができ、耐摩耗性に優れており、ドライおよびオイル潤滑のどちらにも適合可能である。
(アモルファスカーボン膜(DLC))
本実施の形態において、コート層33bの材料として用いられるアモルファスカーボン膜は、耐熱性、低摩擦性、高硬度性、および熱伝導性を有しており、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)と言い換えることもできる。
DLCは、グラファイト構造(sp2型結晶)の中でダイヤモンド構造(sp3型結晶)を部分的に有した構造を呈しており、低い摩擦係数と高い耐摩耗性とを有する。定着装置用摺動部材33(コート層33b)の摺動面33tと無端ベルト32の内周面32sとが相互に接触している状態でこれらが相対的に移動する時、これらの間にはせん断力が発生する。低い摩擦係数を有する材料(ここではDLC)をコート層33bの構成要素として用いることで、これらの間に生じするせん断力の値を小さくすることが可能となる。
コート層33bの厚みTH2(図3)は、たとえば0.5μm以上5μm以下であることが好ましい。0.5μm以上の場合、平面方向における良好な熱伝導率が得られ、熱容量が小さくなりすぎることもなく、所望の均熱効果が得られやすく、耐摩耗性が低下することもない。5μm以下の場合には、熱容量が大きくなりすぎることもなく、平面方向における熱伝導率が低下しすぎることもなく、所望の均熱効果が得られやすい。膜が不均一に形成されることも抑制され、強度が低下したり、耐摩耗性が低下したりすることもない。
定着装置用摺動部材33の製造方法に関して、コート層33bとしてのアモルファスカーボン膜は、基材33aの主表面33s上に、製膜により形成することができる。たとえば、UBM(UnBalanced Magnetoron)スパッタ法を使用して、基材33aの全面表層にDLC膜を被覆する。この際たとえば、6インチ径を有するUBMスパッタ源(ターゲット:カーボン)を用いて、Arガス圧を0.4Paに設定し、投入DC電力を約6W/cmに設定し、製膜速度を約30nm/minに設定し、基板バイアス電圧を0から200Vの範囲で印加し、膜厚が約2μmになるように、DLC膜の製膜を行なう。当該手法により得られたコート層33bは、DLC製膜後の表面粗さ(Ra)がたとえば0.5である。
コート層33bは、等方性グラファイトから形成された基材33aの主表面33s上にのみ形成してもよいし、基材33aの主表面33sとその反対側の主表面(基材33aに対して押圧部材35側に位置する主表面)との両方に形成してもよいし、基材33aの外表面における全部に形成してもよい。
コート層33bの摺動面33tに、次述する潤滑剤を塗布する場合には、コート層33bを基材33aの外表面の全部に形成することによって、潤滑剤の等方性グラファイトへの浸透を防止でき、これにより等方性グラファイトの十分な強度を確保することが可能となる。潤滑剤の等方性グラファイトへの浸透が防止されることにより、摺動面33t(摺動部)において潤滑剤が枯渇することも抑制可能となる。
(潤滑剤)
コート層33bの摺動面33tには、潤滑剤が塗布されてもよい。定着装置用摺動部材33(コート層33b)の摺動面33tと無端ベルト32の内周面32sとの間には、上述のとおり、せん断力が生じる。潤滑剤の存在によって、せん断力の値が小さくなり、摺動面33tの内周面32sに対する摩擦係数がさらに小さくなり、定着装置用摺動部材33および無端ベルト32の耐摩耗性が向上することで、これらの部材の耐用期間をさらに長くすることが可能となる。
潤滑剤としては、フッ素グリス、シリコーングリス、フッ素オイル、シリコーンオイル、および、鉱物油など、汎用的なグリスまたは汎用的なオイル類を用いることができる。これらの中でも特に、摺動面33tの低摩擦性を向上させるためにはシリコーンオイルが好適であり、摺動面33tの潤滑剤の枯渇を抑制するためにはフッ素グリスが好適である。
シリコーンオイルを用いれば、フッ素グリスに比べて摺動面33tの内周面32sに対する摩擦係数を大幅に低減できる。シリコーンオイルは、熱酸化分解されることにより徐々に粘性が低下し、摺動面33tと内周面32sとの間の界面から徐々に掻き出される可能性がある。定着装置用摺動部材33を長期間にわたって使用する場合には、フッ素グリスがシリコーンオイルよりも好適に用いられる。フッ素グリスは、シリコーンオイルと比べた場合、粘性が高い分だけ摩擦係数は高くなるが、長期にわたって使用されたとしても粘性変化がほとんどないため、オイルの枯渇も発生し難く、長時間使用したとしても安定したトルク性能を示すことができる。
(作用および効果)
本実施の形態における定着装置用摺動部材33は、基材33aとコート層33bとを備えており、基材33aは等方性グラファイトから形成され、コート層33bは基材33aの主表面33s上に設けられて摺動面33tを構成し、コート層33bの摺動面33tの摩擦係数は、コート層33bが主表面33s上に設けられずに主表面33sが露出している状態での主表面33sの摩擦係数よりも低い。
等方性グラファイトの強度は、異方性グラファイトの強度よりも強く、等方性グラファイトは異方性グラファイトに比べて破損しにくい。等方性グラファイトの熱伝導率は、異方性グラファイトの熱伝導率に比べると低いが、たとえば50W/m・K〜150W/m・Kであり、十分な均熱性を発揮することができる。基材33aは、このような特性を有する安価で軽量な等方性グラファイトから形成され、このような基材33aの主表面33s上に上述のような特性を有するコート層33bが設けられる。コート層33bが低摩擦性および耐摩耗性を有していることにより、上記の構成を備えた定着装置用摺動部材33(摺動部材)によれば全体として、高い熱伝導性と高い摺動性とを併せ持つことにより、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用されることが可能となる。
本実施の形態の定着装置用摺動部材33においては、コート層33bは、アモルファスカーボン膜(DLC)から形成され、基材33aを構成している等方性グラファイトの炭素純度は、98atom%以上である。すなわち、基材33aが、ある程度の強度および耐摩耗性を有する等方性グラファイトから形成されており、その主表面33s上に、高い熱伝導率、高い摺動性、および高い耐摩耗性を有するアモルファスカーボン膜、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)がコートされている。
このような定着装置用摺動部材33によれば、たとえば定着装置30の仕様として要請される寿命にも十分に応えることが可能な強度を発揮できるとともに、高い均熱性と高い摺動性とを併せ持つことが可能となる。無端ベルト32の軸方向における中央部と端部との間に温度差が形成された場合であっても、定着装置用摺動部材33によって温度差を効果的に軽減できる。
アルミや鉄などの金属上にDLCをコートした場合には、被膜強度という点で課題が生じる可能性がある。これに対し、98%以上(ほぼ100%)の炭素純度を有する等方性グラファイト上にDLCをコートする場合には、炭素元素同士の結合によって強固なコート層33bが主表面33s上に形成され、耐摩耗性の飛躍的な向上が期待できる。
(ヒーターとしての利用)
定着装置用摺動部材33は、ヒーターとしても用いることができる。定着装置用摺動部材33に含まれる基材33aの炭素純度は、ほぼ100%であり、通電性を示す。基材33aに電圧をかけることで、ジュール熱が発生し、摺動面33tの温度を効果的に昇温させることが可能となる。等方性グラファイト(基材33a)の電気抵抗率はたとえば10.0μΩ・mである。等方性グラファイトの電気抵抗は比較的低く、熱効率はあまり高くないため、定着装置用摺動部材33をヒーターとして用いる場合、定着装置30内の主ヒーターとして利用するよりも、補助ヒーターとして利用することが好適である。
[実施の形態の変形例]
(定着装置用摺動部材33E)
図6〜図8を参照して、実施の形態の変形例における定着装置用摺動部材33Eについて説明する。図6は、定着装置用摺動部材33E(摺動部材)を示す断面図である。図7は、図6中のVII線に囲まれた領域を拡大して示す断面図である。図8は、定着装置用摺動部材33Eの製造方法を説明するための断面図である。本変形例における定着装置用摺動部材33Eと、上述の実施の形態における定着装置用摺動部材33とは、以下の点で相違している。
定着装置用摺動部材33Eにおいては、基材33aが、等方性グラファイト33a1と、異方性グラファイト薄層33a2とから形成されている。異方性グラファイト薄層33a2は、等方性グラファイト33a1(等方性グラファイト33a1の表層部分に形成されている複数のグラファイト微粒子33as)上に設けられており、基材33aの主表面33sを構成している。主表面33s上には、上述の実施の形態と同様の手法によって、コート層33bが設けられる。
異方性グラファイト薄層33a2は、いわゆる中間層として機能する。等方性グラファイト33a1とコート層33b(たとえば、DLC)との間に、異方性グラファイト薄層33a2が中間層として形成される。当該構成によれば、基材33aの主表面33sの平滑性が高まり、基材33aの主表面33sに、より均一にコート層33bを形成することが可能となり、その結果として被膜強度がより高まり、耐摩耗性の更なる向上が期待できる。
図8を参照して、等方性グラファイト33a1の表面(グラファイト微粒子33as)に異方性グラファイト薄層33a2を形成することによって基材33aを作製する方法としては、圧力および熱を利用することにより、等方性グラファイト33a1の表面に容易に異方性グラファイト薄層33a2(中間層)を形成できる。
図8に示すようにたとえば、等方性グラファイト33a1をプレート状に形成し、等方性グラファイト33a1の表面上に、1,000W/(m・K)以上の熱伝導率を有する異方性グラファイトシート33a5(25μm)を乗せ、この状態で、1MPa、200℃、200mm/sの条件で、エンドレスベルトにこれらを30分間、押し当てる。加熱された異方性グラファイト薄層33a2が等方性グラファイト33a1上に押し付けられた状態で、これらの間に剪断力を発生させる。その後、等方性グラファイト33a1上に残っている異方性グラファイトシート33a5を剥がすことで、等方性グラファイト33a1上に異方性グラファイト薄層33a2が形成される。
等方性グラファイト33a1の表面に異方性グラファイト薄層33a2が形成されるメカニズムは、炭素−炭素同士の結合(sP2混成軌道の不対電子同士による結合)が起因しており、いわゆる「金属のカジリ」に類似する現象によって強固な被膜形成が行なわれるものと考えられる。
得られた基材33aの断面形状をSEMを用いて観察することにより、等方性グラファイト33a1の表面に形成された異方性グラファイト薄層33a2の存在を確認することができ、異方性グラファイト薄層33a2の厚みが、たとえば約0.1μm〜0.5μmであることも確認できる。異方性グラファイト薄層33a2を中間層として等方性グラファイト33a1の表面に形成することにより、表面平滑性および表面の熱伝導性が向上するとともに、基材33aとコート層33b(DLCなど)との結合性を向上させることが可能となる。
等方性グラファイト33a1は多孔質の形状を有しており、その表層部分は、サブミクロンの大きさを有する複数の異方性グラファイト薄層33a2から構成されている。等方性グラファイト33a1の表層部分には、数ミクロンの大きさを有する凹凸が形成されている。等方性グラファイト33a1の表面に仕上げ加工を施すことによって、等方性グラファイト33a1の表面は、表面粗さRaが1未満となる程度にまで平滑化される。
平滑化された等方性グラファイト33a1の表面に異方性グラファイト薄層33a2を形成することによって、等方性グラファイト33a1の表面に存在していたサブミクロンレベルの凹凸が、異方性グラファイト薄層33a2によって被覆される。これによって、基材33aの主表面33sの平滑性が向上する。
以上のような各特徴を備えることが可能な異方性グラファイト薄層33a2を等方性グラファイト33a1の表面に形成するためには、具体的にはたとえば、カネカ社製の異方性グラファイトシート「グラフィニティ」を用いることができる。この異方性グラファイトシートは、平面方向の熱伝導率はたとえば1,500W/(m・K)に設定され、厚みは0.025mmに設定される。
このような異方性グラファイトシートを等方性グラファイト33a1の表面上に配置する。200℃の温度に設定され、200mm/sの速度で回転するPI製のエンドレスベルトに、これらを1MPaの圧力で30分間押し当てる。これにより、異方性グラファイトシートの一部が基材33aの主表面33s上に接着する。余分な異方性グラファイトシートをブラシで剥がし取ることにより、異方性グラファイト薄層33a2が等方性グラファイト33a1の表面に形成された、基材33aを得ることができる。
[検証実験]
図9および図10を参照して、上述の実施の形態およびその変形例に関して行なった検証実験について説明する。当該検証実験は、実施例1〜3および比較例(図9)を含む。
(実験条件)
ここでは、実施例1〜3および比較例に基づく各摺動部材(図9参照)を準備した。図9中に示す基材Aおよび中間層Aの詳細仕様については、図10に示されるとおりである。
基材Aは、材料が等方性グラファイトブロックであり、製品名がISEM−3(東洋炭素社製)であり、厚みが3[mm]であり、仕上げ加工表面粗さRaが1未満であり、密度が1.85[g/cm]であり、電気抵抗率が10.0[μΩ・m]であり、曲げ強さが49[MPa]であり、引張強度が29[MPa]であり、線膨張率が5.0[10−6/K]であり、熱伝導率λが130[W/(m・K)]である。
中間層Aは、材料が異方性グラファイトシートであり、製品名がグラフィニティ(カネカ社製)であり、厚みが0.025[mm]であり、密度が2.0[g/cm]であり、引張強度が40[MPa]であり、熱伝導率λ(平面方向における熱伝導率λ)が1500[W/(m・K)]である。
実施例1〜3に基づく各摺動部材(図9参照)を、図2に示した定着装置30と同様の構成を有する「2軸上ベルトパッド定着テスター」の摺動部に装着し、均熱性、摺動性、耐久性について評価した。比較例については、コニカミノルタ社製の「magicolor(登録商標)4750DN」の定着装置に標準的に装備されているPTFE系摺動部材を用いて評価を行なった。
(均熱性の評価条件)
「2軸上ベルトパッド定着テスター」の駆動速度は240[mm/s]に設定し、定着温度は160[℃]に設定し、ニップ荷重は250[N]に設定し、ニップ幅は10[mm]に設定した。上記条件で定着装置を駆動させながら、A6のサイズを有する用紙を縦方向に200枚通紙した時の無端ベルト32(定着ベルト)の端部温度T1と中央部温度T2とを測定し、その差(ΔT)を算出した。算出結果は、実施例1から実施例3および比較例として、図9に示されている。
(摺動性および耐久性の評価条件)
実施例1〜3および比較例に基づく各摺動部材(図9参照)に対し、図9に記載の潤滑剤を図2に示した定着装置30と同じ構成を有する「2軸上ベルトパッド定着テスター」の摺動部に装着し、所定の走行時間毎に回転トルクを測定し、空回転耐久評価を行なった。この際、「2軸上ベルトパッド定着テスター」の駆動速度は240[mm/s]に設定し、定着温度は160[℃]に設定し、ニップ荷重は250[N]に設定し、ニップ幅は10[mm]に設定した。駆動モードは10秒駆動毎に2秒停止させるという、いわゆる10on2offに設定した。評価結果は、実施例1から実施例3および比較例として図9に示されている。
(検証結果)
実施例1〜3は、均熱性に関する指標である温度差ΔTがいずれも40[℃]以下であり、高い均熱効果が確認された。摺動性、耐久性に関しても、走行時間が2K時間であっても、回転トルクが0.3[N・m]以下であり、安定した低摺動性を示した。
一方、比較例においては、温度差ΔTが70℃であり、無端ベルト32(定着ベルト)の端部温度が高くなり、実施例1〜3に比べて低い均熱性が示された。摺動性、耐久性に関しては、走行距離が1K時間の際に、回転トルクが0.8[N・m]に急上昇し、その後ベルト端部が破損したため、評価を中止した。
以上の結果によれば、上述の実施の形態およびその変形例に基づく実施例1〜3によれば、高い熱伝導性と高い摺動性とを併せ持つことによって、高い均熱効果を発揮することができてしかも長期間にわたって使用することを可能とする摺動部材を得ることができることがわかる。
以上、実施の形態および変形例、ならびに実施の形態に関する検証実験について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 画像形成装置、10A,10B,10C,10D イメージングカートリッジ、11 感光体、12 帯電装置、13 潜像形成装置、14 現像装置、15,26 クリーニング装置、20a 駆動ローラー、20b 回転ローラー、21 中間転写ベルト、22 一次転写ローラー、23 二次転写ローラー、24 給紙ローラー、25 タイミングローラー、27 排紙ローラー、30 定着装置、31 ローラー、31a 芯金、31b 弾性層、32 無端ベルト、32s 内周面、33,33E 定着装置用摺動部材(摺動部材)、33a 基材、33a1 等方性グラファイト、33a2 方性グラファイト薄層、33a5 方性グラファイトシート、33as グラファイト微粒子、33b コート層、33s 主表面、33t 摺動面、34 加熱ローラー、34a 加熱装置、35 押圧部材、N ニップ部、S 記録媒体、TH1,TH2 厚み、t トナー画像。

Claims (14)

  1. 主表面を有し、等方性グラファイトから形成された基材と、
    前記主表面上に設けられ、摺動面を構成するコート層と、を備え、
    前記コート層の前記摺動面の摩擦係数は、前記コート層が前記主表面上に設けられずに前記主表面が露出している状態での前記主表面の摩擦係数よりも低い、
    摺動部材。
  2. 前記コート層は、アモルファスカーボン膜から形成され、
    前記等方性グラファイトの炭素純度は、98atom%以上である、
    請求項1に記載の摺動部材。
  3. 前記基材は、前記等方性グラファイトと、前記等方性グラファイト上に設けられ、前記主表面を構成する異方性グラファイト薄層とから形成されている、
    請求項1または2に記載の摺動部材。
  4. 前記主表面は、前記等方性グラファイトから構成され、
    前記コート層が前記主表面上に設けられずに前記主表面が露出している状態では、前記等方性グラファイトの前記主表面の表面粗さRaは、1.0未満である、
    請求項1または2に記載の摺動部材。
  5. 前記コート層の前記摺動面に、潤滑剤が塗布された、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の摺動部材。
  6. 前記潤滑剤は、フッ素グリスである、
    請求項5に記載の摺動部材。
  7. 前記潤滑剤は、シリコーンオイルである、
    請求項5に記載の摺動部材。
  8. 定着装置に用いられる定着装置用摺動部材であって、
    前記定着装置は、互いに対向して共に回転するローラーおよび無端ベルトと、前記無端ベルトの内周面側に配置され、前記無端ベルトを前記ローラーへ向けて押圧することにより前記無端ベルトを前記ローラーとの間で挟む押圧部材と、前記押圧部材と前記無端ベルトとの間に配置される前記定着装置用摺動部材とを備え、
    前記定着装置用摺動部材は、請求項1から7のいずれか1項に記載の摺動部材である、
    定着装置用摺動部材。
  9. 前記等方性グラファイトの熱伝導率は、100W/(m・K)以上であり、
    前記等方性グラファイトのヤング率は、10GPa以上である、
    請求項8記載の定着装置用摺動部材。
  10. 前記等方性グラファイトの厚みは、1mm以上10mm以下である、
    請求項8または9に記載の定着装置用摺動部材。
  11. 請求項8から10のいずれか1項に記載の定着装置用摺動部材を備えた、
    定着装置。
  12. 請求項11に記載の定着装置を備えた、
    画像形成装置。
  13. 請求項2に記載の摺動部材を製造する、摺動部材の製造方法であって、
    前記主表面上に、前記アモルファスカーボン膜を製膜により形成する工程を備える、
    摺動部材の製造方法。
  14. 請求項3に記載の摺動部材を製造する、摺動部材の製造方法であって、
    1,000W/(m・K)以上の熱伝導率を有する異方性グラファイトシートを準備する工程と、
    加熱された前記異方性グラファイトシートが前記等方性グラファイト上に押し付けられた状態でこれらの間に剪断力を発生させることで、前記等方性グラファイト上に前記異方性グラファイト薄層を形成する工程と、を備える、
    摺動部材の製造方法。
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