JP2019035486A - トリポード部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】、脚軸の相手部品の接触による摩耗や剥離などの転動疲労寿命の向上が期待できるトリポード部材を製造することが可能なトリポード部材の製造方法を提供する。
【解決手段】脚軸を有するトリポード部材とこの脚軸に装着されるトルク伝達部材とを備えたトリポード型等速自在継手における前記トリポード部材を製造するトリポード部材製造方法である。トリポード部材の脚軸の外周面のうち、脚軸に装着される相手部位との接触領域に圧縮残留応力付与用の負荷を加える。
【選択図】図1
【解決手段】脚軸を有するトリポード部材とこの脚軸に装着されるトルク伝達部材とを備えたトリポード型等速自在継手における前記トリポード部材を製造するトリポード部材製造方法である。トリポード部材の脚軸の外周面のうち、脚軸に装着される相手部位との接触領域に圧縮残留応力付与用の負荷を加える。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達装置に用いられるトリポード型等速自在継手におけるトリポード部材の製造方法に関する。
トリポード型等速自在継手は、図13と図14に示すシングルローラタイプ(特許文献1参照)と図15と図16に示すダブルローラタイプ(特許文献2参照)等がある。シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手は、外側継手部材1と、内側継手部材としてのトリポード部材2と、トルク伝達部材としてのローラ3とを備える。外側継手部材1は一端にて開口したカップ状のカップ部5と、このカップ部5の底壁5aから突設される軸部6とを有する。カップ部5は、その内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝7が形成してある。カップ部5は、横断面で見ると、大径部8aと小径部8bが交互に現れる非円筒形状である。すなわち、カップ部5は、大径部8aと小径部8bとを形成することによって、その内周面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝7が形成される。
各トラック溝7の円周方向で向き合った側壁にローラ案内面(ローラ摺接面)7a、7aが形成される。また、内径面においては、円周方向に交互に現れる小内径部9bと大内径部9aをローラ案内面7aで接続した3弁の花冠状を呈している。すなわち、外側継手部材1は、円周方向に向き合ったローラ案内面7a,7aと両ローラ案内面7a,7a間に設けられた大内径部9aからなるトラック溝7が内周の三箇所に形成されるものである。
トリポード部材2はボス10と脚軸11とを備える。ボス10にはシャフト(図示省略)とトルク伝達可能に結合するスプライン孔10aが形成してある。脚軸11はボス10の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
この場合、ローラ3は、脚軸11の外径面に周方向に沿って配設される複数の針状ころ12を介して外嵌されている。脚軸11の外周面は針状ころ12の内側転動面を構成し、ローラ3の内周面は針状ころ12の外側転動面を構成している。なお、複数の針状ころ12は、脚軸11の外周面とローラ3の内周面との間に総ころ状態で配設されている。
これら針状ころ12は、脚軸11の付け根部に外嵌されたインナワッシャ13と半径方向内側で接すると共に、脚軸11の先端部に外嵌されたアウタワッシャ14と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ14は、脚軸11の先端部に形成された環状溝15に丸サークリップ等の止め輪16を嵌合させることにより抜け止めされている。
また、ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手では、トルク伝達部材は、その外径面が凸球面とされたリング状体からなるローラ20と、このローラ20に複数のころ21を介してリング22とを備える。すなわち、ローラ20とリング22とが複数のころ21を介してユニット化され、これら等でローラアセンブリ(ローラユニット)を構成している。この場合、ローラ20を外側ローラ(アウタローラ)と呼び、リング22を内側ローラ(インナローラ)と呼ぶことができる。
すなわち、リング(内側ローラ)22は脚軸11の外周面に外嵌している。内側ローラ22の円筒形外周面を内側軌道面とし、外側ローラ20の円筒形内周面を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に針状ころ21が転動自在に介在する。針状ころ21は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。なお、外側ローラ20の端部内周面に形成した環状溝には、針状ころ21の抜け止め用のワッシャ23a、23bが装着されている。なお、このダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手の他の構成は、前記シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手と同様であるので、同一部材については、図15と図16において、図13と図14と同一の符号を附して、それらの説明を省略する。
このシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手は、脚軸11がトルク伝達に伴い各針状ころから荷重を受け、針状ころ12は脚軸外周面に沿って転動する。また、ダブルローラタイプ、すなわち、ローラユニットを有するタイプでは、脚軸11に対してローラユニット内径から荷重を受けながらインナローラ22が脚軸外周に対して相対的に摺動回転し、同時に脚軸11の軸線方向に対しても摺動する。
このように、シングルローラタイプであっても、ダブルローラタイプであっても、トリポード部材2の脚軸11は、接触相手部品から荷重を受けるため、摩擦や剥離を防止するため、予め熱処理により硬化層を設け、研削や焼入鋼切削で表層を除去加工し、表面を仕上げることになる。
このように、一般に、脚軸外周面は研削や焼入鋼切削による除去加工で仕上げているが、継手の小型化など設計自由度拡大のためには、脚軸外周面の転動疲労寿命の向上が求められる。また、脚軸は常に接触相手部品(針状ころやローラユニット)より荷重を受ける。このため、継手に特に大きなトルクが負荷される過酷な条件下では、脚軸への大きな荷重を許容でき得る大きな硬化層が必要となる。しかしながら、従来適用される浸炭焼入れの場合には、硬化層深さが大きい程、浸炭処理に要する時間が増大し、製造コストが嵩むことになる。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、脚軸の相手部品の接触による摩耗や剥離などの転動疲労寿命の向上が期待できるトリポード部材を製造することが可能なトリポード部材の製造方法を提供するものである。
本発明のトリポード部材の製造方法は、脚軸を有するトリポード部材とこの脚軸に装着されるトルク伝達部材とを備えたトリポード型等速自在継手における前記トリポード部材を製造するトリポード部材製造方法であって、トリポード部材の脚軸の外周面のうち、脚軸に装着される相手部位との接触領域に押圧部材により負荷を加えて圧縮残留応力を付与させたものである。
本発明のトリポード部材の製造方法によれば、トリポード部材の脚軸に相手部位との接触領域に押圧部材により負荷を加えて圧縮残留応力を付与することできる。すなわち、押圧部材により接触領域に負荷を加えることによって、接触領域に加工硬化によって圧縮残留応力が付与される。このため、通常、トリポード部材の脚軸を研削や旋削により仕上げ加工するが、本発明では、研削や旋削による加工荷重よりも大きな加工荷重を負荷することができ、トリポード部材の脚軸の接触領域における脚軸表層に深い圧縮残留応力を付与することができる。このため、接触領域に対して研削又は焼入れ鋼切削により仕上げ加工を行った後、圧縮残留応力付与用の負荷を加えるのが好ましい。これによって、接触領域の転動疲労寿命を向上させることができる。
前記トリポード型等速自在継手のトルク伝達部材は、前記外側継手部材のトラック溝に挿入されたアウタローラと、前記脚軸に外嵌されて前記アウタローラの内周側に複数のころを介して配置されるインナローラとで構成され、前記インナローラの内周面は凸円弧状をなし、前記脚軸は、縦断面において継手の軸線と直交するストレート形状をなし、横断面において継手の軸線と直交する方向で前記インナローラの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で前記インナローラの内周面との間に隙間が形成されて、脚軸の横断面を長軸が継手の軸線に直交する略楕円形とする場合がある。これによって、ダブルローラタイプの脚軸の接触領域の疲労強度の向上をさせることができる。
トリポード部材の脚軸の外周面が円筒面形状とされ、前記脚軸の外径面に周方向に沿って配設される複数のころを介して外嵌されるローラを備え、前記接触領域が周方向全周であるものであってもよい。これによって、シングルローラタイプの脚軸の接触領域の疲労強度の向上をさせることができる。
圧縮残留応力付与用の負荷を加える前記押圧部材が、トリポード部材の脚軸に対して軸線方向に沿って線接触状に押圧する円筒面を有する回転体であるのが好ましい。このような回転体を用いることによって、圧縮残留応力付与用の負荷を安定して接触領域に付与することができる。
前記回転体が、トリポード部材の脚軸に対して押圧しつつ軸線方向に沿って移動するものであってもよい。接触領域の脚軸の軸線方向全長に渡って一度に荷重を負荷する場合、回転体の押圧範囲が長くなり、軸線方法全長にわたって均一に負荷する必要があり、精度良く回転体の押圧面を成形する必要がある。これに対して、軸線方向に沿って移動させるものでは、回転体の押圧範囲が短くてよく、回転体の押圧面の成形の容易化を図ることができる。
トリポード部材の脚軸の軸心に対して180°反対方向に配置される一対の回転体にて、トリポード部材の脚軸の接触領域に圧縮残留応力付与用の負荷を加えるように設定できる。このように設定することによって、圧縮残留応力付与用の負荷の作業時間の短縮化を図ることができ、しかも、180°反対方向から荷重を負荷することができ、圧縮残留応力付与が安定する。
本発明のトリポード部材の製造方法では、トリポード部材の脚軸の接触領域における脚軸表層に深い圧縮残留応力を付与することができるので、脚軸の転動疲労寿命が向上し、耐用寿命の長寿命化を図ることができる。
以下本発明の実施の形態を図1〜図11に基づいて説明する。図6〜図8に本発明にかかる製造方法にて製造されたトリポード部材を用いたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手を示す。このトリポード型等速自在継手は、外側継手部材31と、内側継手部材としてのトリポード部材32と、ローラ50を有するトルク伝達部材とを備える。外側継手部材31は一端にて開口したカップ状のカップ部35と、このカップ部35の底壁35aから突設される軸部36とを有する。カップ部35は、その内周の円周方向三等分位置に軸方向に延びるトラック溝37が形成してある。カップ部35は、横断面で見ると、大径部38aと小径部38bが交互に現れる非円筒形状である。すなわち、カップ部35は、大径部38aと小径部38bとを形成することによって、その内周面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝37が形成される。
各トラック溝37の円周方向で向き合った側壁にローラ案内面(ローラ摺接面)37a、37aが形成される。また、内径面においては、円周方向に交互に現れる小内径部39bと大内径部39aをローラ案内面37aで接続した3弁の花冠状を呈している。すなわち、外側継手部材31は、円周方向に向き合ったローラ案内面37a,37aと両ローラ案内面37a,37a間に設けられた大内径部39aからなるトラック溝37が内周の三箇所に形成されるものである。
トリポード部材32はボス40と脚軸41とを備える。ボス40にはシャフト(図示省略)とトルク伝達可能に結合するスプライン孔40aが形成してある。脚軸41はボス40の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
この場合、トルク伝達部材は、その外径面が凸球面とされたリング状体からなるローラ50と、このローラ50に複数の針状ころ51を介してリング52とを備える。すなわち、ローラ50とリング52とが複数の針状ころ51を介してユニット化され、これら等でローラアセンブリ(ローラカセット)を構成している。この場合、ローラ50を外側ローラ(アウタローラ)と呼び、リング52を内側ローラ(インナローラ)と呼ぶことができる。
すなわち、リング(内側ローラ)52は脚軸41の外周面に外嵌している。内側ローラ52の円筒形外周面を内側軌道面とし、外側ローラ50の円筒形内周面を外側軌道面として、これらの内外軌道面間に針状ころ51が転動自在に介在する。針状ころ51は、できるだけ多くのころを入れた、保持器のない、いわゆる総ころ状態で組み込まれている。なお、外側ローラ50の端部内周面に形成した環状溝には、針状ころ51の抜け止め用のワッシャ53a、53bが装着されている。
このように、図6と図7に示すトリポード部材は、外側継手部材31のトラック溝37に挿入されたアウタローラ50と、脚軸41に外嵌されてアウタローラ50の内周側に配置されるインナローラ52とで構成されるものである。そして、インナローラ52の内周面は凸円弧状をなし、脚軸41は、縦断面において継手の軸線と直交するストレート形状をなし、横断面において継手の軸線と直交する方向でインナローラ52の内周面と接触する。このため、継手の軸線方向でインナローラ52の内周面との間に隙間53,53が形成されて、図8に示すように、脚軸41の横断面を長軸L1が継手の軸線に直交する略楕円形とした。
次に、図9と図10に示すトリポード型等速自在継手は、シングルローラタイプである。この場合のトルク伝達部材は、脚軸41の外径面に周方向に沿って配設される複数の針状ころ42を介して外嵌されるローラ33を備える。脚軸41の外周面は針状ころ42の内側転動面を構成し、ローラ33の内周面は針状ころ42の外側転動面を構成している。すなわち、この場合の脚軸41は、その外径面が円筒面とされた円柱体にて構成される。なお、複数の針状ころ42は、脚軸41の外周面とローラ33の内周面との間に総ころ状態で配設されている。
これら針状ころ42は、脚軸41の付け根部に外嵌されたインナワッシャ43と半径方向内側で接すると共に、脚軸41の先端部に外嵌されたアウタワッシャ44と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ44は、脚軸41の先端部に形成された環状溝45に丸サークリップ等の止め輪46を嵌合させることにより抜け止めされている。
なお、このシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手の他の構成は、前記ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手と同様であるので、同一部材については、図9と図10において、図6と図7と同一の符号を附して、それらの説明を省略する。
図1は、ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手の脚軸(横断面を長軸が継手の軸線に直交する略楕円形とした脚軸)の製造工程(圧縮残留応力付与工程)の概念図を示す。この場合の圧縮残留応力付与機構は、その外径面60aが円筒面である押圧部材としての回転体60にてトリポード部材32の脚軸41の相手部位(ローラユニット)との接触領域H1,H2)を押圧することになる。ここで、接触領域(H1,H2)は、図8に示すように、インナリング52が嵌合(密接)する部位である。
この場合、トリポード部材は、図示省略のチャック機構にて保持され、この状態で、図示省略の回転駆動機構にて、チャック機構にて保持されているトリポード部材32を、押圧すべき脚軸41の軸線O1廻りに回転させることができる。また、回転体60はホルダ(回転体保持具)61にその軸心廻りに回転可能とされるとともに、回転体60を保持しているホルダ61が、押圧すべき脚軸41に対して矢印A、Bのように接近・離間可能とされている。さらに、回転体60を保持しているホルダ61は、図2に示すように、押圧すべき脚軸41の軸線(回転軸線O1)に沿った矢印C、D方向の往復動が可能とされている。
次に、圧縮残留応力付与工程を説明する。この場合、一方の接触領域H1に対して圧縮残留応力付与用の荷重を負荷する方法を説明する。まず、図1(a)に示すように、接触領域H1の一方の端部H1aを回転体60の外径面にて押圧する。すなわち、予め設定されている押圧荷重を接触領域H1の一方の端部H1aに負荷する。その後、図1(b)及び図1(c)に示すように、トリポード部材32をその脚軸41の回転中心O1廻りに時計廻り方向に回転させて、接触領域H1の他方の端部H1bまでを回転体60の外径面にて押圧するようにする。
この際、図1(b)を基準(脚軸41の回転中心O1と、回転体60の回転中心O2とを結ぶ線L3上に脚軸41の横断面における楕円の長軸L1(図8参照)が配置される状態)とした場合、押圧点Pを基準点Lとし、この基準点Lに対して、図1(a)及び図1(c)では、押圧点Pは、脚軸41の回転中心O1を通る中心L0寄りとなる。このため、回転体60をこの基準点Lよりも脚軸41の回転中心O1寄りとする必要がある。
図1(a)から図1(b)へは、回転体60を脚軸41の回転に伴って矢印B方向に、脚軸41の回転中心O1と回転体60の回転中心O2とを結ぶ線L3上を、回転体60の回転中心O2側へ移動させることによって、押圧荷重を一定にする。この場合、図1(a)から図1(b)へは、脚軸41の接触範囲H1(一方の端部H1aから範囲頂点H1cまでの形状)に追従しつつ、回転体60は矢印B方向に移動する。また、図1(b)から図1(c)への、回転体60を脚軸41の回転に伴って矢印A方向に、脚軸41の回転中心O1と回転体60の回転中心O2との線L3上を、脚軸41の回転中心O1側へ移動させることによって、押圧荷重を一定にする。この場合、図1(b)から図1(c)へは、脚軸41の接触範囲H1(範囲頂点H1cから他方の端部H1bまでの形状)に追従しつつ、回転体60は矢印A方向に移動する。
図1(c)から、脚軸41がその回転中心O1を中心にさらに時計廻りに回転されることによって、回転体60と脚軸41とは離間して、押圧荷重の負荷が解除される。これによって、一方の接触領域H1への圧縮残留応力付与が終了する。なお、圧縮残留応力付与工程においては、図2に示すように、回転体60を脚軸先端側から脚軸基端側へ送るようにしても、回転体60の外径面の軸方向長さが脚軸41の接触領域H1の軸方向全長に渡るものでは、このような回転体60の脚軸の軸方向の送りを省略することができる。
また、一方の接触領域H1に対する押圧荷重の負荷が完了すれば、トリポード部材32の脚軸41をその回転軸線O1廻りに回転させて、他方の接触領域H2を、回転体60に対応する位置に配置できる。このため、接触領域H2の一方の端部H2aを回転体60の外径面にて押圧することができる。その後は、接触領域H1に対して行う工程と同様の工程を行うことによって、接触領域H2に対する押圧荷重の負荷を完了することができる。
すなわち、接触領域H2の一方の端部H2aを回転体60にて押圧している状態から、トリポード部材32の脚軸41をその回転軸線O1廻りに回転させて、接触領域H2の他方の端部H2bを回転体60にて押圧する状態とする。この際、脚軸41の接触範囲H2の形状(一方の端部H2aから範囲頂点H2cを通過して他方の端部H2bまでの形状)に追従して、回転体60の外径面にて押圧することができる。
このように、接触領域H1及び接触領域H2への押圧荷重の負荷が完了すれば、他の2つの脚軸41に対しても、同様に接触領域H1及び接触領域H2への押圧荷重の負荷を行えば、このトリポード部材32の3つの脚軸41への圧縮残留応力付与が完了する。
前記トリポード部材の製造方法では、トリポード部材32の脚軸41に相手部位との接触領域H1,H2に圧縮残留応力付与用の負荷を加えることができる。すなわち、接触領域H1,H2に負荷を加えることによって、接触領域H1,H2に加工硬化によって圧縮残留応力が付与される。このため、通常、トリポード部材32の脚軸41を研削や旋削により仕上げ加工するが、研削や旋削による加工荷重よりも大きな加工荷重を負荷することができ、トリポード部材32の脚軸41の接触領域H1,H2における脚軸表層に深い圧縮残留応力を付与することができる。このため、脚軸41の転動疲労寿命が向上し、耐用寿命の長寿命化を図ることができる。
このように、このトリポード部材の製造方法では、接触領域H1,H2に対して研削又は焼入れ鋼切削により仕上げ加工を行った後、圧縮残留応力付与用の負荷を加えるものである。このため、接触領域H1,H2の転動疲労寿命を向上させることができる。
図3及び図4は、回転体60を一対備えた圧縮残留応力付与装置を示している。また、この圧縮残留応力付与装置のチャック機構は、周方向に沿って複数の爪部材65をコレットチャック66である。また、コレットチャック66の爪部材65は、トリポード部材を支持する支持台67から突設される。
この支持台67は、トリポード部材32のボス40の一端面が載置される回転テーブルであり、この回転テーブルにトリポード部材32のボス40が載置された状態で、コレットチャック66が縮径された状態の爪部材65(径方向内方へ変位させた状態)を下方からボス40に嵌入させて、爪部材65を拡径させた状態(径方向外方へ変位させた状態)とする。これによって、トリポード部材32は、支持台67に載置された状態で保持される。
この状態では、図4に示すように、ワーク抑え治具68にてトリポード部材32が抑えられる。すなわち、ワーク抑え治具68は、トリポード部材32のボス40のスプライン孔40aよりも大径の円盤部68aとこの円盤部68aを支持する軸部68bとを有するものである。この場合、ワーク抑え治具68と支持台67とで、ワークであるトリポード部材32を挟持でき、この挟持状態で、脚軸41の中心線O1廻りの回転と、トリポード部材32のボス部中心O3廻りの回転とが可能となっている。
回転体60は、円柱体乃至円筒体からなり、回転体ホルダ61にて、その軸心廻りに回転可能とされている。回転体ホルダ61には、ホルダ支持体62に嵌入される軸部63が連設されている。すなわち、ホルダ支持体62は軸部63が嵌入される筒部62aを有し、この筒部62a内には、コイルスプリング等の弾性部材64(図5参照)が内装されている。このため、回転体ホルダ61は弾性部材64にて弾性的に押圧され、脚軸41の接触領域H1、H2への押圧荷重を所定値に保持するようにしている。また、ホルダ支持体62は、図示省略の往復動機構(シリンダ機構やボルト・ナット機構等)に連結され、軸方向(水平方向)に沿った往復動が可能とされている。
次に、この図3と図4に示す圧縮残留応力付与装置を用いた圧縮残留応力付与工程を図5を用いて説明する。まず、図3及び図4に示すように、トリポード部材32は、支持台67に載置された状態で、チャック機構(コレットチャック66)にてボス40をチャックした状態とし、さらに、ワーク抑え治具68にてトリポード部材32のボス40を抑える状態とする。すなわち、支持台67とワーク抑え治具68とで、挟持するようにする。この場合、回転体60、60の中心O2を通る直線L3上にトリポード部材32の脚軸41の回転軸心O1を配置し、かつ回転体60、60の中心O2間の中心にトリポード部材32の脚軸41の回転軸心O1を配置する。
次に、圧縮残留応力を付与する脚軸41を、離間している一対の回転体60を相対的に接近させて、図5(a)に示すように、接触領域H1の一方の端部H1aを回転体60の外径面にて押圧するとともに、接触領域H2の一方の端部H2aを回転体60の外径面にて押圧する状態とする。この場合、トリポード部材32の脚軸41をその脚軸回転中心O1を中心として回転させるとともに、回転体60を矢印A方向に移動させることで、図5(a)に示す状態と設定できる。
この図5(a)に示す状態から、トリポード部材32の脚軸41をその脚軸回転中心O1を中心として時計廻りに回転させて、図5(b)に示すように、接触領域H1の範囲頂点H1cを回転体60の外径面にて押圧するとともに、接触領域H2の範囲頂点H2cを回転体60の外径面にて押圧する状態とする。一方の回転体60では、脚軸41の接触範囲H1(一方の端部H1aから範囲頂点H1cまでの形状)に追従しつつ、矢印B方向に移動させる。他方の回転体60では、脚軸41の接触範囲H2(一方の端部H2aから範囲頂点H2cまでの形状)に追従しつつ、矢印B方向に移動させる。すなわち、図5(a)から図5(b)までにおいては、脚軸41の回転体60の対応部位が、脚軸41の形状に追従して脚軸41を反脚軸回転中心O1側へ変位するため、回転体60を矢印B方向に移動させることになる。
次に、図5(b)からさらにトリポード部材32の脚軸41をその脚軸回転中心O1を中心として時計廻りに回転させて、図5(c)に示すように、接触領域H1の他方の端部H2bを回転体60の外径面にて押圧するとともに、接触領域H2の他方の端部H2bを回転体60の外径面にて押圧する状態とする。一方の回転体60では、脚軸41の接触範囲H1(範囲頂点H1cから他方の端部H1bまでの形状)に追従しつつ、矢印A方向に移動させる。他方の回転体60では、脚軸41の接触範囲H2(範囲頂点H2cから他方の端部H2bまでの形状)に追従しつつ、矢印A方向に移動させる。すなわち、図5(b)から図5(c)までにおいては、脚軸41の回転体60の対応部位が、脚軸41の形状に追従して脚軸41が脚軸回転中心O1側へ変位するため、回転体60を矢印A方向に移動させることになる。
図5(c)から、脚軸41をその回転中心O1を中心にさらに時計廻りに回転されることによって、回転体60と脚軸41とは離間して、押圧荷重の負荷が解除される。これによって、両接触領域H1、H2への圧縮残留応力付与が終了する。
このように、一の脚軸41への圧縮残留応力付与が終了すれば、ボス部40の軸心廻りにトリポード部材32を回転させて、次に圧縮残留応力付与を付与する脚軸41を、一対の回転体60,60間に介在させる。その後は、前記したような図5に示す圧縮残留応力付与工程を行う。これによって、この脚軸42に対する圧縮残留応力付与が終了する。次に、圧縮残留応力を付与していない最後の脚軸41を、一対の回転体60,60間に介在させれば、この脚軸41に対しても、圧縮残留応力を付与することができる。これによって、3本の脚軸に対する圧縮残留応力付与工程が終了する。
このように、図3と図4に示す装置を用いれば、トリポード部材32の脚軸41の軸心O1に対して180°反対方向に配置される一対の回転体60,60にて、トリポード部材32の脚軸41の接触領域H1,H2に圧縮残留応力付与用の負荷を加えるように設定できる。このように設定することによって、圧縮残留応力付与用の負荷の作業時間の短縮化を図ることができ、しかも、180°反対方向から荷重を負荷することができ、圧縮残留応力付与が安定する。
また、前記実施形態では、ダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手の脚軸41、つまり、横断面を長軸L1が継手の軸線に直交する略楕円形とした脚軸に対するものであったが、脚軸41として、図11に示すように、外径面が円筒面とされたものに対しても、圧縮残留応力付与工程を行うことができる。なお、外径面が円筒面とされた脚軸の場合、接触領域Hが、周方向全周となる。
この場合も、図3及び図4に示す装置を用いて、外径面が円筒面とされた脚軸に対しても圧縮残留応力付与工程を行うことができる。すなわち、図12に示すように、一対の回転体60,60の軸心を結ぶ線L3上の回転体60,60の間の中間位置に、圧縮残留応力を付与すべき脚軸42の回転中心を合わせる。この状態で、一対の回転体60、60を相対的に接近させて、所定の押圧荷重を各回転体60、60にて脚軸41に付与する状態とする。
この状態で、脚軸41をその回転軸心廻りに時計廻りであっても反時計廻りであっても180°回転させることによって、周方向全周の接触領域Hに対して圧縮残留応力を付与することができる。脚軸41の外径面が円筒面であるので、脚軸41の回転体60の対応部位が変動せず、このため、回転体60を直線L3上を移動させる必要がない。その後、順次、他の脚軸41に対しても、同様に、周方向全周の接触領域Hに対して圧縮残留応力付与することができる。
ところで、本発明のように、脚軸に押圧荷重を負荷せずに、研削や旋削にて仕上げられてなる従来品よりも本発明での研削や焼入れ鋼切削にて仕上げられた後に、脚軸41(横断面形状が楕円形状とされる脚軸であっても、外径面が円筒面とされる脚軸であっても)に押圧荷重を負荷するものは、より深さの位置において高い圧縮残留応力とすることができる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、脚軸41として、図11に示すように、外径面が円筒面とされたものに対して、図1に示すように、回転体が1個の装置を用いてもよい。この場合、脚軸をその回転軸心廻りに360°回転させればよい。図1や図5では、脚軸41をその回転中心O1を中心に時計廻りに回転させていたが、脚軸41をその回転中心O1を中心に反時計廻りに回転させるものであってもよい。
図5に示す装置では、回転体ホルダをスプリングの押圧力にて、押圧荷重を脚軸に負荷しつつ、脚軸形状に追従して回転体を加工面(接触領域)に接触(押圧)するようにしている。これに対して、シリンダ機構(油圧シリンダやエアシリンダ等)で脚軸形状に追従するようにしてもよい。
32 トリポード部材
33 ローラ
40 ボス
41 脚軸
50 アウタローラ
51 針状ころ
52 インナローラ
60 回転体
H,H1,H2接触領域
33 ローラ
40 ボス
41 脚軸
50 アウタローラ
51 針状ころ
52 インナローラ
60 回転体
H,H1,H2接触領域
Claims (7)
- 脚軸を有するトリポード部材とこの脚軸に装着されるトルク伝達部材とを備えたトリポード型等速自在継手における前記トリポード部材を製造するトリポード部材製造方法であって、
トリポード部材の脚軸の外周面のうち、脚軸に装着される相手部位との接触領域に押圧部材により負荷を加えて圧縮残留応力を付与したことを特徴とするトリポード部材の製造方法。 - 前記トリポード型等速自在継手のトルク伝達部材は、前記外側継手部材のトラック溝に挿入されたアウタローラと、前記脚軸に外嵌されて前記アウタローラの内周側に複数のころを介して配置されるインナローラとで構成され、前記インナローラの内周面は凸円弧状をなし、前記脚軸は、縦断面において継手の軸線と直交するストレート形状をなし、横断面において継手の軸線と直交する方向で前記インナローラの内周面と接触し、かつ、継手の軸線方向で前記インナローラの内周面との間に隙間が形成されて、脚軸の横断面を長軸が継手の軸線に直交する略楕円形とすることを特徴とする請求項1に記載のトリポード部材の製造方法。
- トリポード部材の脚軸の外周面が円筒面形状とされ、前記脚軸の外径面に周方向に沿って配設される複数のころを介して外嵌されるローラを備え、前記接触領域が周方向全周であることを特徴とする請求項1に記載のトリポード部材の製造方法。
- 接触領域に対して研削又は焼入れ鋼切削により仕上げ加工を行った後、圧縮残留応力付与用の負荷を加えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のトリポード部材の製造方法。
- 圧縮残留応力付与用の負荷を加える前記押圧部材が、トリポード部材の脚軸に対して軸線方向に沿って線接触状に押圧する円筒面を有する回転体であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のトリポード部材の製造方法。
- 前記回転体が、トリポード部材の脚軸に対して押圧しつつ軸線方向に沿って移動することを特徴とする請求項5に記載のトリポード部材の製造方法。
- トリポード部材の脚軸の軸心に対して180°反対方向に配置される一対の回転体にて、トリポード部材の脚軸の接触領域に圧縮残留応力付与用の負荷を加えることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のトリポード部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017158513A JP2019035486A (ja) | 2017-08-21 | 2017-08-21 | トリポード部材の製造方法 |
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JP (1) | JP2019035486A (ja) |
-
2017
- 2017-08-21 JP JP2017158513A patent/JP2019035486A/ja active Pending
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