以下、検査用データ生成装置、検査システムおよび検査用データ生成処理用プログラムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、検査システム1の構成について説明する。図1に示す検査システム1は、「測定装置」、「検査用データ生成装置」および「検査装置」を一体的に備えた「検査システム」の一例である「インパルス試験システム」であって、測定装置2およびデータ処理装置3を備えて検査対象X(「検査対象」の一例)の良否を検査することができるように構成されている。この場合、検査対象Xは、「検査対象」の一例であって、本例では、一例として巻線部品(コイル)を検査対象Xとして良否を検査する例について説明する。なお、この検査対象Xについては、検査対象Xと同種の(同じ型式製品の)巻線部品である良品試料Xa(「良品の試料」の一例)、および検査対象Xと同種の(同じ型式製品の)巻線部品である不良品試料Xb(「不良品の試料」の一例)がそれぞれ用意されているものとする。
測定装置2は、「測定装置」に相当し、一例として、データ処理装置3の制御に従い、検査対象X、良品試料Xaおよび不良品試料Xbを対象とする各種の測定処理を実行可能に構成されている。具体的には、測定装置2は、測定信号発生部11、A/D変換部12、処理部13および記憶部14などを備えている。測定信号発生部11は、処理部13の制御に従って測定対象(検査対象X、良品試料Xaおよび不良品試料Xbなど)の両端間に測定信号としてのインパルス電圧を印加する。A/D変換部12は、一例として、処理部13の制御に従い、指定された周期(サンプリング周期:測定周期)で測定対象の両端間の電圧値をA/D変換(サンプリング:測定)して測定値D0(サンプリング値)を処理部13に順次出力する。
処理部13は、測定装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部13は、測定信号発生部11を制御して測定対象にインパルス電圧を印加させると共に、A/D変換部12を制御して任意の周期で電圧値のA/D変換処理(サンプリング処理)を実行させる。また、処理部13は、A/D変換部12から出力される測定値D0を記憶部14に記憶させ、かつ測定値D0に基づいて測定値データD1を生成して記憶部14に記憶させると共に、生成した測定値データD1をデータ処理装置3に出力する。記憶部14は、処理部13の動作プログラムのデータや、上記の測定値D0および測定値データD1などを記憶する。なお、実際の測定装置2には、測定装置2の動作条件を指示するための各種の操作スイッチや、測定条件の設定画面および測定値の表示画面などを表示する表示部を備えて構成されているが、これらについての図示および説明を省略する。
一方、データ処理装置3は、「検査用データ生成装置」に相当し、測定装置2から出力される良品試料Xaおよび不良品試料Xbについての測定値データD1に基づき、検査対象Xについての検査を行うための検査用データD2を生成する。また、データ処理装置3は、「検査装置」に相当し、生成した検査用データD2、および測定装置2から出力される検査対象Xについての測定値データD1に基づき、検査対象Xの良否を検査する。この場合、本例の検査システム1では、一例として、「検査用データ生成処理用プログラム」に相当するプログラムデータDpが既存のパーソナルコンピュータにインストールされてデータ処理装置3が構成されている。
具体的には、このデータ処理装置3は、操作部21、表示部22、処理部23および記憶部24を備えている。操作部21は、キーボード、およびマウスやタッチパネルなどのポインティングデバイスを備え(図示せず)、これらに対する操作に応じた操作信号を処理部23に出力する。表示部22は、「表示装置」の一例であって、処理部23の制御に従い、図3に示す測定結果表示画面30などの各種の表示画面を表示する。
処理部23は、「処理部」の一例であって、データ処理装置3を総括的に制御する。具体的には、処理部23は、後述するようにプログラムデータDpに従い、測定装置2を制御して良品試料Xaを対象とする測定処理(「第1の測定処理」の一例)、および不良品試料Xbを対象とする測定処理(「第2の測定処理」の一例)を実行させると共に、測定装置2から出力される測定値データD1に基づいて検査用データD2を生成する処理(「データ生成処理」の一例)を実行する。なお、検査用データD2の生成処理については、後に詳細に説明する。
また、処理部23は、プログラムデータDpに従い、測定装置2を制御して検査対象Xを対象とする測定処理(「第3の測定処理」の一例)を実行させると共に、生成した検査用データD2、および検査システム1から出力される測定値データD1に基づいて検査対象Xの良否を検査する検査処理を実行する。なお、この検査処理についても、後に詳細に説明する。記憶部24は、プログラムデータDp(処理部23の動作プログラムのデータ)や、検査システム1から出力される測定値データD1、および処理部23によって生成される検査用データD2などを記憶する。
次に、検査システム1による検査対象Xの検査方法について、添付図面を参照して説明する。なお、データ処理装置3にプログラムデータDpをインストールする作業や、測定装置2とデータ処理装置3とを接続する作業については既に完了しているものとする。
検査対象Xを検査するための検査用データD2の生成に際しては、まず、良品試料Xaを対象とする測定処理によって測定値データD1を得ると共に、不良品試料Xbを対象とする測定処理によって測定値データD1を得る。この際には、良品試料Xaを対象とする複数回の測定処理を実行して複数の測定値データD1を得ると共に、不良品試料Xbを対象とする複数回の測定処理を実行して複数の測定値データD1を得ることにより、後に、これらの測定値データD1に基づいて検査用データD2を生成する際に、検査対象Xの検査時に行なわれる測定処理においても生じ得る測定値D0のばらつきの程度を反映した検査用データD2を生成することが可能となる。
具体的には、まず、データ処理装置3の操作部21を操作して検査用データD2の生成処理の開始を指示する。この際に、処理部23は、プログラムデータDpに従い、一例として「良品の試料をセットして下さい。」とのメッセージを表示部22に表示させる。これに応じて、利用者は、測定装置2(測定信号発生部11およびA/D変換部12)を良品試料Xaに接続する。次いで、データ処理装置3の処理部23がプログラムデータDpに従って測定装置2を制御することにより、一例として、良品試料Xaについての30回(N1=30回の例)の測定処理を実行させる。
この際に、測定装置2では、処理部13が、まず、A/D変換部12を制御して処理部23から指示されたサンプリング周期(「予め規定されたサンプリング周期」の一例)での電圧値のサンプリング(測定)を開始させる。これにより、A/D変換部12から良品試料Xaについての測定値D0(良品試料Xaの両端間の電圧値)が順次出力されて記憶部14に記憶される。また、処理部13は、測定信号発生部11を制御して良品試料Xaにインパルス電圧を印加させる。この際には、良品試料Xaの両端間の測定値D0(電圧値)が、図2に示す減衰振動波形のように変化する。
次いで、処理部13は、一例として、良品試料Xaに対するインパルス電圧の印加を開始させる直前の時点tsから、処理部23によって指示された時間TAが経過した時点teにおいて、この時間TA内にA/D変換部12から出力された複数の測定値D0,D0・・を記録して測定値データD1(「第1の測定処理によって予め規定された時間分の複数の測定値がそれぞれ記録されたN1個の第1の測定値データ」のうちの1個の一例)を生成し、生成した測定値データD1を記憶部14に記憶させる。また、処理部13は、生成した測定値データD1をデータ処理装置3に出力する。これにより、N1=30回の測定処理のうちの1回が完了する。
この場合、上記の時間TAは、インパルス電圧の印加を完了した後に良品試料Xaの両端間に生じる減衰振動が十分に減衰する時間であって、検査対象X(良品試料Xaおよび不良品試料Xb)の種類(型式)に応じて予め規定されている。また、本例の検査システム1では、一例として、データ処理装置3から測定装置2に対して「測定値データD1を構成する測定値D0の数」の提示によって上記の時間TAが指示される構成が採用されている。
一方、データ処理装置3では、処理部23が、測定装置2から出力された測定値データD1を良品試料Xaについてのデータの1つとして記憶部24に記憶させる。この後、測定装置2では、処理部13がN1=30回の測定処理のうちの2回目以降の測定処理を順次実行する。これにより、測定装置2から出力された良品試料XaについてのN1=30個の測定値データD1がデータ処理装置3の記憶部24に記憶された状態となる(「予め規定された時間(本例では、時間TA)内に測定値が予め規定されたしきい値(一例として、0V)を超える状態、および予め規定されたしきい値(0V)を下回る状態に周期的に変化するN1個の第1の測定値データを取得する」との処理が完了した状態の一例)。
また、良品試料XaについてのN1=30個の測定値データD1の記憶が完了したときに、処理部23は、プログラムデータDpに従い、一例として「良品の試料に代えて不良品の試料をセットして下さい。」とのメッセージを表示部22に表示させる。これに応じて、利用者は、測定装置2(測定信号発生部11およびA/D変換部12)を不良品試料Xbに接続する。次いで、データ処理装置3の処理部23がプログラムデータDpに従って測定装置2を制御することにより、一例として、不良品試料Xbについての30回(N2=30回の例)の測定処理を実行させる。
なお、詳細な説明を省略するが、不良品試料Xbを対象とするN2=30回の測定処理については、上記の良品試料Xaを対象とするN1=30回の測定処理と同様の測定条件下で実行される。これにより、測定装置2から出力された不良品試料XbについてのN2=30個の測定値データD1がデータ処理装置3の記憶部24に記憶された状態となる(「予め規定された時間(本例では、時間TA)内に測定値が予め規定されたしきい値(本例では、0V)を超える状態、および予め規定されたしきい値(0V)を下回る状態に周期的に変化するN2個の第2の測定値データを取得する」との処理が完了した状態の一例)。
また、不良品試料XbについてのN2=30個の測定値データD1の記憶が完了したときに、処理部23は、検査対象Xの良否を検査するための検査用データD2の生成処理(データ生成処理)を開始する。この場合、本例の検査システム1では、データ処理装置3の処理部23が、プログラムデータDpに従い、取得した上記のN1=30個の測定値データD1およびN2=30個の測定値データD1に基づき、検査対象Xの検査時に良品試料Xaについての上記の各測定処理(第1の測定処理)や不良品試料Xbについての上記の各測定処理(第2の測定処理)と同じ測定条件で行なわれる検査対象Xについての5回(N3=5回の例)の測定処理(第3の測定処理)によって上記の時間TA(予め規定された時間)分の複数の測定値D0がそれぞれ記録されるN3=5個の測定値データD1に基づく検査対象Xの良否判別の条件を特定可能な検査用データD2を生成する構成が採用されている。
具体的には、処理部23は、良品試料XaについてのN1=30個の測定値データD1や不良品試料XbについてのN2=30個の測定値データD1を解析することにより、検査対象Xの検査時に検査対象Xについての測定値データD1に記録される時間TA分の各測定値D0のうちのいずれの測定値D0から他のいずれの測定値D0までの測定値D0,D0・・に基づいて検査対象Xの良否を判別すべきかを特定可能な「対象測定値範囲」を良否判別条件の1つとして規定する。
より具体的には、本例のデータ処理装置3(プログラムデータDp)では、時間TA分の測定値D0,D0・・がそれぞれ記録されている上記の各測定値データD1について「対象測定値範囲」とする範囲の候補である「仮範囲」を異ならせてLC値をそれぞれ演算し、良品試料XaについてのLC値と不良品試料XbについてのLC値とが大きく相違する関係となる「対象測定値範囲」を特定すると共に、時間TA分の測定値D0,D0・・がそれぞれ記録されている上記の各測定値データD1について「対象測定値範囲」を異ならせてRC値をそれぞれ演算し、良品試料XaについてのRC値と不良品試料XbについてのRC値とが大きく相違する関係となる「対象測定値範囲」を特定し、特定した「対象測定値範囲」を特定可能な情報を「良否判別条件」の1つとして記録して検査用データD2を生成する処理を実行する構成が採用されている。
したがって、処理部23は、まず、プログラムデータDpに従い、上記の「対象測定値範囲」の始点に対応する測定値D0と「対象測定値範囲」の終点に対応する測定値D0との組合せを異ならせた複数種類の「仮範囲(「M種類の仮範囲」の一例)」を規定する。この場合、本例のデータ処理装置3(プログラムデータDp)では、一例として、測定値データD1に記録されている時間TA時間分の測定値D0,D0・・のうちの最初に0Vを超えた測定値D0を基準の測定値D0とし(「K=1回目に、予め規定されたしきい値としての0Vを超えた測定値」を基準とする処理の例)、「基準の測定値D0から○○個前(または、○○個後)」との条件を満たす測定値D0を「仮範囲」の始点とし、かつ「始点とした測定値D0から○○個後」との条件を満たす測定値D0を「仮範囲」の終点として「仮範囲」を規定する構成が採用されている。なお、上記の「しきい値」については、0V以外の任意の値を定めることができる。
具体的には、M種類の「仮範囲」の1つとしては、一例として、図2に示す基準点P0(時点t0)の測定値D0を基準とし、基準点P0の測定値D0から数えて時間T1に相当する個数分前の時点t1の測定値D0をその「仮範囲」の始点P1とし、かつ始点P1の測定値D0から数えて時間T2に相当する個数後の時点t2の測定値D0をその「仮範囲」の終点P2とするように規定される。また、M種類の「仮範囲」の他の1つとしては、基準点P0の測定値D0を基準とし、基準点P0の測定値D0から数えて時間T1aに相当する個数分後の時点t1aの測定値D0をその「仮範囲」の始点P1aとし、かつ始点P1aの測定値D0から数えて時間T2aに相当する個数後の時点t2aの測定値D0をその「仮範囲」の終点P2aとするように規定される。
この場合、本例のデータ処理装置3(プログラムデータDp)では、後に説明するように、検査用データD2の生成に要する負担の軽減を目的として、測定値データD1に記録されている測定値D0,D0・・を5個おき(「J1=J2=5個」の例)に抽出し、抽出した測定値D0,D0・・に基づいて「第1の被判別値」や「第2の被判別値」を演算する構成が採用されている。
したがって、プログラムデータDpに従ってM種類の「仮範囲」を規定することにより、一例として、図7,8に示すように、「基準の測定値D0から200個前の測定値D0」、「基準の測定値D0から195個前の測定値D0」、・・「基準の測定値D0から5995個後の測定値D0」および「基準の測定値D0から6,000個後の測定値D0」との1,240種類の始点と、「始点から50個後の測定値D0」、「始点から55個後の測定値D0」、・・「始点から3,995個後の測定値D0」および「始点から4,000個後の測定値D0」との791種類の終点の組合せからなるM=980,840種類の「仮範囲」が規定される。なお、両図では、各「仮範囲」の終点を「始点からの測定値D0の個数(対象測定値範囲の長さ)」で表している。
次いで、処理部23は、プログラムデータDpに従い、良品試料XaについてのN1=30個の測定値データD1毎に、M=980,840種類の「仮範囲」内の各測定値D0,D0・・に基づいてLC値(「良否判別用の第1の被判別値」の一例)およびRC値(「良否判別用の第1の被判別値」の他の一例)をそれぞれ演算する「第1の演算処理」を実行する。これにより、良品試料Xaについての30×980,840=29,425,200個のLC値、および30×980,840=29,425,200個のRC値がそれぞれ演算されて、演算結果が「仮範囲」の種類に関連付けられて記憶部24に記憶される。
この場合、LC値やRC値の算出方法については、一例として、前述した特許文献に開示の手順と同様に擬似逆行列を用いて算出することができる。また、規定された時間分の測定値D0が測定値データD1内に存在しない「仮範囲」については、一例として、測定値データD1における最末尾の測定値D0を、不足する測定値D0として使用してLC値やRC値を演算するか、或いは、その「仮範囲」を後述する「対象測定値範囲」の候補から除外する。
同様にして、処理部23は、プログラムデータDpに従い、不良品試料XbについてのN2=30個の測定値データD1毎に、M=980,840種類の「仮範囲」内の各測定値D0,D0・・に基づいてLC値(「良否判別用の第2の被判別値」の一例)およびRC値(「良否判別用の第2の被判別値」の他の一例)をそれぞれ演算する(「第2の演算処理」の一例)。これにより、不良品試料Xbについての30×980,840=29,425,200個のLC値、および30×980,840=29,425,200個のRC値がそれぞれ演算されて、演算結果が「仮範囲」の種類に関連付けられて記憶部24に記憶される。
続いて、処理部23は、プログラムデータDpに従い、良品試料XaについてのLC値と不良品試料XbについてのLC値とが大きく相違する「仮範囲」(「第1の被判別値と第2の被判別値とが予め規定された条件を満たす関係となる仮範囲」の一例)、および良品試料XaについてのRC値と不良品試料XbについてのRC値とが大きく相違する「仮範囲」(「第1の被判別値と第2の被判別値とが予め規定された条件を満たす関係となる仮範囲」の他の一例)をそれぞれ特定する(「特定処理」の実行)。なお、以下の各処理については、上記の演算によって求めたLC値を「第1の被判別値」および「第2の被判別値」とする処理に加えて、上記の演算によって求めたRC値を「第1の被判別値」および「第2の被判別値」とする処理が実行されるが、データ処理装置3による「データ生成処理」についての理解を容易とするために、LC値についての処理を説明し、RC値についての処理に関する説明を省略する。
具体的には、処理部23は、まず、M=980,840種類の「仮範囲」毎に、検査対象XについてのN1=30個のLC値のうちの最小値である「良品最小値」、および検査対象XについてのN1=30個のLC値のうちの最大値である「良品最大値」をそれぞれ特定する。この際には、一例として、いずれかの「仮範囲」における良品試料XaについてのLC値、および不良品試料XbについてのLC値として、図4に示すような値が演算されたときに、処理部23は、同図に示すLCminを良品試料Xaについての「良品最小値」として特定し、かつLCmaxを良品試料Xaについての「良品最大値」として特定する。なお、同図では、良品試料XaについてのLC値(RC値)を「○」で表している。また、同図および後に参照する図5,6では、不良品試料XbについてのLC値(RC値)を「●」で表している。
次いで、処理部23は、N2=30個の不良品試料Xbについての各LC値について、上記の「良品最小値」よりも小さいLC値については、「良品最小値」との差を「不良度合値」として演算し、「良品最大値」よりも大きいLC値については、「良品最大値」との差を「不良度合値」としてそれぞれ演算すると共に、「良品最小値」から「良品最大値」までの範囲内のLC値については、「不良度合値」を「0」とする演算処理を各「仮範囲」毎にそれぞれ実行する。
具体的には、処理部23は、一例として、図4に示すように、「良品最小値」の一例であるLCminよりも小さい不良品試料XbについてのLC値であるLCd−aについては、LCminとの差であるLCdk−aを「不良度合値」として演算する。また、「良品最大値」の一例であるLCmaxよりも大きい不良品試料XbについてのLC値であるLCd−bについては、LCmaxとの差であるLCdk−bを「不良度合値」として演算する。さらに、LCminからLCmaxまでの範囲であるLClength内のLC値であるLCd−cについては、「不良度合値」を「0」とする。
続いて、処理部23は、プログラムデータDpに従い、N2=30個の不良品試料Xbについての「不良度合値」の合計値を各「仮範囲」毎にそれぞれ演算する。この際には、図5の左図に示すように、不良品試料Xbを対象とするN2=30回の測定処理時に良品試料XaについてのLC値のばらつきの範囲であるLClengthとの差が小さいLC値が演算される測定値D0が含まれる「仮範囲」については、たとえN1=30個のLC値のうちの数個がLCmaxとの差、またはLCminとの差が十分に大きな値になったとしても、「不良度合値」の合計値として小さな値が演算される。また、同図の右図に示すように、不良品試料Xbを対象とするN2=30回の測定処理時にLClengthとの差が大きいLC値が演算される測定値D0が含まれる「仮範囲」については、たとえN2=30個のLC値のうちの数個がLClength内の値になったとしても、「不良度合値」の合計値として大きな値が演算される。
次いで、処理部23は、上記の「不良度合値」の合計値を、LCminとLCmaxとの差であるLClength(良品試料XaについてのLC値のばらつきの大きさ)で除した値(良品試料XaについてのLC値のばらつきの大きさに対する「不良度合値」の合計値の比)を各「仮範囲」毎にそれぞれ演算し、演算結果を各「仮範囲」に関連付けて記憶部24に記憶させる。この際には、図6の左図および右図に示す例のように、仮に、不良品試料XbについてのN2=30個のLC値の各「不良度合値」の合計値が同じであったときに、左図の例のようにLClengthが広い「仮範囲」(良品試料Xaについての測定値D0のばらつきが大きい「仮範囲」)よりも、右図の例のようにLClengthが狭い「仮範囲」(良品試料Xaについての測定値D0のばらつきが小さい「仮範囲」)の方が、合計値をLClengthで除した値が大きな値となる。
続いて、処理部23は、プログラムデータDpに従い、演算した各「仮範囲」毎の値(合計値をLClengthで除した値)に基づき、各「仮範囲」がどの程度「対象測定値範囲」に適しているかを示す「数値」(良品試料XaについてのLC値と不良品試料XbについてのLC値とがどの程度「予め規定された条件を満たす関係」となっているかを示す数値)をそれぞれ特定する。
具体的には、処理部23は、まず、良品試料XaについてのN1=30個のLC値の分布と、不良品試料XbについてのN2=30個のLC値の分布との相違の度合いを、相違の度合いが大きいほど高い数値となる「予め規定された基準」に従って各「仮範囲」毎にそれぞれ数値化(点数化)する。これにより、図7に示すように各「仮範囲」毎の「数値」(同図における「0.0」や「0.1」などの値)が特定される。
次いで、処理部23は、M=980,840種類の「仮範囲」のうちの1つを対象として、対象の「仮範囲」における始点に対応する測定値D0との相違量が5サンプリング周期以下(「La=5」の例)の測定値D0を始点とする「仮範囲」であって、かつ対象の「仮範囲」における終点に対応する測定値D0との相違量が5サンプリング周期以下(「Lb=5」の例)の測定値D0を終点とする「仮範囲」(図7において、いずれかの「仮範囲」を対象としたときに、その「仮範囲」の周囲に図示されている8個の「仮範囲」)の「数値」をそれぞれ特定し、特定した各「数値」のうちの最小値を、対象の「仮範囲」に関連付ける処理を、各「仮範囲」をそれぞれ「対象の仮範囲」として実行する。
具体的には、一例として、図7に示す例において、「始点」が「基準点P0の測定値D0から2,000個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から1,995個目の測定値D0まで(1,995個後の測定値D0)」の「仮範囲」については、その「仮範囲」における始点に対応する測定値D0との相違量が5サンプリング周期以下となる「基準点P0の測定値D0から1,995個後」から「基準点P0の測定値D0から2,005個後」までの測定値D0を始点とする「仮範囲」であって、かつ「始点の測定値D0から1,990個目」から「始点の測定値D0から2,000個目」までの測定値D0を終点とする「仮範囲」の8個の「仮範囲」について特定された8個の「数値」のうちの最小値が、その「仮範囲」に関連付けられる「数値」として特定される。
つまり、「始点」が「基準点P0の測定値D0から2,000個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から1,995個目の測定値D0まで(1,995個後の測定値D0)」の「仮範囲」については、図8に示すように、「始点」が「基準点P0の測定値D0から1,995個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から1,990個目の測定値D0まで(1,990個後の測定値D0)」の「仮範囲」について特定された「1.6」との「数値」が最小値として特定されて関連付けられる。
同様にして、図7に示す例において、「始点」が「基準点P0の測定値D0から2,005個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から2,000個目の測定値D0まで(2,000個後の測定値D0)」の「仮範囲」については、その「仮範囲」における始点に対応する測定値D0との相違量が5サンプリング周期以下となる「基準点P0の測定値D0から2,000個後」から「基準点P0の測定値D0から2,010個後」までの測定値D0を始点とする「仮範囲」であって、かつ「始点の測定値D0から1,995個目」から「始点の測定値D0から2,005個目」までの測定値D0を終点とする「仮範囲」の8個の「仮範囲」について特定された8個の「数値」のうちの最小値が、その「仮範囲」に関連付けられる「数値」として特定される。
つまり、「始点」が「基準点P0の測定値D0から2,005個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から2,000個目の測定値D0まで(2,0000個後の測定値D0)」の「仮範囲」については、図8に示すように、「始点」が「基準点P0の測定値D0から2,010個後の測定値D0」で、「長さ(終点)」が「始点の測定値D0から1,995個目の測定値D0まで(1,995個後の測定値D0)」の「仮範囲」について特定された「2.0」との「数値」が最小値として特定されて関連付けられる。
この場合、不良品試料Xbに実際に生じている不良に起因して、良品試料XaについてのN1=30個のLC値の分布と、不良品試料XbについてのN2=30個のLC値の分布との相違の度合いが大きくなっている「仮範囲」が存在する。そのような「仮範囲」と「始点」や「長さ(終点)」が同様の他の「仮範囲」では、良品試料XaについてLC値の分布と不良品試料XbについてLC値の分布との相違の度合いが大きくなる傾向がある。一方、不良品試料Xbに実際に生じている不良に起因するものではなく、良品試料Xaについての測定処理時や不良品試料Xbについての測定処理時の測定誤差やノイズ等の影響や演算の性質などに起因して、良品試料XaについてのN1=30個のLC値の分布と、不良品試料XbについてのN2=30個のLC値の分布との相違の度合いが大きくなっている「仮範囲」も存在する。この場合、そのような「仮範囲」と「始点」や「長さ(終点)」が同様の他の「仮範囲」では、良品試料XaについてLC値の分布と不良品試料XbについてLC値の分布との相違の度合いがそれほど大きくならないことがある。
したがって、上記のように、「始点」や「長さ(終点)」が同様の他の「仮範囲」についての「数値」のうちの最小値を、対象の「仮範囲」に関連付ける(対象の「仮範囲」の「数値」として置き換える)ことにより、良品試料XaについてLC値の分布と不良品試料XbについてLC値の分布との相違の度合いが測定誤差等の影響で大きくなった「仮範囲」について、「特異な数値(実際の不良に起因して算出される数値ではない可能性が高い大きな値)」が関連付けられたままとなる事態が回避される。
このような処理をM=980,840種類の各「仮範囲」毎に実行することにより、図8に示すように、各「仮範囲」毎の「良品試料XaについてのLC値の分布と不良品試料XbについてLC値の分布との相違の度合い」に即した「数値」が関連付けられて記憶部24に記憶される。
続いて、処理部23は、関連付けられた「数値」が大きい「仮範囲」ほど、良品試料XaについてのLC値の分布と不良品試料XbについてのLC値の分布とが大きく相違する関係(予め規定された条件を満たす関係)の度合いが大きいとして、「対象測定値範囲」の候補とする「仮範囲」を特定する。具体的には、処理部23は、一例として、関連付けられた「数値」が大きい順で、予め規定された数(一例として、3個)の「仮範囲」を「対象測定値範囲」の候補として特定する。
なお、条件を満たす「仮範囲」が、予め規定された数(本例では3個)よりも多いときには、一例として、対応するLClengthが短い「仮範囲」(すなわち、構成する測定値D0の数が少ないことでLC値等の演算に要する時間が短い「仮範囲」)を優先して規定数の「仮範囲」を特定する。また、処理部23は、特定した「仮範囲」の数が1個の場合には、その「仮範囲」を「対象測定値範囲」とし、特定した「仮範囲」の数が本例のように複数個の場合には、特定した「仮範囲」のなかから「対象測定値範囲」とする「仮範囲」を選択させ、選択された「仮範囲」を「対象測定値範囲」として決定する。
この後、処理部23は、プログラムデータDpに従い、決定した「対象測定値範囲」を特定可能な情報を記録して検査用データD2を生成し、生成した検査用データD2を検査対象Xの種類(型式)に関連付けて記憶部24に記憶させる。なお、「対象測定値範囲」については、1つの「対象測定値範囲」をLC値算出用およびRC値算出用に共用させることもできるが、LC値算出用の「対象測定値範囲」とRC値算出用の「対象測定値範囲」とを別個に決定することもできる。以上により、「データ生成処理」が完了し、検査対象Xの良否を検査する準備が整う。
一方、検査システム1による検査対象Xの検査に際しては、データ処理装置3の処理部23が、プログラムデータDpに従って測定装置2を制御して、前述した良品試料Xaや不良品試料Xbについての測定処理時と同様の測定条件で測定処理(「第3の測定処理」)を実行させる。なお、検査対象Xを対象とする測定処理時には、前述したように、一例としてN3=5回の測定処理を実行する。これにより、検査対象XについてのN3=5個の測定値データD1(第3の測定値データ)が測定装置2から出力される。
また、処理部23は、測定装置2から測定値データD1が出力される都度、その測定値データD1を記憶部24に記憶させると共に、図3に示すように、測定値データD1に基づく波形Wを表示部22の測定結果表示画面30に表示させる。また、処理部23は、検査用データD2に記録されている「対象測定値範囲」を示す対象測定値範囲表示31と、「対象測定値範囲」の始点を示す始点表示32a、および終点を示す終点表示32bとを波形Wに重ねて表示させる(「対象測定値範囲を第3の測定値データの波形に対応させて表示させることで報知する」との「特定結果報知処理」の一例:同図に示す破線と数値の表示)。これにより、対象測定値範囲表示31、始点表示32aおよび終点表示32bを見た利用者は、波形Wにおけるいずれの測定値D0に基づいてLC値やRC値が演算されて検査対象Xの良否が検査されるかを認識する。
次いで、処理部23は、プログラムデータDpに従い、測定値データD1に記録されている各測定値D0,D0・・のうちから、検査用データD2に記録されている「対象測定値範囲」に含まれる測定値D0,D0・・を特定し、特定した測定値D0,D0・・に基づいてLC値およびRC値を演算する処理を、各測定値データD1毎に実行する。続いて、処理部23は、演算したLC値やRC値が、予め規定された良品範囲(一例として、「対象測定値範囲」とした「仮範囲」に対応する良品試料XaについてLClengthに対する±5%の範囲)内に含まれているか否かを判別する。
この際に、N3=5個の測定値データD1に基づいて演算した5つのLC値のすべてが良品範囲内の値で、かつN3=5個の測定値データD1に基づいて演算した5つのRC値のすべてが良品範囲内の値のときには、処理部23は、その検査対象Xを良品と判別する。また、5つのLC値および5つのRC値のうちの1つ以上が良品範囲外の値のときには、処理部23は、その検査対象Xを不良品と判別する。以上により、検査対象Xについての良否検査が完了する。
このように、このデータ処理装置3では、処理部23が、検査対象Xの「良否判別条件」を特定可能な検査用データD2を生成する「データ生成処理」において、検査対象Xの検査時に検査対象Xについての測定値データD1に記録されている各測定値D0のうちのいずれの測定値D0から他のいずれの測定値D0までの各測定値D0に基づいて検査対象Xの良否を判別すべきかを特定可能な「対象測定値範囲」を「良否判別条件」の1つとして規定するときに、「対象測定値範囲」の始点に対応する測定値D0と「対象測定値範囲」の終点に対応する測定値D0との組合せを少なくとも異ならせたM種類(本例では、980,840種類)の「仮範囲」を規定し、かつ良品試料Xaについての各測定値データD1毎に各「仮範囲」内の各測定値D0に基づいて良否判別用の「第1の被判別値(本例では、LC値およびRC値)」をそれぞれ演算する「第1の演算処理」と、不良品試料Xbについての各測定値データD1毎に各「仮範囲」内の各測定値D0に基づいて良否判別用の「第2の被判別値(本例では、LC値およびRC値)」をそれぞれ演算する「第2の演算処理」とを実行すると共に、「第1の被判別値」と「第2の被判別値」とが予め規定された条件を満たす関係となる「仮範囲」を特定する「特定処理」を実行し、特定した「仮範囲」を「対象測定値範囲」として検査用データD2を生成する。
また、この検査システム1は、良品試料Xa、不良品試料Xbおよび検査対象Xについての測定処理を実行して良品試料Xaについての測定値データD1、不良品試料Xbについての測定値データD1および検査対象Xについての測定値データD1を生成する測定装置2と、「データ生成処理」を実行すると共に、検査用データD2および検査対象Xについての測定値データD1に基づいて検査対象Xの良否を検査するデータ処理装置3とを備えて検査対象Xの良否を検査可能に構成されている。さらに、このプログラムデータDpでは、上記の「データ生成処理」をデータ処理装置3の処理部23に実行させる。
したがって、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、検査対象Xの種類や、測定環境の相違に応じて、検査対象Xについての測定値データD1に記録されている各測定値D0,D0・・のうちから、良品試料XaについてのLC値やRC値と、不良品試料XbについてのLC値やRC値とが大きく相違する関係となる「対象測定値範囲」が自動的に特定されて検査用データD2が生成されるため、この検査用データD2に基づいて検査対象Xを検査することによって各種の不良が生じ得る検査対象Xの良否を的確に判別することができる。
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、「特定処理」において、M種類の「仮範囲」毎に、N1個(本例では、30個)の「第1の被判別値」のうちの最小値である「良品最小値」、およびN1個の「第1の被判別値」のうちの最大値である「良品最大値」をそれぞれ特定し、N2個(本例では、30個)の「第2の被判別値」毎に、「良品最小値」よりも小さい「第2の被判別値」については「良品最小値」との差を「不良度合値」として演算し、かつ「良品最大値」よりも大きい「第2の被判別値」については「良品最大値」との差を「不良度合値」としてそれぞれ演算すると共に、N2個の「第2の被判別値」の各「不良度合値」の合計値を演算し、演算した合計値に基づいて予め規定された条件を満たす関係となる「仮範囲」を特定する。
したがって、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、良品試料Xaにおいても生じ得る「被判別値(LC値やRC値)」のばらつきの影響を排除することができるため、「対象測定値範囲」に相応しい「仮範囲」を好適に特定して検査用データD2を生成することができる。
さらに、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、処理部23が、「特定処理」において、合計値を「良品最小値」と「良品最大値」との差で除した値に基づいて予め規定された条件を満たす関係となる「仮範囲」を特定することにより、「良品最小値」や「良品最大値」との差が同程度の「第2の被判別値」となる「仮範囲」に関し、「良品最小値」と「良品最大値」との差が大きい「仮範囲」(良品試料Xaについての「第1の被判別値」のばらつきが大きい「仮範囲」)よりも、「良品最小値」と「良品最大値」との差が小さい「仮範囲」(良品試料Xaについての「第1の被判別値」のばらつきが小さい「仮範囲」)の方が大きな値が演算されるため、良品試料Xaについての「第1の被判別値」のばらつきの範囲に対する差が大きい「第2の被判別値」が演算され得る「仮範囲」、すなわち、検査対象Xの良否を一層確実に判別し得る「仮範囲」を好適に特定して検査用データD2を生成することができる。
また、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、処理部23が、「特定処理」において、N1個の「第1の被判別値」の分布とN2個の「第2の被判別値」の分布との相違の度合いを、相違の度合いが大きいほど高い数値となる予め規定された基準に従ってM個の「仮範囲」毎にそれぞれ数値化し、その「数値」に基づいて予め規定された条件を満たす関係となる「仮範囲」を特定することにより、良品試料Xaについての「第1の被判別値」の分布と、不良品試料Xbについての「第2の被判別値」の分布とが大きい「仮範囲」を的確に特定することができる。
さらに、このデータ処理装置3では、処理部23が、「特定処理」において、M種類の「仮範囲」のうちの1つを対象として、対象の「仮範囲」における始点に対応する測定値D0との相違量がLaサンプリング周期以下の測定値D0を始点とする「仮範囲」であって、かつ対象の「仮範囲」における終点に対応する測定値D0との相違量がLbサンプリング周期以下の測定値D0を終点とする「仮範囲」の数値をそれぞれ特定し、特定した各数値のうちの最小値を対象の「仮範囲」に関連付ける処理をM個の「仮範囲」をそれぞれ対象の「仮範囲」として実行すると共に、関連付けられた数値が大きい「仮範囲」ほど予め規定された条件を満たす関係の度合いが大きいとして予め規定された条件を満たす関係となる「仮範囲」を特定する。
したがって、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、不良品試料Xbについての「第2の測定処理」時に突発的に生じた測定値D0のずれに起因して「第2の被判別値」が大きくなったような「仮範囲」が「対象測定値範囲」として特定される事態を招くことなく、その始点や終点が同様の「仮範囲」においても「第2の被判別値」が十分に大きな値となる「仮範囲」、すなわち、不良品試料Xbに生じている定常的な不良の影響で良品試料Xaについての測定値D0とは異なる値となる測定値D0を含んでいる「仮範囲」を「対象測定値範囲」として特定して検査用データD2を生成することができる。
また、このデータ処理装置3では、処理部23が、予め規定された時間内に測定値D0が予め規定されたしきい値を超える状態および予め規定されたしきい値を下回る状態に周期的に変化する各良品試料Xaについての測定値データD1および各不良品試料Xbについての測定値データD1を取得すると共に、「データ生成処理」において、予め規定された時間分の各測定値D0のうちのK回目に予め規定されたしきい値を超えた測定値D0、およびK回目に予め規定されたしきい値を下回った測定値D0のいずれか予め規定された一方(本例では、最初に(K=1回目に)0Vを超えた測定値D0)を基準としてM種類の「仮範囲」を規定する。
したがって、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、良品試料Xaについての「第1の測定処理」時や、不良品試料Xbについての「第2の測定処理」時に測定値データD1の始点に僅かなずれが生じた場合であっても、すべての測定値データD1において、同じ基準を満たす測定値D0(K回目に予め規定されたしきい値を超えた測定値D0、または、K回目に予め規定されたしきい値を下回った測定値D0)を基準として「仮範囲」の始点を特定することができるため、測定値データD1の始点の僅かなずれの影響を排除して、「対象測定値範囲」に相応しい「仮範囲」を特定することができる。
さらに、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、処理部23が、良品試料Xaについての測定値データD1に記録されている各測定値D0をJ1個おき(本例では、5個おき)に抽出し、抽出した各測定値D0に基づいて「第1の被判別値」を演算すると共に、不良品試料Xbについての測定値データD1に記録されている各測定値D0をJ2個おき(本例では、5個おき)に抽出し、抽出した各測定値D0に基づいて「第2の被判別値」を演算することにより、「仮範囲」に含まれるすべての測定値D0,D0・・を対象として「第1の被判別値」や「第2の被判別値」を演算する場合と比較して、演算対象の測定値D0の数が少なくて済む分だけ、処理部23にかかる負担や、演算結果を一時的に記憶するメモリの容量を十分に小さくすることができる。
また、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、処理部23が、「特定処理」によって特定した「対象測定値範囲」を報知する「特定結果報知処理」を実行することにより、どのような範囲に含まれる測定値D0を対象として検査対象Xの良否が検査されるかを利用者に対して確実かつ容易に認識させることができる。
さらに、このデータ処理装置3、検査システム1およびプログラムデータDpによれば、処理部23が、「特定結果報知処理」において、少なくとも各良品試料Xaについての測定値データD1、不良品試料Xbについての測定値データD1および検査対象Xについての測定値データD1のうちの少なくとも1つの波形(本例では、検査対象Xについての測定値データD1に基づく波形W)を表示部22に表示させると共に、「対象測定値範囲」を波形Wに対応させて表示させて報知することにより、どのような範囲に含まれる測定値D0を対象として検査対象Xの良否が検査されるかを利用者に対して一層容易に認識させることができる。
なお、「検査用データ生成装置」および「検査システム」の構成や、「検査用データ生成処理用プログラム」に記述されている処理手順は、上記の検査システム1(データ処理装置3)の構成の例や、プログラムデータDpの記述の例に限定されない。
例えば、「データ生成処理」において、良品試料Xaを対象とする「第1の測定処理」の実行回数=N1と、不良品試料Xbを対象とする「第2の測定処理」の実行回数=N2とを同数(本例では、N1=N2=30)とした例について説明したが、各測定処理の実行回数については、30回以外の任意の複数回とすることができ、また、「第1の測定処理」の実行回数と「第2の測定処理」の実行回数とを互いに相違する回数とすることができる。
この場合、N1回の「第1の測定処理」によって生成されるN1個の「第1の測定値データ」については、1つの良品試料Xaを対象とするN1回の測定処理によって生成されるデータに限定されず、複数の良品試料Xaを対象とする合計N1回の測定処理によって生成されるデータを使用することができる。同様にして、N2回の「第2の測定処理」によって生成されるN2個の「第2の測定値データ」については、1つの不良品試料Xbを対象とするN2回の測定処理によって生成されるデータに限定されず、複数の不良品試料Xbを対象とする合計N2回の測定処理によって生成されるデータを使用することができる。なお、複数の良品試料Xaを対象とする合計N1回の測定処理や、複数の不良品試料Xbを対象とする合計N2回の測定処理によって生成されるデータを使用する場合には、各良品試料Xa毎の測定処理が複数回で、各不良品試料Xb毎の測定処理が複数回となるような処理を行うのが好ましい。
また、「データ生成処理」における「第1の測定処理」の実行回数=N1、および「第2の測定処理」の実行回数=N2と、検査対象Xの検査時における「第3の測定処理」の実行回数=N3とを互いに相違する数(本例では、N1=N2=30:N3=5)とした例について説明したが、各検査対象Xの検査時に行う測定処理の実行回数については、「第1の測定処理」および「第2の測定処理」のいずれか(または、双方)と同じ回数とすることができる。
さらに、「データ生成処理」に際して規定する「仮範囲」の種類数は、M=980,840種類に限定されず、M=2種類以上の任意の複数種類を規定して「対象測定値範囲」の候補とすることができる。また、「第1の被判別値」および「第2の被判別値」(LC値やRC値)の演算に際して、測定値データD1に記録されている測定値D0,D0・・からJ1=J2=5個おきに測定値D0を抽出して使用する例について説明したが、「第1の被判別値」の演算に使用する測定値D0の抽出間隔(J1の値)および「第2の被判別値」の演算に使用する測定値D0の抽出間隔(J2の値)については、「5」以外の任意の自然数とすることができ、また、J1の値およびJ2の値を互いに相違する数とすることができる。さらに、「第1の被判別値」および「第2の被判別値」の演算に際して、「仮範囲」内のすべての測定値D0,D0・・を使用することもできる。
また、いずれかの「仮範囲」を対象として、始点や終点が同程度の「仮範囲」の「数値」のなかから最小値を特定する際に、対象の「仮範囲」に対して始点や終点などがLa=Lb=1サンプリング周期だけ相違する「仮範囲」を対象とする例について説明したが、この処理時におけるLaの値およびLbの値については「1」以外の任意の数とすることができ、また、La≠Lbとすることもできる。
さらに、測定値データD1に記録されている各測定値D0,D0・・のうちの最初に(K=1回目に)「しきい値(本例では0V)」を超えた測定値D0を基準として「仮範囲」の始点を特定する例について説明したが、K回目は、1回目(最初)に限定されず、2回目以上の任意の回数とすることができる。また、測定値データD1に記録されている各測定値D0,D0・・のうちの「K回目にしきい値」を下回った測定値D0を基準として「仮範囲」の始点を特定することもできる。この場合、K回目は、1回目(最初)に限定されず、2回目以上の任意の回数とすることができる。また、「しきい値を下回った測定値」や「しきい値を超えた測定値」に代えて、測定値データD1に記録されている各測定値D0,D0・・のうちの最小値または最大値を「仮範囲」の始点とすることもできる。
さらに、「良品最小値(LCmin、RCmin)」よりも小さい「第2の被判別値(LC値、RC値)」については「良品最小値」との差を「不良度合値」とし、かつ「良品最大値(LCmax、RCmax)」よりも大きい「第2の被判別値」については「良品最大値」との差を「不良度合値」とする例について説明したが、良品試料XaについてのLC値の平均値や重心値と不良品試料XbについてのLC値との差異を「不良度合値」としたり、良品試料XaについてのRC値の平均値や重心値と不良品試料XbについてのRC値との差異を「不良度合値」としたりすることもできる。また、「不良度合値の合計値」を「良品最小値と良品最大値との差」で除した値に基づいて「予め規定された条件を満たす関係となる仮範囲」を特定する例についで説明したが、「不良度合値の合計値」そのものに基づいて、条件を満たす「仮範囲」を特定することもできる。
さらに、「第1の被判別値」や「第2の被判別値」は、LC値やRC値に限定されず、LC値に任意の係数を乗じた値、RC値に任意の係数を乗じた値、およびLC値をRC値で除した値などの任意の値を使用することができる。また、測定装置2から取得した測定値データD1の測定値D0,D0・・をそのまま使用して「第1の被判別値」や「第2の被判別値」を演算する例について説明したが、取得した測定値データD1について任意のフィルタリング処理(任意の値を下回る測定値や、任意の値を超える測定値を除外する処理)を実行し、フィルタリング処理後の値を使用して「第1の被判別値」や「第2の被判別値」を演算することもできる。この場合、条件を異ならせた複数種類のフィルタリング処理を実行し、各フィルタリング処理後の値を使用して「第1の被判別値」や「第2の被判別値」を演算することもできる。
また、関連付けられた「数値」が最も大きい「仮範囲」(「第1の被判別値」と「第2の被判別値」とが最も相違している「仮範囲」)を「対象測定値範囲」の候補として特定し、特定した「仮範囲」のなかから「対象測定値範囲」を特定する例について説明したが、「予め規定された条件を満たす関係」は、このような例に限定されず、「第1の被判別値」と「第2の被判別値」との相違の度合いが2番目以降の「仮範囲」を「対象測定値範囲」の候補として特定することもできる。
さらに、検査対象Xについての検査時に対象測定値範囲表示31や始点表示32aおよび終点表示32bを波形W(検査対象Xについての測定値データD1に基づく波形)に対応させて表示することで「対象測定値範囲」を報知する「特定結果報知処理」を例に挙げて説明したが、検査対象Xについての検査に先立ち、良品試料Xaについての測定値データD1や不良品試料Xbについての測定値データD1に基づく波形に対応させて「対象測定値範囲」を特定させる任意の表示(対象測定値範囲表示31や始点表示32aおよび終点表示32bなど)を表示させる処理を「特定結果報知処理」として実行することもできる。
また、検査対象Xの検査時に検査対象Xについての測定値データD1に基づく波形を表示させると共に、良品試料Xaについての測定値データD1に基づく波形、および不良品試料Xbについての測定値データD1に基づく波形の少なくとも一方を表示させて、それらの波形に対応させて「対象測定値範囲」を特定させる任意の表示を表示させる処理を「特定結果報知処理」として実行することもできる。また、「対象測定値範囲」は、対象測定値範囲表示31や始点表示32aおよび終点表示32bなどを表示させる処理に限定されず、「対象測定値範囲」を特定可能な情報(始点の位置や終点の位置)を音声メッセージとして出力する処理を行うこともできる。
さらに、「検査システム」としての検査システム1におけるデータ処理装置3の構成要素である表示部22に「対象測定値範囲」を特定可能な情報を表示させる例について説明したが、外部装置としての表示装置に「対象測定値範囲」を特定可能な情報を表示させることもできる。また、データ処理装置3を「検査用データ生成装置」および「検査装置」として機能させる例について説明したが、検査用データD2を生成する「検査用データ生成装置」と、「測定装置」からの「第3の測定値データ」および「検査用データ」に基づいて「検査対象」を検査する「検査装置」とを別個独立して備えて「検査システム」を構成することもできる。また、「検査用データ生成装置」、「測定装置」および「検査装置」を1つの装置で構成する(「検査装置」内に「検査用データ生成装置」に相当する要素、および「測定装置」に相当する要素を一体的に設ける)こともできる。
加えて、「検査対象」としての巻線部品を検査する例について説明したが、「検査システム」によって良否を検査する「検査対象」はこれに限定されず、コンデンサや抵抗体などの各種の電子部品、および回路基板上の任意の検査ポイント間を「検査対象」として検査することができる。