以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るプーリユニットが適用されるエンジンの正面図である。車両には、エンジン10の補機として、例えば図1に示すようにジェネレータ103、ウォーターポンプ105、及びコンプレッサ106等が搭載される。例えば、第1実施形態におけるジェネレータ103は、エンジン10で生成される動力によって発電することに加え、エンジン10に動力を与えるための動力を生成することもできる。すなわち、ジェネレータ103は、ISG(Integrated Starter Generator)である。ウォーターポンプ105は、エンジン10の冷却水を循環させるためのポンプである。コンプレッサ106は、カーエアコンに用いられる冷媒を圧縮するための装置である。
ジェネレータ103、ウォーターポンプ105及びコンプレッサ106は、エンジン10の動力で駆動する。エンジン10の動力は、図1に示すベルト109を介してジェネレータ103、ウォーターポンプ105及びコンプレッサ106に伝達される。ベルト109は、例えばVリブドベルトである。ベルト109は、クランクシャフトプーリ11、アイドラープーリ12、プーリユニット13、テンショナープーリ14、ウォーターポンププーリ15及びコンプレッサプーリ16に取り付けられている。
クランクシャフトプーリ11は、エンジン10のクランクシャフト101に連結されている。アイドラープーリ12は、ベルト109の位置を調節するための装置である。プーリユニット13は、ジェネレータ103のシャフトに連結されている。テンショナープーリ14は、テンショナー104のシャフトに連結されている。テンショナー104は、ベルト109の張力を調節するための装置である。ウォーターポンププーリ15は、ウォーターポンプ105のシャフトに連結されている。コンプレッサプーリ16は、コンプレッサ106のシャフトに連結されている。
ジェネレータ103がISGであるため、エンジン10の動力がジェネレータ103に伝達されることもあり、逆にジェネレータ103の動力がエンジン10に伝達されることもある。すなわち、プーリユニット13は、ベルト109に伝達されたトルクをジェネレータ103のシャフトに伝達でき、且つジェネレータ103で生じたトルクをベルト109に伝達できる必要がある。
また、クランクシャフト101はエンジン10内の爆発によって回転するので、クランクシャフト101の回転速度は変動している。一方、ジェネレータ103のシャフトの慣性は比較的大きい。このため、ベルト109の張力が変動することがある。ベルト109の張力の変動が大きい場合、ベルト109の滑りを抑制するためにベルト109の初期張力が大きくなる。しかしながら、ベルト109の初期張力の増大は、摩擦の増加及びベルト109の破損に繋がる。このため、プーリユニット13は、ベルト109の張力の変動を抑制できることが望ましい。
図2は、第1実施形態に係るプーリユニットの斜視図である。図3は、第1実施形態に係るプーリユニットの側面図である。図4は、第1実施形態に係るプーリユニットの正面図である。図5は、図4におけるA−A断面図である。図6は、第1実施形態に係るプーリユニットの分解斜視図である。図7は、第1実施形態に係るハブの斜視図である。図8は、第1実施形態に係る第2カム板の斜視図である。図9は、第1実施形態に係るプーリユニットを、プーリを除いて示す側面図である。図10は、図9における転動体ユニットの周辺を拡大した側面図である。
図5及び図6に示すように、プーリユニット13は、プーリ2と、ハブ3と、軸受4と、転動体ユニット5と、第2カム板6と、軸受71と、軌道輪72と、弾性部材73と、ガイド部材74と、軸受75と、止め輪76と、シール77と、を備える。
プーリ2は、図1に示すベルト109に接する部材である。プーリ2は、図5に示すようにハブ3の両端に設けられた軸受4及び軸受75を介してハブ3に支持されており、回転軸Zを中心に回転することができる。プーリ2は、図3に示すように略円筒状の部材であって、ベルト取付部21、弾性部材収納部22及びガイド部材収納部23を有する。弾性部材収納部22の内径はベルト取付部21の内径より大きい。ガイド部材収納部23の内径は弾性部材収納部22の内径より大きい。
図5に示すように、ベルト取付部21は、外周面に複数の溝211を有する。ベルト109は、溝211に嵌まる。ベルト109と溝211との間で生じる摩擦により、ベルト109とプーリ2との間で動力が伝達される。また、ベルト取付部21は、内周面に複数の第1歯2aを有する。複数の第1歯2aは、回転軸Zを中心とした周方向において等間隔に配置されている。複数の第1歯2aは、例えばインボリュートスプラインである。第1歯2aは、回転軸Zに沿っている。すなわち、第1歯2aの長手方向が回転軸Zに平行である。
以下の説明において、回転軸Zに沿う方向は、軸方向と記載される。回転軸Zを中心とした放射方向は、単に放射方向と記載される。回転軸Zを中心とした周方向は、単に周方向と記載される。
ハブ3は、図1に示すジェネレータ103のシャフトに連結される部材である。ジェネレータ103のシャフトが、筒状であるハブ3の内側に挿入される。ハブ3は、回転軸Zを中心にジェネレータ103のシャフトと一体に回転する。ハブ3は、図5に示すように軸受取付部31と、基部32と、第1カム板33とを備える。軸受取付部31は、円筒状であって軸受4に接する。回転軸Zから軸受取付部31の外周面までの距離D31(軸受取付部31の外径の半分の距離)は、図5に示すように回転軸Zから転動体52までの距離D52より大きい。基部32は、軸受取付部31の外径よりも小さい外径を有する円筒状である。第1カム板33は、軸受取付部31及び基部32の間に配置されており、略円環状である。第1カム板33は、例えば軸受取付部31及び基部32と一体に形成されている。
第1カム板33は、図7に示すように軸受接触面330と、第1カム面331と、平坦面332と、第2ストッパー33sとを備える。軸受接触面330は、軸受4に接し、軸受4を位置決めする。第1カム面331及び平坦面332は、軸受接触面330とは反対側の表面である。第1カム面331は、斜面331aと、底面331bと、斜面331cとを備える。底面331bは、斜面331a及び斜面331cの間に配置されている。底面331bは、転動体52に沿う形状を有する。斜面331a及び斜面331cは、回転軸Zに対する直交平面に対して角度をなす。より具体的には、図10に示すように、斜面331aが回転軸Zに対する直交平面となす角度θ1、及び斜面331cが回転軸Zに対する直交平面となす角度θ2は、互いに等しく且つ一定である。平坦面332は、回転軸Zに対する直交平面に平行である。図7に示すように、3つの第1カム面331が周方向で等間隔に配置されており、2つの第1カム面331の間に平坦面332が配置されている。すなわち、第1カム面331及び平坦面332が周方向で交互に並んでいる。
図5及び図6に示す軸受4は、ラジアル軸受であって、例えば深溝玉軸受である。軸受4は、例えば軸受取付部31に圧入される。軸受4の内輪が軸受取付部31の外周面に接しており、軸受4の外輪がベルト取付部21の内周面に接している。軸受4は、回転軸Zを中心に回転できるようにプーリ2を支持する。
転動体ユニット5は、図5及び図6に示すように、保持器51と、複数の転動体52とを備える。保持器51は、複数の転動体52を位置決めするための部材である。保持器51は、円環状であって、転動体52を収納するための複数のポケットを有する。例えば、3つのポケットが周方向で等間隔に配置されている。また、保持器51は、ハブ3とは独立して回転軸Zを中心に回転することができる。転動体52は、例えばローラーである。転動体52の数は例えば3つである。それぞれの転動体52が保持器51のポケットに嵌められている。転動体52は、保持器51のポケット内で回転(自転)することができ、且つ保持器51と共に回転軸Zを中心に回転(公転)することができる。転動体52は、第1カム面331(図7参照)及び後述する第2カム面61に接する。
第2カム板6は、プーリ2と一体に回転する部材であって、転動体ユニット5の隣りに配置される。第2カム板6は、図8に示すように軸受接触面60と、第2カム面61と、平坦面62と、複数の第2歯6aとを備える。軸受接触面60は、軸受71(図5、6参照)に接する。第2カム面61は、斜面61aと、底面61bと、斜面61cとを備える。底面61bは、斜面61a及び斜面61cの間に配置されている。底面61bは、転動体52に沿う形状を有する。斜面61a及び斜面61cは、回転軸Zに対する直交平面に対して角度をなす。より具体的には、図10に示すように、斜面61aが回転軸Zに対する直交平面となす角度θ3、及び斜面61cが回転軸Zに対する直交平面となす角度θ4は、互いに等しく且つ一定である。例えば、角度θ3及び角度θ4は、角度θ1及び角度θ2に等しい。平坦面62は、回転軸Zに対する直交平面に平行である。図8に示すように、3つの第2カム面61が周方向で等間隔に配置されており、2つの第2カム面61の間に平坦面62が配置されている。すなわち、第2カム面61及び平坦面62が周方向で交互に並んでいる。
第2歯6aは、第2カム板6の外周面に設けられている。複数の第2歯6aは、図8に示すように、周方向において等間隔に配置されている。複数の第2歯6aは、例えばインボリュートスプラインである。第2歯6aは、回転軸Zに沿っている。すなわち、第2歯6aの長手方向が回転軸Zに平行である。第2歯6aは、プーリ2の第1歯2a(図5参照)に噛み合っている。これにより、第2カム板6は、プーリ2と一体に回転する。また、第2カム板6は、軸方向に移動することができる。
図5に示す軸受71は、スラスト軸受であって、例えばスラストニードル軸受である。軸受71は、第2カム板6の隣りに配置される。軸受71は、第2カム板6の軸受接触面60に接する。軸受71は、回転軸Zを中心に回転できるように第2カム板6を支持する。軸受71は、第2カム板6が軸方向に移動すると、第2カム板6と共に移動する。
軌道輪72は、円環状の部材であって軸受71に接する。軸受71が、第2カム板6及び軌道輪72に挟まれている。軌道輪72は、レース又はワッシャとも呼ばれる。軌道輪72は、第2カム板6及び軸受71が軸方向に移動すると、第2カム板6及び軸受71と共に移動する。軌道輪72は、軸受71から受ける軸方向の荷重を弾性部材73に伝達する。また、図5に示すように、転動体ユニット5、第2カム板6、軸受71及び軌道輪72は、ベルト取付部21の内周面に対向している。
弾性部材73は、例えば図5に示すように軸方向に重ねられた複数の皿ばねである。弾性部材73の軸方向の一端は軌道輪72に接しており、他端はガイド部材74に接している。例えば、弾性部材73の最大変形量(撓み量)は、転動体52の直径より小さい。このため、転動体52が第1カム面331(図7参照)及び第2カム面61(図8参照)から逸脱することを抑制できる。弾性部材73は、プーリ2の弾性部材収納部22に収納されている。すなわち、弾性部材73は、弾性部材収納部22の内周面に対向している。また、弾性部材73の他端側は、ガイド部材収納部23に収納されている。すなわち、弾性部材73の他端側の一部は、ガイド部材収納部23の内周面に間隔を有して対向している。
ガイド部材74は、軸受75を支持すると共に弾性部材73を位置決めするための支持部材である。ガイド部材74は、軸方向において、弾性部材73に対して第2カム板6の反対側に設けられる。ガイド部材74は、円環状であってハブ3の基部32に嵌まっており、ガイド部材収納部23に収納されている。さらに、ガイド部材74は、基部32の弾性部材73の内径側と重なる位置で固定される。言い換えると、ガイド部材74は、基部32と弾性部材73との間にあり、基部32及び弾性部材73と軸方向に重なる位置で固定される。
具体的には、ガイド部材74は、環状部74aと、第1突出部74bと、フランジ部74cと、第2突出部74dとを含む。環状部74aは、回転軸Zと交差する方向に設けられ、回転軸Zに対する直交平面に平行である。第1突出部74bは、環状部74aの放射方向の内側に設けられ、軸方向に突出する。本実施形態では、弾性部材73は、基部32の外周面に対して間隔を設けて配置される。第1突出部74bは、環状部74aから、軸受71に向かう方向に突出し、弾性部材73と基部32との間の空間に配置される。つまり、第1突出部74bは、弾性部材73の放射方向の内側で、かつ弾性部材73と重なる位置まで設けられる。フランジ部74cは、第1突出部74bの端部に設けられ、放射方向の内側に突出する。フランジ部74cは、弾性部材73と重なる位置の基部32に、止め輪76によって固定される。
第2突出部74dは、環状部74aの放射方向の外側に設けられ、軸方向に突出する。第2突出部74dは、弾性部材73の放射方向の外側に配置される。環状部74aと、第1突出部74bと、第2突出部74dとで形成される凹部74fに、弾性部材73の他端が収納される。第2突出部74dの端部は、弾性部材収納部22の、軸方向の端部と接する。また、第2突出部74dの内径は、弾性部材収納部22の内径と実質的に等しい大きさである。このような構成により、弾性部材収納部22と、ガイド部材74と、基部32と、軌道輪72とで囲まれた空間に弾性部材73が収納される。
また、第2突出部74dの外周面には、溝部74eが設けられている。溝部74eは、図6に示すように、周方向に沿って設けられる。溝部74eに、軸受75が配置される。軸受75は、ラジアル軸受であって、例えばすべり軸受である。軸受75は、図5に示すようにガイド部材74の第2突出部74dの外周面と、ガイド部材収納部23の内周面との間に設けられる。軸受75は、軸受4と共にプーリ2を支持している。
プーリ2とハブ3との間には潤滑材が設けられている。潤滑材は例えばグリースである。潤滑材は、例えばプーリ2とハブ3との間の空間S(図5参照)のうち、転動体52の放射方向の内側端部より外側の領域を少なくとも満たす。すなわち、図5に示すように、回転軸Zを含む断面において、転動体52の放射方向の内側端部を通り、回転軸Zに平行な直線を、直線L1とする。直線L1よりも外側の領域は、潤滑材で満たされている。このため、軸受75の周囲も潤滑材で満たされているので、軸受75は、回転軸Zを中心に回転できるようにプーリ2を支持することができる。
止め輪76は、ガイド部材74を位置決めするための部材である。止め輪76は、1つのスリットを有する略円環状であって、図5に示すように基部32の端部に設けられた溝39に嵌められる。止め輪76は、弾性部材73の放射方向の内側で、かつ弾性部材73と重なる位置に設けられる。これにより、ガイド部材74の軸方向の移動が規制される。したがって、ガイド部材74に接する弾性部材73の端部は軸方向に移動できない。第2カム板6、軸受71及び軌道輪72が弾性部材73に向かって移動すると、弾性部材73の一端が軸方向に移動する一方、弾性部材73の他端は移動しない。このため、弾性部材73が変形する。この時、弾性部材73に弾性力が生じるので、第2カム板6は、軌道輪72及び軸受71を介して弾性部材73から反力を受ける。
以上のような構成により、図5に示すように、弾性部材73の他端は、側面から見たときに、ガイド部材74及び軸受75と重なって配置される。又、弾性部材73の放射方向の内側において、弾性部材73と重なる位置で、ガイド部材74はハブ3に固定される。このため、軸方向において、弾性部材73よりも軸方向の外側で、ガイド部材74とハブ3とを接続する必要がなくなる。したがって、プーリユニット13は、軸方向の長さを小さくすることができる。
シール77は、プーリ2の端部の開口を塞ぐための部材である。シール77は、図6に示すように略円盤状の部材であって、プーリ2の端部に設けられた溝29に嵌まっている。シール77は、潤滑材の漏洩を防止するとともに、異物がプーリ2の内側に侵入することを防止する。
プーリ2及びハブ3のいずれにもトルクが加わっていない場合、転動体52は、図10に示すように底面331b及び底面61bに接している。転動体52が底面331b及び底面61bに接している時、平坦面332と平坦面62との間の距離は最も小さくなる。この時、弾性部材73は変形していない。
プーリ2又はハブ3にトルクが加わると、プーリ2及びハブ3の間の相対角度(以下、単に相対角度と記載する)が変化する。相対角度とは、平坦面332と平坦面62との間の距離が最も小さくなっている場合(図10に示す状態の場合)を基準とした、プーリ2及びハブ3の間の回転角度のずれである。すなわち、相対角度は、平坦面332と平坦面62との間の距離が最も小さくなっている場合には0°である。
図11は、エンジンからプーリにトルクが伝達された場合の、転動体ユニット及び第2カム板の動きを示す模式図である。図12は、ジェネレータからハブにトルクが伝達された場合の、転動体ユニット及び第2カム板の動きを示す模式図である。すなわち、図11は、プーリ2が駆動側(ハブ3が従動側)である場合の転動体ユニット5及び第2カム板6の動きを示す。図12は、プーリ2が従動側(ハブ3が駆動側)である場合の転動体ユニット5及び第2カム板6の動きを示す。
図11に示すように、プーリ2にトルクT1が加わると、転動体52が自転及び公転し、斜面61cを昇る。転動体52は斜面61cを昇ると、斜面61c及び斜面331aに挟まれるので、第1カム板33から軸方向の反力を受ける。これにより、転動体ユニット5及び第2カム板6は第1カム板33から離れる方向に移動し、弾性部材73(図5参照)が変形する。トルクT1の一部は弾性部材73の変形で消費される一方、トルクT1の残りの一部はハブ3を徐々に回転させる。そして、転動体52が第1カム板33から受ける反力が弾性部材73で生じる弾性力に等しくなると、転動体ユニット5及び第2カム板6が停止する。その結果、プーリ2からハブ3にトルクT1が伝達される。すなわち、ハブ3がプーリ2と一体に回転する。このように、プーリユニット13は、ベルト109に伝達されたトルクをジェネレータ103のシャフトに伝達することができる。また、上述したように、弾性部材73の最大変形量が転動体52の直径より小さい。このため、弾性部材73が最大まで変形しても、転動体52と第1カム板33との接触及び転動体52と第2カム板6との接触は保たれる。
仮にトルクT1が急激に変化した場合であっても、トルクT1の一部が弾性部材73の変形で消費されるので、ハブ3に伝達されるトルクの変化はトルクT1の変化より緩やかになる。このため、プーリ2の回転速度に対するハブ3の相対的な回転速度が変化しにくい。したがって、プーリユニット13は、ベルト109の張力の変動を抑制できる。
図12に示すように、ハブ3にトルクT2が加わると、転動体52が自転及び公転し、斜面331cを昇る。転動体52は斜面331cを昇ると、斜面331c及び斜面61aに挟まれるので、第1カム板33から軸方向の反力を受ける。これにより、転動体ユニット5及び第2カム板6は第1カム板33から離れる方向に移動し、弾性部材73(図5参照)が変形する。トルクT2の一部は弾性部材73の変形で消費される一方、トルクT2の残りの一部は第2カム板6及びプーリ2を徐々に回転させる。そして、転動体52が第1カム板33から受ける反力が弾性部材73で生じる弾性力に等しくなると、転動体ユニット5及び第2カム板6が停止する。その結果、ハブ3からプーリ2にトルクT2が伝達される。すなわち、プーリ2がハブ3と一体に回転する。このように、プーリユニット13は、ジェネレータ103で生じたトルクをベルト109に伝達することができる。
仮にトルクT2が急激に変化した場合であっても、トルクT2の一部が弾性部材73の変形で消費されるので、プーリ2に伝達されるトルクの変化はトルクT2の変化より緩やかになる。このため、ハブ3の回転速度に対するプーリ2の相対的な回転速度が変化しにくい。したがって、プーリユニット13は、ベルト109の張力の変動を抑制できる。
ところで、転動体52が第1カム板33の平坦面332及び第2カム板6の平坦面62に乗り上げると、転動体52に過大な応力が生じる。このため、転動体52が破損する可能性がある。これに対して、プーリユニット13においては、プーリ2が第1ストッパー2sを備え、ハブ3が第2ストッパー33sを備える。
図13は、図5におけるB−B断面図である。図14は、プーリ又はハブに加わるトルクと、プーリ及びハブの相対角度との関係を示すグラフである。
図13に示すように、ハブ3の第1カム板33は、外周面に突起である第2ストッパー33sを備える。例えば第2ストッパー33sの数は3つである。3つの第2ストッパー33sが周方向で等間隔に並んでいる。すなわち、図13に示す断面において、回転軸Z及び1つの第2ストッパー33sの頂点を通る直線と、回転軸Z及び他の第2ストッパー33sの頂点を通る直線とがなす角度α1は120°である。第2ストッパー33sは、例えば、平坦面332に隣接する第1カム板33の外周面に設けられている。具体的には、第2ストッパー33sの周方向の位置は、平坦面332の周方向の中間位置に等しい。また、第2ストッパー33sの放射方向の高さH1は、第1カム板33とベルト取付部21との間の隙間の高さH3の半分より大きい。隙間の高さH3は、ベルト取付部21の内径及び第1カム板33の外径の差に等しい。
プーリ2のベルト取付部21は、内周面に突起である第1ストッパー2sを備える。例えば第1ストッパー2sの数は6つである。2つの第1ストッパー2sが1つの第1ストッパーグループ2sgを構成している。1つの第1ストッパーグループ2sgの中で隣り合う第1ストッパー2s間の距離は、隣り合う第1ストッパーグループ2sg間の距離より小さい。3つの第1ストッパーグループ2sgが、周方向で等間隔に並んでいる。すなわち、図13に示す断面において、回転軸Z及び1つの第1ストッパーグループ2sgの中間点を通る直線と、回転軸Z及び他の第1ストッパーグループ2sgの中間点を通る直線とがなす角度α2は120°である。また、第1ストッパー2sの放射方向の高さH2は、第2ストッパー33sの高さH1に等しい。軸方向から見た場合、第1ストッパー2sの形状は第1歯2a(図5参照)の形状と同じである。周方向における第1ストッパー2sの位置は、周方向における第1歯2aの位置と同じである。第1ストッパー2sは、第1歯2aの製造工程において第1歯2aと共に製造される。例えば、第1歯2a及び第1ストッパー2sは、ブローチ加工により製造される。
プーリ2及びハブ3のいずれにもトルクが加わっていない場合(図10に示す状態の場合)、図13に示すように2つの第1ストッパーグループ2sgの中間に第2ストッパー33sが位置する。プーリ2又はハブ3にトルクが加わると、相対角度が変化するので、第2ストッパー33sが第1ストッパー2sに近付く。そして、図13に示す角度α3が0°になると、第2ストッパー33sが第1ストッパー2sに接する。角度α3は、回転軸Z及び第2ストッパー33sの側面上の点P1を通る直線と、回転軸Z及び第1ストッパー2sの側面上の点P2を通る直線とがなす角度である。点P1及び点P2は回転軸Zを中心とする同じ円周上に位置する。また、図13に示すように、回転軸Z及び第1カム面331の周方向の一端を通る直線と、回転軸Z及び第1カム面331の周方向の他端を通る直線とがなす角度を角度βとする。相対角度が0°である時の角度α3は角度βより小さい。角度βは60°である。
仮に相対角度が角度β以上になると、転動体52が平坦面332及び平坦面62に乗り上げることになる。しかし、第1実施形態に係るプーリユニット13においては、相対角度が0°である時の角度α3が角度βより小さいので、図14に示すように相対角度の最大値が角度βよりも小さくなる。このため、プーリ2又はハブ3に過大なトルクが生じた場合であっても、相対角度が角度βを上回らないので、転動体52が平坦面332及び平坦面62に乗り上がらない。したがって、転動体52は平坦面332及び平坦面62に接触しない。このため、平坦面332及び平坦面62に求められる硬度が低くなるので、例えば高周波焼入れ等の加工が必要となる面積が小さくなる。その結果、プーリユニット13の製造コストが低減される。
また、3つの第2ストッパー33sが等間隔に配置され且つ3つの第1ストッパーグループ2sgが等間隔に配置されているので、3つの第2ストッパー33sが同時に第1ストッパー2sに接する。このため、第1ストッパー2sに接する第2ストッパー33sの数が1つである場合に比較して、1つの第1ストッパー2sに加わる力及び1つの第2ストッパー33sに加わる力が低減する。このため、第1ストッパー2s及び第2ストッパー33sが破損しにくくなる。
また、仮に第1ストッパーグループ2sgが含む第1ストッパー2sの数が1つである場合、1つの第1ストッパー2sが2方向の力を受けることになる。これに対して、第1実施形態においては、第1ストッパーグループ2sgが2つの第1ストッパー2sを含むので、1つの第1ストッパー2sに加わる力の方向は一定となる。すなわち、第1ストッパーグループ2sgに含まれる2つの第1ストッパー2sのうち一方は、ハブ3がプーリ2に対して正回転した時に第2ストッパー33sに接し、他方は、ハブ3がプーリ2に対して逆回転した時に第2ストッパー33sに接する。このため、1つの第1ストッパー2sが2方向の力を受ける場合に比較して、第1ストッパー2sが破損しにくくなる。
なお、プーリユニット13は、必ずしもISGであるジェネレータ103に適用されなくてもよく、エンジンに与えるための動力を発生させない(発電のみを行う)ジェネレータに適用されてもよい。すなわち、プーリユニット13は、ベルトに伝達されたトルクをジェネレータに伝達できる装置であればよく、必ずしもジェネレータで生じたトルクをベルトに伝達する装置でなくてよい。
なお、転動体52は、必ずしもローラーでなくてもよい。例えば、転動体52はボールであってもよい。弾性部材73は、必ずしも複数の皿ばねでなくてもよい。例えば、弾性部材73は、コイルスプリングであってもよい。
なお、第1カム板33は、必ずしも軸受取付部31及び基部32と一体に形成されていなくてもよい。例えば、第1カム板33は、軸受取付部31及び基部32と別体に加工されてもよい。この場合、第1カム板33は、軸受取付部31の外周面、或いは基部32の外周面に固定される。
なお、図10に示す角度θ1及び角度θ2は異なっていてもよい。角度θ3及び角度θ4は異なっていてもよい。また、角度θ1、角度θ2、角度θ3及び角度θ4は、必ずしも一定でなくてもよい。例えば、角度θ1及び角度θ2は、第1カム面331の縁に向かうに従って大きくなっていてもよい。角度θ3及び角度θ4は、第2カム面61の縁に向かうに従って大きくなっていてもよい。
なお、第1ストッパーグループ2sgに含まれる第1ストッパー2sの数は、3つ以上であってもよいし、1つであってもよい。また、ハブ3は、少なくとも2つの第2ストッパー33sを含む複数の第2ストッパーグループを有していてもよい。この場合、複数の第2ストッパーグループが周方向に等間隔に配置される。また、第1ストッパーグループ2sgの数及び第2ストッパー33sの数(第2ストッパーグループの数)は、それぞれ3つでなくともよく、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。ただし、第1ストッパーグループ2sgの数及び第2ストッパー33sの数(第2ストッパーグループの数)は等しいことが好ましい。
以上で説明したように、プーリユニット13は、ハブ3と、プーリ2と、第1カム板33と、第2カム板6と、転動体52と、弾性部材73と、支持部材であるガイド部材74を備える。ハブ3は、回転軸Zを中心に回転する。プーリ2は、ハブ3の両端に設けられた軸受4及び軸受75を介してハブ3に支持される。第1カム板33は、ハブ3と一体となって回転する。第2カム板6は、プーリ2と一体に回転し且つ回転軸Zに沿う方向に移動できる。転動体52は、第1カム板33及び第2カム板6に接する。弾性部材73は、回転軸Zに沿う方向の第2カム板6の移動に伴って変形する。ガイド部材74は、回転軸Zに沿う方向において、弾性部材73に対して第2カム板6の反対側に設けられる。ガイド部材74は、ハブ3と弾性部材73との間にあり、ハブ3及び弾性部材73と軸方向に重なる位置で固定される。
これにより、プーリ2又はハブ3に加わるトルクが急激に変化した場合であっても、トルクの一部が弾性部材73の変形で消費される。このため、プーリ2の回転速度に対するハブ3の相対的な回転速度が変化しにくい。その結果、プーリユニット13は、ベルト109の張力の変動を抑制できる。また、弾性部材73の軸力を受けるガイド部材74が、ハブ3と弾性部材73との間にあり、ハブ3及び弾性部材73と軸方向に重なる位置で固定される。このため、回転軸Zに沿う方向において、弾性部材73よりも外側で、ガイド部材74とハブ3とを接続する必要がなくなる。したがって、プーリユニット13は、軸方向の長さを小さくすることができる。
また、プーリユニット13において、ガイド部材74は、環状部74aと、第1突出部74bと、第2突出部74dとを備える。環状部74aは、回転軸Zに交差する方向に設けられ、弾性部材73の回転軸Zに沿う方向の端部と対向する。第1突出部74bは、環状部74aの放射方向の内側に設けられ、回転軸Zに沿う方向に突出し、ハブ3と弾性部材73との間にあり、ハブ3及び弾性部材73と軸方向に重なる位置でハブ3に固定される。第2突出部74dは、環状部74aの放射方向の外側に設けられ、回転軸Zに沿う方向に突出する。
これにより、環状部74aは、弾性部材73の軸力を受けるとともに、弾性部材73の位置決めが可能である。また、第1突出部74bが設けられているため、弾性部材73よりも軸方向の外側で、環状部74aとハブ3とを接続する必要がなくなる。したがって、プーリユニット13は、軸方向の長さを小さくすることができる。
また、プーリユニット13において、第2突出部74dの外周面とプーリ2との間に軸受75が設けられる。これにより、軸受75を、弾性部材73の放射方向の外側で、且つ弾性部材73と重なる位置に配置することができる。このため、プーリユニット13は、軸方向の長さを小さくすることができる。
(第2実施形態)
図15は、第2実施形態に係るプーリユニットの断面図である。図15は、第2実施形態に係るプーリユニットの、図5のB−B断面図に相当する断面図である。なお、上述した第1実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態のプーリユニット13Aにおいて、ガイド部材74Aは、環状部74Aaと、第1突出部74Abと、フランジ部74Acと、第2突出部74Adとを備える。そして、第1突出部74Abの軸方向の長さは、第2突出部74Adの軸方向の長さよりも大きい。第1突出部74Abは、環状部74Aaから、弾性部材収納部22と重なる位置まで設けられる。第1突出部74Abの端部に設けられたフランジ部74Acが止め輪76に接する。これにより、ガイド部材74Aの位置が固定される。本実施形態においても、環状部74Aaと、第1突出部74Abと、基部32と軌道輪72と、弾性部材収納部22と、第2突出部74Adとで囲まれた空間に、弾性部材73が収納される。
本実施形態では、第1突出部74Abの軸方向の長さが第1実施形態よりも長くなっている。このため、基部32の軸方向の長さを第1実施形態よりも小さくすることができる。具体的には、基部32の軸方向の端部32aは、弾性部材73の放射方向の内側であって、且つ弾性部材73と重なる位置に設けられる。これにより、プーリユニット13Aの軽量化を図ることができる。なお、基部32の端部32aは、弾性部材収納部22の軸方向の端部と重なる位置に配置されている。これに限定されず、基部32の長さは適宜変更してもよい。
(第3実施形態)
図16は、第3実施形態に係るプーリユニットの断面図である。図16は、第3実施形態に係るプーリユニットの、図5のB−B断面図に相当する断面図である。なお、上述した第1実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
本実施形態のプーリユニット13Bにおいて、軌道輪72Aは、主部72Aaと、ストッパー部72Abとを有する。主部72Aaは、第1実施形態の軌道輪72(図5参照)と同様に、円環状の部材であって軸受71に接する。ストッパー部72Abは、主部72Aaの放射方向の内側に設けられ、軸方向に突出する。ストッパー部72Abは、主部72Aaに対して、軸受71の反対側に突出し、弾性部材73と基部32との間に配置される。
軌道輪72Aは、第2カム板6及び軸受71が軸方向に移動すると、第2カム板6及び軸受71と共に移動する。軌道輪72Aは、軸受71から受ける軸方向の荷重を弾性部材73に伝達する。ストッパー部72Abも第2カム板6及び軸受71と共に移動し、ストッパー部72Abの端部が、ガイド部材74の第1突出部74bの端部と接する。これにより、弾性部材73の弾性変形が規制される。このため、転動体52と第1カム板33との接触及び転動体52と第2カム板6との接触は保たれる。言い換えると、転動体52が第1カム面331(図7参照)及び第2カム面61(図8参照)から逸脱することを抑制できる。