JP2011069452A - 車両用vベルト式無段変速機 - Google Patents

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秀男 石川
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通雄 阿隅
Koichi Komuro
広一 小室
Naoki Ikeda
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Abstract

【課題】内燃機関とベルト式無段変速機とを備えたパワーユニットの、内燃機関からの駆動力を、駆動プーリと従動プーリと、その間に設けたVベルトによって変速して駆動輪へ伝達させる車両用Vベルト式無段変速機において、湾曲性の高い歯状部付きVベルトを利用して、駆動力伝達性の向上と変速機部分の小型化を図る。
【解決手段】駆動プーリの両半体と従動プーリの両半体が共にアルミ材から成形されると共に、上記各プーリのVベルトとの接触面に薄幕の硬質クロムメッキ層を備え、Vベルトを、芯線とその上下に形成されたゴム組成の波形歯状部(cog)とからなる歯状部付きVベルト(cogged V belt)とした。
【選択図】 図4

Description

本発明は、車両用Vベルト式無段変速機に関するものである。
変速機部分の小型化とベルトの駆動力伝達性の向上のために、Vベルト自体の構造として、樹脂駒をゴム系の連結部材でつないだハイブリッド構造のベルトを用いる検討がなされている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ハイブリッドベルトは従来のゴムベルトに比して構造が複雑で高価であり、また、ベルトの長さは駒の形状寸法の関係で、湾曲性が低いので、プーリ間距離を任意に選ぶことができず、変速比も自由に選ぶことができないという問題があった。
一方、Vベルト製造の分野では、従来のVベルトに代わるものとして、歯状部付きVベルト(cogged V belt)が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2008−019931号公報(図8、図9) 特開2005−126642号公報(図1、図2)
本発明は、湾曲性の高い歯状部付きVベルトを利用して、駆動力伝達性の向上と変速機部分の小型化を図った車両用Vベルト式無段変速機を提供しようとするものである。
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
内燃機関とベルト式無段変速機とを備えたパワーユニットの、内燃機関からの駆動力を、駆動プーリと従動プーリと、その間に設けたVベルトによって変速して駆動輪へ伝達させる車両用Vベルト式無段変速機において、
駆動プーリの両半体と従動プーリの両半体が共にアルミ材から成形されると共に、上記各プーリのVベルトとの接触面に薄膜の硬質クロムメッキ層を備え、Vベルトを、芯線とその上下に波形歯状部(cog)を形成したゴム組成とからなる歯状部付きVベルト(cogged V belt)としたことを特徴とする車両用Vベルト式無段変速機に関するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記プーリ半体における薄膜の硬質クロムメッキ表面処理は、プーリ表面のニッケルメッキ層の表面に硬質クロムメッキが施されて形成されることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記ニッケルメッキ層及び硬質クロムメッキ層は共に薄く形成されることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記従動プーリの各半体はベルトを保持する傘状部と軸に嵌合する筒状部とが別体に形成されることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記従動プーリの傘状部におけるベルトと接触する板部の厚さを、冷却フィンの外周部のフィン高さより厚く形成したことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記パワーユニットは、クランク軸に駆動プーリを支持させると共に、クランク軸を中心として駆動輪を車体に対して揺動自在に支持させ、且つ従動プーリ軸を駆動プーリ軸に近づけた短軸間構造としたことを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記パワーユニットは、従動プーリ軸が、クラッチ軸に対して独立に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
請求項8に記載の発明は、請求項5乃至請求項7の何れかに記載の車両用Vベルト式無段変速機において、
上記Vベルト式無段変速機を収容するケースには、プーリ冷却のための外気導入口が設けられ、同外気導入口は駆動プーリの固定半体に対向して設けられることを特徴とするものである。
請求項1の発明において、
安価且つ屈曲性に富むゴム組成のVベルトを使用しつつ、ベルトの上下の波形歯状部と硬度アップしたプーリ表面との組み合わせにより、伝達駆動力の向上を図ると共に、両プーリの軸間距離の短縮による小型化を図ることができる。
請求項2の発明において、
ニッケルメッキ層によりプーリ表面との密着性を高め、クロムメッキ層の薄膜化と処理時間の短縮を図りつつ、ベルトとの接触面の平坦化によりベルトへの側圧を増大させて伝達駆動力の向上を図ることができる。
請求項3の発明において、
メッキ層の薄膜化によって、伝達駆動力の向上と表面処理時間の短縮とが可能となる。
請求項4の発明において、
傘状部への表面処理を、表面処理不要の筒状部に影響を与えずに行うことができるので、生産性が向上する。
請求項5の発明において、
接触面が受けるベルトとの摩擦熱を、傘状部全体に効率よく伝達させ、冷却フィンで放熱させるので、ベルトの耐久性を向上させることができる。
請求項6の発明において、
従動プーリ軸を駆動プーリに近づけた短軸間構造としたので、駆動輪と共に揺動するVベルトの振動を低減できて、ベルトの耐久性を向上させることができる。
請求項7の発明において、
従動プーリ軸をクラッチ軸に対して独立に設けてあり、従動プーリ軸を短くすることができるので、ベルトの張力による軸の歪みを低減できると共に、バンク角確保ができ、従動プーリ軸を駆動プーリに近づけた短軸間構造であっても、駆動輪と従動プーリ軸との干渉を防止することができる。
請求項8の発明において、
冷却風は、駆動プーリ固定半体側から後方の従動プーリ可動半体の方へ流れる。駆動プーリ固定半体は駆動プーリ可動半体に比して薄肉であるから熱容量が小さい。従動プーリ可動半体は従動プーリ固定半体に比して筒状部が短寸かつ薄肉であるから熱容量が小さい。したがって、駆動プーリ、従動プーリ共に、熱容量が小さく高温になりがちの方の半体を積極的に冷却するので、アルミ本体部とスチールメッキ部の熱膨張差による密着性への影響を低減し、メッキの耐久性を向上することができる。
本発明の一実施形態に係る自動二輪車の側面図である。 上記車両に搭載されているパワーユニットの側面図である。 図2のIII−III断面展開図である。 Vベルト式無段変速機の拡大平面図である。 従動プーリと歯車減速機周辺の拡大平面図である。 駆動プーリ固定半体の2面図である。 駆動プーリ可動半体の2面図である。 従動プーリ固定半体の傘状部の2面図である。 従動プーリ固定半体の筒状部の2面図である。 従動プーリ可動半体の組立状態の2面図である。 従動プーリの組立状態の軸方向断面図である。 長孔とガイドピンとを、図11の矢印XII方向から見た展開図である。 波形歯状部付きVベルト(cogged V belt)の斜視図である。 上記波形歯状部付きVベルトの縦断面図である。
図1は本発明の一実施形態に係るパワーユニット1を搭載した自動二輪車2の側面図である。この自動二輪車2の車体フレーム3は、ヘッドパイプ4から後下がりに伸びるメインフレーム5と、一端がメインフレーム5の中間部に接続されて後上がりに伸びる左右一対のリヤフレーム6と、ヘッドパイプ4から下方に伸び後方へ曲がってメインフレーム5の下端に接続され、更に上方へ屈曲してリヤフレーム6の中間部に接続されるダウンフレーム7とから構成されている。ヘッドパイプ4はフロントフォーク8を回動可能に支持し、同フロントフォーク8の下端には前輪9が軸支され、フロントフォーク8の上部には操向ハンドル10が連結されている。前輪9の上方を覆うフロントフェンダ11は、フロントフォーク8に支持されている。メインフレーム5とダウンフレーム7の間に燃料タンク12が設けてある。
車体フレーム3には、パワーユニット1が懸架されている。このパワーユニット1は、前部の内燃機関13と後部の動力伝達装置14とから成り、内燃機関13は車体フレーム3に固定され、動力伝達装置14は内燃機関13のクランク軸15を中心として揺動可能である。動力伝達装置14の後端部とリヤフレーム6との間にはリヤクッションユニット16が設けてある。動力伝達装置14に設けられた後車軸17に後輪18が取付けられ、パワーユニット1によって駆動される。パワーユニット1の右側上方にはエアクリーナ19が設けてあり、インレットパイプ20に連なるスロットルボディ21に、連結管22を介して接続されている。
パワーユニット1の上方にはにヘルメット等を収納する収納ボックス23が設けられ、収納ボックス23の上方には乗車用シート24が配置されている。車体フレーム3には、合成樹脂製の複数の部材を連ねた車体カバー25が取付けられ、パワーユニット1やその他の機器類を覆っている。車両後部にリヤフェンダ26が設けてある。車両の右側に、内燃機関の排気管27とマフラ28が設けてある。ダウンフレーム7の前面に内燃機関冷却水空冷用のラジエータ29が設けてある。
図2は上記パワーユニット1の側面図である。このパワーユニット1は、車両に固定された頭上弁式4ストロークサイクル2気筒の水冷式内燃機関13と、これに対してクランク軸15を中心として上下揺動可能に支持される動力伝達装置14とからなっている。動力伝達装置14は、Vベルト式無段変速機30と歯車減速機31と後輪支持部32とからなっている。矢印Fはパワーユニット1の前方を指している。
上記内燃機関13は、クランクケース33の前端面から前方へ順に、シリンダブロック34、シリンダヘッド35、シリンダヘッドカバー36が、前方やや上向きに指向して、重ねて結合されている。
動力伝達装置14は動力伝達ケース37に収容されている。動力伝達ケース37には複数の回転軸が組み込まれている。詳細は図3〜図5によって後述するが、前から、クランク軸兼無段変速機駆動プーリ軸15、無段変速機従動プーリ軸38、アイドル軸39、歯車減速機入力軸兼クラッチ軸40、歯車減速機中間軸41、後車軸17である。駆動プーリ軸15には駆動プーリ42が設けてある。従動プーリ軸38には従動プーリ43が設けてある。無段変速機従動プーリ軸38、アイドル軸39、歯車減速機入力軸40、中間軸41、後車軸17にはそれぞれ互いに噛み合う歯車が設けてある。また後輪支持部32には後車軸17が組み込まれており、内燃機関13の動力を後車軸17に嵌着されている後輪18に伝達する。
図3は、図2のIII−III断面展開図である。矢印L、Rは車両の左右に対応するパワーユニットの左右を表す。クランクケース33は左右半割り式であり、左クランクケース33Lと右クランクケース33Rとからなっている。左右のクランクケース33L、33Rのジャーナル軸受部47A、47Bに、クランク軸15が回転可能に支持されている。シリンダブロック34に形成された一対のシリンダ穴48に、それぞれピストン49が摺動可能に嵌装され、それぞれコンロッド50を介してクランク軸15に接続されている。ピストン49の端面に向き合うシリンダヘッド35の底面には燃焼室51が形成され、点火プラグ52がシリンダヘッドカバー36の頂部から装着され、その先端が上記燃焼室51に臨んでいる。図2に示されるように、シリンダヘッド35には上記燃焼室51に連なる吸気ポート53および排気ポート54が形成され、吸気ポート53の燃焼室側開口を開閉する吸気弁57と、排気ポート54の燃焼室側開口を開閉する排気弁58が、シリンダヘッド35に摺動可能に嵌挿されている。図3には排気弁58が示してある。
図3において、シリンダヘッド35とシリンダヘッドカバー36の間にクランク軸15と平行にカム軸55が支承され、カム軸55に設けられたカム56によって、吸気弁57、排気弁58が開閉駆動される。クランク軸15の右部に設けられた駆動スプロケット59とカム軸55の右端に設けられた従動スプロケット60との間に巻き掛けられた無端状チェーン61によって、カム軸55はクランク軸15によって、クランク軸15の1/2の回転数で、回転駆動される。
右クランクケース33Rの外側に右クランクケースカバー62が設けてあり、その内面に固定されたステータ63と、上記ステータ63を囲みクランク軸15に固定されたロータ64とから、交流発電機65が構成されている。交流発電機65に隣接して設けてある歯車はスタータモータ66(図2)からの回転駆動力をクランク軸15に伝えるスタータ従動歯車67である。
パワーユニット1の動力伝達装置14を収納する動力伝達ケース37は、左動力伝達ケース37L、右動力伝達ケース37R、および仕切り壁37Pから構成されている。右動力伝達ケース37Rはクランクケース33の左右で回動可能に支持されている。クランクケース33の左側では、左クランクケース33Lに、ボルト68によって取り付けられた支持金物69に保持されたボールベアリング70によって、右動力伝達ケース37Rは回動可能に支持されている(拡大図は図4参照)。更に、クランクケース33の右側では、右クランクケースカバー62にボルト71によって取り付けられた支持金物72に保持されたローラベアリング73によって支持された接続金物74A、74Bを介して回動可能に支持されている。接続金物74A、74Bと右動力伝達ケース37Rとはボルト75A、75Bで一体化されている。接続金物74A、74Bには、後車軸17を支えるリヤフォーク76の前端がボルト75Bを介して取付けられているので、リヤフォーク76は接続金物74A、74Bおよび右動力伝達ケース37Rと共に回動する。
動力伝達ケース37には複数の回転軸が組み込まれている。前から、クランク軸兼無段変速機駆動プーリ軸15、無段変速機従動プーリ軸38、アイドル軸39、歯車減速機入力軸兼クラッチ軸40、歯車減速機中間軸41、後車軸17である。駆動プーリ軸15には駆動プーリ42が設けてある。従動プーリ軸38には従動プーリ43が設けてある。無段変速機従動プーリ軸38、アイドル軸39、歯車減速機入力軸40、中間軸41、後車軸17にはそれぞれ互いに噛み合う歯車が設けてある。また後車軸17には後輪18が装着されている。
図4はVベルト式無段変速機30の拡大平面図である。Vベルト式無段変速機30の駆動プーリ軸15は、クランク軸15そのものであり、同クランク軸15の左側延伸部にVベルト式無段変速機30の駆動プーリ42が設けてある。Vベルト式無段変速機30の従動プーリ軸38は、左動力伝達ケース37Lと仕切り壁37Pと右動力伝達ケース37Rとに、ボールベアリング77A、77B、77Cを介して回転自在に支持されている。駆動プーリ42と従動プーリ43とに無端状Vベルト79が架渡され、駆動プーリ42の回転が従動プーリ43に伝達される。
駆動プーリ42は、駆動プーリ固定半体42A、駆動プーリ可動半体42B、ウエイトローラ42C、およびランププレート42Dを備えている。従動プーリ43は、従動プーリ固定半体43A、従動プーリ可動半体43B、及びコイルばね43Cを備えている。
クランク軸15の回転数が増大すると、駆動プーリ42においては、駆動プーリ可動半体42Bとランププレート42Dとの間のウエイトローラ42Cが、遠心力により外方へ移動し、駆動プーリ可動半体42Bが押されるので駆動プーリ42の両半体42A、42Bの間隔が狭まり、Vベルト79の巻き掛け径が大きくなる。これにより、Vベルト79の張力が高まるので、従動プーリ43側では、コイルばね43Cの付勢力に抗して従動プーリ可動半体43Bが動き、両半体43A、43Bの間隔が広がり、Vベルト79の巻き掛け径が小さくなる。この結果、Vベルト79の巻き掛け径の寸法比に応じて、従動プーリ43の回転数が高まる。このようにして、自動的に無段変速がなされる。
図5は動力伝達装置14の歯車減速機31周辺の拡大平面図である。3本の回転軸からなる歯車減速機31は従動プーリ軸38の後方に設けてある。従動プーリ軸38と歯車減速機31の間には、従動プーリ軸38の出力を歯車減速機31に伝えるアイドルギヤ82を中心とする動力連絡部80が設けてある。
Vベルト式無段変速機30の従動プーリ軸38は、左動力伝達ケース37Lと仕切り壁37Pと右動力伝達ケース37Rに、ボールベアリング77A、77B、77Cを介して支持されており、従動プーリ軸38の仕切り壁37Pと右動力伝達ケース37Rとに挟まれた部分に無段変速機出力歯車81が一体に形成されている。
上記従動プーリ軸38の隣にアイドル軸39が、右動力伝達ケース37Rと仕切り壁37Pとに、ボールベアリングを介して回転自在に支持されており、上記従動プーリ軸38の無段変速機出力歯車81に噛合う大径のアイドルギヤ82が一体に形成されている。
上記アイドル軸39の隣に歯車減速機31の入力軸40が、左動力伝達ケース37Lと右動力伝達ケース37Rとにボールベアリング83A、83Bを介して支持されている。この歯車減速機入力軸40にボールベアリング83Cとニードルベアリング84とを介して支持されると共に、仕切り壁37Pにボールベアリング85を介して支持された回転スリーブ86が設けてある。この回転スリーブ86に前記の無段変速機出力歯車81と同径の減速機入力歯車87が一体形成されている。この減速機入力歯車87は、アイドルギヤ82と噛み合って、従動プーリ軸38の無段変速機出力歯車81と同速で回転する。回転スリーブ86の左端にクラッチインナ88が接続され、歯車減速機入力軸40の左端にクラッチアウタ89が接続され、これらによって遠心クラッチ90が構成されている。回転スリーブ86の回転数が所定回転数を越えると、遠心クラッチ90が接続状態となり、歯車減速機入力軸40が回転を始める。上記歯車減速機入力軸40の右端部に入力軸小径歯車91が一体形成されている。
上記歯車減速機入力軸40の隣に、歯車減速機中間軸41が設けてあり、上記歯車減速機入力軸40の入力軸小径歯車91に噛み合う中間軸大径歯車92が嵌着され、その右側に隣接して中間軸小径歯車93が一体形成されている。
上記歯車減速機中間軸41の隣に、後車軸17が設けてある。後車軸17は仕切り壁37Pと右動力伝達ケース37Rとに、ボールベアリング95A、95Bを介して回転自在に支持されると共に、外方へ突出している右端は、前記リヤフォーク76にボールベアリング95Cを介して回転自在に支持されている(図3)。後車軸17には上記中間軸小径歯車93に噛合う後車軸大径歯車94が嵌着されている。この構成によって、従動プーリ軸38のトルクは、上記歯車減速機31を介して減速されて後車軸17に伝達され、後車軸17と共に後輪18(図3)が回転駆動される。
上記自動二輪車2においては、内燃機関13は車体フレーム3に固定され、クランク軸15に駆動プーリ42が支持され、動力伝達ケース37と後輪18は、クランク軸15を中心として車体に対して揺動自在に支持されている。更に上述の無段変速機30では、従動プーリ軸38を駆動プーリ軸15に近づけた短軸間構造としてあるので、後輪18と共に揺動するVベルト79の振動量を低減できてVベルト79の耐久性を向上させることができる。
従来、一般に従動プーリ軸にクラッチが設けられ、従動プーリ軸が長くなっていたが、上記パワーユニット1では、従動プーリ軸38とクラッチ軸40とが独立に設けられており、従動プーリ軸38は短くなっているので、容易にバンク角の確保ができる。また、従動プーリ軸38を駆動プーリ軸15に近づけた短軸間構造であり、後輪18の近くに従動プーリ軸38が位置しているが、従動プーリ軸38は短いので、従動プーリ軸38と後輪18との干渉を避けることができる。また、従動プーリ軸38が短いので、Vベルト79の張力による軸の歪みを低減することができる。
図6は、駆動プーリ固定半体42Aの2面図であり、図6(a)は軸方向断面図、図6(b)は、図6(a)のB矢視図である。駆動プーリ固定半体42Aの左面には空気取入用ファンの前向き羽根97が一体に立設されている。これによって、左動力伝達ケース37Lに形成された空気取入口98(図3、図4)から外気を取入れてVベルト式無段変速機30が冷却される。
図7は、駆動プーリ可動半体42Bの2面図であり、図7(a)は軸方向断面図、図7(b)は、図7(a)のB矢視図である。駆動プーリ可動半体42Bの右面には、多数のローラ溝99が設けてある。
駆動プーリ固定半体42Aおよび駆動プーリ可動半体42Bは、何れもアルミ合金製であり、ニッケルメッキ層の上に硬質クロムメッキが施される。両メッキ層は薄く形成される。上記メッキ層の厚さは、それぞれ5μ〜10μである。メッキ層を薄くすることによって、Vベルト79との接触面が平坦化するので、各半体42A、42Bの表面とVベルト79との密着性が高まり、Vベルト79への側圧が増大し、伝達駆動力が向上する。更に、メッキ層の薄膜化によって表面処理時間の短縮が可能である。
図8は、従動プーリ固定半体43Aの傘状部43Aaの2面図であり、図8(a)は軸方向断面図、図8(b)は、図8(a)のB矢視図である。傘状部43Aaは、板部Pとその背面に一体的に立設された冷却フィンFとから成っている。傘状部43Aaには、後述の筒状部43Abと結合するためのネジ孔116が設けてある。
図9は、従動プーリ固定半体43Aの筒状部43Abの2面図であり、図9(a)は軸方向断面図、図9(b)は、図9(a)のB矢視図である。傘状部43Aaと筒状部43Abとは別個に製作された後、ボルト44(図11)で結合されて一体化される。筒状部43Abのフランジ部には、傘状部43Aaと結合するためのボルト挿通孔117が設けてある。筒部には、後述のガイドピン103を立設するためのガイドピン立設孔118が設けてある。
図10は、従動プーリ可動半体43Bの組立状態の2面図であり、図10(a)は軸方向断面図、図10(b)は、図10(a)のB矢視図である。従動プーリ可動半体43Bは、傘状部43Baと筒状部43Bbとから成り、傘状部43Baと筒状部43Bbは別個に製作された後、リベット45で結合されて一体化される。傘状部43Baは、板部Pとその背面に一体的に立設された冷却フィンFとから成っている。
上記従動プーリ43の各傘状部43Aa、43Baにおいては、Vベルト79と接触する板部Pの厚さTを、冷却フィンFの外周部のフィン高さHより厚く形成してある。高速運転でのトップレシオ時には、Vベルト79は従動プーリ43の中心に近い部分に掛けまわされる。従動プーリ43とVベルト79の接触面では熱が発生する。板部Pの中心に近い部分の背面には冷却フィンFは設けられていないので、従動プーリ43の半体中心付近の熱を、冷却フィンFが設けられている板部Pの外周方向へ伝達させることが必要である。板部Pの厚さを厚く形成することによって、接触面が受けるVベルト79との摩擦熱を傘状部P全体に効率よく伝達させることができ、冷却フィンFで放熱させることができるので、Vベルト79の耐久性を向上させることができる。
従動プーリ43の各半体の傘状部43Aa、43Baはアルミ合金で製作され、ニッケルメッキ層の上に硬質クロムメッキが施される。両メッキ層は薄く形成される。上記メッキ層の厚さは、それぞれ2μ〜15μ、好ましくは5μ〜10μである。ニッケルメッキ層によりプーリ表面との密着性を高め、その表面に硬質クロムメッキ層が薄く形成される。メッキ層の薄膜化によって、Vベルト79との接触面が平坦化し、また、後述のように、Vベルト79も改良されているので、Vベルト79に加える側圧を大にすることが可能となり、コイルばね43Cのセット荷重を高めることによって、各半体43A、43Bの表面とVベルト79との密着性が高まり、伝達駆動力が向上する。従動プーリ可動半体43Bを押すコイルばね43Cのセット荷重は、例えば、60kgから90kgに高める(1.5倍)ことができる。メッキ層の薄膜化によって表面処理時間は短縮される。
従動プーリ43の各半体は傘状部43Aa、43Baと筒状部43Ab、43Bbとが別体に形成される。筒状部はスチール製であり、メッキは施されない。傘状部43Aa、43Baへの表面処理を、表面処理不要の筒状部43Ab、43Bbに影響を与えずに行うことができるので、生産性が向上する。
空気取入れ口98から、駆動プーリ固定半体42Aの前向き羽根97によって取り入れられた冷却風は、駆動プーリ固定半体42A側から左動力伝達ケース37Lの内壁に沿って後方の従動プーリ可動半体43Bの方へ流れる。駆動プーリ固定半体42Aは駆動プーリ可動半体42Bに比して薄肉であるから熱容量が小さい。従動プーリ可動半体43Bは従動プーリ固定半体43Aに比して筒状部43Bbが短寸かつ薄肉であるから熱容量が小さい。したがって、駆動プーリ42、従動プーリ43共に、熱容量が小さく高温になりがちの方の半体を積極的に冷却するので、アルミ本体部とスチールメッキ部の熱膨張差による密着性への影響を低減し、メッキの耐久性を向上することができる。
図11は、従動プーリ43の組立状態の軸方向断面図である。従動プーリ固定半体43Aの筒状部43Abは、従動プーリ軸38にスプライン100と軸端のナット101(図4)によって固定されている。従動プーリ固定半体43Aの筒状部43Abの外周に、従動プーリ可動半体43Bの筒状部43Bbが、若干の摺動ができるように装着される。従動プーリ可動半体43Bの筒状部43Bbの長孔102と、従動プーリ固定半体43Aの筒状部43Abに立設されたガイドピン103とによって円筒カム104が形成されている。長孔102にはグリースが充填され、シールカラー105で覆われ、その外周に、スプリングガイドカラー106が嵌装されている。C形止め輪107に一端を規制されたスプリングシート108と、上記スプリングガイドカラー106との間にコイルばね43Cが装着され、可動半体43Bを固定半体43Aの方へ押している。
図12は、上記長孔102とガイドピン103とを、図11の矢印XII方向から見た展開図である。可動半体43Bに形成されている長孔102は中央部で折れ曲がっている。矢印Wは従動プーリ43の回転方向である。Vベルト79に引かれて従動プーリ43が回転すると、摺動可能な可動半体43Bの方が固定半体43Aより多く移動し、ガイドピン103に長孔102の側縁が当接し、従動プーリ可動半体43Bを従動プーリ固定半体43Aの方へ押すスラストThが生じる。内燃機関の運転初期の低速状態では、コイルばね43Cが伸びているので付勢力が弱い。この時に、上記スラストThが最も大きくなるように長孔102の形状が曲げてあり、これによって低速状態のコイルばね43Cの付勢力に最も大きいアシスト力が加わる。高速状態でも若干のスラストが生じ、コイルばね43Cの付勢力に若干のアシスト力が加わる。
図13は、Vベルト79の斜視図である。このVベルト79は、波形歯状部付きVベルト(cogged V belt)である。図14は、上記波形歯状部付きVベルト79の縦断面図である。これらの図において、上記Vベルト79は、ベルト外面側の上ゴム層110と、ベルト内面側の下ゴム層111と、上ゴム層110と下ゴム層111との間に設けられた接着ゴム層112と、接着ゴム層112に埋設された芯線113とを備え、また、下ゴム層111の表面は下帆布114で被覆されている。上ゴム層110の表面には、多数の歯状部Cがベルト長さ方向に一定ピッチで形成されている。下ゴム層111の表面には、大きめの多数の歯状部Cがベルト長さ方向に一定ピッチで形成されている。芯線113はベルト長さ方向に伸びるようスパイラル状に形成され、ベルト幅方向に一定ピッチで並べてある。芯線113にはパラ系アラミド繊維、下帆布114にはナイロン帆布、上ゴム層110および下ゴム層111にはゴム組成物が用いられている(特許文献2)。
上記波形歯状部付きVベルト79とVベルト式無段変速機30の組み合わせによって、安価なゴム組成のVベルト79を使用しつつ、Vベルト79の上下の歯状部Cと硬質クロムメッキ層によって硬度アップしたプーリ表面との組み合わせにより、伝達駆動力が向上する。更に、両プーリの軸間距離の短縮による小型化を実現することができる。
以上詳述したように、上記実施形態においては次のような効果がもたらされる。
(1)安価なゴム組成のVベルト79を使用しつつ、Vベルトの上下の歯状部Cと硬度アップしたプーリ表面との組み合わせにより、両プーリの軸間距離の短縮による小型化と、伝達駆動力の向上とを図ることができる。
(2)ニッケルメッキ層によりプーリ表面との密着性を高め、クロムメッキ層の薄膜化と処理時間の短縮を図りつつ、Vベルトとの接触面の平坦化によりVベルトへの側圧を増大させて伝達駆動力の向上を図ることができる。
(3)メッキ層の薄膜化によって、処理時間の短縮と伝達駆動力の向上が可能となる。
(4)傘状部43Aa、43Baへの表面処理を、表面処理不要の筒状部43Ab、43Bbに影響を与えずに行うことができるので、生産性が向上する。
(5)接触面が受けるVベルト79との摩擦熱を傘状部43Aa、43Ba全体に効率よく伝達させることができ、特に高速運転でのトップレシオ時の従動プーリ43の半体中心付近の熱を外周部へ伝達させるので、冷却フィンFの放熱効果によって、ベルトの耐久性を向上させることができる。
(6)従動プーリ軸38を駆動プーリ42に近づけた短軸間構造としたので、後輪18と共に揺動するVベルト79の振動を低減できて、Vベルト79の耐久性を向上させることができる。
(7)従動プーリ軸38とクラッチ軸40とを独立に設けてあるので、従動プーリ軸38が短くなり、バンク角確保ができ、従動プーリ軸38を駆動プーリ42に近づけた短軸間構造であっても、従動プーリ軸38が短いので、従動プーリ軸38と後輪18との干渉を避けることができる。また、従動プーリ軸38が短いので、Vベルト79の張力による軸の歪みを低減することができる。
(8)空気取入れ口98から取り入れられた冷却風は、駆動プーリ42、従動プーリ43共に、熱容量が小さく高温になりがちの方の半体を積極的に冷却するので、アルミ本体部とスチールメッキ部の熱膨張差による密着性への影響を低減し、メッキの耐久性を向上することができる。
1…パワーユニット、13…内燃機関、14…動力伝達装置、15…クランク軸兼駆動プーリ軸、17…後車軸、18…後輪、30…Vベルト式無段変速機、31…歯車減速機、32…後輪支持部、38…従動プーリ軸、39…アイドル軸、40…歯車減速機入力軸兼クラッチ軸、41…中間軸、42…駆動プーリ、42A…駆動プーリ固定半体、42B…駆動プーリ可動半体、43…従動プーリ、43A…従動プーリ固定半体、43Aa…傘状部、43Ab…筒状部、43B…従動プーリ可動半体、43Ba…傘状部、43Bb…筒状部、79…Vベルト、P…板部、F…冷却フィン、C…歯状部(cog)、T…板部厚さ、H…外周部フィン高さ

Claims (8)

  1. 内燃機関とベルト式無段変速機とを備えたパワーユニットの、内燃機関からの駆動力を、駆動プーリと従動プーリと、その間に設けたVベルトによって変速して駆動輪へ伝達させる車両用Vベルト式無段変速機において、
    駆動プーリの両半体と従動プーリの両半体が共にアルミ材から成形されると共に、上記各プーリのVベルトとの接触面に薄膜の硬質クロムメッキ層を備え、Vベルトを、芯線とその上下に形成されたゴム組成の波形歯状部(cog)とからなる歯状部付きVベルト(cogged V belt)としたことを特徴とする車両用Vベルト式無段変速機。
  2. 上記各プーリ半体における薄膜の硬質クロムメッキ表面処理は、プーリ表面のニッケルメッキ層の表面に硬質クロムメッキが施されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  3. 上記ニッケルメッキ層及び硬質クロムメッキ層は共に薄く形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  4. 上記従動プーリの各半体はベルトを保持する傘状部と軸に嵌合する筒状部とが別体に形成されることを特徴とする請求項3に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  5. 上記従動プーリの傘状部におけるベルトと接触する板状部の厚さを、冷却フィンの外周部のフィン高さより厚く形成したことを特徴とする請求項4に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  6. 上記パワーユニットは、クランク軸に駆動プーリを支持させると共に、クランク軸を中心として駆動輪を車体に対して揺動自在に支持させ、且つ従動プーリ軸を駆動プーリ軸に近づけた短軸間構造としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  7. 上記パワーユニットは、従動プーリ軸が、クラッチ軸に対して独立に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の車両用Vベルト式無段変速機。
  8. 上記Vベルト式無段変速機を収容するケースには、プーリ冷却のための外気導入口が設けられ、同外気導入口は駆動プーリの固定半体に対向して設けられることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の車両用Vベルト式無段変速機。
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