以下、添付図面を参照して、本願の開示するトイレ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るトイレ装置を示す斜視図である。なお、図1には、説明を分かり易くするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
また、以下の説明では、たとえば前後方向など「方向」を意味する語句を用いる場合があるが、かかる「方向」はトイレ装置の便座に着座した使用者からみたときの方向である。すなわち、直交座標系におけるX軸正方向を「左方」、X軸負方向を「右方」、Y軸正方向を「後方」、Y軸負方向を「前方」、Z軸正方向を「上方」、Z軸負方向を「下方」と記載する場合がある。なお、図1および図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
図1に示すように、トイレ装置1は、便器本体(以下「便器」と記載する場合がある)10と、便器10の上面に設けられる衛生洗浄装置30とを備える。便器10は、トイレ室の床面Fから立設する壁Wに取り付けられる壁掛け式の洋式大便器である。なお、上記した便器10の壁Wへの取り付けについては、後に説明する。また、壁Wは、たとえばタイルやモルタル等を含む材料によって形成されるが、壁Wの材料は、これに限られるものではない。
図2は、衛生洗浄装置30を取り外した状態の便器10を示す平面図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。図2および図3に示すように、便器10は、導水路11(図3参照)と、ボウル部12と、トラップ部13と、排水路14(図3参照)と、袴部15とを備える。
図3に示すように、導水路11は、壁Wから突出する洗浄水供給管50の一端に接続される。かかる洗浄水供給管50の他端は、壁Wの内部に配置された洗浄水用のタンク(図示せず)に接続される。したがって、導水路11には、便器洗浄が行われる場合に、タンクから供給された洗浄水が流通する。
ボウル部12は、導水路11に接続されるとともに、汚物を受けることが可能なボウル状に形成される。詳しくは、ボウル部12は、汚物を受けることが可能な汚物受け面16と、汚物受け面16の上縁に形成されるリム部17とを備える。
リム部17には、導水路11に接続されるリム導水路17aが形成される。リム導水路17aは、汚物受け面16側に吐出口が設けられ、よって導水路11の洗浄水は、リム導水路17aの吐出口を介して汚物受け面16へ吐水され、汚物受け面16が洗浄される。
トラップ部13は、ボウル部12に接続される。詳しくは、トラップ部13は、入口部13aと、溜水部13bと、出口部13cとを備える。入口部13aは、汚物受け面16の底部と連続するように設けられ、ボウル部12からの洗浄水をトラップ部13へ流入させる。溜水部13bは、入口部13aの下流側に位置されるとともに、入口部13aから下方へ向けて延びた後、斜め上方へ向けて延びるように形成され、所定量の洗浄水が溜まる形状とされる。出口部13cは、溜水部13bの下流側に位置され、便器洗浄時に溜水部13bから流れ込む洗浄水を排水路14へ排出する。このように、トラップ部13は、溜水部13bに洗浄水が溜まり、封水として機能することで、排水管51からの臭気等がボウル部12側へ逆流することを防止する。
排水路14は、一端側がトラップ部13の出口部13cに接続される一方、他端側が排水管51に接続される。したがって、便器洗浄が行われる場合、汚物受け面16を洗浄した洗浄水は、トラップ部13の入口部13a、溜水部13bおよび排水路14を介して排水管51へと排出される。
袴部15は、上記したボウル部12やトラップ部13を周縁側から覆い大便器の外郭を形成する。詳しくは、袴部15は、リム部17の上面17bの周縁17b1から下方の床面F側へ向けて延在して形成され、ボウル部12等を取り囲むように構成される。
したがって、袴部15の内部には、上記したボウル部12やトラップ部13などが収容されるとともに、ボウル部12等以外の部分に空間が形成されることとなる。以下では、袴部15の内部に形成され、ボウル部12、トラップ部13および袴部15等によって囲まれる空間を「内部空間A」と記載する場合がある。
また、袴部15の下端15aには、開口部15bが形成される。これにより、袴部15の内部空間Aと外気(正確にはトイレ室の室内空間)とが開口部15bを介して連通される。
また、袴部15の下端15aの床面Fからの高さH1は、適宜に設定可能であるが、たとえば使用者の手が便器10の下部へ入る程度の高さに設定されることが好ましい。
なお、上記した袴部15は、ボウル部12と一体的に形成されるが、これに限られず、別体で形成されたものであってもよい。また、以下では、袴部15において、ボウル部12を基準とした場合のY軸負方向にある部分を「正面部15c」、Y軸正方向の壁W側にある部分を「背面部15d」、X軸正方向および負方向にある部分を「側面部15e」と記載する場合がある。
ここで、上記した内部空間Aについて詳しく説明すると、内部空間Aは、図2に二点鎖線で示すように、平面視において袴部15の内部にトラップ部13を囲むようにして形成される。なお、図2の例では、袴部15の下端15a(図3参照)付近に形成される内部空間Aを示している。
なお、以下では、理解の便宜上、内部空間Aを複数の領域に分けて説明する場合がある。具体的には、図2に一点鎖線で示すように、内部空間Aのうち、平面視においてトラップ部13の右方(X軸負方向)に形成される空間を「右方内部空間Aa」、トラップ部13の左方(X軸正方向)に形成される空間を「左方内部空間Ab」、トラップ部13の前方(Y軸負方向)に形成される空間を「前方内部空間Ac」、トラップ部13の後方(Y軸正方向)に形成される空間を「後方内部空間Ad」と記載して説明する場合がある。
図4は、図2のIV−IV線断面図であり、具体的には、便器10において右方内部空間Aaに対応する位置の断面図である。なお、以下では、右方内部空間Aaについて説明するが、便器10は略左右対称に形成されるため、右方内部空間Aaの説明は、左方内部空間Abにも概ね妥当する。
図4に一点鎖線で示すように、右方内部空間Aaは、ボウル部12とトラップ部13と袴部15とによって囲まれ、上下方向(Z軸方向)および前後方向(Y軸方向)に延在する空間である。
詳しくは、右方内部空間Aaは、側面視において袴部15の下端15aからボウル部12やリム部17の上面17b付近に至るまで上下方向に所定高さを有する空間である。また、右方内部空間Aaは、側面視において袴部15の正面部15cから背面部15dに至るまで前後方向に所定長さを有する空間である。より詳しくは、右方内部空間Aaは、便器10の後方へいくにつれて、正確には袴部15の正面部15cから背面部15dへいくにつれて、上下方向の高さが高くなるように形成される。
なお、図2に示すように、右方内部空間Aaの左右方向(X軸方向)の長さは、前後方向の長さや上下方向の高さに比べて短く設定されるが、これに限定されるものではない。また、上記のように構成された右方内部空間Aaや左方内部空間Abには、衛生洗浄装置30の管状部材6が収容されるが、これについては後述する。
図1の説明に戻ると、衛生洗浄装置30は、便器10の上面、正確には、リム部17の上面17bに設けられ、使用者の局部を洗浄する。具体的には、衛生洗浄装置30は、本体部40と、便座100と、便蓋200とを備える。便座100および便蓋200はともに、開閉可能なように本体部40に取り付けられる。
本体部40は、ケース41と、ノズルユニット42とを備える。ケース41は、ノズルユニット42などを収容する。ノズルユニット42は、洗浄ノズル43を備える。
上記した洗浄ノズル43は、ケース41に対して進退可能に構成される。詳しくは、洗浄ノズル43には、図示しない電動モータなどの駆動源が接続される。かかる駆動源は、図示しない電源に接続されて電力が供給される。洗浄ノズル43は、駆動源の駆動により、便器10のボウル部12内へ進出した位置と、ケース41内に後退して格納される位置との間で進退させられる。なお、図1では、進出した位置にある洗浄ノズル43を示している。
また、洗浄ノズル43は、図示しない水道管などの水源に接続される。そして、洗浄ノズル43は、ボウル部12内へ進出した位置にあるときに、水源からの水を使用者の身体へ噴出させて局部を洗浄する。
なお、本明細書において、「水」なる表現は、必ずしも冷水の意味ではなく、温水を含む意味で使用する場合がある。また、衛生洗浄装置30において、電力が供給される負荷は、上記した洗浄ノズル43の駆動源に限られず、たとえば、洗浄ノズル43へ水を供給する流路を開閉する電磁弁や、水源から供給された水を加熱するヒータなどが含まれていてもよい。
このように、衛生洗浄装置30には、使用者の局部を洗浄する洗浄動作を行うために、水源からの給水系統および電源からの給電系統が接続される。具体的に、衛生洗浄装置30には、衛生洗浄装置30へ洗浄水を供給する給水管61や電力を供給する電源ケーブル66などの管状部材6が接続される。なお、本明細書では、たとえば、ホースやケーブル、コードなど長尺状の部材を総称して「管状部材6」と記載するものとする。
衛生洗浄装置30の管状部材6は、例えばトイレ室の壁Wに設けられた給水源や電源に接続される際、管状部材6の一部または全部が便器10の内部空間A(図4参照)に収容される。このように、トイレ装置1においては、管状部材6が便器10の内部空間Aに収容されて隠蔽されることで、意匠性の向上を図ることができる。
しかしながら、たとえば仮に、管状部材6が、内部空間Aにおいて水平面(XY平面)上で湾曲した状態で収容されると、内部空間Aの左右方向の長さは比較的短いため、管状部材6の湾曲部分で急な折り返しとなって比較的高い張力が発生することがある。これにより、管状部材6に過度な負荷が作用するおそれがある。
そこで、本実施形態に係るトイレ装置1にあっては、図1および図4に示すように、管状部材6が、内部空間Aの下端近傍で固定部材80に固定されるようにした。そして、管状部材6は、固定部材80より上方の内部空間A(右方内部空間Aaや左方内部空間Ab)において、上下方向に湾曲して収容されるようにした。なお、図1にあっては、理解の便宜のため、袴部15内の構成を部分的に透視して示している。
ここで、「管状部材6が上下方向に湾曲する」とは、管状部材6が、例えば板状の固定部材80の同一平面上(XY平面上)で折り返すものではなく、固定部材80よりも上方(Z軸正方向)に向かって折り返すことを意味する。そのため、本実施形態に係る管状部材6にあっては、固定部材80上の同一平面で折り返すものに比べて、内部空間Aの上方方向にゆとりをもって折り返すことができる。すなわち、「上下方向に湾曲する」あるいは「上方に向かって折り返す」という表現は、上下方向に延在することを指すものではない。
このように、本実施形態では、内部空間Aにおいて比較的高さのある上下方向に管状部材6が湾曲した状態で収容されることで、管状部材6の湾曲部分6aなどに高張力が発生しにくくなり、よって管状部材6に過度な負荷が作用することを抑制することができる。
なお、管状部材6の上下方向に湾曲した状態とは、たとえば、管状部材6において、折れや捩れ等のキンクが発生しにくい曲げ半径となるように湾曲した状態を意味するが、これに限定されるものではない。
以下、トイレ装置1の構成についてさらに詳しく説明する。トイレ装置1は、上記した固定部材80を備える。固定部材80は、管状部材6を袴部15内において位置決めして固定する。
図5は、便器10の内部空間Aに収容された状態の管状部材6および固定部材80を取り出して示す斜視図である。固定部材80の説明に入る前に、管状部材6について説明すると、図5に示すように、給水系統の管状部材6は、第1給水管61aと、第2給水管61bと、バルブ62とを含む。なお、第1給水管61aは「第1管状部材」の一例であり、第2給水管61bは「第2管状部材」の一例である。
第1給水管61aは、図5に示すように、一端が給水源に接続される一方、他端には第1接続部材61a1が設けられる。第2給水管61bは、一端が衛生洗浄装置30に接続される一方、他端には第2接続部材61b1が設けられる。なお、第1、第2給水管61a,61bとしては、たとえば屈曲自在なフレキシブルメタルホースを用いることができるが、これに限定されるものではない。
バルブ62は、第1給水管61aの第1接続部材61a1と、第2給水管61bの第2接続部材61b1とを連結する。バルブ62としては、たとえば使用者によって手動操作可能な操作部62aを備えたボールバルブを用いることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、バルブ62は、たとえばハンドル式のゲートバルブなどその他の種類のバルブであってもよい。
したがって、たとえばバルブ62が手動操作によって開弁される場合に、衛生洗浄装置30に対する給水が行われる。そして、バルブ62が手動操作によって閉弁されると、衛生洗浄装置30に対する給水の状態から止水の状態に切り替わる。なお、上記したバルブ62の配置位置などについては、後に詳しく説明する。
給電系統の管状部材6は、第1電源ケーブル66aと、第2電源ケーブル66bと、接続端子67とを含む。また。接続端子67は、第1接続端子67aと第2接続端子67bとを含む。なお、第1電源ケーブル66aは「第1管状部材」の一例であり、第2電源ケーブル66bは「第2管状部材」の一例である。
第1電源ケーブル66aは、一端が電源に接続される一方、他端には第1接続端子67aが設けられる。第2電源ケーブル66bは、一端が衛生洗浄装置30に接続される一方、他端には第2接続端子67bが設けられる。第1、第2電源ケーブル66a,66bはともに、屈曲自在な電源ケーブルとされるが、これに限られない。
第1電源ケーブル66aと第2電源ケーブル66bとは、第1接続端子67aと第2接続端子67bとが連結されることで、電気的に接続され、これにより衛生洗浄装置30に対する給電が行われる。そして、たとえば、第1接続端子67aが手動操作によって第2接続端子67bから取り外されると、衛生洗浄装置30に対する給電の状態から給電停止の状態に切り替わる。なお、上記した接続端子67の配置位置などについては、後に詳しく説明する。また、上記したバルブ62および接続端子67は、「連結部材」の一例である。
上記のように構成された管状部材6が固定部材80に固定される。図5に示すように、固定部材80は、プレート部81と、壁部82と、固定ケース部83a,83bと、第1ガイド部84と、第2ガイド部85と、リブ部86と、嵌合部87とを備える。
プレート部81は、板状または略板状の部材である。かかるプレート部81には、給水管61や電源ケーブル66等の管状部材6が湾曲した状態で載置される。図6は、プレート部81を含む固定部材80の平面図である。
なお、図6では、理解の便宜のため、固定部材80が取り付けられる便器10の外形を二点鎖線で示し、右方内部空間Aaや左方内部空間Ab等の内部空間Aを一点鎖線で示した。また、図6では、給水管61や電源ケーブル66の一部の図示を省略した。
また、図6では、説明し易くするために、プレート部81において、給水管61等を含む給水系統が載置される部位を「給水系統載置部位81a」、電源ケーブル66等を含む給電系統が載置される部位を「給電系統載置部位81b」とし、それぞれ破線で囲んで示した。また、プレート部81において、後述するように、便器10に取り付けられる部位を「取付部位81c」とし、同様に破線で囲んで示した。
図6に示すように、給水系統載置部位81aは、内部空間Aのうちの右方内部空間Aaに位置され、給電系統載置部位81bは、左方内部空間Abに位置される。すなわち、右方内部空間Aaには、給水管61などが収容され、左方内部空間Abには、電源ケーブル66などが収容される。
このように、給水系統と給電系統とは、トラップ部13を挟んだ右方内部空間Aaと左方内部空間Abとに、別々に収容される。なお、右方内部空間Aaは「内部空間Aのうちの一方」の一例であり、左方内部空間Abは「内部空間のうちの他方」の一例である。
これにより、給水管61および電源ケーブル66は、それぞれ対応する内部空間Aにおいて、比較的余裕をもった取り回しを行うことが可能となる。また、給水管61と電源ケーブル66とが、右方内部空間Aaと左方内部空間Abとに収容されて離間していることから、給水管61の水が電源ケーブル66に飛散したりすることを防ぐことも可能となる。
図6に示すように、プレート部81は、平面視において略U字状に形成され、便器10の袴部15とトラップ部13との間に位置される。プレート部81において、便器10の袴部15と対向する部位を外周縁81d、トラップ部13と対向する部位を内周縁81eとした場合、外周縁81dの形状は、袴部15の内壁15fに即した形状とされる。また、プレート部81の内周縁81eの形状は、トラップ部13の外形に即した形状とされる。なお、外周縁81dおよび内周縁81eは、「固定部材80の周縁」の一例である。
壁部82は、プレート部81の外周縁81dおよび内周縁81eにおいて上方へ向けて立設される(図5参照)。詳しくは、壁部82は、プレート部81の外周縁81dおよび内周縁81eのうち、給水系統載置部位81aおよび給電系統載置部位81bに対応する外周縁81dおよび内周縁81eにおいて上方へ向けて立設される。
これにより、たとえば、管状部材6に不測の張力が発生することを抑制することができる。すなわち、プレート部81上に載置された管状部材6は何らかの要因で動くことがある。管状部材6が動くと、プレート部81から落下し、たとえば固定部材80と便器10(例えばトラップ部13)との間に挟まるなどして、管状部材6に不測の張力が発生するおそれがある。
本実施形態に係る固定部材80は壁部82を備えることから、管状部材6が動いた場合であっても、壁部82に接触することとなるため、プレート部81から落下して固定部材80と便器10との間に挟まるなどの事態を生じにくくすることができ、結果として上記した不測の張力が管状部材6に発生することを抑制することができる。
固定ケース部83a,83bは、管状部材6の一部を固定するケースである。具体的には、固定ケース部83aは、プレート部81の給水系統載置部位81aに設けられ、詳しくは給水系統載置部位81aのうちトラップ部13の後方側に対応する位置に設けられる。
固定ケース部83aは、ケース本体83a1と、蓋部83a2と、露出部83a3(図6で見えず)とを備える。蓋部83a2は、ケース本体83a1に対して開閉自在に取り付けられる。図7は、固定部材80の斜視図であり、蓋部83a2が開いた状態を示している。
図7に示すように、ケース本体83a1は、給水系統の管状部材6の一部(たとえばバルブ62)を収容可能に構成される。詳しくは、ケース本体83a1は、管状部材6を前後方向に延在させた状態で収容可能に構成される。そして、固定ケース部83aは、給水系統の管状部材6の一部がケース本体83a1に収容された状態で、蓋部83a2を閉じることで、給水系統の管状部材6が固定部材80に固定される。
図8は、固定部材80の底面図である。図8に示すように、露出部83a3は、固定ケース部83aの底面側に形成された開口である。かかる露出部83a3は、バルブ62の操作部62aが挿通され、かかるバルブ62の操作部62aを下方に露出させる(図5参照)。これにより、使用者は、便器10の下端15a側からバルブ62に容易にアクセスして手動操作することができ、衛生洗浄装置30に対する給水および止水の切り替えを容易に行うことができる。
固定部材80が上記のように構成されることで、図5に示すように、給水源から延びる給水管61は、固定ケース部83aで一旦固定された後、前方へ延出され、続いて上方へ湾曲されて後方へ向かいつつ(すなわちUターンしつつ)、便器10上方の衛生洗浄装置30に接続される。これにより、給水管61の湾曲部分6aなどに高張力が発生しにくくなり、よって給水管61に過度な負荷が作用することを抑制することができる。
図6に戻って固定ケース部83bについて説明すると、固定ケース部83bは、プレート部81の給電系統載置部位81bに設けられ、詳しくは給電系統載置部位81bのうちトラップ部13の後方側に対応する位置に設けられる。
固定ケース部83bは、ケース本体83b1と、蓋部83b2とを備える。蓋部83b2は、ケース本体83b1に対して開閉自在に取り付けられる。図7に示すように、ケース本体83b1は、給電系統の管状部材6の一部(たとえば接続端子67)を収容可能に構成される。詳しくは、ケース本体83b1は、管状部材6を前後方向に延在させた状態で収容可能に構成される。そして、固定ケース部83bは、給電系統の管状部材6の一部がケース本体83b1に収容された状態で、蓋部83b2を閉じることで、給電系統の管状部材6が固定部材80に固定される。
第1、第2ガイド部84,85は、図6に示すように、給電系統載置部位81bに設けられ、給電系統の管状部材6たる電源ケーブル66をガイドする。詳しくは、第1ガイド部84は、プレート部81において固定ケース部83bから前方へ所定距離離間した位置に設けられる。かかる第1ガイド部84は、固定ケース部83bから延出された電源ケーブル66を前方(Y軸負方向)へガイドする。
第2ガイド部85は、固定ケース部83bの蓋部83b2に設けられる。詳しくは、第2ガイド部85は、固定ケース部83bの蓋部83b2において、トラップ部13の後方側に対応する位置に設けられる。
また、第2ガイド部85は、平面視において前後方向に対して傾斜して設けられる、具体的には、トラップ部13の後方へ向くように傾斜して設けられる。これにより、第2ガイド部85は、電源ケーブル66をトラップ部13の後方へガイドする。
したがって、図5に示すように、電源から延びる電源ケーブル66は、固定ケース部83bで一旦固定された後、第1ガイド部84によって前方へガイドされ、続いて上方へ湾曲されて後方へ向かいつつ(すなわちUターンしつつ)、第2ガイド部85によってトラップ部13の後方へガイドされる。そして、電源ケーブル66は、第2ガイド部85によってトラップ部13の後方を回り込むように配設されつつ、言い換えると、後方内部空間Ad(図6参照)を通りつつ、便器10上方の衛生洗浄装置30に接続される。
これにより、電源ケーブル66の湾曲部分6aなどに高張力が発生しにくくなるとともに、トラップ部13などに引っ掛かりにくくなることから、電源ケーブル66に過度な負荷が作用することをより一層抑制することができる。
また、上記したように、給水管61や電源ケーブル66は、固定ケース部83a,83bによって前後方向に延在させた状態で固定部材80に固定される。したがって、給水管61や電源ケーブル66にあっては、固定ケース部83a,83bから確実に前方へ向けて延出された後、上方へ向けて湾曲させることが可能となる。これにより、給水管61や電源ケーブル66の湾曲部分6aに高張力が発生しにくく、給水管61や電源ケーブル66に過度な負荷が作用することを効果的に抑制することができる。
また、給水管61や電源ケーブル66などの管状部材6は、固定部材80上で上方に折り返された後は、固定部材80上で保持されず、張力が作用しにくい状態(所謂テンションフリーな状態)で内部空間Aに収容されている。これにより、管状部材6に高張力がより発生しにくく、管状部材6に過度な負荷が作用することをより一層効果的に抑制することができる。
また、上記したように、固定ケース部83a,83bは、トラップ部13の後方側に対応する位置に設けられることから、固定ケース部83a,83bに収容されるバルブ62および接続端子67もトラップ部13の後方側に対応する位置に設けられる。
したがって、給水管61や電源ケーブル66にあっては、固定ケース部83a,83bに収容されたバルブ62および接続端子67から前方へ向けて比較的長い距離延出された後、上方へ向けて大きく湾曲させることが可能となる。これにより、給水管61や電源ケーブル66の湾曲部分6aにおける曲がりが緩やかになるため、高張力が発生しにくく、給水管61や電源ケーブル66に過度な負荷が作用することをより効果的に抑制することができる。
リブ部86は、図8に示すように、プレート部81の底面側に設けられ、固定部材80の曲げ強度を向上させる。詳しくは、リブ部86は、プレート部81の外周縁81dおよび内周縁81eにおいて下方へ向けて立設される(図5参照)。より詳しくは、リブ部86は、プレート部81の外周縁81dおよび内周縁81eのうち、給水系統載置部位81aに対応する外周縁81dおよび内周縁81eにおいて下方へ向けて立設される。
このように、リブ部86は、固定部材80において給水管61が配置される部位に設けられる一方、電源ケーブル66が配置される部位(給電系統載置部位81b)に設けられない。したがって、固定部材80は、給水管61が配置される部位の曲げ強度が、電源ケーブル66が配置される部位の曲げ強度より大きくなるように形成される。ここで、「曲げ強度」とは、例えば3点曲げ試験に基づいて測定したものをいうが、これに限定されるものではない。
これにより、固定部材80に曲がりなどの変形が発生することを抑制することができる。すなわち、管状部材6のうち給水管61には水圧がかかるため、水圧に伴う力が給水管61から固定部材80へ作用することがある。本実施形態にあっては、上記のように、給水管61が配置される部位の曲げ強度が大きくなるように形成されることから、給水管61から力が作用した場合であっても、固定部材80に曲がりなどの変形が発生することを抑制することができる。
嵌合部87は、固定部材80が便器10に取り付けられる際、前方内部空間Ac(図6参照)に位置され、便器10に形成された被取付部18(図5に破線で示す。後述)に嵌合する。たとえば、嵌合部87は、取付部位81c(図6参照)に凹状に形成され、かかる凹状部分に便器10の被取付部18が嵌められた状態で、固定部材80が便器10に取り付けられる。
これにより、取付箇所を少なくしつつ、固定部材80を安定して便器10に取り付けることができる。すなわち、固定部材80には、重さの異なる給水管61と電源ケーブル66とが左右に分かれて配置されるため、固定部材80は、たとえば比較的重い給水管61が配置される側に傾き易い。本実施形態にあっては、上記のように、嵌合部87が便器10の前方側にある被取付部18に嵌合されていることから、固定部材80は傾きにくく、よって取付箇所が少ない場合であっても、固定部材80を安定して便器10に取り付けることができる。
また、嵌合部87には、複数個(たとえば2個)のネジ挿通孔88が形成される。ネジ挿通孔88には、取付ネジ95(図12参照)が挿通されるが、これについては後述する。
次に、上記した固定部材80が取り付けられる便器10の構成について、さらに詳しく説明する。図3に示すように、便器10は、上記した被取付部18を備える。被取付部18は、前方内部空間Acに位置するように形成される。詳しくは、被取付部18は、袴部15の内部空間Aにおいて、トラップ部13と袴部15の正面部15c側の内壁15fとを連続的に結ぶように形成される。なお、袴部15の正面部15c側の内壁15fは、「袴部15の前方側内壁」の一例である。
被取付部18には、上記した固定部材80のネジ挿通孔88(図3で図示省略)と対応する位置に、雌ネジ孔19が形成される。したがって、取付ネジ95(図12参照)が、固定部材80のネジ挿通孔88を通って雌ネジ孔19に締結されることで、固定部材80は、嵌合部87(図5参照)が被取付部18に嵌合された状態で、被取付部18の下面18aに取り付けられる。このように、固定部材80は、前方内部空間Acで便器10に取り付けられる。
なお、雌ネジ孔19には、たとえば図示しないゴムブッシュが取り付けられていてもよい。これにより、被取付部18と固定部材80との干渉を緩和させることができる。
被取付部18の下面18aの床面Fからの高さH2は、たとえば、便器10の袴部15の下端15aの高さH1よりも所定高さH3だけ高くなるように設定されてもよい。上記したように、袴部15の下端15aと床面Fとの間には、使用者が手を入れることができる高さH1の隙間が設けられている。
したがって、固定部材80に固定されたバルブ62や接続端子67(図3で図示せず)は、袴部15内において手動操作可能な位置に位置決めされる。具体的には、固定部材80に固定されたバルブ62など管状部材6の一部は、袴部15の下端15a近傍の高さに位置決めされる。
これにより、使用者は、たとえば緊急時に袴部15の下端15a側から手を入れてバルブ62や接続端子67を容易に手動操作することが可能になり、衛生洗浄装置30に対する給水および止水の切り替えや、給電および給電停止の切り替えを容易に行うことができる。
なお、この明細書において、固定部材80が配置される「袴部15の下端15a近傍の高さ」とは、たとえば便器10の下端15a側から入れた使用者の手が、固定部材80に固定された管状部材6の一部に届く範囲を意味する。また、「袴部15の下端15a近傍の高さ」は、「内部空間Aの下端近傍の高さ」に概ね相当する。
また、固定部材80は、袴部15の内部に隠蔽されて収容されることとなるため、外観からは固定部材80、給水系統や給電系統が見えず、よってトイレ装置1の意匠性を向上させることができる。
また、被取付部18の下面18aは、たとえば便器10が壁Wに取り付けられた状態のときに、床面Fに対して平行または略平行となるように形成される、言い換えれば、水平または略水平となるように形成されることが好ましい。これにより、被取付部18に取り付けられた固定部材80も水平または略水平になるため、固定部材80に載置された管状部材6などが固定部材80から滑り落ちることを防止することができる。
便器10の説明を続けると、便器10は、図2に示すように、取込孔20を備える。取込孔20は、リム部17の上面17bの壁W側付近に形成され、衛生洗浄装置30を便器10に取り付ける際、衛生洗浄装置30に接続される第2給水管61bや第2電源ケーブル66bを便器10の内部空間Aへ取り込むための孔である。なお、取込孔20は、「第2取込部」の一例である。
図9は、便器10を袴部15の背面部15d側から見たときの図である。図9に示すように、背面部15dには、上記した導水路11の入口や排水路14の出口が設けられる。背面部15dにはさらに、給水用取込孔21と、給電用取込孔22と、2つの取付孔23とが形成される。
給水用取込孔21は、背面部15dにおいて排水路14に隣接して形成され、便器10を壁Wに取り付ける際、壁Wから延びる第1給水管61aを便器10の内部空間A(正確には右方内部空間Aa)へ取り込むための孔である。なお、給水用取込孔21は「第1取込部」の一例である。
給電用取込孔22は、背面部15dにおいて給水用取込孔21とは排水路14を挟んで反対側の位置に形成される。給電用取込孔22は、便器10を壁Wに取り付ける際、壁Wから延びる第1電源ケーブル66aを便器10の内部空間A(正確には左方内部空間Ab)へ取り込むための孔である。また、取付孔23は、壁Wから突出される取付用ボルト75(図10A参照)が挿入される孔である。
図2および図9に示すように、取込孔20および給水用取込孔21は、便器10において内部空間Aのうち、給水系統の管状部材6が収容される右方内部空間Aaに対応する位置にそれぞれ形成される。
これにより、電源ケーブル66に比べ、湾曲部分6aにおいて高い張力が発生し易い給水管61を、右方内部空間Aaだけで取回すことができる、言い換えると、右方内部空間Aaから左方内部空間Abへ取回したりしないようにすることができる。
すなわち、給水管61は、特に、給水圧に耐えうる強度が必要となるため、通常メタルホース等の強度が比較的高い部材で構成されており、そのため湾曲部分6aに高い張力が発生して負荷が大きくなり易い。そこで、本実施形態にあっては、図4に示すように、給水用取込孔21や取込孔20(図11参照)から取り込まれた給水管61は、右方内部空間Aaでのみ湾曲されて収容されることから、給水管61の湾曲部分6aなどに高張力が発生しにくくなり、よって給水管61に過度な負荷が作用することをより抑制することができる。
次に、トイレ装置1の組み立て(設置)について図10A以降を参照して説明する。図10Aは、便器10を壁Wに取り付ける前の状態を示す斜視図であり、図10Bは、便器10を壁Wに取り付けた後の状態を示す斜視図である。なお、図10A,10Bでは、理解の便宜のため、便器10を破線で示した。
図10Aに示すように、便器10が取り付けられる前の壁Wには、洗浄水供給管50、排水管51、第1給水管61a、第1電源ケーブル66a、2本の取付用ボルト75が設けられている。
そして、便器10は、Y軸正方向へ移動させられ、背面部15dが壁Wに当接させられる。これにより、図10Bに示すように、取付孔23に取付用ボルト75が挿通され、かかる取付用ボルト75が図示しないナットで締結固定されることで、便器10は壁Wに取り付けられる。
また、洗浄水供給管50は導水路11に接続されるとともに、排水管51が排水路14に接続される。さらに、第1給水管61aは、給水用取込孔21から便器10内へ取り込まれるとともに、第1電源ケーブル66aは、給電用取込孔22から便器10内へ取り込まれる。
続いて、衛生洗浄装置30が便器10に取り付けられる。図11は、衛生洗浄装置30を便器10に取り付ける様子を示す斜視図である。図11に示すように、便器10に衛生洗浄装置30を取り付ける際、第2給水管61bと第2電源ケーブル66bとが取込孔20を介して便器10の内部へ取り込まれる。
その後、便器10の内部に取り込まれた第1給水管61aと第2給水管61bとが、バルブ62を介して接続されるとともに、第1電源ケーブル66aと第2電源ケーブル66bとが第1、第2接続端子67a,67bを介して接続される。続いて、バルブ62等が、上記したように、固定部材80上に載置されて固定される(図4参照)。
続いて、バルブ62等が固定された固定部材80が、便器10の被取付部18に取り付けられる。図12は、固定部材80を便器10に取り付ける様子を斜め下から見たときの斜視図である。
図12に示すように、取付ネジ95が固定部材80のネジ挿通孔88に挿通させられた後、雌ネジ孔19に締結されることで、固定部材80が被取付部18に取り付けられる。これにより、トイレ装置1の組み立てが完了する。
上述してきたように、実施形態に係るトイレ装置1は、便器本体10と、衛生洗浄装置30と、管状部材6と、固定部材80とを備える。便器本体10は、汚物を受けるボウル部12およびボウル部12に接続されるトラップ部13を覆い大便器の外郭を形成する袴部15を備えるとともに、ボウル部12とトラップ部13と袴部15とによって囲まれ上下方向に延在する内部空間Aを有する。衛生洗浄装置30は、便器本体10の上面に設けられ、使用者の局部を洗浄する。管状部材6は、衛生洗浄装置30に接続される。固定部材80は、内部空間Aの下端近傍の高さに配置され、管状部材6を固定する。管状部材6は、固定部材80より上方の内部空間Aに上下方向に湾曲して収容される。これにより、便器本体10の内部空間Aに収容された衛生洗浄装置30の管状部材6に過度な負荷が作用することを抑制することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るトイレ装置1が備える固定部材について説明する。なお、以下では、上記した実施形態と共通の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、第2の実施形態において、第1の実施形態の構成と対応する構成は、符号の先頭に「1」を付して説明する。
図13は、第2の実施形態に係る固定部材180を示す斜視図である。なお、図13における固定部材180は、便器10(図1参照)の内部空間Aに収容された状態を示している。また、図13においては、図の簡略化のため、給水系統の管状部材6である第1、第2給水管61a,61bなどの図示を省略している。
図13に示すように、第2の実施形態に係る固定部材180は、第1の実施形態と同様、固定ケース部183bと、第1ガイド部184と、第2ガイド部185とを備える。
固定ケース部183bは、円筒状に形成され、内部に接続端子67を収容する。具体的には、固定ケース部183bは、ケース本体183b1と、蓋部183b2とを備える。そして、固定ケース部183bは、ケース本体183b1と蓋部183b2とが重なることによって形成される内部空間S1(後述する図15参照)に接続端子67を収容する。
かかる固定ケース部183bの詳細な構成については、後述する。なお、固定ケース部183bは「ケース部」の一例であり、接続端子67は「電源用の連結部材」の一例である。
第1ガイド部184は、固定ケース部183bから延出された第2電源ケーブル66bを前方(Y軸負方向)へガイドする。詳しくは、第1ガイド部184は、支柱部201と、湾曲部202とを備える。
支柱部201は、固定ケース部183bから前方へ所定距離離間した位置において、プレート部81から上方(Z軸正方向)へ向けて立設される。湾曲部202は、支柱部201から連続するとともに、上方へ向けて突出する凸状となるように湾曲されて形成され、第2電源ケーブル66bを係止可能な形状とされる。これにより、第1ガイド部184は、第2電源ケーブル66bを湾曲部202に係止させつつ、前方へガイドすることができる。
第2ガイド部185は、第1ガイド部184によって前方へガイドされつつ、上下方向に湾曲された第2電源ケーブル66bを、後方(Y軸正方向)へガイドする。詳しくは、第2ガイド部185は、複数(例えば2個)あり、固定ケース部183bの長手方向である前後方向において両端付近にそれぞれ設けられる。
以下、2個の第2ガイド部185のうち、前方側に位置する第2ガイド部185を「前側ガイド部185a」、後方側に位置する第2ガイド部185を「後側ガイド部185b」と記載する場合がある。また、以下では、前側ガイド部185aについて図14および図15を参照して説明するが、以下の説明は、後側ガイド部185bについても概ね妥当する。
図14は、固定部材180の固定ケース部183b付近の平面図であり、図15は、図14のXV−XV線断面図である。なお、理解の便宜のため、第1、第2電源ケーブル66a,66b、接続端子67について、図14では図示を省略し、図15では想像線で示している。
図14および図15に示すように、前側ガイド部185aは、支柱部205と、湾曲部206とを備え、弾性変形可能に構成される。支柱部205は、固定ケース部183bの蓋部183b2の上面部220に形成された開口222から上方(Z軸正方向)へ向けて立設される。詳しくは、蓋部183b2の上面には、平面視矩形状の開口222が形成される。そして、支柱部205は、かかる開口222の左右の周縁222aからそれぞれ上方へ向けて立設される。すなわち、支柱部205は、開口222を挟んで2個立設される。
湾曲部206は、図15に示すように、2個の支柱部205からそれぞれ連続するように形成される。各支柱部205から連続する2個の湾曲部206は、一方の先端206aが、他方の湾曲部206の先端206aと所定距離B離間して対向するように湾曲される。なお、所定距離Bは、例えば、第2電源ケーブル66bのケーブル径Cより小さい値に設定されるが、これに限定されるものではない。
ここで、上記のように構成された前側ガイド部185aに対する、第2電源ケーブル66bの取り付けについて説明する。前側ガイド部185aにあっては、先ず、第2電源ケーブル66bが、湾曲部206の先端206a同士の間から押し込まれ、それに伴い、対向する支柱部205や湾曲部206が、互いに離間する方向(左右方向)に変形する。続いて、第2電源ケーブル66bが、先端206a同士の間を通過すると、支柱部205や湾曲部206が元の形に戻り(弾性変形し)、これによって第2電源ケーブル66bが前側ガイド部185aに取り付けられることとなる。
これにより、例えば、第2電源ケーブル66bは、図13に示すように、第1ガイド部184に係止された後、折れや捩れ等のキンクが発生しにくい曲げ半径となるように上下方向に湾曲されて、前側ガイド部185aに取り付けられるようにすることが可能となる。これによって、第2電源ケーブル66bにおける曲がりが緩やかになるため、高張力が発生しにくく、第2電源ケーブル66bに過度な負荷が作用することを抑制することができることは既に述べた通りである。
また、上記したように、所定距離B(図15参照)は、第2電源ケーブル66bのケーブル径Cより小さい値に設定されることから、前側ガイド部185aに取り付けられた第2電源ケーブル66bを湾曲部206の先端206a同士の間から外れにくくすることができる。
また、前側ガイド部185aは、互いに対向する2個の支柱部205および湾曲部206を備えるため、第2電源ケーブル66bの移動によって生じる破損などを抑制することができる。すなわち、例えば、第2電源ケーブル66bが、何らかの理由によって先端206a同士の間から外れる方向へ移動した場合、前側ガイド部185aに接触して力が作用する。第2の実施形態に係る前側ガイド部185aにあっては、上記のように構成することで、第2電源ケーブル66bから作用する力が2個の湾曲部206や支柱部205に分散されることとなるため、第2電源ケーブル66bの移動によって生じる破損などを抑制することができる。
なお、上記では、第2ガイド部185が固定ケース部183bに2個形成されるようにしたが、これはあくまでも例示であって限定されるものではなく、第2ガイド部185の位置は任意に設定できるとともに、個数も1個または3個以上であってもよい。
次に、固定ケース部183bの詳細な構成について説明する。図16は、固定ケース部183bのケース本体183b1および蓋部183b2の平面図である。なお。図16にあっては、ケース本体183b1から蓋部183b2を取り外した状態を示し、蓋部183b2は、内部が見えるように裏返した状態を示している。
図15,16に示すように、固定ケース部183bのケース本体183b1は、底面部210と、側壁部211とを備える。底面部210は、前後方向(Y軸方向)に沿って長尺状に形成される。また、底面部210は、所定方向(ここでは長手方向である前後方向)に延在する樋状に形成される、言い換えると、図15に示すように、側面視において下方に向かって湾曲する凹状に形成される。
側壁部211は、底面部210から連続するとともに、底面部210の長手方向の両端を塞ぐように形成される。従って、ケース本体183b1は、上方が開口された形状とされる。
固定ケース部183bの蓋部183b2は、上面部220と、側壁部221とを備える。上面部220は、ケース本体183b1の底面部210と対応するように、前後方向に沿って長尺状に形成される。また、図15に示すように、上面部220は、側面視において上方に向かって湾曲する凸状に形成される。
側壁部221は、上面部220から連続するとともに、上面部220の長手方向の両端を塞ぐように形成される。従って、蓋部183b2は、下方が開口された形状とされる。
上記のように構成されたケース本体183b1と蓋部183b2とは、互いの開口を合わせるようにして重ねられることで、接続端子67を収容する内部空間S1が形成される。
ところで、固定ケース部183bにおいては、内部に水が溜まることがある。すなわち、例えば環境温度や環境湿度、接続端子67の発熱の影響などにより、固定ケース部183bの内部空間S1において空気中の水分が結露して水(結露水)が発生し、固定ケース部183b内に水が溜まることがある。また、例えば、トイレ清掃時に飛散した水が固定ケース部183b内に侵入して溜まることもある。
上記のように、固定ケース部183b内に水が溜まると、例えば、接続端子67に影響して故障などが発生するおそれがあった。そこで、第2の実施形態にあっては、固定ケース部183b内の水の影響による故障などの発生を抑制することができる構成とした。以下、かかる構成について詳しく説明する。
図15,16に示すように、固定ケース部183bは、挿通孔230と、水抜き孔240と、熱拡散部材250と、係合部260(図16参照)とを備える。
挿通孔230には、第1電源ケーブル66aや第2電源ケーブル66bが挿通される。例えば、挿通孔230は、側面視円状に形成される孔であり、その開口面積は、第1電源ケーブル66aや第2電源ケーブル66bの断面積と略同じ、あるいは、断面積より僅かに大きい値とされる。
具体的には、挿通孔230は、本体側切欠部230aと、蓋側切欠部230bとを含む。本体側切欠部230aは、ケース本体183b1の側壁部211において、上端の中央付近に形成される側面視半円状の切欠きである。蓋側切欠部230bは、蓋部183b2の側壁部221において、下端の中央付近に形成される側面視半円状の切欠きである。そして、ケース本体183b1に蓋部183b2が取り付けられる際に、本体側切欠部230aに蓋側切欠部230bが重ねられて、側面視円状の挿通孔230が形成される。
上記のように構成された挿通孔230は、固定ケース部183bの前方(Y軸負方向)側および後方(Y軸正方向)側の側壁部211,221にそれぞれ設けられる。図16に示すように、固定ケース部183bの前方側に設けられる挿通孔230には、第2電源ケーブル66bが挿通される一方、後方側に設けられる挿通孔230には、第1電源ケーブル66aが挿通される。
なお、上記において、挿通孔230を前方側および後方側の2個としたが、これに限定されるものではなく、1個または3個以上であってもよい。また、上記した挿通孔230には、第1電源ケーブル66aおよび第2電源ケーブル66bのいずれかが挿通されるようにしたが、これに限られず、例えば、第1、第2電源ケーブル66a,66bの両方が挿通されるようにしてもよい。
水抜き孔240は、図15に示すように、固定ケース部183bの内部空間S1と外部空間S2とを連通する。例えば、水抜き孔240は、固定ケース部183bのケース本体183b1の底面部210に形成される。詳しくは、水抜き孔240は、凹状に形成される底面部210のうち、鉛直下方(Z軸負方向)側の部位であって、左右方向(X軸方向)における中央側の部位に形成される。また、水抜き孔240は、鉛直方向に沿って穿設される貫通孔である。
これにより、固定ケース部183bにおいては、例えば、結露などによって内部に水が生じた場合であっても、かかる水を水抜き孔240から排出することができ、よって水の影響による接続端子67の故障などの発生を抑制することができる。
また、底面部210は、上記したように樋状(凹状)に形成されることから、例えば結露などによって生じた水を、図15に矢印Dで示すように、中央側に集めることができる。水抜き孔240は、上記したように、底面部210中央側の部位に形成されることから、中央側に集まった水を効率よく排出することができる。
上記した水抜き孔240は、図16に示すように、底面部210に複数(例えば2個)形成される。例えば、水抜き孔240は、所定方向(ここでは長手方向である前後方向)に延在する樋状の底面部210において、所定方向に沿って複数形成される。具体的には、水抜き孔240は、底面部210において前方側の端部付近と後方側の端部付近とにそれぞれ形成される。
なお、以下では、2個の水抜き孔240のうち、前方側に位置する水抜き孔240を「前側水抜き孔240a」、後方側に位置する水抜き孔240を「後側水抜き孔240b」と記載する場合がある。
これにより、例えば、固定ケース部183bを備える固定部材180が前後方向に傾いた状態で便器10(図1参照)に取り付けられた場合であっても、結露などによって生じた水は、前側水抜き孔240aおよび後側水抜き孔240bのいずれかへ向かって流れ、排出されることとなる。従って、固定ケース部183bにあっては、水の影響による接続端子67の故障などの発生をより一層抑制することができる。
また、水抜き孔240は、開口面積が挿通孔230の開口面積より小さくなるように形成される。例えば、前側水抜き孔240aおよび後側水抜き孔240bの合計開口面積が、2個の挿通孔230の合計面積より小さい値となるように設定される。すなわち、第2の実施形態に係る固定ケース部183bにおいて、水抜き孔240を備えることによって形成される開口の大きさが、可能な限り小さくなるようにする。
これにより、固定ケース部183bにおいては、例えば接続端子67の発火を抑制することができる。すなわち、固定ケース部183bにあっては、例えば、水抜き孔240の開口面積を上記のようにすることで、水抜き孔240から内部空間S1へ流入する空気量を可能な限り少なくすることができる。従って、固定ケース部183bは、流入する空気量(言い換えると酸素量)が少ないことから、例えば、接続端子67において発火しにくくすることができる、すなわち、接続端子67の発火を抑制することができる。
なお、上記では、前側水抜き孔240aおよび後側水抜き孔240bは、開口面積が同じ値とされるが、これに限定されるものではなく、例えば、開口面積を互いに異ならせるようにしてもよい。
また、上記した水抜き孔240が形成される位置や個数は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、水抜き孔240の位置は任意に設定できるとともに、個数も1個または3個以上であってもよい。
次に、熱拡散部材250について、図16および図17を参照して説明する。図17は、図14のXVII−XVII線断面図である。なお、図16では、理解の便宜のため、熱拡散部材250を破線で示している。
図16および図17に示すように、熱拡散部材250は、接続端子67の熱を拡散させる部材である。熱拡散部材250としては、例えば、アルミニウムなど熱伝導率が比較的高い材質によって製作されるテープ状の部材を用いることができるが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、熱拡散部材250は、マイカ(雲母)など熱伝導率が比較的高い材質、具体的には空気より熱伝導率が高い材質の部材であればよく、また、形状も薄板状などその他の形状であってもよい。また、熱拡散部材250は、不燃性や絶縁性などを有していてもよい。
熱拡散部材250は、固定ケース部183bの内壁214,224側に設けられる。例えば、熱拡散部材250は、ケース本体183b1および蓋部183b2にそれぞれ設けられる。
詳しくは、熱拡散部材250は、第1熱拡散部材250aと、第2熱拡散部材250bとを含む。第1熱拡散部材250aは、ケース本体183b1の底面部210の内壁214であって、上記した水抜き孔240が形成される部位付近を除く部分に設けられる。また、第1熱拡散部材250aは、底面部210の内壁214において、上方の開口付近まで設けられる。
第2熱拡散部材250bは、蓋部183b2の上面部220の内壁224において、全面に亘って設けられる。なお、上記した第1熱拡散部材250aや第2熱拡散部材250bが設けられる部分は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、任意に設定することができる。また、上記では、第1、第2熱拡散部材250a,250bが底面部210や上面部220の内壁214,224に設けられるようにしたが、これに加え、あるいは代えて、側壁部211,221に設けられるようにしてもよい。
これにより、固定ケース部183bにあっては、例えば、接続端子67の熱を熱拡散部材250を介して拡散して放熱することが可能となり、よって接続端子67の熱が局所的に集中してしまうことを抑制することができる。
係合部260は、フック部260aと、フック開口部260bとを備え、蓋部183b2をケース本体183b1に取り付ける。例えば、フック部260aは、ケース本体183b1の側壁部211の適宜位置に形成される。他方、フック開口部260bは、蓋部183b2の側壁部221において、フック部260aと対応する位置に形成される。また、フック開口部260bは、フック部260aが挿入可能な開口260b1を有する。
そして、フック部260aが開口260b1に挿入されて、フック開口部260bと係合することで、蓋部183b2がケース本体183b1に取り付けられて固定される。
なお、上記したフック部260aやフック開口部260bの位置は、あくでも例示であって限定されるものではない。また、フック部260aが蓋部183b2に、フック開口部260bがケース本体183b1に形成されてもよい。
なお、上記した実施形態において、固定部材80,180の形状は、上記した略U字状に限定されるものではなく、たとえば平面視において略O字状に形成されるなどその他の形状であってもよい。
また、上記した固定部材80,180は、プレート部81において給水系統載置部位81aと給電系統載置部位82bと取付部位81cとが一体的に形成されるようにしたが、これに限定されるものではない。すなわち、たとえば、固定部材80,180において、取付部位81cが除去され、給水系統載置部位81aと給電系統載置部位82bとが別体に形成されていてもよい。かかる場合、給水系統載置部位81aと給電系統載置部位81bとがそれぞれ便器10に取り付けられることとなる。
また、上記では、取込孔20、給水用取込孔21および給電用取込孔22は、いずれも孔としたが、これに限定されるものではなく、たとえば、切り欠きなど給水管61や電源ケーブル66を取り込むことができればその他の形状であってもよい。
また、上記において、便器10は、タンクに貯留された洗浄水で洗浄を行うロータンク式としたが、これに限定されるものではなく、たとえばフラッシュバルブ式であってもよい。また、上記では、洗浄ノズル43は、使用者の局部を洗浄するようにしたが、これに限られず、たとえば水を使用前の便器10の汚物受け面16へ噴出させて汚物の付着を抑制するように構成してもよい。
また、上記したネジ挿通孔88および雌ネジ孔19が形成される位置や個数は、あくまでも例示であって限定されるものではなく、適宜に変更可能である。また、本明細書における「使用者」は、トイレ装置1を利用する者に限られず、たとえば、衛生洗浄装置30に対して止水等の各種作業を行う者を含む意味で用いる場合がある。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。