以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電動機駆動用インバータ制御システム1を含む電動機制御システムの構成を示す図である。
同図には、電動機用インバータ制御システム1を構成する電動機駆動用インバータ2と操作端末3、並びに、電動機用インバータ2と接続され、電動機駆動用インバータ2によってその運転及び停止や運転時の回転数が制御される電動機4、操作端末3と無線通信を行う電子通信機器5が模式的に示されている。
電動機駆動用インバータ2は、典型的には、商用交流電源或いは直流電源から可変周波数三相交流へと変換するインバータ回路を含む機器であり、電動機4の回転数を任意に制御しつつ駆動するのに適したものである。なお、電動機駆動用インバータ2に使用されるインバータ回路は、一般的な電圧形インバータであってもよいし、電流形インバータや、その他の形式の回路であってもよい。また、電動機駆動用インバータ2は、かかるインバータ回路を含み、電動機4の回転数を任意に制御しつつ駆動するものであればよく、一般的に電動機駆動用のインバータとして販売されるもののほか、サーボコントローラ(又はサーボアンプ)として知られるサーボモータの駆動制御に使用される機器を含む。
操作端末3は、電動機駆動用インバータ2の前面に取り付けられ、取り外し可能な機器である。図1では、電動機駆動用インバータ2の前面に設けられた凹部に嵌めこまれ、あたかも電動機駆動用インバータ2と一体となるように保持されている。この時、電動機駆動用インバータ2に設けられたコネクタと、操作端末3に設けられたコネクタとが接続されることで、両者は物理的に接続され、互いに電気信号のやり取りができるようになっている。ユーザからの電動機駆動用インバータ2への各種操作の指示や、情報の表示はこの操作端末3を介してなされる。なお、この両者のコネクタを適宜の電気ケーブルで接続して、操作端末3を数メートル程度電動機駆動用インバータ2から離して使用することも可能である。操作端末3の詳細な構成は後述する。
電動機4は、電動機駆動用インバータ2により駆動される交流電動機である。電動機4の形式は特に限定されず、一般的な誘導電動機の他、同期型リラクタンスモータ、表面磁石型同期モータ、内蔵磁石型同期モータ等であってもよい。
電子通信機器5は、無線通信機能を有するいわゆる情報端末であり、例えば、図1に示すようなスマートフォンであってよい。もちろん、電子通信機器5は他の情報端末であってよく、携帯電話やPDA、タブレットコンピュータや一般的なノート型又はデスクトップ型コンピュータであってもよい。電子通信機器5は、無線通信により操作端末3と無線接続され、電子通信機器5上で、あたかも操作端末3を操作するのと同様に、電動機駆動用インバータ2への各種操作の指示や情報の表示を遠隔で行うために使用される。
図2は、操作端末3の外観図である。操作端末3の前面には、情報表示画面30、インジケータ31、操作スイッチ32が配置されている。また、操作端末3内部の適宜の位置、この例では上部には、無線通信ユニット36が設けられている。
情報表示画面30は、ユーザに各種情報を表示するための表示画面であり、一般的なドットマトリクス型平面ディスプレイを使用してよい。情報表示画面30は、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイであってよい。
インジケータ31は、必須のものではないが、電動機駆動用インバータ2の基本的な状態をインジケータ31の点灯状態によりユーザに通知するものである。通知すべき基本的な状態に特に限定はないが、例えば、電動機駆動用インバータ2の運転中、停止中の別やスタンバイ状態、異常発生時のアラーム表示等が挙げられる。各通知は、インジケータ31の点灯色により区別されてもよいし、また、インジケータ31の個数も図示した2個に限定されず、任意で良い。
操作スイッチ32は、ユーザが電動機駆動用インバータ2に対する各種の操作や、制御パラメータの変更、内部情報の表示等を行うためのスイッチである。ここでは、操作スイッチ32には、十字キーや決定キーなどの、スイッチ操作の組み合わせや情報表示画面30での表示状態に応じて種々の操作を行う汎用スイッチ群33と、電動機の運転(すなわち、回転)を指示する運転スイッチ34、及び、電動機の停止(すなわち、回転停止)を指示する停止スイッチ35が含まれる。なお、汎用スイッチ群33に、運転スイッチ34及び停止スイッチ35以外の特定機能用のスイッチが含まれても差し支えない。また、汎用スイッチ群33は、必ずしも独立したスイッチとして操作端末3の前面に設けずともよく、情報表示画面30をタッチパネルとして、情報表示画面30上での仮想スイッチとして実現してもよい。
無線通信ユニット36は、無線アンテナと、通信用コントローラ等を有し、操作端末3が外部の電子通信機器5と無線による情報通信できるようにする無線通信部である。無線通信ユニット36による無線通信の通信規格は、特別のものを用いてもよいが、既存の通信規格を利用してよく、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi−Fi(登録商標)等を用いることができる。本実施形態では、操作端末3と電子通信機器5間の無線通信規格として、Bluetooth(登録商標)を用いており、以降これに基づいて説明するが、無線通信規格はBluetooth(登録商標)に限定されるものではない。
図3は、電動機駆動用インバータ制御システム1の機能ブロック図である。操作端末3は、図2で示した情報表示画面30、インジケータ31、操作スイッチ32及び無線通信ユニット36のほか、内部にモード設定部37及びコントローラ38を含む。
本実施形態に係る操作端末3は、操作のモードとして、少なくとも、無線通信モードと、スイッチ操作モードの2つのモードを有しており、モード設定部37は、ユーザからの操作の有無その他の外的条件に応じて、操作端末3のモードを適切なものに設定する。設定されたモードは、モード設定部37により保持されるほか、後述するコントローラ38に通知されてよい。
ここで、操作端末3の操作のモードとは、ユーザが操作端末3を操作する際に用いられる主たるインタフェースに応じて、操作端末3の動作が変化する場合の、操作端末3の選択される動作を指しており、無線通信モードは、ユーザが、前述した外部の電子通信機器5を操作して、無線通信により操作端末3を遠隔操作する際に適したモードであり、スイッチ操作モードは、ユーザが、操作端末3の操作スイッチ32を直接操作する際に適したモードである。無線通信モード、スイッチ操作モードの詳細は後述する。
コントローラ38は、操作端末3全体の動作を制御する情報処理回路である。コントローラ38は、一般的なマイクロコントローラや、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用情報処理回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのPLD(Programmable Logic Device)であってよい。
特に、コントローラ38は、モード設定部37を介して操作スイッチ32から入力される情報、無線通信ユニット36と入出力する情報、情報表示画面30及びインジケータ31に出力する情報、及び電動機駆動用インバータ2と入出力する情報の流れをコントロールするとともに、必要に応じて情報を生成し出力する。また、モード設定部37の機能は、コントローラ38の機能の一部としてソフトウェアにより実現されてもよい。
操作端末3と電動機駆動用インバータ2とは、本実施形態では、互いに情報通信可能であり、コントローラ38を介して必要な情報の授受を行う。
本実施形態に係る操作端末3では、基本的には無線通信モードにあり、操作スイッチ32に対する特定の操作がなされることによりスイッチ操作モードに移行する。また、操作スイッチ32に対する操作が一定時間、例えば、5分間なされないと、モード設定部37が無線通信モードに設定するため、操作端末3はユーザが意識的にスイッチ操作モードへと移行させない限り、無線通信モードにあることとなる。
以上説明の通り、本実施形態に係る電動機駆動用インバータ2、操作端末3及び電子通信機器5は、いわゆる情報処理装置100としての基本的な構成を有している。図4は、電動機駆動用インバータ2、操作端末3及び電子通信機器5の情報処理装置100としての基本的なハードウェア構成を示す図である。
図4に示すように、情報処理装置100は、プロセッサ101、メモリ102及びI/O103がバス104に接続され、互いに情報通信可能に接続された構成を有している。プロセッサ101は、上述した操作端末3のコントローラ38のごとく、汎用の情報処理回路であっても、専用情報処理回路であってもよい。メモリ101は、揮発性メモリと不揮発性メモリを含んでよく、前者は一般的なRAM(Random Access Memory)、後者はROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)であってよい。I/O103は、バス104と各種機器105を接続し、互いに情報通信可能とするためのインタフェースである。
各種機器105は、情報処理装置100により制御しようとする機器である。各種機器105のいくらかは、情報処理装置100としての構成を有する機器に直接搭載される。例えば、操作端末3の情報表示画面30、インジケータ31、操作スイッチ32及び無線通信ユニット36等は各種機器105に該当する。また、各種機器105の残りは、情報処理端末100としての構成を有する機器の外部から接続される。例えば、操作端末3にとり、電動機駆動用インバータ2は各種機器105に該当する。
しかしながら、電動機駆動用インバータ制御システム1における情報の流れと動作は、スイッチ操作モードにおけるもののほうがわかりよいため、まず、スイッチ操作モードにおける情報の流れと動作を説明する。
図4は、スイッチ操作モードにおける、電動機駆動用インバータ制御システム1における情報の流れを示す図である。ユーザにより操作スイッチ32に対しなされた操作の情報は、(a)で示すようにモード設定部37を通過し、コントローラ38を介して電動機駆動用インバータ2へと伝達される。
電動機駆動用インバータ2では、操作スイッチ32に対しなされた操作に対応する動作、例えば、電動機4への駆動電力の出力・停止や、内部パラメータの変更等を行うとともに、操作スイッチ32に対しなされた操作に対して、操作端末3の情報表示画面30に表示されるべき画像を生成し、また、インジケータ31が示すべき状態を示す情報を生成し、(b)で示すようにコントローラ38に伝達する。コントローラ38は、電動機駆動用インバータ2により生成された画像を情報表示画面30に表示し、また、インジケータ31を点灯又は消灯させ、電動機駆動用インバータ2から通知された状態をユーザに通知する。
なお、操作端末3の情報表示画面30に表示されるべき画像は、必ずしも本例のように、電動機駆動用インバータ2が単体で生成しなければならないわけではない。画像を得るための他の方法としては、電動機駆動用インバータ2にあらかじめ表示される画像を記憶させておき、電動機駆動用インバータ2が表示しようとする画像を選択して操作端末3に伝達する方法、操作端末3にあらかじめ表示される画像の情報を記憶させておき、電動機駆動用インバータ2が表示しようとする画像を指定する方法、操作端末3自体が、ユーザの操作を解釈して、操作端末3があらかじめ記憶している画像を選択する方法、さらに、操作端末3自体が、ユーザの操作を解釈して、表示されるべき画像を生成する方法などが考えられる。また、これらの方法を適宜組み合わせてもよい。例えば、表示すべき画像の一部は電動機駆動用インバータ2が生成し操作端末3に伝達し、残りの画像は操作端末3が生成するなどしてもよい。
無線通信ユニット36は、スイッチ操作モードでは無線通信をオフとして全く行わないか、又は、後述するように、一部の例外を除き、無線通信ユニット36から入力される情報は(c)に示すようにモード設定部37により遮断され、電動機駆動用インバータ2に伝達されない。このため、スイッチ操作モードでは外部の電子通信機器5による電動機駆動用インバータ2の操作は原則できない。
図5は、スイッチ操作モードにおいて、操作端末3の情報表示画面30に電動機駆動用インバータ2により生成された画像が表示され、また、インジケータ31が点灯している様子の例を示す図である。同図に示すように、電動機駆動用インバータ2により生成された画像をGUI(Graphical User Interface)としてユーザは電動機駆動用インバータ2が備える各機能にアクセスし、また情報を参照することができる。
本実施形態にかかるスイッチ操作モードは、モード設定部37による情報の通過制御がなされていることを除けば、無線通信機能を持たない従来のキーパッドを用いた動作と類似しており、特に、電動機駆動用インバータ2から見た場合には、その差異は認識されないことになる。
これに対し、次に無線通信モードにおける情報の流れと動作を説明する。図6は、無線通信モードにおける、電動機駆動用インバータ制御システム1における情報の流れを示す図である。無線通信モードでは、後述するように、一部の例外を除き、ユーザにより操作スイッチ32に対しなされた操作の情報は、(d)で示すようにモード設定部37で遮断され、電動機駆動用インバータ2に伝達されない。このため、無線通信モードでは操作スイッチ32による電動機駆動用インバータ2の操作は原則できない。
これに対し、無線通信モードでは、無線通信ユニット36と電子通信機器5との間の無線通信が確立され、ユーザによる操作は、電子通信機器5に対しなされ、受け付けられる。電子通信機器5で受け付けられたユーザの操作の情報は、(e)に示すように無線通信によって無線通信ユニット36へと伝達され、さらに、(f)で示すようにモード設定部37を通過し、コントローラ38を介して電動機駆動用インバータ2へと伝達される。
電動機駆動用インバータ2での動作は、先のスイッチ操作モードのときと同様である。すなわち、ユーザによりなされた操作に対応する動作に対して、操作端末3の情報表示画面30に表示されるべき画像を生成し、また、インジケータ31が示すべき状態を示す情報を生成し、(g)で示すようにコントローラ38に伝達する。
しかしながら、電動機駆動用インバータ2より受け取った情報のコントローラ38における取り扱いは、先のスイッチ操作モードとは異なる。無線通信モードでは、コントローラ38は、電動機駆動用インバータ2により生成された画像を無線通信ユニット36へと送り、(h)に示すように電子通信機器5へと送信させる。したがって、かかる画像は、電子通信機器5上に表示される。これにより、ユーザは、あたかも操作端末3を直接操作しているかのように電子通信機器5を操作することができる。また、コントローラ38は、電動機駆動用インバータ2から通知された状態に基づいてインジケータ31を点灯又は消灯させるが、これは必須のものでなく、インジケータ31を無線通信モードに特有の状態(例えば、全消灯など)にしてもよいし、また、電子通信機器5上にインジケータ31を模した表示を行ってもよい。
なお、先のスイッチ操作モードにおいて説明した場合と同様に、無線通信モードにおいても、電子通信機器5上に表示されるべき画像は、必ずしも電動機駆動用インバータ2が生成しなければならないわけではない。電動機駆動用インバータ2、情報端末3及び電子通信機器5のいずれか又は複数が、あらかじめ表示される画像を記憶しておき、いずれかの機器による指定により該当する画像を電子通信機器5上に表示するようにしても、電動機駆動用インバータ2、情報端末3及び電子通信機器5のいずれか又は複数が、ユーザの操作を解釈して表示すべき画像を生成するようにしてもよい。また、これらの方法を組み合わせてもよい点についても同様である。さらに、スイッチ操作モードにおいて操作端末3の情報表示画面30に表示される画像と、無線通信モードにおいて電子通信機器5に表示される画像とは、必ずしも同一でなく、そのデザイン等が異なっていてもよい。
一方、操作端末3の情報表示画面30に対しては、コントローラ38が生成した、無線通信モードであることを示す画像を伝達し表示させる。これにより、操作端末3を見たユーザは、電動機駆動用インバータ制御システム1が現在無線通信モードにあることを認識できる。
図7は、無線通信モードにおいて、操作端末3の情報表示画面30にコントローラ38により生成された画像が表示されるとともに、電子通信機器5上に電動機駆動用インバータ2により生成された画像が表示されている様子の例を示す図である。
操作端末3の情報表示画面30には、無線通信モードであることを示す画像(ここでは、Bluetooth(登録商標)のロゴマーク)が表示されている。これにより、ユーザは操作端末3が現在無線通信モードにあり、一部の例外を除き、操作スイッチ32による電動機駆動用インバータ2の操作ができない状態であることがわかる。
また、電子通信機器5のタッチスクリーン50には、操作端末3の情報表示画面30に模した領域51が設けられ、かかる領域に電動機駆動用インバータ2により生成された画像が表示される。さらに、タッチスクリーン50には、操作端末3の操作スイッチ32を模した画像を表示する領域52が設けられ、ユーザは、領域52に表示された仮想的なスイッチをタッチすることで、あたかも、操作端末3を直接操作しているのと同様の操作を電子通信機器5で行うことができるようになっている。
続いて、電動機駆動用インバータ制御システム1のモードの切り替えについて説明する。本実施形態に係る電動機駆動用インバータ制御システム1は、操作端末3の操作のモードとして、上述の無線通信モードとスイッチ操作モードの2つのモードを持ち、モード設定部37の働きにより、このモードが切り替わるようになっている。
図8は、本実施形態にかかる操作端末3の操作のモードの切り替えが行われる条件と、切り替えの向きを説明する図である。これらの条件のうち、いくつかのものは重要であり、それ以外のものは任意である。
まず、重要な切り替え条件として、スイッチ操作モードにおいて、一定時間(n秒間)操作スイッチ32に対する操作がなされない場合に、自動的に無線通信モードに切り替わる。これにより、ユーザからの特段の操作がなされない場合に、操作端末3は無線通信モードとなり、電子通信機器5からの無線接続要求に応答し、無線接続を確立できる状態で待機することとなる。そのため、ユーザは、操作端末3に対して直接の特別の操作を必要とすることなく、電子通信機器5を用いて遠隔で操作端末3との無線接続を確立し、電動機駆動用インバータ制御システム1を操作することができる。
このことは、例えば、電動機駆動用インバータ制御システム1が、手の届かない高い場所や、機器や扉の奥などアクセスの不便な場所に設置されている場合や、あるいは広大な農地などに複数の電動機駆動用インバータ制御システム1が点在しており、自動車等に乗車して各電動機駆動用インバータ制御システム1を巡回する場合などに、電動機駆動用インバータ制御システム1の設置場所まで到達するために、高所に上ったり、自動車を降りたりする必要がなく、迅速に電動機駆動用インバータ制御システム1を操作できることを意味している。
なお、この一定時間は、常に所定の値としてもよいし、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。本実施形態では、この一定時間として、初期状態ではn=30秒としている。すなわち、30秒間操作スイッチ32に対して何の操作もなされなければ、スイッチ操作モードから無線通信モードへと移行する。また、スイッチ操作モードにおける操作スイッチ32に対する特定の操作により、このスイッチ操作モードから前記無線通信モードへの移行を制限してもよい。本実施形態では、スイッチ操作モードにおいて、操作スイッチ32に対する特定の操作として、汎用スイッチ群33のうち、F2キーを長押し(例えば、2秒間)することで、nを600秒に変更する。すなわち、スイッチ操作モードにおいて、F2キーを長押しするという特定の操作により、10分の間、無線通信モードへの切り替えを制限している。これにより、例えば電動機駆動用インバータ2に対する初期設定など、時間のかかる作業を行う際に、頻繁なモードの切り替えが起こることによる不便を避けることができる。なお、当該特定の操作に用いるスイッチ32は、必ずしもF2キーでなくともよく、他のスイッチ32であってもよい。
続いて、切り替え条件として、無線通信モードにおいて、操作スイッチ32の特定の操作により、無線通信モードからスイッチ操作モードに切り替える。この特定の操作としては、単一種類の操作のみを許容するようにしても、複数種類の操作を許容するようにしてもよいが、本実施形態では、停止スイッチ35による操作と、停止スイッチ35以外のスイッチ32による操作、すなわち、汎用スイッチ群33又は運転スイッチ34による操作の2種類の操作を許容している。
まず、停止スイッチ35以外による操作について説明する。停止スイッチ35以外のスイッチ32、すなわち、ここでは汎用スイッチ群33に含まれるスイッチ32及び運転スイッチ34のいずれかによる操作がなされた場合には、直ちにスイッチ操作モードへの切り替えは行わず、まず、操作端末3の情報表示画面30にスイッチ操作モードへの切り替えをユーザに確認させるための確認表示を行う。この確認表示に対し、ユーザが肯定を意味する操作を行うと、操作端末3はスイッチ操作モードに切り替わる。このように、操作に対して、一旦確認画面を表示することで、誤操作や、操作端末3になにか別の物体がぶつかってスイッチ32が押された等の意図せぬ操作がなされた場合に、望まないスイッチ操作モードへの切り替えを防止する。
また、この切り替え操作は、電動機駆動用インバータ2に対しては何の動作要求も行なわず、電動機4の駆動状態に影響を与えないため、単に電動機駆動用インバータ2の状態を操作端末3で確認したい場合や、各種パラメータの変更をしたい場合に適している。もちろん、この切り替え操作をするための操作スイッチ32は、停止スイッチ35以外の全ての操作スイッチ32としなくともよく、特定の一又は複数の操作スイッチ32に限定してもよい。
これに対し、停止スイッチ35による操作では、停止スイッチ35が押されると、直ちに操作端末3はスイッチ操作モードに切り替わり、停止スイッチ35が押された旨の情報が電動機駆動用インバータ2に伝達され、電動機4が停止される。これは、電動機4を停止させる意思は重要であり、優先的に受け付けられるべきであるためであり、その意思は直ちに反映される。すなわち、停止スイッチ35に対する操作は、無線通信モードにおいても有効に受け付けられることになる。
また、スイッチ操作モードにおいて、電子通信機器5との無線接続が維持されている場合には、電子通信機器5からの特定の要求により、スイッチ操作モードを無線通信モードに切り替えてもよい。
例えば、電子通信機器5において特定の操作(GUI上で特定のメニューを選択するなど)をすることにより、モード変更要求を無線通信ユニット36を介してモード設定部37に通知することにより、無線通信モードに切り替えてもよい。これは、たとえば、上述した操作スイッチ32に対する特定の操作(F2キーの長押し)により、無線通信モードへの切り替えが制限されている場合などに、強制的に無線通信モードへの切り替えを可能とする操作である。
あるいは、電子通信機器5におけるGUI上で停止スイッチが選択された場合など、電子通信機器5上で電動機2を停止させる意思表示がなされた場合、かかる操作を示す情報である停止指示がモード設定部37に通知されると、直ちに無線通信モードに切り替えてよい。これにより、停止時がなされた旨の情報が電動機駆動用インバータ2に伝達され、電動機4が停止される。これもまた、ユーザによる電動機4を停止させる旨の意思表示は優先されるべきであるからである。
図9は、スイッチ操作モードにおいて、モード設定部37が実行するモード切り替えの動作を示すフローチャートである。
モード設定部37は、操作端末3がスイッチ操作モードにある場合、ステップS11にて操作スイッチ32に対するスイッチ操作の有無を判断する。スイッチ操作があった場合(S11:Y)には、ステップS12へと進み、そのスイッチ操作が、F2キーの長押しであるか否かを判断する。F2キーの長押しである場合には(S12:Y)、ステップS13へと進み、無操作による無線通信モードへの切り替え時間nを300秒に設定し、スイッチ操作モードから無線通信モードへの移行を制限する。スイッチ操作がF2キーの長押しでない場合(S12:N)及び、ステップS13の実行後は、いずれもステップS14へと進み、スイッチ操作モードにおける経過時間、ここでは、秒数のカウントを0にリセットし、ステップS11へと戻る。これにより、n秒経過前にスイッチ操作がなされ続けている限りは、操作端末3はスイッチ操作モードを維持する。
一方、スイッチ操作がない場合(S11:N)には、ステップS15へと進み、無線接続中の電子通信機器5からのモード変更要求または停止指示の有無を判断する。モード変更要求または停止指示がない場合、または無線接続中の電子通信機器5が存在しない場合(S15:N)には、ステップS16へと進み、さらにスイッチ操作モードにおける経過時間がn秒に達したか否かを判断する。ここで経過時間がn秒に満たない場合(S16:N)はステップS11へと戻り、スイッチ操作モードが継続される。
これに対し、経過時間がn秒に達した場合(S16:Y)及び、無線接続中の電子通信機器5からのモード変更要求または停止指示がある場合(S15:Y)には、ステップS17へと進み、無操作による無線通信モードへの切り替え時間nを初期値である30秒へと戻したのち、無線通信モードへと切り替える。
図10は、無線通信モードにおいて、モード設定部37が実行するモード切り替えの動作を示すフローチャートである。
モード設定部37は、操作端末3が無線通信モードにある場合、ステップS21にて操作スイッチ32に対する特定の操作として、ここでは、まず停止スイッチ35に対する操作の有無を判断する。ここで、かかる操作があった場合(S21:Y)には、直ちにスイッチ操作モードへと切り替える。これにより、停止スイッチ35に対する操作は、スイッチ操作モードにおいて操作がなされた場合と同様に受け付けられる。
停止スイッチ35に対する操作がない場合(S21:N)は、続くステップS22に進み、停止スイッチ35以外の操作スイッチ32、すなわち、汎用スイッチ群33に含まれるスイッチ32及び運転スイッチ34のいずれかに対する操作の有無を判断する。ここで、さらに停止スイッチ35以外の操作スイッチ32に対する操作もない場合(S22:N)には、無線通信モードを継続すべく、ステップS21へと戻る。これに対し、停止スイッチ35以外の操作スイッチ32に対する操作がある場合(S22:Y)には、ステップS23へと進み、情報表示画面30に確認画面の表示を行う。この確認画面は、ユーザに、スイッチ操作モードへの切り替えの意思を確認するものであればどのようなものでもよい。さらにステップS24へと進み、ユーザによる確認が取れた場合(S24:Y)にはスイッチ操作モードへと切り替え、ユーザによる確認が取れなかった、あるいはユーザによる取り消しの意思表示がなされた場合(S24:N)には、ステップS21へと戻り、無線通信モードを継続する。
ところで、電動機駆動用インバータ制御システム1の起動時や、無線通信モードに切り替わった時、電子通信機器5との無線通信が切断された場合など、無線通信モードにおいて、電子通信機器5との無線通信が確立されていない場合には、無線通信ユニット36は、電子通信機器5との無線接続を確立するよう試みる。すなわち、無線通信モードは、無線通信部たる無線通信ユニット36が電子通信機器5からの無線接続要求に応答して無線接続を確立するモードであるということができる。これに対し、スイッチ操作モードは、操作スイッチ32、ここでは運転スイッチ34による電動機駆動用インバータ2への運転指示が少なくとも可能なモードであるということできる。
図11は、無線通信モードにおいて、無線通信ユニット36と電子通信機器5が無線通信を確立する動作を示すフローチャートである。
無線通信が確立していない状態においては、本実施形態にかかる操作端末3の無線通信ユニット36はBluetooth(登録商標)規格におけるオブザーバとして、また電子通信機器5はブロードキャスタとしてふるまう。すなわち、電子通信機器5は、通信相手先機器を特定しないメッセージ(ブロードキャストメッセージ)を発信し、また、無線通信ユニット36は、自身を特定しないメッセージを受信可能な状態に置かれる。
まずステップS31にて、電子通信機器5は、ブロードキャストメッセージにより、応答要求を発信する。この応答要求には、電子通信機器5自身を特定するIDが含まれる。
電子通信機器5との通信可能範囲内に未接続かつ無線通信モードにある操作端末5が存在する場合、ステップS32にて、その無線通信ユニット36は応答要求を受信し、返答を送信する。この返答には、操作端末5を識別し得る識別情報が含まれる。この識別情報は、操作端末5の個体を特定できるものであればどのようなものであってもよいが、そのような情報として、PINやシリアル番号を利用してよい。また、本実施形態に係る無線通信ユニット36では、識別情報として、PINに加えて、機器名称を返答として送信するようにしている。機器名称は、ユーザが自由に設定してよく、例えば、「昇降機1」、「昇降機2」のように電動機駆動用インバータ制御システム1の使途や位置を容易に認識できるような名称を付けてよい。なお、この返答は電子通信機器5を通信先として指定したメッセージであってよい。
返答を受信した電子通信機器5は、ステップS33で、返答のあった接続先機器の一覧を自身のGUI上に表示する。これは、電子通信機器5の通信可能範囲内にある電動機駆動用インバータ制御システム1が1台とは限らないため、複数の返答がなされる場合が想定されるからである。この一覧は、返答に含まれる識別情報によりなされるため、ユーザは、係る識別情報を参照することにより、返答のあったどの機器に対して無線接続を行うか選択できる。そして、本実施形態に係る無線通信ユニット36では、識別情報として、PINに加えて、機器名称を返答として送信するため、ユーザにとって理解が容易な機器名称にて接続先機器を選択することができる。
ステップS34では、ユーザが、返答のあった接続先機器の一覧から一の機器を選択する。以降、電子通信機器5は、この選択された機器に対して無線接続を確立することになるから、これ以降は、電子通信機器5はBluetooth(登録商標)規格におけるマスタとして、また、指定された電動機駆動用インバータ制御システム1の無線通信ユニット36はスレーブとしてふるまうことになる。
さらにステップS35で、電子通信機器5は、指定された無線通信ユニット36に対し、接続要求を送信する。接続要求を受けた無線通信ユニット36は、ステップS36で、操作端末5のインジケータ31を点滅させて、ユーザにより選択され、接続要求を受けた機器であることを視覚的に表示する。これにより、ユーザは、遠隔操作をしながらも、自身が接続を希望する機器が、真に所望の機器であるかを遠方から確認できる。もし、接続要求をした機器が所望の機器とは異なる場合には、ユーザは、電子情報端末5を操作して無線接続を切断し、再度ステップS31からやり直せばよい。また、ステップS36での視覚的表示は、必ずしもインジケータ36の点滅によらなくともよく、遠方から視覚的に特定の機器であることが確認できる表示であればどのようなものであってもよい。すなわち、操作端末5は、電子通信機器5より無線接続要求を受けている接続先であることを示す接続先表示をする接続先表示部を備えていればよく、ここで示した実施形態では、インジケータ31がかかる接続先表示部に相当している。接続先表示部としては、インジケータ31のほか、情報表示画面30を用いてもよいし、それ以外のランプなどの表示装置を利用しあるいは新たに備えるようにしてもよい。例えば、電動機駆動用インバータ2に備えられた適宜のインジケータやランプを接続先表示部として用いてもよい。
その後、ステップS37にて、無線通信ユニット36により接続要求に対する応答がなされ、両者間の無線接続が確立される。以降は、定期的に、ステップS38に示すように電子通信端末5より接続確認メッセージが送信され、これに対してステップS39に示すように無線通信ユニット36より応答メッセージが発せられることにより、両者の無線接続状態が維持される。ある一定時間以上にわたり、接続確認メッセージまたは応答メッセージが検出されなければ、両者間の無線接続は切断されたものと判断されることになる。
ところで、以上説明した実施形態では、図3に示したように、モード設定部37が操作端末3に設けられており、図4、図6に示すように操作スイッチ32及び情報通信端末5からの情報はモード設定部37により通過され又は遮断され、コントローラ38を通して電動機駆動用インバータ2へと伝達される構成となっている。そのため、電動機駆動用インバータ2は、操作端末3が無線通信を行っているか否かにかかわらない動作をすればよく、したがって、本実施形態では、電動機駆動用インバータ2として、無線通信を前提としない従来の操作端末を用いるものをそのまま用い、本実施形態に係る操作端末3を接続することで、無線通信に対応した電動機駆動用インバータ制御システム1を構築することができる。
しかしながら、必ずしもかかる構成に限定されずともよい。図12は、本発明の別の実施形態に係る電動機駆動用インバータ制御システム1の機能ブロック図である。本実施形態では、モード設定部37が、操作端末3ではなく、電動機駆動用インバータ2に設けられている点が先の実施形態とは異なっている。
本実施形態では、操作スイッチ32及び無線通信ユニット36より入力された操作の情報は、コントローラ38を介して全て電動機駆動用インバータ2へと伝達され、電動機駆動用インバータ2の内部における情報処理として、モード設定部37によるモードの切り替えと、操作情報の通過及び遮断がなされる。したがって、本実施形態では、コントローラ38は、情報の流れをコントロールするにとどまり、モードの切り替えの処理や、各種画像の生成は、ほぼ全て電動機駆動用インバータ2が行うことになる。このような構成であっても、先の実施形態と同様の動作を行うことができる。
本実施形態では、電動機駆動用インバータ2自体が、無線通信を前提とした構成を有している必要があるが、一方で、操作端末3の構成や、コントローラ38が行うべき情報処理は軽度のもので済むため、操作端末3自体のコストを低く抑えることができる。すなわち、電動機駆動用インバータ2が備える情報処理回路の処理能力が十分に高く、インバータ回路の制御だけでなく、さらに無線通信におけるモードの切り替えを管理するだけの余裕がある場合には、先の実施形態に比して、電動機駆動用インバータ制御システム1全体のコストを低く抑えることができる利点がある。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。