JP2019026894A - 電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置 - Google Patents

電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置 Download PDF

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Abstract

【課題】装置構造を複雑化させずに、めっき促進性やビアフィリング性等のめっき特性の向上を図ることが出来る電解銅めっき用陽極及びそれを用いた電解銅めっき装置を提供すること。
【解決手段】電解銅めっき液が貯留された電解処理槽内に配設する陽極であって、当該電解銅めっき液が、ジスルフィド化合物を含有した酸性電解銅めっき液であり、当該陽極が、溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で備えたことを特徴とする電解銅めっき用陽極を採用する。
【選択図】図1

Description

本件発明は、電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置に関する。
従来より、プリント配線基板等に対して導体を形成する際には、電解銅めっき処理が行われている。電解銅めっき処理を行う場合には、陽極として、銅材からなる溶解性銅陽極を使用する方法と、白金、チタン、酸化イリジウム等からなる不溶性陽極を使用する方法とがある。また、電解銅めっき液には、めっき促進性やビアフィリング性等のめっき特性を向上させるために、ブライトナーやレベラー等の添加剤が添加される。
ここで、現在電解銅めっき処理を行うに際しては、溶解性銅陽極を使用することが主流となっている。その理由として、溶解性銅陽極は、不溶性陽極に比べて、設備を簡素化することができ、メンテナンス費用もかからず、陽極自体も比較的安価であり、低コスト化を実現出来ることが挙げられる。
しかし、溶解性銅陽極を用いると、めっき液中で銅電極が化学的に溶解してしまう反応に付随して、電解銅めっき液中にブライトナーとして添加するビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド(以下、単に「SPS」と称す)が3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸(以下、単に「MPS」と称す)に還元されてしまうことが知られている。このMPSが電解銅めっき液中に一定量以上存在すると、所望のめっき特性が得られなくなってしまうという問題がある。
上述した問題に対しては、例えば特許文献1に記載されているように、めっき液中に空気を吹き込むことによりめっき液中の溶存酸素濃度を高める試みがなされている。具体的には、特許文献1には、「オーバーフロー槽を併設しためっき本槽、当該めっき槽下部に設けためっき液噴流吐出部、銅アノードおよび被めっき品用バーを有する酸性銅用めっき装置において、オーバーフロー槽中にエア攪拌または酸素攪拌手段を設けたことを特徴とする酸性銅用めっき装置」が開示されている。
特開2004−143478号公報
しかしながら、特許文献1に開示のめっき装置においては、オーバーフロー槽を別途設ける必要があり、めっき装置の構造が複雑となることから設備コストが高くなるという問題があった。
以上のことから、本件発明は、装置構造を複雑化させずに、めっき促進性やビアフィリング性等のめっき特性の向上を図ることが出来る電解銅めっき用陽極及びそれを用いた電解銅めっき装置を提供することを目的とする。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の方法を採用することで、上記目的を達成するに到った。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極: 電解銅めっき液が貯留された電解処理槽内に配設する陽極であって、当該電解銅めっき液が、ジスルフィド化合物を含有した酸性電解銅めっき液であり、当該陽極が、溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で備えたことを特徴とする。
本件発明に係る電解銅めっき装置: 本件発明に係る電解銅めっき装置は、上述の電解銅めっき用陽極を備えたことを特徴とする。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極、及び電解銅めっき装置によれば、装置構造を複雑化させずに、めっき促進性やビアフィリング性等のめっき特性の向上を図ることが出来る。
本件発明に係る溶解性銅陽極を電解銅めっき装置に用いた場合を例示した概略断面図である。 実施例1及び比較例1でのビアの充填状況を示す断面写真である。 実施例2及び比較例2でのビアの充填状況を示す断面写真である。
以下、図を用いながら、本件発明に係る電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置について説明する。図1は、本件発明に係る溶解性銅陽極を電解銅めっき装置に用いた場合を例示した概略断面図である。
本件発明に係る電解銅めっき装置10は、本件発明に係る電解銅めっき用陽極1を備えたものである。当該電解銅めっき用陽極1は、電解銅めっき液21が貯留された電解処理槽20内に設置する陽極である。また、当該電解銅めっき液21が、ジスルフィド化合物(例えば、SPS)を含有した酸性電解銅めっき液であり、当該陽極1が、溶解性銅陽極2と不溶性陽極3とを電気的に接続した状態で備えたしたことを特徴とする。以下に、これらの構成について説明する。
本件発明に係る電解銅めっき装置10は、電解銅めっき液21を貯留した電解処理槽20内に被めっき部材Wを浸漬した状態で、当該被めっき部材(カソード)Wと陽極(アノード)1との間に給電し、当該被めっき部材Wの被処理面を電解処理する装置である。ここで、本件発明の被めっき部材Wは、回路配線をエポキシ樹脂等の絶縁材料によって積層したプリント配線基板又はウエハーとすることが出来る。また、これらプリント配線基板やウエハーは、スルーホール及び/又はビアホールを有するものを用いることが出来る。このスルーホールやビアホールは、一般に、10μm〜1000μm程度の微小径の穴であり、この穴を通して、信号層間の電気的接続がなされる。本件発明に係る電解めっき装置10によれば、これらスルーホールやビアホールの内部に銅を充填する電解処理を行うことが出来る。なお、本件発明に係る電解めっき装置は、均一電着性等の向上を図るために、エアバブルを当該電解銅めっき液21中に拡散させたり、循環配管5と接続したノズル6から高圧エアーを噴出させる等して電解銅めっき液21を攪拌する構成を採用することも出来る。
また、本件発明の電解銅めっき液21は、ジスルフィド化合物を含有した酸性電解銅めっき液が用いられる。通常、酸性電解銅めっき液21は、硫酸銅・五水塩、硫酸、塩化物イオン及び添加剤からなるものが用いられる。例えば、酸性電解銅めっき液21の組成は、硫酸銅・五水塩30g/L〜250g/L、硫酸30g/L〜250g/L、塩化物イオン30mg/L〜75mg/Lの範囲で使用出来る。また、酸性電解銅めっき液21の温度は、通常15℃〜60℃の範囲で使用することができ、好ましくは20℃〜35℃である。硫酸銅・五水塩濃度の増加、又は硫酸濃度の増加に伴って硫酸銅・五水塩の結晶が銅陽極上に析出する場合があるので、両者の濃度管理には注意が必要である。ここで、当該酸性電解銅めっき液21における硫酸濃度は、30g〜400g/Lとすることが好ましい。硫酸濃度が、30g/L未満の場合、酸性電解銅めっき液21の導電性が低下し、当該酸性電解銅めっき液21に通電することが困難となる。一方、硫酸濃度が、400g/Lを越えると、酸性電解銅めっき液中に硫酸銅が沈澱し易くなり、めっき特性に悪影響を及ぼすこととなる。
本件発明に係る電解銅めっき装置10では、上述したように、電解処理槽20内に配置される溶解性銅陽極2と不溶性陽極3とが、電気的に接続されることで、陽極1として作用する。電解処理を行う場合に、SPSを含有した電解銅めっき液21が使用される場合、このSPSがMPSに変化し、このMPSが発生することにより、スルーホール浴ではスローイングパワーの低下やめっき外観不良、ビアフィル浴ではフィリング率の低下やめっき外観不良等が発生するという問題が生じる。ここで、電解停止して電解銅めっき液21を放置した場合においても、陽極1近傍でSPSが還元されてMPSが生成することが確認されている。このMPSの生成は、MPS−Cu錯体からなるアノードスラッジを発生させる原因にもなり得る。このアノードスラッジは、ビアのフィリング性や均一電着性等のめっき特性の低下を招くこととなる。しかし、本件発明に係る電解銅めっき用陽極1は、溶解性銅陽極2と不溶性陽極3とを電気的に接続した状態で電解処理槽20内に備えることで、当該不溶性陽極3が電解銅めっき液21中に酸素を供給することが出来る。この不溶性陽極3から発生した酸素は、MPSをSPSに酸化させて電解銅めっき液21中のMPS濃度の上昇を抑制しMPSの悪影響を排除することが可能である。従って、本件発明に係る電解銅めっき装置10によれば、電解銅めっき液21にブライトナーとしてSPSを含めたとしても所望のめっき特性を得ることが可能となる。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極1を構成する溶解性銅陽極2は、電解時に消費される電解銅めっき液21中の銅イオン濃度を所定濃度に維持するのに用いられる。この溶解性銅陽極2は、その形状に関して限定されないが、表面積が極力大きくなる形状を採用することで、電解時に銅イオンをより多く発生させてめっき効率をより高めることが出来る。
また、本件発明の溶解性銅陽極2は、含リン銅材で構成されたものであることが好ましい。当該溶解性銅陽極2が含リン銅部材で構成されることで、電解時にCuPという「ブラックフィルム」と呼ばれる化合物の皮膜を含リン銅部材の表面に形成し、一価の銅イオンの発生を抑制してアノードスラッジの発生を効果的に抑制し、めっき特性の低下を防ぐことが可能となる。当該含リン銅部材のアノードスラッジの発生をより抑制する上では、リンの含有量は、0.02%〜0.06%程度とすることが好ましい。含リン銅部材を溶解性銅陽極2に使用することは、電解中の銅溶解をスムーズに行うことが可能となる点で有利である。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極1を構成する不溶性陽極3は、電解銅めっき液21中で金属を溶出しない材質のものであれば任意の材質から成る陽極を使用することが出来る。例えば、酸化イリジウム、白金張りチタン、白金、グラファイト、フェライト、二酸化鉛及び白金族元素酸化物をコーティングしたチタン、ステンレススチール、鉛合金等の材質の陽極が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、不溶性陽極3は、基材に被覆物を被覆することによりを構成することも出来る。この場合には、基材の全面を被覆してもよいが、不溶性陽極3として機能する範囲において、基材の一部のみを被覆してもよい。このときに、被覆の厚みは特に限定されるものではなく、耐久性とコストの観点からは、0.1μm〜10μmであることが好ましい。
また、本件発明の不溶性陽極3は、その形状に関して限定されない。不溶性陽極3は、電解中において、溶解性銅陽極2の溶解を妨害することなく効率よく酸素を発生させる形状及び寸法であることで、電解銅めっき液21中に存在するMPSを速やかに酸化してSPSに戻し、MPSが当該電解銅めっき液21中に蓄積されるのを抑制し、めっき特性の低下を防ぐことが出来る。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極1は、MPSの生成抑制の観点から、溶解性銅陽極2と不溶性陽極3との電解銅めっき液21に浸漬した表面の面積比率が、10:1〜1:10であることが好ましい。溶解性銅陽極2と不溶性陽極3との電解銅めっき液21に浸漬した表面の面積比率が10:1未満であれば、不溶性陽極(例えば、酸化イリジウム部材)3表面からの酸素発生が極めて少なくなるため、電解銅めっき液21中におけるMPS濃度の上昇を十分に抑制することが出来ず、所望のめっき特性を得ることが出来ない。また、当該面積比率が1:10を超えると不溶性陽極(例えば、酸化イリジウム部材)3表面からの酸素発生が著しく増加するため、電解銅めっき液21中に含める添加剤を酸化分解して添加剤消耗量が増加する。さらに、この場合には、溶解性銅陽極2からの銅の供給が足りなくなり、電解銅めっき液21中の銅濃度を所定濃度に維持するために別途銅源の補給が必要となる。ここで、溶解性銅陽極2と不溶性陽極3との電解銅めっき液21に浸漬した表面の面積比率は、5:1〜1:5であることが、上述した効果を得る上でより好ましい。
また、本件発明に係る電解銅めっき装置10において、適用可能な陰極電流密度は、通常プリント配線基板の電解銅めっき処理に用いられている含リン銅部材を使用する範囲とすることが好ましい。具体的には、当該陰極電流密度は、0.1A/dm〜10A/dm程度、好ましくは0.5A/dm〜6A/dm、より好ましくは1A/dm〜5A/dmである。陽極電流密度は、通常0.1A/dm〜3A/dmで使用可能であるが、より好ましくは1A/dm〜3A/dmである。電解銅めっき液21中の銅濃度は、陽極電流密度が低すぎると上昇する傾向があり、陽極電流密度が高すぎると低下する傾向があるため、使用する陰極電流密度により陽極面積の調整が必要である。
ここで、本件発明に係る電解銅めっき用陽極1を用いた場合における、電解時及び電解停止時に得られる効果についてより具体的に説明する。通常は、電解時及び電解停止時において、溶解性銅陽極2では下記化1の式(1)のように溶解が起こる。また、電解時において、陰極では、下記化1の式(2)に示す反応が起こり銅が析出する。そして、電解銅めっき液21がジスルフィド化合物を含有した場合には、溶解性銅陽極2の溶解時に放出された電子により、下記化1の式(3)のようにSPSが還元されてMPSが生成する。生成したMPSは、下記化1の式(4)のように一部が酸化されてSPSに変換されるが、一価の銅イオンと結びついたCu(I)MPSは、下記化1の式(5)のようにMPSとなる。
上記化1の(1),(3)〜(5)には、めっき特性の低下を招くMPSが生成する過程を示したが、本件発明に係る電解銅めっき用陽極1は、不溶性陽極3を溶解性銅陽極2と電気的に接続した状態で備えることで、電解銅めっき液21中のMPS濃度の上昇を抑制することが出来る。すなわち、電解時において、不溶性陽極3では、上記化1の(6)のように電解銅めっき液21中の水の電気分解が行われ、このときに発生した酸素によりMPSが酸化されてSPSに変換されることで、発生したMPSを減らすことが出来る。
本件発明に係る電解銅めっき装置10は、上述した構成を備えることで、電解銅めっき液21中におけるMPSの濃度上昇を抑制することが出来る。よって、本件発明に係る電解銅めっき用陽極1、及びそれを用いた電解銅めっき装置10によれば、長時間放置した電解銅めっき液21をそのまま用いて電解を開始したとしてもめっき外観不良が生じにくく、メンテナンスフリーを実現することが出来る。
以上に、本件発明に係る溶解性銅陽極、及びそれを用いた電解銅めっき液の保存方法に関して説明したが、以下に本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。なお、本件発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
実施例1では、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で併用した場合における効果を確認するための試験を行った。
この実施例1では、まず板厚1.0mm、ビア径100μm、深さ80μmの被めっき部材(プリント基板)に対し、メルプレートMLB−6001プロセス(メルテックス株式会社製)によりデスミア処理を行った。次いで、メルプレートCU−390プロセス(メルテックス株式会社製)により無電解銅めっきを行った。そして、このプリント基板をメルプレートPC−316(メルテックス株式会社製)による酸性脱脂、水洗、硫酸処理後、以下に示す条件にて電解銅めっきを行った。
実施例1で用いる酸性電解銅めっき液は、硫酸銅・五水和物200g/L、濃硫酸100g/L、塩化物イオン50mg/Lを含むめっき液に、ルーセントカパーSVF−A(メルテックス株式会社製、ジスルフィド系)0.4mL/L、ルーセントカパーSVF−B(メルテックス株式会社製)20mL/L、ルーセントカパーSVF−L(メルテックス株式会社製)15mL/Lを添加して調整した3Lのビアフィル浴を使用した。また、当該酸性電解銅めっき液の温度は、25℃とした。
そして、電解処理槽内には、収容されたビアフィル浴に浸漬させた状態で電解銅めっき用陽極を設置した。電解銅めっき用陽極は、溶解性銅陽極(50mm×120mmの含リン銅板)と不溶性陽極(50mm×120mmの酸化イリジウム被覆板)とを電気的に接続した状態で電解処理槽内に離間配置した。また、実施例1では、電解処理槽において、ポンプを用いてめっき液を循環させながら電解処理を行った。
実施例1において、溶解性銅陽極と不溶性陽極との電解銅めっき液に浸漬した表面の面積比率は、1:1とした。また、陰極として50mm×130mmの無電解銅めっきを施したプリント基板を電解銅めっき液に浸漬した。そして、電解銅めっき液の通電量が0AH/L(新浴)、10AH/L、50AH/L、100AH/Lの各条件下において、電流密度2A/dmにて45分間電解処理を行った。その後、これら各条件下におけるビア内のめっき充填状況をクロスセクション法にて観察した。図2には、実施例1におけるビア内のめっき充填状況の断面写真を示す。
実施例2では、実施例1と同様に、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で併用した場合における効果を確認するための試験を行った。
この実施例2では、実施例1と同じ被めっき部材を用いた。また、実施例2では、ルーセントカパーSVF−A(0.4mL/L)をMPS(1mg/L)に変更した以外、実施例1と同じ電解前処理条件及び電解処理条件を採用した。従って、実施例2で採用したこれら処理条件に関する説明は省略する。
実施例2では、電解銅めっき用陽極について、溶解性銅陽極と不溶性陽極との電解銅めっき液中の面積比率が、「10:1」、「5:1」、「1:1」、「1:1(不溶性陽極として白金張りチタンを使用)」、「1:5」、「1:10」となるものを用意した。そして、電解銅めっき液の通電量が0AH/L、0.5AH/L、1AH/L、4AH/L、10AH/Lの各条件下において、実施例1と同様に、陰極として50mm×130mmの無電解銅めっきを施したプリント基板を電解銅めっき液に浸漬し、電流密度2A/dmにて45分間電解処理を行った。これら各条件下におけるビア内のめっき充填状況をクロスセクション法にて観察した。図3には、実施例2におけるビア内のめっき充填状況の断面写真を示す。
比較例
[比較例1]
比較例1では、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極のみ用いた場合における効果を確認するための試験を行った。
比較例1では、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極のみ用いた以外は実施例1と同じ電解前処理条件及び電解処理条件を採用した。従って、比較例1で採用したこれら処理条件に関する説明は省略する。
また、比較例1では、実施例1と同じ試験を行った。図2には、実施例1と対比可能なように、比較例1におけるビア内のめっき充填状況の断面写真を示す。
[比較例2]
比較例2では、比較例1と同様に、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極のみ用いた場合における効果を確認するための試験を行った。
比較例2では、電解銅めっき用陽極として溶解性銅陽極のみ用いた点、ルーセントカパーSVF−A(0.4mL/L)をMPS(1mg/L)に変更した点以外は実施例1と同じ電解前処理条件及び電解処理条件を採用した。従って、比較例2で採用したこれら処理条件に関する説明は省略する。
また、比較例2では、実施例2と同じ試験を行った。図3には、実施例2と対比可能なように、比較例2におけるビア内のめっき充填状況の断面写真を示す。
図2に示す結果より、電解銅めっき液が貯留された電解処理槽内に配設する陽極として、溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で備えたものを用いた場合には、溶解性銅陽極のみを用いた場合と異なり、通電量が100AH/Lまで大きくなってもビアの充填状況に殆ど差がなく、安定して優れたフィリング性が得られることが分かった。
図3に示す結果より、電解銅めっき液が貯留された電解処理槽内に配設する陽極として、溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で備えたものを用いた場合には、溶解性銅陽極のみを用いた場合と比べて、電解銅めっき液にMPSが1mg/L含まれた場合でも比較的短時間でフィリング性の回復が図られることが分かった。また、このときに、実施例2における溶解性銅陽極と不溶性陽極との電解銅めっき液中の面積比率が「10:1」のものとそれ以外の面積比率のものとを対比したときに、溶解性陽極の占める割合が大きくなるほどフィリング性の回復が図り難くなる傾向が見受けられた。一方、溶解性陽極の占める割合が小さくなるほど電解銅めっき液中における溶解性銅陽極からの銅の供給が足りなくなり、電解銅めっき液中の銅濃度を維持するために別途銅源の補給が必要となることが想定出来る。以上の観点から、溶解性銅陽極と不溶性陽極との電解銅めっき液中の面積比率は、5:1〜1:5であることがより好ましいことが理解出来る。
以上より、本件発明に係る電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置を用いることで、装置構造を複雑化させずに、めっき促進性やビアフィリング性等のめっき特性の向上を図ることが出来ることが分かった。このことから、本件発明に係る電解銅めっき用陽極用いて電解処理を行った場合には、電解銅めっき液中のMPSの濃度上昇に伴う悪影響を効果的に排除することが可能であることが理解出来る。
本件発明に係る電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置によれば、ジスルフィド化合物を含有した酸性電解銅めっき液を用いた場合にMPSの濃度上昇を効果的に抑制し、所望のめっき特性を安定的に得ることが出来る。また、本件発明に係る電解銅めっき用陽極を用いることで、電解めっき装置の構造を簡素化して、設備コストの低減を図ることが出来る。従って、本件発明に係る電解銅めっき用陽極、及びそれを用いた電解銅めっき装置は、特にスルーホール及び/又はビアホールを有するプリント配線基板やウエハーに電解銅めっき処理を施す際に好適に用いることが出来る。
W・・・被めっき部材
1・・・電解銅めっき用陽極
2・・・溶解性銅陽極
3・・・不溶性陽極
5・・・循環配管
6・・・ノズル
10・・・電解銅めっき装置
20・・・電解処理槽
21・・・電解銅めっき液(酸性電解銅めっき液)

Claims (5)

  1. 電解銅めっき液が貯留された電解処理槽内に配設する陽極であって、
    当該電解銅めっき液が、ジスルフィド化合物を含有した酸性電解銅めっき液であり、
    当該陽極が、溶解性銅陽極と不溶性陽極とを電気的に接続した状態で備えたことを特徴とする電解銅めっき用陽極。
  2. 前記溶解性銅陽極と前記不溶性陽極との電解銅めっき液に浸漬した表面の面積比率は、10:1〜1:10である請求項1に記載の電解銅めっき用陽極。
  3. 前記溶解性銅陽極と前記不溶性陽極との電解銅めっき液に浸漬した表面の面積比率は、5:1〜1:5である請求項2に記載の電解銅めっき用陽極。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解銅めっき用陽極を備えたことを特徴とする電解めっき装置。
  5. 被めっき部材が、スルーホール及び/又はビアホールを有するプリント配線基板又はウエハーであって、当該スルーホール及び/又は当該ビアホールの内部に銅を充填する電解処理を行う請求項4に記載の電解めっき装置。
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