JP2019026859A - 高速動部品用アルミニウム合金鍛造品、およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速動部品用鍛造品として、疲労強度が高いアルミニウム合金鍛造品を提供する。【解決手段】Si:10.0〜19.0%、Mn:5.0〜9.0%を含み、残部がAl及び不可避的不純物よりなり、Si結晶粒の大きさが平均で15μm以下であり、200〜400℃において0.2%耐力よりも疲労強度が高い高速動部品用アルミニウム合金鍛造品。また製造方法として、アトマイズ法により得られた粉末の圧縮成形体を熱間鍛造して高速動部品用アルミニウム合金鍛造品を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、高温下において、高速での回転や揺動、直線往復動などの動作を行う高速動部品として使用されるアルミニウム合金鍛造品、とりわけ粉末の押出材を熱間鍛造して得られる高速動部品用アルミニウム合金鍛造品、及びその鍛造品の製造方法に関するものである。
アルミニウム合金は、低密度かつ高強度であり、加工が容易という特性を有する。この特性を生かして、軽量性、強度や加工特性が要求される鉄道車両、自動車、船舶などの輸送機械や、各種機械部品などに従来から用いられている。とりわけ自動車業界における燃費向上の要請から、自動車部品の軽量化、高機能化の要求が高まってきている。そこで自動車に搭載される発電機やコンプレッサなどの回転ロータ(小型羽根)や回転インペラ(大型羽根)など、高温下で高速動作する高速動部品についても、従来の一般的な鋼材や鋳鉄材に代えて、軽量なアルミニウム合金を使用する傾向が強まっている。
この種の発電機やコンプレッサ等の回転ロータや回転インペラ等の高速動部品については、高温下で高速に繰り返し負荷が加えられるため、高温強度が優れるばかりでなく、高温での疲労強度が高いことが望まれる。
一方、自動車用エンジンのピストンなど、高温下で相手部材に摺擦される摺動部材については、高温強度が優れるばかりでなく、高温での耐摩耗性が高いことが望まれる。
そして各種アルミニウム合金のうちでも、Siを約10質量%以上含有しているAl−Si系合金、すなわち共晶組成〜過共晶組成の高Siのアルミニウム合金は、熱膨張係数が小さく、優れた耐摩耗性を有していることから、主として高温での摺動部材、例えば自動車用エンジンのピストンなどの部品として従来から用いられている。
しかしながら、Siを多量に含むこの種のAl-Si系合金は、従来一般には溶解―鋳造法によって製造されているため、鋳造欠陥を完全に防止することは困難であり、また初晶Siが粗大に晶出したり、偏析することがあるため、強度および靱性の低下をもたらしており、そのため自動車用エンジンの材料として満足できるものではなかった。またこの種の高SiのAl−Si系合金は、合金元素の種類や添加量に制限があるため、飛躍的に特性を向上させた合金の開発には限界があった。
そこで、アトマイズ法により得られた高SiのAl−Si系合金粉末を用い、いわゆる粉末冶金法を適用して得られた材料を自動車用エンジン部品の材料として使用することが考えられている。アトマイズ法によれば、急冷凝固によって微細・均一な組織を有するアルミニウム合金粉末を得ることができ、なおかつ多量の合金元素の添加が可能である。すなわち、アトマイズ法では、アルミニウム合金溶湯を10〜10℃/秒程度の高い冷却速度で急冷凝固させることができ、そのため合金構成元素の凝固時の拡散を抑制して、結晶粒や析出物の粗大化を抑制することができ、さらに平衡相や準安定相の出現抑制により、合金元素の固溶量、とりわけFe、Ni、Mnで代表される遷移元素の固溶量の拡大が可能となる。
従来から、高負荷のエンジンピストン等に要求される高温強度を有する材料を得るための一つの手法として、共晶組成〜過共晶組成でかつ高融点金属であるFe、Ni、Mn等の遷移元素を比較的多量に添加したAl−Si系の高Siアルミニウム合金の粉末を、アトマイズ法により製造し、そのアトマイズ法による急冷凝固粉末を、粉末冶金法により圧縮成形、押出、鍛造した鍛造品を自動車用エンジン部品など高負荷での耐摩耗性材料として使用することが、例えば特許文献1等によって提案されている。
特許文献1の技術では、強度改善のための合金元素として、遷移元素であるFe、Ni、Mnのいずれか1以上を添加することとしているが、これらの遷移元素のうち、Fe又は/及びNiを用いた場合には、最終的な鍛造後の摺動部品として、必ずしも十分な耐摩耗性及び高温強度は得られない。もちろん、Fe又は/及びNiの添加量を増加すれば耐摩耗性及び高温強度を高めることは可能であるが、その場合には材料が脆くなって、鍛造等において割れが発生する問題があり、したがって、むやみにFe又は/及びNiの添加量を増加させることは避けなければならない。
なお、上記の特許文献1の場合、主として押出材での特性評価を行っており、押出後に鍛造を施して得られた鍛造品の評価はほとんど行っていない。エンジンピストンを押出材から製造する場合、総削りを行う場合もあるが、メタルフローが製品形状に沿った流れを示す鍛造品の方が特性に優れ、なお且つコスト面でも有利なため、鍛造品の段階での評価が重要な要素となるが、上記のように特許文献1では、鍛造品段階での評価はほとんど行っていないため、鍛造品としてエンジンピストン等の摺動部品に最適であるか否かは不明である。
また、Fe又は/及びNiを多量に添加した場合には、次のような別の問題も発生することが確認されている。
すなわち、Niは高価な元素であるから、Niを添加した場合には材料コストの上昇を招き、一方Feは、アトマイズのための合金溶製時において鉄製治具などから溶湯中に混入することが多い元素であり、そのためFeを特性改善のための合金添加元素として使用すれば、合金中のFe量の厳密な制御が困難となるおそれがある。さらに、Fe、Niは高融点であるため、アトマイズのための合金溶湯の溶製温度を高くしなければならず、そのためコスト上昇や耐火物の問題が生じやすい。またFe、Niは、AlやSiと比較してその比重が大きく、そのためFe、Niを多量に添加すれば、軽量性が要求される自動車用エンジンピストンの用途には不利となる。
そこで、既に本発明者らは、上述のような問題を招くことなく、自動車用エンジンピストンなど、高負荷で使用される摺動部品向けの鍛造品として、耐摩耗性及び高温強度が優れたアルミニウム合金粉末鍛造品が得られるようなアルミニウム合金粉末、及びそのアルミニウム合金粉末を用いた、耐摩耗性及び高温強度が優れた摺動部品用アルミニウム合金鍛造品について、特許文献2において提案している。そこで特許文献2の発明の技術について、次に説明する。
本発明者等は、アトマイズ法により得られたAl−Si系合金粉末を圧縮成形、押出、熱間鍛造して得られる鍛造品の特性としては、遷移元素であるFe、Ni、Mnのうち、Mnを添加した場合は、Fe、Niを添加した場合と比較して、同じ添加量でも、格段に優れた耐摩耗性及び高温強度が得られることを見出している。すなわち、自動車用エンジンピストン等の高負荷で使用される摺動部品としては、遷移元素としてMnを添加した場合には、Fe、Niを添加した場合よりも格段に優位となることが知見されている。
さらに、Mnを使用すれば、Niを添加した場合の材料コストの上昇の問題を招くことが回避されるとともに、Feを添加した場合の鉄製治具などから溶湯中に混入するFeによる問題も招くことがないことを認識している。またMnは、Fe、Niと比較して低融点であるため、アトマイズのための合金溶湯の溶製温度を高くする必要もないこと、しかもMnは、Fe、Niと比較してその比重が小さく、そのため軽量性が要求される自動車用エンジンピストンの用途に有利となる。
このように、自動車用エンジンピストンなどの摺動部品向けの共晶組成〜過共晶組成の高SiのAl−Si系アルミニウム合金粉末としては、特性改善のための添加元素(遷移元素)として、Fe又は/及びNiではなく、もっぱらMnを使用することが有利であることを知見し、特許文献2の発明に至っている。具体的には、特許文献2では、アルミニウム合金粉末の押出材を熱間鍛造してなる摺動部品用アルミニウム合金鍛造品であって、質量%で、Si:10.0〜19.0%、Mn:3.0〜10.0%を含み、残部がAl及び不可避的不純物よりなり、かつSi結晶粒の大きさが平均で15μm以下であるアルミニウム合金鍛造品を提案している。
特開昭63−266005号公報 特開2017−78213号公報
特許文献2の発明によるアルミニウム合金鍛造品は、主として耐摩耗性と高温強度が要求される自動車用エンジンピストンなどの摺動部品向けの鍛造品である。そして、特許文献2おいては、高温強度及び耐摩耗性については記載されているが、高温での疲労強度については開示されていない。そのため、特許文献2に記載されている鍛造品が、コンプレッサの羽根部材など、高温での疲労強度が要求される高速動部品に適しているか否かは、特許文献2からは不明である。言い換えれば、特許文献2に示されている鍛造品をコンプレッサの羽根などの高速動部品に使用した場合に、疲労破壊を生じることなく長期間使用できるか否かは、必ずしも明らかではなかった。
ところで、前述のように高温で使用される高速動部品には高温での疲労強度が優れていることが望まれるから、この種の高速動部品用鍛造品の製造現場あるいは出荷現場等においては、高温疲労強度が要求水準を満たしているか否かを調べることが望まれる場合がある。
高温での疲労強度の測定のためには、試験片を高温で保持した状態で回転疲労試験機などの疲労試験機により繰り返し応力を負荷する必要があり、一般にアルミニウム合金の場合、疲労試験によるS−N曲線から繰り返し数n=10の時の応力振幅を疲労強度とするのが一般的である。このような高温での疲労強度の測定には、引張強度や耐力の測定のための引張試験などと比較して、格段に手間と時間を要する。また高温疲労試験機は、引張試験機と比較して格段に高価であるため、工場等の現場もしくはその近くに備えられているとは限らず、したがって外部に疲労強度の測定を依頼しなければならないことも多く、その場合、高温疲労強度の測定結果を知得するまでにかなりの日数を要してしまうという不便もある。
したがって従来は、製造された高速動部品用鍛造品の疲労強度の値を実際に測定することは、時間やコスト、手間等の観点から、あまり行われていなかったのが実情であり、また高温疲労試験を行った場合では、最終的なコストアップを招いてしまうという問題が発生していた。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたもので、コンプレッサの羽根など、高温で高速に回転や揺動、直線往復動などの動作を行う高速動部品に適した鍛造品として、高温疲労特性に優れたアルミニウム合金鍛造品を提供し、併せて、仮に高温疲労試験を行わなかった場合でも、高温疲労特性を簡便に予測もしくは評価し得るようにすることを課題とするものである。
本発明者等が、粉末押出材を熱間鍛造して得られるAl−Si−Mn系のアルミニウム合金鍛造品、すなわちSiを10.0〜19.0%含有する高Siアルミニウム合金にMnを添加したAl−Si−Mn系アルミニウム合金の粉末鍛造品について、高温疲労特性を調査したところ、高温強度のみならず、高温疲労強度も優れていることが判明した。
しかも、単に高温疲労強度が高いというだけではなく、Mn量が特定の範囲内の場合には、特定の温度域で、疲労強度が耐力(0.2%耐力)よりも高い値を示すことが判明した。
すなわち、前記特許文献2に示されるアルミニウム合金鍛造品(Siを10.0〜19.0%含有する高Siアルミニウム合金にMnを添加したAl−Si−Mn系アルミニウム合金の粉末鍛造品)について、高速動部品としての適性を有しているか否かを調査するべく、さらに詳細に高温疲労試験などの各種の試験を行った。その結果、特許文献2に記載のMn量範囲(3.0〜10.0%)のうちでも、Mn量が5.0〜9.0%の範囲内である場合には、200〜400℃の温度域で、疲労強度が耐力(0.2%耐力)よりも高くなることを見出した。
ここで、一般のアルミニウム合金においては、疲労強度の値は、常温から高温まで、0.2%耐力の値よりも低いのが通常である。したがって上記のように200〜400℃の広い温度域で疲労強度が0.2%耐力よりも高くなることは、特異な現象であると言うことができる。
そして上記のように、200〜400℃の温度域で疲労強度が0.2%耐力よりも高くなる鍛造品であれば、その温度域での引張試験によって0.2%耐力を測定すれば、疲労試験を行わなくても、疲労強度は、0.2%耐力の測定値よりも高いと評価することが可能となる。したがって、高温疲労強度の測定を省略しても、高温疲労特性の評価を行うことが可能となると考え、本発明をなすに至った。
したがって本発明の基本的な態様(第1の態様)による高速動部品用アルミニウム合金鍛造品は、
質量%で、
Si:10.0〜19.0%、
Mn:5.0〜9.0%
を含み、残部がAl及び不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、
かつSi結晶粒の大きさが平均で15μm以下であり、
200℃以上400℃以下の温度域において0.2%耐力より疲労強度が大きいことを特徴とするものである。
上記の第1態様のアルミニウム合金鍛造品は、高温強度が高いばかりでなく、高温疲労強度が高く、そのためコンプレッサの羽根部材など、高温下で高速の回転、揺動、直線往復動等の高速動作を行う高速動部品として、充分な疲労寿命を確保することができる。また同時に、200〜400℃の温度域での疲労強度が0.2%耐力より高いため、その鍛造品の疲労強度が、200〜400℃程度の高温で使用される高速動部品の製品に要求される疲労強度水準を満たしているか否かを、実際に疲労強度の測定を行うことなく、推定することができる。
また本発明の第2の態様による高速動部品用アルミニウム合金鍛造品は、
第1の態様のアルミニウム合金鍛造品において、前記アルミニウム合金が、さらに、質量%で、Cu:0.5〜10.0%およびMg:0.2〜3.0%を含むことを特徴とする。
このような第2の態様のアルミニウム合金鍛造品は、時効硬化性を有しており、そのため時効処理を含む熱処理によって、高温強度及び高温疲労強度をより一層向上させることができる。
さらに本発明の第3の態様による高速動部品用アルミニウム合金鍛造品は、
第1もしくは第2の態様のアルミニウム合金鍛造品において、前記アルミニウム合金が、さらに、Ti、Zr、V、W、Cr、Co、Mo、Ta、Hf、Nbのうちの1種又は2種以上を、質量%でそれぞれ0.01〜5.0%含むことを特徴とする。
このような第3の態様のアルミニウム合金鍛造品は、耐熱性をより一層高めて、高温強度、高温疲労強度を顕著に向上させることができる。
また本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれかの態様の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品の製造方法であって、
第1〜第3のいずれかの態様に記載された成分組成のアルミニウム合金の溶湯をアトマイズ法によって急冷凝固させて粉末化する粉末製造工程と、
得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を得る圧縮成形工程と、
得られた圧粉体を熱間押出しして、押出材を得る押出工程と、
前記押出材を熱間鍛造する鍛造工程、
とを有し、
Si結晶粒の大きさが平均で15μm以下であり、しかも200℃以上400℃以下の温度域において0.2%耐力より疲労強度が大きい鍛造品を得ることを特徴とする。
このような第4の態様のアルミニウム合金鍛造品の製造方法によれば、第1の態様に関して説明したように、高温強度、高温疲労強度が高く、しかも200〜400℃の温度域において0.2%耐力より疲労強度が大きい鍛造品を、確実かつ安定して得ることができる。
さらに本発明の第5の態様は、第4の態様の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品の製造方法において、
前記アルミニウム合金が、質量%で、Cu:0.5〜10.0%およびMg:0.2〜3.0%を含む場合に、
前記鍛造工程の後、さらに鍛造品に溶体化処理を施し、焼入れして時効処理を施すことを特徴とするものである。
第5の態様のアルミニウム合金鍛造品の製造方法によれば、溶体化処理―焼入れ、時効処理によって、より一層高温強度及び高温疲労強度が高い鍛造品を得ることができる。
本発明のアルミニウム合金鍛造品は、高温強度が高いばかりでなく、高温疲労強度が高く、そのためコンプレッサの羽根部材など、高温下で高速の回転、揺動、直線往復動等の高速動作を行う高速動部品として、充分な疲労寿命を確保することができる。また同時に、その鍛造品の疲労強度が、200〜400℃程度の高温で使用される高速動部品の製品に要求される疲労強度水準を満たしているか否かを、実際に疲労強度の測定を行うことなく、推定することができるため、高温疲労試験に要する手間や時間、コストを削減することができる。
本発明の鍛造品の製造プロセスの一例の全体を概略的に示すフロー図である。 本発明の実施例における鍛造前後の状況を示す斜視図である。
以下、本発明の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品とその製造方法の実施形態について、詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は例示に過ぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
先ずアルミニウム合金の成分組成について説明する。
本発明の高速動部品用鍛造品に用いられるアルミニウム合金は、基本的には、必須合金成分として、Si:10.0〜19.0%と、Mn:5.0〜9.0%とを含み、残部がAl及び不可避的不純物よりなるものである。また必要に応じて、上記の必須成分のほか、さらにCu:0.5〜10.0%およびMg:0.2〜3.0%を含んでいてもよい。さらに、必要に応じて、上記の必須成分のほか、もしくは上記の必須成分とCu及びMnのほか、Ti、Zr、V、W、Cr、Co、Mo、Ta、Hf、Nbのうちの1種または2種以上が、それぞれ0.01〜5.0%含有されていてもよい。そこで次にこれらの合金元素の限定理由を説明する。なおここで、各成分についての「%」は、全て質量%を意味する。
<Si:10.0〜19.0%>
Siは、本発明のアルミニウム合金鍛造品で基本的に重要な元素であって、Ai−Si系の共晶〜過共晶域のSiを含有することによって、Si晶出物(初晶Si、共晶Si)を多量に晶出させ、特に微細なSi晶出物によって強度向上に寄与する。Si量が10%未満では、Si晶出物の量が少なくなって強度の低下をもたらし、19%を超えれば、粗大な初晶Siが晶出して強度の低下をもたらすとともに、材料の脆化をもたらして、鍛造性が低下するばかりでなく、疲労強度の低下を招く。そこで、高い強度、特に高温強度を得ると同時に、鍛造性を良好とし、且つ高い疲労強度を得るため、Si量は10.0〜19.0%の範囲内とした。なおSi量は、特に12%〜16%の範囲内が望ましい。
<Mn:5.0〜9.0%>
Mnは、遷移金属として金属間化合物を生成し、分散強化によって高温強度、高温疲労強度を向上させるために寄与する。既に述べたように、高SiのAl−Si系合金の強度向上のために、FeやNiを添加することがあるが、本発明者等の実験、検討によれば、Fe、Niを添加するよりも、Mnを添加した場合の方が、高温強度の向上、高温疲労強度の向上に対する効果が格段に大きいことが判明している。さらに、Mnは安価であることから、高価なNiを添加した場合のような材料コストの上昇を招くことはなく、またMnは、合金の溶製時などにおいて混入することが少なく、そのため合金のMn量の厳密な制御が容易となる。またMnは、Fe、Niと比較して低融点であるため、アトマイズのための合金溶湯の溶製温度を高くする必要もない。さらにMnは、Fe、Niよりも低比重であるため、材料の軽量化のためには、Fe、NiよりもMnを添加することが有利であり、特に軽量性が要求される自動車用のコンプレッサの羽根部材等の用途には有利となる。これらの観点から、本発明においては、Fe、Niは積極的には添加せず、Mnを添加することによって高温強度、高温疲労強度の向上を図ることとしている。
ここで、Mn量に関しては、5.0%を下回れば、金属間化合物による分散強化が十分に図れず、充分な高温強度、高温疲労特性が得られない。特に200〜400℃の温度域における疲労強度を、同じ温度における0.2%耐力よりも高めることができない。一方、Mn量が9.0%を超えれば、鍛造品が却って脆くなり、充分な高温強度、高温疲労特性が得られなくなる。なお、Mn量が9.0%を超える場合の200〜400℃の温度域での疲労強度は、同じ温度での0,2%耐力よりも高くなることもあるが、絶対値として疲労強度が低くなりすぎて、高速動部品として必ずしも適切なものとは言えなくなる。そこでMn量は5.0〜9.0%の範囲内とした。なおMn量は、上記の範囲内でも、特に6.0〜8.0%の範囲内が好ましい。
上述のようにMn量は5.0〜9.0%の範囲内で、疲労強度が0.2%耐力よりも高くなる現象は、これまでに知られていなかった現象、すなわち本発明者等が新規に見出した現象である。
<Cu:0.5〜10.0%>
Cuは、Mgと共働して合金に時効硬化性を付与するに有効な元素である。したがってMgとともにCuを添加しておけば、熱処理型合金として、鍛造材に溶体化処理―焼入れ、時効硬化処理を施して、常温及び高温強度、高温疲労強度を向上させるために有効に機能する。
Cu量の含有量が0.5%未満では、充分な時効硬化性が得られず、そのため強度向上、疲労強度向上の効果が少ない。一方Cu量が10%を越えれば、押出加工性が劣化する。したがってCu含有量は0.5〜10%の範囲内とした。なおCu量は、上記の範囲内でも、特に2.0〜5.0%の範囲内が好ましい。
<Mg:0.2〜3.0%>
Mgは、前述のようにCuと共働して合金に時効硬化性を付与するに有効な元素である。したがってCuとともにMgを添加しておけば、熱処理型合金として、鍛造材に溶体化処理―焼入れ、時効硬化処理を施して、常温及び高温強度を向上させるとともに、高温疲労強度を向上させるために有効に機能する。
Mg量の含有量が0.2%未満では、充分な時効硬化性が得られず、そのため強度向上、疲労強度向上の効果が少ない。一方Mg量が3.0%を越えれば、押出加工性が劣化する。したがってMg含有量は0.2〜3.0%の範囲内とした。なおMg量は、上記の範囲内でも、特に1.0〜2.0%の範囲内が好ましい。
<Ti、Zr、V、W、Cr、Co、Mo、Ta、Hf、Nbのうちの1種または2種以上:0.01〜5.0%>
これらの元素は、いずれもアルミニウム中での拡散速度が遅いため、合金の耐熱性を改善して高温強度、高温疲労強度を向上させる効果を示す。ここで、これらのいずれの元素も、その含有量が0.01未満では、上記の効果が充分に得られず、一方5,0%を超えれば、材質が脆くなる傾向を示す。なおこれらの元素の2種以上を含有させる場合の合計量は、8.0%以下とすることが好ましい。
なお、Cu及びMgと、Ti、Zr、V、W、Cr、Co、Mo、Ta、Hf、Nbのうちの1種または2種以上とは、いずれか一方のみを含有させても、また両者を同時に含有させてもよい。
以上の各元素のほかは、基本的にはAl及び不可避的不純物とすればよい。なお、本発明において、Fe、Niは、基本的には不純物扱いとしており、通常は、Fe1.0%以下、Ni1.0%以下に規制することが好ましい。ただし、場合によっては、Fe3.0%未満、Ni2.0%未満の範囲内でFe、Niのいずれか一方もしくは双方を含有することも許容される。
さらに本発明の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品においては、Si結晶粒が平均で15μm以下であることが必要である。ここで、Si結晶粒とは、Siを主成分とする結晶粒であって、初晶Si、共晶Siの両者を含む。これらのSi結晶粒のうち、初晶Siは、粗大なものとなりやすいが、平均で15μm以下に規制することにより、コンプレッサの羽根部材等の高速動部品として、高温強度の向上、高温疲労強度の向上を図ることが可能となる。Si結晶粒が平均で15μmを超える粗大なものとなれば、高温強度、高温疲労強度を充分に向上させることが困難となる。
ここで、本発明の鍛造品を製造するにあたっては、アトマイズ法によるアルミニウム合金の急冷凝固粉末を圧縮成形、押出、熱間鍛造して鍛造品とすることが望まれる。このような鍛造品の製造過程では、Si結晶粒の平均的なサイズはほとんど変化しないから、鍛造品のSi結晶粒を平均で15μm以下とするためには、合金粉末としてその粒子中のSi結晶粒が平均で15μm以下のものを用いれば、熱間鍛造後の鍛造品におけるSi結晶粒も、平均で15μm以下とすることが可能となる。
以上のような成分組成で且つSi結晶粒の大きさが平均で15μm以下である鍛造品は、その高温特性として、200〜400℃以下の温度域における疲労強度が、同じ温度における0.2%耐力より高いという特性を有する。ここで疲労強度とは、JISZ2274に準拠した回転曲げ疲労試験によって疲労試験を行って求めたS−N曲線における繰り返し数n=10の時の応力振幅を意味するものとする。
次に、本発明の一態様の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品を製造するプロセスの一例について、図1を参照しながら説明する。
高速動部品用アルミニウム合金鍛造品を製造するプロセスの全体的な概念としては、図1に示しているように、アルミニウム合金を溶解してアトマイズ法により合金粉末を製造する粉末準備段階P1と、その粉末準備段階P1によって得られた合金粉末を用い、所定形状(例えば円柱状)に圧縮成形後、押出して熱間鍛造し、鍛造品を得る鍛造品製造段階P2と、Cu,Mgを含有する熱処理型合金である場合に、鍛造上がり材を溶体化処理―焼入れし、時効処理(実際には好ましくは過時効安定化処理)を施す熱処理段階P3からなる。これらの各段階について、さらに詳細に説明する。
<粉末準備段階P1>
先ず前述のように成分調整されたアルミニウム合金溶湯を、通常の溶解法によって溶製する(溶製工程S11)。得られたアルミニウム合金溶湯をアトマイズ法によって粉末化する(粉末製造工程S12)。アトマイズ法は、噴霧ノズルから、窒素ガスなどのガス流により合金溶湯の微小液滴をミスト化して噴霧し、微小液滴(微細な合金溶湯粒子)を急冷凝固させ、微細な合金粉末を得る方法である。このように、微細な合金溶湯粒子を急速に冷却することにより、合金元素の凝固時の拡散を抑制して、結晶粒や析出物の粗大化を抑制し、さらに平衡相や準安定相の出現抑制により、遷移元素であるMnの固溶量の拡大が可能となる。そして粉末製造にアトマイズ法を適用すれば、前述のようにSi結晶粒が平均で15μm以下の粉末を得ることも容易に可能となる。
なおアトマイズ法には種々の形式があるが、10〜10℃/秒程度の冷却速度が得られ、また平均で30〜70μm程度以下の微細な粒径の合金が得られる方法であれば、その形式は特に限定されない。
アトマイズ法によって得られた合金粉末は、必要に応じて篩等によって分級(分級工程S13)した後、次工程(鍛造品製造段階P2)に送られる。次工程に送られる合金粉末は、既に述べたような成分組成を有していて、かつ合金粉末粒子中のSi結晶粒が平均で15μm以下であることが望ましい。
なお次工程に送られるアルミニウム合金粉末粒子の粒径は特に限定しないが、通常は平均で30〜70μm程度が好ましい。平均粒径が30μm未満では、歩留まりが著しく低下し、一方70μmを超えれば、粗大な酸化物および異物が混入するおそれがある。
<鍛造材製造段階P2>
鍛造材製造段階P2は、基本的には、合金粉末を圧縮成形して圧粉体を得る圧縮成形工程と、得られた圧粉体を熱間押出しして、押出材を得る押出工程と、押出材を熱間鍛造する鍛造工程とを有する。そこで本実施形態におけるこれらの各工程を次に説明する。
[圧縮成形工程]
前述のようにして得られた合金粉末は、例えば250〜300℃程度に加熱(S21)して、例えば230〜270℃程度に予熱された金型内に充填し、所定形状に圧縮成形して(S22)、圧粉体とする。圧縮成形の圧力は特に限定されないが、通常は0.5〜3.0ton/cm程度の圧力とし、相対密度が60〜90%程度の圧粉体とすることが好ましい。また圧粉体の形状は特に限定されないが、通常は押出工程を考慮して、円柱状あるいは円盤状とすることが好ましい。
[押出工程]
圧粉体には、必要に応じて面削等の機械加工を施してから、脱ガス処理(S23)を施し、加熱(S24)して押出工程(S25)に付す。押出前の加熱温度(予熱温度)は、例えば300〜450℃程度とすることが好ましい。押出に当たっては、圧粉体を押出コンテナ内に装入して、押出ラムにより加圧力を加え、押出ダイスから例えば丸棒状に押出すことになるが、押出コンテナも、予め300〜400℃程度に加熱しておくことが望ましい。このように熱間で押し出すことによって圧粉体の塑性変形が進行し、合金粉末粒子同士が結合して、一体化した押出体が得られる。
ここで、押出圧力は10〜25MPa程度、押出比(押出前後の外径比)は、5.0〜50程度、押出体の密度は2.80〜2.90程度とすることが好ましい。
[鍛造工程]
例えば丸棒状の押出体は、必要に応じて所定長さに切断(S26)した後、熱間鍛造にに適した温度に加熱(S27)して熱間鍛造する(S28)。この熱間鍛造は、鍛造上がり材(鍛造品)が製品形状(例えばコンプレッサ羽根部材形状)に近い形状となるように、密閉型鍛造もしくは半密閉型鍛造とすることが好ましいが、製品形状によっては自由鍛造でもよい。熱間鍛造の温度は、本発明で対象とする合金の場合、300〜450℃程度とすることが好ましい。
なお、場合によっては熱間鍛造の後、さらに製品形状に近い形状に仕上るために冷間鍛造を施すこともある。
鍛造上がり材は、これに適宜切削加工や表面研磨等を施して、直ちに製品の高速動部品(例えばコンプレッサの羽根部材)としてもよいが、アルミニウム合金が、時効硬化性を付与する合金元素であるCu及びMgを含有する熱処理型合金の場合には、次の熱処理段階P3に付す。
<熱処理段階P3>
熱処理段階P3は、基本的には、鍛造品に溶体化処理(S31)を施し、焼入れ(S32)して時効処理(S33)を施す段階である。
溶体化処理(S31)は、時効硬化に寄与するCu、Mg等を過飽和に固溶させる処理であって、溶体化処理の加熱温度は480〜500℃が好ましい。480℃を下回れば、過飽和固溶体が十分に得られず、時効硬化能が低下し、一方、500℃を上回れば、結晶粒や共晶Siが粗大化して強度低下を招いたり、ポアの成長を促すといった問題が発生する。また溶体化処理の加熱時間は2hr〜4hrが好ましい。2hrを下回れば、過飽和固溶体が十分に得られず、4hrを上回れば、結晶粒や共晶Siの粗大化が発生する。
溶体化のための加熱後は、水焼入れなどによって急冷(焼入れ)(S32)して、常温での固溶限を超えてCu、Mg等が過飽和に固溶された材料(過飽和固溶体)とする。焼入れ温度は0〜50℃が好ましい。0℃を下回れば、急激な熱収縮により亀裂が発生して、割れに至るおそれがある。一方、50℃を上回れば、十分な過飽和固溶体が得られず、十分な強度が得られなくなる。
溶体化処理―焼入れ後には、時効処理(S33)を施す。この時効処理により、Cu、Mg等を含む金属間化合物を微細に析出させて、強度、耐摩耗性を大幅に向上させることができる。但し、本発明の場合、コンプレッサの羽根部材で代表される高速動部品の製造に適用され、このような高速動部品では、寸法安定性が良好であることが望まれる。例えばコンプレッサの羽根部材では、ケーシング内周面とのクリアランスを安定に維持することが望まれる。そこで、本発明の場合、時効処理は、一般的なT6処理における時効処理条件(最大強さを得るための時効処理条件)を超えて過時効とする、いわゆるT7処理における安定化処理まで進めることが望ましい。
上記の観点から、時効処理(S33)の条件は、180℃〜280℃の範囲内の温度で、1hr〜4hrとすることが望ましい。時効処理温度が180℃を下回れば、長時間時効が必要となって生産効率が低下し、一方280℃を上回れば、短時間で結晶粒や共晶Siの粗大化が発生してしまい、強度が低下するおそれがある。また時効時間が1hr未満では、過時効にならず、安定化が不十分となって、十分な寸法安定性が得られず、一方4hrを上回れば、過剰な過時効により結晶粒や共晶Siの粗大化が発生して強度低下を招くおそれがある。
上述のような時効処理後の鍛造品については、適宜切削加工などの機械加工や表面研磨処理などを施して、コンプレッサの羽根部材等の高速動部品に仕上る。
以下に本発明の実施例を記す。なお以下の実施例は、本発明の作用、効果を明確化するためのものであって、実施例に記載された条件が本発明の技術的範囲を限定するものではない。
表1のNo.1、No.2に示す組成の高Siアルミニウム合金溶湯を、窒素ガスにてアトマイズして粉末化し、篩により分級して100メッシュ以下の粉末を得た。この粉末の粒子中に含まれるSi結晶粒の大きさは、後述する供試材(鍛造品)についてのSi結晶粒の大きさの測定結果から、平均で15μm以下であると推定される。
次いでその粉末を280℃の温度に予熱して、同じ温度に加熱保持した金型内に充填し、1.5ton/cmの圧力で圧縮成形して、直径210mm、長さ250mmの円柱状の圧粉体を得た。次に圧粉体を直径203mmまで旋盤にて面削し、圧粉体のビレットとした。次にその圧粉体ビレットを350℃に加熱し、350℃に加熱保持された内径210mmの押出コンテナ中に挿入し、内径75mmのダイスで間接押出法により押出比7.8により押出した。得られた押出材を、長さ30mmに切断した後、450℃に加熱して熱間自由鍛造を施し、直径107.5、厚み15mmの円盤状の供試材(鍛造品)を得た。なお実際の摺動部品の製造に当たっては、型鍛造を行うことが多いが、ここでは特性評価のみを目的としていることから、自由鍛造を適用した。図2に、鍛造前の押出材10及び鍛造後の鍛造品20を示す。
得られた供試材(鍛造品)から約10mm×10mmのサンプルを切り出し、樹脂埋めしたのち、エメリー紙による粗研磨およびバフによる仕上げ研磨を行い、光学顕微鏡にて組織観察を行い、Si結晶粒径の測定を行った結果、いずれの供試材もSi結晶粒の大きさが平均で15μm以下であることが確認された。
得られた供試材を、溶体化処理として490℃に加熱して3hr保持した後、20℃の水に焼き入れした。その後、時効処理(過時効安定化処理)として、220℃で1hr加熱して、T7処理品とした。
得られたT7処理品を、標点間距離25.4mm、平行部直径2.85mmの常温引張試験片および標点間距離20mm、平行部直径4mmのツバ付き高温引張試験片にそれぞれ加工して、常温、150、200℃、300℃、350℃の各温度にてJISZ2241:2011に準拠して引張試験を行い、0.2%耐力を調べた。
また、上記と同様にして得られたT7処理品を、標点間距離30mm、平行部直径8mmの回転曲げ疲労試験片にそれぞれ加工して、250℃、300℃、250℃の各温度にて、繰返し速度3600rpmの条件で、JISZ2274に準拠して回転曲げ疲労試験を行った。回転曲げ疲労試験は、各試験温度で、応力を変えて8本の試験片について実施し、S−N曲線から、繰り返し数n=10における疲労強度を求めた。
なお、引張試験、疲労試験ともに各試験温度で、100hr保持後に行った。ここで、供試材No.1は成分組成が本発明範囲を外れる比較例であり、No.2が本発明範囲内の例である。
これらの結果を表2に示す。
Figure 2019026859
Figure 2019026859
表2に示すように、比較例であるNo.1と比べて、本発明例のNo.2の鍛造品は、疲労強度が各試験温度で高いばかりでなく、200〜400℃の温度域で、0.2%耐力よりも高い疲労強度を示している。
以上のような実施例から、本発明鍛造品は、高温での疲労強度が求められるコンプレッサ羽根部材などの高速動部品に好適である。そして、特に200〜400℃の温度域では、0.2%耐力よりも高い疲労強度を示すことから簡単な引張試験によって測定可能な0.2%耐力の測定値から、疲労強度がそれを上回ると推定できるため、高温疲労試験を省略しても、鍛造品の高温疲労特性を評価することが可能となる。
なお本発明の高速動部品は、運転時に200〜400℃の温度域となる高速動部品に最適であり、ターボ式コンプレッサのインペラ、あるいはレシプロ式コンプレッサのピストン又はシリンダ、スクロールコンプレッサーのスクロール等の自動車エンジンの部品等に適用することができる。また自動車エンジンのピストンは、摺動部材であると同時に、高速動部品でもあり、したがって本発明の鍛造品は、エンジンピストンにも適用することができる。
10…押出材、 20…鍛造品。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    Si:10.0〜19.0%、
    Mn:5.0〜9.0%
    を含み、残部がAl及び不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、
    かつSi結晶粒の大きさが平均で15μm以下であり、
    200℃以上400℃以下の温度域において0.2%耐力より疲労強度が大きいことを特徴とする高速動部品用アルミニウム合金鍛造品。
  2. さらに前記アルミニウム合金が、質量%で、Cu:0.5〜10.0%およびMg:0.2〜3.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品。
  3. さらに前記アルミニウム合金が、Ti、Zr、V、W、Cr、Co、Mo、Ta、Hf、Nbのうちの1種又は2種以上を、質量%で、それぞれ0.01〜5.0%含むことを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載のアルミニウム合金の粉末溶湯を溶製し、その溶湯をアトマイズ法によって急冷凝固させて粉末化する粉末製造工程と、
    得られた粉末を圧縮成形して圧粉体を得る圧縮成形工程と、
    得られた圧粉体を熱間押出しして、押出材を得る押出工程と、
    前記押出材を熱間鍛造して、Si結晶粒の大きさが平均で15μm以下である鍛造品を得る鍛造工程と
    を有することを特徴とする高速動部品用アルミニウム合金鍛造品の製造方法。
  5. 前記アルミニウム合金が、質量%で、Cu:0.5〜10.0%およびMg:0.2〜3.0%を含む場合に、
    前記鍛造工程の後、さらに鍛造品に溶体化処理を施し、焼入れして時効処理を施すことを特徴とする請求項4に記載の高速動部品用アルミニウム合金鍛造品の製造方法。
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