JP2019026718A - 複合ゴム質重合体、グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

複合ゴム質重合体、グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性、剛性、成形外観に優れる成形品を提供し得る複合ゴム質重合体およびグラフト共重合体と、このグラフト共重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供する。【解決手段】ポリエステル樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(a)単位および架橋剤(b)単位を含むゴム成分とが複合化されてなる複合ゴム質重合体(B)。この複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(C)。このグラフト共重合体(C)を含有する熱可塑性樹脂組成物およびその成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、成形性が良好であり、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、外観、耐候性にバランスよく優れた成形品を提供し得る複合ゴム質重合体およびグラフト共重合体に関する。本発明はまた、このグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物とその成形品に関する。
従来、熱可塑性樹脂、例えばスチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、スチレン−アクリロニトリル−フェニルマレイミド共重合樹脂等は、これらの樹脂と相溶性を付与させるような単量体をゴム質重合体にグラフト重合して得られるグラフト共重合体を配合し、ABS樹脂、ASA樹脂等に代表される耐衝撃性を付与させた材料として広く使用されている。
これらの中でも、ゴム質重合体に飽和ゴムである(メタ)アクリル酸エステルゴム等の成分を用いたASA樹脂は、良好な耐候性を付与し得るという特徴を有する。
しかし、ASA樹脂は、ABS樹脂に比べて耐衝撃性が劣るという欠点がある。そこで、この耐衝撃性を改良することを目的として、粒子径分布が異なるゴム粒子を組み合わせたアクリル酸エステル系ゴム質重合体を構成成分としたASA樹脂が提案されている(特許文献1〜3)。
しかしながら、従来のASA樹脂では、十分な耐衝撃性を発現させるためには、ゴム成分の配合割合を増やす必要があり、ゴム成分の配合割合を増やすことで剛性が低下してしまい、近年の厳しいニーズに十分応え得るものではなかった。
特開昭59−232138号公報 特開平04−225051号公報 特開平08−134312号公報
本発明は、成形性が良好であり、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、外観、耐候性にバランスよく優れた成形品を提供し得る複合ゴム質重合体およびグラフト共重合体と、このグラフト共重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂の存在下に、(メタ)アクリル酸エステルと架橋剤とを重合して得られる複合ゴム質重合体を用いたグラフト共重合体により、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] ポリエステル樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(a)単位および架橋剤(b)単位を含むゴム成分とが複合化されてなる複合ゴム質重合体(B)。
[2] ポリエステル樹脂(A)が非結晶性ポリエステル樹脂である[1]に記載の複合ゴム質重合体(B)。
[3] ポリエステル樹脂(A)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)とを重合してなる[1]または[2]に記載の複合ゴム質重合体(B)。
[4] 体積平均粒子径(X)をXで表し、粒子径分布曲線における上限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)としてYで表し、粒子径分布曲線における下限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)としてZで表したとき、体積平均粒子径(X)、頻度上限10%体積粒子径(Y)および頻度下限10%体積粒子径(Z)が、以下の(1)または(2)を満たす[1]なしい[3]のいずれかに記載の複合ゴム質重合体(B)。
(1)体積平均粒子径(X)がX<300nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.6X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.7Xである。
(2)体積平均粒子径(X)がX=300〜800nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.7X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.6Xである。
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(C)。
[6] [5]に記載のグラフト共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物。
[7] [6]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
[8] ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、乳化剤、および水を含む混合物をミニエマルション化するミニエマルション化工程と、得られたミニエマルションを重合する重合工程とを含む[1]ないし[4]のいずれかに記載の複合ゴム質重合体(B)の製造方法。
[9] [8]に記載の製造方法で得られた複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してグラフト共重合体(C)を得ることを特徴とするグラフト共重合体(C)の製造方法。
[10] [9]に記載の製造方法で得られたグラフト共重合体(C)を用いた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[11] [10]に記載の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
本発明のゴム質重合体およびグラフト共重合体によれば、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、外観、耐候性にバランスよく優れた成形品を、良好な成形性のもとに提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本明細書において「単位」とは、重合前の単量体化合物(モノマー)に由来する構造部分をさし、例えば、「(メタ)アクリル酸エステル単位」とは「(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造部分」をさす。重合体中の各単量体単位の含有割合は、当該重合体の製造に用いた単量体混合物中の該単量体の含有割合に該当する。
また、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方または双方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
また、「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
[複合ゴム質重合体(B)]
まず、本発明の複合ゴム質重合体(B)について説明する。
本発明の複合ゴム質重合体(B)は、ポリエステル樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(a)単位および架橋剤(b)単位を含むゴム成分とが複合化されてなるものであり、ポリエステル樹脂(A)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)と、架橋剤(b)とを重合することにより得られる。
本発明の複合ゴム質重合体(B)は、好ましくは、ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、開始剤、乳化剤、および水を含む原料混合物からプレエマルション(ミニエマルション)を調製する工程と、得られたミニエマルションを重合する工程とを含むミニエマルション重合により製造される。
以下に、ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、開始剤、乳化剤、および水を含む原料混合物からプレエマルションを調製し、得られたプレエマルションを重合するミニエマルション重合により、本発明の複合ゴム質重合体(B)を製造する方法について説明する。なお、上記原料混合物は、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)以外に、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他のビニル化合物を含んでいてもよい。
ミニエマルション重合では、超音波発振機などを利用して強い剪断力をかけることによって、100〜1000nm程度のモノマー油滴を調製する。この際、乳化剤分子はモノマー油滴表面に優先的に吸着し、水媒体中にはフリーの乳化剤やミセルがほとんど存在しなくなる。したがって、理想的なミニエマルション系の重合では、モノマーラジカルが水相と油相に分配されることはなく、モノマー油滴が粒子の核になって重合が進行する。その結果、形成されたモノマー油滴はそのままポリマー粒子に変換され、ポリエステル樹脂(A)が系外へ放出されることなく、ポリエステル樹脂(A)を包含した、粒子径分布の狭いポリマーナノ粒子を得ることが可能となる。この粒子径分布が狭いポリマー粒子により粒子径の大きい、例えば粒子径200nm以上の粒子でも良好な発色性と成形外観を発揮するものとなる。
これに対して、一般的な乳化重合で作製した粒子径200nm以上のポリマー粒子ではポリエステル樹脂(A)の複合と粒子径分布の制御が困難であり、粒子径分布が広いポリマー粒子となるため、製造安定性や得られる成形品の発色性、成形外観が劣るものとなる。
<複合ゴム質重合体(B)の製造方法>
本発明の複合ゴム質重合体(B)を製造するミニエマルション重合は、これに限定されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、好ましくは更に開始剤を混合する工程、得られた混合物に水、乳化剤を加え、せん断力を付与してプレエマルション(ミニエマルション)を作製する工程、並びにこの混合物を重合開始温度まで加熱して重合させる工程を含むことができる。ミニエマルション化の工程では、重合用モノマーと乳化剤とを混合した後、例えば、超音波照射による剪断工程を実施することにより、前記剪断力によりモノマーが引きちぎられ、乳化剤に覆われたモノマー微小油滴が形成される。その後、開始剤の重合開始温度まで加熱することにより、ポリエステル樹脂(A)の存在下にモノマー微小油滴をそのまま重合し、ポリエステル樹脂(A)を包含した高分子微粒子が得られる。ミニエマルションを形成させるための剪断力を加える方法は公知の任意の方法を用いることができ、ミニエマルションを形成できる高剪断装置としては、これらに限定されるものではないが、例えば、高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置、超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置等がある。高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置としては、例えば、SPX Corporation APV社製「圧力式ホモジナイザー」、(株)パウレック製「マイクロフルイダイザー」等が挙げられ、超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置としては、例えば、Fisher Scient製「ソニックディスメンブレーター」や(株)日本精機製作所製「ULTRASONIC HOMOGENIZER」等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
なお、ミニエマルション化の際の水溶媒の使用量は、作業性、安定性、製造性等の観点から、重合後の反応系の固形分濃度が5〜50質量%程度となるように、水以外の混合物100質量部に対して100〜500質量部程度とすることが好ましい。
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A)とは、多塩基酸類と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステル樹脂、脂肪族環状エステルを開環重合して得られるポリエステル樹脂等である。
多塩基酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、安息香酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、スベリン酸、ブラシリック酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、トリシクロデカンジカルボン酸、テトラヒドロテレフタル酸、およびテトラヒドロオルソフタル酸など、あるいはこれらの酸のメチルエステル等のエステル体、または無水物などの誘導体も用いることができる。これらの多塩基酸類は単独で、あるいは複数の組み合わせで用いることができる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノール系エチレンオキサイド付加物、ビスフェノール系プロピレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、スピログリコール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、レゾルシノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどが用いられる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは複数の組合せで用いることができる。
本発明に用いるポリエステル樹脂(A)は、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などの公知の方法などで製造することができる。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)は、後述の(メタ)アクリル酸エステル(a)に対して溶解性の高い非結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
ここで、「非結晶性」とは、JIS K 7121の「プラスチックスの転移温度測定方法」に基づいた示差走査熱量測定(DSC)により明確な融点ピークが認められないことを意味する。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)の分子量としては特に制限はないが、後述する(メタ)アクリル酸エステル(a)との溶解性の観点から、数平均分子量(Mn)が500〜30000、特に1000〜10000程度のものが好ましい。また、後述する(メタ)アクリル酸エステル(a)との溶解性、得られる成形品の耐衝撃性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が−50〜80℃、特に−30〜20℃のものが好ましい。
なお、ここで、数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の値であり、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従って示差走査熱量計で測定された値であるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
ポリエステル樹脂(A)は1種のみを用いてもよく、構成する多塩基酸類や多価アルコール、物性等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
本発明で用いるポリエステル樹脂(A)としては、市販品を用いることもでき、例えば、バイロン(登録商標)(東洋紡(株)製)、エリーテル(登録商標)(ユニチカ(株)製)、ポリエスター(登録商標)(日本合成化学(株)製)、アラキード(登録商標)(荒川化学工業(株)製)、エスペル(登録商標)(日立化成(株)製)などを用いることができる。
本発明におけるポリエステル樹脂(A)の使用量は、特に制限はないが、ポリエステル樹脂(A)と後述する(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)との合計100質量部に対するポリエステル樹脂(A)の割合が0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましく、1〜10質量部であることがさらに好ましい。
ポリエステル樹脂(A)の使用量が上記下限より少ないと、本発明の複合ゴム質重合体(B)を用いた本発明のグラフト共重合体(C)を用いて得られる成形品の剛性、光沢、成形外観が劣るものとなる傾向があり、上記上限より多いと、(メタ)アクリル酸エステル(a)との溶解性が不十分となり製造安定性に劣り、本発明の複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物の成形時のガス発生量が多く、得られる成形品の耐衝撃性に劣るものとなる傾向がある。
<(メタ)アクリル酸エステル(a)>
複合ゴム質重合体(B)を構成する(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸エステル;メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ドデシル等のアルキル基の炭素数1〜18のメタクリル酸エステルが挙げられる。熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性および光沢が向上することから、これらの(メタ)アクリル酸エステル(a)の中でも、(メタ)アクリル酸n−ブチル、特にアクリル酸n−ブチルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル(a)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(a)は、(メタ)アクリル酸エステル(a)と後述の架橋剤(b)と必要に応じて用いられる後述のその他のビニル化合物の合計100質量部に対して、(メタ)アクリル酸エステル(a)の割合が10〜99.99質量部、特に50〜99.9質量部、とりわけ80〜99.5質量部となるように用いることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(a)の使用量が上記範囲内であれば、得られる複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐候性に優れたものとなる。
<架橋剤(b)>
本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造に際しては、前述の(メタ)アクリル酸エステル(a)から得られる(メタ)アクリル酸エステル(a)成分に架橋構造を導入するために、(メタ)アクリル酸エステル(a)と共に架橋剤(b)を用いる。架橋剤(b)を用いて得られる架橋複合ゴム質重合体(B)であれば、その架橋部分が本発明のグラフト共重合体(C)の製造の際に用いる後述の(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体とグラフト結合するためのグラフト交叉点としても機能する。
架橋剤(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、ブチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(b)の使用量には特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)と後述するその他のビニル化合物との合計100質量部に対して、架橋剤(b)の割合が0.1〜5.0質量部、特に0.3〜3.0質量部となる量であることが好ましい。
架橋剤(b)の割合が上記下限よりも少ないと、(メタ)アクリル酸エステル(a)に架橋剤(b)を併用することによる十分な架橋構造が得られなくなり、耐衝撃性の向上効果を十分に得ることができず、上記上限よりも多いと過度な架橋によりゴムとしての効果が得られず、耐衝撃性に劣るものとなる。
<その他のビニル化合物>
必要に応じて用いられるその他のビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)と共重合可能であれば特に限定されない。例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等の芳香族ビニル(c);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル(d);N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類や、無水マレイン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
その他のビニル化合物を用いる場合、その他のビニル化合物の使用量は特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)とその他のビニル化合物の合計100質量部に対するその他のビニル化合物の割合が0〜90質量部、特に0.1〜50質量部、とりわけ0.3〜30質量部となるように用いることが好ましい。
<疎水性物質>
本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造では、疎水性物質を所定の割合で用いることが好ましい。プレエマルションを形成させる際に、疎水性物質を添加するとミニエマルション重合の製造安定性がより向上する傾向にあり、本発明に好適な複合ゴム質重合体(B)を製造することができる。
疎水性物質としては、例えば炭素数10以上の炭化水素類、炭素数10以上のアルコール、質量平均分子量(Mw)10000未満の疎水性ポリマー、疎水性モノマー、例えば、炭素数10〜30のアルコールのビニルエステル、炭素数12〜30のアルコールのビニルエーテル、炭素数12〜30の(メタ)アクリル酸アルキル、炭素数10〜30(好ましくは炭素数10〜22)のカルボン酸ビニルエステル、p−アルキルスチレン、疎水性の連鎖移動剤、疎水性の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
疎水性物質としては、より具体的には、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オリーブ油、セチルアルコール、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、500〜10000の数平均分子量(Mn)を有するポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本発明では、このような疎水性物質を、上述の(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)と、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物との合計100質量部に対して好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜3質量部用いる。疎水性物質の使用量が上記範囲内にあると得られる複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物の成形時のガス発生量が少なく、得られる成形品の耐衝撃性、耐候性に優れるものとなる。
<乳化剤>
本発明の複合ゴム質重合体(B)を製造する際に用いる乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれるアニオン系乳化剤等、公知の乳化剤を単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
乳化剤の添加量としては前述の(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)と、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物との合計100質量部に対して0.01〜1.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部である。
<開始剤>
開始剤とは、前述の(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)と、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物がラジカル重合するためのラジカル重合開始剤であり、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、加熱により重合を開始できるアゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクヘキサンカルボキシレート)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばペルオキシエステル化合物が挙げられ、その具体例としては、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ2−ヘキシルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ2−ヘキシルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジメチルビス(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t−ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレラート、2−エチルヘキサンペルオキシ酸t−ブチル、ジベンゾイルパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシドおよびt−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、有機過酸化物と硫酸第一鉄、キレート剤および還元剤を組み合わせたものが好ましい。例えば、クメンヒドロペルオキシド、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、およびデキストロースからなるものや、t−ブチルヒドロパーオキシド、ナトリウムホルムアルデヒトスルホキシレート(ロンガリット)、硫酸第一鉄、およびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを組み合わせたもの等が挙げられる。
開始剤としては、これらのうち、特に有機過酸化物が好ましい。
開始剤の添加量としては、前述の(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)と、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、例えば0.001〜3質量部である。
なお、開始剤の添加はプレエマルションを形成させる前後のいずれでもよく、添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
<ゴム成分>
本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造に際して、プレエマルションを作製する工程に他のゴム成分が存在する複合ゴムからなる複合ゴム質重合体(B)を所望の性能を損なわない程度で製造してもよい。この場合、他のゴム成分としては、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。これらのゴム成分の存在下で(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)を重合することでアクリル酸ブチルゴム等の(メタ)アクリル酸エステル系ゴムとを複合してなるジエン/(メタ)アクリル酸エステル系複合ゴムや、ポリオルガノシロキシサン/(メタ)アクリル酸エステル系複合ゴムをゴム成分とする複合ゴム質重合体(B)が得られる。尚、本発明に係る複合ゴムはこれらに限定されるものではなく、また、複合させるゴム成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<反応条件>
上記のプレエマルションを調製する工程は通常常温(10〜50℃程度)で行われ、ミニエマルション重合の工程は40〜100℃で30〜600分程度行われる。
<粒子径>
本発明の複合ゴム質重合体(B)の粒子径は、体積平均粒子径で好ましくは150〜800nmであり、より好ましくは200〜500nm、さらに好ましくは250〜400nmである。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、重合時の凝塊物が少なく、この複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより良好となる。
本発明の複合ゴム質重合体(B)の粒子径はまた、体積平均粒子径(X)をXで表し、粒子径分布曲線における上限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)としてYで表し、粒子径分布曲線における下限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)としてZで表したとき、以下の(1)または(2)を満たすことが好ましく、以下の(1)または(2)を満たすことで、この複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性、成形外観が良好となる。
(1)体積平均粒子径(X)がX≦300nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.6X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.7Xである。
(2)体積平均粒子径(X)がX=300〜1000nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.7X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.6Xである。
本発明の複合ゴム質重合体(B)の粒子径分布としては、より好ましくは頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.6X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.7Xである。
なお、本発明の複合ゴム質重合体(B)の体積平均粒子径(X)、粒子径分布は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
<ゲル含有率>
本発明の複合ゴム質重合体(B)のゲル含有率は、80%以上、特に85%以上、とりわけ90〜100%であることが好ましい。ここで、ゲル含有率とは、次のようにして求められる値である。
即ち、複合ゴム質重合体(B)のラテックスを凝固、乾燥させて、ポリマーを得、このポリマーを約1g精秤(W0)し、これを約50gのアセトン中に温度23℃で48時間浸漬して、ポリマーを膨潤させた後、アセトンをデカンテーションにて除き、ここで、膨潤したポリマーを精秤(WS)した後、80℃で24時間減圧乾燥して、ポリマーが吸収したアセトンを蒸発、除去し、再び、精秤(W)して、次式によりゲル含有率を算出する。
ゲル含有率(%)=W/W0×100
ここで、Wは乾燥したポリマーの重量であり、W0はアセトンに浸漬する前のポリマーの重量である。
ゲル含有率が80%以上の複合ゴム質重合体(B)であれば、この複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に優れたものとなる。
<アセトン膨潤度>
本発明の複合ゴム質重合体(B)は、好ましくは500〜1200%、より好ましくは600〜1000%、さらに好ましくは700〜900%の範囲のアセトンによる膨潤度を有する。ここで、アセトンによる膨潤度とは、次のようにして求められる値である。
即ち、上記のゲル含有率の測定におけると同様の操作をし、次式により膨潤度を算出する。
膨潤度(%)=(WS−W)/W×100
ここで、WSは膨潤したポリマーの重量であり、Wは乾燥したポリマーの重量である。
アセトン膨潤度が上記下限を下回った複合ゴム質重合体(B)では、この複合ゴム質重合体(B)を用いたグラフト共重合体(C)を配合した熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性に劣り、上記上限を上回った複合ゴム質重合体(B)であれば、成形外観に劣る傾向にある。
[グラフト共重合体(C)]
本発明のグラフト共重合体(C)は、上記のようにして製造された本発明の複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してなるものである。即ち、本発明の複合ゴム質重合体(B)に、これらのビニル単量体の重合反応物からなるグラフト層が形成されたものである。
本発明のグラフト共重合体(C)を構成するグラフト層とは、複合ゴム質重合体(B)に、上記のビニル単量体の一部または全部が化学的および/または物理的に結合したものを指す。
なお、本発明の複合ゴム質重合体(B)にグラフト重合する(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造に用いる(メタ)アクリル酸エステル(a)として例示したものの1種または2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル(c)、シアン化ビニル(d)としては、本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造において、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物としてそれぞれ例示した芳香族ビニル(c)、シアン化ビニル(d)の1種または2種以上を用いることができる。
グラフト共重合体(C)のグラフト層のグラフト率は以下の方法により算出できる。
<グラフト率の算出>
グラフト共重合体(C)2.5gにアセトン80mLを加え65℃の湯浴で3時間還流し、アセトン可溶分の抽出を行う。残留したアセトン不溶物を遠心分離により分離し、乾燥した後質量を測定し、グラフト共重合体(C)中のアセトン不溶物の質量割合を算出する。得られたグラフト共重合体(C)中のアセトン不溶物の質量割合より次の式を用いて、グラフト率を算出する。
Figure 2019026718
本発明のグラフト共重合体(C)のグラフト率は10〜90%、特に30〜85%が好ましい。グラフト共重合体(C)のグラフト率が上記範囲内であれば、このグラフト共重合体(C)を用いて良好な耐衝撃性、成形外観の成形品を得ることができる。グラフト率が上記上限を超えると、後述する熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(C)の分散性が良好となり、成形外観が良好となる反面、剛性が低下する傾向にある。
なお、グラフト共重合体(C)を構成するグラフト層には、前述の(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、シアン化ビニル(d)以外のその他のビニル単量体が含まれていてもよい。その他のビニル単量体としては、本発明の複合ゴム質重合体(B)の製造において、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物として例示したもののうちの、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、シアン化ビニル(d)以外のビニル化合物の1種または2種以上が挙げられる。
グラフト層を形成するビニル単量体として、芳香族ビニル(c)、好ましくはスチレンと、シアン化ビニル(d)、好ましくはアクリロニトリルの混合物を使用すると、得られるグラフト共重合体(C)の熱安定性が優れるため好ましい。この場合、スチレン等の芳香族ビニル(c)とアクリロニトリル等のシアン化ビニル(d)との割合は、芳香族ビニル(c)50〜90質量%に対してシアン化ビニル(d)10〜50質量%であることが好ましい(ただし、芳香族ビニル(c)とシアン化ビニル(d)との合計で100質量%とする)。
グラフト共重合体(C)のグラフト層は、複合ゴム質重合体(B)10〜90質量%に対して、ビニル単量体90〜10質量%を乳化グラフト重合させて得られるものであると、このグラフト共重合体(C)を用いて得られる成形品の外観が優れるため好ましい(ただし、複合ゴム質重合体(B)とビニル単量体との合計で100質量%とする。)。この割合は、さらに好ましくは、複合ゴム質重合体(B)30〜70質量%で、ビニル単量体70〜30質量%である。
複合ゴム質重合体(B)へのビニル単量体のグラフト重合方法としては、ミニエマルション重合により得られた複合ゴム質重合体(B)のラテックスにビニル単量体を添加し、1段または多段で重合する方法が挙げられる。多段で重合する場合には、複合ゴム質重合体(B)のゴムラテックスの存在下で、ビニル単量体を分割添加または連続添加して重合することが好ましい。このような重合方法により良好な重合安定性が得られ、且つ所望の粒子径および粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。このグラフト重合に用いる重合開始剤としては、前述の複合ゴム質重合体(B)を製造するためのミニエマルション重合に用いる開始剤と同様のものが挙げられる。
複合ゴム質重合体(B)にビニル単量体を重合する際には、複合ゴム質重合体(B)のラテックスを安定化させ、得られるグラフト共重合体(C)の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。ここで用いる乳化剤としては、特に限定しないが、前述の複合ゴム質重合体(B)を製造するためのミニエマルション重合に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が好ましい。複合ゴム質重合体(B)にビニル単量体をグラフト重合させる際の乳化剤の使用量としては、特に限定しないが、得られるグラフト共重合体(C)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
乳化重合で得られたグラフト共重合体(C)のラテックスから、グラフト共重合体(C)を回収する方法としては、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。
グラフト共重合体(C)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、グラフト共重合体(C)を固化させる。次いで、固化したグラフト共重合体(C)を、水または温水中に再分散させてスラリーとし、グラフト共重合体(C)中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。次いで、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することによって、グラフト共重合体(C)を粉体または粒子として回収する。
凝固剤としては、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、金属塩(塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等)等が挙げられる。凝固剤は、乳化剤の種類に応じて適宜選定される。例えば、乳化剤としてカルボン酸塩(脂肪酸塩、ロジン酸石鹸等)のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を用いた場合、無機酸では不十分であり、金属塩を用いる必要がある。
本発明の複合ゴム質重合体(B)を用いて上述のようにして製造される本発明のグラフト共重合体(C)の粒子径は、体積平均粒子径で通常1000nm未満である。なお、本発明のグラフト共重合体(C)の体積平均粒子径は、後述の実施例の項に記載される方法で測定される。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のグラフト共重合体(C)を含有し、通常、本発明のグラフト共重合体(C)と他の熱可塑性樹脂とを混合してなる。本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部中のグラフト共重合体(C)の含有量は、20〜60質量部が好ましい。熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(C)の含有量が20質量部未満であると、ゴム量が少なくなり、得られる成形品の耐衝撃性が低下する傾向にある。一方、熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(C)の含有量が60質量部超であると、流動性(成形性)、剛性に劣るものとなる傾向にある。
流動性と成形品の耐衝撃性、剛性、その他の物性バランスを考慮すると、本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部中のグラフト共重合体(C)の含有量は、25〜40質量部がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて他の熱可塑性樹脂や添加剤を含有していてもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン複合体などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、耐衝撃性と流動性の観点から、アクリロニトリル−スチレン共重合体が好ましい。
添加剤としては、例えば顔料、染料等の着色剤、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、難燃剤、安定剤、補強剤、加工助剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(C)と、必要に応じて他の熱可塑性樹脂や添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物を押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。
各成分の混合順序には特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、外観、耐候性に優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、外観、耐候性に優れることから、車両内外装部品、OA機器、建材などに好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品の工業的用途例としては、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング等が挙げられる。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[体積平均粒子径の測定]
実施例および比較例で製造した複合ゴム質重合体(B−1)〜(B−10)と、グラフト共重合体(C−1)〜(C−10)の体積平均粒子径(X)は、日機装社製のNanotrac UPA−EX150を用いて動的光散乱法より求めた。
また、上記と同様の方法で粒子径分布を求め、頻度上限10%の粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)とし、頻度下限10%の粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)とし、それぞれ体積平均粒子径(X)に対する比を算出した。
[凝塊物量の測定]
実施例および比較例で製造した複合ゴム質重合体(B−1)〜(B−10)と、グラフト共重合体(C−1)〜(C−10)のラテックスを100メッシュの金網で濾過し、100メッシュの金網に残った凝塊物を乾燥させて秤量し、各々、複合ゴム質重合体(B−1)〜(B−10)、グラフト共重合体(C−1)〜(C−10)に対する割合(質量%)を求めた。凝塊物量が少ないほど、複合ゴム質重合体(B−1)〜(B−10)、グラフト共重合体(C−1)〜(C−10)ラテックスの製造安定性が良好である。
[複合ゴム質重合体の製造]
以下において、複合ゴム質重合体の製造には、市販のポリエステル樹脂(A)として、
ポリエステル樹脂(A−1):東洋紡株式会社製「バイロン(登録商標)GK680」(Mn:6000、Tg:10℃)
を使用した。
なお、以下の比較例I−1では、ポリエステル樹脂(A−1)を使用しておらず、複合ゴム質重合体ではなくゴム質重合体を製造しているが、便宜上、このゴム質重合体も「複合ゴム質重合体」と記載する。
<実施例I−1:ゴム質重合体(B−1)の製造>
以下の配合でゴム質重合体(B−1)を製造した。
〔配合〕
ポリエステル樹脂(A−1) 0.5部
アクリル酸n−ブチル(BA) 99.0部
メタクリル酸アリル(AMA) 1.0部
流動パラフィン(LP) 0.6部
アルケニルコハク酸ジカリウム(ASK) 0.2部
ジラウロイルペルオキシド 0.6部
蒸留水 406部
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、アクリル酸n−ブチル、ポリエステル樹脂(A−1)を常温下で2時間撹拌させポリエステル樹脂(A−1)をアクリル酸n−ブチルに溶解させた。続いて、流動パラフィン、メタクリル酸アリル、ジラウロイルペルオキシド、蒸留水、アルケニルコハク酸ジカリウムを仕込み、常温下で(株)日本精機製作所製ULTRASONIC HOMOGENIZER US−600を用いて振幅35μmで20分間超音波処理を行うことでプレエマルションを得た。得られたラテックスの体積平均粒子径は350nmであった。
プレエマルションを60℃に加熱し、ラジカル重合を開始した。アクリル酸エステル成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。30分間75℃で維持し、アクリル酸エステル成分の重合を完結させた。製造に要した時間は90分であり、固形分19.3%、凝塊物量0.1%、体積平均粒子径(X)350nmの複合ゴム質重合体(B−1)のラテックスを得た。
<実施例I−2〜I−9、比較例I−1:複合ゴム質重合体(B−2)〜(B−10)の製造>
ポリエステル樹脂(A)、アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、乳化剤の量を表1に示す通り変更したこと以外は、実施例I−1と同様にして、それぞれ複合ゴム質重合体(B−2)〜(B−10)のラテックスを得た。
表1に複合ゴム質重合体(B−3)〜(B−10)の評価結果をまとめる。
[グラフト共重合体の製造と評価]
<実施例II−1:グラフト共重合体(C−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、以下の配合で原料を仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、攪拌しながら内温を70℃まで昇温した。
〔配合〕
水(ゴム質重合体ラテックス中の水を含む) 230部
複合ゴム質重合体(B−1)ラテックス 50部(固形分として)
アルケニルコハク酸ジカリウム 0.5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.003部
次いで、アクリロニトリル(AN)、スチレン(ST)、t−ブチルハイドロパーオキシドを以下の配合で含む混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。
〔配合〕
アクリロニトリル(AN) 12.5部
スチレン(ST) 37.5部
t−ブチルハイドロパーオキシド 0.2部
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却して、グラフト共重合体(C−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中のグラフト共重合体(C−1)の固形分は29.7%、凝塊物量は0.1%、体積平均粒子径は400nm、グラフト率は68%であった。
次いで、1.5%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(C−1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体(C−1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(C−1)を得た。
<実施例II−2〜II−9、比較例II−1:グラフト共重合体(C−2)〜(C−10)の製造>
複合ゴム質重合体(B−1)のラテックスの代りに、複合ゴム質重合体(B−2)〜(B−10)のラテックスをそれぞれ用いたこと以外は、実施例II−1と同様にして、それぞれグラフト共重合体(C−2)〜(C−10)を得た。各グラフト共重合体(C−2)〜(C−10)の体積平均粒子径、凝集物量、グラフト率は、表2に示す通りであった。
[熱可塑性樹脂組成物の製造と評価]
<実施例III−1〜III−9、比較例III−1〜III−2:熱可塑性樹脂組成物の製造>
各グラフト共重合体(C−1)〜(C−10)と、懸濁重合法によって製造したアクリロニトリル−スチレン共重合体(ユーエムジー・エービーエス(株)製「UMG AXS レジン S102N」)とを表3の配合割合でヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を240℃に加熱した押出機に供給し、混練してペレット1を得た。
またペレット1の100部とカーボンブラック0.8部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を240℃に加熱した押出機に供給し、混練して黒色ペレット2を得た。
[試験片の作製]
上記熱可塑性樹脂組成物のペレット1を用い、各々、4オンス射出成形機(日本製鋼所(株)製)にて、シリンダー温度240℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で成形して、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの棒状の成形体1を得た。
また、同様にして、熱可塑性樹脂組成物の黒色ペレット2をシリンダー温度240℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の成形体2を得た。
[評価]
<シャルピー衝撃強度の測定>
ISO 179に準拠して、23℃および−30℃雰囲気下、成形体1にてシャルピー衝撃強度を測定した。
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
ISO 1133規格に従い、220℃−98Nの条件でペレット1のMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の成形性の目安となる。
<曲げ強度および曲げ弾性率>
ISO 178規格に従い、成形体1の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。曲げ強度は成形品の機械的強度の目安であり、曲げ弾性率は成形品の剛性の目安である。
<発色性の評価>
成形体2について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて、SCE方式にて明度Lを測定した。測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度L」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
<表面光沢の測定>
スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV−5D」を用い、JIS K 7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における成形体2の表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
<成形外観>
成形体2を5枚、光学顕微鏡(倍率200倍)で観察し、100μm以上の凝塊物の個数の合計を測定し、下記基準で評価した。「○」または「◎」を成形外観は良好であるとした。
◎ 100μm以上の凝塊物の個数が0〜5個
○ 100μm以上の凝塊物の個数が6〜20個
× 100μm以上の凝塊物の個数が21個以上
<耐候性>
サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて、成形体2をブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1000時間処理した。そして、その処理前後の変色の度合い(ΔE)を色差計で測定して評価した。
ΔEが小さいほど耐候性が良好であり、○以上を耐候性があると判定した。
◎:0以上3未満。変色しておらず、成形品の意匠性を損なわない。
○:3以上5未満。ほとんど変色しておらず、成形品の意匠性を損なわない。
△:5以上10未満。わずかに変色しており、成形品の意匠性を損なう。
×:10以上。大きく変色しており、成形品の意匠性を損なう。
上記の評価結果を表3に示す。
Figure 2019026718
Figure 2019026718
Figure 2019026718
各実施例および比較例の結果から、次のことが明らかとなった。
本発明の複合ゴム質重合体(C−1)〜(C−9)を用いた実施例II−1〜II−9のグラフト共重合体(C−1)〜(C−9)は、凝塊物が少なく、このグラフト共重合体(C−1)〜(C−9)を用いた実施例III−1〜III−9の熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度(曲げ強度)、剛性(曲げ弾性率)、流動性(成形性)、光沢、成形外観に優れるものである。
一方、ポリエステル樹脂(A−1)を使用していない複合ゴム質重合体(C−10)を用いた比較例II−1のグラフト共重合体(C−10)は、ポリエステル樹脂(A)を含まないため、このグラフト共重合体(C−10)を用いた比較例III−1の熱可塑性樹脂組成物は、曲げ弾性率、表面光沢、成形外観において不十分となり、比較例II−2のように、グラフト共重合体(C−10)の配合量を減らした場合は、機械的強度(曲げ強度)、剛性(曲げ弾性率)は若干改善されるが、耐衝撃性、成形外観が不十分となった。
本発明の複合ゴム質重合体(B)を用いた本発明のグラフト共重合体(C)を含む本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形性に優れ、また、その成形品は、耐衝撃性、低温耐衝撃性、機械的強度、剛性、成形外観、耐候性が良好なものである。この耐衝撃性、剛性、成形外観、耐候性のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品に比べて非常に優れているので、本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、各種工業用材料としての利用価値が極めて高い。

Claims (11)

  1. ポリエステル樹脂(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(a)単位および架橋剤(b)単位を含むゴム成分とが複合化されてなる複合ゴム質重合体(B)。
  2. ポリエステル樹脂(A)が非結晶性ポリエステル樹脂である請求項1に記載の複合ゴム質重合体(B)。
  3. ポリエステル樹脂(A)の存在下に(メタ)アクリル酸エステル(a)と架橋剤(b)とを重合してなる請求項1または2に記載の複合ゴム質重合体(B)。
  4. 体積平均粒子径(X)をXで表し、粒子径分布曲線における上限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)としてYで表し、粒子径分布曲線における下限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)としてZで表したとき、体積平均粒子径(X)、頻度上限10%体積粒子径(Y)および頻度下限10%体積粒子径(Z)が、以下の(1)または(2)を満たす請求項1なしい3のいずれか1項に記載の複合ゴム質重合体(B)。
    (1)体積平均粒子径(X)がX<300nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.6X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.7Xである。
    (2)体積平均粒子径(X)がX=300〜800nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.7X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.6Xである。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してなるグラフト共重合体(C)。
  6. 請求項5に記載のグラフト共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
  8. ポリエステル樹脂(A)、(メタ)アクリル酸エステル(a)、架橋剤(b)、疎水性物質、乳化剤、および水を含む混合物をミニエマルション化するミニエマルション化工程と、得られたミニエマルションを重合する重合工程とを含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の複合ゴム質重合体(B)の製造方法。
  9. 請求項8に記載の製造方法で得られた複合ゴム質重合体(B)に、(メタ)アクリル酸エステル(a)、芳香族ビニル(c)、およびシアン化ビニル(d)から選ばれる少なくとも1種のビニル単量体をグラフト重合してグラフト共重合体(C)を得ることを特徴とするグラフト共重合体(C)の製造方法。
  10. 請求項9に記載の製造方法で得られたグラフト共重合体(C)を用いた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
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