本発明の粘着剤組成物は、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)とポリオキシアルキレン鎖(a2)とを有する含フッ素化合物(A)を用いることを特徴とする。
一般に、粘着剤に対して、フッ素原子やケイ素原子を有する化合物や、長鎖アルキル基を有する化合物などを併用することにより、その粘着力を下げることができることについては、よく知られていることである。しかしながら、そのような一般的に知られている化合物、特には離型剤、界面活性剤として公知の化合物において、少ない添加量でも粘着力の調整が容易であり、長期保存の後でも粘着力の亢進が少なく、剥離性も優れ、また剥離時の制電性も良好である化合物の詳細な構造についてまで深く検討されたものは今まで見出されていない。
本発明ではこのような課題に対して検討した結果、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)とポリオキシアルキレン鎖(a2)とを有する含フッ素化合物(A)を用いることが有効な解決手段であることを見出したものである。
前記含フッ素化合物(A)中の炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)は、フッ素原子が直接結合している炭素原子の数が1〜6の範囲であることを示し、炭素原子に結合する原子の一部が水素原子であってもよく、またアルキル基としては分岐状、直鎖状のいずれであってもよい。また、複数の前記フッ素化アルキル基(a1)がエーテル結合、チオエーテル結合あるいはフッ素原子を有さないアルキレン鎖によって連結してなる構造であってもよい。
これらの中でも、粘着剤の粘着力の調整が容易であり、また剥離時ののり残り等が効果的に抑制できる観点から、フッ素原子が直接結合している炭素原子の数が3〜6の範囲であることが好ましく、4又は6であることがより好ましい。また、同様の観点から水素原子を含まないパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。さらに含フッ素化合物(A)としては、1分子中に前記フッ素化アルキル基(a1)が2個以上含まれるものであることがより粘着力の調整が容易である観点から好ましいものである。
前記含フッ素化合物(A)中のポリオキシアルキレン鎖(a2)としては特に限定されるものではなく、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の炭素数1〜6のアルキレン鎖がエーテル結合によって複数連結されているものであればよく、アルキレン鎖の構造としては、直鎖状であっても分岐状のものであってもよい。特に後述する含フッ素化合物(A)の合成において、原料入手が容易である観点、及び得られる含フッ素化合物(A)を用いてなる粘着剤組成物を粘着層としたときの剥離時における制電性の観点から、炭素数2〜3のアルキレン鎖がエーテル結合を介して複数連結してなるポリオキシアルキレン鎖であることが好ましい。
さらにポリオキシアルキレン鎖(a2)の繰り返し数としては5〜50の範囲であることが好ましい。尚、炭素数の異なるユニットがエーテル結合にて結合される場合、その形式はブロックであってもランダムであってもよく、前記繰り返し数はそれぞれのユニットの合計において、前記範囲であることが好ましい。
前記含フッ素化合物(A)中のフッ素原子含有率は特に限定されるものではないが、後述する粘着剤(B)との相溶性、粘着力の調整容易性、及び製造上の容易性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、更に5〜30質量%の範囲であることが好ましい。尚、フッ素原子含有率は原料の仕込み比より算出できるものであるが、含フッ素化合物(A)の燃焼イオンクロマトグラフィーによって実測することもできる。本発明では後者の実測値において、前記範囲であることが好ましい。
また前記含フッ素化合物(A)の重量平均分子量としては、特に限定されるものではないが、後述する粘着剤(B)との相溶性、粘着力の調整容易性、及び剥離時の制電性の観点等から、3,000〜300,000の範囲であることが好ましく、特に3,000〜200,000の範囲であることが好ましく、5,000〜100,000の範囲であることが大面積の光学部材等の表面保護フィルムとして使用した際の剥離力の均一性の観点から最も好ましいものである。
尚、本発明における重量平均分子量については、下記条件のゲルパーミュレーションクロマトグラフィ(GPC)にて測定した値である。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR−H」(6.0mmI.D.×4cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)+東ソー株式会社製「TSK−GEL GMHHR−N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:ELSD(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC−8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
東ソー株式会社製「F−550」
本発明で用いる含フッ素化合物(A)は、前述のように炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)とポリオキシアルキレン鎖(a2)とを有するものであるが、特に粘着剤との相溶性が良好で、粘着剤の粘着力調整が容易である観点より、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)と活性水素とを有する化合物(x1)と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)と(メタ)アクリロイル基(a3)とを有する化合物(x2)とのマイケル付加物(A−1)、又はフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)と、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x4)とを必須の原料とする共重合体(A−3)であることが好ましい。
特に前記マイケル付加物(A−1)としては、下記一般式(5)
〔式中、Rfはそれぞれ−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、Yはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R3はそれぞれ−(CH2)t−、又は−(CH2)u−SO2−NR−(CH2)t−(式中、tは1又は2であり、uは0又は2であり、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基である。)であり、R’はポリオキシアルキレン鎖の末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキシアルキレン基であり、複数あるRf、R3、Yは同一でも異なっていてもよい。〕
で表される化合物(A−2)であることが好ましい。
さらに、前記共重合体(A−3)としては、前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)が、下記一般式(7)
〔式中、Rfはそれぞれ−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、R5はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン鎖又は直接結合であり、Y1はそれぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は−SO2−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基である。)であり、R6は水素原子又はメチル基であり、wは1〜3の整数であり、複数あるRf、R5、Y1は同一でも異なっていてもよい。〕
で表される含フッ素ウレタン(メタ)アクリレート(x5)を用いたものであることが好ましい。
まず、炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)と活性水素とを有する化合物(x1)と、ポリオキシアルキレン鎖(a2)と(メタ)アクリロイル基(a3)とを有する化合物(x2)とのマイケル付加物について記載する。
前記炭素数1〜6のフッ素化アルキル基(a1)と活性水素とを有する化合物(x1)としては、例えば、下記一般式(1)
Rf(CH2)mZH (1)
〔式中、mは0〜20の整数であり、Rfは−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、Zは酸素原子、硫黄原子、−NR−又は−SO2−NR−(但し、Rは水素原子、又は炭素数1〜24の炭化水素基である。)である。〕で表される化合物、又は下記一般式(2)
〔式中、Yは酸素原子または硫黄原子であり、pとqはそれぞれ0〜4の整数であり、Rfはそれぞれ−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、Lはそれぞれ直接結合、カルボニル基、カルボニル基を有する炭素原子数1〜4の炭化水素基又は炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、複数あるRf、Lは同一でも異なっていてもよい。〕
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(1)で表わされる化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
C4F9SO2N(CH3)H
C4F9SO2N(C3H7)H
C4F9CH2CH2N(C8H17)H
C4F9CH2CH2SH
C4F9CH2CH2OH
C6F13CH2CH2SO2N(C8H17)H
C6F13CH2CH2SH
C6F13CH2CH2N(C4H9)H
また前記一般式(2)で表される化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
前記一般式(2)で表される化合物の製造方法としては、例えば、2−ヒドロキシコハク酸(以下、リンゴ酸と記す。)、2−メルカプトコハク酸(以下、チオリンゴ酸と記す。)にフッ素化アルキル基含有アルコールまたはフッ素化アルキル基含有メルカプタンを反応させてジエステル体とする方法が挙げられる。具体的には下記反応式に従って合成可能である(例えば、特開2004−292658号公報参照)。
前記ポリオキシアルキレン鎖(a2)と(メタ)アクリロイル基(a3)とを有する化合物(x2)としては、例えば、下記一般式(3)
〔式中、R’はポリオキシアルキレン鎖の末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキシアルキレン基であり、R1は(メタ)アクリロイル基であり、R2は水素原子又は炭素原子数1〜18のアルキルカルボニル基であり、rは1〜3の整数であり、sは0〜2の整数であって、r+s=3である。〕
で表される化合物(x2−1)、又は下記一般式(4)
R1O−R’’−OR1 (4)
〔式中、R1は同一又は異なる(メタ)アクリロイル基であり、R’’はオキシアルキレン鎖である。〕
で表される化合物(x2−2)が挙げられる。尚、本発明において(メタ)アクリロイル基はアクリロイル基とメタクリロイル基の一方あるいはその混合物の総称として用いる。
前記化合物(x2−1)、(x2−2)としては、例えば、エチレンオキシド(以下EOと略す)変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製RCC13−361等)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−100)、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製フォトマー4160等)、プロピレンオキシド(以下、POと略す)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−9003等)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−200等)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADP−200等)、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール−ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADCシリーズ等)、ポリテトラメチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPTMGA−250等)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレート3EG−A)、EO変性グリセロールアクリレート(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアGE3A等)、PO変性グリセロールトリアクリレート(例えば、荒川化学株式会社製ビームセット720)、EO変性リン酸トリアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート3A)、(EO)或いは(PO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアTMP−3P等)等が挙げられる。
これらは単独での使用、或いは(メタ)アクリロイル基数が異なる複数の化合物を混合して用いても、更に、構造も異なる複数の化合物を混合して用いても良い。また、一般に市販入手可能な前記化合物としては、主成分となる目的化合物に対して(メタ)アクリロイル基数の異なる化合物の混合物であることが多い。使用に際しては、各種クロマトグラフィー、抽出等の精製方法で目的とする(メタ)アクリロイル基数の化合物を取り出して用いてもよいが、混合物のまま用いてもよい。
更に下記一般式で表されるポリオキシアルキレン鎖含有(メタ)アクリレートを用いてもよい。
〔式中、Aは、酸素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、これらが単独で、あるいは複数組み合わさってなる二価の連結基であり、R6は水素原子又はメチル基であり、R’はポリオキシアルキレン鎖の末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキシアルキレン基である。〕
前記ポリオキシアルキレン鎖含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリオキシアルキレンアクリレート、又は、ポリオキシアルキレンメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名”プルロニック”[Pluronic(旭電化工業株式会社製)、アデカポリエーテル(旭電化工業株式会社製)”カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、”トリトン”[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))、P.E.G(第一工業製薬株式会社製)として販売されているものを種々の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリド、無水アクリル酸または無水メタクリル酸等と反応させることによって製造することができ、又、種々の製法で得られるポリオキシアルキレンジアクリレート等を用いることもできる。
市販品の(メタ)アクリレートとしては、例えば、日本油脂株式会社製の水酸基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどがあげられる。これらのポリオキシアルキレン鎖含有(メタ)アクリレートとしては、1種類だけを用いても構わないし、2種類以上を併用しても良い。
前記化合物(x1)と前記化合物(x2)との反応は、通常のマイケル付加反応の方法に従えば良く、フッ素原子を有することによる特別の配慮は特に必要ではなく、無溶媒でも溶媒存在下でも製造できる。溶媒を使用する場合には、前記化合物(x1)及び前記化合物(x2)の溶解性、沸点、使用する設備等を考慮し適宜、選択されるものであるが、具体的には、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略記する。)等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素類等が挙げられ、単独でも2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。これらの中でもエステル類、芳香族系炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エーテル類、ジメチルホルムアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を用いることが好ましく、エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類を用いることが特に好ましい。
この反応は、無触媒で行うことも可能であるが、反応効率の面から、適宜、触媒等の反応助剤を選択して使用することも可能である。前記反応助剤として、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコラート類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ−[2.2.2]−オクタン等のアミン類;水素化ナトリウム、水素化リチウム等の金属水素化物類;ベンジルトリメチルアンモニウム・ヒドロキシド、テトラアンモニウム・フルオライド等のアンモニウム塩;過酢酸等の過酸化物等が挙げられ、好ましくは金属アルコラート類、アミン類、アンモニウム塩であり、特に好ましくはアミン類である。前記反応助剤の使用量としては、特に制限されるものではないが、原料として用いる前記化合物(x1)1モルに対して0.01〜50モル%、好ましくは0.1〜20モル%である。
さらに、用いる化合物(x1)及び化合物(x2)によっては、熱も反応活性化エネルギー源として単独使用または併用使用することが可能である。反応温度としては通常、0℃〜還流温度であり、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜70℃である。反応時、溶媒などを使用した場合、溶質濃度としては通常2〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%である。反応資材の投入順序としては特に制限されない。このようにして得られた生成物は、抽出などによる洗浄、およびカラムクロマトグラフィー等で精製して使用することも可能であるが、そのまま使用することも可能である。特に(メタ)アクリロイル基数の多い化合物(x2)を用いた場合には、前記化合物(x1)が付加する場所を制御することは通常困難であり、付加した場所が異なる種々の化合物からなる混合物であるマイケル付加物が得られるが、この場合においても、単離・精製によって単一物質を取り出す必要はなく、マイケル付加反応の位置が異なる種々の化合物からなる混合物として使用することが可能である。
以上の如く、前記化合物(x1)と、前記化合物(x2)とのマイケル付加反応を経由することで、強酸触媒などを必要とした縮合反応を経ることなく、より簡便且つ穏和な条件下で本発明で用いる含フッ素化合物(A−1)を製造できる。また、現在市販品として入手が容易である、或いは合成が容易である様々な多官能(メタ)アクリレートを出発原料として使用することが可能であるため、用途また要求特性に対して、構造或いは1分子中のフッ素原子含有率を適宜調整するといった変更が容易であり、より有効な製造方法といえる。
前記にて合成されるマイケル付加物の中でも、下記一般式(5)
〔式中、Rfはそれぞれ−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、Yはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R3はそれぞれ−(CH2)t−、又は−(CH2)u−SO2−NR−(CH2)t−(式中、tは1又は2であり、uは0又は2であり、Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基である。)であり、R’はポリオキシアルキレン鎖の末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキシアルキレン基であり、複数あるRf、R3、Yは同一でも異なっていてもよい。〕
で表される化合物(A−2)であることが、後述する粘着剤との相溶性、粘着力の調整の容易性の観点から好ましい化合物である。
前記化合物(A−2)で表される化合物としては、例えば、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
本発明で用いる含フッ素化合物(A)としては、前述のようにフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)と、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x4)とを必須の原料とする共重合体(A−3)であってもよい。
前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)としては、例えば、下記式(x3−1)で表されるようなビニルエーテルタイプのものであっても、下記式(x3−2)で表されるようなフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートであってもよい。
〔式中、A’は、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、これらが単独で、あるいは複数組み合わさってなる二価の連結基であり、Aは、酸素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、これらが単独で、あるいは複数組み合わさってなる二価の連結基であり、R6は水素原子又はメチル基であり、Rfは−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)である。〕
また、前記ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x4)としても、下記(x4−1)で表されるようなビニルエーテルタイプであっても、前記したポリオキシアルキレン鎖含有(メタ)アクリレートであってもよい。
〔式中、A’は、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、これらが単独で、あるいは複数組み合わさってなる二価の連結基であり、Aは、酸素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、または置換基を有してもよい炭素数6〜24のアラルキル基であり、これらが単独で、あるいは複数組み合わさってなる二価の連結基であり、R6は水素原子又はメチル基であり、R’はポリオキシアルキレン鎖の末端が水素原子又はアルキル基であるポリオキシアルキレン基である。〕
ビルエーテルタイプの単量体を共重合させる右方としては特に限定されるものではないが、ラジカル重合反応を用いたラジカル重合法が好ましく、フリーラジカル重合法が好ましい。
前記フリーラジカル重合法は、例えば、ビニルエーテルタイプの単量体の混合物を有機溶剤中、開始剤を使用して重合させる方法が挙げられる。ここで用いる有機溶媒としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、沸点、相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。
前記開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、イオン性開始剤およびレドックス開始剤等が挙げられる。
本発明で用いる含フッ素化合物(A)として好適なものが得られる観点からは、前記フッ素原子含有のビニルエーテルと、オキシアルキレン鎖含有のビニルエーテルとを、モル比〔前者/後者〕で10/90〜60/40となる割合で反応させることにより得られるものが好ましく、20/80〜50/50となる割合反応でさせることにより得られるものがより好ましい。
また、前記フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)としては、下記一般式(7)
〔式中、Rfはそれぞれ−CnF2n+1(但し、nは1〜6の整数である。)であり、R5はそれぞれ独立して、炭素原子数1〜3のアルキレン鎖又は直接結合であり、Y1はそれぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又は−SO2−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜24の炭化水素基である。)であり、R6は水素原子又はメチル基であり、wは1〜3の整数であり、複数あるRf、R5、Y1は同一でも異なっていてもよい。〕
で表される含フッ素ウレタン(メタ)アクリレート(x5)であると、後述する粘着剤(B)、特にはアクリル系粘着剤(b1)又はウレタン系粘着剤(b2)との相溶性が良好であって、粘着層を形成したときの透明性も維持でき、また粘着力の調整も容易となる観点から好ましいものである。
前記一般式(7)で表される単量体は、例えば、下記式で表される水酸基を有するフッ素化合物と、イソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させることにより得られる。
(式中のRf、R5、Y1は前記と同じである。)
前記式で表される水酸基を有するフッ素化合物の具体例としては、下記のものが挙げられる。
前記一般式(3)中のRf−R5−Y1の具体例としては、CF3CH2O−、C2F5CH2O−、C3F7CH2O−、C4F9CH2O−、C5F11CH2O−、C6F13CH2O−、C4F9CH2CH2O−、C6F13CH2CH2O−、C4F9CH2CH2S−、C6F13CH2CH2S−、CF3SO2N(CH3)−、CF3SO2N(C2H5)−、C2F5SO2N(C3H7)−、C3F7SO2N(C4H9)−、C3F7OCF(CF3)CH2O−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2O−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2O−、C3F7OCF(CF3)CH2CH2O−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2O−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2O−、C3F7OCF(CF3)CH2CH2S−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2S−、C3F7OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2CH2S−等が挙げられ、より具体的な例として、下記式で表わされる化合物が挙げられる。
前記式で表される水酸基を有するフッ素化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平1−193236号公報、特開平9−67334号公報、特開2002−3428号公報等に記載の方法により製造することができる。
前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、下記式で表される化合物が挙げられる。
(式中のR6は、水素原子又はメチル基を表し、A’’は、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表す。)
前記式中のA’’は、炭素原子数2〜3のアルキレン基を表すが、具体的には、エチレン基(−CH2CH2−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、又は分岐したプロピレン基(−CH2CH(CH3)−、−CH(CH3)CH2−)が挙げられる。
前記式で表される化合物の具体例としては、例えば、下記式で表わされる化合物が挙げられる。
上記の化合物の中でも、前記式中のA’’がエチレン基である2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。
前記水酸基を有するフッ素化合物と、前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応させる際には、前記水酸基を有するフッ素化合物1モルに対して、前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを、0.80〜1.20モルになるように仕込むのが好ましく、より好ましくは0.98〜1.00モルとなるように仕込むのがよい。
また、この反応(ウレタン化反応)においては、前記水酸基を有するフッ素化合物の2級水酸基と前記イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの末端イソシアネート基の反応を促進させるために、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類;ジブチルスズジラウリレート、ジオクチル錫ジラウリレート等のジラウリレートを触媒として用いることができる。触媒の添加量は、反応混合物全体に対して0.001〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.1質量%である。反応時間は1〜10時間が好ましい。また反応温度は30〜120℃が好ましく、より好ましくは30〜100℃である。
前記反応は無溶剤あるいは、イソシアネート基に不活性なアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の溶剤を反応溶剤として用いることができる。
上記の合成により得られる含フッ素化合物の具体例としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
本発明で用いる含フッ素化合物(A)は、前述の含フッ素ウレタン(メタ)アクリレート(x5)と、ポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体を必須成分とした共重合体であることが好ましいものであるが、このポリオキシアルキレン鎖を有するエチレン性不飽和単量体は、前述したものをいずれも好適に用いることができる。
また、これら必須の単量体に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の単量体を共重合体の原料として併用してもよい。また、この単量体としては、2種以上を併用してもよい。
前記他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等が挙げられる。
より具体的には、アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、クロルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。メタクリル酸エステル類としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、クロルエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等が挙げられる。アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルアクリルアミド等が挙げられる。メタクリルアミド類としては、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの、例えばメチル基、エチル基、プロピル基)、N,N−ジアルキルメタクリルアミド(アルキル基としては炭素原子数1〜3のもの)、N−ヒドロキシエチル−N−メチルメタクリルアミド、N−2−アセトアミドエチル−N−アセチルメタクリルアミド等が挙げられる。
アリル化合物としては、アリルエステル類(例えば、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリルなど)、アリルオキシエタノール等が挙げられる。ビニルエーテル類としては、アルキルビニルエーテル(例えば、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、1−メチル−2,2−ジメチルプロピルビニルエーテル、2−エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等、ビニルエステル類:ビニルビチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレート、ビニルカプロエート、ビニルクロルアセテート、ビニルジクロルアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルラクテート、ビニル−β−フェニルブチレート、ビニルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。イタコン酸ジアルキル類としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。フマール酸のジアルキルエステル類又はモノアルキルエステル類としては、ジブチルフマレート等、その他、クロトン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、マレイロニトリル、スチレン等も挙げられる。
前記共重合体を合成する際に、用いる単量体類の使用割合としては、特に限定されるものではないが、単量体類の合計100質量部中、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体(x3)が5〜90質量部含まれていることが好ましく、特に10〜80質量部含まれていることが好ましく、10〜70質量部含まれていることが最も好ましい。また、ポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体(x4)が10〜95質量部含まれることが好ましく、特に15〜80質量部含まれていることが好ましい。
前記共重合体は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できるが、特にラジカル重合法が簡便であり、工業的に好ましい。例えば、単量体混合物を有機溶媒中、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。用いる単量体の重合性に応じ、反応容器に単量体類と開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成の共重合体を得るために有効である。
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3等の金属キレート化合物、リビングラジカル重合を引き起こす遷移金属触媒等が挙げられる。さらに必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いることができる。
重合は、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも行うことができるが、作業性の点から溶剤存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−オキシプロピオン酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ−n−ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。これらは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
本発明で用いる粘着剤(B)としては、粘着性を有するものであれば、特に制限なく使用できる。例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することもでき、中でも、アクリル系粘着剤(b1)、ウレタン系粘着剤(b2)を用いることが好ましい。
前記アクリル系粘着剤(b1)を構成する(メタ)アクリル系ポリマーは、これを構成する原料モノマーとして、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主モノマーとして用いることができる。前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を主成分として使用することができる。前記炭素数が1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体(被保護体)に対する粘着力を低く制御することが容易となり、軽剥離性や再剥離性に優れた表面保護フィルムが得られる。本発明における「主成分」とは、構成する成分全量中、最も多い成分を意味し、好ましくは、40質量%を超え、より好ましくは、50質量%を超え、更に好ましくは、60質量%を超えることをいう。
前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数6〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは被着体への粘着力を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる観点から好ましい。
特に、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは、60質量%以上、更に好ましくは、70〜99質量%、最も好ましくは80〜97質量%である。
また、前記アクリル系粘着剤を構成する前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。
前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋などを制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と剥離における粘着力の低減とのバランスを制御しやすく、また帯電防止の観点からも好ましい。
前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。特にアルキル基の炭素数が4以上のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることで高速剥離時の軽剥離化が容易となり好ましい。
前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、15質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは、1〜13質量部、更に好ましくは、2〜10質量部であり、最も好ましくは3〜8質量部である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
また、その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、Tgが0℃以下(通常−100℃以上)になるようにして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを使用することができる。
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部未満がさらに好ましく、0.2質量部未満がさらにより好ましく、最も好ましくは、0.01質量部以上0.1質量部未満である。前記範囲内であれば、粘着力の経時での上昇を防止でき(粘着力上昇防止性)、好ましい。
また、特に剥離帯電特性と粘着力上昇防止性を両立させる目的で、前記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと前記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを併用して用いることも可能である。
更に、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、特に限定することなく用いることができる。たとえば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどの粘着力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分を適宜用いることができる。中でも、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及び、N−アクリロイルモルホリンなどの窒素含有モノマーを用いることが好ましい。窒素含有モノマーを用いることにより、浮きや剥がれなどが生じない適度な粘着力を確保でき、更にせん断力に優れた表面保護フィルムを得ることができるため、有用である。これら重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレンなどが挙げられる。
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどが挙げられる。
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどが挙げられる。
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、前記炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して、0〜40質量部であることが好ましく、0〜30質量部であることが、良好な再剥離性を適宜調節することができる観点から好ましい。
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、更に、モノマー成分としてアルキレンオキシド基含有反応性モノマーを含有してもよい。
また、前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位の平均付加モル数としては、1〜40であることが好ましく、3〜40であることがより好ましく、4〜35であることがさらに好ましく、5〜30であることが特に好ましい。前記平均付加モル数が1以上の場合、被着体(被保護体)の汚染低減効果が効率よく得られる傾向がある。また、前記平均付加モル数が40より大きい場合、粘着剤組成物の粘度が上昇して塗工が困難となる傾向がある。なお、オキシアルキレン鎖の末端は、ヒドロキシル基のままや、他の官能基などで置換されていてもよい。
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分全量中20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがより一層好ましく、4質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましく、1質量%以下であることがなお好ましい。
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位としては、炭素数1〜6のアルキレン基を有するものがあげられ、たとえば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などがあげられる。オキシアルキレン鎖の炭化水素基は直鎖でもよく、分岐していてもよい。
また、前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーがエチレンオキシド基を有する反応性モノマーであることがより好ましい。エチレンオキシド基を有する反応性モノマーを有する(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと含フッ素化合物との相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、低汚染性の粘着剤組成物が得られやすい。
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物や、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などの反応性置換基を有する反応性界面活性剤などがあげられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物の具体例としては、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。
また、前記反応性界面活性剤の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリロイル基またはアリル基を有するアニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、カチオン型反応性界面活性剤などがあげられる。
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)としては、10万〜500万が好ましく、より好ましくは20万〜200万、さらに好ましくは30万〜80万である。重量平均分子量が10万より大きい場合は、粘着剤層の凝集力が適正になり糊残りを抑制する傾向がある。一方、重量平均分子量が500万以下の場合は、ポリマーの流動性が適正で、被着体への濡れが十分となり、被着体と表面保護フィルムの粘着剤層との間に発生するフクレ発生を抑制できる。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、より好ましくは−10℃以下である(通常−100℃以上)。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、濡れが不十分となる傾向がある。特にガラス転移温度を−61℃以下にすることで濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤層が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体(被保護体)への低汚染性など特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
前記粘着剤としてウレタン系粘着剤(b2)を使用する場合、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。このようなウレタン系粘着剤としては、好ましくは、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られるウレタン樹脂(ウレタン系ポリマー)からなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記粘着剤層にシリコーン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。このようなシリコーン系粘着剤としては、好ましくは、シリコーン樹脂(シリコーン系ポリマー、シリコーン成分)をブレンドまたは凝集させることにより得られるものを採用し得る。
また、前記シリコーン系粘着剤としては、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤や過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が挙げられる。これらのシリコーン系粘着剤の中でも、過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)を使用せず、分解物が発生しないことから、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤が好ましい。
前記付加反応硬化型シリコーン系粘着剤の硬化反応としては、例えば、ポリアルキルシリコーン系粘着剤を得る場合、一般的に、ポリアルキル水素シロキサン組成物を白金触媒により硬化させる方法が挙げられる。
本発明における粘着剤組成物は、前述の含フッ素化合物(A)と粘着剤(B)とを必須とすればよく、その配合比率については、所望の粘着力に応じて適宜設定することができるが、特に表面保護フィルムとしての機能発現が容易である観点から、前記含フッ素化合物(A)の含有率が、粘着剤組成物の固形分中、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
本発明における粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、各種添加剤等を任意に含むことができる。
例えば、オキシアルキレン鎖を有するオルガノポリシロキサンは粘着剤表面の表面自由エネルギーが低下し、軽剥離化を実現しうるものとして、併用することができる。ポリオキシアルキレン鎖含有化合物は、特に、光学部材から表面保護フィルムを剥離後、光学部材に別の部材を接着剤や粘着剤で接着させる場合には、接着剤や粘着剤の濡れ性を向上させることができることから、好ましく用いることができる。
更に粘着剤組成物には、架橋剤を含有させることが好ましい。例えば、前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有する場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた粘着剤層を容易に得ることができる。
前記架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などを用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
前記イソシアネート化合物としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、武田薬品工業社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、日本ポリウレタン工業社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた積層フィルムを得ることができる。
また、前記イソシアネート化合物として、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いる場合には、両化合物の配合比(質量比)としては、[2官能のイソシアネート化合物]/[3官能以上のイソシアネート化合物](質量比)が、0.1/99.9〜50/50で配合することが好ましく、0.1/99.9〜20/80がより好ましく、0.1/99.9〜10/90がさらに好ましく、0.1/99.9〜5/95がより好ましく、0.1/99.9〜1/99が最も好ましい。前記範囲内に調整して配合することにより、粘着性と耐反発性に優れた粘着剤層となり、好ましい態様となる。
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学社製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミンなどがあげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)などがあげられる。
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。
前記架橋剤の含有量は、例えば、前記アクリル系粘着剤(b1)に使用される前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01〜20質量部含有されていることが好ましく、0.1〜15質量部含有されていることがより好ましく、0.5〜10質量部含有されていることがさらに好ましく、1.0〜6質量部含有されていることが最も好ましい。この範囲で架橋剤を用いることにより、得られる粘着剤層の凝集力が適正であり、十分な耐熱性が得られやすく、また糊残りも抑制される。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
更に粘着剤組成物には、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるための架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えばジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズなどのスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(5−メチルヘキサン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(オクタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(6−メチルヘプタン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−2,4−ジオナト)鉄、トリス(ノナン−4,6−ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)鉄、トリス(トリデカン−6,8−ジオナト)鉄、トリス(1−フェニルブタン−1,3−ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−n−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−sec−ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸−tert−ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄などの鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001〜1質量部とすることが好ましく、0.001〜0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
本発明の積層フィルムは、前記粘着剤組成物からなる粘着層を基材層の少なくとも片方に積層してなるものである。その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材などに転写することも可能である。
また、基材上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物(溶液)を基材に塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を基材上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を基材上に塗布して積層フィルムを作製する際には、基材上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
また、本発明の積層フィルムを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着テープ類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
本発明の積層フィルムは、通常、前記粘着剤層の厚みが3〜100μm、好ましくは5〜50μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と接着性のバランスを得やすいため、好ましい。
また、本発明の積層フィルムは、総厚みが、1〜400μmであることが好ましく、10〜200μmであることがより好ましく、20〜100μmであることが最も好ましい。前記範囲内であると、粘着特性(再剥離性、接着性など)、作業性、外観特性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記総厚みとは、基材、粘着剤層、帯電防止層、及び、帯電防止層などの全ての層を含む厚みの合計を意味する。
本発明の積層フィルムを形成する基材層としては、特に限定されるものではないが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れたものを使用することが好ましい。特に、基材が可撓性を有することにより、ロールコーターなどによって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
前記基材として用いることができるものは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを挙げることができる。前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる基材であってもよい。
前記基材としては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、表面保護フィルムの基材として、好ましい特性を有する。
前記基材を構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。また基材として用いるフィルムの表面を、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。
更に本発明の積層フィルムは、基材上に帯電防止層を有していてもよく、前記基材として、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。前記基材を用いることにより、剥離した際のフィルム自身の帯電が抑えられるため、好ましい。また、基材がプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、積層フィルム自身の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法等があげられる。帯電防止剤を使用する際には、滑剤を併用することもできる。
前記基材層の厚みとしては、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記基材層の厚みが、前記範囲内にあると、被着体への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
本発明の積層フィルムには、必要に応じて粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。
前記セパレーターを構成する材料としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
本発明の積層フィルムは、光学部材等の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。本発明の積層フィルムは、帯電防止性や剥離帯電圧の経時安定性に優れるため、加工、搬送、出荷時等の表面保護用途に使用できるため、偏光板等の光学部材の表面を保護するために、有用なものとなる。特に静電気が発生しやすいプラスチック製品などに用いることができるため、帯電が特に深刻な問題となる光学・電子部品関連の技術分野において、帯電防止用途にも有用である。
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明や表中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準であり、固形分又は有効成分を示すものである。
尚、実施例における評価は、下記に従って行った。
<180°剥離力測定>
ガラス板に、得られた積層フィルムをそれぞれ2kgfローラー1往復で圧着して貼り付け、貼付してから30分経過後に、テンシロン引張試験機RTC−1210A(商品名:エーアンドディー製)を用い、剥離力を測定した。測定条件は、下記の通りである。
・引張速度:0.3m/min
・剥離方向:180°
・試料サイズ:25mm×70mm
・測定温度湿度環境: 23℃×50%RH
JIS Z0237−2000(粘着テープ・粘着シート試験方法)準拠
合成例1
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、下記式(1−1−1)で表されるエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体30g、アクリル酸2.8g、溶媒としてトルエン64g、重合禁止剤としてフェノチアジン0.03g及び触媒としてメタンスルホン酸0.6gを仕込み、空気気流下にて攪拌を開始し、120℃へ加熱、還流脱水した。0.63gの脱水を確認後、65℃へ冷却し、トリエチルアミンにて中和した。中和後、85℃へ昇温し、イオン交換水2.3gを加え、分液、下層抜き出しを行った。下層のpHを測定し、pHが7以上となるまで、洗浄操作を繰り返し実施した。冷却後、トルエンにて希釈し、下記式(1−1−1)〜(1−1−3)で表される3種の混合物(1−1)を55質量%含むトルエン溶液を得た。
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、トルエン190.0gを加え、窒素気流中、撹拌しながら105℃に昇温した。ついで、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート27.1g、前記で得られた混合物(1−1)123.2g及びトルエン62.7gを混合させた滴下液、tert−ブチル=2−エチルペルオキシヘキサノアート71.2gをトルエン190.0gに溶解させた滴下液をそれぞれ滴下装置にセットし、フラスコ内を105℃に保ちながら両滴下液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で10時間攪拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を留去し、含フッ素化合物(1)を得た。重量平均分子量(Mw、東ソー(株)製標準ポリスチレン換算)=6,700であった。
合成例2
2−(パーフルオロヘキシル)−エタノール80.1g(0.22mol)、エピクロロヒドリン9.3g(0.10mol)、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド1.1g(0.005mol)及び水酸化ナトリウム6.0g(0.15mol)を65℃で6時間反応させた。反応終了後、ジイソピロピルエーテル100mlを加え不溶物をろ過した。ろ液を濃縮し、残分を減圧蒸留し無色油状の生成物(2−1)46.2g(0.06mol)を得た。
メチルイソブチルケトン(MIBK)200mlに前記で得られた生成物(2−1)46.2g(0.06mol)、2−イソシアナトエチルメタクリレート(9.31g、0.06mol、昭和電工株式会社製、カレンズMOI)、メトキノン0.05g及びジブチル錫ジラウレート0.05gを加え、70℃で4時間反応した。減圧下MIBKを留去し、下記構造式で表される化合物(2−2)を得た。
撹拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコに、MIBK302.3gを加え、窒素気流中、撹拌しながら90℃に昇温した。化合物(2−2)を170.8g、ヒドロキシポリ(オキシエチレン)のモノメタクリレート(新中村化学工業株式会社製「NKエステル M−230G」)101.3gおよびジシクロペンタニルアクリレート(日立化成株式会社製「ファンクリル FA−513A」)30.2gをMIBK234.5gに溶解した滴下液、重合開始剤2,2’−アゾビス(イソ酪酸ジメチル))(和光純薬工業株式会社製「MAIB」)15.1gをMIBK136.0gに溶解させた滴下液をそれぞれ滴下装置にセットし、フラスコ内を90℃に保ちながら両滴下液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃で4時間攪拌した後、110℃で3時間攪拌した。30℃に冷却後、MIBKにて希釈し、含フッ素化合物(2)を30質量%含む溶液を得た。この共重合体をゲルパーミエーショングラフにより分析した結果、重量平均分子量Mw=9,700であった。
実施例1
ウレタン型粘着剤(APU−505:DIC社製)の固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてD−100K(DIC社製)を5.5部および前記で得られた含フッ素化合物(1)を0.5部添加し、酢酸エチルで固形分が50%となるように希釈し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。該粘着剤組成物を粘着層厚が60μmになるように、基材である60μm厚のポリエステルフィルムのコロナー処理面に、自動塗工装置バーコーター(PI−1210:テスター社製)を用いて直接塗工した。その後、60℃で3分間、100℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した後、該粘着層にシリコーンコートされた38μm厚のポリエステルフィルムセパレーターを被覆して、積層フィルムを作製した。更に、上記で得た積層フィルムを、40℃で3日間養生し、評価試験の試料とした。前記の剥離試験に基づく粘着力は、0.04N/25mmであり、軽剥離であることを確認した。尚、剥離後のガラス板表面を目視にて観察したが、のり残り等は見られず、また、ほこりの付着も起こらなかった。
実施例2
ウレタン型粘着剤(APU−505:DIC社製)の固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてD−100K(DIC社製)を5.5部および前記で得られた含フッ素化合物(2)を0.5部添加し、酢酸エチルで固形分が50%となるように希釈し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前記の剥離試験に基づく粘着力は、0.02N/25mmであり、軽剥離であることを確認した。尚、剥離後のガラス板表面を目視にて観察したが、のり残り等は見られず、また、ほこりの付着も起こらなかった。
比較例1
ウレタン型粘着剤(APU−505:DIC社製)の固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてD−100K(DIC社製)を5.5部添加し、酢酸エチルで固形分が50%になるように希釈し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前記の剥離試験に基づく粘着力は、0.07N/25mmであり、実施例での剥離力よりも大きく、表面保護フィルムとしては扱いにくいものであることを確認した。尚、剥離後のガラス板表面を目視にて観察したが、一部乱反射があり、のり残りがあることが観測された。また、ほこりの付着も起きており、帯電していることが分かった。
比較例2
ウレタン型粘着剤(APU−505:DIC社製)の固形分100部に対して、硬化剤(架橋剤)としてD−100K(DIC社製)を5.5部およびフッ素化合物の水分散体(オクタデシルアクリレート/パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート/塩化ビニル=66/17/17:質量比で重合させたもの)を固形分換算で0.5部添加し、酢酸エチルで固形分が50%になるように希釈し、充分に混合して粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を用いて、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。前記の剥離試験に基づく粘着力は、0.05N/25mmであり、実施例での剥離力よりも大きく、表面保護フィルムとしては扱いにくいものであることを確認した。尚、剥離後のガラス板表面を目視にて観察したが、のり残りはされなかったが、ほこりの付着が起きており、帯電していることが分かった。