JP2019026682A - 昇華転写用インクジェットインク組成物及び昇華転写インクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
Description
分散染料と、
分散樹脂と、
シリコーン系界面活性剤と、
可溶化剤と、
を含み、
表面張力が30mN/m以下であり、
全成分から前記分散染料及び前記分散樹脂を除いた成分の混合物の曇点が40℃以上である。
前記可溶化剤が、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、並びに、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルから選択される一種以上であってもよい。
前記分散樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂の一種以上であってもよい。
前記分散樹脂の前記分散染料に対する質量比(分散樹脂/分散染料)が20%以上200%以下であってもよい。
前記分散染料が、DR60、DY54、DB359、DB360、DO25及びSO60から選択される一種以上を含んでもよい。
上述の昇華転写用インクジェットインク組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体に付着させる吐出工程と、前記昇華転写用インクジェットインク組成物を布帛に記録する転写工程と、を有する。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、分散染料と、分散樹脂と、シリコーン系界面活性剤と、可溶化剤と、を含む。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、分散染料を含む。分散染料は、昇華型染料の一種であり、ポリエステル、ナイロン、アセテート等の疎水性合成繊維の染着に好適に用いられる染料であり、水に不溶または難溶の化合物である。また分散染料は、加熱により昇華する性質を有する染料である。本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物に用いられる分散染料としては、特に制限されないが、具体的には以下に例示するものが挙げられる。なお、以下の例示では、油溶性染料に分類されるものも含まれるが、本明細書では水溶性を有さず水中で分散形態をとる油溶性染料は分散染料の一種として取り扱う。
1、74、76、77、78、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、153、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、201、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、233、245、C.I.ソルベントイエロー2、6、14、16、21、25、29、30、33、51、56、77、80、82、88、89、93、116、150、163、179等が挙げられる。なお、「C.I.ディスパースイエロー」及び「C.I.ソルベントイエロー」は、それぞれ「DY」及び「SY」と略記することがある。
、13、19、C.I.ソルベントブラウン3、5等が挙げられる。なお、「C.I.ディスパースブラウン」及び「C.I.ソルベントブラウン」は、それぞれ「DBr」及び「SBr」と略記することがある。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、分散染料を分散させる分散樹脂を含む。分散染料は分散樹脂によって分散されており、分散樹脂は上述の分散染料を昇華転写用インクジェットインク組成物中で分散させる(あるいは乳化させる)機能を有している。分散樹脂としては、特に限定されないが、以下のものを例示できる。
好ましく、40%以上100%以下がさらに好ましく、40%以上60%以下であることが特に好ましい。このようにすれば、分散染料に対する分散樹脂の量が良好となるので、分散染料をさらに良好に分散させることができる。
本実施形態に係る昇華転写用インクジェットインク組成物は、シリコーン系界面活性剤を含む。シリコーン系界面活性剤は、昇華転写用インクジェットインク組成物の表面張力を低下させ、記録ヘッドへの充填性を確保したり、記録媒体との濡れ性(布帛等への浸透性)を向上させる機能を有する。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、可溶化剤を含有する。可溶化剤は、上述の分散樹脂に対して上述のシリコーン系界面活性剤が吸着して界面活性能が低下することを抑制する機能を有する。すなわちここでいう可溶化との語は、シリコーン系界面活性剤を液相で安定させることを指し、シリコーン系界面活性剤を溶解させるという意味で用いている。また、可溶化剤はシリコーン系界面活性剤の吸着を防止するという観点から吸着防止剤と称しても構わない。また、可溶化剤の機能の一つとして、組成物の液体成分(全成分から分散染料及び分散樹脂を除いた成分の混合物)の曇点を高めることが挙げられる。これにより例えばシリコーン系界面活性剤の添加量を高めることができる場合がある。
1.5.1.水溶性有機溶剤
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、アルキルポリオール、グリコールエーテル等の有機溶剤を含んでもよい。
アルキルポリオールの具体例としては、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]、1,3−プロパンジオール(プロピレングリコール)[210℃]、1,3−ブタンジオール[230℃]、1,4−ブタンジオール[230℃]、1,5−ペンタンジオール[242℃]、1,6−ヘキサンジオール[250℃]、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール[226℃]、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール[230℃]、2−メチル−1,3−プロパンジオール[214℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール[244℃]、3−メチル−1,5−ペンタンジオール[250℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]、ジエチレングリコール[245℃]、ジプロピレングリコール[232℃]、トリエチレングリコール[287℃]、グリセリン[290℃]等が
挙げられる。なお、括弧内の数値は標準沸点を表す。これらのアルキルポリオールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールから選択されるグリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。より好ましくは、メチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルトリグリコール(トリエチレングリコールモノブチルエーテル)、ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、典型例としてジエチレングリコールモノブチルエーテル[230℃]が挙げられる。括弧内の数値は標準沸点を表す。
さらに本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物に使用可能な有機溶剤としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ベタイン化合物等が挙げられる。これらの有機溶剤を使用すると、濡れ性や浸透速度を制御できる場合があるため、画像の発色性を向上できる場合がある。
本実施形態に係る昇華転写用インクジェットインク組成物は、表面張力及び曇点をそれぞれ30mN/m以下及び40℃以上としうる限り、上述のシリコーン系界面活性剤の他の種類の界面活性剤を含んでもよい。そのような界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。
フィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、必要に応じてpH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基の例としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。さらに、これらのうち、pH調整剤の一部又は全部として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミン、及び、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等のカルボキシル基含有有機酸、が含まれることが、pH緩衝効果をより安定に得ることができるため好ましい。
本実施形態に係る昇華転写用インクジェットインク組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、昇華転写用インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を抑制することができる。
くは80質量%以下である。
昇華転写用インクジェットインク組成物の保湿剤として、あるいは、染料の染着性を向上させる染着助剤として、必要に応じて尿素類を使用してもよい。尿素類の具体例としては、尿素、エチレン尿素、テトラメチル尿素、チオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
昇華転写用インクジェットインク組成物の固化、必要に応じて糖類を使用してもよい。糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
昇華転写用インクジェットインク組成物には、必要に応じてキレート化剤を使用してもよい。キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩、又は、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、若しくはメタリン酸塩等)等が挙げられる。
昇華転写用インクジェットインク組成物は、必要に応じて防腐剤、防かび剤を使用してもよい。防腐剤、防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン(ゼネカ社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL.2、プロキセルTN、プロキセルLV)、4−クロロ−3−メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。
さらに上記以外の成分として、例えば、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、溶解助剤など、インクジェット用のインク組成物において通常用いることができる添加剤を必要に応じて含有してもよい。
本実施形態のインクジェットインク組成物は、全成分から分散染料及び分散樹脂を除いた成分の混合物の曇点が40℃以上である。また当該曇点は、例えば45℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。曇点は、インク成分から、分散染料及び分散樹脂の両方を除いた成分(液体)の曇点であり、例えば、特開2015−117297号公報の図1に示されるような測定装置により測定することができる。測定装置の概要としては、分光光度計の内部に、循環恒温槽に接続された温度制御可能なセルを備えたものである。セルには、熱電対がセル中の液体と接触可能となるように挿入されており、熱電対と電気的に接続されたデータロガーによりセル中の温度を計測することができるようになっている。そして、測定対象をセルに入れ、循環恒温槽を用いてセルの加温を開始し、測定対象の液温をデータロガーでモニターしながら可視光域(300〜800nm)の透過率を分光光度計により測定し、例えば、測定間隔を0.5℃とし、初期透過率に対して10%以上透過率が下がった温度を曇点として求めることができる。
以下である。ここで表面張力の値は、25℃における値である。昇華転写用インクジェットインク組成物の表面張力は、配合される物質によって変化するが、上述のシリコーン系界面活性剤の配合量に、他の物質の配合量よりも相対的に強く依存して変化する。そのため、表面張力を30mN/m以下とする手段として、シリコーン系界面活性剤の配合量を調節することは有効である場合が多い。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物によれば、捺染の際に生じる臭気が抑制され、ヘッドへの充填性が良好で、かつ、保存中に物性の変化が生じにくく保存安定性に優れている。すなわち、かかる昇華転写用インクジェットインク組成物は、分散樹脂を含むことにより分散染料の分散性を良好であるとともに、捺染時の臭気が抑制され、また昇華転写用インクジェットインク組成物の全成分から分散染料及び分散樹脂を除いた成分の混合物の曇点を適切にできる可溶化剤を含むことにより分散樹脂とシリコーン系界面活性剤との相互作用が抑制される結果、シリコーン系界面活性剤によるヘッドへの充填性の向上効果や、表面張力の低下効果が経時的に変化しにくい。これにより例えば昇華転写用インクジェットインク組成物を保存した後でも、初期の物性を維持できるので、捺染物の画質を保存の前後で変化しにくくすることができる。
上述の昇華転写用インクジェットインク組成物は、昇華転写を利用した布帛等に対する染色方法(昇華転写インクジェット記録方法)に好適に適用することができる。本実施形態の昇華転写インクジェット記録方法は、転写元記録物の製造方法、及び/又は、捺染物(捺染物(染色された転写先の布帛等))の製造方法ということもできる。
本工程では、インクジェット法を用いて、昇華転写用インクジェットインク組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体(転写元(紙等))の記録面に付着させる。インクジェット法による組成物の吐出は、液滴吐出装置(例えばインクジェット記録装置)を用いて行うことができる。
本実施形態の昇華転写インクジェット記録方法は、昇華転写用インクジェットインク組成物が付与された中間転写媒体(転写元媒体)の記録面を、被捺染物(布帛等)と対向させた状態(転写元媒体の記録面に、布帛等を配置した状態)で加熱し、インクジェットインク組成物に含まれる分散染料を被捺染物に昇華させて転写する(記録する)工程を含む。これにより、布帛等を被捺染物とした捺染物(捺染物)が得られる。
本実施形態の記録方法は、付着工程の後に転写元媒体を加熱する第1加熱工程を含んでもよい。第1加熱工程は、昇華転写用インクジェットインク組成物を転写元媒体(中間記録媒体)へ吐出した後に加熱する工程である。第1加熱工程を行うことにより、付着工程で付着された昇華転写用インクジェットインク組成物の乾燥が促進され、画像の滲みが抑制されるとともに、裏移りも抑制される場合がある。なお、裏移りとは、例えば、転写元媒体がロールで巻き取られる等、重ねられる場合に、記録面に接した裏面に対してインクジェットインク組成物の成分が移動する現象を指す。
本実施形態の昇華転写用インクジェットインク組成物は、インクジェット記録装置に好適に用いることができる。インクジェット記録装置は、上述の昇華転写用インクジェットインク組成物を収容するインク収容容器(カートリッジ、タンク等)及びこれに接続される記録ヘッドを少なくとも有し、組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体(転写元)に画像を形成することができれば、特に限定されない。
本実施形態の記録方法によれば、上述の昇華転写用インクジェットインク組成物を用いるため、臭気が抑制されるとともに、画質の良好な捺染を行うことができる。また、滲み及び裏移りの少ない良好な転写元媒体(記録物)を作成することができる。また、上述の昇華転写用インクジェットインク組成物を用いるので、組成物を保存した後でも、良好な転写元媒体(記録物)を形成することができる。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に係る第1のインク及び第2のインク(インクジェットインク組成物)を得た。なお、各例で用いた第1のインク及び第2のインクは、互いに分散染料が異なる以外は同一の組成とした。また、表1中の数値は、固形分換算とし、質量%を示す。
・スチレン系樹脂:ノプコスバース6100(サンノプコ株式会社より入手、固形分70%、スチレン・マレイン酸アミン塩)(表の配合量は固形分換算)
・ウレタン系樹脂:TEGO Dispers 710(Evonik Tego Chemie社より入手、有効成分量35%、ウレタンコポリマー溶液)(表の配合量は固形分換算)
・NSF:β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(花王株式会社より入手)
・BYK349:シリコーン系界面活性剤(ビックケミー株式会社より入手)
・オルフィンE1010:アセチレン系界面活性剤(日信化学工業社より入手)
・ペレックスSS−H:アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(花王株式会社より入手)
・ノイゲンEA−137:ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル(第一工業製薬株式会社より入手)
3.2.1.曇点
各例のインク成分から分散染料及び分散樹脂の両方を除いた成分(液体)で調合した評価サンプルを作成し、各評価サンプルの曇点を測定した。曇点は、特開2015−117297号公報の図1に示されるような測定装置を準備して測定した。測定装置の概要としては、分光光度計の内部に、循環恒温槽に接続された温度制御可能なセルを備えたものである。セルには、熱電対がセル中の液体と接触可能となるように挿入されており、熱電対と電気的に接続されたデータロガーによりセル中の温度を計測することができるようになっている。上記各例の組成物をそれぞれセルに入れ、循環恒温槽を用いてセルの加温を開始し、組成物の液温をデータロガーでモニターしながら可視光域(300〜800nm)の透過率を分光光度計により測定した。測定間隔は0.5℃とし、初期透過率に対して10%以上透過率が下がった温度を曇点とした。測定装置で使用した各機器は以下の通りである。得られた曇点の測定結果を表1に併せて示す。
<測定装置>
・分光光度計:Jasco紫外可視分光光度計(UV−VIS)V−570型
・循環恒温槽:LAUDA循環恒温槽E100
・液温モニター:NKTCデータロガーN542R
製造直後の各例の昇華転写用インクジェットインク組成物の表面張力を表面張力計(協和界面科学株式会社製、表面張力計CBVP−Z)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃にて測定した。その結果を表1に記した。
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、SureColor SC−F6000)を準備し、記録ヘッドにインクの存在しない状態とした。その後、製造直後と、60℃にて30日放置後の、各例の組成物を用いて、プリンターの標準のシーケンスにて、組成物を記録ヘッドに導入させて、記録ヘッドへの充填性を調べ、以下の基準で評価した。
A:クリーニング処理1回のみで全てのノズルを充填できた。
B:クリーニングを1回追加したら全てのノズルを充填できた。
C:全てのノズルを充填するのに、3回以上クリーニング動作が必要であった。
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、SureColor SC−F6000)に、製造直後及び60℃にて30日放置後の各例の組成物を充填し、40℃環境下で被記録物としてB0サイズの紙を用い、べたパターン(100%dutyの塗り潰し)を記録することにより、吐出安定性試験を行って以下の基準で評価して結果を表1に記載した。なお初期充填は25℃で行った。
A:製造直後及び60℃にて30日放置後のそれぞれの組成物が、いずれも抜け・ヨレがなく連続して記録可能な枚数が15枚以上である。
B:製造直後又は60℃にて30日放置後のいずれかの組成物が、抜け・ヨレがなく連続して記録可能な枚数が10枚以上15枚未満である。
C:製造直後又は60℃にて30日放置後のいずれかの組成物が、抜け・ヨレがなく連続して記録可能な枚数が10枚未満である。
インクジェットプリンタ(セイコーエプソン社製、SureColor SC−F6000、TFPヘッド搭載)に製造直後の各例の組成物をそれぞれ充填し、吐出安定性試験と同様のパターンで連続8時間の印刷を行い、印字後、インクジェットプリンタの近辺(1m以内のエリア)の臭気について、官能評価(環境25℃、評価者10人)し、その結果を以下の基準で評価して表1に記載した。
作業中不快な臭気はないと感じる人が、
A:7人以上10人以下
B:4人以上6人以下
C:3人未満
製造直後に対する60℃にて30日放置後の表面張力の上昇を各例の組成物について測定した。表面張力は製造直後の場合と同様に上述した通り測定した。そして加速試験前後の表面張力との差を算出し、以下の基準で評価して表1に記載した。
表面張力差が、
A:0mN/m以上1mN/m未満
B:1mN/m以上2mN/m未満
C:2mN/m以上
各例の組成物を充填したインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、SureColor SC−F6000)を用いて、被記録媒体(TRANSJET Sporrtline(Chem Paper社製))に、印字解像度を横720dpi、縦720dpiとし、「鷹」及び「鷲」の6ポイントの文字の印刷を行い、文字の目視認識が可能かどうかを調べ、以下の基準で評価して表1に記載した。なお印刷環境は25℃60%RHとした。
A:製造直後及び60℃にて30日放置後の組成物も、にじみがなく、ともに6ポイント文字がはっきりと目視認識できる
B:製造直後の組成物に比べ、60℃にて30日放置後の組成物はややにじみあるものの、ともに6ポイント文字が目視認識できる。
C:製造直後の組成物に比べ、60℃にて30日放置後の組成物はにじみがひどく、6ポイント文字が認識できない
分散染料と、分散樹脂と、シリコーン系界面活性剤と、可溶化剤と、を含み、表面張力が30mN/m以下であり、全成分から前記分散染料及び前記分散樹脂を除いた成分の混合物の曇点が40℃以上である、各実施例の昇華転写用インクジェットインク組成物は、いずれもヘッドへの充填性、吐出安定性、臭気、保存安定性及び画質の全てに優れていることが分かった。すなわち、各実施例の昇華転写用インクジェットインク組成物は、臭気が抑制された捺染を行うことができ、かつ、保存中に物性の変化が生じにくく保存安定性に優れた、昇華転写用インクジェットインク組成物であることが判明した。
Claims (6)
- 分散染料と、
分散樹脂と、
シリコーン系界面活性剤と、
可溶化剤と、
を含み、
表面張力が30mN/m以下であり、
全成分から前記分散染料及び前記分散樹脂を除いた成分の混合物の曇点が40℃以上である、昇華転写用インクジェットインク組成物。 - 請求項1において、
前記可溶化剤が、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、並びに、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルから選択される一種以上である、昇華転写用インクジェットインク組成物。 - 請求項1又は請求項2において、
前記分散樹脂が、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂及びウレタン系樹脂から選択される一種以上である、昇華転写用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記分散樹脂の前記分散染料に対する質量比(分散樹脂/分散染料)が20%以上200%以下である、昇華転写用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記分散染料が、DR60、DY54、DB359、DB360、DO25及びSO60から選択される一種以上を含む、昇華転写用インクジェットインク組成物。 - 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の昇華転写用インクジェットインク組成物を記録ヘッドから吐出して中間転写媒体に付着させる吐出工程と、前記昇華転写用インクジェットインク組成物を布帛に記録する転写工程と、を有する、昇華転写インクジェット記録方法。
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