JP2019025761A - 造形方法、造形装置、及び造形制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】溶剤を用いないで隙間やボイドの形成を抑えることができる造形方法、造形装置、及び造形制御プログラムを提供すること。【解決手段】ノズル22aに設けたノズル吐出口22cから樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形方法であって、造形物FOの形状データからノズル吐出口22cによる走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う際に、所定の単位層UL内の部分領域について、周囲に対して造形条件を変更する。【選択図】図1
Description
本発明は、立体物を形成するための造形方法、造形装置、及び造形制御プログラムに関し、特に造形材料を順次積み重ねることによって立体物を形成する造形方法等に関する。
造形材料を順次積み重ねるタイプの造形方法として、ワイヤー状の熱可塑性の材料を予熱器で加熱し吐出用ノズルから下方に位置する基台に押し出すものがある(特許文献1〜3等参照)。この際、吐出用ノズルを基台に平行な面に沿って相対的に走査することにより、基台上の規定領域内を熱可塑性の材料で一様に塗りつぶすように硬化させて単位層を形成することができ、その後基台を一定ピッチ分降下させて、同様に吐出用ノズルから熱可塑性の材料を基台に押し出しつつ吐出用ノズルを相対走査することで次の単位層を形成する。このような処理を繰り返すことで、所望断面形状を有する積層体としての3次元物体を作製することができる。
しかし、上記のような造形方法では、吐出用ノズルの軌跡の制御によって間接的に単位層の塗りつぶしを行うので、単位層又は積層体内部において隣接する材料同士が密着せず隙間ができる可能性がある。このような隙間の存在により、材料間の密着面積が下がり、加えて隙間に応力集中が起きやすい。この結果、積層体の機械強度が射出成形によって製造された樹脂成形品より劣ったものとなるという問題がある。
単位層に相当する積層樹脂間の隙間を埋めるため、積層樹脂の各層に溶剤を噴霧させて樹脂を溶かすことで隙間を埋めていくという方法がある(特許文献3参照)。溶剤の噴霧ノズルは、押出ノズルと連動して同時に走査され、或いは、押出ノズルの走査後にその押出ノズルの軌跡をトレースするように移動する。噴霧ノズルによって硬化した樹脂の最上段層の上面に溶剤を供給することで材料を溶解させ、溶解した材料の上面に対して更に溶融した材料を押出ノズルから押し出すことで隙間を埋めることができる。
溶剤を噴霧する方法は、溶かした樹脂の上に押出ノズルからの溶融樹脂を重ねていくことを繰り返すため、行き場を失った空気が内部に閉じこもり隙間を作ってしまう可能性がある。また、溶剤が積層された樹脂の下で気化することでボイドを作りやすいという問題もある。さらに、使用する樹脂によって溶剤も変える必要があり、溶剤によって使用できる樹脂も限定され汎用性に乏しい。それ以外にも、溶剤が一部残留し物質を変質させる可能性や、引火性の高い溶剤の場合は高温になる樹脂溶融発熱体の近くで使用することは危険であり回避したいという事情もある。
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、溶剤を用いないで隙間やボイドの形成を抑えることができる造形方法、造形装置、及び造形制御プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る造形方法は、ノズルに設けたノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形方法であって、造形物の形状データから前記ノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う際に、所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して前記造形条件を変更する。
上記造形方法によれば、所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して造形条件を変更するので、隙間の発生を抑えつつ密度の高い樹脂層を形成でき、密着面積の増加によって造形物の引張強度を改善することができる。
本発明の具体的な側面では、上記造形方法において、事前に把握したノズル吐出口から吐出された後の樹脂の形状データを元に、単位層毎に基本条件による粗密及び隙間を判定し、所定の許容度を超えた区分領域において基本条件を修正する。この場合、基本条件を吐出樹脂の形状データに基づいて修正することで造形条件を得るので、様々な造形物の形状に対して造形条件の設定が比較的容易になり、品質向上を達成することができる。
本発明の別の側面では、走査パスに従って一つの単位層を造形した段階で隙間の有無を判別し、当該隙間を充填する。この場合、一旦形成した単位層の隙間を事後的に埋めることで、密度や強度の向上を図ることができる。
本発明のさらに別の側面では、隙間の有無の判別は、画像認識により行う。この場合、隙間を充填する処理の再現性や信頼性を高めることができる。
本発明のさらに別の側面では、走査パスに従って一つの単位層を造形した後に当該一つの単位層上に次の単位層を造形する際に、一つの単位層に生じた隙間を充填するように修正された造形条件で次の単位層を造形する。この場合、隣接する単位層間で修正を行うことになり、処理のスループットを向上させつつ造形物の密度や強度を向上させることができる。
本発明のさらに別の側面では、次の単位層を造形する際の造形条件は、造形後の一つの単位層に対する画像認識による隙間の判別と、事前に把握したノズル吐出口から吐出された後の樹脂の形状データとのいずれかに基づいて修正される。
本発明のさらに別の側面では、隙間を充填する箇所を可視化表示する。この場合、造形条件の修正必要箇所を事前確認することができ、造形の信頼性を高めることができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る造形装置は、ノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形装置であって、造形物の形状データからノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う走査条件設定部と、所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して造形条件を変更する条件変更部とを備える。
上記造形装置によれば、条件変更部が、所定の単位層内の部分領域について周囲に対して造形条件を変更するので、隙間の発生を抑えつつ密度の高い樹脂層を形成でき、密着面積の増加によって造形物の引張強度を改善することができる。
上記目的を達成するため、本発明に係る造形制御プログラムは、ノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形装置を制御する制御装置で動作する造形制御プログラムであって、造形装置を、造形物の形状データからノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う走査条件設定部、及び所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して造形条件を変更する条件変更部として機能させる。
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る造形物の造形方法、造形装置等の実施形態について説明する。
図1(A)に示すように、立体造形物の造形装置100は、造形材料取扱部20と、3次元駆動部30と、カメラ40と、制御部80とを有する。
造形材料取扱部20は、造形材料を層単位で順次積み重ねることによって立体物を造形する造形部である。この造形材料取扱部20は、造形材料の供給源である造形材料供給部21と、造形材料を所定状態の流体として吐出する造形材料吐出部22と、造形材料を所定温度に加熱する加熱部23とを有する。
造形材料取扱部20において、造形材料供給部21は、熱可塑性の樹脂フィラメントを収納したカートリッジ(不図示)を有し、樹脂フィラメントを造形材料吐出部22に所望の速さで送り出すことができる。造形材料吐出部22は、後述するテーブル又はステージ38(図1(B)参照)に対して3次元的に相対移動可能になっており、ステージ38上の任意の位置に所望の高さから溶融樹脂を供給することができる。加熱部23は、造形材料吐出部22に供給された樹脂を適度な粘度に溶融させて後述するノズル22a(図1(B)参照)から吐出させる。ノズル22aから溶融樹脂を押し出しつつノズル22aを2次元的に走査することで、目的とする造形物FOを構成する単位層を形成し、このように形成した単位層を積層するように順次堆積させて3次元形状を有する造形物FOを形成することができる。
3次元駆動部30は、造形材料取扱部20、すなわち材料吐出用のノズル22a(図1(B)参照)を支持するヘッド部20aを水平面に沿って2次元的に移動させるヘッド駆動部31と、ヘッド駆動部31の下方に配置されて造形物を支持するステージ38(図1(B)参照)を上下方向に移動させて造形物の高さ位置を調整するステージ駆動部32とを有する。3次元駆動部30は、制御部80から取得した移動制御情報に基づきヘッド部20aをステージ38に対して相対的に任意の3次元位置に移動させる。
図1(B)に示すように、造形材料取扱部20の造形材料供給部21は、流体状の造形材料である溶融樹脂MRを吐出するノズル22aに接続され、ノズル22aは、加熱部23に設けたヒーター23aによって材料吐出時に加熱される。
造形材料取扱部20又はヘッド部20aは、ヘッド駆動部31に設けたガイド31aや駆動機構31bによって略水平のXY面内で移動する。一方、上部に造形物FOを支持するステージ38は、ステージ駆動部32に駆動されて略鉛直のZ方向に昇降する。つまり、ヘッド駆動部31及びステージ駆動部32によって、ノズル22a又はノズル吐出口22cのステージ38に対する3次元的配置を精密に調整でき、ステージ38上方の狙いの位置に造形材料である溶融樹脂MRを供給することができる。
カメラ40は、CCD撮像素子等からなり、造形装置100の上部又はヘッド部20aに固定されて、ステージ38上の造形物FOの上面を撮影する。カメラ40は、制御部80の制御下で撮影動作を行い、例えば溶融樹脂MRによってXY面に沿って延びる単位層の形成を完了した段階で、造形物FOの上面全体、つまり単位層全体を撮影する。カメラ40は、上記のように単位層の形成完了状態を撮影するだけでなく、単位層の形成中を撮影することもできる。カメラ40は、単位層中の樹脂の隙間を撮影できる程度の分解能を有しており、取得した画像のパターン分布から単位層中に残る隙間(つまり未充填部又は欠落部)の有無やサイズの判定を可能にする。カメラ40が造形装置100の容器上部に固定される場合、撮影に際してヘッド部20aを隅に待避させる。
制御部80は、オペレーターとのインターフェースである入出力部81と、プログラムに基いてデータ等に対する演算処理、外部装置の制御等を行う演算処理部82と、外部からのデータ、演算処理結果等を保管する記憶部83とを備える。
入出力部81は、造形物FOの3次元的な目標形状の形状データ(3Dデータ)を入力することができるようになっている。入出力部81は、目標形状の3Dデータを外部のコンピュータ装置等から通信回線を介して取得する構成であってもよいし、制御部80に接続された記録媒体から目標形状の3Dデータを読み取る構成であってもよい。入出力部81は、キーボード等の操作部を利用して目標形状の3Dデータを直接入力できるものであってもよい。入出力部81に入力された3Dデータは、演算処理部82に転送される。
演算処理部82は、CPU(Central Processing Unit)等の演算部、インターフェース回路等の付属回路を有しており、造形制御プログラムを実行する。すなわち、演算処理部82は、入出力部81から転送された3Dデータに基づいて、造形材料を3次元で造形するための単位層ごとのデータを作成(構築)する。この際、単位層ごとのデータは、ノズル吐出口22cをステージ38に対して2次元的に移動させるとともに、ノズル吐出口22cから押し出される所定断面の溶融樹脂MRを、軌跡又は走査パスとして単位層の外縁内に密に配置するようなものとする。
具体的には、図2(A)及び2(B)に模式的に示すように、演算処理部82によって決定される走査パスは、例えばノズル吐出口22cをXY面に沿って2次元的に走査するように移動させながら単位層ULの輪郭内を溶融樹脂MRによって漏れなく埋めるものとする。より詳細には、例えばY方向にノズル吐出口22cの主走査を行いながら、X方向にノズル吐出口22cの副走査を行うことで面状の領域である単位層ULを充填することができる。この際、主走査の幅又は長さは、各位置における単位層のY幅となり、副走査の刻みは、溶融樹脂MRの幅又は径とする。図示の例では、まず、単位層ULの輪郭の外縁に沿ってノズル吐出口22cを移動させて溶融樹脂MRで外縁部2aを形成し、その後、単位層ULの内側部分2bを溶融樹脂MRで端から充填するように形成している。以上のようなノズル吐出口22cの軌跡としての単位層ULごとの走査パス3a,3b(図2(C)参照)は、後述する記憶部83に保管される。
単位層形成のため溶融樹脂MRを供給する軌跡又は走査パスは、一筆書きのような単一のパスからなるものに限らず、複数の分離又は分割されたパス部分からなるものとすることができる。走査パスは、直線的な走査をシフトさせながら繰り返すものに限らず、曲線的な走査を繰り返すものであってもよい。
制御部80又は演算処理部82は、ノズル吐出口22cの走査に際しての造形条件の設定を行う。造形条件には、溶融樹脂MRの吐出量[g/min]、ノズル温度[℃]、造形スピード[mm/s]、オーバーラップ量[%]等が含まれる。ここで、溶融樹脂MRの吐出量は、造形材料供給部21から送り出す樹脂フィラメントの量又はスピードを示し、ノズル温度は、加熱部23によって加熱されたノズル22aの温度を示し、造形スピードは、ノズル吐出口22cを走査パスに沿って移動させる速度を示し、オーバーラップ量は、走査に際して隣接するパス部分の間隔を示す。オーバーラップ量については、造形物FO上に線状に供給された段階での溶融樹脂MRの幅だけ副走査方向に送る場合、標準の100%となる。一般に溶融樹脂MRの断面は円形又は長円形であり、吐出された溶融樹脂MRの供給要素は変形して隣接する供給要素と変形し密着する。このような変形を見越してオーバーラップ量を設定することで、各単位層における樹脂の充填率を高めることができ、造形物FOの強度を向上させることができる。
制御部80は、条件変更部として、走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う際に、造形物FOを構成する単位層UL内の局所的な部分領域について、その周囲に対して造形条件を変更する。すなわち、制御部80は、走査条件設定部として、造形物FOの形状データからノズル吐出口22cによる走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行うとともに、条件変更部として、所定の単位層内の部分領域について、その周囲に対して造形条件を変更する。
第1の手法として、制御部80は、予め単位層毎に一様な吐出を行う基本条件を設定し、この基本条件から予測される充填状態に基づいて基本条件を修正して修正条件を得る。具体的には、制御部80は、事前に把握したノズル吐出口22cから吐出された後の樹脂の断面形状等の形状データを元に、単位層毎に標準の走査パス及び基本条件による粗密及び隙間を判定又は予想する。制御部80は、標準の走査パス及び基本条件による粗密及び隙間に関する判定結果を基に、所定の許容度を超えた区分領域において上記基本条件を修正した修正条件を造形条件とする。図2(C)に示す走査パス3bの場合、折り返し位置に対応する変曲点5aの近傍に隙間4aが形成されるとともに、外縁部2aに沿った4隅部分5bにも隙間4bが形成され、これらの隙間4a,4bは、所定の許容度を超える可能性があり、造形条件の修正が必要となる区分領域となる傾向が生じる。このため、変曲点5aの近傍や4隅部分5bでは、溶融樹脂MRの吐出量を増やしたり、ノズル温度を高めたり、造形スピードを遅くしたり、オーバーラップ量を増やすことが考えられる。また、変曲点5aの近傍や4隅部分5bでは、標準の走査パスに追加部分等の変更を加えることもできる。
第2の手法として、制御部80は、予め単位層毎に一様な吐出を行う基本条件を設定し、この基本条件による結果的な隙間の発生状態に基づいて、造形材料取扱部20に隙間を充填するような事後的修正を加える動作を行わせる。具体的には、制御部80の制御下で、基本条件に基づく走査パスに従って一つの単位層を造形した後に隙間の有無が判別され、当該一つの単位層上に次の単位層を造形する際に、一つの単位層に生じた隙間を充填するように修正された造形条件で次の単位層を造形する。或いは、制御部80の制御下で、基本条件に基づく走査パスに従って一つの単位層を造形した段階で隙間の有無が判別され、当該隙間を充填する追加の工程が実施される。この際、制御部80は、次の単位層を形成するための造形条件を、直前の工程で単位層に生じた隙間を充填するように修正された造形条件を決定する。また、制御部80は、直前の工程で単位層に生じた隙間を充填するような追加工程のための造形条件を決定する。
第2の手法において、次の単位層を造形するための修正された造形条件では、溶融樹脂MRの吐出量を増やしたり、ノズル温度を高めたり、造形スピードを遅くしたり、オーバーラップ量を増やすことが考えられる。また、隙間を充填する追加工程の造形条件では、隙間の形状やサイズに応じて、溶融樹脂MRの吐出量、ノズル温度、造形スピード、オーバーラップ量等が適宜調整される。
造形物FOを構成する単位層に生じた隙間は、例えばカメラ40を利用した画像認識によって実現される。カメラ40によって造形物FOの上面を撮影し、画像処理後のパターン分布から隙間の有無及び範囲を判定できる。この際、造形物FOの上面を例えば斜めから照明することで陰影を生じさせ易く、隙間の判別が容易になる。
制御部80は、第2の手法を用いる場合、ユーザーの便宜を考慮して、造形物FOの上面の隙間箇所、隙間を充填する補修箇所を、入出力部81に可視化表示する。追加工程を実施する場合、追加工程の走査パスを入出力部81に可視化表示することもできる。
以下、図3を参照して、図1(A)に示す造形装置100を用いた立体造形物の製造方法、つまり造形方法について説明する。
まず、制御部80の演算処理部82は、入出力部81を介して造形物FOの3次元的な目標形状の形状データ(3Dデータ)の入力を受け付ける(ステップS11)。演算処理部82は、この形状データを記憶部83に保管する。
次に、演算処理部82は、入出力部81を介して受け取った形状データから、立体的な造形物FOを造形するための、造形物FOを構成する造形材料の単位層ULごとの初期データを作成する(ステップS12)。この処理のことを走査条件設定処理と呼び、演算処理部82は、走査条件設定部として機能する。演算処理部82は、この初期データを記憶部83に保管する。初期データには、2次元の走査パス、走査に付帯する基本条件等の情報が含まれる。基本条件は、ノズル吐出口22cを移動させつつノズル吐出口22cから溶融樹脂MRを吐出させることで目標とする単位層ULを形成するための標準的な造形条件であり、演算処理部82が、造形物FOのサイズ、形状精度、造形速度等の設定に基づき、記憶部83に保管した参照テーブル等を参酌して予め決定する。
次に、演算処理部82は、各単位層ULの初期データに関して、走査パスを考慮して基本条件を局所的に変更して修正条件を決定する(ステップS13)。この処理のことを条件変更処理と呼び、演算処理部82は、条件変更部として機能する。具体的には、演算処理部82は、特定の単位層ULに関する走査パスのうち変曲点等に対応する部分では、基本条件を修正して吐出量を相対的に増加させたり、ノズル温度を相対的に上昇させたり、造形スピードを相対的に低下させたり、基本の走査パスに追加部分を設けたりする操作を行って、この操作後の修正条件を記憶部83に保管する。以上のような条件修正処理は、造形物FOを構成する各単位層ULについて行われ、記憶部83には、各単位層ULの修正条件が保管される。
図4(A)は、基本の走査パスに追加部分を設ける一例を示しており、変曲点5a及び4隅部分5b又はそれらの近傍において、規則的なパターンの走査パス3bからはみ出すように追加部分3d,3eを設けている。この場合、追加部分3d,3eによって走査パス3bを拡張したものとなっており、追加部分3d,3eを含む走査パス3bが一筆書きの状態となっている。図4(B)は、基本の走査パスに追加部分を設ける別の例を示しており、変曲点5aの近傍において、規則的なパターンの走査パス3bから分離した追加部分3fを設けている。この場合、走査パス3bによる造形が行われた後に追加部分3fによる造形が行われることになる。
図2に戻って、演算処理部82は、ステップS13で得た修正条件に基づいて造形材料取扱部20を動作させることで、単位層ULを順次形成し、造形物FOを形成する(ステップS14)。
以下、図5を参照して、図1(A)に示す造形装置100を用いた造形方法の別の例について説明する。
まず、制御部80の演算処理部82は、入出力部81を介して造形物FOの3次元的な目標形状の形状データ(3Dデータ)の入力を受け付け(ステップS11)、受け取った形状データから造形物FOを構成する単位層ULごとの初期データを作成する(ステップS12)。
次に、演算処理部82は、ステップS12で得た初期データに基づいて造形材料取扱部20を動作させることで、最も下側の単位層ULを形成する(ステップS24)。
次に、演算処理部82は、最終層を形成したか否かを判断し(ステップS25)、最終層を形成していなければ(ステップS25でN)、ステップS24で形成した単位層ULの隙間状態を画像認識によって把握する(ステップS26)。隙間状態は、カメラ40によって造形物FOの上面を撮影し、画像処理後のパターン分布から決定することができる。隙間状態は、例えば隙間の有無及び範囲によって特定される。演算処理部82は、隙間状態を入出力部81のディスプレイを介してオペレーターに提示することができる。
次に、演算処理部82は、ステップS26で把握した隙間状態が許容限度を超えて造形工程の修正が必要か否かを判断し(ステップS27)、造形工程の修正が必要であれば(ステップS27でY)、次の単位層ULについて基本条件を局所的に変更して修正条件を造形条件として当該次の単位層ULを成形する(ステップS28)。つまり、演算処理部82は、隙間状態が良くない直前の単位層ULの隙間を充填するように修正された造形条件を算出する。このような造形条件の修正は、条件変更処理であり、走査パス3b上の隙間箇所に対応して局所的に設定され、隙間の形状やサイズに適合したものとされる。演算処理部82は、修正条件が適用される次の単位層ULを形成する前に、走査パス3b上の隙間修正箇所を入出力部81のディスプレイを介してオペレーターに提示することができる。なお、次の単位層ULについて基本条件を局所的に変更して修正条件を決定する際には、直前の単位層ULに対する画像認識による隙間の判別を利用することができるが、事前に把握したノズル吐出口22cから吐出された後の樹脂の形状データを利用することもできる。
ステップS28で単位層ULを造形した場合、ステップS24に戻ってステージ38を単層分だけ降下させ、次の単位層ULを形成する。なお、ステップS28で単位層ULを造形し、ステップS26に進んでステップS28で形成した単位層ULの隙間状態を把握することもできる。この場合、各単位層ULが下側の単位層ULの隙間状態を修正したものとなる。
以下、図6を参照して、図1(A)に示す造形装置100を用いた造形方法のさらに別の例について説明する。この造形方法は、図5に示す造形方法を一部変更したものとなっている。
演算処理部82は、ステップS26で把握した隙間状態が許容限度を超えて造形工程の修正が必要であると判断した場合(ステップS27でN)、追加層の造形条件を決定する(ステップS38)。つまり、演算処理部82は、条件変更処理として、隙間状態が良くない直前の単位層ULの隙間を充填する追加工程のための造形条件を算出する。このような追加工程の造形条件は、走査パス3b上の隙間箇所に対応する局所的なものであり、隙間の形状やサイズに適合したものとされる。演算処理部82は、追加工程を実行して直前の単位層ULを補充する前に、追加工程を行う箇所を入出力部81のディスプレイを介してオペレーターに提示することができる。
その後、演算処理部82は、ステップS38で決定した追加層の造形条件に基いて造形材料取扱部20を動作させることで、直前の単位層ULの隙間を充填するような追加層を形成する(ステップS39)。
図7(A)は、ステップS26で把握した隙間状態を例示し、図7(B)は、ステップS39による追加層の形成後を示している。なお、図7(A)において、点線で示す領域AR1は、隙間を埋めるような追加工程を行う箇所の表示例であり、例えば周囲に対して色分けした状態で表示される。
以上で説明した実施形態の造形方法によれば、所定の単位層UL内の部分領域(具体的には、例えば変曲点5aに対応する部分)について、周囲に対して造形条件を変更する工程を有するので、隙間の発生を抑えつつ密度の高い樹脂層を形成でき、密着面積の増加によって造形物FOの引張強度を改善することができる。
以下、具体的な実施例について説明する。造形材料取扱部20として、FDM(Fused deposition modeling)タイプの溶融樹脂押出積層造形装置を用いた。造形材料の樹脂材料としてABS等を使用した。造形材料供給部21から送り出す樹脂フィラメントの径はφ1.75mmとした。ノズル22aの材質は、真鍮製とし、ノズル吐出口22cの形状は、丸型であり、ノズル径は、φ0.4mmとした。単位層ULの積層ピッチは、0.2mmで行い、テーブル又はステージ38の温度は、110℃とした。造形材料又は樹脂材料としてABSを使用する場合、ノズル22aの温度は、標準設定温度に対し±20%の範囲で行うこととした。
図3に示すように各単位層ULの初期データに関して走査パスを考慮して基本条件を局所的に変更して修正条件を決定する場合として、修正のため造形スピードを調整した。具体的には、変曲点において、造形スピードを標準の32mm/sから修正値の24mm/sにすることで、溶融樹脂を局所的に多く吐出させ密な層を形成した。具体的な条件を以下の表1にまとめた。なお、表1において、「標準設定値」は、造形材料取扱部20の特性を考慮した標準的な設定値であり、「局所的な条件変更値」は、各隙間充填時の変更条件値であり、「好ましい値」は、理想とする変更条件値の範囲であり、「調整幅」は、標準設定値から変更する条件の実際の調整幅の範囲に対応するものとなっている。
〔表1〕
〔表1〕
図5に示すように隙間のできた単位層ULの次に形成する単位層ULについて基本条件を局所的に変更して修正条件を造形条件とする場合として、吐出量、ノズル温度、及びオーバーラップ量を調整した。具体的な条件を以下の表2にまとめた。次の単位層では、吐出量を局所領域で増加させ、ノズル温度を局所領域で上昇させ、オーバーラップ量を局所領域で増加させている。
〔表2〕
〔表2〕
図6に示すように隙間のできた単位層ULに対して追加層を形成する場合、追加層の造形条件は、以下の表3のようなものとした。表からも明らかなように、追充填する箇所において、標準造形条件であるノズル温度を245℃から255℃に上昇させ、造形スピードを32mm/sから10mm/sに低下させた。
〔表3〕
〔表3〕
本発明は、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、造形物FOの形状は任意に設定することができ、内部に空洞を有するような形状であっても、支持材を利用することで形成することができる。
造形材料取扱部20としては、FDM(Fused deposition modeling)に限らず、インクジェット法等を用いたものとすることができる。
造形材料取扱部20によってステージ38上に供給される造形材料8aは、図8(A)に示すようにY方向に関してオーバーラップ率100%の状態ではなく、図8(B)に示すようなオーバーラップ率100%を越える範囲(例えばオーバーラップ率120%)で供給する。また、図8(C)に示すように、単位層の上下で位相をずらすような積層も可能である。さらに、図8(D)に示すように、形状安定のため低温で造形材料18aを供給する層と、密着度を上げるため高温で造形材料18bを供給する層とを区別することもできる。
表1の例では、造形スピードを調整したが、ノズル移動量を瞬間的に一時停止させたり、吐出量を増やしたり、オーバーラップ量を調整したりすることができ、走査パスに追加部分を設けることができる。
表2の例では、吐出量、ノズル温度、及びオーバーラップ量を調整したが、造形スピードを調整することもできる。
表3の例では、ノズル温度及び造形スピードを調整したが、ノズル移動量を瞬間的に一時停止させたり、吐出量を増やしたり、オーバーラップ量を調整したりすることができる。
カメラ40によって形成途中の造形物FOの上面の単位層ULを撮影して隙間の有無を判定したが、カメラ40に代えてレーザスキャンやX線CTを用いることで、深さ方向を含めた診断を行うことができ、より正確な追充填樹脂容量を算出することができる。
2a…外縁部、 2b…内側部分、 3a,3b…走査パス、 3d,3e…追加部分、 4a,4b…隙間、 5a…変曲点、 5b…隅部分、 8a,18a,18b…造形材料、 20…造形材料取扱部、 20a…ヘッド部、 21…造形材料供給部、 22…造形材料吐出部、 22a…ノズル、 22c…ノズル吐出口、 23…加熱部、 23a…ヒーター、 30…3次元駆動部、 31…ヘッド駆動部、 32…ステージ駆動部、 38…ステージ、 40…カメラ、 80…制御部、 81…入出力部、 82…演算処理部、 83…記憶部、 100…造形装置、 AR1…領域、 FO…造形物、 MR…溶融樹脂、 UL…単位層
Claims (9)
- ノズルに設けたノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形方法であって、
造形物の形状データから前記ノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う際に、所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して前記造形条件を変更することを特徴とする造形方法。 - 事前に把握した前記ノズル吐出口から吐出された後の樹脂の形状データを元に、単位層毎に基本条件による粗密及び隙間を判定し、所定の許容度を超えた区分領域において前記基本条件を修正することを特徴とする請求項1に記載の造形方法。
- 前記走査パスに従って一つの単位層を造形した段階で隙間の有無を判別し、当該隙間を充填することを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載の造形方法。
- 前記隙間の有無の判別は、画像認識により行うことを特徴とする請求項3に記載の造形方法。
- 前記走査パスに従って一つの単位層を造形した後に当該一つの単位層上に次の単位層を造形する際に、前記一つの単位層に生じた隙間を充填するように修正された造形条件で前記次の単位層を造形することを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載の造形方法。
- 前記次の単位層を造形する際の前記造形条件は、造形後の前記一つの単位層に対する画像認識による隙間の判別と、事前に把握した前記ノズル吐出口から吐出された後の樹脂の形状データとのいずれかに基づいて修正されることを特徴とする請求項5に記載の造形方法。
- 前記隙間を充填する箇所を可視化表示することを特徴とする請求項3及び4のいずれか一項に記載の造形方法。
- ノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形装置であって、
造形物の形状データから前記ノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う走査条件設定部と、
所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して前記造形条件を変更する条件変更部とを備えることを特徴とする造形装置。 - ノズル吐出口から樹脂を押し出しつつ走査し積層するように堆積させて3次元形状を形成する造形装置を制御する制御装置で動作する造形制御プログラムであって、
前記造形装置を、
造形物の形状データから前記ノズル吐出口による走査パスの作成と走査に際しての造形条件の設定とを行う走査条件設定部、及び
所定の単位層内の部分領域について、周囲に対して前記造形条件を変更する条件変更部
として機能させることを特徴とする造形制御プログラム。
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