JP2019022476A - グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定 - Google Patents

グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定 Download PDF

Info

Publication number
JP2019022476A
JP2019022476A JP2017232549A JP2017232549A JP2019022476A JP 2019022476 A JP2019022476 A JP 2019022476A JP 2017232549 A JP2017232549 A JP 2017232549A JP 2017232549 A JP2017232549 A JP 2017232549A JP 2019022476 A JP2019022476 A JP 2019022476A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
gdh
amino acid
fad
seq
positions
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017232549A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019022476A5 (ja
Inventor
陽介 鉞
Yosuke Etsu
陽介 鉞
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kikkoman Corp
Original Assignee
Kikkoman Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kikkoman Corp filed Critical Kikkoman Corp
Publication of JP2019022476A publication Critical patent/JP2019022476A/ja
Publication of JP2019022476A5 publication Critical patent/JP2019022476A5/ja
Priority to JP2022160290A priority Critical patent/JP2022173549A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Abstract

【課題】溶存酸素の影響を受けにくく、長期間のモニタリング可能な持続血糖測定方法、及びそのためのデバイスを提供すること。【解決手段】本発明は、(a) pH 7.0にて40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、又は(b) pH 7.0にて40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)を用いる、持続血糖測定方法及び装置に関する。さらに脱糖鎖処理されたグルコースデヒドロゲナーゼ及び糖鎖付加部位の改変されたグルコースデヒドロゲナーゼが提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定方法及び装置に関する。
血中グルコース濃度(血糖値)は、糖尿病の重要なマーカーである。糖尿病の診断及び管理には、連続グルコースモニタリング(CGM)システムが重要である。CGMシステムは数日〜1、2週間の期間、血中グルコースレベルを測定することが出来る。CGMシステムはグルコースセンサーを有する。CGMは、持続血糖測定、或いは連続グルコースモニタリングと呼ばれる(本明細書ではこれらの用語は相互に置き換え可能とする)。
グルコースレベルの測定はグルコースオキシダーゼ(GOD)を用いて行うことができる。GODはグルコースを酸化する際に、酸素を電子受容体とする。これは測定サンプル中に存在する溶存酸素の影響を受けうる。我々の知る限り、現在の市販CGMデバイスはいずれもGODに基づく。特定のGOD、例えばアスペルギルス属、例えばAspergillus niger等の微生物に由来するGODは、過酷な熱条件下でも活性を保持することが知られている(非特許文献1)。そのため、CGMデバイスでは、一般に、熱安定なGODが用いられている。
Burkholderia cepacia由来のGDHを用いてCGMデバイスの構築が検討されている。しかしながら、GODを用いたCGMやBurkholderia cepacia由来のGDHを用いて構築したCGMデバイスは、1日に数回のキャリブレーションが必要である(例えば非特許文献2)。これはGODやGDHが時間経過により失活しているからであると考えられる。
特許文献1は、ムコール属由来のGDHを開示している。
非特許文献3はMucor prainii由来のFAD-GDHを開示している。当該文献には、GOD(E.C. 1.1.3.4)がその高い熱安定性と高いグルコース選択性のため、アンペロメトリー用グルコースセンサーとして広く使用されてきたことが記載されている。
特許文献2は、Burkholderia cepacia由来のGDHを開示している。開示されているGDHは膜結合性タンパク質であり、シトクロムドメインを有する。B. cepacia由来のGDHのアミノ酸配列はムコール属由来のFAD依存性GDHと類似していない。
特許文献3はMucor guilliermondii (MgGDH)由来のGDHを開示している。
特許文献4はMucor hiemalis (MhGDH) 由来のGDHを開示している。この文献には、MhGDHのSMBG用センサーへの応用が開示されている。
特許文献5はCircinella simplex由来のCsGDH及びCircinella sp.由来のCRGDHを開示している。
特許文献6はMucor RD056860由来のMrdGDHを開示している。この文献には、MrdGDHのSMBG用センサーへの応用が開示されている。
特許文献7はMucor subtilissimus由来のMsGDHを開示している。
特許文献8及び特許文献9は、それぞれ、M. prainii由来のGDHを開示している。
非特許文献4は、セロビオースデヒドロゲナーゼを用いた酵素センサーについて、脱糖鎖により応答電流が上がる、すなわちセンサー感度が上がることを記載している。しかしながら一般的に、糖鎖修飾された酵素について脱糖鎖を行うと、安定性が低下することが知られていた(非特許文献5)。
国際公開第2015/099112号(US2016/0319246) 国際公開第2002/036779号(US2004/0023330) 国際公開第2013/051682号 特開2013-116102号 国際公開第2013/022074号(US2014/0154777) 特開2013-176363号 特開2013-176364号 国際公開第2012/169512号(US2014/0287445) 国際公開第2015/129475号(EP3112461) 国際公開第2017/1957665号
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 27, Issue of July 4, pp. 24324-24333, 2003 Sekimoto, et al., American Diabetes Association, 76th Scientific Sessions, 2016, 881-P-2016 Satake, et al., J Biosci Bioeng. 2015 Nov;120(5):498-503 Anal Bioanal Chem (2013) 405:3637-3658 Nippon Nogeikagaku Kaishi(1993) Vol.67 (6),46-47
本発明は、溶存酸素の影響を受けにくく、長期間のモニタリング可能な連続グルコースモニタリング(CGM)方法、及びそのためのデバイスを提供することを目的とする。
CGMは、理論上はGDH又はGODを有するグルコースセンサーにより実装できる。グルコースデヒドロゲナーゼはグルコースを脱水素するに当たり、電子アクセプターを用いる。これは溶存酸素の影響を受けにくいため、測定に有利であり得る。
しかしながら本発明者の知る限り、現在市販されているCGMデバイスはいずれもGODに基づく。これはGODの熱安定性に起因するものと考えられる。特定のGOD、例えばアスペルギルス属、例えばAspergillus niger等の微生物に由来するGODは、過酷な熱条件下でも活性を保持することが知られている(非特許文献1)。GODは、GDHと比較して、過酷な熱条件下ではより高い活性を保持することが知られており、グルコースセンサーに適した酵素については特にそうである。これはGODがGDHよりも安定であることを示唆している。
このような中で本発明者は、驚くべきことに特定のFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼが、現在のCGMに使用されている公知のGODと比較して、より高い長期安定性を有することを見出し、本発明を完成させた。このFAD-GDH酵素は種々の用途において有用であり、例えばグルコース測定や、連続グルコースモニタリングに用いることができる。さらに本発明者は、脱糖鎖処理されたGDHや糖鎖付加部位を改変され付加糖鎖の低減されたGDHを製造し試験したところ、安定してグルコースを測定しうることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の実施形態を包含する。
[1] (a) pH 7.4にて40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、又は
(b) pH 7.4にて40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、
FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)を用いる、グルコース測定方法。
[2] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、配列番号3、4、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)からなる群より選択されるものである、1に記載の方法。
[3] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、糖鎖富化されたものである、2に記載の方法。
[4] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、脱糖鎖処理されたものであるか又は糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減された変異体である、2に記載の方法。
[5] 前記糖鎖付加部位の改変が、
配列番号1の25位、101位、143位、156位、172位、198位、205位、214位、256位、247位、268位、353位、365位、379位、401位、402位、417位、430位、459位、496位、及び550位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置におけるアスパラギン以外のアミノ酸への置換であるか、
配列番号1の27位、103位、145位、158位、174位、200位、207位、216位、249位、258位、270位、355位、367位、381位、403位、404位、419位、432位、461位、498位、及び552位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置における、セリン及びトレオニン以外のアミノ酸への置換であるか、並びに/又は
配列番号1の26位、102位、144位、157位、173位、199位、206位、215位、257位、248位、269位、354位、366位、380位、402位、403位、418位、431位、460位、497位及び551位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置のアミノ酸のプロリンへの置換である、4に記載の方法。
[6] (a) pH 7.4にて40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、又は
(b) pH 7.4にて40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、
FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)を含むグルコースセンサーを備えてなる、連続グルコースモニタリングデバイス。
[7] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、配列番号3、4、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)からなる群より選択されるものである、6に記載のデバイス。
[8] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、糖鎖富化されたものである、7に記載のデバイス。
[9] 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、脱糖鎖処理されたものであるか又は糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減された変異体である、7に記載のデバイス。
[10] 配列番号1、3、4、5、6、7、8、9、12、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼであって、
配列番号1の25位、101位、143位、156位、172位、198位、205位、214位、256位、247位、268位、353位、365位、379位、401位、402位、417位、430位、459位、496位、及び550位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置におけるアスパラギン以外のアミノ酸への置換であるか、
配列番号1の27位、103位、145位、158位、174位、200位、207位、216位、249位、258位、270位、355位、367位、381位、403位、404位、419位、432位、461位、498位、及び552位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置における、セリン及びトレオニン以外のアミノ酸への置換であるか、並びに/又は
配列番号1の26位、102位、144位、157位、173位、199位、206位、215位、257位、248位、269位、354位、366位、380位、402位、403位、418位、431位、460位、497位及び551位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置のアミノ酸のプロリンへの置換である、糖鎖付加部位の改変を有し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有し、低減された糖鎖を有するグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
[11] a)配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がセリン及びトレオニン以外のアミノ酸に置換されている、
b)配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン以外のアミノ酸に置換されている、
c)配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がセリン及びトレオニン以外のアミノ酸に置換されている、及び/又は
d)配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン以外のアミノ酸に置換されている、
10に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
[12] A)配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されている、
B)配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されている、
C)配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されている、及び/又は
D)配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、
10又は11に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
[13]i) 配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されており、かつ配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されている、
ii) 配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されており、かつ配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、又は
iii) 配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されており、配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されており、配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、かつ配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、
10〜12のいずれかに記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-111102号及び日本国特許出願番号2017-153711号の開示内容を包含する。
本発明によれば、FAD-GDHをセンサーに備えたCGM装置、及び当該装置を用いるCGM方法を提供できる。ほとんどのGODに基づくCGMシステムは、一定期間ごとに、例えば12時間おきに、センサーの全寿命にわたり指先穿刺によるキャリブレーションを必要とする。これはCGMデバイスが使用される30-40℃の周囲温度ではセンサー酵素の活性が急激に低下するためである。これに対して、本発明のCGM装置及び方法は、指先穿刺によるキャリブレーションの必要なしに、或いはより低頻度のキャリブレーションのみにて使用することができ、これは使用者の負担を減らしQOLを向上させるものであり、CGMデバイスにとって実用上有用である。
各種由来のGDHのマルチプルアライメントを示す。MpGDHはMucor prainii由来GDH(配列番号1)であり、MhGDHはMucor hiemalis由来GDH(配列番号3)であり、MrdGDHはMucor RD056860由来GDH(配列番号4)であり、MsGDHはMucor subtilissimus由来GDH(配列番号5)であり、MgGDHはMucor guilliermondii由来GDH(配列番号6)であり、CsGDHはCircinella simplex由来GDH(配列番号7)であり、CrGDHはCircinella属由来GDH(配列番号8)であり、McGDHはMucor circinelloides由来GDH(配列番号9)である。 図1−1のつづきである。 図1−2のつづきである。 図1−3のつづきである。
(FAD-GDHの作用原理および活性測定法)
FAD-GDHは、電子受容体存在下でグルコースの水酸基を酸化してグルコノ-δ-ラクトンを生成する反応を触媒する。
FAD-GDHの活性は、この作用原理を利用し、例えば、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)および2,6-ジクロロインドフェノール(DCIP)を用いた以下の系を用いて測定することができる。
(反応1) D-グルコ−ス + PMS(酸化型)
→ D-グルコノ-δ-ラクトン + PMS(還元型)
(反応2) PMS(還元型) + DCIP(酸化型)
→ PMS(酸化型) + DCIP(還元型)
(反応1)において、グルコースの酸化に伴い、PMS(還元型)が生成する。続いて進行する(反応2)により、PMS(還元型)が酸化されるのに伴ってDCIPが還元される。この「DCIP(酸化型)」の消失度合を波長600nmにおける吸光度の変化量として検知し、この変化量に基づいて酵素活性を求めることができる。
FAD-GDHの活性は、以下の手順に従って測定する。100mMリン酸緩衝液(pH7.0) 2.05mL、1M D-グルコース溶液 0.6mLおよび2mM DCIP溶液 0.15mLを混合し、37℃で5分間保温する。次いで、15mM PMS溶液 0.1mLおよび酵素サンプル溶液0.1mLを添加し、反応を開始する。反応開始時、および経時的な吸光度を測定し、酵素反応の進行に伴う600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量(ΔA600)を求め、次式に従いGDH活性を算出する。この際、GDH活性は、37℃において濃度200mMのD-グルコース存在下で1分間に1μmolのDCIPを還元する酵素量を1Uと定義する。
Figure 2019022476
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素試薬の液量(mL)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/μmol)、0.1は酵素溶液の液量(mL)、1.0はセルの光路長(cm)、ΔA600blankは酵素の希釈に用いた緩衝液を酵素サンプル溶液の代わりに添加して反応開始した場合の600nmにおける吸光度の1分間あたりの減少量、dfは希釈倍数を表す。
(FAD-GDHのアミノ酸配列)
FAD-GDHは、配列番号3若しくは配列番号4若しくは配列番号14若しくは配列番号22で示されるアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列と同一性の高い、例えば70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上同一なアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列において1もしくは数個(例えば15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個又は2個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものであり得る。
また、FAD-GDHには、熱安定性を向上させる変異、マルトースへの反応性を低減させる変異、温度依存性を改善させる変異や、pHや特定の物質などへの耐性を向上させる変異のような変異、例えばそのような効果を奏する各種公知の変異を任意に組み合わせてもよい。
アミノ酸置換の導入方法としては、例えばランダムに変異を導入する方法あるいは想定した位置に部位特異的変異を導入する方法が挙げられる。前者としては、エラープローンPCR法(Techniques,1,11-15,(1989))や、増殖の際、プラスミドの複製にエラーを起こしやすく、改変を生じやすいXL1-Redコンピテントセル(STRATAGENE社製)を用いる方法等がある。また、後者として、目的タンパク質の結晶構造解析により立体構造を構築し、その情報をもとに目的の効果を付与すると予想されるアミノ酸を選択し、市販のQuick Change Site Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE社製)等により部位特異的変異を導入する方法がある。あるいは、目的タンパク質と相同性の高い公知のタンパク質の立体構造を用いてモデリングを行い、目的の効果を付与すると予想されるアミノ酸を選択し、部位特異的変異を導入することもできる。
FAD-GDHには、上記の同一性の範囲内で各種のバリエーションが想定されるが、各種FAD-GDHの酵素科学的性質が本明細書に記載するFAD-GDHと同様である限り、それらは全て本発明に含まれ得る。
また、FAD-GDHにおいて、アミノ酸配列が配列番号3若しくは配列番号4若しくは配列番号14若しくは配列番号22又はこれと80%以上のアミノ酸配列同一性を有することが重要であり、それが天然から取得されたものか、人工合成による配列であるかを問わない。例えばGDHは、発現宿主に応じてコドン最適化された遺伝子によりコードされるものであり得る。
(FAD-GDHの長期安定性)
GODやFAD-GDHの長期安定性は、本明細書中に記載の活性測定方法及び長期安定性測定方法に記載した条件において評価される。長期安定性は、初期活性及び所定期間経過後の残存活性から決定する。初期活性と残存活性の比を計算するために、酵素活性は、初期状態及び加温後において同じ条件で測定する。試験の初期状態における活性を100%とし、例えば30-40℃の周囲温度で所定期間、例えば1日〜3週間にわたり酵素を加温し、その後の残存活性を測定する。ある実施形態において、保存試験の溶液のpHは6.9〜7.4、例えば7.0である。これは血液のpHが中性付近であるためである。pHはPBSのようなリン酸緩衝液などの慣用のバッファーにより調整しうるが、緩衝剤や緩衝液はこれに限らない。
ある実施形態において、FAD-GDHは、pH 7.0にて、
(a) 30-40℃、例えば40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上、36%以上、37%以上、38%以上、39%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、例えば65%以上、70%以上、75%以上、例えば80%以上、85%以上、86%以上、87%以上、89%以上、90%以上、例えば95%、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、
(b) 30-40℃、例えば40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、35%以上、40%以上、例えば45%以上、50%以上、55%以上、例えば60%以上、70%以上、75%以上、例えば80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、89%以上、90%以上、例えば95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、または
(c) 30-40℃、例えば40℃で3週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、19%以上、20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、例えば35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、例えば60%、70%以上、75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、例えば95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、長期安定性(連続グルコースモニタリングに適した安定性)を有し得る。ある実施形態において、この性質は、必ずしも、酵素の熱安定性(例えば55℃15分の熱処理後の残存活性)と相関するわけではない。
(FAD-GDHをコードする遺伝子の取得)
ある実施形態において、FAD-GDHをコードする遺伝子は、例えば特許文献4又は特許文献6の開示に基づき取得することができる。これとアミノ酸配列同一性の高いFAD-GDHを取得するには、遺伝子工学的手法を利用することができる。FAD-GDHをコードする遺伝子(以下、FAD-GDH遺伝子)を取得するには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法を用いればよい。FAD-GDHを取得するには、FAD-GDH生産能を有する公知の微生物菌体や種々の細胞から、常法、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (WILEY Interscience,1989)記載の方法により、染色体DNA又はmRNAを抽出することができる。さらにmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNA又はcDNAを用いて、染色体DNA又はcDNAのライブラリーを作製することができる。
ついで、公知のFAD-GDHのアミノ酸配列情報に基づき、適当なプローブDNAを合成して、これを用いて染色体DNA又はcDNAのライブラリーから基質特異性の高いFAD-GDH遺伝子を選抜する方法、あるいは、上記アミノ酸配列に基づき、適当なプライマーDNAを作製して、5’RACE法や3’RACE法などの適当なポリメラーゼ連鎖反応(PCR法)により、基質特異性の高いFAD-GDHをコードする目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらのDNA断片を連結させて、目的のFAD-GDH遺伝子の全長を含むDNAを得ることができる。
取得されたFAD-GDH遺伝子に変異を導入し、各種の変異遺伝子から発現されるFAD-GDHの酵素科学的性質を指標に選択を行う方法を採用し得る。
出発物質であるFAD-GDH遺伝子の変異処理は、企図する変異形態に応じた、公知の任意の方法で行うことができる。すなわち、FAD-GDH遺伝子あるいは当該遺伝子の組み込まれた組換え体DNAと変異原となる薬剤とを接触・作用させる方法;紫外線照射法;遺伝子工学的手法;又は蛋白質工学的手法を駆使する方法等を広く用いることができる。
上記変異処理に用いられる変異原となる薬剤としては、例えば、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸、亜硫酸、ヒドラジン、蟻酸、若しくは5-ブロモウラシル等を挙げることができる。
この接触・作用の諸条件は、用いる薬剤の種類等に応じた条件を採ることが可能であり、現実に所望の変異をFAD-GDH遺伝子において惹起することができる限り特に限定されない。通常、好ましくは0.5〜12Mの上記薬剤濃度において、20〜80℃の反応温度下で10分間以上、好ましくは10〜180分間接触・作用させることで、所望の変異を惹起可能である。紫外線照射を行う場合においても、上記の通り常法に従い行うことができる(現代化学、p24〜30、1989年6月号)。
蛋白質工学的手法を駆使する方法としては、一般的に、Site-Specific Mutagenesisとして知られる手法を用いることができる。例えば、Kramer法 (Nucleic Acids Res.,12,9441(1984):Methods Enzymol.,154,350(1987):Gene,37,73(1985))、Eckstein法(Nucleic Acids Res.,13,8749(1985):Nucleic Acids Res.,13,8765(1985):Nucleic Acids Res,14,9679(1986))、Kunkel法(Proc. Natl. Acid. Sci. U.S.A.,82,488(1985):Methods Enzymol.,154,367(1987))等が挙げられる。DNA中の塩基配列を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Mutagenesis Kit;Clonetech社、EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製、Quick Change Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の利用が挙げられる。
また、一般的なポリメラーゼチェインリアクション(Polymerase Chain Reaction)として知られる手法を用いることもできる(Technique,1,11(1989))。なお、上記遺伝子改変法の他に、有機合成法又は酵素合成法により、直接所望のFAD-GDH遺伝子を合成することもできる。
上記のような任意の方法により選択されたFAD-GDH遺伝子のDNA塩基配列の決定又は確認を行う場合には、例えば、マルチキャピラリーDNA解析システムCEQ2000(ベックマン・コールター社製)等を用いれば良い。
(FAD-GDHの由来となる天然型FAD-GDHの例)
FAD-GDHは、他の公知のFAD-GDHより取得することもできる。公知のFAD-GDHの由来微生物の好適な例としては、ケカビ亜門、好ましくはケカビ綱、より好ましくはケカビ目、さらに好ましくはケカビ科に分類される微生物を挙げることができる。具体的には、ムコール(Mucor)属、アブシジア(Absidia)属、アクチノムコール(Actinomucor)属、シルシネラ(Circinella)属由来のFAD-GDH等が挙げられる。
Mucor属に分類される微生物であって、具体的な好ましい微生物の例としては、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides f. circinelloides、Mucor guilliermondii、Mucor hiemalis f. silvaticus、Mucor subtilissimus、Mucor dimorphosporus等が挙げられる。より具体的には、Mucor prainii、Mucor javanicus、Mucor circinelloides f. circinelloides、Mucor guilliermondii NBRC9403、特許文献4に記載のMucor hiemalis、Mucor hiemalis f. silvaticus NBRC6754、Mucor subtilissimus NBRC6338、特許文献6に記載のMucor RD056860、Mucor dimorphosporus NBRC5395等が挙げられる。Absidia属に分類される微生物であって、具体的な好ましい微生物の例としては、Absidia cylindrospora、Absidia hyalosporaを挙げることができる。より具体的には、特許文献5に記載のAbsidia cylindrospora、Absidia hyalosporaを挙げることができる。Actinomucor属に分類される微生物であって、具体的な好ましい微生物の例としては、Actinomucor elegansを挙げることができる。より具体的には、特許文献5に記載のActinomucor elegansを挙げることができる。Circinella属に分類される微生物であって、具体的な好ましい微生物の例としては、Circinella minor、Circinella mucoroides、Circinella muscae、Circinella rigida、Circinella simplex、Circinella umbellataを挙げることができる。より具体的には、Circinella minor NBRC6448、Circinella mucoroides NBRC4453、Circinella muscae NBRC6410、Circinella rigida NBRC6411、Circinella simplex NBRC6412、Circinella umbellata NBRC4452、Circinella umbellata NBRC5842、Circinella RD055423及びCircinella RD055422を挙げることができる。なお、NBRC菌株およびRD菌株はNBRC(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター)の保管菌株である。
(FAD-GDH遺伝子が挿入されたベクターおよび宿主細胞)
上述のように得られたFAD-GDH遺伝子を、常法により、バクテリオファージ、コスミド、又は原核細胞若しくは真核細胞の形質転換に用いられるプラスミド等のベクターに組み込み、各々のベクターに対応する宿主細胞を常法により、形質転換又は形質導入をすることができる。
原核宿主細胞の一例としては、エシェリヒア属に属する微生物、例えば大腸菌K-12株、エシェリヒア・コリーBL21(DE3)、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5α、エシェリヒア・コリーW3110、エシェリヒア・コリーC600等(いずれもタカラバイオ社製)が挙げられる。それらを形質転換し、又は、それらに形質導入して、DNAが導入された宿主細胞(形質転換体)を得る。こうした宿主細胞に組み換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主細胞がエシェリヒア・コリーに属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組み換えDNAの移入を行う方法などを採用することができる、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には市販のコンピテントセル(例えばECOS Competent エシェリヒア・コリーBL21(DE3);ニッポンジーン製)を用いても良い。
真核宿主細胞の一例としては、酵母が挙げられる。酵母に分類される微生物としては、例えば、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属などに属する酵母が挙げられる。挿入遺伝子には、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、TRP1のような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子等が挙げられる。また、挿入遺伝子は、宿主細胞中で目的遺伝子を発現することのできるプロモーター又はその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)を含むことが望ましい。プロモーターとしては、具体的には、例えば、GAL1プロモーター、ADH1プロモーター等が挙げられる。酵母への形質転換方法としては、公知の方法、例えば、酢酸リチウムを用いる方法(MethodsMol. Cell. Biol., 5, 255-269(1995))やエレクトロポレーション(J Microbiol Methods 55 (2003)481-484)等を好適に用いることができるが、これに限定されず、スフェロプラスト法やガラスビーズ法等を含む各種任意の手法を用いて形質転換を行えばよい。
また、例えば、真核宿主細胞の他の例としては、アスペルギルス(Aspergillus)属やトリコデルマ(Tricoderma)属のようなカビ細胞が挙げられる。カビ細胞の形質転換体の作製方法は特に限定されず、例えば、常法に従って、GDHをコードする遺伝子が発現する態様で宿主糸状菌に挿入する方法が挙げられる。具体的には、GDHをコードする遺伝子を発現誘導プロモーター及びターミネーターの間に挿入したDNAコンストラクトを作製し、次いでGDHをコードする遺伝子を含むDNAコンストラクトで宿主糸状菌を形質転換することにより、GDHをコードする遺伝子を過剰発現する形質転換体が得られる。本明細書では、宿主糸状菌を形質転換するために作製された、発現誘導プロモーター−GDHをコードする遺伝子−ターミネーターからなるDNA断片及び該DNA断片を含む組換えベクターをDNAコンストラクトと総称してよぶ。
GDHをコードする遺伝子が発現する態様で宿主糸状菌に挿入する方法は特に限定されないが、例えば、相同組換えを利用することにより宿主生物の染色体上に直接的に挿入する手法;プラスミドベクター上に連結することにより宿主糸状菌内に導入する手法などが挙げられる。
相同組換えを利用する方法では、染色体上の組換え部位の上流領域及び下流領域と相同な配列の間に、DNAコンストラクトを連結し、宿主糸状菌のゲノム中に挿入することができる。自身の高発現プロモーター制御下で宿主糸状菌内で過剰発現することにより、セルフクローニングによる形質転換体を得ることができる。高発現プロモーターは特に限定されないが、例えば、翻訳伸長因子であるTEF1遺伝子(tef1)のプロモーター領域、α−アミラーゼ遺伝子(amy)のプロモーター領域、アルカリプロテアーゼ遺伝子(alp)プロモーター領域などが挙げられる。
ベクターを利用する方法では、DNAコンストラクトを、常法により、糸状菌の形質転換に用いられるプラスミドベクターに組み込み、対応する宿主糸状菌を常法により形質転換することができる。
そのような、好適なベクター−宿主系としては、宿主糸状菌中でGDHを生産させ得る系であれば特に限定されず、例えば、pUC19及び糸状菌の系、pSTA14(Mol. Gen. Genet. 218, 99-104, 1989)及び糸状菌の系などが挙げられる。
DNAコンストラクトは宿主糸状菌の染色体に導入して用いることが好ましいが、この他の方法として、自律複製型のベクター(Ozeki et al. Biosci. Biotechnol. Biochem. 59, 1133 (1995))にDNAコンストラクトを組み込むことにより、染色体に導入しない形で用いることもできる。
DNAコンストラクトには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子は特に限定されず、例えば、pyrG、niaD、adeAのような、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子;ピリチアミン、ハイグロマイシンBオリゴマイシンなどの薬剤に対する薬剤耐性遺伝子などが挙げられる。また、DNAコンストラクトは、宿主細胞中でGDHをコードする遺伝子を過剰発現することを可能にするプロモーター、ターミネーターその他の制御配列(例えば、エンハンサー、ポリアデニル化配列など)を含むことが好ましい。プロモーターは特に限定されないが、適当な発現誘導プロモーターや構成的プロモーターが挙げられ、例えば、tef1プロモーター、alpプロモーター、amyプロモーターなどが挙げられる。ターミネーターもまた特に限定されないが、例えば、alpターミネーター、amyターミネーター、tef1ターミネーターなどが挙げられる。
DNAコンストラクトにおいて、GDHをコードする遺伝子の発現制御配列は、挿入するGDHをコードする遺伝子を含むDNA断片が、発現制御機能を有している配列を含む場合は必ずしも必要ではない。また、共形質転換法により形質転換を行う場合には、DNAコンストラクトはマーカー遺伝子を有しなくてもよい場合がある。
DNAコンストラクトの一実施態様は、例えば、pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn−Fusion Cloning Siteに、tef1遺伝子プロモーター、GDHをコードする遺伝子、alp遺伝子ターミネーター及びpyrGマーカー遺伝子を連結させたDNAコンストラクトである。
糸状菌への形質転換方法としては、当業者に知られる方法を適宜選択することができ、例えば、宿主糸状菌のプロトプラストを調製した後に、ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いるプロトプラストPEG法(例えば、Mol. Gen. Genet. 218, 99-104, 1989、特開2007−222055号公報などを参照)を用いることができる。形質転換糸状菌を再生させるための培地は、用いる宿主糸状菌と形質転換マーカー遺伝子とに応じて適切なものを用いる。例えば、宿主糸状菌としてアスペルギルス・ソーヤを用い、形質転換マーカー遺伝子としてpyrG遺伝子を用いた場合は、形質転換糸状菌の再生は、例えば、0.5%寒天及び1.2Mソルビトールを含むCzapek−Dox最少培地(ディフコ社)で行うことができる。
また、例えば、本発明の形質転換糸状菌を得るために、相同組換えを利用して、宿主糸状菌が本来染色体上に有するGDHをコードする遺伝子のプロモーターをtef1などの高発現プロモーターへ置換してもよい。この際も、高発現プロモーターに加えて、pyrGなどの形質転換マーカー遺伝子を挿入することが好ましい。例えば、この目的のために、特開2011−239681に記載の実施例1や図1を参照して、GDHをコードする遺伝子の上流領域−形質転換マーカー遺伝子−高発現プロモーター−GDHをコードする遺伝子の全部又は部分からなる形質転換用カセットなどが利用できる。この場合、GDHをコードする遺伝子の上流領域及びGDHをコードする遺伝子の全部又は部分が相同組換えのために利用される。GDHをコードする遺伝子の全部又は部分は、開始コドンから途中の領域を含むものが使用できる。相同組換えに適した領域の長さは0.5kb以上あることが好ましい。
本発明の形質転換糸状菌が作製されたことの確認は、GDHの酵素活性が認められる条件下で本発明の形質転換糸状菌を培養し、次いで培養後に得られた培養物におけるGDHの活性を確認することにより行うことができる。
また、本発明の形質転換糸状菌が作製されたことの確認は、形質転換糸状菌から染色体DNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行い、形質転換が起きた場合に増幅が可能なPCR産物が生じることを確認することにより行ってもよい。
例えば、用いたプロモーターの塩基配列に対するフォワードプライマーと、形質転換マーカー遺伝子の塩基配列に対するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、想定の長さの産物が生じることを確認する。
(ハイスループットスクリーニング)
GDHはさらに、機能性GDH変異体を取得するためにハイスループットスクリーニングに供することができる。例えば変異導入したGDH遺伝子を有する形質転換又は形質導入株のライブラリーを作製し、これをマイクロタイタープレートに基づくハイスループットスクリーニングに供してもよく、又は液滴型マイクロ流体に基づく超ハイスループットスクリーニングに供してもよい。例としてはバリアントをコードする変異遺伝子のコンビナトリアルライブラリーを構築し、次いでファージディスプレイ(例えばChem. Rev. 105 (11): 4056-72, 2005)、イーストディスプレイ(例えばComb Chem High Throughput Screen. 2008;11(2): 127-34)、バクテリアルディスプレイ(例えばCurr Opin Struct Biol 17: 474-80, 2007)等を用いて、変異GDHの大きな集団をスクリーニングする方法が挙げられる。またAgresti et al, "Ultrahigh-throughput screening in drop-based microfluidics for directed evolution" Proceedings of the National Academy of Sciences 107 (9): 4004-4009 (Mar, 2010)を参照のこと。GDHバリアントのスクリーニングに使用しうる超ハイスループットスクリーニング手法についての同文献の記載を参照により本明細書に組み入れる。例えばエラープローンPCR法によりライブラリーを構築することができる。また飽和突然変異誘発を用いて、本明細書に記載の領域や位置又はそれらに対応する領域や位置を標的として変異導入しライブラリーを構築してもよい。ライブラリーを用いて電気コンピテントEBY-100細胞等の適当な細胞を形質転換し、約10の7乗の変異体を取得しうる。該ライブラリーで形質転換した酵母細胞を次いでセルソーティングに供しうる。標準ソフトリトグラフィー法を用いて作製したポリジメトキシルシロキサン(PDMS)マイクロ流体デバイスを用いてもよい。フローフォーカスデバイスを用いて単分散の液滴を形成することができる。個別の変異体を含有する形成された液滴を適当なソーティングデバイスに供しうる。細胞を選別する際にはGDH活性の有無を利用しうる。これには例えば上記のGDHが作用すれば発色する組成とした反応液を用いてもよい。例えばDCIPを用いる場合は、96ウェルプレート、192ウェルプレート、384ウェルプレート、9600ウェルプレート等及びプレートリーダーを用いて600nmの吸光度を測定してもよい。変異導入と選別は複数回反復してもよい。
(FAD-GDH酵素の製造方法)
FAD-GDH酵素は、上述のように取得したFAD-GDHを生産する宿主細胞を培養し、前記宿主細胞中に含まれるFAD-GDH遺伝子を発現させ、次いで、前記培養物からFAD-GDHを単離することにより製造すればよい。
上記宿主細胞を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、トリプトン、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーあるいは大豆若しくは小麦ふすまの浸出液等の1種以上の窒素源に、塩化ナトリウム、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化第2鉄、硫酸第2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の1種以上を添加し、さらに必要により糖質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
培地の初発pHは、限定されないが、例えば、pH 6〜9に調整することができる。培養は、10〜42℃の培養温度、好ましくは25℃前後の培養温度で4〜24時間、さらに好ましくは25℃前後の培養温度で4〜8時間、通気攪拌深部培養、振盪培養、静置培養等により実施すればよい。
培養終了後、該培養物よりFAD-GDH酵素を採取する。これには、通常の公知の酵素採取手段を用いればよい。例えば、常法により菌体を、超音波破壊処理、磨砕処理等するか、もしくはリゾチームやヤタラーゼ等の溶菌酵素を用いて本酵素を抽出するか、又はトルエン等の存在下で振盪若しくは放置して溶菌を行わせ、本酵素を菌体外に排出させることができる。そして、この溶液を濾過、遠心分離等して固形部分を除去し、必要によりストレプトマイシン硫酸塩、プロタミン硫酸塩、若しくは硫酸マンガン等により核酸を除去したのち、これに硫安、アルコール、アセトン等を添加して分画し、沈澱物を採取し、FAD-GDHの粗酵素を得る。
FAD-GDHの粗酵素を、公知の任意の手段を用いてさらに精製することもできる。精製された酵素標品を得るには、例えば、セファデックス、ウルトロゲル若しくはバイオゲル等を用いるゲル濾過法;イオン交換体を用いる吸着溶出法;ポリアクリルアミドゲル等を用いる電気泳動法;ヒドロキシアパタイトを用いる吸着溶出法;蔗糖密度勾配遠心法等の沈降法;アフィニティクロマトグラフィー法;分子ふるい膜若しくは中空糸膜等を用いる分画法等を適宜選択し、又はこれらを組み合わせて実施することにより、精製されたFAD-GDH酵素標品を得ることができる。
(FAD-GDHを用いたグルコース測定方法)
本発明はまた、FAD-GDHを含むグルコースアッセイキットを提供する。FAD-GDHを用いて血中のグルコース(血糖値)を測定することができる。
グルコースアッセイキットには、少なくとも1回のアッセイに十分な量のFAD-GDHを含む。典型的には、グルコースアッセイキットは、FAD-GDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液を含む。グルコース測定法やグルコースアッセイキットに用いるFAD-GDHは、種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、又は適切な保存溶液中に溶解されて提供することができる。
グルコース濃度の測定は、比色式グルコースアッセイキットの場合は、例えば、以下のよう行うことができる。グルコースアッセイキットの反応層にはFAD-GDH、電子受容体、そして反応促進剤としてN-(2-アセトアミド)イミド2酢酸(ADA)、ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、炭酸ナトリウムおよびイミダゾールからなる群より選ばれる1以上の物質を含む液状もしくは固体状の組成物を保持させておく。ここで、必要に応じてpH緩衝剤、発色試薬を添加する。ここにグルコースを含む試料を加え、一定時間反応させる。この間、還元により退色する電子受容体もしくは電子受容体より電子を受け取ることによって重合し生成する色素の最大吸収波長に相当する吸光度をモニタリングする。レート法であれば、吸光度の時間あたりの変化率から、エンドポイント法であれば、試料中のグルコースがすべて酸化された時点までの吸光度変化から、予め標準濃度のグルコース溶液を用いて作成したキャリブレーションカーブを元にして、試料中のグルコース濃度を算出することができる。
この方法において使用できるメディエーター及び発色試薬としては、例えば、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)を電子受容体として添加し、600nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることでグルコースの定量が可能である。また、電子受容体としてフェナジンメトサルフェート(PMS)を、さらに発色試薬としてニトロテトラゾリウムブルー(NTB)を加え、570nm吸光度を測定することにより生成するジホルマザンの量を決定し、グルコース濃度を算出することが可能である。なお、いうまでもなく、使用する電子受容体および発色試薬はこれらに限定されない。
(FAD-GDHを含むグルコースセンサー)
本発明はまた、FAD-GDHを用いるグルコースセンサーを開示する。ある実施形態においてグルコースセンサーは、FAD-GDHを含む作用電極、参照電極及び対極を有する。作用電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上にFAD-GDHを固定化する。さらに、又はこれとは別に、作用電極上に電子メディエーターを固定化してもよい。対極は白金電極やPt/C等の慣用の電極でありうる。参照電極はAg/AgCl電極などの慣用の電極でありうる。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いてFAD-GDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。本発明のFAD-GDH変異体は、保護膜により保護してグルコースセンサーに用いることができる。保護膜としては、センサーに使用されている酵素を保護するための既知の保護膜や一般的な保護膜を使用しうる。
ある実施形態では、保護膜として、膜中に酵素を担持する酵素膜を使用しうる。酵素膜は、GDH酵素とアルブミンのようなタンパク質とを架橋剤(グルタルアルデヒド等)で固定化して形成しうる。酵素膜は、第1の透過膜の上に形成しうる(選択透過膜ともいう)。その後、第1透過膜上の酵素膜の上にさらに第2の透過膜を形成してもよい(制限透過膜ともいう)。制限透過膜はシリコーン膜、フッ素系ポリマー膜、ウレタンポリマー膜、ポリカーボネート膜から形成され得る。第1透過膜、酵素膜、第2透過膜は0.1〜10μmの厚みであり得る。選択透過膜は、過酸化水素のみ透過させ、測定を妨害する物質の透過を防ぐものであり得る。制限透過膜は、汚染物質の吸着を防ぎ、グルコースの透過を制限するものであり得る。各透過膜は微小孔を有してもよく、それにより物質の透過が制限されうる。
ある実施形態において保護膜は、酵素層を基板に形成し、当該基板を保護膜溶液に浸漬して被膜することにより作製しうる。GDHを含む酵素層には、ポリアクリル酸ナトリウム、トレハロース、グルコマンナン等の添加剤を使用しうる。保護膜溶液は、ポリ―4―ビニルピリジン溶液等であり得るが、これに限らない。
グルコースセンサーの製造方法は公知文献にあり、例えばLiu, et. al., Anal. Chem. 2012, 84, 3403-3409及びTsujimura, et. al., J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 14432-14437が挙げられる(参照によりいずれもその全内容を本明細書に組み入れるものとする。)。公知の方法においてGODの代わりにGDHを用いることができる。
例えば、オスミウム錯体を含むポリマーなどのレドックスポリマーを、HEPES緩衝液などの適切な緩衝液中のポリエチレングリコールなどの別のポリマー中に存在するGDHと混合して、グルコースセンシング試薬を調製することができる。オスミウム錯体は、2,2'-ビピリジンのようなビピリジン分子、2,2'-ビイミダゾールのようなビイミダゾール分子、2-(2-ピリジル)イミダゾールのようなピリジン-イミダゾール化合物またはそれらの組み合わせを含む1以上の化合物と錯体形成したオスミウム錯体であり得る。錯体を形成する有機分子は、必要に応じて、メチル基またはエチル基などのC1〜C6アルキルなどのアルキル基で置換されていてもよい。一実施形態では、オスミウム錯体は、以下のとおりであり得る:
[Os有機分子複合体]−[ポリマー]
錯体を形成する有機分子の1つは、場合により、リンカーを介してポリマーに結合されてもよい。したがって、別の実施形態では、オスミウム錯体は以下の通りであり得る:
[Os有機分子複合体]−[リンカー]−[ポリマー]
例示的な分子は、Oharaら、Anal Chem. 1993 Dec 1; 65(23):3512-7及びAntiochiaら、Materials Sciences and Applications Vol. 4 No.7 A2(2013)(両方とも参考として全内容を本明細書に組み入れる)にある。オスミウム錯体を含むポリマーの例には、ポリ(1-ビニルイミダゾール)で錯体化されたオスミウムビス(2,2'-ビピリジン)クロライド、ポリ(4-ビニルピリジン)錯体化オスミウムビス(2,2'-ビピリジン)クロライド、ポリ(1-ビニルイミダゾール)n−[オスミウム(4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジル)2Cl2]2+/+およびそれらの誘導体が挙げられる。
溶液をカーボンセンサ上に堆積して、レドックスポリマーワイヤードGDHを含む作用電極として機能する活性電極領域を形成することができる。膜ポリマーおよび架橋剤溶液の混合物を添加して、センサー上に膜を形成することができる。膜は、ポリ(1-ビニルイミダゾール)、ポリ(4-ビニルピリジン)、それらの誘導体または組み合わせなどのポリマーを含みうる。上記のオスミウム錯体を含有するポリマーは、かかる膜ポリマーと組み合わせて用いて、ヒドロゲルフィルムを形成しうる。
一実施形態では、グルコースセンサーは印刷電極を含みうる。この場合、絶縁基板上に電極を形成しうる。具体的には、電極は、フォトリソグラフィ又はスクリーン印刷、グラビア印刷またはフレキソ印刷などの印刷技術によって基板上に形成しうる。絶縁基板を構成する材料としては、例えば、シリコン、ガラス、セラミック、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられる。様々な溶媒または化学物質に対して高い耐性を示す材料を使用しうる。
グルコース濃度の測定は、以下のようにして行うことができる。恒温セルに緩衝液を入れ、一定温度に維持する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。作用電極としてFAD-GDHを固定化した電極を用い、対極(例えば白金電極)および参照電極(例えばAg/AgCl電極)を用いる。カーボン電極に一定の電圧を印加して、電流が定常になった後、グルコースを含む試料を加えて電流の増加を測定する。標準濃度のグルコース溶液により作成したキャリブレーションカーブに従い、試料中のグルコース濃度を計算することができる。
具体的な一例としては、グラッシーカーボン(GC)電極に1.5UのFAD-GDHを固定化し、グルコース濃度に対する応答電流値を測定する。電解セル中に、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)1.8ml、及び、1M ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム(フェリシアン化カリウム)水溶液0.2mlを添加する。GC電極をポテンショスタットBAS100B/W(BAS製)に接続し、37℃で溶液を撹拌し、銀塩化銀(飽和KCl)参照電極に対して+500mVを印加する。これらの系に1M D-グルコース溶液を終濃度が1、2、3、4、5、10、20、30、40、50mMになるよう添加し、添加ごとに定常状態の電流値を測定する。この電流値を既知のグルコース濃度(1、2、3、4、5、10、20、30、40、50mM)に対してプロットし、検量線が作成する。これよりFAD結合型グルコース脱水素酵素を使用した酵素固定化電極でグルコースの定量が可能となる。
ある実施形態において、本発明は、上記のFAD-GDHを含むグルコースセンサーを有する持続血糖測定デバイス(装置)を提供する。持続血糖測定デバイスは、24時間〜2週間の血糖値の変動を把握することが可能となるCGM(continuous glucose monitoring)デバイスやFGM(Flash glucose monitoring)デバイスを含みうる。またある実施形態において、本発明は、本発明のFAD-GDHを用いる持続血糖測定方法を提供する。
ある実施形態において、持続血糖測定(CGM)は、再キャリブレーション有りで又は無しで行うことができる。ある実施形態において再キャリブレーション頻度を従来法よりも低く設定することができ、例えば再キャリブレーションを2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14日毎に行うことができる。
ある実施形態において、本発明のCGMデバイスは、皮膚の下に配置するためのグルコースセンサーを有しうる。センサーは一定期間、例えば1日〜3週間、装着されうる。センサーは使い捨て型であってもよく、再利用可能であってもよい。センサーは、組織と酵素の直接接触を防ぐためのセンサーメンブレン層を有し得る。センサーは、アプリケーターを用いて腹部に挿入するよう設計しうる。ある実施形態において、本発明は発信機及びセンサーから発信機への連結部をさらに有するCGMデバイスを提供する。発信機はインプラントせずともよい。好ましくは発信機は、電波受信機と通信可能である。CGMデバイスはさらに、グルコースレベルを連続的に表示する電気的受信機を有し得る。CGMデバイスは場合により、キャリブレーション用のフィンガースティック(指先穿刺部材)を有し得る。CGMデバイスは使用説明書を有し得る。
GODの酵素活性は公知の方法により測定しうる。例えばGODの酵素活性は、GDH活性を測定する方法、例えば電子を受容するメディエーターが過剰に存在する条件下で測定しうる。或いはGODの酵素活性は、酸素をアクセプターとするアッセイ系により測定しうる。また、GODの酵素活性は、供給者の使用説明書に従い決定しうる。残存活性比を算出するために、初期活性及び残存活性は同じ系で測定する。
ある実施形態において、FAD-GDHは、糖鎖富化されたものであり得る。例えば、FAD-GDHを産生する発現宿主の種類や培養条件を最適化して、糖鎖富化されたFAD-GDHを取得し得る。富化された糖鎖量は、例えばSDS-PAGEで解析することができる。配列番号12のFAD-GDHについて、例えば、GENETYX Ver.11を用いて算出する場合、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するフラビン結合型GDHの分子量は70kDaである。ある実施形態において糖鎖が富化されたFAD-GDHは、アミノ酸配列から推定される分子量と比較して、SDS-PAGEにおいて分子量が10kDa、20kDa、又は30kDa以上増大しうる。ある実施形態において糖鎖が富化されたFAD-GDHは、アミノ酸配列から推定される分子量と比較して、SDS-PAGEにおいて分子量が10%以上、20%以上、30%以上増大しうる。糖鎖富化されたFAD-GDHは、糖鎖富化されていない通常のFAD-GDHと比較して、安定性が増大しうる。これは酵素安定性が要求される用途において有用となりうる。
ある実施形態において、FAD-GDHは、脱糖鎖処理されたものであり得る。例えば、糖鎖を切断する酵素をFAD-GDHに作用させて、脱糖鎖処理を行うことができる。糖鎖切断酵素としては、例えばN-グリカナーゼ、エンドグリコシダーゼ等が挙げられ、EndoH(New England Biolab社製)やPNGase F(New England Biolab社製)等を利用することができるがこれに限らない。糖鎖切断するにあたり、脱糖鎖キット(Enzymatic Deglycosylation Kit、PZM製)等を用いることもできる。別の実施形態において、FAD-GDHは、糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減されたFAD-GDH変異体であり得る。すなわち、本発明は、糖鎖付加部位の改変により低減された糖鎖を有するFAD-GDH変異体を提供する。N型糖鎖付加部位は一般に、N-X-T/S(ここでXはプロリン以外の任意のアミノ酸)モチーフを有することが知られている。また、O型糖鎖はタンパク質分子表面に位置するセリン若しくはトレオニンに結合している。よってN型糖鎖の場合には当該モチーフにおけるNをN以外のアミノ酸に置換することで、又はT若しくはSを、T及びS以外のアミノ酸に置換することで、又はXをプロリンに置換することで、糖鎖が付加されないように当該モチーフを改変し得る。糖鎖付加部位を改変された又は脱糖鎖処理されたFAD-GDHは、糖鎖付加部位を改変されていない若しくは脱糖鎖処理されていない通常のFAD-GDHと比較して、センサーに用いた場合の感度向上が期待される。一般に、糖鎖修飾を受けた酵素は、脱糖鎖処理すると安定性が低減することが知られている。ところが本発明のFAD-GDHは、驚くべきことに、脱糖鎖処理しても安定性がさほど低下しなかった。また本発明の糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減されたFAD-GDH変異体は、驚くべきことに、改変前のGDHと比較して安定性がさほど低下しなかった。これは酵素安定性の要求される用途、例えばCGM用途において有用となりうる。また、糖鎖の多い酵素は、糖鎖修飾が不均一となる傾向がある。脱糖鎖処理されたFAD-GDHは、脱糖鎖処理されていない通常のFAD-GDHと比較して、修飾糖鎖がより均一であることが期待される。これは測定の再現性などにおいて有利となりうる。糖鎖付加部位を改変され付加糖鎖量が低減された変異体についても同様である。
糖鎖付加部位の改変としては、配列番号1の25位、101位、143位、156位、172位、198位、205位、214位、256位、247位、268位、353位、365位、379位、401位、402位、417位、430位、459位、496位、及び550位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置におけるアスパラギン以外のアミノ酸への置換、
配列番号1の27位、103位、145位、158位、174位、200位、207位、216位、249位、258位、270位、355位、367位、381位、403位、404位、419位、432位、461位、498位、及び552位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置における、セリン及びトレオニン以外のアミノ酸への置換、並びに
配列番号1の26位、102位、144位、157位、173位、199位、206位、215位、257位、248位、269位、354位、366位、380位、402位、403位、418位、431位、460位、497位及び551位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置のアミノ酸のプロリンへの置換が挙げられる。本発明の糖鎖付加部位を改変された変異体は、このようなアミノ酸置換を1以上、例えば1〜63、1〜60、1〜50、1〜40、1〜34、2〜25、3〜20、例えば4〜14有し得る。
他の由来のGDHについても、配列番号1の所定の位置に対応する当該他の由来のGDH中の位置にアミノ酸置換を行うことができる。以下に、対応する位置を示す。
Figure 2019022476
Figure 2019022476
Figure 2019022476
例えば表中、配列番号1の101位に対応する位置及びアミノ酸は、Mucor circinelloides由来のMcGDH(配列番号9)では、102位のアスパラギンである。他の位置についても同様に表から読み取ることができる。なお、25位については、図1−1において、MpGDH(配列番号1)の25位と26位の間にギャップが挿入され、MrdGDH、MsGDH、McGDHと対応する位置が見かけ上一致していない。しかしながらMpGDH(配列番号1)に関し、ギャップを24位と25位の間に挿入すれば、それらの位置は対応することとなる。さらに、MrdGDH、MsGDH、McGDHは、N-X-T/Sモチーフを有しており、このモチーフは糖鎖が付加されうると考えられる。よって便宜上、上記の表に示した25位に関連する位置も本明細書では「対応する位置」に含めるものとする。
ある実施形態において、本発明のFAD-GDH変異体は上記のアミノ酸置換を複数、例えば2〜34有する多重変異体であり得る。本明細書において多重変異体を「/」記号を用いて示すことがある。例えばある実施形態において本発明のFAD-GDH変異体は配列番号1の103位に対応する位置にアミノ酸置換を有し、配列番号1の365位に対応する位置にアミノ酸置換を有する二重変異体であり得る。この二重変異体を本明細書において「S103/N365」又は「103/365」変異体と記載することがあるが、これらは同義である。例えばある実施形態において本発明のFAD-GDH変異体は配列番号1の103位に対応する位置にグルタミンへのアミノ酸置換(103Q)を有し、配列番号1の365位に対応する位置にアスパラギン酸へのアミノ酸置換(365D)を有する二重変異体であり得る。この二重変異体を本明細書において「S103Q/N365D」又は「103Q/365D」と記載することがあるが、これらは同義である。
以下、同様の標記方法により本発明が包含するGDH多重変異体の一部を例示する。表では位置は便宜上配列番号1の位置を示しているが、変異体における位置は配列番号1の所定の位置に対応する(当該変異体中の)位置である。
なお、糖鎖付加部位はN-X-T/Sモチーフであることから、モチーフ中のNをNではないアミノ酸に置換することで、又は、モチーフ中のT/SをT/S以外のアミノ酸に置換することで、又はモチーフ中のXをPに置換することで、酵素に付加される糖鎖を低減することができる。本願明細書では便宜上、3アミノ酸モチーフの最初と最後のアミノ酸対を「<A:B>」と表記する。この表記において、「:」の左の位置Aが、N-X-T/Sモチーフ中のNに相当する位置を示し、「:」の右の位置Bが、N-X-T/Sモチーフ中のT/Sに相当する位置を示す。また、下記表において「<A:B>」と表記する場合、「:」の左の位置AはNではない任意のアミノ酸へ置換され、「:」の右の位置Bは、TでもSでもない任意のアミノ酸へ置換されることを意味するものとする。また、モチーフ中の位置Aのみ置換しBは置換しない場合は「<A: >」と表記する。同様にモチーフ中の位置Bのみ置換しAは置換しない場合は「< :B>」と表記する。また、単変異「<C: >」と単変異「< :D>」とを「/」で区切って二重変異体「<C: >/< :D>」を示すこともできる。この表記の都合上、例えば「<247: >/< :249>」と「<247:249>」とは同義となる。
Figure 2019022476
(いずれも配列番号1における位置)
Figure 2019022476
(いずれも配列番号1における位置)
Figure 2019022476
(いずれも配列番号1における位置)
Figure 2019022476
(いずれも配列番号1における位置)
上記の各「<A:B>」に関し、最初のアミノ酸Aと最後のアミノ酸Bとの間のアミノ酸(モチーフN-X-T/S中のX)をプロリンに置換してもよい。プロリンに置換しうる対応する位置は、図1及び表1から特定することができる。
本発明の変異体は表2−1に記載の位置に変異を有する単変異体であり得る。
本発明の変異体は表2−2に記載の位置に変異を有する二重変異体であり得る。
本発明の変異体は表2−3に記載の位置に変異を有する三重変異体であり得る。
本発明の変異体は表2−4に記載の位置に変異を有する四重変異体であり得る。
本発明の変異体は、上記表に記載の変異を組み合わせた2重〜34重変異体であり得る。これらの変異体の各位置に関し、置換アミノ酸は表1に記載のものであり得る。
具体的な変異体を例示すると、本発明の変異体は、S103Q、N247S、T249N、N365D、S103Q/N247S、S103Q/T249N、S103Q/N365D、N247S/T249N、N247S/N365D、T249N/N365D、S103Q/N247S/T249N、S103Q/N247S/N365D、S103Q/T249N/N365D、N247S/T249N/N365D、又はS103Q/N247S/T249N/N365Dの変異を有し得る。これらの場合において、位置はいずれも配列番号1の位置に対応する当該GDH中の位置を意味する。例えば配列番号1、3、4、5、6、7、8、9、12、14、22又はこれらと70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、例えば95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するGDHに、これらの変異を導入しうる。
また、上記のような多重変異体を作出するにあたっては、上述の各種の置換以外の位置における置換を組み合わせることもできる。このような置換の位置は、単独で置換を導入した場合には、上述の置換部位におけるもののように顕著な効果を奏さないものであっても、上述の置換部位と組み合わせて導入することによって、相乗的に効果を奏するものであり得る。
本発明のFAD-GDH変異体は、例えば、まず任意の方法で、配列番号1、3、4、14若しくは22のアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列をコードする遺伝子を入手し、配列番号1の所定の位置に対応する位置におけるいずれかの位置にアミノ酸置換を導入することにより得ることもできる。
本明細書にいう、「配列番号1のアミノ酸配列に対応する位置」とは、配列番号1のアミノ酸配列と、他のアミノ酸配列とをアラインさせた場合に、そのアラインメントにおける同一の位置を意味する。他のアミノ酸配列としては、配列番号1、3、4、14若しくは22と高いアミノ酸配列同一性(例えば70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上)を有するアミノ酸配列が挙げられる。なお、アミノ酸配列の同一性は、GENETYX Ver.11(ゼネティックス社製)のマキシマムマッチングやサーチホモロジー等のプログラム、又はDNASIS Pro(日立ソフト社製)のマキシマムマッチングやマルチプルアライメント等のプログラムにより計算することができる。
上記の「配列番号1のアミノ酸配列に対応する位置」を特定する方法としては、例えば、リップマン−パーソン法等の公知のアルゴリズムを用いてアミノ酸配列を比較し、FAD-GDHのアミノ酸配列中に存在する保存アミノ酸残基に最大の同一性を与えることにより行うことができる。FAD-GDHのアミノ酸配列をこのような方法で整列させることにより、アミノ酸配列中にある挿入、欠失にかかわらず、対応するアミノ酸残基の各FAD-GDH配列における配列中の位置を決めることが可能である。特にアミノ酸配列同一性が70%以上のアミノ酸配列を比較する場合に決めることが可能である。対応する位置は、三次元構造中で同位置に存在すると考えられ、対象となるFAD-GDHの保存安定性に関して類似した効果を有することが合理的に推定できる。なお、GDHによっては、アライメントの結果、特定のドメインやループが欠失している等により配列番号1の所定の位置に対応する位置が存在しない場合もあり得るが、そのような場合には当該対応する位置の存在ない位置はアミノ酸置換するに及ばず、対応する位置を決定できる他の位置にアミノ酸置換を導入すればよい。
(相同性領域について)
アミノ酸配列の同一性又は類似性は、GENETYX Ver.11(ゼネティックス社製)のマキシマムマッチングやサーチホモロジー等のプログラムまたはDNASIS Pro(日立ソリューションズ社製)のマキシマムマッチングやマルチプルアライメント等のプログラムにより計算することができる。アミノ酸配列同一性を計算するために、2以上のGDHをアライメントしたときに、該2以上のGDHにおいて同一であるアミノ酸の位置を調べることができる。こうした情報を基に、アミノ酸配列中の同一領域を決定できる。
また、2以上のGDHにおいて類似であるアミノ酸の位置を調べることもできる。例えばCLUSTALWを用いて複数のアミノ酸配列をアライメントすることができ、この場合、アルゴリズムとしてBlosum62を使用し、複数のアミノ酸配列をアライメントしたときに類似と判断されるアミノ酸を類似アミノ酸と呼ぶことがある。本発明の変異体において、アミノ酸置換はこのような類似アミノ酸の間の置換によるものであり得る。こうしたアライメントにより、複数のアミノ酸配列について、アミノ酸配列が同一である領域及び類似アミノ酸によって占められる位置を調べることができる。こうした情報を基に、アミノ酸配列中の相同性領域(保存領域)を決定できる。
本明細書において「相同性領域」とは、2以上のGDHをアライメントしたときに、ある基準となるGDHと比較対象のGDHの対応する位置におけるアミノ酸が同一であるか又は類似アミノ酸からなる領域であって、連続する3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上のアミノ酸からなる領域をいう。例えば、図1では全長アミノ酸配列の配列同一性が70%以上であるGDHをアライメントした。このうち、配列番号1で示されるMucor属GDHを基準として第31位〜41位は同一アミノ酸からなり、よって相同性領域に該当する。同様に、配列番号1で示されるMucor属GDHを基準として、31位〜41位、58〜62位、71〜85位、106〜116位、119〜127位、132〜134位、136〜144位、150〜153位、167〜171位、219〜225位、253〜262位、277〜281位、301〜303位、305〜312位、314〜319位、324〜326位、332〜337位、339〜346位、348〜354位、386〜394位、415〜417位、454〜459位、476〜484位、486〜491位、508〜511位、518〜520位、522〜524位、526〜528位、564〜579位、584〜586位、592〜595位、597〜599位、607〜617位、及び625〜630位は相同性領域に該当しうる。
本発明のGDHは、配列番号1、3、4、14若しくは22に示されるアミノ酸配列を有するGDHとアライメントしたときに50%、55%、60%、65%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、例えば99%以上の全長アミノ酸配列同一性を有し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する。さらに、本発明のGDH変異体の相同性領域におけるアミノ酸配列は、配列番号1、3、若しくは4における相同性領域のアミノ酸配列と80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、例えば99%以上の配列同一性を有する。糖鎖付加部位に変異を有する本発明のGDH変異体についても同様である。
ある実施形態において、本発明に係るFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼは、持続血糖測定用若しくは連続グルコースモニタリング用である。別の実施形態において、本発明に係るFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼは、グルコース測定用である。測定は定性的又は定量的であり得る。ある実施形態において、本発明に係るFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼは、高感度のグルコース測定に用いることができる。これらの方法に用いるキットやデバイス、センサー、組成物も提供される。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
1.Mucor RD056860由来GDH遺伝子及びMucor hiemalis由来GDH遺伝子の調製
特許文献6の開示を参考に、配列番号4のアミノ酸配列を有するMrdGDHをコードする塩基配列を全合成した(配列番号10)。また特許文献4の開示を参考に、配列番号3のアミノ酸配列を有するMhGDHをコードする塩基配列を全合成した(配列番号11)。
次いで、これらの遺伝子を酵母発現プラスミドpYES2/CTに組み入れた(それぞれpYES2/CT-MrdGDH及びpYES2/CT-MhGDH)。得られた組換え体プラスミドについて、マルチキャピラリーDNA解析システムApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(Thermo Fisher Scientific社製)により塩基配列を確認した。
2.Mucor RD056860由来GDHをコードする遺伝子が挿入されたプラスミド又はMucor hiemalis由来GDHをコードする遺伝子が挿入されたプラスミドの宿主への導入とGDH活性の確認 その後、S.cerevisiae用形質転換キット(Invitrogen社製)により、pYES2/CT-MrdGDH又はpYES2/CT-MhGDHを用いてINVSc1株(Invitrogen社製)を形質転換することにより、GDHを発現する酵母形質転換体Sc-MrdGDH及びSc-MhGDH株を取得した。
3.Mucor属由来GDH遺伝子の宿主への導入とGDH活性の確認
大まかに説明すると、まずMucor属由来GDH(MpGDH、配列番号1)にN66Y/N68G/C88A/Q233R/T387C/E554D/L557V/S559Kの各変異を導入した改変GDH(MpGDH-M1)をコードする遺伝子を取得した。MpGDH-M1のアミノ酸配列は配列番号12に示し、その遺伝子の塩基配列は配列番号13に示す。プラスミド酵母発現プラスミドpYES2/CTのマルチクローニングサイトに対象遺伝子であるMpGDH-M1遺伝子を常法により挿入させたDNAコンストラクトを作製した。pYES2/CTのマルチクローニングサイトにあるIn-Fusion Cloning Siteにて、MpGDH-M1遺伝子を、上記したIn-Fusion HD Cloning Kitを使用して、キットに添付されたプロトコールに従って連結して、コンストラクト用プラスミド(pYES2/CT-MpGDH-M1)を得た。
得られた組換え体プラスミドpYES2/CT-MpGDH-M1を鋳型として、配列番号16−21の合成オリゴヌクレオチド、KOD-Plus-(東洋紡社製)を用い、以下の条件でPCR反応を行った。
すなわち、10×KOD-Plus-緩衝液を5μl、dNTPが各2mMになるよう調製されたdNTPs混合溶液を5μl、25mMのMgSO4溶液を2μl、鋳型となるMpGDH-M1遺伝子を連結させたDNAコンストラクトを50ng、上記合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ15pmol、KOD-Plus-を1Unit加えて、滅菌水により全量を50μlとした。調製した反応液をサーマルサイクラー(エッペンドルフ社製)を用いて、94℃で2分間インキュベートし、続いて、「94℃、15秒」−「50℃、30秒」−「68℃、8分」のサイクルを30回繰り返した。
反応液の一部を1.0%アガロースゲルで電気泳動し、約8,000bpのDNAが特異的に増幅されていることを確認した。こうして得られたDNAを制限酵素DpnI(NEW ENGLAND BIOLABS社製)で処理し、残存している鋳型DNAを切断した後、大腸菌JM109を形質転換し、LB-amp寒天培地に展開した。生育したコロニーをLB-amp培地[1%(W/V) バクトトリプトン、0.5%(W/V) ペプトン、0.5%(W/V) NaCl、50μg/ml Ampicillin]2.5mlに接種して、37℃で20時間振とう培養し、培養物を得た。この培養物を7,000rpmで、5分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。次いで、この菌体よりQIAGEN tip-100(キアゲン社製)を用いて組換え体プラスミドを抽出して精製し、DNA2.5μgを得た。該プラスミド中のMpGDH-M1をコードするDNAの塩基配列を、マルチキャピラリーDNA解析システムApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(Life Technologies社製)を用いて決定し、その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の175位のアラニンをシステインに、214位のアスパラギンをシステインに、及び466位のグリシンをアスパラギン酸に置換した変異体であるMpGDH-M1/A175C/N214C/G466D(配列番号14)をコードするDNAコンストラクトを得た(pYES2/CT-M2)(配列番号15)。その後、S.cerevisiae用形質転換キット(Invitrogen社製)により、pYES2/CT-M2を用いてINVSc1株(Invitrogen社製)を形質転換することにより、GDHを発現する酵母形質転換体Sc-M2株を取得した。
(酵母発現FAD-GDHの保存安定性評価)
酵母形質転換体Sc-MrdGDHまたはSc-M2を、5mLの前培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース(BD)、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物(sigma社製)、2.0%(w/v)ラフィノース]中で、30℃にて24時間培養した。その後、前培養液1mLを4mLの本培養用液体培地[0.67%(w/v)アミノ酸不含有イーストニトロゲンベース、0.192%(w/v)ウラシル不含有酵母合成ドロップアウト培地用添加物、2.5%(w/v)D-ガラクトース、0.75%(w/v)ラフィノース]に加えて、30℃で16時間培養する。この培養液を遠心分離(10,000×g、4℃、3分間)により菌体と培養上清に分離し、培養上清液を回収した。この培養上清液3mlをアミコンウルトラ 0.5mlにより50μlまで濃縮し、1×PBS溶液に置換した。これを試験サンプルとして用いた。
酵母形質転換体Sc-MhGDHについても、上記と同様の手順で試験サンプルを調製することができる。また、これに代えてカタログ番号GLD3 (フナコシ社)のグルコースデヒドロゲナーゼを用いることもできる(なお、GLD3酵素のN末端アミノ酸配列を解析したところ、配列番号3のMucor hiemalis由来GDHの配列と同一であったため、この酵素はMucor hiemalis由来である蓋然性が高い)。本実施例では、フナコシ社から入手した、カタログ名GLD3のグルコースデヒドロゲナーゼを以下の試験に用いた。なお、GLD3についてはアミコンウルトラ 0.5ml(30kDaカットオフ)を用いて限外ろ過を行い、さらに、ゲルろ過クロマトグラフィーにより低分子成分を除去し、pH 7.4のPBSに置換した。
4.FAD-GDHの保存安定性試験
次に、製造したFAD-GDH、及び入手したGLD3をpH 7.4のPBS溶液(2ml)中で40℃にて、所定の期間加温した。次いで所定期間経過後の残存活性を測定した。
GDH活性の測定方法は、所定期間経過後、各サンプルのFAD-GDH活性を上記に記したGDH活性の測定方法に基づいて測定し、40℃で保存する直前の酵素活性を100%としたときの、40℃、所定期間経過後の活性値を「活性残存率(%)」として算出した。
試験の結果、1週間後では、MrdGDHは37%、GLD3は88%の酵素活性が残存した。2週間後では、MrdGDHは24%、GLD3は83%の酵素活性が残存した。3週間後では、MrdGDHは22%の酵素活性が残存した。なお、麹菌で発現させた精製GDH-MrdGDHと、酵母で発現させた透析後の粗酵素MrdGDHとで、保存安定性が変わらなかったことを確認した。一般に酵母で発現させた方が、糖鎖付加量が多く、本実施例においても酵母発現させたGDHの方が分子量が大きくなっていることをSDS-PAGEで確認した。
これらのFAD-GDHは、長期安定性が高く、連続グルコースモニタリング用途に適していることが見出された。
(比較例)
CGMに用いられているGODなどの、公知のGODのCGM安定性を試験した。試験方法は上記実施例と同じであり、ただしGDHの代わりに各種GODを用いた。
Aspergillus sp.由来GODを東洋紡社より入手した(カタログ番号GLO-201, ここではGOD-2という)。Aspergillus niger由来GODを和光純薬工業社より入手した(カタログ番号074-02401, ここではGOD-3という。別のAspergillus niger由来GODをSigma-Aldrich社より入手した(カタログ番号Type VII, ここではGOD-4という)。
各GOD酵素の1 mg/ml溶液をPBS溶液で置き換え、40℃にて所定期間加温した。1週間後及び2週間後にGOD活性を測定した。残存活性は、上記実施例と同様に測定し、初期活性を100%としたときの残存活性率(%)を算出した。
1週間後では、GOD-3は22%、GOD-4は22%、GOD-2は30%の酵素活性が残存した。2週間後では、GOD-3は9%、GOD-4は8%、GOD-2は13%の酵素活性が残存した。
なお、これらのGODは、55℃15分の熱処理後の残存活性%は、上記のGDHを同様に熱処理した場合よりも高く、すなわち、より熱安定性が高かった。
5.追加実施例
プラスミドpUC19のマルチクローニングサイトに対象遺伝子であるMpGDH-M2遺伝子を常法により挿入させたDNAコンストラクトを作製した。pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn-Fusion Cloning Siteにて、MpGDH-M2遺伝子を、上記したIn-Fusion HD Cloning Kitを使用して、キットに添付されたプロトコールに従って連結して、コンストラクト用プラスミド(pUC19-MpGDH-M2)を得た。この遺伝子をコウジカビ(Aspergillus sojae; アスペルギルス・ソーヤ)で発現させ、そのGDH活性を評価した。
Double−joint PCR(Fungal Genetics and Biology,2004年,第41巻,p973−981)を行い、5’アーム領域〜PyrG遺伝子(ウラシル栄養要求性マーカー)〜TEF1プロモーター遺伝子〜フラビン結合型GDH遺伝子〜3’アーム領域から成るカセットを構築し、下記の手順でアスペルギルス・ソーヤNBRC4239株由来pyrG破壊株(pyrG遺伝子の上流48bp、コード領域896bp、下流240bp欠損株)の形質転換に用いた。500ml容三角フラスコ中の20mMウリジンを含むポリペプトンデキストリン液体培地100mlに、アスペルギルス・ソーヤNBRC4239株由来pyrG破壊株の分生子を接種し、30℃で約20時間振とう培養を行った後、菌体を回収した。回収した菌体からプロトプラストを調製した。得られたプロトプラスト及び20μgの対象遺伝子挿入DNAコンストラクトを用いて、プロトプラストPEG法により形質転換を行い、次いで0.5%(w/v)寒天及び1.2Mソルビトールを含むCzapek−Dox最少培地(ディフコ社;pH6)を用いて、30℃、5日間以上インキュベートし、コロニー形成能があるものとして形質転換アスペルギルス・ソーヤを得た。
得られた形質転換アスペルギルス・ソーヤは、ウリジン要求性を相補する遺伝子であるpyrGが導入されることにより、ウリジン無添加培地に生育できるようになることで、目的の遺伝子が導入された株として選択できた。得られた菌株の中から目的の形質転換体を、PCRで確認して選抜した。MpGDH-M2の遺伝子により形質転換した形質転換アスペルギルス・ソーヤを用いて、それぞれのGDH生産を行った。
200ml容三角フラスコ中のDPY液体培地(1%(w/v)ポリペプトン、2%(w/v)デキストリン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)KH2PO4、0.05%(w/v)MgSO4・7H20;pH未調整)40mlに、各菌株の分生子を接種し、30℃で4日間、160rpmで振とう培養を行った。次いで、培養後の培養物から菌体をろ過し、得られた培地上清画分をAmicon Ultra−15, 30K NMWL(ミリポア社製)で10mLまで濃縮し、150mM NaClを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化したHiLoad 26/60 Superdex 200pg(GEヘルスケア社製)にアプライし、同緩衝液で溶出させ、GDH活性を示す画分を回収し、MpGDH-M2の精製標品を得た。
また、上記4.と同様の保存安定性試験の結果、試験前の100%に対し、1週間後では配列番号14のFAD-GDH、すなわちM2は、89%の酵素活性が残存した。ただし、GDH濃度は終濃度1mg/mlに調製して実施した。2週間後ではM2は75%の酵素活性が残存した。3週間後では74%の酵素活性が残存した。これは、酵母で発現させたM2の保存安定性とほとんど同等であった。
次に、M2に糖鎖切断酵素としてエンドグリコシダーゼH(EndoH、New England Biolab社)を、製造業者の使用説明書に記載の条件にて試薬を混合し、30℃で24時間作用させた。その後、HiLoad 26/60 superdex200(GEヘルスケア社製)によるゲルろ過クロマトグラフィー精製を行うことで、脱糖鎖処理されたM2を精製した。EndoH処理後の酵素が脱糖鎖されたことはSDS-PAGEにて確認した。
次いで、脱糖鎖処理されたM2(EndoH-M2)について、上記4.と同じFAD-GDHの保存安定性試験を行った。ただし、GDH濃度は終濃度1mg/mlに調製した。その結果、試験前の100%に対し、1週間後ではEndoH-M2は、94%の酵素活性が残存した。2週間後ではEndoH-M2は85%の酵素活性が残存した。3週間後では81%の酵素活性が残存した。すなわち糖鎖を有するM2と比較して、脱糖鎖処理されたM2は、驚くべきことに、むしろ保存安定性が向上していた。
6.追加実施例
次に、MpGDHと93%のアミノ酸配列同一性を有する、配列番号22のMpGDH-M3を用いて、同様に保存安定性が良好か検証した(以下、単にM3ということがある)。MpGDH-M3のアミノ酸配列は配列番号22に示し、その遺伝子の塩基配列は配列番号23に示す。上記と同様にプラスミド酵母発現プラスミドpYES2/CTのマルチクローニングサイトに対象遺伝子であるMpGDH-M3遺伝子を常法により挿入させたDNAコンストラクトを作製した。次いで、酵母形質転換体を作製し、MpGDH-M3を含む培養上清液を回収した。上記と同様にPBSに置換した試験サンプルを作製し、40℃における保存安定性を評価した。その結果、試験前の100%に対し、1週間後ではEndoH-M2は、95%の酵素活性が残存した。なお、麹菌により発現させたMpGDH-M3を用いた保存安定性評価でも同様の結果が得られた。
続いて、M3に対してN型糖鎖付加モチーフ(N-X-S/T)に対して変異導入し、糖鎖付加量を減少させた変異体を作成し、保存安定性を評価した。配列番号23の塩基配列を鋳型として用いて下記の表に記載の配列番号24−29の合成オリゴヌクレオチド、KOD-Plus-(東洋紡社製)を用い、上記と同様の条件でPCR反応を行い、部位特異的変異を導入した。
Figure 2019022476
pYES2/CTに挿入された各GDH遺伝子を上記と同様に、pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn-Fusion Cloning Siteにて、MpGDH-M3/N247S/T249N遺伝子とMpGDH-M3/S103Q/N365D遺伝子を、上記したIn-Fusion HD Cloning Kitを使用して、キットに添付されたプロトコールに従って連結して、コンストラクト用プラスミド(pUC19-MpGDH-M3/N247S/T249N、pUC19-MpGDH-M3/S103Q/N365D)を得た。この遺伝子をコウジカビ(Aspergillus sojae; アスペルギルス・ソーヤ)で発現させ、そのGDH活性を評価した。
上記と同様に培養を行い、得られた培地上清画分をAmicon Ultra−15, 30K NMWL(ミリポア社製)で10mLまで濃縮し、150mM NaClを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)で平衡化したHiLoad 26/60 Superdex 200pg(GEヘルスケア社製)にアプライし、同緩衝液で溶出させ、GDH活性を示す画分を回収し、MpGDH-M3/N247S/T249N、MpGDH-M3/S103Q/N365Dの精製標品を得た。
また、上記4.と同様の保存安定性試験の結果、試験前の100%に対し、1週間後ではMpGDH-M3/N247S/T249Nは、90%の酵素活性が残存し、MpGDH-M3/S103Q/N365Dは、90%の酵素活性が残存した。すなわち、糖鎖付加モチーフに変異導入しGDHの糖鎖量を減少させても、40℃で1週間保存後に90%以上の活性が残存することが分かり、非常に安定であることが示された。GDHは多数の糖鎖付加部位(N-X-T/Sモチーフ)を有することが知られている。上記では代表例として4箇所を変異させたが、他の公知の糖鎖付加部位を変異させても、同様にGDHの糖鎖量は低減するが、そのようなバリアントについても、同様の残存活性を示す蓋然性が高いと考えられる。
以上のように、本発明のFAD-GDHは、保存安定性(長期安定性)に優れ、長期間にわたり活性を保持した。また、本発明のFAD-GDHは脱糖鎖処理しても保存安定性が良好であった。これは持続血糖測定、例えばCGMにおいて、特に有用である。
本発明を例示により説明したが、本発明の精神から逸脱することなく、種々の変法を行うことができる。
配列の簡単な説明
配列番号1 Mucor prainii GDH(MpGDH) aa
配列番号2 MpGDH遺伝子 DNA
配列番号3 Mucor hiemalis GDH(MhGDH) aa
配列番号4 Mucor RD056860 GDH(MrdGDH) aa
配列番号5 Mucor subtilissimus GDH(MsGDH) aa
配列番号6 Mucor guilliermondii GDH(MgGDH) aa
配列番号7 Circinella simplex GDH(CsGDH) aa
配列番号8 Circinella属 GDH(CrGDH) aa
配列番号9 Mucor circinelloides GDH(McGDH) aa
配列番号10 MrdGDH遺伝子 DNA
配列番号11 MhGDH遺伝子 DNA
配列番号12 MpGDH-M1 aa (M1)
配列番号13 MpGDH-M1遺伝子DNA
配列番号14 MpGDH-M1/A175C/N214C/G466D aa (M2)
配列番号15 MpGDH-M2遺伝子DNA
配列番号16−21 プライマー
配列番号22 MpGDH-M3 aa
配列番号23 MpGDH-M3遺伝子DNA
配列番号24−29 プライマー

Claims (13)

  1. (a) pH 7.4にて40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、又は
    (b) pH 7.4にて40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、
    FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)を用いる、グルコース測定方法。
  2. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、配列番号3、4、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)からなる群より選択されるものである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、糖鎖富化されたものである、請求項2に記載の方法。
  4. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、脱糖鎖処理されたものであるか又は糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減された変異体である、請求項2に記載の方法。
  5. 前記糖鎖付加部位の改変が、
    配列番号1の25位、101位、143位、156位、172位、198位、205位、214位、256位、247位、268位、353位、365位、379位、401位、402位、417位、430位、459位、496位、及び550位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置におけるアスパラギン以外のアミノ酸への置換であるか、
    配列番号1の27位、103位、145位、158位、174位、200位、207位、216位、249位、258位、270位、355位、367位、381位、403位、404位、419位、432位、461位、498位、及び552位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置における、セリン及びトレオニン以外のアミノ酸への置換であるか、並びに/又は
    配列番号1の26位、102位、144位、157位、173位、199位、206位、215位、257位、248位、269位、354位、366位、380位、402位、403位、418位、431位、460位、497位及び551位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置のアミノ酸のプロリンへの置換である、請求項4に記載の方法。
  6. (a) pH 7.4にて40℃で1週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、35%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、又は
    (b) pH 7.4にて40℃で2週間にわたり加温した場合に、初期活性100%のうち、22%以上のデヒドロゲナーゼ活性が保持される、
    FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)を含むグルコースセンサーを備えてなる、連続グルコースモニタリングデバイス。
  7. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、配列番号3、4、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)からなる群より選択されるものである、請求項6に記載のデバイス。
  8. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、糖鎖富化されたものである、請求項7に記載のデバイス。
  9. 前記FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)が、脱糖鎖処理されたものであるか又は糖鎖付加部位の改変により付加糖鎖量が低減された変異体である、請求項7に記載のデバイス。
  10. 配列番号1、3、4、5、6、7、8、9、12、14又は22と70%以上のアミノ酸配列同一性を有するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼであって、
    配列番号1の25位、101位、143位、156位、172位、198位、205位、214位、256位、247位、268位、353位、365位、379位、401位、402位、417位、430位、459位、496位、及び550位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置におけるアスパラギン以外のアミノ酸への置換であるか、
    配列番号1の27位、103位、145位、158位、174位、200位、207位、216位、249位、258位、270位、355位、367位、381位、403位、404位、419位、432位、461位、498位、及び552位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置における、セリン及びトレオニン以外のアミノ酸への置換であるか、並びに/又は
    配列番号1の26位、102位、144位、157位、173位、199位、206位、215位、257位、248位、269位、354位、366位、380位、402位、403位、418位、431位、460位、497位及び551位にそれぞれ対応する位置からなる群より選択される1以上の位置のアミノ酸のプロリンへの置換である、糖鎖付加部位の改変を有し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有し、低減された糖鎖を有するグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
  11. a)配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がセリン及びトレオニン以外のアミノ酸に置換されている、
    b)配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン以外のアミノ酸に置換されている、
    c)配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がセリン及びトレオニン以外のアミノ酸に置換されている、及び/又は
    d)配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン以外のアミノ酸に置換されている、
    請求項10に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
  12. A)配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されている、
    B)配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されている、
    C)配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されている、及び/又は
    D)配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、
    請求項10又は11に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
  13. i) 配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されており、かつ配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されている、
    ii) 配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されており、かつ配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、又は
    iii) 配列番号1の103位に対応する位置のアミノ酸がグルタミンに置換されており、配列番号1の247位に対応する位置のアミノ酸がセリンに置換されており、配列番号1の249位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギンに置換されており、かつ配列番号1の365位に対応する位置のアミノ酸がアスパラギン酸に置換されている、
    請求項10〜12のいずれか1項に記載のグルコースデヒドロゲナーゼ変異体。
JP2017232549A 2017-06-05 2017-12-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定 Pending JP2019022476A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022160290A JP2022173549A (ja) 2017-06-05 2022-10-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017111102 2017-06-05
JP2017111102 2017-06-05
JP2017153711 2017-08-08
JP2017153711 2017-08-08

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022160290A Division JP2022173549A (ja) 2017-06-05 2022-10-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019022476A true JP2019022476A (ja) 2019-02-14
JP2019022476A5 JP2019022476A5 (ja) 2021-01-21

Family

ID=65368091

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017232549A Pending JP2019022476A (ja) 2017-06-05 2017-12-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定
JP2022160290A Pending JP2022173549A (ja) 2017-06-05 2022-10-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022160290A Pending JP2022173549A (ja) 2017-06-05 2022-10-04 グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定

Country Status (1)

Country Link
JP (2) JP2019022476A (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013176363A (ja) * 2012-02-09 2013-09-09 Toyobo Co Ltd 新規なグルコース脱水素酵素
WO2016114334A1 (ja) * 2015-01-16 2016-07-21 東洋紡株式会社 Fad依存型グルコースデヒドロゲナーゼ

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013176363A (ja) * 2012-02-09 2013-09-09 Toyobo Co Ltd 新規なグルコース脱水素酵素
WO2016114334A1 (ja) * 2015-01-16 2016-07-21 東洋紡株式会社 Fad依存型グルコースデヒドロゲナーゼ

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
FDA規格を満たした高活性,高純度グルコース酸化・脱水素酵素 GLUCOSE OXIDASE(GOD) / GLUCOSEDEHYDROGENA, JPN6021044358, 8 February 2016 (2016-02-08), ISSN: 0004634376 *
化学と生物, vol. 44, no. 1, JPN6021044359, 2006, pages 27 - 33, ISSN: 0004634378 *
化学と生物, vol. 44, no. 3, JPN6021044357, 2006, pages 192 - 197, ISSN: 0004634377 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP2022173549A (ja) 2022-11-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6093700B2 (ja) フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ、フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法、およびそれを用いたグルコース測定方法
US11208466B2 (en) Cytochrome-fused glucose dehydrogenase and glucose measurement method
US9493814B2 (en) Flavin-binding glucose dehydrogenase having improved substrate specificity
JP2022133274A (ja) フラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ改変体
WO2015099112A1 (ja) 熱安定性が向上したフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ
JP6635913B2 (ja) 比活性が向上したフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ
JP7301516B2 (ja) グルコースデヒドロゲナーゼ変異体
JP6934720B2 (ja) 基質特異性が向上したフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼ
US11781167B2 (en) Continuous glucose monitoring using an FAD-dependent glucose dehydrogenase
US11046993B2 (en) Glucose dehydrogenase having modified electron transfer properties, and glucose measurement method
JP7165493B2 (ja) 保存安定性に優れたグルコースデヒドロゲナーゼ及び持続血糖測定
JP2019022476A (ja) グルコースデヒドロゲナーゼを用いた持続血糖測定
KR20210143750A (ko) 글루코오스 디히드로게나아제의 기질 특이성을 개변하는 방법 및 글루코오스 디히드로게나아제 기질 특이성 개변제

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20171227

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20201202

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201202

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211109

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220107

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220308

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20220705