JP2019020533A - 擬似剛体化ユニット及び擬似剛体化システム - Google Patents

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Abstract

【課題】保護対象機器の質量が所定の範囲で異なっても、従来減震機構で必要だった上限値、下限値隙間の再調整が不要で、平常時には除振・防振効果を維持すると共に、地震発生等の非常時には保護対象機器の転倒防止・衝撃荷重低減効果が得られる擬似剛体化ユニット、及び、システムを提供する。【解決手段】保護対象機器150の質量を支持する弾性支持部材156と、この弾性支持部材の移動量を狭い隙間で規制する手段を一個のユニットに内蔵させて、擬似剛体化ユニット152を構成する。弾性支持部材の質量mがm0≦m≦n×m0の設定範囲内で、上限値規制部隙間δV2>0、及び、下限値規制部隙間δV1>0を無調整で維持できるように、弾性支持部材の剛性Kと質量m0で決まる共振周波数f0、質量m0からの増大率nを設定する。【選択図】図2

Description

本発明は、オーディオ機器、計測・計量機器、医療機器などの精密機器、あるいは、発電機、変圧器のような振動発生源を有する機器を保護対象として、平常時には床面と保護対象機器間の振動遮断を図ると共に、地震発生などの非常時には、衝撃的な外乱による機器の転倒・破損を防止する減震効果を併せ持つ除振・防振装置に関するものである。
以下、本発明をオーディオ用スピーカーに適用する場合について、その背景技術を説明する。オーディオ分野においては、原音に限りなく近い音の追及が、アンプ、スピーカー、CDプレイヤー、ケーブルなどの各コンポーネンツにおいてなされてきた。アナログからデジタルの時代に移行し、様々な革新的技術が投入されたにもかかわらず、録音から再生に至る過程の技術にはまだ限界があって、人間の聴覚が知覚する程には、原音を忠実に再現できないのが現状である。オーディオ機器が原音(たとえばオーケストラの生演奏の音)に追従できない要因の一つに、振動がオーディオ機器に与える影響がある。周知のように、オーディオ機器は自ら振動を発生するとともに、外部から様々な振動の影響を受けている。アンプの場合は電源トランスの交流基本信号とその高調波成分による「うなり」が発生する。CDプレイヤーの場合はディスクを回すモーターが振動源となる。スピーカーの場合、コーンを駆動するボイスコイルの反力がスピーカー・エンクロージャー(箱)本体を振動させる。この振動がスピーカーを設置した床面に伝達され、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。原音に複雑に重畳された外乱振動は、再びスピーカー本体を振動させる。この時発生する混変調歪がオーディオ機器の音質を劣化させるという仮説が提唱されているが、オーディオ機器と設置面との間の相互干渉による振動が、再生音の品位を低下させる重要な要因であるという点は、間違いのない事実であると思われる。
オーディオ機器の音質を改善する手段のひとつとして、インシュレータがある。アナログ時代、ハウリングを抑止するために、インシュレータは主にアナログプレイヤーと床面との間に設置され、振動の伝達を遮断する手段として必須のものであった。アナログからCDプレイヤーに移行して、インシュレータはハウリング防止対策ではなく、オーディオ機器の音質を改善し、リスナーの好みの音に調整するチューニング手段として用いられるようになった。インシュレータの適用により、音質が変ることは良く知られているが、その効果をもたらすメカニズムについては、理論的に十分解明されているとは言えず、経験的、試行錯誤的に開発されたものが多い。過去、インシュレータとして用いられているものに、次の二つのタイプがある。
(1)硬質材料によるインシュレータ
インシュレータのひとつのタイプは硬質材を用いるものである。近年、前述した緩衝体に代わり、オーディオ機器が発生する振動を効果的に吸収し、外部へ逃すことを目的とした硬質材、たとえば、木材、樹脂、金属、セラミック等を用いたものが考案され商品化されている。硬質インシュレータの場合は、良質な音響素材のキャラクターを利用した再生音のチューニング手段として用いられる。
(2)フローティング方式インシュレータ
このタイプのインシュレータは、振動の遮断(シャットアウト)を目的としたもので、剛性の小さい緩衝体が用いられる。緩衝体として、ゴム材を用いたもの、スプリングコイルを用いるもの、空気を封じ込めたエアーフローティング・ボード、磁力の反発力を利用したものなどがある。このフローティング方式において、オーディオ機器と床面間の振動遮断を図る目的は次のようである。スピーカーが設置される民間住宅の床面は、通常20〜100Hzを固有値とする分布振動モードを持っている。床面に伝達されたスピーカーの振動は、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。原音に複雑に重畳された外乱振動は、再びスピーカーの筺体を振動させる。オーディオ機器と床面間の上記振動の相互干渉が、混変調歪(Inter-modulation distortion)を発生させて、再生音の品位(音質)を低下させる重大な要因となる。この混変調歪の発生は、前述した硬質材料式では基本的に回避できない。しかし、振動遮断による音質向上の代償として、弾性支持されたスピーカーは外力に対して振れ易く、設置が不安定になるという課題があった。
そこで、本発明者らは特許文献1において、オーディオ機器と前記インシュレータを離脱不可の完全一体化構造にして、弾性支持されたオーディオ機器の設置安定性を向上させる下記インシュレータ構造を提案している。
図35において、550はインシュレータ本体部、551は風鈴部材である上部スリーブ、552は下部スリーブ、553は前記下部スリーブの中央部に設置されたサージング防止部材(振動発生防止手段)である。上部スリーブ551は下部スリーブ552上部に配置され、両スリーブ551、552の内部に弾性部材であるスプリングコイル554が設けられている。555は上部スリーブ551の上端面に形成された凸部であり、スピーカー底面に装着されるスペーサ部556に形成された凹部と勘合される。図36に示すように、スペーサ部556とスピーカー557は、スピーカー底面のスパイクねじ部558を利用して、ボルト559により締結される。スペーサ部556とボルト559は想像線で図示している。560は上部スリーブ551と下部スリーブ552の離脱を防止するための締結ボルト、561はこの締結ボルトの頭部を収納する下部スリーブ552に形成された筒部である。
図36(a)は、スペーサ部556近傍の断面図で図36(b)は図36(a)の拡大図である。、インシュレータ本体部550はスペーサ部556に対して離脱不可の状態で勘合される構造を示すものである。具体的には、スペーサ部556にインシュレータ本体部550を軸方向に挿入し、挿入後90度回転させることで、インシュレータ本体部550はスペーサ部556に対して離脱不可となるように構成されている。
特開2014-128000号公報 特開2014-163505号公報
小林浩一他, "地震時における構造物のロッキング振動",日本機械学会論文集(C編),Vol.77,No778,(2001-6) 鄭萬溶他, "正弦波励振を受ける剛体ブロック構造物のロッキング振動特性",日本機械学会論文集(C編),Vol.66,No645,(2000-5) 古川愛子他, "地震時における墓石の転倒基準の提案",第30回土木学会地震工学研究発表会論文集
さて、床面に設置したオーディオ機器に衝撃的な外乱荷重が加わったときに、オーディオ機器の水平方向の移動と転倒とをどうやって防止するかは実用上極めて重要な課題である。高価なオーディオ機器と周辺に配置された家具を損傷させるだけではなく、荷重が50〜100Kg、あるいはそれ以上の大型スピーカーでは人身事故に繋がる危険を有する。オーディオ用スピーカーの地震対策を図る場合、産業用で用いられる機器の地震対策には無い固有の未解決課題がある。それは、保護対象機器である「スピーカーの音質(品質)を平常時に劣化させないで、いかにして非常時の地震対策を図るか」ということである。
前述したように、フローティング式インシュレータは、振動遮断による音質向上の代償として、剛体支持と比べて設置安定性の点で不利となる。前述したように、特許文献1の開示技術において、前記フローティング式インシュレータに支持されたスピーカー(保護対象機器)に衝撃的外力が加わったときに、前記インシュレータ本体部はスピーカーに対して水平・垂直方向移動が拘束されて設置されるために、前記インシュレータはスピーカーから容易には離脱しない。しかし、上記開示技術は、硬質式インシュレータ(剛体支持式)と比較した場合のフローティング式の欠点を低減させる範囲にとどまり、地震波によるロッキング振動がもたらすスピーカー本体の転倒防止までは考慮されていない。
昨今のトレンドにより多くのスピーカーの形態は、従来のフロア型から、設置面積が小さく背の高いトールボーイ型になっている。トールボーイ型への移行は、スピーカーが設置される住宅環境によるものであり、スピーカーの設置安定性対策はますます厳しくなっている。詳細は後述するが、スピーカーの場合、音響特性上の理由から床面に対してアンカー固定(床面に完全締結)は難しい。
さて、1995年阪神・淡路大震災における地震による家具の転倒・破損では、スピーカーを主体とする高価なオーディオ機器に甚大な被害が発生した。それから16年後の2011年、東日本大震災においても、同様に甚大な被害が発生した。阪神・淡路大震災以降、幾度にわたる震災の教訓は遂に活かされることはなかったのである。一見容易に思われるスピーカーの地震対策が困難な理由は、次の二つの条件(1)(2)を、「同時に満足させる技術的手段」が今日に至るまで見出されていないからである。
(1)スピーカーが床面から離脱して、かつ転倒しないように床面に安定設置する。
(2)スピーカーの音響特性を劣化させない。
従来、以下示すようなスピーカーの転倒対策が、地震対策用品として市販されており、ユーザーサイドでの工夫も盛り込まれて実施されている。
(i) チューニングベルトを床面固定する方法
図37は、スピーカーをチューニングベルトを床面固定する方法を示す図である。500はスピーカー、501はスピーカーを支持するスパイク、502は床面、503は転倒防止用チューニングベルト、504はこのチューニングベルトを床面に固定するボルトである。この方法により、上記(1)のスピーカーの転倒防止は図ることはできるが、しかし、上記(2)の再生音のクオリティー(品質)は確実に劣化する。スピーカーの場合、コーンを駆動するボイスコイルの反力がスピーカー・エンクロージャー(筺体)本体を振動させる。すなわち、スピーカーはボイスコイルで駆動されるコーンだけが音源ではなく、筺体全体が音の発生源である。スピーカーの筺体は、多くの高調波の共振周波数を有する、バイオリン、チェロなどの楽器同様の共鳴体である。これらの楽器は、演奏時においてスパイク状のエンドピンで床面に一点で支持される。その理由は共鳴体である楽器の音響特性を損なわないためである。スピーカーの筺体をチューニングベルトで拘束すれば、楽器同様の共鳴体としての特性は失われて、上記(2)の条件は満足できない。
(ii) 機器と壁面を弾性部材で連結する方法
図38は、耐震グッスとして市販されている地震対策用品を用いて、スピーカーの上部側面と壁面を弾性部材で連結する方法である。図38aは上面図、図38bは正面図である。510はスピーカー、511はスピーカーを支持するスパイク、512は床面、513は壁面、514は転倒防止用耐震グッスである。この場合も同様に、スピーカーの転倒防止を図るためには、耐震グッスは十分な強度(剛性)を保たねばならず、スピーカーの共鳴体としてのデリケートな音響特性は維持できない。
(iii) 剛体部材を介在して機器と床面間を固定する方法
図39は、スピーカー底面部と床面間に剛体部材を介在して、スピーカー本体を床面に完全固定する方法である。520はスピーカー、521はスピーカーのコーン、522はスピーカー・エンクロージャー(筺体)、523は床面、524はスピーカーと床面間に設置された剛体部材、525はスピーカーの筺体522と前記剛体部材を連結するボルト、526は前記剛体部材と床面523を連結するボルトである。この方法により、上記(1)のスピーカーの転倒防止は図ることはできるが、しかし、前述した方法と同様に再生音のクオリティー(品質)も確実に劣化する。コーン521を駆動するボイスコイルの反力がスピーカーの筺体522を振動させると、この振動527a、527bは前記剛体部材を介して床面523に伝達される。床面523に伝達されたスピーカーの振動は、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させて、再びスピーカーの筺体522を振動させる。すなわち、低周波の床面振動とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化は、スピーカーを剛体支持する限り基本的に回避できない。
(iv) 防振架台を適用する方法
さて、産業機器分野では、振動発生源である圧縮機、トランス、エアコン、発電機などの振動を外部に伝達させないために、防振架台が広く用いられてきた。対象機器の振動を床面に伝えないようにするのが防振であり、床面の振動を対象機器へ伝えないようにするのが除振である。ばねと質量とダンパーで構成される防振と除振は同一の解析モデルで表現できる。そのため、防振と除振の作用を併せ持つ防振架台をスピーカーの支持に使えないかというのは、極めて自然な発想である。
図40aはスピーカーの正面図、図40bは防振架台の正面図、図41は図40のA部(変位規制機構)の拡大図である。530はスピーカー本体、531はスピーカーのコーン、532はスピーカー・エンクロージャー(筺体)、533a、533bはスピーカー筺体の足部である。534は防振架台、535は上部架台、536は下部架台、537a、537bはスプリングコイルで構成された吸振体、図中のA部(左右に配置)は変位規制機構、538は床面である。この変位規制機構(A)により、保護対象機器を搭載状態で、上部架台535の上下方向の移動を規制する上限値隙間Tmと、下限値隙間Tnが工具を用いて調節される。
ここで、足部533a、533bを利用して、上部架台535上にスピーカー本体530を設置・固定する場合を想定する。変位規制機構は平常状態では非接触であるために、防振架台534は防振と除振の2つの機能を併せ持つことができる。しかし、通常金属板材で構成される上部架台535は、民間住宅の床面と比べて、より高い周波数の複雑な共振モードを有する。したがって、この場合も上部架台535とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化は回避できない。
また防振架台の場合、架台はアンカーボルト施工により基礎コンクリート(床面538)と緊結(図示せず)される。図42はスピーカーを部屋にステレオで配置した場合を示すモデル図である。670aは左側スピーカーシステム、670bは右側スピーカーシステム、671はリスナー、672は部屋の壁面である。通常、スピーカーは部屋のコーナーで、壁面672に近接して配置される場合が多い。また限られたスペース内での設置が前提となる。スピーカーが部屋に設置される位置Gと傾斜角度θは、部屋全体の固有の音響特性によって、音楽のジャンル、あるいはリスナーの好みなどによって、日常的に変更されて、微調整される場合が多い。この点は、空調器、発電機、変圧器のように、一度アンカー施工により設置すれば、配置変更がほとんど無い産業用の防振架台と根本的に異なる点である。したがって、オーディオ用スピーカーの場合は、産業用機器のように床面に完全固定するのは、位置Gと傾斜角度θ(図42参照)の調整が随時必要なことから現実的ではない。
産業用分野で用いられる防振架台(特許文献2)では、図40bで前述したように、地震のような大きな振動が入力した場合に備えて、図41に示すように、上部架台535の上下方向及び水平方向の相対移動量TmとTnを規制する変位規制機構(A)が、上部架台535と下部架台536間に設けられている。変位規制機構における許容される隙間をTm=Tn=1.5〜2.5mmに設定すれば、保護対象機器に与える衝撃荷重を充分に低減できることが分かっている。上限値隙間Tm、下限値隙間Tnの各片側隙間は小さい程、衝撃荷重を低減させる上で好ましい。しかし、隙間調整が必須の従来産業用の場合でも、防振架台を構成する部材精度のばらつきから、上記Tm、Tnの数値が実用上の限界であった。産業機器の場合、幅広い対象に適用できる標準仕様として、スプリングコイルで支持された機器の固有振動数がf 0=4Hzとなるように、スプリングコイルの仕様(剛性)をメーカー側が選択して、上記隙間を設定する。産業機器の場合、保護対象機器を搭載状態で、工具を用いた上記隙間Tm、Tnの調整作業は必須である。しかし、民生商品であるオーディオ機器の場合、スピーカーの設置環境(図41参照)も考慮したとき、一般市民であるエンドユーザが工具を用いて、熟練を要する隙間Tm、Tnの調整作業をするのは、現実的ではない。また、ユーザが用いるスピーカーの質量も様々であるため、固有振動数を特定できず、広い質量範囲で適用できるスピーカーの支持手段が必要である。したがって、スピーカーの場合は、転倒を完璧に防止するのではなく、地動外乱に対して、「転倒に至る裕度」をいかに大きくできるかが重要なポイントである。以上要約すれば、「共鳴体としてのスピーカーのデリケートな音響特性を劣化させないで、地震対策が図れる抜本的解決手段」は、今日に至るまで見出されていない。
具体的に、請求項1の発明は、
保護対象機器を搭載する側に設けられた上部部材と、
設置床面側に設けられた下部部材と、
前記上部部材と前記下部部材の間に設けられた前記保護対象機器の質量を支持する弾性支持部材と、
前記上部部材と前記下部部材の間に隙間が形成されるように設けられ、前記上部部材の第1所定量以上の上方向移動を規制する上限値規制部と、
前記上部部材と前記下部部材の間に隙間が形成されるように設けられ、前記上部部材の第2所定量以上の下方向移動を規制する下限値規制部と、を具備し
前記保護対象機器の質量mの取り得る範囲をm 0≦m≦m max
前記弾性支持部材の剛性をK、
前記弾性支持部材の剛性K、前記保護対象機器の質量mがm 0である場合の共振周波数をf 0
前記弾性支持部材が質量m maxの前記保護対象機器を支持する場合における、前記弾性支持部材が質量m 0の前記保護対象機器を支持する場合のつり合いの位置からの変位をxn
この変位xnから決まる前記上限値規制部と前記下限値規制部の平均隙間をδmean
転倒限界、あるいは、発生衝撃荷重の許容限界から決まる限界隙間をδmax,として、
前記平均隙間δmean<前記限界隙間δmaxを維持すると共に、
前記上限値規制部と前記下限値規制部の各隙間が非接触の状態を維持できるように、前記共振周波数f 0を設定したことを特徴とする擬似剛体化ユニットである。
すなわち、本発明においては、前記保護対象機器の転倒限界、あるいは、発生衝撃荷重の許容限界から決まる隙間をδmax、前記上限値隙間δV2と前記下限値隙間δV1から決まる片側平均隙間をδmeanとしたとき、前記保護対象機器の質量が広い範囲で異なる場合でも、δmean<δmaxの状態を無調整で維持できる擬似剛体化ユニットの構成条件が存在することを見出したものである。無調整のため、隙間を調整するねじ部が不要で、部品点数が少なく、極めてシンプルな構成で擬似剛体化ユニットを実現できる。
具体的に、請求項2の発明は
前記質量がm=m0のときの前記上限値規制部の隙間をδV2mini
前記質量がm=m maxのときの前記下限値規制部の隙間をδV1min
δV2min>0、及び、δV1min>0となるように設定したものである。
すなわち、本発明においては、質量増大率n、前記共振周波数f 0に加えて、前記質量の重心位置などで決まるばらつき、及び、前記弾性支持部材の高さ精度のばらつきを考慮して、δV2min>0、及び、δV1min>0となるように設定すればよい。その結果、高い裕度を保って、平常時の除振、もしくは防振状態を保ち、非常時には転倒防止・衝撃力緩和を両立できるシステムを無調整で実現できる。
具体的に、請求項3の発明は、
質量増大率n= m max/m0として、下記条件を満たすように、前記質量増大率n、前記共振周波数f 0を設定したものである。
すなわち、本発明においては、
前記上限値規制部における隙間δV2と前記下限値規制部隙間δV1が概略等しい条件下において、片側平均隙間δmean=δV1=δV2である。ここで、δmaxは擬似剛体化システムが想定される外力(地震波の加速度の大きさ)の条件下で、転倒限界、あるいは、発生衝撃荷重の限界から決まる許容される隙間とする。平衡状態からのスプリング変位の変動幅 xn =上式左辺≒δmeanである。したがって、上記条件を満足すように、前記質量増大率n、前記共振周波数f 0を設定すれば、無調整で設置安定性を維持できる擬似剛体化システムが実現できる。
具体的に、請求項4の発明は、
前記平均隙間1.0×10-3m≦δmean≦2.5×10-3mに設定したものである。
すなわち、本発明においては、産業用の減震機構による実績から、変位規制機構における許容される隙間δmax=1.0〜2.5mmに設定すれば、保護対象機器に与える衝撃荷重を充分に低減できる。すなわち、震度5以上の地震波が入力された場合でも、保護対象機器のダメージを震度5以下に低減できる減震効果が得られる。
具体的に、請求項5の発明は、
前記上部部材から下方向に伸びた中心部材と、を具備し
前記上限値規制部は、前記中心部材と前記下部部材間の隙間δV2により前記上部部材の上方向の移動量を規制するように構成されており、
前記下限値規制部は、前記中心部材と前記下部部材間の隙間δV1により前記上部部材の下方向の移動量を規制するように構成されており、
かつ、前記上限値規制部と前記下限値規制部は前記中心部材の軸方向に沿って並んで配置されしたものである。
すなわち、本発明においては、保護対象機器は上部スリーブの上面凸部の上部に、締結部材を介して搭載される。このとき、保護対象機器の底面は必ずしも平胆ではなく、局所的に傾斜、あるいは凹凸面を有する場合が多い。前記上限値規制部と前記下限値規制部を同軸上に配置した構成により、保護対象機器の底面が傾斜、あるいは凹凸面を有する場合でも、ばらつき要因を考慮して設定する上限値・下限値隙間に与える影響を僅少にできる。
具体的に、請求項6の発明は、
請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
前記上部部材の前記保護対象機器側に設けられたユニット側締結部と、
前記保護対象機器の底面に設けられた保護対象機器側締結部と、
前記ユニット側締結部と前記保護対象機器側締結部と繋ぐ連結部材により、
前記保護対象機器機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化したシステムを構成したものである。
すなわち、本発明においては、
前記擬似剛体化ユニットを前記保護対象機器機器に対して離脱不可の構成にすることにより、従来フローティング式ユニットを装着する場合と比較して、設置安定性のよい擬似剛体化システムが実現できる。
具体的に、請求項7の発明は、
請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
前記保護対象機器の底面よりも面積が大きく、前記複数の擬似剛体化ユニットが締結されたボードと、を備え、
前記保護対象機器が前記複数の擬似剛体化ユニットに締結された状態で搭載されるシステムを提供するものである。
すなわち、本発明においては、
保護対象機器にボードを装着して床面に対する支持幅を増大することにより、ボード装着無しの場合と比べて、保護対象機器の設置安定性を大幅に向上させることができる。
具体的に、請求項8の発明は、
請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
この擬似剛体化ユニットの底面積よりも面積が大きく、前記複数の擬似剛体化ユニットのそれぞれに締結された分割ボード、を備え
前記保護対象機器が前記複数の擬似剛体化ユニットに締結された状態で搭載されるシステムを提供するものである。
すなわち、本発明においては、
たとえば、保護対象機器を4分割ボードで支持する構成にすれば、保護対象機器の設置環境に合わせて、各分割ボードを水平方向に自在に開閉できる。本発明を設置面積が小さいトールボーイ型スピーカーに適用したとき、トールボーイ型の省スペース化の利点を失わないで、設置安定性の特徴を併せ持つ擬似剛体化システムを実現できる。
具体的に、請求項9の発明は、
スピーカーを保護対象機器として支持する擬似剛体化ユニットであって、質量増大率n= m max/m0として、n≧1.5、及び、8Hz≦f0≦15Hzの範囲に設定したものである。
すなわち、本発明においては、
(1)民生商品であるオーディオ用スピーカーの場合、スピーカー重量に合わせた商品(擬似剛体化ユニット)の品揃え(品種の数)は、n≧1.5の範囲設定が実用上の限界である。(2)固有振動数 f 0>15Hzの場合は、音響特性が床面振動の影響を受け易く、f 0<8Hzの場合はスプリング変位が大幅に増大するため調整レス化が困難である。上記(1)(2)を考慮して、n≧1.5、及び、8Hz≦f0≦15Hzの範囲に設定することで、本発明の特徴が活かせる擬似剛体化システムが実現できる。
具体的に、請求項10の発明は、
スピーカーを保護対象機器として支持する擬似剛体化ユニットであって、スピーカーの最小質量をm 0=15〜25kg、最大質量をm max=30〜50kgの範囲を受け持つように構成したものである。
すなわち、本発明においては、
質量増大率n=2として、オーディオ分野で一般的に普及しているスピーカーの需要から、低荷重用ユニットの質量範囲は、最小質量m 0=15〜25kg、最大質量m max=30〜50kgとする。この場合、擬似剛体化ユニット(商品A)の低荷重用は15〜30Kg、擬似剛体化ユニット(商品B)の低荷重用は25〜50Kgとなる。さらに、擬似剛体化ユニット(商品A)は3種類の品揃えを想定して、中荷重用30〜60Kg、大荷重用60〜120Kgとしてもよい。
具体的に、請求項11の発明は、
オーディオ機器を保護対象機器として支持する請求項1記載の擬似剛体化ユニットであって、
前記オーディオ機器側のスパイク本体部、あるいは、前記スパイク本体部の一部を収納できる容積を有する円柱形状空間を前記上部部材の中央部に形成し、
前記円柱形状空間の側面に形成されたユニット側ねじ部と、
前記オーディオ機器の底面に設けられているスパイク取り付けのためのオーディオ側ねじ部と、
前記ユニット側ねじ溝と前記オーディオ側ねじ部を繋ぐ連結部材により、前記オーディオ機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化したものである。
すなわち、本発明においては、
上部部材にスパイクを収納できる広い空間を形成することのより、請求項12で後述する「フローティング式スパイク受け」として兼用できる。本実施形態における擬似剛体化ユニットは、前述した実施形態同様に、スピーカー質量が許容範囲で変化しても、δV1>0、δV2>0の条件が無調整で維持できる。
具体的に、請求項12の発明は、
前記オーディオ機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化する作業の前段階において、
前記スパイク受け皿を前記円柱形状空間の床面側底面に配置して、音質評価用のスパイク受けとして適用できるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、
次の理由により、従来困難だったフローティング式のスパイク支持が可能となる。(1)スパイク受け皿が設置される上部部材の軸方向移動は、狭い隙間で規制されている。(2)スパイク先端部は空隙部に底深く収納されて、かつ、スパイク先端部の高さは床面に対して充分に低く、スパイク本体は容易には、擬似剛体化ユニットから離脱しない。また、スパイクの着脱とユニットのボード設置作業が不要なため、スピーカー、擬似剛体化ユニット、ボードの3者を一体化する前段階で、本インシュレータの音質面での評価が容易にできる。
具体的に、請求項13の発明は、
保護対象機器を搭載する側に設けられた上部部材と、
この上部部材から下方向に伸びた主軸と、
設置床面側に設けられた下部部材と、
前記主軸は軸方向に移動可能に前記下部部材に収納されており、
あるいは、前記主軸は軸方向に移動可能に前記下部部材を収納しており、
前記上部部材と前記下部部材の間に設けられた前記保護対象機器の荷重を支持する弾性支持部材と、
前記主軸とその対向面は静的平衡状態では隙間δSを保ち、
静的平衡状態から外れたときには隙間δDとなるように構成されており、
平常時には前記保護対象機器は隙間δSよりも広い隙間δSを保つことで除振、あるいは、防振作用を得ると共に、
前記保護対象機器が揺動運動する非常時には、前記主軸の軸方向移動により、前記主軸の傾斜角を前記狭い隙間δDで規制することで、前記保護対象機器の揺動運動を抑制する作用を得るように構成したものである。
すなわち、本発明においては、
主軸とスリーブ間の隙間を適切な段付構造に設定することにより、
(i)平常時には、ユニット主軸は非接触状態を保ち、除振・防振性能が得られる。
(ii)保護対象機器の搭載荷重が広い範囲で変化しても、上記非接触状態を調整レスで保つことができる。
(iii)ロッキング振動が発生する非常時には、左右主軸の傾斜角方向を拘束状態にして、保護対象機器全体の揺動運動を抑制する傾斜角抑制作用が働く。
上記(i)〜(iii)が調整レスで実現できる理由は、ロッキング振動により、左右主軸が交互に軸方向相対移動を繰り返す点を利用している、という点が重要なポイントである。すなわち、本ユニットを左右に配置して保護対象機器を搭載することにより、ロッキング振動自身がロッキング振動を自立的に抑制するのである。この自立抑制作用の効果により、搭載荷重の変動に対して安定した除振・防振性能が得られると共に、非常時には最適状態に設置された転倒防止・衝撃荷重低減効果が無調整で得られる。
具体的に、請求項14の発明は、
請求項1、もしくは、請求項12記載の擬似剛体化ユニットと、
前記保護対象機器の質量をm、前記保護対象機器の重心高さをH、前記保護対象機器の左右支持部の距離をB0、前記保護対象機器の前記支持部と重心位置の距離をR、角度φ=tan-1 (B0/2H)、重力加速度をg、前記ボードの質量をmb、前記ボードの重心位置と前記ボードのコーナー部間の距離をBG、前記支持部と前記ボードの前記コーナー間の距離をB1、前記保護対象機器に水平方向の静荷重が加わったときの最大傾斜角をθrとして、下式でηを定義したとき
η≧1となるように構成したものである。
すなわち、本発明においては、幾何学的形状がRとΦで構成される機器を保護対象として、η≧1となるように、変位抑制値θr、ボード幅B1、ボード質量mbを設定すれば、(i)剛体支持の場合と同等、あるいはそれ以上の静的転倒裕度を得ることができて、剛体支持式の欠点である設置不安定性を改善できる。(ii)剛体支持であるが故の効果、即ち、徐振・防振効果、オーディオ機器の場合における床面との相互干渉による混変調歪みの発生を回避する効果が得られる。即ち、上記(i)(ii)を同時に実現することができる。
本発明の適用により、保護対象機器の搭載重量が広い範囲で異なる場合でも、平常時には除振・防振効果を維持すると共に、地震発生の非常時には、保護対象機器の転倒防止・衝撃荷重低減効果が無調整で得られる。
また、床面のアンカーボルト施工が難しいオフィス空間、一般住宅などでも、簡素・設置容易な構造で地震対策が図れる。たとえば、本発明による「擬似剛体化ユニット」をオーディオ用スピーカーに適用すれば、永年の未解決課題、すなわち、(i)スピーカーが床面から離脱して、かつ転倒しないように床面に安定設置する、(ii)スピーカーの音響特性を劣化させない。上記(i)(ii)を同時に満足させる抜本的解決手段を提供することができる。その効果は顕著である。
本発明の実施形態1に係る擬似剛体化ユニットをスピーカーに適用した場合を示す図。 上記実施形態1の正面断面図。 本発明の擬似剛体化ユニットのモデル図で、図3(a)はm=m 0の場合、図3(b)にm=n×m 0の場合を示す図。 周波数に対する振動遮断性能を、固有振動数f 0=8Hz、f 0=15Hzの場合について求めたグラフ。 スプリングコイル自由長からの変位x 0と固有振動数f 0の関係を示すグラフ。 擬似剛体化ユニットの中心軸が、角度θ傾斜した状態を示す図。 図6のモデル図。 本発明を、産業用を含む多用途を想定した適用事例を示す正面断面図。 固有振動数f 0に対するスプリングコイルの自由長からの変位xを、質量増大率nをパラメータとして求めたグラフ。 従来スピーカーを剛体ブロックとみなして、その転倒限界を求めるモデル図。 本発明を適用した場合について、スピーカーの転倒限界を求めるモデル図。 上記図11のさらに詳細な解析モデル図。 剛体ブロック傾斜角θr に対する浮上開始加速度αsのグラフ。 剛体ブロックの質量比mb/mに対する浮上開始加速度αsのグラフ。 ボード幅比BW/B0に対する浮上開始加速度の比αss0のグラフ。 本発明の第3実施形態を示す正面断面図。 本発明の第4実施形態を示す正面断面図。 発明の第5実施形態を示すもので、図18(a)は図18(b)のAA矢視図、図18(b)は図18(a)のBB矢視図。 本発明の第6実施形態である擬似剛体化ユニットの正面断面図。 地震波によるロッキング振動発生時において、各減震ユニットの主軸とスリーブの関係を示す図。 図20において左側減震ユニット本体部の正面断面図。 本発明の第7実施形態を示し、図22(a)はBW=BWmaxの状態を示す図、図22(b)はBW=BWminの状態を示す図。 図22(a)の擬似剛体化ユニットとボードに注目した正面断面図。 4分割ボード上に搭載されたスピーカーを、部屋のコーナー部において、壁面に近接して配置した場合を示す図。 ボード上に締結された擬似剛体化ユニット上に剛体ブロックを搭載した状態を示すモデル図。 剛体ブロックにロッキング振動が発生した状態を示す解析モデル図。 非線形隙間関数FΦが導入された解析モデル図。 スプリング変位yに対するスプリング反力KΦ(y)・y特性のグラフ。 剛体ブロックにロッキング振動を与える水平方向加速度を示す図で、図29aは時間に対する振動波形、図29bは時間に対する周波数を示す図。 ロッキング振動の回転角の応答特性を示す解析結果のグラフ。 ロッキング振動による支持部の発生力応答特性を示す解析結果のグラフ。 変位規制隙間±1.5mmの場合の発生力応答特性を示す解析結果のグラフ。 変位規制隙間±0.5mmの場合の発生力応答特性を示す解析結果のグラフ。 変位規制の片側隙間に対する最大圧縮荷重の解析結果のグラフ。 特許文献1のオーディオ用インシュレータを示し、図35aは上面図、図35bは正面断面図。 上記スペーサ部近傍の断面図で、図36(b)は図36(a)の部分拡大図。 従来のスピーカー地震対策を示し、チューニングベルトを床面固定する図。 従来のスピーカー地震対策を示し、図38aは上面図、図38bは正面図。 従来のスピーカー地震対策を示し、剛体でスピーカーを床面固定する図。 地震対策として防振架台にスピーカーを設置する図で、図40aはスピーカーのモデル図、図40bは防振架台の正面断面図。 図40のA部拡大図。 スピーカーを部屋にステレオで配置した場合を示すモデル図。
以下、本発明の各実施形態についてを次のステップで説明する。
[1] オーディオ用スピーカーへの適用事例
[2] 産業用を含む多用途を想定した適用事例
本発明は、フローティング式インシュレータで支持された保護対象機器(たとえば、スピーカー)の搭載重量が広い範囲で異なる場合でも、平常時には除振・防振効果を維持すると共に、地震発生の非常時には、保護対象機器の転倒防止・衝撃荷重低減効果が無調整で得られるユニットの構成条件が存在することを見出したものである。
ここで、(1)保護対象機器の荷重を支持する弾性支持部材(スプリングコイル)、(2)弾性支持部材の移動量を狭い隙間で規制する手段、上記(1)(2)を一個のユニットに内蔵したユニット構造を、技術の特徴を明確に表現するために、フローティング式の「擬似剛体化ユニット」と呼ぶことにする。さらに、保護対象機器の質量が広い範囲で異なる場合でも、擬似剛体化のために設定される狭い隙間の調整が不要なユニットを、「調整レス・擬似剛体化ユニット」と呼ぶ。調整レスであるため、隙間設定に必要なねじ加工部品が不要で、部品点数が少なく、極めてシンプルな構成で擬似剛体化ユニットを実現できる。最初に上記[1]について説明する。
[1] オーディオ用スピーカーへの適用事例
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態である、「調整レス擬似剛体化ユニット」をオーディオ用スピーカーに適用した場合を示す。図2は、前記調整レス擬似剛体化ユニットの正面断面図である。150は保護対象機器であるスピーカー、151はスピーカーを搭載するボード、152a〜152dは調整レス擬似剛体化ユニットである(152cは図示せず)。前記擬似剛体化ユニットはボード151にボルトより締結される。ボード151は床面にアンカー固定されず、床面に対して水平方向に移動可能で、かつ垂直方向に浮上可能である。
図2において、153は上部スリーブ(風鈴部材である上部部材)、154は下部ハウジング(下部部材)、155は中心軸、156はスプリングコイル、157、158は前記スプリングコイルの位置決め部、159はサージング防止部材、160a、160cはボード151に締結するボルトである(160b、160dは図示せず)。161は中心軸155の下端面にボルト162で締結された留め具、163はスピーカー150と前記擬似剛体化ユニットの上部スリーブ153を連結するための連結部材である。163aは前記連結部材のスピーカー側ねじ部、163bは前記連結部材のユニット側ねじ部、164aは上部スリーブ153の上面部における上面凸部、164bは外周部である。上面凸部164a上に連結部材163を介して、スピーカー150が搭載される。165は下部ハウジング154の中心部に形成された変位規制部である。図2は、保護対象機器(スピーカー)の重量と、4隅に設置された前記擬似剛体化ユニットの各スプリング変位が静的平衡状態にある。このとき、変位規制部165の下端面166と留め具161の間隙は、上部スリーブ153の静的平衡状態からの上方向移動可能な隙間(上限値隙間と定義する)δV2となる。また変位規制部165の上端面167と上部スリーブ側対向面168の間隙は、上部スリーブ153の静的平衡状態からの下方向移動可能な隙間(下限値隙間と定義する)δV1となる。
さて、本実施形態では、前述したように、スピーカーとボード間に擬似剛体化ユニットを介在して一体化することにより、スピーカーの永年の課題、すなわち、
[i]スピーカーが床面から離脱して、かつ転倒しないように床面に安定設置する。
[ii]スピーカーの音響特性を劣化させない。
上記[i] [ii]を、同時に満足するオーディオ・システムを実現することができた。その理由を要約すれば、前記上部スリーブの静的平衡状態から移動可能な上限値隙間δV2、下限値隙間δV1は、スピーカーの搭載質量が広い範囲で異なる場合でも、非常時の転倒防止を図る上で充分に小さく設定できる。かつ、定常状態において、除振性能を維持する上で必要なδV1>0、δV2>0の状態を無調整で維持できる。
すなわち、本発明はスピーカーの転倒限界から決まる片側平均の限界隙間をδmax、前記上限値・下限値隙間δV2、δV1から決まる片側平均隙間をδmeanとしたとき、前記保護対象機器(スピーカー)の質量が広い範囲で異なる場合でも、δmean<δmaxの状態を無調整で維持できる条件が存在することを見出したものである。ちなみに、地震発生などの非定常時において、前記δmeanが小さい程、保護対象機器に水平方向に荷重が加わったときの最大傾斜角θrが小さくなり、保護対象機器の転倒防止に有利となる。この点の詳細については、第[2]章で後述する。
以下、本発明が提案する「擬似剛体化システムの調整レス化」を具体的に実現するための条件について述べる。保護対象機器の最小質量をm 0、前記質量m0からの質量増大率をnとして、保護対象機器の搭載質量がm 0≦m≦n×m 0の範囲で変わる場合を想定する。図3(a)に擬似剛体化ユニットの搭載質量がm=m 0の場合、図3(b)にm=n×m 0の場合をモデル化して示す。搭載質量がm=m 0の場合、下限値隙間δV1は最大値となり、δV1=δV1maxである。また、上限値隙間δV2は最小値となり、δV2=δV2minである。搭載質量がm= n×m 0の場合、上限値隙間δV2は最大値となり、δV2=δV2maxである。また、下限値隙間δV1は最小値となり、δV1=δV1minである。上記各隙間は次の条件で設定される。
(1)固有振動数f 0
(2)スピーカー質量の許容変動範囲(質量増大率n)
(3)下記ばらつき要因を考慮した場合
(a)各ユニット搭載質量のばらつき
(b)スプリングコイルの加工精度
(4)保護対象機器底面の平坦度を考慮した場合
上記(1)の固有振動数f 0が隙間設定に与える影響について考察する。ここで、オーディオ用スピーカーの場合、産業機器と比較して、最適な固有振動数範囲が高い領域にある点に注目する。産業機器の場合、通常は固有振動数f 0=4Hz近傍に設定される場合が多い。この理由は、産業機器の場合、保護対象機器本体に低剛性で固有振動数が低い箇所がある場合が多く、この箇所の共振現象がもたらす不具合を考慮するからである。本研究では、産業機器と比べて、スピーカー構造は剛体に近く、固有振動数が高い点に注目した。フローティング式インシュレータで支持されたスピーカーを対象にした試聴実験と振動計測の結果、次の点が明らかとなった。
(i)固有振動数 f 0<5〜6Hzの場合・・・低音域がブーミーになり易い
(ii)固有振動数 f 0>15Hzの場合・・・音響特性が床面振動の影響を受け易い
上記(i)において、オーディオ再生音がブーミーとは、楽器ベースの音をはじいた後の余韻の切りが無く、次の音に被ってくるイメージ、即ち、低音域の制動が効かないイメージの音である。スピーカー本体の支持剛性が低い場合に、このブーミー現象が発生し易い。トールボーイ・スピーカーの場合は、重心位置が高く、床面に対するスピーカー底部の支持幅が小さいために、再生音がブーミーになり易い点が指摘されている。さらに、スピーカーをフローティング式インシュレータで支持した場合、インシュレータの剛性が低いとブーミーになり易い。
上記(ii)の理由は次のようである。スピーカーが設置される民間住宅の床面は、通常20〜100Hzを固有値とする分布振動モードを持っている。スピーカーの振動が床面に伝達されると、床面を含む部屋全体の持つ複雑な固有振動モードを励起させる。この低周波の床面振動とスピーカー本体の振動の相互干渉がもたらす音質の劣化を回避するためには、フローティング式インシュレータの固有振動数の上限値を、床面振動の影響を受けない値に設定する必要がある。図4は、周波数に対する振動遮断性能を、固有振動数f 0=8Hz、f0=15Hzの場合について求めたものである。除振特性は共振点f 0を中心に、周波数に対して傾斜する特性(裾野)を有する。床面振動の影響から回避するためには、床面が分布振動モードを有する領域において、振動遮断性能<0が必要条件である。同図中のB点を含む固有振動数の許容される上限値はf0=fB=15Hzである。
上記音響特性面からの固有振動数の制約条件に加えて、擬似剛体化ユニットの調整レス化を実現するための固有振動数の条件は次のようである。スピーカーの質量mとスプリングコイルのバネ剛性Kから決まる固有振動数f 0となるように、質量mとバネ剛性Kを設定する。図5(b)のグラフに、スプリングコイルの自由長からの変位x 0と前記固有振動数f 0の関係を示す。
同図中に、同一のバネ剛性Kのままで、質量m0をn倍(同図ではn=2)した場合を図5(c)のグラフに示す。同一のバネ剛性Kのままで、質量m0をn倍とすれば、f0 2∝K/m0であるため、自由長からのスプリングコイル変位xはn倍、すなわち、x=x0→nx0となる。したがって、平衡状態[図5(b)]からのスプリング変位の変動幅xn
式(2)から固有振動数f 0が高い程、質量増大率nが小さい程、平衡状態[図5(b)]からのスプリング変位の変動幅xnを小さくできる。
上記(2)のスピーカー質量の許容変動範囲は次のようである。オーディオ分野で、一般的に普及しているスピーカー質量は、m=25〜100Kgである。m<25Kgの小型スピーカーも数多く使用されるが、転倒しても大きな被害にはならないため、本実施例の適用対象から除外するものとする。またm>100Kgの大型スピーカーは需要が少ないため除外する。ここで、擬似剛体化ユニットを低荷重用と高荷重用の2種類揃えると仮定する。この場合、低荷重用ユニットは25〜50Kg、高荷重用ユニットは50〜100Kgを受け持つことになる。共に、質量の許容変動範囲は2倍(質量増大率n=2)である。たとえば、低荷重用ユニット(25〜50Kg)を用いて、m 0=25kgにおいてf 0=14Hzに設定したとき、スプリングコイルの自由長からの変位は、式(1)から、x0=1.26mmである。許容搭載荷重の最大値mmax=n×m0=50kgの場合は、m 0=25kgからのスプリング変位xn=(n-1)x0=1.26mmである。
質量増大率nを小さくする程、スプリング変位xnを小さくできるため、許容される固有振動数f 0は低い値に設定できる。しかし、本実施例の対象であるオーディオ用スピーカーのような民生商品では、スピーカー重量に合わせた商品(擬似剛体化ユニット)の品揃え(品種の数)は限界があり、n≧1.5の範囲設定が実用上の限界であった。
質量増大率nを大きくする程、品種の数は減らせる。しかし、後述する図9のグラフに示すように、平衡状態からのスプリング変位の変動幅xnが増大する。固有振動数がf0を大きくすれば、変動幅xnは小さくできるが、f0≦15Hzの制約から、n≦3が限界であった。
表1に上記(1)の固有振動数f 0と上記(2)の質量増大率nだけから求めた、理想条件下での片側平均隙間δVmeanを示す。この場合、δVmean=xn/2である。図5のグラフから、固有振動数がf0=f A=8Hzを境に小さくなると、変位xnは大幅に増大するため、片側平均隙間δVmeanは大きくせざるを得ない。その結果、保護対象機器の設置安定性は大きく低下する。理想条件下での結果を要約すれば、
(iii)固有振動数 f 0<8Hzの場合・・・スプリング変位は大幅に増大
上記(i)〜(ii)の音響特性面からの制約条件、及び、上記(iii)のスプリング変位xnを小さくする条件から、固有振動数範囲は、8Hz≦f 0≦15Hzとするのが好ましい。ここで、前述したように、δmaxを想定される外力(地震波の加速度の大きさ)の条件下で、擬似剛体化システムの転倒限界から決まる片側平均の限界隙間とする。ここで、片側平均とは、(上限値隙間+下限値隙間)/2として定義されるものである。したがって、理想条件下において、δVmean=xn/2=<δmaxの条件を満たすように、共振周波数f 0を設定すれば、無調整で設置安定性を維持できる擬似剛体化システムが実現できる。
さて、幅広い適用対象を想定して、かつユニットの量産化を実現するためには、搭載機器の質量、ユニット部品などのばらつき要因を考慮する必要がある。以下、上記(3)のばらつき要因を考慮して片側平均隙間δVmeanを求める。図3における各隙間は次式のようになる。
ばらつき要因を考慮したδV1min、δV2minの設定は次のようである。本実施例では、ばらつき要因で決まるδV1min、δV2minについては、上記(3)(a)各ユニット搭載質量(重心位置)のばらつき、上記(3)(b)スプリングコイルの加工精度を考慮して、次のようにして求めた。搭載質量のばらつきを±30%、スプリングの高さ精度を±0.5mmと仮定する。搭載質量のばらつきについては、主に重心位置で決まるもので、次のようである。スピーカーの場合、ボイスコイルを有するユニットがフロント側にあるため、重心位置は図形中心と異なる場合が多い。そのため、スピーカーを4ケ所で支持した場合、各スプリングコイルに加わる荷重は、±30%程度の違いを見込む必要がある。
スプリングコイルの高さ精度の上記ばらつきは、スプリングコイルは研磨加工を必要とする難加工性部材であることから考慮されるものである。スプリングコイルは加工圧によって容易に弾性変形するため、研磨加工を施した場合でも、軸方向の高さ精度は±0.5mmは見込む必要がある。
上記ばらつき要因を考慮して、m 0=25kgにおいてf 0=14Hzに設定したときの各隙間の設定例を以下に示す。
(i)δV2minの設定例:δV2minについては、質量がm 0より30%軽い場合を見込むと、x0=1.26→1.26×0.7=0.88mmとなる。またスプリングの高さが基準より、0.5mm高いとする。この結果、δV2min=(1.26-0.88)+0.5=0.88mmとなる。したがって、左記δV2minの隙間を見込んでおけば、質量とスプリング高さのばらつきを吸収できて、δV2min>0を維持できる。
(ii)δV1minの設定例:δV1minについては、質量がn×m 0より30%重い場合を見込むと、x0=1.26×2×1.3=3.28mmとなる。またスプリングの高さが基準より、0.5mm低いとする。この結果、δV1min=(3.28-2.52)+0.5=1.26mmである。したがって、左記δV1minの隙間を見込んでおけば、質量とスプリング高さのばらつきを吸収できて、δV1min>0を維持できる。
上記(i)(ii)の結果から、m 0=25kgにおいてf 0=14Hzに設定したとき、δV1max=xn+δV1min=1.26+1.26=2.52mm、δV2max= xn+δV2min=1.26+0.88=2.14mmである。
上記と同様な考察により、固有振動数をf 0=8〜14Hzに設定した場合について、各隙間の設定値を表2に示す。
表2の片側平均隙間は、δVmean=(δV1max+δV2min)/2=(δV1min+δV2max)/2である。
表2から、ばらつき要因を考慮したとき、片側平均隙間δmeanは理想条件(表1)と比べて、概略2倍は見込む必要があることがわかる。したがって、最少質量からのスプリング変位xn として、xn≒δVmeanである。ここで、前述したように、δmaxを想定される外力(地震波の加速度の大きさ)の条件下で、擬似剛体化システムの転倒限界から決まる限界隙間とする。したがって、δVmean≒xn <δmaxの条件を満たすように、共振周波数f 0を設定すれば、ばらつき要因を考慮した場合でも、無調整で設置安定性を維持できる擬似剛体化システムが実現できる。
上記(4)の保護対象機器底面の平坦度は、上限値・下限値の隙間設定に最も大きな影響を与える。しかし、本実施形態では、ユニットの構造上の工夫により、隙間設定に与える影響を僅少にすることができた。以下、その点について述べる。図2に示すように、スプリングと変位規制機構が同一ユニット内に内蔵されており、かつ中心軸の同軸上に上限値δV2と下限値δV1の設定箇所が設けられている。この構造が「擬似剛体化システムの調整レス化」を実現するために、大いに貢献する理由について、図6、図7を用いて説明する。図6は擬似剛体化ユニットの中心軸が、角度θ傾斜した状態を示す図、図7は図6のモデル図である。図2に示すように、保護対象機器(スピーカー)は上部スリーブ153の上面凸部164aの上部に、締結部材163を介して搭載される。このとき、保護対象機器の底面は必ずしも平胆ではなく、局所的に傾斜、あるいは凹凸面を有する場合が多い。R1を上部凸部164aの半径、R2を円盤形状の留め具の半径、Lを中心軸の長さとする。上部凸部164aの外周部が±ΔY1の段差を有する場合に、留め具161の外周部の段差ΔY3を求める。
R1=40mm、R2=7mm、L=23.9mmとして、ΔY1=1mmと仮定すれば、式(4)から、
ΔY3=0.182mmであり、ΔY1と比べて、ΔY3は充分に小さい。上限値隙間δV2≫ΔY3であるため、保護対象機器の底面が傾斜、あるいは凹凸面を有する場合でも、上限値隙間のばらつき要因を考慮して設定するδV2minに与える影響を僅少にできる。下限値隙間のδV1minの設定与える影響も同様に僅少にできる。上記結果から、本実施形態においては、上記(3)(a)保護対象機器底面の平坦度が隙間の設定に与える影響を無視できるものとする。
本実施形態では、上限値隙間δV2、下限値隙間δV1は、スピーカーの搭載質量が広い範囲で異なる場合でも充分に小さく、かつ、定常状態において、δV1>0、δV2>0の状態を無調整で維持できることができ、スピーカーの永年の課題 [i] [ii]を満足させることができた。無調整のため、隙間を調整するねじ部が不要で、部品点数が少なく、極めてシンプルな構成で擬似剛体化ユニットを実現できる。
さらに、上記[i] [ii]に加えて、[iii]ボード、ユニット、スピーカーの設置・組立作業が容易である。[iv]スピーカーを設置後、スピーカーを搭載したボードは床面上で移動できるため、スピーカーの位置G、傾斜角度θ(図42参照)の再調整が容易である。[v]ボードの厚みを薄くできるため、インテリア性(美観)を失わず、また設置面積の小さなトールボーイ・スピーカーの利点を損なわない。またボードの材質、形状が音響特性に影響与えない。などの効果が得られる。
前述したように、振動遮断による品質向上(床面振動との干渉による混変調歪発生の回避)の代償として、弾性支持された保護対象機器(スピーカー)は外力に対して振れ易く、設置が不安定になるという課題があった。しかし弾性支持部材の移動を狭い隙間で規制して「擬似剛体化」すると、振れやすいがゆえに倒れ易いフローティング式の欠点を補うだけではなく、フローティング式の長所(自動調芯作用・自動隙間均一化作用)を逆に活かして、スピーカーは床面に対して非接触状態を常時保つことができる。ちなみに自動調芯作用とは、静的平衡状態において、スプリングコイル156の水平方向剛性により、上部スリーブ153の軸芯が下部ハウジング154に対して同軸を保つ作用である。自動隙間均一化作用とは、スプリングコイル156の垂直方向剛性により、上限値隙間δV2、下限値隙間δV1が一定値を保つ作用である。そのため、筺体を従来耐震グッスで固定した場合のような、共鳴体としてのスピーカーのデリケートな特性が失われることは無い。しかし、非常時にはスピーカーはボードと一体化するため、転倒しないように安定設置される。すなわち、「擬似剛体化」により、剛体支持式では出来なかった上下・水平方向の狭い隙間の維持が容易に可能となる。本発明は、フローティング式の短所を逆に長所として活用したものある。
実施例では、上部スリーブ153から下方向に伸びた中心軸155と前記下部部材間の隙間により、前記上限値規制部と前記下限値規制部を構成した。本実施例の構造を上下反転させて、下部ハウジングに中心固定軸を形成して、この中心固定軸と上部スリーブの間に、上限値規制部と下限値規制部を構成してもよい。(図示せず)
本実施例では、擬似剛体化ユニットを低荷重用と高荷重用の2種類揃えると仮定して、低荷重用ユニットは25〜50Kg、高荷重用ユニットは50〜100Kgを支持する場合について評価した。ユニットが支持するスピーカーの質量範囲の設定は多少異なってもよい。たとえば、質量増大率n=2として、低荷重用ユニットの質量範囲は、最小質量m 0=15〜25kg、最大質量m max=30〜50kgとしてもよい。この場合、擬似剛体化ユニット(商品A)の低荷重用は15〜30Kg、擬似剛体化ユニット(商品B)の低荷重用は25〜50Kgとなる。さらに、擬似剛体化ユニット(商品A)は3種類の品揃えを想定して、中荷重用30〜60Kg、大荷重用60〜120Kgとしてもよい。
[2] 産業用を含む多用途を想定した適用事例
[第2実施形態]
図8は本発明の「調整レス・擬似剛体化ユニット」を、産業用を含む多用途を想定した適用事例を示す正面断面図で、前述した実施例同様に、上限値と下限値を規制する箇所をスプリングの内部空間を利用して設けると共に、スプリングの外周部を覆うように防塵皮膜を設けたものである。本実施例は、前述した実施形態が有する機能に加えて、本ユニットを伸縮自在の防塵皮膜(たとえば、蛇腹状に形成された外囲部)で覆うことにより、密閉構造にしたものである。この密閉構造により、ユニット内部に収納した圧縮コイルばね、サージング防止部材等を、風雨や紫外線によって劣化するのを防止することができる。また、上下位置規制部の狭い隙間は、塵埃の影響を受けないために、「調整レス擬似剛体化」の機能を恒久的に維持できる。
470は上部ベース、471は下部ハウジング、472はスプリングコイル、473、474はスプリングコイルの位置決め部、475aは前記上部ベース部上面凸部、475bは外周部である。前記上面凸部上に保護対象機器476(想像線で示す)が搭載される。477は前記上部ベースから上側に突出して、前記保護対象機器側と締結するネジ部が形成された上部中心軸、478は下部ハウジング側に形成された下部中心軸である。479は下部中心軸478の下端面にボルト480で締結された留め具、481は下部ハウジングに形成された変位規制部、482はこの変位規制部の上部ベース側対向面である。静的平衡状態からの上方向移動可能な隙間(上限値隙間)δV2と、静的平衡状態からの下方向移動可能な隙間(下限値隙間)δV1との定義は、前述した実施形態同様である。483は上部ベース470と下部ハウジング471の間に装着された防塵皮膜(蛇腹部)である。
図9は、固有振動数f 0に対するスプリングコイルの自由長からの変位xを、質量増大率nをパラメータとして求めたものである。前述した図5のグラフは、トールボーイ・スピーカーを適用対象として、質量増大率n、最適な固有振動数f 0の範囲を求めたものであった。以下、スピーカーに限らず、産業機器も含む幅広い対象に本発明を適用する場合の条件について説明する。
δmaxを想定される外力(地震波の加速度の大きさ)の条件下で、擬似剛体化システムの転倒限界、あるいは、発生衝撃荷重の許容限界から決まる限界隙間とする。
「保護対象機器の図形中心≒重心位置」で各ユニットに加わる荷重が均一であり、かつスプリングコイルなどの部品精度にばらつきが無い理想条件を想定する。この場合は、前述したように、δVmean=xn/2=<δmaxの条件を満たすように、記質量増大率n、前記共振周波数f 0を設定すればよい。
前述したように、ばらつき要因を考慮したとき、片側平均隙間δmeanは理想条件(表1)と比べて、概略2倍は見込む必要がある。表2に示すように、平衡状態からのスプリング変位の変動幅 xn ≒δVmeanである。したがって、
上記条件を満たすように、前記質量増大率n、前記共振周波数f 0を設定すれば、適用対象に限定せず、無調整で設置安定性を維持できる擬似剛体化システムが実現できる。ちなみに、産業用の減震機構による実績では、変位規制機構における許容される隙間δmax=1.5〜2.5mmに設定すれば、保護対象機器に与える衝撃荷重を充分に低減できることが分かっている。すなわち、震度5以上の地震波が入力された場合でも、保護対象機器のダメージを震度5以下に低減できる減震効果が得られる。上記隙間δmaxは小さい程好ましいが、隙間調整が必須の従来産業用の場合では、防振架台を構成する部材精度誤差から、上記数値δmaxの下限値=1.5mmが実用上の限界であった。(図40b〜図41の隙間Tm、Tnの設定方法参照)
溶接加工で本体の枠組みを構成する産業用防振架台と比べて、本発明の擬似剛体化ユニットの場合は、適用する対象の要請に応えて、部品単体精度と組み立て精度を充分に高くできる。そのため、変位規制機構における許容される隙間δmaxの下限値=1.0mmは可能であった。したがって、擬似剛体化ユニットの場合の平均隙間は、δmax=1.0〜2.5mmに設定すればよい。
[3] 静的転倒基準を求める理論解析
ボードに固定された擬似剛体化ユニットに保護対象機器(スピーカー)を搭載して、かつボードと床面間がアンカーなどにより固定されない場合において、前記保護対象機器の静的転倒基準を求める解析を行う。以下、示す内容は、ボードと床面間にアンカー施工を施さない産業用機器を対象にした場合も同様である。
[3-1] 静的転倒基準
図10、図11はスピーカーを剛体ブロックとみなして、その転倒限界を求めるモデル図である。図10は従来スピーカーの場合、図11は本発明の擬似剛体化ユニットを適用した場合を示す。図10において、169は床面、170はスピーカー150の底面右端部、171は底面左端部である。支持幅がB0、重心高さがH、重量Wの剛体ブロックの重心に水平力Fαが作用した場合、この水平力によって生じる転倒モーメントはFα×Hである。これに対して、重力は転倒モーメントを打ち消す方向に抵抗モーメントW×B0/2を生じる。物体の転倒は、転倒モーメントが抵抗モーメントを上回ったときに生じるとすれば、静的な転倒条件は
但し、式(6)において、スピーカーの図形中心に重心位置があると仮定する。Fα=mα、W=mgとすれば、従来から良く知られているように、物体が転倒する最小の水平方向加速度は
前述したように、昨今のスピーカーの形態は、従来のフロア型からトールボーイ型へ移行している。式(7-2)から、幅B0が小さく、背Hが高いトールボーイ型スピーカーは、ロッキング振動を開始する加速度αsは小さいことが分かる。以下、本発明である擬似剛体化ユニットに搭載された剛体ブロックの静的転倒基準を求める基礎式を導出する。図12は図11のさらに詳細な解析モデル図である。mは剛体ブロックの質量、Rはブロック底面の支持部と重心位置G間の距離、B0はブロック左右支持部間の距離、B1は右側支持部とボード右コーナー間の距離、B2は左側支持部とボード左コーナー間の距離、BGはボードの重心位置とボード右コーナー間の距離、mbはボードの質量である。また、剛体ブロックの重心高さをHとして、tan(φ)=B0/2Hである。鎖線円AAで示す箇所が、上限値と下限値を抑制する変位規制機構とスプリングで構成される。同図のブロック左側コーナーは、上限値の設定により上方向移動限界量δV2だけ変位が規制されており、右側コーナーは、下限値の設定により下方向移動限界量δV1だけ変位が規制されている。そのため、剛体ブロックに水平方向の静荷重が加わったとき、最大傾斜角は
剛体ブロック底面右コーナーの回転モーメントの静的平衡条件から
式(9)と式(10)から剛体ブロックがボード側から受ける力F1とF2
ボードの右コーナーを支点とする回転モーメントMは
剛体ブロックが浮上開始する入力加速度α=αsは、M>0として
式(14)において、右辺第1項のθr→0とすれば、g×tan(φ)=B0×g/2Hとなり、前述した通常の剛体ブロックの静的転倒条件[式(7-2)]に一致する。また右辺第2項は、ボードを装着したことによる静的転倒裕度の向上効果、右辺第3項はボードの質量mbを考慮したことによる転倒裕度向上効果に相当する。
[3-2] 剛体ブロックの傾斜角に対する浮上開始加速度
図13はボード幅BWをパラメータとして、剛体ブロックの傾斜角θr [(δV1+δV2)/B0]に対する浮上開始加速度αsを式(14)により求めたものである。B1はボード幅BW(=B1+B0+B2)、B1=B2として計算している。剛体ブロックの質量m=30Kg、重心高さH=710mm、φ=5.43deg、R=713mm、剛体ブロックの支持幅B0=135mmである。但し、ボードの質量mbは考慮していない。BW=135mmのグラフは、ボード装着無し(BW= B0)の特性であり、αs≒1m/s2(100Gal)近傍(鎖線円BB)でブロックは浮上開始する。
上記静的転倒基準(浮上開始加速度)は動的な転倒条件とは一致しない。但し、 支持幅BWが狭く、重心位置Hが高い対象機器(たとえば、トールボーイ型スピーカー)の場合、静的転倒基準≒動的転倒条件になる。
ここで、擬似剛体化ユニットを装着して、かつボード幅BW =500mm、上限値と下限値の隙間を共にδV1=δV2=2.35mmに設定した場合を想定する。このとき、剛体ブロックの傾斜角θr=2degである。浮上開始加速度は、ボードを装着しない場合(BB点)に対して3.2倍(CC点)に向上することが分る。
[3-3] ボードと剛体ブロックの質量比に対する浮上開始加速度
図14はボード幅BWをパラメータとして、ボードと剛体ブロックの質量比mb/m
に対する浮上開始加速度αsを式(14)により求めたものである。質量比mb/mに対する浮上開始加速度αsの勾配は、ボード幅BWが大きい程大きい。この理由は、ボードの慣性モーメントはボードの重心位置とボードコーナー間の距離BGの2乗に比例するからである。ボード幅BW=500mmの場合、質量mb=12Kg(0.4×30)のボードを装着(EE点)すれば、mb≒0Kgの軽量ボード(DD点)に対して、静的転倒条件は1.6倍向上する。
[3-4] スプリング式の設置不安定性を解消する条件
通常の剛体ブッロクの浮上開始条件αs0=g×tan(φ)として、式(14)をαs0で割ると
式(15)は、本発明の効果を要約するものである。すなわち、 幾何学的形状がRとΦで構成される機器を保護対象(図12参照)として、η≧1となるように、最大傾斜角θr、ボード幅B1、ボード質量mbを設定すれば
(i)剛体支持の場合と同等、あるいはそれ以上の静的転倒裕度を得ることができる。即ち、スプリング式(あるいは、バネなどの弾性体で構成されるフローティング式)の欠点である設置不安定性を改善できる。
(ii)スプリング支持であるが故の効果、すなわち、産業機器の場合の徐振・防振効果、 あるいは、オーディオ機器の場合における、床面との相互干渉による混変調歪みの発生を回避する効果が得られる。
本発明の適用により、上記(i)(ii)を同時に実現することができる。図15は剛体ブロック傾斜角θr をパラメータとして、ボード幅比BW/B0に対する浮上開始加速度の比αss0を式(15)により求めたものである。但し、ボードの質量mbは考慮していない。擬似剛体化ユニット無し(剛体支持:θr =0)の場合(FF点)に対して、 剛体ブロック傾斜角θr =3deg、ボード幅比BW/B0を1.55倍(GG点)とすれば, 静的転倒基準は上記剛体支持の場合と同等にすることができる。
例えば断面4角形の剛体ブロックの静的転倒基準を、式(15)を用いて評価する場合、剛体ブロックの前後方向と左右方向は転倒し易い条件を選択すればよい。即ち、ボードの前後・左右の各コーナーを支点とする4つの回転モーメントMを算出して、Mが最も小さくなる条件を選択すればよい。剛体ブロック断面形状が断面4角形ではなく、3角形の場合、あるいは多角形の場合でも、回転モーメントMが最も小さくなる条件を選択すればよい。第7実施形態で後述する「4分割ボード方式」の場合も同様である。
静的転倒基準を求めた本解析において、たとえば、「スプリング式の設置不安定性を解消する条件」は、ボード上の擬似剛体化ユニットの個数、配置される位置、ボードの形状、構造などに関係なく適用できる。また、弾性支持部材と変位抑制機構を分離したシステムにも適用できる。
また擬似剛体化ユニットはどの様な形態でも適用できる。たとえば、第1実施形態で示した軸方向の変位規制でロッキング振動を抑制する方式、あるいは、第6実施形態で後述するように、ユニット主軸の傾斜角でロッキング振動を抑制する方式に適用できる。
[4] その他の適用事例
[第3実施形態]
図16は本発明である「調整レス・擬似剛体化ユニット」の第3実施形態を示す正面断面図である。上部スリーブにスパイクを収納できる広い空間を形成することのより、図23で後述するように、「フローティング式スパイク受け」として兼用できる構造を示す。250はスピーカー、251はボード、252は調整レス擬似剛体化ユニットである。253は上部スリーブ(風鈴部材)、254は下部ハウジング(下部部材)、255は中心軸(中心部材)、256はスプリングコイル、257、258は前記スプリングコイル256の位置決め部、259はサージング防止部材、260a、260cはボード151に締結するボルトである。261は留め具、263は連結部材、263aは前記連結部材のスピーカー側ねじ部、263bは前記連結部材のユニット側ねじ部、264aは上部スリーブ253の上面凸部、264bは外周部である。265は変位規制部であり、変位規制部265の下端面266と留め具261の間隙が、上部スリーブ253の上方向に移動可能な隙間(上限値隙間)δV2となる。また変位規制部265の上端面267と上部スリーブ側対向面268の間隙が、上部スリーブ253の下方向に移動可能な隙間(下限値隙間)δV1となる。269は図17で後述するスパイクを収納できる空隙部である。本実施形態における擬似剛体化ユニットは、実施形態1と同様に、スピーカー質量が許容範囲で変化しても、δV1>0、δV2>0の条件が無調整で維持できるように構成されている。
[第4実施形態]
図17は、図16で示した「調整レス・擬似剛体化ユニット」の締結部材263を取り外して、フローティング式スパイク支持構造として、本ユニットを適用した場合を示す。
本実施形態は、スピーカー、擬似剛体化ユニット、ボードの3者を一体化する第3実施形態の前段階で、音質評価用として構成したものである。270は空隙部269の底面271に設置されたスパイク受け皿、272はスピーカー250に固定されたスパイク本体部、272aはスパイク先端部である。スピーカーのようなオーディオ機器をスパイク支持する場合、通常、スパイク先端部272aを受けるスパイク受け皿は、剛体床面に直接配置される場合が多い。スプリング式、エアー式、マグネット式などの背の高いフローティング式インシュレータの上に、スパイク受け皿を配置するのは、設置不安定さゆえに通常は敬遠される。スピーカーに加わる外力によって、スパイク先端部がスパイク受け皿から離脱すると、各支持箇所の落差の大きさから、スピーカーは容易に傾斜して転倒するからである。 本実施形態の擬似剛体化ユニットでは、次の理由により、従来困難だったフローティング式のスパイク支持が可能となった。
(1)スパイク受け皿270が設置される上部スリ−ブ253の軸方向移動は、狭い隙間
で規制されている。
(2)スパイク先端部272aは空隙部269に底深く収納されて、かつ、スパイク先端部272aの高さ(Hs)は床面に対して充分に低く、スパイク本体272は容易には、擬似剛体化ユニットから離脱しない。
また、擬似剛体化ユニットをスパイク本体部272の下部に設置する際に、底面271に設置されたスパイク受け皿270は、スパイク本体部の軸芯に対して水平方向に移動(矢印)して自動調芯するため、スピーカーの設置作業は容易である。スパイクの着脱とユニットのボード設置作業が不要なため、スピーカー、擬似剛体化ユニット、ボードの3者を一体化(第3実施形態)する前段階で、本インシュレータの音質面での評価が容易にできる。
[第5実施形態]
図18は本発明の第5実施形態を示すもので、図18(a)は図18(b)のAA矢視図、図18(b)は図18(a)のBB矢視図である。本実施形態における擬似剛体化ユニットは、垂直方向剛性はスプリングコイルによる高剛性支持、水平方向はワーヤー吊り下げ方式の低剛性支持を併せ持つものである。さらに、擬似剛体化を図るために、狭い隙間で軸方向変位を規制する変位規制部が設けられている。ワーヤー吊り下げ方式に関しては、特開2011-27249号による先行技術があるが、狭い隙間で軸方向変位を規制する方法については、同文献には開示されていない。
301は擬似剛体化ユニット、302は上部ベース、303は中間部ベース、304a、304b、304cは支柱、305はスプリング側上部ベース、306はスプリング側下部ベース、307はスプリングコイル、308はサージング防止部材、309は支持軸、310は下部ベースである。上部ベース302の上部に保護対象機器が搭載される(前記擬似剛体化ユニットと前記保護対象機器との締結方法などは図示せず)。311a、311b、311cは、スプリング側上部ベース305と中間部ベース303を繋ぐワイヤー、312はスプリング側下部ベース306と支持軸309を締結するボルト、313は上部固定ねじ、314は下部固定ねじである。下部固定ねじ314と中間部ベース303の間隙が、中間部ベース303の上方向に移動可能な隙間(上限値隙間)δV2となる。また上部固定ねじ313と中間部ベース303の間隙が、中間部ベース303の下方向に移動可能な隙間(下限値隙間)δV1となる。
実施例では、上限値隙間δV2、下限値隙間δV1は、ユニット組み立て時に設定した。すなわち、稼働時には搭載質量が変化しても、振動遮断と転倒防止効果が無調整で両立できるように上記隙間とばね剛性を設定した。
[第6実施形態] 傾斜角規制方式
図19〜図21は、本発明の実施形態6に係るフローティング式の「傾斜角・自立抑制型」の調整レス・擬似剛体化ユニットを示すもので、ユニット主軸とスリーブ間の隙間を適切な段付構造に設定することにより、
(i)平常時には、ユニット主軸は非接触状態を保ち、除振・防振性能が得られる。
(ii)保護対象機器の搭載荷重が広い範囲で変化しても、上記非接触状態を調整レスで保つことができる。
(iii)ロッキング振動が発生する非常時には、左右主軸の傾斜角方向を拘束状態にして、保護対象機器全体の揺動運動を抑制する傾斜角抑制作用が働く。
上記(i)〜(iii)が調整レスで実現できる理由は、ロッキング振動により、左右主軸が交互に軸方向相対移動を繰り返す点を利用している、という点が重要な着眼点である。減震ユニット単体に重量物を搭載して水平方向に振らせても、主軸は軸方向に移動しないために、上記傾斜角抑制作用は得られない。すなわち、本擬似剛体化ユニットを左右に配置して保護対象機器を搭載することにより、ロッキング振動自身がロッキング振動を自立的に抑制するのである。この自立抑制作用の効果により、搭載荷重の変動に対して安定した除振・防振性能が得られると共に、非常時には最適状態に設置された転倒防止・衝撃荷重低減効果が無調整で得られる。また従来の産業機器用減震構造で、保護対象機器の荷重変化に対応して必要だった上限値、下限値の狭い隙間Tn、Tmの再調整作業が不要となる。(図40b、図41参照)
図19は定常状態における擬似剛体化ユニットの正面断面図である。10aはユニット本体部、11は上部ベース(上部部材)、12は下部ハウジング(下部部材)、13は上部ベース11の中心軸上に形成された主軸、14は弾性支持部材であるスプリングコイル、15、16はスプリングコイル14を装着した状態で、下部ハウジング12と上部ベース11の軸芯が一致した状態を保つための両部材に形成された位置決め部である。17はサージング防止部材(サージング共振防止手段)であり、このサージング防止部材は、スプリングコイル14の内周面に、変形して常に接触した状態を保っている。18a、18b、18c、18dは本ユニットを床面上に設置されたボード(後述)に締結するボルトである(18b、18dは図示せず)。19は上部ベース11の上面部、20はこの上面部の中央部に形成されたねじ部、21は保護対象機器(想像線で示す)、22はこの保護対象機器とユニット本体部10aを締結するための締結部材である。23aはこの締結部材の前記保護対象機器側に形成されたねじ部、23bは中間部材、23cはユニット本体部10a側に形成されたねじ部である。24は下部ハウジング12の中央部に形成された固定スリーブである。主軸13はこの固定スリーブ24内で軸方向に移動可能なように収納されている。25は主軸13の下端面にボルト26で締結された留め具である。
主軸13の外面は段付形状をしており、27aは主軸凸部A、27bは主軸凸部B、27cは主軸凸部Cである。また、28aは主軸凹部A、28bは主軸凹部Bである。
固定スリーブ24の内面も段付形状をしており、29aはスリーブ凸部A、29bはスリーブ凸部B、30aはスリーブ凹部A、30bはスリーブ凹部B、31は設置ボード(後述)である。保護対象機器21に外力が加わらない定常状態(図19)において、保護対象機器21の静的荷重は、スプリング14変位による反力と平衡した状態にある。このときの主軸凹部A28aと主軸凹部B28bの軸方向の高さは、スリーブ凸部A29aと固定スリーブ凸部B29bの位置にある。主軸凹部A28aとスリーブ凸部A29a間の隙間をδ1、主軸凸部B27bとスリーブ凹部A30aの隙間をδ2、主軸凹部B28bとスリーブ凸部B29bの隙間をδ3とする。主軸13が傾斜していないとき、各隙間は、十分に大きく、かつ同一寸法となるように構成されており、δ123maxである。(上記数値は図示せず)
図20は、地震波によるロッキング振動発生時において、各減震ユニットの前記主軸と前記スリーブの関係を示すものである。ロッキング振動により、左右の減震ユニット本体部10a、10bの主軸13、113は、交互に大きく上下運動する。同図において、主軸13は図中の矢印C1の方向に上昇し、主軸113は図中の矢印C2の方向に下降した状態を示している。図21に左側減震ユニット本体部10aの拡大図を示す。同図において、主軸13は上部(鎖線円A1)において、主軸凸部B27bとスリーブ凸部A29aが接触する。また、下部(鎖線円B1)において、主軸凸部C27cとスリーブ凸部B29bが接触する。スリーブ凸部A29aの上端部と、スリーブ凸部B29b下端部の距離を主軸支持幅Bと定義する。主軸凸部B27bとスリーブ凸部A29aの隙間、及び、主軸凸部C27cとスリーブ凸部B29bの隙間を共にδminとすれば、主軸13aの最大傾斜角θmaxは次式となる。
右側減震ユニット本体部10bの主軸113の傾斜角も同様に、上部(鎖線円A2)と下部(鎖線円B2)の2箇所で接触する。主軸113の最大傾斜角θmaxは式(16)と同一である。ロッキング振動発生時において、保護対象機器21全体の傾斜角上限値(θmax)は、図20に示すように、前記主軸の最大傾斜角θmaxにより決まる。
本実施例では、前記主軸は軸方向に移動可能に前記固定スリーブに収納された構成であった。前記主軸をスリーブ形状にして、固定軸に対して軸方向に移動可能に収納する構成でもよい。(図示せず)
[第7実施形態]
図22(a)、図22(b)は本発明の第7実施形態である、「調整レス・擬似剛体化ユニット」をオーディオ用スピーカーに適用した場合を示す。図23は、図21(a)の部分拡大図である。350はスピーカー、351a〜351dは調整レス擬似剛体化ユニット、352a〜352dは前記擬似剛体化ユニットを搭載する4分割ボード、353は床面(図23参照)である。前記各擬似剛体化ユニットは前記分割ボードのそれぞれにボルトより締結される。前記各ボードは床面にアンカー固定されず、床面に対して水平方向に移動可能で、かつ垂直方向に浮上可能である。分割ボード352a〜352dのそれぞれは、擬似剛体化ユニット351a〜351d各々に独立して設けられており、各分割ボードは前記擬似剛体化ユニットの中心軸を軸芯として、矢印Aに示すように、水平方向に自在に開閉できる。左右分割ボードの開閉状態で決まる有効ボード幅をBWとすれば、図22(a)は有効ボード幅が最も広いBW=BWmaxの状態、図22(b)はBW=BWminの状態を示す。
図23は、図22(a)において、前記擬似剛体化ユニットと前記ボードに注目した正面断面図である。擬似剛体化ユニット351aに着目すれば、354a、354bはボード352aと前記擬似剛体化ユニットの下部ハウジングを、ボード352aの底面から締結するボルトである。前記4分割ボード上に搭載されたスピーカー350の周囲に、壁などの障害物が無い場合は、有効ボード幅が最も広いBW=BWmaxの状態が、外乱荷重に対して転倒に対する安全裕度が最も大きい。
図24は前記4分割ボード上に搭載されたスピーカー350を、部屋のコーナー部において、壁面355に近接して配置した場合を示す。壁の無い方向に設置されたボード352a、352dは、開度が最も大きく伸びきった状態、壁のある方向に設置されたボード352b、352cは、開度を小さめに設定した状態を示す。
前述したように、昨今のトレンドにより多くのスピーカーの形態は、従来のフロア型から、設置面積が小さく背の高いトールボーイ型になっている。トールボーイ型への移行は、スピーカーが設置される住宅環境によるものである。本実施形態で提案する4分割ボードにより、トールボーイ型の省スペース化の利点を失わないで、擬似剛体化システムを実現できる。各分割ボードの単体形状は長方形ではなく、たとえば、L型形状、あるいは、+型形状でもよい。+型形状の場合、縦方向と横方向の長さは同一でなくてもよく、適用対象の構造に合わせて任意に選択すればよい。保護対象機器が3点支持の場合は、3分割ボードを適用すればよい。
[補足1] ・・・ロッキング振動の理論解析
[1-1]ロッキング振動に関する従来研究例
地震時に発生する構造物のロッキング振動に関する研究例は多い。たとえば、非特許文献1において、小林らは剛体を2つ積み重ねた2自由度ロッキング系の地震時における構造物の転倒条件を、数値シュミュレーションにより求めている。非特許文献3において、鄭らは構造物とベース(設置面)間に滑り運動を考慮した非線形ロッキングモデルを提案し、その力学モデルの妥当性を実験により評価している。非特許文献4において、古川らは最大加速度に対して転倒する墓石の高さ幅比の最小値を振動数毎に求め、転倒基準を作成している。上記研究はいずれも拘束の無い剛体ブロックに、外力が加わったときの動力学的な特性を求めるものであった。
但し、剛体ブロックを保護対象機器として 平常時の除振・防振性能と、非常時の地震対策を同時に実現するために
(i)剛体ブロックはバネで支持されている。
(ii)剛体ブロックの変位は、 狭い隙間の範囲で規制されている。
上記(i)(ii)の条件下で、剛体ブロックの動的挙動(ダイナミクス)を理論的に解明した研究例は、現段階では本発明の研究以外には見当たらない。
[1-2] 衝撃荷重を求める理論解析
[1-2-1] 基礎式
ボードに締結された擬似剛体化ユニット(減震ユニット)に保護対象機器を搭載して、かつボードと床面間がアンカーなどにより完全固定された場合において、前記保護対象機器の支持部に加わる衝撃荷重を求める解析を行う。以下、上限値・下限値の変位規制機構を組み入れて、スプリング支持された剛体ブロック重心の垂直方向変位と、ブロックのコーナーを支点とする傾斜角θに関する基礎式を導出する。
図25は、床面32にアンカー固定されたボード31上に擬似剛体化ユニット10a〜10dを締結して、その上部に保護対象機器21(以下、剛体ブロックと呼ぶ)を搭載した状態を示す。図26は、前記剛体ブロックにロッキング振動が発生した状態(剛体ブロックは角度θで傾斜)を示す解析モデル図である。
ここで、mは剛体ブロックの質量、Rはブロック底面コーナーと重心位置G間の距離、B0はブロック左右支持部間の距離、I0は底面コーナーを支点とする剛体ブロックの回転モーメント、剛体ブロックの重心高さをHとして、tan(φ)=B0/2Hである。鎖線円BBで示す箇所が、上限値と下限値を調整する変位規制機構とスプリングで構成される。
図26において、剛体ブロック重心の変位をY、静的釣合点からの左右コーナー部の変位をy1、y2とおくと
式(17)と式(18)から
ここで変位y1、y2と速度dy1/dt、dy2/dt与えて、左右支持部の反力を求める下記の非線形隙間関数を導入する。
ブロックの重心Gに作用する左右支持部からの反力Fs
したがって、右コーナーを支点とする回転方向と、重心Gにおける垂直方向の運動方程式は
したがって、上記微分方程式(24)(25)を連立して解くことにより、ロッキング振動における角度θと変位Yが求められる。ここで非線形隙間関数FΦ(Narrow Gap Function)は、微小隙間内で衝突を伴う振動現象を解くために導入したものである。図27にその解析モデルを示す。支持部からの反力を求めるために、上記隙間関数を導入することにより、衝突前後の運動方程式を不連続に切り替えることなく、過渡応答解析により連続的に解が求められる。
衝突の無いyb<y1< ya及びyb<y2< yaの範囲では、左右支持部のばね剛性をK1、K2 として、各支持部のスプリング反力と変位y1、y2の関係は線形である。
y≦ya及びy≧ybの範囲では、変位に対して絶対値が急峻に増大する非線形ばね剛性による反力、及び、変位と速度に対して非線形の減衰を式(24)、式(25)の運動方程式に与える。但しy=ya及びy=ybにおいて、変位に対する反力の特性は連続的に繋がっている。図28に変位yに対するスプリング反力KΦ(y)・y特性の一例を示す。
[1-2-2] 回転角と衝撃荷重の解析結果
以下、剛体ブロックに水平方向加速度が加わった場合、ロッキング振動の回転角と支持部の発生力を求める解析を行う。解析条件は、ブロック支持幅B0=282mm、重心高さH=710mm、R=0.274m、ブロック質量m=30Kg、ブロックの慣性モーメント I0=21.0Nms2、支持部ばね剛性K1=K2=5.92×104N/m、上記mとK1、K2で決まる垂直方向の共振周波数f0H =10Hz、回転方向の共振周波数f0R=1.3Hzである。剛体ブロックにロッキング振動を与える水平方向加速度を図29a、図29bに示す。すなわち、時間30秒の間で、一定振幅a=3m/s2、周波数f=6Hz→0.4Hzの範囲で変化するSweep波形を床面に与えた場合を仮定する。
図30は、下限値隙間δV1 、上限値隙間δV2として、変位規制δV1=δV2=1.5mmを施した場合について、ロッキング振動の回転角の応答特性を求めたものである。変位規制が無い場合の応答特性を同グラフに鎖線で示す。変位規制が無い場合、時間t=25s近傍でロッキング振動の回転角θは共振ピーク値(θmax=17deg)を示す。この共振ピーク値を示す時間tは、Sweep加速度形(図29b)の周波数が剛体ブロックの回転方向共振周波数f0R=1.3Hzに一致した時間に相当する。変位規制を施した場合、回転角θは上記共振点近傍で一定値を保っている。
図31は、図30と同一条件で、擬似剛体化ユニット支持部の発生力F1 (ブロック底面左コーナー)の応答特性を求めたものである。剛体ブロックの底面に擬似剛体化ユニットを4個配置した場合は、本グラフにおける発生荷重はユニット2個分に相当する。F1>0の波形が圧縮荷重で、F1<0の波形が引き抜き荷重である。ボードをアンカー固定しない場合は、この引き抜き荷重が剛体ブロックを浮上させる転倒作用になる。
変位規制を施した場合、上記共振点近傍で保護対象機器の支持部に加わる圧縮荷重、引き抜き荷重共にピークとなる。すなわち、上限値隙間δV2と下限値隙間δV1を共に1.5mmに設定すると、最大圧縮荷重は1/5(F1=2800N→600N)に低減する。
図32、図33は、ユニット支持部の発生力F1 の応答特性を、剛体支持の場合と比較して求めたものである。図32において隙間δは±1.5mm(δV1=δV2=1.5mm)、図33において隙間δは±0.5mm(δV1=δV2=0.5mm)である。図33の解析結果から、「物体が衝突を伴いながら、1mmの狭い隙間内を移動しても共振現象は存在する」という驚くべき知見が得られる。隙間±1.5mmを隙間±0.5mmに小さくすると、最大圧縮荷重Fmax =600N→390Nに低減する。また最大引き抜き荷重は、Fmax=250N→90Nに低減する。図32において、時間0<t<16.5sの区間、すなわち、入力加速度の周波数が3〜6Hzの区間では、ばねと質量で決まる除振特性により、発生力は剛体支持の場合と比べて低減する。
図34は、変位規制部の片側隙間δ(=δV1=δV2)に対する支持部の最大圧縮荷重Fmaxを求めたものである。図中のグラフから、隙間δ→0 にすれば、最大圧縮荷重Fmaxは剛体支持の発生力に漸近して、剛体支持に近いレベルまで、衝撃荷重を低減できることがわかる。
以上の解析結果から、変位規制部の片側隙間δ(=δV1=δV2)を小さくする程、ロッキング振動時における衝撃を伴う支持部の発生力Fmaxを低減することができる。
たとえば、保護対象機器に精密部品が搭載された場合において、上記発生力Fmaxの大きさは、精密部品に加わるダメージの大きさを示す重要な評価指標となる。
前述したように、本発明の擬似剛体化ユニットは変位規制機構(隙間δV1とδV2を調整する箇所)と、荷重を支持するスプリングを同軸上で、かつ両者を近接した位置に配置している。高精度を必要とする箇所はすべて軸対称部品であり、この軸対称部品を組み合わせることで、変位規制部の隙間(δV1及びδV2)を精度よく、かつ狭く設定できる。その結果、搭載機器に加わる衝撃荷重を大幅に低減できる。また、前述した各実施例の様にボードを床面にアンカー固定しない場合は、この衝撃荷重と引き抜き荷重の低減効果は、転倒に対する裕度の大きさ(転倒防止効果)を示す評価指標となる。
[補足2]
本発明による「調整レス・擬似剛体化ユニット」は、産業用、民生用を問わず、適用対象のニーズに対応してアレンジすることで適用できる。たとえば、高価・重要・貴重品を保護することを目的として、病院内に設置されている医療機器、危険薬品の保管棚、鉄道運行制御盤、消防署・警察の緊急時コンピュータ・システム、半導体向上におけるウエハ関連装置などの地震対策として適用できる。あるいは、5〜10tonの大荷重支持が必要な変圧設備、自家発電装置などに適用できる。また、調整レス・擬似剛体化ユニットとボード(あるいは、分割ボード)で構成される減震システムが、極めて簡素な構成で実現できるために、オフィス環境に設置されたコンピュータ・サーバのラック、本格免震までは必要としない美術品、キャスタ付き精密機器などを保護対象として、アンカー固定を省略した簡易減震装置として適用できる。
本発明者らは、特願2016-005992号において、ねじ等による隙間調整機構を内蔵させた減震ユニット(擬似剛体化ユニット)を既に提案中である。上記特願で提案している様々な減震ユニット構造、及び、減震システムは、本発明が提案する調整レス化を図る対象として適用できる。前記特願に開示されているねじ構造、衝撃力緩和のための減衰材の配置方法など、そのまま適用してもよい。また、前記特願では、減震ユニットが搭載されたボードを床面に対してアンカー固定した場合、アンカー固定しない場合の2通りについて示している。本願の場合でも、調整レス・減震ユニットが搭載されたボードを床面に対してアンカー固定して用いてもよい。この場合でも、保護対象機器質量の条件が設置後に想定範囲内で変っても、無調整のままで本来の性能を維持できる。
前述した本発明の実施形態では、締結ナット等を含むねじ部を設けない構造を示したが、調整レス・擬似剛体化ユニットに隙間設定のためのねじ部は設けられていてもよい。たとえば、ねじを利用した隙間調整は、メーカー側が商品(擬似剛体化ユニット、及び、システム)出荷前の段階で行い、エンドユーザはねじ部の隙間調整は行わなくてもよい構成でもよい。メーカー側が行うねじ部の隙間調整は、対象とする重量が異なる保護対象機器の重量、すなわち、商品の種類に合わせて行う方法でもよい。エンドユーザが隙間調整を行う場合でも、大幅に簡素化された構成でもよい。この場合、ねじとナットの組みわせではなく、隙間の概略調整を、たとえば、着脱可能なリング形状のスペーサを装着する構成でもよい。
本発明の擬似剛体化ユニットと、従来防振架台などで用いられる変位規制機構(図40bのA)を独立して並列配置して、保護対象機器を支持する構成でもよい。この場合、たとえば一例として、前記変位規制機構Aの隙間は前記擬似剛体化ユニットのそれよりも若干大きめに設定する。かつ前記変位規制機構Aにはゴム等の減衰材を設けて、想定以上の加速度入力に対して、衝撃荷重を大幅に低減できる「2重防御構成」でもよい。
本発明ユニットをスピーカーに適用した前述した実施形態(たとえば、図1)では、スピーカーのスパイクねじ部を利用して、連結部材によりスピーカーと擬似剛体化ユニットを一体化する構造を示した。この場合は、前記スピーカーと前記擬似剛体化ユニットは個別の商品であった。スピーカー本体が、前記擬似剛体化ユニットを装着することを前提にして、予め設計されているならば、以下に示す構成でもよい。たとえば、スピーカーの底部をスカート形状にして、このスカートで前記擬似剛体化ユニットの外周部を覆うように、前記擬似剛体化ユニットを配置する。この構成により、前記ユニット外周部のメッキなどの装飾が不要となり、コストダウンが図れる。風鈴効果を省略するならば、筒型の上部スリーブ(たとえば、図2の上部部材153)は無くてもよい。スパイクねじ部が、スピーカーの底面に設置される構造ではなく、スピーカー底部からオーバーハングした脚部で構成されるスピーカーの場合は、以下に示す構成でもよい。すなわち、スパイクねじ部を収納するケースと、前記擬似剛体化ユニットを収納するケースを兼ねた構成により、(1)スパイクを装着する場合、(2)擬似剛体化ユニットを装着する場合、上記(1)(2)をエンドユーザが選択できる。この場合、前記擬似剛体化ユニット外周部の装飾が不要となり、コストダウンが図れる。
実施例では、本発明をスピーカーに適用する場合を示したが、オーディオ機器であるCDプレイヤー、アナログプレイヤー、プリアンプ、パワーアンプ、PCオーディオ用のパソコン、あるいは、これらのオーディオ用コンポーネンツを収納する重量の大きなオーディオラック(棚)、あるいは様々な楽器(たとえば、アコースティック楽器)、ピアノなどの楽器にも適用できる。オーディオ用に提案したユニット、ボードなどの各種構造案は、産業用にも適用可能である。
調整レス・擬似剛体化ユニットに装着されるスプリングコイル(弾性支持部材)は1個ではなく、たとえば、円周上に複数個配置した構成でもよい。この場合、前記円周の中心線上に、すなわち、前記複数個のスプリングコイルの「ばね重心」の軸芯上に、前記上限値規制部と下限値規制部を設けてもよい。
実施例では、弾性支持部材として外径が軸方向で均一なスプリングコイルを用いたが、弾性支持部材は上記形状に限定されるものではない。たとえば、円錐コイルばね、皿バネ、あるいはこの皿ばねを多段に積み重ねた構造、竹の子ばね、輪ばね、渦巻きばね、薄板ばね、重ね板ばね、U字型ばねなど、要求される形状、寸法などを考慮して選択すればよい。スプリングコイル以外には、第5実施形態(図18)で示した様なワイヤー吊り下げ方式、あるいは、ワイヤーとU字状ばねを組み合わせた方式も適用できる。
前述した実施形態のほとんどは、保護対象機器と調整レス・擬似剛体化ユニットを連結部材などで締結した場合を示した。保護対象機器の縦横の幅が充分に長く、転倒に対する裕度が充分に大きい場合は、ボードに固定された複数の調整レス・擬似剛体化ユニットの上部に保護対象機器を固定しないで乗せるだけでもよい。あるいは、ボードを省略して、調整レス・擬似剛体化ユニットを保護対象機器締結するだけの構成でもよい。あるいは、前記連結部材、前記ボードを省略して、保護対象機器の底部に調整レス・擬似剛体化ユニットを配置するだけの構成でもよい。
152・・・擬似剛体化ユニット
153・・・上部部材
154・・・下部部材
156・・・弾性支持部材
165・・・上限値規制部
165・・・下限値規制部

Claims (14)

  1. 保護対象機器を搭載する側に設けられた上部部材と、
    設置床面側に設けられた下部部材と、
    前記上部部材と前記下部部材の間に設けられた前記保護対象機器の質量を支持する弾性支持部材と、
    前記上部部材と前記下部部材の間に隙間が形成されるように設けられ、前記上部部材の第1所定量以上の上方向移動を規制する上限値規制部と、
    前記上部部材と前記下部部材の間に隙間が形成されるように設けられ、前記上部部材の第2所定量以上の下方向移動を規制する下限値規制部と、を具備し
    前記保護対象機器の質量mの取り得る範囲をm 0≦m≦m max
    前記弾性支持部材の剛性をK、
    前記弾性支持部材の剛性K、前記保護対象機器の質量mがm 0である場合の共振周波数をf 0
    前記弾性支持部材が質量m maxの前記保護対象機器を支持する場合における、前記弾性支持部材が質量m 0の前記保護対象機器を支持する場合のつり合いの位置からの変位をxn
    この変位xnから決まる前記上限値規制部と前記下限値規制部の平均隙間をδmean
    転倒限界、あるいは、発生衝撃荷重の許容限界から決まる限界隙間をδmax,として、
    前記平均隙間δmean<前記限界隙間δmaxを維持すると共に、
    前記上限値規制部と前記下限値規制部の各隙間が非接触の状態を維持できるように、前記共振周波数f 0を設定したことを特徴とする擬似剛体化ユニット。
  2. 前記質量がm=m0のときの前記上限値規制部の隙間をδV2mini
    前記質量がm=m maxのときの前記下限値規制部の隙間をδV1min
    δV2min>0、及び、δV1min>0となるように設定したことを特徴とする請求項1記載の擬似剛体化ユニット。
  3. 質量増大率n= m max/m0として、下記条件を満たすように、前記質量増大率n、前記共振周波数f 0を設定したことを特徴とする請求項2記載の擬似剛体化ユニット。
  4. 前記平均隙間1.0×10-3m≦δmean≦2.5×10-3mであることを特徴とする請求項1記載の擬似剛体化ユニット。
  5. 前記上部部材が、下方向に伸びる中心部材を具備し
    前記上限値規制部は、前記中心部材と前記下部部材間の隙間δV2により前記上部部材の上方向の移動量を規制するように構成されており、
    前記下限値規制部は、前記中心部材と前記下部部材間の隙間δV1により前記上部部材の下方向の移動量を規制するように構成されており、
    かつ、前記上限値規制部と前記下限値規制部は前記中心部材の軸方向に沿って並んで配置されていることを特徴とする請求項1記載の擬似剛体化ユニット。
  6. 請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
    前記上部部材の前記保護対象機器側に設けられたユニット側締結部と、
    前記保護対象機器の底面に設けられた保護対象機器側締結部と、
    前記ユニット側締結部と前記保護対象機器側締結部と繋ぐ連結部材により、
    前記保護対象機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化したことを特徴とする
    擬似剛体化システム。
  7. 請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
    前記保護対象機器の底面よりも面積が大きく、前記複数の擬似剛体化ユニットが締結されたボードと、を備え、
    前記保護対象機器が前記複数の擬似剛体化ユニットに締結された状態で搭載されることを特徴とする擬似剛体化システム。
  8. 請求項1記載の複数の擬似剛体化ユニットと、
    この擬似剛体化ユニットの底面積よりも面積が大きく、前記複数の擬似剛体化ユニットのそれぞれに締結された分割ボード、を備え
    前記保護対象機器が前記複数の擬似剛体化ユニットに締結された状態で搭載されることを特徴とする擬似剛体化システム。
  9. スピーカーを保護対象機器として支持する擬似剛体化ユニットであって、質量増大率n= m max/m0として、n≧1.5、及び、8Hz≦f0≦15Hzの範囲であることを特徴とする請求項1記載の擬似剛体化ユニット。
  10. 前記保護対象機器が、スピーカーであり、
    スピーカーの最小質量をm 0=15〜25kg、最大質量をm max=30〜50kgの範囲を支持することを特徴とする請求項1記載の擬似剛体化ユニット。
  11. オーディオ機器を保護対象機器として支持する請求項1記載の擬似剛体化ユニットであって、
    前記オーディオ機器側のスパイク本体部、あるいは、前記スパイク本体部の一部を収納できる容積を有する円柱形状空間を前記上部部材の中央部に形成し、
    前記円柱形状空間の側面に形成されたユニット側ねじ部と、
    前記オーディオ機器の底面に設けられているスパイク取り付けのためのオーディオ側ねじ部と、
    前記ユニット側ねじ溝と前記オーディオ側ねじ部を繋ぐ連結部材により、前記オーディオ機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化したことを特徴とする擬似剛体化システム。
  12. 前記オーディオ機器と前記擬似剛体化ユニットを一体化する作業の前段階において、
    前記スパイク受け皿を前記円柱形状空間の床面側底面に配置して、音質評価用のスパイク受けとして適用できるように構成されたことを特徴とする請求項11記載の擬似剛体化システム。
  13. 保護対象機器を搭載する側に設けられた上部部材と、
    この上部部材から下方向に伸びた主軸と、
    設置床面側に設けられた下部部材と、
    前記主軸は軸方向に移動可能に前記下部部材に収納されており、
    あるいは、前記主軸は軸方向に移動可能に前記下部部材を収納しており、
    前記上部部材と前記下部部材の間に設けられた前記保護対象機器の荷重を支持する弾性支持部材と、
    前記主軸とその対向面は静的平衡状態で隙間δSを保ち、
    静的平衡状態から外れたときには隙間δSよりも狭い隙間δDとなるように構成されており、
    平常時には前記保護対象機器は前記隙間δSを保つことで除振、あるいは、防振作用を得ると共に、
    前記保護対象機器が揺動運動する非常時には、前記主軸の軸方向移動により、前記主軸の傾斜角を前記隙間δDで規制することで、前記保護対象機器の揺動運動を抑制する作用を得ることを特徴とする擬似剛体化ユニット。
  14. 請求項1又は13記載の擬似剛体化ユニットと、
    前記保護対象機器の質量をm、前記保護対象機器の重心高さをH、前記保護対象機器の左右支持部の距離をB0、前記保護対象機器の前記支持部と重心位置の距離をR、角度φ=tan-1 (B0/2H)、重力加速度をg、前記ボードの質量をmb、前記ボードの重心位置と前記ボードのコーナー部間の距離をBG、前記支持部と前記ボードの前記コーナー間の距離をB1、前記保護対象機器に水平方向の静荷重が加わったときの最大傾斜角をθrとして、下式でηを定義したとき
    η≧1となるように構成されたことを特徴とする擬似剛体化システム。
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