JP2019019864A - 円すいころ軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】密封装置を備えた円すいころ軸受用外輪を加工するにあたって、機械に外輪を脱着する工数を削減し、製造コストが安い円すいころ軸受を提供する。【解決手段】内周に円錐面からなる外側軌道面34が形成された外輪部材12と、外周に円錐面からなる内側軌道面40が形成された内輪部材14とを有し、外輪部材12の軸方向外側の内周にしめしろを持った状態で固定されて、外輪部材12の内周と内輪部材14の外周との間に形成された環状空間Kの開口部を密封する密封装置36を備えた円すいころ軸受10において、外側軌道面34および密封装置36を固定する密封装置取付面38が単一の円錐面で形成されており、密封装置36より軸方向外側に、密封装置36を軸方向に位置決めする固定部材22,30を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、円すいころ軸受に関する。
円すいころ軸受は、互いに同軸に配置された外輪91及び内輪92と、外輪91と内輪92との間に転動自在に組み込まれた複数の円すいころ93を有している(図6参照)。円すいころ93は、外輪内周の外側軌道面98及び内輪外周の内側軌道面99と転がり接触をしている。この転がり接触部に水やダストなどの異物が浸入すると、各軌道面98,99が損傷し、円すいころ軸受が円滑に回転することができない。特許文献1では、異物の浸入を防止するために、外輪91と内輪92との間の開口部に密封装置94が組み込まれた複列円すいころ軸受が開示されている。図6は、特許文献1に記載されたものと同様の形態を有する複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。
密封装置94は、薄板鋼板をプレス成型した芯金95と、ゴムなどの弾性体で形成されたシールリップ96を備えている。芯金95は、軸方向断面の形状が略コの字状であって、その外周は、円筒形状である。外輪91の内周には密封装置取付面97が形成されており、密封装置94は、密封装置取付面97に芯金95の外周を圧入することによって、外輪91と一体に固定されている。
このような円すいころ軸受では、密封装置取付面97の真円度が悪い場合や面粗さが粗い場合には、密封装置取付面97と芯金95との嵌合部から水が浸入する場合がある。このため、密封装置取付面97は、研磨加工によって仕上げられている。
特開2015−132351号公報
円すいころ軸受では、円すいころ93が滑らかに転動するために、外側軌道面98を、研磨加工によって仕上げる必要がある。しかしながら、図6に示すように、外側軌道面98は径方向に傾いており、密封装置取付面97とは母線の向きが異なるため、外側軌道面98と密封装置取付面97を、同時に研磨加工することが困難である。
一般的に、転がり軸受の軌道輪を研磨加工するときには、加工される面ごとに別々の工程となっており、各面は、それぞれ異なる機械によって加工されている。このため、外側軌道面98と密封装置取付面97は、別々の機械で研磨加工されるので、加工する面が変わるたびに外輪91を機械に脱着する必要があり、外輪91の加工には多大な工数を要している。特に、図6に示したように、軸方向の両側に、それぞれ外側軌道面98と密封装置取付面97が形成されている場合には、外輪91の脱着工数が更に増大し、製造コストが高くなっている。
そこで、本発明は、密封装置を備えた円すいころ軸受用外輪を加工するにあたって、機械に外輪を脱着する工数を削減し、製造コストが安い円すいころ軸受を提供することを目的としている。
本発明は、内周に円錐面からなる外側軌道面が形成された外輪部材と、外周に円錐面からなる内側軌道面が形成された内輪部材と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動自在に組み込まれた複数の円すいころと、前記外輪部材の軸方向外側の内周にしめしろを持った状態で固定されて、前記外輪部材の内周と前記内輪部材の外周との間に形成された環状空間の開口部を密封する密封装置と、を備えた円すいころ軸受において、前記外側軌道面および前記密封装置を固定する密封装置取付面が単一の円錐面で形成されており、前記外輪部材の前記密封装置より軸方向外側に、前記密封装置を軸方向に位置決めする固定部材を備えたことを特徴としている。
本発明により、密封装置を備えた円すいころ軸受用外輪を加工するにあたって、機械に外輪を脱着する工数を削減できるので、製造コストが安い円すいころ軸受を提供することができる。
第1実施形態の複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。 図1においてシールが組み込まれている部分の要部拡大図である。 第2実施形態の複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。 第3実施形態の複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。 第4実施形態の複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。 従来の密封装置を備えた複列円すいころ軸受の軸方向断面図である。
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。図1は、第1実施形態である複列円すいころ軸受10の軸方向断面の要部拡大図である。図2は、図1においてシール36が組み込まれている部分の要部拡大図である。複列円すいころ軸受10の全体としての形態は、図6に示した従来の複列円すいころ軸受と同様に、互いに同一形状の二つの円すいころ軸受が、軸方向で互いに逆向きに組み合わされた形態である。図1では、二つの円すいころ軸受のうち、一方の円すいころ軸受を拡大して示している。以下の説明では、複列円すいころ軸受10の回転軸mの方向を軸方向、回転軸mと直交する方向を径方向、回転軸mの周りを周回する方向を周方向という。また、二つの円すいころ軸受が互いに接する側(図1の左側)を軸方向中央側、複列円すいころ軸受10の軸方向両外側(図1の右側)を軸方向外側という。
図1に示すように、複列円すいころ軸受10は、外輪部材としての外輪12と、内輪部材としての一対の内輪14,14と、複数の円すいころ16を備えている。
外輪12は環状で、軸方向で対称に形成されている。外周面13は略円筒形状である。内周には、2列の傾斜面18,18が形成されている。2列の傾斜面18,18は、互いに同一形状で逆向きに組み合わされており、それぞれ外輪12の軸方向中央側から軸方向外側の端面32に向かうにしたがって拡径する円錐面で形成されている。2列の傾斜面18,18の軸方向中央側の端部は、回転軸mと同軸の円筒面からなる内周面20でつながっている。
各傾斜面18には、それぞれ端面32から軸方向に所定寸法離れた位置で、全周にわたって径方向外方に窪んだ環状の溝22が形成されている。各傾斜面18に形成された溝22の形態は、互いに同一である。溝22は、第1側面24、第2側面26、及び溝底面28で形成されている(図2参照)。第1側面24と第2側面26は、それぞれ回転軸mに直交する向きに形成されており、互いに平行である。溝底面28は回転軸mと同軸に形成された円筒面である。後述するように、溝22にはC形止め輪(いわゆるスナップリング)などの略環状の止め輪30が装着される。止め輪30は、数種の板厚を有する複数の止め輪のうちから択一的に選定される。第1側面24と第2側面26との軸方向の間隔は、止め輪30の最大の板厚よりわずかに大きくなっている。
外輪12は、軸受鋼で製造されており、熱処理が施されて硬度を高くした後、外周面13、両端面32,32、及び2列の傾斜面18,18に研磨加工が施される。各傾斜面18では、内周面20と溝22の第2側面26とで軸方向に挟まれた領域Aに研磨加工が施されている。この領域Aは、後述するように、円すいころ16が転動する外側軌道面34と密封装置としてのシール36が固定される密封装置取付面38とが連続して形成されており、単一の円錐面で形成されている。
一対の内輪14,14は、互いに同一の形状である。各内輪14は環状で、内周は円筒形状である。外周には、内側軌道面40が形成されている。内側軌道面40は、軸方向中央側から軸方向外側に向かうにしたがって拡径する円錐面で形成されている。内側軌道面40の軸方向中央側には、内側軌道面40より大径の小鍔41が形成されている。内側軌道面40の軸方向外側には、内側軌道面40より大径の大鍔42が形成されている。大鍔42の外周には、回転軸mと同軸の円筒面からなる肩面44が形成されている。
各内輪14は、軸受鋼で製造されており、熱処理が施されて硬度を高くした後、内周面15、両端面59,60、内側軌道面40、肩面44、及び、大鍔42の鍔面43に研磨加工が施される。
円すいころ16は、円錐面で形成された転動面61と、小端面62と大端面63とで形成されている。小端面62と大端面63は互いに略平行である。
保持器17は、薄肉の鋼板をプレス成型することによって略円筒形状に形成されている。図示を省略するが、保持器17には、径方向に貫通して、円すいころ16が収容される孔が、周方向に等間隔に設けられている。
第1実施形態の複列円すいころ軸受10では、外輪12と一対の内輪14,14とが同軸に組み合わされている。傾斜面18の軸方向中央側の一部は、円すいころ16の転動面61と接触する外側軌道面34であり、2列の外側軌道面34,34と2列の内側軌道面40,40の間に、それぞれ複数の円すいころ16が転動自在に組み込まれている。各列ごとに、保持器17によって、円すいころ16が周方向に等しい間隔で保持されている。こうして、内輪14,14と外輪12とが、回転軸mの回りで相対的に回転することが出来る。外輪12の内周と内輪14,14の外周とで径方向に挟まれた環状空間Kには、グリースが封入されており、各軌道面34,40と円すいころ16との接触部が潤滑されている。
第1実施形態の複列円すいころ軸受10では、環状空間Kの軸方向両外側の開口部にそれぞれシール36が組み込まれている。両側のシール36,36は、互いに同一の形状である。
図2によって、シール36の組み込み状態を説明する。シール36は、芯金37と、弾性体で形成されたリップ71とが一体に形成されている。
芯金37は、薄肉の鋼板をプレス成型することによって製造されており、平板部66と、固定部67と、リップ保持部68とがつながって、軸方向断面が略コの字状に形成されている。平板部66は、回転軸mと直交する向きで径方向に延在している。固定部67は、平板部66の外周端部とつながって略軸方向に延在している。固定部67は、平板部66から離れるにしたがって縮径する向きに傾斜しており、その外周面は、傾斜面18と同一の円錐面で形成されている。リップ保持部68は、平板部66の内周端部とつながって固定部67と同じ向きで軸方向に延在している。
リップ71は、アクリルゴムなどのゴム材を、金型で加硫成型することによって製造されるとともに、加硫接着することによって芯金37と一体に形成されている。リップ71は、リップ保持部68の内周側で、径方向内方に向けて突出しており、内輪14の肩面44と弾性接触をしている。
シール36は、固定部67の小径側(軸方向中央側)が円すいころ16と対向する向きで外輪12の内周に組み込まれる。傾斜面18の大径側(軸方向外側)の一部は、シール36の外周が嵌め合わされる密封装置取付面38であり、密封装置取付面38と固定部67の外周面が互いに当接している。シール36を組付けるときには、密封装置取付面38と固定部67の外周面とが互いに当接したあと、さらに軸方向中央側に向けて押し込まれており、固定部67の外周面と密封装置取付面38とが互いにしめしろをもった状態で嵌め合わされている。
シール36は、溝22に組付けられた止め輪30によって、軸方向に位置決めされている。止め輪30には、JIS B 2804に規定されるC形止め輪が好適に使用される。なお、止め輪は、偏心止め輪であってもよいし同心止め輪であってもよい。また、これに限定されるものではなく、例えば、JIS B 1509に規定される転がり軸受用止め輪など、種々の止め輪を使用することが出来る。溝22と止め輪30は、固定部材を構成している。
止め輪30を組付けるときには、シール36に軸方向の荷重Fが負荷されており、シール36は、最終的に組み込まれる位置よりわずかに円すいころ16に近い位置まで軸方向に押し込まれる。こうして、第1側面24と平板部66の軸方向外側の外側面66aとの間の軸方向寸法Lを、止め輪30の厚さtよりわずかに大きくした状態で、止め輪30が組付けられている。このとき、固定部67が、密封装置取付面38に強く押し付けられることによって、芯金37は、径方向内方に弾性変形している。
こうして、止め輪30が装着された後、シール36を軸方向に押し付ける荷重Fを除去すると、弾性変形していた芯金37が復元する力によって、シール36が円すいころ16から離れる向き(すなわち、密封装置取付面38の軸方向中央側から軸方向外側に向かう方向である)に軸方向に変位する。こうして、シール36は、密封装置取付面38より軸方向外側に設置された止め輪30に押し付けられて、軸方向に位置決めされる。このときのシール36の位置を、「最終的に組み込まれる位置」という。
止め輪30は、数種の板厚のものがあらかじめ準備されている。適正な板厚の止め輪30を選定することにより、荷重Fを除去したときに止め輪30に当接するまでの、芯金37の軸方向の変位量を、小さい値にすることができる。これにより、シール36が最終的に組み込まれる位置において、芯金37は径方向内方に弾性変形した状態を維持しており、固定部67が密封装置取付面38に適正な圧接力で押し付けられている。
なお、溝22の第1側面24と第2側面26との軸方向の間隔は、止め輪30の最大の板厚よりわずかに大きくなっている。
こうして、シール36の芯金37が、研磨加工された密封装置取付面38に適正なしめしろで組み付けられるので、第1実施形態の複列円すいころ軸受10では、環状空間Kへの異物の浸入を確実に防止することが出来る。
次に、再び図1を参照しつつ、複列円すいころ軸受10の外輪12の製造方法について説明する。
一般的に、転がり軸受の外輪は、旋削加工が完了した後、熱処理が施されて焼入れ硬化された後、(1)幅研磨→(2)外径粗研磨→(3)軌道粗研磨→(4)外径仕上研磨→(5)軌道仕上研磨→(6)軌道最終仕上加工、の順で研磨加工がおこなわれる。各加工工程では、それぞれ専用の機械が使用される。
第1実施形態の外輪12では、外側軌道面34と密封装置取付面38が、単一の円錐面で形成されている。このため、(3)軌道粗研磨の工程、及び、(5)軌道仕上研磨の工程では、砥石を傾斜面18に沿って一方向に移動させるだけで、外側軌道面34と密封装置取付面38を同時に研磨加工することが出来る。
なお、外輪12の内周で、溝22と端面32とで軸方向に挟まれた領域Bにおいては、研磨加工を行う必要がない。このため、熱処理の前の旋削加工時に、領域Bの直径寸法を、領域Aの延長線よりわずかに大径に加工しておくことによって、領域Bを研磨加工する工数を削減することが出来る。
第1実施形態の利点を理解するために、従来の複列円すいころ軸受の外輪91に研磨加工を行う場合の工程について説明する。
図6に示したように、従来の外輪91では、密封装置取付面97が回転軸mと同軸の円筒面で形成されており、密封装置取付面97と外側軌道面98は、その母線の向きが互いに異なっている。このため、それぞれの面97,98に研磨加工をするためには、例えば、次に示すように、(Z)で示した加工工程を別途設けて、密封装置取付面97の研磨加工を行う必要がある。
(1)幅研磨→(2)外径粗研磨→(Z)→(3)軌道粗研磨→(4)外径仕上研磨→(5)軌道仕上研磨→(6)軌道最終仕上加工
密封装置取付面97を加工する工程(Z)では、その前後の加工工程に対して、砥石の粗さや被研磨面の母線の方向など加工の形態が異なるので、「(2)外径粗研磨」の工程の後、外輪91を取り外して、密封装置取付面97を加工する機械に取り付けなければならず、また、密封装置取付面97の加工が完了した後、再び外輪91を取り外して、「(3)軌道粗研磨」を行なう機械に取り付ける必要がある。
さらに、図6に示したように、密封装置取付面97が外輪91の軸方向両側に形成されており、それぞれの密封装置取付面97を加工するたびに、外輪91を取り付けたり、取り外したりする必要がある。こうして、従来の複列円すいころ軸受では、外輪91を機械に脱着するために多大な工数を要するので、製造コストが高くなっていた。
これに対して、第1実施形態の複列円すいころ軸受10の外輪12では、密封装置取付面38と外側軌道面34とが単一の円錐面で形成されているので、外側軌道面34を研磨加工すると同時に密封装置取付面38を研磨加工することが出来る。このため、従来の外輪91であれば必要であった「密封装置取付面を加工するための特別な加工工程(Z)」を必要とせず、機械に外輪12を脱着する工数を大幅に削減できる。さらに、密封装置取付面38を加工するための機械も必要としないので、当該機械の設備費や設置スペースを削減できる。
こうして、第1実施形態の複列円すいころ軸受10では、軸方向両端にシール36を装着する構成でありながら、外輪12を加工する工数を削減できるので、製造コストを抑制することが出来る。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通の構成については同一の符号を付している。
図3は、第2実施形態の複列円すいころ軸受における、図1と同様の軸方向断面図で、シール46(密封装置)の組み込み状態を示している。第2実施形態では、第1実施形態に比べてシール46の形態が異なっている。第2実施形態のシール46では、芯金47の固定部76が、平板部75から離れるにしたがって拡径する向きに傾斜している。
固定部76の外周面は、密封装置取付面38と同一の円錐面で形成されており、シール46は、平板部75が円すいころ16と対向する向きで外輪12の内周に組付けられるとともに、固定部76の軸方向外側の端部が、止め輪30と当接している。
こうして、第2実施形態においても、シール46が、密封装置取付面38に押し付けられており、固定部76の外周面と密封装置取付面38とが互いにしめしろをもった状態で嵌め合わされているので、環状空間Kへの異物の浸入を確実に防止することが出来る。なお、シール46を外輪12に取り付ける手順は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
図4は、第3実施形態の複列円すいころ軸受における、図1と同様の軸方向断面図で、シール50(密封装置)の組み込み状態を示している。第3実施形態では、第1実施形態に比べてシール50と密封装置取付面38との接触状態が異なっている。図4に示すように、リップ71を形成する弾性体が固定部67の外周まで延在し、固定部67の外周を被覆する弾性被覆部81が形成されている。
第3実施形態においても、止め輪30を組付けるときには、第1実施形態と同様に、シール50が、最終的に組み込まれる位置よりわずかに円すいころ16に近い位置まで軸方向に押し込まれている。このとき、芯金37の外周がゴム材で形成されているので、シール50が密封装置取付面38に押し付けられることによって、弾性被覆部81が径方向内方に弾性変形する。このため、第3実施形態では、第1実施形態に比べてシール50の径方向のばね定数が小さくなる。こうして、シール50を軸方向に押し込む荷重Fが第1実施形態と同等であっても、シール50を軸方向により大きく押し込むことが出来るので、止め輪30の装着が容易になる。
こうして、第3実施形態では、芯金37の外周と密封装置取付面38との接触部におけるしめしろの確保が容易になるとともに、外輪12の内周とシール50との嵌め合い部が、ゴム材と金属面との接触によって形成されるので、環状空間Kへの異物の浸入をより確実に防止できる。
図5は、第4実施形態の複列円すいころ軸受における、図1と同様の軸方向断面図である。第4実施形態では、上記の他の実施形態に比べて、密封装置の形態と、密封装置を軸方向に位置決めする固定部材の形態が異なっている。
第4実施形態では、密封装置としてのスリンガ55が組み込まれている。
スリンガ55は、薄肉の鋼板をプレス成型することによって製造されており、平板部80と、固定部83と、遮蔽部84とがつながって、軸方向断面が略コの字状に形成されている。平板部80は、回転軸mと直交する向きで径方向に延在している。固定部83は、平板部80の外周端部とつながって略軸方向に延在し、平板部80から離れるにしたがって縮径する向きに傾斜している。固定部83の外周面は、傾斜面18と同一の円錐面で形成されている。遮蔽部84は、平板部80の内周端部とつながって固定部83と同じ向きで軸方向に延在しており、その内周は、内輪14の肩面44とわずかなすきまをもって径方向に対向している。
また、第4実施形態の複列円すいころ軸受では、外輪12の端面32に軸方向に当接するプレート85(固定部材)が設置され、ボルト87によって外輪12に固定されている。プレート85には、軸方向に突出するボス部86が形成されており、ボス部86はスリンガ55の平板部80と軸方向に当接している。こうして、プレート85は、スリンガ55が軸方向に抜け出るのを防止している。
第4実施形態では、スリンガ55を外輪12の内周に組み込んだ後、プレート85を装着し、ボルト87を締め付けることによってスリンガ55を組み込むことが出来る。第4実施形態では、プレート85のボス部86の軸方向の突出量を適正に選定することによって、スリンガ55が軸方向に位置決めされ、固定部83が密封装置取付面38に押し付けられた状態で、スリンガ55を外輪12の内周に取り付けることが出来る。こうして、第4実施形態では、環状空間Kへの異物の浸入を確実に防止することが出来る。
本発明の円すいころ軸受は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、上記説明では複列の円すいころ軸受を例に説明したが、単列の円すいころ軸受であってもよい。
また、第4実施形態のプレート85を、第1から第3実施形態の複列円すいころ軸受に使用してもよく、第3実施形態の弾性被覆部81を、第2実施形態や第4実施形態の密封装置に使用してもよい。
以上説明したように、本発明によると、密封装置を備えた円すいころ軸受用外輪を加工するにあたって、加工工数を削減できるので、製造コストが安い円すいころ軸受を提供することができる。
10:複列円すいころ軸受、12:外輪、14:内輪、16:円すいころ、17:保持器、18:傾斜面、22:溝、30:止め輪、34:外側軌道面、36:シール(第1実施形態)、37:芯金(第1実施形態)、38:密封装置取付面、40:内側軌道面、46:シール(第2実施形態)、47:芯金(第2実施形態)、50:シール(第3実施形態)、55:スリンガ、81:弾性被覆部、85:プレート、
(従来技術)91:外輪、92:内輪、93:円すいころ、94:密封装置、95:芯金、96:シールリップ、97:密封装置取付面、98:外側軌道面、99:内側軌道面

Claims (2)

  1. 内周に円錐面からなる外側軌道面が形成された外輪部材と、外周に円錐面からなる内側軌道面が形成された内輪部材と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に転動自在に組み込まれた複数の円すいころと、前記外輪部材の軸方向外側の内周にしめしろを持った状態で固定されて、前記外輪部材の内周と前記内輪部材の外周との間に形成された環状空間の開口部を密封する密封装置と、を備えた円すいころ軸受において、
    前記外側軌道面および前記密封装置を固定する密封装置取付面が単一の円錐面で形成されており、前記外輪部材の前記密封装置より軸方向外側に、前記密封装置を軸方向に位置決めする固定部材を備えたことを特徴とする円すいころ軸受。
  2. 前記固定部材は、止め輪と、前記外輪部材の前記密封装置取付面より軸方向外側の内周に形成され径方向外方に窪むことにより前記止め輪が取り付けられる溝と、で構成されることを特徴とする請求項1に記載する円すいころ軸受。
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