図1は、本発明の一の実施形態に係るダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの断面模式図である。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、半導体チップ裏面保護膜形成用のチップ相当サイズのフィルムを伴う半導体チップを得るための過程で使用することのできるものであり、フィルム10とダイシングテープ20とを含む積層構造を有する。フィルム10は、ワークである半導体ウエハの回路非形成面すなわち裏面に貼り合わされることとなる裏面保護フィルムである。ダイシングテープ20は、基材21と粘着剤層22とを含む積層構造を有する。粘着剤層22は、フィルム10側に粘着面22aを有する。粘着剤層22ないしその粘着面22aに対し、フィルム10は剥離可能に密着している。また、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、ワークである半導体ウエハに対応するサイズの円盤形状を有する。
裏面保護フィルムであるフィルム10は、レーザーマーク層11と接着剤層12とを含む積層構造を有する。レーザーマーク層11は、フィルム10においてダイシングテープ20側に位置し、ダイシングテープ20ないしその粘着剤層22に密着している。レーザーマーク層11におけるダイシングテープ20側の表面には、半導体装置の製造過程においてレーザーマーキングが施されることとなる。また、本実施形態では、レーザーマーク層11は、熱硬化性成分を含有する熱硬化型層であり、且つ、既に熱硬化された状態にある。接着剤層12は、フィルム10においてワークが貼り合わされる側に位置し、本実施形態では、未硬化状態にある熱硬化型層である。
フィルム10におけるレーザーマーク層11は、樹脂成分として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有してもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有してもよい。
レーザーマーク層11が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。レーザーマーク層11は、一種類の熱硬化性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂は、フィルム10から後記のように形成される裏面保護膜による保護の対象である半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、フィルム10のレーザーマーク層11中の熱硬化性樹脂として好ましい。また、エポキシ樹脂に熱硬化性を発現させるための硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、ヒダントイン型エポキシ樹脂、トリスグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、およびグリシジルアミン型エポキシ樹脂も挙げられる。また、レーザーマーク層11は、一種類のエポキシ樹脂を含有してもよいし、二種類以上のエポキシ樹脂を含有してもよい。
フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、そのようなフェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂などのノボラック型フェノール樹脂が挙げられる。また、当該フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレンなどのポリオキシスチレンも挙げられる。レーザーマーク層11中のフェノール樹脂として特に好ましいのは、フェノールノボラック樹脂やフェノールアラルキル樹脂である。また、レーザーマーク層11はエポキシ樹脂の硬化剤として、一種類のフェノール樹脂を含有してもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を含有してもよい。
レーザーマーク層11がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5〜2.0当量、より好ましくは0.8〜1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、レーザーマーク層11の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を充分に進行させるうえで好ましい。
レーザーマーク層11における熱硬化性樹脂の含有割合は、レーザーマーク層11を適切に硬化させるという観点からは、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
レーザーマーク層11中の熱可塑性樹脂は例えばバインダー機能を担うものであり、レーザーマーク層11が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。レーザーマーク層11は、一種類の熱可塑性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、レーザーマーク層11中の熱可塑性樹脂として好ましい。
レーザーマーク層11が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
アクリル樹脂のモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル樹脂の構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(即ちラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル樹脂の構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。また、アクリル樹脂は、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
アクリル樹脂は、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとしてもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
レーザーマーク層11に含まれるアクリル樹脂は、好ましくは、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、およびアクリル酸から適宜に選択されるモノマーの共重合体である。このような構成は、裏面保護フィルムであるフィルム10において、レーザーマーキングによる刻印情報の視認性と割断用エキスパンド工程での後述の良好な割断性とを両立するうえで好ましい。
レーザーマーク層11が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有する場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、レーザーマーク層11に含有されるアクリル樹脂の構成モノマーとして上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、レーザーマーク層11中のアクリル樹脂をなすための(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとして上記したものを用いることができる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂やカルボキシ基含有アクリル樹脂を好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基の種類に応じて、それと反応を生じうる硬化剤が選択される。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の熱硬化性官能基がグリシジル基である場合、硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として上記したのと同様のフェノール樹脂を用いることができる。
レーザーマーク層11を形成するための組成物は、好ましくは熱硬化触媒を含有する。レーザーマーク層形成用組成物への熱硬化触媒の配合は、レーザーマーク層11の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、トリ(p-メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウム、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレートおよびジシアンジアミドが挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランが挙げられる。レーザーマーク層形成用組成物は、一種類の熱硬化触媒を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化触媒を含有してもよい。
レーザーマーク層11は、フィラーを含有してもよい。レーザーマーク層11へのフィラーの配合は、レーザーマーク層11の弾性率や、降伏点強度、破断伸度などの物性を調整するうえで好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、および非晶質シリカが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイトなども挙げられる。有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、およびポリエステルイミドが挙げられる。レーザーマーク層11は、一種類のフィラーを含有してもよいし、二種類以上のフィラーを含有してもよい。当該フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。レーザーマーク層11がフィラーを含有する場合の当該フィラーの平均粒径は、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜400nm、より好ましくは50〜300nmである。すなわち、レーザーマーク層11は、ナノフィラーを含有するのが好ましい。フィラーとしてこのような粒径のナノフィラーをレーザーマーク層11が含有するという構成は、小片化されることとなるフィルム10について高い分断性や高い割断性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA−910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。また、レーザーマーク層11がフィラーを含有する場合の当該フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。同含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは47質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
レーザーマーク層11は、本実施形態では着色剤を含有する。着色剤は、顔料であってもよいし、染料であってもよい。着色剤としては、例えば、黒系着色剤、シアン系着色剤、マゼンダ系着色剤、およびイエロー系着色剤が挙げられる。レーザーマーキングによってレーザーマーク層11に刻印される情報について高い視認性を実現するうえでは、レーザーマーク層11は黒系着色剤を含有するのが好ましい。黒系着色剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト(黒鉛)、酸化銅、二酸化マンガン、アゾメチンアゾブラックなどアゾ系顔料、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色染料、およびアゾ系有機黒色染料が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、およびランプブラックが挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ソルベントブラック3、同7、同22、同27、同29、同34、同43、および同70も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ダイレクトブラック17、同19、同22、同32、同38、同51、および同71も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.アシッドブラック1、同2、同24、同26、同31、同48、同52、同107、同109、同110、同119、および同154も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ディスパーズブラック1、同3、同10、および同24も挙げられる。黒系着色剤としては、C.I.ピグメントブラック1および同7も挙げられる。レーザーマーク層11は、一種類の着色剤を含有してもよいし、二種類以上の着色剤を含有してもよい。また、レーザーマーク層11における着色剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。同含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。着色剤含有量に関するこれら構成は、レーザーマーキングによってレーザーマーク層11に刻印される情報について高い視認性を実現するうえで好ましい。
レーザーマーク層11は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、および臭素化エポキシ樹脂が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、およびケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)が挙げられる。金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、およびビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。そのようなトリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6'-t-ブチル-4'-メチル-2,2'-メチレンビスフェノール、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、および、メチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートが挙げられる。また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物などの所定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、およびピロガロールが挙げられる。
フィルム10における接着剤層12は、樹脂成分として、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有してもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有してもよい。熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を接着剤層12が有する場合、当該接着剤層12は熱硬化性樹脂を更に含む必要はない。
接着剤層12が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。接着剤層12は、一種類の熱硬化性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を含有してもよい。エポキシ樹脂は、フィルム10から後記のように形成される裏面保護膜による保護の対象である半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、フィルム10の接着剤層12中の熱硬化性樹脂として好ましい。
接着剤層12におけるエポキシ樹脂としては、例えば、レーザーマーク層11が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂として上記したものが挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、接着剤層12中のエポキシ樹脂として好ましい。
接着剤層12におけるエポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、例えば、レーザーマーク層11中のエポキシ樹脂の硬化剤であるフェノール樹脂として上記したものが挙げられる。接着剤層12は、エポキシ樹脂の硬化剤として、一種類のフェノール樹脂を含有してもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を含有してもよい。
接着剤層12がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5〜2.0当量、より好ましくは0.8〜1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、接着剤層12の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を充分に進行させるうえで好ましい。
接着剤層12における熱硬化性樹脂の含有割合は、接着剤層12を適切に硬化させるという観点からは、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。
接着剤層12中の熱可塑性樹脂は例えばバインダー機能を担うものである。接着剤層12が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の当該熱可塑性樹脂としては、例えば、レーザーマーク層11が熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成を有する場合の熱可塑性樹脂として上記したものが挙げられる。接着剤層12は、一種類の熱可塑性樹脂を含有してもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を含有してもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、接着剤層12中の熱可塑性樹脂として好ましい。
接着剤層12が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのようなアクリル樹脂のモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、レーザーマーク層11が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂の構成モノマーとして上記した(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。接着剤層12中のアクリル樹脂の構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。また、当該アクリル樹脂は、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとしてもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、レーザーマーク層11中のアクリル樹脂をなすための(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとして上記したものを用いることができる。
接着剤層12に含まれるアクリル樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリロニトリル、およびアクリル酸から適宜に選択されるモノマーの共重合体である。このような構成は、裏面保護フィルムであるフィルム10において、ワークに対する接着性と割断用エキスパンド工程での後述の良好な割断性とを両立するうえで好ましい。
接着剤層12が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む組成を有する場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、レーザーマーク層11に含有されるアクリル樹脂の構成モノマーとして上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、レーザーマーク層11中のアクリル樹脂をなすための(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとして上記したものを用いることができる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基の種類に応じて、それと反応を生じうる硬化剤が選択される。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の熱硬化性官能基がグリシジル基である場合、硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として上記したのと同様のフェノール樹脂を用いることができる。
接着剤層12を形成するための組成物は、好ましくは熱硬化触媒を含有する。接着剤層形成用組成物への熱硬化触媒の配合は、接着剤層12の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、レーザーマーク層形成用組成物に配合されうる熱硬化触媒として上記したものを用いることができる。
接着剤層12は、フィラーを含有してもよい。接着剤層12へのフィラーの配合は、接着剤層12の弾性率や、降伏点強度、破断伸度などの物性を調整するうえで好ましい。接着剤層12におけるフィラーとしては、例えば、レーザーマーク層11におけるフィラーとして上記したものが挙げられる。接着剤層12は、一種類のフィラーを含有してもよいし、二種類以上のフィラーを含有してもよい。当該フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。接着剤層12がフィラーを含有する場合の当該フィラーの平均粒径は、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜400nm、より好ましくは50〜300nmである。すなわち、接着剤層12は、ナノフィラーを含有するのが好ましい。フィラーとしてこのような粒径のナノフィラーを接着剤層12が含有するという構成は、フィルム10に貼着ないしマウントされるワークについて接着剤層12中含有フィラーに起因してダメージが生ずるのを回避または抑制するうえで好適であり、また、小片化されることとなるフィルム10について高い分断性や高い割断性を確保するうえで好適である。また、接着剤層12がフィラーを含有する場合の当該フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。同含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは47質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
接着剤層12は、着色剤を含有してもよい。接着剤層12における着色剤としては、例えば、レーザーマーク層11における着色剤として上記したものが挙げられる。フィルム10におけるレーザーマーク層11側のレーザーマーキングによる刻印箇所とそれ以外の箇所との間で高いコントラストを確保して当該刻印情報について良好な視認性を実現するうえでは、接着剤層12は黒系着色剤を含有するのが好ましい。接着剤層12は、一種類の着色剤を含有してもよいし、二種類以上の着色剤を含有してもよい。また、接着剤層12における着色剤の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上である。同含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。着色剤含有量に関するこれら構成は、レーザーマーキングによる刻印情報について上述の良好な視認性を実現するうえで好ましい。
接着剤層12は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、レーザーマーク層11に関して具体的に上記した難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
裏面保護フィルムであるフィルム10において、レーザーマーク層11の厚さは例えば5〜22であり、接着剤層12の厚さは例えば3〜20である。そして、接着剤層12の厚さに対するレーザーマーク層11の厚さの比の値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である。当該比の値は、例えば8以下である。
フィルム10は、120℃で2時間の加熱処理を経た場合、幅10mmの裏面保護フィルム試料片について初期チャック間距離22.5mm、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で測定される80℃での引張貯蔵弾性率が0.5GPa以上であり、好ましくは0.75GPa以上、より好ましくは1GPa以上である。フィルム10の引張貯蔵弾性率の調整は、例えば、アクリル樹脂などの熱可塑性成分とエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性成分との配合比率の調整よって行うことができる。この引張貯蔵弾性率については、動的粘弾性測定装置(商品名「Solid Analyzer RS GII」,レオメトリック社製)を使用して行う動的粘弾性測定に基づき求めることができる。その測定においては、裏面保護フィルムから切り出される試料片(裏面保護フィルム試料片)のサイズを幅10mm×長さ30mmとし(厚さは例えば25μmである)、試料片保持用チャックの初期チャック間距離を22.5mmとし、測定モードを引張りモードとし、測定環境を窒素雰囲気下とし、測定温度範囲を0℃から100℃とし、周波数を1Hzとし、昇温速度を10℃/分とする。
また、フィルム10は、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定における50〜200℃の範囲内での発熱量が、好ましくは40J/g以下、より好ましくは35J/g以下、より好ましくは30J/g以下である。フィルム10に関するこのような発熱量の調整は、例えば、フィルム10の各層に配合される熱硬化触媒についての種類の選択や配合量の調整によって調整することができる。示差走査熱量測定は、示差走査熱量計(商品名「DSC Q2000」,TAインスツルメント社製)を使用して行うことができる。その測定においては、測定環境を窒素雰囲気下とし、測定温度範囲を−20℃から300℃とし、昇温速度を10℃/分とする。測定によって得られるDSCチャートにおいて50〜200℃の範囲に発熱ピークが現れている場合に、当該チャートの50〜200℃におけるベースライン以上の熱量の積算値を発熱量とする。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるダイシングテープ20の基材21は、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて支持体として機能する要素である。基材21は例えばプラスチック基材であり、当該プラスチック基材としてはプラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−ブテン共重合体、およびエチレン−ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。基材21は、一種類の材料からなってもよし、二種類以上の材料からなってもよい。基材21は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。基材21上の粘着剤層22が後述のように紫外線硬化性である場合、基材21は紫外線透過性を有するのが好ましい。基材21は、プラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。本実施形態において好ましくは、基材21は、ポリ塩化ビニル製基材またはエチレン−酢酸ビニル共重合体製基材である。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用に際してダイシングテープ20ないし基材21を例えば部分的な加熱によって収縮させる場合には、基材21は熱収縮性を有するのが好ましい。また、基材21がプラスチックフィルムよりなる場合、ダイシングテープ20ないし基材21について等方的な熱収縮性を実現するうえでは、基材21は二軸延伸フィルムであるのが好ましい。ダイシングテープ20ないし基材21は、加熱温度100℃および加熱処理時間60秒の条件で行われる加熱処理試験による熱収縮率が好ましくは2〜30%、より好ましくは2〜25%、より好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜20%である。当該熱収縮率は、いわゆるMD方向の熱収縮率およびいわゆるTD方向の熱収縮率の少なくとも一方の熱収縮率をいうものとする。
基材21における粘着剤層22側の表面は、粘着剤層22との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理が挙げられる。化学的処理としては例えばクロム酸処理が挙げられる。
基材21の厚さは、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおける支持体として基材21が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは40μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材21の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下である。
ダイシングテープ20の粘着剤層22は、粘着剤を含有する。この粘着剤は、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤(粘着力低減可能型粘着剤)であってもよいし、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんど又は全く低減しない粘着剤(粘着力非低減型粘着剤)であってもよい。粘着剤層22中の粘着剤として粘着力低減可能型粘着剤を用いるか或いは粘着力非低減型粘着剤を用いるかについては、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXを使用して個片化される半導体チップの個片化の手法や条件など、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用態様に応じて、適宜に選択することができる。粘着剤層22中の粘着剤として粘着力低減可能型粘着剤を用いる場合、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用過程において、粘着剤層22が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを、使い分けることが可能である。
このような粘着力低減可能型粘着剤としては、例えば、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用過程において放射線照射によって硬化させることが可能な粘着剤(放射線硬化性粘着剤)が挙げられる。本実施形態の粘着剤層22では、一種類の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層22の全体が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22の一部が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層22が単層構造を有する場合、粘着剤層22の全体が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22における所定の部位(例えば、ワークの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、リングフレームの貼着対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層22が多層構造を有する場合、多層構造をなす全ての層が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよいし、多層構造中の一部の層が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好適に用いることができる。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤たるアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素−炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
上記のアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられ、より具体的には、フィルム10のレーザーマーク層11におけるアクリル樹脂に関して上記したのと同様の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。アクリル系ポリマーの構成モノマーとしては、好ましくは、アクリル酸2-エチルヘキシルおよびアクリル酸ラウリルが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層22にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
アクリル系ポリマーは、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられ、より具体的には、フィルム10のレーザーマーク層11中のアクリル樹脂をなすための(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマーとして上記したものが挙げられる。
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および/または「メタクリレート」を意味するものとする。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の多官能性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーが用いられてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性を粘着剤層22にて適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーの構成モノマー全体における多官能性モノマーの割合は、好ましくは40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。ダイシングテープ20ないしダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用される半導体装置製造方法における高度の清浄性の観点からは、ダイシングテープ20ないしダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおける粘着剤層22中の低分子量物質は少ない方が好ましいところ、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万〜300万である。
粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤は、アクリル系ポリマーなどベースポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、外部架橋剤を含有してもよい。アクリル系ポリマーなどベースポリマーと反応して架橋構造を形成するための外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤における外部架橋剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは0.1〜5質量部である。
放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬化性粘着剤をなすための上記の放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100〜30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層22の粘着力を適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、好ましくは5〜500質量部であり、より好ましくは40〜150質量部である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60−196956号公報に開示のものを用いてもよい。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素−炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤は、形成される粘着剤層22内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、上述のアクリル系ポリマーを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素−炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素−炭素二重結合とを有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好ましい。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いので、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの観点からは、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好ましい。この場合、放射線重合性炭素−炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物、即ち、放射線重合性の不飽和官能基含有イソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層22における放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05〜20質量部である。
上述の粘着力非低減型粘着剤としては、例えば、粘着力低減可能型粘着剤に関して上述した放射線硬化性粘着剤を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤や、いわゆる感圧型粘着剤などが、挙げられる。放射線硬化性粘着剤は、その含有ポリマー成分の種類および含有量によっては、放射線硬化されて粘着力が低減された場合においても当該ポリマー成分に起因する粘着性を示し得て、所定の使用態様で被着体を粘着保持するのに利用可能な粘着力を発揮することが可能である。本実施形態の粘着剤層22においては、一種類の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力非低減型粘着剤が用いられてもよい。また、粘着剤層22の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、粘着剤層22の一部が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。例えば、粘着剤層22が単層構造を有する場合、粘着剤層22の全体が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、上述のように、粘着剤層22における所定の部位(例えば、リングフレームの貼着対象領域であって、ウエハの貼着対象領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤から形成され、他の部位(例えば、ウエハの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤から形成されてもよい。また、粘着剤層22が多層構造を有する場合、多層構造をなす全ての層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよいし、多層構造中の一部の層が粘着力非低減型粘着剤から形成されてもよい。
一方、粘着剤層22のための感圧型粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を用いることができる。粘着剤層22が感圧型粘着剤としてアクリル系粘着剤を含有する場合、当該アクリル系粘着剤のベースポリマーたるアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのようなアクリル系ポリマーとしては、例えば、放射線硬化性粘着剤に関して上述したアクリル系ポリマーが挙げられる。
粘着剤層22ないしそれをなすための粘着剤は、上述の各成分に加えて、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、顔料や染料などの着色剤などを、含有してもよい。着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
粘着剤層22の厚さは、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜17μm、より好ましくは5〜15μmである。このような構成は、例えば、粘着剤層22が放射線硬化性粘着剤を含む場合に当該粘着剤層22の放射線硬化の前後におけるフィルム10に対する粘着力のバランスをとるうえで、好適である。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて、裏面保護フィルムであるフィルム10とダイシングテープ20の粘着剤層22との間は、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験において、0.1N/20mm以下、好ましくは0.08N/20mm以下、より好ましくは0.06N/20mm以下の粘着力を示しうる。このような低粘着力は、フィルム10におけるダイシングテープ側のレーザーマーク層11がダイシングテープ20の粘着剤層22に貼り合わされるより前に予め熱硬化されることによって実現することが可能である。この粘着力については、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試料片の作製手法および測定手法は、具体的には次のとおりである。まず、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10の接着剤層側の表面12aに片面粘着テープ(商品名「BT-315」,日東電工株式会社製)を貼り合わせる。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。次に、この貼り合わせ体から、ダイシングテープ20とフィルム10と片面粘着テープとの積層構造を有する、幅20mm×長さ100mmのサイズの試料片を、切り出す。粘着剤層22が放射線硬性粘着剤を含む場合には、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて基材21の側から粘着剤層22に対して300mJ/cm2の紫外線等の放射線を照射して粘着剤層22を硬化させた後に、試料片の切り出しを行う。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」,株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で当該試料片について剥離試験を行い、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおける粘着剤層22とフィルム10との間の粘着力を測定する。
以上のような構成を有するダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、例えば以下のようにして製造することができる。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10の作製においては、まず、レーザーマーク層11をなすこととなる樹脂フィルム(第1樹脂フィルム)と、接着剤層12をなすこととなる樹脂フィルム(第2樹脂フィルム)とを個別に作製する。第1樹脂フィルムは、レーザーマーク層形成用の樹脂組成物を所定のセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、当該組成物層を加熱によって乾燥および硬化させることによって、作製することができる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、並びに、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが、挙げられる。樹脂組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。第1樹脂フィルムの作製において、加熱温度は例えば90〜160℃であり、加熱時間は例えば2〜4分間である。一方、第2樹脂フィルムは、接着剤層形成用の樹脂組成物を所定のセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、当該組成物層を加熱によって乾燥させることによって、作製することができる。第2樹脂フィルムの作製において、加熱温度は例えば90〜150℃であり、加熱時間は例えば1〜2分間である。以上のようにして、それぞれがセパレータを伴う形態で上述の第1および第2樹脂フィルムを作製することができる。そして、これら第1および第2樹脂フィルムの露出面どうしを貼り合わせる。これによって、レーザーマーク層11と接着剤層12との積層構造を有するフィルム10が作製される。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXのダイシングテープ20については、用意した基材21上に粘着剤層22を設けることによって作製することができる。例えば樹脂製の基材21は、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネート法などの製膜手法によって、作製することができる。製膜後のフィルムないし基材21には、必要に応じて所定の表面処理が施される。粘着剤層22の形成においては、例えば、粘着剤層形成用の粘着剤組成物を調製した後、まず、当該組成物を基材21上または所定のセパレータ上に塗布して粘着剤組成物層を形成する。粘着剤組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、およびグラビア塗工が挙げられる。次に、この粘着剤組成物層において、加熱によって、必要に応じて乾燥させ、また、必要に応じて架橋反応を生じさせる。加熱温度は例えば80〜150℃であり、加熱時間は例えば0.5〜5分間である。粘着剤層22がセパレータ上に形成される場合には、当該セパレータを伴う粘着剤層22を基材21に貼り合わせ、その後、セパレータが剥離される。これにより、基材21と粘着剤層22との積層構造を有するダイシングテープ20が作製される。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの作製においては、次に、ダイシングテープ20の粘着剤層22側にフィルム10のレーザーマーク層11側を貼り合わせる。貼合わせ温度は例えば30〜50℃であり、貼合わせ圧力(線圧)は例えば0.1〜20kgf/cmである。粘着剤層22が上述のような放射線硬化性粘着剤を含む場合、当該貼り合わせの前に粘着剤層22に対して紫外線等の放射線を照射してもよいし、当該貼り合わせの後に基材21の側から粘着剤層22に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。或いは、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの製造過程では、そのような放射線照射を行わなくてもよい(この場合、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの使用過程で粘着剤層22を放射線硬化させることが可能である)。粘着剤層22が紫外線硬化型である場合、粘着剤層22を硬化させるための紫外線照射量は、例えば50〜500mJ/cm2である。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて粘着剤層22の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(照射領域R)は、例えば図1に示すように、粘着剤層22におけるダイボンドフィルム貼合せ領域内のその周縁部を除く領域である。
以上のようにして、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXを作製することができる。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXには、フィルム10側に、少なくともフィルム10を被覆する形態でセパレータ(図示略)が設けられていてもよい。ダイシングテープ20の粘着剤層22よりもフィルム10が小サイズで粘着剤層22においてフィルム10の貼り合わされていない領域がある場合には例えば、セパレータは、フィルム10および粘着剤層22を少なくとも被覆する形態で設けられていてもよい。セパレータは、フィルム10や粘着剤層22が露出しないように保護するための要素であり、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXを使用する際には当該フィルムから剥がされる。
図2から図6は、上述のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXが使用される半導体装置製造方法の一例を表す。
本半導体装置製造方法においては、まず、図2(a)および図2(b)に示すように、研削加工によってウエハWが薄化される(ウエハ薄化工程)。研削加工は、研削砥石を備える研削加工装置を使用して行うことができる。ウエハWは、半導体ウエハであり、第1面Waおよび第2面Wbを有する。ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。第2面Wbは、いわゆる裏面である。本工程では、粘着面T1aを有するウエハ加工用テープT1がウエハWの第1面Wa側に貼り合わされた後、ウエハ加工用テープT1にウエハWが保持された状態で、ウエハWが所定の厚さに至るまで第2面Wbから研削加工され、薄化されたウエハ30が得られる。
次に、図3(a)に示すように、ウエハ加工用テープT1に保持されたウエハ30が、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXのフィルム10ないしその接着剤層12に対して貼り合わせられる。この後、図3(b)に示すように、ウエハ30からウエハ加工用テープT1が剥がされる。
次に、接着剤層12を熱硬化させるための加熱処理が行われる(キュア工程)。加熱温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは100〜150℃である。加熱時間は、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。加熱処理は、具体的には例えば120℃で2時間、行われる。本工程では、接着剤層12の熱硬化により、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXのフィルム10とウエハ30との密着力が高まり、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXないしそのフィルム10の対ウエハ固定保持力が高まる。
次に、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10のレーザーマーク層11に対し、ダイシングテープ20の基材21の側からレーザーを照射してレーザーマーキングを行う(レーザーマーキング工程)。このレーザーマーキングによって、後に半導体チップへと個片化される半導体素子ごとに、文字情報や図形情報などの各種情報が刻印される。本工程では、一のレーザーマーキングプロセスにおいて、ウエハ30内の多数の半導体素子に対して一括的に効率よくレーザーマーキングを行うことが可能である。本工程で用いられるレーザーとしては、例えば、気体レーザーおよび固体レーザーが挙げられる。気体レーザーとしては、例えば、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)およびエキシマレーザーが挙げられる。固体レーザーとしては、例えばNd:YAGレーザーが挙げられる。
次に、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおける粘着剤層22上にリングフレーム41が貼り付けられた後、図4に示すように、ダイシング装置の備えるダイシングブレードによる切削加工が行われる(ダイシング工程)。図4では、切削箇所を模式的に太線で表す。本工程では、ウエハ30がチップ31へと個片化され、これとともに、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXのフィルム10が小片のフィルム10'に切断される。これにより、チップ裏面保護膜形成用のフィルム10'を伴うチップ31、即ちフィルム10'付チップ31が、得られる。
ダイシングテープ20の粘着剤層22が放射線硬化性粘着剤を含有する場合には、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXの製造過程での上述の放射線照射に代えて、上述のダイシング工程の後に、基材21の側から粘着剤層22に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。照射量は、例えば50〜500mJ/cm2である。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいて粘着剤層22の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(図1に示す照射領域R)は、例えば、粘着剤層22におけるフィルム10貼合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
次に、フィルム10'付チップ31を伴うダイシングテープ20におけるチップ31側を水などの洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程や、フィルム10'付チップ31間の離隔距離を広げるためのエキスパンド工程を、必要に応じて経た後、図5に示すように、フィルム10'付チップ31をダイシングテープ20からピックアップする(ピックアップ工程)。例えば、リングフレーム41付きのダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXを装置の保持具42に保持させたうえで、ピックアップ対象のフィルム10'付チップ31について、ダイシングテープ20の図中下側においてピックアップ機構のピン部材43を上昇させてダイシングテープ20を介して突き上げた後、吸着治具44によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材43の突き上げ速度は例えば1〜100mm/秒であり、ピン部材43の突き上げ量は例えば50〜3000μmである。
次に、図6に示すように、フィルム10'付チップ31が実装基板51に対してフリップチップ実装される。実装基板51としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、および配線基板が挙げられる。チップ31は、実装基板51に対してバンプ52を介して電気的に接続されている。具体的には、チップ31がその回路形成面側に有する電極パッド(図示略)と実装基板51の有する端子部(図示略)とが、バンプ52を介して電気的に接続されている。バンプ52は、例えばハンダバンプである。また、チップ31と実装基板51との間には、熱硬化性のアンダーフィル剤53が介在している。
以上のようにして、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXを使用して半導体装置を製造することができる。
本実施形態のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXでは、上述のように、レーザーマーク層11は、硬化した熱硬化型層であり、且つ、接着剤層12は熱硬化性を有する。このような構成は、120℃で2時間の加熱処理によって、ワーク貼着面をなすための接着剤層12は熱硬化する一方で、ダイシングテープ20に密着するレーザーマーク層11は実質的には熱硬化しないという積層構造を、フィルム10において実現するのに適する。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10は、上述のように、120℃で2時間の加熱処理を経た場合、幅が10mmで厚さが例えば25μmのフィルム試料片(裏面保護フィルム試料片)について初期チャック間距離22.5mm、周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で測定される80℃での引張貯蔵弾性率が0.5GPa以上であり、好ましくは0.75GPa以上、より好ましくは1GPa以上である。このような構成は、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいてダイシング工程で求められる対ウエハ固定保持力を確保するのに適する。フィルム10について120℃で2時間の加熱処理によってこのように比較的に高い引張貯蔵弾性率が得られるという構成は、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10を半導体ウエハに貼り合わせた後に当該フィルム10を熱硬化させて高い対ウエハ固定保持力を実現するのに適するのである。ダイシング工程で求められる対ウエハ固定保持力を確保するのに適する当該構成を備えるダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、ダイシングテープ20上でウエハ30をチップ31に個片化するためのブレードダイシングにおいてチップ31の側面に亀裂が生ずるのを抑制するのに適する。そして、ダイシング工程で求められる対ウエハ固定保持力を確保するのに適した構成と、120℃で2時間の加熱処理によって接着剤層12は熱硬化する一方でレーザーマーク層11は実質的には熱硬化しないという積層構造を実現するのに適した上述の構成とを、共に備えるダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、そのフィルム10について対ダイシングテープ密着力の上昇を抑制しつつ加熱処理によって対ウエハ固定保持力を確保するのに適する。フィルム10において対ウエハ固定保持力を確保するための加熱処理に際して対ダイシングテープ密着力の上昇を抑制する構成は、ピックアップ工程においてダイシングテープ20からフィルム10'付チップ31を適切にピックアップするのに資する。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおけるフィルム10(上記加熱処理前のフィルム10)とダイシングテープ20の粘着剤層22との間は、上述のように、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件での剥離試験において、0.1N/20mm以下、好ましくは0.08N/20mm以下、より好ましくは0.06N/20mm以下の粘着力を示しうる。フィルム10と粘着剤層22との間のこのような低粘着力に係る構成と、120℃で2時間の加熱処理によって接着剤層12は熱硬化する一方でレーザーマーク層11は実質的には熱硬化しないという積層構造を実現するのに適した上述の構成とを、共に備えるダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、そのフィルム10について対ウエハ固定保持力を確保するための加熱処理に際して対ダイシングテープ密着力の上昇を抑制したうえで、ピックアップ工程においてダイシングテープ20からのフィルム10'付チップ31の良好なピックアップを実現するのに適する。
以上のように、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXは、ダイシングテープ20上でウエハ30をチップ31に個片化するためのブレードダイシングにおいてチップ31の側面に亀裂が生ずるのを抑制するとともに、ダイシングテープ20からのフィルム10'付チップ31の良好なピックアップを実現するのに適するのである。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXのフィルム10は、上述のように、昇温速度10℃/分での示差走査熱量測定における50〜200℃の範囲内での発熱量が、好ましくは40J/g以下、より好ましくは35J/g以下、より好ましくは30J/g以下である。このような構成は、レーザーマーク層11が硬化済みの熱硬化型層であり且つ接着剤層12が未硬化状態の熱硬化型層であるフィルム10において、対ウエハ固定保持力を確保するための加熱処理に際して対ダイシングテープ密着力の上昇を抑制するうえで好適であり、従って、ピックアップ工程においてフィルム10'付チップ31の良好なピックアップを実現するのに資する。
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムXにおいては、上述のように、接着剤層12の厚さに対するレーザーマーク層11の厚さの比の値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である。レーザーマーク層11が硬化済みの熱硬化型層であり且つ接着剤層12が未硬化状態の熱硬化型層であるフィルム10において、当該フィルム全体の厚さにおける硬化済みレーザーマーク層11の厚さの割合が大きいほど、ブレードダイシングにおいてチップ31の側面に亀裂が生ずるのを抑制できる。
〔実施例1〕
〈裏面保護フィルムの作製〉
ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの裏面保護フィルムの作製においては、まず、レーザーマーク層(LM層)をなすこととなる第1樹脂フィルムと、接着剤層(AH層)をなすこととなる第2樹脂フィルムとを個別に作製した。
第1樹脂フィルムの作製においては、まず、アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-P3」,重量平均分子量は85万,ガラス転移温度Tgは12℃,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「KI-3000-4」,東都化成株式会社製)50質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「JER YL980」,三菱化学株式会社製)20質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」,明和化成株式会社製)75質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」,シリカ,平均粒径は0.5μm,株式会社アドマテックス製)175質量部と、黒系染料(商品名「OIL BLACK BS」,オリエント化学工業株式会社製)15質量部と、熱硬化触媒Z1(商品名「キュアゾール 2PZ」,四国化成工業株式会社製)20質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度30質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って乾燥および熱硬化させ、PETセパレータ上に厚さ18μmの第1樹脂フィルム(硬化済み熱硬化型層であるレーザーマーク層をなすこととなるフィルム)を作製した。
第2樹脂フィルムの作製においては、まず、アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-P3」,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「KI-3000-4」,東都化成株式会社製)50質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「JER YL980」,三菱化学株式会社製)20質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」,明和化成株式会社製)75質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」,株式会社アドマテックス製)175質量部と、黒系染料(商品名「OIL BLACK BS」,オリエント化学工業株式会社製)15質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ」,四国化成工業株式会社製)7質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って乾燥させ、PETセパレータ上に厚さ7μmの第2樹脂フィルム(未硬化状態の熱硬化型層である接着剤層をなすこととなるフィルム)を作製した。
上述のようにして作製したPETセパレータ上の第1樹脂フィルムとPETセパレータ上の第2樹脂フィルムとをラミネーターを使用して貼り合わせた。具体的には、温度100℃および圧力0.85MPaの条件で、第1および第2樹脂フィルムの露出面どうしを貼り合わせた。以上のようにして、実施例1の裏面保護フィルムを作製した。実施例1ならびに後記の各実施例および各比較例におけるレーザーマーク層(LM層)と接着剤層(AH層)の組成を表1に掲げる(表1において、各層の組成を表す各数値の単位は、当該層内での相対的な“質量部”である)。
〈ダイシングテープの作製〉
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル100質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル19質量部と、重合開始剤たる過酸化ベンゾイル0.4質量部と、重合溶媒たるトルエン80質量部とを含む混合物を、60℃で10時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。次に、このアクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)と、付加反応触媒としてのジブチル錫ジラウリレートとを含む混合物を、50℃で60時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。当該反応溶液において、MOIの配合量は、上記アクリル系ポリマーP1100質量部に対して12質量部であり、ジブチル錫ジラウリレートの配合量は、アクリル系ポリマーP1100質量部に対して0.06質量部である。この付加反応により、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系ポリマーP2を含有するポリマー溶液を得た。次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP2100質量部に対して2質量部のポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」,東ソー株式会社製)と、2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア369」,BASF社製)と、トルエンとを加えて混合し、固形分濃度28質量%の粘着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ30μmの粘着剤層を形成した。次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面に基材としてのポリプロピレンフィルム(商品名「SC040PP1-BL」,厚さ40μm,倉敷紡績株式会社製)を室温で貼り合わせた。この貼合せ体について、その後に23℃で72時間の保存を行った。以上のようにしてダイシングテープを作製した。
〈ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの作製〉
PETセパレータを伴う実施例1の上述の裏面保護フィルムを直径330mmの円形に打ち抜き加工した。次に、当該裏面保護フィルムからPETセパレータを剥離し且つ上述のダイシングテープからPETセパレータを剥離した後、当該ダイシングテープにおいて露出した粘着剤層と、ダイボンドフィルムにおいてPETセパレータの剥離によって露出した面とを、ハンドローラーを使用して貼り合わせた。次に、このようにして裏面保護フィルムと貼り合わせられたダイシングテープを、ダイシングテープの中心と裏面保護フィルムの中心とが一致するように、直径390mmの円形に打ち抜き加工した。以上のようにして、ダイシングテープと裏面保護フィルムとの積層構造を有する実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、硬化済みのレーザーマーク層(LM層)と未硬化の接着剤層(AH層)との積層構造を有する。
〔実施例2〕
第1樹脂フィルムの作製において、エポキシ樹脂E1の配合量を50質量部に代えて137質量部とし、エポキシ樹脂E2の配合量を20質量部に代えて59質量部とし、フェノール樹脂の配合量を75質量部に代えて205質量部とし、フィラーの配合量を175質量部に代えて355質量部とし、黒系染料の配合量を15質量部に代えて30質量部とし、熱硬化触媒Z1の配合量を20質量部に代えて43質量部としたこと、および、第2樹脂フィルムの作製において、エポキシ樹脂E1の配合量を50質量部に代えて137質量部とし、エポキシ樹脂E2の配合量を20質量部に代えて59質量部とし、フェノール樹脂の配合量を75質量部に代えて205質量部とし、フィラーの配合量を175質量部に代えて355質量部とし、黒系染料の配合量を15質量部に代えて30質量部とし、熱硬化触媒Z2の配合量を7質量部に代えて13質量部としたこと以外は、実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムと同様にして、実施例2のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。実施例2のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、硬化済みのレーザーマーク層(LM層)と未硬化の接着剤層(AH層)との積層構造を有する。
〔実施例3〕
第1樹脂フィルムの作製において、エポキシ樹脂E1の配合量を50質量部に代えて200質量部とし、エポキシ樹脂E2の配合量を20質量部に代えて80質量部とし、フェノール樹脂の配合量を75質量部に代えて290質量部とし、フィラーの配合量を175質量部に代えて470質量部とし、黒系染料の配合量を15質量部に代えて40質量部とし、熱硬化触媒Z1の配合量を20質量部に代えて57質量部としたこと、および、第2樹脂フィルムの作製において、エポキシ樹脂E1の配合量を50質量部に代えて200質量部とし、エポキシ樹脂E2の配合量を20質量部に代えて80質量部とし、フェノール樹脂の配合量を75質量部に代えて290質量部とし、フィラーの配合量を175質量部に代えて470質量部とし、黒系染料の配合量を15質量部に代えて40質量部とし、熱硬化触媒Z2の配合量を7質量部に代えて17質量部としたこと以外は、実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムと同様にして、実施例3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。実施例3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、硬化済みのレーザーマーク層(LM層)と未硬化の接着剤層(AH層)との積層構造を有する。
〔比較例1〕
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-P3」,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E3(商品名「EPPN-501HY」,日本化薬株式会社製)70質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」,明和化成株式会社製)80質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」,株式会社アドマテックス製)175質量部と、黒系染料(商品名「OIL BLACK BS」,オリエント化学工業株式会社製)15質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度30質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って乾燥させ、PETセパレータ上に厚さ25μmの裏面保護フィルムを作製した。そして、比較例1の当該裏面保護フィルムを実施例1における上述の裏面保護フィルムの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムと同様にして、比較例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。比較例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、単一の熱可塑性層よりなる。
〔比較例2〕
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-P3」,ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「KI-3000-4」,東都化成株式会社製)50質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「JER YL980」,三菱化学株式会社製)20質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」,明和化成株式会社製)75質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」,株式会社アドマテックス製)175質量部と、黒系染料(商品名「OIL BLACK BS」,オリエント化学工業株式会社製)15質量部と、熱硬化触媒Z2(商品名「キュアゾール 2PHZ」,四国化成工業株式会社製)7質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度30質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って乾燥させ、PETセパレータ上に厚さ25μmの裏面保護フィルムを作製した。そして、比較例2の当該裏面保護フィルムを実施例1における上述の裏面保護フィルムの代わりに用いたこと以外は実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムと同様にして、比較例2のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。比較例2のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、未硬化状態にある単一の熱硬化型層よりなる。
〔比較例3〕
第2樹脂フィルムの作製において、エポキシ樹脂E150質量部とエポキシ樹脂E220質量部に代えてエポキシ樹脂E3(商品名「EPPN-501HY」,日本化薬株式会社製)70質量部を用いたこと、フェノール樹脂の配合量を75質量部に代えて80質量部としたこと、および、熱硬化触媒Z2を用いなかったこと以外は、実施例1のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムと同様にして、比較例3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを作製した。比較例3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、硬化済みのレーザーマーク層(LM層)と熱可塑性層である接着剤層(AH層)との積層構造を有する。
〔引張貯蔵弾性率〕
実施例1〜3および比較例1〜3における上述の裏面保護フィルムについて、動的粘弾性測定装置(商品名「Solid Analyzer RS GII」,レオメトリック社製)を使用して行う動的粘弾性測定に基づき、80℃での引張貯蔵弾性率(GPa)を求めた。実施例1〜3および比較例2の各裏面保護フィルムからは、120℃で2時間の加熱処理を施した後、幅10mm×長さ30mmのサイズの試料片を切り出した。比較例1,3の各裏面保護フィルムからは、加熱処理を施さずに、幅10mm×長さ30mmのサイズの試料片を切り出した。また、測定においては、試料片保持用チャックの初期チャック間距離を22.5mmとし、測定モードを引張りモードとし、測定環境を窒素雰囲気下とし、測定温度範囲を0℃から100℃とし、周波数を1Hzとし、昇温速度を10℃/分とした。引張貯蔵弾性率(GPa)の測定結果を表1に掲げる。
〈裏面保護フィルムとダイシングテープ粘着剤層との間の粘着力〉
実施例1〜3および比較例1〜3の各ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムについて、裏面保護フィルムとダイシングテープ粘着剤層との間の粘着力を調べた。そのための試料片作製手法および粘着力測定手法は、次のとおりである。
試料片の作製においては、まず、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの裏面保護フィルム側に片面粘着テープ(商品名「BT-315」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた。この貼合わせは、実施例1〜3および比較例2の各ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムについては120℃で2時間の加熱処理を施した後に行い、比較例1,3の各ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムについては加熱処理を施さずに行った。次に、裏面保護フィルム側に片面粘着テープを伴うダイシングテープ一体型裏面保護フィルムのダイシングテープの粘着剤層に対してその基材越しに300mJ/cm2の紫外線を照射して当該粘着剤層を硬化させた後、当該積層体から、幅20mm×長さ100mmのサイズの試料片を切り出した。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAGS-J」,株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°および引張速度300mm/分の条件で当該試料片について剥離試験を行い、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムとダイシングテープ粘着剤層との間を剥離するのに要する力を測定した。そして、試料片の長さ方向における60mmの中央部分での剥離力の平均値を、測定に係る粘着力(N/20mm)とした。その結果を表1に掲げる。また、ダイシングテープ粘着剤層からのフィルム付チップのピックアップ性については、この粘着力が0.1N/20mm以下である場合を良(○)と評価し、0.1N/20mmより大きい場合を不良(×)と評価した。この評価も表1に掲げる。
〈DSC発熱量〉
実施例1〜3および比較例1〜3の各ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの裏面保護フィルムについて、示差走査熱量計(商品名「DSC Q2000」,TAインスツルメント社製)を使用して行う示差走査熱量測定における50〜200℃の範囲内での発熱量を調べた。測定に供される試料片(直径3mm,質量10mg)は、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムから剥離された裏面保護フィルムから切り出されたものである。また、測定においては、測定環境を窒素雰囲気下とし、測定温度範囲を−20℃から300℃とし、昇温速度を10℃/分とした。そして、測定によって得られたDSCチャートにおいて50〜200℃の範囲に現れている発熱ピークに関し、当該チャートの50〜200℃におけるベースライン以上の熱量の積算値を発熱量(J/g)として求めた。その結果を表1に掲げる。
〈ブレードダイシングにおけるチップ側面の亀裂抑制性〉
実施例1〜3および比較例1〜3の各ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムを使用して半導体ウエハのブレードダイシングを行った場合における、チップ側面の亀裂の有無および程度を調べた。具体的には次のとおりである。
まず、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの裏面保護フィルムに対し、裏面研磨処理済みのシリコンミラーウエハ(直径8インチ,厚さ200μm)を貼り合わせた。この貼り合わせは、温度75℃、圧力0.15MPa、および貼合わせ速度10mm/秒のロール圧着で行った。貼り合わせの後、実施例1〜3および比較例2のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの場合には120℃で2時間の加熱処理を行った(比較例1,3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの場合には、貼り合わせ後に加熱処理を行わなかった)。次に、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルム上のウエハについて、ダイシング装置(商品名「DFD-6361」,株式会社ディスコ製)を使用して行うブレードダイシングにより、2mm×2mmのサイズのチップに個片化した。このブレードダイシングにおいては、まず、Z1ブレード(商品名「203O-SE 27HCDD」,株式会社ディスコ製)によってブレード回転数40000rpmの条件でウエハ表面からウエハをその厚さ半分の深さまで切削し、その後、Z2ブレード(商品名「203O-SE 27HCBB」,株式会社ディスコ製)によってブレード回転数45000rpmの条件でダイシングテープ粘着剤層をその厚さ半分の深さまで切削した。こうして個片化された各半導体チップは、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムの裏面保護フィルムに由来する小片の裏面保護フィルムを伴う。次に、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおけるダイシングテープの基材の側から粘着剤層に対して積算照射光量300mJ/cm2の紫外線を照射して粘着剤層を硬化させた後、ダイシングテープからフィルム付チップをピックアップした。そして、ピックアップされたフィルム付チップにおける四つの側面のうち、最後に形成された切断面としての側面を、顕微鏡(商品名「デジタルマイクロスコープ VHX500」,株式会社キーエンス製)を使用して観察し、亀裂の形成位置の深さを計測した。ブレードダイシングにおける亀裂抑制性に関しては、チップとそれに密着している裏面保護フィルムとの界面からの亀裂形成位置の深さが、チップの厚さ全体の15%未満である場合を優(◎)と評価し、チップの厚さ全体の15%以上30%未満である場合を良(○)と評価し、チップの厚さ全体の30%以上50%未満である場合を可(△)と評価し、チップの厚さ全体の50%以上である場合を不可(×)と評価した。その結果を表1に掲げる。
[評価]
実施例1〜3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、120℃で2時間の加熱処理を経た場合、上述の動的粘弾性測定にて測定される80℃での引張貯蔵弾性率が0.5GPa以上であった。実施例1〜3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおいて、裏面保護フィルムとダイシングテープ粘着剤層との間は、上述の剥離試験において0.1N/20mm以下の粘着力を示した。実施例1〜3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムにおける裏面保護フィルムは、上述の示差走査熱量測定における50〜200℃の範囲内での発熱量が40J/g以下であった。このような実施例1〜3のダイシングテープ一体型裏面保護フィルムによると、ブレードダイシングにおいてチップ側面に亀裂が生ずるのを抑制することができるとともに、ダイシングテープからの裏面保護フィルム付チップの良好なピックアップを実現することができる。