JP2019006839A - 樹脂組成物、キット、成形品の製造方法および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い靱性を達成しつつ、光透過性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたキット、成形品の製造方法および成形品の提供。【解決手段】半芳香族ポリアミド樹脂Aと、脂肪族ポリアミド樹脂Bと、ガラス繊維と、光透過性色素とを含み、前記半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド6およびポリアミド610から選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物であって、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bを、樹脂組成物の5〜25質量%の割合で含み、前記ガラス繊維は、樹脂組成物の25〜60質量%の割合で含む、樹脂組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、キット、成形品の製造方法および成形品に関する。特に、レーザー溶着用に適した樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたキット、成形品の製造方法および成形品に関する。本発明の樹脂組成物は、レーザー溶着用の光を透過する側の樹脂組成物(光透過性樹脂組成物)として主として用いられる。
代表的なエンジニアリングプラスチックであるポリアミド樹脂は、加工が容易であり、さらに、機械物性、電気特性、耐熱性、その他の物理的・化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気・電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。最近では形状の複雑な部品もポリアミド樹脂で製造されるようになって来ており、例えば、インテークマニホールドのような中空部を有する部品などの接着には、各種溶着技術、例えば、接着剤溶着、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、射出溶着、レーザー溶着技術などが使用されている。
しかしながら、接着剤による溶着は、硬化するまでの時間的ロスに加え、周囲の汚染などの環境負荷の問題がある。超音波溶着、熱板溶着などは、振動、熱による製品へのダメージや、摩耗粉やバリの発生により後処理が必要になるなどの問題が指摘されている。また、射出溶着は、特殊な金型や成形機が必要である場合が多く、さらに、材料の流動性が良くないと使用できないなどの問題がある。
一方、レーザー溶着は、レーザー光に対して透過性(非吸収性、弱吸収性とも言う)を有する樹脂部材(以下、「透過樹脂部材」ということがある)と、レーザー光に対して吸収性を有する樹脂部材(以下、「吸収樹脂部材」ということがある)とを接触し溶着して、両樹脂部材を接合させる方法である。具体的には、透過樹脂部材側からレーザー光を接合面に照射して、接合面を形成する吸収樹脂部材をレーザー光のエネルギーで溶融させ接合する方法である。レーザー溶着は、摩耗粉やバリの発生が無く、製品へのダメージも少なく、さらに、ポリアミド樹脂自体、レーザー透過率が比較的高い材料であることから、ポリアミド樹脂製品のレーザー溶着技術による加工が、最近注目されている。
上記透過樹脂部材は、通常、光透過性樹脂組成物を成形して得られる。このような光透過性樹脂組成物として、特許文献1には、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)23℃の屈折率が、1.560〜1.600である強化充填材1〜150質量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、前記(A)ポリアミド樹脂の少なくとも1種を構成する、少なくとも1種のモノマーが芳香環を含有することを特徴とする、レーザー溶着用ポリアミド樹脂組成物が記載されている。特許文献1の実施例では、ポリアミドMXD6またはポリアミド6I/6Tと、ポリアミド66またはポリアミド6とのブレンド物に、ガラス繊維と、着色剤を配合した樹脂組成物が開示されている。
特開2008−308526号公報
ここで、樹脂組成物(成形品)の弾性率を高めるために、ガラス繊維を配合することが行われている。さらに、靱性を高める場合には、耐衝撃改良剤(エラストマー)を配合することが考えられる。しかしながら、耐衝撃改良剤を配合すると、光が透過しなくなってしまう。本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、高い靱性を達成しつつ、光透過性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたキット、成形品の製造方法および成形品を提供することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、所定の半芳香族ポリアミド樹脂と、所定の脂肪族ポリアミド樹脂をブレンドし、かつ、ガラス繊維の含有量を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>〜<10>により、上記課題は解決された。
<1>半芳香族ポリアミド樹脂Aと、脂肪族ポリアミド樹脂Bと、ガラス繊維と、光透過性色素とを含み、前記半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド6およびポリアミド610から選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物であって、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bを、樹脂組成物の5〜25質量%の割合で含み、前記ガラス繊維は、樹脂組成物の25〜60質量%の割合で含む、樹脂組成物。
<2>前記樹脂組成物のL値が5.0以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド610を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記ガラス繊維を樹脂組成物の35〜55質量%の割合で含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記キシリレンジアミンが、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンを含む、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>さらに、タルクを含む、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8><1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキット。
<9><1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
<10><1>〜<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物、または、<8>に記載のキットを成形してなる成形品。
本発明により、高い靱性を達成しつつ、光透過性に優れた樹脂組成物、ならびに、前記樹脂組成物を用いたキット、成形品の製造方法および成形品を提供可能になった。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂Aと、脂肪族ポリアミド樹脂Bと、ガラス繊維と、光透過性色素とを含み、前記半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド6およびポリアミド610から選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物であって、前記脂肪族ポリアミド樹脂Bを、樹脂組成物の5〜25質量%の割合で含み、前記ガラス繊維は、樹脂組成物の25〜60質量%の割合で含む、樹脂組成物であることを特徴とする。このように、所定の半芳香族ポリアミド樹脂Aと脂肪族ポリアミド樹脂Bを組み合わせることにより、高い靱性を達成しつつ、光透過性に優れた樹脂組成物が得られる。ポリアミド610やポリアミド6は、不透明な樹脂として知られており、かかるポリアミド樹脂を配合することによって、得られる成形品の靱性の改良に加え、光透過性が向上することは驚くべきことである。この理由は推定ではあるが、これらのポリアミドを添加したことにより、モルフォロジーが変化し、球晶の大きさと分散状態が変わったことにより高い光透過性の達成に寄与したと考えられる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<半芳香族ポリアミド樹脂A>
本発明で用いる半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
半芳香族ポリアミド樹脂Aは、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上が、炭素数が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
前記キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンの少なくとも一方を含むことが好ましく、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンを含むことがより好ましく、パラキシリレンジアミン30〜80モル%およびメタキシリレンジアミン70〜20モル%を含むことがさらに好ましく、パラキシリレンジアミン60〜80モル%およびメタキシリレンジアミン40〜20モル%を含むことが一層好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂Aの原料のジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂の原料のジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、セバシン酸が好ましい。
上記炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸等の炭素数7以下のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、成形加工性、バリア性の点から、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。
ジカルボン酸成分として、炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の割合で用いる。
本発明で用いる半芳香族ポリアミド樹脂Aは、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記キシリレンジアミンは、パラキシリレンジアミン30〜80モル%およびメタキシリレンジアミン70〜20モル%を含み、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来することが好ましい。
さらに、本発明で用いる、半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。これらの半芳香族ポリアミド樹脂Aに含まれていてもよい、ジアミン成分およびジカルボン酸成分以外の成分は、ポリアミド樹脂の5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明で用いる半芳香族ポリアミド樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が6,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは8,000〜28,000であり、さらに好ましくは9,000〜26,000であり、一層好ましくは10,000〜24,000であり、より一層好ましくは11,000〜22,000である。このような範囲であると、耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH2](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH2])
本発明で用いる半芳香族ポリアミド樹脂Aは、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が、好ましくは1.8〜3.1である。分子量分布は、より好ましくは1.9〜3.0、さらに好ましくは2.0〜2.9である。分子量分布をこのような範囲とすることにより、機械物性に優れた成形品が得られやすい傾向にある。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量および反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
分子量分布は、GPC測定により求めることができ、具体的には、測定装置として東ソー社製「HLC−8320GPC」、カラムとして、東ソー社製「TSK gel Super HM−H」2本を使用し、溶離液として、トリフルオロ酢酸ナトリウムのヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)溶液(濃度10mmol/L)を用い、樹脂濃度0.02質量%、カラム温度40℃、流速0.3mL/分、屈折率検出器(RI)の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成する。
本発明においては、半芳香族ポリアミド樹脂Aの融点は、150〜310℃であることが好ましく、180〜300℃であることがより好ましく、190〜300℃であることがさらに好ましい。
また、半芳香族ポリアミド樹脂Aのガラス転移点は、50〜100℃が好ましい。
なお、本発明における融点とは、DSC(示差走査熱量測定)法により観測される昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度をいう。ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。
これらの測定には、DSC測定器を用い、試料(樹脂)量は約3mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融した樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点、融点を求めることができる。DSC測定器としては、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)製、DSC−60を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂Aを樹脂組成物の20〜50質量%の割合で含むことが好ましい。
<脂肪族ポリアミド樹脂B>
本発明の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂Bを樹脂組成物の5〜25質量%の割合で含む。本発明では、脂肪族ポリアミド樹脂Bを、樹脂組成物の8質量%以上の割合で含むことが好ましく、12質量%以上の割合で含むことがより好ましく、15質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、また、22質量%以下の割合で含むことが好ましい。このような範囲とすることにより、得られる成形品の光線透過率が顕著に向上する傾向にある。
前記脂肪族ポリアミド樹脂Bは、ポリアミド6およびポリアミド610から選択される少なくとも1種であり、ポリアミド610を含むことが好ましい。
ポリアミド6とは、ε-カプロラクタムの開環重合体であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の構成単位を含んでいてもよい。具体的には、上述した半芳香族ポリアミド樹脂Aのところで述べたジアミン成分およびジカルボン酸成分、ラウロラクタム等のε-カプロラクタム以外のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。これらの共重合成分は、ポリアミド6の5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。ポリアミド610についても、同様である。
<半芳香族ポリアミド樹脂Aと脂肪族ポリアミド樹脂Bのブレンド>
半芳香族ポリアミド樹脂Aと脂肪族ポリアミド樹脂Bのブレンド比(質量比)は、90〜50:10〜50であることが好ましく、90〜52:10〜48であることがより好ましく、70〜52:30〜48であることがさらに好ましく、65〜54:35〜46であることが一層好ましく、60〜54:40〜46であることがより一層好ましい。
上記半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂Bは、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂B以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。本発明では、樹脂組成物は、上記半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂B以外のポリアミド樹脂を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、上記半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂B以外のポリアミド樹脂の合計量が、上記ポリアミド樹脂成分(半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂B)の5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
<他の樹脂成分>
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。
他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂以外の樹脂成分を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下、特には、0.4質量%以下とすることもできる。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂Bの合計で、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の95質量%以上を占めることが好ましい。
特に、本発明の樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、脂肪族ポリアミド樹脂Bの配合量の5質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下、特には、0.4質量%以下とすることもできる。
<ガラス繊維>
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を含む。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
本発明の樹脂組成物に用いるガラス繊維は、単繊維または単繊維を複数本撚り合わせたものであってもよい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、カット長(数平均繊維長が)1〜10mmである「チョップドストランド」、粉砕長さ(数平均繊維長)10〜500μmである「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
また、本発明ではガラス繊維として、異形断面形状を有するものも好ましい。この異形断面形状とは、繊維の長さ方向に直角な断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率が、例えば、1.5〜10であり、中でも2.5〜10、さらには2.5〜8、特に2.5〜5であることが好ましい。かかる扁平ガラスについては、特開2011−195820号公報の段落0065〜0072の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
本発明におけるガラス繊維は、ガラスビーズであってもよい。ガラスビーズとは、外径10〜100μmの球状のものであり、例えば、ポッターズ・バロティーニ社より、商品名「EGB731」として市販されており、容易に入手可能である。また、ガラスフレークとは、厚さ1〜20μm、一辺の長さが0.05〜1mmの燐片状のものであり、例えば、日本板硝子社より、「フレカ」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。
本発明で用いるガラス繊維は、特に、重量平均繊維径が1〜20μm、カット長(数平均繊維長)が1〜10mmのガラス繊維が好ましい。ここで、ガラス繊維の断面が扁平の場合、重量平均繊維径は、同じ面積の円における重量平均繊維径として算出する。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。この場合の集束剤としては、ウレタン系集束剤が好ましい。
本発明の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、樹脂組成物中、25質量%以上であり、28質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であってもよい。さらに、本発明の樹脂組成物におけるガラス繊維の含有量は、樹脂組成物中、60質量%以下であり、55質量%以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物では、脂肪族ポリアミド樹脂Bとガラス繊維の質量比率が、1:1.0〜6.0であることが好ましい。この様な比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
<光透過性色素>
本発明で用いる光透過性色素は、通常、黒色色素であり、具体的には、ニグロシン、ナフタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリノン、ペリレン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、スクエア酸誘導体、およびインモニウム染料等が挙げられる。
市販品としては、オリエント化学工業社製の着色剤であるe−BIND LTW−8731H、e−BIND LTW−8701H等が例示される。
本発明の樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、ポリアミド樹脂成分100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましく、0.03質量部以上であることが一層好ましく、0.04質量部以上であってもよい。また、光透過性色素の含有量の上限値は、ポリアミド樹脂成分100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがさらに好ましく、1質量部以下であることが一層好ましく、0.2質量部以下、0.1質量部以下、0.06質量部以下であってもよい。光透過性色素は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、樹脂組成物の0.0001質量%以下であることをいう。
<タルク>
本発明の樹脂組成物はタルクを含んでいてもよい。本発明では、タルクを配合することにより、結晶化を促進することができる。
本発明の樹脂組成物における、タルクの含有量は、樹脂組成物に対し、0.05〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.15〜5質量%であることがさらに好ましく、0.2〜1.0質量%であることが特に好ましい。タルクは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物では、光透過性色素とタルクの質量比率が、10〜3:1であることが好ましく、8〜4:1であることがより好ましく、8〜5:1であることがさらに好ましい。この様な比率とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
<離型剤>
本発明の樹脂組成物は、離型剤をさらに含有していてもよい。離型剤は、主に、樹脂組成物の成形時の生産性を向上させるために使用されるものである。離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸アミド系、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの離型剤の中では、特に、カルボン酸アミド系化合物が好ましい。
脂肪族カルボン酸アミド系としては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸および/または多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
離型剤の詳細は、特開2016−196563号公報の段落0037〜0042の記載および特開2016−078318号公報の段落0048〜0058の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
離型剤の含有量は、配合する場合、樹脂組成物に対して、下限値は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、また、上限値は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。このような範囲とすることによって、離型性を良好にすることができ、また、射出成形時の金型汚染を防止することができる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
<他の成分>
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、ガラス繊維以外のフィラー、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
尚、本発明の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、樹脂成分および光透過性色素、さらには、ガラス繊維や他の添加剤の含有量等が調整される。
本発明の樹脂組成物は、厚さ3.0mmの試験片に成形したときの、ISO13468−1およびISO13468−2に従った、波長800nmにおける光線透過率が31%以上であることが好ましく、32%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましく、37%以上であることが一層好ましい。前記光線透過率の上限値は特に定めるものではないが、例えば、45%以下、40%以下であっても、十分に実用レベルである。前記光線透過率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明の樹脂組成物は、また、厚さ3.0mmの試験片に成形したときの、ISO13468−1およびISO13468−2に従った、波長1000nmにおける光線透過率が38%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、42%以上であることがさらに好ましく、45%以上であることが一層好ましい。前記光線透過率の上限値は特に定めるものではないが、例えば、60%以下、55%以下、50%以下であっても、十分に実用レベルである。前記光線透過率は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明の樹脂組成物は、厚さ2mmの試験片に成形したときの、L値が5.0以下であることが好ましく、4.5以下であることがより好ましい。前記L値の下限値としては、3.5以上であることが好ましい。
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記ポリアミド樹脂成分、ガラス繊維および必要に応じて配合される他の添加剤は、混練機に一括して供給してもよいし、ポリアミド樹脂成分に他の配合成分を順次供給してもよい。ガラス繊維は、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
本発明では、光透過性色素は、ポリアミド樹脂等で、マスターバッチしたものをあらかじめ調製し、上記半芳香族ポリアミド樹脂Aおよび脂肪族ポリアミド樹脂Bと混練して、本発明における樹脂組成物を得ることができる。
本発明の樹脂組成物を用いた成形品の製造方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形方法、すなわち、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形などの成形方法を適用することができる。この場合、特に好ましい成形方法は、流動性の良さから、射出成形である。射出成形に当たっては、樹脂温度を250〜300℃にコントロールするのが好ましい。
<キット>
本発明は、また、上記樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキットを開示する。本発明のキットは、レーザー溶着による成形品の製造に好ましく用いられる。
すなわち、キットに含まれる樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、光透過性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。一方、光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材となる。
<<光吸収性樹脂組成物>>
本発明で用いる光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含み、さらに、無機フィラーを含んでいてもよい。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示され、樹脂組成物との相溶性が良好な点から、特に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
光吸収性樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂としては、その種類等を定めるものではなく、上述のポリアミド樹脂(半芳香族ポリアミド樹脂Aまたは脂肪族ポリアミド樹脂B、およびこれらの混合物)を用いてもよいし、用いなくてもよい。
無機フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ、タルク、カーボンブラックおよびレーザーを吸収する材料をコートした無機粉末等のレーザー光を吸収しうるフィラーが例示され、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、上記本発明の樹脂組成物に配合してもよいガラス繊維と同義であり、好ましい範囲も同様である。
光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲、すなわち、本発明では、波長800nm〜1100nmの範囲に極大吸収波長を持つものであり、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。これらの光吸収性色素は2種以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の含有量は、樹脂成分100質量部に対し0.01〜30質量部であることが好ましい。
<<レーザー溶着方法>>
次に、レーザー溶着方法について説明する。本発明では、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品(透過樹脂部材)と、上記光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を接着剤を用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明の樹脂組成物の成形品は、ガラス繊維を含有しているにも関わらずレーザー光に対する透過性が高いので、透過樹脂部材として好ましく用いることができる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
レーザー溶着に用いるレーザー光源としては、光吸収性色素の光の吸収波長に応じて定めることができ、波長800〜1100nmの範囲のレーザーが好ましく、例えば、半導体レーザーまたはファイバーレーザーが利用できる。
より具体的には、例えば、透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着する場合、まず、両者の溶着する箇所同士を相互に接触させる。この時、両者の溶着箇所は面接触が望ましく、平面同士、曲面同士、または平面と曲面の組み合わせであってもよい。次いで、透過樹脂部材側からレーザー光を照射する。この時、必要によりレンズを利用して両者の界面にレーザー光を集光させてもよい。その集光ビームは、透過樹脂部材中を透過し、吸収樹脂部材の表面近傍で吸収されて発熱し溶融する。次にその熱は熱伝導によって透過樹脂部材にも伝わって溶融し、両者の界面に溶融プールを形成し、冷却後、両者が接合する。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い接合強度を有する。なお、本発明における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
本発明でレーザー溶着して得られた成形品は、機械的強度が良好で、高い溶着強度を有し、レーザー光照射による樹脂の損傷も少ないため、種々の用途、例えば、各種保存容器、電気・電子機器部品、オフィスオートメート(OA)機器部品、家電機器部品、機械機構部品、車両機構部品などに適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品(各種タンク、インテークマニホールド部品、カメラ筐体など)、車両用電装部品(各種コントロールユニット、イグニッションコイル部品など)、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品などに好適に用いることができる。特に、本発明の樹脂組成物およびキットは、車載カメラモジュールに適している。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
原材料
<ポリアミド樹脂>
MP10:後述の下記合成例に従って合成したもの。
ポリアミド610:東レ社製、アミランCM2001
<<MP10の合成例>>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が7:3の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。
<ガラス繊維>
T756H:日本電気硝子(株)製、ECS03T−756H、重量平均繊維径10.5μm、カット長3mm
<タルク>
ミクロンホワイト#5000S:林化成社製
<離型剤>
CS8CP:日東化成工業社製
<光透過性色素>
LTW−8701H:オリエント化学工業社製、e−BIND LTW−8701H、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ
<実施例1>
<<コンパウンド>>
後述する下記表1に示す組成となるように(表1の各成分は質量%表記である)、ポリアミド樹脂成分とタルクと離型剤と光透過性色素をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−W−1−MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE−V−1B−MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、樹脂組成物ペレットを得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
<<曲げ強さおよび曲げ弾性率>>
上述の製造方法で得られた樹脂ペレットを120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型温度は130℃にて実施した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。
<<破壊点変位>>
東洋精機製作所社製全自動曲げ試験システム(型式B−2)を用いたISO178規格における曲げ試験を行い、試験片の破壊点変位(単位:mm)を測定した。
<<光線透過率>>
ISO13468−1およびISO13468−2に従い光線透過率を測定した。具体的には、上記で得られた樹脂組成物ペレットを、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製、SE−50D)を用いて、光線透過率測定用の試験片(3.0mm厚)を作製した。光線透過率は、可視・紫外分光光度計(島津製作所社製、UV−3100PC)を用いて測定し、波長1000nmおよび800nmにおける光線透過率(単位:%)をそれぞれ測定した。
<<シャルピー衝撃強さ>>
上述の方法で得られたISO引張り試験片を用い、ISO179−1およびISO179−2に準拠し、23℃の条件で、ノッチ有シャルピー衝撃強さを測定した。シャルピー衝撃強さの単位は、kJ/m2で示した。
<<樹脂組成物のL値>>
日本電色工業社製色差計SpectroPhotometerSE6000を用い、C光源、視野2°で透過法により、上述の方法で得られた光線透過率測定用の試験片の2mm厚部分を測定した。
実施例2、比較例1〜4
上記実施例1において、表1に示す通り変更し、他は同様に行った。
Figure 2019006839
上記結果から明らかなとおり、特定の半芳香族ポリアミド樹脂とガラス繊維と光透過性色素を含む組成物において、特定の脂肪族ポリアミド樹脂を配合した場合(実施例1、2)、脂肪族ポリアミド樹脂を配合しない場合(比較例1〜3)と比較して、靱性を改良しつつ、かつ、高い光線透過率を達成できた。また、ガラス繊維の含有量が多い場合(比較例3、4)、高い光線透過率が達成できなかった。脂肪族ポリアミド樹脂を配合することによって、光線透過率が顕著に向上することは極めて驚くべきことである。
実施例1に記載の樹脂組成物から、光透過性色素を除き、カーボンブラックをポリアミド樹脂成分100質量部に対し、0.6質量部配合した光吸収性樹脂組成物を調製した。得られた光吸収性樹脂組成物と、実施例1に記載の樹脂組成物を、特開2008−308526号公報の段落0066の記載に従ってレーザー溶着したところ、両者がレーザー溶着したことが確認できた。

Claims (10)

  1. 半芳香族ポリアミド樹脂Aと、脂肪族ポリアミド樹脂Bと、ガラス繊維と、光透過性色素とを含み、
    前記半芳香族ポリアミド樹脂Aは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数8〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、
    前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド6およびポリアミド610から選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物であって、
    前記脂肪族ポリアミド樹脂Bを、樹脂組成物の5〜25質量%の割合で含み、
    前記ガラス繊維は、樹脂組成物の25〜60質量%の割合で含む、樹脂組成物。
  2. 前記樹脂組成物のL値が5.0以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記脂肪族ポリアミド樹脂Bがポリアミド610を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ガラス繊維を樹脂組成物の35〜55質量%の割合で含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記キシリレンジアミンが、パラキシリレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上がセバシン酸に由来する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. さらに、タルクを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキット。
  9. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物、または、請求項8に記載のキットを成形してなる成形品。
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