JP2019006629A - 単結晶ダイヤモンドの製造方法、単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶ダイヤモンド基板 - Google Patents

単結晶ダイヤモンドの製造方法、単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶ダイヤモンド基板 Download PDF

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Abstract

【課題】種基板の取り扱いが容易であり、生産性が高い単結晶ダイヤモンドの製造方法を提供する。【解決手段】単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で種基板を熱処理することにより、金属膜によって種基板を侵食させて、主面に溝を形成する工程と、溝を形成した後に、主面において金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶ダイヤモンドの製造方法、単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶ダイヤモンド基板に関する。特に、本発明は、切削工具、光学部品、半導体材料、放熱部品などに用いられる単結晶ダイヤモンドの製造方法、単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶ダイヤモンド基板に関する。
従来、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて単結晶ダイヤモンド基板が製造されている。たとえば、種基板の主面の上に単結晶ダイヤモンド層をエピタキシャル成長させることにより、種基板の主面の面方位と同じ面方位の主面を有する単結晶ダイヤモンド基板が製造される(特開平11−1392号公報(特許文献1)、特開2005−225746号公報(特許文献2)および特開2003−277183号公報(特許文献3)参照)。
単結晶ダイヤモンド基板の主面の面方位は、単結晶ダイヤモンド基板が適用される形態に応じて適宜選択される。一般に、単結晶ダイヤモンドは、種基板の(100)面の上に成長させやすい。そのため、(100)面以外の面方位を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を得るためには、種基板の(100)面の上に単結晶ダイヤモンドを厚く成長させ、その後に所望の面方位に切断する必要がある。この場合、加工の手間がかかる。
特開2013−53051号公報(特許文献4)には、上記の加工の手間を省くために、種基板の主面に複数の平行な線状の溝をレーザーで形成し、当該主面上に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、複数の単結晶ダイヤモンド基板をそれぞれの主面間に介在する接合層によって接合したダイヤモンド複合体が得られる。複数の単結晶ダイヤモンド基板の主面の面方位は、種基板の主面の面方位と異なる。接合層は、多結晶ダイヤモンドまたは非ダイヤモンドのカーボンで構成され、単結晶ダイヤモンド基板同士をゆるく接合している。そのため、単結晶ダイヤモンド基板同士を容易に分離することができる。
特開平11−1392号公報 特開2005−225746号公報 特開2003−277183号公報 特開2013−53051号公報 特開2007−191362号公報
特許文献4に記載の製造方法では、複数の単結晶ダイヤモンド基板の間に単結晶ダイヤモンドではない接合層を形成させるために、種基板に形成する溝の幅および深さを適宜調整する必要がある。この際、溝形成後の種基板の搬送時に種基板が割れないように注意する必要があり、種基板の取り扱いが困難となる。
また、単結晶ダイヤモンドではない接合層を取り除く工程が必要となるため、生産性が低下しやすい。
以上の点に鑑み、本開示は、種基板の取り扱いが容易であり、生産性が高い単結晶ダイヤモンドの製造方法、ならびに、当該製造方法により製造される単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶タイヤモンド基板を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で種基板を熱処理することにより、金属膜によって種基板を侵食させて、主面に溝を形成する工程と、溝を形成した後に、主面において金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。
本開示の一態様に係る単結晶ダイヤモンド複合体は、主面に溝が形成された、単結晶ダイヤモンドの種基板と、主面における溝を除く部分の上に形成された単結晶ダイヤモンド層とを備える。単結晶ダイヤモンド複合体は、種基板における溝の表面に、炭素が固溶された金属膜を含む。
本開示の一態様に係る単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含む。一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察される。第1成長縞は、少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列される。少なくとも一方の主面において、第1方向の一方端側に観察される第1成長縞は直線状であり、第1方向の他方端側に観察される第1成長縞は第1方向の一方端から他方端に向いた凸状である。少なくとも一方の主面における第1方向の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。
本開示の別の態様に係る単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含む。一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察される。第1成長縞は、少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列される。第1方向に平行であり、かつ一対の主面に垂直な面で単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞が観察される。第2成長縞は、断面内の第2方向に沿って配列される。断面において、第2方向の一方端側に観察される第2成長縞は直線状であり、第2方向の他方端側に観察される第2成長縞は第2方向の一方端から他方端に向いた凸状である。断面における第2方向の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。
上記によれば、種基板の取り扱いが容易であり、生産性が高い単結晶ダイヤモンドの製造方法、ならびに、当該製造方法により製造される単結晶ダイヤモンド複合体および単結晶タイヤモンド基板を提供することができる。
本実施形態に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法を模式的に示す図である。 対象面の基準面に対するオフ方向およびオフ角を示す図である。 マイクロ波プラズマ装置の一例を示す図である。 単結晶ダイヤモンドの製造方法の変形例を模式的に示す図である。 本実施形態に係る単結晶ダイヤモンド複合体の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る単結晶ダイヤモンド基板の一例を示す斜視図である。 第1成長縞が観測される主面を示す平面図である。 第1方向に平行であり、かつ一対の主面に垂直な平面で単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面を示す図である。 種基板に金属膜を形成せずに、単結晶ダイヤモンド層を厚み0.5mm以上成長させたときの単結晶ダイヤモンド層の断面に観察される一部の成長縞を示す図である。 従来の製造方法における活性種の流れを示す図である。 本実施形態に係る製造方法における活性種の流れを示す図である。 図11とは別の方向から見たときの活性種の流れを示す図である。 切削工具の一例を示す図である。 切削工具の先端を示す平面図である。 図14に示すX−X線に沿った矢視断面図である。 単結晶ダイヤモンド基板の別の例を示す斜視図である。
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。なお、本明細書において「M〜N」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちM以上N以下)を意味し、Mにおいて単位の記載がなく、Nにおいてのみ単位が記載されている場合、Mの単位とNの単位とは同じである。
〔1〕本開示に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で種基板を熱処理することにより、金属膜によって種基板を侵食させて、主面に溝を形成する工程と、溝を形成した後に、主面において金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。ここで、「線状」とは、長さに比べて幅が限りなく狭い線だけでなく、その比(長さ/幅)が2以上の帯状のものも含まれる。
上記の構成によれば、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で種基板を熱処理することにより、種基板の金属膜と接する部分の炭素は、金属膜中に固溶される。金属膜中に固溶された炭素は、金属膜表面に移動し、周囲のガス中に放出される。これにより、金属膜が形成された部分の種基板が侵食され、種基板に溝が形成される。その後、金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法を用いたエピタキシャル成長により単結晶ダイヤモンド層が形成される。ここで、溝を形成する工程と単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを同じチャンバ内で実施することが可能である。そのため、種基板に対して溝を形成してから、当該種基板をチャンバ内に搬送させる必要がない。その結果、溝を形成した後の種基板の搬送時の割れを気にする必要がなく、種基板の取り扱いが容易となる。さらに、特許文献4に記載の製造方法に比べて薄い種基板を用いることができ、種基板の選択肢が広がる。また、上記の溝の深さを種基板の厚みの1/10以下に制御することも可能である。この場合では、基板の割れの危惧が極端に小さくなり、種基板の取り扱いが容易となる。このとき、溝の形成と単結晶ダイヤモンド層の形成を必ずしも同じチャンバーで行う必要はない。
水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で前記種基板を熱処理する方法としては、水素プラズマまたは酸素原子を含むプラズマを用いることが簡便である。なお、溝を形成するガス組成と単結晶ダイヤモンド層を形成するガス組成とが一致している必要はない。また、プラズマのない場合は、雰囲気に水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で、種基板または当該ガスを加熱し、種基板に熱を供給すればよい。プラズマの有無にかかわらず、熱反応によって溝が形成されるため、種基板に供給される熱が大きいほど、溝がより形成されやすくなる。
さらに、種基板の主面に形成される溝の表面には金属膜が存在する。そのため、当該溝の上への単結晶ダイヤモンドのエピタキシャル成長が抑制される。特許文献4のようにダイヤモンドが露出している溝の場合には、溝が接合層により埋まり、当該接合層を取り除く工程が必要となる。しかしながら、上記の構成によれば、接合層が形成されにくく、接合層を取り除く工程が不要となるため、生産性を高めることができる。
以上により、種基板の取り扱いが容易であり、生産性が高い単結晶ダイヤモンドの製造方法を実現できる。
〔2〕金属膜を線状に形成する工程において、領域が矩形状となるように、金属膜を直線状または格子状に形成する。主面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下である。主面の(001)面に対するオフ方向を主面に投影した面内オフ方向と、領域の長辺とのなす角度は、長辺と領域の対角線とで形成される劣角以下である。これにより、種基板の主面上に単結晶ダイヤモンド層を効率よく厚く成長させることができる。上述したように、「線状」には、長さ/幅が2以上の帯状のものも含まれる。
〔3〕金属膜を線状に形成する工程において、領域が矩形状となるように、金属膜を直線状または格子状に形成する。単結晶ダイヤモンド層の厚みは、領域の短辺長よりも長い。これにより、単結晶ダイヤモンド層によって構成される基板(単結晶ダイヤモンド基板)の主面の面方位は、種基板の主面の面方位と異なる。すなわち、種基板の主面の面方位と異なる面方位の主面を有する単結晶ダイヤモンド基板を容易に製造することができる。上述したように、「線状」には、長さ/幅が2以上の帯状のものも含まれる。
〔4〕金属膜は、強磁性を示す金属を含む。金属膜は、単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる初期の段階においても、種基板を侵食する。そのため、単結晶ダイヤモンド層と種基板との境界付近にも金属膜が回り込む。これにより、金属膜に含まれる金属が示す強磁性を利用して、単結晶ダイヤモンド層の向きを判別することができる。
〔5〕単結晶ダイヤモンド層を形成する工程において、主面上に複数の単結晶ダイヤモンド層が形成される。単結晶ダイヤモンドの製造方法は、前記複数の単結晶ダイヤモンド層を互いに分離する工程をさらに備える。分離された単結晶ダイヤモンド層によって基板(単結晶ダイヤモンド基板)を構成することができる。これにより、1つの種基板から、複数の単結晶ダイヤモンド基板を得ることができる。
〔6〕本開示に係る単結晶ダイヤモンド複合体は、主面に溝が形成された、単結晶ダイヤモンドの種基板と、主面における溝を除く部分の上に形成された単結晶ダイヤモンド層とを備える。単結晶ダイヤモンド複合体は、種基板における溝の表面に、炭素が固溶された金属膜を含む。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド複合体は、上記の製造方法によって得られたものである。そのため、種基板の取り扱いが容易であり、単結晶ダイヤモンド複合体の生産性が高い。
〔7〕本開示に係る単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含む。一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察される。第1成長縞は、少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列される。少なくとも一方の主面において、第1方向の一方端側に観察される第1成長縞は直線状であり、第1方向の他方端側に観察される第1成長縞は第1方向の一方端から他方端に向いた凸状である。少なくとも一方の主面における第1方向の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の製造方法において、複数の矩形状の領域の短辺間に位置するように金属膜を形成し、単結晶ダイヤモンド層の厚みを0.5mm以上とすることによって得られる。そのため、種基板の取り扱いが容易であり、単結晶ダイヤモンド基板の生産性が高い。
切削工具の刃先は、曲面に加工されることが多い。上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板を切削工具に適用する場合、刃先の先端の曲がり方を、単結晶ダイヤモンド基板の主面における第1方向の他方端側に観察される凸状の第1成長縞に合わせることができる。これにより、単結晶ダイヤモンド基板における被削材に接触する部分の欠陥量および不純物濃度を均一にすることができる。その結果、結晶状態の微妙な違いによって被削材に筋を付けることが抑制される。さらに、切削時の単結晶ダイヤモンド基板の欠けを抑制できる。
〔8〕単結晶ダイヤモンド基板の表面は、少なくとも一方の主面における第1方向の一方端に交わる側面を含む。第1方向に平行であり、かつ一対の主面に垂直な面で単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞が観察される。第2成長縞は、断面内の第2方向に沿って配列される。断面における第2方向の一方端は、断面と上記の側面との交線である。断面において、第2方向の一方端側に観察される第2成長縞は直線状であり、第2方向の他方端側に観察される第2成長縞は第2方向の一方端から他方端に向いた凸状である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の製造方法において、さらに複数の矩形状の領域の長辺間に位置するように金属膜を形成することによって得られる。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板を切削工具に適用する場合、単結晶ダイヤモンド基板の主面をすくい面とし、断面における第2方向の他方端を含む側面を逃げ面として用いることができる。これにより、断面における第2方向の他方端側に観察される凸状の第2成長縞は、すくい面から逃げ面にかけての角に位置することになる。その結果、すくい面から逃げ面にかけて被削材に接触する刃先部分の欠陥量および不純物濃度を均一にすることができ、結晶状態の微妙な違いによって被削材に筋を付けることが抑制される。さらに、切削時の単結晶ダイヤモンド基板の欠けを抑制できる。
〔9〕上記の側面は、平らな矩形状である。側面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下である。側面の(001)面に対するオフ方向を側面に投影した面内オフ方向と側面の長辺とのなす角度は、長辺と側面の対角線とで形成される劣角以下である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の〔2〕の製造方法によって得られる。そのため、種基板から効率よく製造される。
〔10〕一対の主面間の距離は、第1方向の一方端から他方端に向かうにつれて短くなる。
上記の構成によれば、複数の矩形状の領域の長辺間に位置するように金属膜を形成する場合において、当該金属膜を挟んで製造される2つの単結晶ダイヤモンド基板が製造時に接合されない。これにより、単結晶ダイヤモンド基板を容易に製造することができる。
〔11〕本開示の別の局面に係る単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含む。一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察される。第1成長縞は、少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列される。第1方向に平行であり、かつ一対の主面に垂直な面で単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞が観察される。第2成長縞は、断面内の第2方向に沿って配列される。断面において、第2方向の一方端側に観察される第2成長縞は直線状であり、第2方向の他方端側に観察される第2成長縞は第2方向の一方端から他方端に向いた凸状である。断面における第2方向の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の製造方法において、複数の矩形状の領域の長辺間に位置するように金属膜を形成し、単結晶ダイヤモンド層の厚みを0.5mm以上とすることによって得られる。そのため、種基板の取り扱いが容易であり、単結晶ダイヤモンド基板の生産性が高い。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板を切削工具に適用する場合、単結晶ダイヤモンド基板の主面をすくい面とし、上記の断面における第2方向の他方端を含む側面を逃げ面として用いることができる。これにより、断面における第2方向の他方端側に観察される凸状の第2成長縞は、すくい面から逃げ面にかけての角に位置することになる。その結果、すくい面から逃げ面にかけて被削材に接触する刃先部分の欠陥量および不純物濃度を均一にすることができ、結晶状態の微妙な違いによって被削材に筋を付けることが抑制される。さらに、切削時の単結晶ダイヤモンド基板の欠けを抑制できる。
〔12〕単結晶ダイヤモンド基板の表面は、断面における第2方向の一方端を含む平らな矩形状の側面を含む。側面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下である。側面の(001)面に対するオフ方向を側面に投影した面内オフ方向と側面の長辺とのなす角度は、長辺と側面の対角線とで形成される劣角以下である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の〔2〕の製造方法によって得られる。そのため、種基板から効率よく製造される。
〔13〕一対の主面間の距離は、第2方向の一方端から他方端に向かうにつれて短くなる。
上記の構成によれば、複数の矩形状の領域の長辺間に位置するように金属膜を形成する場合において、当該金属膜を挟んで製造される2つの単結晶ダイヤモンド基板が製造時に接合されない。これにより、単結晶ダイヤモンド基板を容易に製造することができる。
〔14〕単結晶ダイヤモンド基板は、側面の少なくとも一部分に強磁性を示す金属を含む。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の〔4〕の製造方法によって得られる。上記の構成によれば、磁石等を近づけることにより、単結晶ダイヤモンド基板の向きを容易に判別することができる。
〔15〕少なくとも一方の主面の(110)面に対するオフ角は、0度以上20度以下である。
上記の構成の単結晶ダイヤモンド基板は、上記の〔2〕および〔3〕の製造方法によって得られる。そのため、主面が(110)面である単結晶ダイヤモンド基板を容易に得ることができる。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)について説明する。ただし、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお以下の実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わす。
〈単結晶ダイヤモンドの製造方法〉
図1は、本実施形態に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法を模式的に示す図である。図1に示されるように、単結晶ダイヤモンドの製造方法は、種基板30を準備する第1工程と、種基板30に金属膜40を形成する第2工程と、種基板30に溝36を形成する第3工程と、種基板30における金属膜40が形成されていない複数の領域34の上に単結晶ダイヤモンド層50を形成する第4工程と、複数の領域34の上に形成された単結晶ダイヤモンド層50を互いに分離して、単結晶ダイヤモンド基板10を得る第5工程とを含む。なお、単結晶ダイヤモンドの製造方法は、上記の第2〜第4工程を含んでいればよく、第1工程および第5工程を省略してもよい。
《第1工程》
まず、単結晶ダイヤモンドを化学気相成長法によりエピタキシャル成長させるための種基板30を準備する。種基板30は、単結晶ダイヤモンドによって構成される。種基板30として、高温高圧合成法によって製造されたI型単結晶ダイヤモンドまたはII型単結晶ダイヤモンドを用いてもよいし、化学気相成長法によって製造された単結晶ダイヤモンドを用いてもよい。特に化学気相成長法によって製造された単結晶ダイヤモンドを種基板30として用いた場合、種基板30とエピタキシャル成長により得られる単結晶ダイヤモンド層50との物性の差が小さくなるので好ましい。
種基板30の厚みは、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。これにより、種基板30のハンドリング時の変形または損傷を抑制できる。種基板30の厚みの上限は特に限定されるものではないが、種基板30の製造コストを考慮し、500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることが好ましい。
種基板30の主面32上に単結晶ダイヤモンド層50を効率よく厚く形成するために、種基板30の主面32は(001)面であることが好ましい。ここで、「主面」とは、基板の表面における最も面積の大きい面である。また、単結晶ダイヤモンドにおいて、「(001)面」は、「(100)面」および「(010)面」と等価である。単結晶ダイヤモンド層50の結晶の均質性をより高めるために、種基板30の主面32の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であることが好ましい。
種基板30の主面32の(001)面に対するオフ方向は、第5工程により得られる単結晶ダイヤモンド基板10の主面11の面方位に応じて設定される。
図2は、対象面S1の基準面S2に対するオフ方向a1およびオフ角θを示す図である。対象面S1(たとえば主面32)の基準面S2(たとえば(001)面)に対する「オフ方向」(図2では符号a1で示される)とは、当該基準面S2の法線方向a2(たとえば<001>方向)に対する対象面S1の法線方向nの傾斜する方向を指す。具体的には、オフ方向a1は、基準面S2の法線方向a2から法線方向nを基準面S2に投影(射影)したベクトルの向きで示される。また、以下では、オフ方向a1を対象面S1に投影した方向を「面内オフ方向」(図2では符号a11で示される)という。オフ角θは、対象面S1の法線方向nと基準面S2の法線方向a2とのなす角度であり、オフ方向a1と対象面S1とのなす角度である。
たとえば、第5工程において(110)面を主面11とする単結晶ダイヤモンド基板10を製造したい場合、種基板30の主面32の(001)面に対するオフ方向は、<1−10>方向あるいは<−110>方向に設定される。
《第2工程》
図1に戻って、第2工程は、単結晶ダイヤモンドの種基板30の主面32上に、炭素が固溶可能な金属膜40を線状に形成する工程である。金属膜40は、金属元素を含む。ここで、金属元素とは、希ガス元素、17族元素(フッ素等)、H、B、C、N、O、Si、P、S、As、Se、Te以外の全ての元素のことである。
金属膜40は、Fe、Ni、Co、Mn、Ptのうちのいずれかを含むことが好ましく、強磁性を示す金属を含むことがより好ましく、たとえばFe,Ni,Coの少なくとも1つを含む。金属膜40は、Fe,Ni,Coの少なくとも1つを主成分とする金属複合体であってもよい。
第2工程において、金属膜40が形成されていない領域34が矩形状となるように、金属膜を直線状または格子状に形成することが好ましい。図1の左側には金属膜40を格子状に形成した場合が示され、図1の右側には金属膜40を直線状に形成した場合が示される。種基板30の主面32上に金属膜40を形成する方法として、蒸着またはスパッタリングを用いることができる。具体的には、種基板30の主面32上に、直線状または格子状にパターニングされたメタルマスクを配置し、蒸着またはスパッタリングを用いて金属膜40を形成する。もしくは、種基板30の主面32の全体に蒸着またはスパッタリングを用いて金属膜を形成し、フォトリソグラフィまたはレーザーにより不要な部分の金属膜を除去することにより、直線状または格子状の金属膜40を形成することができる。
領域34を矩形状とする場合、領域34の長辺方向は、たとえば第5工程により得られる単結晶ダイヤモンド基板10の主面11の面方位に応じて設定される。(001)面である主面32上に、(110)面を主面11とする単結晶ダイヤモンド基板10を製造したい場合、矩形状の領域34の長辺方向は、種基板30の(110)面に平行な方向に設定される。
さらに、種基板30の主面32の(001)面に対するオフ角が1度以上10度以下である場合、主面32の(001)面に対するオフ方向を主面32に投影した面内オフ方向と、矩形状の領域34の長辺とのなす角度は、領域34の長辺と領域34の対角線とのなす劣角以下であることが好ましい。
金属膜40の幅は、0.1μm以上であることが好ましい。金属膜40の幅が0.1μm以上であれば、第3工程において種基板30に溝36を安定して形成することができる。金属膜40の幅は、500μm(0.5mm)以下であることが好ましい。金属膜40の幅が500μm以下であれば、種基板30に対する単結晶ダイヤモンド基板10の歩留りを良くすることができる。
《第3工程》
第3工程は、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で種基板30を熱処理することにより、金属膜40によって種基板30を侵食させて、主面32に溝36を形成する工程である。たとえば、種基板30をマイクロ波プラズマ装置内に設置し、種基板30の周囲に水素プラズマまたは酸素原子を含むプラズマを発生させることにより、種基板30に熱を供給し、主面32に溝36を形成すればよい。もしくは、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で、種基板30または当該ガスを加熱し、種基板30に熱を供給してもよい。
図3は、マイクロ波プラズマ装置の一例を示す図である。図3に示されるように、マイクロ波プラズマ装置80は、チャンバ81と、チャンバ81にマイクロ波を供給するためのマイクロ波電源82と、マイクロ波電源82とチャンバ81とを接続する導波管83と、導波管83からチャンバ81内へマイクロ波を導入するためのマイクロ波導入窓84と、種基板30を支持するための支持台85と、チャンバ81内に原料ガスを供給するガス供給管86と、チャンバ81からガスを排出するガス排出管87とを有する。ガス供給管86から水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガスが供給され、マイクロ波導入窓84からマイクロ波が導入されることにより、種基板30の周囲にプラズマ88が発生する。プラズマ88により種基板30に熱が供給される。
金属膜40は、上述したように炭素を固溶可能である。水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で熱処理された金属膜40は、種基板30の金属膜40と接する部分の炭素を固溶する。金属膜40に固溶した炭素は、金属膜40の表面まで移動し、周囲のガス中に放出される。このようにして、種基板30の主面32における金属膜40が形成された箇所が侵食される。一方、金属膜40が形成されていない領域34は、侵食されずにそのまま残る。そのため、金属膜40が形成された箇所と形成されない箇所との間に段差が生じ、金属膜40が形成された箇所に溝36が形成される。種基板30における溝36の表面には、炭素が固溶された金属膜40が存在する。
《第4工程》
第4工程は、溝36を形成した後に、主面32において金属膜40が形成されていない領域34の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層50を形成する工程である。当該工程により、種基板30の主面32上に複数の単結晶ダイヤモンド層50が形成された単結晶ダイヤモンド複合体20が得られる。原料ガスは、たとえばメタン−水素系の混合ガスである。成長方法は、熱フィラメント法、燃焼炎法、アークジェット法等が利用可能であるが、本実施形態では、不純物の混入が少ない高品質なダイヤモンドを得るためにマイクロ波プラズマ法を用いる。
マイクロ波プラズマ法では、原料ガスとして水素およびメタンの混合ガスをメタン/水素ガス流量比6%〜20%でチャンバ81内に導入し、マイクロ波によってプラズマを発生させる。発生したプラズマには、炭素を含む活性種が存在する。当該活性種が領域34上にエピタキシャルに堆積することにより、単結晶ダイヤモンド層50が形成される。
原料ガス中におけるメタン濃度は、種基板30の主面32の面方位および成長パラメータ(α)に応じて適宜設定される。成長パラメータ(α)は、(001)面の成長速度をV001とし、(111)面の成長速度をV111としたときに、α=30.5×V001/V111で表される。
溝36の表面には金属膜40が存在するため、活性種が堆積せず、単結晶ダイヤモンドのエピタキシャル成長が抑制される。そのため、領域34への単結晶ダイヤモンドのエピタキシャル成長のみを考慮して、エピタキシャル成長条件を設定すればよい。種基板30の主面32が(001)面である場合、成長パラメータ(α)が2.8以上となるエピタキシャル成長条件を設定すればよい。
領域34が矩形状である場合、領域34の上に形成される単結晶ダイヤモンド層50の厚みは、領域34の短辺長よりも長いことが好ましい。
領域34が矩形状であり、主面32の(001)面に対するオフ方向を主面32に投影した面内オフ方向と領域34の長辺とのなす角度が、領域34の長辺と対角線とのなす劣角以下である場合には、次のような利点がある。すなわち、第4工程において、矩形状の領域34において原子状ステップがなくなることが抑制され、領域34上の単結晶ダイヤモンドの成長速度の低下が抑制される。
複数の領域34の一部において成長速度の低下が生じた場合、当該一部の領域34の上に形成された単結晶ダイヤモンド層50の厚みは、周囲の領域34の上に形成された単結晶ダイヤモンド層50の厚みよりも薄くなる。これにより、単結晶ダイヤモンド基板の歩留まりが低下する。しかしながら、上記のように成長速度の低下が抑制されるため、複数の領域34の全てに対して、所望の厚みを有する単結晶ダイヤモンド層50を形成することができ、歩留まりの低下を抑制できる。
さらに、領域34が矩形状である場合、エピタキシャル成長条件を適宜調整することにより、単結晶ダイヤモンド層50における領域34の短辺方向の幅を、成長が進むにつれて徐々に小さくすることが好ましい。これにより、成長が進むにつれて、隣り合う2つの単結晶ダイヤモンド層50同士が接合することを防止することができる。たとえば、成長パラメータが2.8以上のエピタキシャル成長条件を選択することで、すなわち、メタン濃度を8%以上に高くすることで、あるいは種基板30の温度を950℃より低くすることで、単結晶ダイヤモンド層50における矩形状の領域34の短辺方向の幅を徐々に小さくすることができる。短辺方向の幅を徐々に小さくする場合には、幅よりも成長方向の厚みが大きくなると、電界の存在するプラズマ中では避雷針のように電界が集中することが考えられる。電界が集中すると、種基板30上に均一に単結晶ダイヤモンド層50が形成されなくなり、エピタキシャル成長が止まってしまう可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、金属膜40の幅を500μm以下とすることにより、電界の集中が抑制されるため、短辺方向の幅を徐々に小さくしたとしても、当該幅よりも大きな厚みを有する単結晶ダイヤモンド層50を成長させることができる。
《第5工程》
上述したように、第4工程において、主面32上に複数の単結晶ダイヤモンド層50が形成される。第5工程は、当該複数の単結晶ダイヤモンド層50を互いに分離する工程である。これにより、単結晶ダイヤモンド基板10が製造される。本実施形態では、図1に示されるように、種基板30を溝36に沿って劈開することにより、複数の単結晶ダイヤモンド層50を互いに分離する。
第4工程において単結晶ダイヤモンド層50の厚みを矩形状の領域34の短辺長よりも長くした場合、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11は、単結晶ダイヤモンド層50の側面となる。そのため、種基板30の主面32の面方位と異なる面方位の主面11を有する単結晶ダイヤモンド基板10を得ることができる。たとえば、種基板30の主面32が(001)面であり、矩形状の領域34の長辺が種基板の(110)面に平行である場合、(110)面を主面11とする単結晶ダイヤモンド基板10を得ることができる。(110)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を得るために種基板の(110)面の上に単結晶ダイヤモンドを成長させる場合、一般的にNなどの不純物濃度を高めることができない。そのため、従来、不純物を含有するとともに(110)面を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を得ることが困難であった。しかしながら、本実施形態の製造方法によれば、(001)面の上に単結晶ダイヤモンドを成長させるため、不純物濃度を高めることができる。そのため、不純物を含有するとともに、(110)面を主面11とする単結晶ダイヤモンド基板10を容易に得ることができる。
さらに、第4工程において、単結晶ダイヤモンド層50における矩形状の領域34の短辺方向の幅を成長が進むにつれて徐々に小さくする場合、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11の基準面に対するオフ角を大きくすることができる。たとえば、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11の(110)面に対するオフ角を5〜20度にすることができる。
なお、第5工程により得られた単結晶ダイヤモンド基板10の表面は、必要に応じて研磨されてもよい。通常、最も面積の広い一対の主面の少なくとも一方は、研磨により平坦化される。
〈単結晶ダイヤモンドの製造方法の変形例〉
図4は、単結晶ダイヤモンドの製造方法の変形例を模式的に示す図である。図4に示されるように、第1工程において、種基板30の主面32に炭素イオンを注入することにより炭素イオン注入層38を形成してもよい。この場合、第5工程において、第4工程により得られた単結晶ダイヤモンド複合体20を純水中で電気化学的エッチングすることにより、種基板30と単結晶ダイヤモンド層50とを分離する。これにより、分離された単結晶ダイヤモンド層50が単結晶ダイヤモンド基板10となる。
なお、図4に示す製造方法の場合、炭素イオン注入層38を形成するために、図1に示す製造方法で用いる種基板30よりも厚い種基板30を用いることが好ましい。
〈単結晶ダイヤモンド複合体〉
本実施形態に係る単結晶ダイヤモンド複合体20は、上記の単結晶ダイヤモンドの製造方法における中間生成物であり、上記の第2〜4工程により製造される(図1および図4参照)。
図5は、本実施形態に係る単結晶ダイヤモンド複合体の一例を示す断面図である。図5に示されるように、単結晶ダイヤモンド複合体20は、主面32に溝36が形成された、単結晶ダイヤモンドの種基板30と、主面32における溝36を除く領域34の上に形成された単結晶ダイヤモンド層50とを備える。単結晶ダイヤモンド複合体20は、種基板30における溝36の表面に、炭素が固溶された金属膜40を含む。
溝36の表面に金属膜40が存在するため、溝36の上への単結晶ダイヤモンドの成長が抑制される。これにより、領域34への単結晶ダイヤモンド層50の形成に適したエピタキシャル成長条件を選択することができ、生産性を高めることができる。
また、金属膜40は、単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる前に水素プラズマ雰囲気にさらされることにより、種基板30中の炭素と固溶し、種基板30に容易に溝36を形成することができる。そして、溝36を形成した直後に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させることができるため、溝36が形成された種基板30を搬送する必要がない。その結果、種基板30の取り扱いが容易となる。
〈単結晶ダイヤモンド基板〉
図6は、本実施形態に係る単結晶ダイヤモンド基板10の一例を示す斜視図である。図6には、上記の製造方法において、金属膜40を格子状に形成し、単結晶ダイヤモンド層50の厚みを矩形状の領域34の短辺長より長い0.5mm以上としたときに得られた単結晶ダイヤモンド基板10が示される。金属膜40を格子状に形成することは、複数の矩形状の領域34の短辺間に金属膜40が位置するとともに、複数の矩形状の領域34の長辺間にも金属膜40が位置することを意味する(図1および図4の左側参照)。
図6に示されるように、単結晶ダイヤモンド基板10は直方体である。直方体の単結晶ダイヤモンド基板10は、上記の第5工程の後に表面が平坦になるように研磨されることによって得られる。単結晶ダイヤモンド基板10の表面は、一対の主面11,12を含む。
一対の主面11,12の少なくとも一方の主面(ここでは、研磨され平坦化された主面11)に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞17が観察される。第1成長縞17は、少なくとも一方の主面(ここでは、主面11)内の第1方向D1に沿って配列される。ここで、「第1方向」とは、主面11に観察される第1成長縞17の全てに交差し、第1成長縞17とのなす角度が90度に最も近い直線の方向である。第1方向D1は、単結晶ダイヤモンドの成長方向に概略対応する。
化学気相成長法により単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させる場合、単結晶ダイヤモンド中の欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方は、チャンバ81内の雰囲気に依存する。そのため、エピタキシャル成長させる際にチャンバ81内の雰囲気が時間とともに微妙に揺らぐと、単結晶ダイヤモンド中の欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方は、成長方向に沿って変動する。欠陥量または不純物濃度の変動は、年輪のような縞として観察される。そのため、単結晶ダイヤモンド層50の厚みを矩形状の領域34の短辺長より長くした場合、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11に、第1方向D1に沿って配列された第1成長縞17が観察される。第1方向D1は、単結晶ダイヤモンドの成長方向を当該主面11に投影した方向に相当する。
なお、単結晶ダイヤモンド基板10の表面は、主面11における第1方向D1の一方端に交わる側面13と、主面11における第1方向D1の他方端に交わる側面14と、残りの側面15,16とを含む。単結晶ダイヤモンド層50の厚みを矩形状の領域34の短辺長より長い0.5mm以上にしているため、側面13から側面14までの距離は0.5mm以上である。つまり、主面11における第1方向D1の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。なお、主面11における第1方向D1の一方端から他方端までの長さの上限値は、特に限定されるものではない。
欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化は、フォトルミネッセンス(PL)の強度、カソードルミネッセンス(CL)の強度、電子顕微鏡の2次電子強度、電子顕微鏡の反射電子強度および電子顕微鏡の吸収電流強度のいずれかの違いとして示される。そのため、第1成長縞17は、PLの強度、CLの強度、電子顕微鏡の2次電子強度、電子顕微鏡の反射電子強度および電子顕微鏡の吸収電流強度のいずれかのマッピング画像において、等強度の画素群による筋として示される。マッピング画像では、隣接する画素との強度差が大きい画素が視認されやすい。そのため、マッピング画像に対して微分フィルタを用いた画像処理を行ない、微分値が極大または極小となる画素が連続する筋を第1成長縞17として特定してもよい。
室温、ドライアイス昇華点温度近傍、液体窒素沸点温度近傍、40K以下の低温などの条件でPLまたはCLの強度のマッピング画像を得た場合、当該マッピング画像に欠陥量や不純物濃度の変動が明確に反映される。PLの励起光は600nm以下の短波長が好ましく、550nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。2次電子強度、反射電子強度および吸収電流強度は、走査型電子顕微鏡で室温、または室温から液体窒素沸点温度までの温度で評価できる。これらの測定手段は、単結晶ダイヤモンド基板が本実施形態の製造方法により得られたものかどうかを判別する手段として有効である。
図6に示されるように、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11において、第1方向D1の一方端側(側面13側)に観察される第1成長縞17は直線状であり、第1方向の他方端側(側面14側)に観察される第1成長縞17は第1方向の一方端から他方端に向いた凸状である。
第1成長縞17が直線状であるか凸状であるかは、以下のようにして判定される。図7は、第1成長縞が観測される主面を示す平面図である。図7では、k本の第1成長縞17(17−1〜17−k)が示される。判定対象となる第1成長縞17(図では第1成長縞17−1を判定対象としている)における、第1方向D1に垂直な方向の一方端を点a、他方端を点bとし、中点を点cとし、点aと点bを結んだ線分の中点を点dとする。点c,dから第1方向に平行な座標軸Xに下した垂線の足の座標をそれぞれxc,xdとする。なお、単結晶ダイヤモンド基板の主面における第1方向D1の一方端の座標よりも他方端の座標が大きくなるように座標軸Xが設定される。|xc−xd|≦5μmを満たす場合、第1成長縞が直線状であると判定される。xd<xcおよび|xc−xd|>5μmを満たす場合、第1成長縞17が第1方向D1の一方端から他方端に向いた凸状であると判定される。xd>xcおよび|xc−xd|>5μmを満たす場合、第1成長縞17が第1方向D1の他方端から一方端に向いた凸状であると判定される。
図8は、第1方向D1に平行であり、かつ一対の主面11,12に垂直な平面で単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面18を示す図である。図8に示されるように、第1方向D1に平行であり、かつ一対の主面11,12に垂直な平面で単結晶ダイヤモンド基板10を切ったときの断面18に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞19が観察される。第2成長縞は、断面18内の第2方向D2に沿って配列される。ここで、「第2方向」とは、断面18に観察される第2成長縞19の全てに交差し、第2成長縞19とのなす角度が90度に最も近い直線の方向である。第2方向D2は、単結晶ダイヤモンドの成長方向に概略対応する。つまり、第2方向D2は、単結晶ダイヤモンドの成長方向を断面18に投影した方向に相当する。断面18における第2方向D2の一方端は、断面18と側面13との交線である。断面18における第2方向の他方端は、断面18と側面14との交線である。
図8に示されるように、断面18において、第2方向D2の一方端側(側面13側)に観察される第2成長縞19は直線状であり、第2方向D2の他方端側(側面14側)に観察される第2成長縞19は、第2方向D2の一方端から他方端に向いた凸状である。第2成長縞19が直線状であるか凸状であるかは、第1成長縞17と同様の方法により判定される。
第1成長縞17および第2成長縞19が上記のような形状になる理由について、以下に説明する。図9は、種基板30に金属膜40を形成せずに、単結晶ダイヤモンド層50を厚み0.5mm以上成長させたときの単結晶ダイヤモンド層50の断面に観察される一部の成長縞119を示す図である。図10は、特許文献4に記載の製造方法における活性種の流れを示す図である。図11は、本実施の形態に係る製造方法における活性種の流れを示す図である。図12は、図11とは別の方向から見たときの、本実施の形態に係る製造方法における活性種の流れを示す図である。図10には、種基板30の主面に垂直であり、かつ種基板30の溝136に垂直な面で単結晶ダイヤモンド層50を切ったときの断面が示される。図11には、種基板30の主面に垂直であり、かつ矩形状の領域34の短辺に平行な面で単結晶ダイヤモンド層50を切ったときの断面が示される。図12には、種基板30の主面に垂直であり、かつ矩形状の領域34の長辺に平行な面で単結晶ダイヤモンド層50の側面が示される。
図9に示されるように、種基板30に金属膜40を形成せずに厚み0.5mm以上の単結晶ダイヤモンド層50を形成した場合、成長終了段階では、端部が中央部よりも隆起した凹状の成長縞119が観察される。これは、特開2007−191362号公報(特許文献5)に記載されているように、端部の温度が中央部よりも高くなり、端部の成長が中央部の成長よりも大きくなるためである。
なお、特許文献5によれば、種基板30の端面と支持台85との隙間を0.5mm未満とすることにより、端部の成長速度を中央部分の成長速度よりも遅くして、凸状の成長縞が形成される。しかしながら、この現象は、単結晶ダイヤモンド層50の厚みが0.3mm以下であるときに見られる。単結晶ダイヤモンド層50の厚みが0.3mmを超えると、種基板30の端面と支持台85との隙間の影響が小さくなり、端部の温度が中央部よりも高くなる。そのため、単結晶ダイヤモンド層50の厚みを0.5mm以上とした場合、成長終期では、端部の成長が中央部の成長よりも大きくなり、端部が中央部よりも隆起した凹状の成長縞119が観察される。
図10に示されるように、特許文献4に記載の製造方法では、レーザーで溝136が形成された種基板30に単結晶ダイヤモンド層50を成長させる。このとき、溝136の上には、多結晶ダイヤモンドまたは非ダイヤモンドのカーボンで構成された接合層60が形成される。そのため、炭素の活性種は、溝136が形成されていない箇所では単結晶ダイヤモンドの成長のために消費され、溝136が形成された箇所では接合層60の形成のために消費される。その結果、隣接する単結晶ダイヤモンド層50の断面に観察される成長縞219を連続させたときの形状は、図9に示される成長縞119と同様の形状となる。そして、各単結晶ダイヤモンド層50の断面には直線状の成長縞219が観察される。
これに対し、本実施形態の製造方法では溝36の表面に金属膜40が存在するため、図11および図12に示されるように、活性種は、金属膜40が形成された箇所には堆積せず、上方向に戻される。金属膜40に堆積せずに上方向に戻る活性種の流れによって、種基板30の主面に向かう活性種の流れの一部は、主面の法線方向から傾斜する。
具体的には、図11に示されるように、複数の矩形状の領域34の長辺間に位置する金属膜40から戻る活性種の流れ71は、領域34の長辺付近に向かう活性種の流れ72を、領域34における短辺方向の中央部分に向けて傾斜させる。そのため、活性種は、矩形状の領域34における短辺方向の中央付近に堆積しやすくなる。これにより、領域34にエピタキシャル成長される単結晶ダイヤモンドは、その中央付近に近くなるほど盛り上がった形状となる。この盛り上がりの程度は、成長初期ではほとんど見られないが、成長が進むにつれて徐々に大きくなる。その結果、図8に示されるように、断面18において、第2方向D2の一方端側に観察される第2成長縞19は直線状となり、第2方向D2の他方端側に観察される第2成長縞19は第2方向D2の一方端から他方端に向いた凸状となる。
同様に、図12に示されるように、複数の矩形状の領域34の短辺間に位置する金属膜40から戻る活性種の流れ73は、領域34の短辺付近に向かう活性種の流れ74を、領域34における長辺方向の中央部分に向けて傾斜させる。そのため、活性種は、矩形状の領域34における長辺方向の中央付近に堆積しやすくなる。これにより、領域34にエピタキシャル成長される単結晶ダイヤモンドは、その中央付近に近くなるほど盛り上がった形状となる。この盛り上がりの程度は、成長初期ではほとんど見られないが、成長が進むにつれて徐々に大きくなる。その結果、図6に示されるように、主面11において、第1方向D1の一方端側に観察される第1成長縞17は直線状となり、第1方向D1の他方端側に観察される第1成長縞17は第1方向D1の一方端から他方端に向いた凸状となる。
種基板30の端面と支持台85との隙間は、0.5mm未満となるように設置される。特許文献5に記載されているように、種基板30の端面と支持台85との隙間を0.5mm未満とすることにより、種基板30の端部の成長速度を種基板の中央部分の成長速度よりも遅くすることができる。
図8に戻って、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11の面方位は、単結晶ダイヤモンド基板10の利用方法に応じて適宜選択される。単結晶ダイヤモンド基板10を切削工具として使用する場合、(110)面は、すくい面としてよく利用される。そのため、主面11の(110)面に対するオフ角は、0度以上20度以下であることが好ましい。これにより、単結晶ダイヤモンド基板10を切削工具として利用しやすくなる。
主面11における第1方向D1の一方端と交わる側面13は、平らな矩形状である。側面13の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であることが好ましい。さらに、側面13の(001)面に対するオフ方向を側面13に投影した面内オフ方向と側面13の長辺とのなす角度は、側面13の長辺と側面13の対角線とで形成される劣角以下であることが好ましい。当該構成は、上記の第1工程および第2工程において、以下のようにすることにより実現される。つまり、第1工程において、主面32の(001)面に対するオフ角が1度以上10度以下である種基板30を用いる。さらに、第2工程において、種基板30の主面32の(001)面に対する面内オフ方向と矩形状の領域34の長辺とのなす角度を、領域34の長辺と対角線とで形成される劣角以下にする。これにより、上述したように、成長速度の低下が抑制され、単結晶ダイヤモンド基板10を製造しやすくなる。
単結晶ダイヤモンド基板10は、側面13の少なくとも一部に強磁性を示す金属を含むことが好ましい。当該構成は、上記の第2工程において、強磁性を示す金属を含む金属膜40を種基板30に形成し、上記の第5工程において、金属膜40の一部が単結晶ダイヤモンド層50側に含まれるように、複数の単結晶ダイヤモンド層50を分離することで実現される。
図1に示す製造方法の場合、種基板30を溝36に沿って劈開することにより複数の単結晶ダイヤモンド層50が分離される。そのため、単結晶ダイヤモンド基板10の側面13には、種基板30の一部が存在する。種基板30に形成された金属膜40は、単結晶ダイヤモンドのエピタキシャル成長初期においても種基板30を侵食する。そのため、単結晶ダイヤモンド基板10は、側面13に金属を含む。金属膜40が強磁性を示す金属(たとえば、Fe、Ni、Coの少なくとも1つ)を含む場合、磁石を近づけることにより、単結晶ダイヤモンド基板10の向きの判別が容易となる。つまり、単結晶ダイヤモンド基板10において、成長初期に形成された部分と、成長終期に形成された部分とを判別できる。
〈単結晶ダイヤモンド基板の適用例〉
次に、単結晶ダイヤモンド基板10が適用される切削工具の一例について説明する。図13は、切削工具の一例を示す図である。図14は、切削工具の先端を示す平面図である。図15は、図14に示すX−X線に沿った矢視断面図である。
図13に示されるように、切削工具8は、ホルダ7と、ホルダ7の先端に取り付けられ、刃先形状に加工された単結晶ダイヤモンド基板10とを備える。図13に示す例では、回転している被削材Zに切削工具8を接触させることで、被削材Zが切削される。
図14に示されるように、単結晶ダイヤモンド基板10によって構成された刃先の先端は曲面に加工される。そこで、第1方向D1の他方端側に観察される凸状の第1成長縞17に、刃先の先端の曲面を合わせる。これにより、被削材Zに接触するすくい面の端部を同じ条件および環境で成長させた結晶にすることができる。その結果、結晶状態の微妙な違いによって被削材に筋を付けることが抑制される切削工具を提供できる。さらに、すくい面の端部で第1成長縞17を分離するような力がかかりにくく、単結晶ダイヤモンド基板10の欠けを抑制することができる。
さらに、図15に示されるように、刃先のすくい面から逃げ面にかけての曲面の曲がり方を、単結晶ダイヤモンド基板10の断面18における第2方向D2の他方端側に観察される凸状の第2成長縞19の曲がり方に合わせる。これにより、すくい面から逃げ面にかけて被削材Zに接触する刃先部分を同じ条件および環境で成長させた結晶にすることができる。その結果、結晶状態の微妙な違いによって被削材に筋を付けることが抑制される。さらに、すくい面から逃げ面にかけて第2成長縞19を分離するような力がかかりにくく、単結晶ダイヤモンド基板10の欠けを抑制することができる。
〈単結晶ダイヤモンド基板の変形例〉
図16は、単結晶ダイヤモンド基板10の別の例を示す斜視図である。図16に示されるように、一対の主面11,12間の距離は、第1方向D1および第2方向D2の一方端から他方端に向かうにつれて短くなる。図16に示す単結晶ダイヤモンド基板10は、上記の製造方法において、成長が進むにつれて徐々に単結晶ダイヤモンド層50の幅が小さくなるようにエピタキシャル成長条件を調整することにより製造される。図16に示す単結晶ダイヤモンド基板10では、主面11と側面13との角度を90度より小さく(たとえば、70〜85度)することができる。
上記の説明では、金属膜40を格子状に形成することにより製造された単結晶ダイヤモンド基板10を説明した。直線状の金属膜40を矩形状の領域34の長辺に沿って形成し、単結晶ダイヤモンド層50の厚みを矩形状の領域34の短辺長よりも長い0.5mm以上とすることにより製造された単結晶ダイヤモンド基板10では、第1成長縞17および第2成長縞19は、次のようになる。主面11に観察される第1成長縞17は、図9に示される成長縞119と同様の形状を有する。これは、金属膜40が矩形状の領域34の長辺方向に沿ってのみ形成されるためである。一方、断面18に観察される第2成長縞19は、図8に示される第2成長縞19と同様の形状を有する。すなわち、断面18において、第2方向D2の一方端側に観察される第2成長縞19は直線状であり、第2方向D2の他方端側に観察される第2成長縞19は第2方向D2の一方端から他方端に向いた凸状である。また、単結晶ダイヤモンド層50の厚みが0.5mm以上であるため、断面18における第2方向D2の一方端から他方端までの長さは0.5mm以上である。なお、断面18における第2方向D2の一方端から他方端までの長さの上限値は、特に限定されるものではない。
これにより、単結晶ダイヤモンド基板10の主面11を刃先のすくい面として用いることにより、すくい面から逃げ面にかけての曲面の曲がり方を、断面18における第2方向D2の他方端側に観察される凸状の第2成長縞19の曲がり方に合わせることができる。その結果、すくい面から逃げ面にかけて被削材に接触する刃先部分を同じ条件および環境で成長させた結晶にすることができ、被削材に筋を付けることが抑制される切削工具を提供できる。さらに、単結晶ダイヤモンド基板10の欠けを抑制することができる。
なお、直線状の金属膜40を矩形状の領域34の長辺に沿って形成し、単結晶ダイヤモンド層50の厚みを0.5mm以上とする製造方法によっても、図8と同様に、単結晶ダイヤモンド基板10の表面は、断面18における第2方向D2の一方端を含む平らな矩形状の側面13を含む。この場合でも、側面13の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であることが好ましい。さらに、側面13の(001)面に対するオフ方向を側面13に投影した面内オフ方向と側面13の長辺とのなす角度は、側面13の長辺と側面13の対角線とで形成される劣角以下にすることが好ましい。これにより、成長速度の低下が抑制され、単結晶ダイヤモンド基板10を製造しやすくなる。
以下、実施例を挙げて本開示をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。試料No.1〜8の単結晶ダイヤモンド基板は実施例であり、試料No.9〜11の単結晶ダイヤモンド基板は比較例である。
〈試料No.1の単結晶ダイヤモンド基板〉
(100)面に対してオフ角3度の主面を有し、かつ6mm×6mm×0.5mmのサイズを有する基板Aを種基板として準備した。具体的には、高圧合成法により作製されたIbタイプ基板の主面を、表面粗さRaが50nm未満となるように研磨し、当該主面に炭素のイオン注入を行なった。Ibタイプ基板の主面は、(100)面に対してオフ角3度である。Ibタイプ基板の主面上に化学気相成長法により単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させ、成長した単結晶ダイヤモンドをIbタイプ基板から電気化学的エッチングによって分離することにより、基板Aを得た。Ibタイプ基板の主面の表面粗さRaが50nm未満であったため、基板Aにおける分離面の表面粗さRaも50nm未満であった。
次に、種基板の主面を研磨して平坦化した後に、当該主面に対して、7×1015cm-2のドーズ量の炭素イオンを300keVで注入した。
次に、種基板の主面上にNiを蒸着してNi膜を形成した後、フォトリソグラフィ法により25μm幅の直線状にNi膜をパターニングした。Ni膜の厚みを1μmとし、隣り合う2つのラインの間隔(つまり、当該2つのラインの最近接のエッジ同士の間隔)を1.2mmとした。また、ライン方向を種基板の<1−10>方向とした。
次に、直線状のNi膜が形成された種基板を化学気相成長装置のチャンバ内に設置した。その後、チャンバ内に流量800sccmで水素ガス(100%)を導入し、マイクロ波プラズマ装置を用いて水素プラズマを発生させた状態でチャンバ内の圧力を1.33kPaから13.3kPaに上昇させた。ここで、流量の単位「sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)」は、標準状態(0℃、101.3kPa)における「mL/min」を示している。当該環境下で種基板の温度が980℃に安定してから20分間その状態を維持させた。
その後、水素ガス800sccm、メタンガス12sccm、窒素ガス1sccmを導入し、同じく種基板の温度が980℃になるようにマイクロ波パワー5kW前後に調整し、単結晶ダイヤモンドを75時間エピタキシャル成長させた。これにより、種基板と、種基板の上に形成された複数個の厚さ1.4mmの単結晶ダイヤモンド層とを備えた単結晶ダイヤモンド複合体を得た。
次に、単結晶ダイヤモンド複合体を純水中で電気化学的エッチングして、複数個の単結晶ダイヤモンド層を互いに分離した後、分離した単結晶ダイヤモンド層の側面を研磨することにより、試料No.1の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.2の単結晶ダイヤモンド基板〉
Ni膜のライン幅を50μmとした点を除いて試料No.1と同じ条件で試料No.2の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.3の単結晶ダイヤモンド基板〉
種基板の主面に炭素のイオン注入を行なわない点、および、電気化学的エッチングではなく、直線状に形成されたNi膜に沿って種基板を劈開することにより、複数個の単結晶ダイヤモンド層を分離した点を除いて、試料No.1と同じ条件で試料No.3の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.4の単結晶ダイヤモンド基板〉
種基板の主面に炭素のイオン注入を行なわない点、および、電気化学的エッチングではなく、直線状に形成されたNi膜に沿って劈開することにより、複数個の単結晶ダイヤモンド層を分離した点を除いて、試料No.2と同じ条件で試料No.4の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.5の単結晶ダイヤモンド基板〉
基板Aの代わりに基板Bを種基板として準備した点、および、炭素のイオン注入を行なった後の種基板の主面に対する研磨を省略した点を除いて、試料No.1と同じ条件で試料No.5の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
基板Bは、(100)面に対してオフ角3度の主面を有し、かつ6mm×6mm×0.1mmのサイズを有する。基板Bは、基板Aとサイズのみが異なるだけであり、基板Aと同様の方法により作製される。また、基板Bの厚みが0.1mmと基板Aに比べて薄いため、基板Bに対する研磨処理を省略した。
〈試料No.6の単結晶ダイヤモンド基板〉
Ni膜のライン幅を50μmとした点を除いて試料No.5と同じ条件で試料No.6の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.7の単結晶ダイヤモンド基板〉
種基板の主面に炭素のイオン注入を行なわない点、および、電気化学的エッチングではなく、直線状に形成されたNi膜に沿って劈開することにより、複数個の単結晶ダイヤモンド層を分離した点を除いて、試料No.5と同じ条件で試料No.7の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.8の単結晶ダイヤモンド基板〉
種基板の主面に炭素のイオン注入を行なわない点、および、電気化学的エッチングではなく、直線状に形成されたNi膜に沿って劈開することにより、複数個の単結晶ダイヤモンド層を分離した点を除いて、試料No.6と同じ条件で試料No.8の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.9の単結晶ダイヤモンド基板〉
試料No.1と同様に、基板Aを種基板とし、種基板の主面を研磨して平坦化した後に、当該主面に対して、7×1015cm-2のドーズ量の炭素イオンを300keVで注入した。
次に、種基板の主面にレーザーで、30μm幅、深さ30μmの溝を1.2mm間隔で形成した。
その後、溝が形成された種基板を化学気相成長装置のチャンバ内に設置し、種基板上に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させた。エピタキシャル成長条件は、溝の上に単結晶ダイヤモンドではなく接合層が形成されるように、以下のようにした。つまり、メタンガス流量8sccm,水素ガス流量900sccm,窒素ガス流量0.7sccm、マイクロ波パワー6kWとして、5時間成長させた。その後、メタンガス流量10sccm,水素ガス流量800sccm,窒素ガス流量1sccm、マイクロ波パワー6kWとして、70時間成長させた。これにより、種基板の主面に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させ、複数個の厚さ1.6mmの単結晶ダイヤモンド層を得た。このとき、溝の上にも活性種が堆積し、溝が埋まった。そのため、溝を形成した部分にレーザーを照射して、溝を形成した部分に沿って単結晶ダイヤモンド層を分離した。
次に、単結晶ダイヤモンド層が形成された種基板を純水中で電気化学的エッチングして、複数個の単結晶ダイヤモンド層を分離することにより、試料No.1の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。
〈試料No.10の単結晶ダイヤモンド基板〉
種基板の主面にレーザーで、100μm幅、深さ220μmの溝を1.2mm間隔で形成した点を除いて、試料No.9と同じ条件で試料No.10の単結晶ダイヤモンド基板を作製した。ただし、溝の幅が試料No.9と比較して大きいため、溝が単結晶ダイヤモンドで埋まることなく、接合層を介して互いに接合された単結晶ダイヤモンド層が成長した。接合層は、単結晶ダイヤモンドではない。そのため、大気中の熱処理によって接合層の一部を昇華させ、一部の結合が弱させることにより、レーザーを用いることなく単結晶ダイヤモンド層を分離することができた。
〈試料No.11の単結晶ダイヤモンド基板〉
試料No.5と同様に、基板Bを種基板とし、種基板の主面に対して、7×1015cm-2のドーズ量の炭素を300keVでイオン注入した。
次に、種基板の主面にレーザーで、30μm幅、深さ60μmの溝を1.2mm間隔で形成した。その後、溝が形成された種基板を搬送する際に、種基板が割れてしまった。そのため、種基板の上に単結晶ダイヤモンドをエピタキシャル成長させることができなかった。
〈評価〉
試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板の主面は、エピタキシャル成長した単結晶ダイヤモンド層における直線状のNi膜または溝に沿った側面に対応する。単結晶ダイヤモンド層の側面はほぼ(110)面であったため、当該側面を研磨することにより、試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板の主面を(110)面とすることができた。つまり、種基板の主面の面方位とは異なる面方位を主面とする単結晶ダイヤモンド基板を得ることができた。
Figure 2019006629
表1に示されるように、試料No.12を除いて、同程度のサイズの単結晶ダイヤモンド基板を得ることができた。ただし、試料No.9の単結晶ダイヤモンド基板については、単結晶ダイヤモンド層を成長させる際に、溝の上にも単結晶ダイヤモンドが成長してしまった。そのため、溝が形成された箇所にレーザー照射して接合した単結晶ダイヤモンド層を分離する手間がかかった。また、試料No.10の単結晶ダイヤモンド基板については、溝の上に接合層が形成された。接合層は単結晶ダイヤモンドではないため、試料No.9よりも分離に手間がかからないものの、接合層を取り除く手間が必要であった。
これに対し、試料No.1〜8の単結晶ダイヤモンド基板の製造過程では、試料No.9,10の単結晶ダイヤモンド基板の製造過程のように溝の上に単結晶ダイヤモンドまたは接合層が形成されなかった。特に、試料No.1,3,5,7の単結晶ダイヤモンド基板の製造過程では、Ni膜の幅が狭いにもかかわらず、溝の上に単結晶ダイヤモンドや接合層が成長することがなかった。そのため、試料No.9のようにレーザー照射によって単結晶ダイヤモンド層を分離する手間および試料No.10のように接合層を取り除く手間がいらず、容易に単結晶ダイヤモンド基板を作製できた。このように、上記の実施形態に記載の製造方法によれば、生産性が高くなることが確認された。
試料No.5〜8の単結晶ダイヤモンド基板の製造過程では、厚みが0.1mmの基板Bを種基板に用いているが、試料No.11の単結晶ダイヤモンド基板の製造過程のように種基板の割れが生じることがなく、単結晶ダイヤモンド基板を作製できた。これは、Ni膜の種基板への侵食による溝形成の後、種基板を搬送することなく、単結晶ダイヤモンド層をエピタキシャル成長させることができるためである。このように、上記の実施形態に記載の製造方法によれば、種基板の取り扱いが容易となることが確認された。
次に、試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板を切削バイトの形状に加工し、切削工具として切削試験を行なった。なお、単結晶ダイヤモンド基板における成長終期側の端部が刃先となるように加工した。
単結晶ダイヤモンド基板の加工時の欠け、および、1時間切削試験を行なった後の単結晶ダイヤモンド基板の欠けの有無を確認したところ、以下の表2のようになった。
Figure 2019006629
表2に示されるように、試料No.1〜8の単結晶ダイヤモンド基板では1時間切削試験後においても欠けが見られなかった。
成長方向に平行な面で試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板を切った断面におけるフォトルミネッセンス(PL)の強度のマッピング画像を確認した。試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板の断面において、当該断面内の成長方向である第2方向D2に沿って配列した成長縞が観察された。試料No.1〜8の単結晶ダイヤモンド基板の断面では、第2方向D2の一方端側に直線状の成長縞が観察され、第2方向D2の他方端側に、第2方向D2の一方端から他方端に向いた凸状の成長縞が観察された。この凸状の成長縞により、被削材に接触する部分が同じ条件および環境で成長させた結晶となり、成長縞を分離するような力がかかりにくくなり、試料No.1〜10の単結晶ダイヤモンド基板の欠けが抑制されたものと推測される。一方、試料No.9,10の単結晶ダイヤモンド基板の断面では、第2方向D2の一方端側および他方端側のいずれにおいても直線状の成長縞が観成された。この直線状の成長縞により、試料No.1〜8の単結晶ダイヤモンド基板では、断面における凸状の成長縞により、成長縞を分離するような力がかかりやすくなり、試料No.9,10の単結晶ダイヤモンド基板に欠けが生じたものと推測される。
〈付記〉
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
〈付記1〉
単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、前記種基板の周囲に水素プラズマを発生させることにより、前記金属膜によって前記種基板を侵食させて、前記主面に溝を形成する工程と、前記溝を形成した後に、前記主面において前記金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。
〈付記2〉
単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、前記種基板をチャンバ内に設置し、前記種基板の周囲に水素プラズマを発生させることにより、前記金属膜によって前記種基板を侵食させて、前記主面に溝を形成する工程と、前記溝を形成した後に前記チャンバ内に原料ガスを導入し、前記主面において前記金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。
〈付記3〉
単結晶ダイヤモンドの製造方法は、単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、前記種基板をチャンバ内に設置し、水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で前記種基板を熱処理することにより、前記金属膜によって前記種基板を侵食させて、前記主面に溝を形成する工程と、前記溝を形成した後に前記チャンバ内に原料ガスを導入し、前記主面において前記金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
7 ホルダ
8 切削工具
10 単結晶ダイヤモンド基板
11,12,32 主面
13,14,15,16 側面
17 第1成長縞
18 断面
19 第2成長縞
20 単結晶ダイヤモンド複合体
30 種基板
34 領域
36,136 溝
38 炭素イオン注入層
40 金属膜
50 単結晶ダイヤモンド層
60 接合層
71,72,73,74 活性種の流れ
80 マイクロ波プラズマ装置
81 チャンバ
82 マイクロ波電源
83 導波管
84 マイクロ波導入窓
85 支持台
86 ガス供給管
87 ガス排出管
88 プラズマ
119,219 成長縞
D1 第1方向
D2 第2方向
S1 対象面
S2 基準面
Z 被削材
a1 オフ方向
a11 面内オフ方向
a2,n 法線方向。

Claims (15)

  1. 単結晶ダイヤモンドの種基板の主面上に、炭素が固溶可能な金属膜を線状に形成する工程と、
    水素原子および酸素原子の少なくとも一方を含む分子のガス中で前記種基板を熱処理することにより、前記金属膜によって前記種基板を侵食させて、前記主面に溝を形成する工程と、
    前記溝を形成した後に、前記主面において前記金属膜が形成されていない領域の上に、化学気相成長法により単結晶ダイヤモンド層を形成する工程とを備える、単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  2. 前記金属膜を線状に形成する工程において、前記領域が矩形状となるように、前記金属膜を直線状または格子状に形成し、
    前記主面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であり、
    前記主面の(001)面に対するオフ方向を前記主面に投影した面内オフ方向と、前記領域の長辺とのなす角度は、前記長辺と前記領域の対角線とのなす劣角以下である、請求項1に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  3. 前記金属膜を線状に形成する工程において、前記領域が矩形状となるように、前記金属膜を直線状または格子状に形成し、
    前記単結晶ダイヤモンド層の厚みは、前記領域の短辺長よりも長い、請求項1に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  4. 前記金属膜は、強磁性を示す金属を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  5. 前記単結晶ダイヤモンド層を形成する工程において、前記主面上に複数の単結晶ダイヤモンド層が形成され、
    前記複数の単結晶ダイヤモンド層を互いに分離する工程をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  6. 主面に溝が形成された、単結晶ダイヤモンドの種基板と、
    前記主面における前記溝を除く領域の上に形成された単結晶ダイヤモンド層とを備え、
    前記種基板における前記溝の表面に、炭素が固溶された金属膜を含む、単結晶ダイヤモンド複合体。
  7. 単結晶ダイヤモンド基板であって、
    前記単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含み、
    前記一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察され、
    前記第1成長縞は、前記少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列され、
    前記少なくとも一方の主面において、前記第1方向の一方端側に観察される前記第1成長縞は直線状であり、前記第1方向の他方端側に観察される前記第1成長縞は前記第1方向の前記一方端から前記他方端に向いた凸状であり、
    前記少なくとも一方の主面における前記第1方向の前記一方端から前記他方端までの長さは0.5mm以上である、単結晶ダイヤモンド基板。
  8. 前記単結晶ダイヤモンド基板の表面は、前記少なくとも一方の主面における前記第1方向の前記一方端に交わる側面を含み、
    前記第1方向に平行であり、かつ前記一対の主面に垂直な面で前記単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞が観察され、
    前記第2成長縞は、前記断面内の第2方向に沿って配列され、
    前記断面における前記第2方向の一方端は、前記断面と前記側面との交線であり、
    前記断面において、前記第2方向の前記一方端側に観察される前記第2成長縞は直線状であり、前記第2方向の他方端側に観察される前記第2成長縞は前記第2方向の前記一方端から前記他方端に向いた凸状である、請求項7に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  9. 前記側面は、平らな矩形状であり、
    前記側面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であり、
    前記側面の(001)面に対するオフ方向を前記側面に投影した面内オフ方向と前記側面の長辺とのなす角度は、前記長辺と前記側面の対角線とで形成される劣角以下である、請求項8に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  10. 前記一対の主面間の距離は、前記第1方向の前記一方端から前記他方端に向かうにつれて短くなる、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  11. 単結晶ダイヤモンド基板であって、
    前記単結晶ダイヤモンド基板の表面は、一対の主面を含み、
    前記一対の主面の少なくとも一方の主面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第1成長縞が観察され、
    前記第1成長縞は、前記少なくとも一方の主面内の第1方向に沿って配列され、
    前記第1方向に平行であり、かつ前記一対の主面に垂直な面で前記単結晶ダイヤモンド基板を切ったときの断面に、欠陥量および不純物濃度の少なくとも一方の変化を示す第2成長縞が観察され、
    前記第2成長縞は、前記断面内の第2方向に沿って配列され、
    前記断面において、前記第2方向の一方端側に観察される前記第2成長縞は直線状であり、前記第2方向の他方端側に観察される前記第2成長縞は前記第2方向の前記一方端から前記他方端に向いた凸状であり、
    前記断面における前記第2方向の前記一方端から前記他方端までの長さは0.5mm以上である、単結晶ダイヤモンド基板。
  12. 前記単結晶ダイヤモンド基板の表面は、前記断面における前記第2方向の前記一方端を含む平らな矩形状の側面を含み、
    前記側面の(001)面に対するオフ角は、1度以上10度以下であり、
    前記側面の(001)面に対するオフ方向を前記側面に投影した面内オフ方向と前記側面の長辺とのなす角度は、前記長辺と前記側面の対角線とで形成される劣角以下である、請求項11に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  13. 前記一対の主面間の距離は、前記第2方向の前記一方端から前記他方端に向かうにつれて短くなる、請求項11または請求項12に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  14. 前記側面の少なくとも一部分に強磁性を示す金属を含む、請求項8、請求項9および請求項12のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
  15. 前記少なくとも一方の主面の(110)面に対するオフ角は、0度以上20度以下である、請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド基板。
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