以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。なお、以下に説明する各実施の形態の免震用ダンパにおいて共通する構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるために、一の実施の形態の免震用ダンパの説明において説明した構成については他の実施の形態の免震用ダンパにおける説明では詳細な説明を省略する。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態における免震用ダンパD11は、図1に示すように、水平横置きにして積層ゴムで構成される免震装置Mとともに構造物Sと地盤Gとの間に介装される。なお、免震装置Mは、積層ゴムのほか、ボールアイソレータ等といった構造物Sの水平方向の移動を許容できるものを採用できる。
そして、免震用ダンパD11は、図2に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されて伸側室R1と圧側室R2を仕切るピストン2と、シリンダ1に挿入されるとともにピストン2に連結されるロッド3と、シリンダ1内に充填される作動液体としての作動油Oとを備えている。
以下、免震用ダンパD11の各部について詳細に説明する。シリンダ1は、一端がキャップCによって閉塞されて、他端には、環状のロッドガイド4が装着されている。ピストン2は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されており、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに仕切っている。また、ロッド3は、一端がロッドガイド4内を通してシリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるとともに他端はシリンダ1外に突出している。本例では、免震用ダンパD11は、ロッド3が伸側室R1内にのみ挿通される所謂片ロッド型のダンパとされているが、圧側室R2にも挿通されてロッド3の両端がシリンダ1の両端側からそれぞれ外方へ突出する所謂両ロッド型のダンパとされていてもよい。キャップCには、免震用ダンパD11を構造物Sに設けた取付部Bsに連結されるブラケットBが設けられ、ロッド3の他端には地盤Gに設けた取付部Bgに連結されるブラケット3aが設けられている。
そして、伸側室R1には、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における伸側室R1の容積より少ない体積の作動油Oが気体とともに充填されている。なお、シリンダ1に対するピストン2の中立位置は、ピストン2のシリンダ1に対するストローク範囲の中央とされており、必ずしもシリンダ1の中央に一致しなくともよい。他方の圧側室R2には、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における圧側室R2の容積より少ない体積の作動油Oが気体とともに充填されている。具体的には、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における伸側室R1の容積の十分の七の体積の油量の作動油Oが伸側室R1に充填されており、伸側室R1の残りの空間に気体が充填されている。さらに、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における圧側室R2の容積の十分の七の体積の油量の作動油Oが圧側室R2に充填されており、圧側室R2の残りの空間に気体が充填されている。なお、伸側室R1および圧側室R2にされる作動油Oの油量は、それぞれ、伸側室R1および圧側室R2の容積の二分の一以上充填されていればよい。
なお、作動液体は、本例では、作動油Oとされているが、水や水溶液等といった他の液体とされてもよい。また、気体は、本例では、作動油Oの劣化を招かない窒素等の不活性ガスとされるとよいが、大気等、他の気体の利用も可能である。
また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路5と、減衰通路5を通過する作動油Oの流れに抵抗を与える減衰弁6とが設けられている。なお、減衰弁6には、調圧弁、リリーフ弁や絞りといった種々の弁を利用できる。また、一方通行の減衰弁6を用いる場合には、減衰通路5を複数設けておき一部に伸側室R1から圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容するものを設け、残りに反対向きの流体の流れのみを許容するものを設ければよい。さらに、ピストン2は、液面調整部として、伸側室R1と圧側室R2とを連通する第一通路7と、第一通路7の途中に設置される調整弁8とを備えている。
調整弁8は、図3に示すように、第一通路7の途中に設けられた第一通路7よりも大径な弁孔9に摺動自在に挿入される弁体10と、弁体10を附勢して弁体10を開弁位置に位置決めるばね11,12とを備えて構成されている。弁体10は、弁孔9の内周に摺接する胴部10aと、胴部10aの軸方向両端から軸方向へ突出し外径が第一通路7よりも大径な弁頭10b,10cと、弁頭10bの側方から開口して胴部10aを貫き弁頭10cの側方へ開口する弁体通路10dとを備えている。弁体10における胴部10aは、軸方向両側から弁孔9内に収容されるばね11,12によって挟持されている。ばね11,12は、ともに圧縮された状態で弁孔9内に収容されており、弁体10は、ばね11,12によって附勢されて弁孔9に対して中立位置に位置決められている。調整弁8は、弁体10が中立位置にあると弁頭10b,10cが第一通路7の弁孔9への図3中左右の開口部から離間しており、第一通路7を開放して伸側室R1と圧側室R2とを連通状態に維持する。これに対して、弁体10が図3中左方へ移動して弁頭10bが第一通路7の弁孔9への開口部へ当接するか、弁体10が図3中右方へ移動して弁頭10cが第一通路7の弁孔9への開口部を当接すると、第一通路7が閉塞されて伸側室R1と圧側室R2の第一通路7を介しての連通が絶たれる。
弁体10は、伸側室R1と圧側室R2の圧力を受けており、伸側室R1の圧力によって図3中右方側へ押圧され、圧側室R2の圧力によって図3中左方側へ押圧されている。そして、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力差が所定圧未満では弁体10が第一通路7を閉塞するまで移動せず調整弁8は開弁状態となり、伸側室R1の圧力と圧側室R2の圧力差が所定圧以上になると弁体10が第一通路7を閉塞する位置まで移動して調整弁8は閉弁状態となる。このように、調整弁8は、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が所定圧未満となると開弁するようになっており、所定圧は、弁体10が中立位置にある状態におけるばね11,12の附勢力である初期荷重とばね11,12のばね定数によって設定される。
また、本例では、第一通路7の設置位置は、ピストン2がシリンダ1に対して中立位置にあって、伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ充填される作動油Oの液面が等しくなった際に、丁度、第一通路7の図2中上下方向の幅に作動油Oの液面が位置するように設定してある。そして、免震用ダンパD11が伸縮後にシリンダ1に対してピストン2が中立位置に復帰して静止すると、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が少なくなって調整弁8が開弁する。すると、作動油Oの液面が伸側室R1と圧側室R2とで偏りがあっても、調整弁8の開弁により伸側室R1と圧側室R2とが連通状態となり、伸側室R1と圧側室R2との間で作動油Oと気体とがやり取りされ、伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの液面を等しくできる。
このように構成された免震用ダンパD11の作動について説明する。ピストン2がシリンダ1に対して図2に示す中立位置から左方へ移動すると、ピストン2の移動に伴って伸側室R1が圧縮されて容積が減少して、伸側室R1内の圧力が上昇する。反対の圧側室R2は、ピストン2の移動に伴って容積が拡大するので減圧される。伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて調整弁8が第一通路7を閉塞するため、第一通路7を介して伸側室R1から圧側室R2への作動油Oと気体の移動は規制される。ピストン2の移動による伸側室R1内の容積減少分は伸側室R1内の気体の体積の減少と減衰通路5を介しての作動油Oの排出により補償され、圧側室R2内の容積増大分は圧側室R2内の気体の体積の膨張と減衰通路5を介しての作動油Oの流入により補償される。ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では、伸側室R1内の気体の圧縮量と圧側室R2内の気体の膨張量が小さいために伸側室R1内の圧力上昇が抑制されるとともに圧側室R2内の圧力減少も抑制され、減衰通路5を通過する作動油量も少ない。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満である場合、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が小さく、免震用ダンパD11は、低い減衰力を発揮する。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側室R1内の気体の圧縮量と圧側室R2内の気体の膨張量が大きく、減衰通路5を通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する作動油量も多くなる。そして、ピストン2の移動距離に応じて伸側室R1と圧側室R2の圧力差も大きくなっていくので、免震用ダンパD11は、ピストン2の中立位置からの移動距離に応じて高い減衰力を発揮するようになる。
また、ピストン2がシリンダ1に対して図2に示す中立位置から右方へ移動すると、ピストン2の移動に伴って圧側室R2が圧縮されて容積が減少して、圧側室R2内の圧力が上昇する。反対の伸側室R1は、ピストン2の移動に伴って容積が拡大するので減圧される。圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて調整弁8が第一通路7を閉塞するため、第一通路7を介して圧側室R2から伸側室R1への作動油Oと気体の移動は規制される。ピストン2の移動による圧側室R2内の容積減少分は圧側室R2内の気体の体積の減少と減衰通路5を介しての作動油Oの排出により補償され、伸側室R1内の容積増大分は伸側室R1内の気体の体積の膨張と減衰通路5を介しての作動油Oの流入により補償される。ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では、圧側室R2内の気体の圧縮量と伸側室R1内の気体の膨張量が小さいために圧側室R2内の圧力上昇は抑制されるとともに伸側室R1内の圧力減少も抑制され、減衰通路5を通過する作動油量も少ない。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満である場合、圧側室R2と伸側室R1の圧力差が小さく、免震用ダンパD11は、低い減衰力を発揮する。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側室R2内の気体の圧縮量と伸側室R1内の気体の膨張量が大きく、減衰通路5を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する作動油量も多くなる。そして、ピストン2の移動距離に応じて圧側室R2と伸側室R1の圧力差も大きくなっていくので、免震用ダンパD11は、ピストン2の中立位置からの移動距離に応じて高い減衰力を発揮するようになる。
このように本例の免震用ダンパD11は、ピストン2が中立位置から移動して伸長しても収縮しても所定ストローク範囲未満でのストロークでは伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮される室の圧力上昇が抑えられて低い減衰力を発揮し、所定ストローク範囲以上のストロークでは伸側室R1と圧側室R2のうち圧縮される室の圧力上昇が妨げられなくなるので高い減衰力を発揮できる。なお、所定ストローク範囲は、免震用ダンパD11を設置する構造物Sの地盤Gに対するストローク限界等によって適するように設定されればよい。所定ストローク範囲は、伸側室R1の容積に対する伸側室R1における作動油Oの体積の割合と伸側室R1の気体の圧力の調節と、圧側室R2の容積に対する圧側室R2における作動油Oの体積の割合と圧側室R2の気体の圧力の調節によって設定できる。また、本例では、伸側室R1と圧側室R2に気体を充填しているが、気体を充填せず真空としても免震用ダンパD11は、同様の作動を呈する。真空とする場合には、所定ストローク範囲は、伸側室R1の容積に対する伸側室R1における作動油Oの体積の割合の調節と、圧側室R2の容積に対する圧側室R2における作動油Oの体積の割合の調節で設定すればよい。
よって、本例の免震用ダンパD11にあっては、ピストン2の中立位置からの移動距離が小さくなる中小振幅の規模の地震の揺れに対しては、低い減衰力を発揮し、大振幅の地震の揺れに対しては高い減衰力を発揮できる。また、免震用ダンパD11は、ピストン2の中立位置からの移動距離により低い減衰力と高い減衰力を切換えるのに際して、複雑な機構の装置を利用せずに済むので、免震用ダンパD11は、軽量かつ構造が簡単で安価となる。以上より、本発明の免震用ダンパD11によれば、中小振幅の規模の地震の揺れに対して低い減衰力を発揮し、大振幅の地震の揺れに対して高い減衰力を発揮できるとともに、免震用ダンパD11は、軽量かつ構造が簡単で安価となる。
また、本例の免震用ダンパD11にあっては、シリンダ1に対してピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では発生減衰力を低くし、所定ストローク範囲以上では発生減衰力を高くするようになっている。このように免震用ダンパD11を構成すると、所定ストローク範囲の設定で減衰力を高くするストローク量を決定できる。
さらに、本例の免震用ダンパD11では、シリンダ1に対してピストン2が中立位置に配置されて静止すると伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの液面の高さを等しくする液面調整部を備えている。このように構成された免震用ダンパD11では、地震動が収まって免震用ダンパD11が免震装置Mによってピストン2が中立位置に復帰して静止すると、伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの液面の高さに偏りがあってもこれを等しくさせる。よって、次回に地震が発生した際に、免震用ダンパD11は、ピストン2の中立位置からの移動距離が設定された距離(所定ストローク範囲)未満では伸長しても収縮しても必ず低い減衰力を発揮し、設定された距離(所定ストローク範囲)以上となると伸長しても収縮しても必ず高い減衰力を発揮できる。したがって、このように構成された免震用ダンパD11では、地震が発生後に伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの量を調節するメンテナンス作業が不要となる。
さらに、本例の免震用ダンパD11では、伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ充填される作動油Oの体積を伸側室R1と圧側室R2の容積の二分の一以上としているので、減衰力が高くなるピストン2の中立位置からの移動距離は、ピストン2の中立位置からストロークエンドまでの距離の二分の一以下となるので、構造物Sの擁壁への衝突を効果的に防止できる。
なお、前述したところでは、伸側室R1と圧側室R2に作動液体として作動油Oを充填するとともに気体を直接充填しているが、図4に示した第一の実施の形態の一変形例における免震用ダンパD12のように、伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ気体が充填される伸側気室G1と圧側気室G2を形成する伸側気室形成部材13と圧側気室形成部材14を設けて、液面調整部を廃止してもよい。
伸側気室形成部材13は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるとともに内周にロッド3が摺動自在に挿入される環状のフリーピストンとされており、ロッドガイド4との間に気体が充填される伸側気室G1を形成している。また、シリンダ1の内周には、伸側気室形成部材13の図4中左方側への移動を規制するストッパ15が装着されている。伸側気室形成部材13は、ピストン2がシリンダ1に対して中立位置に配置される状態では、ストッパ15から離間しており、ピストン2が図4中左方へ移動すると伸側気室G1を圧縮しつつ左方へ移動する。
圧側気室形成部材14は、シリンダ1内に摺動自在に挿入される円盤状のフリーピストンとされており、シリンダ1の一端を閉塞するキャップCとの間に気体が充填される圧側気室G2を形成している。また、シリンダ1の内周には、圧側気室形成部材14の図4中右方側への移動を規制するストッパ16が装着されている。圧側気室形成部材14は、ピストン2がシリンダ1に対して中立位置に配置される状態では、ストッパ16から離間しており、ピストン2が図4中右方へ移動すると圧側気室G2を圧縮しつつ右方へ移動する。
このように構成される免震用ダンパD12では、伸側気室形成部材13がストッパ15に当接するまでは左方へ移動できる。そして、ピストン2が中立位置から図4中左方への移動距離が所定ストローク範囲に達するまでは、伸側気室形成部材13がストッパ15に当接せず、所定ストローク範囲に達すると伸側気室形成部材13がストッパ15に当接するようになっている。
よって、免震用ダンパD12が伸長する際に、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、伸側気室形成部材13がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するから伸側室R1内の圧力は然程上昇しない。また、圧側気室形成部材14がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するから圧側室R2内の圧力は然程減少しない。このようにピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、伸側室R1と圧側室R2の圧力差は小さいため、免震用ダンパD12が発揮する減衰力は低くなる。
他方、ピストン2の中立位置からの左方への移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側気室形成部材13は、ストッパ15に当接してそれ以上伸側気室G1を圧縮する方向へ移動できなくなる。すると、ピストン2の移動によって伸側室R1内の作動油Oが圧縮されて伸側室R1における作動油Oが充填されている空間の圧力が大きく上昇し減衰通路5を通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する作動油量も多くなる。また、圧側気室形成部材14は、ピストン2の移動に応じて同方向へ移動するが圧側気室G2の容積拡大により圧側室R2内の圧力もピストン2が所定ストローク範囲未満で移動する場合よりも減少する。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が大きくなって、免震用ダンパD12は、高い減衰力の発揮で自身の伸長を妨げるようになる。
また、免震用ダンパD12では、圧側気室形成部材14がストッパ16に当接するまでは右方へ移動できる。そして、ピストン2が中立位置からの図4中右方への移動距離が所定ストローク範囲に達するまでは、圧側気室形成部材14がストッパ16に当接せず、所定ストローク範囲に達すると圧側気室形成部材14がストッパ16に当接するようになっている。
よって、免震用ダンパD12が収縮する際に、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、圧側気室形成部材14がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するから圧側室R2内の圧力は然程上昇しない。また、伸側気室形成部材13がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するから伸側室R1内の圧力は然程減少しない。このようにピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、圧側室R2と伸側室R1の圧力差は小さいため、免震用ダンパD12が発揮する減衰力は低くなる。
他方、ピストン2の中立位置から右方への移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側気室形成部材14は、ストッパ16に当接してそれ以上圧側気室G2を圧縮する方向へ移動できなくなる。すると、ピストン2の移動によって圧側室R2内の作動油Oが圧縮されて圧側室R2における作動油Oが充填されている空間の圧力が大きく上昇し減衰通路5を通過して圧側室R2から伸側室R1へ移動する作動油量も多くなる。また、伸側気室形成部材13は、ピストン2の移動に応じて同方向へ移動するが伸側気室G1の容積拡大により伸側室R1内の圧力もピストン2が所定ストローク範囲未満で移動する場合よりも減少する。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側室R2と伸側室R1の圧力差が大きくなって、免震用ダンパD12は、高い減衰力の発揮で自身の収縮を妨げるようになる。
また、この免震用ダンパD12では、伸長時には伸側気室形成部材13がストッパ15に当接するまでは低い減衰力を発揮し、収縮時には圧側気室形成部材14がストッパ16に当接するまでは低い減衰力を発揮するので、ストッパ15,16によって減衰力の高低の切換えができる。したがって、ストッパ15,16の設置位置によって所定ストローク範囲を容易に設定できる。つまり、伸側気室形成部材13と圧側気室形成部材14を停止させるようにすれば、減衰力の高低の切換えが可能となるので、減衰力が切換わるピストン2の中立位置からのストローク量を容易に設定できる。ストッパ15は、ロッドガイド4或いは伸側気室形成部材13に設けてもよいし、ストッパ16は、キャップC或いは圧側気室形成部材14に設けてもよい。なお、ストッパ15,16を設けない場合、所定ストローク範囲の設定は免震用ダンパD11と同様に設定できる。つまり、ピストン2が中立位置にある状態での伸側室R1の容積に対する伸側気室G1の容積の割合と伸側気室G1内の気体の圧力の調節と、ピストン2が中立位置にある状態での圧側室R2の容積に対する圧側気室G2の容積の割合と圧側気室G2内の気体の圧力の調節によって所定ストローク範囲を設定できる。
また、図5に示す免震用ダンパD13のように、伸側気室形成部材13は、ピストン2との間に伸側気室G1を形成し、圧側気室形成部材14は、ピストン2との間に圧側気室G2を形成してもよい。この場合、ピストン2の両側にそれぞれに伸側気室形成部材13と圧側気室形成部材14へ向けて突出するストッパ17,18を設けておけば、ストッパ17,18の軸方向長さによって減衰力の高低を切換える所定ストローク範囲の設定を行える。なお、伸側気室G1と圧側気室G2に、伸側気室形成部材13と圧側気室形成部材14をそれぞれピストン2が中立位置に復帰した際にもとの位置に戻す弾性体を設けてもよい。また、免震用ダンパD13のようにピストン2と伸側気室形成部材13との間に伸側気室G1を設け、ピストン2と圧側気室形成部材14との間に圧側気室G2を設ける場合には、図示したように減衰通路5と減衰弁6をシリンダ1外に設けてもよい。
さらに、図6に示す免震用ダンパD14のように、ロッド3或いはピストン2に伸側室R1と圧側室R2の一部として機能する空間を形成して、これら空間にそれぞれ伸側気室形成部材19と圧側気室形成部材20を挿入して伸側気室G1と圧側気室G2を形成してもよい。このようにすると、伸側気室形成部材19、圧側気室形成部材20、伸側気室G1および圧側気室G2は、免震用ダンパD14のストローク長に与える影響が少なくなるので、免震用ダンパD14の全長を短くしつつも必要なストローク長を確保しやすくなる。
また、図7に示す免震用ダンパD15のように、伸側気室形成部材21と圧側気室形成部材22は、内部空間でそれぞれ伸側気室G1と圧側気室G2を形成するとともに外部から作用する圧力によって伸側気室G1と圧側気室G2を拡縮できる容器であってもよい。容器は、ゴム等の弾性体やベローズ等で形成されればよい。
なお、免震用ダンパD12,D13,D14,D15では、伸側気室G1と圧側気室G2とに気体が収容されており、伸側気室G1と圧側気室G2とが互いに独立しているので、液面調整部を設けなくともピストン2が中立位置に静止すると作動油Oは、伸側室R1と圧側室R2とに設定体積通りに充填された状態となる。よって、次回に地震が発生した際に、免震用ダンパD12,D13,D14,D15は、ピストン2の中立位置からの移動距離が設定された距離(所定ストローク範囲)未満では伸長しても収縮しても必ず低い減衰力を発揮し、設定された距離(所定ストローク範囲)以上となると伸長しても収縮しても必ず高い減衰力を発揮できる。したがって、このように構成された免震用ダンパD12,D13,D14,D15では、地震が発生後に伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの量を調節するメンテナンス作業が不要となる。
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態における免震用ダンパD21は、図8に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されて伸側室R1と圧側室R2を仕切るピストン2と、シリンダ1に挿入されるとともにピストン2に連結されるロッド3と、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間の環状隙間でタンクTを形成する外筒30と、シリンダ1内およびタンクTに充填される作動液体としての作動油Oとを備えている。
以下、免震用ダンパD21の各部について詳細に説明する。シリンダ1の一端には、バルブケース31が嵌合されており、他端にはロッドガイド4が嵌合されている。外筒30の一端は、構造物Sに設けた取付部Bsに連結されるブラケット32aを備えてキャップ32によって閉塞され、外筒30の他端の内周にはロッドガイド4が装着されている。シリンダ1は、外筒30に装着されるロッドガイド4とキャップ32に当接するバルブケース31によって挟持されて外筒30内に収容されつつ固定されている。
ピストン2は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されており、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに仕切っている。また、ロッド3は、ロッドガイド4内を通してシリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるとともに、他端がシリンダ1外に突出している。本例では、免震用ダンパD21は、ロッド3が伸側室R1内にのみ挿通される所謂片ロッド型のダンパとされているが、圧側室R2にも挿通されてロッド3の両端がシリンダ1の両端側からそれぞれ外方へ突出する所謂両ロッド型のダンパとされもよい。
そして、免震用ダンパD11と同様に、伸側室R1には、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における伸側室R1の容積より少ない体積の作動油Oが気体とともに充填されている。他方の圧側室R2には、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における圧側室R2の容積より少ない体積の作動油Oが気体とともに充填されている。シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態で、伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの液面とタンクTにおける作動油Oの液面とが一致するように、タンクTにも作動油Oと気体とが充填されている。
なお、本例では、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における伸側室R1の容積の十分の七の体積の油量の作動油Oが伸側室R1に充填されており、伸側室R1の残りの空間に気体が充填されている。さらに、シリンダ1に対してピストン2が中立位置にある状態における圧側室R2の容積の十分の七の体積の油量の作動油Oが圧側室R2に充填されており、圧側室R2の残りの空間に気体が充填されている。なお、伸側室R1および圧側室R2にされる作動油Oの油量は、それぞれ、伸側室R1および圧側室R2の容積の二分の一以上充填されていればよい。
また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通する減衰通路5と、減衰通路5を通過する作動油Oの流れに抵抗を与える減衰弁6とが設けられている。さらに、バルブケース31には、圧側室R2とタンクTとを連通する減衰通路33と、減衰通路33を通過する作動油Oの流れに抵抗を与える減衰弁34と、タンクTから圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する吸込通路35とが設けられている。なお、減衰弁34には、減衰弁6と同様に種々の構造の減衰弁を利用でき、減衰弁34は、圧側室R2からタンクTへ向かう流体の流れのみを許容するものでもよい。
また、ピストン2は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する第一通路7と、第一通路7の途中に設置される調整弁8とを備えている。ロッドガイド4は、伸側室R1とタンクTとを連通する第二通路36と、第二通路36の途中に設置される調整弁37とを備えている。調整弁37は、調整弁8と同様の構成とされている。液面調整部は、本例では、第一通路7、調整弁8、第二通路36および調整弁37とで構成されており、伸側室R1とタンクTの圧力差が所定圧未満となると開弁するようになっている。
また、第二通路36の設置位置は、ピストン2がシリンダ1に対して中立位置にあって、伸側室R1、圧側室R2およびタンクTにそれぞれ充填される作動油Oの液面が等しい場合に、丁度、第二通路36の図8中上下方向の幅に作動油Oの液面が位置するように設定してある。そして、免震用ダンパD21が静止状態となると伸側室R1と圧側室R2の圧力差が少なく調整弁8が開弁し、伸側室R1とタンクTの圧力差が少なく調整弁37が開弁する。これにより、免震用ダンパD21が伸縮後にシリンダ1に対してピストン2が中立位置に復帰した際に作動油Oの液面が伸側室R1、圧側室R2およびタンクTで差ができても、調整弁8,37の開弁によって伸側室R1と圧側室R2とが第一通路7で連通され、伸側室R1とタンクTとが第二通路36によって連通されるので伸側室R1、圧側室R2およびタンクTの作動油Oの液面の高さを等しくできる。
このように構成された免震用ダンパD21の作動について説明する。ピストン2がシリンダ1に対して図8に示す中立位置から左方へ移動すると、ピストン2の移動に伴って伸側室R1が圧縮されて容積が減少して、伸側室R1内の圧力が上昇する。反対の圧側室R2は、ピストン2の移動に伴って容積が拡大するので吸込通路35を通じてタンクTから作動油Oが供給される。伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて調整弁8が第一通路7を閉塞するため、第一通路7を介して伸側室R1から圧側室R2への作動油Oと気体の移動は規制される。また、伸側室R1とタンクTの圧力に差が生じて調整弁37が第二通路36を閉塞するため、第二通路36を介して伸側室R1からタンクTへの作動油Oと気体の移動は規制される。
ピストン2の移動による伸側室R1内の容積減少分は伸側室R1内の気体の体積の減少により補償され、圧側室R2内の容積増大分はタンクTからの作動油Oの供給により補償される。ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では、伸側室R1内の気体の圧縮量が小さいために伸側室R1内の圧力上昇が抑制され、圧側室R2内はタンクTと略等圧となり圧力減少が小さいために減衰通路5を通過する作動油量も少ない。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満である場合、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が小さく免震用ダンパD21は、低い減衰力を発揮する。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側室R1内の気体の圧縮量が大きく、減衰通路5を通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する作動油量も多くなる。そして、ピストン2の移動距離に応じて伸側室R1と圧側室R2の圧力差も大きくなっていくので、免震用ダンパD21は、ピストン2の中立位置からの移動距離に応じて高い減衰力を発揮するようになる。
また、ピストン2がシリンダ1に対して図2に示す中立位置から右方へ移動すると、ピストン2の移動に伴って圧側室R2が圧縮されて容積が減少して、圧側室R2内の圧力が上昇する。反対の伸側室R1は、ピストン2の移動に伴って容積が拡大するので減圧される。圧側室R2と伸側室R1の圧力に差が生じて調整弁8が第一通路7を閉塞するため、第一通路7を介して圧側室R2から伸側室R1への作動油Oと気体の移動は規制される。また、伸側室R1とタンクTの圧力に差が生じて調整弁37が第二通路36を閉塞するため、第二通路36を介してタンクTから伸側室R1への作動油Oと気体の移動は規制される。
ピストン2の移動による圧側室R2内の容積減少分は圧側室R2内の気体の体積の減少と減衰通路5,33を介して作動油Oの排出により補償され、伸側室R1内の容積増大分は減衰通路5を介しての作動油Oの流入と伸側室R1内の気体の体積の膨張により補償される。ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では、圧側室R2内の気体の圧縮量と伸側室R1内の気体の膨張量が小さいために圧側室R2内の圧力上昇は抑制されるとともに伸側室R1内の圧力減少も抑制され、減衰通路5,33を通過する作動油量も少ない。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満である場合、圧側室R2と伸側室R1の圧力差が小さいから、免震用ダンパD21は低い減衰力を発揮する。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側室R2内の気体の圧縮量と伸側室R1内の気体の膨張量が大きく、減衰通路5,33を通過して圧側室R2から伸側室R1およびタンクTへ移動する作動油量も多くなる。そして、ピストン2の移動距離に応じてシリンダ1内の圧力が大きくなっていくので、免震用ダンパD21は、ピストン2の中立位置からの移動距離に応じて高い減衰力を発揮するようになる。
このように第二の実施の形態における免震用ダンパD21は、ピストン2が中立位置から移動して伸長しても収縮しても所定ストローク範囲未満でのストロークでは低い減衰力を発揮し、所定ストローク範囲以上のストロークでは高い減衰力を発揮できる。なお、所定ストローク範囲は、免震用ダンパD21を設置する構造物Sの地盤Gに対するストローク限界等によって適するように設定されればよい。所定ストローク範囲は、伸側室R1の容積に対する伸側室R1における作動油Oの体積の割合と伸側室R1の気体の圧力の調節と、圧側室R2の容積に対する圧側室R2における作動油Oの体積の割合と圧側室R2の気体の圧力の調節によって設定できる。また、本例では、伸側室R1と圧側室R2に気体を充填しているが、気体を充填せず真空としても免震用ダンパD11は、同様の作動を呈する。真空とする場合には、所定ストローク範囲は、伸側室R1の容積に対する伸側室R1における作動油Oの体積の割合の調節と、圧側室R2の容積に対する圧側室R2における作動油Oの体積の割合の調節で設定すればよい。
よって、本例の免震用ダンパD21にあっては、ピストン2の中立位置からの移動距離が小さくなる中小振幅の規模の地震の揺れに対しては、低い減衰力を発揮し、大振幅の地震の揺れに対しては高い減衰力を発揮できる。また、免震用ダンパD21は、ピストン2の中立位置からの移動距離によって低い減衰力と高い減衰力を切換えるのに際して、複雑な機構の装置を利用せずに済むので、免震用ダンパD21は、軽量かつ構造が簡単で安価となる。以上より、本発明の免震用ダンパD21によれば、中小振幅の規模の地震の揺れに対して低い減衰力を発揮し、大振幅の地震の揺れに対して高い減衰力を発揮できるとともに、免震用ダンパD21が軽量かつ構造が簡単で安価となる。
また、本例の免震用ダンパD21にあっては、シリンダ1に対してピストン2が中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲未満では発生減衰力を低くし、所定ストローク範囲以上では発生減衰力を高くするようになっている。このように免震用ダンパD21を構成すると、所定ストローク範囲の設定で減衰力を高くするストローク量を決定できる。
また、本例の免震用ダンパD21においても、伸側室R1と圧側室R2にそれぞれ充填される作動油Oの体積を伸側室R1と圧側室R2の容積の二分の一以上とするとよい。このように本例の免震用ダンパD21を構成すれば、ピストン2が中立位置からストロークエンドまでの距離の二分の一以下のストロークで高い減衰力を発揮できるようになり、構造物Sの擁壁への衝突を効果的に防止できる。
さらに、本例の免震用ダンパD21では、シリンダ1に対してピストン2が中立位置に配置されて静止すると、調整弁8と調整弁37が開弁するので、伸側室R1、圧側室R2およびタンクTが第一通路7と第二通路36によって連通状態とされる。このように構成された免震用ダンパD21では、地震動が収まって免震用ダンパD21が免震装置Mによってピストン2が中立位置に復帰して静止すると、伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの液面の高さに偏りがあってもこれを等しくさせる。よって、次回に地震が発生した際に、免震用ダンパD21は、ピストン2の中立位置からの移動距離が設定された距離(所定ストローク範囲)未満では伸長しても収縮しても必ず低い減衰力を発揮し、設定された距離(所定ストローク範囲)以上となると伸長しても収縮しても必ず高い減衰力を発揮できる。したがって、このように構成された免震用ダンパD21では、地震が発生後に伸側室R1と圧側室R2の作動油Oの量を調節するメンテナンス作業が不要となる。
なお、図9に示す第二の実施の形態の一変形例の免震用ダンパD22のように、第二通路36の設置に代えて、バルブケース31に対して圧側室R2とタンクTとを連通する第三通路38と、第三通路38の途中に設置した調整弁39を設けてもよい。液面調整部は、シリンダ1に対してピストン2が中立位置に配置されて静止すると、伸側室R1、圧側室R2およびタンクTを連通状態とすればよいので、第一通路7、第二通路36および第三通路38の全部或いは任意の二つの通路と、各通路に設けた調整弁とで構成されればよい。
また、図10に示す第二の実施の形態の一変形例の免震用ダンパD23のように、伸側室R1とタンクTとを途中に減衰弁41を備える減衰通路40で連通して、ピストン2には圧側室R2から伸側室R1へ向かう流体の流れのみを許容する整流通路42を設けてもよい。この場合、免震用ダンパD23は、伸縮時にシリンダ1から減衰通路40を通じてタンクTへ作動油Oが排出されるユニフロー型のダンパに設定される。このように構成しても免震用ダンパD23は、免震用ダンパD21と同様に、ピストン2が中立位置から移動して伸長しても収縮しても所定ストローク範囲未満でのストロークでは低い減衰力を発揮し、所定ストローク範囲以上のストロークでは高い減衰力を発揮できる。
さらに、この第二の実施の形態の免震用ダンパD21,D22,D23に対しても、免震用ダンパD12,D13のように伸側気室形成部材と圧側気室形成部材をフリーピストンとして伸側室R1内に伸側気室G1を形成し、圧側室R2内に圧側気室G2を形成する構造を採用できる。この場合、図11に示した免震用ダンパD24のように、シリンダ1内に摺動自在に挿入される伸側気室形成部材50と圧側気室形成部材51を設けて伸側気室G3と圧側気室G4を形成してもよい。
詳細には、伸側気室形成部材50は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるとともに内周にロッド3が摺動自在に挿入される環状のフリーピストンとされており、ロッドガイド4との間に気体が充填される伸側気室G3を形成している。伸側気室G3内には、ロッドガイド4と伸側気室形成部材50との間に介装されるばね部材52が収容されている。また、伸側気室G3は、タンクTの作動油Oの液面より上方の気体が充填される空間に連通されている。
圧側気室形成部材51は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるとともに内周にバルブケース31に設けた円柱状のガイド軸31aが摺動自在に挿入される環状のフリーピストンとされており、バルブケース31との間に気体が充填される圧側気室G4を形成している。圧側気室G4内には、バルブケース31と圧側気室形成部材51との間に介装されるばね部材53が収容されている。また、圧側気室G4は、タンクTの作動油Oの液面より上方の気体が充填される空間に連通されている。
この免震用ダンパD24におけるバルブケース31は、圧側室R2側へ向けて突出するガイド軸31aを備えており、圧側室R2とタンクTとを連通する減衰通路33と吸込通路35はガイド軸31aの先端に開口しており、圧側気室形成部材51によって閉塞されないよう配慮されている。
このように免震用ダンパD24では、伸側気室G3と圧側気室R4は、免震用ダンパD24が伸縮してタンクT内の作動油Oの液面が上下しても常にタンクT内の気体が充填されている空間に連通されるようになっている。このように伸側気室G3と圧側気室R4は、タンクTを通じて常時連通されており、内部の圧力が等しくなるようになっている。また、ばね部材52とばね部材53は、供にコイルばねとされており、免震用ダンパD24が伸縮した後にピストン2がシリンダ1に対して中立位置に復帰すると、伸側気室形成部材50と圧側気室形成部材51を元の位置を戻すようになっている。
このように構成される免震用ダンパD24では、ばね部材52が最収縮するまでは伸側気室形成部材50が左方へ移動できる。そして、ピストン2が中立位置から図11中左方への移動距離が所定ストローク範囲に達するまでは、伸側気室形成部材50が左方へ移動してもばね部材52が最収縮せず、所定ストローク範囲に達するとばね部材52が最収縮して伸側気室形成部材50の左方への移動が規制される。つまり、ばね部材52は、伸側気室形成部材50を元の位置へ復帰させるだけでなくストッパとしても機能しているが、免震用ダンパD12と同様にストッパを設けてもよい。
よって、免震用ダンパD24が伸長する際に、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、伸側気室形成部材50がピストン2の移動に応じて同方向へ移動する。また、圧側気室形成部材51がピストン2の移動に応じて同方向へ移動する。伸側気室G3と圧側気室G4はタンクTを介して連通されており、伸側気室G3が伸側気室形成部材50の左方への移動によって圧縮されても、圧側気室G4が圧側気室形成部材51の左方への移動によって拡大される。このように免震用ダンパD24が伸長する場合、伸側気室G3と圧側気室G4とタンクT内における気体が充填される空間の全容積、つまり、全気室の容積は、ロッド3がシリンダ1から退出する体積分だけ増大する。よって、減衰通路5を流体が通過する際の圧力損失を無視すれば力の釣り合いから、伸側室R1における圧力上昇量は、ばね部材52の圧縮によって受ける力による圧力上昇から全気室の増大に見合う圧力減少を差し引いた量となる。他方、減衰通路5を流体が通過する際の圧力損失を無視すれば力の釣り合いから、圧側室R2における圧力減少量は、ばね部材53の伸長によって受ける力による圧力減少と全気室の増大に見合う圧力減少を加算した量となる。以上から、ばね部材52,53のばね定数を小さくすれば、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が非常に小さくなり、免震用ダンパD24は、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲内でストロークする場合、非常に小さい減衰力しか発揮しない。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側気室形成部材50は、ばね部材52の最圧縮によってそれ以上伸側気室G3を圧縮する方向へ移動できなくなる。すると、ピストン2の移動によって伸側室R1内の作動油Oが圧縮されて伸側室R1における作動油Oが充填されている空間の圧力が大きく上昇し減衰通路5を通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する作動油量が多くなる。また、圧側気室形成部材51がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するが、圧側気室G4がタンクT内に連通されており、圧側室R2には、吸込通路35を通じてロッド3がシリンダ1から退出する体積分の作動油が供給される。よって、圧側室R2内の圧力は、ばね部材53の伸長によって作用する力の分だけタンクT内より低い圧力となる。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、伸側室R1と圧側室R2の圧力差が大きくなって、免震用ダンパD24は、高い減衰力の発揮で自身の伸長を妨げるようになる。
また、免震用ダンパD24では、ばね部材53が最収縮するまでは圧側気室形成部材51が右方へ移動できる。そして、ピストン2が中立位置から図11中右方への移動距離が所定ストローク範囲に達するまでは、圧側気室形成部材51が右方へ移動してもばね部材53が最収縮せず、所定ストローク範囲に達するとばね部材53が最収縮して圧側気室形成部材51の右方への移動が規制される。つまり、ばね部材53は、圧側気室形成部材51を元の位置へ復帰させるだけでなくストッパとしても機能しているが、免震用ダンパD12と同様にストッパを設けてもよい。
よって、免震用ダンパD24が収縮する際に、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲未満でストロークする場合には、圧側気室形成部材51がピストン2の移動に応じて同方向へ移動する。また、伸側気室形成部材50がピストン2の移動に応じて同方向へ移動する。伸側気室G3と圧側気室G4はタンクTを介して連通されており、圧側気室G4が圧側気室形成部材51の右方への移動によって圧縮されても、伸側気室G3が伸側気室形成部材50の右方への移動によって拡大される。よって、免震用ダンパD24が収縮する場合、伸側気室G3と圧側気室G4とタンクT内における気体が充填される空間の全容積、つまり、全気室の容積は、ロッド3がシリンダ1へ侵入する体積分だけ減少する。よって、減衰通路5,33を流体が通過する際の圧力損失を無視すれば力の釣り合いから、圧側室R2における圧力上昇量は、ばね部材53の圧縮によって受ける力による圧力上昇から全気室の減少に見合う圧力増大を加算した量となる。他方、減衰通路5,33を流体が通過する際の圧力損失を無視すれば力の釣り合いから、伸側室R1における圧力減少量は、ばね部材52の伸長によって受ける力による圧力減少から全気室の減少に見合う圧力増大を差し引いた量となる。以上から、ばね部材52,53のばね定数を小さくすれば、圧側室R2と伸側室R1の圧力差が非常に小さくなり、免震用ダンパD24は、ピストン2が中立位置から所定ストローク範囲内でストロークする場合、非常に小さい減衰力しか発揮しない。
他方、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側気室形成部材51は、ばね部材53の最圧縮によってそれ以上圧側気室G4を圧縮する方向へ移動できなくなる。すると、ピストン2の移動によって圧側室R2内の作動油Oが圧縮されて圧側室R2における作動油Oが充填されている空間の圧力が大きく上昇し減衰通路5および減衰通路33を通過する作動油量が多くなる。また、伸側気室形成部材50がピストン2の移動に応じて同方向へ移動するが、伸側気室G3がタンクT内に連通されている。よって、伸側室R1内の圧力は、ばね部材52の伸長によって作用する力の分だけタンクT内より低い圧力となる。よって、ピストン2の中立位置からの移動距離が所定ストローク範囲以上となると、圧側室R2と伸側室R1の圧力差が大きくなって、免震用ダンパD24は、高い減衰力の発揮で自身の伸長を妨げるようになる。
免震用ダンパD24では、伸側気室G3と圧側気室G4とがタンクTの気体が充填される空間に連通されて全気室の容積が大きくなるため、伸縮時において伸側気室G3と圧側気室G4内の圧力変動が少なくなる。よって、本例の免震用ダンパD24は、減衰力を低減したい範囲でピストン2がストロークする際に発揮する減衰力をより一層低くできる。なお、伸側気室G3と圧側気室G4をタンクTに連通しない構造の採用も可能であり、ピストン2との間に伸側気室G3と圧側気室G4を形成してもよい。
また、この免震用ダンパD24では、伸長時にはばね部材52が最圧縮するまでは伸側気室形成部材50が左方へ移動できるので低い減衰力を発揮し、収縮時にはばね部材53が最圧縮するまでは圧側気室形成部材51が右方へ移動できるので低い減衰力を発揮する。よって、ばね部材52,53によって減衰力の高低の切換えができる。したがって、ばね部材52,53の密着長によって所定ストローク範囲を容易に設定できるが、ストッパを別途設けて所定ストローク範囲を設定してもよい。また、ばね部材52,53は、ピッチが途中で変わるコイルばねか或いはピッチの異なるコイルばねを直列配置した二段ばねとしておき、ピッチが狭い部位が最圧縮されるとばね定数が大きくなるようにしておき、ピッチが狭い部位の最圧縮によって伸側気室形成部材50および圧側気室形成部材51の移動を大きく妨げるようにしてもよい。このようにすれば、ピッチが狭い部位が最圧縮されると免震用ダンパ24の減衰力を高くでき、所定ストローク範囲を設定できる。なお、ばね部材52,53は、コイルばねのほか、ゴム等の弾性体で構成されてもよい。ばね部材52,53を省略する場合には、ピストン2が中立位置にある状態での伸側気室G3と圧側気室G4内の圧力によって伸側気室形成部材50と圧側気室形成部材51とが元の位置に復帰できるようにしつつ所定ストローク範囲を設定すればよい。
また、第二の実施の形態の免震用ダンパD21,D22,D23におけるロッド3或いはピストン2に伸側室R1と圧側室R2の一部として機能する空間を形成して、これら空間にそれぞれ伸側気室形成部材19と圧側気室形成部材20を挿入して伸側気室G1と圧側気室G2を形成してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形及び変更が可能である。