以下、本発明のエアバッグ装置のカバー体の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図6において、10は車両である自動車のハンドルとしてのステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ハンドル本体としてのステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるエアバッグ装置12とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面側とし、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
そして、ステアリングホイール本体11は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部14と、このリム部14の内側に位置するボス部15と、これらリム部14とボス部15とを連結する複数のスポーク部16とから構成されている。
また、図示しないが、ボス部15の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、このボスに芯体を構成するボスプレートがマグネシウム合金などをダイカストで鋳ぐるむなどして一体的に固着されている。そして、このボスプレートから、スポーク部16の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部16の芯金に、リム部14の芯金が溶接などして固着されている。また、これらリム部14の芯金の外周部と、スポーク部16の芯金のリム部14側の部分の外周部とには、軟質の発泡ポリウレタンなどからなる表皮部が形成され、さらに、この表皮部の外周の全部あるいは一部が、天然あるいは人工の皮革により覆われている。
一方、エアバッグ装置12は、エアバッグモジュールとも呼ばれ、ステアリングホイール本体11のボス部の正面側を覆うように配置されるもので、金属板などからなる被取付部材としてのベースプレート、袋状のエアバッグ、ガスを噴射するインフレータなどを備えるとともに、図1などに示す樹脂製のカバー体18を備えている。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体11に取り付けられ、このベースプレートに、エアバッグ、インフレータ、及びカバー体18が取り付けられ、小さく折り畳まれたエアバッグがカバー体18により覆われている。
カバー体18は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれるもので、例えばTPOなどの軟質の合成樹脂などにて一体成形されたカバー本体部19と、このカバー本体部19に取り付けられた装飾部材としてのエンブレム20とを備えている。
カバー本体部19は、ボス部15及びスポーク部16の一部を覆う被覆部としての表板部21と、この表板部21の背面(裏面)から正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部22とを備えている。そして、表板部21と周板部22とに囲まれた部分が、折り畳んだエアバッグを収納するエアバッグ収納部となり、このエアバッグ収納部の正面側に臨む部分が被取付部としての正面板部23となるとともに、この正面板部23の意匠面である正面側の中央部に、エンブレム20が収納される収納部としての取付凹部24が凹設されている。また、表板部21には、エアバッグ収納部に臨み、正面板部23の取付凹部24を避けた位置にテアライン25が形成され、このテアライン25の開裂によりエアバッグの展開時に複数の扉部が形成される。このテアライン25は、予定線部あるいは破断予定部となどとも呼び得るもので、正面板部23の背面(裏面)側を溝状に凹設し、正面板部23の他の部分より脆弱な弱部として形成されている。このテアライン25は、設定したい扉部の形状及び枚数に応じて任意に設定できるが、本実施の形態では、例えば取付凹部24の一側部から上部を経由して他側部に連続するように形成されている。したがって、扉部は、正面板部23の取付凹部24の下部をヒンジ部として下方に展開するようになっている。
周板部22には、ベースプレートとカバー体18とを係合するための係合爪部22a及び係合開口部22bなどが複数設けられている。
取付凹部24は、エンブレム20の形状に対応して設けられており、本実施の形態では、例えば正面から見て略円形状となっている。この取付凹部24(正面板部23)には、エンブレム20を取り付けるためのカバー開口部28及び挿通開口部29が複数開口されている。これらカバー開口部28は、円形状に形成されており、正面板部23(取付凹部24)を厚さ方向である前後方向に貫通して設けられている。
カバー開口部28は、例えば円形状に形成されており、正面板部23(取付凹部24)を厚さ方向である前後方向に貫通している。これらカバー開口部28は、エンブレム20を上下左右にバランスよく固定できれば、その形状などに応じて適宜設定できるが、本実施の形態では、例えば両側部に位置する第1のカバー開口部28a,28aと、これら第1のカバー開口部28a,28a間の左右方向の略中央部にてこれら第1のカバー開口部28a,28aに対して上下方向、例えば上側にずれた第2のカバー開口部28bとが設定されている。したがって、本実施の形態では、カバー開口部28は、例えば底辺を下側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。
また、挿通開口部29は、例えばカバー開口部28と略等しい大きさ及び形状の円形状に形成されており、正面板部23(取付凹部24)を厚さ方向である前後方向に貫通している。これらカバー開口部28は、エンブレム20を上下左右にバランスよく固定できれば、その形状などに応じて適宜設定できるが、本実施の形態では、例えば第1のカバー開口部28a,28a間でかつ第2のカバー開口部28bの両側に位置する第1の挿通開口部29a,29aと、これら第1の挿通開口部29a,29a間の左右方向の略中央部にてこれら第1の挿通開口部29a,29aに対して上下方向、例えば下側にずれ第2の挿通開口部29bとが設定されている。この第2の挿通開口部29bは、第2のカバー開口部28bの下方に位置している。また、第2のカバー開口部28bと第2の挿通開口部29bとは、第1の挿通開口部29a,29aに対して上下方向に線対称に配置されている。したがって、本実施の形態では、挿通開口部29は、底辺をカバー開口部28と反対側である上側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。このため、カバー開口部28及び挿通開口部29は、本実施の形態では、全体として略左右対称な配置となっている。
また、エンブレム20は、オーナメントなどとも呼ばれるもので、硬質または軟質の合成樹脂により成形され適宜塗装やメッキなどの表面処理が施された他の装飾体としての第1のエンブレム体31と、合成樹脂により成形され適宜表面処理が施された一の装飾体としての第2のエンブレム体32と、例えば硬質の合成樹脂により成形された係合台座部としてのバックプレート33とを備える多層構造であり、これら第1及び第2のエンブレム体31,32とバックプレート33とでカバー体18の正面板部23(取付凹部24)を挟み込んで固定されている(図3)。
第1のエンブレム体31は、デザインオーナメント、アッパプレート、あるいはアッパエンブレムなどとも呼ばれるもので、第2のエンブレム体32の一部を覆って正面板部23(取付凹部24)の反エアバッグ側である正面側に取り付けられる。この第1のエンブレム体31は、種々の形状とすることが可能であるが、本実施の形態では、左右方向に長手方向を有する略楕円(長円)枠状の他の装飾体本体としての第1のエンブレム本体35と、この第1のエンブレム本体35の内部に左右方向に沿って架け渡された連続部36とを備え、左右方向に線対称な形状となっている(図2及び図4(a))。また、第1のエンブレム体31の背面(裏面)側、すなわち正面板部23(取付凹部24)に対向する側には、単数、または複数、本実施の形態では3つの他の脚部である他の係合部としてのピン37が正面背面方向(前後方向)に沿って突設されている(図1及び図4(b))。したがって、第1のエンブレム体31には、第1のエンブレム本体35と連続部36との間に、これら第1のエンブレム本体35と連続部36とにより囲まれた開口38,38が形成されている。
第1のエンブレム本体35は、第1のエンブレム体31の意匠の周辺となる周辺部(枠部)である。
連続部36は、第1のエンブレム体31の意匠の中央となる中央部であり、例えば第1のエンブレム本体35よりも細幅状に形成されている。また、この連続部36は、意匠に応じて任意の形状とすることができるが、本実施の形態では、例えば上側に凸状に湾曲した円弧状に形成されている。
さらに、ピン37は、カバー開口部28に挿通されバックプレート33に係合されることで第1のエンブレム体31をカバー体18側であるバックプレート33に係合固定するもので、略円柱状に形成され、先端部に、基端側に対して段差状に径大となる係止本体部41を有している。
ここで、このピン37の配置は、第1のエンブレム体31を上下左右にバランスよく支持できれば、その形状などに応じて適宜設定できるが、本実施の形態では、例えば第1のエンブレム本体35の両側部に位置する第1のピン37a,37aと、連続部36に位置する第2のピン37bとが設定され、正面から見て底辺を下側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。すなわち、第2のピン37bは、第1のピン37a,37aの左右方向の略中央部で、かつ、これら第1のピン37a,37aに対して上下方向、本実施の形態では上方にずれて位置している。
また、第2のエンブレム体32は、台座部、あるいはミッドエンブレムなどとも呼ばれるもので、正面板部23(取付凹部24)の反エアバッグ側である正面側に取り付けられ、第1のエンブレム体31と組み合わされることで1つの意匠を構成している。この第2のエンブレム体32は、意匠面である正面側に、第1のエンブレム体31の第1のエンブレム本体35が嵌合する溝状の本体嵌合凹部43と、この本体嵌合凹部43に連続し連続部36が嵌合する溝状の連続嵌合凹部44とが形成されている。したがって、この第2のエンブレム体32の正面側は、各嵌合凹部43,44を除く位置が、第1のエンブレム体31の開口38,38などに嵌合する上下の嵌合凸部45,45となっている。なお、本実施の形態では、第2のエンブレム体32が第1のエンブレム体31と略等しい外縁を有しているため、本体嵌合凹部43が第2のエンブレム体32の外縁に沿って溝状に形成されているが、第2のエンブレム体32の外縁が第1のエンブレム体31の外縁よりも大きく形成されている場合には、本体嵌合凹部43の外側に、第1のエンブレム体31(第1のエンブレム本体35)の外縁の一部を囲む嵌合凸部が形成されていてもよい。そして、この第2のエンブレム体32には、第1のエンブレム体31のピン37を挿通する単数、または複数の連通開口部47が開口されているとともに、背面(裏面)側、すなわち正面板部23(取付凹部24)に対向する側に、単数、または複数、本実施の形態では3つの一の脚部である一の係合部としての係合ピン48が正面背面方向(前後方向)に沿って突設されている。
嵌合凸部45,45は、第1のエンブレム体31の第1のエンブレム本体35及び連続部36の表面と略面一となる部分であり、本実施の形態ではそれぞれ島状に設けられている。
連通開口部47は、第2のエンブレム体32が正面板部23に取り付けられた(取付凹部24に嵌合された)状態でカバー開口部28と連通し、第1のエンブレム体31のピン37が挿通されるもので、本実施の形態では、例えば円形状に形成され、第2のエンブレム体32を厚さ方向に貫通している。すなわち、この連通開口部47は、エンブレム20を上下左右にバランスよく固定できれば、その形状などに応じて適宜設定できるが、本実施の形態では、例えば両側部にて本体嵌合凹部43に位置して第1のピン37a,37aが挿通される第1の連通開口部47a,47aと、これら第1の連通開口部47a,47a間の左右方向の略中央部にてこれら第1の連通開口部47a,47aに対して上下方向にずれ連続嵌合凹部44に位置する第2の連通開口部47bとが設定されている。したがって、本実施の形態では、連通開口部47は、例えば底辺を下側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。
係合ピン48は、挿通開口部29に挿通されバックプレート33に係合されることで第2のエンブレム体32をカバー体18側であるバックプレート33に係合固定するもので、略円柱状に形成され、先端部に、基端側に対して段差状に径大となる係止本体部51を有している。
ここで、この係合ピン48の配置は、第2のエンブレム体32を上下左右にバランスよく支持できれば、その形状などに応じて適宜設定できるが、本実施の形態では、例えば下側の嵌合凸部45に位置して左右に離間され第1の挿通開口部29a,29aに挿通される第1の係合ピン48a,48aと、これら第1の係合ピン48a,48a間の左右方向の略中央部にてこれら第1の係合ピン48a,48aに対して下方にずれ第2の挿通開口部29bに挿通される第2の係合ピン48bとが設定され、正面から見て底辺を上側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。
また、バックプレート33は、ロワエンブレムなどとも呼ばれるもので、第1及び第2のエンブレム体31,32を正面板部23(取付凹部24)に固定できれば種々の形状とすることができるが、例えば角部が円弧状に湾曲する略三角形状の板状に形成されて左右方向に線対称となっており、第1及び第2のエンブレム体31,32の各ピン37,48が嵌挿(圧入)されて係止される複数の係止受部としての係合孔部53が、ピン37,48の本数に対応して設けられている。
係合孔部53は、例えば円形状に形成されており、内縁に、ピン37,48の係止本体部41,51を係合する爪部55が突設されている。この爪部55は、係合孔部53の径方向に沿って放射状に設けられた溝部56によって複数、例えば3つに分割されており(図5)、係合孔部53に嵌挿されたピン37,48の係止本体部41,51によって弾性変形された後に復帰変形して係止本体部41,51を係合保持するようになっている。そして、係合孔部53には、ピン37の第1のピン37a,37aが嵌挿される第1の係合孔部53a,53aと、ピン37の第2のピン37bが嵌挿される第2の係合孔部53bと、係合ピン48の第1の係合ピン48a,48aが嵌挿される第3の係合孔部53c,53cと係合ピン48の第2の係合ピン48bが嵌挿される第4の係合孔部53dとが設定されている。すなわち、本実施の形態では、第1の係合孔部53a,53aがバックプレート33の両側部に位置し、第2の係合孔部53bがこれら第1の係合孔部53a,53a間の左右方向の略中央部にてこれら第1の係合孔部53a,53aに対して上下方向、例えば上側にずれて位置し、第3の係合孔部53c,53cが第1の係合孔部53a,53a間でかつ第2の係合孔部53bの両側に位置し、第4の係合孔部53dがこれら第3の係合孔部53c,53c間の左右方向の略中央部にてこれら第3の係合孔部53c,53c及び第1の係合孔部53a,53aに対して上下方向、例えば下側にずれて位置している。また、第2の係合孔部53bと第4の係合孔部53dとは、第1の係合孔部53a,53a及び第3の係合孔部53c,53cに対して上下方向に線対称に配置されている。したがって、本実施の形態では、係合孔部53は、第1の係合孔部53a,53aと第2の係合孔部53bとが、底辺を下側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置され、第3の係合孔部53c,53cと第4の係合孔部53dとが、底辺を上側とし左右対称の仮想的な二等辺三角形の各頂点上に配置されている。このため、係合孔部53は、本実施の形態では、全体として略左右対称な配置となっている。
また、係合孔部53は、第1の係合孔部53a,53a及び第4の係合孔部53dが、例えば溝部56を下部及び両側部に有する一の係合孔部となっており、第2の係合孔部53b及び第3の係合孔部53c,53cが、例えば溝部56を上部及び両側部に有する他の係合孔部となっている。すなわち、一の係合孔部となる第1の係合孔部53a,53a及び第4の係合孔部53dは、ピン37及び係合ピン48に対して下側の両側及び上側に爪部55が設定され、他の係合孔部となる第2の係合孔部53b及び第3の係合孔部53c,53cは、ピン37及び係合ピン48に対して上側の両側及び下側に爪部55が設定される。したがって、第1の係合孔部53a,53a及び第4の係合孔部53dと、第2の係合孔部53b及び第3の係合孔部53c,53cとは、爪部55の位置が互いに上下方向に対称な形状となっている。
そして、カバー体18の製造の際には、正面板部23を含む表板部21及び周板部22を予め合成樹脂により射出成形した後、別途成形した第2のエンブレム体32を、係合ピン48を挿通開口部29に挿通して取付凹部24に嵌合させる。この状態で、第2のエンブレム体32の連通開口部47が正面板部23のカバー開口部28と位置合わせされて互いに連通する。さらに、別途成形した第1のエンブレム体31を、第2のエンブレム体32に被せながら、ピン37を連通開口部47及びカバー開口部28に挿通し、第1のエンブレム本体35及び連続部36を第2のエンブレム体32の本体嵌合凹部43及び連続嵌合凹部44に嵌合させ、第2のエンブレム体32の嵌合凸部45,45を第1のエンブレム体31の開口38,38に嵌合させる。そして、さらに別途成形したバックプレート33を正面板部23の取付凹部24の背面側に配置し、このバックプレート33の係合孔部53に対して、各開口部28,29から突出する第1及び第2のエンブレム体31,32のピン37,48の係止本体部41,51を含む先端側を嵌挿(圧入)することで、係止本体部41,51が係合孔部53を貫通してバックプレート33の裏面側に係止される。この結果、第1及び第2のエンブレム体31,32とバックプレート33とにより、正面板部23(取付凹部24)が正面背面方向に挟み込まれた状態でエンブレム20が強固に固定される。また、この状態で、エンブレム20は、第1及び第2のエンブレム体31,32が取付凹部24に収納され、この取付凹部24の周囲の正面板部23の表面から大きく突出することなく、略面一となっている。
このカバー体18を備えたエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、エアバッグにガスを供給する。すると、エアバッグが急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力でカバー体18をテアライン25に沿って破断し、扉部を形成し、この扉部がヒンジ部を軸として回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口を形成し、この突出口からエアバッグが乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
このように、本実施の形態によれば、正面板部23を貫通して設けたカバー開口部28と第2のエンブレム体32の連通開口部47とを連通させるとともに、これら連通開口部47及びカバー開口部28に第1のエンブレム体31のピン37を挿通して係合することで、複数のエンブレム体31,32を備えるエンブレム20を簡単な構造で正面板部23に確実に固定できる。
特に、本実施の形態では、正面板部23をカバー開口部28とは別個に貫通して設けた挿通開口部29に第2のエンブレム体32の係合ピン48を挿通して係合することで、第2のエンブレム体32自体も、単に第1のエンブレム体31と正面板部23との間に挟み込まれているだけでなく、正面板部23に対して強固に固定できる。
また、正面板部23のエアバッグ側に、連通開口部47及びカバー開口部28に挿通されたピン37と係合して第1及び第2のエンブレム体31,32との間で正面板部23を挟み込むバックプレート33を配置することで、エンブレム20をより強固に固定できるとともに、正面板部23に、ピン37を係合するための構成を設ける必要がなく、カバー本体部19の成形型を複雑な形状とすることなく安価に製造できる。
同様に、バックプレート33は、係合ピン48と係合して第2のエンブレム体32をも直接保持できるので、エンブレム20をより強固に固定できる。
しかも、バックプレート33は、カバー本体部19と別体であるため、このカバー本体部19を構成する材質と異なる材質で形成できるので、カバー本体部19とバックプレート33との材質を、それぞれの機能に応じた材質に適切に選択できる。
さらに、バックプレート33に設けた係合孔部53に対してピン37を貫通して係合することで、第1のエンブレム体31をワンタッチで容易に固定できる。
同様に、バックプレート33に設けた係合孔部53に対して係合ピン48を貫通して係合することで、第2のエンブレム体32もワンタッチで容易に固定できる。
したがって、第1及び第2のエンブレム体31,32を、バックプレート33によってまとめてワンタッチで固定できる。
そして、係合孔部53に、ピン37(及び係合ピン48)を係合する爪部55の位置が互いに対称な一及び他の係合孔部を設定することで、向きが互いに反対の爪部55からの反力によってエンブレム20を固定時に自動的に位置規制できる。特に、本実施の形態では、第1のエンブレム体31のピン37と第2のエンブレム体32の係合ピン48とが、それぞれ一の係合孔部となる第1及び第4の係合孔部53a,53a,53dと、他の係合孔部となる第2及び第3の係合孔部53b,53c,53cとのそれぞれに対して係合される、換言すれば、第1のエンブレム体31のピン37も第2のエンブレム体32の係合ピン48も、それぞれ一の係合孔部及び他の係合孔部の両方に対して係合されるので、第1及び第2のエンブレム体31,32をより確実に位置規制できる。
しかも、扉部のヒンジ部となる下側に爪部55が両側に設定される一の係合孔部となる第4の係合孔部53dを配置しているので、エアバッグ展開時に第1及び第2のエンブレム体31,32に対して加わる衝撃によりこれら第1及び第2のエンブレム体31,32が外れようとする力を、両側の爪部55によって押さえ込み、第1及び第2のエンブレム体31,32を強固に固定できる。
なお、上記の第1の実施の形態において、第1のエンブレム体31のピン37及び第2のエンブレム体32の係合ピン48は、第1のエンブレム体31及び第2のエンブレム体32の形状などに応じて、任意の配置に設定できる。例えば図7に示す第2の実施の形態のように、第1のエンブレム体31のピン37を上側2箇所に左右に離間して設定し、第2のエンブレム体32の係合ピン48を、ピン37の下方の位置の下側2箇所に左右に離間して設定してもよい。この場合、正面板部23の取付凹部24のカバー開口部28及び挿通開口部29、及びバックプレート33の係合孔部53も、ピン37,48の配置に合わせて設定することは言うまでもないが、特に、扉部のヒンジ部となる側に爪部55が両側に設定される係合孔部53を配置することが好ましい。
次に、第3の実施の形態を、図8を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態は、第1のエンブレム体31のピン37及び第2のエンブレム体32の係合ピン48を、いずれかが仮想的な二等辺三角形TRの頂点上及びこの二等辺三角形TRの内側、望ましくは外心または重心に配置したものである。
具体的に、本実施の形態では、例えばピン37の第1のピン37aと、第2のピン37bと、係合ピン48の第2の係合ピン48bとが、ピン37a,37b間及びピン37a,48b間が等辺、ピン37b,48b間が底辺となるように二等辺三角形TRの頂点上に配置され、係合ピン48の第1の係合ピン48aが二等辺三角形TRの外心、すなわち二等辺三角形TRの各辺の垂直二等分線の交点位置となるように配置されている。したがって、ピン37及び係合ピン48が、全体として上下左右に対称に配置されている。このため、左右方向に見て、ピン37と係合ピン48とが交互に並ぶように配置されている。
そして、このように配置することで、エンブレム20をバランスよく固定でき、応力を分散できるので、例えばバックプレート33の係合孔部53に嵌挿する際に必要となる挿入力を低下させることができ、エンブレム20の取り付けの作業性が向上するとともに、エアバッグ展開時及びエンブレム20の組み付け時に生じるゆがみや曲げを矯正でき、複数のエンブレム体31,32を備える多層構造のエンブレム20であっても少ないピン数で強固に固定でき、エアバッグ展開時にも、エンブレム20が正面板部23に対して強固に保持される。
なお、上記の第3の実施の形態において、図9に示す第4の実施の形態のように、第1のエンブレム体31のピン37及び第2のエンブレム体32の係合ピン48を、いずれかが仮想的な二等辺三角形TRの頂点上及びこの二等辺三角形TRの各等辺の中点に配置することもできる。具体的に、この第3の実施の形態では、例えばピン37に、第1のピン37a,37aと第2のピン37bとの間にそれぞれ第3のピン37c,37cがさらに設定され、係合孔部53に、これら第3のピン37c,37cが嵌挿される第5の係合孔部53e,53eがさらに設定されるとともに、第1のピン37aと、第2のピン37bと、係合ピン48の第2の係合ピン48bとが、ピン37a,37b間及びピン37a,48b間が等辺、ピン37b,48b間が底辺となるように二等辺三角形TRの頂点上に配置され、ピン37の第3のピン37cと係合ピン48の第1の係合ピン48aとが二等辺三角形TRの各等辺の中点となるように配置されている。したがって、ピン37及び係合ピン48が、全体として上下左右に対称に配置されている。そして、このように配置することで、上記の第3の実施の形態と同様の作用効果を奏することができるとともに、ピン37に第3のピン37c,37cを設定しているので、より多くのピン数でバランスよくかつエンブレム20をより強固に固定でき、エアバッグ展開時にも、エンブレム20が正面板部23に対して強固に保持される。
また、上記第3及び第4の実施の形態に代えて、エンブレム20の形状が例えば細長い場合など、エンブレム20の形状によっては、ピン37と係合ピン48とを略一直線上に交互に配置するようにしてもよい。
次に、第5の実施の形態を図10ないし図12を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態は、上記の各実施の形態において、例えば円形状に形成された第2のエンブレム体32の背面側に、係合ピン48に代えて、一の係合部としての係合爪部61が複数設けられている。
係合爪部61は、例えば第2のエンブレム体32の外縁部に沿って円弧状に配置され、互いに離間されている。これら係合爪部61は、外側に向かって突出する爪61aを先端側に備えているとともに、この爪61aの背面側が平坦状に形成されている。
また、第1のエンブレム体31は、例えば第2のエンブレム体32よりも小さい円形状に形成されており、第2のエンブレム体32上に重ねられるようになっている。
さらに、バックプレート33には、係合ピン48用の係合孔部53が設けられておらず、外縁部33aが各係合爪部61の爪61aの背面側に接触して係合爪部61を内側から支持する支持部となっている。
そして、カバー体18の製造の際には、正面板部23を含む表板部21及び周板部22を予め合成樹脂により射出成形した後、別途成形した第2のエンブレム体32を、係合爪部61を挿通開口部29に挿入して取付凹部24に嵌合させる。このとき、図12に示すように、各係合爪部61は、爪61aが挿通開口部29の内縁に接触して内方へと弾性的に倒れ(内倒れし)、爪61aが挿通開口部29に挿通されて正面板部23の背面側に位置すると復帰変形して爪61aが挿通開口部29に係合される。この状態で、第2のエンブレム体32の連通開口部47が正面板部23のカバー開口部28と位置合わせされて互いに連通し、各係合爪部61は通常状態に戻り応力が基端側に加わらない状態となっている。さらに、別途成形した第1のエンブレム体31を、第2のエンブレム体32に被せながら、ピン37を連通開口部47及びカバー開口部28に挿通し、第1のエンブレム体31を第2のエンブレム体32に重ねる。そして、さらに別途成形したバックプレート33を正面板部23の取付凹部24の背面側に配置し、このバックプレート33の係合孔部53に対して、カバー開口部28から突出する第1のエンブレム体31のピン37の係止本体部41を含む先端側を嵌挿(圧入)することで、係止本体部41が係合孔部53を貫通してバックプレート33の裏面側に係止されるとともに、バックプレート33の外縁部が係合爪部61の背面側に接触して各係合爪部61の内側を支持し、各係合爪部61の内方への倒れを規制して係合を保持する。
このように、正面板部23のエアバッグ側に、連通開口部47及びカバー開口部28に挿通したピン37と係合して係合爪部61の位置を規制することで係合爪部61の係合を保持するとともに第1及び第2のエンブレム体31,32との間で正面板部23を挟み込むバックプレート33を配置することで、より簡単な構成でエンブレム20をより強固に固定できる。
次に、第6の実施の形態を、図13を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第6の実施の形態は、上記の第5の実施の形態の係合爪部61が、先端側に上下方向に沿って孔部61bを備えて内側及び外側に分割されているものである。
また、バックプレート33には、各係合爪部61の孔部61bに挿入可能な挿入部63がそれぞれ突設されている。これら挿入部63は、先端側へと徐々に細くなる楔状に形成されている。
そして、カバー体18の製造の際には、正面板部23を含む表板部21及び周板部22を予め合成樹脂により射出成形した後、別途成形した第2のエンブレム体32を、係合爪部61を挿通開口部29に挿入して取付凹部24に嵌合させる。このとき、各係合爪部61は、挿通開口部29に挿通される。この状態で、第2のエンブレム体32の連通開口部47が正面板部23のカバー開口部28と位置合わせされて互いに連通する。さらに、別途成形した第1のエンブレム体31を、第2のエンブレム体32に被せながら、ピン37を連通開口部47及びカバー開口部28に挿通し、第1のエンブレム体31を第2のエンブレム体32に重ねる。そして、さらに別途成形したバックプレート33を正面板部23の取付凹部24の背面側に配置し、このバックプレート33の係合孔部53に対して、カバー開口部28から突出する第1のエンブレム体31のピン37の係止本体部41を含む先端側を嵌挿(圧入)することで、係止本体部41が係合孔部53を貫通してバックプレート33の裏面側に係止されるとともに、挿入部63が係合爪部61の先端側の孔部61bに挿入されてこれら係合爪部61を内側及び外側に押し開き、各係合爪部61の係合を保持する。
このように、正面板部23のエアバッグ側に、連通開口部47及びカバー開口部28に挿通したピン37と係合して係合爪部61の位置を規制することで係合爪部61の係合を保持するとともに第1及び第2のエンブレム体31,32との間で正面板部23を挟み込むバックプレート33を配置することで、より簡単な構成でエンブレム20をより強固に固定できる。
また、第2のエンブレム体32を取り付ける際に、係合爪部61は挿通開口部29に挿通するのみで、バックプレート33を取り付けることでカバー本体部19(正面板部23)に対して係合するので、第2のエンブレム体32の取り付けがより容易になる。
なお、上記の各実施の形態において、正面板部23には、エンブレム20が嵌合する取付凹部24を設けたが、正面板部23に対してエンブレム20が突出するように取り付ける場合には、取付凹部24は不要である。
また、エンブレム20は、バックプレート33を用いて第1及び第2のエンブレム体31,32を固定する構成としたが、例えば第1及び第2のエンブレム体31,32の背面側からピンを突設し、これらピンを正面板部23に貫通させて正面板部23の背面側にて溶着することでカバー本体部19(正面板部23)に対して固定してもよいし、例えばピンの先端側にスピードナットを嵌合させて固定してもよい。
さらに、エアバッグ装置12は、例えばホーンスイッチの操作部を兼ねるものでもよい。
そして、カバー体18の形状は、それぞれステアリングホイール10の形状などに対応して任意に設定できる。