JP2019001022A - 光学素子および個人認証媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 証券やカード媒体、またはパスポートや査証等のためにより高いセキュリティー性を付与することができる光学素子を実現すること。【解決手段】 金属層22と、金属層24と、金属層22と金属層24とを離間する金属層間透明層26と、金属層間透明層26とともに、金属層22を挟むように配置された金属層側透明層28と、金属層間透明層26とともに、金属層24を挟むように配置された金属層側透明層30とが積層されてなる光学素子4であって、金属層22は、光学素子面における少なくとも1方向に周期的に配置され、金属層側透明層28側からの入射光の、金属層22へ入射した成分と、金属層22の無い部分へ入射した成分とのうち、少なくとも一部が金属層24において反射する。【選択図】図5

Description

本発明は、例えば、証券やカード媒体、またはパスポートや査証等のためにより高いセキュリティー性を付与するための光学素子と、この光学素子が適用された個人認証媒体とに関する。
近年、表面プラズモンを用いた加飾表示媒体を備えた光学素子の例が、証券、カード媒体および個人認証媒体等の様々なセキュリティー商材分野において報告されている。表面プラズモンは金属界面を伝搬する電磁波であり、この現象を用いて古くはステンドグラス等の着色に利用されている。また、同様にセキュリティー用途での図形、絵柄等の着色手法として、フォトニック結晶等の非常に微細な構造による方式も提案されている。
一方、紙幣用のセキュリティー用途では、基材の耐久性を考慮し、紙基材からポリマー基材へ変更する国が増えている。ポリマー基材にすることで、紙基材では光の反射のみを考慮すれば良かったが、透過光についても設計要素として検討すべきというニーズが高まっている。例えば、特許文献1では、透過観察において、マイクロ文字等の画像情報が観察されることが開示されている。また、特許文献2では、透過観察において、複数の微細な孔による画像情報が観察されることが開示されている。
WO2016−125843号 特表2000−501036号公報
しかしながら、この種の光学素子は従来、片側から観察した光の反射光のみを設計することしか考慮されておらず、透過光の制御までは考慮されていないという問題がある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、証券やカード媒体、またはパスポートや査証等のためにより高いセキュリティー性を付与することができる光学素子を実現することを目的とする。さらに、この光学素子を適用することによって、より高い偽造防止機能を備えた個人認証媒体を実現することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明では、以下のような手段を講じる。
請求項1の発明は、第1の金属層と、第2の金属層と、前記第1の金属層と前記第2の金属層とを離間する金属層間透明層と、前記金属層間透明層とともに、前記第1の金属層を挟むように配置された第1の金属層側透明層と、前記金属層間透明層とともに、前記第2の金属層を挟むように配置された第2の金属層側透明層とが積層されてなる光学素子であって、前記第1の金属層は、光学素子面における少なくとも1方向に周期的に配置され、前記第1の金属層側透明層側からの入射光の、前記第1の金属層へ入射した成分と、前記第1の金属層の無い部分へ入射した成分とのうち、少なくとも一部が前記第2の金属層において反射する。
従って、請求項1の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、第1の金属層側から入射光が入射した際に、入射光の第1の金属層での反射と、第2の金属層での反射との位相差、第1の金属層と第2の金属層との間での多重反射、および表面プラズモンの効果を用いて、入射光の波長に対して、反射光の波長を制御することが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1の発明の光学素子において、前記第1の金属層側透明層の屈折率の変調と、前記第2の金属層側透明層の屈折率の変調とにより絵柄を形成する。
従って、請求項2の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、絵柄を形成することができる。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光学素子において、前記第1の金属層側透明層の屈折率と、前記第2の金属層側透明層の屈折率とが異なることと、前記第1の金属層側透明層の屈折率と、前記金属層間透明層の屈折率とが異なることと、前記金属層間透明層の屈折率と、前記第2の金属層側透明層の屈折率とが異なることとのうちの少なくとも1つが成立する。
従って、請求項3の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、表面プラズモンでの光の共鳴状態を変化させることができるため、反射光のスペクトルをコントロールすることが可能となる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうちいずれか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層と前記第2の金属層とが積層方向において重複しないように、前記第2の金属層を、前記光学素子面において、前記第1の金属層が配置される方向に周期的に配置する。
従って、請求項4の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、第1の金属層側からだけではなく、第2の金属層側からの入射光の波長分布をコントロールすることも可能となる。また、第1の金属層側と第2の金属層側での波長分布のコントロールを変えることにより、見た目の色味を表裏で変えることも可能となる。さらには、光の素通りを低減し、波長分布のコントロールされた透過光の透過率を高めることも可能となる。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の光学素子において、第1の金属層および第2の金属層は、積層方向における形状が凹形状または凸形状である。
従って、請求項5の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、凹部または凸部の形状を生かし、反射光の位相差に少しランダム性を持たせることによって、反射光に散乱性を持たせることが可能となる。これにより、第1の金属層側から光学素子面に垂直入射した入射光が第1の金属層で反射した際、隣り合う第1の金属層への光の入射成分を分配することも可能となる。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層と、前記第2の金属層とを、金属材料によって接続する。
従って、請求項6の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、第1の金属層と第2の金属層とが接する境界部に配置された金属材料による反射光も取り入れることで、反射光の位相差を変化させ、さらに反射光の散乱成分を増加させることが可能となる。
請求項7の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層が前記光学素子面において配置される周期と、前記第2の金属層が前記光学素子面において配置される周期とが異なるように、前記第2の金属層を、前記光学素子面において周期的に配置する。
従って、請求項7の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、表裏での反射光のスペクトルや強度を変えることが可能となる。
請求項8の発明は、請求項1乃至7のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記金属層間透明層に、屈折率を調整するための微粒子を添加する。
従って、請求項8の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、金属層間透明層に、例えば、ジルコニアや酸化チタン等の屈折率の高いナノ微粒子を添加することで、媒質の屈折率を上げることが可能となる。また中空フィラーを添加することで、媒質の屈折率を下げることが可能となる。また、微粒子に、金、銀アルミ、銅、チタン、クロムを用いることで、プラズモン効果へ作用させることが可能となる。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記金属層間透明層の厚みを1nm以上、1.0μm以下とする。
従って、請求項9の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、蒸着によって金属層間透明層を作成することが可能となる。また、金属層間透明層によって、第1の金属層と第2の金属層との間の光の回折現象を抑え、反射光および透過光の色の純度を上げることも可能となる。
請求項10の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層は、厚みが10nm以上、500nm以下であり、前記第2の金属層は、前記光学素子面において周期的に配置されず、厚みが1nm以上、10nm以下である。
従って、請求項10の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、第1の金属層と第2の金属層とを蒸着によって作成することが可能となる。また、第2の金属層の厚みを抑え、光の透過性を確保しつつ、積極的にプラズモン効果を出すために、第1の金属層の厚みを出し、かつ反射光成分にて第1の金属層と第2の金属層との間の共鳴効果を実現することも可能となる。
請求項11の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層、前記第2の金属層ともに、厚みが10nm以上、500nm以下である。
従って、請求項11の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、第1の金属層および第2の金属層の厚みを出すことによって、積極的にプラズモン効果を出すことが可能となるとともに、反射光成分にて第1の金属層と第2の金属層との間の共鳴効果を実現することも可能となる。
請求項12の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項の発明の光学素子において、前記第1の金属層、前記第2の金属層ともに、配置周期が10nm以上、1μm以下である。
従って、請求項12の発明の光学素子においては、以上のような手段を講じることにより、光の純度を高く保つことが可能となる。
請求項13の発明は、請求項1の発明の光学素子である第1の光学素子と、請求項1の発明の光学素子である第2の光学素子とを、前記光学素子面上に配列して備え、前記第1の光学素子において前記第1の金属層が配置される第1の周期と、前記第2の光学素子において前記第1の金属層が配置される第2の周期とは異なる、光学素子群である。
従って、請求項13の発明の光学素子群においては、以上のような手段を講じることにより、異なる周期構造を有する光学素子を複数配置することで、反射光のスペクトル分布を光学素子毎に制御することができる。これにより、図形や絵柄情報に異なる色分布を付与することが可能となり、多色化を実現することも可能となる。
請求項14の発明は、請求項13の発明の光学素子群において、前記第1の周期は、不規則な周期である。
従って、請求項14の発明の光学素子群においては、以上のような手段を講じることにより、プラズモンの共鳴周波数を不規則とすることができるため、反射光の共鳴スペクトルをブロードにすることが可能となる。
請求項15の発明では、請求項1乃至12のうち何れか1項の発明の光学素子、または、請求項13または14の発明の光学素子群を備えた個人認証媒体である。
従って、請求項15の発明の個人認証媒体においては、以上のような手段を講じることにより、透過光成分をコントロールすることができるようになり、もって、高いセキュリティー性を備えることが可能となる。
本発明によれば、証券やカード媒体、またはパスポートや査証等のためにより高いセキュリティー性を付与することができる光学素子を実現することが可能となる。さらに、この光学素子を適用することによって、より高い偽造防止機能を備えた個人認証媒体を実現することが可能となる。
第1の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 微細凹凸形状を用いて金属層をパターニングするための方法を説明するための断面図である。 第2の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第3の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第4の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第5の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第6の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第7の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。 第7の実施形態に係る光学素子における金属層の平面配置例を示す平面図である。 第7の実施形態に係る光学素子における金属層の別の平面配置例を示す平面図である。 第7の実施形態に係る光学素子における金属層のさらに別の平面配置例を示す平面図である。 第8の実施形態に係る光学素子の構成例を示す平面図である。 個人認証媒体に適用される光学素子の構成例を示す断面図である。 個人認証媒体に適用される別の光学素子の構成例を示す断面図である。 第9の実施形態に係る個人認証媒体の一例を示す平面図である。 第10の実施形態に係る秘匿情報記録体に適用される光学素子の構成例を示す断面図である。 第10の実施形態に係る秘匿情報記録体に適用される光学素子の構成例を示す平面図であり、剥離した際の柄を示す図である。 実施例1におけるシミュレーションに適用された光学素子の構成を示す断面図である。 実施例1の光学素子の諸元を示す図である。 実施例1の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。 実施例2におけるシミュレーションに適用された光学素子の構成を示す断面図である。 実施例2の光学素子の諸元を示す図である。 実施例2の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。 実施例3の光学素子の諸元を示す図である。 実施例3の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。 実施例4の光学素子の諸元を示す図である。 実施例4の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。 実施例4の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。 実施例4の光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ先行する実施形態の構成と関連しているので、同様または類似した機能を発揮する構成要素については、重複説明を避け、代わりに、全ての図面を通じて、同一の参照符号を付す。
(第1の実施形態:光学素子)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光学素子1の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子1は、金属層22と、金属層24と、金属層22と金属層24とを離間する透明層26とが積層されてなる。このような構成によって、金属層22側(すなわち、図中下側)から入射光Lが入射した場合、金属層22へ入射した光の成分Laと、金属層22の無い部分へ入射した光の成分Lbとのうち、少なくとも一部が金属層24において反射するようになる。
透明層26の積層方向(すなわち、z方向)への厚みΔzは、1nm以上、1.0μm以下が好適である。これによって、蒸着によって透明層26を作成することが可能となる。また、透明層26によって、金属層22と金属層24との間の光の回折現象を抑え、反射光および透過光の色の純度を上げることも可能となる。
金属層22は、光学素子面であるxy平面における少なくとも1方向に周期的に配置される。図1の例では、金属層22は、x方向に長さL1を有し、x方向に周期P1で周期的に配置されている(L1<P1)。周期P1は、好適には、10nm以上、1μm以下である。周期P1が1μmを超えると、光の回折効果により、光の純度が落ちてしまうが、周期P1が1μm以下であれば、光の純度を高く保つことが可能である。また、金属層22の厚みは、好適には、10nm以上、500nm以下である。
次に、周期P1で金属層22を配置するためのパターニング方法について説明する。
図2は、微細凹凸形状を用いて金属層22をパターニングするための方法を説明するための断面図である。
まず、図2(a)のように、樹脂等からなる透明層44により、微細形状42を形成する。次に、図2(b)のように、全体にわたって蒸着等で金属膜を成膜する。この場合、微細形状42の傾斜部には、金属の成膜がされにくいが、それ以外の平坦な部分には、金属の成膜がなされ、金属膜が形成される。この金属膜は、金属層22となるものである。
その後、全体にエッチングをかけると、図2(c)のように、平坦部に形成された金属膜(金属層22)は残るが、微細形状42の傾斜部の金属膜はエッチングされる。
その後、その表面にさらに透明層44を形成すると、図2(d)のように、微細形状は埋まってしまい、微細形状も無くなり、平坦部に成膜された金属膜が金属層22として残る。
さらに、フェムト秒レーザ等の短パルスレーザによって部分的な加工を施すことで、金属層22を露出させることも可能となる。短パルスレーザを用いることで、使用する材料の熱による影響を受けること無く加工することが可能である。
さらにまた、透明層44の上部に金属層24を配置すれば、透明層44は、透明層26として機能する。
一方、金属層24は、本実施形態では、金属層22とは異なり、光学素子面全体に配置されるので、光学素子面において周期的に配置されない。また、金属層24の厚みは、好適には、1nm以上、10nm以下である。
これによって、金属層22と金属層24との両方を蒸着によって作成することが可能となる。さらに、金属層24の厚みを抑え、光の透過性を確保しつつ、積極的にプラズモン効果を出すために、金属層22の厚みを出し、かつ反射光成分にて金属層22、24間の共鳴効果を実現することも可能となる。
透明層26に使用される材料としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等の熱硬化性樹脂、あるいはこれらの混合物、さらにはラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料等を使用することが可能である。
透明層26は、蒸着やスパッタにて薄膜を形成することによって実現することも可能であり、その場合、材料としては、SiO、MgF、TiO等、薄膜にて光の透過する物質を使用することが好適である。
金属層22、24に使用される材料としては、例えば、金、銀、アルミ、銅、チタン、クロム等が好適である。これら材料を使用することによって、光の反射、散乱、プラズモン共鳴による光の分光コントロールが可能となる。
光の反射、散乱、プラズモン共鳴による光の分光コントロールは、透明層26の厚みΔzおよび屈折率、金属層22の周期P1、金属層22、24の厚み等のパラメータの調整により可能となる。
透明層26に、屈折率を調整するための微粒子を添加するようにしても良い。透明層26の媒質に、例えば、ジルコニアや酸化チタン等の屈折率の高いナノ微粒子を添加することで、屈折率を上げることができる。また、中空フィラーを添加すれば、逆に、透明層26の媒質の屈折率を下げることが可能となる。さらには、微粒子に金、銀アルミ、銅、チタン、クロムを用いることで、プラズモン効果へ作用させることも可能となる。
また、特定エリアの金属層22、24を部分的に除去したり、あるいは露出させるために、レジスト原版にEB露光を行い、現像処理、金属層エッチング処理を行うという一般的なフォトリソグラフィーの工程を使用することも可能である。
金属層22、24のように金属層が2つある場合、この工程を2回行うことで対処することができる。また、図示していないが、この工程を複数回行うことによって、さらなる金属層を設けることもできる。これによって、より複雑な反射光、透過光の強度、およびスペクトルの設計も可能となる。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子1によれば、第1の金属層側から入射光が入射した際に、入射光の第1の金属層での反射と、第2の金属層での反射との位相差、第1の金属層と第2の金属層との間での多重反射、および表面プラズモンの効果を用いて、入射光の波長に対して、反射光の波長を制御することが可能となる。
(第2の実施形態:光学素子)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光学素子2の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子2は、第1の実施形態に係る光学素子1の変形例であり、金属層24が、x方向に長さL2を有し、x方向に周期P2で周期的に配置されている(L2<P2)。
さらには、金属層22と金属層24とが積層方向、すなわち、図中z方向において重複しないように配置される。これは例えば、長さL1=長さL2、周期P1=周期P2とし、x方向において金属層22と金属層24とを交互に配置することによって実現される。
周期P(P1=P2)は、好適には、10nm以上、1μm以下である。周期Pが1μmを超えると、光の回折効果により、光の純度が落ちてしまう。しかしながら、周期Pが1μm以下であれば、光の純度を高く保つことが可能である。
このように、金属層22と金属層24とが積層方向、すなわち、図中z方向において重複しないように配置される場合、金属層22、金属層24ともに、厚みを10nm以上、500nm以下とする。これによって、積極的にプラズモン効果を出すことを可能とするのみならず、反射光成分にて金属層22、24間の共鳴効果を実現することも可能としている。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子2によれば、金属層22側からだけではなく、金属層24側からの入射光の波長分布をコントロールすることも可能となる。また、金属層22側と金属層24側での波長分布のコントロールを変えることにより、見た目の色味を表裏で変えることも可能となる。さらには、光の素通りを低減し、波長分布のコントロールされた透過光の透過率を高めることも可能となる。
(第3の実施形態:光学素子)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子は、第2の実施形態に係る光学素子2の変形例であり、金属層22と金属層24との周期性を一致させない。
図4(a)は、周期P1=周期P2、長さL2>長さL1とすることによって金属層22と金属層24との周期性を一致させないようにした場合における光学素子3の一例を示す断面図である。
図4(b)は、周期P1<周期P2、長さL1<長さL2とすることによって金属層22と金属層24との周期性を一致させないようにした場合における光学素子3’’の一例を示す断面図である。
図4(c)は、周期P1<周期P2、長さL1>長さL2とすることによって金属層22と金属層24との周期性を一致させないようにした場合における光学素子3’’’の一例を示す断面図である。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子によれば、金属層22と金属層24との周期性を一致させないことで、光の回折方向を変化させ、プラズモン共鳴の波長をコントロールすることによって、表裏での反射光スペクトルや、反射光強度を変えることが可能となる。
(第4の実施形態:光学素子)
図5は、本発明の第4の実施形態に係る光学素子の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子は、第2の実施形態に係る光学素子2の変形例であり、金属層22の下層側(図中下側)に、透明層28が積層され、金属層24の上層側(図中上側)に、透明層30が積層された構成としている。
図5(a)は、透明層26、透明層28、および透明層30が、何れも異なる材質からなる場合における光学素子4の一例を示す断面図である。光学素子4では、透明層28の屈折率n1と、透明層30の屈折率n3とが異なることと、透明層28の屈折率n1と、透明層26の屈折率n2とが異なることと、透明層26の屈折率n2と、透明層30の屈折率n3とが異なることとのうちの少なくとも1つが成立する。
図5(b)は、透明層26が透明層28と同じ材質からなる場合における光学素子4’の一例を示す断面図である。従って、光学素子4’では、金属層22は、透明層28に埋め込まれて配置されるように図示されている。
透明層28、30もまた、透明層26と同様に、蒸着やスパッタにて薄膜を形成することによって実現されることが可能である。その場合、材料としては、SiO、MgF、TiO等のように、薄膜にて光を透過する物質を使用することが好適である。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子によれば、表面プラズモンでの光の共鳴状態を変化させることができるため、反射光スペクトルをコントロールすることが可能となる。
(第5の実施形態:光学素子)
図6は、本発明の第5の実施形態に係る光学素子5の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子5は、図5(b)に示す光学素子4’の変形例であり、透明層28に凹凸形状を設け、凹部に凸形状の金属層22を、凸部に凸形状の金属層24を蒸着により配置し、これら金属層22、24の表面を透明層30で覆うとともに、透明層28の下層側に、基材34を積層した構成としている。
基材34に使用される材料としては、ガラス基材の様なリジッドなものでも良いし、フィルム基材でも良い。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)等のプラスチックフィルムを使用することができるが、図示しない光学機能層を設ける時にかかる熱や圧力等によって変形や変質の少ない材料を使用することが望ましい。なお、用途や目的によっては紙や合成紙、プラスチック複層紙や樹脂含浸紙等を基材34として使用しても良い。
本実施形態に係る光学素子5によれば、透明層28の凹凸形状の裾野の傾斜角度によって、金属層22、24を蒸着した際に金属が成膜されない様に加工をすることが可能である。これによって、金属層22と金属層24との周期が同一とすることが可能となる。
(第6の実施形態:光学素子)
図7は、本発明の第6の実施形態に係る光学素子6の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子6は、第5の実施形態に係る光学素子5の変形例であり、金属層22の形状を、凸形状ではなく、凹形状にしたものである。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子6によれば、金属層22および金属層24の積層方向、すなわちz方向における形状を凹形状または凸形状とすることによって、凹部または凸部の形状を生かし、反射光の位相差に少しランダム性を持たせることによって、反射光に散乱性を持たせることが可能となる。これにより、図中下側から光学素子6に垂直入射した入射光が、金属層22で反射した際、隣り合う金属層22への光の入射成分を分配することも可能となる。
(第7の実施形態:光学素子)
図8は、本発明の第7の実施形態に係る光学素子7の構成例を示す断面図である。
本実施形態に係る光学素子7は、第6の実施形態に係る光学素子6の変形例であり、図7に示す光学素子6における金属層22と金属層24とを、金属材料36によって接続した構成としている。金属材料36は、凹凸形状の透明層28の裾野の傾斜部に金属を成膜することによって実現する。
図9は、図8に対応する光学素子7における金属層22、24の平面配置例を示す平面図である。
図8のような構成において、金属層22と金属層24とがy方向に延びている場合、図9に示すように、金属層22と金属層24とがxy平面においてストライプ状に配置される。
図10は、図8に対応する光学素子7における金属層22、24の別の平面配置例を示す平面図である。
金属層22と金属層24とが、xy平面において、同一サイズの正方形状であり、x方向およびy方向においてそれぞれ等しい周期で正方格子状に交互に配置されている場合、光学素子7における金属層22、24の平面配置は図10に示す通りとなる。
図11は、図8に対応する光学素子7における金属層22、24のさらに別の平面配置例を示す平面図である。
この例においても、金属層22と金属層24とは、xy平面において、同一サイズの正方形状である。そして、金属層22と金属層24とは、x方向においては、等しい周期で交互に一列に配列されている。しかしながら、y方向における配置位置は一列に揃ってはおらず、X1に示すような奇数行の配列と、X2に示すような偶数行の配列とでは、x方向に、1/2周期程度ずれている。
再び図8に示されるように、凹凸形状の透明層28の傾斜が緩やかになるほど、金属材料36は成膜されやすくなる。金属材料36が成膜されると、透過光の割合は減り、反射光の割合が増える。また、プラズモン共鳴による効果についても、金属材料36の有無によって変化がある。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子7によれば、金属層22と金属層24の接する境界部に配置された金属材料36による反射も取り入れることで、反射光の位相差を変化させ、さらに反射光の散乱成分を増加させることが可能となる。
(第8の実施形態:光学素子群)
図12は、本発明の第8の実施形態に係る光学素子11の構成例を示す平面図である。
本実施形態に係る光学素子11は、複数の単位セル40から構成される。図12では、4つの単位セル40(#1)〜(#4)を示しているが、これは一例であり、それよりも多い、または、それよりも少ない単位セル40から構成されていても良い。
図12に例示する各単位セル40には何れも、図10を用いて図示および説明したような光学素子7が、xy平面上に配列されている。
図12に例示する光学素子11では、金属層22、24のサイズは、単位セル40毎に異なっており、単位セル40(#1)では、最も小さく、単位セル40(#2)、単位セル40(#3)、単位セル40(#4)の順に大きくなっている。したがって、周期も単位セル40(#1)では最も小さく、単位セル40(#2)、単位セル40(#3)、単位セル40(#4)の順に大きくなっている。
また、単位セル40(#1)〜(#4)のうちの何れかにおいて、周期を不規則にしても良い。
このように、光学素子11は、周期の異なる複数の光学素子7がxy平面上に配列されてなる光学素子群と理解することができる。
以上のような構成によって、本実施形態に係る光学素子11によれば、異なる周期構造を有する複数の単位セル40をxy平面上に配列することで、反射光のスペクトル分布を、各単位セル40毎に制御することができる。これにより、図形や絵柄情報に異なる色分布を付与することが可能となり、多色化を実現することも可能となる。
特に、単位セル40(#1)〜(#4)のうちの何れかの周期を、不規則にすることによって、プラズモンの共鳴周波数が不規則になるため、反射光の共鳴スペクトルをブロードにすることも可能となる。
(第9の実施形態:個人認証媒体)
前述した各実施形態において説明した光学素子の個人認証媒体への適用例にについて説明する。
図13は、個人認証媒体に適用される光学素子12の構成例を示す断面図である。
光学素子12は、図1に例示される光学素子1の金属層22の下層側(図中下側)に、透明層28が積層され、さらに透明層28の下層側(図中下側)に、基材34が積層され、金属層24の上層側(図中上側)に、透明層30が積層されている。透明層30が接着層として機能することにより、光学素子12が、媒体38に貼り付けられる。
図14は、個人認証媒体に適用される別の光学素子13の構成例を示す断面図である。
図14に示す光学素子13は、図13に示す光学素子12の変形例であり、透明層28と基材34との間に剥離層41が設けられている。このような構成により、媒体38への貼り付け後、剥離層41によって、基材34を剥離することが可能となる。
剥離層41に適用される材料は、例えば、樹脂および滑剤である。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のように、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好適である。
また、滑剤としては、ポリエチレンパウダー、パラフィンワックス、シリコーン、カルナバロウ等のワックスが好適である。
これらは剥離層41として、基材34層上にグラビア印刷法やマイクログラビア法等、公知の塗布方法によって形成される。剥離層41の厚みは、例えば0.5μm及至5μmの範囲内である。
接着層として機能する透明層30によって光学素子13を媒体38に接着した後、基材34が不要な場合、このような剥離層41において基材34を剥がして除去する。
図15は、図13または図14のように、光学素子12、13が媒体38に貼り付けられてなる本実施形態に係る個人認証媒体46の一例を示す平面図である。
媒体38には、「CARD」、「0123 4567 8901」、「TARO ABCDEF」のような文字情報が印刷されており、媒体38の右側の一部に顔形状の光学素子12または光学素子13が貼り付けられている。
以上のような構成によって、本実施形態に係る個人認証媒体46によれば、光学素子12、13部分において透過光成分をコントロールすることが可能な、高いセキュリティー性を実現することが可能となる。
(第10の実施形態:秘匿情報記録体)
前述した各実施形態において説明した光学素子の秘匿情報記録体への適用例にについて説明する。
図16は、第10の実施形態に係る秘匿情報記録体に適用される光学素子の構成例を示す断面図である。
図17は、第10の実施形態に係る秘匿情報記録体に適用される光学素子の構成例を示す平面図であり、剥離した際の柄を示す図である。
図16は、透明層30が接着層として機能するようにした場合の構成例を示している。この場合、金属層24にアンカー層32が部分的に設けられる。このアンカー層32が設けられていない部分では、媒体38側に、透明層30が残り、透明樹脂残存部となり、アンカー層32が設けられた部分は、金属層24から、透明層30が剥離し、剥離部となる。このアンカー層32を部分的に設けることで、剥がした際に図17(b)のような柄が発現する。なお、媒体38側には、金属層24がないため、図17(a)に示すように、柄は発現しない。アンカー層32には、有機シラン化合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂等を用いることができる。アンカー層32の厚さは、0.1μm以上、1μm以下とすることができる。
図17(b)に示す例では、剥がした際に、「VEILED」の文字が浮かび上がってくる。この「VEILED」の文字の部分は、金属層24上の接着樹脂がないため、金属層24でのプラズモンの共鳴周波数が変化し、光の透過、反射スペクトルが、接着樹脂層がある領域と異なる発色となる。そのため、接着樹脂の有無により異なる発色となるため、文字を識別しやすい。また、接着層は、破断しやすいため高精細な文字を表示できる。
このような表示素子を用いれば、表示素子を剥がす前には、文字等が認識されず、剥がした後では、鮮明な文字を認識できる。また、その文字は、光学素子側だけに現れる。なお、図17では、金属層22に柄を形成する例を示したが、金属層24に柄を形成することもできる。また、図16の構成において、金属層22および透明層28を省くこともできる。
上記説明したような光学素子に対してなされたRCWA法によるシミュレーションの結果を、実施例1〜4として以下に説明する。
(実施例1)
図18は、実施例1において考慮された光学素子14の構成を示す断面図である。
図18に例示される光学素子14は、透明層26、金属層22、および透明層28がこの順に積層されてなる。ただし、金属層22は、x方向に一定の周期P1で配置されている一方、y方向には延びており、z方向から見た場合、y方向に連続する金属層22の帯が、x方向に周期P1で配置されたストライプ状に見える。金属層22が欠如している部位は、透明層28によって満たされている。
図19は、実施例1の光学素子14の金属層22、透明層26、透明層28の諸元を示す図である。
図19(a)に示すように、透明層26は、材質がSiO、屈折率n2=1.5、厚みΔz=100nmである。図19(b)に示すように、金属層22は、材質がAl、厚みT1=150nm、周期P1=400nm、x方向の長さL1=200nmである。図19(c)に示すように、透明層28は、材質が空気であり、屈折率n1=1である。
図20は、実施例1の光学素子14に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。図20(a)は、図18における下部側である透明層28側から光学素子14に入射した入射光が、金属層22において反射した成分を示す分光スペクトルであり、図20(b)は、同入射光が、透明層26を透過した後の分光スペクトルである。図20(a)、(b)ともに横軸は光の波長(μm)を示し、縦軸は1.0を最大値とした光の反射光成分、透過光成分の相対強度である。光の偏光を区別するために、TE(水平偏光)、TM(垂直偏光)の両方を記載している。
図20(a)に示す反射光スペクトルでは、0.6μmおよび0.4μm付近にピークが見える。ただし0.4μmのピークは若干なだらかであり、シャープであるとは言えない。この結果、この付近の光の波長の純度が下がる。
(実施例2)
図21は、実施例2において考慮された光学素子15の構成を示す断面図である。
図21に例示される光学素子15は、図18に例示される光学素子14の透明層26の上層側に金属層24を積層し、さらに金属層24の上層側に透明層30を積層している。金属層24は、周期構造がなく、xy平面一面に存在する。
すなわち、実施例2における光学素子15は、実施例1における光学素子14に対して、透明層26の上層側にさらに、金属層24および透明層30が積層されている点が異なる。
図22は、実施例2の光学素子15の金属層22、24、透明層26、28、30の諸元を示す図である。
図22(a)に示すように、透明層30は、材質がSiO、屈折率n1=1.5である。図22(b)に示すように、金属層24は、材質がAl、厚みT2=5nmである。図22(c)、(d)、(e)に示す透明層26、金属層22、透明層28の諸元は、図19(a)、(b)、(c)に示す実施例1と同一である。
図23は、実施例2の光学素子15に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。図23(a)は、図21における下部側である透明層28側から光学素子15に入射した入射光が、金属層22において反射した成分を示す分光スペクトルであり、図23(b)は、同入射光が、金属層24を透過した後の分光スペクトルである。図23(a)、(b)ともに横軸は光の波長(μm)を示し、縦軸は1.0を最大値とした光の反射光成分、透過光成分の相対強度である。光の偏光を区別するために、TE(水平偏光)、TM(垂直偏光)の両方を記載している。
実施例2では、厚み5nmのAlの金属層24を設けたことにより、0.4μm付近の光の波長の純度が上がる。その結果、図23(a)に示す反射光スペクトルは、図20(a)に示す実施例1の反射光スペクトルと比較して、0.4μm付近のピークが若干鋭くなっている。
それに伴い、図23(b)に示す透過スペクトルは、図20(b)に示す実施例1の透過スペクトルと比較して、0.6μm以上の光の反射が抑えられ、0.4μm〜0.6μmにおける値が際立つようになる。
実施例1と、実施例2との比較から、金属層24を設けることにより、色の純度を上げることが可能となることが分かる。このような光の目視効果は、セキュリティー性の向上に活用することが可能である。
(実施例3)
実施例3でもまた、実施例2と同様に、図21に示すような構成の光学素子15をシミュレーションに適用した。
図24は、実施例3の光学素子14の金属層22、24、透明層26、28、30の諸元を示す図である。
図24(a)に示すように、透明層30は、材質が空気、屈折率n1=1.0としている点が実施例2とは異なる。図24(b)、(c)、(d)、(e)に示す金属層24、透明層26、金属層22、透明層28の諸元は、図22(b)、(c)、(d)、(e)に示す実施例2における諸元と同一である。
図25は、実施例3の光学素子15に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。
図25に示される分光スペクトルの結果を、実施例2で得られた図23に示される分光スペクトルの結果と比較して説明する。
図23と比較して図25では、TE、TMを平均化すると、光のスペクトルにピークがほとんど見られず、目視にて観察して場合、白色として観察できるようになる。実施例3は、実施例2と比べて、透明層30の屈折率しか異なっていないので、透明層30の屈折率を変えることで、色を付けたり、白色にしたりするスイッチ効果を持たせることが可能となることが分かる。
セキュリティーの分野においては、例えば、図13の様な断面構成の媒体38において、偽造のために、媒体38から光学素子12が剥離されることが想定される。
これに対して、前述したような白色にするスイッチ効果を活用すれば、金属層24側から透明層30が剥離されると、色の付いていた部分を白色化させることによって、剥がされたことを認識することが可能となる。また、剥がされたものが再度付着されても、気泡等が混入してしまい、色の再現がまばらになってしまうので、剥離を隠ぺいすることも不可能となる。
(実施例4)
実施例4でもまた、実施例2と同様に、図21に示すような構成の光学素子15をシミュレーションに適用した。
図26は、実施例4の光学素子14の金属層22、24、透明層26、28、30の諸元を示す図である。
実施例4では、金属層22の周期P1の周期を変化させた場合の光学特性の変化を把握するために、図26(d)に示すように、金属層22の周期P1を、300、400、500nmと変化させている。図26(a)、(b)、(c)、(e)に示す透明層30、金属層24、透明層26、透明層28の諸元は、図22(a)、(b)、(c)、(e)に示す実施例2における諸元と同一である。従って、金属層22の周期P1が400nmの場合は、実施例2の条件と同一である。
図27乃至図29は、実施例4の光学素子15に対してなされたRCWA法によるシミュレーションによって得られた分光スペクトルである。図27は、金属層22の周期P1が300nmである場合、図28は、金属層22の周期P1が400nmである場合、図29は、金属層22の周期P1が500nmである場合における結果である。図28は、図23と同一である。
図27乃至図29を見て分かるように、金属層22の周期P1を変化させることで、反射および透過光のスペクトルを変化させることが可能となる。
なお、結果は図示していないが、例えば図3乃至図8のように、金属層24にも周期P2を設定し、周期P2の値を変化させても、反射および透過光のスペクトルを変化させることが可能となる。
さらに、金属層22、24の周期のみならず、金属層22、24の厚み、凹凸、透明層26、28、30の材質、厚み、金属材料36の材質、厚み、傾斜角等のようなパラメータを変化させても、反射光、透過光に様々な変化を与えることが可能となる。すなわち、これらも、色を変化させるパラメータとして機能するので、光学素子の構成をより複雑にすることによって、色を変化させるパラメータが増えるので、反射光や透過光をより緻密にコントロールすることが可能となる。
このように、本発明によれば、証券やカード媒体、またはパスポートや査証等のためにより高いセキュリティー性を付与することができる光学素子を実現することが可能となる。
さらに、この光学素子を適用することによって、より高い偽造防止機能を備えた個人認証媒体を実現することが可能となる。
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明はかかる構成に限定されない。特許請求の範囲の発明された技術的思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1〜7、11〜15・・光学素子、22、24・・金属層、26、28、30、44・・透明層、32・・アンカー層、34・・基材、36・・金属材料、38・・媒体、40・・単位セル、41・・剥離層、42・・微細形状、46・・個人認証媒体。

Claims (15)

  1. 第1の金属層と、
    第2の金属層と、
    前記第1の金属層と前記第2の金属層とを離間する金属層間透明層と、
    前記金属層間透明層とともに、前記第1の金属層を挟むように配置された第1の金属層側透明層と、
    前記金属層間透明層とともに、前記第2の金属層を挟むように配置された第2の金属層側透明層とが積層されてなる光学素子であって、
    前記第1の金属層は、光学素子面における少なくとも1方向に周期的に配置され、
    前記第1の金属層側透明層側からの入射光の、前記第1の金属層へ入射した成分と、前記第1の金属層の無い部分へ入射した成分とのうち、少なくとも一部が前記第2の金属層において反射する、光学素子。
  2. 前記第1の金属層側透明層の屈折率の変調と、前記第2の金属層側透明層の屈折率の変調とにより絵柄を形成するようにした、請求項1の光学素子。
  3. 前記第1の金属層側透明層の屈折率と、前記第2の金属層側透明層の屈折率とが異なることと、前記第1の金属層側透明層の屈折率と、前記金属層間透明層の屈折率とが異なることと、前記金属層間透明層の屈折率と、前記第2の金属層側透明層の屈折率とが異なることとのうちの少なくとも1つが成立する、請求項1または2に記載の光学素子。
  4. 前記第1の金属層と前記第2の金属層とが積層方向において重複しないように、前記第2の金属層を、前記光学素子面において、前記第1の金属層が配置される方向に周期的に配置した、請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記第1の金属層および前記第2の金属層は、積層方向における形状が凹形状または凸形状である、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の光学素子。
  6. 前記第1の金属層と、前記第2の金属層とを、金属材料によって接続した、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の光学素子。
  7. 前記第1の金属層が前記光学素子面において配置される周期と、前記第2の金属層が前記光学素子面において配置される周期とが異なるように、前記第2の金属層を、前記光学素子面において周期的に配置した、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の光学素子。
  8. 前記金属層間透明層に、屈折率を調整するための微粒子を添加した、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の光学素子。
  9. 前記金属層間透明層の厚みを1nm以上、1.0μm以下とした、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の光学素子。
  10. 前記第1の金属層は、厚みが10nm以上、500nm以下であり、前記第2の金属層は、前記光学素子面において周期的に配置されず、厚みが1nm以上、10nm以下である、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の光学素子。
  11. 前記第1の金属層、前記第2の金属層ともに、厚みが10nm以上、500nm以下である、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の光学素子。
  12. 前記第1の金属層、前記第2の金属層ともに、配置周期が10nm以上、1μm以下である、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の光学素子。
  13. 請求項1に記載の光学素子である第1の光学素子と、請求項1に記載の光学素子である第2の光学素子とを、光学素子面上に配列して備え、前記第1の光学素子において前記第1の金属層が配置される第1の周期と、前記第2の光学素子において前記第1の金属層が配置される第2の周期とは異なる、光学素子群。
  14. 前記第1の周期は、不規則な周期である請求項13に記載の光学素子群。
  15. 請求項1乃至12のうち何れか1項に記載の光学素子、または、請求項13または14に記載の光学素子群を備えた個人認証媒体。
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