関連出願
本出願は、2015年8月20日に出願した米国仮特許出願第62/207,889号に基づく優先権を主張し、その全体を参照して本明細書に組み込む。
本発明は、概して、アルミニウムマンガン皮膜層を含む磁石、及び関連する方法(例えば、電気めっき法)に関する。
磁石は多数の用途で使用される。いくつかの磁性材料(例えば、希土類磁性材料)は、ある用途で使用される時には、腐食しやすく、及び/又は脆性になりやすい。そのような腐食及び/又は脆性は、それらの性能及び有効性に悪影響を与え得る。従って、そのような磁石に関係する腐食及び脆性の問題を緩和することができる技術的な解決策が望まれている。
本発明の概要
皮膜(coating)を含む磁石及び関連する方法は、本明細書に記載される。
ある態様では、物品が提供される。前記物品は磁石、及び前記磁石の上に形成される皮膜を含む。前記皮膜は、12原子%(atomic %)以下のマンガン濃度を含むアルミニウムマンガン合金層を含んでいる。
別の態様では、物品の上に皮膜を形成する方法が提供される。前記方法は、磁石の上に皮膜を電気めっきする工程を含む。前記皮膜は、12原子%以下のマンガン濃度を含むアルミニウムマンガン合金層を含んでいる。
本発明の他の態様、実施形態、及び特徴は以下の詳細な記載から明らかになるだろう。参照により本明細書に組み込む全ての特許出願及び特許は、その全体を参照して組み込まれる。矛盾するケースでは、本明細書が、定義を含め、優先されるだろう。
図1は、実施例1で記載されるサンプルの真応力−真ひずみ曲線を示す。
詳細な説明
皮膜を含む磁石及び関連する方法は、本明細書に記載される。皮膜はアルミニウムマンガン合金層を含んでもよい。さらに以下に記載されるように、アルミニウムマンガン合金層は12原子%以下(例えば、0.5原子%〜12原子%)のマンガン濃度を有してもよい。アルミニウムマンガン合金層は、電気めっき処理で形成できる。いくつかの実施形態では、磁石は希土類磁性材料(例えば、NdFeB系の材料)を含む。被覆された(又は皮膜処理された:coated)磁石は、ポータブル電気デバイスを含む様々な用途で使用され得る。皮膜は、耐食性及び延性を含む所望の特性を有する磁石を与える。
一般的に、磁石はどのような適した磁性材料を含んでもよい。腐食しやすく、及び/又は脆性になりやすい磁性材料は、本明細書で記載される実施形態での使用に、特に好適であろう。いくつかのケースでは、磁石は希土類磁性材料を含む。例えば、希土類磁性材料はネオジムを含んでもよく、いくつかのケースでは、希土類磁性材料はネオジムに加えて鉄及びホウ素をさらに含む。例えば、希土類磁性材料は、Nd2Fe14B及びNd9Fe86B5などの、NdFeB系の材料であってもよい。また、とりわけSmCo5、AlNiCo、及びNiFeを含む他の希土類磁性材料も適している。いくつかの実施形態では、磁性材料は希土類磁性材料でなくてもよい。例えば、磁性材料は、AlNiCo材料(例えば、Al(8−12原子%)、Ni(15−16原子%)、Co(5−24原子%)、Cu(<6原子%)、Ti(<1原子%)、残部はFeを含む)又は、NiFe材料(例えばL10型結晶構造を有する材料で50原子%Fe−50原子%Ni)であってもよい。
磁石は様々な異なる形状及びサイズを有してもよい。例えば、磁石はブロック、リング、又は円柱でもよい。磁石は、寸法(すなわち長さ、厚み、幅)がミリメートル又はセンチメートルオーダー(例えば、0.1mmから100cmまでのように、0.1mmより大きい)であってもよい。他の形状及び寸法が適していてもよく、特定の形状及び寸法は、ある程度、その磁石が使用される用途に依存してもよい、と理解されるべきである。
上述のように、本明細書で記載される技術は、磁石を被覆することを含む。皮膜は1層(すなわち、アルミニウムマンガン合金層)のみを含んでもよい。他の実施形態では、さらに以下で記載されるように、皮膜は複数の層(又は多層:multiple layers)を含んでもよい。いくつかのケースでは、皮膜は磁石の外表面の少なくとも一部分の上に形成されてもよい。他のケースでは、皮膜は磁石の外表面の全体を被覆する。
層が他の構造(例えば磁石、他の層)“の上に(on)”、“の上に(over)”、“の上に(overlying)”存在すると称するときは、それは構造の上に直接存在してもよく、又は、介在する構造(例えば他の層)が存在してもよい。他の構造の“直接上に(directly on)”又は“直接接して(in direct contact with)”存在する層は、介在する構造(例えば他の層)がないことを意味する。また、構造が他の構造“の上に(on)”又は“の上に(over)”存在すると称するときは、それが構造の全体又は一部分を被覆してもよいと理解されるべきである。
皮膜はアルミニウムマンガン合金の層を含む。発明者は、12原子%以下(例えば12%未満、又は0.5原子%〜12原子%)のマンガン濃度が、向上した耐食性及び延性を被覆された磁石に付与する、高品質の皮膜を生み出すために重要であることを理解してきた。いくつかの実施形態では、0.5原子%〜10原子%のマンガン濃度が特に好ましい可能性がある。いくつかの実施形態では、2原子%〜12原子%、又は2原子%〜10原子%のマンガン濃度が好ましい可能性がある。
いくつかのケースでは、アルミニウムマンガン合金層は特定の微細構造を有してもよい。例えば、アルミニウムマンガン合金層(及び/又は他の皮膜の層)はナノ結晶の微細構造を有してもよい。本明細書で使用されるように、“ナノ結晶”構造は、1ミクロンより小さい個数平均結晶粒径(number-average size of crystalline grains)の構造を言う。個数平均結晶粒径は、等しい統計的重み(statistical weight)を各粒子に与え、代表的な多数の群(representative volume of the body)において球体相当粒子直径(spherical equivalent grain diameters)の全ての和を総粒子数で除して計算される。個数平均結晶粒径は、いくつかの実施形態では100nm未満、いくつかの実施形態では50nm未満でもよい。いくつかのケースでは、アルミニウムマンガン合金は、アルミニウムマンガン合金層の厚みの50%未満の個数平均粒径(number-average grain size)を有する。いくつかの例では、個数平均粒径が、アルミニウムマンガン合金層の厚みの10%未満でもよい。いくつかの実施形態では、アルミニウムマンガン合金は、アモルファス構造を有してもよい。当技術分野で知られるように、アモルファス構造は、原子配置において長距離の対称性を有さないことで特徴付けられる非晶質構造である。アモルファス構造の例は、ガラス、又はガラス状の構造を含む。
いくつかの実施形態では、アルミニウムマンガン合金は、層を構成する金属が本質的に個々の原子として分散されている固溶体(solid solution)でもよい。いくつかの実施形態では、マンガンはアルミニウム中で、飽和(例えば、過飽和)溶体である。合金が固溶体である実施形態では、層は金属間化合物(intermetallic species)(例えば、Al−Mn金属間化合物)を含まなくてもよい。そのような固溶体は延性及び耐食性を向上することに寄与し得ると考えられる。そのような構造は、さらに以下に記載されるような、電気めっき処理を用いて作り出される。いくつかのケースでは、固溶体は本質的に酸素を含まなくてもよい。
上述のように、皮膜は追加の層を含んでもよい。その層はアルミニウムマンガン層の上及び/又は下にあってもよい。
いくつかの実施形態では、皮膜は、純金属のNi又はNi系合金(例えばNi−P)のようなニッケルを含む層をさらに含んでいる。ニッケルを含む層はアルミニウムマンガン合金層の下に形成されてもよい。すなわち、ニッケルを含む層は、磁石とアルミニウム合金層の間に形成されてもよい。追加の層(例えばアルミニウムマンガン層の下に形成される層)のための他の適した構成物は、金属のAl、Cu、Sn、Zn、及びそれらの合金を含む。
皮膜及び/又は皮膜の各層は、どのような適した厚さを有してもよい。いくつかの実施形態では、層にとって薄いことが、例えば、材料コストを節約するためには、有利な可能性がある。例えば、皮膜及び/又は層の厚さは1000マイクロインチ未満でもよく(例えば、約1マイクロインチ〜約1000マイクロインチ、いくつかのケースでは約50マイクロインチ〜約750マイクロインチ)、いくつかのケースでは層の厚さは750マイクロインチ未満でもよく(例えば、約1マイクロインチ〜約750マイクロインチ、いくつかのケースでは約50マイクロインチ〜約500マイクロインチ)、及びいくつかのケースでは、層の厚さは500マイクロインチ以下でもよい(例えば、約1マイクロインチ〜約500マイクロインチ、いくつかのケースでは約5マイクロインチ〜約50マイクロインチ)。他の層の厚さも適し得ると理解されるべきである。
都合良いことに、皮膜及び/又は皮膜の層(例えばアルミニウムマンガン合金層)は熱的に安定な可能性がある。従って、皮膜及び/又は層は、安定な構造及び特性を使用期間にわたって(例えば高温下で)維持する。いくつかのケースでは、皮膜及び/又は層は(例えばアルミニウムマンガン合金層)、かなりの期間高温にさらしても、粒径の変化が小さい又は無い。いくつかのケースでは、少なくとも125℃で少なくとも1000時間暴露後、粒径は、約30nm以下、約20nm以下、約15nm以下、約10nm以下、約5nm以下だけ変化する。これらの熱安定性の値は他の適した状況下、例えば約150℃で少なくとも約24時間、約200℃で少なくとも約24時間、約250℃で少なくとも約24時間、又は約200℃で少なくとも約120時間、で達成可能である。
当業者は材料の熱安定性を決定するのに適した方法を認識するだろう。いくつかのケースでは、熱安定性は、熱暴露の間及び/又は熱暴露前及び熱暴露後の、材料の微細構造変化(例えば粒子成長、相転移等)を観察することで決定されてもよい。熱安定性は、示差走査熱量測定(DSC)又は示差熱分析(DTA)を用いて決定されてもよく、そこでは、制御条件下(under controlled conditions)で材料が熱くなっている。粒径及び/又は相転移における変化を決定するために、インサイチューの(又はその場の:in situ)X線実験が加熱処理の間実施されてもよい。
上述のように、皮膜の層は電気めっき(electrodeposition)(電気めっき処理(electroplating process)とも言う)を用いて形成されてもよい。いくつかのケースでは、皮膜の各層は、別個の電気めっき槽を用いて適用されてもよい。一般的に、電気めっき処理の間、電位(electrical potential)は被覆されるように基板の上に存在してもよく、印加電圧、電流、又は電流密度の変化は、結果として基板の上の電位の変化をもたらし得る。いくつかのケースでは、電気めっき処理は1つ以上のセグメント(segments)を含む波形の使用を含んでもよく、その各セグメントは電気めっき条件の特定のセットを含む(例えば、電流密度、持続電流、電気めっき槽温度、等)。波形は、矩形波、任意形状の非矩形波、等を含む、いずれの形状を有してもよい。いくつかの方法では、異なる部分を有する皮膜を形成するときのように、波形は、異なる部分を形成するのに使用される異なるセグメントを有してもよい。しかし、全ての方法が異なるセグメントを有する波形を用いるわけではないことを理解すべきである。
いくつかの実施形態では、皮膜、又はその一部分は直流(DC)めっきを用いて電気めっきされてもよい。例えば、定電流、定常電流は、基板の上に皮膜又はその一部分を形成するように電気めっき槽を通して流れてもよい。いくつかの実施形態では、電極間に印加された電位(例えば電位制御又は電圧制御)及び/又は流れることができる電流又は電流密度(電流又は電流密度制御)が変化してもよい。例えば、電気めっき処理の間、パルス、オシレーション、及び/又は、電圧、電位、電流、及び/又は電流密度における他の変動(variations)が組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、制御された電圧のパルスは、制御された電流又は電流密度のパルスと交互に発生してもよい。いくつかの実施形態では、層はパルス電流めっき(pulsed current electrodeposition)、逆パルス電流めっき(reverse pulsed current electrodeposition)、又はそれらの組み合わせを用いて形成されてもよい(例えば電気めっきされてもよい)。
いくつかのケースでは、少なくとも1つの順方向のパルス及び逆方向のパルスを含む、すなわち逆方向パルスシーケンス(reverse pulse sequence)である両極性の波形が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの逆方向のパルスは、少なくとも1つの順方向のパルスのすぐ後に続く。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの順方向のパルスは、少なくとも1つの逆方向のパルスのすぐ後に続く。いくつかのケースでは、両極性の波形は多数の順方向及び逆方向のパルスを含む。いくつかの実施形態は、多数の順方向及び逆方向のパルスを含む両極性の波形を含んでもよく、その各パルスは特定の電流密度及び持続電流を有する。いくつかのケースでは、逆方向パルスシーケンスの使用は、作り出した皮膜の組成及び/又は皮膜の粒径の調整を可能にし得る。
当業者は本明細書で記載される電気めっき処理は、皮膜を堆積させるために、印加電圧よりも化学的な還元剤を主に又は全体的に使用する、無電解処理(electroless processes)と区別できないものである。本明細書に記載される電気めっき槽は、例えば印加電圧がない状態で皮膜を堆積させるであろう化学的な還元剤を、実質的に含まなくてもよい。
いくつかの実施形態では、バレル電気めっき処理(barrel electroplating process)は、皮膜の1つ以上の層(例えば、アルミニウムマンガン合金層)を堆積するのに使用される。一般的に、本明細書で記載されるバレルめっき処理は、被覆される多数の小さい磁石をバレルに投入する工程を含む。バレルめっき装置は磁石が電気めっき槽と接触するように構成される。さらに以下に記載するように、槽は、電気めっきの間、合金(例えばアルミニウムとマンガン)の形で堆積される金属イオン種(例えばアルミニウムイオン種及びマンガンイオン種)を含む、適した化学種を含んでいる。いくつかのケースでは、バレルは(タンクの中に含まれ得る)槽の中に配置され、バレルの壁にある穿孔(perforations)により、槽はその組成物と接触することができる。
バレル中で、磁石は1つ以上の他の組成物と電気的に接触する。電気リード線(electrical lead)(“ダングラー(dangler)”とも言う)はバレルの容積内に延在し、使用する間少なくともいくつかの磁石と接触する。そのリード線は、磁石に電流を提供するために電気めっき処理で用いられる“バレルの(barrel)”電極として機能することができるように、電源に接続される。電気リード線(“ダングラー”とも言う)は1つの金属線又は互いに電気的に接触している一連の金属線のような、導電線(conductive wire)でもよい。又、電気リード線は、導電棒(conductive rod)、又は他の導電材料の幾何形状、又は多くのそのような幾何形状のアセンブリでもよい。いくつかのケースでは、機能的な幾何形状は、組成物との電気的な接触を容易にする機械的なクリップ、クランプ、スクリュー、フック又はブラシの場合のように、電気リード線の一部である。電気リード線は、固定されている必要はなく、プロセス中の攪拌のために移動することができる。例えば、電気リード線は、バレルとつながれてもよい。
バレル皮膜装置(又はバレル被覆装置:barrel coating apparatus)は、電気めっき槽と接触する“槽の(bath)”電極を含んでもよい。例えば、槽の電極は槽の中に浸漬されてもよい。めっきの間、電源を用いてバレルと槽の電極間に電圧が印加される。電流は、電源からバレル電極に、及び接触している磁石に、及び磁石間の物理的な接触を介してバレル中の他の磁石に、流れる。バレルが回転する際、磁石のかなりの部分が、互いに接触し、従って、単電極として機能する。磁石の電位の結果として、槽中の金属イオン種(例えば、アルミニウムイオン種、マンガンイオン種)は、磁石表面上で減少し、磁石の上に層の形で堆積する。
一般的に、槽は、堆積させる所望の組成の層に依存する、適した金属の供給源を含む。例えば、金属合金を堆積する際、合金中の全ての金属の構成は、槽中に供給源を有する。金属の供給源は、一般的に分散媒(fluid carrier)に溶けているイオン種である。上述のように、電気めっき処理の間、イオン種は皮膜を形成するように合金の形で堆積される。一般的に、どのような適したイオン種が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、電気めっき槽は、アルミニウムイオン種、マンガンイオン種、イオン液体(ionic liquid)、及び少なくとも1種の添加物を含む。いくつかの実施形態では、電気めっき槽は有機共溶媒を含む。有機共溶媒は、イオン液体の電解質(ionic liquid electrolyte)の粘度を低減すること、イオン液体の電解質の伝導度を改善すること、電気めっきレートを改善すること、堆積物の外観を改善すること、及び/又はデンドライトの(又は樹枝状晶の:dendritic)成長を低減すること、に使用されてもよい。
当業者は、特定の用途での使用のために適した槽の組成物の、適切な組み合わせを選択できるだろう。一般的に、槽中の添加物は電気めっき処理と相性が良く、すなわち、槽は電気めっき処理に適するだろう。
アルミニウムマンガン合金層を堆積するための、ある適した槽及びめっき処理は、権利者が共通の米国特許公報第2014−0272458号に記載されてきており、その全体を参照して本明細書に組み込む。
上述のように、被覆された磁石は耐食性及び延性を含む所望の特性を有する。被覆された磁石は、延性により、良好な熱衝撃抵抗を有すること、及び/又はクラックが入ることなしに熱サイクルが可能になる。被覆された磁石は、以下に限定されないが、ポータブル電気デバイス、コンピュータハードディスク用ヘッドアクチュエータ、磁気共鳴映像(MRI)、ギター用マグネティックピックアップ(magnetic guitar pickups)、ラウドスピーカー及びヘッドホン、磁気軸受及び磁気カップリング、永久磁石モーター、コードレスツール、サーボモーター、リフティングモーター及びコンプレッサーモーター、同期モーター、スピンドルモーター及びステッパーモーター(又はステッピングモーター:stepper motors)、電動パワーステアリング、ハイブリッド電気自動車用駆動モーター、アクチュエーター、及び磁気クラスプ、を含む様々な用途に使用されてもよい。
以下の実施例は説明のためであり、非限定的であると考えられるべきである。
本実施例は、NdFeB磁石上のAl−Mn合金皮膜の優れた性能を説明する。
6原子%のMnを含むAl−Mnは、NdFeBから作られた磁石の上に電気めっきされた。その皮膜はナノ結晶の粒径を有した。Al−Mnの皮膜は、直角プリズムの磁石の全ての側面を被覆しており、公称で10ミクロン厚であった。磁石は様々な試験環境にさらされ、以下の性能特性を有することが示された。
塩水噴霧(Salt Spray):ASTM B−117試験方法により塩水噴霧24時間暴露にさらされた磁石は赤錆形成(red rust formation)の兆候を示さなかった。
酸蒸気(Acid vapor):60℃の酸蒸気に500時間さらされた磁石は、赤錆形成の兆候を示さなかった(その全体を参照して本明細書に組み込まれる、J.Electrochem.Soc.,Vol.145,No.12,December 1998に記載される試験方法)。
熱衝撃(Thermal Shock):熱衝撃にさらされた磁石は、クラックの形跡を示さなかった。熱衝撃は、磁石を250℃5分間均熱する工程と、次にそのパーツを水中で室温に急冷する工程により行われた。
熱サイクル(Thermal Cycling):磁石は85℃から−40℃までのサイクルに20サイクルさらされて、クラックの形跡を示さなかった。
本実施例は、Al層上のAl−Mn層を含むNdFeB磁石上の皮膜の優れた性能を説明する。
6原子%のMnを含むAl−Mn皮膜は、NdFeBから作られた磁石の上部に皮膜を形成するように、市販の純Al層上に5ミクロンの厚さで電気めっきされた。その皮膜はナノ結晶の粒径であった。全ての皮膜は、直角プリズムの全ての側面を被覆しており、公称で10ミクロン厚であった。磁石は様々な試験環境にさらされ、以下の性能特性を有することが示された。
塩水噴霧:ASTM B−117試験方法により塩水噴霧96時間暴露にさらされた磁石は赤錆形成の兆候を示さなかった。
酸蒸気:60℃の酸蒸気に1000時間さらされた磁石は、赤錆形成の兆候を示さなかった。
熱衝撃:熱衝撃にさらされた磁石は、クラックの形跡を示さなかった。熱衝撃は、磁石を250℃5分均熱する工程と、次にそのパーツを水中で室温に急冷する工程により行われた。
熱サイクル:磁石は85℃から−40℃までのサイクルに20サイクルさらされて、クラックの形跡を示さなかった。
本実施例は、Al−Mn合金皮膜のMnの含有量を変化させる効果を説明する。
4つのAl−Mn合金はMnの含有量を変化させて作り出された。Mn含有量は5原子%から13原子%で変化した。サンプルAは12原子%のMn含有量を有し、サンプルBは8原子%のMn含有量を有し、サンプルCは5原子%のMn含有量を有し、及びサンプルDは13原子%のMn含有量を有した。これらの皮膜は次に、ASTM E−8によりサブサイズのサンプルを用いた単軸引張試験で試験され、標準アルミニウム合金AA3104(グラフの最下の曲線)と比較された。図1にサンプルの真応力−真ひずみ曲線を示す。
合金の強度及び延性の両方は、Mn含有量と相関していた。ナノ結晶であったサンプルB(約10%のひずみで破断した(fractured))及びC(約7%のひずみで破断した)は良好な靱性と有意な延性を示した。サンプルA(約3%のひずみで破断した)はナノ結晶及びアモルファスの混合物である。高い靱性を有するが、限られた延性を有する。このことから、この合金は、ある用途において皮膜に所望の機械特性を生じるであろうMn含有量の最大値(highest end)にあるものとする。サンプルDは最も高いMnの含有量を有し、そのため結晶構造の中で完全にアモルファスである。それは極めて脆く、熱衝撃試験中又は機械的に取り扱っている間にクラックが入るだろう。皮膜中のクラックにより、直下にある最初のNdFeB材料が露出し、それから急速に腐食し得る。