JP2018531274A6 - 炎症促進性細胞へのマクロファージ分極を改変して癌を治療するための方法及び組成物 - Google Patents

炎症促進性細胞へのマクロファージ分極を改変して癌を治療するための方法及び組成物 Download PDF

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本開示は抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物の使用に関する。好ましい実施形態では、このような化合物は癌を治療するために使用する。興味深いことに、本開示は免疫系を含む間接的な経路を介して癌の治療を可能にする。
【図面】図1

Description

本発明は、免疫療法の分野に関する。より具体的には、本発明は、炎症促進性環境を誘導するためにM2型マクロファージ分極を阻害する方法を提供し、結果として癌、感染症、ワクチン接種、外傷及び慢性炎症性疾患における免疫応答を適切なものにする。
本発明は特に、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物の使用に関する。好ましい実施形態では、このような化合物を使用して癌を治療する。興味深いことに、本発明は免疫系を含む間接的な経路を介して癌の治療を可能にする。
非制御下の細胞増殖に起因する癌は様々な疾患群を形成する。外科手術及び放射線療法は全ての癌、特に転移期を治療できる訳ではない。より効果的な治療は、患者の全器官に到達することが求められる:これは腫瘍細胞の死滅を誘導することが可能な現代の化学療法の場合である。しかし、薬物の細胞毒性効果が依然として化学療法の大きな障害となっている。
分子生物学や遺伝学の登場により、癌細胞発生につながる機序及び「標的療法」が理解できるようになってきた。これらの治療は化学療法と組み合わせて、健康な細胞は避けて腫瘍細胞を攻撃する。しかし、これらの療法は患者の平均余命を有意に延長するが、依然として治癒をもたらすものではない。今日では、ヒト腫瘍細胞が治療に耐性となり、免疫系による監視を逃れるようにうまく確立されている。従って、併用療法は患者を治癒するために不可欠であるが、副作用の問題が増えるという欠点がある。
癌免疫療法の分野で行われた初期の研究は、免疫系のエフェクター細胞を「ブースト」し、それら細胞を腫瘍に対してより攻撃的にすることを目的としていた。この戦略は実際、ある程度成功している。
癌治療に革命をもたらす新世代の免疫療法分子は、これら細胞の抑制機構を遮断し、エフェクターT細胞(Teff)がその作用を発揮できるようにする。これは「阻害物質を阻害する」という概念である。抗CTLA‐4抗体(Yervoy(登録商標))は、転移性形態の悪性黒色腫を治療するための最初の分子であり、患者の6〜10ヶ月の平均生存期間を延長し、患者の4分の1は2年後にまだ生存している。残念ながら、これらの結果そのものは目を見張るものではあるが、依然としてほとんどの患者を治癒させるものではない。
本発明は、「阻害物質を阻害する」アプローチに依拠し、免疫療法において有用な新規の方法を提供する。より具体的には、本発明は、炎症促進性環境を誘発するためにマクロファージ分極を改変する方法に関する。この方法は、M2型マクロファージが提供する抗炎症シグナルを阻害し、M1型マクロファージが提供する炎症促進性シグナルに有利に働くように、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージを阻害しないことが可能な抗SIRPa化合物の使用にある。このアプローチにより、特に癌細胞を除去する際、Tエフェクター細胞の作用に有利な炎症環境を再構築することが可能になる。
マクロファージの可塑性及び分極
マクロファージは造血系の中で可塑性が最も高い細胞である。マクロファージは自然免疫(貪食作用許容能)及び適応免疫(細胞分極)の両方に関与するが、個体発生、恒常性及び組織修復にも関与する(非特許文献1;非特許文献2)。マクロファージは全組織に存在する。マクロファージは広範な表現型多様性及び機能的多様性を有する。個体発生中、マクロファージ細胞はまた、多様な起源を示し、これは成人期まで持続する。
組織において、単球‐マクロファージは環境刺激物質(微生物感染、細胞損傷、リンパ球活性化からの生成物)に反応し、個別の表現型を獲得する。以前から、これらの細胞は炎症状態に関連して二元的な様式でそれらの機能に従って分類されている。
受け取った刺激物質、単球‐マクロファージに応じて、これらはトランスクリプトームを再プログラミングし、個別の機能的スペクトル及び表現型スペクトルが得られる。
マクロファージは、2つの亜集団又は分極(又は活性化)状態:従来的な活性化表現型M1及び代替的な活性化表現型M2:に簡略的に分類される(非特許文献3)。M1分類は、インビトロでIFNg因子単独での使用、又はLPSなどの微生物因子もしくはTNF‐α及びGM‐CSFなどの炎症性サイトカインとの併用と関連付ける。分極M2はむしろIL4又はIL13と関連している(非特許文献4)。他のサイトカインはまた、炎症において役割を担うArg1(アルギナーゼ1)、CCL24又はCCL17の過剰発現を誘導するIL33などのM2型分極を誘導するものとして同定される。IL21、及びより一般的にはCSF1は、マクロファージの分極において主要な役割を担う。マクロファージはまた、M2の一般的な特徴を共有する「M2様」状態を獲得し得る。実際、LPS、IL‐1、グルココルチコイド、TGFベータ、Wnt5a及びIL10に関連する免疫複合体などの多数の刺激物質は、「M2様」型の機能的表現型をもたらす。
同様に、インビボ研究により、M1、M2及びM2様マクロファージの存在が分かってきた。これらのサブタイプは、環境複合体系に統合されなければならない一連の機能状態の極端なタイプのみを表す。
一般に、M1マクロファージはIL12high、IL23high及びIL10low表現型を呈し、反応性酸素種(ROS)、酸化窒素(NO)の中間体、及び炎症性サイトカイン(IL1b、TNF‐α、IL‐6)などの分子エフェクターを生成する。M1マクロファージはTh1応答に関与し、細胞内寄生生物に対する耐性の役割を担い、腫瘍細胞を排除する重要なエフェクターである。対照的に、M2マクロファージはIL12low、IL‐23low及びIL10high表現型を有し、環境中に存在する刺激物質に応じて炎症性サイトカインの産生は多様である。M2細胞は、その表面にスカベンジャー、マンノース及びガラクトース型受容体が強く発現する。アルギニンの代謝はオルニチン及びポリアミン代謝に変わる。M2マクロファージは一般に、Th2型応答、寄生生物除去、炎症の低減、組織修復促進、血管新生、腫瘍増殖及び免疫調節に関連する。
M1及びM2はケモカインの個別の発現プロファイルも有する。M1マクロファージは、Th1を誘引することが知られているCXCL9及びCXCL10ケモカインを発現し、M2マクロファージはCCL17、CCL22及びCCL24を発現する。CCL2及びCXCL4などのケモカインはマクロファージをM2様表現型に分極させることも可能である。
それらの分極状態に依存して、これらマクロファージは鉄、葉酸及びグルコース代謝の点で異なる特徴を有する。例えば、M1は、フェリチンなどの鉄貯蔵に関与するタンパク質を大量に発現するが、細胞外培地への鉄輸送に関与するフェロポーチンは微弱にしか発現しない。逆に、M2マクロファージはフェリチンを低レベルに発現するが、フェロポーチンを高レベルに発現する。この差異は、いくつかの研究で観察されているように、M1の静菌効果(感染に対する防御)、及び腫瘍増殖も促進するM2マクロファージによる組織修復促進効果などの機能的結果をもたらし得る。これらの分極性に従ったマクロファージによる鉄の管理は、個体の状態に応じてマクロファージの分極を制御することの重要性を強調する重要な要素である。
同様に、マクロファージは正常状態又は病的状態下で組織内の酸素勾配に直面する。マクロファージ又は単球は、それらの解糖代謝を改変することによりこの勾配に適応する。HIF1及び2はこれらの改変の転写因子先導物質であり、改変にはケモカイン又はケモカイン受容体CXCR4又はCXCL12及びVEGF(血管新生因子)の発現も含まれる。マクロファージは、低酸素状態に対する組織応答に関与している。
細胞環境に存在するポリアミンは2型マクロファージ分極因子であることが分かっている。
本発明は、抗炎症性M2型マクロファージを阻害するために、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利になるようにマクロファージの分極を調節することを目的とする。
腫瘍微小環境
腫瘍環境には異なる防御細胞が存在する。その細胞の存在は腫瘍の攻撃を意味することから、これは演繹的に矛盾している。実際には、これらの免疫細胞の多くは不活性期に維持され、調節細胞の存在により動作不能にされる。腫瘍と戦う代わりに、これらの調節細胞は障壁の克服を促すことにより腫瘍の発達を促進し、拡大させ、二次腫瘍、すなわち転移を形成させる。
腫瘍免疫逃避及び免疫抑制機序
炎症の細胞及び分子エフェクターは腫瘍微小環境において重要な役割を担う。実際、90年代以降、炎症と腫瘍とのこの相互関係は数多くの研究の対象となっている(非特許文献5;非特許文献6)。免疫系を避けるために、腫瘍は3段階:除去‐平衡‐逃避で逃避機序を実行する。第1段階では腫瘍細胞を認識する免疫機序を除去する。次に、腫瘍細胞と免疫:殺傷と生存との間に平衡を確立する。この平衡は、腫瘍が進行することなく数年持続できる。この期間中、腫瘍細胞は遺伝的に不安定であり、最終的に逃避し、上記抑制機序の誘導、すなわち抗腫瘍応答の遮断により、適切な免疫応答を誘導するか、又は抗腫瘍免疫応答を阻害する。その後、細胞は正常であると認識される。
この上記抑制機序において、炎症性細胞及び分子が重要な役割を担う。適応免疫応答は樹状細胞の分化及び活性化の阻害(IL10及びVEGFなどの腫瘍微小環境因子中の存在を介して)につながる多数の経路を活性化することにより抑制/遮断される。また、末梢血及びリンパ節における調節性T細胞(Treg)の増加が、自然応答及び適応性応答を阻害する。MDSC(骨髄由来抑制細胞)及びTAM(腫瘍関連マクロファージ又はM2)などの微小環境における腫瘍抑制細胞の存在は、サイトカイン、増殖因子、細胞外マトリックスを分解する酵素、及びプロテアーゼの分泌による予後不良の腫瘍発生に影響を及ぼす(非特許文献7)。
免疫療法は安全ではあるが、一部の癌では、末梢血やリンパ器官内に、また免疫療法治療を妨害する腫瘍環境内に免疫抑制細胞が存在することにより部分的に有効性が中程度になる。ほとんどの癌患者において増加するMDSC、Treg及びTAMなどの抑制性細胞に作用することにより免疫療法の有効性を改善するため、いくつかの戦略が実施されてきており、又は現在試験されている。癌患者で頻繁に観察される抗腫瘍応答の障害にこれらの集団が寄与していることが明らかになりつつある。
従って、これらの細胞型の調節による免疫抑制との闘いは、免疫療法の有効性を高める重要な鍵であり、癌患者の予後を改善するはずである。本発明は、免疫療法に好都合な免疫環境を提供するために、M1型マクロファージに有利になるようにマクロファージ集団のM1/M2バランスを改変することを目的とする。
マクロファージ及び癌
マクロファージは腫瘍中に多数見られる。初めこの細胞集団は抗腫瘍応答に関与していると考えられていたが、多くの実験及び臨床研究から、マクロファージは腫瘍の開始及び進行に、ならびに転移過程に関与することが分かってきた。腫瘍過程中、マクロファージはIFNγ、TNF‐α及びIL6などの炎症促進性サイトカインを分泌し、慢性的炎症を形成して開始及び腫瘍進行を引き起こす他の免疫細胞を誘引する。しかし、腫瘍が導入されると、腫瘍マクロファージ(TAM)は免疫抑制性細胞プロファイルをとり、活性が低くなり、腫瘍増殖及び悪性腫瘍へ移行させる。TAMは、腫瘍細胞の移動、血管外遊出及び浸潤(転移)に関与し、腫瘍血管新生に関与する(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10)。
腫瘍に到達する単球Ly6C(CD14)/CD11bhighは、Ly6C及びCD11bマーカーの減少やMHCクラスII(MHCII)、VCAM及びCD11cの発現などの表現型変化を受ける。しかし、TAMの分化及び分布は腫瘍の解剖学的局在及びその発生段階に依存する。定義「TAMの機能」は以前は抗腫瘍M1マクロファージ型(iNOS誘導型)及びM2腫瘍促進性ARG陽性マクロファージ型に基づいていた。このかなり単純化された二分類法は、高可塑性のTAMが、その抑制機能に有利に働き、腫瘍細胞に対する耐性に関与するTregの動員を可能にするサイトカイン及びケモカイン環境にあるという文脈に置かれていなければならない(非特許文献11;非特許文献2)。
本発明は、転移過程を含む腫瘍過程を減少又は阻止するためのTAMの阻害に関する。
CD47‐SIRPa経路
CD172a又はSHPS‐1とも呼ばれ、本明細書では「SIRPa」と記載されているシグナル調節タンパク質アルファは、Src相同領域2(SH2)ドメイン―ホスファターゼを含む―SHP‐1及びSHP‐2に関連するマクロファージ及び骨髄細胞に主に存在する膜タンパク質として最初に同定されたものである。SIRPaは、密接に関連したSIRPタンパク質のSIRP対合受容体ファミリーのプロトタイプメンバーである。CD47がSIRPaに関与すると、宿主細胞の貪食作用を阻害する下方制御シグナルが生じ、従ってCD47は「ドント・イート・ミー」シグナルとして機能する。
SIRPaは、組織マクロファージの亜集団の大部分を占める単球、顆粒球、組織中の樹状細胞(DC)のサブセット、数種の骨髄前駆細胞上で、ニューロン上に様々なレベルで、小脳及び海馬の顆粒層などの脳のシナプスが豊富な領域内において顕著に高発現レベルで発現する(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。
CD47とのSIRPa相互作用が主に記載されており、これは宿主細胞貪食作用を阻害する下方制御シグナルをもたらす(非特許文献15参照)。CD47及びSIRPaは両方とも他の相互作用にも関与する。研究者らは、肺表面タンパク質SP‐A及びSP‐DがSIRPaとの相互作用を介して肺における炎症反応を制御することを示唆している(非特許文献16)。
CD47‐SIRPa相互作用の最も特徴的な生理学的機能の1つは、造血細胞、特に赤血球及び血小板の恒常性における役割である。CD47は、「ドント・イート・ミー」シグナルとして作用することから、マクロファージによる宿主細胞貪食作用の重要な決定因子であるため、近年、CD47‐SIRPa相互作用が癌細胞除去に寄与している可能性が鋭意検討されている。
現在、SIRPA/CD47経路も、マクロファージ貪食作用の増強に全て向けられた様々な医薬開発の対象となっている。実際、感染細胞のように、癌細胞は未知のタンパク質又は異常レベルの正常タンパク質などの異常な荷物を運び、しかもこれらの細胞は免疫制御分子を同時に過剰発現することにより自然免疫制御機構を破壊することが多い。このような機構の1つに、正常細胞に発現される「自己」タンパク質であるCD47(非特許文献17)があることが徐々に明らかになっている。CD47は、SIRPaなどの数種の異なるリガンドと相互作用する。この特異的相互作用は、貪食マクロファージへ「ドント・イート・ミー」シグナルを送り、その後、標的細胞は影響を受けないままにすることが知られている(非特許文献18)。癌細胞が治療抗体に被覆されている場合でさえ、癌細胞によるCD47の過剰発現により、CD47はマクロファージに耐性となり(非特許文献19)、多数の固形癌及び血液癌における不良な臨床転帰と相関している(非特許文献20;非特許文献21)。実験モデル、特に免疫不全マウスのヒト腫瘍異種移植モデルにおいて、CD47/SIRPa経路の遮断は、マクロファージによる腫瘍除去の促進、ならびに癌細胞の伝播及び転移形成の減少に非常に有効であった(非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)。これらの研究では、TAM機能又は表現型は研究されていない。マクロファージによる抗体依存性貪食作用を増強することにより、CD47/SIRPa経路の遮断は、トラスツズマブ(抗Her2)、セツキシマブ(抗EGFR)、リツキシマブ(抗CD20)及びアレムツズマブ(抗CD52)などの治療用抗癌抗体の枯渇と相乗的に作用することが報告されている(非特許文献26)。
上記から、SIRPaは骨髄細胞の貪食機能、樹状細胞の抗原提示及びサイトカイン分泌、ならびに成熟顆粒球の輸送に関与すると報告されていることが分かる。しかし、マクロファージ分極に対するSIRPaの機能、及び腫瘍形成中のそれらの強力な抑制機能はこれまで報告されたことはない。
特許文献1は、ヒトSIRPaとCD47との相互作用を調節する工程を含む、血液癌を治療する方法を開示している。この文献から、SIRPa‐CD47の遮断が貪食経路を介した自然免疫系の活性化を誘導することが示された。本特許出願に記載のヒト白血病の移植モデルでは、骨髄細胞を使用し、動物をCD47のアンタゴニストで処理したときに移植が拒絶された。この結果から、抗CD47による処理時に貪食作用が増加したことが示唆されるが、マクロファージの分極状態の改変も、マクロファージの炎症促進機能への改変も示唆されていない。
抗炎症及び抗腫瘍治療において使用するために細胞機能を阻害する方法は、特許文献2に記載されている。この方法は、SIRPaの細胞外ドメインを特異的に認識し、病的骨髄細胞の機能を阻害する物質を含む薬物を投与する工程を含む。この特許出願の発明者らは、細胞外ドメインに特異的な抗SIRPa抗体が炎症を遮断し、マクロファージ貪食作用を阻害する性質(本文中で病的骨髄細胞の機能と称する)を有することを主張している。この効果は、以下に開示される結果と完全に矛盾しており、マクロファージ分極又は炎症促進性機能に対する抗SIRPa抗体の効果は全く示唆していない。
SIRPaに結合するCD47‐Fc及びCD47伸長フソ体(fusobody)分子を研究し、特許出願特許文献3で請求した。これらの分子は末梢血単球、パンソルビンもしくは溶解性CD40Lで刺激したDC及び/又は単球誘導型DC、ならびにIFNγからの免疫複合体刺激細胞サイトカイン放出(例えばIL‐6、IL10、IL12p70、IL23、IL8及びTNF‐αの放出)を阻害可能であることが主張されている。これら分子の活性は、本出願で開示された抗SIRPa抗体の活性とは全く異なる。
特許文献4には、SIRPa陽性AMLのモデルにおける抗体抗ヒトSIRPa(29AM4‐5と呼ばれ、本発明者らに命名されたSIRP‐29に相当する)の使用、すなわち、上記抗体抗ヒトSIRPaが結合したヒトSIRPaを発現する一次ヒトAML細胞の免疫不全マウスへの異種移植が記載されている。従って、このアプローチは、ヒトSIRPaを発現する腫瘍細胞に作用する抗ヒトSIRPa抗体の使用にある。よって、治療は腫瘍に直接向けられる。
Alblas J.ら(非特許文献27)は、抗SIRPa抗体(ED9)が炎症性サイトカイン、特にTNF‐α及びIL‐6の産生を誘導できないことを観察した(図1A)。しかし、本発明者らは、逆に、この特定の抗体によりM2抗炎症性マクロファージがM1炎症促進性マクロファージへ再分極可能になることを実証した(実験パートの図14B)。結果の違いは、Alblasらの著者らはマクロファージ細胞株(ラットNR8383細胞株)(もはやSIRPaを発現しない)を使用し、一方、本発明者らは実験の過程で骨髄由来ラットマクロファージの新たな調製物を使用したという事実により説明できた。
特許文献5には、ヒトSIRPaに結合し、標的細胞上に発現したCD47と貪食細胞上に発現したSIRPaとの相互作用を遮断する抗ヒトSIRPa抗体が記載されている。この文献では、マクロファージ分極及びマクロファージの炎症促進性機能の増加に対する抗SIRPaの効果を示す証拠は示唆も明示もされていない。興味深いことに、特許文献5に名前が記載された発明者らは第56回ASH年次総会において要約を発表した(非特許文献28)。特許文献5の出願後のこの要約において、彼らは、CD47とSIRPaとの相互作用を遮断する抗ヒトSIRPa抗体はヒトマクロファージ貪食作用を誘導するには十分ではないことを述べている。全体として、これらの刊行物には、インビトロでの抗ヒトSIRPaの作用機序は抗ヒトCD47の作用機序とは異なることが示唆されており、ここでは、インビボ貪食効果が文献に広範に記載されている。
上記から、抗体又は融合タンパク質によりCD47又はSIRPaを標的とする様々な遮断SIRPa‐CD47相互作用戦略が個別の結果及び異なる効率を示し、各標的に対して個別の役割を示すことが明らかになっている。実際、CD47抗原に対して向けられる抗体は、CD47とそのすべてのリガンドとの相互作用を遮断する。そのFcを介して細胞に結合し、内因性CD47経路を遮断し、その活性化を阻止するSIRPa‐Fcタンパク質を使用すると、抗‐SIRPa抗体とは逆に、内因性SIRaの活性を遮断できなくなる。免疫系の調節におけるSIRPa経路の直接的な役割は、これまで、CD47経路と比較して過小評価されてきた。先行技術の研究はいずれも、腫瘍逃避機序で重要な役割を担う(表現型レベル又は機能レベルのいずれかの)マクロファージ分極におけるSIRPa経路の機能を示唆も説明もしていない。
この文脈において、免疫環境の調節が多くの疾患、特に癌の治療において主要な成果を挙げることから、本発明者らは抗SIRPa化合物の使用における新たな知見を提供する。
国際公開第2010/130053号 WO00/66159 国際公開第2012/172521号 国際公開第2013/056352号 国際公開第2015/138600号
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以下の実験パートに記載しているように、本発明者らはここで、SIRPaを新たなチェックポイント阻害剤として同定し、マクロファージ分極におけるその役割を実証した。マクロファージの炎症促進性プロファイルが2型マクロファージ(M2型高貪食活性=M(IL4))を犠牲にして得られることから、本明細書で定義される抗SIRPa化合物は1型マクロファージ(M1炎症促進性=M(IFNg))に関連するマクロファージの炎症促進機能を誘導し、腫瘍におけるM2型マクロファージの抑制活性を阻害することを本発明者らは実際に示している。この効果は、SIRPaを標的にすることにより得られるが、貪食機能に関与するCD47では得られない。本発明の1つの利点は、抗SIPRa化合物を使用すると、抗CD47化合物を使用する場合より副作用を少なくできることである。実際、CD47は腫瘍細胞だけでなく、広範な細胞により発現し、数種のリガンドと相互作用する。SIRPaの発現の方が限定的であるため、治療効果を腫瘍微小環境に向けやすくなる。従って、抗SIRPa化合物の使用は抗CD47化合物の使用より毒性や有害性が少なくなる。更に、治療は腫瘍細胞ではなくマクロファージに向けられるため、腫瘍細胞に選択圧が掛からず、腫瘍逃避、及び治療に対する腫瘍耐性の発生を防止することが可能になる。
従って本発明は、マクロファージ分極を改変するために、抗SIRPa抗体などの、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物の使用に関する。従って、本発明の方法は抗SIRPa化合物の使用にあり、当該化合物はM2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働く。
特定の実施形態では、上記抗SIRPa化合物は、抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体、このような化合物をコードする核酸、及びSIRPaタンパク質の発現を阻害可能な化合物、特にsiRNAから成る群より選択されることが可能である。
従って、抗SIRPa化合物、特に抗SIRPa特異的抗体は、炎症促進性マクロファージにより改善又は予防できる可能性が高い様々な状態、例えば癌、感染症、外傷、自己免疫疾患、ワクチン接種、神経疾患、脳及び神経障害、赤血球増加症、血色素症ならびに慢性炎症性疾患の治療に使用できる。癌は好ましい治療指標である。
特定の実施形態では、本発明は、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能で、SIRPa陽性急性骨髄性白血病及び/又はSIRPa陽性非急性骨髄性白血病及び/又はSIRPa陽性非ホジキン白血病又はSIRPa陽性血液癌を除く癌の治療に使用するための抗SIRPa化合物に関するものである。
本発明の重要な態様は、分極を調節して腫瘍発生及び生存に有害な免疫環境を再現するためにマクロファージ上のSIRPaを標的とすることを意図している治療アプローチである。基本的に、抗腫瘍治療の成功は間接的な経路に基づいており、腫瘍細胞が抗SIRPa化合物に対して感受性があることを必要としない。従って、特定の実施形態では、本発明は、本明細書で定義されるような、すなわち癌の治療において抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物の使用に関するものであり、当該化合物はSIRPa陰性腫瘍を示す患者に投与する。
本明細書で定義される抗SIRPa化合物は、実験パートに記載されているように、単独療法において使用可能である。
相乗効果が本発明者により実証されたことから、本明細書で定義される抗SIRPa化合物と他の治療薬、特に別の免疫チェックポイントを遮断する薬剤との併用も本発明の一部である。
本発明の別の態様は、マクロファージを本明細書で定義される抗SIRPa化合物と共にインキュベートすることにより、炎症促進性M1型マクロファージを生体外で得る方法である。
本発明はまた、患者から得た試料中のM2型マクロファージの存在を測定することにより、本明細書で定義される抗SIRPa化合物での治療から利益が得られる可能性が高い患者を選択する方法に関する。
上記化合物により治療した個体から得た試料中で炎症促進性M1型マクロファージ及び/又は抗炎症性M2型マクロファージの存在を測定することによりその有効性を評価するための、本明細書で定義される抗SIRPa化合物での治療を経過観察する方法も本発明の一部である。
GM‐CSF+M‐CSFプロトコルでの単球1型分極:SIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球を増殖因子M‐CSF及びGM‐CSFと共に培養してマクロファージを誘導し、Ctrl Ab又は抗Sirp抗体(抗a又はab又はbアイソタイプ)、又はCD47‐Fcタンパク質、又は数種の抗‐CD47抗体(B6H12又はCC2C6)で処理したもの、あるいは未処理のものを、1型マクロファージ表現型及び機能をFACS及びELISAにより分析した結果を表していて、A.は細胞表面マーカー分析:CD86及びCCR7、B.は分泌されたサイトカイン/ケモカイン:IL6、IL12p40、CCL‐2及びTNF‐αを表しており、IL6、p12p40及びCCL‐2は、細胞を抗SIRPa抗体で処理すると有意に増加ことが分かる。 GM‐CSF+M‐CSFプロトコルでの単球2型分極:SIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球を増殖因子M‐CSF及びGM‐CSFと共に培養してマクロファージを誘導し、Ctrl Ab又は抗Sirp抗体(抗a又はab又はbアイソタイプ)、又はCD47‐Fcタンパク質、又は数種の抗CD47抗体(B6H12又はCC2C6)で処理したもの、あるいは未処理のものに、2型マクロファージ表現型及び機能分析をFACS及びELISAにより行った結果を表しており、A.は細胞表面のマーカー発現:CD206、CD200R、CD11bを示し、B.は分泌されたケモカイン:CCL‐17を示す。 M‐CSF及びIFNγプロトコルでの単球1型分極:SIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球をM‐CSFと共に5〜6日間培養し、次いでIFNγと共に、またCtrl Ab又は抗Sirp抗体(抗a又はab又はb Sirpアイソタイプ)又はCD47‐Fcタンパク質、又は数種の抗CD47抗体(B6H12又はCC2C6)を添加して、あるいは添加せずに2日間培養し、M1分泌サイトカイン:IL6及びIL12p40を分析し統計分析を行った。 M‐CSG+IFNγ及びLPSプロトコルでの単球1型分極:iNOS発現に対するSIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球をM‐CSFと共に5〜6日間培養し、次いでIFNγ+LPSと共に、またSIRPa:SE7C2(A.)又はSIRPa/b:SE5A5(B.)又はCD47:B6H12(C.)に対する抗体を添加、あるいは添加せずに2日間培養し、次いでiNOS発現をFACSにより分析したもので、3つのパネル上でCtrl Abは点線で表し、分極前の単球は白抜きの灰色線で表している。 M‐CSF+IL4プロトコルでの単球2型分極:抗体によるSIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球をM‐CSFと共に5〜6日間培養し、次いでIL4と共に、またCtrl Ab又は抗Sirp抗体(抗Sirp a又はab又はb)又はCD47‐Fc融合タンパク質、又は数種の抗CD47抗体(B6H12又はCC2C6)を添加、あるいは添加せずに培養した場合の、A.は細胞表面マーカー:CD206、CD200R及びCD11bの発現を表し、B.は上清中のIL6サイトカインの放出を表している。 M‐CSF+IL4プロトコルでの単球2型分極:siRNAノックダウンアッセイによるmRNAレベルでのSIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球をM‐CSFと共に5〜6日間培養し、次いでIL4と共に2日間培養し細胞をnull‐siRNA又はSIRPa siRNAでトランスフェクトした:A.は細胞表面マーカー:CD206及びCD200Rの発現を表し;B.は上清中のIL6サイトカイン放出を表しており、抗‐SIRPa SiRNAはThermoFisher scientific社から入手したものである。 M‐CSF+IL4処理後のM2再分極に対するSIRPa遮断の効果を示した図であり、ヒト単球をM‐CSFと共に5〜6日間培養し、次いでIL4と共に2日間培養し、その後、M2マクロファージをCtrl Ab又は抗Sirp抗体(抗Sirp a又はab又はb)、又はCD47‐Fc融合タンパク質、又は数種の抗CD47抗体(B6H12又はCC2C6)で処理、あるいは未処理し、次いで、サイトカインIL6及びTNF‐α放出を上清中で測定した。 肝細胞癌のインビボモデルに対する抗SIRPa+抗CD137併用治療の効果を示した図であり、腫瘍接種から1週間後に、動物を3G8アイソタイプ対照抗体(Iso対照:黒い四角:n=33)又は抗SIRPa抗体(クローンp84:灰色の四角;n=33)又は抗CD137抗体(4‐1BB mAb:黒い三角;n=8)又は併用治療(抗SIRPa+抗CD137:灰色の菱形;n=8)で週3回、4週間処理し、次いで全生存率を分析した。 肝細胞癌のインビボモデルに対する抗SIRPa+抗PD‐L1併用治療の効果を示した図であり、腫瘍接種から1週間後に、動物を3G8アイソタイプ対照抗体(Iso対照:黒い四角:n=5)又は抗SIRPa抗体(クローンp84:灰色の四角;n=5)又は抗PD‐L1抗体(10F‐9G2 mAb:黒い三角;n=8)又は併用治療(抗SIRPa+抗PD‐L1:灰色の菱形;n=5)で週3回、4週間処理し、次いで全生存率を分析した。 黒色腫のインビボモデルに対する抗SIRPa+抗PD‐L1併用治療の効果を示した図であり、腫瘍接種と同時に、動物をアイソタイプ対照抗体(Iso対照:星形:n=5)又は抗SIRPa抗体(クローンp84:四角;n=5)又は抗PD‐L1抗体(10F‐9G2 mAb:三角;n=8)又は併用治療(抗SIRPa+抗PD‐L1:丸;n=5)で処理した結果を表しており、A.は全生存率を分析した結果を、B.CMHクラスII/CD11bマーカーを用いてマクロファージ浸潤を分析するため、最初の接種の2週間後に数頭の動物を屠殺して得られた結果を表している。 マウスマクロファージ分極に対する抗SIRPA抗体の効果を示した図であり、M2マーカーCD206、CD11b及びPD‐L1の発現の定量化に示されるように、マウスM2マクロファージ分極表現型は抗SIRPa mAbにより阻害されるが、抗CD47 mAbでは阻害されず、本実験では、抗SIRPa mAbはp84クローンに対応し、抗CD47 mAbはMIAP310クローンに対応する。 ヒトM2マクロファージ分極に対する抗SIRPa抗体の効果を示した図であり、ヒトM2マクロファージ分極表現型は抗SIRPa mAbにより阻害されるが、抗CD47 mAbでは阻害されず、A.はM2表面マーカー(CD200R、CD80)の検出によってあらわされる図であり、B.は機能的レベルにあり、サイトカイン分泌(IL‐6)の評価によってあらわさる図で、本実験では、抗SIRPa mAbはSE7C2又はSIRP29クローンに対応し、抗CD47 mAbはB6H12クローンに対応する。 ヒトM1貪食作用に対する抗SIPRa抗体の効果を示した図であり、CD47+腫瘍細胞(Raji)のヒトマクロファージ貪食作用はCD47標的化剤により増加するが、SIRPa標的化剤では増加せず、貪食作用の分析は、M1蛍光マクロファージでのゲーティングによるフローサイトメトリー、及びM1マクロファージへの標的(Raji)細胞蛍光の分析により評価し、また本実験では、CD47標的化剤は抗CD47 mAb B6H12又はCC2C6クローンに対応し、SIRPa標的化剤は抗SIRPaクローンSE7C2又はCD47‐Fcタンパク質に対応する。 ラットM1/M2分極に対する抗SIRPA抗体の効果を示した図であり、A.はラットM2マクロファージは、抗SIRPa mAbの存在下で炎症促進性になり、炎症性サイトカイン(IL‐6及びTNF‐α)を分泌するが、抗CD47 mAbでは分泌しないことを表しており、B.はM1ラットマクロファージ分極は、抗SIRPa又は抗CD47 mAbに改変されないことを表し、また本実験で使用した抗SIRPa mAbはED9クローンに対応し、抗CD47 mAbはOX101クローンに対応する。 乳房腫瘍のマウスモデルに対する抗SIRPa抗体の効果を示した図であり、抗SIRPa mAbでの単独療法は、マウスの4T1乳癌モデルにいて腫瘍増殖を阻害しており、また本実験で用いた抗SIPRa mAbはクローンp84に対応する。
本文書全体を通して、以下の定義を使用する:
マクロファージ分極
用語「分極」は、本明細書では、マクロファージの表現型の特徴及び機能的特徴を指定するために用いる。表現型はマクロファージが発現する表面マーカーを介して定義できる。機能性は、例えば、マクロファージが発現した、特に分泌したケモカイン及び/又はサイトカインの性質及び量に基づいて定義できる。実際、マクロファージは、炎症促進性M1型マクロファージ又は抗炎症性M2型マクロファージのいずれかの状態に応じて、異なる表現型及び機能的特徴を示す。M2型マクロファージは、CD206、CD11b、PD‐L1及びCD200Rなどの表面マーカーの発現、次いでCCL17などのサイトカインの分泌により特徴付けられる。M1型マクロファージは、CD86及びCCR7などの表面マーカーの発現、ならびにIL‐6、TNF‐α及びIL12p40などのサイトカインの分泌により定義付けできる。本発明の文脈において、抗SIPRa化合物は、M2型マクロファージを阻害し、また/あるいはM1型マクロファージに有利に働くことにより、マクロファージ集団の分極を調節可能にする。
外因性物質によるマクロファージの摂動の意味には、通常使用される用語「活性化」の意味が包含されている。マクロファージは、増殖因子(CSF‐1及びGM‐CSF)、ならびに微生物、微生物生成物及びヌクレオチド誘導体などの外部刺激物質、抗体‐Fc受容体刺激、グルココルチコイド、貧食作用に応答して自己の分極状態を変化させる。
抗SIRPa化合物
本明細書で使用される「抗‐SIRPa化合物」は、SIRPaの細胞外ドメイン、又はこのような化合物をコードする核酸に特異的に結合する化合物、ならびにSIRPaタンパク質の発現を阻害することが可能な化合物を指す。このような化合物は、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能である。
抗SIRPa化合物は、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)の細胞外ドメインに特異的に結合する化合物とすることが可能である。抗SIRPa化合物はまた、SIRPa遮断化合物とすることも可能である。好ましくは、抗SIRPa化合物はアンタゴニストペプチド又は抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体である。
本明細書中で使用しているように、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体又は組換え抗体を指す。本発明のモノクローナル抗体には、組換え抗体、例えば、キメラ抗体、CDRグラフト抗体及びヒト化抗体が含まれるが、抗原結合部分も含まれる。本明細書中で使用しているように、抗体(又は単に「抗体部分」)の用語「抗原結合部分」は、本発明の抗体の1つ以上の断片を指し、当該断片(単数又は複数)は依然として上記で定義した結合親和性を有する。抗体の用語「抗原結合部分」によれば、結合断片の例にはFab断片、F(ab’)2断片、Fv断片及び単鎖Fv(ScFv)が挙げられる。「二重特異性抗体」などの他の形態の単鎖抗体も同様にここに含まれる。
本明細書中で使用しているように、アンタゴニストペプチドは、SIRPaとそのリ癌ドの1つ、特にCD47との相互作用を阻害することが可能なペプチドを指すか、又はSIRPaシグナル伝達経路を阻止もしくは減少させることが可能なペプチドを指す。
抗SIRPa化合物は、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのSIRPaタンパク質、又はshRNAもしくはsiRNAなどの干渉RNAの発現を阻害できる化合物とすることも可能である。本発明によるマクロファージの分極を調節可能なsiRNAの例は、実験パートに提供している。更に、そのような化合物の同定方法は当業者に公知である。
特定の実施形態では、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPaは、下記実験パートに記載したプロトコルの1つを適用することにより同定できる。
例えば、抗SIRPa X化合物の同定は以下のように行うことが可能である:
単球をM‐CSF(100μg/mL)で5〜6日間培養してM0マクロファージを得た後、上記化合物Xの存在下又は非存在下で、組換えhIL4(20ng/mL)と共にインビトロで細胞を2日間培養する。抗SIRPa活性の陽性対照として、活性が既知である抗SIRPa mAbを使用することが可能である。SIRPaの細胞外ドメインを標的としない化合物であればどのような化合物でも陰性対照(例えば、抗SIRPb抗体又はCD47‐Fc)として使用することが可能である。様々なサイトカイン、例えばIL‐6、TNF‐α及びIL12ならびにケモカインCCL17の分泌はELISAで測定可能である。
化合物Xは、もし、陽性対照のmAbと同等に効率的に、又はそれより効率的に、(i)M2マクロファージ特性の指標、特にCD206、CD11b、PD‐L1及び/又はCD200Rなどの表面マーカーの過剰発現ならびにCCL17などの特定のサイトカインの分泌を阻害するのであれば、また/あるいは(ii)M1マクロファージ特性の指標、特にCD86及びCCR7などの表面マーカーの発現ならびにIL‐6、TNF‐α、IL12‐p40及び/又はIL12などのサイトカインの分泌を増加させるのであれば、「抗SIRPa化合物」に分類できる。
特定の実施形態では、抗SIRPa化合物の効果は、10μg/mLの濃度で使用する特定の抗体SE7C2(Santa Cruz社のsc−23863)の効果と比較して評価することが可能である。試験の結果が、SE7C2と同等に効率的であるか、又はSE7C2より効率的であることが示されれば、化合物Xは「抗SIRPa化合物」に分類される。
このプロトコルに基づいて、陽性対照として基準の任意の抗SIRPa化合物と比較を行うことが可能である。
癌、治療等
本明細書中で使用しているように、「癌」は全タイプの癌を意味する。特に、癌は固形癌でも非固形癌でもよい。癌の非限定的な例は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肝臓癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌又は大腸癌、肉腫、リンパ腫、黒色腫、白血病、胚細胞癌及び芽細胞腫などの癌腫又は腺癌である。
本明細書で使用しているように、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」及び「治療する(treating)」は、癌、特に固形腫瘍の進行、重篤度及び/又は持続時間の軽減又は改善;例えば肝臓癌では、1つ以上の療法の施術に起因するそれらの1つ以上の症状の軽減を意味する。
治療薬
本明細書で使用しているように、「治療手段」は、効果を生じさせることが可能なあらゆる有効な力又は物質を指す。従って治療手段には放射線、外科手術、プロバイオティクスならびに任意の種類の薬物が挙げられる。
免疫チェックポイント遮断薬及び刺激剤
本文書では、「免疫チェックポイントを遮断する薬物」又は「免疫チェックポイント遮断薬」又は「免疫チェックポイント遮断薬物」又は「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫チェックポイントを遮断する任意の薬物、分子又は組成物を指す。特に、それは抗CTLA‐4抗体、抗PD‐1抗体、抗PD‐L1抗体及び抗SIRPa抗体を包含する。更に、2つ以上の免疫チェックポイント阻害剤を併用して、適応免疫細胞及び自然免疫細胞の両方を標的とすることが可能となる。このアプローチは癌の治療において特に興味深い。この目的により、抗SIRPa化合物を抗PD‐L1化合物と併用することが可能になる。特に癌の治療では、このような併用を複数同時に個別に、又は連続的に使用可能である。
対照的に、「免疫チェックポイント刺激剤」は、免疫チェックポイントを活性化する任意の薬物、分子又は組成物を指す。標的細胞活性化をもたらす共刺激分子を刺激するこのような分子又は薬物は例えば抗CD137抗体である。
必要に応じて、他の定義を以下に特定する。
本発明の第1の態様は、マクロファージ分極を改変することが可能で、特に抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物の、それを必要とする個体(例えば、ヒト)における使用である。上記のように、マクロファージは組織内で成熟し、刺激の組み合わせに対して動的に応答して活性化され、特殊化された機能的表現型、特定の場合に個体に有害な表現型を獲得する。リンパ球系に関し、マクロファージ活性化について二分類法:従来的(M1)vs.代替的(M2)が提案されている。数種の中間的な機能状態が観察されているが、M1及びM2サブタイプは依然として、M1が最も炎症促進性の状態であり、M2がより炎症の低減に関連しているという一連のマクロファージ状態の極端な形態を説明することに適している。
「マクロファージ分極を改変する」とは、本明細書では、化合物が、少なくとも表現型及び/又は機能レベルで、治療個体においてマクロファージの異なるサブタイプ間のバランスを改変することを意味する。従って、本発明によれば、個体を抗SIRPa化合物で処理することにより、個体のマクロファージが発現する表面マーカーのプロファイル(CD206、CD11b、PD‐L1及び/又はCD200R発現の減少、ならびにCD86及びCCR7発現の増加を含む)、ならびに個体のマクロファージが発現及び/又は分泌するケモカイン及びサイトカインのプロファイル(CCL‐17発現の減少、及びIL6、TNF‐α及びIL12p40発現の増加を含む)が改変される。
本発明の特定の実施形態によれば、抗SIRPa化合物によるマクロファージ分極の改変には、M2型マクロファージ分極の阻害、及び/又は炎症促進性M1型マクロファージ分極の増加が含まれる。特に、CD206、CD11b、PD‐L1及び/又はCD200Rなどの細胞マーカーを過剰発現し、また/あるいはCCL17などのサイトカインを産生するマクロファージの割合を減少させるマクロファージのM2表現型分極の阻害が含まれ得る。同時に、抗SIRPa化合物は、M1表現型分極を示す更に多くのマクロファージの出現、ならびにCD86及びCCR7などの細胞マーカーを過剰発現し、また/あるいはIL‐6、IL‐12p40及び/又はTNF‐αなどのサイトカインを産生するマクロファージの割合増加を誘導できる。従って抗‐SIRPa化合物は、表現型レベル(細胞表面マーカーの発現)及び機能レベル(ケモカイン及びサイトカインの産生)の両方でマクロファージ分極を調節できる。
本発明の好ましい実施形態によれば、マクロファージ分極を改変するために使用される化合物は抗‐SIRPa化合物である。本出願の意味において、所与の化合物が抗SIRPa化合物であるかどうかを決定するための例示的な試験は上記に記載している。
本発明に従って使用できる化合物では、小型化学分子、ポリペプチド、アンタゴニストペプチド、抗体及びこれらの断片、特に以下に記載の実験で使用されるような抗SIRP抗体、多数の抗SIRPaの市販抗体、又は任意の他の(新規な)抗SIRPaアンタゴニスト抗体から選択される任意の他の抗体、抗体の断片、SIRPaを標的とするアプタマー等が挙げられる。
本発明は、それを必要とする個体においてM1炎症促進性マクロファージに有利に働くようにマクロファージ分極を改変するための、抗SIRPa化合物をコードする核酸(mRNA又はDNA)の使用にも関する。実際、患者の細胞により上記のように抗SIRPa化合物の発現をもたらす核酸を投与することは、マクロファージ分極に対する所望の効果を得るための1つの選択可能性である。当業者は、任意の調節要素を有する任意の発現カセット、及び任意のベクター(ポリマー、カチオン及び/もしくはリポソームなどの脂質ベクター、又はアデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス(aav)などのウイルスベクター)を自由に選択し、適切な数の患者細胞において適切なレベルで抗SIRPa化合物を発現できる。本発明の詳細な実施形態の以下の説明において、抗SIRPaの発現を可能にする核酸が抗SIRPa化合物自体の代わりに使用できる旨は反復しないこととする。本明細書では、用語「抗SIRPa化合物」はこのような化合物のインビボ発現を可能にする核酸を包含すると考えられている。
特に、抗SIRPa化合物は、アンタゴニストペプチド、抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体、このような化合物をコードする核酸、SIRPaタンパク質の発現を阻害し得る化合物、特にsiRNAから成る群より選択される。好ましくは、抗SIRPa化合物は、アンタゴニストペプチド、又は抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体である。
M1炎症促進性細胞に有利に働くようにマクロファージ分極を改変することは、多数の病態又は状況において有用になり得る。上記のように、この改変は、癌の状況において、マクロファージの抗腫瘍活性を回復させ、また/あるいはM2型マクロファージの腫瘍促進活性を阻止するために特に有用である。実際、過剰なM2型マクロファージ分極による免疫応答は感染症、ワクチン接種、外傷及び慢性炎症性疾患においても生じる。
マクロファージは修復や再構築機能を制御するために幹細胞又は前駆細胞と相互作用すると考えられている。マクロファージ系統由来の細胞は数種の神経保護効果を呈する。間葉細胞(MSC)は組織修復及び免疫調節を促進するために標的にされる。MSCの注射は、軸索保存及び恐怖形成の減少といった脊髄損傷の機能回復のための利点と関連していた。神経保護効果は、MSC(Nakajimaら、2012年)によるM2マクロファージからM1マクロファージへの分極のシフトに起因し、このことは、抗SIRPa化合物など、このシフトを可能にする分子であればどのような分子でも神経保護効果を示し得ることを示している。
マクロファージは、鉄恒常性が明らかに損なわれている血色素症などのいくつかの鉄欠乏症にも関与している。真性赤血球増加症又は基本的な1次性赤血球増加症は、赤血球増加症(赤血球数の大幅な増加)及び総細胞量の増加を特徴とする骨髄増殖性疾患である。赤血球はその後、血液中に入り、骨髄増殖性症候群に進行する可能性がある。抗CD47で治療された患者は貧血を呈し、このことは、本発明の意味合いにおいてCD47の遮断が予想されるほど安全でないこと;抗SIRPa化合物を介してSIRPaを標的にするとこの副作用を回避できること、を示している。
従って、本発明は癌、感染症、外傷、自己免疫疾患、神経疾患 脳損傷、神経損傷、赤血球増加症、血色素症又は慢性炎症性疾患に罹患した個体において、ならびに個体のワクチン接種の環境において、M1炎症促進性マクロファージに有利に働くようにマクロファージ分極を改変するための、抗SIRPa化合物の使用に関する。
特定の実施形態によれば、抗SIRPa化合物は肺癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸癌、胸腺腫、神経膠腫、黒色腫及び血液癌から成る群より選択される癌の個体を治療するために使用する。
特定の実施形態では、抗SIRPa化合物はSIRPa陽性急性骨髄性白血病(AML)を除くあらゆる癌の治療に使用される。従って実際、SIRPaを発現するAMLに関与する腫瘍細胞の治療は、腫瘍細胞を対象とし、すなわち腫瘍を直接に標的とすることにより行われる。よってこの治療戦略は本発明で提案した間接的アプローチとは異なる。より特有の実施形態では、抗SIRPa化合物は、SIRPa陽性急性骨髄性白血病及びSIRPa陽性非急性骨髄性白血病を除くあらゆる癌の治療に使用する。別の特定の実施形態では、抗SIRPa化合物はSIRPa陽性非ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫を除くあらゆる癌の治療に使用する。更なる特定の実施形態では、抗SIRPa化合物は、SIRPa陽性急性骨髄性白血病及び/又はSIRa陽性非急性骨髄性白血病及び/又は非ホジキンリンパ腫又は血液癌を除くあらゆる癌の治療に使用する。更なる実施形態では、抗SIRPa化合物は、i)SIRPa陽性急性骨髄性白血病もしくは急性骨髄性白血病、及び/又はii)SIRPa陽性非急性骨髄性白血病又は非急性骨髄性白血病、及び/又はiii)SIRPa陽性非ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫、又はiv)SIRPa陽性血液癌もしくは血液癌を除くあらゆる癌の治療に使用する。更なる実施形態では、本明細書で後述しているように、抗SIRPa化合物はSIRPa陰性腫瘍細胞による癌の治療に使用する。
別の特定の実施形態では、抗SIRPa化合物は単独療法、特に乳癌、肝細胞癌又は黒色腫の治療において使用する。
調節マクロファージ分極は、癌の治療、特に癌の併用療法のための非常に魅力的なアプローチである。Antoniaら(Antoniaら、2014年)はチェックポイント阻害剤アプローチを用いた癌治療にとって興味深いものとなる可能性がある免疫腫瘍学的併用を定義した。免疫腫瘍学は、患者自身の免疫系を活かすように設計した免疫療法を含む進化しつつある治療法である。
この文脈において、本発明の意味合いでは、抗SIRPa化合物は、臨床開発中又は既に市販されている薬剤により腫瘍免疫回避メカニズムを克服するためのいくつかの他の可能性ある戦略:
1‐例えば抗CTLA4、抗PD1又はPD‐L1分子の使用による、適応免疫の阻害の制止(T細胞チェックポイント経路の遮断);
2‐例えば抗CD137分子の使用による、適応免疫の切り替え(アゴニスト抗体を用いたT細胞共刺激受容体シグナル伝達の促進);
3‐自然免疫細胞の機能の改善;
4‐例えばワクチンに基づく戦略による、免疫系の活性化(免疫細胞エフェクター機能の増強)
と併用することが可能である((Antoniaら、2014年)の表1参照)。
最近、Zitvogelらは最適な治療的免疫調節における腸内微生物の重要性を力説している(Viaudら、2014年;WO2015/075688)。本発明の枠組みにおいて、抗SIRPa化合物は抗癌免疫応答を改善するために微生物調節戦略と併用することも可能である。
従って本発明の別の態様は、それを必要とする個体、特に癌患者を治療するための、第2の治療剤と併用した上記で定義したような抗SIRPa化合物の使用である。このような併用は、特に癌の治療において、同時に個別に、又は連続的に使用することが可能である。
本発明のこの態様の好ましい実施形態によれば、第2の治療剤は化学療法剤、放射線療法、外科手術、免疫療法剤、抗生物質及びプロバイオティクスから成る群より選択される。特に、第2の治療剤は好都合にも、治療用ワクチン、例えば抗PDL1、抗PD1及び抗CTLA4などの免疫チェックポイント遮断薬、ならびに例えば抗CD137などの免疫チェックポイント活性化剤から成る群より選択することが可能である。下記の実験パートに例示されるように、これらの併用は相乗効果を生む。特に、本発明の1態様は、肝細胞癌又は黒色腫から選択する癌の治療において第2の免疫チェックポイント調節因子と併用した抗SIRPa化合物の使用にある。好ましい実施形態では、肝細胞癌の治療において抗SIRPa mAbを抗CD137 mAbと併用する。本発明の別の態様では、黒色腫の治療において抗SIRPa mAbを抗PD‐L1 mAbと併用する。
本発明の別の態様は、マクロファージを上記のような抗SIRPa化合物と共にインキュベートする工程を含む、炎症促進性M1型マクロファージを生体外で得る方法である。この方法は、例えば細胞療法において、特に癌患者に有用になり得る。本文書はまた、上記患者からマクロファージを得る工程、その後の、抗SIRPa化合物とのインキュベーションによりM1関連炎症促進性機能に有利に働くようにそれらの分極を改変する工程、及び得られた炎症促進性細胞を患者に再投与する工程を含む、癌患者を治療する方法も報告している。当然ながら、このような方法には追加的な工程(細胞を増殖させ、M1型表現型を示す細胞を選択し、また/あるいはM2型表現型を示す細胞を対向選択する工程など)を導入することが可能である。
その別の態様によれば、本発明は上記で定義した抗SIRPa化合物による治療の有効性をインビボで判定する方法に関するものであり、当該方法には、炎症促進性M1型マクロファージの存在を測定する工程、及び/又は上記化合物で治療した個体由来の試料中でM2型マクロファージの存在を測定する工程が含まれる。当該方法を実施する場合、炎症促進性マクロファージの存在は、例えば試料中に存在するマクロファージが分泌するIL6、TNF‐α及び/又はIL12p40のレベルを測定することにより測定できる。M2型マクロファージの存在は、例えばマクロファージ表面上のCD206、CD11b、PD‐L1及び/又はCD200Rの発現を測定することにより測定できる。
抗SIRPa化合物での不要な治療を避けるため、このような治療から利益を受ける可能性の高い患者、すなわちこの治療が効率的である患者を正確に同定することが最重要である。高レベルのM2型マクロファージを呈する患者、特に多量の腫瘍浸潤性M2型マクロファージを有する癌患者は、本発明に従った抗SIRPaでの治療に応答する可能性が最も高い患者である。
本発明の1態様は、SIRPa陰性腫瘍を呈する患者を治療すること、すなわち腫瘍細胞がSIRPaを発現しない患者に抗SIRPa化合物の単独使用又は併用を提案することである。癌の治療が腫瘍細胞レベルで(特に貪食作用を誘導することにより)SIRPa‐CD47相互作用の阻害に依存していると先行技術が教示しているように、この治療アプローチはこれまで想定できなかった。これに対して、本発明者らは、抗SIRPa mAbは貪食作用を誘導せず、個別の経路に作用することを実証した。彼らは、抗SIPRa化合物がM2型マクロファージを標的とし、このマクロファージ集団をM1型マクロファージに再分極させることを実証した。従って、提案された発明は、以前に報告されていない「新たな臨床状況」にも対応する。請求した発明と先行技術の教示との間に更に差を付けることとして、本発明の抗‐SIRPα化合物は、自然免疫系を標的とする間接的アプローチにより、特に腫瘍環境における炎症の阻害を阻止することにより、より具体的には、抗炎症性M2型マクロファージを阻害することにより癌を治療する。
従って、本発明の目的は癌治療における抗SIRPa化合物の使用にあり、ここではSIRPa陰性腫瘍を呈する患者に当該化合物を投与する。本明細書中で使用しているように、「SIRPa陰性腫瘍」は、SIRPa陰性細胞集団を含む腫瘍に相当する。しかし腫瘍の異種性を考慮すると、この用語は、SIRPa陰性細胞から成る腫瘍と、SIRPa陽性腫瘍細胞及びSIRPa陰性腫瘍細胞の混合集団を含み得る腫瘍との両方を包含している。特定の実施形態では、本発明はまた、患者の腫瘍がSIRPa陽性細胞及びSIRPa陰性細胞の両方を含む腫瘍細胞の混合集団を含む癌を治療するための上記化合物の使用に関する。
本発明はまた、抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む癌治療方法を提供する。
特定の実施形態では、本発明はまた、癌治療に使用するための
― 抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能であり、特に、当該抗SIRPa化合物は、アンタゴニストペプチド、抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体、このような化合物をコードする核酸、及びSIRPaタンパク質の発現を阻害可能な化合物、特にsiRNAの群より選択される、少なくとも1種の抗SIRPa化合物;ならびに
― 特に、抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4及び抗CD137から成る群より選択される別の免疫チェックポイント化合物である第2の治療剤;
を含む混成生成物に関する。特定の実施形態では、当該混成生成物はSIRPa陽性急性骨髄性白血病を除く癌を治療するために使用する。
有利な実施態様は上記で定義した通りである。
従って本発明はまた、本発明の意味合いにおいて抗SIRPa化合物による治療に対して個体が良好な応答者である可能性があるか否かをインビボで判定する方法に関するものであり、当該方法には、例えば試料中に存在するマクロファージの表面上のCD206、CD11b、PD‐L1及び/又はCD200Rの発現を測定することにより上記個体由来の試料におけるM2型マクロファージの存在を測定する工程が含まれる。
上記の方法を実施する場合、抗SIRPa化合物による治療に対して個体が良好な応答者である可能性があるか否かを評価するために、又はそのような治療の有効性を判定するために使用される試料は、血液試料、組織試料、腫瘍由来試料、滑液の試料とすることが可能である。
以下に開示される実験パート全体にわたって、使用される用語はマクロファージについて研究している科学団体に従う(Murrayら、2014年)。
実験結果は以下に示す材料及び方法により得た。
ヒト血中単球細胞単離
Coulaisら(Coulaisら、2012年)が使用し、報告したプロトコルにより、遠心分離向流洗浄(Clinical Transfer Facility CICBT0503、Dr.M.Gregoire、Nantes)を利用してPBMC(末梢血単核細胞)を単離し、精製した。
遮断抗体
実験において試験した全ての遮断分子を10μg/mLで使用した。
SIRPa mAbs:SE7C2(23863、Santa Cruz社)又はクローンp84(Merck Millipore社);Sirp α/β mAbs:SE5A5(BLE323802、BioLegend社);抗CD47:B6H12(eBioscience 14‐0479‐82)又はCC2C6(BLE323102、BioLegend社);CD47‐Fc:SinoBiological社製12283‐H02H;抗CD137抗体(自家製クローン3H3)及び抗PD‐L1抗体(BioXCell社製10F‐9G2)。
インビトロM‐CSF+(IFNg又はIL4)マクロファージ分極アッセイ(M1又はM2型)
24ウェルプレートにおいて単球を、完全RPMI中、4.10細胞個/ウェルで M‐CSF(100μg/mL‐R&D systems社)中に5〜6日間培養して従来の分化法(Zajacら、2013年)を行い、M0マクロファージを誘導した。2日間かけて、rhIL‐4(20ng/mL‐CellGenix社)によりM2分極を誘導してM2抗炎症性マクロファージを生成するか、又はrhIFNg+/−LPS(それぞれ20ng/mL‐R&D systems社;100ng/mL‐Sigma‐Aldrich社)によりM1炎症促進性マクロファージを生成し、その後、細胞を採取し、BD Bioscience社製の抗体を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
インビトロCSF+GM‐CSFマクロファージ分極アッセイ(M1及びM2型)
同一ウェル内でのM1/M2分化は、GM‐CSF(10ng/mL‐CellGenix社)を含む完全RPMI中、4.10細胞個/ウェルで、24ウェルプレート中に単球を3日間培養し、次いでGM‐CSF及びM‐CSF(それぞれ2ng/ml及び10ng/ml、R&D systems社)と共に更に3日間培養して実施した(Haegelら、2013年)。抗体を0日目及び3日目に添加した。6日目に、細胞を採取し、BD Bioscience社製の抗体を用いてフローサイトメトリーにより分析した。
分泌されたサイトカインをELISA(BD Bioscience社及びR&D systems社)により滴定した。
フローサイトメトリーによるマクロファージ表現型
インビトロマウスマクロファージ分化は、マウスM‐CSF(100μg/mL−PeproTech社)を補充し、完全RPMI中、0、5.10細胞個/mLで、24ウェルプレート中に骨髄由来細胞を4日間培養して実施し、M0マクロファージを誘導した。24時間かけて、マウスIL‐4(20ng/mL‐PeproTech社)によりM2分極を誘導してM2抗炎症性マクロファージを生成する。表現型変化の分析は、BD Bioscience社製抗体を用いてフローサイトメトリー染色により行った。
マクロファージの発現マーカーを、下記表に示す蛍光色素として使用し、フローサイトメトリーにより分析した。
多重ナノフレアによるiNOS測定
iNOS発現はSmartFlare(商標)技術により明らかにされた(Prigodichら、2012年)。簡潔には、単球又はマクロファージを回収し、iNOSプローブ(最終濃度1nM)と共に4℃で2時間インキュベートし、洗浄し、LSR II(BD社)で分析した。
siRNA実験
内因性SIRPaをコードするsiRNAをマクロファージ(M‐CSFにより事前に分極したM0マクロファージ)にトランスフェクトした。siRNAの3配列(参照番号:112328、112327及び109944、ThermoFisher Scientific社)を選択し、貯蔵し、SIRPa発現を下方制御した。24ウェルプレートにおいて、90pmolのsiRNA‐SIRPa(各siRNA‐SIRPaの3×30pmol)を、血清を含まない100μlのOpti‐MEM培地で希釈し、静かに混合した。次いで、1μl/ウェルのリポフェクタミンRNAiMAX(参照番号13778‐150、ThermoFisher Scientific社)を混合し、室温で20分間インキュベートした。M2を、IL4(20ng/ml)+/−100μlのsiRNA‐リポフェクタミン複合体を含む500μlの完全増殖培地に100,000細胞個/mlで播種した。Null‐siRNAをトランスフェクションの対照として使用した。細胞を37℃、5%CO下で48時間インキュベートした。
Elisaによる機能アッセイ
上清中に放出されたサイトカイン及びケモカインを、BD Bioscience社及びR&D systems社の材料(参照番号は下記参照)を用いてElisaにより分析した。上清を1/200に希釈した。
アイソタイプ対照抗体として、PK136抗NK1.1(マウスmAb IgG2a)及びSF1−1.1抗H2Kd(マウスmAb IgG1)を用いた。
ヒトマクロファージの貪食活性の評価
貪食作用を誘導する抗SIRPa抗体の能力を主張するため、前述したようにヒトM1炎症促進性マクロファージを生成し、蛍光色素で染色した。CD47発現Raji細胞を別の蛍光色素で染色し、M1染色したマクロファージと共に37℃で2時間インキュベートした。細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、貪食作用の分析は、M1蛍光マクロファージでのゲーティングによるフローサイトメトリー、及びM1マクロファージへの標的(Raji)細胞蛍光の分析により評価した。
インビボマウス肝細胞癌モデル
上述したように、8週齢のC57Bl/6J雄マウスに、門脈を介して100μL中2.5×10個のHepa1.6マウス肝癌細胞を接種した(Gauttierら、2014年)。腫瘍接種の4日後及び8日後に、100μgのラット抗4‐1BB mAb(自家製クローン3H3)、もしくは300μgの抗マウスSIRPaモノクローナル抗体(Merck Millipore社製クローンP84)もしくはその両方、又は無関係の対照抗体(クローン3G8)を週3回、4週間腹腔内注射し、あるいは200μgの抗PD‐L1 mAb(BioXCell社製クローン10F‐9G2)、又は両抗体(抗Sirpa+抗PDL1)を4週間注射した。
インビボマウス黒色腫モデル
8週齢のC57B1/6J雄マウスの側腹部に2×10個のB16‐Ovaマウス黒色腫細胞を皮下注射した。腫瘍接種0日目から、マウスに300μgの無関係な対照抗体(クローン3G8)又は抗マウスSIRPaモノクローナル抗体(クローンP84)を週3回、もしくは200μgの抗PD‐L1 mAb(BioXCell社製クローン10F‐9G2)を週2回、のいずれかで腹腔内投与するか、又は両抗体(抗Sirpa及び抗PD‐L1抗体)を4週間投与した。腫瘍接種後2週間目に数頭の動物を屠殺し、フローサイトメトリーにより腫瘍白血球浸潤を特徴付けた。全生存率を分析した。
インビボマウス乳癌モデル
8週齢のBalb/c雌マウスの乳腺に0、25×10個の4T1(乳癌)細胞を50μL注射した。腫瘍接種後4日目から、マウスに300μgの無関係な対照抗体(クローン3G8)又は抗マウスSIRPa遮断抗体(クローンP84)を週3回、4週間腹腔内投与した。腫瘍接種から6週間後にマウスを安楽死させた。腫瘍の測定を2〜3日毎に行い、腫瘍体積を計算:長さ×幅×Pi/6(mm)に従って求めた。
実施例1:マクロファージ分極(M1及びM2)のインビトロ試験及びSIRPa経路の遮断
1.1. Sirpαの選択的遮断は2型(M2)ではヒトマクロファージ分極を阻止するが、1型(M1)では阻止しない
図1Aは、M1細胞表面マーカー(CD86及びCCR7)の発現が対照条件と比較して改変されていないため、SIRP分子又はCD47に対する抗体がGM‐CSF+M‐CSFに誘導されるM1マクロファージ分極を阻止していないことを示す。対照的に、CD206、CD200R、CD11b及びPD‐L1の過剰発現(M2マクロファージ表現型の指標)は選択的な抗SIRPα mAb(図2A及び図11)では有意に阻害されたが、対照抗体(抗SIRPa/b又はSirpb)、CD47‐Fc組換えタンパク質又は抗CD47 mAb(クローンB6H12及びCC2C6)では阻害されなかった。特に図11から、モノクローナル抗体によるSIRPaの遮断が、IL‐4に誘導されるM2マクロファージ表現型の獲得を阻止し、実際にM2マーカー(CD206、CD11b及びPD‐L1)の発現は上昇しなかったが、アイソタイプ対照条件では上昇が観察されたことが分かる。マクロファージの抗炎症状態のこの阻止は、SIRPa(CD47)の同種リガンドがモノクローナル抗体で遮断された場合には観察されなかった。
サイトカイン及びケモカイン分泌の測定から、抗SIRPa mAbはCCL‐17分泌(M2分泌の指標となるケモカイン)を阻止する一方で、M1マクロファージが分泌した炎症促進性サイトカイン(IL‐6、IL12p40、TNF‐α)及びケモカイン(CCL‐2)は増加させることが分かった(図1B及び2B)。従って、抗SIRPaはM2分極の阻止及びマクロファージの炎症促進機能の役割を担っていると思われる。M‐CSF+IL‐4プロトコルに従って単球をM2(M1でない)マクロファージにおいてのみ高分化させた場合、抗SIRa mAbのみによるM2マクロファージ分極の選択的阻害が確認されたが、一方、単球をM‐CSF+IFNγで処理した場合、M1分極は改変されなかった(データなし)。ここでもまた、SIRPa mAb(他の抗SIRP分子mAb又は抗CD47 mAbではなく)のみが、M2(CD206及びCD200R)に特有の表面マーカーの過剰発現を阻止し、同時にIL‐6炎症促進性サイトカイン分泌を増加させた(図5B)。次に、siRNAカクテルを用いてSIRPa阻害を伴う転写レベルでM2分極に対するSIRPaの役割を調べた。図6Aに示す結果から、SIRPaの阻害により細胞のM2分極(CD206及びCD200R発現)が阻害されることが確認できた。
まとめると、これらの結果から、抗SIRPa抗体を用いるが抗CD47抗体は用いずにSIPRa‐CD47相互作用を阻害することにより、M2型マクロファージを阻害できることが実証されている。更に、表現型レベル(M2特異的表面マーカーの発現の阻害)及び機能レベル(M2特異的サイトカイン分泌の阻害)の両方において、M2表現型の阻害が観察される。
1.2. SIRPaの選択的遮断は炎症促進因子、特徴的なM1マクロファージの分泌を増加させる
本発明者らは、GM‐CSF+M‐CSFを用いたM1+M2分極下で選択的抗SIRPa mAbが炎症性サイトカイン分泌(IL6、IL12p40、CCL2及びTNFα)を増加させることを観察した(図1B)。この特性はM‐CSF+IFNg+/−LPSに誘導される従来のM1(のみの)マクロファージ分極アッセイにおいて確認され(図3)、上清中のIL6及びIL12p40の増加が示されている。最大/高度M1分極は、M‐CSF+IFNg+LPSを用いて達成され、結果的にM1マクロファージの全ての指標、特にiNOS発現をもたらす。図4は様々な遮断抗体で処理した、又は処理していないM1分極細胞におけるiNOSの発現を示す。この図に示すように、抗体でSIRPaを遮断することによりiNOSの発現が増加した。しかし、抗SIRPβ又は抗CD47 mAbはiNOS発現プロファイルにおいていかなる改変も誘導しなかった。これらの結果から、SIRPaの遮断により、M1型などの炎症促進状態においてマクロファージ機能が改変されることが確認された。しかし、試験したM1表面マーカーは対照と比較して改変されていなかった。
1.3. SIRPaの選択的遮断は炎症細胞においてヒトM2マクロファージを再分極する
分極したM1/M2マクロファージの表現型及び機能は、これら細胞の可塑性によりインビトロ又はインビボで、ある程度制止されている(Sica及びMantovani、2012年)。本発明者らは、SIRPaを遮断することにより、炎症促進性M1型へのM2型の再分極の問題に取り組んだ。そのために、M2高度分極を誘導するM‐CSF+IL‐4と共に単球を培養した。その後、M2細胞を異なる遮断抗体で処理した。図7に示す結果から、IL6及びTNF‐αサイトカイン(M1マクロファージの指標サイトカイン)が誘導されたので、抗SIRPa mAbはM2マクロファージをM1炎症促進性マクロファージに再分極させ得ることが分かる。この効果は、抗Sirpβ、CD47‐Fc又は抗CD47抗体で細胞を処理した場合には観察されなかった。上記で説明したように、細胞表面マーカーは改変されなかった。同様に、図12の結果から、2種の異なる抗SIRPa mAbにより、表面マーカーCD200R及びCD80(A)の発現を伴う表現型レベルとIL‐6(B)分泌を伴う機能レベルとの両方においてM2型マクロファージに有利に働くマクロファージの分極を誘導することが可能になると分かる。更に、図14の結果から、CD47ではなくSIRPaの選択的遮断はM2分極(B)を阻止し、M1分極(A)に影響を及ぼさないことが分かる。実際、炎症促進性M1型マクロファージの分極中はラットSIRPaの特異的モノクローナル抗体を添加しても抗CD47モノクローナル抗体を添加しても、炎症促進性サイトカイン(IL‐6及びTNF‐a)の分泌は影響されない。対照的に、ラットマクロファージのM2分極中のSIRPaの特異的遮断(抗CD47によるものではない)により、マクロファージのサイトカインプロファイルはIL‐6及びTNF‐αが分泌される(M1マクロファージのような)炎症プロファイルへと切り替わる。
これらの結果から、SIRPaは単球のM2分極にとって重要であり、この経路を遮断することは、マクロファージがM2状態で遮断されている癌又は感染症など、それを必要とする病態を治療するための炎症促進性プロファイルを有するマクロファージを産生する良い機会であることが分かった。
まとめると、これら全ての結果から、これらの実験において試験した抗SIRPa抗体全ては(ヒト、マウス又はラットSIRPaのどれに向けているかに関わらず)、M2型マクロファージ表現型を阻害することによりマクロファージ分極を調節できることが分かる。逆に、抗CD47抗体はマクロファージ分極に効果がない。
1.4 抗SIRPa抗体はCD47を発現する腫瘍細胞上でヒトマクロファージ貪食作用を増加させない
貪食作用を誘導する抗SIRPa抗体(クローンSE7C2)の能力をヒトマクロファージ上で評価した。図13から、文献に記載されているように、M1マクロファージにより2つの異なる抗CD47 mAbがCD47+腫瘍細胞(Raji)の貪食作用を増加させることが分かる。対照的に、抗SIRpa mAb又は組換えCD47‐Fc融合タンパク質によるSIRPaの選択的遮断はM1マクロファージの貪食活性の増加に影響しない。これらの結果から、CD47+腫瘍細胞の貪食作用はSIRPa/CD47相互作用では誘導されないが、ADCP(抗体依存性細胞貪食作用)機序により誘発されることが示唆される。更に、これらの結果から、抗SIRPa化合物は腫瘍細胞の貪食作用を誘導できないことが確認できる。
実施例2:SIRPa遮断効果のインビボ試験
2.1. 肝細胞癌のインビボモデルにおけるSIRPa遮断効果
図8は、肝細胞癌を接種し、抗CD137、抗SIRPa、又はその両方で4週間処理した動物の全生存率を示す。抗Sirpa単独療法で処理した動物の20%は25日以上生存し、抗CD137単独療法で処理した動物の25%は30日以上生存した。しかし、抗Sirp+抗CD137を併用投与した動物の100%は80日後に以前として生存し、他の条件と比較して2種の分子の相乗効果が示された。
図9は、肝細胞癌を接種し、抗PD‐L1、抗SIRPa、又はその両方で4週間処理した動物の全生存率を示す。結果から、各分子単独の場合と比較して、両分子で動物を治療した場合、(抗sirpa処理の20日後の20%の生存数と、抗PD‐L1処理での12%の生存数とを比較して)非常に興味深い生存率が示された。この結果は、癌モデルにおける抗SIRPa抗体と抗PD‐L1抗体との相乗効果を示している。
2.2. 黒色腫のインビボモデルにおけるSIRPa遮断効果
図10は、黒色腫細胞を接種し、抗PD‐L1、抗SIRPa、又はその両方で4週間処理した動物の全生存率を示す。各分子単独での処理と比較して、その併用の有効性は良好であった。図10Bは、抗SIRPaで処理した動物におけるマクロファージ浸潤を示し、腫瘍へ浸潤するマクロファージ数の増加が確認できる。
2つの異なる癌モデルに関するインビボ実験から、特に他の免疫療法と併用した場合、SIRPaは癌治療にとって興味深い標的となることが示され、またSirpは、炎症促進性腫瘍環境を再構築する目的での遮断に重要である新たなチェックポイント阻害剤であることが示唆されている。
2.3. 乳癌のインビボモデルにおけるSIRPa遮断効果
図15から、抗SIRPa mAb(クローンP84)を用いた単独療法はマウスの同系かつ同所性の三重陰性乳房モデルにおいて腫瘍形成を阻害することが分かる。腫瘍接種後2週間から実験終了まで、抗SIRPa処理マウスの腫瘍体積は有意に減少している。

Claims (10)

  1. 抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能であり、SIRPa陽性急性骨髄性白血病を除く癌の治療に使用するための抗SIRPa化合物。
  2. 前記化合物は、抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体、このような化合物をコードする核酸、及びSIRPaタンパク質の発現を阻害可能な化合物、特にsiRNAから成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用のための請求項1に記載の化合物。
  3. 前記癌は肺癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、結腸癌、胸腺腫、神経膠腫、黒色腫、白血病及び骨髄腫から成る群より選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の使用のための請求項1又は2に記載の化合物。
  4. 前記化合物はSIRPa陰性腫瘍を呈している患者に投与することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用のための請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 前記化合物は第2の治療剤と併用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用のための請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
  6. 前記第2の治療剤は化学療法剤、放射線療法、外科手術、免疫療法剤、抗生物質及びプロバイオティクスから成る群より選択されることを特徴とする請求項5に記載の使用のための請求項5に記載の化合物。
  7. 前記第2の治療剤は、治療用ワクチン及び免疫チェックポイント遮断薬又は活性化剤から成る群より選択される免疫療法剤であることを特徴とする請求項6に記載の使用のための請求項6に記載の化合物。
  8. 前記第2の治療剤は抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4及び抗CD137から成る群より選択される免疫チェックポイント遮断薬又は活性化剤であることを特徴とする請求項7に記載の使用のための請求項7に記載の化合物。
  9. 前記抗炎症性M2型マクロファージの分極を阻害し、また/あるいは前記炎症促進性M1型マクロファージに有利に働くことが可能な抗SIRPa化合物と共にマクロファージをインキュベートする工程を含む、炎症促進性M1型マクロファージを生体外で得るための方法。
  10. 前記化合物は、抗SIRPa抗体、特に抗SIRPaアンタゴニスト抗体、このような化合物をコードする核酸、及びSIRPaタンパク質の発現を阻害可能な化合物、特にsiRNAから成る群より選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
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