JP2018527449A - フルオロエラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は
(a)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位および少なくとも1種の追加の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフッ化ビニリデンベースフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]であって、
− 1.5〜3.5の多分散性指数(IMWD)を有し、
− 少なくとも3ミリモル/kgおよび多くても6ミリモル/kgの式−CFCHOHの極性末端基の量を含み、
− 以下の不等式:
[−CFCHOH]+[−CFH]+[−CFCH]+[−OC(O)R]≦30+(2×10)/M
を満たすような量で式−CFH、−CFCHおよび任意選択で、−OC(O)−R(Rは、C〜Cアルキル基である)の鎖末端基をさらに含む、フルオロエラストマー(A)、
(b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤;
(c)少なくとも1種の促進剤;
(d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;ならびに
(e)任意選択で、少なくとも1種の金属水酸化物であって、存在する場合、前記金属水酸化物の量は、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、3phr未満である、金属水酸化物
を含む、フルオロエラストマー組成物に関する。
【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月18日に出願された米国仮特許出願第62/220556号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
本発明は、改善されたシーリング特性、すなわち、Oリングでの改善された圧縮永久歪み、応力および破断点伸びの改善された組み合わせとして示される改善された機械的特性を有する硬化フルオロエラストマーを与えることができる、硬化性フルオロエラストマーに関する。
フルオロエラストマーは、自動車用途のOリング、バルブステムシール、シャフトシール、ガスケット、および燃料ホースから、油井用のシール材およびパッキンに及び、さらには半導体製造デバイスのシール材、Oリングおよび他の部品を含む、様々な範囲の用途がある高性能材料のクラスである。
数年来、フッ化ビニリデンベースフルオロエラストマーは、広い温度作業枠におけるそれらの卓越した機械的特性、ならびにそれらの無比の耐薬品性および耐透過性のために、実際、自動車工業、化学石油化学工業、および電子工業における高品質材料としての地位を確立してきた。
イオン硬化は、3次元網状組織を形成するためにジヒドロキシル化合物と反応し得る、フルオロエラストマー主鎖における酸性水素原子の存在に基づいて、フッ化ビニリデンベースフルオロエラストマーを架橋するための、広く普及した技術である。
一般に、イオン硬化は、自動成形加工技術で特に必要とされるとおりに、前記酸性水素原子をジヒドロキシル化合物との求核反応に向けて活性化し、それ故に、急速な架橋反応効率を達成するために、適当量の塩基、典型的には無機金属水酸化物の添加を必要とする。実際、フルオロエラストマー硬化部品の高処理量製造のために広く使用されているこれらの技術において、硬化速度は、限られた成形時間で硬化網状組織の形成を得、迅速サイクル時間により構造一体性を有する部品を与えることができるようなものでなければならない。
金属水酸化物の量の増加は一般に架橋速度論を増加させるために有益と考えられる一方で、前記金属水酸化物の添加は、耐薬品性および耐熱性に不利益な影響を与え得る。
過去に、イオン硬化性フッ化ビニリデン(VDF)ベースフルオロエラストマー化合物中の金属水酸化物の量を減少させる手法が提案されている。特に、欧州特許第1347012B号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA)2006年12月20日には、極性末端基を実質的にもたないVDFをベースとしたフルオロエラストマーが、2.5phr未満の金属水酸化物(特にCa(OH))の量の存在下で架橋させ得ることが教示されている。それにもかかわらず、本出願の比較例5に示されるとおりに、このような極性末端基をもたないフルオロエラストマーを与えるために、有機過酸化物開始剤の使用に基づく重合技術が示唆されており、すなわち、これらの条件で許容される反応速度論を達成するために、高い重合温度が必要とされ、これは、不可避的に、分子内移動を含む副反応のための、極めて不規則な構造、および広い分子量分布を有するVDFフルオロエラストマーを与える。これらのミクロ構造特性は、得られた硬化化合物の機械的特性およびシーリング特性の全体に悪影響を与えるようなものである。
自動サイクルで容易に射出成形して、機械的特性およびシーリング特性の最適な組み合わせを有する硬化物品を調製することができる、利用可能な硬化性VDFベースフルオロエラストマー化合物を有することの必要性が感じられている。
関係y(ミリモル/kg)=30+(2×10)/Mに対応する点線を含めて、本発明の組成物に適するフルオロエラストマー(□)および比較のもの(◆)についてMの関数としての鎖末端の総数(y)(ミリモル/kg単位)のスケッチである。
発明の概要
したがって、本発明は、
(a)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位および少なくとも1種の追加の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフッ化ビニリデンベースフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]であって、
− 1.5〜3.5の多分散性指数(IMWD)を有し、
− 少なくとも3ミリモル/kgおよび多くても6ミリモル/kgの式−CFCHOHの極性末端基の量を含み、
以下の不等式:
[−CFCHOH]+[−CFH]+[−CFCH]+[−OC(O)R]≦30+(2×10)/Mを満たすような量で、
− 式−CFH、−CFCHおよび任意選択で−OC(O)−R(Rは、C〜Cアルキル基である)の鎖末端基をさらに含む、フルオロエラストマー(A)、
(b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤;
(c)少なくとも1種の促進剤;
(d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;ならびに
(e)任意選択で、少なくとも1種の金属水酸化物であって、存在するならば、前記金属水酸化物の量が、フルオロエエラストマー(A)の100重量部に基づいて、3phr未満である、金属水酸化物
を含む、フルオロエラストマー組成物に関する。
本出願人は、意外なことに、典型的にはイオン硬化の架橋剤および促進剤と共に、上に詳述されたとおりの、狭い分子量分布および限定数の分岐/鎖末端を有する規則構造を有し、限定された、しかしゼロではない濃度の極性ヒドロキシル末端基を含むVDFベースフルオロエラストマーを処方する場合、卓越した架橋網状組織の形成が、ある特定の金属酸化物を唯一の添加のみによって、低量の塩基(金属水酸化物、特にCa(OH))を使用してまたはさらにはそれの非存在下で達成され、したがって、機械的特性およびシーリング特性を相当に増すことができることを見出した。
本発明において、用語「フルオロエラストマー」[フルオロエラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るための基本成分として役立つフルオロポリマー樹脂であって、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、(ペル)フッ素化モノマー)に由来する10重量%超、好ましくは30重量%超の繰り返し単位、および任意選択で、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(以下、水素化モノマー)に由来する繰り返し単位を含む、フルオロポリマー樹脂を表すことが意図される。真のエラストマーは、室温で、それらの固有の長さの2倍に伸ばされることができ、そしてそれらを張力下に5分間保持した後それらが放されると直ぐに、同じ時間でそれらの初期の長さの10%以内に戻る材料として、ASTM,Special Technical Bulletin,No.184標準によって定義されている。
フルオロエラストマー(A)は、一般に非晶質生成物、または低い結晶化度(20体積%未満の結晶相)および室温未満のガラス転移温度(T)を有する生成物である。ほとんどの場合、フルオロエラストマー(A)は、有利には10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃未満、さらにより好ましくは−5℃未満のTを有する。
フルオロエラストマー(A)は典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、VDFに由来する少なくとも15モル%、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも35モル%の繰り返し単位を含む。
フルオロエラストマー(A)は典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、VDFに由来する多くても85モル%、好ましくは多くても80モル%、より好ましくは多くても78モル%の繰り返し単位を含む。
フルオロエラストマー(A)に含まれる繰り返し単位がそれに由来する、適当な(ペル)フッ素化モノマーの非限定的な例は、特に
(a)C〜Cペルフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP);
(b)VDFとは異なる水素含有C〜Cオレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH−R(式中、Rは、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレン;
(c)C〜Cクロロおよび/またはブロモおよび/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
(d)式CF=CFOR(式中、Rは、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cである)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC〜C12((ペル)フルオロ)−オキシアルキル、例えば、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピル基である)の(ペル)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル;
(f)式:
(式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに等しいかまたは異なり、フッ素原子、および1個または2個以上の酸素原子を任意選択で含む、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、例えば、特に−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFから独立して選択される)
を有する(ペル)フルオロジオキソール;好ましくは、ペルフルオロジオキソール;
(g)式:
CFX=CXOCFOR’’
(式中、R’’は、直鎖または分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキル;C〜C環状(ペル)フルオロアルキル;および1〜3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖または分岐のC〜C(ペル)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hであり;好ましくは、XはFであり、R’’は、−CFCF(MOVE1);−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
を有する(ペル)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以下、MOVE)
である。
一般に、フルオロエラストマー(A)にとって、VDFに由来する繰り返し単位に加えて、HFPに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。
この場合、フルオロエラストマー(A)は典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、HFPに由来する少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも12モル%、より好ましくは少なくとも15モル%の繰り返し単位を含む。
さらに、フルオロエラストマー(A)は典型的には、フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、HFPに由来する多くても45モル%、好ましくは多くても40モル%、より好ましくは多くても35モル%の繰り返し単位を含む。
本発明の組成物に好適なフルオロエラストマー(A)は、VDFおよびHFPに由来する繰り返し単位に加えて、以下:
− 一般式:
(式中、R、R、R、R、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、H、ハロゲン、または1個以上の酸素基を恐らくは含む、C〜Cの任意選択でハロゲン化された基であり;Zは、酸素原子を任意選択で有する、直鎖もしくは分岐のC〜C18の任意選択でハロゲン化されたアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基である)
を有する少なくとも1種のビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位;
− VDFおよびHFPとは異なる少なくとも1種の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位;ならびに
− 少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位
の1種以上を含んでもよい。
水素化モノマーの例は、特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ジエンモノマー、スチレンモノマー、典型的に使用されるα−オレフィンを含めて、非フッ素化α−オレフィンである。増加した耐塩基性を達成するために、C〜C非フッ素化α−オレフィン(Ol)、より特には、エチレンおよびプロピレンが選択される。
ビス−オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF−1)、式(OF−2)および式(OF−3):
(式中、jは、2〜10、好ましくは4〜8の整数であり、R1、R2、R3、R4は、互いに等しいかまたは異なり、H、FまたはC1〜5アルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である);
(式中、Aのそれぞれは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、F、Cl、およびHから独立して選択され;Bのそれぞれは、互いにおよび出現するごとに等しいかまたは異なり、F、Cl、HおよびOR(ここで、Rは、部分的に、実質的にまたは完全にフッ化または塩素化され得る分岐または直鎖のアルキル基である)から独立して選択され;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、任意選択でフッ素化された、2〜10個の炭素原子を有する2価の基であり;好ましくはEは、−(CF−基(mは、3〜5の整数である)であり;(OF−2)タイプの好ましいビス−オレフィンは、FC=CF−O−(CF−O−CF=CFである);
(式中、E、AおよびBは、上で定義されたものと同じ意味を有し;R5、R6、R7は、互いに等しいかまたは異なり、H、FまたはC1〜5アルキルもしくは(ペル)フルオロアルキル基である)
に従うものからなる群から選択される。
最も好ましいフルオロエラストマー(A)は、以下の組成(モル%単位)、すなわち、
(i)フッ化ビニリデン(VDF)45〜85%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)15〜45%;テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)18〜27%;C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)5〜30%;ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜35%;ビスオレフィン(OF)0〜5%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)60〜75%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜25%;テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%;ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)1〜15%
を有するものである。
述べられたとおり、フルオロエラストマー(A)は、式−CFCHOHの極性末端基を少なくとも3ミリモル/kgおよび多くても6ミリモル/kg、好ましくは少なくとも3.5ミリモル/kgおよび/または好ましくは多くても5ミリモル/kgの量含む。
式−CFCHOHの極性末端基の量は、特にPIANCA,Maurizio,et al.End groups in fluoropolymers.Journal of Fluorine Chemistry 1999,vol.95,p.71−84に記載されている方法論に従って、NMRにより決定される。
これらの末端基は、一般に、フルオロエラストマー(A)をもたらす重合での無機開始剤による開始のために、鎖末端として存在する。
理論により拘束されないが、本出願人は、これらの基の過剰の量の存在が、特に非常に限定された量の塩基性化合物を使用するか、またはそれの非存在下で作業する場合、架橋プロセスを妨げるようなものであるという意見である。
他方で、これらの基のある特定の量が、特に重合がフルオロ界面活性剤の非存在下で行われる場合、フルオロエラストマー(A)の製造中にラテックス安定性を確保するために、およびフルオロエラストマー(A)マトリックス中の金属酸化物の適切な分散性を確保するために必要である。
フルオロエラストマー(A)は、比較的狭い分子量分布、すなわち、重量平均分子量(M)と数平均分子量(M)との間の比と定義される、1.5〜3.5の多分散性指数IMWDを有する。
多分散性指数は、有利にはゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される。
この比較的狭い分子量分布により、ポリマー鎖が、大部分は実質的に同様の長さのものであり、限定量の鎖が、実質的により短いかまたは実質的により長い鎖長を有することが確保される。
この理論に拘束されないが、本出願人は、フルオロエラストマー(A)の鎖の長さにおけるこの規則性が、規則的で均一な架橋に有効に寄与しており、架橋密度が等しく分布されており、3次元網状組織に閉じ込めることが困難であり得るオリゴマーが実質的になく、かつ非常に長い鎖長、したがって、不十分な移動性を有し、架橋プロセスを潜在的に妨げる鎖が実質的にないという意見である。
フルオロエラストマー(A)は、典型的にはフッ化ビニリデンのラジカル重合の間に遭遇される、式−CFHおよび/または−CFCHの末端基により停止される限定量の分岐を含む、限定された鎖末端と共に、規則的構造を有する。実際、フッ化ビニリデンをラジカル条件下で重合させる場合、以下のスキームに示されるとおりの鎖内連鎖移動(バックバイティング)による短い分岐の生成が起こり得る。
例えば、重合温度を低下させる、モノマー圧を増加させる、などによる、を含む、重合条件の適切な選択によって、−CFHおよび/または−CFCHにより停止された前記短い分岐の量が減少されているフルオロエラストマー(A)を得ることが可能である。
他方で、鎖末端の不可避の量は、開始/停止の結果であり、これは、それぞれのフルオロエラストマー(A)鎖における少なくとも2個の末端基の存在に必ず関係する。結果として、秩序化されたミクロ構造についての要件は、鎖末端基の量における絶対的閾値として定義することはできないが、分子鎖の実長さを考慮して表されることになる。
述べられたとおり、フルオロエラストマー(A)は、式−CFH、−CFCHおよび任意選択で、−OC(O)−R(Rは、C〜Cアルキル基である)の鎖末端基を含み;式−OC(O)−Rの鎖末端基は、フルオロエラストマー(A)が、分子量を制御するためのある特定のエステルタイプ連鎖移動剤の存在下での重合によって製造された場合に存在し得る。
一般に、フルオロエラストマー(A)は、上に詳述されたものと異なる鎖末端基のいずれの有意な量の含まないと理解される。もしそれらの不規則性/異なる鎖末端基のいずれかが存在するとすれば、それらは、上に詳述されたとおりの、式−CFCHOH、−CFH、−CFCH、−OC(O)Rのいずれかの鎖末端基の全量に対して、好ましくは1モル%未満の量でフルオロエラストマー(A)に含まれる。
上で説明されたとおりに、本発明による組成物で使用されるフルオロエラストマー(A)は、以下の不等式:
[−CFCHOH]+[−CFH]+[−CFCH]+[−OC(O)R]≦30+(2×10)/M
を満たすような鎖末端の合計数を有する。
実際、上述の不等式を満足するような鎖末端の合計数を有し、他に述べられた特性のすべて(多分散性指数、−CFCHOH基の濃度)に適合するように時宜に適切に選択された、前記フルオロエラストマー(A)を処方する場合、卓越した架橋能力を有し、かつ機械的特性およびシーリング特性、耐熱性および耐薬品性、汚れの非存在の最適妥協点を与える硬化性化合物が得られる。
述べられたとおり、本発明の組成物は、(b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤を含む。
芳香族もしくは脂肪族ポリヒドロキシル化化合物、またはそれらの誘導体は、ポリヒドロキシル化硬化剤として使用してもよく;それらの例は、特に、欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)1980年10月4日、および米国特許第4233427号明細書(RHONE POULENC IND)1980年11月11日に記載されている。これらの中で、特に、ジヒドロキシ、トリヒドロキシおよびテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン;式(B):
(式中、
− Z’は、2価のC〜C13アルキルまたはアルキリデン基、少なくとも1個の塩素またはフッ素原子で任意選択で置換されたC〜C13脂環式基、C〜C13芳香族またはアリールアルキレン基;チオ(−S−)、オキシ(−O−)、カルボニル(−C(O)−)、スルフィニル(−S(O)−)およびスルホニル基(−SO−)からなる群から選択され;
− xは、0または1であり;
− uは、互いに等しいかまたは異なり、出現するごとに独立して、少なくとも1、好ましくは1または2の整数であり;
− ここで、フェニル環は、塩素、フッ素、臭素;−CHO、C〜Cアルコキシ基、−COOR10基(ここで、R10は、HまたはC〜Cアルキル、C〜C14アリール、C〜C12シクロアルキルである)からなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択で置換され得る)のビスフェノール
が挙げられる。
Z’がC〜C132価アルキル基である場合、それは、例えば、メチレン、エチレン、クロロエチレン、フルオロエチレン、ジフルオロエチレン、1,3−プロピレン、テトラメチレン、クロロテトラメチレン、フルオロテトラメチレン、トリフルオロテトラメチレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2−メチル−1,2−プロピレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンであり得る。
Z’がC〜C132価アルキリデン基である場合、それは、例えば、エチリデン、ジクロロエチリデン、ジフルオロエチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、トリフルオロイソプロピリデン、ヘキサフルオロイソプロピリデン、ブチリデン、ヘプタクロロブチリデン、ヘプタフルオロブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、1,1−シクロヘキシリデンであり得る。
Z’がC〜C13脂環式基である場合、それは、例えば、1,4−シクロヘキシレン、2−クロロ−1,4−シクロヘキシレン、2−フルオロ−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、シクロペンチレン、クロロシクロペンチレン、フルオロシクロペンチレン、およびシクロヘプチレンであり得る。
Z’がC〜C13芳香族またはアリールアルキレン基である場合、それは、例えば、m−フェニレン、p−フェニレン、2−クロロ−1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、o−フェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、トリメチルフェニレン、テトラメチルフェニレン、1,4−ナフチレン、3−フルオロ−1,4−ナフチレン、5−クロロ−1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレンおよび2,6−ナフチレンであり得る。
式(B)のポリヒドロキシル化硬化剤の中で、ビスフェノールAFとして知られるヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−ヒドロキシベンゼン)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびビスフェノールAとして知られるイソプロピリデンビス(4−ヒドロキシベンゼン)が好ましく、ビスフェノールAFが特に好ましい。
他のポリヒドロキシル硬化剤は、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2,5−ジメチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、およびジヒドロキシナフタレン、特に1,5−デヒドロキシナフタレンからなる群から選択されるジヒドロキシベンゼンである。
前述の芳香族または脂肪族ポリヒドロキシル化化合物の誘導体が使用され得るとも理解されており;特にヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている前記芳香族または脂肪族ポリヒドロキシル化化合物のアニオンと、金属、典型的にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の1種または2種以上のカチオン(中性に到達するために必要とされる)とによって形成される金属塩を挙げることができ;それらの例は、特にビスフェノールAFの二カリウム塩およびビスフェノールAFの一ナトリウム一カリウム塩である。
さらに加えて、−オニウムヒドロキシレート、すなわち、ヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている前記芳香族または脂肪族ポリヒドロキシル化化合物のアニオンと、1種以上の−オニウムカチオンとによって形成された塩も使用され得る。カチオンとして、上記−オニウム有機誘導体促進剤成分c)に対応するカチオンはすべて、使用され得る。
ポリヒドロキシル化硬化剤の量は、フルオロエラストマー(A)の重量に対して、一般に少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1phr、および/または一般に多くても15phr、好ましくは多くても10phrである。
本発明の組成物は、(c)少なくとも1種の促進剤を含み;VDFベースフルオロエラストマーのイオン硬化用の促進剤は、当技術分野で周知である。
本発明の組成物において適当な促進剤は、一般に有機オニウム化合物、アミノ−ホスホニウム誘導体、ホスホラン、イミン化合物からなる群から選択される。
本発明の組成物において適当である有機オニウム化合物は、一般に式(O):
(式中、
− Qは、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、硫黄;好ましくはリンまたは窒素からなる群から選択され;
− Xは、好ましくはハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、水酸化物、アルコキシド、フェネート、ビスフェネートからなる群から選択される、有機または無機アニオンであり;
− nは、Xアニオンの原子価であり;
− R、R、R、Rのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、
〜C20アルキル基、C〜C20アリール基、C〜C20アリールアルキル基、C〜C20アルケニル基;
塩素、フッ素、臭素から選択されるハロゲン;
シアノ基、式−ORまたは−COOR(式中、Rは、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルケニルである)の基
からなる群から選択される、その他からの1つであり;ここで、R、R、R、Rから選択される2個の基は、Qと環状構造を形成してもよく;
但し、Qが硫黄原子である場合、R、R、R、R基の1個は存在しないことを条件とする)
に従う。
本発明の組成物において適当であるアミノ−ホスホニウム誘導体は、一般に式(AP−1)または式(AP−2):
{[P(NR 4−nq−(AP−1)
{[R 3−r(NRP−E−P(NR 3−r2+}{Yq−2/q(AP−2)
(式中、
− R、RおよびRのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、
〜C18アルキル基(好ましくはC〜C12アルキル基);C〜Cシクロアルキル基;C〜C18アリール基(好ましくはC〜C12アリール基);C〜C18アリールアルキル基(好ましくはC〜C12アリールアルキル基);
1個または2個以上のヒドロキシル基または酸素エーテル基を含む、C〜C18オキシアルキル基
からなる群から独立して選択され;
ここで、R、RおよびRは、ハロゲン、CN、OH、カルブアルコキシ基を任意選択で有し得;RおよびRは、窒素原子とヘテロ環式環を形成し得;
− Eは、C〜C2価アルキレン基、オキシアルキレン基またはC〜C12アリーレン基であり;
− nは、1〜4の整数であり;
− rは、1〜3の整数であり;
− qは、アニオンYの原子価であり、好ましくは1〜2の整数であり;
− Yは、原子価qを有する有機または無機アニオンであり;Yは、ハロゲン化物、過塩素酸塩、硝酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、ハロ酢酸塩、パラ−トルエンスルホン酸塩、フェネート、ビスフェネート、水酸化物から選択され得;Yはまた、錯アニオン、例えば、ZnCl 2−、CdCl 2−、NiBr 2−、HgI であり得る)
に従う。
本発明の組成物において適当であるホスホランは、一般に式(P):
(式中、
− Ar’のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、任意選択で置換されたアリール基、好ましくは任意選択で置換されたフェニル基または任意選択で置換されたナフチル基であり;
− R10およびR11のそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、−H、−CN、C−C〜アルキル基、−O−C(O)−R12基、−C(O)−R12基、−NR13−C(O)−R12基(R12は、C〜C(シクロ)アルキル基であり、R13は、HまたはC〜C(シクロ)アルキル基である)からなる群から独立して選択され、
10およびR11は、P=C結合の炭素原子と一緒に環式基を恐らくは形成する)
に従う。
本発明の組成物において適当であるイミン化合物は、一般に式(I):
[(R14P=N=P(R14z−(I)
(式中、
− R14は、出現するごとに互いに等しいかまたは異なり、O、N、S、ハロゲンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む1個または2個以上の基を任意選択で含む、C〜C12炭化水素基からなる群から選択され;
− Xは、原子価z(zは、整数、一般に1または2である)のアニオンである)
に従う。
使用されてもよい促進剤の例には、特に欧州特許出願公開第335705A号明細書(MINNESOTA MINING)1989年10月4日および米国特許第3876654号明細書(DUPONT)1975年4月8日に記載されたとおりの第四級アンモニウムまたはホスホニウム塩;特に米国特許第4259463号明細書(MONTEDISON SPA)1981年3月31日に記載されたとおりのアミノホスホニウム塩;特に米国特許第3752787号明細書(DUPONT)1973年8月14日に記載されたとおりのホスホラン;欧州特許出願公開第0120462A号明細書(MONTEDISON SPA)1984年10月3日に記載されたとおりの、または欧州特許出願公開第0182299A号明細書(ASAHI CHEMICAL)1986年5月28日に記載されたとおりのイミン化合物が含まれる。第四級ホスホニウム塩およびアミノホスホニウム塩が好ましく、より好ましくはテトラブチルホスホニウム、テトラブチルアンモニウム、および式:
の1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチル−ホスホラミンの塩である。
促進剤およびポリヒドロキシル化硬化剤を別個に使用する代わりに、1:2〜1:5、好ましくは1:3〜1:5のモル比の促進剤とポリヒドロキシル化硬化剤との付加体を使用することも可能である。前記付加体において、したがって、カチオンは、上に列挙された有機オニウム化合物、アミノ−ホスホニウム誘導体、およびイミン化合物からなる群から選択される促進剤のいずれかの正に荷電した部分で表され、アニオンは、そのヒドロキシル基の1個以上が脱プロトン化されている、前記ポリヒドロキシル化硬化剤で表される。
促進剤とポリヒドロキシル化硬化剤との付加体は一般に、示されたモル比の促進剤と硬化剤との反応の生成物を溶融することによって、または示された量の硬化剤が補充された1:1付加体の混合物を溶融することによって得られる。任意選択で、付加体に含まれる促進剤に対して、過剰の促進剤が存在していてもよい。
以下、すなわち、1,1−ジフェニル−1−ベンジル−N−ジエチルホスホラミンおよびテトラブチルホスホニウムは、付加体の調製のためのカチオンとして特に好ましく;特に好ましいアニオンは、2つの芳香族環が3〜7個の炭素原子のペルフルオロアルキル基から選択される2価の基を介して結合されており、かつOH基がパラ位にある、ビスフェノール化合物から誘導されるものである。上に記載されたとおりの付加体の調製に適した方法は、欧州特許出願公開第0684277A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年11月29日に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に援用される。
促進剤の量は、フルオロエラストマー(A)の重量に対して、一般に少なくとも0.05phr、好ましくは少なくとも0.1phr、および/または一般に多くても10phr、好ましくは多くても5phrである。
組成物は、(d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物を含む。
2価の金属の金属酸化物の中で、特にZnO、MgO、PbO、およびそれらの混合物を挙げることができ、MgOが好ましい。
金属酸化物の量は、フルオロエラストマー(A)の重量に対して、一般に少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1phr、および/または一般に多くても25phr、好ましくは多くても15phr、より好ましくは多くても10phrである。
組成物は、(e)少なくとも1種の金属水酸化物を任意選択で含んでもよく、但し、前記金属水酸化物が存在する場合、その量は、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて3phr未満であることを条件とする。
使用され得る水酸化物は、一般にCa(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)からなる群から選択される。
一般に、本発明の組成物の性能は、金属水酸化物の量が、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、有利には2.5phr未満、好ましくは2phr未満、より好ましくは1phr未満である場合に、最適化され得ると理解される。
非常に良好な性能は、上で詳述されたとおりに、本発明の組成物が金属水酸化物を実質的に含まない場合に得られている。
表現「金属水酸化物を実質的に含まない」は、本発明の組成物の製造のために金属水酸化物の添加がまったく行われていないことを意味すると理解されるべきであり、フルオロエラストマー(A)の重量に基づいて、0.1phr未満の微量が、不純物としてなお存在してもよく、これは、本発明の組成物の性能に影響を与えないと理解される。
ある特定の好ましい実施形態によれば、本発明のフルオロエラストマー組成物は、フッ素化界面活性剤を実質的に含まず、これは、前記フッ素化界面活性剤が、非存在であるか、またはフルオロエラストマー(A)の重量に対して、100ppmを超えない、好ましくは50ppmを超えない、より好ましくは10ppmを超えない量で含まれることを意味する。これらの好ましい実施形態によれば、フルオロエラストマー組成物において、添加されたフッ素化界面活性剤の非存在下でのエマルション重合から得られたフルオロエラストマー(A)が好ましく使用される。
さらに、次いで、他の通常の添加剤、例えば、補強性充填材(例えば、カーボンブラック)、増粘剤、顔料、酸化防止剤、安定剤などが、本発明の組成物に添加されてもよい。
本発明はさらに、上に詳述されたとおりのフルオロエラストマー組成物を製造するための方法であって、上に詳述されたとおりのフルオロエラストマー(A)を、(b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤;(c)少なくとも1種の促進剤;(d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物、および(e)任意選択で、少なくとも1種の金属水酸化物であって、前記金属水酸化物の量は、存在する場合、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、3phr未満である金属水酸化物と混合するステップを含む方法に関する。
フルオロエラストマー組成物がフッ素化界面活性剤を実質的に含まない好ましい実施形態によれば、その方法は、フルオロ界面活性剤の非存在下および任意選択で、式R’OC(O)R(RおよびR’は、C〜Cアルキル基である)の連鎖移動剤の存在下でフルオロエラストマー(A)を生成させ、前記フルオロエラストマー(A)を凝析および乾燥によって回収し、上に詳述されたとおりに、それを混合するステップを含む。
本発明はまた、上に記載されたとおりのフルオロエラストマー(A)含む組成物を使用するステップを含む、造形物品を二次加工するための方法にも関する。
組成物は、例えば、成形(射出成形、押出成形)、カレンダー仕上げ、または押出しによって、所望の造形物品に二次加工することができ、これは有利には、それ自体の加工中におよび/またはその後のステップ(後処理または後硬化)で加硫(硬化)を受け、有利には、比較的に柔らかく、弱いフルオロエラストマー(A)を含む組成物を、非粘着性の、強い、不溶性、耐薬品性および耐熱性の硬化フルオロエラストマーから作られた完成物品に変換させる。
最後に、本発明は、本発明の組成物から得られる硬化物品に関する。前記硬化物品は、一般に、上に詳述されたとおりに、フルオロエラストマー(A)を含む組成物を成形し、硬化させることによって得られる。
硬化物品は、特に、パイプ、継手、Oリング、ホースなどであり得る。
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、および刊行物のいずれかの開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
本発明はこれから、以下の実施例に関連してより詳細に説明されるが、その目的は、単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
調製実施例
調製実施例1
460rpmで動作する機械式撹拌機を備えた22リットルの反応器に、14.5lの脱イオン水および39gの酢酸エチルを導入した。反応器を加熱し、85℃の設定点温度に維持し;次いで、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロペン(HFP)(21.5モル%)との混合物を添加して、20バールの最終圧力に到達させた。次いで、開始剤として19gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。VDF(78.5モル%)とHFP(21.5モル%)とのガス状混合物の合計6600gまでの連続供給によって、圧力を20バールの設定点に維持した。次いで、反応器を冷却し、通気させ、ラテックスを回収した。ラテックスを硫酸アルミニウムで処理し、水相から分離させ、脱塩水で洗浄し、対流オーブン中90℃で16時間乾燥させた。NMRによる得られたポリマーの組成およびGPCによる分子量分布を、表1に要約する。
調製実施例2
460rpmで動作する機械式撹拌機を備えた22リットルの反応器に、14.5lの脱イオン水および27gの酢酸エチルを導入した。反応器を加熱し、85℃の設定点温度に維持し;次いで、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロペン(HFP)(21.5モル%)との混合物を添加して、20バールの最終圧力に到達させた。次いで、開始剤として16gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。VDF(78.5モル%)とHFP(21.5モル%)とのガス状混合物の合計で6600gまでの連続供給によって、圧力を20バールの設定点に維持した。次いで、反応器を冷却し、通気させ、ラテックスを回収した。ラテックスを硫酸アルミニウムで処理し、水相から分離させ、脱塩水で洗浄し、対流オーブン中90℃で16時間乾燥させた。NMRによる得られたポリマーの組成およびGPCによる分子量分布を、表1に要約する。
調製実施例3
460rpmで動作する機械式撹拌機を備えた22リットルの反応器に、14.5lの脱イオン水および15gの酢酸エチルを導入した。反応器を加熱し、85℃の設定点温度に維持し;次いで、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロペン(HFP)(21.5モル%)との混合物を添加して、20バールの最終圧力に到達させた。次いで、開始剤として13gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。VDF(78.5モル%)とHFP(21.5モル%)とのガス状混合物の合計で6600gまでの連続供給によって、圧力を20バールの設定点に維持した。次いで、反応器を冷却し、通気させ、ラテックスを回収した。ラテックスを硫酸アルミニウムで処理し、水相から分離させ、脱塩水で洗浄し、対流オーブン中90℃で16時間乾燥させた。NMRによる得られたポリマーの組成およびGPCによる分子量分布を、表1に要約する。
調製実施例4C−比較の
460rpmで動作する機械式撹拌機を備えた22リットルの反応器に、14.5lの脱イオン水および75gの酢酸エチルを導入した。反応器を加熱し、85℃の設定点温度に維持し;次いで、フッ化ビニリデン(VDF)(78.5モル%)とヘキサフルオロプロペン(HFP)(21.5モル%)との混合物を添加して、20バールの最終圧力に到達させた。次いで、開始剤として27gの過硫酸アンモニウム(APS)を導入した。VDF(78.5モル%)とHFP(21.5モル%)とのガス状混合物の合計で6600gまでの連続供給によって、圧力を20バールの設定点に維持した。次いで、反応器を冷却し、通気させ、ラテックスを回収した。ラテックスを硫酸アルミニウムで処理し、水相から分離させ、脱塩水で洗浄し、対流オーブン中90℃で16時間乾燥させた。NMRによる得られたポリマーの組成およびGPCによる分子量分布を、表1に要約する。
調製実施例5C−比較の
460rpmで動作する撹拌機を備えた22リットルの水平反応器に、14.5lの水、および600の平均分子量を有する、式:CFClO(CF−CF(CF)O)(CFO)CFCOOH(式中、n/m=10である)の31mlのペルフルオロポリオキシアルキレンと、31mlの30体積%NH4OH水溶液と、63mlの脱塩水と、450の平均分子量を有し、式:CFO(CFCF(CF)O)(CFO)CF(n/m=20である)の20mlのGALDEN(登録商標)D02ペルフルオロポリエーテルとを混合することによって予め得られた、145mlのマイクロエマルションを導入した。反応器を122℃まで加熱し、次いで、気相の以下の組成:VDF=53モル%、HFP=47モル%を有するまで、モノマーを供給することによって37相対バールの圧力にした。30gのジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)の供給によって、反応が開始し、VDF=78.5モル%、HFP=21.5モル%により形成された混合物を供給することによって重合全体の間、圧力を一定に保つ。酢酸エチル連鎖移動剤(16g)を、VDF消費に応じて段階的に添加した。4,600gに相当する予め固定した量のモノマー混合物が反応した後、反応を止めた。次いで、ラテックスを、電解質剤(硫酸アルミニウム)を使用することによって凝析させ、洗浄し、80℃で24時間乾燥させた。
調製実施例で得られたとおりのフルオロエラストマー(A)を、短鎖および長鎖の末端の量に基づいて、2つの群、すなわち、ミリモル/kg単位での鎖末端の数が30+(2×10)/Mの閾値未満であるフルオロエラストマー(すなわち、調製実施例1〜調製実施例3のフルオロエラストマー)、およびミリモル/kg単位の鎖末端の数が、30+(2×10)/Mの閾値を超えるフルオロエラストマー(すなわち、比較の、調製実施例4および調製実施例5のフルオロエラストマー)に分類することができる。
これは、図1に示されたとおりに視覚的に略図を描くことができる。
硬化試料での機械的特性および耐薬品性の決定
フルオロエラストマーを、オープンミルで以下の表に詳述される添加剤と配合した。プラークおよびOリング(サイズクラス=214)を加圧金型中で硬化させ、次いで以下に特定される条件(時間、温度)で空気循環オーブン中で後処理した。
引張り特性は、23℃でASTMD412C標準に従って、プラークから打ち抜いた試験片で決定した。
M50は、50%の伸びにおけるMPa単位での引張り強度であり、
M100は、100%の伸びにおけるMPa単位での引張り強度であり、
T.S.は、MPa単位での引張り強さであり、
E.B.は、%単位での破断点伸びである。
ショア(Shore)A硬度(3”)(HDS)は、ASTM D 2240法に従って積み重ねられた3片のプラークで決定した。
圧縮永久歪(C−SET)は、ASTM D395、方法Bに従って、Oリング、航空飛行士標準規格(spaceman standard)AS568A(タイプ214)、または6mmのボタン(タイプ2)で決定した。
硬化挙動は、以下に特定される条件で、以下の特性を決定することにより、移動ダイレオメータ(MDR:Moving Die Rheometer)によって特徴付けした。
=最小トルク(ポンド×インチ)
=最大トルク(ポンド×インチ)
ΔM=M−M(ポンド×インチ)
S2=スコーチ時間、Mから2単位上昇するための時間(秒);
t’90=90%の硬化状態までの時間(秒)。
耐薬品性は、ASTM D471標準に従って;より正確にはIRM903試験を、メタノールを用いて23℃で70時間行うことによって、評価した。
結果を以下の表に要約する。
以上の表2に含まれるデータは、本発明のフルオロエラストマー組成物の技術的利点を十分に実証する:
− 高い硬化速度が発明化合物について達成される一方で、4Cの比較の実施例は、フルオロエラストマー(A)中式−CFCHOHの極性末端基の量を6ミリモル/kgの限界を超えて増加させることは、前記硬化速度に悪影響を与える;
− より高いM50およびM100値を有する改善された機械的特性が、本発明のフルオロエラストマー組成物によって達成される;
− より低い圧縮永久歪み値により明らかなとおりに、改善されたシーリング特性が、本発明のフルオロエラストマー組成物によって達成される。
さらに、フッ素化界面活性剤の非存在下で製造されたフルオロエラストマーを含む、実施例1〜実施例3のフルオロエラストマー組成物は、上に詳述された条件下で、なんらの色の変化も、硬化物品の外観に影響を与え得る劣化現象も受けない硬化物品を与えることが見出された。

Claims (16)

  1. (a)フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位および少なくとも1種の追加の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むフッ化ビニリデンベースフルオロエラストマー[フルオロエラストマー(A)]であって、
    − 1.5〜3.5の多分散性指数(IMWD)を有し、
    − 少なくとも3ミリモル/kgおよび多くても6ミリモル/kgの式−CFCHOHの極性末端基の量を含み、
    − 以下の不等式:
    [−CFCHOH]+[−CFH]+[−CFCH]+[−OC(O)R]≦30+(2×10)/Mを満たすような量で式−CFH、−CFCH、および任意選択で、−OC(O)−R(Rは、C−Cアルキル基である)の鎖末端基をさらに含む、フルオロエラストマー(A)、
    (b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤;
    (c)少なくとも1種の促進剤;
    (d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;ならびに
    (e)任意選択で、少なくとも1種の金属水酸化物であって、前記金属水酸化物の量は、存在する場合、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、3phr未満である、金属水酸化物
    を含む、フルオロエラストマー組成物。
  2. 前記フルオロエラストマー(A)が、前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、VDFに由来する少なくとも15モル%、好ましくは少なくとも20モル%、より好ましくは少なくとも35モル%の繰り返し単位を含み、および/または前記フルオロエラストマー(A)が、前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、VDFに由来する多くても85モル%、好ましくは多くても80モル%、より好ましくは多くても78モル%の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のフルオロエラストマー組成物。
  3. 前記フルオロエラストマー(A)に含まれる繰り返し単位がそれに由来する、(ペル)フッ素化モノマーが、特に、
    (a)C〜Cペルフルオロオレフィン、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP);
    (b)VDFとは異なる水素含有C〜Cオレフィン、例えば、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH−R(式中、Rは、C〜Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレン;
    (c)C〜Cクロロおよび/またはブロモおよび/またはヨード−フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE);
    (d)式CF=CFOR(式中、Rは、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cである)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
    (e)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC〜C12((ペル)フルオロ)−オキシアルキル、例えば、ペルフルオロ−2−プロポキシプロピル基である]の(ペル)フルオロ−オキシ−アルキルビニルエーテル;
    (f)式:
    (式中、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、互いに等しいかまたは異なり、フッ素原子、および1個または2個以上の酸素原子を任意選択で含む、C〜C(ペル)フルオロアルキル基、例えば、特に−CF、−C、−C、−OCF、−OCFCFOCFの中から独立して選択される)
    を有する(ペル)フルオロジオキソール;好ましくは、ペルフルオロジオキソール;
    (g)式:
    CFX=CXOCFOR’’
    (式中、R’’は、直鎖または分岐のC〜C(ペル)フルオロアルキル;C〜C環状(ペル)フルオロアルキル;および1〜3個のカテナリー酸素原子を含む、直鎖または分岐のC〜C(パー)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hであり;好ましくは、XはFであり、R’’は、−CFCF(MOVE1)、−CFCFOCF(MOVE2);または−CF(MOVE3)である)
    を有する(ペル)フルオロ−メトキシ−ビニルエーテル(以下、MOVE)
    である、請求項1または2に記載のフルオロエラストマー組成物。
  4. 前記フルオロエラストマー(A)が、VDFに由来する繰り返し単位に加えて、前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、HFPに由来する繰り返し単位を少なくとも10モル%、好ましくは少なくとも12モル%、より好ましくは少なくとも15モル%の量で、および/または前記フルオロエラストマーの全繰り返し単位に対して、多くても45モル%、好ましくは多くても40モル%、より好ましくは多くても35モル%の量で含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  5. 前記フルオロエラストマー(A)が、VDFおよびHFPに由来する繰り返し単位に加えて、以下:
    − 一般式:
    (式中、R、R、R、R、RおよびRは、互いに等しいかまたは異なり、H、ハロゲン、または1個以上の酸素基を恐らくは含む、C〜Cの任意選択でハロゲン化された基であり;Zは、酸素原子を任意選択で有する、直鎖もしくは分岐のC〜C18の任意選択でハロゲン化されたアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基である)
    を有する少なくとも1種のビス−オレフィン[ビス−オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位;
    − VDFおよびHFPとは異なる少なくとも1種の(ペル)フッ素化モノマーに由来する繰り返し単位;ならびに
    − 少なくとも1種の水素化モノマーに由来する繰り返し単位
    の1つ以上を含む、請求項4に記載のフルオロエラストマー組成物。
  6. フルオロエラストマー(A)が、以下の組成(モル%単位)を有するもの:
    (i)フッ化ビニリデン(VDF)45〜85%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)15〜45%;テトラフルオロエチレン(TFE)0〜30%;
    (ii)フッ化ビニリデン(VDF)20〜30%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)18〜27%;C〜C非フッ素化オレフィン(Ol)5〜30%;ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0〜35%;ビス−オレフィン(OF)0〜5%;
    (iii)フッ化ビニリデン(VDF)60〜75%;ヘキサフルオロプロペン(HFP)10〜25%;テトラフルオロエチレン(TFE)0〜20%;ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)1〜15%
    からなる群から選択される、請求項5に記載のフルオロエラストマー組成物。
  7. フルオロエラストマー(A)が、少なくとも3.5ミリモル/kg、および/または好ましくは多くても5ミリモル/kgの式−CFCHOHの極性末端基の量を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  8. 前記ポリヒドロキシル化硬化剤が、ジヒドロキシ、トリヒドロキシおよびテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン;式(B):
    [式中、
    − Z’は、少なくとも1個の塩素またはフッ素原子で任意選択で置換された、2価のC〜C13アルキルまたはアルキリデン基、C〜C13脂環式基、C〜C13芳香族またはアリールアルキレン基;チオ(−S−)、オキシ(−O−)、カルボニル(−C(O)−)、スルフィニル(−S(O)−)およびスルホニル基(−SO−)からなる群から選択され;
    − xは、0または1であり;
    − uは、互いに等しいかまたは異なり、出現するごとに独立して、少なくとも1、好ましくは1または2の整数であり;
    − ここで、フェニル環は、塩素、フッ素、臭素;−CHO,C〜Cアルコキシ基、−COOR10基(ここで、R10は、HまたはC〜Cアルキル、C〜C14アリール、C〜C12シクロアルキルである)からなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択で置換され得る]のビスフェノールからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  9. 前記ポリヒドロキシル化硬化剤の量が、前記フルオロエラストマー(A)の重量に対して、少なくとも0.5phr、好ましくは少なくとも1phr、および/または一般に多くても15phr、好ましくは多くても10phrである、請求項1から8のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  10. 前記促進剤が、有機オニウム化合物、アミノ−ホスホニウム誘導体、ホスホラン、イミン化合物からなる群から選択され、ならびに/または前記促進剤の量が、前記フルオロエラストマー(A)の重量に対して、少なくとも0.05phr、好ましくは少なくとも0.1phr、および/もしくは一般に多くても10phr、好ましくは多くても5phrである、請求項1から9のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  11. 前記金属酸化物が、ZnO、MgO、PbO、およびそれらの混合物からなる群から選択され、MgOが好ましく、ならびに/または前記金属酸化物の量が、前記フルオロエラストマー(A)の重量に対して、少なくとも0.5phr,好ましくは少なくとも1phr、および/もしくは一般に多くても25phr、好ましくは多くても15phr、より好ましくは多くても10phrである、請求項1から10のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物。
  12. 請求項1から11のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物であって、フッ素化界面活性剤を実質的に含まず、これは、前記フッ素化界面活性剤が、非存在であるか、または前記フルオロエラストマー(A)の重量に対して、100ppmを超えない、好ましくは50ppmを超えない、より好ましくは10ppmを超えない量で含まる、のいずれかを意味する、フルオロエラストマー組成物。
  13. 請求項1から12のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物を製造するための方法であって、(a)フルオロエラストマー(A);(b)少なくとも1種のポリヒドロキシル化硬化剤;(c)少なくとも1種の促進剤;(d)2価の金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の金属酸化物;および(e)任意選択で、少なくとも1種の金属水酸化物であって、存在する場合、前記金属水酸化物の量は、フルオロエラストマー(A)の100重量部に基づいて、3phr未満である、金属水酸化物を混合するステップを含む、方法。
  14. 前記フルオロエラストマー組成物が、フッ素化界面活性剤を実質的に含まない、請求項13に記載の方法であって、フルオロ界面活性剤の非存在下および任意選択で、式R’OC(O)R(Rand R’は、C〜Cアルキル基である)の連鎖移動剤の存在下で加硫酸塩ラジカル開始剤により開始される水性エマルション重合によって前記フルオロエラストマー(A)を生成させ、前記フルオロエラストマー(A)を凝析および乾燥により回収し、請求項13で詳述されたのと同じものを混合するステップを含む、方法。
  15. 請求項1から12のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー(A)を含む組成物を使用するステップを含む、造形物品を二次加工するための方法。
  16. 請求項1から12のいずれか一項に記載のフルオロエラストマー組成物を成形し、および硬化させることによって得られる硬化物品であって、好ましくはパイプ、継手、Oリング、およびホースである、硬化物品。
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