JP2018522565A - プロモーター変異体 - Google Patents

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Abstract

配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の、炭素供給源により調節可能なpG1プロモーターの機能的変異体である、単離および/または人工pG1−xプロモーターであって、そのpG1−xプロモーターは、少なくとも293bpの長さを有する配列番号1の少なくとも一部からなるかまたはこれを含み、以下のプロモーター領域:a)配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つのコア調節領域;ならびにb)前記コア調節領域以外の、pG1−xプロモーター配列内の任意の領域である非コア調節領域、を特徴とし、pG1−xプロモーターが、プロモーター領域のうちの何れかにおける、少なくとも1つの突然変異と、配列番号2および配列番号3における、少なくとも80%の配列同一性と、配列番号2または配列番号3以外の任意の領域における、少なくとも50%の配列同一性とを含み;さらに、pG1−xプロモーターが、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは増大させた、プロモーター強度および誘導比を特徴とし、この場合、・プロモーター強度が、誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大しており、かつ/または・誘導比が、前記pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大している、pG1−xプロモーター。

Description

本発明は、配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の、炭素供給源により調節可能なpG1プロモーターの機能的変異体または誘導体である、単離人工プロモーターであって、ここでは、pG1−xと称するプロモーターであり、特異的なプロモーターエレメントおよび特色を特徴とする単離人工プロモーターを指す。
背景
メチロトローフ酵母であるメタノール資化酵母(Pichia pastoris)(コマガタエラ(Komagataella)属種と同義)は、十分に確立されたタンパク質産生宿主である。メタノール資化酵母(P.pastoris)のための多数の株操作法が、多様な産物のための生産性を改善しており、また、産生を目的とするプロモーターにも、努力が傾けられている(Prielhofer,R.、M.Maurer、J.Klein、J.Wenger、C.Kiziak、B.Gasser、およびD.Mattanovich(2013)、Induction without methanol:novel regulated promoters enable high−level expression in Pichia pastoris、Microb Cell Fact、12:5)。遺伝子プロモーターは、対象の遺伝子(GOI:gene of interest)を発現させるための鍵となる特色である:下流(3’)のGOIのRNAの転写は、上流(5’)のプロモーター配列により駆動される。RNAポリメラーゼII(RNAPII)は、真核生物におけるmRNAの転写の一因となる。RNAPIIプロモーターは、コアプロモーターと、いくつかのシス活性化DNAエレメント:近位プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、およびバウンダリー/インシュレーターエレメントとからなる。酵母コアプロモーターは、典型的に、主要転写開始部位の近傍(−75/+50bp)に配置され、それらは、高頻度で、不適正なTATAボックス(TATAコンセンサス配列に対する差違を2塩基以下とする)を含有し、他の生物において典型的に見出されるプロモーターエレメントを欠く。転写の調節は、異なる条件に応答し、シス活性化エレメントおよび対応する調節タンパク質(転写因子(TF))を介してなされる。
バイオテクノロジーへの適用のためには、構成的または調節的/誘導的遺伝子発現を可能とするプロモーターを使用する。メタノール資化酵母(P.pastoris)を活用する産生プロセスは、炭素供給源依存性プロモーター、たとえば、メタノール誘導性PAOXを適用すると好都合である。これにより、増殖期を、潜在的に煩瑣なタンパク質産生期から分離することができる。近年、炭素供給源によってもまた制御されるが、誘導のためにメタノールに依拠しない、一連のプロモーターが報告された(Prielhoferら、2013):これらのプロモーターは、過剰グリセロールによる抑制および制限グルコースによる誘導の特色を共有する。これらのプロモーターのうちで最も強力なpG1(配列番号1)は、1L当たり0.05gを下回るグルコースで完全に誘導され;天然では、高アフィニティーのグルコース輸送体遺伝子GTH1の発現を制御する。グルコース取込みの特徴は、高および低アフィニティーグルコース輸送体の存在に依存する。出芽酵母(S.cerevisiae)内の、17のヘキソース輸送(HXT)遺伝子(HXT1〜17)は、グルコース濃度に応じて発現し、2つのHXT相同体だけが、メタノール資化酵母(P.pastoris)内で見出される(PpHxt1およびPpHxt2と名付けられる、PAS_chr1−4_0570およびPAS_chr2−1_0054)。PpHxt1は、メタノール資化酵母(P.pastoris)内の、主要な低アフィニティー輸送体であることが同定されているが、高アフィニティーのグルコース輸送は、他の2つの遺伝子、すなわち、PAS_chr3_0023およびPAS_chr1−3_0011(pG1により制御される遺伝子であるGTH1;Prielhoferら、2013)により容易となる。
出芽酵母(S.cerevisiae)が、巨大なグルコース取込み能および(発酵性)グルコース代謝を特色とするのに対し、メタノール資化酵母(P.pastoris)は、低グルコース取込み速度と、呼吸器によるグルコース代謝とを有する。さらに、メタノール資化酵母(P.pastoris)は、出芽酵母(S.cerevisiae)より、はるかに低細胞外濃度で、グルコースを消費することが可能である(出芽酵母(S.cerevisiae)におけるmM範囲と対比した、メタノール資化酵母(P.pastoris)においてμM範囲である、高アフィニティー輸送体のKM)。グルコース取込み挙動における根本的な差違はまた、関連遺伝子の転写制御においても表され、また、転写調節因子、たとえば、PpAft1およびPpMxr1(ScAdr1の相同体)の機能の進化においても見ることができる。
メタノール資化酵母(P.pastoris)のプロモーターについての研究、ならびにPAOX1およびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼのプロモーターであるPGAPのランダム突然変異誘発は、野生型プロモーターと比較して異なる活性、変更された誘導挙動を保有するプロモーター変異体を伴うライブラリーと、PAOX1の、いくつかの重要な転写因子結合性部位(TFBS)の同定とを結果としてもたらした(WO2006/089329A2)。
pG1プロモーターおよびその断片は、WO2013/050551A1においてさらに記載されている。
WO2014067926A1は、特異的なリーダー配列を援用する、対象のタンパク質の発現について開示している。リーダーは、多様なプロモーターと共に使用された。例示的なプロモーターとして、pG1プロモーターが使用された。
Struhl K.(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、1982、78(7):4461〜4465)は、酵母his3プロモーター領域の欠失マッピングについて記載している。Struhl K.は、大半の真核遺伝子に先行するT−A−T−Aボックス配列が、野生型プロモーターの機能に十分ではないことを結論付け、酵母プロモーターは、RNAポリメラーゼとDNAとの単純な相互作用部位より複雑であると考えられることを示唆している。
Quandtら(Nucleic Acids Research、1995、23(23)4878〜4884)は、ヌクレオチド配列データ中のコンセンサスマッチを検出して、配列データ解析に基づき、調節モチーフを同定するためのツールについて記載している。コンセンサスパターンのライブラリーを創出し、ソフトウェアツール(MatInspector)を使用して、潜在的な配列マッチを検出した。
炭素供給源による調節およびプロモーター強度に関して、改善された調節可能なプロモーターを提供することが、本発明の目的である。POIの作製を増強し、かつ/または短縮された時間内でPOIを作製するための、このようなプロモーターを提供することが、さらなる目的である。
この目的は、特許請求される主題により達成される。
本発明によれば、配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の、炭素供給源により調節可能なpG1プロモーターの機能的変異体である、単離および/または人工pG1−xプロモーターであって、そのpG1−xプロモーターは、少なくとも293bpの長さを有する配列番号1の少なくとも一部からなるかまたはこれを含み、以下のプロモーター領域:
a)配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つのコア調節領域;ならびに
b)コア調節領域以外の、pG1−xプロモーター配列内の任意の領域である非コア調節領域
を特徴とし、
pG1−xプロモーターが、プロモーター領域のうちの何れかにおける、少なくとも1つの突然変異と、配列番号2および配列番号3における、少なくとも80%の配列同一性と、配列番号2または配列番号3以外の任意の領域における、少なくとも50%の配列同一性とを含み;さらに、
pG1−xプロモーターが、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは増大させた、プロモーター強度および誘導比を特徴とし、この場合、
・プロモーター強度が、誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大しており、かつ/または
・誘導比が、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大している、
pG1−xプロモーターが提供される。
具体的に、配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)のpG1プロモーターは、配列番号7、8、または9のうちの何れかであり、より具体的に、ここでの例において、基準として使用される、配列番号9である。
具体的に、pG1−xプロモーターは、pG1(配列番号264)と名付けられた、先行技術によるプロモーターのうちの何れかでも、WO2013050551A1において記載されている、pG1a(配列番号265)、pG1b(配列番号266)、pG1c(配列番号267)、pG1d(配列番号268)、pG1e(配列番号269)、またはpG1f(配列番号270)のうちの何れでもない。
具体的な態様によれば、本発明に従うpG1−xプロモーターは、
・誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍、もしくは少なくとも1.2倍、もしくは少なくとも1.3倍、もしくは少なくとも1.4倍、もしくは少なくとも1.5倍、もしくは少なくとも1.6倍、もしくは少なくとも1.7倍、もしくは少なくとも1.8倍、もしくは少なくとも1.9倍、もしくは少なくとも2倍、もしくは少なくとも2.1倍、もしくは少なくとも2.2倍、もしくは少なくとも2.3倍、もしくは少なくとも2.4倍、もしくは少なくとも2.5倍、もしくは少なくとも2.6倍、もしくは少なくとも2.7倍、もしくは少なくとも2.8倍増大しているプロモーター強度、または少なくとも2.9倍、もしくは少なくとも3倍、もしくは少なくとも3.3倍、もしくは少なくとも3.5倍、もしくは少なくとも3.8倍、もしくは少なくとも4倍、もしくは少なくとも4.5倍、もしくは少なくとも5倍、もしくは少なくとも5.5倍、もしくは少なくとも6倍増大しているプロモーター強度と、
・炭素供給源により調節される能力であって、pG1プロモーターにより達成される誘導比と比較して、同じであるかまたは大きな誘導比により決定される能力と
を特徴とする、炭素供給源により調節可能なプロモーターである。
さらなる具体的な態様によれば、本発明に従うpG1−xプロモーターは、
・誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは大きなプロモーター強度と
・炭素供給源により調節される能力であって、pG1プロモーターにより達成される誘導比と比較して、少なくとも1.1倍、もしくは少なくとも1.2倍、もしくは少なくとも1.3倍、もしくは少なくとも1.4倍、もしくは少なくとも1.5倍、もしくは少なくとも1.6倍、もしくは少なくとも1.7倍、もしくは少なくとも1.8倍、もしくは少なくとも1.9倍、もしくは少なくとも2倍、もしくは少なくとも2.1倍、もしくは少なくとも2.2倍、もしくは少なくとも2.3倍、もしくは少なくとも2.4倍、もしくは少なくとも2.5倍、もしくは少なくとも2.6倍、もしくは少なくとも2.7倍、もしくは少なくとも2.8倍増大している誘導比、または少なくとも2.9倍、もしくは少なくとも3倍、もしくは少なくとも3.3倍、もしくは少なくとも3.5倍、もしくは少なくとも3.8倍、もしくは少なくとも4倍、もしくは少なくとも4.5倍、もしくは少なくとも5倍、もしくは少なくとも5.5倍、もしくは少なくとも6倍増大している誘導比により決定される能力と
を特徴とする、炭素供給源により調節可能なプロモーターである。
さらなる具体的な態様によれば、本発明に従うpG1−xプロモーターは、
・誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍、もしくは少なくとも1.2倍、もしくは少なくとも1.3倍、もしくは少なくとも1.4倍、もしくは少なくとも1.5倍、もしくは少なくとも1.6倍、もしくは少なくとも1.7倍、もしくは少なくとも1.8倍、もしくは少なくとも1.9倍、もしくは少なくとも2倍、もしくは少なくとも2.1倍、もしくは少なくとも2.2倍、もしくは少なくとも2.3倍、もしくは少なくとも2.4倍、もしくは少なくとも2.5倍、もしくは少なくとも2.6倍、もしくは少なくとも2.7倍、もしくは少なくとも2.8倍増大しているプロモーター強度、または少なくとも2.9倍、もしくは少なくとも3倍、もしくは少なくとも3.3倍、もしくは少なくとも3.5倍、もしくは少なくとも3.8倍、もしくは少なくとも4倍、もしくは少なくとも4.5倍、もしくは少なくとも5倍、もしくは少なくとも5.5倍、もしくは少なくとも6倍増大しているプロモーター強度と、
・炭素供給源により調節される能力であって、pG1プロモーターにより達成される誘導比と比較して、少なくとも1.1倍、もしくは少なくとも1.2倍、もしくは少なくとも1.3倍、もしくは少なくとも1.4倍、もしくは少なくとも1.5倍、もしくは少なくとも1.6倍、もしくは少なくとも1.7倍、もしくは少なくとも1.8倍、もしくは少なくとも1.9倍、もしくは少なくとも2倍、もしくは少なくとも2.1倍、もしくは少なくとも2.2倍、もしくは少なくとも2.3倍、もしくは少なくとも2.4倍、もしくは少なくとも2.5倍、もしくは少なくとも2.6倍、もしくは少なくとも2.7倍、もしくは少なくとも2.8倍増大している誘導比、または少なくとも2.9倍、もしくは少なくとも3倍、もしくは少なくとも3.3倍、もしくは少なくとも3.5倍、もしくは少なくとも3.8倍、もしくは少なくとも4倍、もしくは少なくとも4.5倍、もしくは少なくとも5倍、もしくは少なくとも5.5倍、もしくは少なくとも6倍増大している誘導比により決定される能力と
を特徴とする、炭素供給源により調節可能なプロモーターである。
具体的に、プロモーター強度を、pG1プロモーターと比較した、対象のタンパク質(POI:protein of interest)、たとえば、モデルタンパク質(たとえば、たとえば、増強型GFPであるeGFP、Gene Bank受託番号:U57607を含む、緑色蛍光タンパク質であるGFP)の発現レベルおよび/または転写速度により決定する。pG1−xのプロモーター強度は、具体的に、たとえば、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.2倍、もしくは少なくとも1.3倍、もしくは少なくとも1.4倍、もしくは1.5倍、もしくは少なくとも1.6倍、もしくは少なくとも1.7倍、もしくは少なくとも1.8倍、もしくは少なくとも1.9倍、もしくは少なくとも2倍、もしくは少なくとも2.1倍、もしくは少なくとも2.2倍、もしくは少なくとも2.3倍、もしくは少なくとも2.4倍、もしくは少なくとも2.5倍、もしくは少なくとも2.6倍、もしくは少なくとも2.7倍、もしくは少なくとも2.8倍増大している、または少なくとも2.9倍、もしくは少なくとも3倍、もしくは少なくとも3.5倍、もしくは少なくとも4倍、もしくは少なくとも4.5倍、もしくは少なくとも5倍、もしくは少なくとも5.5倍、もしくは少なくとも6倍、もしくは少なくとも6.5倍、もしくは少なくとも7倍、もしくは少なくとも7.5倍、もしくは少なくとも8倍、もしくは少なくとも8.5倍、もしくは少なくとも9倍、もしくは少なくとも9.5倍、もしくは少なくとも10倍増大している。
ここでは、pG1プロモーターは、プロモーター機能の改善を決定する基準または対照として用いてもよい。このような対照pG1プロモーターは、同じ宿主細胞および発現系を使用する並行対照実験において使用してもよく、同じ宿主細胞培養物中の内部対照として使用してもよい。プロモーター機能を、pG1プロモーターと比較して適格とするこのような対照実験は、好ましくは、メタノール資化酵母(P.pastoris)宿主細胞培養物中、特に、モデルタンパク質、たとえば、GFPまたはeGFPを発現させる、組換えメタノール資化酵母(P.pastoris)において実行される。
pG1−xプロモーターによる誘導は、さらなる翻訳および前記POIの任意の発現を具体的に含む、転写の誘導を具体的に指す。
前記転写速度は、プロモーター強度の尺度として決定され、具体的に、前記プロモーターを完全に誘導したときに得られる、転写物の量を指す。
前記転写速度は、たとえば、制限グルコースによるケモスタット培養条件下で得られる、完全誘導状態における転写強度により決定し、pG1プロモーターの転写速度と比べて表してもよい。
好ましくは、転写解析は、定量的または半定量的であり、好ましくは、qRT−PCR、DNAマイクロアレイ、RNAシーケンシング、およびトランスクリプトーム解析を援用する。
pG1プロモーター強度と比較したプロモーター強度は、以下の標準的なアッセイにより決定することができる:被験プロモーターの制御下で、eGFPを発現させるメタノール資化酵母(P.pastoris)株を、ウェル1つ当たりの培養物を2mLとして、280rpmで振とうしながら、深型24ウェルプレート内、25℃でスクリーニングする。グルコースフィードビーズ(6mm、Kuhner、CH)を使用して、グルコース制限増殖条件を作出する。細胞を、誘導状態(YP+1つのフィードビーズ、20〜28時間にわたる)における、eGFPの発現について解析する。
培養条件が、たとえば、1L当たり0.4g未満、好ましくは、1L当たり0.04g未満、具体的に、1L当たり0.02g未満のグルコース濃度で、ほぼ最大の誘導をもたらす場合、前記プロモーターは、抑制解除され、完全に誘導されていると考えられる。完全に誘導されたプロモーターは、好ましくは、天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の転写速度を示し、少なくとも100%、なおまたはこれより大きい、少なくとも150%もしくは少なくとも200%の転写速度を示す。転写速度は、たとえば、たとえば、下記の実施例節で記載される通り、液体培養物中でクローンを培養したときの、レポーター遺伝子、たとえば、eGFPの転写物の量により決定してもよい。あるいは、転写速度は、マイクロアレイ上の転写強度により決定してもよく、この場合、マイクロアレイデータは、抑制状態と抑制解除状態との発現レベルの差違と、完全誘導状態における、対照と比較して大きなシグナル強度とを示す。
具体的には前記天然pGAPプロモーターは、POIの発現を決定するのに宿主細胞として使用されうる真核細胞に内因性または相同であるプロモーターであり、比較を目的として、標準または基準プロモーターとして用いられる。
たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターは、メタノール資化酵母(P.pastoris)内でGAPDHの発現を制御するのに使用される通り、たとえば、図7に示される配列:メタノール資化酵母(P.pastoris)(GS115)の天然pGAPプロモーター配列(配列番号260)を有する、メタノール資化酵母(P.pastoris)内の、改変されていない内因性のプロモーター配列である。メタノール資化酵母(P.pastoris)を、本発明に従うPOIを作製するための宿主として使用する場合、本発明に従うpG1−xプロモーターの転写強度または速度を、このようなメタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターと比較し、かつ/または天然pG1プロモーターと比較する。
別の例としては、出芽酵母(S.cerevisiae)の天然pGAPプロモーターは、出芽酵母(S.cerevisiae)内でGAPDHの発現を制御するのに使用される通り、出芽酵母(S.cerevisiae)内の、改変されていない内因性のプロモーター配列である。出芽酵母(S.cerevisiae)を、POIを作製するための宿主として使用する場合、pG1−xプロモーターの転写強度または速度を、このような出芽酵母(S.cerevisiae)の天然pGAPプロモーターと比較する。
したがって、本発明に従うプロモーターの相対転写強度または速度は通例、POIを作製するための宿主として使用される、同じ種または株の細胞の天然pGAPプロモーターと比較される。
誘導比は、本pG1−xプロモーターの調節を決定するのに、鍵となるパラメータであり、誘導状態におけるプロモーター活性または強度を、抑制状態におけるプロモーター活性または強度と比べる。たとえば、抑制状態におけるモデルタンパク質(たとえば、GFPまたはeGFP)の発現レベルおよび/または転写速度は、過剰グリセロールによる抑制時に、決定され、モデルタンパク質の発現レベルおよび/または転写速度は、グルコースフィーディングの制限による誘導時の、誘導状態において決定される。
具体的に、誘導比を、抑制状態と対比した誘導状態における、発現レベル(たとえば、GFPまたはeGFP)の比により決定する。pG1−xプロモーターの誘導比は具体的に、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは大きい。具体的な場合において、誘導比は、pG1プロモーターと比較して、少なくとも2倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも6倍、または少なくとも7倍、少なくとも8倍、または少なくとも9倍、または少なくとも10倍増大している。
pG1プロモーター強度と比較した誘導比は、以下の標準的なアッセイにより決定することができる:被験プロモーターの制御下で、eGFPを発現させるメタノール資化酵母(P.pastoris)株を、ウェル1つ当たりの培養物を2mLとして、280rpmで振とうしながら、深型24ウェルプレート内、25℃でスクリーニングする。グルコースフィードビーズ(6mm、Kuhner、CH)を使用して、グルコース制限増殖条件を作出する。細胞を、抑制(YP+1%グリセロール、指数関数的増殖期)および誘導(YP+1つのフィードビーズ、20〜28時間にわたる)時における、eGFPの発現について解析する。
具体的に、pG1−xプロモーターは、抑制解除(誘導)状態において、抑制状態の少なくとも2.5倍、または少なくとも3倍、または少なくとも4倍、少なくとも5倍、または少なくとも6倍、または少なくとも7倍、少なくとも8倍、または少なくとも9倍、または少なくとも10倍のプロモーター活性または強度(たとえば、転写活性または転写強度)を有する。
具体的に、コア調節領域が、配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列を組み込む場合、配列番号2および3の配列を、pG1−xプロモーター配列内に、任意の順序で、好ましくは、互いと近接して、たとえば、配列番号2の配列と配列番号3の配列との間を、10、20、50、または100bp以下として含むことを意味する。
具体的に、配列番号2および/または配列番号3は、1つ以上の転写因子結合性部位(TFBS)を含有する。
具体的に、配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列は、それらの各々または両方の配列が併せて、それぞれの転写因子により認識されて機能的であると考えられる、TFBSまたは少なくともその一部を表す。このような配列番号2または配列番号3のヌクレオチド配列(またはその機能的変異体)は、不可欠であると考えられ、pG1−xプロモーター内に、改変されていない形態で、あるいは少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも85%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、100%以下の配列同一性を伴うその機能的変異体として組み込まれる。
具体的に、pG1−xプロモーターは、配列番号2および配列番号3以外のヌクレオチド配列であって、pG1プロモーター内の対応する領域に対する、少なくとも50%の配列同一性、具体的に、コア調節領域または非コア調節領域における、少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。具体的に、配列番号2および配列番号3以外の任意のヌクレオチド配列である、コア調節領域内のヌクレオチド配列は、pG1プロモーター内の対応する領域に対する、少なくとも少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有する。具体的に、非コア調節領域内のヌクレオチド配列は、pG1プロモーター内の対応する領域に対する、90%未満、または80%未満、または70%未満、または60%未満の配列同一性を有しうる。
具体的に、コア調節領域は、配列番号4のヌクレオチド配列、またはTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の配列同一性を伴う機能的変異体を含むかまたはこれからなる。
具体的に、コア調節領域を、配列番号5、またはTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%、もしくは少なくとも98%の配列同一性を伴う機能的変異体により表される主要調節領域へと組み込む。
具体的に、1つ以上のTFBSは、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2からなる群から選択される転写因子のうちの何れかに対するTFBSである。
具体的に、TFBSは、転写因子であるRgt1および/またはCat8−1および/またはCat8−2により認識される。同じ因子対して変動しうるTFBSは、ある特定のコンセンサス配列を特徴とする。具体的な転写因子は、以下の通りに特定される。
Rgt1は、グルコース応答性の転写活性化因子および抑制因子であり、いくつかのグルコース輸送体(HXT)遺伝子の発現を調節する。メタノール資化酵母(P.pastoris)のRgt1は、配列番号261のアミノ酸配列を特徴とする(図7)。
Cat8−1およびCat8−2は、非発酵性増殖条件下で、様々な遺伝子の抑制解除に必要な、炭素供給源応答エレメントに結合する、亜鉛クラスター転写活性化因子である。メタノール資化酵母(P.pastoris)のCat8−1およびCat8−2は、それぞれ、配列番号262および263のアミノ酸配列を特徴とする(図7)。
具体的に、コア調節領域は、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む。欠失は、1つ以上の点突然変異であってもよく、配列番号2と配列番号3との間に配置される、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つ全てのヌクレオチドを指す。
具体的に、コア調節領域は、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの挿入を含む。挿入は、1つ以上の点突然変異であってもよく、配列番号2と配列番号3との間に配置される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10のヌクレオチドを指す。
具体的に、コア調節領域は、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの置換を含む。置換は、1つ以上の点突然変異であってもよく、配列番号2と配列番号3との間に配置される、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つ全てのヌクレオチドを指す。
pG1−xプロモーターを得るのに、特異的な欠失、挿入、または置換の何れを組み合わせてもよい。
具体的な側面によれば、pG1−xプロモーターは、少なくとも1つの突然変異を含む、元のコア調節領域または機能的変異体である、コア調節領域または主要調節領域の、少なくとも2つのコピーを含む。具体的に、pG1−xプロモーターは、コア調節領域の、少なくとも2つ、3つ、もしくは4つのコピー、および/または主要調節領域の、少なくとも2つ、3つ、もしくは4つのコピーを含んでもよい。
別の具体的な側面によれば、pG1−xプロモーターは、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2からなる群から選択される、1つ以上のTFBSの、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つのコピーを含む。
具体的に、pG1−xプロモーターは、好ましくは、pG1配列の3’側領域、または3’側領域の機能的変異体のうちの、少なくとも280ヌクレオチドを残して、pG1配列の5’端における、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む、改善されたpG1プロモーターの機能的変異体である。
具体的な態様によれば、pG1−xプロモーターは、配列番号12〜29のうちの何れかにより特定される、少なくとも1つまたは少なくとも2つのTモチーフを含む。Tモチーフは具体的に、
a)連続T(チミン)の配列であって、ここで、Tnもしくは(T)n[配列中、好ましくは、n=13〜20であり、好ましくは、Tモチーフは、T14、T15、もしくはT16である]と称する配列;
b)第1の位置におけるA(アデニン)に続く、連続T(チミン)の配列を特徴とする配列であって、ここで、ATnもしくはA(T)n[配列中、好ましくは、n=13〜20、場合によって、好ましくは、n=13〜22]と称する配列;
c)第1の位置におけるT(チミン)および第2の位置におけるA(アデニン)に続く、連続T(チミン)の配列を特徴とする配列であって、ここで、TATnもしくはTA(T)n[配列中、好ましくは、n=13〜20]と称する配列;
d)連続T(チミン)の配列および最後の位置におけるA(アデニン)を特徴とする配列であって、ここで、TnAもしくは(T)nA[配列中、好ましくは、n=13〜20]と称する配列;
e)連続T(チミン)の配列に続く、最後から2番目の位置におけるA(アデニン)、および最後の位置におけるT(チミン)を特徴とする配列であって、ここで、TnATもしくは(T)nAT[配列中、好ましくは、n=13〜20]と称する配列;または
f)A(アデニン)を、T(チミン)で置換した、c)もしくはe)の配列であって、ここで、TTTnもしくはTnTTもしくはT(A/T)TnもしくはT(A/T)(T)n、もしくはTn(A/T)Tもしくは(T)n(A/T)T[配列中、好ましくは、n=13〜20]と称する配列、たとえば、(T)n[配列中、n=15〜22]の配列からなるTモチーフを結果としてもたらす配列
のうちの何れかからなる。
たとえば、プロモーター配列が、TA(T)nモチーフ[配列中、n=13〜20]である1つのTモチーフと、(T)nモチーフ[配列中、n=13〜22]である別のTモチーフとを含むように、上記のa)〜f)下で指定したTモチーフのうちの何れを、1つのプロモーター配列内に組み合わせてもよい。
Tモチーフは任意に、それが、Tモチーフの3’端および/または5’端における、1つ以上の「A」(たとえば、1つ、2つ、または3つのアデニン)と、任意に、さらに「T」(たとえば、1つ、2つ、または3つのチミン)とによる延長であるような延長を含み、この延長を、ここではまた、延長型Tモチーフとも称する。
ここでは、「Tモチーフ」という用語は、延長されているかまたは延長されていないTモチーフを必ず含むものとし、したがって、用語は、具体的に、延長を含まないTモチーフと延長型Tモチーフの両方を含む。
具体的に、Tモチーフは、配列番号12〜29のうちの何れかであるヌクレオチド配列を含むかまたはこれからなる。Tモチーフのうちの任意の1つ、2つ以上は、モチーフの延長を伴って、pG1−xプロモーターへと組み込んでもよく、モチーフの延長を伴わずに、pG1−xプロモーターへと組み込んでもよい。
具体的な一側面によれば、Tモチーフの延長は、その5’端における、「TA」配列の伸長であって、「TAT」5’端を得るための伸長である。
別の具体的な側面によれば、Tモチーフの延長は、その5’端における、「TAA」配列の伸長であって、「TAAT」5’端を得るための伸長である。
別の具体的な側面によれば、Tモチーフの延長は、その3’端における、「AT」配列の伸長であって、「TAT」3’端を得るための伸長である。
別の具体的な側面によれば、Tモチーフの延長は、その3’端における、「AAT」配列の伸長であって、「TAAT」3’端を得るための伸長である。
具体的な側面によれば、Tモチーフは、コア調節領域の上流に配置され、任意に、主要調節領域の上流に配置される。
別の具体的な側面によれば、Tモチーフは、コア調節領域の下流に配置され、任意に、主要調節領域の下流に配置される。
具体的に、pG1−xプロモーターは、翻訳開始部位の少なくとも一部を組み込む、3’末端のヌクレオチド配列を含む。翻訳開始部位は、具体的に、真核生物におけるKozakコンセンサス配列として公知であり、遺伝子の発現を支援するのに適する配列である。
具体的に、翻訳開始部位は、
a)pG1プロモーターに由来し、配列番号6のヌクレオチド配列、もしくは少なくとも90%の配列同一性を伴うその機能的変異体からなるかもしくはこれを含むか;または
b)メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の他の任意のプロモーター、もしくは少なくとも90%の配列同一性を伴うその機能的変異体に由来する。
pG1プロモーターの3’末端領域の代わりに使用される場合もあり、配列番号6のヌクレオチド配列の代わりに使用される場合もある、例示的な代替な3’末端プロモーター領域は、たとえば、以下のプロモーター:pAOX1、pAOX2、pDAS1、pDAS2、pFLD、pGAP、またはpTEF2のうちの何れかから導出される。
具体的な態様によれば、プロモーターは、2000bp以下の長さを有する。具体的なpG1−xプロモーターは、pG1プロモーターより短い長さを有し、たとえば、少なくとも293bpもしくは300bpの長さ、または少なくとも328bp、もしくは少なくとも350bp、もしくは少なくとも400bp、もしくは少なくとも500bpの長さを伴う。
具体的に、pG1−xプロモーターは、pG1プロモーターの断片に由来する配列を含んでもよい。具体的な側面によれば、pG1−xプロモーターは、pG1の親断片の変異体または誘導体であって、配列番号1の、少なくとも3’側領域であり、pG1配列の、少なくとも50%、または60%、または70%、または80%、または少なくとも90%に及ぶ領域を含む変異体または誘導体である。
具体的に、pG1−xのヌクレオチド配列は、5’末端領域の欠失または5’末端領域内の欠失、たとえば、5’端におけるヌクレオチド配列の切断を含んで、3’端〜変動する5’端の範囲を伴う具体的な長さ、たとえば、少なくとも293bpもしくは300bpの長さ、または少なくとも328bp、もしくは少なくとも350bp、もしくは少なくとも400bp、もしくは少なくとも500bpの長さ〜少なくとも1、または少なくとも10、または少なくとも100bpの欠失を含むpG1プロモーター断片の長さのヌクレオチド配列の長さを得る、pG1プロモーターのヌクレオチド配列から導出される。
しかし、プロモーターの長さはまた、たとえば、pG1プロモーターの長さより長い長さ、具体的に、1500bp以下、または2000bp以下の長さを得るように増大させることもできる。具体的に、長さは、範囲:293bp〜1500bp、293bp〜2000bp、328bp〜1500bp、または328〜2000bpののうちの何れかのうちの長さであってもよい。
具体的な側面によれば、本発明は、単離および/または人工pG1−xプロモーターを提供し、それは、
a)配列番号37〜44、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れか;
b)配列番号77〜80、好ましくは、配列番号81〜112のうちの何れか;
c)配列番号113〜114、好ましくは、配列番号115〜130のうちの何れか;
d)配列番号131〜132、好ましくは、配列番号133〜148のうちの何れか;
e)配列番号149〜150、好ましくは、配列番号151〜166のうちの何れか;
f)配列番号167〜168、好ましくは、配列番号169〜184のうちの何れか;
g)配列番号185〜186、好ましくは、配列番号187〜202のうちの何れか;
h)配列番号203〜204、好ましくは、配列番号205〜220のうちの何れか;
i)配列番号221〜222、好ましくは、配列番号223〜238のうちの何れか;
j)配列番号239〜240、好ましくは、配列番号241〜256のうちの何れか;および
k)配列番号32〜36もしくは配列番号257〜259;
のうちの何れかからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはこれらからなる;
または
l)上記a)〜k)のうちの何れかの機能的変異体である、pG1−xプロモーターであって、好ましくは、pG1−xプロモーターが、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは増大させた、プロモーター強度および誘導比を特徴とし、この場合、
・プロモーター強度が、誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大しており、かつ/または
・誘導比が、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大している。
このような、上記a)〜k)のpG1−xプロモーターの機能的変異体は、好ましくは、ここで記載されるpG1プロモーターの機能的変異体について記載される具体的な特色のうちの何れかを特徴とする。
具体的に、上記a)〜k)のpG1−xプロモーターのうちの何れかの機能的変異体、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れかの機能的変異体は、以下の特色:
a)配列が、プロモーター配列の5’端において、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含み、好ましくは、プロモーター配列の3’側領域、または3’側領域の機能的変異体のうちの、少なくとも280ヌクレオチドを残す、上記a)〜k)のpG1−xプロモーターのうちの何れかのプロモーター配列の機能的変異体であって、好ましくは、プロモーター配列の、50、100、150、200、250、または300ヌクレオチドの5’欠失であり、主要調節領域の下流または3’側における任意の配列と併せた、前記主要調節領域までであるがこれを含まない5’欠失を含む機能的変異体であり、主要調節領域が1つより多い場合、プロモーター配列の5’端欠失が、第1または最も5’側の主要調節領域までであるがこれを含まないこと;
b)配列が、1つ以上のTFBSを含み、好ましくは、TFBSが、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2からなる群から選択される転写因子のうちの何れかに対するTFBSであること;
c)コア調節領域が、配列番号4のヌクレオチド配列、または1つ以上のTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体を含むこと;
d)コア調節領域を、配列番号5、またはTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体により表される主要調節領域へと組み込んでいること;
e)コア調節領域が、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含むこと;
f)配列が、コア調節領域または主要調節領域の、少なくとも2つのコピーを含むこと;
g)配列が、配列番号12〜29のうちの何れかにより特定される、少なくとも1つまたは少なくとも2つのTモチーフをさらに含み、好ましくは、Tモチーフが、コア調節領域の上流または下流に配置され、任意に、主要調節領域の上流または下流に配置されること;
h)配列が、翻訳開始部位の少なくとも一部を含む、3’末端のヌクレオチド配列を含むこと;
i)配列を、2000bp以下の長さへと伸長させていること
のうちの1つ以上を特徴とする。
本発明はさらに、単離形態のpG1−xプロモーターも提供する。
具体的に、ここで記載されるpG1−xプロモーター、または相補的配列を含む核酸を含む、単離pG1−xプロモーター核酸が提供される。具体的に、相補的配列は、厳密な条件下で、pG1−xプロモーターとハイブリダイズする配列である。
具体的に、核酸は、対象のタンパク質(POI)をコードするヌクレオチド配列に、作動可能に連結されており、この核酸は、POIをコードするヌクレオチド配列と、天然では会合しない。POIは、具体的に、異種のポリペプチドまたはタンパク質である。
具体的に、ヌクレオチド配列は、POIの分泌を可能とするシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、POIをコードするヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される。
具体的に、シグナルペプチドは、出芽酵母(S.cerevisiae)アルファ−接合因子プレプロペプチドに由来するシグナル配列、ならびにメタノール資化酵母(P.pastoris)の酸性ホスファターゼ遺伝子(PHO1)および細胞外タンパク質X(EPX1)に由来するシグナルペプチドからなる群から選択される(Heiss,S.、V.Puxbaum、C.Gruber、F.Altmann、D.Mattanovich、およびB.Gasser(2015)、Multistep processing of the secretion leader of the extracellular protein Epx1 in Pichia pastoris and implications on protein localization、Microbiology)。
具体的に、POIは、真核生物タンパク質、好ましくは、哺乳動物タンパク質である。
具体的な場合において、POIは、多量体タンパク質、具体的に、二量体または四量体である。
具体的な態様によれば、POIは、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素(process enzyme)、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む、具体的に、本発明のプロモーターの転写制御下で対象の遺伝子を発現させる組換え細胞培養物の細胞代謝物を含む、治療用タンパク質から選択される異種タンパク質である。
具体的なPOIは、抗原結合性分子、たとえば、抗体またはその断片である。具体的なPOIには、抗体、たとえば、モノクローナル抗体(mAb)、免疫グロブリン(Ig:immunoglobulin)または免疫グロブリンクラスG(IgG:immunoglobulin class G)、重鎖抗体(HcAb)、あるいはこれらの断片、たとえば、抗原結合性(Fab:fragment-antigen binding)、Fd、単鎖可変断片(scFv)、あるいは操作されたその変異体、たとえば、Fv二量体(ダイアボディー)、Fv三量体(トリアボディー)、Fv四量体、またはミニボディー、および単一ドメイン抗体、たとえば、VHまたはVHHもしくはV−NARがある。さらなる抗原結合性分子は、(代替的な)足場タンパク質、たとえば、操作されたKunitzドメイン、アドネクチン、アフィボディー、アンチカリン、およびDARPinから選択してもよい。「足場」という用語は、抗原結合性分子を作出するための出発点として用いられる、コンパクトかつ安定的にフォールディングされた、多面型のタンパク質基(サイズ、構造、および由来が異なる)について記載する。抗体(免疫グロブリン)の構造−機能関係から着想された、このような代替的なタンパク質足場は、所与の(生体)分子標的の緊密かつ具体的な認識のために作り変えられうる相互作用部位を支持する、頑健で保存的な構造フレームワークをもたらす。
具体的な態様によれば、発酵産物は、POI、代謝物、またはこれらの誘導体を使用して製造される。
本発明はさらに、ここで記載される核酸を含む発現構築物、好ましくは、自己複製ベクターもしくは自己複製プラスミド、または宿主細胞の染色体DNAへと組み込まれる、ベクターもしくはプラスミドである発現構築物も提供する。
具体的に、発現構築物は、pG1−xプロモーターの転写制御下で、POIをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した前記プロモーターであって、POIのコード配列と天然では会合しないプロモーターを含む。具体的に、発現構築物は、ベクターである。
本発明はさらに、ここで記載される発現構築物を含む組換え宿主細胞、好ましくは、真核細胞、たとえば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、糸状真菌細胞、または植物細胞、好ましくは、酵母細胞または糸状真菌細胞、より好ましくは、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはピキア(Pichia)属の酵母細胞である、組換え宿主細胞も提供する。
具体的に、酵母は、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、アルクスラ(Arxula)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、コマガタエラ(Komagataella)属、好ましくは、メチロトローフ酵母からなる群から選択される。
具体的に好ましい酵母は、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、K.ファフィイ(K.phaffii)、またはK.シュードパストリス(K.pseudopastoris)、たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)株である、CBS704、CBS2612、CBS7435、CBS9173−9189、DSMZ70877、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168のうちの何れかである。
具体的な側面によれば、組換え宿主細胞は、核酸配列の複数コピー、および/または発現構築物の複数コピーを含む。たとえば、組換え細胞は、2コピー、3コピー、4コピー以上(遺伝子コピー数:GCN(gene copy number))を含む。
本発明はさらに、ここで記載される組換え宿主細胞の安定培養物も提供する。
具体的な態様によれば、剰余炭素供給源の存在下で、制限炭素供給源条件と比べて大きな比増殖速度を有する細胞を援用する。
本発明はさらに、ここで記載される組換え宿主細胞系を培養すること(culturing)により、POIを作製する方法であって、
a)前記POIを発現させる条件下で、細胞系を培養する(cultivating)工程と、
b)POIを回収する工程と
を含む方法も提供する。
具体的に、前記方法を、炭素供給源により調節可能なpG1−xプロモーターによる転写制御下で実行するが、この場合、前記pG1−xプロモーターは、pG1プロモーターと比較して、改善されたプロモーター強度および調節可能な特色のうちの少なくとも1つを有する。
具体的な態様によれば、細胞系を、回分、流加、もしくは連続培養条件下で、かつ/または制限炭素基質を含有する培地中で培養する。
具体的に、培養を、バイオリアクター内で、第1の工程としての回分期で始め、第2の工程としての流加期または連続培養期を後続させて実施する。
具体的に、宿主細胞は、高増殖速度期(たとえば、少なくとも50%、もしくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または最大増殖速度まで)において、炭素供給源に富む培地中で増殖させ、POIは、低増殖速度期(たとえば、最大増殖速度の90%未満、好ましくは80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、または40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、または0.2%未満)において、好ましくは、限定最小培地フィーディングにより、たとえば、炭素供給源を制限しながら、作製する。
具体的に、POIは、たとえば、細胞系を、最大増殖速度未満の増殖速度、典型的に、細胞の最大増殖速度の90%未満、好ましくは、80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、または0.2%未満で培養することにより、増殖制限条件下で発現させる。典型的に、最大増殖速度は、具体的な宿主細胞について、個別に決定される。
具体的に、培養法は、
a)基本炭素供給源を使用することでpG1−xプロモーターを抑制する、第1の工程と、これに続く
b)補充炭素供給源を使用しないか、または限定量の補充炭素供給源を使用することでpG1−xプロモーターを抑制解除または誘導して、POIの産生を誘導する第2の工程と
を含む。
具体的に、細胞培養物へと最初に添加された基本炭素供給源を、細胞系が消費するまで、回分期を実施する。溶存酸素(DO)スパイク法を使用して、回分期における基本炭素供給源消費を決定することができる。
具体的な態様によれば、回分期は、酸素分圧(pO2)シグナルの持続的減少を特徴とし、回分期の終点は、pO2の増大を特徴とする。典型的に、回分期において、基本炭素供給源を消費しながら、回分期に典型的である通りに、さらなる炭素供給源を添加しない場合、酸素分圧(pO2)シグナルは、たとえば、65%を下回る、たとえば、30%まで、連続的に減少するであろう。基本炭素供給源を消費したら、pO2は、たとえば、30%を上回る、たとえば、65%以上を上回るまで増大しうることから、フィード培地を使用する流加系へと切り替えて、炭素供給源限定条件下で、さらなる炭素供給源を添加するのに適切な時点が指し示される。
具体的に、回分期中に、pO2を、65%未満または低飽和へと減少させるのに続き、回分の終点では、65%を上回る増大または高飽和をもたらす。具体的に、回分期を、酸素分圧(pO2)シグナルの増大が、65%を上回る飽和、具体的に、70%、75%、80%、または85%の何れかを上回る飽和となるまで実施する。
具体的に、回分期を、約20〜36時間にわたり実施する。
培養時間に関する「約」という用語は、±5%または±10%を意味するものとする。
たとえば、約20〜36時間の具体的な回分実施時間とは、18〜39.6時間、具体的に、19〜37.8時間の持続時間を意味する。
具体的な態様によれば、回分期を、回分培地中、1L当たり40〜50gのグリセロール、具体的に、1L当たり45gのグリセロールを、基本炭素供給源として使用して実施し、培養を、25℃で、約27〜30時間にわたり、もしくは30℃で、約23〜36時間にわたり、または23〜36時間の培養時間中、25℃〜30℃の間の任意の温度で実施する。回分培地中のグリセロール濃度を低下させると、回分期の長さが短くなるのに対し、回分培地中のグリセロールを増大させると、回分期はさらに長くなるであろう。グリセロールに対する代替物として、グルコースを、たとえば、ほぼ同じ量で使用することもできる。
細胞培養およびPOI発現の典型的な系であって、回分期に流加期を後続させる系では、具体的に、流加期中の培養を、約15〜80時間、約15〜70時間、約15〜60時間、約15〜50時間、約15〜45時間、約15〜40時間、約15〜35時間、約15〜30時間、約15〜35時間、約15〜25時間、または約15〜20時間;好ましくは、約20〜40時間のうちの何れかにわたり実施する。具体的に、流加期中の培養を、約80時間、約70時間、約60時間、約55時間、約50時間、約45時間、約40時間、約35時間、約33時間、約30時間、約25時間、約20時間、または約15時間のうちの何れかにわたり実施する。
120時間未満または100時間未満または80時間以下の、任意のこのような流加培養であって、POI産生の成功を結果としてもたらし、これにより、高収量を得る流加培養を、ここでは、「高速発酵」と称する。具体的に、容量特異的な産物形成速度(rP)とは、単位容量(L)および単位時間(h)当たりに形成される産物の量(mg)(mg(L h)-1)である。容量特異的な産物形成速度はまた、空時収量(STY)または容量生産性とも呼ばれる。
具体的に、流加培養を、約30mg(L h)-1(30mg(L h)-1±5%または±10%を意味する)の空時収量を達成するように実施する。具体的に、約30mg(L h)-1の空時収量を、約30時間の流加内に達成し、具体的に、少なくとも27、28、29、30、31、32、または33mg(L h)-1のうちの何れかを、33時間、32時間、31時間、30時間、29時間、28時間、27時間、26時間、または25時間のうちの何れか未満の流加時間内に達成することができる。
具体的に、回分期を、第1の工程a)として実施し、流加期を、第2の工程b)として実施する。
具体的に、第2の工程b)は、増殖制限量の補充炭素供給源を供給して、比増殖速度を、0.04h-1〜0.2h-1の範囲内、好ましくは、0.2、0.15、0.1h-1、または0.15h-1のうちの何れか未満に保つフィード培地を流加期において援用する。
具体的に、回分培養および流加培養の方法は、酵母宿主細胞、たとえば、サッカロミセス(Saccharomyces)属もしくはピキア(Pichia)属もしくはコマガタエラ(Komagataella)属のうちの何れかの酵母、またはピキア(Pichia)属以外の属に由来する酵母、たとえば、K.ラクティス(K.lactis)、Z.ルーキシー(Z.rouxii)、P.スティピティス(P.stipitis)、H.ポリモルファ(H.polymorpha)、もしくはY.リポリティカ(Y.lipolytica)に由来する酵母、好ましくは、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)またはコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)を援用する。具体的に、酵母を、高速発酵において使用する。
具体的に、回分培養および流加培養の方法は、配列番号37〜44のうちの何れか、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れかであるpG1−xプロモーターを援用する。特に、pG1−xプロモーターは、配列番号39、好ましくは、配列番号49により特徴付けられる。
具体的に、POIを、細胞の天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも15%の転写速度で作製する。
具体的な態様によれば、基本炭素供給源は、補充炭素供給源と異なる、たとえば、定量的に、かつ/または定性的に異なる。定量的差違は、プロモーター活性を抑制するかまたはその抑制を解除するのに、異なる条件をもたらしてもよい。
さらなる具体的な態様によれば、基本炭素供給源と、補充炭素供給源とは、同じ種類の分子または炭水化物を、好ましくは、異なる濃度で含む。さらなる具体的な態様によれば、炭素供給源は、2つ以上の異なる炭素供給源の混合物である。
真核細胞培養物のために使用するのに適切である任意の種類の有機炭素を使用してもよい。具体的な態様によれば、炭素供給源は、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースもしくはマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、またはこれらの混合物である。
具体的に好ましい態様によれば、基本炭素供給源は、グルコース、グリセロール、エタノール、またはこれらの混合物、および複合栄養物材料からなる群から選択される。好ましい態様によれば、基本炭素供給源は、グリセロールである。
さらなる具体的な態様によれば、補充炭素供給源は、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースおよびマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、またはこれらの混合物である。好ましい態様によれば、補充炭素供給源は、グルコースである。
具体的に、
a)基本炭素供給源は、グルコース、グリセロール、エタノール、これらの混合物、および複合栄養物材料からなる群から選択され;
b)補充炭素供給源は、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースもしくはマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、または前出のうちの何れかの混合物である。
前記培養工程は、具体的に、前記炭素供給源の存在下で、したがって、前記炭素供給源を含む培養培地中で細胞系を培養すること、またはまた、工程b)の、補充炭素供給源の非存在下でも細胞系を培養することを含む。
抑制解除(または誘導)条件は、特異的な手段により、適切に達成してもよい。第2の工程b)は、任意に、補充炭素供給源を供給しないか、または制限量の補充炭素供給源を供給する、フィード培地を援用する。
具体的に、フィード培地は、化学的に規定され、メタノールを含有しない培地である。
フィード培地は、液体形態で、あるいは他の代替的形態、たとえば、固体、たとえば、錠剤もしくは他の持続的放出手段として、または気体、たとえば、二酸化炭素により、培養培地に添加してもよい。しかし、好ましい態様によれば、細胞培養培地に添加される補充炭素供給源の制限量はなお、ゼロでもよい。好ましくは、制限炭素基質の条件下で、培養培地中の補充炭素供給源の濃度は、0〜1g/L、好ましくは0.6g/L未満、より好ましくは0.3g/L未満、より好ましくは0.1g/L未満、好ましくは1〜50mg/L、より好ましくは1〜10mg/L、具体的に好ましくは1mg/Lであるか、なおまたはこれを下回り、たとえば、適切な標準的なアッセイにおいて測定される、たとえば、増殖しつつある細胞培養物による消費時に、培養培地中の残留濃度として決定される検出限界を下回る。
好ましい方法では、制限量の補充的供給源がもたらす細胞培養物中の残留量は、産生期の終点における発酵培養液中、または、好ましくは、発酵産物の採取時に発酵プロセスのアウトプット中で決定される検出限界を下回る。
具体的に、第2の工程b)は、増殖制限量の補充炭素供給源を供給して、比増殖速度を、0.001h-1〜0.2h-1、好ましくは、0.005h-1〜0.15h-1の範囲内に保つ、フィード培地を援用する。
MatInspectorを使用する、pG1の、炭素供給源と関連するTFBSについての配列解析。pG1(また、PGTH1とも称する)をまず増幅し、−965〜−1位(965bpの長さであり、配列を、図6に提示する(配列番号1、特に、配列番号9を使用した))からクローニングした。番号は、TFBSを指し示し、TFBSを欠失のために選択した(表2に列挙する)。関連するマトリックスファミリーは、F$CSRE(炭素供給源応答エレメント、斜線付きボックス)、F$ADR(酵母代謝調節因子、点描付きボックス)、F$MGCM(単量体Gal4クラスモチーフ、黒色ボックス)およびF$YMIG(酵母GCボックスタンパク質、白色ボックス)である。他のTFBSも、欠失の影響を受ける可能性がある(マトリックスマッチについては詳細情報を、表1に示す)。黒色の破線ボックスは、短縮型pG1変異体をスクリーニングすることにより同定された、pG1の主要調節領域を指し示す。星印は、欠失および突然変異のためにもまた選択される、顕著なTAT(−390〜−374位)モチーフの位置を指し示す。短縮型pG1プロモーター変異体の、代替的な5’側始点を、矢印および対応する変異体の長さで表す。 短縮型pG1プロモーター変異体についてのスクリーニングデータ 抑制的および誘導的な増殖条件において、pG1(クローン#8、検証されたGCNを1とする)または短縮型pG1変異体(2つずつのクローンを、三連で培養し、プレスクリーニングで選択した)の制御下にあるeGFPを発現させるクローンについて、集団の比eGFP蛍光(細胞容量と関連する蛍光)の幾何平均値を示す。非発現野生型のメタノール資化酵母(P.pastoris)細胞を、陰性対照として使用した。試料は、抑制的前培養時、ならびにフィードビーズによる24および48時間にわたる誘導の後に採取した。 TFBS欠失変異体およびTFBS−TAT突然変異体についてのスクリーニングデータ 抑制的および誘導的な増殖条件において、pG1(クローン#8、検証されたGCNを1とする)またはpG1変異体(9つ以下のクローンを、3つのウェル内でプール培養した)の制御下にあるeGFPを発現させるクローンについて、集団の比eGFP蛍光(細胞容量と関連する蛍光)の幾何平均値を示す。野生型のメタノール資化酵母(P.pastoris)細胞を、陰性対照として使用した。 pG1重複変異体についてのスクリーニングデータ 抑制的および誘導的な増殖条件において、pG1(クローン#8、検証されたGCNを1とする)またはpG1変異体(9つ以下のクローンを、3つのウェル内でプール培養し、プレスクリーニングで選択した)の制御下にあるeGFPを発現させるクローンについて、集団の比eGFP蛍光(細胞容量と関連する蛍光)の幾何平均値を示す。野生型のメタノール資化酵母(P.pastoris)細胞を、陰性対照として使用した。 eGFPを発現させるpG1およびpG1変異体の流加培養 相対eGFP蛍光を、プレートリーダーを使用して、バイオリアクター試料(同様のバイオマス密度まで希釈された)から測定し、回分培養(A)および流加培養(B)におけるフィード時間(回分の終点を0とする)にわたり示す。pG1(#8)の制御下においてeGFPを発現させるクローンを、pG1欠失変異体(pG1−Δ2、配列番号211)、TAT突然変異(pG1−T16、配列番号257)、および重複(pG1−D1240)変異体(配列番号49)の制御下において発現させるクローンと比較した。 pG1およびpG1−xプロモーター配列 基準配列 pG1−xプロモーターの配列
(続き)転写因子配列 Rgt1(PAS_chr1−3_0233)(配列番号261) Cat8−2(PAS_chr4_0540)(配列番号262) Cat8−1(PAS_chr1−3_0757)(配列番号263) 先行技術による配列 WO2013050551A1において記載されている、pG1(配列番号264)、pG1a(配列番号265)、pG1b(配列番号266)、pG1c(配列番号267)、pG1d(配列番号268)、pG1e(配列番号269)、またはpG1f(配列番号270) Maurerら(Microbial Cell Factories、2006、5:37)を出典として、(A)標準流加プロトコール、(B)空時収量を最適化した流加プロトコール(「高速発酵」)を使用する、配列番号39の、選択されたpG1−3態様(pG1−D1240(配列番号49))であって、代替的な足場タンパク質を、モデルタンパク質として発現させるpG1−3態様の流加培養。
発明の詳細な説明
本明細書を通して使用される特殊な用語は、以下の意味を有する。
ここで使用される「炭素供給源」という用語であって、「炭素基質」ともまた称する用語は、発酵可能な炭素基質、典型的に、微生物のためのエネルギー供給源として適する炭水化物の供給源、たとえば、宿主生物または産生細胞系による代謝が可能な供給源、特に、単糖、オリゴ糖、多糖、グリセロールを含むアルコールからなる群から選択される供給源であって、精製形態における供給源、最小培地中の供給源、または原料、たとえば、複合栄養物材料により供給される供給源を意味するものとする。炭素供給源は、本発明に従い、単一の炭素供給源として使用してもよく、異なる炭素供給源の混合物として使用してもよい。
「基本炭素供給源」、たとえば、本発明に従い使用される「基本炭素供給源」とは、典型的に、細胞の増殖に適する炭素供給源、たとえば、真核細胞のための栄養物である。基本炭素供給源は、培地、たとえば、基本培地または複合培地により供給してもよいが、また、精製された炭素供給源を含有する、化学的規定培地により供給してもよい。基本炭素供給源は、典型的に、特に、培養プロセスの増殖期において、細胞の増殖をもたらす量、たとえば、1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも5g、好ましくは1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも10g、または1L当たりの細胞乾燥質量少なくとも15gの細胞密度を得る量、たとえば、標準的な継代培養ステップにおいて、90%より大きい生存可能性、好ましくは95%より大きい生存可能性を呈示する量で供給される。
本発明によれば、基本炭素供給源は、典型的に、たとえば、大きな比増殖速度による細胞系の培養時において、たとえば、回分または流加培養プロセス中の細胞系の増殖期において、バイオマスを増大させるエネルギーをもたらす過剰として理解される、過剰または剰余量で使用する。この剰余量は特に、補充炭素供給源(増殖制限条件下で使用される)の制限量を超えて、発酵培養液中の残留濃度であって、測定可能であり、典型的に、制限量の補充炭素供給源をフィードするときの、少なくとも10倍、好ましくは、少なくとも50倍、または少なくとも100倍である残留濃度を達成する。
「補充炭素供給源」、たとえば、本発明に従い使用される「補充炭素供給源」とは、典型的に、特に、培養プロセスの産生期において、産生細胞系による発酵産物の産生を容易とする、補充基質である。産生期は具体的に、たとえば、回分、流加、および連続培養プロセスにおいて、増殖期に後続する。補充炭素供給源は具体的に、流加プロセスのフィード中に含有させてもよい。補充炭素供給源は、典型的に、炭素基質制限条件下の細胞培養物中、すなわち、制限量の炭素供給源を使用する細胞培養物中で援用する。
「制限量」の炭素供給源または「制限炭素供給源」とは、ここでは、特に、最大増殖速度未満の、制御された増殖速度による培養プロセスにおいて、産生細胞系による発酵産物の産生を容易とする、炭素基質の種類および量を具体的に指すと理解される。産生期は具体的に、たとえば、回分、流加、および連続培養プロセスにおいて、増殖期に後続する。細胞培養プロセスは、回分培養物、連続培養物、および流加培養物を援用してもよい。回分培養とは、少量の種培養溶液を、培地に添加し、培養時において、さらなる培地を添加したり、培養溶液を排出したりせずに、細胞を増殖させる培養プロセスである。連続培養とは、培養時において、培地を連続的に添加および排出する培養プロセスである。連続培養はまた、潅流培養も含む。回分培養と連続培養の中間であり、また、半回分培養とも称する流加培養はとは、培養時において、培地を連続的または逐次的に添加するが、連続培養と異なり、培養溶液を連続的には排出しない培養プロセスである。
具体的に、増殖制限栄養物基質の、培養物へのフィーディングに基づく、流加プロセスが好ましい。単回流加または反復流加発酵を含む流加戦略は典型的に、バイオインダストリープロセスにおいて、バイオリアクター内の高細胞密度に到達するように使用する。炭素基質の制御された添加は、培養物の増殖速度に直接影響を及ぼし、オーバーフロー代謝または望ましくない代謝副産物の形成を回避する一助となる。炭素供給源制限条件下では、炭素供給源は具体的に、流加プロセスのフィード中に含有されていてもよい。これにより、炭素基質を、制限量で供給する。
ここで記載されるケモスタットまたは連続培養ではまた、増殖速度も、緊密に制御することができる。
炭素供給源の制限量とは、ここでは特に、産生細胞系を、増殖制限条件下、たとえば、産生期または産生方式に保つのに必要な炭素供給源の量として理解される。このような制限量を、炭素供給源がフィード培地中に含有され、持続的なエネルギー送達のための小さなフィード速度で培養物に供給される、流加プロセスにおいて援用して、たとえば、バイオマスを、小さな比増殖速度に保ちながら、POIを作製してもよい。フィード培地は典型的に、細胞培養物の産生期において、発酵培養液に添加する。
炭素供給源の制限量は、たとえば、所定の閾値を下回るか、なおまたは標準的な(炭水化物)アッセイにおいて測定される検出限界を下回る、細胞培養液内の炭素供給源の残留量により決定してもよい。残留量は典型的に、発酵産物を回収するときに、発酵培養液中で決定されるであろう。
炭素供給源の制限量はまた、炭素供給源の、発酵槽への、培養時間当たりの平均フィード速度であって、たとえば、時間当たりで計算される平均量を決定するように、全培養プロセス、たとえば、流加期にわたり添加される量により決定される、平均フィード速度を規定することにより決定してもよい。この平均フィード速度は、細胞培養物による補充炭素供給源の完全な使用を確認するように、小さく、たとえば、0.6g L-1-1(時間1h当たりに初期発酵容量1L当たりの炭素供給源g)〜25g L-1-1、好ましくは1.6g L-1-1〜20g L-1-1に保つ。
炭素供給源の制限量はまた、比増殖速度を測定することにより決定してもよく、この比増殖速度は、産生期において、小さく、たとえば、最大比増殖速度より小さく、たとえば、所定の範囲内、たとえば、0.001h-1〜0.20h-1、または0.005h-1〜0.20h-1、好ましくは0.01h-1〜0.15h-1の範囲内に保つ。
具体的に、化学的に規定され、メタノールを含有しない、フィード培地を使用する。
細胞培養培地、たとえば、最小培地または流加プロセスにおけるフィード培地に関する「化学的に規定された」という用語は、in vitroにおける産生細胞系の細胞培養に適する培養培地であって、化学的成分および(ポリ)ペプチドの全てが公知の培養培地を意味するものとする。典型的に、化学的規定培地は、動物に由来する成分を全く含まず、純粋で一貫した細胞培養環境を表す。
ここで使用される「細胞系」という用語は、長期にわたり増殖する能力を獲得した、特定の細胞型の確立されたクローンを指す。「宿主細胞系」という用語は、内因性もしくは組換え遺伝子または代謝経路の産物を発現させて、ポリペプチドまたはこのようなポリペプチドにより媒介される細胞代謝物を作製するために使用される細胞系を指す。「産生宿主細胞系」または「産生細胞系」とは、産生過程の産物、たとえば、POIを得るバイオリアクター内の培養のために使用しやすい細胞系であると一般に理解される。「真核生物宿主」または「真核細胞系」という用語は、POIまたは宿主細胞代謝物を作製するのに培養してもよい、任意の真核細胞または生物を意味するものとする。用語はヒトを含まないことがよく理解される。
宿主細胞系に関して、「発酵」ともまた称する、「細胞培養物」または「培養」という用語は、人工的な、たとえば、in vitroの環境における、活動または休眠状態にある細胞の増殖、分化、または生存力の持続に好適な条件下における、具体的に、業界で公知の方法に従う制御されたバイオリアクター内の細胞の維持を意味する。
本発明の培養培地を使用して、細胞培養物を培養する場合は、細胞培養物を、細胞培養物の培養を支援するのに適する条件下で、培養槽内の培地または基質と接触させる。ある種の態様では、ここで記載される培養培地を、当技術分野で周知の標準的な細胞培養法に従い、細胞を培養するのに使用する。本発明の多様な側面では、真核細胞、具体的に、酵母または糸状菌を増殖させるために使用されうる培養培地が提供される。
細胞培養培地は、細胞を維持し、制御された人工的なin vitro環境で増殖させるのに必要な栄養物を供給する。細胞培養培地の特徴および組成は、特定の細胞要件に応じて変化する。重要なパラメータは、浸透圧、pH、および栄養物処方を含む。栄養物のフィーディングは、当技術分野で公知の方法に従い、連続方式で施してもよく、非連続方式で施してもよい。本発明に従い使用される培養培地は、組換えタンパク質を作製するのに特に有用である。
回分プロセスが、発酵時においてさらなる栄養物のさらなる供給を伴わずに、細胞を培養するために必要な全ての栄養物が、初期培養培地中に含有された培養方式であるのに対し、回分期の後の流加プロセスでは、フィーディングにより、1つ以上の栄養物を培養物に供給するフィーディング期が施される。栄養物フィーディングの目的は、バイオマスの量を増大させて、組換えタンパク質の量もまた増大させることである。大半の培養プロセスでは、フィーディングの方式は、肝要かつ重要であるが、本発明のプロモーターを援用する本発明は、何らかの培養方式に関して制約を受けない。
ある種の態様では、本発明の方法は、流加プロセスである。具体的に、所望の組換えPOIをコードする核酸構築物で形質転換された宿主細胞を、増殖期培地中で培養し、産生期培地に移して、所望の組換えPOIを作製する。
別の態様では、本発明の宿主細胞を、連続方式で、たとえば、ケモスタットにより培養する。連続発酵プロセスは、新鮮な培養培地の、バイオリアクターへの、規定の一定で連続的なフィーディング速度により特徴づけられ、同じ規定の一定で連続的な除去速度で、培養液を、バイオリアクターから同時に除去する。培養培地、フィーディング速度、および除去速度を、同じ一定のレベルで保つことにより、バイオリアクター内の培養パラメータおよび条件は、一定を維持する。
ここで記載される安定的細胞培養物とは、遺伝特性を維持する、具体的に、POI産生レベルを高く、たとえば、約20世代、好ましくは、少なくとも30世代、より好ましくは、少なくとも40世代、最も好ましくは少なくとも50世代にわたる培養の後でもなお、少なくともμgレベルに保つ細胞培養物を指すと具体的に理解される。具体的に、産業スケールの作製のために使用される場合に大きな利点と考えられる、安定的組換え宿主細胞系が提供される。
本発明の細胞培養物は、たとえば、栄養物のフィーディング、特に、流加もしくは回分プロセス、または連続もしくは半連続プロセス(たとえば、ケモスタット)に基づく培養方式と組み合わせた、容量と技法システムの両方に関して、産業的生産スケールでの方法に特に有利である。
「発現」または「発現系」または「発現カセット」という用語は、これらの配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主が、コードされるタンパク質または宿主細胞代謝物を産生することが可能であるように、所望のコード配列および制御配列を、作動的連結内に含有する核酸分子を指す。形質転換を実行するために、発現系をベクター内に組み入れてもよいが、また、関与性のDNAを、宿主染色体に組み込んでもよい。発現は、ポリペプチドまたは代謝物を含む、分泌発現産物を指してもよく、非分泌発現産物を指してもよい。
ここで使用される「発現構築物」または「ベクター」または「プラスミド」は、適切な宿主生物における、クローニングされた組換えヌクレオチド配列、すなわち、組換え遺伝子の転写、およびそれらのmRNAの翻訳に要請されるDNA配列と定義される。発現ベクターまたはプラスミドは通例、宿主細胞内の自律的複製のための起点、選択マーカー(たとえば、アミノ酸合成遺伝子または抗生剤、たとえば、ゼオシン、カナマイシン、G418、もしくはハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子)、多数の制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列、および転写ターミネーターを含み、これらの成分は、併せて作動可能に連結される。ここで使用される「プラスミド」および「ベクター」という用語は、自己複製型ヌクレオチド配列のほか、ゲノム組込み型ヌクレオチド配列も含む。
本発明の発現構築物は、本発明のプロモーターであって、前記プロモーターの転写制御下で、POIをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを具体的に含み、このプロモーターは、POIのコード配列と天然では会合しない。
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列またはタンパク質に関してここで使用される「異種」という用語は、所与の宿主細胞に対して外来である、すなわち、「外因性」である、たとえば、天然で見出されない化合物、または所与の宿主細胞内に天然で見出される、たとえば、「内因性」であるが、異種構築物の文脈において、たとえば、異種核酸を援用する化合物の何れかを指す。内因的に見出される異種ヌクレオチド配列はまた、非天然の、たとえば、細胞内で予測される量より大きい量、または細胞内に天然で見出される量より大きい量で作製してもよい。異種ヌクレオチド配列または異種ヌクレオチド配列を含む核酸はおそらく、内因性ヌクレオチド配列と配列が異なるが、内因的に見出される同じタンパク質をコードする。具体的に、異種ヌクレオチド配列とは、天然で宿主細胞と同じ関係では見出されないヌクレオチド配列である。任意の組換えまたは人工ヌクレオチド配列は、異種であると理解される。異種ポリヌクレオチドの例は、本発明に従うプロモーターと天然では会合しないヌクレオチド配列、たとえば、ここで記載される通り、ハイブリッド体のプロモーターを得るヌクレオチド配列、またはコード配列に作動可能に連結されたヌクレオチド配列である。結果として、ハイブリッド体またはキメラ体のポリヌクレオチドを得てもよい。異種化合物のさらなる例は、内因性で自然発生のPOIコード配列が通常は、作動可能に連結されない、転写制御エレメント、たとえば、本発明のプロモーターに作動可能に連結された、POIをコードするポリヌクレオチドである。
本発明の文脈においてここで使用される「変異体」という用語は、同等な親配列に対する、特異的な配列同一性または相同性を伴う、任意の配列を指すものとする。変異体とは、具体的に、親配列から、たとえば、サイズの変化、たとえば、(末端または非末端の、たとえば、「中間の(interstitional)」、すなわち、ヌクレオチド配列内の欠失または挿入を伴う)伸長または断片化、突然変異、ハイブリダイゼーション(配列の組合せを含む)を介して導出された、任意の配列である。
ここで記載されるpG1−xプロモーターは、具体的に、天然(野生型)pG1プロモーターの人工変異体である。天然構造に対するある程度の配列同一性は認められるが、たとえば、具体的に、単離された核酸配列、アミノ酸配列、発現構築物、形質転換された宿主細胞、および組換えタンパク質を指す、本発明の材料、方法、および使用は、「人造」または合成であり、したがって、「自然法則」の結果としては考えられないことが十分に理解される。
ここで「pG1−xプロモーター」と称するプロモーターは、pG1プロモーターの変異体であり、そのヌクレオチド配列は、変異体を作製するための「親」配列として使用される、pG1プロモーターの突然変異誘発により作製することができる。pG1−xプロモーターは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5の、2つ、3つ、4つ以上のコピーを含むプロモーターを含む。
一連のpG1−xプロモーターは、たとえば、図6bで例示される配列のうちの何れか、特に、以下の配列:
a)配列番号37〜44、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れか;
b)配列番号77〜80、好ましくは、配列番号81〜112のうちの何れか;
c)配列番号113〜114、好ましくは、配列番号115〜130のうちの何れか;
d)配列番号131〜132、好ましくは、配列番号133〜148のうちの何れか;
e)配列番号149〜150、好ましくは、配列番号151〜166のうちの何れか;
f)配列番号167〜168、好ましくは、配列番号169〜184のうちの何れか;
g)配列番号185〜186、好ましくは、配列番号187〜202のうちの何れか;
h)配列番号203〜204、好ましくは、配列番号205〜220のうちの何れか;
i)配列番号221〜222、好ましくは、配列番号223〜238のうちの何れか;
j)配列番号239〜240、好ましくは、配列番号241〜256のうちの何れか;および
k)配列番号32〜36または配列番号257〜259
のうちの何れかを含むかまたはこれらからなるプロモーターにより例示される。
pG1−xプロモーターはまた、配列番号37〜配列番号202のうちの何れか1つの3’断片であって、5’末端〜最初または5’側の主要調節領域の一部または全部を欠失させた3’断片;好ましくは、配列番号37〜配列番号202のうちの何れか1つの5’末端の、50、100、150、200、250、300、320、または325以下のヌクレオチドを欠失させた3’断片も含む。
pG1−xプロモーターは、pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは増大させた、プロモーター強度および誘導比であって、
・プロモーター強度が、誘導状態において、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大しており、かつ/または
・誘導比が、pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大している
プロモーター強度および誘導比を有することを特徴とする。
特に、プロモーターの不可欠なエレメントおよび機能を維持するか、なおまたは改善するように、たとえば、図6bの、例示されるpG1−xプロモーター、またはサイズ変異体、特に、その伸長変異体または断片を、ある特定の領域の突然変異誘発により変異体を作製するための「親」配列として使用して、さらなるpG1−x変異体も作製可能である。pG1−xプロモーター変異体は、たとえば、組換え細胞系内のプロモーターとしての使用に適する配列を作製するための突然変異誘発により、例示されるpG1−xプロモーター配列のうちの何れかから導出してもよい。このような変異体プロモーターは、規定の特性を伴うライブラリーメンバーを選択することにより、突然変異体配列のライブラリーから得てもよい。変異体プロモーターは、同じ特性を有してもよく、なおまたは改善された特性、たとえば、抑制および抑制解除条件下における示差的効果(特に、誘導比)を増大させて、プロモーター強度、POI産生の誘導が改善された特性を有してもよい。変異体プロモーターはまた、類似の配列に由来するヌクレオチド配列、たとえば、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)以外の真核生物種、またはピキア(Pichia)属以外の属、たとえば、K.ラクティス(K.lactis)、Z.ルーキシー(Z.rouxii)、P.スティピティス(P.stipitis)、H.ポリモルファ(H.polymorpha)に由来するヌクレオチド配列も含んでよい。
たとえば、ここで記載されるpG1−xプロモーターもしくはpG1−xプロモーターの変異体、またはpG1プロモーターの変異体である、プロモーターの変異体に関してここで使用される「機能的に活性な」という用語は、突然変異誘発、具体的に、配列内または配列の遠位端の一方もしくは両方における、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換による親配列の改変であって、この配列の活性に影響を及ぼさない(特に、これを損なわない)改変の結果として得られる変異体配列を意味する。ここで記載されるpG1−xプロモーターに関して、機能および活性は、具体的に、プロモーターの活性および強度のほか、誘導比によっても特徴づけられる。
ここで記載される、機能的に活性なプロモーター変異体は、具体的に、pG1プロモーターと実質的に同じ(±10%、または±5%)であるか、なおまたはこれより大きいプロモーター活性を呈示することを特徴とする。
ここで記載される、機能的に活性なプロモーター変異体は、具体的に、pG1プロモーターとたとえば、実質的に同じ誘導比(±10%、または±5%)、なおまたはこれより大きい誘導比により測定される、実質的に同じ調節特性を呈示することを特徴とする。
ここで使用される「プロモーター」という用語は、コード配列または機能的なRNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。プロモーター活性は、その転写効率により評価してもよい。これは、プロモーターによるmRNAの転写量を、たとえば、ノーザンブロット法を介して測定することにより直接的に決定してもよく、プロモーターにより発現した遺伝子産物の量を測定することにより間接的に決定してもよい。
ここで記載されるpG1−xプロモーターは具体的に、コードDNAの発現を誘発するか、調節するか、または他の方法で媒介もしくは制御する。プロモーターDNAとコードDNAは、同じ遺伝子に由来してもよく、異なる遺伝子に由来してもよく、同じ生物に由来してもよく、異なる生物に由来してもよい。
ここで記載されるpG1−xプロモーターは、具体的に、調節可能なプロモーター、特に、炭素供給源により調節可能なプロモーターであって、抑制および誘導状態でプロモーター強度が異なる、調節可能なプロモーターとして理解される。
本発明のプロモーターの強度は、そのプロモーターにおいて高頻度または低頻度で生じる転写誘発の効率により表される、その転写強度に具体的に関する。転写強度が大きいほど、そのプロモーターにおいて生じる転写頻度は大きくなる。プロモーター強度は、それにより、どのくらいの頻度で所与のmRNA配列が転写されるのかが決定され、いくつかの遺伝子に対して、他の遺伝子を上回る大きな転写の優先性が効果的に与えられ、大きな転写物濃度がもたらされるために重要である。大量に要請されるタンパク質をコードする遺伝子は、たとえば、典型的に、比較的強力なプロモーターを有する。RNAポリメラーゼに実施しうる転写タスクは、一度に1つだけなので、その仕事が効率的となるように優先されなければならない。プロモーター強度の差違は、この優先を可能とするように選択される。
本発明によれば、調節可能なプロモーターは、活性をほぼ最大とする状態として典型的に理解される完全誘導状態において、比較的強力である。
相対強度は一般に、同等なプロモーター、たとえば、pG1プロモーター、または標準的なプロモーター、たとえば、宿主細胞として使用される細胞の、それぞれのpGAPプロモーターに関して決定される。転写頻度は一般に、たとえば、適切なアッセイ、たとえば、RT−PCRまたはノーザンブロット法における転写物の量により決定される転写速度として理解される。たとえば、本発明に従うプロモーターの転写強度は、メタノール資化酵母(P.pastoris)である宿主細胞内で決定され、メタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターと比較される。
対象の遺伝子を発現させるプロモーターの強度は一般に、発現強度または高発現レベル/速度を支援する能力として理解される。たとえば、本発明のプロモーターの発現および/または転写強度は、メタノール資化酵母(P.pastoris)である宿主細胞内で決定され、メタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターと比較される。
pGAPプロモーターを、基準物質(標準物質)として援用する比較転写強度は、標準的手段、たとえば、転写物の数量を測定すること、たとえば、細胞培養物中で、マイクロアレイ、または他の手段を援用すること、たとえば、組換え細胞内のそれぞれの遺伝子発現産物の数量を測定することにより決定してもよい。例示的な試験については、実施例節において例示する。
特に、転写速度は、マイクロアレイ上の転写強度により決定してもよく、定量的リアルタイムPCR(qRT−PCR)で決定してもよく、この場合、マイクロアレイまたはqRT−PCRデータにより、増殖速度の大きな条件と増殖速度の小さな条件の間、または異なる培地組成を援用する条件の間の発現レベルの差違、および天然pGAPプロモーターと比較して大きなシグナル強度が示される。
発現速度は、たとえば、レポーター遺伝子、たとえば、eGFPの発現量により決定してもよい。
ここで記載されるpG1−xプロモーターは、宿主細胞内の、場合によって、「相同なpGAPプロモーター」と呼ばれる天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも15%の転写速度または転写強度により反映される、比較的大きな転写強度をもたらす。好ましくは、転写速度または強度は、たとえば、POIを作製するための宿主細胞として選択された真核細胞内で決定された天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも20%、具体的に好ましい場合には、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、および少なくとも100%、なおまたはこれより大きい、たとえば、少なくとも150%または少なくとも200%である。
天然pGAPプロモーターは、典型的に、大半の生物中に存在する構成的プロモーターである、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をコードする、gap遺伝子の発現を誘発する。解糖および糖新生の鍵となる酵素である、GAPDH(EC 1\2\1\12)は、異化および同化による炭水化物代謝において、死活的な役割を果たす。
天然pGAPプロモーターは具体的に、組換え真核細胞においても、同じ種または株の天然真核細胞(修飾されていない(非組換え)または組換え真核細胞を含む)の中と同じ態様で活性である。このような天然pGAPプロモーターは一般に、内因性プロモーターであり、したがって、真核細胞と同種であると理解されており、比較を目的とする基準(standardまたはreference)プロモーターとして用いられている。
たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターは、たとえば、図13に示される配列:メタノール資化酵母(P.pastoris)(GS115)の天然pGAPプロモーター配列(配列番号260)を有する、メタノール資化酵母(P.pastoris)内でGAPDHの発現を制御するのに使用される、メタノール資化酵母(P.pastoris)内の改変されていない内因性のプロモーター配列である。メタノール資化酵母(P.pastoris)を、本発明に従いPOIを作製するための宿主として使用する場合、本発明に従うプロモーターの転写強度または速度を、このようなメタノール資化酵母(P.pastoris)の天然pGAPプロモーターと比較する。
別の例として、出芽酵母(S.cerevisiae)の天然pGAPプロモーターは、出芽酵母(S.cerevisiae)内でGAPDHの発現を制御するのに使用される通り、出芽酵母(S.cerevisiae)内の、改変されていない内因性のプロモーター配列である。出芽酵母(S.cerevisiae)を、本発明に従いPOIを作製するための宿主として使用する場合、本発明に従うプロモーターの転写強度または速度を、このような出芽酵母(S.cerevisiae)の天然pGAPプロモーターと比較する。
したがって、本発明に従うプロモーターの相対発現または転写強度は通例、POIを作製するための宿主として使用される同じ種または株の細胞の、天然pGAPプロモーターと比較する。
pG1−xプロモーターまたはpG1プロモーターに関してここで使用される「調節可能な」という用語は、回分培養の増殖期に、過剰量の炭素供給源(栄養物または基本基質)の存在下で、真核細胞内で抑制され、産生細胞系の産生期の、たとえば、炭素量の低減時、たとえば、流加戦略に従い、増殖制限炭素供給源(栄養物または補充基質)を、培養物へとフィードするときに、強いプロモーター活性をもたらすように抑制解除されるプロモーターを指すものとする。この点で、「調節可能な」という用語は、炭素の消費、低減、欠如もしくは枯渇、または細胞によりたやすく消費されるように制限された炭素供給源の添加による、プロモーターの抑制解除を指す、「炭素供給源制限により調節可能な」または「グルコース制限により調節可能な」として理解される。
ここで記載される、機能的に活性なpG1−xプロモーターは、比較的強力な、調節可能なプロモーターであって、細胞増殖条件下(増殖期)で、サイレンシングまたは抑制され、産生条件下(産生期)で、活性化または抑制解除され、したがって、制限炭素供給源により、産生細胞系内のPOI産生を誘導するのに適するプロモーターである。
具体的に、ここで記載されるプロモーターは、炭素供給源により調節可能であり、グルコースの存在下およびグルコース制限下でその強度を比較する試験において決定される、示差的なプロモーター強度を伴い、比較的大きなグルコース濃度、好ましくは、少なくとも1L当たり10g、好ましくは、少なくとも1L当たり20gの濃度で、やはり抑制されることを示す。具体的に、本発明に従うプロモーターは、プロモーターを完全に誘導する、制限グルコース濃度およびグルコース閾値濃度で完全に誘導され、この閾値は、1L当たり20g未満、好ましくは、1L当たり10g未満、1L当たり1g未満、さらに、1L当たり0.1g未満、または1L当たり50mg未満であり、好ましくは、完全転写強度が、たとえば、1L当たり40mg未満のグルコース濃度で、天然の相同pGAPプロモーターの少なくとも50%である。
好ましくは、誘導比とは、規定の炭素供給源閾値を下回る誘導条件へと切り替えたときの、POI産生の開始により決定され、抑制状態での強度と比較される、示差的なプロモーター強度として理解される。転写強度とは一般に、完全誘導状態での強度、すなわち、抑制解除条件下における最大に近い活性を示す強度として理解される。示差的なプロモーター強度は、たとえば、抑制解除条件下における組換え宿主細胞系内のPOI産生の、抑制条件と比較した効率または収量に従い、または、そうでなければ、転写物の量により決定される。本発明に従う調節可能なプロモーターは、好ましくは、抑制解除状態で、抑制状態と比較して、少なくとも2倍、より好ましくは、少なくとも5倍、なおより好ましくは、少なくとも10倍、より好ましくは、少なくとも20倍、より好ましくは、少なくとも30、40、50、または100倍である、示差的なプロモーター強度を有し、また、誘導倍数としても理解される。
変異体の、親配列と比較した「配列同一性」という用語は、2つ以上のヌクレオチド配列が、対応する位置において、ある程度、最大で100%に近い程度同じであるかまたは保存的な塩基対を有するという意味における、同一性(または相同性)の程度を指し示す。相同な配列は、典型的に、少なくとも約50%のヌクレオチド配列同一性、好ましくは、少なくとも約60%の同一性、より好ましくは、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約80%の同一性、より好ましくは、少なくとも約90%の同一性、より好ましくは、少なくとも約95%の同一性を有する。
たとえば、プロモーターまたは遺伝子のヌクレオチド配列に関する「同一性パーセント(%)」とは、配列決定し、必要な場合、ギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを達成し、任意の保存的置換は配列同一性の部分と考えずにおいた後で、DNA配列内のヌクレオチドと同一である、候補DNA配列内のヌクレオチドの百分率と定義される。ヌクレオチド配列同一性パーセントの決定を目的とするアライメントは、当技術分野の範囲内にある多様な態様で、たとえば、市販のコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するのに適するパラメータを決定することができる。本発明の目的では、blastnを以下の例示的なパラメータ:Word Size:11;Expect value:10;Gap cost:Existence=5、Extension=2;Filter=low complexity activated;Match/Mismatch Score:2,−3;Filter String:L;mに設定した、NCBI BLASTプログラムのバージョン2.2.29(2014年1月6日)を使用して、2つのヌクレオチド配列の間の配列同一性を決定する。
本発明の文脈において使用される「突然変異誘発」という用語は、たとえば、1つ以上のヌクレオチドの挿入、欠失、および/または置換により、ヌクレオチド配列の突然変異体をもたらして、非コードまたはコード領域内に少なくとも1か所の変化を伴う、その変異体を得る方法を指すものとする。突然変異誘発は、ランダム突然変異、半ランダム突然変異、または部位指向突然変異を介してもよい。具体的なpG1−xプロモーター変異体は、pG1ヌクレオチド配列を親配列として使用する突然変異誘発法により、pG1プロモーター配列から導出される。このような突然変異誘発法は、核酸を操作する方法、またはpG1プロモーターの配列情報を鋳型として使用して、ヌクレオチド配列をデノボで合成する方法を包含する。具体的な突然変異誘発法は、合理的なプロモーター操作を適用する。
pG1−xプロモーターは、pG1プロモーターの突然変異誘発により作製してもよく、標準的な技法を援用して、ここで記載されるpG1−xプロモーターの変異体であって、機能的に活性な変異体を含む変異体も、さらに作製してもよい。プロモーターは、たとえば、発現レベルおよび調節可能な特性を変更したプロモーター変異体を作出するように改変してもよい。たとえば、プロモーターライブラリーは、選択されたプロモーター配列の突然変異誘発により調製してもよく、これを親分子として使用して、たとえば、異なる発酵戦略下におけるそれらの発現について変異体を解析し、適切な変異体を選択することにより、真核細胞内の遺伝子発現を微調整してもよい。変異体の合成ライブラリーを使用して、たとえば、選択されたPOIを作製するための要件に合致するプロモーターを選択してもよい。このような変異体は、真核宿主細胞内の発現効率を増大させ、炭素供給源に富む条件下およびこれを制限する条件下で示差的な発現を示しうる。典型的に、大型のランダム化遺伝子ライブラリーであって、遺伝子の多様性が大きく、具体的に、所望の遺伝子型または表現型に従い選択されうる遺伝子ライブラリーを作製する。
ここで記載される好ましいpG1−xプロモーターのうちの一部は、pG1プロモーターのサイズ変異体であり、プロモーターのある特定のエレメントもしくは領域の、1つより多いコピーを含むか、またはpG1プロモーターの1つ以上の(同じまたは異なる)断片を含む。
具体的な突然変異誘発法は、配列内の、1つ以上のヌクレオチドの点突然変異、特に、タンデム点突然変異であって、たとえば、プロモーターのヌクレオチド配列内の、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、なおこれ以上の連続ヌクレオチドを変化させる点突然変異をもたらす。このような突然変異は、典型的に、1つ以上のヌクレオチドのうちの、少なくとも1つの欠失、挿入、および/または置換である。プロモーター配列は、遠位端、特に、5’側領域内で突然変異させてもよいが、これは、ヌクレオチド配列のうちの50%以下に当たり、プロモーター活性を実質的に失わない限りにおいて、高度に可変性であってもよい。プロモーター配列は、具体的に、主要調節領域内で突然変異させうるが、pG1の親主要調節領域に対する配列同一性が大きく、特に、親コア調節領域に対する配列同一性が大きく、たとえば、少なくとも80%であることが好ましい。主要調節領域内であるが、コア調節領域外では、配列の可変性は、80%未満の配列同一性を得る程度に大きくてもよい。
コア調節領域は、具体的に、転写因子結合性部位(TFBS)を表す、配列番号2および配列番号3と、配列番号2と、配列番号3との中間の領域とを組み込む。
配列番号2として特定されるヌクレオチド配列は、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2により認識されるTFBSの少なくとも一部を含む。
配列番号3として特定されるヌクレオチド配列は、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2により認識されるTFBSの少なくとも一部を含む。
具体的に、配列番号2と配列番号3との間のヌクレオチド配列(中間の配列)は、非相同配列(たとえば、配列同一性を50%未満とする)へと突然変異させてもよく、なおまたは欠失させてもよい。
配列番号2および配列番号3内の任意の突然変異は、具体的に、保存的である、すなわち、たとえば、それぞれの転写因子による認識を維持する(または改善する)ように保存的である。このような保存的な突然変異体を操作するとき、配列番号2および/または配列番号3のヌクレオチド配列内の配列同一性は、少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%である。
主要調節領域は、配列番号5により特定されるヌクレオチド配列を含むかまたはこれからなる。このような領域は、コア調節領域と、pG1プロモーターの必須エレメントを含み、ここで記載されるpG1−xプロモーターを作製するのに、ある程度突然変異させてもよい、さらなる非コア調節領域とを含む。
部位指向突然変異誘発の具体的領域は、たとえば、pG1またはpG1−xプロモーターの非コア調節領域(主要調節領域の内部または外部)である。しかし、具体的な突然変異体はまた、プロモーター機能を維持するように、ある程度の配列同一性を保つ限りにおいて、プロモーターのコア調節領域を指向する突然変異誘発法により調製してもよい。さらに具体的な領域は、主要調節領域の外部または内部である。具体的に、プロモーターは、たとえば、pG1プロモーターのコア調節領域および1つ以上の領域、または代替的な(天然または人工)プロモーター、たとえば、pG1プロモーター以外の任意のプロモーターであって、pG1プロモーターの翻訳開始部位を置換するのに使用しうるプロモーターである、プロモーターの3’側領域(具体的に、末端の少なくとも10ヌクレオチドまたは末端の少なくとも15ヌクレオチドを含む3’端)における翻訳開始部位を含む、ハイブリッド体のヌクレオチド配列を含んでもよい。
具体的な突然変異は、pG1プロモーターの、選択された領域(またはモチーフ)、たとえば、Tモチーフまたは延長型Tモチーフの重複を指す。このような選択されたモチーフは、モチーフの一方もしくは両方の遠位端、またはモチーフ内において、さらなるヌクレオチドにより伸長させてもよく、短縮してもよい。天然pG1配列は、ヌクレオチド「T」に続く、「A」に続く、T15からなる、TATモチーフ(配列番号14)を含む。このようなTATモチーフである、5’−TATTTTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号22)は、プロモーター強度に対して、正の効果を及ぼすことが分かっており、これは、TATモチーフを重複させることによりなお増大させてもよく、同じTATモチーフ、または代替的なTモチーフである、少なくともT13モチーフ(配列番号12)を含む、延長型Tモチーフ(たとえば、TATモチーフ)を使用して、TATモチーフの、少なくとも2つ、または3つ、または4つのコピーを挿入することによりなお増大させてもよい。
本発明はさらに、厳密な条件下で、pG1−xプロモーターとハイブリダイズするヌクレオチド配列も包含する。
本発明で使用される「ハイブリダイゼーション」または「ハイブリダイズすること」という用語は、2つの核酸配列が、適切な条件下で、互いと、安定的で特異的な水素結合でアニールして、二本鎖を形成するプロセスを意味することを意図する。2つの相補的な配列または十分に相補的な配列の間のハイブリダイゼーションは、使用される操作条件に依存し、特に、厳密性に依存する。厳密性は、相同性の程度を描示すると理解してもよく、厳密性が高度であるほど、配列の間の相同性パーセントも大きくなる。厳密性は特に、2つの核酸配列の塩基組成により定義してもよく、かつ/またはこれらの2つの核酸配列の間のミスマッチングの程度により定義してもよい。条件、たとえば、塩濃度および温度を変化させることにより、所与の核酸配列を、その正確な相補体だけとハイブリダイズさせてもよく(高度な厳密性)、任意の何らかの類縁配列とハイブリダイズさせてもよい(低度な厳密性)。温度の上昇または塩濃度の低下は、ハイブリダイゼーション反応の選択性を増大させる傾向がありうる。
本発明で使用される「厳密なハイブリダイズ条件下でハイブリダイズすること」という語句は、好ましくは、ある種の厳密性の条件下でハイブリダイズすることを指すと理解される。好ましい態様では、「厳密なハイブリダイズ条件」とは、2つの核酸配列の相同性が、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%である条件、すなわち、このハイブリダイゼーションにおいて得られる二本鎖が、好ましくは、少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、好ましくは、少なくとも90%のA−T結合およびC−G結合を含む場合に限り、ハイブリダイゼーションが可能となる条件である。
厳密性は、反応パラメータ、たとえば、ハイブリダイゼーション溶液中に存在するイオン性分子種の濃度および種類、変性剤の性質および濃度、ならびに/またはハイブリダイゼーション温度に依存してよい。当業者は、たとえば、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)において記載されている通りに、適切な条件を決定することができる。
核酸、POI、または他の化合物に関してここで使用される「単離された」または「単離」という用語は、「実質的に純粋な」形態で存在するように、天然で会合する環境から十分に分離された化合物を指すものとする。「単離された」とは、他の化合物もしくは材料との人工もしくは合成の混合物、または根本的な活性に干渉しない不純物、たとえば、不完全な精製に起因して存在しうる不純物の存在の除外を必ずしも意味しない。特に、本発明の単離核酸分子はまた、化学合成された核酸分子を含むことも意味し、特に、メタノール資化酵母(P.pastoris)または他の任意の生物において自然発生しない核酸分子であって、ここで「人工」と称する核酸分子を含むことも意味する。本発明の核酸に関しては、場合によって、「単離核酸」または「単離核酸配列」という用語を使用する。DNAに適用される場合のこの用語は、それが由来する生物の自然発生のゲノム内でじかに隣接する配列から分離されたDNA分子を指す。たとえば、「単離核酸」は、ベクター、たとえば、プラスミドまたはウイルスベクターに挿入されたDNA分子、あるいは原核もしくは真核細胞または宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含んでもよい。「単離核酸」(DNAまたはRNAの何れか)はさらに、生物学的または合成手段により直接作製され、その作製時において存在する他の成分から分離された分子を表してもよい。
ここで使用される「作動可能に連結された」という用語は、単一の核酸分子、たとえば、ベクター上における、ヌクレオチド配列の、1つ以上のヌクレオチド配列の機能が、前記核酸分子上に存在する、少なくとも1つの他のヌクレオチド配列の影響を受けるような態様での会合を指す。たとえば、プロモーターは、そのコード配列の発現を実行することが可能な場合、組換え遺伝子のコード配列と作動可能に連結されている。さらなる例として、シグナルペプチドをコードする核酸は、それが、タンパク質、たとえば、成熟タンパク質の前駆形態または成熟タンパク質を、分泌形態で発現させることが可能な場合、POIをコードする核酸配列に作動可能に連結されている。具体的に、互いに作動可能に連結されるこのような核酸は、じかに、すなわち、シグナルペプチドをコードする核酸とPOIをコードする核酸配列の間にさらなるエレメントまたは核酸配列を伴わずに連結してもよい。
プロモーターが、コード配列の転写を制御する場合、プロモーター配列は、典型的に、コード配列に作動可能に連結されていると理解される。プロモーター配列が、コード配列と天然では会合しない場合、その転写は、天然(野生型)細胞内では、プロモーターにより制御されないか、または配列が、異なる連続する配列で組み換えられている。
ここで使用される「対象のタンパク質(POI:protein of interest)」という用語は、宿主細胞内の組換え技術により作製される、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。
より具体的に、タンパク質は、宿主細胞内で自然発生でないポリペプチド、すなわち、異種タンパク質であってもよく、あるいは、宿主細胞にとって天然のポリペプチド、すなわち、宿主細胞と同種のタンパク質であってもよいが、たとえば、POIをコードする核酸配列を含有する自己複製型ベクターによる形質転換により、または組込み時における、POIをコードする核酸配列の1コピー以上の、宿主細胞のゲノムへの組換え法により、またはPOIをコードする遺伝子の発現を制御する1つ以上の調節配列、たとえば、プロモーター配列の組換えによる改変により作製される。場合によって、ここで使用されるPOIという用語はまた、組換え発現タンパク質により媒介される、宿主細胞による任意の代謝の産物にも関する。
POIは具体的に、精製形態における、たとえば、実質的に純粋な、細胞培養物から回収してもよい。
ここで使用される「実質的に純粋な」または「精製された」という用語は、少なくとも50%(w/w)、好ましくは、少なくとも60%、70%、80%、90%、または95%の化合物、たとえば、核酸分子またはPOIを含む調製物を指すものとする。純度は、化合物に適する方法(たとえば、クロマトグラフィー法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC解析など)により測定する。
ここで使用される「組換え」という用語は、「遺伝子操作により調製されることまたはこの結果」を意味するものとする。したがって、「組換え微生物」は、少なくとも1つの「組換え核酸」を含む。組換え微生物は具体的に、発現ベクターもしくはクローニングベクターを含むか、または組換え核酸配列を含有するように遺伝子操作されている。「組換えタンパク質」は、それぞれの組換え核酸を、宿主において発現させることにより作製する。「組換えプロモーター」とは、ここで記載される、機能的に活性なプロモーターとしてのその使用に適する、遺伝子操作された非コードヌクレオチド配列である。
一般に、ここで言及される組換え核酸または生物は、当業者に周知の組換え法により作製してもよい。本発明によれば、当技術分野の範囲内にある、従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNAの技法を援用してもよい。このような技法は、文献において十分に説明されている。たとえば、Maniatis、Fritsch、およびSambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor(1982)を参照されたい。
本発明の好ましい態様によれば、プロモーターおよび関与性の遺伝子を、ベクターまたは発現構築物にライゲーションすることにより、組換え構築物を得る。これらの遺伝子は、このようなベクターまたは発現構築物を使用して、宿主細胞を形質転換することにより、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込むことができる。
発現ベクターは、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、および、具体的に、デザインされたプラスミドを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明で使用される好ましい発現ベクターは、宿主細胞内の組換え遺伝子の発現に適する任意の発現ベクターであってもよく、宿主生物に応じて選択される。組換え発現ベクターは、宿主ベクターともまた呼ばれる、宿主生物のゲノム内で複製するかまたはこれに組み込むことが可能な任意のベクターであってもよい。
適切な発現ベクターは典型的に、真核宿主細胞内で、POIをコードするDNAを発現させるのに適するさらなる調節配列を含む。調節配列の例は、オペレーター、エンハンサー、リボソーム結合性部位、ならびに転写および翻訳の開始および終結を制御する配列を含む。調節配列は、DNA配列に作動可能に連結して、発現させてもよい。
宿主細胞内の組換えヌクレオチド配列の発現を可能とするために、発現ベクターは、本発明に従うプロモーターを、コード配列の5’端に隣接して、たとえば、対象の遺伝子(GOI)またはPOIの分泌を可能とするシグナルペプチド遺伝子の上流にもたらしてもよい。こうして、転写は、このプロモーター配列により、調節され、開始される。
ここで使用される「シグナルペプチド」という用語は、具体的に、天然シグナルペプチド、異種シグナルペプチド、または天然シグナルペプチドと異種シグナルペプチドのハイブリッド体を指すものとし、具体的に、POIを産生する宿主生物と異種であってもよく、同種であってもよい。シグナルペプチドの機能は、POIが分泌されて、小胞体に入ることを可能とすることである。シグナルペプチドは通例、タンパク質の、細胞膜の外への輸送を方向付け、これにより、異種タンパク質を分離および精製することを容易とする、短い(3〜60アミノ酸長)ペプチド鎖である。一部のシグナルペプチドは、タンパク質が輸送された後で、シグナルペプチダーゼにより、タンパク質から切断される。
例示的なシグナルペプチドは、出芽酵母(S.cerevisiae)アルファ−接合因子プレプロペプチドに由来するシグナル配列、ならびにメタノール資化酵母(P.pastoris)の酸性ホスファターゼ遺伝子(PHO1)および細胞外タンパク質X(EPX1)に由来するシグナルペプチドである(Heissら、2015;WO2014067926A1)。
たとえば、関与性の配列の機能を実証するため、調節エレメント(たとえば、pG1−xプロモーター、および、任意に、シグナル配列)のうちの1つ以上を含む発現ベクターを構築して、POIの発現を駆動してもよく、発現収率を、従来の調節エレメントを有する構築物と比較する。多様な異なるPOIを高レベルで作製するために、同定されたヌクレオチド配列は、特異的なヌクレオチドプライマーを使用するPCRにより増幅し、発現ベクターにクローニングし、たとえば、酵母ベクターおよびメタノール資化酵母(P.pastoris)の株を使用して、真核細胞系に形質転換してもよい。ここで記載されるpG1−xプロモーターの、このようにして作製される組換えPOIの量に対する効果を推定するために、真核細胞系を、それぞれの細胞内に、従来のpG1プロモーターまたはpGAPプロモーターを含む株と比較して、振とうフラスコ実験および流加またはケモスタット発酵により培養してもよい。特に、プロモーターの選択は、組換えタンパク質の産生に対して大きな影響を及ぼす。
POIは、形質転換体を培養することにより、組換え宿主細胞系を使用して作製し、これにより、発現させた産物または代謝物を培養物から単離し、任意に、適切な方法により精製して、適切な培地中で得ることができる。
本発明に従う形質転換体は、このようなベクターDNA、たとえば、プラスミドDNAを、宿主に導入し、POIまたは宿主細胞代謝物を高収率で発現させる形質転換体を選択することにより得ることができる。宿主細胞を処理して、真核細胞を形質転換するために従来使用された方法、たとえば、電気パルス法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、およびこれらの変法により、それらが、外来DNAを組み込むことを可能とする。メタノール資化酵母(P.pastoris)は、好ましくは、電気穿孔により形質転換する。微生物による組換えDNA断片の取込みのための好ましい形質転換法は、化学的形質転換、電気穿孔、またはプロトプラスト化による形質転換を含む。本発明に従う形質転換体は、このようなベクターDNA、たとえば、プラスミドDNAを、宿主に導入し、関与性のタンパク質または宿主細胞代謝物を高収率で発現させる形質転換体を選択することにより得ることができる。
本発明の方法に従う、POIを作製するための複数の異なる手法が好ましい。物質は、真核宿主細胞を、関与性のタンパク質および上記で記載した調節エレメントのうちの少なくとも1つをコードする組換えDNAを保有する発現ベクターで形質転換し、形質転換された細胞の培養物を調製し、培養物を増殖させ、転写およびPOIの産生を誘導し、発酵プロセスの産物を回収することにより、発現させ、加工し、任意に、分泌させてもよい。
本発明に従う宿主細胞は、好ましくは、その発現能または収率について、以下の試験:ELISA、活性アッセイ、HPLC、または他の適切な試験により調べる。
本発明は、具体的に、パイロットまたは産業スケールの発酵プロセスを可能とする。産業プロセススケールであれば、好ましくは、少なくとも10L、具体的に、少なくとも50L、好ましくは、少なくとも1m3、好ましくは、少なくとも10m3、最も好ましくは、少なくとも100m3の容量を援用するであろう。
たとえば、数日間の典型的なプロセス時間を援用する、100L〜10m3以上のリアクター容量による流加培養、または約50〜1000L以上の発酵槽容量中で、約0.02〜0.15h-1の希釈速度を伴う連続プロセスを指す、産業スケールでの作製条件が好ましい。
適切な培養法は、回分期で始め、大きな比増殖速度における短い指数的流加期を後続させ、小さな比増殖速度における流加期をさらに後続させた、バイオリアクター内の培養を包含してもよい。別の適切な培養法は、回分期に続いて、小さな希釈速度における連続培養相を包含してもよい。
好ましい態様は、バイオマスをもたらす回分培養に後続させて、高収率のPOI産生のための流加培養を含む。
ここで記載される宿主細胞系を、増殖条件下のバイオリアクター内で培養して、1L当たり少なくとも1gの細胞乾燥重量、より好ましくは、1L当たり少なくとも10gの細胞乾燥重量、好ましくは、1L当たり少なくとも20gの細胞乾燥重量の細胞密度を得ることが好ましい。バイオマス作製のこのような収率を、パイロットまたは産業スケールでもたらすと有利である。
バイオマスの蓄積を可能とする増殖培地、具体的に、基本増殖培地は、典型的に、炭素供給源、窒素供給源、硫黄のための供給源、およびリン酸のための供給源を含む。典型的に、このような培地はさらに、微量元素およびビタミンを含み、アミノ酸、ペプトン、または酵母抽出物をさらに含んでもよい。
好ましい窒素供給源は、NH42PO4、またはNH3もしくは(NH4)2SO4を含む。
好ましい硫黄供給源は、MgSO4、または(NH4)2SO4もしくはK2SO4を含む。
好ましいリン酸供給源は、NH42PO4、またはH3PO4もしくはNaH2PO4、KH2PO4、Na2HPO4もしくはK2HPO4を含む。
さらなる典型的な培地成分は、KCl、CaCl2、および微量元素、たとえば、Fe、Co、Cu、Ni、Zn、Mo、Mn、I、Bを含む。
好ましくは、培地に、ビタミンB7を補充する。
メタノール資化酵母(P.pastoris)のための典型的な増殖培地は、グリセロール、ソルビトール、またはグルコース、NH42PO4、MgSO4、KCl、CaCl2、ビオチン、および微量元素を含む。
産生期において、産生培地は具体的に、制限量の補充炭素供給源だけを伴って使用する。
好ましくは、宿主細胞系を、適切な炭素供給源を伴う無機培地中で培養し、これにより、単離プロセスをさらに著明に単純化する。好ましい無機培地の例は、活用可能な炭素供給源(たとえば、グルコース、グリセロール、ソルビトール、またはメタノール)、多量元素を含有する塩(カリウム、マグネシウム、カルシウム、アンモニウム、塩化物、硫酸、リン酸)、および微量元素を含有する塩(銅、ヨウ化物、マンガン、モリブデン酸、コバルト、亜鉛、および鉄塩、およびホウ酸)、ならびに、任意に、たとえば、栄養要求性を補完するビタミンまたはアミノ酸を含有する無機培地である。
具体的に、細胞は、発現系および発現させるタンパク質の性質、たとえば、タンパク質をシグナルペプチドに融合させているのかどうか、およびタンパク質が可溶性であるのか、膜結合型であるのかに応じて、細胞または培養培地から精製されうる所望のPOIの発現を実行するのに適する条件下で培養する。当業者により理解される通り、培養条件は、宿主細胞の種類および援用される特定の発現ベクターを含む因子に従い変化するであろう。
典型的な産生培地は、補充炭素供給源、ならびにさらなるNH42PO4、MgSO4、KCl、CaCl2、ビオチン、および微量元素を含む。
たとえば、発酵物に添加される補充炭素供給源のフィードは、最大で50重量%の活用可能な糖を伴う炭素供給源を含んでもよい。補充培地のフィード速度が小さければ、産物または副産物による、細胞の増殖に対する阻害効果が制限され、したがって、基質の供給に基づく高産物収率が可能となるであろう。
発酵は、好ましくは、3〜7.5の範囲のpHで実行する。
典型的な発酵時間は、温度を20℃〜35℃、好ましくは22〜30℃の範囲内として、約24〜120時間である。
POIは、好ましくは、少なくとも1mg/L、好ましくは、少なくとも10mg/L、好ましくは、少なくとも100mg/L、最も好ましくは、少なくとも1g/Lの収率をもたらす条件を援用して発現させる。
ここで開示される方法は、POIの発現を、好ましくは、分泌形態で、あるいは、細胞内産物として可能とする条件下で、前記組換え宿主細胞を培養することをさらに含んでもよいことが理解される。次いで、組換えにより作製されたPOIまたは宿主細胞代謝物は、細胞培養培地から単離し、当業者に周知の技法によりさらに精製することができる。
本発明に従い作製されたPOIは、典型的に、所望のPOIの濃度の上昇および/または少なくとも1つの不純物の濃度の低下を含む、最新の技法を使用して単離および精製することができる。
POIが、細胞から分泌される場合、POIは、最新の技法を使用して、培養培地から単離および精製することができる。組換え発現産物の、宿主細胞からの分泌は一般に、産物を、酵母細胞を破壊して、細胞内タンパク質を放出させる結果として生じるタンパク質の複雑な混合物からではなく、培養物上清から回収するので、精製プロセスを容易とすることを含む理由で有利である。
所望のPOIを含有する細胞抽出物であって、POIがそこから単離および精製される細胞抽出物を得るのにはまた、培養された形質転換細胞を、超音波により破断させてもよく、機械的、酵素的、または化学的に破断させてもよい。
組換えポリペプチドまたはタンパク質産物を得るための単離および精製法として、方法、たとえば、可溶性の差違を活用する方法、たとえば、塩析および溶媒沈殿、分子量の差違を活用する方法、たとえば、限外濾過およびゲル電気泳動、電荷の差違を活用する方法、たとえば、イオン交換クロマトグラフィー、特異的アフィニティーを活用する方法、たとえば、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性の差違を活用する方法、たとえば、逆相高速液体クロマトグラフィー、ならびに等電点の差違を活用する方法、たとえば、等電点電気泳動を使用してもよい。
高度に精製された産物は、夾雑タンパク質を本質的に含まず、好ましくは、少なくとも90%、より好ましくは、少なくとも95%、なおまたは、少なくとも98%、最大で100%の純度を有する。精製産物は、細胞培養物上清の精製により得てもよく、あるいは、細胞破砕物から得てもよい。
単離および精製法としては、以下の標準的な方法:細胞破壊(POIが細胞内で得られる場合)、精密濾過または接線流濾過(TFF)または遠心分離による細胞(破砕物)の分離および洗浄、沈殿または加熱処理によるPOIの精製、酵素的消化によるPOIの活性化、クロマトグラフィーによるPOIの精製、たとえば、イオン交換(IEX)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ除外(SEC)またはHPLCクロマトグラフィー、限外濾過プロセスを介する濃縮および洗浄によるPOIの沈殿が好ましい。
単離および精製されたPOIは、従来の方法、たとえば、ウェスタンブロット、HPLC、活性アッセイ、またはELISAにより同定することができる。
POIは、任意の真核生物、原核生物、または合成ポリペプチドでありうる。POIは、分泌タンパク質の場合もあり、細胞内タンパク質の場合もある。本発明はまた、自然発生のタンパク質の機能的な相同体、機能的な同等変異体、誘導体、および生物学的に活性な断片の組換えによる作製も提供する。機能的な相同体は、好ましくは、配列の機能的な特徴と同一であるか、またはこれに対応し、これを有する。
ここで言及されるPOIは、好ましくは、治療的、予防的、診断的、解析的、または産業的使用のための、真核宿主細胞と同種の産物であってもよく、異種の産物であってもよい。
POIは、好ましくは、真核細胞、好ましくは、酵母細胞内で、好ましくは、分泌タンパク質として産生される、異種組換えポリペプチドまたはタンパク質である。好ましく作製されたタンパク質の例は、免疫グロブリン、免疫グロブリン断片、アプロチニン、組織因子経路阻害剤、もしくは他のプロテアーゼ阻害剤、およびインスリンもしくはインスリン前駆体、インスリン類似体、成長ホルモン、インターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化因子、形質転換増殖因子aもしくはb、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、グルカゴン様ペプチド2(GLP−2)、GRPP、因子VII、因子VIII、因子XIII、血小板由来増殖因子1、血清アルブミン、酵素、たとえば、リパーゼもしくはプロテアーゼ、または天然タンパク質と同様の機能を有する、機能的な相同体、機能的な同等変異体、誘導体、および生物学的に活性な断片である。POIは、天然タンパク質と構造的に同様であってもよく、天然タンパク質のCおよびN末端の一方もしくは両方または側鎖への、1つ以上のアミノ酸の付加、天然アミノ酸配列内の1つもしくは多数の異なる部位における、1つ以上のアミノ酸の置換、天然タンパク質の一端もしくは両端、またはアミノ酸配列内の1つもしくは複数の部位における、1つ以上のアミノ酸の欠失、あるいは天然アミノ酸配列内の1つ以上の部位における、1つ以上のアミノ酸の挿入により、天然タンパク質から導出してもよい。このような改変は、上述されたタンパク質のうちの複数について周知である。
POIはまた、宿主細胞内の生化学反応をもたらす、基質、酵素、阻害剤、または共因子からも選択することができ、これは、前記生化学反応または複数の反応のカスケードの生成物を得ること、たとえば、宿主細胞の代謝物を得ることを目的とする。例示的な生成物は、本発明に従う組換えタンパク質またはPOIの発現の後で、収率を増大させて得ることができる、ビタミン、たとえば、リボフラビン、有機酸、およびアルコールでありうる。
一般に、組換え産物を発現させる宿主細胞は、組換えによるPOIの発現に適する、任意の真核細胞でありうる。
好ましい哺乳動物細胞の例は、BHK、CHO(CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHO−K1、CHOK1SV、CHO−S)、HeLa、HEK293、MDCK、NIH3T3、NS0、PER.C6、SP2/0、およびVERO細胞である。
本発明に従い宿主細胞として使用される、好ましい酵母細胞の例は、サッカロミセス(Saccharomyces)属(たとえば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae))、ピキア(Pichia)属(たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)、またはP.メタノリカ(P.methanolica))、コマガタエラ(Komagataella)属(K.パストリス(K.pastoris)、K.シュードパストリス(K.pseudopastoris)、またはK.ファフィイ(K.phaffii))、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シェフェルソマイセス・スティピティス(Scheffersomyces stipitis(Schefferomyces stipitis))、またはクルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)を含むがこれらに限定されない。
最近の文献では、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)を、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・ファフィイ(Komagataella phaffii)、およびコマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)に分け、命名し直している。ここでは、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)を、コマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・ファフィイ(Komagataella phaffii)、およびコマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)の全てについて、同義に使用する。
好ましい酵母宿主細胞は、メチロトロープ酵母、たとえば、ピキア(Pichia)属またはコマガタエラ(Komagataella)属、たとえば、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、またはコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、もしくはK.ファフィイ(K.phaffii)、もしくはK.シュードパストリス(K.pseudopastoris)から導出される。宿主の例は、酵母、たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)を含む。メタノール資化酵母(P.pastoris)株の例は、CBS 704(=NRRL Y−1603=DSMZ 70382)、CBS 2612(=NRRL Y−7556)、CBS 7435(=NRRL Y−11430)、CBS 9173〜9189(CBS株:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)、およびDSMZ 70877(German
Collection of Microorganisms and Cell Cultures)を含むが、また、Invitrogen製の株、たとえば、X−33、GS115、KM71、およびSMD1168も含む。出芽酵母(S.cerevisiae)株の例は、W303、CEN.PK、およびBYシリーズ(EUROSCARF collection)を含む。上記で記載した株の全ては、使用されて、形質転換体を作製し、異種遺伝子を発現させることに成功している。
本発明に従う、好ましい酵母宿主細胞、たとえば、メタノール資化酵母(P.pastoris)または出芽酵母(S.cerevisiae)による宿主細胞は、産生宿主と異なるメタノール資化酵母(P.pastoris)または出芽酵母(S.cerevisiae)株から導出してもよい、異種または組換えプロモーター配列を含有する。別の具体的な態様では、本発明に従う宿主細胞は、宿主細胞としての同じ属、種、または株に由来するプロモーターを含む、本発明に従う組換え発現構築物を含む。
本発明によれば、POIをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、ここで記載されるpG1−xプロモーター配列を含む、メタノール資化酵母(P.pastoris)による宿主細胞系をもたらすことが好ましい。
POIが、宿主細胞と同種のタンパク質、すなわち、宿主細胞内で自然発生のタンパク質である場合、宿主細胞内のPOIの発現は、その天然プロモーター配列の、本発明に従うプロモーター配列との交換によりモジュレートしてもよい。
この目的は、たとえば、宿主細胞を、部位特異的組換えを可能とする標的遺伝子の相同な配列、プロモーター配列、および宿主細胞に適する選択マーカーを含む組換えDNA分子で形質転換することにより達成してもよい。部位特異的組換えは、プロモーター配列を、POIをコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結するために施すものとする。これは、天然プロモーター配列の代わりに、本発明に従うプロモーター配列によるPOIの発現を結果としてもたらす。
具体的に、pG1−xプロモーターは、プロモーター活性を、POIの天然プロモーター配列に照らして増大させていることが好ましい。
具体的な態様によれば、POI産生法では、POIをコードする組換えヌクレオチド配列であって、宿主細胞のゲノムへの組込みに適するプラスミドにおいて、細胞1個当たり単一コピーまたは複数コピーでもたらされる組換えヌクレオチド配列を援用する。POIをコードする組換えヌクレオチド配列はまた、自己複製型プラスミドによっても、細胞1個当たり単一コピーまたは複数コピーでもたらされる。
ここで記載される好ましい方法は、真核生物発現ベクター、好ましくは、酵母発現ベクターであるプラスミドを援用する。発現ベクターは、クローニングベクター、改変されたクローニングベクター、および、具体的に、デザインされたプラスミドを含んでもよいがこれらに限定されない。本発明で使用される好ましい発現ベクターは、宿主細胞内の組換え遺伝子の発現に適する任意の発現ベクターであってもよく、宿主生物に応じて選択される。組換え発現ベクターは、宿主ベクターともまた呼ばれる、宿主生物のゲノム内で複製するかまたはこれに組み込むことが可能な任意のベクター、たとえば、本発明に従うDNA構築物を保有する酵母ベクターであってもよい。好ましい酵母発現ベクターは、ハンセヌラ(Hansenula)属、ピキア(Pichia)属、カンジダ(Candida)属、およびトルロプシス(Torulopsis)属により代表されるメチロトロープ酵母からなる群から選択される酵母内の発現のための発現ベクターである。
本発明では、pPICZ、pGAPZ、pPIC9、pPICZアルファ、pGAPZアルファ、pPIC9K、pGAPHis、またはpPUZZLEから導出されたプラスミドを、ベクターとして使用することが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、関与性の遺伝子を、ベクターにライゲーションすることにより、組換え構築物を得る。このようなベクターを使用して、宿主細胞を形質転換することにより、これらの遺伝子を、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込むことができる。遺伝子によりコードされるポリペプチドは、形質転換体を培養することにより、組換え宿主細胞系を使用して作製し、これにより、発現させたPOIを培養物から単離し、発現させた産物に適する方法、特に、POIを夾雑タンパク質から分離する方法により精製して、適切な培地中で得ることができる。
発現ベクターは、1つ以上の表現型選択マーカー、たとえば、抗生剤耐性を付与するか、または独立栄養要件を課するタンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。酵母ベクターは一般に、酵母プラスミドに由来する複製起点、自己複製型配列(ARS)、あるいは、宿主ゲノムへの組込みのために使用される配列、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択マーカーを含有する。
DNA配列および調節エレメント、たとえば、pG1−xプロモーター、ならびにPOIをコードする遺伝子、プロモーター、およびターミネーターのそれぞれをライゲーションし、それらを、組込みまたは宿主の複製に必要な情報を含有する適切なベクターに挿入するのに使用される手順は、当業者に周知であり、たとえば、J.Sambrookら(A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)により記載されている。
本発明に従う調節エレメント、および/またはPOIを、組込み標的として使用するベクターは、調節エレメントおよび/またはPOIをコードするDNA配列の全体を含有するDNA構築物をまず調製し、次いで、この断片を、適切な発現ベクターに挿入することにより構築してもよく、個々のエレメントについての遺伝子情報を含有するDNA断片を逐次的に挿入した後でライゲーションすることにより構築してもよいことが理解されるであろう。
また、マルチクローニング部位を有するベクターであり、所望の異種遺伝子を、マルチクローニング部位に組み込んで、発現ベクターをもたらしうる、マルチクローニングベクターも、本発明に従い使用することができる。発現ベクター内で、プロモーターは、POIの遺伝子の上流に配置され、遺伝子の発現を調節する。マルチクローニングベクターの場合、POIの遺伝子を、マルチクローニング部位に導入するため、プロモーターは、マルチクローニング部位の上流に配置される。
本発明に従う組換え宿主細胞を得るために準備されるDNA構築物は、確立された標準的な方法、たとえば、ホスホルアミダイト法を介して、合成により調製してもよい。DNA構築物はまた、たとえば、ゲノムまたはcDNAライブラリーを調製し、標準的な技法(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、1989)に従い、合成のオリゴヌクレオチドプローブを使用する、ハイブリダイゼーションにより、本発明のポリペプチドの全部または一部をコードするDNA配列についてスクリーニングすることにより得られた、ゲノム由来のDNA構築物であってもよく、cDNA由来のDNA構築物であってもよい。最後に、DNA構築物は、必要に応じて、合成由来の断片、ゲノム由来の断片、またはcDNA由来の断片であって、DNA構築物の全体の多様な部分に対応する断片を、標準的な技法に従いアニールすることにより調製された、合成由来のDNA構築物とゲノム由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよく、合成由来のDNA構築物とcDNA由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよく、ゲノム由来のDNA構築物とcDNA由来のDNA構築物を混合したDNA構築物であってもよい。
別の好ましい態様では、酵母発現ベクターは、たとえば、相同組換えにより、酵母ゲノム内に安定的に組み込むことが可能である。
細胞を、本発明に従う調節エレメントおよび/またはPOI遺伝子で形質転換することにより得られる、本発明に従う形質転換宿主細胞は、好ましくは、まず、多数の細胞を効率的に増殖させる条件で培養してもよい。POIを発現させるために細胞系を調製する場合は、培養法を、発現産物を作製するように選択する。
前出の記載は、以下の例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかし、このような例は、本発明の1つ以上の態様を実施する方法を表すだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして読まれるべきではない。
[実施例]
例1
pG1の5’側の短縮は、pG1の主要調節領域を明らかにする
天然(野生型)のpG1プロモーターは、メタノール資化酵母(P.pastoris)(コマガタエラ・ファフィイ(Komagatella phaffii))CBS2612株(CBS株:CBS−KNAW Fungal Biodiversity Centre、Centraalbureau voor Schimmelcultures、Utrecht、The Netherlands)から単離した。サンガーシーケンシングおよび後続のBLAST解析により決定される通り、CBS2612のpG1プロモーター配列は、GS115(Invitrogen)(PAS_chr1−3_0011の上流)株およびCBS7435(P7435_Chr1−0007の上流)株、またはK.パストリス(K.pastoris)DSMZ70382株(DSMZ株:German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)(PIPA00372の上流)のゲノム配列内のそれぞれの領域に対する、95%より大きい配列同一性を有した。pG1のゲノム領域についての解析時に、そのGTH1遺伝子は、始点について、CBS7435(P7435_Chr1−0007)株およびDSMZ70382(PIPA00372)株においてGS115(PAS_chr1−3_0011)株の場合と異なる注釈を施されていることが分かった。GS115およびCBS2612とは対照的に、他の2つの株のゲノム配列では、コード配列は、36bpさらに下流で始まるように注釈されている。
pG1の関与性の調節領域を同定するために、代替的な5’側位置である、−858、−663、−492、−371、−328、−283、−211、および−66位から始めて、−1位へと、8つの短縮型pG1変異体を、CBS2612からクローニングした(図1を参照されたい;番号付けは、GTH1遺伝子の始点である、遺伝子座PAS_chr1−3_0011に基づく)。これらの短縮型プロモーター変異体を、例8において記載されている通りに、深型ウェルプレート内で、eGFP発現についてスクリーニングして、pG1の元の965bp形と比較した、抑制特性(グリセロールフィードビーズ)および誘導特性(グルコースフィードビーズ)について調べた(図2)。抑制条件において、全ての長さの変異体について、eGFPシグナルの差違が見出されなかったことから、短縮型変異体のうちの何れにおいても、プロモーターの抑制は制限されなかったことが示される。48時間の誘導後、発現能は、328bpまでの長さのプロモーター変異体について、完全な機能性を維持した。283bpの変異体は、元のpG1プロモーターと比較して、約3分の2の強度にとどまった。最も短い長さの2つの変異体(211および66bp)は、ほぼ非機能性であると考えられた。これらの結果は、−400位〜−200位の間の領域が、重要な調節性の特色を含有することを示唆する。
例2
炭素供給源と関連することが予測される高密度のTFBSは、pG1プロモーターの主要調節領域をマーキングする
Genomatix製のMatInspectorを使用して、pG1プロモーター配列(遺伝子PAS_chr1−3_0011の1000bp上流)を、マトリックスの「真菌」群および「一般コアプロモーターエレメント」群に属するマトリックスファミリーについて検索した。46の異なるマトリックスファミリーに属する、111の推定TFBSを見出した(表1)。解析される配列内で最も一般的なマトリックスファミリーは、単量体のGal4クラスモチーフ(F$MGCM、12の結合性部位)、ホメオドメイン含有転写調節因子(F$HOMD、6つの結合性部位)、真菌塩基性ロイシンジッパーファミリー(F$BZIP、5つの結合性部位)、および酵母GCボックスタンパク質(F$YMIG、5つの結合性部位)であった。極めて高密度のTFBS結合性部位が、−400〜−200位の間で感知され、言及されたTFBS(最も一般的なマトリックスファミリー)のうちの約3分の2(28中18)は、これらの位置にあった。一般コアプロモーターエレメントに関しては、MatInspectorにより、酵母関連モチーフも、真菌関連モチーフも、同定されなかったが、TATAボックスは、−26位から見出すことができる。
たとえば、−390〜−375位における顕著なモチーフであって、その配列5’−TATTTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号21)のために、TAT14と称されるか、またはその配列5’−TATTTTTTTTTTTTTTT−3’(配列番号22)のために、TAT15と称されるモチーフが同定された。プロモーター領域内のこのようなポリ(A:T)トラクトは、ヌクレオソームの結合に負の影響を及ぼし、酵母内の近傍の部位におけるTFの結合を刺激することが公知である。
例3
炭素供給源と関連する転写因子である、Mxr1、Rgt1、Cat8−1、Cat8−2、およびMig1は、pG1の調節特性に重要であることを明らかにした
グルコース依存性または炭素供給源依存性が予測される転写因子結合性部位を、さらなる解析のために選択した(図1および表2を参照されたい)。オーバーラップ−エクステンションPCRを使用して、それぞれの領域を欠失させたpG1変異体を作出した。表3は、選択された全てのTFBSについて列挙し、欠失の影響を受ける(部分的に)、全てのTFBS(表2中の詳細なリスト)を指し示す。一部の欠失(たとえば、Δ9およびΔ10)では、近傍のTFBSを機能性に保ち、それらの影響について別個に検討するために、それぞれのTFBSのうちの一部のヌクレオチドを欠失させずに残した。
全てのTFBS欠失変異体およびTAT突然変異体を、eGFPの発現について、例8に記載されている通り、抑制条件(グリセロールフィードビーズ)下および誘導条件(グルコースフィードビーズ)下でスクリーニングした(図3)。個々のTF/TFBSが通例、プロモーターの調節を果たすのに十分ではないことに考慮することは重要である。TFBSの欠失はまた、プロモーター配列が、新たに形成された配列の接合、TFBSの間の距離の変更、または高次の特性の変化(クロマチンの組織化)の影響を受けうることも含意する。また、他の隣接するTFBSのために、プロモーターの異なる位置における、同じTFBSが、異なる機能を果たす場合もある。近傍のTFBSにおいて、TFは、相乗的に作用する場合もあり、立体障害のために、他のTFの結合を制限する場合もあるであろう。
4つの異なる、炭素供給源と関連するTFファミリー:酵母代謝調節因子(F$ADR;マトリックス:F$ADR1.01)、単量体Gal4クラスモチーフ(F$MGCM;マトリックス:F$RGT1.01、F$RGT1.02)、炭素供給源応答性エレメント(F$CSRE、マトリックス:F$CSRE.01、F$SIP4.01)、および酵母GCボックスタンパク質(F$YMIG;マトリックス:F$MIG1.01およびF$MIG1.02)を、pG1プロモーター変異体内で欠失させた(表2および表3を参照されたい)。出芽酵母(S.cerevisiae)内の対応する転写因子は、それぞれ、Adr1、Rgt1、Sip4/Cat8、およびMig1である。
炭素供給源依存性プロモーターは、グルコース抑制、および/または炭水化物もしくは他の糖以外の炭素供給源を介する誘導により制御される。グルコース抑制は主に、タンパク質キナーゼ複合体であるSnf1、転写抑制因子であるMig1、およびタンパク質ホスファターゼ1によりなされる。出芽酵母(S.cerevisiae)では、下流の因子は、たとえば、呼吸器遺伝子(Hap4)、糖新生遺伝子(Cat8、Sip4)、およびグルコース輸送体(Rgt1)を調節する。
メタノール資化酵母(P.pastoris)は、Mig1−1およびMig1−2と呼ばれる、2つのMig1相同体を有し、これらのうちの後者はおそらく、炭素異化物の抑制因子として作用する。グルコースが利用可能である場合、Mig1は抑制因子として作用するのに対し、Rgt1は、転写活性化因子として作用する。抑制機能を果たすために、Mig1は、脱リン酸化され、核へと移入されて、そこで、共抑制因子である、Ssn6およびTup1を動員する。
制限グルコース下では、Rgt1が脱リン酸化され、転写抑制因子として作用する。出芽酵母(S.cerevisiae)では、Rgt1の機能は、そのリン酸化状態(Rgt1は、4つのリン酸化部位を有する)により制御され、調節されるプロモーターの誘導は、転写抑制因子について典型的に見られる通り、Rgt1の解離を要請しない。
出芽酵母(S.cerevisiae)では、炭素供給源応答性亜鉛フィンガー転写因子であるAdr1は、グルコース抑制性アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH2)遺伝子の転写活性化に要請される。メタノール資化酵母(P.pastoris)におけるAdr1の相同体は、メタノール代謝の鍵となる調節因子である、Mxr1(PAS_chr4_0487)であり、メタノールに対する、強力なPAOXの誘導に不可欠な、正の活性化転写因子であることが報告された。Mxr1について報告されたTFBSコアモチーフである、5’CYCC3’は、pG1プロモーター配列内で見出される、何れのF$ADR1.01部位とも合致する。
出芽酵母(S.cerevisiae)では、炭素供給源応答エレメント(CSRE)に、転写活性化因子であるSip4およびCat8が結合し、糖新生遺伝子の発現を誘導するように機能する。メタノール資化酵母(P.pastoris)では、ScCat8の2つの相同体:Cat8−1(PAS_chr2−1_0757)およびCat8−2(PAS_chr4_0540)を見出すことができ、これらの両方は、ScSip4についてもまた、最良のblastpヒットである。Cat8−2の、ScCat8との類似性は小さいが、抑制解除条件下で、潜在的に重要な役割を果たす。
例4
pG1プロモーターの欠失変異体は、その抑制および誘導の一因となるTFBSを明らかにする
かつて同定された、pG1の主要調節領域の上流(5’側)に存在する、5つの欠失変異体(図1および表2における破線ボックスを参照されたい)のうち、変異体pG1−Δ1、pG1−Δ2、およびpG1−Δ4は、プロモーター強度に対して、有益な効果を及ぼすと考えられるが、欠失変異体pG1−Δ3およびpG1−Δ5は、GFPの発現に対して、元のpG1プロモーター(配列番号9)と比較して、効果を及ぼさなかった。この結果は、プロモーターの、5’側における短縮が、pG1の操作に有益でありうることを示唆する。pG1の主要調節領域内のTFBSの欠失(pG1−Δ6〜pG1−Δ12;図1および表2を参照されたい)は、eGFP発現に対して、異なる影響を及ぼしたが、何れも、抑制特性を失わずには、誘導の増大を示さなかった。したがって、その緊密な調節を保持するためには、pG1の主要調節領域を、操作pG1プロモーター変異体内で維持する必要があると仮定される。したがって、例1では、この領域を伴わない場合、制限グルコース下において、はるかに低度の誘導が観察された(pG1−328およびpG1−283;図2)。
Mig1結合性部位を、pG1−Δ3、pG1−Δ4、pG1−Δ10、およびpG1−Δ11において欠失させた(Δ3では、F$MIG1.02を欠失させ、Δ4、Δ10、およびΔ11では、F$MIG1.01を欠失させた)が、ここで、pG1−Δ10およびpG1−Δ11はまた、それぞれ、F$ADR1.01およびF$RGT1.02の欠失も含む。Δ3について、わずかな抑制の強化が見出される一方、Δ4では、抑制の変化は見られなかったが、誘導の後において、eGFPレベルが増強された。
Δ10について見られた抑制の緩和ならびにΔ10およびΔ11によるプロモーター誘導の低下もまた、この領域内のF$RGT1結合性部位(Δ9およびΔ11において欠失させたF$RGT1.01およびF$RGT1.02)と関連したものである可能性がある。Mig1はまた、pG1の調節において、二機能性の役割を果たした可能性がある:メタノール資化酵母(P.pastoris)では、2つのMIG1遺伝子が見出されており(MIG1−1、MIG1−2)、グルコースのアベイラビリティーに対して、逆向きに調節されることが示された。
変異体pG1−Δ1では、F$ADR1.01の欠失は、eGFPレベルを上昇させたが、Mxr1(Ppにおける、メタノール代謝の正の調節因子であり、ScADR1の相同体である)結合性部位の欠失は逆に、プロモーターを弱めることが予測されよう。pG1−Δ10における、F$ADR1.01の欠失の、F$MIG1.01の欠失との組合せは、グリセロールによるプロモーターの抑制を緩和し、その誘導を弱めたが、これが、Mig1 TFBSの欠失に対する最終的な応答である。
変異体pG1−Δ6(2つの部位)、pG1−Δ7、pG1−Δ8、pG1−Δ11、およびpG1−Δ12では、主要調節領域内の結合性部位F$RGT1.02を欠失させ、Δ9では、F$RGT1.01を欠失させた。対合させたF$RGT1.02部位(Δ6;逆鎖上の結合性部位は、7bpのシフトを伴う)の欠失を宿す変異体は、抑制のわずかな緩和および誘導の低減を示した。変異体Δ7およびΔ8は、極めて近接したF$RGT1.02部位を含有し、ここで、前者のF$RGT1.02部位は、マイナス鎖上にあり、後者のF$RGT1.02部位は、プラス鎖上にあるが、Δ8はまた、F$SIP4.01部位の欠失も含有する。前者(Δ7)が、抑制のわずかな緩和および誘導の増大を示したのに対し、後者(Δ8)による誘導は、はるかに弱かった(が、プロモーターの抑制は変化させなかった)。これは、pG1の誘導にとっての、転写活性化因子であるCat8−1および/またはCat8−2(ScSip4の最も強力な相同体)の強力な役割を指し示す。変異体Δ9を、近接して配置されるF$RGT1.01およびF$CSRE.01のTFBS(逆鎖上の結合性部位)を欠失させるように創出したが、抑制の大幅な喪失は、これらのTFBSには、おそらくRgt1、Cat8−1、および/またはCat8−2の結合を介して、pG1を緊密に制御する強力な役割があることを指し示す。変異体pG1−Δ12内の、F$RGT1.02の欠失は、eGFP発現性能に影響を及ぼさなかった。興味深いことに、CAT8−2の転写は、制限グルコース下では、グルコース剰余下と比較して強力に上方調節されるが、被験条件下では、RGT1およびCAT8−2の転写調節がなされなかった。
例5
pG1プロモーター強度は、ポリ(A:T)トラクトであるTAT14に依存する
TATモチーフは、pG1の主要調節領域の、約80bp上流(5’、たとえば、−390〜−374位)に配置される。メタノール資化酵母(P.pastoris)の、CBS2612、CBS7435、またはGS115における、GTH1の5’側領域のシーケンシングの反復は、TATモチーフ内の、15±1のTの検出を結果としてもたらした。プロモーター性能に対するその影響について解明するため、TAT14モチーフを、欠失(pG1−ΔTAT14)および突然変異(T16、T18、およびT20;pG1−T16、pG1−T18、pG1−T20への)について選択した。プライマー(表4のプライマー#37〜42を参照されたい)は、当初、T18、T20、およびT22を得るようにデザインしたが、長さが異なる変異体(それぞれ、T16、T20、およびT18)を得、使用した。TAT14モチーフの欠失が、GFPシグナルの低下を結果としてもたらしたのに対し、その伸長は、pG1の発現強度を増大させた。これは、伸長型TAT14モチーフの使用が、pG1の操作に有益であることを指し示す。
例6
pG1の主要調節領域の部分的な配列の重複は、その発現強度を著明に改善する
2つの配列断片(−472〜−188および−472〜−1)のPCRによる増幅、ならびに制限部位PstIおよびBglIIを使用する挿入(509〜514および525〜530位)により、pG1プロモーターの2つの重複変異体(pG1−D1240(配列番号49)およびpG1−D1427(配列番号85);番号は、それぞれのプロモーター変異体の長さを表す)を作出した。重複区間は、第1の変異体(pG1−D1240)では、pG1−Δ5で欠失させたTFBSの上流で始まり、pG1の主要調節領域の後方で終わる一方、第2の重複配列(pG1−D1427)は、pG1プロモーターの3’端に達する。これらの変異体を、TFBS欠失変異体およびTAT14突然変異体について記載したのと同じ方式で、eGFPの発現についてスクリーニングした(例8を参照されたい)。何れの重複変異体も、過剰グリセロール下における抑制の強化と、制限グルコースにおける誘導の強化とを示した(図4)。
選択圧を伴わずに、約20世代と同等である、3回連続の回分培養を実施することにより、重複変異体クローンであるpG1−D1240 #3の、形質転換後における安定性について調べた。eGFPの発現は、全培養時間にわたり安定であった(データは示さない)。これと比較して、典型的なメタノール資化酵母(P.pastoris)によるバイオリアクタープロセスは、回分期に、OD600=1(1L当たり約0.2〜0.4gのYDM)で始まり、流加期後に、1L当たり約100gのYDMで終わり、これにより、約10世代にわたる。
例7
流加バイオリアクター培養における、pG1プロモーター変異体の性能の検証
バイオプロセス条件下で作出されたプロモーター変異体の性能を検証するために、一部の変異体を、それらのeGFPの発現性能の変更に基づき、流加培養のために選択した:pG1−Δ2(配列番号211)は、主要調節領域の上流における、増強が最高度の変異体であり、pG1−T16(配列番号257)およびpG1−D1240(配列番号49)は、グリセロール条件下におけるプロモーターの抑制を失わずに、制限グルコース下で、高度なeGFPの発現レベルを示した。グリセロール回分期で始め、空時収量を最適化させた流加を後続させる、バイオリアクターによる培養(Prielhoferら、2013)を、クローン1つずつについて実施し、eGFPの発現について、対照のpG1株#8と比較した(図5および表5を参照されたい)。
流加発酵は、最終作業容量を0.7Lとして、DASGIPリアクター内で実施した。
以下の培地を使用した。
PTM1微量元素塩原液は、1リットル当たり、
6.0gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaI、3.36gのMnSO4・H2O、0.2gのNa2MoO4・2H2O、0.02gのH3BO3、0.82gのCoCl2、20.0gのZnCl2、65.0gのFeSO4・7H2O、0.2gのビオチン、および5.0mlのH2SO4(95%〜98%)
を含有した。
グリセロール回分培地は、1リットル当たり、
2gのクエン酸一水和物(C687・H2O)、39.2gのグリセロール、12.6gのNH42PO4、0.5gのMgSO4・7H2O、0.9gのKCl、0.022gのCaCl2・2H2O、0.4mgのビオチン、および4.6mlのPTM1微量元素塩原液
を含有した。HClを添加して、pHを5とした。
グルコース流加培地は、1リットル当たり、
464gのグルコース一水和物、5.2gのMgSO4・7H2O、8.4gのKCl、0.28gのCaCl2・2H2O、0.34mgのビオチン、および10.1mLのPTM1微量元素塩原液
を含有した。
溶存酸素は、攪拌器速度を400〜1200rpmとして、DO=20%に制御した。
曝気速度は、空気24L h-1とし、温度は、25℃に制御し、pH設定点である5は、NH4OH(25%)を添加することにより制御した。
発酵を開始するために、400mLの回分培地を、発酵槽へと滅菌濾過し、それぞれのメタノール資化酵母(P.pastoris)クローンの選択的前培養物から、出発光学濃度(OD600)を1として接種した。約25時間の回分期(約20g/Lの乾燥バイオマス濃度に到達する)の後、7時間にわたる指数的フィードで始め、15g/Lの一定のフィード速度で13時間にわたる、グルコース制限流加を施し、最終的な約100g/Lの乾燥バイオマス濃度をもたらした。試料は、回分および流加期において採取し、プレートリーダー(Infinite 200、Tecan、CH)を使用して、eGFPの発現について解析した。そこで、試料を光学濃度(OD600)5まで希釈した。結果を、バイオリアクター1つ当たりの相対蛍光(FL/r)として、図5に示す。
リアルタイムPCRを使用して、これらの3つのクローンの遺伝子コピー数を解析し、それらの全てについて、1であるGCNを結果としてもたらした(データは示さない)。全てのpG1変異体は、回分期における良好な抑制と、誘導状態における強力な発現とを提示した(表5)。バイオリアクター条件下で、重複変異体pG1−D1240の強力な改善を検証することができ、クローンpG1−D1240 #3は、流加の終点において、GFP蛍光の、pG1と比較して、50%の増大を示した。回分の終点において、シグナルは、既に増大していたが、誘導比は、元のpG1よりやや大きかった。スクリーニング以外では、クローンpG1−Δ2 #3は、回分の終点において、シグナルをわずかに増大させたが、流加の終点において、シグナルを約10%弱めた。TAT14突然変異体クローンであるpG1−T16 #3は、回分の終点では、最も強いシグナルを示したが、流加の終点では、重複変異体に劣り、対照のpG1 #8を約20%上回る改善に達し、スクリーニング結果と同様であった。回分期における、クローンの異なる誘導挙動は、回分期を通して、グリセロール濃度を低下させることに起因する、抑制解除により説明される(図5Aを参照されたい)。全体として、流加培養は、小スケールのスクリーニングで得られた結果をほとんど確認することができた。
到達点および結論
炭素供給源依存性調節を伴う遺伝子プロモーターは、産生期が、増殖から分離されているため、バイオプロセスへの適用に好適である。潜在的なプロモーターベースのタンパク質作製の改善は、最適な増殖条件(たとえば、増殖速度、フィーディング戦略)を見出すことにより達することもでき、プロモーター配列(たとえば、突然変異、欠失)を直接操作することにより達することもできる。
長さを短縮し、TFBSの欠失、TATモチーフの突然変異、および断片の重複を伴う、いくつかのpG1プロモーター変異体を構築した。これにより、その重要なTFBSを含む、pG1の主要調節領域を同定した。逆鎖上の同じ位置で結合する、F$RGT1およびF$CSREからなる、2つのモチーフを欠失させた、TFBSの欠失についての解析は、転写因子であるRgt1ならびにCat8−1および/またはCat8−2が、pG1の抑制および誘導に不可欠な役割を果たすことを指し示す。第1の部分(pG1−Δ8:−293〜−285位;RGT1:(+)−310〜−299、CSRE:(−)−299〜−285)の欠失が、プロモーターの誘導を弱める一方、第2の部分(pG1−Δ9:−275〜−261位;RGT1:(−)−275〜−259、CSRE:(+)−276〜−260)の欠失は、プロモーターの抑制を低下させた。これにより、pG1の調節に不可欠で特徴的な、調節モチーフを同定した。
他の条件下、たとえば、過剰グルコース条件下またはメタノール誘導条件下では、転写調節因子であるMig1(F$MIG1)およびMxr1(F$ADR1)の役割は、より重要でありうるであろう。この領域内またはこの領域の近傍で結合する他の転写因子もまた、pG1の調節に寄与しうるであろう。
ポリ(A:T)トラクトは、プロモーター配列内で役割を果たすことが公知であるが、pG1内のTATモチーフであって、主要調節因子領域の上流(たとえば、−390〜−375位)に配置されるTATモチーフは、pG1の強度に不可欠であることを示すことができた。このモチーフの、T16、T18、およびT20への伸長は、プロモーターの性能に対して、正の効果を及ぼした。
pG1の欠失変異体は、5’側の短縮も、プロモーターの操作に同様に有益でありうることを明らかにした。Mxr1、Mig1、Rgt1、およびCat8のTFBSを、pG1の主要調節領域の上流において欠失させたところ、eGFPの発現が改善されたが、5’短縮型プロモーター変異体については、この効果が見られなかった。
部分的な配列の重複を伴う2つの変異体は、野生型pG1と比較した、発現能の大幅な増強に達した。
妥当なプロモーター操作のための堅固な基盤である、pG1の良好な発現性能の顕著に異なる特色:5’側の短縮、TATモチーフの使用、および任意の突然変異/伸長、および断片の重複を割り当てることができた。小スケールのスクリーニングにおけるpG1変異体の性能は、流加培養における検証に成功しえた。
略号:
CSRE:炭素供給源応答エレメント、F$:真菌特異的TFマトリックス、GCN:遺伝子コピー数、GOI:対象の遺伝子、Pp:メタノール資化酵母(Pichia pastoris)、Sc:出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、TF:転写因子、TFBS:転写因子結合性部位、YDM:酵母乾燥質量
例8
抑制、誘導、pG1−xの発現レベル(pG1と比較した発現レベル)、誘導比の決定
pG1プロモーターと比較したプロモーター強度および誘導比は、以下の標準的なアッセイにより決定することができる:メタノール資化酵母(P.pastoris)株を、ウェル1つ当たりの培養物を2mLとして、280rpmで振とうしながら、深型24ウェルプレート内、25℃でスクリーニングする。グルコースフィードビーズ(6mm、Kuhner、CH)を使用して、グルコース制限増殖条件を作出する。フローサイトメトリーを使用して、細胞を、抑制(YP+1%グリセロール、指数関数的増殖期)および誘導(YP+1つのフィードビーズ、20〜28時間にわたる)時における、eGFPの発現について解析する。フローサイトメトリーデータの、少なくとも3000データ点について、比eGFP蛍光を、蛍光強度および前方散乱から計算する。前方散乱は、細胞容量についての相対的尺度である。比GFP蛍光は、蛍光強度(FI)を、前方散乱(FSC)で除して、1.5乗したもの、すなわち、FI/FSC1.5に等しい(Hohenblum,H.、N.Borth、およびD.Mattanovich(2003)、Assessing viability and cell−associated product of recombinant protein producing Pichia pastoris with flow cytometry、J Biotechnol、102:281〜290)。このデータから、集団の比蛍光の幾何平均値を使用し、野生型の非産生性メタノール資化酵母(P.pastoris)細胞のバックグラウンドシグナルを減じることにより標準化する。グリセロール条件下の比eGFP蛍光を、「抑制」と称し、制限グルコース条件(グルコースフィードビーズ)下の比eGFP蛍光を、「誘導」と称する。したがって、同じスクリーニングの抑制および誘導値ならびにフローサイトメトリーの測定値だけを比較し、計算のために使用することができる。相対pG1−xプロモーター強度を決定するために、pG1−xプロモーターを含む株の誘導値を、元のpG1プロモーターを含む株の誘導値で除することにより、誘導状態における、pG1−xプロモーターのeGFP発現レベルを、元のpG1プロモーターと比較した。誘導比は、同じ株/プロモーターの誘導値を、抑制値で除することにより計算する。いくつかのプロモーター変異体についての、抑制、誘導、相対pG1−xプロモーター強度、および誘導比を、表6に示す。
さらなる例は、配列番号49のヌクレオチド配列を含むかまたはこれらからなるpG1−xプロモーターを使用することにより、モデルタンパク質(POI)が、メタノール資化酵母(P.pastoris)において、非改変pG1プロモーター(基準;配列番号7)と比較して、はるかに高収量(3.5倍より大きい増大倍率;流加実験)で作製されたことを実証している。
例9
「高速発酵」と、標準的発酵との比較
概要:標準的な流加レジメを使用する代わりに、空時収量を最適化した流加プロトコールを援用することにより、配列番号39のpG1−3態様(pG1−D1240(配列番号49))によるプロモーターの制御下で、モデルタンパク質としての代替的な足場タンパク質の発現について、発酵時間の著明な低減を得ることができた。
pG1−D1240(配列番号49)の制御下で、モデルタンパク質を発現させるクローンを、流加培養のために選択した。流加培養は、最終作業容量を0.5Lとして、DASGIPリアクター(Eppendorf、Germany)内で実施した。培地および微量元素溶液は、グリセロール回分培地中のグリセロール濃度を1L当たり45gとしたことを除き、例7で既に記載した通りに調製した。培養時の溶存酸素レベルは、攪拌器の速度(400〜1200rpm)により、DO=30%に制御した。通気速度は、空気1vvmとし、温度は、25℃に制御し、5.0のpH設定点は、NH4OH(25%)の添加により制御した。バイオリアクターによる培養を開始するために、250mLの回分培地に、それぞれのメタノール資化酵母(P.pastoris)クローンの前培養物から、出発光学濃度(OD600)を1.0として接種した。グリセロールによる回分期は、約30時間にわたり、1L当たり25〜29gの乾燥バイオマス濃度に達した。グリセロール回分期に続き、制限グルコース流加を行った。2つの異なる流加培養方式:(A)一定のフィード速度を使用する、標準流加プロトコール、(B)空時収量を最適化した流加プロトコール(「高速発酵」)であって、グルコースフィード速度を、発酵の容量生産性を最大化するように最適化した流加プロトコールを比較した。
標準培養には、一定のグルコースフィード速度1.25mL h-1を選択した。流加培養を100時間(総培養時間を126時間とする)にわたり維持する結果として、約90g L-1の最終乾燥バイオマス濃度をもたらした。「高速発酵」には、モデルベースの最適化アルゴリズム(Maurerら、Microbial Cell Factories、2006、5:37)を採用したが、ここで、容量を最適化したグルコースフィード速度F(t)は、線形増加関数:F(t)[mL h-1]=0.3234mL h-2×t+3.3921mL h-1で近似した。流加期をt=33時間(総培養時間を60時間とする)にわたり維持する結果として、約140g L-1の最終乾燥バイオマス濃度をもたらした。
試料は、回分の終点および流加期において採取した。産物力価は、HT low MW protein express試薬キットおよびCaliper LabChip GXIシステム(Perkin Elmer、USA)を使用して、清明化させた上清により解析した。絶対定量化のための基準となる標準物質として、代替的な足場タンパク質の精製標準物質を使用した。
図9は、標準培養(A)および「高速発酵」(B)について、産物および総培養時間にわたるバイオマスの生成を示す。比較すると、「高速発酵」および標準発酵のそれぞれについて、60時間後および126時間後に、6.4g L-1および4.3g L-1の最終産物力価に達しえた。言い換えると、記載される標準的なフィードレジメを使用する代わりに、「高速発酵」について記載される通り、pG1−D1240(配列番号49)プロモーターの下における発現時に、グルコースフィードを補充したところ、著明に短い発酵時間(−66時間)で、1.4倍の力価(1.2倍の培養液力価に対応する)を見出すことができた。

表1:MatInspectorを使用して、pG1プロモーター配列内で同定されたTFBS。標的である、pG1欠失変異体の、炭素供給源と関連するTFBSを、太字体で示す。
表2:欠失突然変異体であるpG1−Δ1〜Δ12において影響を受けた、pG1プロモーター配列のTFBS。Genomatix製のMatInspectorを使用して、配列解析を行った。欠失のために選択された、グルコースおよび炭素に関連するTFBSを、太字体で示し、対応するID(1〜12)および欠失させた位置を、欄1および2に明記する。
表3:pG1 TFBS欠失変異体の位置およびTFBSの欠失
pG1 TFBSの欠失変異体(pG1−Δ1〜Δ12)における、標的であるTFBSおよび影響を受けたTFBSを列挙する。標的である、炭素供給源と関連するTFBSを、太字体で示す。全てのTFBSおよび欠失TFBSについての詳細な情報を、それぞれ、表1および表2に提示する。
表4:プライマー配列
表5:eGFPを発現させるpG1(ここでは、pG1 #8と称する)およびpG1−x変異体(ここではまた、pG1変異体とも称する)の流加培養
回分の終点および流加の終点について、相対eGFP蛍光を示す。回分の終点において、時点を0に設定した。pG1(#8)の制御下でeGFPを発現させるクローンを、pG1欠失変異体(pG1−Δ2)、TAT14突然変異体(pG1−T16)、および重複変異体(pG1−D1240)の制御下でeGFPを発現させるクローンと比較した。回分および流加におけるバイオマス濃度(YDM)は、予測した通りであった。
表6:深型ウェル比較スクリーニングによる、pG1と比較したプロモーター強度およびpG1変異体のプロモーター誘導比。pG1−x変異体(誘導された)の発現強度は、元のpG1プロモーターについて得られるeGFPの発現レベルと関連する。誘導比は、誘導および抑制状態におけるGFPレベルから計算する。

Claims (40)

  1. 配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の、炭素供給源により調節可能なpG1プロモーターの機能的変異体である、単離および/または人工pG1−xプロモーターであって、そのpG1−xプロモーターは、少なくとも293bpの長さを有する配列番号1の少なくとも一部からなるかまたはこれを含み、以下のプロモーター領域:
    a)配列番号2および配列番号3のヌクレオチド配列を含む、少なくとも1つのコア調節領域;ならびに
    b)前記コア調節領域以外の、pG1−xプロモーター配列内の任意の領域である非コア調節領域、を特徴とし、
    前記pG1−xプロモーターが、前記プロモーター領域のうちの何れかにおける、少なくとも1つの突然変異と、配列番号2および配列番号3における、少なくとも80%の配列同一性と、配列番号2または配列番号3以外の任意の領域における、少なくとも50%の配列同一性とを含み;さらに、
    前記pG1−xプロモーターが、前記pG1プロモーターと比較して、同じであるかまたは増大させた、プロモーター強度および誘導比を特徴とし、この場合、
    ・前記プロモーター強度が、誘導状態において、前記pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大しており、かつ/または
    ・前記誘導比が、前記pG1プロモーターと比較して、少なくとも1.1倍増大している、
    pG1−xプロモーター。
  2. 配列番号2および/または配列番号3が、1つ以上の転写因子結合性部位(TFBS)を含む、請求項1に記載のpG1−xプロモーター。
  3. 前記コア調節領域が、配列番号4のヌクレオチド配列、または1つ以上のTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体を含む、請求項1または2に記載のpG1−xプロモーター。
  4. 前記コア調節領域を、配列番号5、または前記1つ以上のTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体により表される主要調節領域へと組み込んだ、請求項1〜3の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  5. 前記1つ以上のTFBSが、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2からなる群から選択される転写因子のうちの何れかに対するTFBSである、請求項1〜4の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  6. pG1配列の5’端において、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む前記pG1プロモーターの機能的変異体であって、好ましくは、前記pG1配列の3’側領域、または前記3’側領域の機能的変異体のうちの、少なくとも293ヌクレオチドを残す、請求項1〜5の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  7. 前記コア調節領域が、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含む、請求項1〜6の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  8. 前記コア調節領域または主要調節領域の、少なくとも2つのコピーを含む、請求項1〜7の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  9. 配列番号12〜29のうちの何れかにより特定される、少なくとも1つまたは少なくとも2つのTモチーフを含む、請求項1〜8の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  10. Tモチーフが、前記コア調節領域の上流に配置され、任意に、主要調節領域の上流に配置される、請求項1〜9の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  11. Tモチーフが、前記コア調節領域の下流に配置され、任意に、主要調節領域の下流に配置される、請求項1〜9の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  12. 翻訳開始部位の少なくとも一部を含む、3’末端のヌクレオチド配列を含む、請求項1〜11の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  13. 2000bp以下の長さを有する、請求項1〜12の何れか一項に記載のpG1−xプロモーター。
  14. a)配列番号37〜44、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れか;
    b)配列番号77〜80、好ましくは、配列番号81〜112のうちの何れか;
    c)配列番号113〜114、好ましくは、配列番号115〜130のうちの何れか;
    d)配列番号131〜132、好ましくは、配列番号133〜148のうちの何れか;
    e)配列番号149〜150、好ましくは、配列番号151〜166のうちの何れか;
    f)配列番号167〜168、好ましくは、配列番号169〜184のうちの何れか;
    g)配列番号185〜186、好ましくは、配列番号187〜202のうちの何れか;
    h)配列番号203〜204、好ましくは、配列番号205〜220のうちの何れか;
    i)配列番号221〜222、好ましくは、配列番号223〜238のうちの何れか;
    j)配列番号239〜240、好ましくは、配列番号241〜256のうちの何れか;および
    k)配列番号32〜36もしくは配列番号257〜259;
    のうちの何れかからなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはこれらからなる;
    または
    l)上記a)〜k)のうちの何れかの機能的変異体である、単離および/または人工pG1−xプロモーターであって、
    配列番号1により特定される、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)の、炭素供給源により調節可能なpG1プロモーターの機能的変異体である機能的変異体である、pG1−xプロモーター。
  15. 前記ヌクレオチド配列のうちの何れかの機能的変異体、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れかの機能的変異体であって、以下の特色:
    a)前記配列が、プロモーター配列の5’端において、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含み、好ましくは、前記プロモーター配列の3’側領域、または前記3’側領域の機能的変異体のうちの、少なくとも293ヌクレオチドを残す、上記a)〜k)の前記pG1−xプロモーターのうちの何れかのプロモーター配列の機能的変異体であること;
    b)前記配列が、1つ以上のTFBSを含み、好ましくは、前記TFBSが、Rgt1、Cat8−1、およびCat8−2からなる群から選択される転写因子のうちの何れかに対するTFBSであること;
    c)コア調節領域が、配列番号4のヌクレオチド配列、または1つ以上のTFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体を含むこと;
    d)前記コア調節領域を、配列番号5、または前記TFBSを含む、その機能的変異体、好ましくは、少なくとも80%の配列同一性を伴う機能的変異体により表される主要調節領域へと組み込んでいること;
    e)前記コア調節領域が、配列番号2のヌクレオチド配列と配列番号3のヌクレオチド配列との間に、1つ以上のヌクレオチドの欠失を含むこと;
    f)前記配列が、前記コア調節領域または前記主要調節領域の、少なくとも2つのコピーを含むこと;
    g)前記配列が、配列番号12〜29のうちの何れかにより特定される、少なくとも1つまたは少なくとも2つのTモチーフを含み、好ましくは、前記Tモチーフが、前記コア調節領域の上流または下流に配置され、任意に、前記主要調節領域の上流または下流に配置されること;
    h)前記配列が、翻訳開始部位の少なくとも一部を含む、3’末端のヌクレオチド配列を含むこと;
    i)前記配列を、2000bp以下の長さへと伸長させていること
    のうちの1つ以上を特徴とする機能的変異体である、請求項14に記載のpG1−xプロモーター。
  16. 請求項1〜15の何れか一項に記載のpG1−xプロモーターを含む、単離pG1−xプロモーター核酸、または相補的配列を含む核酸。
  17. 対象のタンパク質(POI:protein of interest)をコードするヌクレオチド配列に、作動可能に連結されており、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列と、天然では会合しない、請求項16に記載のpG1−xプロモーター核酸。
  18. 前記POIの分泌を可能とするシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列をさらに含み、好ましくは、前記シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列が、前記POIをコードする前記ヌクレオチド配列の5’端に隣接して配置される、請求項17に記載の核酸。
  19. 請求項16〜18の何れか一項に記載の核酸を含む発現構築物、好ましくは、自己複製ベクターもしくは自己複製プラスミド、または宿主細胞の染色体DNAへと組み込まれる、ベクターもしくはプラスミドである発現構築物。
  20. 請求項19に記載の発現構築物を含む組換え宿主細胞、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、酵母細胞または糸状真菌細胞、より好ましくは、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはピキア(Pichia)属の酵母細胞である、組換え宿主細胞。
  21. 請求項20に記載の組換え宿主細胞系を培養すること(culturing)により、POIを作製する方法であって、
    a)前記POIを発現させる条件下で、前記細胞系を培養する(cultivating)工程と、
    b)前記POIを回収する工程と
    を含む方法。
  22. 培養が、
    a)基本炭素供給源を使用することでpG1−xプロモーターを抑制する、第1の工程と、これに続く
    b)補充炭素供給源を使用しないか、または限定量の補充炭素供給源を使用することで前記pG1−xプロモーターの抑制を解除して、前記POIの産生を誘導する第2の工程と
    を含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記第2の工程b)が、増殖制限量の前記補充炭素供給源を供給して、比増殖速度を、0.001h-1〜0.2h-1、好ましくは、0.005h-1〜0.15h-1の範囲内に保つ、フィード培地を援用する、請求項22に記載の方法。
  24. a)前記基本炭素供給源を、グルコース、グリセロール、エタノール、これらの混合物、および複合栄養物材料からなる群から選択し;
    b)前記補充炭素供給源が、ヘキソース、たとえば、グルコース、果糖、ガラクトースもしくはマンノース、二糖、たとえば、サッカロース、アルコール、たとえば、グリセロールもしくはエタノール、または前出のうちの何れかの混合物である、
    請求項22または23に記載の方法。
  25. 前記培養を、バイオリアクター内で、前記第1の工程としての回分期で始め、前記第2の工程としての流加期または連続培養期を後続させて実施する、請求項22〜24の何れか一項に記載の方法。
  26. 前記基本炭素供給源を、前記細胞系が消費するまで、前記回分期を実施する、請求項25に記載の方法。
  27. 前記回分期が、酸素分圧(pO2)シグナルの持続的減少を特徴とし、前記回分期の終点が、pO2の増大を特徴とする、請求項25または26に記載の方法。
  28. 回分期中に、前記pO2を、65%未満または低飽和へと減少させるのに続き、回分の終点では、65%を上回る増大または高飽和をもたらす、請求項27に記載の方法。
  29. 前記回分期を、約20〜36時間にわたり実施する、請求項25〜28の何れか一項に記載の方法。
  30. 前記回分期を、回分培地1L中45gのグリセロールを使用して実施し、培養を、25℃で、約27〜30時間にわたり、または30℃で、約23〜36時間にわたり実施する、請求項25〜29の何れか一項に記載の方法。
  31. 前記流加期中の前記培養を、約15〜80時間、約15〜70時間、約15〜60時間、約15〜50時間、約15〜45時間、約15〜40時間、約15〜35時間、約15〜30時間、約15〜35時間、約15〜25時間、または約15〜20時間;好ましくは、約20〜40時間のうちの何れかにわたり実施する、請求項25〜30の何れか一項に記載の方法。
  32. 前記流加期中の前記培養を、約80時間、約70時間、約60時間、約55時間、約50時間、約45時間、約40時間、約35時間、約30時間、約25時間、約20時間、または約15時間のうちの何れかにわたり実施する、請求項25〜31の何れか一項に記載の方法。
  33. 前記第2の工程b)が、増殖制限量の前記補充炭素供給源を供給して、比増殖速度を、0.04h-1〜0.2h-1の範囲内に保つフィード培地を流加期において援用する、請求項25〜32の何れか一項に記載の方法。
  34. 約30mg(L h)-1の空時収量を達成する、請求項25〜33の何れか一項に記載の方法。
  35. 前記流加期中の前記培養を、約30時間にわたり実施する、請求項34の何れか一項に記載の方法。
  36. 組換え宿主細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)属またはピキア(Pichia)属またはコマガタエラ(Komagataella)属のうちの何れかの酵母、好ましくは、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)またはコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)である、請求項25〜35の何れか一項に記載の方法。
  37. 前記pG1−xプロモーターが、配列番号37〜44のうちの何れか、好ましくは、配列番号45〜76のうちの何れかである、請求項25〜36の何れか一項に記載の方法。
  38. 前記pG1−xプロモーターが、配列番号39、好ましくは、配列番号49により特徴付けられる、請求項37に記載の方法。
  39. 前記POIを、前記細胞の天然pGAPプロモーターと比較して、少なくとも15%の転写速度で作製する、請求項21〜38の何れか一項に記載の方法。
  40. 前記POIが、好ましくは、抗体もしくはその断片、酵素およびペプチド、タンパク質抗生剤、毒素融合タンパク質、炭水化物−タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチンおよびワクチン様タンパク質もしくは粒子、プロセシング酵素、増殖因子、ホルモン、ならびにサイトカイン、またはPOIの代謝物を含む治療用タンパク質から選択される異種タンパク質である、請求項21〜39の何れか一項に記載の方法。
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