今日、様々な種類の3次元プリンタ(1つ以上の材料を系統的に積み重ねていくことにより3次元の物品の電子的表現を物品それ自体に変換する装置)がある。本発明による装置は、順次積み重ねられた粉末層のあらかじめ選択された領域を選択的に結合させることにより3次元の物品を作り出す様々な種類の3次元プリンタに特に有用である。このような種類の3次元プリンタを本明細書では、「粉末層3次元プリンタ」と呼ぶことにする。その理由は、この種のプリンタによって3次元物体を構築するのに、造形材料として粉末の層を用いるからである。このような粉末をベースとする3次元プリンタの例としては、結合剤噴射3次元プリンタ、選択的焼結3次元プリンタ、および電子ビーム溶融3次元プリンタが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書内の「粉末」という用語は当技術分野では「粒子物質」または「粒子」を指す場合もあることが理解されるべきであり、「粉末」という用語は、本明細書では名称が何であれ、層形成材料など、3次元プリンタで使われるあらゆる材料を意味するものとして解釈されるべきである。粉末は粉末状にすることができる物質であればどんな種類のもの(例えば、金属、プラスチック、セラミックス、炭素、黒鉛、複合材料、鉱物、およびこれらを混合したもの)で構成してもよい。「造形粉末」という用語は、本明細書では、粉末層を形成するために用いられる粉末、および、粉末層3次元プリンタで物品を作る材料となる粉末を指すために用いられる。
粉末層3次元プリンタの動作中、造形粉末の第1の層は垂直方向に割り出しできる造形プラットフォームの上に堆積され、その後第1の粉末層の上に後続の粉末層が一度に1層ずつ堆積されていく。選択された粉末層の選択部分が、3次元物体を形成するに際して当該部分で粉末が結合するように処理される。堆積した粉末層のうち互いに結合していない部分を本明細書では「粉末床」と総称する。
一部の粉末層3次元プリンタにおいては、まず貯留部内で粉末を支持するプラットフォームを所定量上方に割り送ることによって貯留部壁の上方に所定量の粉末を上昇させ、次に粉末層を形成するために同プラットフォームまたは粉末床の上面全体に当該粉末量を押し出すようにして、上部の開いた定置式の粉末貯留部から所定量の造形粉末を移すことにより、各粉末層が形成される。一部の粉末層3次元プリンタにおいては、各粉末層は、移動式の粉末ディスペンサーによって造形プラットフォームまたは現存する粉末床の上に堆積される。当該ディスペンサーは、粉末層の上部を平らにするように適合されている装置を含んでもよいし、含まなくてもよい。
粉末層を形成するプロセスを当技術分野では「リコーティング」と呼ぶことがあり、本明細書ではそう呼ぶこととする。リコーティングを行う特定の粉末層3次元プリンタの装置またはそのような複数の装置の組合せを当技術分野では「リコータ」と呼ぶことがあり、本明細書ではそう呼ぶこととする。
現在当技術分野に存在するリコータは意図した目的通りに概ねうまく機能するが、それでもなお、当技術分野では良好な粉末層均一性を一貫して実現するリコータを開発する必要性がある。本発明によりこのような改善が可能となる。
また、粉末層を形成するために微粉末が用いられる場合、従来のリコータの問題は、当該リコータから粉末を堆積させるときに微粉末のプルームが粉末床またはその他の基質の近傍で上昇してくるおそれがあることである。本発明の一部の実施態様は、このようなプルーム発生問題を改善または解消する。
本発明は、基質の全体に、または現存する粉末床の上に粉末層を塗布する装置を提供する。この装置は、3次元印刷用の粉末層を堆積させる際に、また、3次元印刷装置の一部として使用できるように適合されている実施態様において特に有用である。かかる装置を本明細書では、「本発明のリコータ」と呼ぶ場合があり、また、本発明のリコータを意味していることが文脈上明らかなときには単に「リコータ」と呼ぶ場合がある。
本発明のリコータは、基質または現存する粉末床を横切って動くように適合されているキャリッジを含む。本発明のリコータはまた、所望の粉末量を収容するための粉末貯留部を含む。粉末貯留部は、粉末を受け入れるために最上部またはその近くに1つ以上の第1の開口部を有し、粉末を分配する(dispense)ために底部またはその近くに1つ以上の第2の開口部を有する。本発明のリコータは、粉末貯留部の1つ以上の第2の開口部と作動的に連通し、粉末貯留部から粉末を運び、運ばれた粉末を粉末カーテンとして分配するように適合されているコンベアベルトを含む。上記文脈における「作動的に連通」という用語は、コンベアベルトが1つ以上の第2の開口部から粉末を受け取るように適合されていることを意味する。
一部の実施態様において、本発明のリコータは、粉末カーテンを実質的に一様にインターセプトして粉末を基質または粉末床の表面の上へと偏向させるように配置された粉末ディフレクタも含む。
一部の実施態様において、本発明のリコータは、粉末ディフレクタによって基質または粉末床の上へと偏向された粉末をならすように適合されている、例えばローラーやドクターブレード等のならし装置を1つ以上含む。一部の実施態様において、粉末ディフレクタとならし装置は組み合わされて、本発明のリコータの単一の構成要素として提供される。
本発明の一部の実施態様において、コンベアベルトは、粉末貯留部からコンベアベルト上に粉末を受け取る高さから粉末が堆積される粉末床またはその他の基質に近いより低い高さへ、粉末を制御可能に運ぶ下方に傾斜した部分を有するように適合されている。この高さが減じられた位置では、コンベアベルトから放出される粉末カーテンが巻き込む周囲の空気(またはその他の雰囲気)の量ははるかに少なく、また、粉末カーテンの運動エネルギー量も減少するので、微粉末のプルームの発生量は減少し、または発生しなくなる。オプションとして粉末ディフレクタを用いて、粉末カーテンをインターセプトしてそれに含まれる粉末を粉末床またはその他の基質の上へと偏向させることによって、プルームの発生量をさらに減らすことができる。ディフレクタ
本発明の一部の実施態様において、粉末が堆積される粉末床またはその他の基質に近いより低い位置へ粉末を制御可能に運ぶために、コンベアベルトの下方に傾斜した部分に代替して、またはそれと併せて、下方に傾斜したシュートが使用される。オプションとして粉末ディフレクタを用いて、シュートの端部から放出される粉末カーテンをインターセプトしてそれに含まれる粉末を粉末床またはその他の基質の上へと偏向させることによって、プルームの発生量をさらに減らすことができる。ディフレクタ
本発明は、本発明の要約部の前記の項に記載されるようなリコータを包含する粉末層3次元プリンタも含む。
本発明の特徴および利点の重要性は、添付図を参照することによりさらによく把握できる。しかしながら、添付図面は説明目的のためにのみ作成されており、本発明の範囲を規定するものではないことを理解するべきである。
粉末層3次元プリンタの実施態様の概略透視図である。
リコータの実施態様の概略正面透視図である。
図2の切断面3−3に沿った概略透視断面図である。
図2の切断面3−3に沿った概略側部断面図である。
ならし装置としてローラーを有するリコータの実施態様の概略側面図である。
ならし装置としてドクターブレードを有するリコータの実施態様の概略側面図である。
シュラウドエンクロージャを有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
リコータの実施態様の概略部分透視図である。
コンベアベルトが粉末貯留部の側部開口部と作動的に連通しているリコータの実施態様の概略断面部分側面図である。
コンベアベルトが粉末貯留部の側部開口部と作動的に連通しているリコータの実施態様のもう1つの概略断面部分側面図である。
角度のついたブレードがある粉末ディフレクタを有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
弧状の粉末ディフレクタを有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
粉末ディフレクタならし装置を有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
下方に傾斜した部分があるコンベアベルトを有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
下方に傾斜したシュートを有するリコータの実施態様の概略側部断面図である。
本セクションでは、本発明の好ましい実施態様のいくつかを、当業者が過度な実験をすることなく本発明を実行できるよう十分詳細に示す。しかし、本明細書に記載される限られた数の好ましい実施態様は、請求項に示す本発明の範囲を何ら制限するものではないことを理解するべきである。本明細書または請求項に値の範囲が記載される場合は常に、当該範囲には、両端点とその間にあるすべての点が、まるでそれらすべての点が明示的に記載されているかのように含まれることを理解するべきである。他に明記しない限り、本明細書および請求項で用いられる用語「約」は、その「約」という用語が修飾する値に関連する通常の計測および/または製造限度を意味するものとして解釈されるべきである。明示的に別段の定めをした場合を除き、「実施態様」という用語は、本明細書では本発明の実施態様を意味するために用いられる。
本発明のリコータは、粉末層3次元プリンタに特に有用である。リコータはいかなる種類の粉末層3次元プリンタとも使用することができるが、簡潔化のため、本セクションで論じる唯一の種類の粉末層3次元プリンタは、結合剤噴射式3次元プリンタに属するものである。結合剤噴射式3次元プリンタは、結合剤の噴射がインクジェット印刷用に開発されたものによく似ている印刷ヘッドを用いて行われるので、当技術分野では「3次元インクジェットプリンタ」と呼ばれることもある。基本的な結合剤噴射式3次元印刷プロセスは、マサチューセッツ工科大学(MIT)で1980年代に発明され、さらに1990年代に開発され、以下を含む数々の米国特許に記述されている。Sachsらの第5,490,882号、Cimaらの第5,490,962号、Cimaらの第5,518,680号、Bredtらの第5,660,621号、Sachsらの第5,775,402号、Sachsらの第5,807,437号、Sachsらの第5,814,161号、Bredtらの第5,851,465号、Cimaらの第5,869,170号、Sachsらの第5,940,674号、Sachsらの第6,036,777号、Sachsらの第6,070,973号、Sachsらの第6,109,332号、Sachsらの第6,112,804号、Vacantiらの第6,139,574号、Sachsらの第6,146,567号、Vacantiらの第6,176,874号、Griffithらの第6,197,575号、Monkhouseらの第6,280,771号、Sachsらの第6,354,361号、Sachsらの第6,397,722号、Sherwoodらの第6,454,811号、Yooらの第6,471,992号、Sachsらの第6,508,980号、Monkhouseらの第6,514,518号、Cimaらの第6,530,958号、Sachsらの第6,596,224号、Sachsらの第6,629,559号、Teungらの第6,945,638号、Sachsらの第7,077,334号、Sachsらの第7,250,134号、Payumoらの第7,276,252号、Pryceらの第7,300,668号、Serdyらの第7,815,826号、Pryceらの第7,820,201号、Payumoらの第7,875,290号、Pryceらの第7,931,914号、Wangらの第8,088,415号、Bredtらの第8,211,226号、およびWangらの第8,465,777号。
図1には、粉末層3次元プリンタ2の実施態様の概略透視図が示されている。プリンタ2は、可動式の造形ボックス内に収容される粉末床4、移動制御可能なリコータ6、および移動制御可能な印刷装置8を含む。プリンタ2の動作中、リコータ6が1つ以上の層を堆積した後、印刷装置8が堆積した最上段の粉末層の上に結合剤を選択的に印刷することにより、印刷される単数または複数の製品のスライスのイメージを付与する。造形ボックスの床面は、本発明のリコータ6によって堆積された後続の各層を受け取るために下方に割り送られる。層を堆積し、印刷するプロセスは、所望する単数または複数の製品がすべて印刷されるまで続けられる。
図2は、発明によるリコータの実施態様、即ちリコータ10の概略正面透視図を示す。リコータ10は、第1と第2の支持端部(14と16)を備えるキャリッジ12を有し、これらの支持部は対応する一組の軌道(図示せず)の上でリコータ10を移動可能に支持するように適合されている。キャリッジ12は、第1と第2の支持端部(14と16)の間に伸びるブリッジ部18と上蓋20も有する。リコータ10は、層形成プロセスの間に選択的に分配される造形粉末(図示せず)を収容するように適合されている粉末貯留部22を有する。リコータ10は、粉末床またはその他の基質に対して移動可能である。リコータ10は、リコータ外部の、またはリコータと一体の、または一部がリコータ外部にあって一部がリコータと一体である1個以上の駆動機構により制御可能に移動させることができる。一部の好ましい実施態様においては、リコータ10を矢印8によって示される方向に制御可能に動かすために、駆動機構が第1と第2の支持端部(14と16)の一方または両方に接続されている。リコータ10は、造形粉末を貯留部22から運び、粉末カーテンとして分配するように適合されているコンベアベルト24も有する。当該コンベアベルト24は、コンベアベルト支持システム26により制御可能に支持される。
図3および図4はそれぞれ、概略透視断面図と概略側部断面図であり、いずれも図2の切断面3−3に沿って作成されたものである。両図によると、貯留部22は、造形粉末を受け入れるための上部開口部30と造形粉末を分配するための底部開口部32を有する。底部開口部32は、コンベアベルト支持システム26(図2を参照のこと)によって支持されるコンベアベルト24と作動的に連通している。コンベアベルト支持システム26は第1と第2のローラー(34と36)を有し、少なくともそのうちの一方はモーターシステム(図示せず)により制御可能に駆動される。コンベアベルト支持システム26はまた、貯留部22の中の造形粉末の重みで生じたコンベアベルト24のたるみを改善または排除するように位置決めされた支持テーブル38も含む。リコータ10の一部である粉末ディフレクタ40の一部も両図に示されている。ディフレクタコンベアベルト24の分配端部42に固定されて、または同端部から制御可能に離隔して設けられる粉末ディフレクタ40は、粉末カーテンが粉末床またはその他の基質に接触する前に粉末をインターセプトするように、少なくともコンベアベルト24の幅に亘って延在することが好ましい。粉末ディフレクタ40の下端部は、堆積している造形粉末をすくいあげたりすき返したりしないように、粉末床またはその他の基質の上方に十分離隔されている。リコータ10の動作中、リコータ10が粉末床またはその他の基質をトラバースする際に、コンベアベルト24の上面44は、粉末カーテン(図示せず)を形成するように、貯留部22からゲート50を通過して矢印46によって示された方向に造形粉末を運ぶべく制御された速度で動く。粉末カーテンは、粉末ディフレクタ40に衝突し、粉末床またはその他の基質の上へと偏向される。限定することを意図するものではないが、発明者らは、この偏向によって粉末カーテンが下方の粉末床に与える衝突エネルギーを減少させることにより、さもなければ落ちてくる粉末カーテンの衝撃によって引き起こされるであろう下方の粉末床の乱れが減り、あるいはなくなる、と考えている。ゲート50は固定されていてもよいが、コンベアベルト24によって運ばれる粉末層の厚さを制御するためにゲート50の底部とコンベアベルト24の上面44の間の隙間を制御できるよう、調整可能であるが好ましい。
一部の好ましい実施態様においては、リコータはならし装置を含む。ならし装置は、当技術分野で既知のものであればどんな種類のものでもよく、Edererらの米国特許第7,879,393B2号に記載されるドクターブレード、ローラー、回転ブレードやBrunermerの米国特許第8,568,124 B2号に記載される粉末散布器などを含むが、これらに限定されるものではない。図5は、リコータ52がならし装置としてローラー54を含む実施態様を示す。ローラー52は反転ローラーだが、遊動ローラーやリコータ52の進行方向に回転するように駆動されるローラーを使用することもできる。ローラー54は、ローラー54の位置調整と駆動を制御することができる支持駆動・位置調整機構56を含む。リコータ52の粉末ディフレクタ58の底部先端が図で簡単に示されていることに注目されたい。
図6には、角度位置が選択的に調整可能な(即ち、垂線に対するドクターブレード62の角度を選択的に制御することができる)ドクターブレード62をならし装置として含むリコータ60の実施態様を示す。ドクターブレード62が支持・位置調整機構64に搭載されることによって、垂線に対するドクターブレード62の角度を選択的に制御することができる。ドクターブレード62(または実施態様で使用される任意のドクターブレード)の作業端部66の外形は任意の所望のもの(例えば、角ばっている、丸みがある、ナイフ刃状である、等)とすることができる。一部の実施態様は垂線に対する角度が一定のドクターブレードを含むことに留意されたい。また、リコータ60の粉末ディフレクタ68の底部先端が図で簡単に示されていることに注目されたい。
粉末床またはその他の基質の上方にあるならし装置の底部の高さは、リコータによって形成される粉末層の厚さの制御手段として作用することが理解されるべきである。ならし装置は粉末床またはその他の基質の上方の一定の高さに配置してもよいが、この高さを選択できるようにならし装置を構成することが好ましい。
一部の好ましい実施態様において、リコータは、リコータから粉末床またはその他の基質の上に造形粉末を分配する結果生じ得る微粉末のクラウド(雲)またはプルームを少なくとも部分的に収容するように適合されているシュラウドエンクロージャを含む。図7にはリコータ70が示されており、これは図4のリコータ40と類似しているが、コンベアベルト74の周囲の空間と、粉末カーテンが形成されて、さらに粉末ディフレクタ76によって下方の粉末床または基質の方へとディフレクタ偏向される空間を取り囲むように位置付けられたシュラウド72を含む点では異なっている。この実施態様においては、シュラウド72は粉末ディフレクタ76を含むことに留意されたい。それぞれのローラーがシュラウド72を貫通するその支持端部の近くでローラー(78、80)の周辺を、例えばVシール等のシールで密封することが好ましい。
一部の好ましい実施態様において、リコータには、コンベアベルトの近傍で粉末貯留部から造形粉末が流出することの防止に役立つ1つ以上の特徴を含める場合がある。図8にはリコータ82が示されており、これは図2のリコータ10と類似しているが、コンベアベルト86の近くで粉末貯留部から造形粉末が流出するのを防ぐように位置付けられたタブ84等のタブを含む点では異なっている。
これまでこのセクションで記載してきた実施態様は、リコータの粉末貯留部の底部にある開口部を経由して粉末貯留部と作動的に連通しているコンベアベルトを有している。一部の実施態様においては、コンベアベルトは粉末貯留部の側部にある1つ以上の開口部を介して粉末貯留部と作動的に連通している。図9と図10はこの種の実施態様を2つ示している。図9には、側部開口部94を有する粉末貯留部92とコンベアベルト96を備えたリコータ90の一部の概略断面図が示されている。コンベアベルト96とその支持ローラー98は、キャビティ100内に収容された造形粉末(図示せず)がコンベアベルト96とその支持テーブル102によって少なくとも部分的に支持されるよう、粉末貯留部92のキャビティ100内部に配置される。リコータ90の動作中、コンベアベルト94の上面104によって、造形粉末がキャビティ100から矢印106によって示される方向に運ばれる。側部開口部94の上端部108が、キャビティ100を出て行くコンベアベルト96上の粉末層の厚さを制御するゲート装置の役割を果たしてもよい。そのような場合には、コンベアベルトおよび/または粉末貯留部の垂直方向の位置を相互に調整可能にすることにより、コンベアベルトの上面104と側部開口部の上端部108の隙間110の高さを調整できることが好ましい。一部の実施態様においては、キャビティ100から出ていくコンベアベルト96上の粉末層の厚さを制御するために、調整可能なゲート(例えば、ゲート112)が設けられる。
図10には、側部開口部124を有する粉末貯留部122とコンベアベルト126を備えたリコータ120の一部の概略断面図が示されている。この構造は、粉末貯留部122のキャビティ128内に造形粉末(図示せず)が収容されていてもそれをほとんど支持しない位置にコンベアベルト126があることを除き、図9に示されているものと同様である。リコータ120の動作時に、コンベアベルト126が矢印130によって示される方向に動くことによって、キャビティ128からコンベアベルト126の上面132の上に造形粉末を集める。この構造を有する実施態様においては、例えば振動機134のような振動装置、および/または例えばオーガー(augur)もしくは外輪のような何らかの装置をキャビティ128内に含めることによって造形粉末を強く撹拌し、リコータ120の動作中に造形粉末とコンベアベルト126を継続的に確実に接触させることが好ましい。コンベアベルトの上面132上の造形粉末の厚さは、図9に関連して先に述べた方法で制御することができる。
実施態様においては、ディフレクタコンベアベルトから生じる粉末カーテンを、下方の粉末床またはその他の基質の方に振り向ける機能を果たせる限り、粉末ディフレクタはいかなる物理的構成をも取り得ることを理解するべきである。かかる粉末ディフレクタの構成を図11と図12に示す。図11に示すリコータ142の粉末ディフレクタ140は、垂直方向に対して角度をつけて配向されたまっすぐなブレードとして構成されている。図12に示すリコータ146の粉末ディフレクタ144は、弧状のブレードとして構成されている。
一部の実施態様においては、リコータの単一の構成要素が粉末ディフレクタと粉末ならし装置の両機能を果たすように構成される。かかる構成要素を、本明細書では「粉末ディフレクタ兼ならし装置」と呼ぶ。実施態様においては、粉末ディフレクタ兼ならし装置は、コンベアベルトから生じる粉末カーテンを偏向さ且つ堆積させた造形粉末の層をならすことができる限り、いかなる物理的構成をも取ることができる。
図13は、粉末ディフレクタ兼ならし装置152を有するリコータ150の概略側部断面図である。粉末ディフレクタ兼ならし装置152の前面154が前述の粉末ディフレクタの機能を果たし、ディフレクタ同装置152の部材156が前述のならし装置として表面を平らにする機能を果たす。下方の粉末床またはその他の基質の上方にある当該部材156の下端部158の高さを部材156のスロット(図示せず)内の保持ボルト160によって、部材156を粉末ディフレクタ兼ならし装置152の残りの部分に対して垂直方向に位置を合わせすることによって、手動で調節することができる。
微粉末の堆積は、粉末のプルーム発生という問題を伴うことが多い。粉末のプルームは、堆積する粉末粒子の一部または全部の終端速度が、粉末が堆積するところの近傍での単数または複数の気体流の上向き速度成分より遅い場合に発生する。一部の実施態様は、粉末のプルームを減らす、または排除するよう設計されている。この種の実施態様の例をいくつか、以下で議論する。
図14には、粉末のプルームを減らす、または排除するように設計されているリコータの実施態様の概略側部断面図が示されている。リコータ170は、コンベアベルト174と作動的に連通している粉末貯留部172を有する。コンベアベルトは、少なくとも1つが駆動ローラーである複数の駆動ローラー(176、178、180)から成るローラーセットによって支えられ、制御可能に駆動される。コンベアベルト174は、矢印184によって示された方向に粉末を制御可能に運ぶように適合されている下方に傾斜した部分182を含む。粉末は、粉末貯留部172からコンベアベルト174によって高さH1で受け止められ、より低い高さH2へと制御可能に運ばれる。リコータ170は、分配端部188から生じる粉末カーテン(図示せず)が粉末床190に接触する前にそれをインターセプトして分配端部偏向させるように、コンベアベルト174の分配端部188から離隔して設けられた粉末ディフレクタ186をオプションとして含む。
図15には、プルームの発生を減らす、または排除するよう設計されている別のリコータの実施概要の概略側部断面図が示されている。リコータ200は、コンベアベルト204と作動的に連通している粉末貯留部202を有する。コンベアベルト204は、第1と第2のローラー(206、208)から成るローラーセットによって支えられ、制御可能に駆動される。これらのローラーは、いずれか一方を駆動ローラーにしてもう一方を遊動ローラーにすることもできるし、両方を駆動ローラーにすることもできる。リコータ200は、下方に傾斜したシュート210も含む。このシュートは、コンベアベルト204の放出端212から生じる粉末カーテン(図示せず)をインターセプトしてそれに含まれる粉末を高さH3からより低い高さH4へと制御可能に下向きに運び、シュート下端214で別の粉末カーテンとして放出するように位置付けられている。リコータ200はオプションとして粉末ディフレクタ216も含むが、これはシュート下端214から落ちてくる粉末カーテンに含まれる粉末が粉末床218に接触する前に粉末カーテンをインターセプトして偏向させるように、シュート下端214から離隔して設けられる。
シュートの粉末接触面210は粉末が滑り落ちる速度を制御するように設計することができ、平坦でもよいし、波状その他のテクスチャー付けを施してもよい。シュート210の支持構造物は示されていないが、支持構造物は、シュート210の下方への傾斜および/またはシュート210のコンベアベルト204への近接度を固定して設置してもよいし、あるいは制御可能に調節できるように設置可能でもあることが理解されるべきである。
下方に傾斜したコンベア部分を有する実施態様の一部は、下方に傾斜したコンベア部分を複数有する。また、傾斜したシュートを有する実施態様の一部は、下方に傾斜したシュートを複数有する。
下方に傾斜した部分を有するコンベアおよび/または下方に傾斜したシュートを含む一部の実施態様のリコータは、明細書の本セクションで先に記載した粉末ならし装置および/または粉末ディフレクタ兼ならし装置を含み得ることを理解されたい。実施態様の中には下方に傾斜したコンベアベルト部分および/または下方に傾斜したシュートを有するリコータを備える3次元プリンタが含まれることが理解されるべきである。
本発明のごく少数の実施態様のみを示し、説明してきたが、当業者にとっては、請求項に記載される発明の精神と範囲から逸脱せずに同発明に多くの変更と修正を行えることは明らかである。本明細書で特定される米国のすべての特許および特許出願、ならびに米国外のすべての特許および特許出願等の文書は、法の下で認められる最大限の範囲で、本明細書内に省略せずに記載されているかの如く参照により本明細書に組み込まれる。