JP2018516601A - グルテン減少穀粒及びその組成物 - Google Patents

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Abstract

グルテンが減少した穀粒を有する植物及びその組成物が本明細書で開示される。

Description

(関連出願の相互引用)本出願は、米国仮特許出願62/327,822(2016年4月26日出願)及び米国仮特許出願62/263,912(2015年12月7日出願)及び米国仮特許出願62/168,536(2015年5月29日出願)に対し優先権を主張する(上記に引用した出願は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。
(連邦政府の研究開発補助に関する記載)本発明は、米国立予防衛生研究所のグラント番号1R42DK097976-01及び4R42DK097976-02により政府の補助を受けて達成された。当該政府は本発明で一定の権利を有する。
(技術分野)ある実施態様では、本開示はグルテン減少穀粒に関する。
コムギは世界の人口の大半にとって第一の重要かつ戦略的穀草作物であり、さらに約20億人(世界人口の36%)の最も重要な主食である。全世界で、コムギは、炭水化物のほぼ55%及び地球上で消費される食物カロリーの20%を提供する(Breiman and Graur, 1995)。コムギは、他のいずれの穀類作物(コメ、トウモロコシを含む)よりも作付け面積及び生産高で優り、広範囲の気候条件にわたって栽培される。コムギの遺伝学及び分子マーカーを用いるゲノム編成を理解することは、遺伝学的及び植物育種目的のために重要である。
タンパク質は、コムギの穀粒の最終用途におけるその価値を決定するもっとも重要な成分である。穀粒の貯蔵タンパク質(GSP)組成がドウの凝集性及び粘弾性を決定することは知られている。コムギのもっとも豊富なGSPはグルテンを形成するグリアジン及びグルテニンであり、前記は全穀粒タンパク質の60%から80%を占める。
セリアック病は、小腸の内層がグルテンによって損傷される症状である(グルテンは、コムギ、ライムギ及びオオムギ並びに近縁種のデンプン質内乳で見出される種々の貯蔵タンパク質の混合物である)。グルテンマトリックスは、グリアジン及びグルテニンタンパク質のほぼ均等な混合物から成る。セリアック病は主としてグリアジンタンパク質によって引き起こされる。特にこの疾患では小腸絨毛が破壊されて内層は平坦化し、重篤な場合には栄養素の吸収が阻害される。典型的な徴候は、体重減少、悪臭性下痢、嘔吐、腹痛及び脚のむくみである。現在用いることができる唯一の治療は、コムギ、ライムギ及びオオムギを含む全食品及び医薬組成物を厳密に回避する一生涯の無グルテン食事療法である。セリアック病に加えて、多くの人々がグルテンに対して全身的不耐性を罹患している。前記不耐性の程度は極めて多様であるが、ただしセリアック病のように明瞭な臨床的徴候は存在しない。
したがって、グルテンの消費を減少させることが臨床的に要請され、呼応してグルテンが減少したコムギ及び他の穀粒の開発が要請される。前記要請は長い間求められてきたが、グルテンを減少させるコムギの遺伝子における変異の同定は、とりわけ、今日の市場でコムギ栽培品種の遺伝的多様性が限定されていること及びコムギゲノムが複雑であるという理由から遅々として進まなかった。パンコムギは六倍体であり、各細胞の核内にA、B及びDと称される3つの完全なゲノムを有する。これらのゲノムは各々ヒトゲノムのほぼ二倍のサイズで約55億ヌクレオチドから成る。他方、デュラムコムギ(マカロニコムギ又はパスタコムギ(トリチクム・デュルム(Triticum durum)又はトリチクム・チュルギデュム・デュルム亜種(Triticum turgidum subsp. durum))としても知られている)は、商業的に重要なコムギの主要な四倍体種であり、前記は今日広く栽培されている。デュラムコムギは2つの完全なゲノム(A及びB)を有し、パスタの製造に広く用いられている。
本発明者らは、その変異及び改変がグルテン減少穀粒を生じる遺伝子を同定した。
ある実施態様では、本開示は、ある遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有する植物に関し、前記植物はグルテン減少穀粒を生じ、前記穀粒にはオオムギ及びコムギの植物体の穀粒が含まれるが、ただしこれらに限定されない。さらに別の実施態様では、本開示は、ある遺伝子の発現及び/又はあるタンパク質の活性を変化させる1つ以上のトランスジーンを有する植物に関し、前記はグルテン減少穀粒を生じる。別の実施態様では、本開示はグルテン減少穀粒を有するトランスジェニック植物に関する。さらに別の実施態様では、本開示は改変遺伝子を有する植物に関し、ここで当該遺伝子はゲノム編集によって改変され、野生型植物の穀粒と比較してグルテンが減少した穀粒の一助となる。
ある実施態様では、本明細書で論述する穀粒にはコムギ、オオムギ及びライムギが含まれる。
ある実施態様では、本開示は、1つ以上のコムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)遺伝子又は相同な遺伝子に非トランスジェニック変異を有する植物に関し、前記はグルテン減少穀粒を生じる。ある実施態様では、本開示はWPBF遺伝子の非トランスジェニック変異に関し、ここで前記変異はグルテン減少穀粒を生じる。
ある実施態様では、1つ以上の変異はAゲノムのWPBF遺伝子に存在する。別の実施態様では、1つ以上の変異はBゲノムのWPBF遺伝子に存在する。別の実施態様では、1つ以上の変異はDゲノムのWPBF遺伝子に存在する。
ある実施態様では、本発明は、WPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む、複数の非トランスジェニック変異に関する。
別の実施態様では、本発明は、AゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の非トランスジェニック変異、並びにBゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の変異に関する。
別の実施態様では、本発明は、AゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の非トランスジェニック変異、並びにDゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の変異に関する。
別の実施態様では、本発明は、BゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の非トランスジェニック変異、並びにDゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の変異に関する。
別の実施態様では、本発明は、AゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の非トランスジェニック変異、並びにBゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の変異、並びにDゲノムのWPBF遺伝子における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異を含む複数の変異に関する。
別の実施態様では、本開示は、野生型のコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫と比較してグルテンが減少した穀粒を有するコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫に関する。
別の実施態様では、本開示は、野生型のコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫と比較して高分子量グルテニンが多いコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫に関する。
別の実施態様では、本開示は、野生型のコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫と比較して低分子量グルテニンが少ないコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫に関する。
別の実施態様では、本開示は、野生型のコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫と比較してグリアジンが少ないコムギの植物体、コムギの種子、コムギの植物体部分、及びその子孫に関する。
別の実施態様では、本発明は、野生型のコムギ植物体と比較してグルテンが減少した穀粒を有するコムギ植物体、コムギ種子、コムギ植物体部分及びその子孫に関し、ここでグルテンの減少は、コムギ植物体のWPBF遺伝子の1つ以上におけるヒト誘導非トランスジェニック変異によって引き起こされる。別の実施態様では、当該WPBFタンパク質は活性低下を示す。
別の実施態様では、本開示は、1つ以上の変異WPBF遺伝子を含むコムギの植物体とともに当該植物体の種子、花粉、植物体部分及び子孫に関する。
別の実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子のヒト誘導非トランスジェニック変異によって引き起こされるWPBFタンパク質活性低下を示すコムギ種子及び小麦粉を取り込んだ食物及び食品に関する。
別の実施態様では、本開示は、以下の工程によって作出される、野生型コムギ植物体と比較して1つ以上のWPBFタンパク質の活性が低いコムギ植物体に関する:親のコムギ植物体から植物材料を入手する工程;当該植物材料を変異原で処理することによって、当該植物材料のWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーで少なくとも1つの変異を誘導して変異誘導植物材料(例えば種子又は花粉)を作出する工程;子孫のコムギ植物体を分析してWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーで少なくとも1つの変異を検出する工程;WPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーで少なくとも1つの変異を有する子孫のコムギ植物体を選別する工程;WPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーで少なくとも1つの変異を有する子孫のコムギ植物体を、WPBF遺伝子の異なるコピーで少なくとも1つの変異を有する他の子孫コムギ植物と交配する工程;さらに変異を有する子孫コムギ植物体の同定及び変異を有する子孫コムギ植物体と変異を有する他の子孫コムギ植物体との交配のサイクルを繰り返してWPBF活性が低下した子孫コムギ植物体を作製する工程。別の実施態様では、当該方法は、子孫コムギ植物体を作製するために変異誘導植物材料を増殖させるか又は使用する工程を含む。
ある実施態様では、本開示は、タンパク質貯蔵プロフィールが変化したコムギ植物体の種子に関する。
ある実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子の変異によって引き起こされるWPBFタンパク質活性低下を示すコムギの種子及びグルテナーゼを含む組成物に関する。
さらに別の実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子の変異によって引き起こされるWPBFタンパク質活性低下を示す小麦粉及びグルテナーゼを含む組成物に関する。
ある実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子のヒト誘導非トランスジェニック変異によって引き起こされるWPBFタンパク質活性低下を示すコムギの種子及び小麦粉並びにグルタナーゼを取り込んだ食物及び/又は食品を含む組成物に関する。
ある実施態様では、本開示は、オオムギのDof転写因子活性の低下を示すオオムギの種子及び/又は大麦粉並びにグルタナーゼを取り込んだ食物及び/又は食品を含む組成物に関する。
さらに別の実施態様では、本開示は、超低グルテンオオムギ及びグルテナーゼを取り込んだ食物及び/又は食品を含む組成物に関する。
ある実施態様では、当該グルテナーゼは、トレラーゼ(商標)G(Tolerase(商標) G)、グルテナーゼALV003、グルテンイーズ(GlutenEase)、グルテナーゼプラス(Glutenase Plus)、ダイジェストグルテンプラス(Digest Gluten Plus)、グルテンカッター(Gluten Cutter)から成る群から選択される。
別の実施態様では、当該グルテナーゼは、1つ以上の追加の酵素(アミラーゼ、グルコアミラーゼ及びDPP4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)が含まれるが、ただしこれらに限定されない)とともに用いることができる。
配列表の簡単な説明
配列番号:1は、Aゲノムのコムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)の遺伝子配列を示す(2,024塩基対)。
配列番号:2は、配列番号:1のWPBF-Aコード配列を示す(990塩基対)。
配列番号:3は、配列番号:2のWPBF-Aタンパク質配列を示す(330アミノ酸)。
配列番号:4は、Bゲノムのコムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)遺伝子の遺伝子配列を示す(2,027塩基対)。
配列番号:5は、配列番号:4のWPBF-Bコード配列を示す(984塩基対)。
配列番号:6は、配列番号:5のWPBF-Bタンパク質配列を示す(328アミノ酸)。
配列番号:7は、Dゲノムのコムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)遺伝子の遺伝子配列を示す(2,081塩基対)。
配列番号:8は、配列番号:7のWPBF-Dコード配列を示す(990塩基対)。
配列番号:9は、配列番号:8のWPBF-Dタンパク質配列を示す(330アミノ酸)。
配列番号:10は、WPBF遺伝子のDof領域の核酸配列を示す。
配列番号:11は、WPBFタンパク質のDof領域のアミノ酸配列を示す。
配列番号:12は、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare;Hv))のDOFコード配列を示す(1,011塩基対)。
配列番号:13は、配列番号:12のタンパク質配列を示す(337アミノ酸)。
図1A及び1Bは、SDSポリアクリルアミドゲルの写真であり、野生型オオムギ及び低グルテンオオムギ変異体に存在するB、C及びDホルデインを示す。図1Bは、図1Aの同じレーンと比較して低グルテンオオムギ変異体についてロードタンパク質5倍増加を有する。 野生型オオムギ及び低グルテンオオムギ変異体の種子の写真である。 クマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルのデジタルスキャンを示す。各ウェルは、コムギの単一種子から切り出した内乳のアルコール可溶性穀粒貯蔵タンパク質を表す。種子貯蔵タンパク質プロフィールの変化を含む(いくつかのタンパク質バンドが失われ、他のタンパク質は量が減少する)内乳半種子は矢印で示されている。 クマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルのデジタルスキャンを示す。各ウェルは、コムギの単一種子から切り出した内乳のアルコール可溶性穀粒貯蔵タンパク質を表す。種子貯蔵タンパク質プロフィールの変化を含む(いくつかのタンパク質バンドが失われ、他のタンパク質は量が減少する)内乳半種子は矢印で示されている。 クマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルのデジタルスキャンを示す。各ウェルは、コムギの単一種子から切り出した内乳のアルコール可溶性穀粒貯蔵タンパク質を表す。種子貯蔵タンパク質プロフィールの変化を含む(いくつかのタンパク質バンドが失われ、他のタンパク質は量が減少する)内乳半種子は矢印で示されている。 クマシーブルー染色SDSポリアクリルアミドゲルのデジタルスキャンを示す。各ウェルは、コムギの単一種子から切り出した内乳のアルコール可溶性穀粒貯蔵タンパク質を表す。
定義
本開示における数値範囲はおおよそであり、したがって特段の指示がなければ当該範囲の外側の数値を含むことができる。数値範囲は、1つの単数ずつ増加するそのより小さな値からより大きな値までの全数値(当該より小さな値及びより大きな値を含む)を含むが、ただし任意のより小さな値と任意のより大きな値との間は少なくとも2つの単数で分離されていることを条件とする。例として、構成に関する特性、物理的特性又は他の特性(例えば分子量、粘度など)が100から1,000である場合、全ての個々の値(例えば100、101、102など)及び下位範囲(例えば100から144,155から170,197から200など)は明確に含まれる。1未満の値を含むか又は1より大きい分数(例えば1.1,1.5など)を含む範囲については、1つの単数は適宜0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。10未満の1桁の数字を含む範囲(例えば1から5)については、1つの単数は典型的には0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図されるものの単なる例示であり、列挙されている最小値と最高値との間の全ての可能な組み合わせが、本開示で明瞭に記載されていると考えることができる。数値範囲は、特に混合物中の成分の相対量、並びに種々の温度及び当該方法で記載される他のパラメーターの範囲のために本開示で提供される。
本明細書で用いられるように、“対立遺伝子”という用語はある遺伝子のまた別の1つ以上の形態のいずれかであり、前記の全てが1つの属性又は特徴と関係を有する。二倍体細胞又は生物では、ある遺伝子の2つの対立遺伝子は一対の相同染色体上の一致する遺伝子座を占有する。四倍体若しくは六倍体細胞又は生物(例えばコムギ)では、複数のゲノムの1つに存在するある遺伝子の2つの対立遺伝子は、一対の相同染色体上の一致する遺伝子座を占め、当該複数のゲノム(例えば四倍体コムギのA若しくはBゲノム又は六倍体コムギのA、B若しくはDゲノム)の別のゲノム上の同じ遺伝子座を占める同じ遺伝子の2つの対立遺伝子は第一のゲノムの当該遺伝子と同祖であり、同祖染色体上に存在すると言われる。
本明細書で用いられるように、“変化する”、“増加する(increasing, increased)”、“減少する(reducing, reduced)”、“阻害される”などの用語は、相対的用語(すなわち野生型又は未変化状態との比較)と考えられる。“タンパク質のレベル”は具体的なタンパク質(例えばWPBF)の量を指し、前記は当該分野で公知の任意の手段(例えばウェスタンブロット分析又は他の免疫学的手段)によって測定できる。本明細書で用いられるように、“転写因子(“TF”)活性”は、TFがその標的遺伝子の転写を活性化する程度を指す。
本明細書で用いられるように、“WPBF活性”は以下の特徴の1つ以上によって測定できる:(1)WPBFが転写を活性化する程度:(2)WPBFがDNAに結合する程度;(3)WPBFがコアクチベーター及び/又は他の転写調節複合体と結合する程度;及び(4)DNAと結合したWPBFの安定性。WPBF活性レベル又は転写因子活性レベルは変異体で変化している可能性はあるが、当該タンパク質それ自体の発現レベル(量)は変化しないことは理解されよう。逆に、タンパク質の量は変化する可能性があるが、活性タンパク質が多かれ少なかれ産生されるならば当該活性は同じままである。量及び活性の両方の減少もまた、例えば当該酵素をコードする遺伝子が不活化されるときに可能である。ある種の実施態様では、タンパク質又は活性のレベルの減少は、非改変コムギの内乳のタンパク質又は活性のレベルと比較して少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、或いは少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%である。当該タンパク質若しくは遺伝子発現のレベル、又はWPBF活性のレベル、又は転写因子活性のレベルにおける低下は、穀粒の発育の任意の段階で(特に登熟期の間)又は穀粒発生から成熟までの全段階で起こり得る。
本明細書で用いられるように、アミノ酸又は核酸配列の“同一性”及び“類似性”は、比較される2つの配列間の最適な全面的アラインメントから決定される。最適な全面的アラインメントは、例えばNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443-453)を用いて達成される。配列はまた、当業界で公知のアルゴリズム(例えばCLUSTAL Vアルゴリズム又はBlastn若しくはBLAST2配列プログラムが含まれるが、ただしこれらに限定されない)を用いてアラインメントできる。
本明細書で用いられるように、“オオムギ”という用語はホルデウム属(Genus Hordeum)の任意の種(その先祖を含む)とともに他の種との交配によって作製されたその子孫を指す。オオムギの好ましい形態はホルデウム・ブルガレの種である。
本明細書で用いられるように、オオムギDof転写因子は、オオムギ転写物MLOC_12852.2(Dof転写因子)を指す。
本明細書で用いられるように、“改変オオムギDof転写因子遺伝子”は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集又は前記の組み合わせによるオオムギDof転写因子遺伝子の改変を含む。
“同一性”は、第一のポリペプチド又はポリヌクレオチドの該当する位置のアミノ酸又はヌクレオチドが、第二のポリペプチド又はポリヌクレオチド(第一のポリペプチド又はポリヌクレオチドと全体的に最適にアラインメントされている)の対応するアミノ酸又はヌクレオチドと同一であることを意味する。同一性とは対照的に、“類似性”は保存的置換のアミノ酸を包含する。“保存的”置換は、Blosum62置換マトリックスで正のスコアを有する任意の置換である(Hentikoff and Hentikoff, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919)。
“配列Aは配列Bとn%類似する”と言えば、配列Aと配列Bとの間で最適な全体的アラインメントにある位置のn%が、同一の残基又はヌクレオチド及び保存的置換から成ることを意味する。“配列Aは配列Bとn%同一である”と言えば、配列Aと配列Bとの間で最適な全体的アラインメントにある位置のn%が同一の残基又はヌクレオチドから成ることを意味する。
本明細書で用いられるように、“遺伝子”又は“遺伝子配列”という用語は、遺伝子の部分的又は完全なコード配列、その相補物、及びその5’又は3’非翻訳領域を指す。遺伝子はまた遺伝の機能的単位であり、物理的関係では、ポリペプチド鎖の生成に必要なDNA分子(又はRNAウイルスの場合にはRNA分子)を伴うヌクレオチドの個々のセグメント又は配列である。後者は、機能的タンパク質又はポリペプチドを得るためにその後のプロセッシング(例えば化学的改変又は折畳み)に付され得る。遺伝子は単離又は部分的に単離されるか、又は生物のゲノム内で見出され得る。例示すれば、転写因子遺伝子は転写因子ポリペプチドをコードし、前記は機能性であるか又は転写開始因子として機能するようにプロセッシングを必要とすることがある。
操作上、遺伝子はcis-trans試験によって定義することができる(前記は、2つの変異が同じ遺伝子で生じるか否かを決定し、さらに遺伝的に活性な単位の境界を決定するために用いることができる遺伝子試験である)。一般的には、遺伝子は、コード領域に先行する領域(“リーダー”(上流))及び後続する領域(“トレイラー”(下流))を含む。遺伝子はまた、“イントロン”と称される介在非コード配列を含むことができる(イントロンは個々のコードセグメント(“エクソン”と称される)の間に位置する)。大半の遺伝子は随伴するプロモーター領域(転写開始コドンの5’側の調節配列)を有する(識別可能なプロモーターをもたないいくつかの遺伝子が存在する)。遺伝子の機能はまた、エンハンサー、オペレーター及び他の調節エレメントによって調節され得る。
本明細書で用いられるように、“改変植物”という用語は、非トランスジェニック変異を有する植物、又はトランスジーンを含む植物、又はゲノム編集を受けた植物、又は前記の組み合わせを含む。
本明細書で用いられるように、“植物”という用語は、未成熟又は成熟全植物に対応するものを含み、前記には種子又は穀粒又は葯が除去された植物が含まれる。植物を生じる種子又は胚もまた植物とみなされる。
本明細書で用いられるように、“植物部分”という用語は、植物のプロトプラスト、コムギの植物体を再生できる植物細胞の組織培養、植物カルス、植物塊、及び植物体又は植物の部分で無傷である植物細胞(例えば胚、胚珠、果皮、種子、花、小筒花、頭花、とげ、葉、根、根冠、葯など)を含む。
本明細書で用いられるように、“ポリペプチド”という用語は、互いにペプチド結合又は改変ペプチド結合によって結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を指す。“ポリペプチド”は、短い鎖(一般的にはペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと称される)及び長い鎖(一般的にはタンパク質と称される)の両方を指す。ポリペプチドは、20の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。“ポリペプチド”は、天然のプロセス(例えばプロセッシング及び他の翻訳後修飾)によって改変されたものだけでなく化学的な改変技術によって改変されたものもまた含む。そのような改変は、基礎的な成書及びより詳細にはモノグラフとともに豊富な研究論文に詳しく記載されてあり、当業界で周知である。同じタイプの改変が1つの与えられたポリペプチドのいくつかの部位に同程度に又は種々の程度に存在し得ることは理解されるであろう。
本明細書で用いられるように、一般的に“ポリヌクレオチド”という用語は任意のポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボブクレオチドを指し、前記は非改変RNA又はDNAであっても改変RNA又はDNAであってもよい。前記の定義には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域、又は一本鎖、二本鎖及び三本鎖領域の混合物のDNA、cDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物のRNA、DNA及びRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖又はより典型的には二本鎖若しくは三本鎖領域、又は一本鎖及び二本鎖領域の混合物であり得るハイブリッド分子)。“ポリヌクレオチド”という用語はまた、短いヌクレオチド又はフラグメント(しばしば“オリゴヌクレオチド”と称される)を包含し、前記は変異誘導のために100%同一というわけではないが、それにもかかわらず同じアミノ酸配列をコードする。
本明細書で用いられる“削減又は非機能性フラグメント”は、全核酸配列のタンパク質コード配列と比較して、生物学的活性低下を示すWPBFタンパク質をコードする核酸配列を指す。換言すれば、前記用語は、本発明のWPBFポリペプチドをコードする能力を実質的に維持するが、コードされたWPBFポリペプチドは活性の低下を示す核酸又はそのフラグメントを指す。
本明細書で用いられる“フラグメント”という用語は、ポリヌクレオチド配列を指し、前記は、人工的に(例えば化学的合成によって)又は天然の生成物を制限エンドヌクレアーゼ若しくは機械的せん断を用いて複数の断片に切断することによって構築された対象核酸の単離された部分、又はPCR、DNAポリメラーゼ若しくは任意の当業界で周知の他の重合技術によって合成されるか、又は当業者に周知の組換え核酸技術によって宿主細胞で発現された核酸の部分である。
本開示のポリヌクレオチドに関しては、“単離ポリヌクレオチド”という用語が時に用いられる。DNAに適用されるときは、前記用語はDNA分子を指し、前記DNA分子は、それが由来した生物に天然に存在するゲノムで前記DNA分子の(5’及び3’方向で)直前に連続する配列から分離される。例えば、“単離ポリヌクレオチド”はPCRフラグメントを含むことができる。別の実施態様では、“単離ポリヌクレオチド”はベクター(例えばプラスミド又はウイルスベクター)に挿入されたDNA分子、又は原核細胞若しくは真核細胞のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含むことができる。“単離ポリヌクレオチド分子”はまたcDNA分子を含むことができる。
本明細書で用いられるように、一塩基多型(SNP)は、転移(C/T又はG/A)又は転換(C/G、A/T、C/A又はT/G)としてヌクレオチド置換された2つのDNA間における単一ヌクレオチド塩基の相違である。一塩基変種は、ゲノムの一塩基挿入及び欠失であるSNPと考えられる。
本明細書で用いられるように、トレラーゼ(商標)Gは、グルテン消化の促進に有効であることが示されたプロリン特異的消化酵素である。トレラーゼ(商標)Gは低カロリー食及び高カロリー食の両方で働く。
本明細書で用いられるように、“転写因子(“TF”)活性”は、TFがその標的遺伝子の転写を活性化する程度を指す。
本明細書で用いられるように、“トランスジェニック植物”は、同じ種の野生型植物、品種又は栽培品種では見出されない遺伝子構築物(“トランスジーン”)を含む植物を指す。本明細書に言う“トランスジーン”は生物工学の分野の通常の意味を有し、組換えDNA又はRNA技術によって作製又は改変され、植物細胞に導入された遺伝的配列を含む。トランスジーンは植物細胞に由来する遺伝的配列を含むことができる。典型的には、トランスジーンは、人間の操作によって(例えば形質転換によって)植物に導入されているが、ただし当業者に周知の任意の方法を用いることができる。
本明細書で用いられるように、“改変WPBF遺伝子”は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集又は前記の組み合わせによるWPBF遺伝子の改変を含む。
本明細書で用いられるように、“WPBF誘導体”はWPBFタンパク質/ペプチド/ポリペプチド配列を指し、前記は、全WPBFタンパク質/ペプチド/ポリペプチド配列の生物学的活性と比較して実質的に低下した生物学的活性をもつ。換言すれば、前記は、低下したWPBF活性を有する改変WPBFタンパク質のポリペプチドを指す。“WPBF誘導体”という用語は、改変WPBFタンパク質/ペプチドの“フラグメント”又は“化学的誘導体”を包含する。
コムギはトリチクム属の種の任意の植物と定義され、前記種は商業的に栽培され、例えば以下が含まれる:トリチクム・アエスチブムL.・アエスチブム亜種(Triticum aestivum L. ssp. aestivum)(普通コムギ又はパンコムギ)、トリチクム・アエスチブムの他の亜種、トリチクム・チュルギデュムL.・デュルム亜種(デュラムコムギ(マカロニコムギ又はパスタコムギとしても知られている))、トリチクム・モノコックムL.・モノコックム亜種(Triticum monococcum L. ssp. monococcum)(栽培型ヒトツブコムギ又はスペルトコムギ(small spelt))、トリチクム・チモフェービ・チモフェービ亜種(Triticum timopheevi ssp. timopheevi)、トリチクム・チュルギデュムL.・ジコッコン亜種(Triticum turgidum L. ssp. dicoccon)(栽培型エンマーコムギ)、及びトリチクム・チュルギデュムの他の亜種(Feldman)。コムギは、AABBDD型ゲノムを有する六倍体コムギでもAABB型ゲノムを有する四倍体コムギでもよい。コムギの遺伝的多様性はある種の近縁種(ライムギ及びオオムギを含む)にハイブリダイゼーションによって伝達されたので、本開示はまたそのようにして形成されたハイブリッド種を含む。前記ハイブリッド種にはライコムギが含まれ、前記はパンコムギとライムギのハイブリッドである。ある実施態様では、コムギはトリチクム・アエスチブム種及び好ましくはアエスチブム亜種である。また別には、変異又はトランスジーンはトリチクム・アエスチブムからデュラムコムギに容易に伝達することができるので、コムギは好ましくはトリチクム・チュルギデュムL.・デュルム亜種である。
別の実施態様では、本開示は、コムギの植物体ゲノムに外来核酸を含まない野生型コムギと比較してグルテンが減少した穀粒をもつコムギを記載する。ある実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子の非トランスジェニック変異に関する。
さらに別の実施態様では、本開示は、1つ以上のWPBF遺伝子における一連の独立したヒト誘導非トランスジェニック変異、その少なくとも1つのWPBF遺伝子にこれらの変異の1つ以上を有するコムギ、及びコムギの少なくとも1つのWPBF遺伝子で類似の変異及び/又は追加の変異を惹起及び同定する方法に関する。
さらに別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の発現及び/又はWPBFタンパク質の活性を低下させるトランスジーンを有するトランスジェニックコムギに関し、ここで前記トランスジーンは、野生型植物の穀粒と比較してグルテンが減少した穀粒の一助となる。
さらに別の実施態様では、本開示は改変WPBF遺伝子を有するコムギに関し、ここでWPBF遺伝子はゲノム編集によって改変され、さらに前記改変は野生型植物の穀粒と比較してグルテンが減少した穀粒の一助となる。
1.コムギプロラミンボックス結合因子
コムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)(1つのフィンガー(Dof)転写因子により結合するDNA)は、種子の発育中にプロラミン遺伝子発現の活性化因子として機能し、すなわちWPBFは貯蔵タンパク質遺伝子の活性化因子である。中心内乳の発育時に、貯蔵タンパク質をコードする遺伝子の転写は、特異的DNAモチーフ(内乳ボックス(EB)及びACAAモチーフを含む)と結合する転写因子を要求する経路を介して、時間的及び空間的に調節される。EBは2つの明瞭に区別されるタンパク質結合部位(GCN4様モチーフ及びプロラミンボックス)から成る。
Dofタンパク質は植物の転写因子であり、前記は高度に保存されたDNA結合ドメインを有する。Dofドメイン(約50−60アミノ酸残基から構成される)は、GATA1及びステロイドホルモン受容体のCys2/Cys2ジンクフィンガーDNA結合ドメインと類似するが、ジンクフィンガードメインと比較してより長い仮説ループを有する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の発現の低下及び/又はWPBFタンパク質の活性の低下に関する。ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の発現が低下した及び/又はWPBFタンパク質の活性が低下した植物に関する。ある実施態様では、WPBF遺伝子の発現の低下又はWPBFタンパク質の活性の低下は、非トランスジェニック変異、トランスジーン又はゲノム編集によって達成できる。
ある実施態様では、本開示は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集を介するWPBF遺伝子の改変に関する。
A.グルテニン
コムギグルテンはグリアジン及びグルテニンの二元性混合物である。グルテニン(高分子量(HMW)グルテニンサブユニット及び低分子量(LMW)グルテニンサブユニットの両方を含む)は、経済的に重要な種類のコムギ種子貯蔵タンパク質を含む。個々のHMWグルテニンポリペプチド又はサブユニットの見かけの分子量は90から200kDaの範囲である。これらのサブユニットは、それら自身及びLMWグルテニンポリペプチドとの間でジスルフィド結合により架橋して、分子量が百万ダルトンを超えるポリマーを形成する。HMWグルテニンは総内乳タンパク質の8−10%を構成し、一方、LMWグルテニンは15−20%を構成する。HMW及びLMWの両グルテニンタンパク質は、小麦粉の最終用途の決定に重要な機能的役割を果たす。
コムギでは、HMWグルテニンは、グループ1染色体の長腕上のGlu-1遺伝子座でコードされる。各遺伝子座は隔てられた2つの遺伝子から成る(2つはそれぞれx型及びy型サブユニットをコードする)。個々のHMWグルテニン対立遺伝子の量及び実体の両方が、種々の栽培品種のパン製造品質の相違の一因となる。例えば、グルテニン遺伝子の欠失はHMWグルテニンの全体的レベルの低下をもたらし、これはパン製造品質の低下を生じる。
ある特徴では、本開示は、野生型植物と比較して高分子量グルテニンの量が増加した改変植物に関する。ある実施態様では、本開示は、高分子量グルテニンの量を増加させる組成物及び方法に関する。別の実施態様では、本開示は、穀粒中の高分子量グルテニンの量を増加させる、コムギプロラミンボックス結合因子遺伝子の改変に関する。さらに別の実施態様では、本開示は、穀粒中の高分子量グルテニンの量を増加させる、WPBF遺伝子の1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変に関する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型植物と比較して約5%、又は10%、又は15%、又は20%、又は25%、又は30%、又は40%、又は50%、又は60%、又は70%、又は80%、又は85%、又は90%、又は95%以上多い高分子量グルテニンを有する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型植物と比較して約5%から約20%、又は約20%から約40%、又は40約%から約60%、又は約60%から約80%、又は80%から約95%多い高分子量グルテニンを有する。
ある特徴では、本開示は、野生型植物と比較して低分子量グルテニンの量が減少した改変植物に関する。ある実施態様では、本開示は、穀粒中の低分子量グルテニンの量を減少させる組成物及び方法に関する。別の実施態様では、本開示は、野生型穀粒と比較して、穀粒中の低分子量グルテニンの量を減少させる、コムギプロラミンボックス結合因子遺伝子の改変に関する。さらに別の実施態様では、本開示は、野生型穀粒と比較して、穀粒中の低分子量グルテニンの量を減少させる、WPBF遺伝子の1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変に関する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型穀粒で見出される低分子量グルテニンの量の約5%未満、又は10%未満、又は15%未満、又は20%未満、又は25%未満、又は30%未満、又は40%未満、又は50%未満、又は60%未満、又は70%未満、又は80%未満、又は85%未満、又は90%未満、又は95%未満を有する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型植物の穀粒と比較して、約5%から約20%、又は約20%から約40%、又は40約%から約60%、又は約60%から約80%、又は80%から約95%未満の低分子量グルテニンを有する。
B.グリアジン
グリアジンはコムギグルテンのアルコール溶解性タンパク質分画である。グリアジンは、典型的にはグルタミン及びプロリンに富む(特にN-末端部分において)。例えば、アルファ-及びガンマ-グリアジンの最初の100アミノ酸は、グルタミン及びプロリン残基のそれぞれ約35%及び約20%を含む。
本開示のある特徴では改変植物が提供され、前記改変植物は、野生型植物と比較してグリアジンの量が少ないことでそれらの天然に存在する対応物と相違する。ある実施態様では、本開示は、穀粒中のグリアジンの量を減少させる組成物及び方法に関する。別の実施態様では、本開示は、野生型穀粒と比較して、穀粒中のグリアジンの量を減少させるWPBF遺伝子の改変に関する。さらに別の実施態様では、本開示は、野生型穀粒と比較して、穀粒中のグリアジンの量を減少させるWPBF遺伝子の1つ以上の変異に関する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型穀粒のグリアジンの量の約5%未満、又は10%未満、又は15%未満、又は20%未満、又は25%未満、又は30%未満、又は40%未満、又は50%未満、又は60%未満、又は70%未満、又は80%未満、又は85%未満、又は90%未満、又は95%未満を有する。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の変異又はWPBF遺伝子の改変を有する植物(オオムギ、ライムギ及びコムギを含む)に関し、前記植物は、野生型植物の穀粒と比較して、約5%から約20%、又は約20%から約40%、又は40約%から約60%、又は約60%から約80%、又は80%から約95%未満のグリアジンを有する。
II.WPBF遺伝子の変異
A.WPBF遺伝子
ある実施態様では、本開示はWPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。別の実施態様では、本開示はWPBF遺伝子の1つ以上の変異に関する。ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の複数の非トランスジェニック変異に関し、前記複数の変異には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異が含まれる。
別の実施態様では、WPBF遺伝子は、表1−3に列挙される1つ以上の非トランスジェニック変異及びホモローグの対応する変異並びにその組合せを含むことができる。
別の実施態様では、本開示は、本明細書に開示するWPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異に対応する、対応ホモローグにおける変異に関する。例示すれば、AゲノムのWPBF遺伝子で同定された変異はB及び/又はDゲノムのWPBF遺伝子の有益な変異であり得る。ホモローグの変異は厳密には同じ位置に存在しないことがあるということは当業者には理解されるであろう。
種々のコムギ品種におけるWPBF遺伝子の遺伝的配列には天然の多様性が存在し得ることは当業者には理解される。
本発明者らは、植物の穀粒のグルテン減少を達成するためにはWPBF遺伝子機能を低下させる変異が望ましいと決定した。好ましい変異はミスセンス及びナンセンス変異を含み、前記には、メッセンジャーRNAから1つ以上のWPBFタンパク質の翻訳物を成熟前に先端切断する変異、例えばWPBFメッセンジャーRNAのコード領域内に終止コドンを作出する変異が含まれる。そのような変異には、挿入、反復配列、スプライス接合部変異、改変オープンリーディングフレーム(ORF)及び点変異が含まれる。
さらに別の実施態様では、1つ以上の変異はAゲノムのWPBF遺伝子に存在する。別の実施態様では、1つ以上の変異はBゲノムのWPBF遺伝子に存在する。さらに別の実施態様では、1つ以上の変異はDゲノムのWPBF遺伝子に存在する。なお別の実施態様では、1つ以上の変異はA及びBゲノムのWPBF遺伝子に存在する。さらに別の実施態様では、1つ以上の変異はA及びDゲノムのWPBF遺伝子に存在する。別の実施態様では、1つ以上の変異はB及びDゲノムのWPBF遺伝子に存在する。なお別の実施態様では、1つ以上の変異はA、B及びDゲノムのWPBF遺伝子に存在する。
1.Aゲノム
ある実施態様では、本開示は、AゲノムのWPBF遺伝子の複数の非トランスジェニック変異に関し、前記複数の変異には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異が含まれる。ある実施態様では、1つ以上の非トランスジェニック変異はAゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に存在する。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、AゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。ある実施態様では、変異はホモ接合性である。
なお別の実施態様では、1つ以上の変異はAゲノムのWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。さらに別の実施態様では、1つ以上の変異は、WPBFタンパク質のDNA結合を変化させるWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。なお別の実施態様では、1つ以上の変異は、DNA結合を変化させないが別の態様でWPBFの機能を変化させるWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。
表1−3に特定した下記変異は、本明細書に開示する種々の実施態様にしたがって作出及び同定した変異の例示である。それらは、限定のためではなく例証のために提供される。下記の変異は単に例示であること及び類似する変異もまた意図されることは理解されよう。
表1は、AゲノムのWPBF遺伝子の代表的変異のリストである。1つの例示的変異はG41Aであり、前記変異は、配列番号:2の配列のヌクレオチド41位で特定される当該位置のグアニンからアデニンへの変化をもたらす。この変異は、発現タンパク質(配列番号:3)のアミノ酸14位で特定される当該位置のグリシンからアスパラギン酸への変化を生じる。ある種の対立遺伝子にとって、ヌクレオチドの位置は上流の非翻訳領域のためにわずかに変動し得ることは当業者には理解されるであろう。表1−3に列挙されるアミノ酸変化を生じる全ての核酸変化が本明細書に包含される。
表1:AゲノムのWPBF遺伝子の代表的な変異

ある実施態様では、本開示は、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、配列番号:2に対応するAゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施態様では、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドは、配列番号:2と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
なお別の実施態様では、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドはWPBFタンパク質をコードし、ここで当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:3と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
配列番号:1:コムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)Aゲノム(当該ヌクレオチド配列は種々のコムギ栽培品種の種々の対立遺伝子と非常にわずかに相違することがある)

配列番号:2:コムギプロラミンボックス結合因子(WPBF)Aコード領域
配列番号:3:WPBF-Aアミノ酸配列
2.Bゲノム
ある実施態様では、本開示は、BゲノムのWPBF遺伝子の複数の非トランスジェニック変異に関し、前記複数の変異には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異が含まれる。ある実施態様では、1つ以上の非トランスジェニック変異はBゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に存在する。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、BゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。さらに別の実施態様では、変異はホモ接合性である。
なお別の実施態様では、1つ以上の変異はBゲノムのWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。さらに別の実施態様では、1つ以上の変異は、WPBFタンパク質のDNA結合を変化させるWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。なお別の実施態様では、1つ以上の変異は、DNA結合を変化させないが別の態様でWPBFの機能を変化させるWPBF遺伝子のDoF領域に存在する。
表2は、コムギ(クロノス及びエクスプレス)のBゲノムのWPBF遺伝子における変異の代表的なリストを提供する。ヌクレオチド及びアミノ酸の変化はそれぞれ配列番号:5及び6の当該位置にしたがって特定される。“*”は終止コドンを示す。
表2:BゲノムのWPBF遺伝子の代表的な変異




ある実施態様では、本開示は、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、配列番号:5に対応するBゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施態様では、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドは、配列番号:5と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
なお別の実施態様では、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドはWPBFタンパク質をコードし、ここで当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:6と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
配列番号:4:WPBF-Bゲノム
配列番号:5:WPBF-Bコード配列

配列番号:6:WPBF Bアミノ酸配列
3.Dゲノム
ある実施態様では、本開示は、DゲノムのWPBF遺伝子の複数の非トランスジェニック変異に関し、前記複数の変異には1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える(ただし前記に限定されない)変異が含まれる。ある実施態様では、1つ以上の非トランスジェニック変異はDゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に存在する。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、DゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
表3は、コムギ(エクスプレス)のDゲノムのWPBF遺伝子で作出し特定した変異の代表的な例を提供する。ヌクレオチド及びアミノ酸の変化はそれぞれ配列番号:8及び9の当該位置にしたがって特定される。
表3:DゲノムのWPBF遺伝子における変異の代表的なリスト



ある実施態様では、本開示は、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、配列番号:8に対応するDゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドに関する。別の実施態様では、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドは、配列番号:8と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
なお別の実施態様では、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有するポリヌクレオチドはWPBFタンパク質をコードし、ここで当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:9と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性を有する。
配列番号:7:WPBF-Dゲノム

配列番号:8:WPBF-Dコード配列
配列番号:9:WPBF-Dアミノ酸配列
4.Dof領域
ある実施態様では、本開示は、A、B又はDゲノムのWPBF遺伝子のDof領域における複数の非トランスジェニック変異に関する。ある実施態様では、本開示は、A及びBゲノムのWPBF遺伝子のDof領域における複数の非トランスジェニック変異に関する。ある実施態様では、本開示は、A及びDゲノムのWPBF遺伝子のDof領域における複数の非トランスジェニック変異に関する。ある実施態様では、本開示は、B及びDゲノムのWPBF遺伝子のDof領域における複数の非トランスジェニック変異に関する。
なお別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の配列番号:10に示すDof領域における1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。
なお別の実施態様では、本開示は、WPBFタンパク質の配列番号:11に示すDof領域における1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。配列番号:11に示す63アミノ酸の1つ以上が変異し得る。前記変異は厳密な変異又は保存的変異であり得る。
ある実施態様では、配列番号:11の28位のQが変異する。ある実施態様では、配列番号:11の28位のグルタミン(Q)はロイシン(L)に変異し得る。
配列番号:10:WPBF遺伝子のDof領域
配列番号:11:WPBFタンパク質のDof領域
B.WPBFタンパク質
なお別の実施態様では、本開示は、野生型タンパク質と比較して1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質を生じる、WPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異に関する(WPBFの変異と題する上記のセクションで考察)。ある実施態様では、非トランスジェニック変異には、表1−3に列挙した変異、ホモローグの対応する変異及び前記の組み合わせが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
別の実施態様では、本開示は、WPBFタンパク質の生成を阻害するWPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異に関する。いくつかの実施態様では、WPBF遺伝子の変異はWPBFタンパク質の発現を低下させる。他の実施態様では、WPBF遺伝子の変異は不安定な又は機能が低下したWPBFタンパク質を生じる。
1.WPBFタンパク質の発現レベル
別の実施態様では、本明細書で開示する1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質の発現レベルは、野生型WPBFタンパク質の発現レベルの0−2%、2−5%、5−7%、7−10%、10−15%、15−20%、20−25%、25−30%、30−35%、35−40%、40−45%、45−50%、50−60%、60−70%、70−80%、80−90%、90−95%、及び95−99%に低下する。
なお別の実施態様では、本明細書で開示する1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質の発現レベルは、野生型WPBFタンパク質の発現レベルと比較して10−20%、又は20−30%、又は30−40%、又は40−50%、又は50−60%、又は60−70%、又は70−80%、又は80−90%、又は90−99%低下する。
2.WPBFタンパク質の活性
なお別の実施態様では、本明細書で開示する1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質の活性は、野生型WPBFタンパク質の活性レベルの0−1、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76,77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%及び99%を超えて低下する。別の実施態様では、本明細書で開示する1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質は、野生型WPBFタンパク質と比較して、活性をもたないか又はゼロ活性を有する。
なお別の実施態様では、本明細書で開示する1つ以上の変異を有するWPBFタンパク質の活性は、野生型WPBFタンパク質の活性レベルの1−10%、又は10−30%、又は30−50%、又は50−70%、又は70−80%、又は80−90%、又は90−95%である。
III.トランスジーン
ある実施態様では、本開示は、ポリヌクレオチドをコードするトランスジーンを含むトランスジェニック植物に関し、前記ポリヌクレオチドは、WPBF遺伝子の発現及び/又はWPBFタンパク質の活性をダウンレギュレートする。そのようなポリヌクレオチドの例には、アンチセンスポリヌクレオチド、センスポリヌクレオチド、触媒ポリヌクレオチド、人工ミクロRNA又は二本鎖RNA分子が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の発現及び/又はWPBFタンパク質の活性を低下させるトランスジーンを含むコムギに関し、ここで前記コムギは野生型植物と比較してグルテンが減少した穀粒を有する。
A.アンチセンスポリヌクレオチド
“アンチセンスポリヌクレオチド”という用語は、DNA若しくはRNA又は前記の組み合わせであって、WPBFをコードする特定のmRNAの少なくとも一部分に対して相補的であり、かつ転写後事象(例えばmRNA翻訳)に干渉できる分子を指すと理解されよう。
植物のアンチセンスポリヌクレオチドは、生理学的条件下で標的ポリヌクレオチドとハイブリダイズするであろう。本明細書で用いられるように、“生理学的条件下でハイブリダイズするアンチセンスポリヌクレオチド”は、当該ポリヌクレオチド(完全に又は部分的に一本鎖)がタンパク質をコードするmRNAと少なくとも二本鎖ポリヌクレオチドを形成できることを意味する。
アンチセンス分子は、構造遺伝子に一致する配列又は遺伝子発現若しくはスプライシング事象で制御を発揮する配列のための配列を含むことができる。例えば、アンチセンス配列は、WPBFの標的コード領域又はそれらの5’非翻訳領域(UTR)若しくは3’UTR又は前記の組み合わせに一致し得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のイントロン配列(転写中又は転写後にスプライシングで除去され得る)、好ましくはエクソン配列とのみ部分的に相補的であることができる。一般的にUTRがより高度な多様性を有することを考えれば、これらの領域を標的とすることは遺伝子阻害でより強い特異性を提供する。
アンチセンス配列の長さは、連続する少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。完全な遺伝子転写物と相補的な完全長配列を用いることができる。当該長さは最も好ましくは100−2000ヌクレオチドである。標的転写物に対するアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも90%、より好ましくは95−100%であるべきである。アンチセンスRNA分子はもちろん無関係な配列を含むことができ、前記配列は当該分子を安定化させる機能を有することができる。
B.触媒ポリヌクレオチド
触媒ポリヌクレオチド/核酸という用語は、DNA分子若しくはDNA含有分子(当業界では“デオキシリボザイム”としても知られている)又はRNA若しくはRNA含有分子(当業界では“リボザイム”としても知られている)を指し、前記は異なる基質を特異的に認識し、当該基質の化学的改変を触媒する。触媒核酸の核酸塩基はA、C、G、T塩基(及びRNAについてはU)であり得る。
典型的には、触媒核酸は、標的核酸の特異的な認識のためのアンチセンス配列及び核酸切断酵素活性(本明細書では“触媒ドメイン”とも称する)を含む。
本明細書で開示する植物のリボザイム及びリボザイムをコードするDNAは当業界で周知の方法を用いて化学的に合成できる。リボザイムはまた、RNAポリメラーゼプロモーター(例えばT7 RNAポリメラーゼ又はSP6 RNAポリメラーゼのためのプロモーター)に作動できるように連結されたDNA分子(転写に際してRNA分子を生じる)から調製できる。ベクターがまたDNA分子に作動できるように連結されたRNAポリメラーゼプロモーターを含むときには、RNAポリメラーゼ及びヌクレオチドと一緒にインキュベートしてリボザイムをin vitroで生成できる。別個の実施態様で、DNAを発現カセット又は転写カセットに挿入することができる。合成後に、リボザイムを安定化させ当該リボザイムをRNaseに対して耐性にする能力を有するDNA分子に連結することによって、RNA分子を改変できる。
本明細書に記載するアンチセンスポリヌクレオチドに関して、触媒ポリヌクレオチドはまた標的核酸分子(例えばWPBFをコードするmRNA)と“生理学的条件下”(すなわち植物細胞内の条件下)でハイブリダイズする能力を有するべきである。
C.RNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、特定のタンパク質の生成を特異的に阻害するために特に有用である。この技術は、問題の遺伝子又はその部分のmRNAと本質的に同一の配列を含むdsRNAの存在を必要とする。便利には、dsRNAは、組換えベクター又は宿主細胞で単一プロモーターから生成することができる。この場合、センス及びアンチセンス配列は無関係の配列によってフランキングされ、前記無関係の配列は、センス配列とアンチセンス配列とをハイブリダイズさせることができ、ループ構造を形成する無関係の配列を有するdsRNAを形成する。本発明に適切なdsRNA分子の設計及び生成は十分に当業者の技量内にあり、特に一考すればWO 99/32619、WO 99/53050、WO 99/49029、及びWO 01/34815がある。
一例では、不活化されるべき標的遺伝子と相同性を有する少なくとも部分的に二本鎖(二重体)RNA生成物の合成を指令するDNAが導入される。したがって、DNAはセンス及びアンチセンス配列の両方を含み、前記はRNAに転写されたときにハイブリダイズして二本鎖RNA領域を形成する。好ましい実施態様では、センス及びアンチセンス配列はスペーサー領域によって分離され、前記スペーサー領域はRNAに転写されたときにスプライスにより除去されるイントロンを含む。前記編成はより高効率の遺伝子サイレンシングをもたらすことが示された。二本鎖領域は1つ又は2つのRNA分子を含むことができ、前記は1つ又は2つのDNA領域から転写される。二本鎖分子の存在は、二本鎖RNA及び標的植物遺伝子由来の相同なRNA転写物の両方を破壊する内因性植物システムの応答を始動させ、標的遺伝子の活性を効率的に低下及び除去すると考えられる。
ハイブリダイズするセンス及びアンチセンス配列の長さは、連続する各々少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30又は50ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも100、200、500又は1000ヌクレオチドであるべきである。完全な遺伝子転写物と一致する完全長配列を用いることができる。最も好ましくは、長さは100−2000ヌクレオチドである。標的転写物に対するセンス及びアンチセンス配列の同一性の程度は、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95−100%であるべきである。RNA分子はもちろん、当該分子の安定化のために機能し得る無関係の配列を含むことができる。RNA分子は、RNAポリメラーゼII又はRNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で発現され得る。後者の例にはtRNA又はsnRNAプロモーターが含まれる。
ある実施態様では、小さな干渉RNA(“siRNA”)分子は、標的mRNAの連続する約19−21ヌクレオチドと同一のヌクレオチド配列を含む。好ましくは、標的mRNA配列はジヌクレオチドAAで開始し、約30−70%(好ましくは30−60%、より好ましくは40−60%、より好ましくは約45−55%)のGC含量を含み、さらに当該mRNAが導入されるオオムギのゲノムの標的以外のいずれのヌクレオチド配列とも高パーセンテージの同一性をもたない(例えば標準的なBLAST検索で決定される)。
D.ミクロRNA
ミクロRNA調節は、遺伝子調節のために進化した明確に特殊化されたRNAサイレンシング経路の枝分かれであり、通常的RNAi/転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)から分岐した。ミクロRNAは特殊なクラスの小RNAで、特徴的な倒置リピート内で組織化された遺伝子様エレメントでコードされる。転写されるとき、ミクロRNAはステム-ループ型前駆体RNAを生じ、前記からミクロRNAが続いてプロセッシングされる。ミクロRNAは典型的には長さが約21ヌクレオチドである。遊離されたmiRNAは、配列特異的遺伝子抑制を示すアルゴノートタンパク質の特定のサブセットを含むRISC様複合体に取り込まれる。
E.コサプレッション
利用できる別の分子生物学的アプローチはコサプレッションである。コサプレッションのメカニズムはあまり理解されていないが、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)を必要とすると考えられ、その関係でアンチセンスサプレッションの多くの例と非常に類似し得る。コサプレッションは、遺伝子又はそのフラグメントの余分なコピーをその発現のためのプロモーターに対してセンス方向で植物に導入することを必要とする。当該センスフラグメントのサイズ、標的遺伝子領域に対するその一致度、及び標的遺伝子に対する配列同一性の程度は上記に記載したアンチセンス配列と同様である。いくつかの事例では、遺伝子配列の追加されたコピーは標的の植物遺伝子の発現に干渉する。コサプレッションを実施する方法についてはWO 97/20936及びEP 0465572が参照される。
IV.ゲノム編集
ある実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子の発現が低下した及び/又はWPBFタンパク質の活性が低下した植物に関し、ここでWPBF遺伝子の発現の低下及び/又はWPBFタンパク質の活性の低下はゲノム編集によって達成される。
ある実施態様では、本開示はゲノム編集されたWPBF遺伝子を有するコムギに関し、ここで当該コムギは野生型植物と比較してグルテンが減少した穀粒を有する。
ゲノム編集又は操作ヌクレアーゼによるゲノム編集(GEEN)は、人工的に操作されたヌクレアーゼ又は“分子ハサミ”を用いてDNAを挿入し、置換し、又はゲノムから除去する遺伝子操作の一タイプである。前記ヌクレアーゼは、特異的な二本鎖ブレーク(DSB)をゲノムの所望の位置に作出し、細胞の内因性メカニズムを利用して、相同性組換え(HR)及び非相同末端結合(NHEJ)の天然のプロセスによって当該誘導ブレークを修復する。これまでのところ以下の4つの主要な操作ヌクレアーゼファミリーが用いられている:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系、及び再操作ホーミングエンドヌクレアーゼを有する操作メガヌクレアーゼ。
A.ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガー結合ドメインDNA切断ドメインと融合することによって作製される人工の制限酵素である。ジンクフィンガードメインを操作して、所望される特定のDNA配列を標的とすることができ、これによってジンクフィンガーヌクレアーゼは複雑なゲノム内の固有配列を標的とすることができる。内因性DNA修復機構を利用することによって、これらの試薬を用いて高等生物のゲノムを正確に変異させることができる。
ZFNは、FokI制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインと融合した操作ジンクフィンガーDNA結合ドメインから成る。ZFNを用いて特異的なDNA配列に二本鎖ブレーク(DSB)を誘導することができ、したがって外因性鋳型との部位特異的相同組換えを容易にする。外因性鋳型は当該ゲノムに導入されるべき配列を含む。
ジンクフィンガードメインの操作のために公開されている方法には以下が含まれる:(1)コンテクスト依存アッセンブリー(CoDA)、(2)オリゴマー化プールエンジニアリング(OPEN)、及び(3)モジュールアッセンブリー。
ある実施態様では、本開示は、ZFNを用いるWPBF遺伝子の発現低下及び/又はWPBFタンパク質の活性低下に関する。
B.転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
TALENは配列特異的エンドヌクレアーゼであり、転写活性化因子様エフェクター(TALE)及びFokIエンドヌクレアーゼから成る。TALEはDNA結合タンパク質であり、34アミノ酸のタンデムリピートユニットをもつ高度に保存された中心領域を有する。各リピートユニットの塩基嗜好性は、リピート可変性二残基(RVD)と称される2つのアミノ酸残基によって決定される(RVDは標的DNAの1つの特異的ヌクレオチドを認識する)。DNA結合リピートユニットのアレーを特異的なDNA配列を標的とするためにカスタマイズすることができる。ZFNと同様に、ゲノム中の特異的配列標的での2つのTALENのダイマー化はDSBのFokI依存性導入をもたらし、相同性誘導修復(HDR)及び非相同末端結合(NHEJ)修復メカニズムを促進する。
ある実施態様では、本開示は、TALENを用いるWPBF遺伝子の発現低下及び/又はWPBFタンパク質の活性低下に関する。
C.CRISPR/Cas系
規則的間隙配置短パリンドロームリピート(CRISPR)II型系クラスターは、ゲノム編集のためのRNAガイド付きエンドヌクレアーゼ技術である。この系には2つの別個の成分、(1)ガイドRNA及び(2)エンドヌクレアーゼ(本事例ではCRISPR結合(Cas)ヌクレアーゼ、Cas9)が存在する。
ガイドRNAは、内因性細菌crRNA及びtracrRNAが単一のキメラガイドRNA(gRNA)転写物に一体化されている。gRNAは、crRNAの標的誘導特異性をtracrRNAの折り畳み特性と単一転写物で一体化する。gRNA及びCas9が細胞で発現されると、ゲノムの標的配列は改変されるか又は永久的に破壊される。
gRNA/Cas9複合体は、gRNA配列とゲノムDNA中の標的配列に対する相補性との間の塩基対形成によって標的配列に動員される。Cas9の首尾よい結合のために、ゲノム標的配列はまた、標的配列の直ぐ後に正確なプロトスペーサー近傍モチーフ(PAM)配列を含む必要がある。gRNA/Cas9複合体の結合はCas9をゲノム標的配列に局在させ、したがって野生型Cas9はDNAの両鎖を切断して二本鎖ブレーク(DSB)を生じることができる。Cas9はPAM配列の3−4ヌクレオチド上流を切断するであろう。DSBは以下の2つの一般的な修復経路の1つを介して修復され得る:(1)NHEJ DNA修復経路又は(2)HDR経路。NHEJ修復経路はしばしばDBS部位に挿入/欠失(InDel)をもたらし、前記はフレームシフト及び/又は未成熟終止コドンを生じて標的遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)を効果的に破壊することができる。
HDR経路は修復鋳型の存在を必要とする(修復鋳型はDSBの固定に用いられる)。HDRは修復鋳型配列を切断標的配列に忠実にコピーする。特異的なヌクレオチド変化は、修復鋳型とともにHDRを用いることによって標的遺伝子に導入できる。
ある実施態様では、本開示は、CRISPR/cas9系を用いるWPBF遺伝子の発現低下及び/又はWPBFタンパク質の活性低下に関する。
D.再操作ホーミングヌクレアーゼを有するメガヌクレアーゼ
メガヌクレアーゼは、大きな認識部位(12から40塩基対の二本鎖DNA配列)を特徴とするエンドデオキシリボヌクレアーゼである(結果として一般的にこの部位はいずれのゲノムでも一度しか生じない)。例えば、I-SceIメガヌクレアーゼによって認識される18塩基対配列は、1回偶然に見いだされるためには平均してヒトゲノムサイズの20倍のゲノムを要求する(ただし単一変異を有する配列はヒトサイズゲノムに付き約3回生じる)。したがって、メガヌクレアーゼは天然に存在するもっとも特異的な制限酵素と考えられる。
メガヌクレアーゼの中では、LAGLIDADGファミリーのホーミングエンドヌクレアーゼは、ここ15年の間にゲノム研究及びゲノム操作のための重要なツールとなった。それらの認識配列をタンパク質操作により改変することによって、標的とされる配列を変更することができる。
ある実施態様では、本開示は、再操作ホーミングエンドヌクレアーゼを有するメガヌクレアーゼを用いるWPBF遺伝子の発現低下及び/又はWPBFタンパク質の活性低下に関する。
V.コムギの栽培品種
ある実施態様では、少なくとも1つのWPBFを有する二倍体、倍数体、四倍体、及び六倍体のコムギの栽培品種を用いることができる。
別の実施態様では、コムギはトリチクム・アエスチブムである。
ある実施態様では、任意のコムギ栽培品種を用いてWPBF遺伝子に変異を作出できる。ある実施態様では、任意のコムギ栽培品種を用いてAゲノムのWPBF遺伝子に変異を作出できる。別の実施態様では、任意のコムギ栽培品種を用いてBゲノムのWPBF遺伝子に変異を作出できる。別の実施態様では、任意のコムギ栽培品種を用いてDゲノムのWPBF遺伝子に変異を作出できる。
ある実施態様では、系統として任意のコムギ栽培品種を用いて種々の栽培品種にWPBF変異を交配できる。別の実施態様では、少なくとも1つのWPBF遺伝子を有する任意のコムギ栽培品種を用いることができ、前記には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):硬質赤色春小麦、硬質白色小麦、デュラム小麦、軟質白色春小麦、軟質白色冬小麦、硬質赤色冬小麦、普通小麦、クラブ小麦、スペルト小麦、エンマー小麦、パスタ小麦、及びツルギデュム小麦。
ある実施態様では、硬質赤色春小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ブルシーエ(Bullseye)、カバーネット(Cabernet)、カルローホ(Cal Rojo)、ハンク(Hank)、ジョーキン(Joaquin)、ケルス(Kelse)、ラリアット(Lariat)、ラシック(Lassik)、マルベック(Malbec)、ミカ(Mika)、PR 1404、レッドウィング(Redwing)、サミット515(Summit 515)、SY 314、トリプルIV、ウルトラ、WB-パトロン、WB-ロックランド(WB-Rockland)、イェコーラロホ(Yecora Rojo)、アコード(Accord)、エイム(Aim)、アンザ(Anza)、ベーカー(Baker)、ベスハシタ(Beth Hashita)、ボーナス(Bonus)、ボラー(Borah)、ブリム(Brim)、ブルークス(Brooks)、バックプロント(Buck Pronto)、ブット86(Butte 86)、カバリア(Cavalier)、チャレンジャー、チーフ(Chief)、シアノT79(Ciano T79)、コルサ(Colusa)、コンパニオン、コッパー(Copper)、キュヤマ(Cuyama)、ダッシュ12(Dash 12)、エルドン(Eldon)、エナノ(Enano)、エクスプレス(Express)、エクスプレッソ(Expresso)、ジェファーソン(Jefferson)、ジェネロF81(Genero F81)、グランジン(Grandin)、ヘレナ554(Helena 554)、ホーリス(Hollis)、イムリスT79(Imuris T79)、イニア66R(Inia 66R)、ジェローム(Jerome)、カーン(Kern)、レン(Len)、マーシャル(Marshall)、マッケイ(McKay)、ノーマッド(Nomad)、ノースウェスト10(Northwest 10)、オスロ(Oslo)、ペーボンF76(Pavon F76)、ペガサス、ピッティク62(Pitic 62)、ポコレッド(Poco Red)、パウエル(Powell)、プロブランド711(Probrand 711)、プロブランド751、プロブランド771、プロブランド775、プロブレッド(Probred)、プロインタケギュエイ(Prointa Queguay)、プロインタキンタル(Prointa Quintal)、リッチ(Rich)、RSI 5、サジッタリオ(Sagittario)、スカーレット、サーラ(Serra)、シャスタ(Shasta)、ソラーノ(Solano)、スピルマン(Spillman)、スプライト(Sprite)、スタンダー(Stander)、ステラー(Stellar)、ストア(Stoa)、サクセス、サミット、サンスター2、サンスターキング、タジニア(Tadinia)、タミー(Tammy)、タノリ71(Tanori 71)、タラ2000(Tara 2000)、テンポ(Tempo)、テシアT79(Tesia T79)、トピック、UIウィンチェスター(UI Winchester)、バンス(Vance)、バンダル(Vandal)、W444、ワンパム(Wampum)、ワレッド(Wared)、WB-フジオン(WB-Fuzion)、ウエストブレッド906R(Westbred 906R)、ウエストブレッド911、ウエストブレッド926、ウエストブレッド936、ウエストブレッドディスカバリー、ウエストブレッドランボー(Westbred Rambo)、ヨーロー(Yolo)、及びゼケ(Zeke)。
別の実施態様では、硬質白色小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ブランカフェルト(Blanca Fuerte)、ブランカグランド515(Blanca Grande 515)、ブランカロイアル(Blanca Royale)、クリアーホワイト(Clear White)、パットウィン(Patwin)、パットウィン515、WB-クリスタロ(WB-Cristallo)、WB-パロマ(WB-Paloma)、WB−パーラ(WB-Perla)、アルタブランカ(Alta Blanca)ブランカグランド、デラーノ(Delano)、ゴールデンスパイク(Golden Spike)、ID377S、クラシック(Klasic)、ロクサ(Lochsa)、ロロ(Lolo)、メイコン(Macon)、オーチス(Otis)、フェニックス(Phoenix)、ピマ77(Pima 77)、プラタ(Plata)、プリスチン(Pristine)、ラモーナ50(Ramona 50)、シエータセロス66(Siete Cerros 66)、バイオレット、及びウィンサム(Winsome)。
なお別の実施態様では、デュラム小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):クラウン(Crown)、デザートキング(Desert King)、デザートキングHP、デュラキング(Duraking)、フォルテッシモ(Fortissimo)、ハバス(Havasu)、クロノス(Kronos)、マエストラル(Maestrale)、ノルマノ(Normanno)、オリタ(Orita)、プラチナム、Q-Max、RSI 59、サラゴラ(Saragolla)、タンゴ(Tango)、ティパイ(Tipai)、トッパー(Topper)、ユートピア(Utopia)、ボラント(Volante)、WB-ミード(WB-Mead)、ウエストモア(Westmore)、アルデンテ(Aldente)、アルデュラ(Aldura)、アルター84(Altar 84)、アルバ(Aruba)、ビッテルン(Bittern)、ブラバデュア(Bravadur)、キャンデュラ(Candura)、コルテズ(Cortez)、デラックス(Deluxe)、デザートタイタン(Desert Titan)、デュレックス(Durex)、デュルフォート(Durfort)、エディ(Eddie)、ジャーメインス5003D(Germains 5003D)、インペリアル(Imperial)、コーファ(Kofa)、レバント(Levante)、マット(Matt)、ミード(Mead)、メキシカリ75(Mexicali 75)、ミノス(Minos)、モドク(Modoc)、モホーク(Mohawk)、ヌデュラ(Nudura)、オコチロ(Ocotillo)、プロデュラ(Produra)、レーバ(Reva)、リア(Ria)、セプター(Septre)、スカイ(Sky)、タクナ(Tacna)、タイタン(Titan)、トランプ(Trump)、ウォード(Ward)、ウエストブレッド803、ウエストブレッド881、ウエストブレッド883、ウエストブレッド1000D、ウエストブレッドレーカー(Westbred Laker)、ウエストブレッドターボ(Westbred Turbo)、及びヤバロス79(Yavaros 79)。
別の実施態様では、軟質白色春小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アルポワ(Alpowa)、アルチュラス(Alturas)、ベーブ(Babe)、ディバ(Diva)、JD、ニューダークウィン(New Dirkwin)、ニック(Nick)、ツウィン(Twin)、フゥイット(Whit)、ブランカ(Blanca)、ブリス(Bliss)、カローワ(Calorwa)、センテニアル(Centennial)、チャリス(Challis)、ダークウィン(Dirkwin)、エデン(Eden)、エドワール(Edwall)、フィールダー(Fielder)、フィールドウィン(Fieldwin)、ジュビリー(Jubilee)、ルイーズ(Louise)、オーウェン(Owens)、ペナワワ(Penawawa)、ポメレール(Pomerelle)、スターリング(Sterling)、サンスタープロミス(Sunstar Promise)、スーパーダークウィン(Super Dirkwin)、トレジャー(Treasure)、UIカタルドー(UI Cataldo)、UIプチット(UI Pettit)、アークィー(Urquie)、バンナ(Vanna)、ウォデュエル(Waduel)、ウィデュエル94(Waduel 94)、ワカンズ(Wakanz)、ワラデー(Walladay)、ワワイ(Wawawai)、ホワイトバード(Whitebird)、及びザック(Zak)。
なお別の実施態様では、軟質白色冬小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):APバドガー(AP Badger)、APレガシー(AP Legacy)、ブランデージ96(Brundage 96)、ブルーノー(Bruneau)、カーラ(Cara)、ゲッツェ(Goetze)、リージオン(Legion)、メリー(Mary)、スキルス(Skiles)、ステファンス(Stephens)、SYオベーション(SY Ovation)、タッブス(Tubbs)、WB-ジャンクション(WB-Junction)、WB-528)、キセルファー(Xerpha)、ヤムヒル(Yamhill)、バービー(Barbee)、バシン(Basin)、ビタールート(Bitterroot)、ブルエール(Bruehl)、カスタン(Castan)、チャッカー(Chukar)、コーダ(Coda)、ドウズ(Daws)、エドウィン(Edwin)、エルタン(Eltan)、ファーロ(Faro)、フィンチ(Finch)、フーテ(Foote)、ジーン(Gene)、ヒル81(Hill 81)、ヒラー(Hiller)、ヒュバード(Hubbard)、ヒアック(Hyak)、ヒスロップ(Hyslop)、アイダホ587、クモール(Kmor)、ランバート(Lambert)、リリュージェイン(Lewjain)、マックバイカー(MacVicar)、マドセン(Madsen)、マルコーム(Malcolm)、マサミ(Masami)、マックデルミド(McDermid)、モロ(Moro)、ヌガインス(Nugaines)、ORCF-101、ORCF-102、ORCF-103、ロッド(Rod)、ローデ(Rohde)、ルーロ(Rulo)、シモン(Simon)、サリュート(Salute)、テンプル(Temple)、トレス(Tres)、タッブス06(Tubbs 06)、UICF-ブランデージ(UICF-Brundage)、 WB-523、及びウェザーフォード。
別の実施態様では、硬質赤色冬小麦には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):アンドリュース(Andrews)、アーチャー(Archer)、バーチュム(Batum)、ブリザード(Blizzard)、ボンネビル(Bonneville)、バウンダリー(Boundary)、デクロ(Declo)、デロリス(Deloris)、フィンリー(Finley)、ガーランド(Garland)、ハットン(Hatton)、ホッフ(Hoff)、ロングホーン(Longhorn)、マンニング(Manning)、メリジアン(Meridian)、プロモントリ(Promontory)、ボーナ(Vona)、ワンサー(Wanser)、ウィンリッジ(Winridge)。
別の実施態様では、普通小麦(六倍体、脱穀不要)、トリチクム・アエスチブム・アエスチブム亜種には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):ソノラ(Sonora)、ウィットウォルコーリング(Wit Wolkoring)、チダムブランクドマース(Chiddam Blanc De Mars)、インディア-ジャミュー(India-Jammu)、フォイシー(Foisy)。
なお別の実施態様では、スペルト小麦(六倍体、脱穀不要ではない)、トリチクム・アエスチブム・スペルタ亜種にはスパニッシュスペルト、スイススペルトが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
なお別の実施態様では、エンマー小麦(四倍体)、トリチクム・チュルギデュム・ジコックム亜種にはエチオピアンブルーチンゲ(Ethiopian Blue Tinge)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様では、パスタ小麦(四倍体、脱穀不要)、トリチクム・チュルギデュム・デュルム亜種にはブルービアード(Blue Beard)、デュラム-イラク(Durum-Iraq)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
なお別の実施態様では、チュルギデュム小麦(四倍体、脱穀不要)、トリチクム・チュルギデュム・チュルギデュム亜種にはアクモリンカ(Akmolinka)、マパルチャ(Maparcha)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
ある実施態様では、配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、又は配列番号:8と実質的なパーセント同一性を有する少なくとも1つのWPBF遺伝子を有するコムギの栽培品種を、本明細書で開示する方法及び組成物とともに用いることができる。
コムギの栽培品種に関して本明細書で用いられる、“実質的パーセント同一性”は、実質的に類似のタンパク質をコードするために、遺伝子のDNA配列が配列番号:1、2、4、5、7及び8とヌクレオチドレベルで十分に類似し、栽培品種間の対立遺伝子の相違(或いはまた別のmRNAスプライシング)を可能にすることを意味する。本発明のある実施態様にしたがえば、“実質的なパーセント同一性”は、当該WPBF遺伝子と配列番号:1、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:7、及び配列番号:8との間のコード領域のパーセント同一性が約85%の低さで存在し得るが、ただし当該遺伝子の保存領域のパーセント同一性はもっと高いことを条件とする(例えば少なくとも約90%)。好ましくは、コード領域のパーセント同一性は85−90%、より好ましくは90−95%、最適には前記は95%より高い。したがって、当業者は、本発明の範囲及び意図を逸脱することなく、商業的に人気の高いコムギ栽培品種又はWPBF変異コムギを作出するために所望される特異的な特徴を有するコムギの栽培品種を利用することを所望できる。また別に、当業者は、本発明の1つ以上のWPBF遺伝子内の変異についてスクリーニングを容易にするために、多形性が少ない小麦栽培品種(例えば同系交配栽培品種)を利用することを所望できる。
VI.WPBFの変異を同定する代表的な方法
突然変異及び/又は非トランスジェニック変異の作製のために、多数の技術及び方法が利用可能であることは当業者には理解されるであろう。1つの代表的な方法を下記に記載する。
本明細書に開示するWPBF変異及びコムギを作出及び同定するために、TILINGとして知られている方法を利用した。以下を参照されたい:McCallum et al., Nature Biotechnology 18:455-457, 2000;McCallum et al., Plant Physiology, 123:439-442, 2000;米国公開広報20040053236号;及び米国特許5,994,075号(前記のいずれも参照により本明細書に含まれる)。基本的なTILINGの方法論では、植物の材料(例えば種子)が化学的変異誘導に付される(前記は種子細胞のゲノム内に一連の変異を作出する)。変異が誘導された種子を成熟M1植物体に生長させ、自家受粉させた。得られたM2植物体のDNAサンプルをプールし、続いて問題の遺伝子の変異についてスクリーニングする。いったん問題の遺伝子で変異が同定されたら、当該変異を保持するM2植物体の種子を成熟M3植物体に生長させ、問題の遺伝子の当該変異に随伴する表現型の特徴についてスクリーニングする。
ある実施態様では、四倍体栽培品種クロノスを用いた。ある実施態様では、六倍体栽培品種エクスプレスを用いた。
ある実施態様では、コムギの種子を変異させ、続いてM1植物体に生長させる。続いてM1植物体を自家受粉させ、M1植物体の種子をM2植物体に生長させる。続いて前記植物体をWPBF遺伝子座の変異についてスクリーニングする。本発明のまた別の実施態様にしたがってM1植物体を変異についてスクリーニングすることは可能であるが、M2植物体をスクリーニングすることの1つの利点は、全ての体細胞変異が生殖細胞系列変異と一致するということである。
多様なコムギ植物体材料(種子、花粉、植物組織又は植物細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない)を変異させて、本明細書に開示するWPBF変異小麦植物体を作出できることは当業者には理解されるであろう。しかしながら、植物のDNAを変異についてスクリーニングするとき、変異誘導する植物材料のタイプが影響することがある。例えば、変異誘導されていない植物体の受粉前に花粉を変異誘導に付したとき、当該受粉から生じた種子はM1植物体に生長する。M1植物体の各細胞は前記花粉で生じた変異を含み、したがってM2世代まで待機する代わりに、これらのM1植物体を続いてWPBF変異についてスクリーニングすることができる。
主として点変異及び短い欠失(約1から約30ヌクレオチド)、挿入、転換及び/又は転移を生じる変異原(例えば化学的変異原又は照射(例えばx-線及び高速中性子))を用いて、変異を作出することができる。本発明の方法に合致する変異原には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):メタンスルホン酸エチル(EMS)、スルホン酸メチルメタン(MMS)、N-エチル-N-ニトロソウレア(ENU)、トリエチルメラミン(TEM)、N-メチル-N-ニトロソウレア(MNU)、プロカルバジン、クロラムブシル、シクロホスファミド、硫酸ジエチル、アクリルアミドモノマー、メルファラン、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロサミン、N-メチル-N’-ニトロ-ニトロソグアニジン(MNNG)、ニトロソグアニジン、2-アミノプリン、7,12ジメチル-ベンズ(a)アントラセン(DMBA)、エチレンオキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ビスルファン、ジエポキシアルカン(ジエポキシオクタン(DEO)、ジエポキシブタン(DEB)など)、2-メトキシ-6-クロロ-9[3-(エチル-2-クロロ-エチル)アミノプロピルアミノ]アクリジンジヒドロクロリド(ICR-170)、アジ化ナトリウム、及びホルムアルデヒド。変異原によって直接惹起されたものではない可能性があるWPBF遺伝子の偶発的変異もまた同定できる。
現在公知であるか又は以下で考案する適切な任意の植物DNA調製方法を、WPBF変異スクリーニング用コムギ植物体DNA調製に用いることができる。例えば、以下を参照されたい:Chen & Ronald, Plant Molecular Biology Reporter 17:53-57, 1999;Stewart and Via, Bio Techniques 14:748-749, 1993。加えて、この目的のために設計されたいくつかの市販のキットを利用することができる(Qiagen(Valencia, CA)及びQbiogene(Carlsbad, CA)のキットが含まれる)。
ある実施態様では、変異誘導された植物組織から発生した植物の全集団の1つ以上のWPBF遺伝子における変異のスクリーニングを促進するために、個々のコムギ植物体から調製されたDNAがプールされる。プールされる群のサイズは、用いるスクリーニング方法の感度に左右され得る。好ましくは、コムギ植物体の2つ以上の個体群がプールされる。
別の実施態様では、DNAサンプルのプール後に、当該プールはWPBF配列特異的増幅技術(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR))に付される。PCRの概括のためには以下を参照されたい:PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis, Gelfand, Sninsky, and White, eds.), Academic Press, San Diego, 1990。
WPBF遺伝子座又はこれらの遺伝子座の直近配列に特異的な任意のプライマーを利用して、当該プールDNAサンプル内のWPBF配列を増幅できる。好ましくは、プライマーは有用な変異が最も生じやすいWPBF遺伝子座の領域を増幅するように設計される。最も好ましくは、プライマーは1つ以上のWPBF遺伝子のエクソン領域を検出するために設計される。加えて、特定のゲノムにおける点変異のスクリーニングを容易にするために、プライマーが公知の多形性部位を標的とするようにゲノム特異的プライマーを設計することが好ましい。ゲル上でのPCR生成物の検出を容易にするために、任意の通常的な又は以下で考案する標識方法を用いてPCRプライマーを標識することができる。
ある実施態様では、プライマーはWPBF遺伝子(配列番号:1、2、4、5、7および8)に基づいて設計される。別の実施態様では、WPBF遺伝子に対して5’又は3’であるプライマーが設計される。
別の実施態様では、PCR増幅生成物は、野生型と変異配列との間のヌクレオチドの相違を特定する任意の方法を用いてWPBF変異についてスクリーニングできる。これらの方法には以下が含まれ得るが、ただしそれらに限定されない:配列決定、変性高速液体クロマトグラフィー(dHPLC)、定常型変性キャピラリー電気泳動(CDCE)、温度勾配キャピラリー電気泳動(TGCE)(Li et al., Electrophoresis 23(10):1499-1511, 2002)、又は酵素切断による断片化(例えばColbertら(Colbert et al., Plant Physiology 126:480-484, 2001)が記載した高処理方法で用いられるもの)。好ましくは、PCR増幅生成物は、野生型配列と変異体配列間のヘテロデュープレックスのミスマッチを優先的に切断するエンドヌクレアーゼとインキュベートされる。
別の実施態様では、切断生成物は自動化配列決定ゲル装置を用いて電気泳動され、ゲル画像は標準的な市販の画像処理プログラムの支援によって分析される。
なお別の実施態様では、いったん変異WPBF遺伝子配列を有するM2植物体が同定されたら、当該変異を分析して、WPBF酵素の発現、翻訳及び/又は活性における当該変異の影響を決定する。ある実施態様では、変異を含むPCRフラグメントの配列は、標準的な配列決定技術を用いて配列決定され、全体的なWPBF配列に対して正確な変異位置が決定される。バイオインフォマティクスツールを用いて各変異を評価し、タンパク質機能に対する影響(すなわち完全に容認できる変異から機能消失を引き起こす変異まで)を予測する。バイオインフォマティクスツールには例えば以下が含まれる:SIFT(容認可能から容認不能の分類(Sorting Intolerant from Tolerant;Ng and Henikoff, Nucleic Acids Research 31:3812-3814, 2003))、PSSM(位置特異的スコアリングマトリックス(Position-Specific Scoring Matrix;Henikoff and Henikoff, Computer Applications in the Biosciences 12:135-143, 1996)及びPARSESNP(Taylor and Greene, Nucleic Acids Research 31:3808-3811, 2003)。例えば0.05未満のSIFTスコア及びPSSMスコアの大きな変化(例えば大雑把に10以上)は、タンパク質機能に有害な影響を有する可能性がある変異を示す。これらのプログラムには予測性があることが知られているが、当該予測結果が常に正確であるとは限らないことを当業者は理解している。
別の実施態様では、M2植物体における変異の最初の査定が、当該変異が有用な性質を有しかつWPBF遺伝子内の有用な位置にあることを示す場合、当該変異を含むコムギ植物体の更なる表現型分析を続けることができる。六倍体コムギでは、A、B及びDゲノムの各々の変異を表現型の検出前に連動させる必要がある。四倍体コムギでは、A及びBゲノムの変異を連動させる。加えて、変異含有植物は2回以上戻し交配するか又は異系交配して、いずれの世代のバックグラウンド変異も排除することができる。続いて、戻し交配又は異系交配植物を自家受粉又は交配して、WPBF変異についてホモ接合の植物を作出できる。
これらのホモ接合WPBF変異体植物のいくつかの物理的特徴を査定して、当該変異が、望ましくない負の影響(例えば種子収量の顕著な低下)をもたらすことなくコムギ植物体で有用な表現型変化をもたらすか否かが決定される。
VII.コムギ植物体の作製方法
別の実施態様では、本開示は、穀粒のグルテンが減少したコムギ植物体の作製方法に関する。別の実施態様では、本開示は、高分子量グルテニンが増加したコムギ植物体の作製方法に関する。別の実施態様では、本開示は、低分子量グルテニンが減少した植物の作製方法に関する。別の実施態様では、本開示は、グリアジンが減少した植物の作製方法に関する。なお別の実施態様では、本開示は、野生型と比較して低分子量グルテニンが減少し、かつ野生型植物に匹敵する高分子量グルテニンレベルを有する植物の作製方法に関する。
別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子変異を野生型植物と異系交配する方法に関する。
なお別の実施態様では、本開示は、野生型コムギの植物体と比較して1つ以上のWPBFタンパク質の活性が低下した植物の作製方法に関する。
ある実施態様では、前記方法は以下の工程を含む:親植物の植物材料又は植物部分のWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの非トランスジェニック変異を誘導する工程;前記変異誘導植物材料及び/又は子孫植物を分析して、WPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーで少なくとも1つの変異を検出する工程;及びWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選別する工程。
別の実施態様では、前記方法はさらに、WPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物をWPBF遺伝子の異なるコピーに少なくとも1つの変異を有する他の子孫植物と交配する工程を含む。変異を有する子孫植物を同定し、前記子孫植物を他の子孫植物(変異を有する)と交配するプロセスを反復して、WPBF活性が低下した子孫コムギ植物体を作製することができる。
別の実施態様では、当該コムギ植物体のWPBFタンパク質の活性レベルは、野生型植物のWPBFタンパク質活性レベルの0−2%、2−5%、5−7%、7−10%、10−15%、15−20%、20−25%、25−30%、30−35%、35−40%、40−45%、45−50%、50−60%、60−70%、70−80%、80−90%、90−95%、又は95−99%に低下する。
A.2つ以上のゲノムのWPBF遺伝子に1つ以上の変異を有する植物を作製する方法
なお別の実施態様では、本開示は以下の工程を含む植物の作製方法に関する:WPBF遺伝子に変異を含む親植物の植物材料のWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの非トランスジェニック変異を誘導する工程;前記変異誘導植物材料を生長させるか又は前記を用いて子孫植物を作製する工程;及びWPBF遺伝子の少なくとも2つのコピーで少なくとも1つの変異を有する子孫小麦植物体を選別する工程。例えば親植物はDゲノムのWPBF遺伝子に1つの変異を有することができる。選別子孫植物は、DゲノムのWPBF遺伝子に変異を有し、さらにBゲノムのWPBF遺伝子に1つ以上の変異を有することができる。前記の例は明確にするために単に提供され、本明細書に開示する方法を制限するものではない。
なお別の実施態様では、本発明は以下の工程を含む植物の作製方法に関する:2つのWPBF遺伝子に少なくとも1つの変異を含む親植物の植物材料のWPBF遺伝子の少なくとも1つのコピーに少なくとも1つの非トランスジェニック変異を誘導する工程;前記変異誘導植物材料を生長させるか又は前記を用いて子孫植物を作製する工程;及びWPBF遺伝子の3つのコピーで少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選別する工程。この実施態様では、A、B及びDゲノムのWPBF遺伝子に少なくとも1つの変異が存在するであろう。
別の実施態様では、本開示は以下の工程を含むコムギ植物体の作製方法に関する:第一のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第一の植物を、第二のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第二の植物と交配する工程;及びWPBF遺伝子の少なくとも2つのコピーに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選別する工程。
別の実施態様では、本開示は以下の工程を含む植物の作製方法に関する:第一及び第二のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第一の植物を、第三のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を有する第二の植物と交配する工程;及びWPBF遺伝子の3つのコピーの全てに少なくとも1つの変異を有する子孫植物を選別する工程。この実施態様では、A、B及びDゲノムのWPBF遺伝子に少なくとも1つの変異が存在するであろう。
VIII.コムギ植物体、コムギ種子及びコムギ植物体の部分
ある実施態様では、本明細書に開示する方法にしたがって、穀粒のグルテンが減少したコムギが作製される。ある実施態様では、本明細書に開示する方法にしたがって、低分子量グルテニンが減少したコムギが作製される。ある実施態様では、本明細書に開示する方法にしたがって、グリアジンが減少したコムギが作製される。なお別の実施態様では、本明細書に開示する方法にしたがって、高分子量グルテニンが増加した又は変化しないコムギが作製される。
別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、1つのWPBF遺伝子における1つ以上の変異又は1つの改変WPBF遺伝子を有する。別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、複数のWPBF遺伝子における1つ以上の変異を有する。
別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分に関する。別の実施態様では、本開示は、2つのゲノムの各々のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分に関する。なお別の実施態様では、本開示は、3つのゲノムの各々のWPBF遺伝子に少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分に関する。
ある実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、AゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、AゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
ある実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、BゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、BゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
ある実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、DゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施態様では、非トランスジェニック変異は、DゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:2と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、WPBFタンパク質をコードする、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:3と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:5と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、WPBFタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:6と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:8と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、WPBFタンパク質をコードする1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:9と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
別の実施態様では、コムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分は、表1−3に列挙した1つ以上の変異(ただしこれらに限定されない)を含むWPBF遺伝子の1つ以上の変異及びホモローグの対応する変異を有する。あるコムギ植物体、コムギ種子又はコムギ植物体の部分が作出され、前記は、表1−3に開示する変異(ただしこれらに限定されない)を含む本明細書に開示する変異の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25又は26以上とともに対応するホモローグの変異を有することができる。
IX.穀粒、粉及びデンプン
別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギの穀粒、粉又はデンプンに関する。別の実施態様では、本開示は胚を含むコムギの穀粒に関し、ここで、当該胚は、WPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異又は改変WPBF遺伝子を含む。
別の実施態様では、コムギの穀粒、粉又はデンプンは、表1−3に列挙した変異(ただしこれらに限定されない)を含むWPBF遺伝子の1つ以上の非トランスジェニック変異及びホモローグの対応する変異、及びホモローグを含む。
なお別の実施態様では、本開示は、1つ、2つ又は3つのゲノムに少なくとも1つの非トランスジェニック変異を含むコムギの穀粒又は粉に関する。
なお別の実施態様では、本開示は、AゲノムのWPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含むコムギの穀粒、粉又はデンプンに関する。別の実施態様では、非トランスジェニック変異はAゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子で同一である。
ある実施態様では、コムギの穀粒、粉又はデンプンは、BゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施態様では、非トランスジェニック変異はBゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
ある実施態様では、コムギの穀粒、粉又はデンプンは、DゲノムのWPBF遺伝子の両方の対立遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を含む。別の実施態様では、非トランスジェニック変異はDゲノムのWPBF遺伝子の両対立遺伝子で同一である。
ある実施態様では、本開示は、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:2と一致するAゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギの穀粒、小麦粉又はデンプンに関する。別の実施態様では、コムギの穀粒又は小麦粉は、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:2と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギの穀粒又はデンプンは、WPBFタンパク質をコードする、表1に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:3と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
ある実施態様では、本開示は、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:5と一致するBゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギの穀粒、小麦粉又はデンプンに関する。別の実施態様では、コムギの穀粒又は小麦粉は、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:5と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギの穀粒、小麦粉又はデンプンは、WPBFタンパク質をコードする、表2に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:6と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
ある実施態様では、本開示は、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:8と一致するDゲノムのWPBF遺伝子のポリヌクレオチドを含むコムギの穀粒、小麦粉又はデンプンに関する。別の実施態様では、コムギの穀粒又は小麦粉は、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異を有し、さらに配列番号:8と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有するポリヌクレオチドを含む。
なお別の実施態様では、コムギの穀粒、小麦粉又はデンプンは、WPBFタンパク質をコードする、表3に挙げた1つ以上の非トランスジェニック変異をもつポリヌクレオチドを含み、ここで、当該WPBFタンパク質は1つ以上の非トランスジェニック変異を含み、配列番号:9と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99%を超える同一性或いは類似性を有する。
なお別の実施態様では、本開示は、野生型小麦穀粒又は粉と比較して、内乳並びに低下したWPBF遺伝子の遺伝子発現レベル、活性又は発現レベル及び活性を含むコムギの穀粒又は粉に関する。
なお別の実施態様では、本開示は、野生型小麦穀粒又は粉と比較して穀粒のグルテン減少を示す、WPBF遺伝子の1つ以上の変異又は改変WPBF遺伝子を有するコムギの穀粒又は粉に関する。別の実施態様では、WPBF遺伝子の1つ以上の変異又は改変WPBF遺伝子を有するコムギの穀粒又は粉は、野生型穀粒又は粉と比較して、1−5%、5-10%、10-15%、15-20%、20−25%、25−30%、30−35%、35−40%、45−50%、50−55%、55-60%、60-65%、65−70%、70−75%、75−80%、80−85%、85−90%、90−95%及び95%を超えるグルテンの減少を示す。
別の実施態様では、WPBF遺伝子の1つ以上の変異又は改変WPBF遺伝子を有するコムギの穀粒又は粉は、野生型穀粒と比較してグルテンレベルの低下を示し、ここで、変異又は改変を有する穀粒は、野生型穀粒と比較して約80%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約20%未満、又は約10%未満、又は約5%未満、又は約3%未満のグルテンを有する。
別の実施態様では、コムギの穀粒又は粉は、野生型穀粒又は粉と比較して約5%から約15%、又は約15%から25%、又は約25%から45%、又は約45%から65%、又は約65%から85%、又は約85%から97%未満のグルテンを含む。
別の実施態様では、コムギの穀粒又は粉は、野生型穀粒又は粉と比較して約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約7.5%未満、約5%未満、又は約2.5%未満、又は約1%未満、又は約0.5%未満のレベルの低分子量グルテニンを含む。
別の実施態様では、コムギの穀粒又は粉は、野生型穀粒又は粉と比較して約5%から約15%、又は約15%から25%、又は約25%から45%、又は約45%から65%、又は約65%から85%、又は約85%から97%未満のグリアジンを含む。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも大きい胚を含むことができる。ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒の胚よりも1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%、又は25−50%、又は50−75%、又は75−95%大きい。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒の胚よりもサイズが少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、及び少なくとも90%大きい。
なお別の実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒と比較してより多くの脂質を含むことができる。ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%、又は25−50%、又は50−75%、又は75−95%多くの脂質を含むことができる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、及び少なくとも90%多くの脂質を含むことができる。
なお別の実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒と比較してより多くの遊離リジン又はタンパク質に取り込まれたリジンを含むことができる。このことは、これらの穀粒が対応する野生型穀粒よりも高レベルの必須アミノ酸リジンを単胃動物(ヒトを含む)に提供することとなる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%、又は25−50%、又は50−75%、又は75−95%多くの遊離リジンを含むことができる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、及び少なくとも90%多くの遊離リジンを含むことができる。
なお別の実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%、又は25−50%、又は50−75%、又は75−95%多くのタンパク質取り込みリジンを含むことができる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、及び少なくとも90%多くのタンパク質取り込みリジンを含むことができる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒と比較してより少ないデンプンを含むことができる。ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒と比較して1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%少ないデンプンを含むことができる。
ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒と比較してより小さな内乳を有することができる。ある実施態様では、本明細書に開示する穀粒は、野生型穀粒の内乳よりも1−5%、又は5−10%、又は10−15%、又は15−20%、又は20−25%小さな内乳を有することができる。
さらに別の実施態様では、コムギ又はオオムギの穀粒又は当該穀粒から製造される粉のセリアック毒性は、対応する野生型コムギ又はオオムギの穀粒から製造される粉の約50%未満、約25%未満、約10%未満である。
X.食品
ある実施態様では、本開示は、上記で述べた穀粒又は粉から製造される粉又は他の製品に向けられる。別の実施態様では、当該粉、粗分画又は精製デンプンは食品の成分であり得る。
当該食品には以下が含まれる(ただしそれらに限定されない):ベーグル、ビスケット、パン、バン、クロワッサン、ダンプリング、イングリッシュマッフィン、マッフィン、ピタ、速成パン、フラットブレッド、サワードウブレッド、冷蔵/冷凍ドウ製品、生パン、ベイクドビーンズ、ブリトー、チリ、タコス、タマル、トルティーヤ、ポットパイ、調理済みシリアル、調理済み食品、スタッフィング、電子レンジ可能食品、ブラウニー、ケーキ、チーズケーキ、コーヒーケーキ、クッキー、デザート、ペストリー、菓子パン、棒状菓子、パイ生地、パイ詰め物、ベビーフード、ベーキングミックス、ころも用生地、パン粉、グレービーミックス、肉増量剤、肉代用物、シーズニングミックス、スープミックス、グレービー、ルー、サラダドレッシング、スープ、サワークリーム、麺、パスタ、ラーメン用麺、焼きそば麺、中華麺、アイスクリーム混合品、アイスクリームバー、アイスクリームサンドイッチ、クラッカー、クルトン、ドーナツ、エッグロール、押出し菓子、果実穀粒棒状菓子、電子レンジ可能スナック製品、栄養食バー、パンケーキ、半焼き(pan-baked)ベーカリ製品、プレッツェル、プディング、グラノーラ系食品、スナックチップ、スナックフード、スナックミックス、ワッフル、ピザ生地、動物用食品又はペットフード。
ある実施態様では、粉は全粒粉である(例えばウルトラファイン製粉全粒粉(例えばウルトラファイン製粉全粒小麦粉))。ある実施態様では、全粒粉は、精製粉成分(例えば精製小麦粉又は精製粉)及び粗分画(例えばウルトラファイン製粉粗分画)を含む。精製小麦粉は、例えば清浄小麦のすり潰し及びふるい分けによって調製される粉であり得る。食品医薬品局(FDA)は、精製小麦粉のカテゴリーに入るように粉が一定の粒子サイズ標準に適合することを要求する。精製小麦粉の粒子サイズは、“212マイクロメートル(U.S. Wire 70)”と称される金網の開口部を超えない開口部を有する布を98%以上が通過する粉とされる。
別の実施態様では、粗分画はふすま及び胚芽の少なくとも1つを含む。例えば、胚芽はコムギの穀粒中に見いだされる胚植物体である。胚芽は、脂質、線維、ビタミン、タンパク質、ミネラル、及び植物栄養素(例えばフラボノイド)を含む。ふすまはいくつかの細胞層を含み、顕著な量の脂質、線維、ビタミン、タンパク質、ミネラル及び植物栄養素(例えばフラボノイド)を含むことができる。
例えば、本発明の粗分画又は全粒粉又は精製粉を種々の量で用いて、ベークド製品、スナック製品及び食品中の精製粉又は全粒粉を置き換えることができる。消費者の手作りベークド品で使用するために、全粒粉(すなわちウルトラファイン製粉全粒粉)もまた直に消費者に販売できる。例示的実施態様では、全粒粉の粒状化プロフィールは、全粒粉の重量で粒子の98%が212ミクロンメートル未満であるというものである。
別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉は栄養サプリメントの成分であり得る。栄養サプリメントは、食事に添加される1つ以上の成分(典型的にはビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素、抗酸化剤、ハーブ、香辛料、プロバイオティクス及び線維を含む)を含む製品であり得る。
さらに別の実施態様では、栄養サプリメントは、個体の全体的健康を促進する公知の任意の栄養成分を含むことができる。前記成分には例えば、ビタミン、ミネラル、他の線維成分、脂肪酸、抗酸化剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ルテイン、リボース、オメガ-3脂肪酸、及び/又は他の栄養成分が含まれるが、ただし前記に限定されない。本発明の内乳の高い栄養素含有量のために、個体に多くの利益を与える多くの用途が存在し得る。前記には、線維及び他の必須栄養素のデリバリー、消化機能及び健康の増進、体重管理、血糖管理、心臓の健康、糖尿病リスクの軽減、潜在的関節炎リスクの軽減、及び個体の全体的健康及び保健が含まれる。
なお別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉は食事用サプリメントの成分であり得る。連邦規則集は食事用サプリメントを以下が意図される製品と定義する:食事を補充し1つ以上の食事成分(ビタミン、ミネラル、ハーブ、植物由来物質、アミノ酸、及び他の物質又はそれらに構成成分を含む)を含み、ピル、カプセル、錠剤又は液体として口から摂取され、前面に食事用サプリメントであると標識されている。
なお別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉は線維サプリメント又はその成分であり得る。線維サプリメントは以下の形態(ただしそれらに限定されない)でデリバーできる:即席飲料ミックス、調合済み飲料、栄養バー、ウェファース、クッキー、クラッカー、ゲルショット、チューイング物、かみ砕くことができる錠剤及びピル。ある実施態様では、香料添加シェーク又は麦芽系飲料。
別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉を消化サプリメントの成分として加えることができる。全粒粉又は粗分画又は精製粉は、消化サプリメント単独物又は1つ以上のプレバイオティック化合物及び/又はプロバイオティック生物と組み合わせた消化サプリメントの成分であってもよい。プレバイオティック化合物は非消化性食物成分であり、前記は、限られた数の腸内微生物の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することによって宿主に有益な影響を与えることができる。本発明の範囲内のプレバイオティック化合物の例にはオリゴ糖及びインスリンが含まれ得るが、ただしこれらに限定されない。
プロバイオティクスは微生物であり、適量を投与されたときに宿主に健康上の利益を与える。プロバイオティック生物には、ラクトバシルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリア属(Bifidobacteria)、エシェリキア属(Escherichia)、クロストリジウム属(Clostridium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、及びサッカロミセス属(Saccharomyces)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
なお別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉を機能食の成分として含むことができる。食品技術研究所は機能食を、基礎栄養物を超える健康上の利益を提供する食物及び食物成分と定義する。前記には、通常的食物、補強、濃縮又は強化食物、及び食事用サプリメントが含まれる。全粒粉又は粗分画又は精製粉は、多くのビタミン及びミネラルを含み、高い酸素ラジカル吸収能を有し、線維が豊富であるために機能食での使用又は機能食としての使用に適切である。
別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉を医療食で用いることができる。医療食は、医師の監督下で全体的に消費又は投与するように処方された食品と定義され、医療食は、周知された科学的原理に基づきそのための弁別的な栄養上の要請が医学的査定によって確立された疾患又は症状の固有の食養生を意図する。全粒粉又は粗分画又は精製粉の栄養的内容及び抗酸化性能は、医療食としてのそれらの使用を理想的なものにする。
なお別の実施態様では、全粒粉又は粗分画又は精製粉はまた医薬として使用できる。全粒粉又は粗分画又は精製粉は線維が多く非常に微細な粒状を有し、そのため医薬の担体としての使用に適している。
なお別の実施態様では、栄養サプリメント、食事用サプリメント又は消化サプリメントとしての全粒粉又は粗分画又は精製粉のデリバリーは、全粒粉又は粗分画が単一成分又は多くの栄養成分の1つであるデリバリーメカニズムを介することが意図される。例には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):即席飲料ミックス、調合済み飲料、栄養バー、ウェファース、クッキー、クラッカー、ゲルショット、カプセル及びチューイング物。
なお別の実施態様では、製粉プロセスを用いてマルチ小麦粉又はマルチ穀粒粗分画を製造できる。ある実施態様では、あるタイプのコムギ由来のふすま及び胚芽をすり潰し、別のタイプのコムギのすり潰した内乳又は全粒小麦粉とブレンドすることができる。また別には、あるタイプの穀粒のふすま及び胚芽をすり潰し、別のタイプの穀粒のすり潰した内乳又は全粒粉とブレンドすることができる。
なお別の実施態様では、第一のタイプのコムギ又は穀粒のふすま及び胚芽を第二のタイプのコムギ又は穀粒のふすま及び胚芽とブレンドして、マルチ穀粒粗分画を製造することができる。本発明は、1つ以上の穀粒のふすま、胚芽、内乳、及び全粒粉の1つ以上の任意の組み合わせの混合を包含する。このマルチ穀粒、マルチ小麦戦略を用いて、顧客の注文の粉を製造し、複数のタイプの穀粒又はコムギの品質及び栄養的内容を利用することができる。
本発明の全粒粉は多様な製粉プロセスを介して製造できる。ある例示的プロセスは、穀粒の内乳、ふすま及び胚芽を別々の流れに分離することなく単一の流れで穀粒をすり潰す工程を含む。清浄で水を加えられた穀粒は、第一のパッサージグラインダー(例えばハンマーミル、ローラーミル、ピンミル、衝撃ミル、ディスクミル、空気摩擦ミル、ギャップミルなど)に送られる。
すり潰された後、穀粒は排出されふるい分け装置に送られる。すり潰された粒子をふるい分けるために当業界で公知の任意のふるい分け装置を用いることができる。ふるい分け装置の仕切り板を通過した材料は本発明の全粒粉であり、更なる処理を必要としない。仕切り板上に残留する材料は第二分画と称される。第二分画は追加の粒子低減を必要とする。したがって前記第二分画は第二のパッサージグラインダーに送ることができる。
すり潰した後、第二分画を第二のふるい分け装置に送ることができる。第二のふるい分け装置の仕切り板を通過した材料は全粒粉である。仕切り板に残留する材料は第四分画と称され、粒子サイズの低減のために更なる処理を必要とする。第二のふるい分け装置の仕切り板上の第四分画は、更なる処理のためにフィードバックループを介して第一のパッサージグラインダー又は第二のパッサージグラインダーのどちらかに戻される。
本発明の全粒粉、粗分画、精製デンプン及び/又は穀粒製品は、当業界で公知の多数の製粉プロセスによって製造できることが意図される。
XI.グルテナーゼ
ある実施態様では、本明細書に開示するコムギ植物体、コムギ種子及びコムギ植物体の部分はグルテナーゼと混合できる。
なお別の実施態様では、本明細書に開示する穀粒、粉及びデンプンはグルテナーゼと混合できる。別の実施態様では、本明細書に開示する食品はグルテナーゼと混合できる。
ある実施態様では、本開示は、上記で考察した穀粒又は粉及びグルテナーゼで構成される粉又は他の製品に向けられる。別の実施態様では、粉(粗分画又は精製デンプン)及びグルテナーゼの組成物は食品の成分であり得る。
本明細書で用いられるように、“グルテナーゼ”という用語は、単独で又は内因性若しくは外因的に添加された酵素と一緒に、コムギ、オオムギ、エンバク及びライムギのグルテンタンパク質の有毒なオリゴペプチドを無毒なフラグメントに切断することができる酵素を指す。グルテンは穀物ドウのタンパク質分画であり、前記はグルテニン及びプロラミンに細分することができる。プロラミンはそれぞれコムギ、ライムギ、オオムギ及びエンバクのグリアジン、セカリン、ホルデイン及びアベニンに再分類される。
ある実施態様では、“グルテナーゼ”という用語はまたプロテアーゼ又はペプチダーゼ酵素を指すことができる。“プロテアーゼ”又は“ペプチダーゼ”という用語はペプチド結合を切断する能力を有するタンパク質又はそのフラグメントを指し、ここで切断可能ペプチド結合は、オリゴペプチド又はより大きいタンパク質の末端又は内部に存在し得る。プロリル特異的ペプチダーゼがグルテナーゼである。
グルテナーゼには、以下のペプチダーゼの1つとアミノ酸レベルで少なくとも約20%配列同一性を有する、より通常的には少なくとも約40%配列同一性を有する、好ましくは約70%配列同一性を有するプロテアーゼ及びペプチダーゼ酵素が含まれる:F.メニンゴセプチクム(F. meningoscepticum)のプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)(Genbank アクセッション番号D10980)、A.ヒドロフィラ(A. hydrophila)のPEP(Genbankアクセッション番号D14005)、S.カピスラタ(S. capisulata)のPEP(Genbankアクセッション番号AB010298)、ウサギのDCP I(Genbankアクセッション番号X62551)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)のDPP IV(Genbankアクセッション番号U87950)、又はホルデウム・ブルガエ(Hordeum vulgare)のシステインプロテイナーゼB(Genbankアクセッション番号JQ1110)。
ある実施態様では、グルテナーゼはPEPである。PEPは微生物、植物及び動物によって産生される。PEPはセリンプロテアーゼスーパーファミリー酵素に属し、Ser、His及びAsp残基で構成される保存された触媒性トリアドを有する。これらのホモローグのいくつかは特徴付けられてあり、例えば、F.メニンゴセプチクム、アエロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アエロモナス・プンクタータ(Aeromonas punctata)、ノボスフィンゴビウム・カプスラツム(Novosphingobium capsulatum)、ピロコックス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)由来の酵素及び哺乳動物起原の酵素は、生化学的に特徴付けられたPEPである。他の酵素(例えばノストク(Nostoc)及びアラビドプシス(Arabidopsis)の酵素)は同様にPEPであるが、それらはこれまでのところ完全には特徴付けられていない。さらに他の酵素(例えば大腸菌及びM.キサンチュス(M. xanthus)の酵素)はPEPではない可能性があるが、セリンプロテアーゼスーパーファミリーの相同なメンバーであり、タンパク質を操作してPEPを作製するための有用な出発材料であり得る。F.メニンゴセプチクムの酵素と対比して、前記ファミリーの酵素のペアワイズ配列同一性は30−60%の範囲である。したがって、PEPにはF.メニンゴセプチクムに対して30%を超える同一性を有する酵素(ピロコックスの酵素)、又は40%未満の同一性を有する酵素(ノボスフィンゴビウムの酵素)、又は50%未満の同一性を有する酵素(アエロモナスの酵素)が含まれる。
ある実施態様では、グルテナーゼは、以下のモチーフの1つ以上を含むペプチドを切断するために、少なくとも2.5U/mg、好ましくは25U/mg及びより好ましくは250U/mgの比活性を有するペプチダーゼ又はプロテアーゼを含む:Gly-Pro-pNA、Z-Gly-Pro-pNA(式中Zはベンジルオキシカルボニル基である)、及びHip-His-Leu(式中Hipは馬尿酸であり、pNAはパラ-ニトロアニリドである)。1Uは、1分間に1μモルの基質のターンオーバーを触媒するために必要な酵素量である。
ある実施態様では、グルテナーゼはKuma030である。前記は、以下の文献に記載されたように、免疫原性グリアジンペプチドを迅速に分解するグリアジンペプチダーゼである(Journal of the American Chemical Society, 137:13106-13113, 2015)。別の実施態様では、グルテナーゼはKumaMax(Kuma010)である。
なお別の実施態様では、本明細書に開示する組成物及び方法で有用なグルテナーゼは、以下の酵素分類のいずれかに属する酵素を含む:EC 3.4.21.26、EC 3.4.14.5、又はEC 3.4.15.1。
ある実施態様では、グルテナーゼ(例えば天然に存在するグルテナーゼ)のアミノ酸配列を当業界で公知の多様な方法で改変し、配列中に照準変化を発生させて本明細書に開示する処方物及び組成物で有用な追加のグルタナーゼ酵素を作製することができる。そのような変種は、典型的には機能的に保存された変種であり、通常では対応する天然のままのタンパク質又は親タンパク質と配列が相違するが、所望の生物学的活性は保持されるであろう。
変種にはまた酵素活性を保持するグルタナーゼのフラグメントが含まれる。当業界で公知の多様な方法を用いて照準変化を発生させることができる。前記方法は例えば、ランダム変異及び照準変異と組み合わせたファージディスプレー、スキャンニング変異の導入などである。変種は天然のままの配列と実質的に類似し(すなわち少なくとも1つのアミノ酸で相違する)、少なくとも2つ(ただし通常は約10アミノ酸を超えない(相違の数は天然のままの配列のサイズに左右される))で相違し得る。配列変化は、置換、挿入又は欠失であり得る。規則的にアラニン又は他の残基を導入するスキャンニング変異を用いて、要のアミノ酸を決定できる。保存的アミノ酸置換は典型的には下記のグループ内での置換を含む:(グリシン、バリン);(バリン、イソロイシン、ロイシン);(アスパラギン酸、グルタミン酸);(アスパラギン、グルタミン);(セリン、スレオニン);(リジン、アルギニン);及び(フェニルアラニン、チロシン)。
別の実施態様では、問題のグルタナーゼフラグメントは、連続する少なくとも約20アミノ酸、より通常では連続する少なくとも約50アミノ酸のフラグメントを含み、さらに100以上のアミノ酸から完全なタンパク質を含むことができ、さらに伸長させて追加の配列を含むことができる。それぞれの事例において重要な基準は、当該フラグメントが、セリアックスプルーの原因となる有毒なオリゴペプチドを消化する能力を保持するか否かである。
XII.植物育種
別の実施態様では、本開示は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ植物体及び植物体部分を用いる植物育種の方法に向けられる。
そのような実施態様の1つは、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種を別のコムギの品種と交配して、F1植物の第一世代集団を形成する方法である。この方法によって作製される第一世代F1植物の集団はまた本発明の実施態様である。F1植物のこの第一世代集団は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種の本質的に完全な対立遺伝子セットを含む。当業者は育種家のための成書又は分子的方法を利用して、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種を用いて作製された個々のF1植物体を同定することができ、そのような個々の植物のいずれも本発明に包含される。これらの実施態様はまた、第一世代のF1植物を作製するために、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種のトランスジェニック変換又は戻し交配変換の使用を含む。
別の実施態様では、本開示は子孫のコムギ植物体を育成する方法に関する。子孫コムギの植物体を育成する方法は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種を第二のコムギと交配する工程及び育種方法を実施する工程を含む。WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種から誘導される系統を作製する具体的な方法は以下の通りである。
当業者は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種を別のコムギの品種(例えば選ばれた品種)と交配するであろう。この交配から得られるF1種子を生長させて同種集団が形成されるであろう。F1種子は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種に由来する対立遺伝子の1セット、及び他方のコムギ品種に由来する対立遺伝子の1セットを含むであろう。
F1ゲノムは、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種の50%及び他方の選ばれた品種の50%で構成されるであろう。F1種子を生長させてF2種子が形成されるであろう。F1種子は自家受粉させるか、又は別のコムギ栽培品種と交配させることができよう。
平均して、F2種子は、その対立遺伝子の50%をWPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種に、50%を他方のコムギ品種に由来するであろう。しかしながら、集団の多様な個々の植物体は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種に由来する対立遺伝子をより高いパーセンテージで有するであろう(Wang J. and R. Bernardo, 2000, Crop Sci. 40:659-665;及びBernardo, R. and A. L. Kahler, 2001, Theor. Appl. Genet. 102:986-992)。
F2種子を生長させ、目視観察及び/又は特性の測定及び/又はマーカー補助選別に基づいて植物の選別が実施されるであろう。遺伝子由来の特性を示す、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種から誘導された子孫を選別し、各植物体が別々に採集されるであろう。各植物体のこのF3種子を個々の畝で生長させて自家受粉させる。続いて選別した畝又は畝の植物体を収穫し脱穀する。繰り返せば、選別は、目視観察及び/又は植物体の所望の特性の測定に基づくであろう(所望の特性は、例えばWPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有する所望のコムギ品種に由来する特性の1つ以上である)。
生長及び選別のプロセスは、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合型のコムギ品種に由来するコムギが得られるまで任意の回数で繰り返されるであろう。WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合型コムギ品種に由来するコムギ植物体は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種から誘導された所望の特性を含むであろう。前記特性のいくつかは、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種と交配された他方の最初のコムギ品種によって発現されてなかったかもしれない。さらに前記のいくつかは、両方のコムギ品種によって発現されていたが、今はWPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種で発現されたレベルと同等又はそれよりも高いレベルであることもある。
交配、自家受粉及び選別の育種プロセスを繰り返して、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種に由来するコムギの別の集団を作製することができる。前記は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギの品種に由来する遺伝子の平均25%を有するが、当該集団の多様な個々の植物体は、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するコムギ品種に由来するそれらの対立遺伝子をはるかに高いパーセンテージで有するであろう。本発明の別の実施態様は、WPBF遺伝子由来特性で1つ以上の非トランスジェニック変異を有する別のコムギと交配させた、WPBF遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するホモ接合型コムギ品種由来コムギである。
A.マーカーとしての変異
遺伝子マーカーは遺伝子又は遺伝子座の対立遺伝子型によって決定される生物学的特徴であり、1つの世代から別の世代に伝達でき、したがってそれらを実験的プローブ又は付箋として用いて個体、植物体、組織、細胞、核、染色体又は遺伝子を追跡することができる。遺伝学及び植物育種で用いられる遺伝子マーカーは2つのカテゴリー(古典的マーカー及びDNAマーカー)に分類できる。古典的マーカーには形態学的マーカー、細胞学的マーカー及び生化学的マーカーが含まれる。DNAマーカーは、種々の多型検出技術又は方法(サザンブロット検出-核酸ハイブリダイゼーション、PCR及びDNA配列決定)を土台にして多くの系に発展した(例えば制限フラグメント長多型(RFLP)、増幅フラグメント長多型(AFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、単純配列リピート(SSR)、一ヌクレオチド多型(SNP)など)。
SNPは、一ヌクレオチド塩基は遺伝の最小単位であるので分子マーカーの究極かつ最も単純な形態を提供し、したがってそれらは最大数のマーカーを提供することができる。SNPは動物及び植物で非常に通常的に発生する。典型的には、SNP頻度は植物で100−300塩基対毎に1つのSNPの範囲である。SNPは、異なる染色体領域では異なる頻度で、遺伝子のコード配列、遺伝子の非コード領域で、又は遺伝子と遺伝子の間に存在する遺伝子間領域で存在し得る。
SNPは共優性マーカーであり、しばしば遺伝子とリンクし、多型の最も単純かつ究極形態として存在するので、したがって遺伝的研究及び育種において非常に有望で潜在能力を秘めた遺伝子マーカーとなった。さらにまた、SNPは非常に容易に自動化して迅速に検出することが可能で、多型の検出に高い効率を示す。
ある実施態様では、本開示は、植物育種でマーカーとして使用できるWPBF遺伝子の変異(一ヌクレオチド多型)に関する。WPBF遺伝子の変異は作因性であり、それらの分離を例えばKASPプローブを用いて追跡することができる。
別の実施態様では、本開示のセクションIIで特定した変異が植物育種のマーカーとして用いられる。なお別の実施態様では、表1−3の1つ以上の変異が植物育種のマーカーとして用いられる。
ある実施態様では、変異は、以下を含む(ただしこれらに限定されない)技術を用いて追跡できる:SNP制限フラグメント長多型(RFLP)、CAPS、Axiom SNPアレー、iSelectアレー、TaqManプローブ、及びKASPプローブ。別の実施態様では、以下を含む(ただしこれらに限定されない)次世代シーケンシング技術を用いることができる:454ライフサイエンシーズ(Life Sciences, Roche Applied Science, Indianapolis, IN)、HiSeq(Illumina, San Diego, CA)、SOLiDアンドイオントーレント(SOLiD and Ion Torrent, Life Technologies Corp., Carlsbad, CA)。
PCR系KASPTM遺伝子型判定アッセイは、公知のSNP及びInDelの正確な二対立遺伝子区別を可能にする均質な蛍光アッセイである。PCR系KASP技術の重要な特徴は、高経費の二重標識プローブを必要としないユニバーサルFRETカセットレポーター系の使用である。対立遺伝子特異的フォワードプライマーはそれぞれ専売のテール配列を有し、前記は2つのFRETカセット(一方はFAM染料で標識、他方はHEX染料で標識)の一方に対応する。二対立遺伝子区別は、2つの対立遺伝子特異的フォワードプライマーの競合的結合により達成される。
XIII.オオムギ転写物MLOC_12852.2、Dof転写因子
オオムギは、食物、飲料及び動物飼料の生産のために寒冷気候で広く育成される二倍体穀類である。オオムギの種子タンパク質は、水、塩溶液、アルコール水及び塩基性又は酸性溶液への溶解性にしたがってアルブミン、グロブリン、プロラミン(ホルデイン)及びグルテリンに分類される。オオムギの種子の貯蔵タンパク質のほぼ半分がプロラミン分画で見出される。これらのプロラミンは主として備蓄タンパク質であり、発芽後の生長及び発達のための炭素、窒素又は硫黄の供給源として機能する。ホルデインは種子タンパク質の約40%を構成するが、これは生長時の植物の窒素供給に左右される。
オオムギプロラミンをコードする遺伝子座は、ほとんどがオオムギ麦芽の品質並びに泡の形成及びビール製造時の靄へのそれらの影響のためにすでに特徴が調べられている。オオムギには4つのクラスのプロラミン(B、C、D及びγ-ホルデイン)が存在し、それらは染色体1H上でそれぞれHor2、Hor1、Hor3及びHr5遺伝子座によってコードされる。これらの遺伝子座は、単一プロラミン(例えばDホルデイン)から20−30メンバーを含むタンパク質ファミリー(例えばB及びCホルデイン)まで多様なタンパク質をコードする。B及びCホルデインは比較的豊富であり、全ホルデインの約70%及び24%をそれぞれ構成する。D及びγ-ホルデインは各々2−4%のマイナー成分である。ホルデインの分子量は35kDaから100kDaまで多様である。コムギのα-グリアジンと近縁な相同性を有するオオムギのプロラミンは存在しないが、ホルデインがセリアック病患者にとって有害であることは広く容認されている。
Bホルデインは主要なタンパク質分画であるが、Cホルデインとはそれらの硫黄含有量で相違する。Bホルデインは全体の70−80%を占め、Cホルデインは10−20%である。Aホルデインは一般的には貯蔵分画と考えられていないが、Dホルデインは高分子量グルテニンと相同である。ホルデインは、関連する穀類プロラミンの残余のものとともに接合胚それ自体では発現されず(他の貯蔵タンパク質(例えばナピン)と異なる)、中期から後期の種子発育時にデンプン質内乳でもっぱら発現されると考えられている。
米国では、“無グルテン”のFDAの定義は、当該製品が無グルテンの未加工材料(すなわちコムギ、オオムギ又はライムギのいずれも全く含まない)のみから製造されることを要求する。コーデックス規格は、20ppmを超えないグルテンを含む食物に“無グルテン”の標識を付すことを許容し、前記は“無グルテン”の欧州標準でもある。大半のセリアック病患者は、1日当たり約10mgまでのグルテンに対しては大きな影響を表すことなく耐性を示すことができる(Thompson, 2001)。
野生型オオムギの例にはBomi、Sloop。Carlsberg II、K8又はL1が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
別の実施態様では、本開示は、オオムギ転写物MLOC_12852.2(Dof転写因子(以下では“オオムギDof転写因子”という))に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するオオムギに関する。別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子に1つ以上の非トランスジェニック変異を有するオオムギに関し、ここで前記変異はグルテン減少穀粒をもたらす。
ある実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子の発現低下又はオオムギDof転写因子タンパク質の活性低下を有するオオムギに関する。ある実施態様では、オオムギDof転写因子遺伝子又はオオムギDof転写因子タンパク質の発現低下は、非トランスジェニック変異、トランスジーン、又はゲノム編集によって達成できる。
ある実施態様では、本開示は、非トランスジェニック変異又はトランスジーン又はゲノム編集によるオオムギDof転写因子遺伝子の改変に関する。セクションIII及びIVに記載した方法及び技術がオオムギに等しく適用される。
別の実施態様では、本開示は、野生型植物のホルデインの総レベルと比較して総ホルデインレベルが低下したオオムギに関する。ある実施態様では、当該オオムギは野生型植物のB、C又はDホルデインと比較して減少した少なくとも1つのB、C又はDホルデインを有する。
なお別の実施態様では、本開示は、穀粒のB及び/又はCホルデインのレベルを低下させるオオムギDof転写因子遺伝子における1つ以上の変異に関する。なお別の実施態様では、本開示は、穀粒のB及び/又はCホルデインのレベルを低下させるオオムギDof転写因子遺伝子に1つ以上の変異を有し、かつ野生型レベルのDホルデインを有するオオムギに関する。
別の実施態様では、当該穀粒は、対応する野生型オオムギの穀粒と比較したとき、約75%以下、約50%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、約7.5%以下、又は約2.5%以下のレベルのB、C及び/又はDホルデイン又は前記の任意の組み合わせを含む。
なお別の実施態様では、当該穀粒から製造された粉は、野生型穀粒から製造された粉と比較して、約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約25%未満、又は約20%未満、又は約15%未満、又は約10%未満、又は約5%未満のホルデインを含む。
さらに別の実施態様では、当該穀粒から製造される粉のセリアック毒性は、対応する野生型オオムギの穀粒から製造された粉の約50%未満、約25%未満、より好ましくは約10%未満である。
なお別の実施態様では、当該穀粒から製造される麦芽は、約200ppm未満のホルデイン、約125ppm未満のホルデイン、より好ましくは約75ppm未満のホルデインを含む。
なお別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子における1つ以上の変異に関する。ある実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子における複数の非トランスジェニック変異(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び10を超える変異を含むが、ただし前記に限定されない)に関する。
ある実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子のDof領域における1つ以上の変異に関する。別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子のDof領域における1つ以上の改変に関し、ここで、前記改変には変異、非トランスジェニック変異、トランスジーン、及びゲノム編集系改変が含まれる(ただし前記に限定されない)。
なお別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子に1つ以上の変異を有するオオムギに関する。なお別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子遺伝子のDof領域に1つ以上の変異を有するオオムギに関する。
なお別の実施態様では、本開示は、改変されたオオムギDof転写因子遺伝子を有するオオムギに関する。なお別の実施態様では、本開示は、改変されたオオムギDof転写因子遺伝子を有するオオムギに関し、ここで改変はDof領域に存在する。
ある実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子の配列番号:12のコード配列における1つ以上の変異に関する。ある実施態様では、変異は配列番号:12の173位におけるアデニンからチミジンへの変異である。
なお別の実施態様では、本開示は、オオムギDof転写因子の配列番号:13のアミノ酸配列における1つ以上の変異に関する。配列番号:13に示す337アミノ酸の1つ以上を変異させることができる。変異は激甚的でも保存的でもよい。
ある実施態様では、変異は配列番号:13のアミノ酸58位におけるQからLへの変異である。
配列番号:12:オオムギ(ホルデウム・ブルガレ;Hv)DOF遺伝子
配列番号:13:配列番号:12のタンパク質配列
ある実施態様では、本明細書に開示する植物体、植物体部分及び組成物は以下の項目に非限定的態様で記述される:
1.A、B又はDゲノムの少なくとも1つのWPBF遺伝子に変異を含むコムギであって、当該変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記コムギの穀粒の一助となる、前記コムギ。
2.A、B又はDゲノムの少なくとも1つのWPBF遺伝子のDof領域に変異を含むコムギであって、当該変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記コムギの穀粒の一助となる、前記コムギ
3.転写因子遺伝子のDof領域に変異を含む植物であって、当該変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記植物の穀粒の一助となる、前記植物。
4.WPBF遺伝子の変異がB及びDゲノムに存在する、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
5.WPBF遺伝子の変異がA及びBゲノムに存在する、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
6.WPBF遺伝子の変異がA及びDゲノムに存在する、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
7.WPBF遺伝子の変異がA、B及びDゲノムに存在する、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
8.WPBF遺伝子の変異が、前記コムギの穀粒で野生型コムギと対比して低分子量グルテニンの減少をもたらす、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
9.変異が、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比してグリアジンの減少をもたらす、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
10.変異が、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比して高分子量グルテニンの増加又は不変をもたらす、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
11.変異が、野生型穀粒で見いだされるグルテンの約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、及び約5%から成る群から選択されるグルテン減少を有する前記コムギの穀粒を生じる、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
12.前記コムギが当該変異についてホモ接合性である、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
13.トリチクム・アエスチブム・アエスチブム亜種である、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
14.トリチクム・チュルギデュム・デュルム亜種である、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
15.変異が表1−3に列挙される、先行する項目のいずれかに記載のコムギ。
16.先行する項目のいずれかに記載のコムギの穀粒。
17.先行する項目のいずれかに記載のコムギの穀粒を含む粉。
18.先行する項目のいずれかに記載のコムギの成分を含む食品。
19.先行する項目のいずれかに記載のコムギに由来する種子、植物部分、又はその子孫。
20.WPBF遺伝子の発現を低下させる、及び/又はWPBFタンパク質の活性を低下させるトランスジーンを含むトランスジェニックコムギあって、当該発現の低下及び/又は活性の低下が、野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記コムギの穀粒の一助となる、前記トランスジェニックコムギ。
21.当該トランスジーンが、前記コムギの穀粒で野生型コムギと対比して低分子量グルテニンの減少をもたらす、項目20に記載のコムギ。
22.当該トランスジーンが、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比してグリアジンの減少をもたらす、項目20に記載のコムギ。
23.当該トランスジーンが、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比して高分子量グルテニンの増加又は不変をもたらす、項目20に記載のコムギ。
24.当該トランスジーンが、野生型穀粒で見いだされるグルテンの約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、及び約5%から成る群から選択されるグルテン減少を有する前記コムギの穀粒を生じる、項目20に記載のコムギ。
25.トリチクム・アエスチブム・アエスチブム亜種である、項目20に記載のコムギ。
26.トリチクム・チュルギデュム・デュルム亜種である、項目20に記載のコムギ。
27.項目20−26のいずれかに記載のコムギの穀粒。
28.項目27に記載のコムギの穀粒を含む粉。
29.項目20−28に記載のコムギの成分を含む食品。
30.項目20−26に記載のコムギに由来する種子、植物部分、又はその子孫。
31.改変WPBF遺伝子を含むコムギであって、当該WPBF遺伝子がゲノム編集によって改変され、前記改変が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する穀粒の一助となる、前記コムギ。
32.当該改変WPBFが、前記コムギの穀粒で野生型コムギと対比して低分子量グルテニンの減少をもたらす、項目31に記載のコムギ。
33.当該改変WPBFが、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比してグリアジンの減少をもたらす、項目31に記載のコムギ。
34.当該改変WPBF遺伝子が、前記コムギの穀粒で野生型穀粒と対比して高分子量グルテニンの増加又は不変をもたらす、項目31に記載のコムギ。
35.当該改変WPBF遺伝子が、野生型穀粒で見いだされるグルテンの約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、及び約5%から成る群から選択されるグルテン減少を有する前記コムギの穀粒を生じる、項目31に記載のコムギ。
36.トリチクム・アエスチブム・アエスチブム亜種である、項目31に記載のコムギ。
37.トリチクム・チュルギデュム・デュルム亜種である、項目31に記載のコムギ。
38.項目31−37のいずれかに記載のコムギの穀粒。
39.項目38に記載のコムギの穀粒を含む粉。
40.項目31−39に記載のコムギの成分を含む食品。
41.項目31−37に記載のコムギに由来する種子、植物部分、又はその子孫。
42.オオムギ転写物MLOC_12852.2に1つ以上の変異を含むオオムギであって、当該1つ以上の変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
43.改変オオムギ転写物MLOC_12852.2を含むオオムギであって、当該改変が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
44.改変オオムギ転写物MLOC_12852.2を含むオオムギであって、オオムギ転写物MLOC_12852.2が変異又はトランスジーン又はゲノム編集によって改変され、さらに当該改変が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
45.オオムギ転写物MLOC_12852.2のDof領域に1つ以上の変異を含むオオムギであって、当該1つ以上の変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
46.オオムギ転写物MLOC_12852.2のDof領域の改変を含むオオムギであって、当該改変が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
47.オオムギ転写物MLOC_12852.2のDof領域の改変を含むオオムギであって、当該オオムギ転写物MLOC_12852.2のDof領域が変異又はトランスジーン又はゲノム編集によって改変され、さらに当該改変が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
48.配列番号:12に1つ以上の変異を含むオオムギであって、当該1つ以上の変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
49.オオムギDof転写因子の配列番号:12に少なくとも2つの変異を含むオオムギであって、1つの変異が配列番号:12の173位におけるアデニンからチミジンへの変異であり、さらに当該変異が、野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となる、前記オオムギ。
50.配列番号:12に変異を含むオオムギであって、当該変異が、野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記オオムギの穀粒の一助となり、さらに当該変異が配列番号:12の173位におけるアデニンからチミジンへの変異ではない、前記オオムギ。
51.項目42−50のいずれかに記載のオオムギの穀粒。
52.項目51に記載の穀粒を含む粉。
53.項目42−52のいずれかに記載のオオムギの成分を含む食品。
54.項目42−50に記載のオオムギに由来する種子、植物部分、又はその子孫。
55.B及びDゲノムのWPBF遺伝子に変異を含むコムギであって、当該変異が野生型植物の穀粒と比較してグルテンの減少を有する前記コムギの穀粒の一助となる、前記コムギ。
56.Bゲノムの変異が、配列番号:3のアミノ酸70位でトリプトファンから終止コドンへの変化をもたらす(W70*)、項目55に記載のコムギ。
57.Dゲノムの変異が、配列番号:9のアミノ酸63位でシステインからチロシンへの変異をもたらす(C63Y)、項目55に記載のコムギ。
58.当該変異が、前記コムギの内乳の種子貯蔵タンパク質プロフィールで変化を有する前記コムギの穀粒の一助となる、項目55に記載のコムギ。
59.AゲノムのWPBF遺伝子にさらに変異を含む、項目55に記載のコムギ。
60.先行する項目のいずれかに記載のコムギの穀粒及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素。
61.先行する項目のいずれかに記載のコムギの穀粒及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素を含む粉。
62.先行する項目のいずれかに記載のコムギの成分及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素を含む食品。
63.先行する項目のいずれかに記載のコムギの種子、植物部分又はその子孫及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素。
64.先行するパラグラフのいずれかに記載のオオムギの穀粒及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素。
65.先行する項目のいずれかに記載のオオムギの穀粒及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素を含む粉。
66.先行する項目のいずれかに記載のオオムギの成分及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素を含む食品。
67.先行する項目のいずれかに記載のオオムギの種子、植物部分又はその子孫及び少なくとも1つのグルテナーゼ酵素。
以下の実施例は限定ではなく単なる例示として提供される。本明細書に記載される変異は単に例示であること、及び類似する変異もまた意図されることは理解されよう。
オオムギ転写物MLOC_12852.2の特定
グルテン減少オオムギを分析して、グルテン減少表現型と対応する変異を特定した。低グルテンオオムギは、野生型オオムギ(100,000ppmを超えるグルテン(mg/kg)を有する)と比較して1,000ppmグルテン(mg/kg)のELISA R5抗体の読みを示す。
図1は、オオムギB、C及びDホルデインの有無を示すSDS PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)である。図1A及び図1Bに示すように、B、C及びDホルデインは低グルテンオオムギでかろうじて検出できる。
図2は、野生型オオムギの種子を低グルテンオオムギの種子と比較した写真で、これらの種子は物理的特徴及び特性が極めて類似する。
バルク分離個体RNA配列決定法(bulked segregant RNA sequencing approach)を用いて、低グルテンの表現型に対応する遺伝子を特定した。変異植物を無関係非変異オオムギ栽培品種(Bowman)と交配して、当該変異とリンクするDNA SNPを特定するためのマッピング集団を作製した。F2内乳半種子をホルデイン含有量について分析してホモ接合変異体F2分離個体を特定し、さらに変異体及び非変異体の両種子の半胚を生長させてF3種子を作出した。F3では、各F2個体に由来する約20の非変異体種子について半種子分析を実施し、どのF2非変異体半種子が当該単一劣性変異についてヘテロ接合性であってどれがホモ接合性非変異体であったかを決定した。20から40のF3変異体実生(それぞれ異なるF2変異体個体に由来する)を生長させ、RNAを約7日齢の全黄化実生(根及びシュート組織を含む)の3複製プールで単離した。
同様に、20−40のホモ接合性非変異体実生(それぞれ異なるホモ接合性非変異体F2種子に由来する)を生長させ、RNAを約7日齢の全黄化ホモ接合非変異体実生の根及びシュート組織に由来する3複製プールで単離した。RNA-seq分析を文献(Liu et al Plos ONE 7(5): e36406)にしたがって実施し、SNPをオオムギゲノムでマッピングした。
変異体とともに同時分離するSNPは、当該変異体の場所を染色体5Hの長腕上のセントロメアに近いほぼ4 cM領域に位置付けた。続いて、選択したSNPから設計したKASPプローブをより大きなマッピング集団でマッピングし、SNPが当該変異体との組換えを示さなかった600kb領域を特定した。この領域近くの遺伝子マッピング試験によって、オオムギ転写物MLOC_12852.2(Dof転写因子である)における変異が特定された。オオムギ転写物MLOC_12852.2のコード配列及びアミノ酸配列は、それぞれ配列番号:12及び13に示されている。低グルテンオオムギは、アミノ酸配列の58位でグルタミンからロイシンへの変化を含む。
コムギ種子の変異誘導
本開示の1つの例示的実施態様にしたがえば、コムギの六倍体栽培品種(トリチクム・アエスチブム)エクスプレス又は四倍体栽培品種クロノスの種子をH2Oに真空浸潤した(約1,000種子/100mL H2Oで約4分間)。続いてこれらの種子を室温のドラフトチャンバーのシェーカー(45rpm)に置いた。変異原メタンスルホン酸エチル(EMS)を前記水分吸収種子に最終濃度約0.75%から約1.2%(v/v)の範囲の濃度で添加した。18時間インキュベートした後、EMS溶液を4回新鮮なH2Oと交換した。続いてこれらの種子を流水で4−8時間洗浄した。最後に、これらの変異誘導種子を鉢植え用土に植え付け(96/トレー)、室内で発芽させた。4から6週齢の植物を野外に移して完全成熟M1植物に生長させた。成熟M1植物を自家受粉させ、続いてM1植物の種子を収集し、M2植物を作出するために植え付けた。
どのM2植物がそれらのWPBF遺伝子座の1つ以上に変異を保持するかを特定するために、上記のように作出したM2植物からDNAを抽出及び調製した。M2植物のDNAは以下のQiagenキットを含む方法及び試薬を用いて調製した(Qiagen(商標)(Valencia, CA)、DNeasy(商標)96Plant Kit)。タングステンビーズを含むサンプルチューブに約50mgの凍結植物サンプルを入れ、液体窒素中で凍結させ、Retsch(商標)ミキサーミル300を用い20Hzで2回(各回1分間)すり潰した。次に80℃の400μLの溶液AP1(緩衝液AP1、溶液DX及びRNAse(100mg/mL))をサンプルに添加した。チューブを密閉し15秒間振盪した。130μLの緩衝液AP2の添加後、チューブを15秒間振盪した。サンプルを-20℃のフリーザーに少なくとも1時間置いた。続いてサンプルを5,600xgで20分遠心分離した。上清の400μLアリコットを別のサンプルチューブに移した。600μLの緩衝液AP3/Eを添加した後、このサンプルチューブに蓋をして15秒間振盪した。フィルタープレートを角型ウェルブロック上に置き、1mLのサンプル溶液を各ウェルに適用し、プレートを密封した。プレート及びブロックを5,600xgで4分遠心分離した。次に、800μLの緩衝液AWをフィルタープレートの各ウェルに添加して密封し、角形ウェルブロック中で5,600xg、15分回転させた。続いてフィルタープレートを新しいサンプルチューブセット上に置き、80μLの緩衝液AEを当該フィルターに適用した。蓋をして室温で1時間インキュベートし、続いて5,600xgで2分回転させた。80μLの緩衝液AEを追加して、前記工程を繰り返した。フィルタープレートを取り除き、プールされたろ液を含むチューブに蓋をした。続いて個々のサンプルのDNA濃度を5から10ng/μLに標準化した。
タイリング
M2コムギのDNAを2つの植物個体の複数グループにプールした。当該プールの各個体のDNA濃度は約2ng/μLでプール全体の最終濃度は4ng/μLであった。続いてこのプールDNAサンプルの5μL(又は20ngのコムギDNA)をマイクロプレート上に並べ、遺伝子特異的PCRに付した。
以下を含む15μL体積でPCR増幅を実施した:20ngのプールDNA、0.75x ExTaq緩衝液(Clonetech, Mountain View, CA)、1.1mM追加MgCl2、0.3mM dNTP、0.3μMプライマー、0.009U Ex-Taq DNAポリメラーゼ(Clonetech, Mountain View, CA)、0.02単位DyNAzyme II DNAポリメラーゼ(Thermo Scientific)及び必要ならば0.33MポリマーエイドPCR強化剤(Sigma-Aldrich(商標))。PCR増幅はMJ Research(商標)サーマルサイクラーを以下のように用いて実施した:95℃2分;8サイクルの“タッチダウンPCR”(94℃20秒、その後70−68℃30秒で開始しサイクル毎に1℃低下させるアニーリング工程、続いて1秒に付き0.5℃の温度上昇で72℃に、続いて72℃で1分間); 94℃20秒、63又は65℃30秒、0.5℃/秒で72℃まで温度上昇、72℃1−2分間の25−45サイクル;72℃8分;98℃8分;80℃20秒;80℃7秒からサイクル毎に0.3℃低下を60サイクル。
PCR生成物(2−4μL)を96ウェルプレートで消化した。以下を含む3μLの溶液を前記PCR生成物に低下した:6mM HEPES [4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸](pH7.0)、6mM MgCl2、6mM NaCl、0.012x Triton(商標)X-100、0.03mg/mLウシ血清アルブミン、0.5x T-ダイジェスト緩衝液(Advanced Analytical Technologies, Inc (AATI), Ames, IA)、各々0.912UのSurveyor(商標)エンドヌクレアーゼと強化剤(Transgenomic(商標), Inc)、及び0.5x dsDNA切断酵素(AATI, Ames, IA)。消化反応物を45℃で45分間インキュベートした。Surveyor酵素の比活性は800U/μLであった(1Uは、37℃で1分間にpH8.5でせん断熱変性仔ウシ胸腺DNAから1ngの酸可溶性物質を生成するために必要な酵素量と製造業者によって定義された)。反応は、20μLの希釈緩衝液(AATI, Ames, IA)又は1x TEの添加によって停止させた。反応物は、フラグメントアナライザーキャピラリー電気泳動系(Fragment AnalyzerTM(AATI, Ames, IA)Capillary Electrophoresis System)で泳動するまでフリーザーで保存した。サンプルは、変異検出キット(DNF-920-K1000T変異ディスカバリーキット(AATI, Ames, IA))を製造業者のプロトコルにしたがって用いフラグメントアナライザーで泳動した。
電気泳動後、PROSize(商標)2.0ソフト(AATI, Ames, IA)を用いてアッセイを分析した。ゲル画像は、96ウェル全てに共通のバックグラウンドバンドをもつ配列特異的パターンを示した。稀な事象(例えば変異)は、バックグラウンドパターンから突出する新規なバンドを生じる。問題の変異の指標となるバンドを有する植物は、野生型DNA混合プールの個々のメンバーをタイリングすることによって評価した。配列決定によって確認した変異保持植物を上記のように生長させるか(例えばバックグラウンド変異を除去するためにM2植物体を戻し交配するか又は何回も異系交配し、さらに変異についてホモ接合の植物を作出するために自家受粉させることができよう)、又は異なる同祖体にWPBF変異を含む別の植物体と交配した。
加えて、内乳半種子からプロラミンを抽出することによって、A、B又はDゲノムのWPBF-A、WPBF-B又はWPBF-Dに変異を有するホモ接合コムギの穀粒を種子貯蔵タンパク質含有量について分析した。加えて、A、B又はDゲノムのWPBFに重大な変異(表1、2及び3)を有すると特定した選択植物を、他のゲノムのWPBFに重大な変異を保持する他の植物体と交配した。これらの交配から生じたホモ接合植物の穀粒を種子貯蔵タンパク質の蓄積について分析した。重大な変異には、それらのSIFT及びPSSMによってタンパク質機能に有害な影響を有することが予測される変異とともに、終止コドンの導入をもたらす変異(切端変異)又はスプライス接合部における変異が含まれる。
WPBF遺伝子の変異はコムギ種子の種子貯蔵タンパク質プロフィールの変化を生じる
TILTIG(ゲノムに誘導された病巣箇所を標的とする(targeting induced local lesions in genomes))技術を用いて、コムギの相同な転写因子遺伝子における多数の変異を特定された。これらの変異は、四倍体パスタコムギのA及びBゲノムの同祖性コピーの全て、及び六倍体パンコムギの3つの同祖性ゲノム(A、B及びDゲノム)の全てで特定された。
これまでに、六倍体パンコムギのBゲノムの変異をDゲノムコピーの変異と交配した。Bゲノム変異は、アミノ酸70位でトリプトファンから終止コドンへの変化(WPBF_B(W70*))を生じ、前記変化は当該遺伝子の非機能性Bゲノムコピーをもたらすことができる。Dゲノム変異はアミノ酸63位のシステインをチロシンへ変化させ(WPBF_D(C63Y))、前記変化もまた当該遺伝子のDゲノムコピーの機能消失をもたらすことができる(なぜならば、システインは当該転写因子の活性なDNA結合ドメインで亜鉛と連係するために必要だからである)。
これらの変異の一方又は他方を宿す親植物を交配したF2世代では、子孫の1/16は、この遺伝子のB及びDゲノムの同祖性コピーでホモ接合性変異体であると期待される。これらの子孫は当該遺伝子のAゲノムコピーで非変異コピーを有するであろう。我々は、WPBFのB及びDゲノムコピーの改変及びこれらの種子の種子貯蔵タンパク質における一切の潜在的な影響を解明することを欲した。
実験は以下によって実施した:111の個々のF2子孫種子を半分に切断し、植え付けのために種子の胚半分を取り置き、種子の内乳の半分から豊富なプロラミン貯蔵タンパク質の大半を抽出し、さらにSDSポリアクリルアミドゲル(SDS-PAGE)でこれら抽出タンパク質を電気泳動する。図3A−3Dに示すように、内乳半種子(矢印で示す)は変化した種子貯蔵タンパク質プロフィールを有する(いくつかのタンパク質バンドは失われ他のバンドは量が減少する)。
これらの結果は、WPBFのB及びDゲノムの変化は種子の貯蔵タンパク質に影響を与えることを示している。しかしながら、この遺伝子のAゲノムコピーに変化を有する植物とこの遺伝子のA及びDゲノムコピーに変化を有する植物との交配は、これら植物の種子貯蔵タンパク質プロフィールにより大きな影響をもたらすと期待される。
上記の結果は、オオムギの転写因子(前記は、変異したときにオオムギの種子貯蔵タンパク質プロフィールに劇的な変化をもたらす)が特定されたことを明瞭に示している。さらにまた、コムギの同等な遺伝子における変異は同様にコムギの貯蔵タンパク質の変化をもたらす。
上記の実施例は本発明の範囲を制限するためではなく本発明を例示するために提供される。本発明の他の変型は当業者には容易に明らかとなろう。それらは添付の特許請求の範囲及びそれらの全ての等価物に包含される。上記の実施例は、コムギの1つ以上のWPBF遺伝子に変異を作出し、これらを特定するためにTILTING技術を用いたが、他の方法(例えば標的誘導変異導入(位置指定変異導入、位置特異的変異導入、又はオリゴヌクレオチド指定変異導入としても知られている)を用いて、コムギの1つ以上のWPBF遺伝子座に本発明の有用な変異を作出できることは当業者には理解されよう(例えば以下を参照されたい:Zhang et al., PNAS 107(26):12028-12033, 2010;Saika et al., Plant Physiology 156:1269-1277, 2011)。また別の方法を用いてコムギのWPBF遺伝子の活性を不活化又は低下させることができることは当業者には理解されよう。これらの方法には、WPBF転写物の蓄積を変異又は低下させるための、CRISPR/Cas9変異導入、TALEN及び亜鉛フィンガー変異導入、RNAi、ミクロRNA及びヘアピンRNA系方法が含まれるが、ただしこれらに限定されない。本明細書に引用した全ての文献、特許、及び特許出願は参照により本明細書に含まれる。

Claims (21)

  1. A、B又はDゲノムのうちの少なくとも1つのコムギプロラミンボックス結合因子遺伝子(WPBF)に1つ以上の変異を含むコムギ植物体であって、前記1つ以上の変異が、野生型植物体由来の穀粒と比較してグルテンが減少した前記コムギ植物体由来の穀粒をもたらす、前記コムギ植物体。
  2. 前記1つ以上の変異が、前記WPBF遺伝子の1つのフィンガー(Dof)領域で結合するDNAに存在する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  3. 前記WPBF遺伝子における1つ以上の変異が、B及びDゲノムに存在する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  4. 前記WPBF遺伝子における1つ以上の変異が、A及びBゲノムに存在する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  5. 前記WPBF遺伝子における1つ以上の変異が、A及びDゲノムに存在する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  6. 前記WPBF遺伝子における1つ以上の変異が、A、B及びDゲノムに存在する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  7. 前記1つ以上の変異により、前記コムギ植物体由来の穀粒において、野生型コムギ植物体由来の穀粒と比較して低分子量グルテニンが減少する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  8. 前記1つ以上の変異により、前記コムギ植物体由来の穀粒において、野生型コムギ植物体由来の穀粒と比較してグリアジンが減少する、請求項1に記載のコムギ植物体。
  9. 前記1つ以上の変異により、前記コムギ植物体由来の穀粒において、野生型コムギ植物体由来の穀粒と比較して高分子量グルテニンが増加するか又は変化しない、請求項1に記載のコムギ植物体。
  10. 前記1つ以上の変異により、表1〜3に列挙するされるアミノ酸変化から選択されるWPBFタンパク質におけるアミノ酸変化が生じる、請求項1に記載のコムギ植物体。
  11. 請求項1に記載のコムギ植物体に由来する、コムギ穀粒。
  12. 請求項11に記載のコムギ穀粒を含む、粉。
  13. 請求項1に記載のコムギ植物体の成分を含む、食品。
  14. 請求項1に記載のコムギ植物体に由来する、コムギの種子、植物体部分又はその子孫。
  15. B及びDゲノムにおけるWPBF遺伝子に変異を含むコムギ植物体であって、前記変異が、野生型植物体由来の穀粒と比較してグルテンが減少した前記コムギ植物体由来の穀粒をもたらす、前記コムギ植物体。
  16. 前記Bゲノムにおける変異により、配列番号:3のアミノ酸の70位においてトリプトファンが終止コドンへ変更(W70*)される、請求項15に記載のコムギ植物体。
  17. 前記Dゲノムの変異により、配列番号:9のアミノ酸の63位においてシステインがチロシンへ変異(C63Y)する、請求項15に記載のコムギ植物体。
  18. 請求項15に記載のコムギ植物体に由来する、コムギ穀粒。
  19. 請求項18に記載のコムギ穀粒を含む、粉。
  20. 請求項15に記載のコムギ植物体の成分を含む、食品。
  21. 請求項15に記載のコムギ植物体に由来する、コムギの種子、植物体部分又はその子孫。
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