JP2018506972A - クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療のための、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンa及びトキシンbに対する四重特異性の八量体型結合剤及び抗体 - Google Patents

クロストリジウム・ディフィシル感染症の治療のための、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンa及びトキシンbに対する四重特異性の八量体型結合剤及び抗体 Download PDF

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Abstract

ヒト免疫グロブリンとラクダ科免疫グロブリンとから誘導される新規の抗体ベースの結合剤が記載されている。これらの結合剤は、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA及び/又はトキシンBを認識して、特異的に結合し、幾つかの場合にはトキシン中和活性を示す。これらの結合剤は、原発性CDI及び再発性CDIを治療又は予防するために使用することができる。該結合剤には、ラクダ科VHHペプチド単量体、連結されたVHHペプチド単量体の群、抗体のFcドメインに結合されたVHHペプチド単量体、及びIgG抗体に結合されたVHHペプチド単量体が含まれる。【選択図】図8

Description

[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号DK084509による政府の支援を受けてなされたものである。合衆国政府は本発明における一定の権利を有し得る。
[配列表]
電子形式(ASCIIテキストファイル)の配列表は、本出願と同時に提出され、引用することにより本明細書の一部をなす。ASCIIテキストファイルのファイル名は、「2016_0045A_ST25」であり、そのファイルは、2016年2月5日に作成されたものであり、ファイルサイズは108KBである。
細菌のクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)は、院内抗生物質関連下痢症の最も一般的な原因であるだけでなく、偽膜性腸炎の病原体である。アメリカ合衆国では、年間500,000件を超えるC.ディフィシル関連疾患(CDI)が発生していると見積もられており、その年間死亡率は、菌株に依存して約3%〜17%の範囲である。
CDI患者の治療のために利用することができる選択肢は限られており、再発率は高い(患者の20%〜35%)。再発患者におけるCDIの更なる症状の発現(episodes:エピソード)のリスクは、50%を上回ることがあり、それらの患者の一部は、何度も再発を繰り返すこととなる。再発性CDIは、同じ菌株又は異なる菌株によって引き起こされることがある。強毒性で抗生物質耐性の菌株の出現により、C.ディフィシル感染症を伴う患者における死亡発生率は、急速に高まっている。
標準的な療法には、抗生物質治療(バンコマイシン及びメトロニダゾール)が含まれるが、それは、十分に効果的であるとは言えず、腸内微生物叢に破壊的な作用をもたらし、何度も再燃を引き起こす。その他の介入(例えば、プロバイオティクス、トキシン吸収性ポリマー及びトキソイドワクチン)が試みられたが、予防戦略も治療戦略も、この感染症の発生率及び重症度の増加に追いついていない。
より新しい免疫ベースの療法は、臨床試験にて或る程度効果があることが裏付けられており、それには、重症CDIに対する免疫グロブリン静注(IVIG)及び再発性CDIに対するヒトモノクローナル抗体が含まれる。スペクトルが狭い大環状抗生物質であるフィダキソマイシンは、CDIに対する経口バンコマイシンと類似した効果を示したが、再燃率の低下についてはかなり良くなっている。
CDIは、治療することが困難な苛立たしい状態であり、何ヶ月にもわたって、それどころか何年にもわたって患者を冒すため、甚大な罹患率及び死亡率が引き起こされることがある。したがって、原発性CDI及び再発性CDIの両方に関する新たな治療並びにCDIを発症するリスクのある被験体に関する予防が必要とされている。
C.ディフィシル関連疾患は、主に、該細菌によって産生された2種の大きな外毒素、すなわちトキシンA(TcdA)及びトキシンB(TcdB)によって引き起こされる。これらのトキシンは、構造的に類似した、宿主細胞に類似の作用機序を示す300kDaの単鎖タンパク質である。両者のトキシンとも宿主のRho GTPアーゼを標的とし、酵素不活性化に続いて、細胞骨格崩壊及びアポトーシスを起こす。腸上皮細胞において、TcdAは、Rho GTPアーゼのグルコシル化を触媒し、細胞の完全な円形化のような形態変化を伴ってアクチン細胞骨格の再構築が起こり、そして腸管バリア機能が破壊される。それらのトキシンは、動物において個別にCDIを引き起こすことができ、当該細菌のTcdA TcdB菌株は無毒性である。
それらのトキシンに対する全身性抗体及び粘膜性抗体は、CDIに対する防御を与える。TcdA及びTcdBは、C.ディフィシルにとっての必須の病原性因子であるため、両者のトキシンに対して産生された抗体は、動物モデルにおける毒素産生C.ディフィシル感染症の治療及びそれに対する防御を可能にする。
本発明は、CDI及びCDIの症状の治療及び予防のための抗TcdA抗体及び抗TcdB抗体に関する既存の知識を基礎とするものである。本明細書では、ヒト免疫グロブリンとラクダ科免疫グロブリンとから誘導される新規の抗体ベースの結合剤が提供される。これらの結合剤は、C.ディフィシルのTcdA及び/又はTcdBを認識してそれらに特異的に結合する。これらの結合剤の一部は、トキシン中和活性を示す。これらの結合剤は、原発性CDI及び再発性CDI並びに原発性CDI及び再発性CDIの症状を治療又は予防するために使用することができる。
以下で詳細に論じられるように、ラクダ科動物は、軽鎖を欠いた、つまりは重鎖のみの抗体(HCAb)である機能的な免疫グロブリンのクラスを産生する。VHと呼ばれるHCAbのVドメインは、通常のヒトVドメインと類似しているが、固有の配列及び構造的特徴を有している。このドメインをコードするDNAは、簡単にクローニングすることができ、そして微生物中で発現させることで、元となるHCAbの抗原結合特性を維持した可溶性タンパク質単量体を得ることができる。これらのVHペプチド単量体型の結合剤は、小さく(〜15kDa)、製造しやすく、かつ一般的に従来の抗体フラグメントと比べてより安定である。該結合剤は、ヒト抗体、例えばIgG、及び、ヒト抗体のフラグメント、例えばFcドメイン、との融合タンパク質として製造することもできる。
したがって、本発明の結合剤には、単純なVHペプチド単量体及び連結されたVHペプチド単量体の群(2つ、3つ、4つ又はそれより多くの単量体を含む)、並びに抗体のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体を含むより複雑な結合剤、並びに部分IgG抗体又は完全IgG抗体に結合されたVHペプチド単量体が含まれる。
第一の実施の形態においては、本発明は、VHペプチド単量体を含む結合剤、及び2つ、3つ、4つ又はそれより多くの単量体を含む連結されたVHペプチド単量体の群を含む結合剤であって、該単量体の各々がTcdA及び/又はTcdBに、好ましくは特異的に結合する、結合剤に関する。このように、本発明は、少なくとも1つのVHペプチド単量体を含むVHペプチド結合剤であって、各々のVHペプチド単量体が、C.ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)の固有のエピトープに対して結合特異性を有する、結合剤を包含する。或る特定の態様において、これらの結合剤は、2つ、3つ、4つ又はそれより多くの連結されたVHペプチド単量体を含む。VHペプチド単量体には、限定されるものではないが、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)が含まれる。
2つ以上の単量体が連結されている上記実施の形態の態様においては、それらの単量体は、一般的に10個から20個の間のアミノ酸を含むフレキシブルなペプチドリンカーによって連結され得る。適切なリンカーには、限定されるものではないが、リンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)が含まれる。
上記実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA及び/又はTcdBに特異的に結合する。上記実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA中和活性及び/又はTcdB中和活性を示す。
上記実施の形態の具体的な一態様においては、結合剤は、連結された4つのVHペプチド単量体を含み、該単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ該単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。TcdAのエピトープは、同一又は異なってよい。TcdBのエピトープは、同一又は異なってよい。
上記実施の形態の具体的な一態様においては、結合剤は、配列番号19に示されるアミノ酸配列又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体(sequence variant)を含み、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又はトキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。幾つかの場合に、配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置している。
第二の実施の形態においては、本発明は、IgG抗体に結合されたVHペプチド単量体を含む結合剤であって、TcdA及び/又はTcdBに結合する、結合剤に関する。これらのIgGベースの結合剤においては、IgG抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域が、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くのVHペプチド単量体によって置き換えられている。
上記実施の形態の或る特定の態様においては、これらの結合剤は、IgGの軽鎖及び重鎖のアミノ末端に可変領域の代わりに結合された2つ、3つ、4つ又はそれより多くの連結されたVHペプチド単量体を含む。VHペプチド単量体には、限定されるものではないが、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)が含まれる。
2つ以上の単量体が連結されている上記実施の形態の態様においては、それらの単量体は、一般的に10個から20個の間のアミノ酸を含むフレキシブルなペプチドリンカーによって連結され得る。適切なリンカーには、限定されるものではないが、リンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)が含まれる。
第一の下位実施の形態においては、本発明は、IgG抗体と、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体と、2組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、上記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、該抗体の各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体が、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ1組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤に関する。この結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「四重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、8つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ、同じ第二の単量体を2つ、同じ第三の単量体を2つ及び同じ第四の単量体を2つ)を有するため、「八量体型」と呼ばれる。
上記の下位実施の形態においては、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、それぞれ異なるエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつVHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の特定の態様において、結合剤の軽(κ)鎖は、配列番号46に示されるアミノ酸配列(AA6/E3κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ結合剤の重鎖は、配列番号44に示されるアミノ酸配列(AH3/5D重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含む。この結合剤が、IgGベースの結合剤である場合には、示されたアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が提供されることは、当業者に明らかであろう。配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
第二の下位実施の形態においては、本発明は、IgG抗体と、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む二重特異性又は四重特異性の四量体型結合剤であって、上記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、該抗体の第一のアームにつき、第一のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第二のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、該抗体の第二のアームにつき、第三のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第四のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体は、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤に関する。結合剤が「四重特異性」である場合に、該結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識し、「二重特異性」の場合には、該結合剤は、2種の異なるトキシンのエピトープを認識する。結合剤は、それらが4つのVHペプチド単量体を有する場合には「四量体型」である(二重特異性の場合に、第一の単量体及び第三の単量体は同じ配列を有し、同じエピトープに結合し、かつ第二の単量体及び第四の単量体は同じ配列を有し、同じエピトープに結合する;四重特異性の場合に、各々の単量体は異なる配列を有し、異なるエピトープに結合する)。
結合剤が二重特異性である場合、第一の単量体及び第二の単量体は、異なるエピトープに対する結合特異性を有し、第一の単量体及び第三の単量体は、同一のアミノ酸配列を有し、かつ第二の単量体及び第四の単量体は、同一のアミノ酸配列を有する。VHペプチド単量体のうち1つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有することができ、かつVHペプチド単量体のうち1つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有することができる。
結合剤が四重特異性である場合、VHペプチド単量体の各々は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する。VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有することができ、かつVHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有することができる。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体の各々は、TcdAのエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体の各々は、TcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の特定の態様において、結合剤の軽(κ)鎖は、配列番号40に示されるアミノ酸配列(AA6κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ結合剤の重鎖は、配列番号36に示されるアミノ酸配列(AH3重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含む。この結合剤が、IgGベースの結合剤である場合には、示されたアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が提供されることは、当業者に明らかであろう。配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
上記の下位実施の形態の別の特定の態様において、結合剤の軽(κ)鎖は、配列番号42に示されるアミノ酸配列(E3κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ結合剤の重鎖は、配列番号38に示されるアミノ酸配列(5D重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含む。この結合剤が、IgGベースの結合剤である場合には、示されたアミノ酸配列を有する2つの重鎖ポリペプチド及び2つの軽鎖ポリペプチドが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が提供されることは、当業者に明らかであろう。配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
上記の実施の形態及び下位実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA及び/又はTcdBに特異的に結合する。上記実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA中和活性及び/又はTcdB中和活性を示す。
第三の実施の形態においては、本発明は、抗体のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体を含む結合剤であって、TcdA及び/又はTcdBに結合する、結合剤に関する。これらのFcドメインベースの結合剤においては、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くのVHペプチド単量体が、抗体重鎖のFcドメインの各アームのヒンジ領域、C2領域及びC3領域に結合されている。したがって、ペプチド単量体は、抗体のFab領域と置き換えられている。
上記実施の形態の或る特定の態様においては、これらの結合剤は、Fcドメインのアームのアミノ末端に結合された2つ、3つ、4つ又はそれより多くの連結されたVHペプチド単量体を含む。VHペプチド単量体には、限定されるものではないが、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)が含まれる。
2つ以上の単量体が連結されている上記実施の形態の態様においては、それらの単量体は、一般的に10個から20個の間のアミノ酸を含むフレキシブルなペプチドリンカーによって連結され得る。適切なリンカーには、限定されるものではないが、リンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)が含まれる。
第一の下位実施の形態においては、本発明は、抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、上記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームはアミノ末端を有しており、該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該アームのアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤に関する。この結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「四重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、8つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ、同じ第二の単量体を2つ、同じ第三の単量体を2つ及び同じ第四の単量体を2つ)を有するため、「八量体型」と呼ばれる。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、それぞれ異なるエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつVHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の特定の態様において、結合剤は、配列番号22に示されるアミノ酸配列(ABAB−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。この結合剤が、Fcドメインベースの結合剤である場合に、示されたアミノ酸配列を有する2つの同一のポリペプチドが、該結合剤のアームとして機能すること、及び該アームが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が得られることは、当業者には明らかであろう。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
第二の下位実施の形態においては、本発明は、抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体とを含む二重特異性の四量体型結合剤であって、上記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームはアミノ末端を有しており、該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、該アームのアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤に関する。この結合剤は、2種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「二重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、4つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ及び同じ第二の単量体を2つ)を有するため、「四量体型」と呼ばれる。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、同じ又は異なるエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
上記の下位実施の形態の特定の態様において、結合剤は、配列番号32に示されるアミノ酸配列(AH3/5D−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。この結合剤が、Fcドメインベースの結合剤である場合に、示されたアミノ酸配列を有する2つの同一のポリペプチドが、該結合剤のアームとして機能すること、及び該アームが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が得られることは、当業者には明らかであろう。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
上記の下位実施の形態の別の特定の態様において、結合剤は、配列番号34に示されるアミノ酸配列(AA6/E3−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している。この結合剤が、Fcドメインベースの結合剤である場合に、示されたアミノ酸配列を有する2つの同一のポリペプチドが、該結合剤のアームとして機能すること、及び該アームが、ジスルフィド結合を通じて集合されて、完全な結合剤が得られることは、当業者には明らかであろう。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
上記の実施の形態及び下位実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA及び/又はTcdBに特異的に結合する。上記実施の形態の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA中和活性及び/又はTcdB中和活性を示す。
本発明には、本明細書で定義される様々な実施の形態及び態様において規定される各々の結合剤のヒト化された変異体が含まれる。同様に、本発明には、本明細書で定義される様々な実施の形態及び態様において規定される各々の結合剤のエピトープ結合断片が含まれる。
本発明には、1種以上の本明細書で定義される結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤が含まれる。
本発明には、本明細書で定義される様々な実施の形態及び態様において規定される各々の結合剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド並びにそれらの相補鎖が含まれる。また本発明には、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び該発現ベクターを含む宿主細胞も含まれる。さらに、本発明には、本明細書で定義される結合剤を製造する方法であって、宿主細胞を、発現ベクターによってコードされる結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法が含まれる。
第四の実施の形態においては、本発明は、被験体におけるC.ディフィシルによって誘発された疾患症状を治療又は予防する方法であって、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症又はC.ディフィシル感染症の発症のリスクを伴う被験体に投与することを含む、方法に関する。
第五の実施の形態においては、本発明は、C.ディフィシルによって感染された被験体におけるC.ディフィシルのトキシンTcdA及び/又はTcdBを中和する方法であって、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症を伴う被験体に投与することを含む、方法に関する。
第六の実施の形態においては、本発明は、被験体におけるC.ディフィシル感染症を治療又は予防する方法であって、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症又はC.ディフィシル感染症の発症のリスクを伴う被験体に投与することを含む、方法に関する。
第六の実施の形態の或る特定の態様においては、該方法は、治療的有効量の抗生物質を被験体に投与することを更に含む。
これらの方法の或る特定の態様においては、結合剤は、該結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤において存在する。
これらの方法の或る特定の態様においては、結合剤の治療的有効量は、被験体の体重当たりの結合剤量として10μg/kgから100mg/kgの間である。
これらの方法の或る特定の態様においては、結合剤は、被験体へと経口で、非経口で、又は直腸内で投与される。
上記は、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解することができるように本発明の特徴及び技術的な利点を幅広く概説した。本発明の追加の特徴及び利点が本明細書に記載され、本発明の特許請求の範囲の主題をなす。本明細書に開示される任意の概念及び具体的な実施形態は、本発明の同じ目的を実施するため他の構造を修飾又は設計するための基礎として容易に利用可能であることが、当業者に理解される。また、かかる等価な構築物は、添付の特許請求の範囲に述べられる本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことが、当業者によって明確に理解されなければならない。本発明の構成及び操作方法の両方について、本発明の特性と考えられる新規な特徴は、更なる目的及び利点と共に、添付の図面と組み合せて考慮される場合に以下の記載からより良く理解されるであろう。しかしながら、あらゆる記載、図面、実施例等が解説及び説明の目的に対してのみ提供され、本発明の限定を定義することは何ら意図されないことが明確に理解される。
C.ディフィシルのトキシンTcdA及びTcdBの、各トキシンのグルコシルトランスフェラーゼドメイン(GT)、システインプロテアーゼドメイン(CPD)、移行ドメイン(TD)及び受容体結合ドメイン(RBD)を示す図である。異なるトキシンドメインを認識してそれらに結合するVHが示されている。下線を引いたVHは、トキシン中和活性を有するものである。 単量体又は二量体のVHは強力な中和活性を有する。VHはTcdA(図2のA)又はTcdB(図2のB)によって誘発される細胞円形化をnM濃度で阻止する。(図2のC)TcdA又はTcdBに対する2つのヘテロ二量体の図である。N末端にあるHis(6)タグが精製を容易にし、フレキシブルなスペーサー(FS)が、2つのVHを隔てている。(図2のD)二量体5D/E3は、2種のVHの単純な混合物に対してその中和活性を少なくとも10倍高める。ヘテロ二量体は、TcdB(図2のE)又はTcdA(図2のF)による致死的な腹腔内負荷からマウスを十分に防御した。 ABABの図である。His−タグ及びE−タグは、それぞれ精製及び検出のためのエピトープタグである。FS:フレキシブルなリンカー;ABP:アルブミン結合ペプチド。 ABABは、C.ディフィシルの芽胞(図4A)及びトキシン(図4B)の負荷からマウスを防御するにあたって非常に強力である。MK HuMabs:臨床試験中のMerck社の抗TcdAヒトモノクローナル抗体及び抗TcdBヒトモノクローナル抗体の混合物。 ABABは、C.ディフィシルの芽胞(図4A)及びトキシン(図4B)の負荷からマウスを防御するにあたって非常に強力である。MK HuMabs:臨床試験中のMerck社の抗TcdAヒトモノクローナル抗体及び抗TcdBヒトモノクローナル抗体の混合物。 両方のトキシンに対する抗トキシン血清は、マウスをCDIから防御する。マウスに、C.ディフィシルの芽胞(UK1菌株、10芽胞/マウス)の接種前に4時間にわたって、TcdAに対するアルパカ抗血清(「Anti−A」)50μl、TcdBに対するアルパカ抗血清(「Anti−B」)50μl、TcdA+TcdBに対するアルパカ抗血清(「Anti−A+Anti−B」)50μl、又は免疫前血清(presera)若しくはPBS(「CTR」)100μlを腹腔内注射した。マウス生存率(図5のA;Anti−A+Anti−B対PBS、p=0.006)及び体重減少率(図5のB)が図説されている(*、Anti−A+Anti−Bと対照との間でp<0.05)。 本発明の結合剤の作製戦略の図である。 細胞培養物からのABAB−Fc(「Fc−ABBA」)の分画及び精製を示す図である。 ABAB分子及びABAB−IgG分子の図である。 ABAB−IgG1を発現するHEK293細胞からの細胞上清の分画を示す図である。ピークは、プロテインAビーズから溶出されたABAB−IgG1のUV OD指示値を示している。 精製されたABAB−IgG1(「IgG−ABBA」及び「Habab」)の還元電気泳動及び非還元電気泳動のSDS−PAGEを示す図である。 個々のVHのそれぞれのトキシンに対する結合と比較した、ABAB−IgGのTcdAに対する結合のELISA分析を示す図である。 個々のVHのそれぞれのトキシンに対する結合と比較した、ABAB−IgGのTcdBに対する結合のELISA分析を示す図である。 四重特異性の抗体IgG−ABABのTcdA及びTcdBの両方に対する同時結合のサンドウィッチELISA分析を示す図である。図12Aは、TcdA(TxA)に引き続き、TcdB(TxB)でコーティングされたELISAプレートに添加された連続希釈されたABAB−IgGを示している。 四重特異性の抗体IgG−ABABのTcdA及びTcdBの両方に対する同時結合のサンドウィッチELISA分析を示す図である。図12Bは、TcdB(TxB)に引き続き、TcdA(TxA)でコーティングされたELISAプレートに添加された連続希釈されたABAB−IgGを示している。 ABAB−IgGのTcdAに対する中和活性を示す図である。 ABAB−IgGのTcdBに対する中和活性を示す図である。 Merck社のTcdA及びTcdBに対する抗体と比較した、マウスにおけるC.ディフィシル感染症に対するABAB−IgGのin vivo中和活性を示すグラフである。 予防的ABAB−IgGのC.ディフィシル感染症に対する効果の研究の設計を示す図である。 ABAB−IgGのCDIに対する効果:予防的処置の概要を示す図である。 ABAB−IgGのCDIに対する効果:再負荷の概要を示す図である。
I.定義
特に指定のない限り、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般用語の定義は例えば、Benjamin Lewin, Genes VII, Oxford University Press刊行, 2000(ISBN019879276X)、Kendrew et al.(編);The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Publishers刊行, 1994(ISBN0632021829)、及びRobert A. Meyers(編), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, Wiley, John & Sons, Inc.刊行, 1995(ISBN0471186341)、並びに他の同様の技術的参照文献に見ることができる。
本明細書中で使用される場合、「a」又は「an」は1つ以上を意味する場合がある。本明細書中で使用される場合、「a」又は「an」という単語は、「を含む(comprising)」という単語とともに使用される場合に1つ以上を意味する場合がある。本明細書中で使用される場合、「別の」は少なくとも2つ目又はそれ以上を意味する場合がある。さらに、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単数形の用語は複数のものを含み、複数形の用語は単数のものを含む。
本明細書中で使用される場合、「約」は、明示されているか否かを問わず、例えば整数、分数及びパーセンテージを含む数値を指す。「約」という用語は一般に、当業者が列挙した値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考え得る数値の範囲(例えば、列挙した値の±5%〜10%)を指す。場合によっては、「約」という用語は、最も近い有効数字まで概数にした数値を含み得る。
II.本発明
動物におけるCDIの一次作用因子は、C.ディフィシルの外毒素TcdA及びTcdB(トキシンA及びトキシンB)である。これらのトキシンは、構造的に類似した、宿主細胞に類似の作用機序を示す300kDaの単鎖タンパク質である。両者のトキシンとも宿主のRho GTPアーゼを標的とし、酵素不活性化に続いて、細胞骨格崩壊及びアポトーシスを起こす。腸上皮細胞において、TcdAは、Rho GTPアーゼのグルコシル化を触媒し、細胞の完全な円形化のような形態変化を伴ってアクチン細胞骨格の再構築が起こり、そして腸管バリア機能が破壊される。それらのトキシンは、動物において個別にCDIを引き起こすことができ、当該細菌のTcdA TcdB菌株は無毒性である。
数多くの独立した研究によって、それらのトキシンに対する全身性抗体及び粘膜性抗体は、CDIに対する防御を与えることが裏付けられている。TcdA及びTcdBは、C.ディフィシルにとっての必須の病原性因子であるため、両者のトキシンに対して産生された抗体は、動物モデルにおける毒素産生C.ディフィシル感染症に対する防御を可能にする。ヒトにおいては、抗トキシン抗体の高い血清濃度は、疾患の重症度の軽減及び再燃の発生率の低下と関連している。したがって、全身性投与及び経口投与された抗トキシン抗体について予防的根拠はある。しかしながら、単独のエピトープを標的とするモノクローナル抗体は、一般的に親和性が低く、そのような抗体の使用は、該トキシンのエピトープ内に突然変異を誘発し、更なる菌株を生成する危険性をはらんでいる。したがって、多数の主要な保存されたトキシンエピトープを標的とする中和性抗トキシンが強く望まれている。
ラクダ科動物は、軽鎖を欠いた、つまりは重鎖のみの抗体(HCAb)である機能的な免疫グロブリンのクラスを産生する。HCAbは、標的抗原に、従来のヒトIgGによって達成されるのと同等の結合特性をもって結合する。VHと呼ばれるHCAbのV領域は、通常のVドメインと類似しているが、固有の配列及び構造的特徴を有している。このドメインをコードするDNAは、簡単にクローニングすることができ、そして微生物中で発現させることで、元となるHCAbの抗原結合特性を維持した可溶性タンパク質単量体を得ることができる。これらのVHペプチド単量体型の結合剤は、小さく(〜15kDa)、製造しやすく、かつ一般的に従来の抗体フラグメントと比べてより安定である。該結合剤は、IgG抗体及び抗体のFcドメインと共に製造することもできる。
本発明は、CDIの治療及び予防で使用することができる結合剤の製造においてHCAbの有利な特徴を利用している。VHペプチド単量体は、TcdA及びTcdBのエピトープの認識及び結合についてスクリーニングされた。エピトープへの結合を示すとともにトキシン中和活性を有するこれらの単量体を連結させることで、本発明の結合剤を製造した。結合剤には、単純なVHペプチド単量体及び連結されたVHペプチド単量体の群(2つ、3つ、4つ又はそれより多くの単量体を含む)、並びに抗体のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体を含むより複雑な結合剤、並びにIgG抗体に結合されたVHペプチド単量体が含まれる(図6を参照)。
H単量体及びVHヘテロ二量体
本発明者らは、C.ディフィシルの両方のトキシンの特異的ドメインに対するVH単量体をスクリーニングするための効果的なプラットフォームを確立した。免疫原性の高い非毒性のホロトキシンを免疫化のために使用し、かつ生体活性のキメラ型トキシン(通常のドメイン機能を有する)をスクリーニングのために使用することで、VH単量体の、TcdA又はTcdBの異なるドメインへの結合のパネルを作製した。これらのVH単量体の多くが強力な中和活性を有しており、それらの特異的ドメインへの結合を確認した(図1)。
H単量体の幾つかは、高度に保存されたTcdA/TcdBエピトープに結合する。例えば、E3 VH単量体は、Rho GTPアーゼ結合部位に結合し、グリコシル化を阻止し、AH3 VH単量体は、該トキシンのGTドメインに結合し、7F VH単量体は、システインプロテアーゼ開裂部位に結合し、そしてGTドメインの開裂及び放出を阻止する。幾つかのVH単量体は強力なトキシン中和活性を有しており、トキシンの細胞毒性活性をnM濃度で阻止することが可能である(図1で下線を引いた単量体、図2のA及びBも参照)。表1は、これらのVHペプチド単量体の一部の野生型及びコドン最適化された形式の両方についての配列表中のアミノ酸配列及び核酸配列を表している。最適化された形式及び最適化されていない形式の両方とも本発明の様々な結合剤の製造において使用することができるが、哺乳動物細胞での発現のためにはコドン最適化された形式が好ましい。
本発明には、表1に引用された各々のVHペプチド単量体、並びにペプチド配列全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型ペプチドのトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持しているそれらの配列変異体が含まれる。また本発明には、表1の各々のVHペプチド単量体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの配列変異体、並びにそれらの相補鎖も含まれる。
ペプチド単量体の結合活性を高めるために、2つのVHペプチド単量体が連結されたVHペプチドのホモ二量体型及びヘテロ二量体型の結合剤を作製した(図2のC)。ホモ二量体型の結合剤は、2種の異なるトキシンにある同一のエピトープに結合する2つの同一の単量体を含む。ヘテロ二量体型の結合剤は、同じトキシンの2種の異なるエピトープ又は2種の異なるトキシンにある異なるエピトープに結合する2つの異なる単量体を含む。VHヘテロ二量体は、ヘテロ二量体を含む個別のVHペプチド単量体の等モルの混合物と比較して、実質的に増強された中和活性を有することが分かった(図2のD)。確かにヘテロ二量体5D/E3及びAH3/AA6は、致死的な全身性のTcdB負荷又はTcdA負荷からそれぞれマウスを十分に防御することが見出されたが、5DとE3とを混合したもの、又は単独のAA6は、部分的にのみ防御性であるに過ぎなかった(図2のE及びF)。
ホモ二量体及びヘテロ二量体におけるVH単量体は、10個から20個の間のアミノ酸の短いフレキシブルなリンカーを使用して連結される。適切なリンカーには、表2で規定されたリンカーが含まれる。また表2には、コドン最適化された形式の3種のリンカーも含まれる。最適化された形式及び最適化されていない形式の両方とも本発明の様々な結合剤の製造において使用することができるが、哺乳動物細胞における発現のためにはコドン最適化された形式が好ましい。
当業者によれば、上記ペプチドの特性から逸脱することなく、フレキシブルなリンカーの配列に小さな変更を加えることができることは理解されよう。したがって、ペプチド配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ基礎を成すリンカーの特性を維持しているフレキシブルなリンカーの配列変異体を使用することができる。
本発明には、先に定義されたフレキシブルなリンカーによって連結された、表1に列挙された単量体のいずれかの対を含むVHペプチドホモ二量体型の結合剤が含まれる。また本発明には、先に定義されたフレキシブルなリンカーによって連結された、表1に列挙された単量体の2つの任意の組み合わせを含むVHペプチドヘテロ二量体型の結合剤も含まれる。ヘテロ二量体の例は、表3に規定される。
また本発明には、タンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持しているVHペプチドホモ二量体及びヘテロ二量体の配列変異体も含まれる。さらに、本発明には、各々のVHペプチドホモ二量体、ヘテロ二量体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの配列変異体、並びにそれらの相補鎖が含まれる。
また本発明には、3つの単量体が、先の表2で定義されたフレキシブルなリンカーを使用して連結された、VHペプチドホモ三量体型及びヘテロ三量体型の結合剤も含まれる。同じ単量体を3つ含む三量体、同じ単量体を2つ及び別の単量体を1つ含む三量体、並びに異なる単量体を3つ含む三量体を含む表1の単量体の任意の組み合わせを使用することができる。タンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持しているVHペプチドホモ三量体及びヘテロ三量体の配列変異体が本発明に含まれる。さらに、本発明には、各々のVHペプチドホモ三量体、ヘテロ三量体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの配列変異体、並びにそれらの相補鎖が含まれる。
ABAB
ペプチド単量体及びヘテロ二量体の成功によって、本発明者らは、4つの連結されたVHペプチド単量体を含む結合剤の開発が可能となった。このことは、研究の目標であった。それというのも、過去の研究では、殆どの病原性C.ディフィシル菌株に対する十分な防御をもたらすためにはTcdA及びTcdBの両方を同時に中和することができることが必要であると考えられるため、それが可能な単独の抗体がCDIの治療及び予防において最も有効な結合剤であることを示しているからである。各々のトキシンにある2種のエピトープを認識し結合する四重特異性の結合剤を作製することによって、該タンパク質の結合活性及び中和活性を強化することができる。したがって、4ドメイン型(四重特異性)VH結合剤が作製された。
四重特異性の四量体型結合剤は、表1の単量体のいずれかの組み合わせから製造することができ、ここで該単量体は、表2のフレキシブルなリンカーを使用して連結される。これらの結合剤は、同じ単量体を4つ有する結合剤から、同じ単量体を3つ有する結合剤まで、同じ単量体を2つ有する結合剤まで、4つの固有の単量体を有する結合剤までの範囲及びその範囲内の別形となる。タンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持している該四量体の配列変異体が本発明に含まれる。さらに、本発明には、各々の四量体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの配列変異体、並びにそれらの相補鎖が含まれる。
ABABは、4つの連結されたVH単量体を含み、その各々がTcdA又はTcdBの異なるエピトープに対して結合特異性を有する、本発明の特定の結合剤である。したがって、ABAB(本明細書及び図面において時々「ABBA」とも呼ばれる)は、4つの異なる中和性VH単量体からなり、2つがTcdAに対するものであり、かつ2つがTcdBに対するものである、四重特異性の四量体型結合剤である。この構造的特徴は、ABABが、各々のトキシンにある2種の異なる中和エピトープに同時に結合することを可能にする。以下に記載されるように、ABABの親和性/結合力及び中和活性は、CDIの治療のために現在臨床試験中のヒトモノクローナル抗体(HuMab)と比べて3−log超も高い。
ABAB結合剤は、VH単量体のAH3、5D、E3及びAA6(表1)をフレキシブルなリンカー(表2)を用いて連結させることによって製造した。この結合剤は、保存された重複していないエピトープを標的とし、優れたトキシン中和活性を有する。ABAB(図3)の設計において、VHペプチド単量体AH3及びAA6を、それらの間に5Dを配置することによって隔離した。それというのも、AH3及びAA6は、互いに空間的に距離が置かれたGT及びTDにそれぞれ結合するからである(図1)。この設計により、AH3及びAA6は、TcdAに同時に結合することが可能となった。
ABABを含む完全なアミノ酸配列は、配列番号19に規定され、そのタンパク質をコードする核酸配列は、配列番号20に規定されている。したがって、本発明には、配列番号19に規定されるABAB結合剤、並びにタンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持している該ABAB結合剤の配列変異体が含まれる。さらに、本発明には、該ABAB結合剤をコードするポリヌクレオチド配列(例えば配列番号20)及びそれらの配列変異体、並びにそれらの相補鎖が含まれる。
ABAB結合剤の一つの別形において、His(6)−タグ(HHHHHH;配列番号66)を、該タンパク質のアミノ末端に精製の補助のために設け、そしてE−タグ(GAPVPYPDPLEPR;配列番号67)を、該タンパク質のカルボキシ末端に検出の補助のために設けた(図3を参照)。VH単量体は、2時間〜3時間の半減期を有することから、もう一つの別形においては、アルブミン結合タンパク質(ABP、DICLPRWGCLWD;配列番号21)を、該構築物のカルボキシル末端にその血清中半減期を10時間まで延ばすために配置した(図3を参照)。
これらの結合剤は、TcdA及び/又はTcdBに特異的に結合する。本発明の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA中和活性及び/又はTcdB中和活性を示す。
明快にするために、本明細書で使用される場合に「一重特異性」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」等は、特定の結合剤が1種、2種、3種、4種等といった異なるエピトープにそれぞれ結合することを意味すると述べることができる。本明細書で使用される場合に、「単量体型」、「二量体型」、「三量体型」、「四量体型」等は、特定の結合剤が、1つ、2つ、3つ、4つ等の、それぞれのエピトープに結合する別々のVHペプチド単量体を有することを意味する。したがって、一重特異性の二量体型結合体は、同じエピトープに結合する2つのVHペプチド単量体(例えばホモ二量体)を表し、二重特異性の二量体型結合剤は、2種の異なるエピトープに結合する2つのVHペプチド単量体(例えばヘテロ二量体)を有することとなる。四重特異性の八量体型結合剤は、4種の異なるエピトープを認識する8つのVHペプチド単量体を有する。
H−Fc
キメラFc融合タンパク質は、in vivoでのタンパク質の半減期を高める能力を有することがよく知られている。この戦略は、幾つかのFDA認可薬剤、例えばエタネルセプトで利用されている。原理証明研究は、単鎖抗体が、正しく集合し、かつヒトコブラクダVH及びヒトIgGのFcドメインをコードするmini−Ig構築物を有するトランスジェニックマウスのB細胞によって発現されることを示している。またキメラ抗EGFR/EGFRvIII VH,EG2−Fcは、in vivoで優れた腫瘍集積を示し、膠芽細胞腫のターゲティングを改善し得る薬物動態特性を有する。
本発明には、抗体のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体(VH−Fc)を含む結合剤であって、TcdA及び/又はTcdBに結合する、結合剤が含まれる。これらのFcドメインベースの結合剤においては、1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くのVHペプチド単量体が、抗体重鎖のFcドメインのヒンジ領域、C2領域及びC3領域に結合されている。したがって、ペプチド単量体は、該抗体のFab領域と置き換えられている。
Hペプチド単量体は、先の表1に規定されたいずれかの単量体であってよく、該単量体には、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)が含まれる。2つ以上の単量体が連結されている場合には、それらの単量体は、一般的に10個から20個の間のアミノ酸を含むフレキシブルなペプチドリンカーによって連結され得る。適切なリンカーには、表2に規定されるリンカー、例えばリンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)が含まれる。
H−Fcが一般的に、産生後に細胞内で自己集合する2つの同一鎖から構成される場合には、本発明には、2種の異なるFc鎖を含むVH−Fc結合剤も含まれる。そのような状況において、1種以上のVH単量体の配列だけが、2つのFc鎖の間で異なっていてもよく、又はFc鎖自体が、異なる配列であってよく、又は1種以上のVH単量体及びFc鎖の両方が、異なる配列であってよい。
H−Fc結合剤の1つの型は、抗体のFcドメインと、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む八量体型結合剤であって、VHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有し、上記第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、共に連結され、かつ両方の抗体のFcドメインのアミノ末端に結合され、かつ上記抗体のFcドメインが、抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含む、結合剤である。この結合剤は、4つのVHペプチド単量体を有することから、該結合剤は、一重特異性(単量体の全てが同じエピトープに結合する場合)、二重特異性(単量体が2種の異なるエピトープに結合する場合)、三重特異性(単量体が3種の異なるエピトープに結合する場合)又は四重特異性(単量体が4種の異なるエピトープに結合する場合)であってよい。
四重特異性のVH−Fc結合剤の具体的な一例は、ABAB−Fc結合剤、つまりは抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、上記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームはアミノ末端を有しており、該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該アームのアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤である。この結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「四重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、8つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ、同じ第二の単量体を2つ、同じ第三の単量体を2つ及び同じ第四の単量体を2つ)を有するため、「八量体型」と呼ばれる。ABAB−Fcは、特異的な結合活性及び中和活性を示すことが判明した。
ABAB−Fc結合剤は、ヒトIgG1のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体AH3/5D/AA6/E3(示される順序で連結される)をコードする発現ベクターを作製することによって製造した。それらのVHペプチド単量体は、表2のフレキシブルなリンカーによって隔離されている。それぞれの鎖をコードする核酸配列は、配列番号23に規定されている。それぞれの鎖のアミノ酸配列は、配列番号22に規定されている。発現後の対となる鎖の自己集合にあたり、四重特異性の八量体型結合剤が得られた。本発明には、配列番号22のABAB−Fc結合剤、並びにタンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持している配列変異体が含まれる。さらに、本発明には、これらの配列変異体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの相補鎖が含まれる。
一重特異性のVH−Fc結合剤(AH3−Fc、5D−Fc、E3−Fc、AA6−Fc)及び二重特異性のVH−Fc結合剤(例えば、AH3/5D−Fc及びAA6/E3−Fc)も、このFc融合系を使用して作られた。一重特異性の結合剤に関しては、単独のVHペプチド単量体を、ヒトIgG1のFcドメインに結合させた。発現及び集合において、対となる鎖から、一重特異性の二量体型結合剤(それらの鎖が同一である場合)又は二重特異性の二量体型結合剤(それらの鎖が異なる場合)が得られた。二重特異性の結合剤に関しては、2つの連結されたVHペプチド単量体(VHホモ二量体又はヘテロ二量体)を、ヒトIgG1のFcドメインに結合させた。発現及び集合において、対となる鎖から二重特異性の四量体型結合剤(それらの鎖が同一である場合)又は四重特異性の四量体型結合剤(それらの鎖が異なる場合)が得られた。表4は、これらの幾つかの結合剤についての配列を規定している。
1つの単量体との具体的な対合には、5D−Fc+5D−Fc;E3−Fc+E3−Fc;AA6−Fc+AA6−Fc;AH3−Fc+AH3−Fc;5D−Fc+E3−Fc;5D−Fc+AA6−Fc;5D−Fc+AH3−Fc;E3−Fc+AA6−Fc;E3−Fc+AH3−Fc;及びAA6−Fc+AH3−Fcが含まれる。2つの単量体との具体的な対合には、AH3−5D−Fc+AH3−5D−Fc;AA6−E3−Fc+AA6−E3−Fc;及びAH3−5D−Fc+AA6−E3−Fcが含まれる。
抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体とを含む二重特異性の四量体型VH−Fc結合剤であって、上記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームはアミノ末端を有しており、該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、該アームのアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤が製造された。この結合剤は、2種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「二重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、4つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ及び同じ第二の単量体を2つ)を有するため、「四量体型」と呼ばれる。第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、同じエピトープ又は異なるエピトープに対する結合特異性を有してよい。VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有してよい。
二重特異性の四量体型VH−Fc結合剤の具体的な一例は、配列番号32に示されるアミノ酸配列(AH3/5D−Fc)を含む。また本発明には、少なくとも95%の配列同一性を有し、トキシン中和活性を維持しているその配列変異体も含まれる。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
二重特異性の四量体型VH−Fc結合剤の具体的な一例は、配列番号34に示されるアミノ酸配列(AA6/E3−Fc)を含む。また本発明には、少なくとも95%の配列同一性を有し、トキシン中和活性を維持しているその配列変異体も含まれる。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
H−Fc結合剤は、TcdA及び/又はTcdBに特異的に結合する。本発明の或る特定の態様においては、結合剤は、TcdA中和活性及び/又はTcdB中和活性を示す。
H−IgG
また本発明には、Fcドメインのみではなく抗体に結合されたVHペプチド単量体を含む結合剤も含まれる。VH−IgG結合剤は、抗体の可変領域を欠いたIgG抗体の軽(κ又はλ)鎖及び重鎖に結合された1つ、2つ、3つ、4つ又はそれより多くのVHペプチド単量体を含む。したがって、ペプチド単量体は、該抗体の可変領域と置き換えられている。
Hペプチド単量体は、先の表1に規定されたいずれかの単量体であってよく、該単量体には、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)が含まれる。2つ以上の単量体が連結されている場合には、それらの単量体は、一般的に10個から20個の間のアミノ酸を含むフレキシブルなペプチドリンカーによって連結され得る。適切なリンカーには、表2に規定されるリンカー、例えばリンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)が含まれる。
H−IgG結合剤には、IgG抗体と、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む八量体型結合剤であって、VHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有し、上記第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、共に連結され、かつ上記抗体の、抗体可変領域を欠いた両方の軽鎖のアミノ末端に結合され、かつ上記第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、共に結合され、かつ上記抗体の、抗体可変領域を欠いた両方の重鎖のアミノ末端に結合されている、結合剤が含まれる。この結合剤は、4つのVHペプチド単量体を有することから、該結合剤は、一重特異性(単量体の全てが同じエピトープに結合する場合)、二重特異性(単量体が2種の異なるエピトープに結合する場合)、三重特異性(単量体が3種の異なるエピトープに結合する場合)又は四重特異性(単量体が4種の異なるエピトープに結合する場合)であってよい。
四重特異性のVH−IgG結合剤の具体的な一例は、ABAB−IgG結合剤、つまりはIgG抗体と、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体と、2組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、上記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、該抗体の各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体が、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ1組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤である。この結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識するため、「四重特異性」と呼ばれる。この結合剤は、8つのVHペプチド単量体(同じ第一の単量体を2つ、同じ第二の単量体を2つ、同じ第三の単量体を2つ及び同じ第四の単量体を2つ)を有するため、「八量体型」と呼ばれる。或る特定の態様において、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、それぞれ異なるエピトープに対する結合特異性を有することができる。或る特定の態様において、VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有することができ、かつVHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有することができる。或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
四重特異性の八量体型ABAB−IgG結合剤の具体的な一例は、配列番号46に示されるアミノ酸配列を有する軽(κ)鎖(AA6/E3κ)又はその配列に少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体、及び配列番号44に示されるアミノ酸配列を有する重鎖(AH3/5D重鎖)又はその配列に少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含む。この態様においては、該配列変異体は、トキシン中和活性を維持している。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。この結合剤は、第一の発現ベクターが、可変領域を欠いたヒトIgG1抗体重鎖に結合されたVHペプチド単量体AH3/5D(示される順序で連結される)をコードし、第二の発現ベクターが、可変領域を欠いたヒトIgG1抗体の軽(κ)鎖に結合されたVHペプチド単量体AA6/E3(示される順序で連結される)をコードする2つの別個の発現ベクターを作製することによって製造された。AA6/E3−IgG1軽(κ)鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号47に規定されている。AH3/5D−IgG1重鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号45に規定されている。本発明には、タンパク質配列の全長にわたって少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有し、かつ野生型タンパク質のトキシン結合活性及び/又は中和活性を維持しているABAB−IgGの配列変異体が含まれる。さらに、本発明には、これらの配列変異体をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらの相補鎖が含まれる。
二重特異性又は四重特異性の四量体型IgG結合剤は、本発明に含まれる。そのような結合剤は、IgG抗体と、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含み、上記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、該抗体の第一のアームにつき、第一のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第二のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、該抗体の第二のアームにつき、第三のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第四のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体は、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する。結合剤が「四重特異性」である場合に、該結合剤は、4種の異なるトキシンのエピトープを認識し、「二重特異性」の場合には、該結合剤は、2種の異なるトキシンのエピトープを認識する。結合剤は、それらが4つのVHペプチド単量体を有する場合には「四量体型」である(二重特異性の場合に、第一の単量体及び第二の単量体は同じ配列を有し、同じエピトープに結合し、かつ第三の単量体及び第四の単量体は同じ配列を有し、同じエピトープに結合する;四重特異性の場合に、各々の単量体は異なる配列を有し、異なるエピトープに結合する)。
結合剤が二重特異性である場合に、第一の単量体及び第三の単量体は、異なるエピトープに対する結合特異性を有し、第一の単量体及び第二の単量体は、同一のアミノ酸配列を有し、かつ第三の単量体及び第四の単量体は、同一のアミノ酸配列を有する。或る特定の態様において、VHペプチド単量体のうち1つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつVHペプチド単量体のうち1つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
結合剤が四重特異性である場合に、VHペプチド単量体の各々は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する。或る特定の態様において、VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつVHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
或る特定の態様において、VHペプチド単量体の各々は、TcdAのエピトープに対する結合特異性を有する。他の態様において、VHペプチド単量体の各々は、TcdBのエピトープに対する結合特異性を有する。
或る特定の態様において、VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する。
二重特異性の四量体型IgG結合剤の具体的な一例は、配列番号40に示されるアミノ酸配列を有する軽(κ)鎖(AA6κ)及び配列番号36に示されるアミノ酸配列を有する重鎖(AH3重鎖)を含む。また本発明には、少なくとも95%の配列同一性を有し、トキシン中和活性を維持しているその配列変異体も含まれる。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
二重特異性の四量体型IgG結合剤のもう一つの具体的な例は、配列番号42に示されるアミノ酸配列を有する軽(κ)鎖(E3κ)及び配列番号38に示されるアミノ酸配列を有する重鎖(5D重鎖)を含む。また本発明には、少なくとも95%の配列同一性を有し、トキシン中和活性を維持しているその配列変異体も含まれる。配列変異体の変異アミノ酸は、VHペプチド単量体の骨格領域に位置してよい。
表5は、二重特異性のVH−IgG結合剤を作製するために使用される配列を規定している。その他の適切な対合には、(i)5D−IgG1−重鎖+AA6−軽(κ又はλ)鎖、及び(ii)AH3−IgG1−重鎖+E3−軽(κ又はλ)鎖が含まれる。
しかしながら、本発明には、AH3、5D、AA6及びE3のいずれかに結合されたIgG1重鎖、並びにAH3、5D、AA6及びE3のいずれかに結合されたIgG1軽(κ又はλ)鎖が含まれる。さらに、重鎖及び軽(κ又はλ)鎖の全ての可能な組み合わせが、本明細書に包含される。
ヒト化された結合剤
Hペプチド単量体は、それらの小さいサイズ及びそれらの骨格のファミリーIIIのヒトV骨格との高度の同一性のため、ヒトに投与される場合に低い免疫原性しか示さないことが期待される。小さい一価VH単量体の全身性適用は、あってもごく僅かな中和性の抗体応答しか誘発しないと思われるが、タンパク質の免疫原性は、一般的にサイズ及び複雑さに伴って増大する。VH単量体の繰り返しの及び/又は長期にわたるin vivoでの使用のための2つの大きな障壁は、それらの短いと考えられる半減期及び潜在的な免疫原性である。価数及び血中半減期を高めるために、VH単量体は、本明細書で論じられるようにヒトIgG及びFcドメインと融合させることができる。考えられる免疫原性に対処するために、VH単量体は、その発現レベル、親和性、可溶性及び安定性を損なうことなく、必要に応じてヒト化することができる。これらの戦略は、ループドナーVHの抗原特異性及び親和性を維持しながら、ヒト化されたVH単量体(hVH単量体)の良好な発現、安定性及び可溶性をもたらすはずである。
1つ以上のヒトV遺伝子との最高の同一性を確保し、最高の結合/中和活性を有するhVH単量体を選択し、その後に、該単量体は、VH−Fc及びVH−IgG構築物へと変換され、こうして完全ヒト化された結合剤、例えば完全ヒト化されたABAB−IgG結合剤及びABAB−Fc結合剤が作製される。これらのヒト化された結合剤のタンパク質配列は、抗体のその標的抗原への結合能を担うCDRセグメントの幾つかが非ヒト起源であるにもかかわらず、ヒト抗体変異体の配列と本質的に同一であり得る。したがって、この戦略は、in vivoでの潜在的な免疫原性の可能性を低下させることで、in vivoでのそれらの安全性及び半減期を高める。
したがって、本発明の結合剤は、本明細書で定義されたそれぞれの結合剤の、hVHペプチド単量体を含むヒト化された形式を包含する。
抗体フラグメント
本発明の結合剤には、本明細書で定義されるVH−Fc結合剤及びVH−IgG結合剤のそれぞれのエピトープ結合断片が含まれる。VH−Fc結合剤及びVH−IgG結合剤は、可変領域がVH単量体によって置き換えられたヒトIgG抗体と構造の点で同等であることから、ヒト抗体フラグメントに関する用語は、そのような結合剤についても該当し得る。該フラグメントには、限定されるものではないが、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、単鎖Fv(scFv)抗体、及びFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、並びに二重特異性抗体及び三重特異性抗体が含まれる。
本発明のVH−Fc結合剤及びVH−IgG結合剤には、完全にヒト型の結合剤、ヒト化された結合剤、及びキメラ型結合剤が含まれる。結合剤は、モノクローナル型又はポリクローナル型であってよい。さらに、結合剤は、組換え型の結合剤であってよい。
結合剤は、任意の種の動物において、けれども好ましくは哺乳動物、例えばヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ又はネコにおいて産生させることができる。例えば結合剤は、ヒト型若しくはヒト化されたものであってよく、又はヒトへの投与に適したあらゆる結合剤調製物であってよい。
ポリヌクレオチド、発現ベクター、宿主細胞及び作製方法
本発明には、本明細書で規定される各々の結合剤をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド及びそれらの相補鎖が含まれる。
また本発明には、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター及び該発現ベクターを含む宿主細胞も含まれる。適切な発現ベクターには、例えばpcDNA3.1及びpSec−Hisが含まれる。適切な宿主細胞には、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)及びヒト胎児腎細胞293(HEK293細胞)が含まれる。
さらに、本発明には、本明細書で定義される結合剤を製造する方法であって、宿主細胞を、発現ベクターによってコードされる結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法が含まれる。
治療及び予防の方法
本発明の結合剤は、被験体におけるC.ディフィシルによって誘発される疾患症状を治療又は予防する方法において使用することができる。これらの方法は、一般的に、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症又はC.ディフィシル感染症の発症のリスクを伴う被験体に投与することを含む。
また本発明の結合剤は、C.ディフィシルにより感染された被験体においてC.ディフィシルのトキシンTcdA及び/又はTcdBを中和するにあたり使用することもできる。これらの方法は、一般的に、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症を伴う被験体に投与することを含む。
さらに、本発明の結合剤は、被験体におけるC.ディフィシル感染症を治療する方法において使用することができる。これらの方法は、一般的に、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症を伴う被験体に投与することを含む。これらの同じ方法は、本明細書で定義されるように、CDIの治療のために使用することができる。
また結合剤は、即時的なCDIの脅威を予防するための免疫予防において使用することもできる。さらに、受動免疫予防は、即時的及び長期的なCDIの脅威の両方を予防するために使用することができる。それぞれのアプローチは、それ自体に特定の利点を伴い、特定の高リスク集団を対象とするために適している。これらの方法は、一般的に、治療的有効量の1種以上の本明細書で定義される結合剤を、C.ディフィシル感染症を発症するリスクがある被験体に投与することを含む。
本発明の各々の方法は、1種以上の結合剤を、該結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤において投与することを含み得る。
本明細書で使用される場合に、用語「治療する」、「治療している」、及び「治療」は、それらの通常かつ慣例的な意味を有し、その用語には、被験体におけるC.ディフィシル感染症若しくはC.ディフィシル関連疾患の阻止、回復若しくはそれらの症状の重症度及び/又は頻度の低下;及び/又はC.ディフィシルに感染した被験体におけるC.ディフィシルのTcdA及び/又はTcdBの生物学的活性の部分的若しくは完全な阻害及び/又はその免疫学的クリアランスの増進;及び/又は被験体におけるC.ディフィシル細胞の成長、分裂、伝播若しくは増殖、又はC.ディフィシル感染;の1つ以上が含まれる。治療とは、本発明の方法を実施していない被験体に対する約1%〜約100%の阻止、回復、低下又は阻害を意味する。好ましくは、その阻止、回復、低下又は阻害は、本発明の方法を実施していない被験体に対して約100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%又は1%である。
本明細書で使用される場合に、用語「予防する」、「予防している」、及び「予防」は、それらの通常かつ慣例的な意味を有し、その用語には、被験体におけるC.ディフィシルのコロニー形成、発生若しくは進展の停止、防止、回避、軽減若しくは阻止;及び/又はC.ディフィシルに感染した被験体におけるTcdA及び/又はTcdBの生物学的活性及び/又は毒性効果の部分的若しくは完全な阻害;及び/又は被験体における細菌細胞の成長、分裂、伝播若しくは増殖、又は細菌感染の、停止、防止、回避、軽減若しくは阻止;の1つ以上が含まれる。予防は、予防処置がされていない被験体に対して、少なくとも約95%だけ停止することを意味する。好ましくは、その停止は、約100%、約99%、約98%、約97%、約96%又は約95%である。予防の成果は、日数単位(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日又は7日)、週単位(例えば、1週間、2週間、3週間又は4週間)、又は月単位(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上)の期間にわたって継続し得る。
本明細書で規定される治療及び予防の方法は、治療的有効量の抗生物質を被験体に投与することによっても補うことができる。好ましくは、抗生物質は、C.ディフィシルに対する抗菌活性を有することとなる。
医薬製剤
結合剤が被験体に直接的に投与され得る場合には、本発明の方法は、好ましくは1種以上の結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤を投与することを基礎とする。したがって、本発明には、1種以上の本明細書で定義される結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤が含まれる。
薬学的に許容可能な担体及び希釈剤は、一般的に知られており、投与される具体的な結合剤及び投与方法に応じて様々であってよい。一般的に使用される担体及び希釈剤の例には、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノール及びそれらの組み合わせ、安定化剤、可溶化剤及び界面活性剤、緩衝剤及び保存剤、等張剤、増量剤並びに滑沢剤が含まれる。結合剤を含む製剤は、一般的に、任意の非ヒト成分、例えば動物血清(例えばウシ血清アルブミン)の不存在下に調製及び培養されることとなる。
1種以上の結合剤を含む医薬製剤は、当業者に既知の方法及び技術を使用して被験体へと投与することができる。CDI疾患の特徴により、該製剤は、治療剤の注腸的送達、すなわち結合剤の下部GI管、例えば大腸又は結腸に対する狙いを定めた送達を使用する治療及び予防のためにより適したものになり得る。その他の送達方法には、限定されるものではないが、経口投与、経肛門投与、静脈内注射又はエアロゾル投与が含まれる。他の方法には、限定されるものではないが、皮内、皮下(s.c.、s.q.、sub−Q、Hypo)、筋内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、動脈内、髄内、心臓内、関節内(関節)、髄液包内(髄液領域)、頭蓋内、髄腔内及びくも膜下(髄液)が含まれる。
投与の手段に応じて、投与量は、一度に全て、例えばカプセル剤若しくは液剤の経口用製剤で投与されてよく、又はゆっくりと時間をかけて、例えば筋内若しくは静脈内投与で投与されてよい。
被験体に投与される単独の又は医薬製剤中の結合剤の量は、感染症の治療又は予防のために有効な量である。したがって、治療的有効量は、本発明の方法が実施される場合に被験体に投与される。一般的に、被験体の体重1kg当たりに約1μgから約1000mgの間の結合剤が投与される。また適切な範囲には、約50μg/kgから約500mg/kgの間が含まれ、かつ約10μg/kgから約100mg/kgの間も含まれる。しかしながら、被験体に投与される結合剤の量は、感染症の部位、起源、程度及び重症度、治療されるべき被験体の年齢及び状態等に依存して広い限度の間で変動することとなる。医師は、最終的に使用すべき適切な投与量を決定するであろう。
結合剤及び結合剤を含む医薬製剤の適用回数は、細菌感染の部位、治療又は予防されるべき感染症の詳細、及び投与方法を含む要因に応じて変動することとなる。それぞれの製剤は、独立して、1日4回、3回、2回若しくは1回、1日置きに、2日置きに、3日置きに、4日置きに、5日置きに、1週間に1回、7日置きに、8日置きに、9日置きに、隔週で、毎月、そして隔月で投与してよい。
治療又は予防の期間は、治療される感染の位置及び重症度又は感染症に罹る相対リスクを基礎とすることとなり、所属医師によって最良の決定がなされることとなる。しかしながら、治療の継続は、何日間、何週間、又は何ヶ月にもわたり継続するように検討される。
本発明のそれぞれの実施形態及び態様においては、被験体は、ヒト、非ヒトの霊長類、トリ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、伴侶動物、例えばイヌ、ネコ若しくは齧歯類又は他の哺乳動物である。本発明の方法が適用され得る被験体には、C.ディフィシル感染症により罹りやすくなる潜在的な疾患又は状態を伴う被験体が含まれる。
本発明は、1種以上の結合剤又は結合剤を含む医薬製剤を充填した1つ以上の容器を含むキットも提供する。キットは使用説明書も含み得る。医薬品又はバイオ製品の製造、使用又は販売を規制する行政機関によって指定される形式の、ヒト投与のための製造、使用又は販売の機関による認可を反映する通知もキットに更に付属し得る。
IV.実施例
H単量体型及びヘテロ二量体型結合剤
単独のドメイン(単量体型)の、トキシンTcdA及びTcdBの特異的ドメインに対する一重特異性のVHペプチド単量体をスクリーニングするための効果的なプラットフォームを確立した。免疫原性の高い非毒性のホロトキシンを免疫化のために使用し、かつ生体活性のキメラ型トキシン(通常のドメイン機能を有する)をスクリーニングのために使用することで、VH単量体の、TcdA又はTcdBの種々のドメインへの結合のパネルを作製した。これらのVH単量体の多くが強力な中和活性を有し、それらの特異的ドメインへの結合を確認した(図1)。その非毒性のホロトキシンは、従来に記載(Wang et al., 2012)される通り、それらの酵素的グルコシルトランスフェラーゼドメインに点突然変異を有する。生体活性のキメラ型トキシンを、また従来に記載(Wang et al., 2012)される通り、TcdA及びTcdBの間で機能的ドメインを交換することによって作製した。
H単量体の幾つかは、高度に保存されたTcdA/TcdBエピトープに結合する。例えば、VH E3単量体は、Rho GTPアーゼ結合部位に結合し、グリコシル化を阻止し、VH AH3単量体は、該トキシンのGTドメインに結合し、VH 7F単量体は、システインプロテアーゼ開裂部位に結合し、そしてGTドメインの開裂及び放出を阻止する。幾つかのVH単量体は強力な中和活性を有しており、トキシンの細胞毒性活性をnM濃度で阻止することが可能である(表1;図2のA及び図2のBを参照)。
結合活性を高めるために、2つのドメイン(二量体型)の二重特異性のVHヘテロ二量体を作製(表3;図2のC)することで、単独のタンパク質が、トキシンの2種の異なるエピトープを標的とすることが可能となった。これらの二重特異性のVHヘテロ二量体は、同じ2つのVH単量体の等モルの混合物と比較して、実質的に増強された中和活性を有していた(図2のD)。ヘテロ二量体5D/E3及びAH3/AA6は、致死的な全身性のTcdB負荷又はTcdA負荷からそれぞれマウスを十分に防御することが見出されたが、5DとE3とを混合したもの、又はAA6単独は、部分的にのみ防御性であるに過ぎなかった(図2のE及びF)。
ヘテロ二量体を含むVH単量体は、配列番号9〜配列番号13(表2)から選択されるフレキシブルなリンカーを使用して連結させた。
ABAB結合剤
ABABと称される4つのドメイン(四量体型)の四重特異性のVH結合剤を、VH単量体AH3、5D、E3及びAA6を連結させることによって作製した。この四重特異性の四量体型結合剤は、保存された重複していないエピトープを標的とし、優れたトキシン中和活性を有する。ABAB(図3)の設計において、VHペプチド単量体AH3及びAA6を、それらの間に5D単量体を配置することによって隔離した。それというのも、AH3及びAA6は、それぞれ互いに空間的に距離が置かれたGT及びTDに結合するからである(図1)。この設計により、AH3及びAA6は、TcdAに同時に結合することが可能となった。
ABAB結合剤の構築において、フレキシブルなリンカーを、VH単量体の間に配置した(図3を参照)。ABABをコードする完全な核酸配列は、配列番号20に規定され、そのタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号19に規定されている。
或る特定の別形においては、His(6)−タグを、該タンパク質のアミノ末端に精製の補助のために設け、E−タグを、該タンパク質のカルボキシ末端に検出の補助のために設け、及び/又はアルブミン結合ペプチド(ABP、DICLPRWGCLWD;配列番号21)は、該タンパク質の血清中半減期を高めるために該構築物のカルボキシル末端に配置した(図3を参照)。
ABABは、個々の単量体にわたって実質的に高められた結合親和性(表6)及び中和活性(表7)を示すことが分かった。表7において、ベロ細胞を、連続希釈されたAA6、AH3、ABAB又はMerck社の抗TcdA HuMab(Lowy et al., 2010)の存在下で5ng/mlのTcdAに曝した。TcdAに誘発される細胞円形化から細胞を防御する抗体の最低用量を示す。
ABABは、競合ELISAにおいて全ての4つの個々のVHペプチド単量体と競合し、そしてサンドウィッチELISAによって測定した場合にTcdA及びTcdBの両方に同時に結合し得ることも分かった。さらに、ABABは反応性が広範であり、最近の流行性菌株の殆どを代表する13種の異なるC.ディフィシル菌株由来のトキシンを中和することができる。
ABABは、両方のトキシンへの結合及び中和に高い効力を示すことから、劇症性CDIの治療におけるその効力を評価した。C.ディフィシル芽胞の負荷1日後に、たった40μg/kgのABABによる単回注射だけで、マウスにおける劇症性CDIが一転した。ABAB処置されたマウスは死ななかったが、対照マウスの50%は、感染3日後に瀕死の状態となった(図4、左のパネル)。ABABは、TcdA及びTcdBでの全身性負荷後の死亡の予防においてMerck社のHuMabs(図4、右のパネル)(Lowy et al., 2010)と比べて4−logも強力である。このように、ABABは、C.ディフィシルのトキシン及び芽胞の負荷に対して並外れたin vivo効力を有する。
動物及びヒトの研究によって、受動投与された抗トキシン抗体がCDIに対する防御をもたらすことが裏付けられた。初期の研究でも、抗トキシン多価血清が、マウスを原発性CDI(図5)及び再発性/再燃性CDIから防御することが示された。これらの知見及び図4からの結果は、仮説を支持しており、CDIの予防のための非経口ABAB免疫化戦略の開発のための根拠を与えた。ABABを全身性送達のために最適化するという目標を達成するために、図6に図説されるキメラ型及びヒト化されたABABを、すなわちVH−Fc結合剤及びVH−IgG結合剤並びにヒト化されたタンパク質hVH−Fc及びhVH−IgGを、作製し、その後に、有力なタンパク質を、動物モデルにおいてin vivo中和活性及び防御について評価した。追加の結合剤の製造及び試験に関する詳細は、以下の段落に規定されている。
ABAB−Fc
ABAB−Fc結合剤は、ヒトIgG1のFcドメインに結合されたVHペプチド単量体AH3/5D/AA6/E3(示される順序で連結される)をコードする発現ベクターを作製することによって製造した。VHペプチド単量体は、表2のフレキシブルなリンカーによって隔離した。該タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号23に規定されている。ABAB−Fcは、安定にトランスフェクションされたHEK293細胞系統の培養上清からプロテインAビーズを使用して(図7)、ジスルフィド結合形成及び二価の分子産生を可能にする条件下で発現及び精製した。発現レベルは、培養上清1L当たりに約20mgであった。ABAB−Fcは、TcdA及びTcdBの両方との結合及び中和において十分に機能的である。ABAB−Fcのアミノ酸配列は、配列番号22に規定されている。
一重特異性のVH−Fc結合剤(AH3−Fc、5D−Fc、E3−Fc、AA6−Fc)及び二重特異性のVH−Fc結合剤(AH3/5D−Fc及びAA6/E3−Fc)も、このFc融合系を使用して作製した。上記表4は、これらの追加の結合剤についての配列を規定している。
ABAB−IgG
図6に図説されるように、二重特異性のVH−IgG(AH3/5D−IgG及びE3/AA6−IgG)は、単量体を、ヒトIgG重鎖及び軽(κ又はλ)鎖と個別に融合させることによって作製することができる。四重特異性のVH−IgG(ABAB−IgG)は、二量体を、ヒトIgG重鎖及び軽鎖と個別に融合させることによって作製することができる。重鎖及び軽鎖の構築物を同時トランスフェクションすることで、AH3/5D−IgG、E3/AA6−IgG及びABAB−IgGのキメラタンパク質が生成する。2つのVHを重鎖及び軽鎖へと分けると、恐らく二重特異性及び四重特異性のVHキメラ型タンパク質の収率及び安定性が改善する。これによって、VH−ヒトIgGキメラ型抗体がABABのin vivoでの安定性及び効力を補助するか否かを決定することができる。同様に、ABAB−IgGのin vivo半減期の更なる改善は、FcRn受容体に対する高められた結合親和性を有するABAB−IgG変異体において試験することもできる。
二重特異性(AH3/5D−IgG1及びE3/AA6−IgG1)並びに四重特異性(ABAB−IgG1)のIgG1結合剤は、それぞれの結合剤の重鎖及び軽(κ)鎖をコードする発現ベクターを同時トランスフェクションすることによって製造した。それらのVHペプチド単量体を、表2のフレキシブルなリンカーによって隔離した。
二重特異性の四量体型VH−IgG1結合剤は、第一の発現ベクターが、重鎖可変領域を欠いたヒトIgG1抗体重鎖(C1−ヒンジ−C2−C3)に結合されたVHペプチド単量体をコードし、第二の発現ベクターが、軽鎖可変領域を欠いたヒトIgG1抗体の軽(κ)鎖(CK)に結合されたVHペプチド単量体をコードする、2つの別個の発現ベクターを作製することによって製造した。これらの結合剤は、得られた結合剤のそれぞれの軽鎖が第一のVH単量体に連結され、かつ得られた結合剤のそれぞれの重鎖が第二のVH単量体に連結されているため二重特異性で四量体型である。上記表5は、これらの追加の結合剤についての配列を規定している。適切な組み合わせには、(i)AH3−IgG1−重鎖+AA6−軽(κ又はλ)鎖、(ii)5D−IgG1−重鎖+E3−軽(κ又はλ)鎖、(iii)5D−IgG1−重鎖+AA6−軽(κ又はλ)鎖、及び(iv)AH3−IgG1−重鎖+E3−軽(κ又はλ)鎖が含まれる。
四重特異性の八量体型ABAB−IgG結合剤を製造した。これらの結合剤は、得られた結合剤のそれぞれの軽(κ又はλ)鎖が2つ(第一及び第二)の連結されたVH単量体に結合され、かつ得られた結合剤のそれぞれの重鎖が2つ(第三及び第四)の連結されたVH単量体に結合され、ここで第一の単量体、第二の単量体、第三の単量体及び第四の単量体は、異なるエピトープに結合するため、四重特異性で八量体型である。
特定の四重特異性の八量体型ABAB−IgG(図8)結合剤は、第一の発現ベクターが、重鎖可変領域を欠いたヒトIgG1抗体重鎖(C1−ヒンジ−C2−C3)に結合されたVHペプチド単量体AH3/5D(示される順序で連結される)をコードし、第二の発現ベクターが、軽鎖可変領域を欠いたヒトIgG1抗体の軽(κ)鎖(CK)に結合されたVHペプチド単量体AA6/E3(示される順序で連結される)をコードする、2つの別個の発現ベクターを作製することによって製造した。AH3/5D−IgG1重鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号45に規定されており、そのアミノ酸配列は、配列番号44に規定されている。AA6/E3−IgG1κ鎖をコードするヌクレオチド配列は、配列番号47に規定されており、そのアミノ酸配列は、配列番号46に規定されている。
二重特異性(AH3/5D−IgG1及びE3/AA6−IgG1)及び四重特異性(ABAB−IgG1)のIgG1結合剤は、安定にトランスフェクションされたHEK293細胞系統の培養上清からプロテインAビーズを使用して(ABAB−IgG1については図9を参照)、ジスルフィド結合形成及び二価の分子産生を可能にする条件下で発現及び精製した。SDS−PAGEによって、90%超の純度の精製されたABAB−IgG1が、非還元ゲルにおいて約218KDaの合計分子量(軽鎖及び重鎖を一緒にした分子量)を有することが示される(図10)。還元ゲルにおいて、重鎖の分子量は68KDaであることが示され、かつ軽鎖の分子量は41KDaであることが示される。
ABAB−IgG1のTcdA及びTcdBへの結合を確認した。図11A及び図11Bは、ABAB−IgG1の両方のトキシンへの結合と、個別の構成要素(AH3、AA6、E3及び5D)との比較を図説している。図11Aは、プレートを1μg/mlのTcdA(TxA)でコーティングした実験の結果を示している。連続希釈されたABAB−IgGを、0ng/ml、0.64ng/ml、3.2ng/ml、16ng/ml、80ng/ml、400ng/ml及び2000ng/mlの濃度で添加した。それらのプレートを洗浄し、Merck社の抗体(抗TcdA)、Fc−ABBA(ABAB−Fc)、Habab(ABAB−IgG)並びにVH抗TcdB単量体AA6及びAH3を、示された量(ng/ml)で添加した。適切な標識された抗体を検出のために使用した。図11Bは、プレートを1μg/mlのTcdB(TxB)でコーティングした実験の結果を示している。連続希釈されたABAB−IgGを、0ng/ml、0.64ng/ml、3.2ng/ml、16ng/ml、80ng/ml及び400ng/mlの濃度で添加した。それらのプレートを洗浄し、Merck社の抗体(抗TcdB)、Fc−ABBA(ABAB−Fc)、Habab(ABAB−IgG)並びにVH抗TcdB単量体E3及び5Dを、示された量(ng/ml)で添加した。適切な標識された抗体を検出のために使用した。
予想されるように、四重特異性の抗体は、サンドウィッチELISAによって測定されるように、TcdA及びTcdBに同時に結合することができる(図12A及び図12B)。第一の実験構成においては、プレートを1μg/mlのTcdA(TxA)でコーティングした。連続希釈されたABAB−IgG(Habab)を、0ng/ml、1.6ng/ml、8ng/ml、40ng/ml、200ng/ml及び1000ng/mlの濃度で添加した。それらのプレートを洗浄し、以下の量:1.6ng/ml、8ng/ml、40ng/ml、200ng/ml及び1000ng/mlのTcdBを添加した。マウス抗TxB抗体(500×)及びヤギ抗マウスIgG−HRP(3000×)抗体を検出のために使用した。図12Aに与えられた結果は、TxBがTxAのコーティングによって検出されることを示しており、それは、IgG−ABABがTxA/Bに同時に結合することを示唆している。第二の実験構成においては、プレートを1μg/mlのTcdB(TxB)でコーティングした。連続希釈されたABAB−IgG(Habab)を、0ng/ml、1.6ng/ml、8ng/ml、40ng/ml、200ng/ml及び1000ng/mlの濃度で添加した。それらのプレートを洗浄し、以下の量:1.6ng/ml、8ng/ml、40ng/ml、200ng/ml及び1000ng/mlのTcdAを添加した。マウス抗TxA抗体(500×)及びヤギ抗マウスIgG−HRP(3000×)抗体を検出のために使用した。図12Bに与えられた結果は、TxAがTxBのコーティングによって検出されることを示しており、これもまたIgG−ABABがTxA/Bに同時に結合することを示唆している。
培養細胞においてそれらのトキシンの細胞変性効果に対するABAB−IgG1の中和活性も調べた。TcdA(100ng/ml、図13A)を、連続希釈されたMerck社の抗TcdAヒトモノクローナル抗体、ABAB−IgG1(Hababa)及びVH抗TcdA単量体AA6及びAH3と混合してから、それを100μlの培養培地中のベロ細胞単層に添加し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。図13Aに与えられた結果は、ABAB−IgG1が、TcdAの中和においてMerck社の抗体よりも少なくとも1000倍も強力であることを示している。同様の実験において、TcdB(10pg/ml、図13B)を、連続希釈されたMerck社の抗TcdBヒトモノクローナル抗体、ABAB−IgG1(Hababa)並びにVH抗TcdB単量体E3及び5Dと混合してから、それを100μlの培養培地中のベロ細胞単層に添加し、37℃で24時間にわたってインキュベートした。図13Bに与えられた結果は、ABAB−IgG1が、TcdBの中和においてMerck社の抗体よりも少なくとも1000倍も強力であることを示している。
ABAB−IgG1のin vivo中和活性を、CDIのマウスモデルにおいて研究し、その結果を図14に示す。マウスを、致死用量のTcdA及びTcdBの混合物(マウス当たりに25ngの各々のトキシン)で負荷し、4時間後に、ABAB−IgG(10μg/kg、30μg/kg又は100μg/kg)、Merck社の抗トキシンA抗体及び抗トキシンB抗体(10mg/kg)の混合物又はPBSを、そのマウスに投与した。それらの結果は、ABAB−IgGの中和活性が、より低い濃度でもMerck社の抗体よりも断然高いことを裏付けている。
ABAB−IgGの動物試験
ABAB−IgG1結合剤を、予防処置アッセイ及び再負荷生存アッセイの両方で試験した。図15は、両方の研究の実験デザインを示している。6週齢〜8週齢の雌のC57マウスを使用し、含まれる条件は、PBS:10ml/kg、腹腔内、n=14;ABAB−IgG:200μg/kg、腹腔内、n=10;ABAB−IgG:1mg/kg、腹腔内、n=10;ABAB−IgG:5mg/kg、腹腔内、n=10であった。
図16中の表は、マウスのC.ディフィシルの芽胞に対する予防的処置で見られた結果の概要を示している。ABAB−IgG又はPBSを、C.ディフィシルの芽胞の投与1日前に投与した。そこから明らかなように、ABAB−IgGは、CDIに対して用量に関連した予防的防御を示した。ここで、5mg/kgでは、調べた全てのパラメータに対して完全な防御が示され、200μg/kgは、200μg/kgの二重特異性のVH融合抗体ABA(Yang et al., 2014)よりも強力であることが判明した。
図17中の表は、マウスのC.ディフィシルの芽胞に対する再負荷で見られた結果の概要を示している。ABAB−IgG又はPBSを、C.ディフィシルの芽胞の投与15日前に投与した。そこから明らかなように、ABAB−IgGの1用量は、芽胞の再負荷によって引き起こされたCDIに対して或る程度の防御を示したが、その防御は、一次負荷の間の防御と比較して大幅に効果が低かった。これは、時間に伴う抗体レベルの降下と、一次負荷後のPBS群における抗体生成とによるものであると考えられる。
結合剤の発現、精製及び評価
様々な選択基準を用いて、本明細書のアプローチに記載される実験で作製された結合剤を選択する。第一に、本明細書に定義される構築物の各々は、プロテインA親和性クロマトグラフィーによる小規模組換えタンパク質の製造のための293T細胞の一過性トランスフェクションにおいて使用することができる。各々の構築物の産生収率は、定量的ELISAによって測定することができる。第二に、組換えタンパク質の結合活性をELISA及び表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してスクリーニングすることで、それらのトキシンに対する本来の結合活性を維持している構築物を選択することができる。第三に、それらのタンパク質を、in vitroアッセイにおいて中和活性について評価する(図2)。
観察結果を総合すると、組換え型結合剤のin vivoでの多重反応性及び/又は自己反応性が、in vivoでの安全性及び半減期に関する潜在的な問題であることが示唆される。原発急性CDIの予防のための全身性結合剤として選択されたABAB結合剤の適用には、キメラ型のヒト化されたABABタンパク質の多重反応性及び/又は自己反応性が制限されることが恐らく必要とされる。タンパク質プロテオミクスの進歩により、組換え型抗体の多重反応性及び自己反応性についてin vitroでスクリーニングすることが可能となった。それは、代用となる治療用抗体のための優れたツールである。したがって、良好な収率、高い結合親和性及び強力な中和活性を有する選択されたヒト化された結合剤を、潜在的な多重反応性及び自己反応性について、自己抗原マイクロアレイ試験及びProtoArray protein microarrays(Invitrogen)を用いて更に試験することができる。
上記in vitroアッセイから、ABAB−Fc結合剤及びABAB−IgG結合剤の候補を、それらのin vivo毒性、血清中半減期及び免疫原性について評価することができる。
本発明はその或る特定の実施形態を参照して記載されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修飾を行い得ることを理解する。添付の特許請求の範囲は、記載される具体的な実施形態に限定されない。
参考資料
本明細書で言及される全ての特許及び出版物は、本発明の属する技術分野の当業者の技術水準の指標である。各々の引用される特許及び出版物はその全体が引用することにより本明細書の一部をなす。以下の参考資料は、全て本出願で引用されている。
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Claims (111)

  1. IgG抗体と、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体と、2組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、
    前記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、
    該抗体の各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体が、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ1組の連結された第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつそれらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤。
  2. 第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、それぞれ異なるエピトープに対する結合特異性を有する、請求項1に記載の結合剤。
  3. 前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項1に記載の結合剤。
  4. 前記VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する、請求項1に記載の結合剤。
  5. 前記結合剤の軽鎖は、配列番号46に示されるアミノ酸配列(AA6/E3κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ前記結合剤の重鎖は、配列番号44に示されるアミノ酸配列(AH3/5D重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項1に記載の結合剤。
  6. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項5に記載の結合剤。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の結合剤のヒト化された変異体。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の結合剤のエピトープ結合断片。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
  10. 前記軽鎖は、配列番号47に示される核酸配列によってコードされ、かつ前記重鎖は、配列番号45に示される核酸配列によってコードされる、請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  11. 請求項9に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  12. 請求項10に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  13. 請求項11に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  14. 請求項12に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  15. 結合剤を製造する方法であって、請求項13に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  16. 結合剤を製造する方法であって、請求項14に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  17. IgG抗体と、第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む二重特異性又は四重特異性の四量体型結合剤であって、
    前記IgG抗体は2つのアームを含み、各アームは、可変領域を欠いた重鎖及び可変領域を欠いた軽鎖を含み、かつ各鎖は、アミノ末端を有しており、
    該抗体の第一のアームにつき、第一のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第二のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、
    該抗体の第二のアームにつき、第三のVHペプチド単量体は、該軽鎖のアミノ末端に結合されており、かつ第四のVHペプチド単量体は、該重鎖のアミノ末端に結合されており、かつ、
    それらのVHペプチド単量体は、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤。
  18. 前記結合剤は、二重特異性であり、ここで、第一の単量体及び第二の単量体は、異なるエピトープに対する結合特異性を有し、第一の単量体及び第三の単量体は、同一のアミノ酸配列を有し、かつ第二の単量体及び第四の単量体は、同一のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載の結合剤。
  19. 前記VHペプチド単量体のうち1つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ前記VHペプチド単量体のうち1つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項18に記載の結合剤。
  20. 前記結合剤は、四重特異性であり、ここで、前記VHペプチド単量体の各々は、異なるエピトープに対する結合特異性を有する、請求項17に記載の結合剤。
  21. 前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項20に記載の結合剤。
  22. 前記VHペプチド単量体の各々は、TcdAのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項17に記載の結合剤。
  23. 前記VHペプチド単量体の各々は、TcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項17に記載の結合剤。
  24. 前記VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する、請求項17に記載の結合剤。
  25. 前記結合剤の軽鎖は、配列番号40に示されるアミノ酸配列(AA6κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ前記結合剤の重鎖は、配列番号36に示されるアミノ酸配列(AH3重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項17に記載の結合剤。
  26. 前記結合剤の軽鎖は、配列番号42に示されるアミノ酸配列(E3κ)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、かつ前記結合剤の重鎖は、配列番号38に示されるアミノ酸配列(5D重鎖)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項17に記載の結合剤。
  27. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項25に記載の結合剤。
  28. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項26に記載の結合剤。
  29. 請求項17〜28のいずれか一項に記載の結合剤のヒト化された変異体。
  30. 請求項17〜28のいずれか一項に記載の結合剤のエピトープ結合断片。
  31. 請求項17〜28のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
  32. 前記軽鎖は、配列番号41に示される核酸配列(AA6κ)によってコードされ、かつ前記重鎖は、配列番号37に示される核酸配列(AH3重鎖)によってコードされる、請求項31に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  33. 前記軽鎖は、配列番号43に示される核酸配列(E3κ)によってコードされ、かつ前記重鎖は、配列番号39に示される核酸配列(5D重鎖)によってコードされる、請求項31に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  34. 請求項31に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  35. 請求項32に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  36. 請求項33に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  37. 請求項34に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  38. 請求項35に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  39. 請求項36に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  40. 結合剤を製造する方法であって、請求項37に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  41. 結合剤を製造する方法であって、請求項38に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  42. 結合剤を製造する方法であって、請求項39に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  43. 抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体とを含む四重特異性の八量体型結合剤であって、
    前記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは、抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームは、アミノ末端を有しており、
    該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体が、該アームのアミノ末端に結合されており、かつ、
    それらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤。
  44. 第一のVHペプチド単量体、第二のVHペプチド単量体、第三のVHペプチド単量体及び第四のVHペプチド単量体は、それぞれ異なるエピトープに対する結合特異性を有する、請求項43に記載の結合剤。
  45. 前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項43に記載の結合剤。
  46. 前記VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する、請求項43に記載の結合剤。
  47. 前記結合剤は、配列番号22に示されるアミノ酸配列(ABAB−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項43に記載の結合剤。
  48. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項47に記載の結合剤。
  49. 請求項43〜48のいずれか一項に記載の結合剤のヒト化された変異体。
  50. 請求項43〜48のいずれか一項に記載の結合剤のエピトープ結合断片。
  51. 請求項43〜48のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
  52. 前記結合剤は、配列番号23に示される核酸配列(ABAB−Fc)によってコードされる、請求項51に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  53. 請求項51に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  54. 請求項52に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  55. 請求項53に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  56. 請求項54に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  57. 結合剤を製造する方法であって、請求項55に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  58. 結合剤を製造する方法であって、請求項56に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  59. 抗体のFcドメインと、2組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体とを含む二重特異性の四量体型結合剤であって、
    前記抗体のFcドメインは2つのアームを含み、各アームは、抗体重鎖のヒンジ領域、C2領域及びC3領域を含み、かつ各アームは、アミノ末端を有しており、
    該Fcドメインの各アームにつき、1組の連結された第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体が、該アームのアミノ末端に結合されており、かつ、
    それらのVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)のエピトープに対する結合特異性を有する、結合剤。
  60. 第一のVHペプチド単量体及び第二のVHペプチド単量体は、同じ又は異なるエピトープに対する結合特異性を有する、請求項59に記載の結合剤。
  61. 前記VHペプチド単量体は、独立して、TcdA又はTcdBのグリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、移行ドメイン又は受容体結合ドメイン中のエピトープに対する結合特異性を有する、請求項59に記載の結合剤。
  62. 前記結合剤は、配列番号32に示されるアミノ酸配列(AH3/5D−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項59に記載の結合剤。
  63. 前記結合剤は、配列番号34に示されるアミノ酸配列(AA6/E3−Fc)又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項59に記載の結合剤。
  64. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項62に記載の結合剤。
  65. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項63に記載の結合剤。
  66. 請求項59〜65のいずれか一項に記載の結合剤のヒト化された変異体。
  67. 請求項59〜65のいずれか一項に記載の結合剤のエピトープ結合断片。
  68. 請求項59〜65のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド配列。
  69. 前記結合剤は、配列番号33に示される核酸配列(AH3/5D−Fc)によってコードされる、請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  70. 前記結合剤は、配列番号35に示される核酸配列(AA6/E3−Fc)によってコードされる、請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチド配列。
  71. 請求項68に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  72. 請求項69に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  73. 請求項70に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  74. 請求項71に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  75. 請求項72に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  76. 請求項73に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  77. 結合剤を製造する方法であって、請求項74に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  78. 結合剤を製造する方法であって、請求項75に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  79. 結合剤を製造する方法であって、請求項76に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  80. 少なくとも1つのVHペプチド単量体を含むVHペプチド結合剤であって、各々のVHペプチド単量体が、クロストリジウム・ディフィシルのトキシンA(TcdA)又はトキシンB(TcdB)の固有のエピトープに対して結合特異性を有する、結合剤。
  81. 2つの連結されたVHペプチド単量体を含む、請求項80に記載の結合剤。
  82. 3つの連結されたVHペプチド単量体を含む、請求項80に記載の結合剤。
  83. 4つの連結されたVHペプチド単量体を含む、請求項80に記載の結合剤。
  84. 前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdAのエピトープに対する結合特異性を有し、かつ前記VHペプチド単量体のうち2つはTcdBのエピトープに対する結合特異性を有する、請求項83に記載の結合剤。
  85. 前記VHペプチド単量体は、VHペプチド単量体5D(配列番号1)、E3(配列番号3)、AA6(配列番号5)及びAH3(配列番号7)からなる群から選択される、請求項80〜84のいずれか一項に記載の結合剤。
  86. 前記VHペプチド単量体は、リンカー−1(配列番号9)、リンカー−2(配列番号11)及びリンカー−3(配列番号13)から独立して選択されるリンカーを使用して連結される、請求項81〜84のいずれか一項に記載の結合剤。
  87. 前記結合剤は、配列番号19に示されるアミノ酸配列又はその配列に対する少なくとも95%の配列同一性を有する配列変異体を含み、ここで、該配列変異体は、TcdA結合特異性及び/又はTcdB結合特異性を維持しているか、又は該配列変異体は、トキシン中和活性を維持しているか、又はその両方を維持している、請求項83に記載の結合剤。
  88. 前記配列変異体の変異アミノ酸は、前記VHペプチド単量体の骨格領域に位置している、請求項87に記載の結合剤。
  89. 請求項80〜84及び87〜88のいずれか一項に記載の結合剤のヒト化された変異体。
  90. 請求項80〜84及び87〜88のいずれか一項に記載の結合剤のエピトープ結合断片。
  91. 請求項80〜84及び87〜88のいずれか一項に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド。
  92. 請求項85に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド。
  93. 請求項86に記載の結合剤をコードするヌクレオチド配列又はその相補鎖を含む単離されたポリヌクレオチド。
  94. 請求項91に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  95. 請求項92に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  96. 請求項93に記載の単離されたポリヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
  97. 請求項94に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  98. 請求項95に記載の発現ベクターを含む単離された宿主細胞。
  99. 請求項96に記載の発現ベクターを含む単離された細胞。
  100. 結合剤を製造する方法であって、請求項97に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  101. 結合剤を製造する方法であって、請求項98に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  102. 結合剤を製造する方法であって、請求項99に記載の単離された細胞を、前記発現ベクターによってコードされる該結合剤の発現を促進する条件下で培養することと、該結合剤を細胞培養物から回収することとを含む、方法。
  103. 請求項1〜8、17〜30、43〜50、59〜67及び80〜90のいずれか一項に記載の結合剤と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬製剤。
  104. 被験体におけるC.ディフィシルによって誘発された疾患症状を治療又は予防する方法であって、治療的有効量の1種以上の請求項1〜8、17〜30、43〜50、59〜67及び80〜90のいずれか一項に記載の結合剤を、C.ディフィシル感染症又はC.ディフィシル感染症の発症のリスクを伴う被験体に投与することを含む、方法。
  105. C.ディフィシルにより感染された被験体におけるC.ディフィシルのトキシンTcdA及び/又はTcdBを中和する方法であって、治療的有効量の1種以上の請求項1〜8、17〜30、43〜50、59〜67及び80〜90のいずれか一項に記載の結合剤を、C.ディフィシル感染症を伴う被験体に投与することを含む、方法。
  106. 被験体におけるC.ディフィシル感染症を治療又は予防する方法であって、治療的有効量の1種以上の請求項1〜8、17〜30、43〜50、59〜67及び80〜90のいずれか一項に記載の結合剤を、C.ディフィシル感染症又はC.ディフィシル感染症の発症のリスクを伴う被験体に投与することを含む、方法。
  107. 前記中和は、部分的又は完全な中和である、請求項105に記載の方法。
  108. 治療的有効量の抗生物質を前記被験体に投与することを更に含む、請求項106に記載の方法。
  109. 前記結合剤は、該結合剤及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬製剤において存在する、請求項104〜106のいずれか一項に記載の方法。
  110. 前記結合剤の治療的有効量は、前記被験体の体重当たりの結合剤量として10μg/kgから100mg/kgの間である、請求項104〜106のいずれか一項に記載の方法。
  111. 前記結合剤を、前記被験体へと経口で、非経口で、又は直腸内で投与する、請求項104〜106のいずれか一項に記載の方法。
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