本発明は、細胞における標的遺伝子の発現を低減するのに有効な量の単離二本鎖核酸に細胞を接触させるステップを含む、細胞における標的遺伝子の発現を低減するための組成物及び方法を提供する。本発明のテトラループ含有dsNAに加えて、本願はまた、アンチセンス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、センス鎖の5’末端又はアンチセンス鎖の3’末端又はこれらの組み合わせのいずれかに一本鎖ヌクレオチド領域を有するdsNAも提供し、ここで伸長部には、少なくとも1つの本明細書に定義するとおりのリガンドがコンジュゲートしている。これらの構造は、有効なRNA干渉剤である(図25〜図30及び関連する実施例を参照のこと)。多くの実施形態において、一本鎖伸長部は少なくとも1個の修飾ヌクレオチド及び/又はリン酸骨格修飾を含む。意外にも、本明細書において実証されるとおり、リガンドにコンジュゲートしていても、或いはリガンドがない場合にも、一本鎖伸長ダイサー基質siRNA(DsiRNA)又は非ダイサー基質siRNAは、対応するDsiRNA又は非ダイサー基質siRNAと比較したとき有効なRNA阻害剤である。
GalNAcなどのリガンドをdsNA分子とdsNA分子の5’伸長部で又はテトラループ領域にコンジュゲート可能であることにより、例えばGalNAcなどのリガンドに対する肝細胞であり得る目的の領域にdsNA分子を送達することが可能になる。dsNA分子とのコンジュゲーションが企図される他のリガンドには、単量体又はモノアンテナリー、バイアンテナリー及びトリアンテナリーGalNAcを含むASGPr模倣体が含まれる。GalNAc及びGalNAc模倣体の好適な例は当該技術分野において公知であり、国際公開第2015/006740号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の13〜25頁にある表2、表2a、表3及び表3aを参照することができる。これらの表に開示されるGalNAcリガンドは、好適なリンカーを使用した本発明のdsNA分子とのコンジュゲーションに用いることができ、本発明の範囲内にあると見なされるものとする。
意外な発見として、一本鎖伸長DsiRNA剤は、追加的及び/又は個別的な官能基の付加を可能にし、安定化させる修飾(例えば、PS−NA部分)又は他の形態の修飾であって、かかる一本鎖DNA又はRNA又はDNA/RNAハイブリッド伸長ドメインを含有しないDsiRNAと比較したとき更なる機能性を追加する能力及び/又はかかる伸長DsiRNAの例えば薬物動態、薬力学又は体内分布を向上させる能力を有する修飾の取り込み/パターン形成を可能にする伸長領域を有する機能性DsiRNAを作成する原動力となる。
同程度の長さのsiRNA剤と比較したときダイサープロセシング後の活性がより高い伸長5’ガイド鎖、伸長3’パッセンジャー鎖、伸長5’パッセンジャー鎖又は伸長3’ガイド鎖を含むDsiRNAの利点は、本明細書に提示する結果によって強調される。RNAサイレンシング活性の対応する低下を認めることなくDsiRNA剤の5’ガイド鎖、3’パッセンジャー鎖、5’パッセンジャー鎖又は3’ガイド鎖のいずれを伸長させることも可能であるため、構成の緊密化に起因してRNAサイレンシング活性が妨げられることなく、非伸長分子には追加し得ないある種の官能基をかかる薬剤に付加することが可能になる。
意外な発見として、一本鎖伸長非ダイサー基質が標的遺伝子の発現を低減するとともに、非伸長dsNAが、追加的及び/又は個別的な官能基の付加を可能にし、安定化させる修飾(例えば、PS−NA部分)又は他の形態の修飾であって、かかる単一のDNA又はRNA又はDNA/RNAハイブリッド伸長ドメインを含有しない対応する長さのdsRNA剤と比較したとき更なる機能性を追加し、及び/又はかかる伸長dsNAの例えば薬物動態、薬力学又は体内分布を向上させるかかる修飾又は付加部分(attached moleties)の取り込み/パターン形成を可能にする伸長領域を有する機能性非ダイサー基質の作成を可能にする。
ダイサープロセシング後のsiRNA剤の活性は同程度の長さのdsRNA二重鎖よりも高いレベルに保持しつつ、dsNA二重鎖を含有する非ダイサー基質の5’ガイド鎖、3’パッセンジャー鎖、又は5’パッセンジャー鎖のいずれを延長することもできるという新たに見出された能力によってもたらされる利点が、本明細書に提示する結果によって強調される。RNAサイレンシング活性の対応する低下を認めることなく非ダイサー基質の5’ガイド鎖、3’パッセンジャー鎖、又は5’パッセンジャー鎖のいずれをも伸長可能であることにより、緊密化した構成で存在するときかかる官能基がRNAサイレンシング活性を妨害可能であるため本来は付加できないある種の官能基をかかる薬剤に付加することが可能となり得る。
加えて、一本鎖伸長DsiRNA剤は、一本鎖伸長DsiRNAの一本鎖領域と塩基対合する、例えばガイド5’一本鎖伸長領域と塩基対合する第3のショート(1〜16ヌクレオチド長)オリゴヌクレオチドを含み得る。この第3のオリゴは、有利には、(a)一本鎖伸長部を安定化させる働き、及び(b)標的化用分子(又は他の活性薬剤)を付加し得るとともに、次には(標的化用分子を一本鎖伸長DsiRNAに直接付加することと対比して)アニーリングによって一本鎖伸長DsiRNAにつなぎ合わせ得る独立した実体を提供する働きをする。
テトラループは、テトラループを欠くオリゴマーと比較したとき、ヌクレアーゼ耐性の増加を含めた安定性の向上をオリゴマーにもたらす。アンチセンス鎖にニックが存在すると、オリゴマーはsiRNA分子及びダイサー基質の両方として(二重鎖の長さに応じて)働くことができる。オリゴマーは、ニックの存在により、予め切断されたアンチセンス鎖を含み、切断可能なダイサー基質及び/又はダイサー結合基質を提供する。テトラループ構造は、ステム及びループ領域を含め、構造内の種々の位置でリガンドに共有結合的に連結させることができる。意外にも、リガンドを加えてもテトラループ構造は影響を受けない。詳細には、テトラループヌクレオチドが各々リガンドにコンジュゲートした、テトラループ及びニックを含有するオリゴマーは、意外にもsiRNA分子としてのそれらの機能を維持した(例えば、実施例22〜24を参照のこと)。オリゴマーにニックが存在すると、アンチセンス鎖への種々の化学修飾を利用することができる。本明細書に開示されるテトラループ構造は、RNAi活性にダイサー切断を必要としない。
テトラループを含む一本鎖非ダイサー基質が有効性の低下を呈しないという意外な発見により、例えば追加的及び/又は個別的な官能基への非ダイサー基質の付加、安定化させる修飾(例えば、PS−NA部分)又は他の形態の修飾であって、かかる一本鎖DNA伸長ドメインを含有しない対応する長さのdsRNA剤と比較したとき更なる機能性を追加する能力及び/又はかかる薬剤の例えば薬物動態、薬力学又は体内分布を向上させる能力を有する修飾の取り込み/パターン形成に対する余地をもたらす一方で、有効性は保ったままである非ダイサー基質を作成することが可能となる。
本発明の一実施形態において、テトラループはセンス鎖の5’末端に位置する。別の実施形態において、テトラループはセンス鎖の3’末端に位置する。別の実施形態において、テトラループはアンチセンス鎖の5’末端に位置する。別の実施形態において、テトラループはアンチセンス鎖の3’末端に位置する。dsNA分子上の任意の位置、5’又は3’末端、センス鎖又はアンチセンス鎖に位置するテトラループは、GalNAc、マンノース−6−リン酸、コレステロール及び葉酸塩などの1個以上のリガンドに容易にコンジュゲートすることができる。本明細書には、dsNA合成方法、コンジュゲーション方法、リガンド及びアンチセンス鎖に対するセンス鎖の5’末端又はdsNAの5’末端に位置するテトラループを含むdsNAの活性についてのアッセイが提供される。本開示のコンジュゲーション及び合成方法は、センス鎖の3’末端又はアンチセンス鎖の3’末端にテトラループを含むdsNA分子の作成用に改変することができる。
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解する意味を有する。以下の参考文献が、本発明で用いられる用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988);The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(eds.),Springer Verlag(1991);及びHale and Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用されるとき、以下の用語は、特に指定のない限り、下記のとおりそれらに帰される意味を有する。
本明細書で使用されるとき、用語「核酸」は、一本鎖又は二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又は修飾ヌクレオチド、及びそれらのポリマーを指す。この用語には、既知のヌクレオチド類似体又は修飾骨格残基若しくは連結を含有する核酸であって、合成のもの、天然に存在するもの、及び天然に存在しないもので、基準核酸と同様の結合特性を有するもので、且つ場合によっては、基準ヌクレオチドと同様の形で代謝されるものが包含される。かかる類似体の例としては、限定なしに、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「ヌクレオチド」は、当該技術分野で認識されているとおり、天然塩基を有するもの(標準)、及び当該技術分野において周知の修飾塩基を有するものを含んで用いられる。かかる塩基は、概してヌクレオチド糖部分の1’位に位置する。ヌクレオチドは、概して塩基;糖及びリン酸基を含む。ヌクレオチドにはまた、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、逆位脱塩基ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体も含まれる。ヌクレオチドは、糖、リン酸及び/又は塩基部分が修飾されていないことも、又は修飾されていることもある(同義的に、ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチドなどとも称される;例えば、Usman and McSwiggen,前掲;Eckstein,et al.,国際公開第92/07065号パンフレット;Usman et al,国際公開第93/15187号パンフレット;Uhlman and Peyman,前掲(全てが本明細書によって参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。修飾ヌクレオチドの公知の例の一部には、ヒポキサンチン(I)、キサンチン(X)、3β−D−リボフラノシル−(2,6−ジアミノピリミジン)(K)、3β−D−リボフラノシル−(1−メチル−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5,7(4H,6H)−ジオン)(P)、イソ−シトシン(イソ−C)、イソ−グアニン(イソ−G)、1−β−D−リボフラノシル−(5−ニトロインドール)、1−β−D−リボフラノシル−(3−ニトロピロール)、5−ブロモウラシル、2−アミノプリン、4−チオ−dT、7−(2−チエニル)−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(Ds)、ピロール−2−カルバルデヒド(Pa)、2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン(S)、2−オキソピリジン(Y)、ジフルオロトリル、4−フルオロ−6−メチルベンズイミダゾール、4−メチルベンズイミダゾール、3−メチルイソカルボスチリリル、5−メチルイソカルボスチリリル、3−メチル−7−プロピニルイソカルボスチリリル、7−アザインドリル、6−メチル−7−アザインドリル、イミジゾピリジニル、9−メチル−イミジゾピリジニル、ピロロピリジニル(pyrrolopyrizinyl)、イソカルボスチリリル、7−プロピニルイソカルボスチリリル、プロピニル−7−アザインドリル、2,4,5−トリメチルフェニル、4−メチルインドリル、4,6−ジメチルインドリル、フェニル、ナフタレニル(napthalenyl)、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベンジル、テトラセニル及びペンタセニルからなる群から選択される塩基類似体が含まれる。糖部分に対する一般的な修飾の一部は、2’−O−メチル、2’−メトキシエトキシ、2’−フルオロ、2’−アリル、2’−O−[2−(メチルアミノ)−2−オキソエチル]、4’−チオ、4’−Ch2−O−2’−架橋、4’−(Ch2)2−O−2’−架橋、2’−LNA、2’−アミノ、又は2’−O−(N−メチルカルバメート)修飾を含む群から選択される。修飾核酸塩基の他の例は当該技術分野において公知であり、例えば、Limbach,et al,Nucleic Acids Res.22:2183,1994によって要約されるとおりである。核酸分子に導入し得る塩基修飾の非限定的な例の一部としては、ヒポキサンチン、プリン、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6−トリメトキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)又は6−アザピリミジン又は6−アルキルピリミジン(例えば6−メチルウリジン)、プロピンなどが挙げられる(Burgin,et al.,Biochemistry 35:14090,1996;Uhlman and Peyman,supra)。「修飾塩基」とは、この態様においては、1’位におけるアデニン、グアニン、シトシン及びウラシル以外のヌクレオチド塩基又はそれらの均等物を意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「単量体」は、「ヌクレオチド」と同義的に使用される。
本明細書で使用されるとき、「二本鎖核酸」又は「dsNA」は、二重鎖を形成する2本のオリゴヌクレオチド鎖を含む分子である。dsNAには、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びこれらの組み合わせが含まれ得る。dsNA分子はダイサー基質又は非ダイサー基質のいずれであってもよい。dsNA分子がダイサー基質である実施形態では、dsNA分子はダイサー基質NA(dsiNA)と称される。dsiNAが複数のRNAを含む実施形態では、それはダイサー基質siRNA(DsiRNA)と称される。DsiRNA分子はDNA分子及びRNA分子の両方を含む。DsiRNAは、dsNAの一部であるDsiNAの一部である。従って、用語dsNAには、dsiNA、DNA二重鎖、DNA/RNA二重鎖、RNA二重鎖及びDsiRNAが包含される。本発明の二本鎖NAには、RNA干渉経路のタンパク質及びタンパク質複合体、例えばダイサー及びRISCに対する基質が含まれる。本発明のdsNAの例示的構造を図1、Bに示す。特定の実施形態において、dsNAは、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)として機能することが可能な領域におけるRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA剤の第2鎖の推定ダイサー切断部位より5’側の位置にある一本鎖領域とを含む。別の実施形態において、dsNAは、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)として機能することが可能な領域におけるRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA剤の第1鎖の推定ダイサー切断部位より3’側の位置にある一本鎖領域とを含む。別の実施形態において、dsNAは、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)であるRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA剤の第2鎖の推定ダイサー切断部位より3’側の位置にある、少なくとも1個の修飾ヌクレオチド及び/又はリン酸骨格修飾を含む一本鎖領域とを含む。代替的な実施形態において、本発明は、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)であるRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA剤の第1鎖の推定ダイサー切断部位より5’側の位置にある、少なくとも1個の修飾ヌクレオチド及び/又はリン酸骨格修飾を含む一本鎖領域とを含むdsNAを提供する。
本明細書で使用されるとき、用語「オリゴマー」は、「二本鎖核酸」(dsNA)と同義的に使用される。オリゴマー(dsNA分子)は単量体(ヌクレオチド)を含む。
本明細書で使用されるとき、用語「複数」は、2より大きい数、例えば、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50又はそれ以上を意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「スペーサー」は、リガンド修飾ヌクレオチドを互いに隔てるヌクレオチドを意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「遊離可能なリンカー」は、細胞内若しくは動物体内の生理条件下又はインビボ条件下でリガンドをヌクレオチドと結び付ける結合の切断を受けることが可能なリンカーを指す。遊離可能なリンカーには生物学的に不安定なリンカーが含まれ、切断によってdsNA分子からリガンドが遊離する。リンカー部分はまた、様々な条件下で切断可能である。好適な切断条件としては、限定はされないが、pH、UV照射、酵素活性、温度、加水分解、脱離及び置換反応、また連結の熱力学特性を挙げることができる。遊離可能なリンカーは本質的に光解離性であってもよく、ここでリンカーは特定のUV波長の下で切断され、光解離性リンカーを含有する発明を含む本発明のdsNAを用いて目的の標的細胞又は組織に化合物を送達することができ、続いてUV光源の存在下で遊離させることができる。
本明細書で使用されるとき、用語「生分解性リンカー」は、生分解性であるように設計された、且つある分子を別の分子、例えば生理活性分子に結び付けるリンカーとして働く核酸又は非核酸分子を指す。生分解性リンカーの安定性は、ヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、及び化学修飾ヌクレオチド、例えば、2’−O−メチル、2’−O−フルオロ、2’−アミノ、2’−O−アミノ、2’−C−アリル、2’−O−アリル及び他の2’修飾又は塩基修飾ヌクレオチドの様々な組み合わせを用いることによって調節し得る。生分解性リンカーは、二量体、三量体、四量体又はそれより長く、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであってもよく、又はリンベースの連結を含む単一ヌクレオチド長を含んでもよい。生分解性リンカーははまた、核酸骨格、核酸糖、又は核酸塩基修飾も含み得る。
本明細書で使用されるとき、用語「生分解性」は、生体系における分解、例えば酵素分解又は化学分解を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「検出可能標識」は、当該技術分野において公知の任意の好適な標識を指し、限定はされないが、放射標識、化学発光、及び蛍光標識が挙げられる。多くの場合、標識は、標識された核酸分子の細胞取り込みを実質的に改変しないタイプのものである。
本明細書で使用されるとき、用語「色素」は、化学発光又は蛍光のいずれかによって検出することのできる標識を指し、一般的に使用される例としては、限定はされないが、TAMRA、フルオレセイン、cy3及びcy5等が挙げられる。1つ又は複数の標識によって生成される1つ又は複数のシグナルは、目視(例えば顕微鏡法による)又は蛍光活性化細胞選別(FACS)を含め、いかなる方法によって計測されてもよい。いずれにしろ、1つ又は複数の標識によって生成される1つ又は複数のシグナルの計測値を用いて、(a)その標識を取り込んだ細胞の数又は割合、(b)個々の細胞又は細胞群が取り込んだ1つ以上の標識の量、又は(c)(a)及び(b)の両方を決定し得る。
本明細書で使用されるとき、用語「半減期」は、分子、例えばdNA、代謝産物、医薬品、放射性ヌクレオチド、治療用分子、色素又はシグナル伝達分子がその薬理学的、生理学的、若しくは放射線学的活性の半分又はその強度の半分を使用するのにかかる時間を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「リガンド修飾ヌクレオチド」又は「リガンドコンジュゲート型ヌクレオチド」又は「リガンド含有ヌクレオチド」は、リガンドが付加されているヌクレオチドを指して同義的に使用され、付加は、糖若しくは塩基への付加であるか、又はリンカーを使用することによる末端リン酸への付加のいずれかである。
本明細書で使用されるとき、「DsiRNA」又はダイサー基質siRNA剤は、二重鎖を形成する2本のオリゴヌクレオチド鎖を含む分子である。DsiRNA剤は、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びこれらの組み合わせを含み得る。DsiRNA剤は、RNAi干渉経路のダイサー酵素によってプロセシングされることになる。
特定の実施形態において、本発明のDsiRNAは、推定ダイサー酵素切断部位に直に隣接する部位にデオキシリボヌクレオチド残基を有し得る。例えば、図2に示される全てのDsiRNA並びに図3に示される6、7、8、9、10、11、及び12番目のDsiRNAにおいて、(第1鎖の5’末端残基を始点1位として)24位及び24位より3’側の部位(例えば、24、25、26、27、28、29、30位等)にデオキシリボヌクレオチドが存在し得る。デオキシリボヌクレオチドはまた、第1鎖の20位と相補的なヌクレオチドから始まる第2鎖上にも、またこのヌクレオチドの5’方向に位置する第2鎖上の位置にもあり得る。従って、本発明の特定の有効なDsiRNAは、かかるDsiRNAの第1鎖内、第2鎖内、及び/又は両方の鎖内へのデオキシリボヌクレオチドの導入開始前は、19個の二重鎖化したリボヌクレオチドのみを有する。
本明細書で使用されるとき、「二重鎖」は、2つの一本鎖核酸の相互作用によって形成された二重らせん構造を指す。本発明によれば、二重鎖は、dsNAのセンス及びアンチセンス、又は標的及びアンチセンス鎖である第1鎖及び第2鎖を含有し得る。二重鎖は、典型的には、互いに対して逆平行の向きの2つの一本鎖核酸間における塩基の対水素結合、即ち「塩基対合」によって形成される。本明細書で使用されるとき、用語「二重鎖」は、鎖の整列した塩基が相補的である場合、それらがワトソン・クリック塩基対となり得るように整列する第1鎖及び第2鎖の領域を指す。用語「二重鎖」は、5’又は3’末端一本鎖ヌクレオチドを成す1つ以上の一本鎖ヌクレオチドを含まない。一部の実施形態において、二重鎖は、完全に(100%)塩基対合していてもよい整列した第1鎖及び第2鎖の領域、並びに二重鎖の第1鎖5’末端ヌクレオチド及び二重鎖の第1鎖3’末端ヌクレオチドが第2鎖の対応するヌクレオチドとワトソン・クリック型の塩基対合をなしている限りにおいて1、2、3、4、5個又はそれ以上の非対合塩基を含有する整列した第1鎖及び第2鎖の領域を含む。本明細書で使用されるとき、「完全に二重鎖化した」は、対になった5’及び3’末端ヌクレオチドの間にある全てのヌクレオチドが塩基対合していることを指す。本明細書で使用されるとき、「実質的に二重鎖化した」は、鎖間の二重鎖において第1鎖の5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドとの間に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50個の非対合塩基対(連続又は非連続)があることを指す。
「実質的に二重鎖化した」との関連で、「連続」、二重鎖化したヌクレオチドに言及するときの「連続」は、他の鎖とワトソン・クリック塩基対合を形成しないセンス鎖又はアンチセンス鎖上の2個より多い一続きの隣接ヌクレオチドを意味する。
「実質的に二重鎖化した」との関連で、二重鎖化したヌクレオチドに言及するときの「非連続」は、2個以上のヌクレオチドによって互いに隔てられているセンス鎖又はアンチセンス鎖上のミスマッチを意味する。
二重鎖における対合は、概してワトソン・クリック塩基対合によって起こり、例えば、グアニン(G)はDNA及びRNAにおいてシトシン(C)と塩基対を形成し(従って、グアニンデオキシリボヌクレオチドのコグネイトヌクレオチドはシトシンデオキシリボヌクレオチドであり、逆もまた同様である)、アデニン(A)はDNAにおいてチミン(T)と塩基対を形成し、及びアデニン(A)はRNAにおいてウラシル(U)と塩基対を形成する。塩基対が形成され得る条件としては、生理的条件又は生物学的に関連性のある条件(例えば、細胞内:pH7.2、140mMカリウムイオン;細胞外pH7.4、145mMナトリウムイオン)が挙げられる。更に、二重鎖は、隣接するヌクレオチド間のスタッキング相互作用によって安定化する。本明細書で使用されるとき、二重鎖は、塩基対合によるか、又はスタッキング相互作用によって構築又は維持され得る。二重鎖は2本の相補的な核酸鎖によって形成され、これらの核酸鎖は実質的に相補的であるか、又は完全に相補的であり得る(下記参照)。
本明細書で使用されるとき、「〜に対応する」又は「〜に対応している」は、第2鎖が1〜6ヌクレオチド長の3’一本鎖オーバーハングを含むように第1鎖1位が前記第2鎖のヌクレオチドと塩基対合するとき第2鎖のヌクレオチド残基が第1鎖の残基と整列するように二重鎖において整列している第1鎖及び第2鎖塩基を指す。「〜に対応する」は、ワトソン・クリック塩基対の形成による対合を必要とするものではなく、むしろ整列した非対合の第1鎖/第2鎖ヌクレオチド並びに整列し且つ塩基対合した第1鎖/第2鎖ヌクレオチドの両方を含む。
「相補的」又は「相補性」とは、ある核酸が別の核酸配列と従来のワトソン・クリック塩基対合又はフーグスティーン塩基対合のいずれかによって1つ又は複数の水素結合を形成し得ることを意味する。本開示の核酸分子に関連して、核酸分子のその相補配列との結合自由エネルギーは、核酸の関連性のある機能、例えばRNAi活性が進行するのに十分である。核酸分子の結合自由エネルギーの決定は、当該技術分野において周知である(例えば、Turner,et al.,CSH Symp.Quant.Biol.LII,pp.123−133,1987;Frier,et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 83:9373−9377,1986;Turner,et al.,J.Am.Chem.Soc.109:3783−3785,1987を参照のこと)。パーセント相補性は、核酸分子において第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン・クリック塩基対合)を形成することのできる隣接残基の割合を示す(例えば、第1のオリゴヌクレオチドの合計10個のヌクレオチド中5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドが10個のヌクレオチドの第2の核酸配列と塩基対合すると、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%、及び100%の相補性となる)。パーセント相補性が少なくともある特定の割合であることを決定するには、核酸分子において第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン・クリック塩基対合)を形成することのできる隣接残基の割合を計算し、端数を切り捨てて丸める(例えば、第1のオリゴヌクレオチドの合計23個のヌクレオチド中12、13、14、15、16、又は17個のヌクレオチドが23個のヌクレオチドの第2の核酸配列と塩基対合すると、それぞれ52%、57%、61%、65%、70%、及び74%となり;それぞれ少なくとも50%、50%、60%、60%、70%、及び70%の相補性を有する)。本明細書で使用されるとき、「実質的に相補的」は、生物学的条件下でハイブリダイズ能を有するような鎖間の相補性を指す。実質的に相補的な配列は、60%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%の相補性を有する。加えて、2本の鎖が生物学的条件下でハイブリダイズ能を有するかどうかを、それらのヌクレオチド配列を調べることによって決定する技法は、当該技術分野において周知である。
本明細書で使用されるとき、アンチセンス鎖に関連して「3’領域」は、センス鎖の対応する1〜19位、1〜20位又は1〜21位と整列するアンチセンス鎖のヌクレオチドに対して(アンチセンス鎖上の)3’側遠位にあるアンチセンス鎖の連続ヌクレオチドを指す。誤解を避けるため、「3’領域」は、アンチセンス鎖に言及するとき、アンチセンス鎖とそのコグネイト標的RNAとの間に形成される二重鎖において推定アルゴノート2(Ago2)切断部位より(5’側遠位にある標的RNA上のヌクレオチドに対応するアンチセンス鎖上の)3’側遠位にあるアンチセンスヌクレオチドを包含することが意味される。
本明細書で使用されるとき、「シントン」は、目的とする特定の配列を有する修飾DNA、RNA又はDNA/RNA分子を作製するため固相合成方法で用いることのできるヌクレオチド又は非ヌクレオチド部分を意味する。特定の実施形態において、シントンは、リガンド、例えば、GalNac、マンノース−6−リン酸、コレステロール又は葉酸塩にコンジュゲートしたヌクレオチド又は非ヌクレオチド部分であり、ここでコンジュゲートしたヌクレオチド又は非ヌクレオチド部分は、固相合成において目的の核酸分子の作製に用いることができる。特定の実施形態において、シントンは、ヌクレオチド又は非ヌクレオチド部分のリガンドとのコンジュゲーションに介在するリンカーを更に含む。
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含めた、飽和脂肪族基を含む。特定の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルはその骨格に炭素原子を6個以下(例えば、直鎖についてC1〜C6、分枝鎖についてC3〜C6)、より好ましくは4個以下有する。同様に、好ましいシクロアルキルはその環構造に3〜8個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造に5又は6個の炭素を有する。用語C1〜C6は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を含む。
更に、特記されない限り、用語アルキルは「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を含み、このうち後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有するアルキル部分を指す。かかる置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。シクロアルキル類は、例えば上記に記載する置換基で更に置換されていてもよい。「アルキルアリール」又は「アリールアルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。用語「アルキル」にはまた、天然及び非天然アミノ酸の側鎖も含まれる。用語「n−アルキル」は、直鎖(即ち、非分枝状)非置換アルキル基を意味する。
用語「アルケニル」は、上記に記載したアルキルと長さ及び可能な置換の点で類似した、しかし少なくとも1つの二重結合を含有する不飽和脂肪族基を含む。例えば、用語「アルケニル」は、直鎖アルケニル基(例えば、エチレニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等)、分枝鎖アルケニル基、シクロアルケニル(脂環式)基(シクロプロペニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル)、アルキル又はアルケニル置換シクロアルケニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルケニル基を含む。特定の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルケニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてC2〜C6、分枝鎖についてC3〜C6)。同様に、シクロアルケニル基はそれらの環構造に3〜8個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造に5又は6個の炭素を有し得る。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含有するアルケニル基を含む。
更に、特記されない限り、用語アルケニルには「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方が含まれ、このうち後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有するアルケニル部分を指す。かかる置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
用語「アルキニル」は、上記に記載したアルキルと長さ及び可能な置換の点で類似した、しかし少なくとも1つの三重結合を含有する不飽和脂肪族基を含む。例えば、用語「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分枝鎖アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。特定の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキニル基はその骨格に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてC2〜C6、分枝鎖についてC3〜C6)。用語C2〜C6は、2〜6個の炭素原子を含有するアルキニル基を含む。
更に、特記されない限り、用語アルキニルには「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両方が含まれ、このうち後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置き換える独立して選択される置換基を有するアルキニル部分を指す。かかる置換基としては、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
炭素の数が特に指定されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用されるとき、上記に定義するとおりのアルキル基であって、但しその骨格構造に1〜5個の炭素原子を有するものを意味する。「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、例えば2〜5個の炭素原子の鎖長を有する。
用語「アルコキシ」は、酸素原子に共有結合的に連結した置換及び非置換アルキル、アルケニル、及びアルキニル基を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、及びペントキシ基が挙げられる。置換アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、及びアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル及びウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分など、独立して選択される基で置換されていてもよい。ハロゲン置換アルコキシ基の例としては、限定はされないが、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等が挙げられる。
用語「ヘテロ原子」は、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を含む。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄及びリンである。
用語「ヒドロキシ」又は「ヒドロキシル」は、−OH又は−O−(適切な対イオンを有する)を有する基を含む。
用語「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素等を含む。用語「過ハロゲン化された」は、概して、全ての水素がハロゲン原子に置き換えられている部分を指す。
用語「置換されている」は、部分上に置くことができ、且つ分子がその意図される機能を果たすことを許容する、独立して選択される置換基を含む。置換基の例としては、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、(CR’R’’)0−3NR’R’’、(CR’R’’)0−3CN、NO2、ハロゲン、(CR’R’’)0−3C(ハロゲン)3、(CR’R’’)0−3CH(ハロゲン)2、(CR’R’’)0−3CH2(ハロゲン)、(CR’R’’)0−3CONR’R’’、(CR’R’’)0−3S(O)1−2NR’R’’、(CR’R’’)0−3CHO、(CR’R’’)0−3O(CR’R’’)0−3H、(CR’R’’)0−3S(O)0−2R’、(CR’R’’)0−3O(CR’R’’)0−3H、(CR’R’’)0−3COR’、(CR’R’’)0−3CO2R’、又は(CR’R’’)0−30R’基[式中、各R’及びR’’は、各々独立して、水素、C1〜C5アルキル、C2〜C5アルケニル、C2〜C5アルキニル、又はアリール基であるか、又はR’及びR’’は一緒になってベンジリデン基又は−(CH2)2O(CH2)2−基である]が挙げられる。
用語「アミン」又は「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1つの炭素又はヘテロ原子に共有結合している化合物又は部分を含む。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1つの更なるアルキル基に結合している基及び化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2つの更なるアルキル基に結合している基を含む。
用語「エーテル」は、2つの異なる炭素原子又はヘテロ原子に結合した酸素を含有する化合物又は部分を含む。例えば、この用語は「アルコキシアルキル」を含み、これは、別のアルキル基に共有結合している酸素原子に共有結合したアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を指す。
本発明の薬剤の第1鎖及び第2鎖(センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、二重鎖化した領域において完全に相補的である必要はない。一実施形態では、アンチセンス鎖のRNA配列が1個以上のミスマッチ(1、2、3、4、5、6個、連続又は非連続)を含有し、即ち、本発明に係る単離二本鎖核酸の二重鎖化したセンス鎖に対してミスマッチを有し、1個以上(1、2、3、4又は5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個連続又は非連続)の修飾ヌクレオチド(塩基類似体)を含有する。例示的実施形態において、かかるミスマッチは、アンチセンス鎖のRNA配列の3’領域(上記に定義するとおり)内に存在する。一態様では、2、3、4又は5個のミスマッチ又は塩基類似体を含む修飾ヌクレオチドが、標的RNA配列がハイブリダイズしたときにアンチセンス鎖において標的RNA配列の推定Ago2切断部位より3’側にあるアンチセンス鎖のRNA配列内に組み込まれる。
RISCへのアンチセンス鎖の侵入が、恐らくはRISCへのsiRNAの侵入に伴い起こる一部の律速巻き戻し段階への影響によって促進され、又はそれに有利となるように、ミスマッチ又は熱力学的安定性の低下(特にsiRNAのセンス領域の3’末端残基/アンチセンス領域の5’末端残基又はその近傍における)を用いることが提案されている(Schwarz et al.,2003;Khvorova et al.,2003)。そのため、活性な21mer siRNA二重鎖を選択するためのアルゴリズム設計に、末端塩基組成が含まれるようになっている(Ui−Tei et al.,2004;Reynolds et al.,2004)。
本発明のDsiRNA剤内にかかるミスマッチを含めると、かかる薬剤が天然に存在するmiRNAと類似した阻害効果を及ぼすことが可能になり得るとともに、任意選択でそれを天然に存在するmiRNA標的RNA(例えば、標的転写物の3’UTR領域)に対するのみならず、天然に存在するアンタゴニストmiRNAの存在が知られていないRNA配列に対してもまた仕向けることができる。例えば、天然に存在するmiRNAによっては標的化されないであろう遺伝子/転写物内の反復配列を標的化するため、miRNAと類似する及び/又はそれとして機能するように設計された、ミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAを合成することができる(例えば、Notchタンパク質内のリピート配列を標的化することができ、ここでNotch内の個々のリピートは核酸レベルで互いに異なり得る(例えば、縮重している)が、ミスマッチを許容するとともに、更には対応する完全マッチのsiRNA剤と比べてより広域の阻害効果もまた許容するmiRNA機構を介することにより、それらを有効に標的化することができる)。かかる実施形態において、ミスマッチ含有DsiRNA剤が阻害効果を発揮するのに標的RNA切断は必要であることも、又は必要でないこともあり得る。
一実施形態において、本発明の二本鎖核酸分子は、マイクロRNA(miRNA)を含み、又はそれとして機能する。「マイクロRNA」又は「miRNA」とは、mRNA切断、翻訳抑制/阻害又はヘテロクロマチンサイレンシングのいずれかによって標的メッセンジャーRNAの発現を調節する小さい二本鎖RNAを意味する(例えば、Ambros,2004,Nature,431,350−355;Bartel,2004,Cell,116,281−297;Cullen,2004,Virus Research.,102,3−9;He et al.,2004,Nat.Rev.Genet.,5,522−531;及びYing et al.,2004,Gene,342,25−28を参照のこと)。一実施形態において、本発明のマイクロRNAは、miRNA分子のセンス鎖(例えば第1鎖)又はセンス領域とアンチセンス鎖(例えば第2鎖)又はアンチセンス領域との間又はmiRNAのアンチセンス鎖又はアンチセンス領域と対応する標的核酸分子(例えば標的mRNA)との間に部分的な相補性(即ち、100%未満の相補性)を有する。例えば、部分的相補性は、二本鎖核酸分子構造内に様々なミスマッチ又は非塩基対合ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドバルジなど、1、2、3、4、5個又はそれ以上のミスマッチ又は非塩基対合ヌクレオチド)を含んでもよく、これによってmiRNAのセンス鎖又はセンス領域とアンチセンス鎖又はアンチセンス領域との間又はmiRNAのアンチセンス鎖又はアンチセンス領域と対応する標的核酸分子との間に生じるバルジ、ループ、又はオーバーハングが生じ得る。
幾つもの塩基にわたって塩基対合する一本鎖核酸は、「ハイブリダイズする」と言われる。ハイブリダイゼーションは、典型的には生理条件下又は生物学的に関連性のある条件下(例えば、細胞内:pH7.2、140mMカリウムイオン;細胞外pH7.4、145mMナトリウムイオン)で決定される。ハイブリダイゼーション条件は、概して一価のカチオン及び生物学的に許容可能な緩衝液を含み、二価カチオン、錯アニオン、例えばグルコン酸カリウムのグルコン酸塩、スクロースなどの非荷電種、及び試料中の水の活性を低下させる不活性ポリマー、例えばPEGを含むことも、又は含まないこともある。かかる条件には、塩基対の形成が可能となる条件が含まれる。
ハイブリダイゼーションは、二重鎖を形成する一本鎖核酸を解離するのに必要な温度、即ち(融解温度;Tm)によって測られる。ハイブリダイゼーション条件はまた、塩基対が形成し得る条件でもある。様々なストリンジェンシー条件を用いてハイブリダイゼーションを決定することができる(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger(1987) Methods Enzymol.152:399;Kimmel,A.R.(1987) Methods Enzymol.152:507を参照のこと)。ストリンジェントな温度条件としては、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、及び最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が含まれ得る。50塩基対長未満であることが予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、そのハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低いはずであり、ここでTmは以下の式に従い決定される。18塩基対長未満のハイブリッドについては、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18〜49塩基対長のハイブリッドについては、Tm(℃)=81.5+16.6(log 10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)[式中、Nはハイブリッド中の塩基の数であり、及び[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1×SSCの[Na+]=0.165M)]。例えばハイブリダイゼーション決定緩衝液を表1に示す。
ハイブリダイゼーション条件に関する有用な変形例は、当業者には容易に明らかであろう。ハイブリダイゼーション技術は当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis(Science 196:180,1977);Grunstein and Hogness(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 72:3961,1975);Ausubel et al.(Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience,New York,2001);Berger and Kimmel(Antisense to Molecular Cloning Techniques,1987,Academic Press,New York);及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yorkに記載されている。
本明細書で使用されるとき、「オリゴヌクレオチド鎖」は一本鎖核酸分子である。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド(例えば、2’修飾を有するヌクレオチド、合成塩基類似体等)又はこれらの組み合わせを含み得る。かかる修飾オリゴヌクレオチドは、例えば細胞取り込みの向上及びヌクレアーゼの存在下における安定性の増加など、特性上の理由から、天然形態より好ましいこともある。
本発明のある種のdsNAは、キメラdsNAである。「キメラdsNA」又は「キメラ」は、本発明の文脈上、各々が少なくとも1つのヌクレオチドで構成される2つ以上の化学的に異なる領域を含有するdsNAである。キメラdsNAはダイサー基質又は非ダイサー基質であってもよい。一部の実施形態において、これらのdsNAは、典型的には、ダイサー基質siRNA(「DsiRNA」)分子を形成するリボヌクレオチド(任意選択で修飾リボヌクレオチドを含む)を主として含む少なくとも1つの領域を含有する。このDsiRNA領域は、1つ以上の有益な特性(例えば、有効性の増加、例えばDsiRNA活性の効力及び/又は持続期間の増加、例えば培養下の細胞又は対象への投与時にキメラdsNAを特定の位置に標的化する認識ドメイン又は手段としての機能、官能基、ペイロード、検出/検出可能な部分の付加を改善する伸長領域としての機能、より望ましい修飾及び/又はかかる修飾の間隔の改善を可能にする伸長領域としての機能など)を付与する一本鎖ヌクレオチド領域(「一本鎖伸長領域」)を含む第2の領域に、例えば従来のリン酸結合を介するか、又は修飾リン酸連結(例えばホスホロチオエート)を介して共有結合的に付加される。この第2の領域はまた、修飾又は合成ヌクレオチド及び/又は修飾又は合成デオキシリボヌクレオチドも含み得る。
本明細書で使用されるとき、用語「リボヌクレオチド」は、天然及び合成の非修飾及び修飾リボヌクレオチドを包含する。修飾には、オリゴヌクレオチドにおける糖部分、塩基部分及び/又はリボヌクレオチド間の連結の変化が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「リボヌクレオチド」は、2’リボース環位に単一のプロトン基を有するヌクレオチドであるデオキシリボヌクレオチドを具体的に除外する。
本明細書で使用されるとき、用語「デオキシリボヌクレオチド」は、天然及び合成の非修飾及び修飾デオキシリボヌクレオチドを包含する。修飾には、オリゴヌクレオチドにおける糖部分、塩基部分及び/又はデオキシリボヌクレオチド間の連結の変化が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「デオキシリボヌクレオチド」はまた、dsNA剤のダイサー切断を許容しない修飾リボヌクレオチド、例えば、かかる残基の結合でダイサー切断が起こることを許容しない2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエート修飾リボヌクレオチド残基等も含む。
本明細書で使用されるとき、用語「PS−NA」はホスホロチオエート修飾ヌクレオチド残基を指す。従って用語「PS−NA」は、ホスホロチオエート修飾リボヌクレオチド(「PS−RNA」)及びホスホロチオエート修飾デオキシリボヌクレオチド(「PS−DNA」)の両方を包含する。
特定の実施形態において、本発明のキメラDsiRNA/DNA剤は、少なくとも23ヌクレオチド長の少なくとも1つの二重鎖領域を含み、その中で全ヌクレオチドの少なくとも50%が非修飾リボヌクレオチドである。本明細書で使用されるとき、用語「非修飾リボヌクレオチド」は、リボース糖の2’位にヒドロキシル(−OH)基を有するリボヌクレオチドを指す。
特定の実施形態において、本発明のキメラDsiRNA/DNA剤は、第1鎖上の推定ダイサー切断部位より3’側及び第2鎖上の推定ダイサー切断部位より5’側に位置する、塩基対合した少なくとも2ヌクレオチド長の長さを有する少なくとも1つの領域を含み、ここで塩基対合した少なくとも2ヌクレオチド長のこの領域内の全ヌクレオチドの少なくとも50%が非修飾デオキシリボヌクレオチドである。本明細書で使用されるとき、用語「非修飾デオキシリボヌクレオチド」は、リボース糖の2’位に単一のプロトンを有するリボヌクレオチドを指す。
本明細書で使用されるとき、アンチセンス鎖、ガイド鎖及び第2のオリゴヌクレオチドは、本発明に係る所与のダイサー基質分子の同じ鎖を指し;一方、センス鎖、パッセンジャー鎖、及び第1のオリゴヌクレオチドは、所与のダイサー基質の同じ鎖を指す。
本明細書で使用されるとき、「アンチセンス鎖」は、標的RNAの配列と相補的な配列を有する一本鎖核酸分子を指す。アンチセンス鎖が塩基類似体による修飾ヌクレオチドを含有する場合、その全長にわたって相補的である必要はなく、しかし少なくとも標的RNAとハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならない。特定の実施形態において、アンチセンス鎖は標的の発現を阻害するのに十分に相補的であり、例えば、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%相補的である。
本明細書で使用されるとき、「センス鎖」は、アンチセンス鎖の配列と相補的な配列を有する一本鎖核酸分子を指す。アンチセンス鎖が塩基類似体による修飾ヌクレオチドを含有する場合、センス鎖はアンチセンス鎖の全長にわたって相補的である必要はなく、しかし少なくともアンチセンス鎖とのハイブリッド形成能を有し、ひいてはアンチセンス鎖との二重鎖化が可能でなければならない。
本明細書で使用されるとき、「ガイド鎖」は、dsNA又はdsNA含有分子の一本鎖核酸分子を指し、これは、RNA干渉を生じさせるのに標的RNAの配列と十分に相補的な配列を有する。一部の実施形態では、RISCへのガイド鎖の取り込みにダイサー切断は不要である。一部の実施形態では、ダイサーによるdsNA又はdsNA含有分子の切断後にもガイド鎖の断片はRISCと会合したまま留まり、RISC複合体の一成分として標的RNAと結合して、RISCによる標的RNAの切断を促進する。ガイド鎖はアンチセンス鎖である。
本明細書で使用されるとき、「標的RNA」は、標的化された切断又は立体的遮断など、アンチセンス鎖によってガイドされる調節を受け得るRNAを指す。標的RNAは、例えば、ゲノムウイルスRNA、mRNA、mRNA前駆体、又は非コードRNAであり得る。好ましい標的は、ApoB、Bc12、Hif−1α、サバイビン又はp21 ras、例えばHa−ras、K−ras又はN−rasなど、疾患関連タンパク質をコードするmRNAなどのmRNAである。
本明細書で使用されるとき、「パッセンジャー鎖」は、ガイド鎖の配列と相補的な配列を有する、dsNA又はdsNA含有分子のオリゴヌクレオチド鎖を指す。パッセンジャー鎖はセンス鎖である。
本明細書で使用されるとき、「ダイサー」は、dsRNA又はdsRNA含有分子、例えば、二本鎖RNA(dsRNA)又はプレマイクロRNA(miRNA)を切断して、通常3’末端に2塩基オーバーハングを有する約19〜25ヌクレオチド長の二本鎖核酸断片にするRNアーゼIIIファミリーのエンドリボヌクレアーゼを指す。本発明のdsNAに関連して、本発明のdsNAのdsRNA領域によって形成される二重鎖はダイサーによって認識され、二重鎖の少なくとも一方の鎖上のダイサー基質である。ダイサーはRNA干渉経路の最初の段階を触媒し、その結果として標的RNAの分解が生じる。ヒトダイサーのタンパク質配列は、NCBIデータベースに受託番号NP−085124(本明細書によって参照により援用される)として提供される。
ダイサー「切断」は以下のとおり決定される(例えば、Collingwood et al.,Oligonucleotides 18:187−200(2008)を参照のこと)。ダイサー切断アッセイでは、RNA二重鎖(100pmol)を、1単位の組換えヒトダイサー(Stratagene,La Jolla,Calif.)含有又は不含の20μLの20mMトリス pH8.0、200mM NaCl、2.5mM MgC12中、37℃で18〜24時間インキュベートする。Performa SR 96ウェルプレート(Edge Biosystems,Gaithersburg,Md.)を使用して試料を脱塩する。ThermoFinnigan TSQ7000、Xcaliburデータシステム、ProMassデータ処理ソフトウェア及びParadigm MS4 HPLC(Michrom BioResources,Auburn,Calif.)からなるOligo HTCSシステム(Novatia,Princeton,N.J.;Hail et al.,2004)を使用して、ダイサーによる処理前及び処理後の二重鎖RNAのエレクトロスプレー−イオン化液体クロマトグラフィー質量分析(ESI−LCMS)を行う。このアッセイでは、ダイサー基質dsRNA(即ち、dsRNA単位で25〜35、好ましくはdsRNA単位で26〜30、任意選択で本明細書に記載されるとおり伸長されている)の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は更には100%が切断されてより短いdsRNA(例えば、dsRNA単位で19〜23、好ましくは、dsRNA単位で21〜23)になる場合にダイサー切断が起こる。
本明細書で使用されるとき、「ダイサー切断部位」は、ダイサーがdsRNA(例えば、本発明のdsNAのdsRNA領域)を切断する部位を指す。ダイサーは2つのRNアーゼIIIドメインを含有し、それらが典型的にはdsRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方を切断する。RNアーゼIIIドメインとPAZドメインとの間の平均距離が、それが産生するショート二本鎖核酸断片の長さを決め、この距離は様々であり得る(Macrae I,et al.(2006).“Structural basis for double−stranded RNA processing by Dicer”.Science 311(5758):195−8.)。例えば図2に示されるとおり、ダイサーは、2ヌクレオチド3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を持つ本発明の特定の二本鎖核酸を、アンチセンス鎖の3’末端から取って21番目のヌクレオチドと22番目のヌクレオチドとの間の部位、及びセンス鎖の5’末端から取って21番目のヌクレオチドと22番目のヌクレオチドとの間の対応する部位で切断すると推定される。図2に示すものと異なるdsNA分子の推定上の及び/又は優勢な1つ又は複数のダイサー切断部位も同様に、Macrae et alに記載されるものを含め、当該技術分野で認められている方法によって同定し得る。図2に示されるダイサー切断イベントでは21ヌクレオチドsiRNAが生じるが、dsNA(例えば、DsiRNA)のダイサー切断は、19〜23ヌクレオチド長のダイサープロセシング後siRNA長さを生じさせ得ることが注記される。実際、以下に更に詳細に記載する本発明の一態様では、典型的には好ましくない19mer siRNAの優勢なダイサー切り出しを誘導する目的で、dsNA内に二本鎖DNA領域が含まれる。
本明細書で使用されるとき、「オーバーハング」は、dsNAの5’末端又は3’末端のいずれかに2又は4個の遊離端を有する二重鎖との関連で、非対合ヌクレオチドを指す。特定の実施形態において、オーバーハングはアンチセンス鎖又はセンス鎖上の3’又は5’オーバーハングである。「オーバーハング」及び「伸長部」は全体を通じて同義語として用いられる。
本明細書で使用されるとき、「標的」は、その発現又は活性を調節しようとする任意の核酸配列を指す。詳細な実施形態において、標的は、RISC複合体のアンチセンス鎖である一本鎖核酸と二重鎖化するRNAを指す。標的RNAがアンチセンス鎖とハイブリダイズすると、RISC複合体によるプロセシングが起こる。結果的に、RNA又はRNAによってコードされるタンパク質、例えばmRNAの発現が減少する。
本明細書で使用されるとき、用語「RNAプロセシング」は、以下に更に詳細に記載するsiRNA、miRNA又はRNアーゼH経路の成分(例えば、ドローシャ、ダイサー、アルゴノート2又は他のRISCエンドリボヌクレアーゼ、及びRNアーゼH)によって実行されるプロセシング活性を指す(以下の「RNAプロセシング」の節を参照のこと)。この用語は、RNAの5’キャッピングの転写後プロセス及び非RISC媒介又は非RNアーゼH媒介プロセスによるRNAの分解とは明示的に区別される。RNAのかかる「分解」は、例えば脱アデニル化(3’ポリ(A)テールの除去)、及び/又は幾つかのエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼ(例えば、RNアーゼIII、RNアーゼP、RNアーゼT1、RNアーゼA(1、2、3、4/5)、オリゴヌクレオチダーゼ等)のいずれかによるRNA本体の一部又は全てのヌクレアーゼ消化など、幾つかの形態をとり得る。
本明細書で使用されるとき、「基準」とは、標準又は対照を意味する。当業者には明らかなとおり、適切な基準は、1つの要素の効果を決定するため唯1つのみの要素が変更される場合である。
本明細書で使用されるとき、「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、フラノース環、又はリン酸基に1つ以上の修飾を有するヌクレオチドを指す。例えば、修飾ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、及びシチジン一リン酸を含有するリボヌクレオチド並びにデオキシアデノシン一リン酸、デオキシグアノシン一リン酸、デオキシチミジン一リン酸、及びデオキシシチジン一リン酸を含有するデオキシリボヌクレオチドを除外する。修飾は、メチルトランスフェラーゼなど、ヌクレオチドを修飾する酵素による修飾によって生じる天然に存在するものを含む。修飾ヌクレオチドはまた、合成の又は天然に存在しないヌクレオチドも含む。ヌクレオチドにおける合成の又は天然に存在しない修飾としては、2’修飾、例えば、2’−メトキシエトキシ、2’−フルオロ、2’−アリル、2’−O−[2−(メチルアミノ)−2−オキソエチル]、4’−チオ、4’−CH2−O−2’−架橋、4’−(CH2)2−O−2’−架橋、2’−LNA、及び2’−O−(N−メチルカルバメート)を有するもの、又は塩基類似体を含むものが挙げられる。本開示に記載されるとおりの2’修飾ヌクレオチドに関連して、「アミノ」とは2’−NH2又は2’−O−NH2を意味し、これらは修飾されていても、又は修飾されていなくてもよい。かかる修飾基については、例えば、Eckstein et al.,米国特許第5,672,695号明細書及びMatulic−Adamic et al.,米国特許第6,248,878号明細書に記載されている。
用語「インビトロ」は、例えば、精製試薬又は抽出物、例えば細胞抽出物が関わる、その当該技術分野で認められている意味を有する。用語「インビボ」もまた、例えば、生細胞、例えば、不死化細胞、初代細胞、細胞株、及び/又は生物体の細胞が関わる、その当該技術分野で認められている意味を有する。
本開示の核酸分子に関連して、dsNAのいずれか一方の鎖上の特定の位置にあるヌクレオチドが指定され得る。図1〜図3を参照して、本発明のDsiRNAの位置の表示規則を表2に示す。
本開示の核酸分子に関連して、修飾はdsNAの鎖上にパターンをもって存在し得る。本明細書で使用されるとき、「交互位置」は、dsNAの鎖の規定の長さにわたってヌクレオチドが1つおきに修飾ヌクレオチドであるか、又は各修飾ヌクレオチド間に非修飾ヌクレオチド(例えば非修飾リボヌクレオチド)があるパターン(例えば、5’−MNMNMN−3’;3’−MNMNMN−5’;式中、Mは修飾ヌクレオチドであり、Nは非修飾ヌクレオチドである)を指す。修飾パターンは、本明細書に記載される位置付番規則のいずれかに従い5’又は3’末端のいずれかの1番目のヌクレオチド位置を始点とする(特定の実施形態において、1位は、本発明のDsiRNA剤の推定ダイサー切断イベント後の鎖の末端残基を基準として指定される;従って、必ずしも1位が本発明のプロセシング前の薬剤の3’末端又は5’末端残基を成すわけではない)。
表2:鎖位置に関する付番規則の説明
1位:パッセンジャー鎖上にある位置は、上付きの添え字による表示のない番号によって指示される(例えば、1位)。パッセンジャー鎖の1位は5’末端ヌクレオチドであり、但し5’伸長パッセンジャー鎖では5’末端ヌクレオチドは伸長領域に存在し、それに上付きの添え字Eを付した最も大きい番号が与えられる(下記及び図1Aを参照)。
A位:ガイド鎖上にある位置は、上付きの添え字Aを付して指示される(例えば、1A位)。ガイド鎖は、その3’末端の1番目の塩基対合ヌクレオチドが基準(例えば、1A位)となるように付番される。ガイド鎖が1〜6ヌクレオチドの3’末端一本鎖オーバーハングを含有する場合、それらのヌクレオチドは単に3’末端ガイド鎖非対合又は一本鎖残基と称される。
A1位:ガイド鎖上の伸長5’領域にある位置は、上付きの添え字Bを付して表示される(例えば、1B位は伸長ガイド鎖の5’末端ヌクレオチドを表す(図1Aを参照))。
C位:第3のオリゴヌクレオチド上にある位置。第3のオリゴヌクレオチドはガイド鎖の伸長領域と相補的であり、パッセンジャー鎖と不連続である。1C位(図1Aを参照)は第3のオリゴヌクレオチド(oligoncleotide)の5’末端ヌクレオチドを表す。
D位:3’伸長パッセンジャー鎖上にある位置で、1D位が伸長パッセンジャー鎖の3’末端ヌクレオチド残基を指す。
E位:パッセンジャー鎖の5’伸長位置1Eの伸長領域上にある位置、これは鎖5’一本鎖伸長部の非対合ヌクレオチドである(図1Aを参照)。
1E位:パッセンジャー鎖の1番目の塩基対合ヌクレオチドに連続(即ち隣接)する非対合ヌクレオチドである(図1Aを参照)。
F位:5’伸長パッセンジャー鎖の二重鎖領域にある位置で、1F位が5’パッセンジャー鎖上の1番目の塩基対合ヌクレオチド(5’末端を始点とする)を指す。
交互位置の修飾ヌクレオチドパターンは鎖の全長に延在し得るが、特定の実施形態では、それぞれ少なくとも2、3、4、5、6又は7修飾ヌクレオチドを含有する少なくとも4、6、8、10、12、14ヌクレオチドを含む。本明細書で使用されるとき、「交互の位置ペア」は、dsNAの鎖の規定の長さにわたって2つの連続した修飾ヌクレオチドが2つの連続した非修飾ヌクレオチドによって隔てられているパターンを指す(例えば、5’−MMNNMMNNMMNN−3’;3’−MMNNMMNNMMNN−5’;式中、Mは修飾ヌクレオチドであり、Nは非修飾ヌクレオチドである)。修飾パターンは、本明細書に記載される位置付番規則のいずれかに従い5’又は3’末端のいずれかの1番目のヌクレオチド位置を始点とする。交互位置の修飾ヌクレオチドパターンは鎖の全長に延在し得るが、好ましくは、それぞれ少なくとも4、6、8、10、12又は14個の修飾ヌクレオチドを含有する少なくとも8、12、16、20、24、28ヌクレオチドを含む。上記の修飾パターンは例示であり、本発明の範囲を限定するよう意図されるものではないことが強調される。
本明細書で使用されるとき、「塩基類似体」は、核酸二重鎖に組み込むことのできる修飾ヌクレオチドのヌクレオチド糖部分の1’位(又は核酸二重鎖に組み込むことのできるヌクレオチド糖部分置換における等価な位置)に位置する複素環式部分を指す。本発明のdsNAにおいて、塩基類似体は概して、一般的な塩基グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)、又はウラシル(U)を除くプリン塩基又はピリミジン塩基のいずれかである。塩基類似体は、dsRNAにおける他の塩基又は塩基類似体と二重鎖化し得る。塩基類似体は、本発明の化合物及び方法において有用なもの、例えば、Bennerに対する米国特許第5,432,272号明細書及び同第6,001,983号明細書並びにManoharanに対する米国特許出願公開第20080213891号明細書(これらは本明細書において参照により援用される)に記載されるものを含む。塩基の非限定的な例としては、ヒポキサンチン(I)、キサンチン(X)、3β−D−リボフラノシル−(2,6−ジアミノピリミジン)(K)、3−β−D−リボフラノシル−(1−メチル−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5,7(4H,6H)−ジオン)(P)、イソ−シトシン(イソ−C)、イソ−グアニン(イソ−G)、1−β−D−リボフラノシル−(5−ニトロインドール)、1−β−D−リボフラノシル−(3−ニトロピロール)、5−ブロモウラシル、2−アミノプリン、4−チオ−dT、7−(2−チエニル)−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(Ds)及びピロール−2−カルバルデヒド(Pa)、2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン(S)、2−オキソピリジン(Y)、ジフルオロトリル、4−フルオロ−6−メチルベンズイミダゾール、4−メチルベンズイミダゾール、3−メチルイソカルボスチリリル、5−メチルイソカルボスチリリル、及び3−メチル−7−プロピニルイソカルボスチリリル、7−アザインドリル、6−メチル−7−アザインドリル、イミジゾピリジニル、9−メチル−イミジゾピリジニル、ピロロピリジニル(pyrrolopyrizinyl)、イソカルボスチリリル、7−プロピニルイソカルボスチリリル、プロピニル−7−アザインドリル、2,4,5−トリメチルフェニル、4−メチルインドリル、4,6−ジメチルインドリル、フェニル、ナフタレニル(napthalenyl)、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベンジル、テトラセニル、ペンタセニル、及びこれらの構造誘導体(structural derivates)が挙げられる(Schweitzer et al.,J.Org.Chem.,59:7238−7242(1994);Berger et al.,Nucleic Acids Research,28(15):2911−2914(2000);Moran et al.,J.Am.Chem.Soc.,119:2056−2057(1997);Morales et al.,J.Am.Chem.Soc.,121:2323−2324(1999);Guckian et al.,J.Am.Chem.Soc.,118:8182−8183(1996);Morales et al.,J.Am.Chem.Soc.,122(6):1001−1007(2000);McMinn et al.,J.Am.Chem.Soc.,121:11585−11586(1999);Guckian et al.,J.Org.Chem.,63:9652−9656(1998);Moran et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,94:10506−10511(1997);Das et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,1:197−206(2002);Shibata et al.,J.Chem.Soc.,Perkin Trans.,1:1605−1611(2001);Wu et al.,J.Am.Chem.Soc.,122(32):7621−7632(2000);O’Neill et al.,J.Org.Chem.,67:5869−5875(2002);Chaudhuri et al.,J.Am.Chem.Soc.,117:10434−10442(1995);及び米国特許第6,218,108号明細書)。塩基類似体はまた、ユニバーサル塩基であってもよい。
本明細書で使用されるとき、「ユニバーサル塩基」は、修飾ヌクレオチドにおけるヌクレオチド糖部分の1’位、又はヌクレオチド糖部分置換における等価な位置にある複素環式部分であって、核酸二重鎖に存在するとき二重らせん構造(例えば、リン酸骨格の構造)を改変することなく2種以上の塩基の対向に位置することができるものを指す。加えて、ユニバーサル塩基は、それが存在する一本鎖核酸が標的核酸と二重鎖化する能力を破壊しない。ユニバーサル塩基を含有する一本鎖核酸が標的核酸と二重鎖化する能力は、当業者には明らかな方法(例えば、UV吸光度、円偏光二色性、ゲルシフト、一本鎖ヌクレアーゼ感受性等)によってアッセイすることができる。加えて、融解温度(Tm)が核酸二重鎖の安定性と相関付けられることに伴い、二重鎖形成が観察される条件、例えば温度が変化することにより、二重鎖の安定性又は形成が決まり得る。標的核酸と完全に相補的な基準一本鎖核酸と比較して、ユニバーサル塩基を含有する一本鎖核酸は、相補核酸と形成される二重鎖より低いTmを有する標的核酸との二重鎖を形成する。しかしながら、ユニバーサル塩基が単一のミスマッチを生じるようにある塩基で置き換えられている基準一本鎖核酸と比較して、ユニバーサル塩基を含有する一本鎖核酸は、ミスマッチ塩基を有する核酸と形成される二重鎖より高いTmを有する標的核酸との二重鎖を形成する。
一部のユニバーサル塩基は、塩基対形成条件下でユニバーサル塩基と塩基グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)、及びウラシル(U)の全てとの間に水素結合を形成することによる塩基対合能を有する。ユニバーサル塩基は、1つの単一の相補塩基とのみ塩基対を形成する塩基ではない。二重鎖において、ユニバーサル塩基は、二重鎖の逆鎖上にあるそれと対向するG、C、A、T、及びUの各々と水素結合を形成しないか、1つの水素結合、又は2つ以上の水素結合を形成し得る。好ましくは、ユニバーサル塩基は、二重鎖の逆鎖上にあるそれと対向する塩基と相互作用しない。二重鎖において、ユニバーサル塩基との間の塩基対合は、リン酸骨格の二重らせん構造を改変することなく起こる。ユニバーサル塩基はまた、同じ核酸鎖上の隣接ヌクレオチドの塩基ともスタッキング相互作用によって相互作用し得る。かかるスタッキング相互作用は、特に、ユニバーサル塩基が、二重鎖の逆鎖上にあるそれと対向する位置にある塩基といかなる水素結合も形成しない状況において、二重鎖を安定化させる。ユニバーサル結合ヌクレオチドの非限定的な例としては、イノシン、1−β−D−リボフラノシル−5−ニトロインドール、及び/又は1−β−D−リボフラノシル−3−ニトロピロールが挙げられる(Quay et al.に対する米国特許出願公開第20070254362号明細書;Van Aerschot et al.,An acyclic 5−nitroindazole nucleoside analogue as ambiguous nucleoside.Nucleic Acids Res.1995 Nov.11;23(21):4363−70;Loakes et al.,3−Nitropyrrole and 5−nitroindole as universal bases in primers for DNA sequencing and PCR.Nucleic Acids Res.1995 Jul.11;23(13):2361−6;Loakes and Brown,5−Nitroindole as a universal base analogue.Nucleic Acids Res.1994 Oct.11;22(20):4039−43)。
本明細書で使用されるとき、「ループ」は、特定の一本鎖ヌクレオチド領域に隣接する相補領域が、それらの相補領域間の一本鎖ヌクレオチド領域については二重鎖形成又はワトソン・クリック塩基対合から除外されるような形でハイブリダイズする、核酸の一本鎖によって形成される構造を指す。ループは、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の任意の長さの一本鎖ヌクレオチド領域である。ループの例としては、かかる構造にヘアピン、ステムループ、又は伸長ループとして存在する非対合ヌクレオチドが挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「伸長ループ」は、dsRNAとの関連では、一本鎖ループと、加えてそのループに隣接する1、2、3、4、5、6個又は最大55個の塩基対又は二重鎖を指す。伸長ループでは、ループの5’側に隣接するヌクレオチドは、ループの3’側に隣接するヌクレオチドと二重鎖を形成する。伸長ループはヘアピン又はステムループを形成し得る。
本明細書で使用されるとき、「テトラループ」は、dsRNAとの関連では、ワトソン・クリック式にハイブリダイズした隣接ヌクレオチドの安定性に寄与する安定二次構造を形成する4個のヌクレオチドからなるループ(一本鎖領域)を指す。理論に制限されるものではないが、テトラループはスタッキング相互作用によって隣接ワトソン・クリック塩基対を安定化させ得る。加えて、テトラループにおけるこれらの4個のヌクレオチド間の相互作用には、限定はされないが、非ワトソン・クリック塩基対合、スタッキング相互作用、水素結合、及び接触相互作用が含まれる(Cheong et al.,Nature 1990 Aug.16;346(6285):680−2;Heus and Pardi,Science 1991 Jul.12;253(5016):191−4)。テトラループは、4個のランダムな塩基からなる単純なモデルループ配列から予想されるものと比べて高い隣接二重鎖の融解温度(Tm)の増加を付与する。例えば、テトラループは、少なくとも2塩基対長の二重鎖を含むヘアピンに対し、10mM NaHPO4中で少なくとも50℃、少なくとも55℃、少なくとも56℃、少なくとも58℃、少なくとも60℃、少なくとも65℃又は少なくとも75℃の融解温度を付与し得る。テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びこれらの組み合わせを含み得る。RNAテトラループの例としては、テトラループのUNCGファミリー(例えば、UUCG)、テトラループのGNRAファミリー(例えば、GAAA)、及びCUUGテトラループが挙げられる(Woese et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1990 November;87(21):8467−71;Antao et al.,Nucleic Acids Res.1991 Nov.11;19(21):5901−5)。DNAテトラループの例としては、テトラループのd(GNNA)ファミリー(例えば、d(GTTA))、テトラループのd(GNRA)ファミリー、テトラループのd(GNAB)ファミリー、テトラループのd(CNNG)ファミリー、テトラループのd(TNCG)ファミリー(例えば、d(TTCG))が挙げられる(Nakano et al.Biochemistry,41(48),14281−14292,2002.SHINJI et al.Nippon Kagakkai Koen Yokoshu VOL.78th;NO.2;PAGE.731(2000))。
本明細書で使用されるとき、「増加する」又は「向上する」は、アッセイにおける基準と比較して少なくとも5%だけ正に変化することを意味する。変化はアッセイの基準と比較して2倍又は3倍又は4倍又は5倍又は10倍又は100倍、又は5%、10%、25%、30%、50%、75%、又は更には100%であり得る。「ダイサー切断が向上する」とは、ある量のdsRNA又はdsRNA含有分子がダイサーによってプロセシングされたときに、より多くのダイサー切断dsRNA産物が生じること、本開示のインビボ又はインビトロアッセイにおける同量の基準dsRNA又はdsRNA含有分子のプロセシングと比較してダイサー切断反応がより急速に起こること、又はダイサー切断が、dsNA内の特異的な好ましい部位で切断するように及び/又は好ましい切断産物集団(例えば、本明細書に記載されるとおりのDNA残基を含むことによる)のより高い発生率を生じさせるように仕向けられることを意味する。一実施形態において、dsNA分子のダイサー切断の向上又は増加は、適切な基準dsNA分子で観察されるレベルを上回る。別の実施形態において、dsNA分子のダイサー切断の向上又は増加は、不活性な又は減弱化した分子で観察されるもののレベルを上回る。本発明のリガンドコンジュゲート型dsNAの結合親和性に言及するときの増加とは、例えばリガンドコンジュゲート型dsNAが、リガンドにコンジュゲートしていないが同じ標的に向かうdsNAの2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又はそれ以上の親和性でその標的に結合することを意味する。細胞取り込みに言及するときの増加とは、例えば、細胞によって例えば受容体媒介エンドサイトーシスで取り込まれるリガンドコンジュゲート型dsNAの量が、リガンドにコンジュゲートしていないdsNAの2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又はそれ以上であることを意味する。トラッキングに言及するときの増加とは、dsRNAの進行又は動きをより容易に決定し得ることを意味する。
本明細書で使用されるとき、「低下する」は、アッセイにおける基準と比較して少なくとも5%だけ負に変化することを意味する。変化はアッセイの基準と比較して2倍又は3倍又は4倍又は5倍又は10倍又は100倍又はそれ以上、又は5%、10%、25%、30%、50%、75%、又は更には100%であり得る。「発現が低下する」とは、遺伝子の発現、又は1つ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子若しくは等価なRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によってコードされる1つ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、本開示のインビボ又はインビトロアッセイにおいて核酸分子(例えば、dsRNA分子又はdsRNA含有分子)が存在しない場合に観察されるもの未満に低下することを意味する。一実施形態において、dsNA分子による阻害、下方調節又は低下は、不活性な又は減弱化した分子の存在下で観察される当該のレベル未満である。別の実施形態において、dsNA分子による阻害、下方調節、又は低下は、例えばスクランブル配列又はミスマッチを含むdsNA分子の存在下で観察される当該のレベル未満である。別の実施形態において、本開示の核酸分子による遺伝子発現の阻害、下方調節、又は低下は、核酸分子の存在下では、その非存在下と比べてより大きい。
本明細書で使用されるとき、「細胞」は、原核生物細胞(例えば、細菌細胞)及び真核生物細胞(例えば、哺乳類又は植物細胞)の両方を含むことが意図される。細胞は体細胞又は生殖系列由来の細胞であってもよく、全能性細胞又は多能性細胞であってもよく、及び分裂細胞又は非分裂細胞であってもよい。細胞はまた、配偶子又は胚、幹細胞、又は完全に分化した細胞に由来してもよく、又はそれを含んでもよい。従って、用語「細胞」は、その通常の生物学的な意味を保持することが意図され、例えば、トリ、植物、及び哺乳動物、例えば、ヒト、雌ウシ、ヒツジ、類人猿、サル、ブタ、イヌ、及びネコなど、任意の生物に存在し得る。特定の態様の範囲内では、用語「細胞」は、具体的には、本開示の単離dsNA分子を1つ以上含有するヒト細胞などの哺乳類細胞を指す。詳細な態様では、細胞はdsRNA又はdsRNA含有分子をプロセシングして標的核酸のRNA干渉を生じさせ、且つRNAiに必要なタンパク質及びタンパク質複合体、例えばダイサー及びRISCを含有する。
本明細書で使用されるとき、「動物」とは、哺乳動物、ブタ、サル、イヌ、ネコ、マウス、ウマ、雌ウシ、ラット又はより好ましくはヒトを含めた多細胞真核生物を意味する。本発明の方法は、一般に、本明細書における式の構造の薬剤など、本明細書における薬剤の有効量を、哺乳動物、例えば、ブタ、サル、イヌ、ネコ、マウス、ウマ、雌ウシ、ラット又はより好ましくはヒトを含めた、それを必要としている対象(例えば、動物、ヒト)に投与することを含む。かかる治療は、好適には、疾患、又はその症状に罹患しているか、それを有するか、それに罹り易いか、又はそれのリスクがある対象、特にヒトに投与され得る。
「薬学的に許容可能な担体」とは、本開示の核酸分子がそれらの所望の活性に最も好適な物理的位置に有効に分布することを可能にする組成物又は製剤を意味する。
本発明は、真核細胞における標的遺伝子の発現を低下させる能力を有する、同じ薬剤内に二本鎖NA(「dsNA」)二重鎖と一本鎖伸長領域との両方−多くの実施形態において、dsDNA二重鎖−を含む組成物、及びそれらの調製方法に関する。dsNA領域の鎖の一方は、標的遺伝子から転写されたRNAの破壊を誘導することができる約15〜約22ヌクレオチドの範囲の長さを有するヌクレオチド配列領域を含有する。かかる薬剤のdsDNA二重鎖領域は、必ずしも標的RNAと相補的であるとは限らず、従って、そのような場合、標的RNAの破壊を誘導する能力を有するヌクレオチド配列の領域の標的RNAハイブリダイゼーションを増強しない。本発明の二本鎖NAは、化学的に連結した鎖を有することができ、及び/又は第1鎖と第2鎖とを連結するテトラループを任意選択で含む伸長ループもまた有することができる。一部の実施形態において、テトラループを含有する伸長ループは、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、又は両方にある。一部の実施形態において、テトラループを含有する伸長ループは、センス鎖の5’末端、センス鎖の3’末端、又は両方にある。一部の実施形態において、dsNA剤はダイサー基質であり、ダイサーによって切断される。他の実施形態において、dsNA剤はダイサー基質ではなく、ダイサーによって切断されない。一部の実施形態において、長さ15〜85ヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖が長さ15〜35塩基対の二重鎖を形成する。一部の実施形態において、二重鎖は、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか一方又は両方に位置する1〜50ヌクレオチドの伸長部を含有する。この実施形態において伸長部は、センス鎖の5’末端又はアンチセンス鎖の5’末端又は両方にあり得る。別の実施形態において伸長部は、センス鎖の3’末端又はアンチセンス鎖の3’末端又は両方にあり得る。別の実施形態において、伸長部は、センス鎖の5’末端又はアンチセンス鎖の3’末端又は両方にある。前記実施形態のdsNA剤はまた、少なくとも1つのリガンド修飾ヌクレオチドも含む。
一実施形態において、本発明のdsNAは、15〜85nt長(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 30、31、32、33、34、37、39、40、41、42、43、45、50、55、60、65、70、75、80、81、82、83、84nt長)を含む二本鎖RNA二重鎖領域を含み、ここでは少なくとも1つのリガンド修飾ヌクレオチドがある。
本発明に係る「伸長」dsNA剤は、「ガイド伸長した」もの(ダイサー基質におけるアンチセンス鎖の関与に必要な15〜35塩基アンチセンス配列に加えて分子上に存在するアンチセンス鎖の5’末端のヌクレオチド領域)又は「パッセンジャー伸長した」もの(ダイサー基質におけるセンス鎖の関与に必要な15〜35塩基センス配列に加えて分子上に任意選択で存在するセンス鎖の3’末端のヌクレオチド領域;又はダイサー基質におけるセンス鎖の関与に必要な15〜35塩基配列に加えてセンス鎖上に任意選択で存在するセンス鎖の5’末端のヌクレオチド領域)であり得る。従って、本明細書で使用されるとき、用語「伸長した」は、1〜6個の一本鎖ヌクレオチドのアンチセンス(又は第2鎖、又はガイド鎖)3’オーバーハングを指すよう意図するものではない;むしろ「伸長した」は、本明細書で使用されるとき、ダイサー基質分子の反対側の端部、即ち、5’伸長センス鎖又はアンチセンス鎖(伸長領域は1〜50、好ましくは10〜15ヌクレオチド長である)又は3’伸長センス鎖(伸長領域は1〜30、好ましくは10〜15ヌクレオチド長である)を指す。5’伸長アンチセンス鎖は一本鎖であってもよく、任意選択で、アンチセンス鎖の5’伸長一本鎖領域と相補的、好ましくは完全に(100%)相補的な第3の核酸分子と二重鎖化していてもよい。従って、一部の実施形態において、即ち第3の核酸分子が存在する場合、アンチセンス鎖の5’伸長領域は一本鎖ではなく、むしろ二重鎖、又は二本鎖領域である。好ましくは、本発明によれば、第3の核酸分子、即ち5’伸長アンチセンス領域と相補的なセンス領域は、コグネイト5’伸長アンチセンス領域が存在しない限り存在しない。
本発明の伸長dsNA剤は、本明細書に定義するとおりの伸長部を欠くdsNAと比べて、かかる薬剤の以下の特質を強化し得る:インビトロ有効性(例えば、効力及び効果持続期間)、インビボ有効性(例えば、効力、効果持続期間、薬物動態、薬力学、細胞内取り込み、毒性低下)。特定の実施形態において、第1鎖又は第2鎖の5’伸長領域は、任意選択で、追加の薬剤、例えばアプタマー又はその断片;又は能力を有する天然の若しくは外因的に導入された部分に対する結合部位(例えば「デコイ」結合部位)を提供し得る。従ってこれらの部分は、結合部位を介して非配列選択的にも又は配列特異的にも伸長部に結合することができる。例えば、dsNAの伸長領域は、1つ以上の転写因子認識配列及び/又はプローブ、マーカー等に対する配列特異的認識ドメインを含むように設計することができる)。
好ましい実施形態において、二本鎖核酸剤は、薬剤にさらなる機能性を付与するリガンドにコンジュゲートしている。例えば、この分子は、5’伸長部でN−アセチルガラクトサミンなどのリガンドとコンジュゲートしていてもよく、このリガンドは、肝臓の細胞及び組織に対する特異的標的化をもたらす。リガンドは5’伸長部の塩基構造に直接コンジュゲートすることも、又はリンカーを介してコンジュゲートすることもできる。リンカーは、例えばビシンなど、遊離可能なリンカーであってもよい。
本明細書で使用されるとき、用語「薬物動態」は、薬物が体によって吸収され、分布し、代謝され、及び排出される過程を指す。本発明の特定の実施形態において、適切な対照dsNAと比べた5’伸長第2鎖又は3’伸長第1鎖dsNA剤の薬物動態の向上は、かかる薬剤の吸収及び/又は分布の増加、及び/又はかかる薬剤を投与された対象からのかかる5’第2鎖伸長dsNA剤又は3’第1鎖伸長dsNA剤の代謝及び/又は排出の遅延を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「薬力学」は、薬物が生体に及ぼす作用又は効果を指す。本発明の特定の実施形態において、適切な対照dsNAと比べた5’第2鎖伸長dsNA剤又は3’第1鎖伸長dsNA剤の薬力学の向上は、かかる薬剤を投与された対象に対するそれぞれ5’第2鎖伸長dsNA剤又は3’第1鎖伸長dsNA剤の、適切な対照dsNAと比べて増加した(例えば、より強力な又はより長い)作用又は効果を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「安定化」は、選択の環境内(例えば細胞内又は生物体内)における薬剤の持続性が向上した状態を指す。特定の実施形態において、本発明の5’第2鎖伸長dsNA又は3’第1鎖伸長dsNA剤は、適切な対照dsNAと比べて安定性の向上を呈する。かかる安定性の向上は、分解酵素(例えばヌクレアーゼ)又は他の薬剤に対するかかる薬剤の耐性の向上によって実現し得る。
本発明に係る5’アンチセンス伸長dsNAの上記に記載した特質に加えて、10〜30、好ましくは10〜15ヌクレオチドの任意選択の第3の核酸センス分子が、存在する場合には、dsNAを安定化させ、及び/又は効力を増加させ、作用又は効果を延長し、薬力学的又は薬理学的効果を向上させ、及び/又はアプタマー若しくはその断片などの追加的な薬剤(又はその一部)を提供し;又は天然若しくは外因的に導入された部分(例えば標識)の結合部位(例えば「デコイ」結合部位)を提供する。
DSiRNAの設計/合成
これまでに、25〜約30ヌクレオチドのより長いdsRNA種(DsiRNA)が、予想外にも、19〜23mer siRNA剤と比較したとき効力及び作用持続時間の点で有効なRNA阻害結果をもたらすことが示された。dsRNAプロセシング機構の根底にある理論によって拘束されることを望むものではないが、より長いdsRNA種は細胞の細胞質においてダイサー酵素の基質として働くものと考えられる。ダイサーは、本発明のdsNAをより短いセグメントに切断することに加え、切断されたdsNAに由来する一本鎖切断産物が、標的遺伝子の又はそれに由来する細胞質RNAの破壊に関与するRISC複合体に取り込まれるのを促進すると考えられる。先行研究(Rossi et al.,米国特許出願公開第2007/0265220号明細書)は、ダイサーによるdsRNA種(具体的にはDsiRNA剤)の切断性がdsRNA種の効力及び作用持続時間の増加に対応することを示している。本発明は、少なくとも一部には、好ましいダイサー切断産物種が生じるようにダイサー切断部位を指図するRNA阻害剤の設計を提供する。
DsiRNAプロセシングのモデルでは、ダイサー酵素がDsiRNA剤に結合し、DsiRNA剤のアンチセンス鎖のダイサーPAZドメイン関連3’オーバーハング配列から19〜23ヌクレオチド取った位置でDsiRNAの切断が生じる。このダイサー切断イベントにより、それまでパッセンジャー(センス)鎖の3’末端及びガイド(アンチセンス)鎖の5’末端に位置していた二重鎖化した核酸が切り出される。DiRNAの切断では、典型的には、各末端に2塩基オーバーハングを含む19mer二重鎖がもたらされる。ここで図2にモデル化されるとおり、このダイサー切断イベントにより、RISC成分として標的mRNAの配列特異的阻害を指図する能力を有する21〜23ヌクレオチドガイド(アンチセンス)鎖が生じる(又は、場合によってより長いガイド鎖3’オーバーハングが存在すると、ダイサー切断によって24〜27ヌクレオチドガイド鎖が生じ得る)。
本発明のDsiRNA剤の第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、二重鎖化した領域において完全に相補的である必要はない。一実施形態において、センス鎖の3’末端は1つ以上のミスマッチを含有する。一態様では、センス鎖の3’末端に約2個のミスマッチが組み込まれる。別の実施形態において、本発明のDsiRNAは、25〜66ヌクレオチド長の範囲の2つのRNAオリゴヌクレオチドを含有する二本鎖RNA分子であり、互いにアニールしたとき、センス鎖の3’末端(アンチセンス鎖の5’末端)に2個のヌクレオチドミスマッチを有する。RISCへのアンチセンス鎖の侵入が、恐らくはRISCへのsiRNAの侵入に伴い起こる一部の律速巻き戻し段階への影響によって促進され、又はそれに有利となるように、ミスマッチ又は熱力学的安定性の低下(特に3’−センス/5’−アンチセンス位置における)を用いることが提案されている(Schwarz et al.,2003;Khvorova et al.,2003)。そのため、活性な21mer siRNA二重鎖を選択するためのアルゴリズム設計に、末端塩基組成が含まれるようになっている(Ui−Tei et al.,2004;Reynolds et al.,2004)。この実施形態のdsRNA領域のダイサー切断では、それらのミスマッチを含有する短い端部の末端配列は、アンチセンス鎖と非対合のまま残るか(3’−オーバーハングの一部となる)、又は全て切断されて最終的な21mer siRNAから除かれることになる。従って、これらの特定の形態の「ミスマッチ」は、RISCの最終的なRNA成分においてミスマッチとしては存続しない。ダイサー基質のセンス鎖の3’末端における塩基ミスマッチ又はセグメントの不安定化がRNAiにおける合成二重鎖の効力を、恐らくはダイサーによるプロセシングを促進することによって改善したという知見は、25〜30mer dsRNA(本明細書では「DsiRNA」とも称される;Rossi et al.,米国特許出願公開第2005/0277610号明細書、同第2005/0244858号明細書及び同第2007/0265220号明細書)の設計及び使用について記載する先行研究の意外な発見であった。ミスマッチを有する薬剤の例示的なミスマッチ塩基対又はゆらぎ塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U、I:A、I:U及びI:Cである。かかる薬剤の塩基対強度はまた、例えば、グアニン及びアデニンヌクレオチドの2−アミノ修飾又は2,6−ジアミノ修飾を含め、かかる薬剤のヌクレオチドの修飾によって減少させることもできる。本発明のダイサー基質及び非ダイサー基質分子は、以下に企図する構造のいずれを有することもできる。図43〜図46は、伸長部を含む本発明のdsNA分子を提示する。図47は、アンチセンス鎖の5’又は3’末端又は両方の末端に位置するテトラループを含むdsNA分子を提示する。
dsNA剤の例示的構造
本発明の組成物は、前駆体分子であるdsNAを含み、即ち、本発明のdsNAはインビボでプロセシングされて活性低分子干渉核酸(siRNA)を生じる。dsNAはダイサーによってプロセシングされて活性siRNAとなり、これがRISCに組み込まれる。一部の実施形態において、本発明のdsNA分子はダイサーによっては切断されず、しかしなおもRISCに組み込まれる。dsNAは、本明細書で以下にdsiRNAについて記載する構造のいずれを有することもできる。
一態様において、本発明は、少なくとも8連続リボヌクレオチドを有する、第1鎖又は第2鎖を有するRNA干渉(RNAi)用組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明のdsNA剤は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23個又はそれ以上(例えば、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、26個、又はそれ以上、最大で鎖の完全長)のリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド(2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエート連結)を有する。特定の実施形態において、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドは連続している。
一態様において、本発明は、推定センス鎖ダイサー切断部位の3’側及び対応して推定アンチセンス鎖ダイサー切断部位の5’側に位置する二本鎖核酸の領域内に1個の以上のデオキシリボヌクレオチドを有するRNA干渉(RNAi)用組成物を提供する。一実施形態において、パッセンジャー鎖位置24位からパッセンジャー鎖の3’末端ヌクレオチド残基までに対応し、ひいてはそれらと塩基対合したガイド鎖ヌクレオチドの間にある(端点を含む)ガイド鎖の少なくとも1つのヌクレオチドが、デオキシリボヌクレオチドである。一部の実施形態において、二本鎖核酸は、推定センス鎖ダイサー切断部位の3’側及び対応して推定アンチセンス鎖ダイサー切断部位の5’側に位置する二本鎖核酸の領域内に1つ以上の塩基対合したデオキシリボヌクレオチドを有する。
特定の実施形態において、本発明のdsNA剤は、以下の例示的構造のいずれを有することもできる:
一つのかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5‘−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−3’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一つのかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−Zm(Z)2Zm(Z)2Zm(Z)2Zm(Z)25N−3’
3’−Y(Z)25N−5’
式中、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体又は2’−フルオロ単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である修飾ヌクレオチド、Zmは、任意選択でヌクレオチドの糖又は塩基を介してGalNacとコンジュゲートしたチミン又はアデノシンであるリガンド修飾ヌクレオチドであり、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一つのかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−Zm(Z)Zm(Z)Zm(Z)Zm(Z)25N−3’
3’−Y(Z)25N−5’
式中、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体又は2’−フルオロ単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である修飾ヌクレオチド、Zmは、任意選択でヌクレオチドの糖又は塩基を介してGalNacとコンジュゲートしたチミン又はアデノシンであるリガンド修飾ヌクレオチドであり、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30ヌクレオチド、又は任意選択で1〜15ヌクレオチド、又は任意選択で1〜10ヌクレオチドである。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一つのかかる実施形態において、dsNAは以下を含む
5’−(Zm)4(Z)25N−3’
3’−Y(Z)25N−5’
式中、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体又は2’−フルオロ単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である修飾ヌクレオチド、Zmは、任意選択でヌクレオチドの糖又は塩基を介してGalNacとコンジュゲートしたチミン又はアデノシンであるリガンド修飾ヌクレオチドであり、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30ヌクレオチド、又は任意選択で1〜15ヌクレオチド、又は任意選択で1〜10ヌクレオチドである。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一つのかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−(Zm)4(Z)8N(Z)25NDD−3’
3’−DDY(Z)25N−5’
式中、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体又は2’−フルオロ単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は任意選択で2’−O−メチルRNA単量体及び/又は2’−フルオロ単量体である修飾ヌクレオチド、Zmは、任意選択でヌクレオチドの糖又は塩基を介してGalNacとコンジュゲートしたチミン又はアデノシンであるリガンド修飾ヌクレオチドであり、「D」=DNA、及び「N」=1〜50ヌクレオチド又はそれ以上、但し任意選択で1〜30ヌクレオチド、又は任意選択で1〜15ヌクレオチド、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
関連する実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
上記に示す構造のいずれにおいても、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの5’末端は、任意選択でリン酸基を含む。別のかかる実施形態において、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50ヌクレオチド又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「E」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、「|」=不連続部、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
別のかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「E」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、「1」=不連続部、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
関連する実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
別のかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
関連する実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
更なる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
別のかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
別のかかる実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN* XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。ある実施形態では、Nは少なくとも9個の連続ホスホロチオエート連結を含む。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
上記に示す構造のいずれにおいても、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの5’末端は、任意選択でリン酸基を含む。
別のかかる実施形態において、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「E」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、「|」=不連続部、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
関連する実施形態において、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
別のかかる実施形態において、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−5
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
関連する実施形態において、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
式中、「X」=RNA、「X」=2’−O−メチルRNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖であり、2’−O−メチルRNA単量体は、ここで上記の概略図に示す下部鎖よりむしろ、上部鎖に沿った交互の残基に位置する。
一実施形態において、ダイサー切断の特異的誘導によって機能するようにモデル化された部位に位置するデオキシリボヌクレオチドを含む伸長dsNA剤が提供される。かかる分子の例示的構造を以下に示す:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXDD−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
上記の構造は、ダイサーが最大21merの二重鎖をその主要なプロセシング後形態として切断するようにモデル化される。上記の構造の下部鎖がアンチセンス鎖である実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端の最後及び最後から2番目の残基に2つのデオキシリボヌクレオチド残基を配置すると、オフターゲット効果が低下する可能性がある(先行研究により、少なくともアンチセンス鎖の5’末端から2番目の2’−O−メチル修飾がオフターゲット効果を低減することが明らかになっていることに伴う;例えば、米国特許出願公開第2007/0223427号明細書を参照のこと)。
関連する実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXDD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
関連する実施形態において、dsNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXDDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXX−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5である。一実施形態において、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。或いは、下部鎖がセンス鎖であり、上部鎖がアンチセンス鎖である。
上記に示す構造のいずれにおいても、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの5’末端は、任意選択でリン酸基を含む。
一実施形態において、本発明は、第2鎖の対応するヌクレオチドと対合した第1鎖の5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドとの間に非対合塩基を有しない完全に二重鎖化した領域を含む第1鎖と第2鎖との間に実質的に二重鎖化した領域を有する二本鎖核酸を提供する。別の実施形態において、本発明は、第2鎖の対応するヌクレオチドと対合している第1鎖の5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドとの間に、1、2、3、又は5個の非対合塩基を含む実質的に二重鎖化した領域を有する二本鎖核酸を提供する。一部の実施形態において、非対合塩基は連続している。他の実施形態において、非対合塩基は連続していない。
本明細書で使用されるとき「DsiRNAmm」は、DsiRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖によって形成される二重鎖の1、2、3又は4個のミスマッチ塩基対又は5又は6又は7又は8又は9又は10又は11又は12又は13又は14又は15又は20又は30個のミスマッチ塩基対を含有する「ミスマッチ許容領域」を有するDsiRNAを指し、ここでかかるミスマッチは、DsiRNA内においてDsiRNAの二本鎖領域の両端の2つの末端塩基対間(従ってその2つの末端塩基対を含まない)にある1つ又は複数の位置に位置する。ミスマッチ塩基対は、対応する標的核酸の推定Ago2切断部位の位置に関連して本明細書で定義される「ミスマッチ許容領域」内に位置する。ミスマッチ許容領域は、標的鎖の推定Ago2切断部位「の上流」に位置する。これに関連して「上流」とは、DsiRNAmm二重鎖の最も5’側の部分と理解されるものとし、ここで5’は、DsiRNA二重鎖のセンス鎖の向きを参照する。従って、ミスマッチ許容領域は、標的核酸の推定Ago2切断部位に対応するセンス(パッセンジャー)鎖上の塩基の上流にある;或いは、DsiRNAmmのアンチセンス(ガイド)鎖を参照するとき、ミスマッチ許容領域はまた、標的核酸の推定Ago2切断部位と相補的な塩基、即ち、DsiRNAmmのアンチセンス鎖の最も3’側の部分(ここではアンチセンス鎖の1位がアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドである)の下流に位置すると記述することもできる。
一実施形態において、例えば、ミスマッチ許容領域は、二重鎖のセンス鎖の5’末端を始点とするヌクレオチドから数えたとき塩基対3〜9の間(端点を含む)に位置する。従って、本発明のDsiRNAmmは、右側伸長DsiRNAのセンス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれか1つに単一のミスマッチ塩基対を有する(ここで1位はセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、9位は、センス鎖配列に対応する標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ5’側にあるセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施形態において、センス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖の対応するミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するのみならず、DsiRNAmm標的RNA配列ともまたミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われており、且つ相補性はDsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間でも同様に失われている)。代替的実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するのみであり、その対応する標的RNA配列ヌクレオチドとはなおも塩基対合する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われているが、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間の相補性は維持されている)。
上記に記載したとおりのミスマッチ許容領域内(ミスマッチ領域内)に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、センス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれか1つにミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は更には3個の追加的なミスマッチ塩基対を更に含むことができる。好ましい実施形態において、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加的なミスマッチ塩基対は、センス鎖の3、4、5、6、7、8及び/又は9位(及びアンチセンス鎖の対応する残基)に存在する。DsiRNAmm内に1個の追加的なミスマッチ塩基対が存在する一実施形態において、センス鎖の2個のミスマッチ塩基対が、例えばセンス鎖の4位及び6位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチはアンチセンス鎖の対応するヌクレオチド残基にもまた存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤において、ミスマッチは連続して(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。或いは、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列と塩基対合するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、3及び6位にミスマッチヌクレオチドを有するが、4及び5位には有しないDsiRNAmmについて、センス鎖3及び6位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖の2個の残基(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対間に0、1、2、3、4又は5個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿ってトリプレットで)存在し得る。或いは、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、3、4及び8位にミスマッチヌクレオチドを有するが、5、6及び7位には有しないDsiRNAmmについて、センス鎖3及び4位のミスマッチ残基は互いに隣接しており、他方、センス鎖4及び8位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖の3個の残基(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3又は4個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿ってクアドルプレットで)存在し得る。或いは、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、3、5、7及び8位にミスマッチヌクレオチドを有するが、4及び6位には有しないDsiRNAmmについて、センス鎖7及び8位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、センス鎖3及び5位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている−同様に、5及び7位のセンス鎖のミスマッチ残基もまた、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)センス鎖の4個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2又は3個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
別の実施形態において、本発明のDsiRNAmmは、左側伸長DsiRNAのアンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位のいずれか1つに単一のミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するミスマッチ許容領域を含む(ここでは1位がアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、13位が、アンチセンス鎖においてアンチセンス鎖配列と十分に相補的な標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ3’(下流)側にあるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施形態において、DsiRNAmmのセンス鎖に対してアンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するのみならず、DsiRNAmm標的RNA配列ともミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われており、且つ相補性はDsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間でも同様に失われている)。代替的実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するのみであり、その対応する標的RNA配列ヌクレオチドとはなおも塩基対合する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われているが、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間の相補性は維持されている)。
上記に記載したとおりのミスマッチ許容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位にミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は更には3個の追加的なミスマッチ塩基対を更に含み得る。好ましい実施形態において、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加的なミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20及び/又は21位に(及びセンス鎖の対応する残基に)存在する。DsiRNAmm内に1個の追加的なミスマッチ塩基対が存在する一実施形態において、アンチセンス鎖のそれらの2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の14位及び18位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチはまた、センス鎖の対応するヌクレオチド残基にも存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤において、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列と塩基対合するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13及び16位にミスマッチヌクレオチドを有するが、14及び15位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖13及び16位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の2個の残基は、これらのミスマッチ塩基対間に0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってトリプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、14及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するが、15、16及び17位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖13及び14位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖14及び18位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の3個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4、5又は6個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってクアドルプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、15、17及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するが、14及び16位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖17及び18位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖13及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている−同様に、アンチセンス鎖15及び17位のミスマッチ残基もまた、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の4個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4又は5個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
更なる実施形態において、本発明のDsiRNAmmは、左側伸長DsiRNAのアンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位のいずれか1つに単一のミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有する(ここでは1位がアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、11位が、アンチセンス鎖においてアンチセンス鎖配列と十分に相補的な標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ3’(下流)側にあるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施形態において、DsiRNAmmのセンス鎖に対してアンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するのみならず、DsiRNAmm標的RNA配列ともミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われており、且つ相補性はDsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間でも同様に失われている)。代替的実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するのみであり、この同じアンチセンス鎖ヌクレオチドがその対応する標的RNA配列ヌクレオチドとなおも塩基対合する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われているが、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間の相補性は維持されている)。
上記に記載したとおりのミスマッチ許容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位にミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は更には3個の追加的なミスマッチ塩基対を更に含み得る。好ましい実施形態において、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加的なミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18及び/又は19位に(及びセンス鎖の対応する残基に)存在する。DsiRNAmm内に1個の追加的なミスマッチ塩基対が存在する一実施形態において、アンチセンス鎖のそれらの2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の14位及び18位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチはまた、センス鎖の対応するヌクレオチド残基にも存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤において、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列と塩基対合するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、12及び15位にミスマッチヌクレオチドを有するが、13及び14位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖12及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の2個の残基は、これらのミスマッチ塩基対間に0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってトリプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、14及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するが、15、16及び17位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖13及び14位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖14及び18位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の3個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4、5又は6個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってクアドルプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、15、17及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するが、14及び16位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖17及び18位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖13及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている−同様に、アンチセンス鎖15及び17位のミスマッチ残基もまた、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の4個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4又は5個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
更なる実施形態において、本発明のDsiRNAmmは、左側伸長DsiRNAのアンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位のいずれか1つに単一のミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有する(ここでは1位がアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、15位が、アンチセンス鎖においてアンチセンス鎖配列と十分に相補的な標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ3’(下流)側にあるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施形態において、DsiRNAmmのセンス鎖に対してアンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するのみならず、DsiRNAmm標的RNA配列ともミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われており、且つ相補性はDsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間でも同様に失われている)。代替的実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドはDsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するのみであり、この同じアンチセンス鎖ヌクレオチドがその対応する標的RNA配列ヌクレオチドとなおも塩基対合する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内のミスマッチ塩基対で失われているが、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間の相補性は維持されている)。
上記に記載したとおりのミスマッチ許容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位にミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は更には3個の追加的なミスマッチ塩基対を更に含み得る。好ましい実施形態において、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加的なミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22及び/又は23位に(及びセンス鎖の対応する残基に)存在する。DsiRNAmm内に1個の追加的なミスマッチ塩基対が存在する一実施形態において、アンチセンス鎖のそれらの2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の16位及び20位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチはまた、センス鎖の対応するヌクレオチド残基にも存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤において、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列と塩基対合するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、16及び20位にミスマッチヌクレオチドを有するが、17、18及び19位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖16及び20位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(センス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の2個の残基は、これらのミスマッチ塩基対間に0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってトリプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、16、17及び21位にミスマッチヌクレオチドを有するが、18、19及び20位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖16及び17位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖17及び21位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の3個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4、5又は6個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤について、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってクアドルプレットで)存在し得る。或いは、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、17、19、21及び22位にミスマッチヌクレオチドを有するが、18及び20位には有しないDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖21及び22位のミスマッチ残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖17及び19位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている−同様に、アンチセンス鎖19及び21位のミスマッチ残基もまた、センス鎖の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の4個の残基は、これらのミスマッチ塩基対のうちの任意の2個の間に0、1、2、3、4又は5個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
明確にするため、上記のDsiRNAmm剤内のミスマッチヌクレオチド残基の位置は、DsiRNAmmのセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか一方の5’末端残基を基準として付番される。アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域(ミスマッチ領域)内に位置する位置の付番は、推定Ago2切断部位に対するアンチセンス鎖の5’末端の近接性の違いに応じてシフトし得る。従って、アンチセンス鎖又はセンス鎖のいずれか一方の範囲内における好ましいミスマッチ部位の位置はまた、推定Ago2切断部位に対するかかるミスマッチの許容される近接性としても同定することができる。従って、好ましい一実施形態において、DsiRNAmmのセンス鎖のミスマッチヌクレオチドの位置は、対応する標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ5’(上流)側にあるセンス鎖のヌクレオチド残基である。他の好ましい実施形態において、DsiRNAmmのセンス鎖のミスマッチヌクレオチドは、推定Ago2切断部位の2ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の3ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の4ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の5ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の6ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の7ヌクレオチドだけ5’(上流)側、推定Ago2切断部位の8ヌクレオチドだけ5’(上流)側、又は推定Ago2切断部位の9ヌクレオチドだけ5’(上流)側にあるセンス鎖のヌクレオチド残基に位置する。
例示的な単一ミスマッチ含有5’ガイド一本鎖伸長DsiRNA(DsiRNAmm)は、以下の構造を含む(かかるミスマッチ含有構造はまた、本明細書に示す他の例示的DsiRNA構造に組み込まれてもよい)。
5’−XXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5であり、及び「D」=DNA、「M」=鎖がアニールしたときに本来は相補的である鎖の対応する「M」残基と塩基対合(水素結合)しない核酸残基(RNA、DNA又は非天然若しくは修飾核酸)。かかる薬剤の残基のいずれも、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体であり得る−上記に示すとおり、下部(第2)鎖の3’−末端残基から始まる2’−O−メチルRNA単量体の交互配置もまた、上記のDsiRNAmm剤に用いることができる。上記のミスマッチ構造について、上部鎖がセンス鎖であり、下部鎖がアンチセンス鎖である。
特定の実施形態において、本発明のDsiRNAは、標的RNA配列を参照すると存在するが、必ずしもDsiRNAの2本の鎖内でミスマッチ塩基対として存在するとは限らないミスマッチを含有することができる−従って、DsiRNAは、DsiRNAの第1鎖と第2鎖との間で完全な相補性を有し得るが、標的RNAを参照するとなおもミスマッチ残基を有する(これは、特定の実施形態において、有効性及び/又は効力及び/又は効果持続期間を促進するのに有利であり得る)。特定の実施形態において、アンチセンス鎖と標的RNA配列との間にミスマッチが出現する場合、ミスマッチの位置は、アンチセンス鎖内において標的領域の推定Ago2切断部位の5’側に位置するセンス鎖の配列に対応する位置にある(例えば、アンチセンス鎖内において標的配列の推定Ago2切断部位に相補的なアンチセンス残基の3’側に位置するアンチセンス鎖残基)。
標的配列を参照したとき単一ミスマッチ残基を有する例示的25/27mer DsiRNAは、以下の好ましい構造を含む;
標的RNA配列:5’−.AXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−EXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−..XAXXXXXXXXXXXXXXXXXXX −3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...AXXXXXXXXXXXXXXXXXX−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−BXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XAXXXXXXXXXXXXXXXXX .−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXAXXXXXXXXXXXXXXXX .−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXAXXXXXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXAXXXXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXAXXXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXAXXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXXAXXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXXXAXXXXXXXXXX.−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
式中、「X」=RNA、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である0〜10個のRNA単量体を含む任意選択のオーバーハングドメインであり−特定の実施形態において、「Y」は、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体である1〜4個のRNA単量体を含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA、又は修飾ヌクレオチド、「N」=1〜50又はそれ以上、但し任意選択で1〜30、又は任意選択で1〜15、又は任意選択で、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上、但し任意選択で0、1、2、3、4、又は5であり、「D」=DNA、「p」=リン酸基、「E」=鎖がアニールしたとき本来は相補的である(標的)鎖の対応する「A」RNA残基と塩基対合(水素結合)しないが、任意選択で対応する「B」残基(「B」残基もまた、RNA、DNA又は非天然若しくは修飾核酸である)と塩基対合する核酸残基(RNA、DNA又は非天然若しくは修飾核酸)。かかる薬剤の残基のいずれも、任意選択で2’−O−メチルRNA単量体であり得る−例えば、上記に示すとおり、下部(第2)鎖の3’末端残基から始まる2’−O−メチルRNA単量体の交互配置、又は2’−O−メチル及び/又は本明細書に記載されるとおりの他の修飾の他のパターンもまた、上記のDsiRNA剤に用いることができる。
上記に例示する構造に加え、本発明のDsiRNAはまた、標的RNA配列との更なるミスマッチを形成する1、2又は3個の追加的な残基も有し得る。かかるミスマッチは連続していてもよく、又は標的RNA配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい。マッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられている場合、ミスマッチ残基は、一本鎖内においてかかるミスマッチ形成残基の間が1、2、3、4、5、6、7又は更には8塩基対合ヌクレオチドの間隔で互いに隔てられていてもよい。
上述のDsiRNAmm剤に関して、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(しかし対応するセンス鎖ヌクレオチドとのミスマッチは形成しても、又はしなくてもよい)アンチセンス鎖ヌクレオチドに好ましいDsiRNA内の位置は、DsiRNAの推定Ago2切断部位と相補的なアンチセンス鎖配列の3’(下流)側に位置するアンチセンス鎖領域内にある。従って、好ましい一実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖の(標的RNA配列に対する)ミスマッチヌクレオチドの位置は、アンチセンス鎖配列内において対応する標的RNA配列の推定Ago2切断部位のすぐ3’(下流)側に位置するアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である。他の好ましい実施形態において、DsiRNAmmのアンチセンス鎖の(標的RNA配列に対する)ミスマッチヌクレオチドは、対応する推定Ago2切断部位より2ヌクレオチドだけ3’(下流)側、対応する推定Ago2切断部位より3ヌクレオチドだけ3’(下流)側、対応する推定Ago2切断部位より4ヌクレオチドだけ3’(下流)側、対応する推定Ago2切断部位より5ヌクレオチドだけ3’(下流)側、推定Ago2切断部位より6ヌクレオチドだけ3’(下流)側、推定Ago2切断部位より7ヌクレオチドだけ3’(下流)側、推定Ago2切断部位より8ヌクレオチドだけ3’(下流)側、又は推定Ago2切断部位より9ヌクレオチドだけ3’(下流)側に位置するアンチセンス鎖のヌクレオチド残基に配置される。
アンチセンス鎖の2個のミスマッチ形成ヌクレオチドを有するDsiRNA剤において(ここでミスマッチ形成ヌクレオチドは標的RNA配列に対するミスマッチ形成である)、ミスマッチは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。或いは、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列と塩基対合するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13及び16位(アンチセンス鎖の5’末端(1位)を始点として)にミスマッチ形成ヌクレオチドを有するが、14及び15位には有しないDsiRNAについて、センス鎖13及び16位のミスマッチ残基は、標的RNA配列の対応する残基とマッチ塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の2個の残基は、これらのミスマッチ形成塩基対の間に0、1、2、3、4又は5個の(標的RNA配列に対する)マッチ塩基対が位置して存在し得る。
3個のミスマッチ形成塩基対(標的RNA配列に対するミスマッチ形成)を有する特定のDsiRNAについて、ミスマッチ形成ヌクレオチドは連続して(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿ってトリプレットで)存在し得る。或いは、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、14及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するが、15、16及び17位には有しないDsiRNAについて、アンチセンス鎖13及び14位のミスマッチ形成残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖14及び18位のミスマッチ形成残基は、標的RNAの対応する残基とマッチ塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の3個の残基は、これらのミスマッチ形成塩基対のうちの任意の2つの間に0、1、2、3又は4個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
4個のミスマッチ形成塩基対(標的RNA配列に対するミスマッチ形成)を有する特定のDsiRNAについて、ミスマッチ形成ヌクレオチドは連続して(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿ってクアドルプレットで)存在し得る。或いは、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列とマッチ塩基対を形成するヌクレオチドによって間が隔てられていてもよい(例えば、13、15、17及び18位にミスマッチ形成ヌクレオチドを有するが、14及び16位には有しないDsiRNAについて、アンチセンス鎖17及び18位のミスマッチ形成残基は互いに隣接しているが、アンチセンス鎖13及び15位のミスマッチ形成残基は、標的RNA配列の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている−同様に、アンチセンス鎖15及び17位のミスマッチ形成残基もまた、標的RNA配列の対応する残基とマッチ塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって間が隔てられている)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(アンチセンス鎖のミスマッチ許容領域内に位置する)アンチセンス鎖の4個の残基は、これらのミスマッチ形成塩基対のうちの任意の2つの間に0、1、2又は3個のマッチ塩基対が位置して存在し得る。
上記のDsiRNAmm及び他のDsiRNA構造は、DsiRNAmm剤及びDsiRNA剤の特定の構造を例示するために記載される。上記のDsiRNAmm及びDsiRNA構造の設計は、例えば、以下に示すDsiRNAmm形態の伸長DsiRNA剤(例えば、ミスマッチ含有DsiRNAmm剤の設計を含む)の作成に適合させることができる。上記に例示したとおり、DsiRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間に単一のミスマッチ(又は2、3又は4個のミスマッチ)を有するが、しかし任意選択でDsiRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖配列間には完全な相補性を保持してもよいDsiRNAもまた設計することができる。
更に、以下に例示するDsiRNA剤はまた、その二本鎖及び/又は標的RNA整列構造内に挿入/欠失(インデル)構造も有し得ることが注記される。従って、本発明のDsiRNAは、例えば、標的RNA配列と比較してアンチセンス鎖配列に、及び/又はセンス鎖配列と比較してアンチセンス鎖配列に、インデル変異を有するように設計することができ、ここでかかるインデルヌクレオチドを置くのに好ましい位置は、ミスマッチ塩基対及び/又はミスマッチ形成塩基対の配置について上記に記載した位置と一致する。
特定の実施形態において、任意の上記構造の「D」残基は、少なくとも1つのPS−DNA又はPS−RNAを含む。任意選択で、任意の上記構造の「D」残基は、ダイサー切断を阻害する少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含む。
一実施形態においてDsiRNA剤は、センス鎖が25塩基対長を有し、アンチセンス鎖が2塩基3’−オーバーハングを含む42ヌクレオチド長を有し(従ってこのDsiRNA剤はセンス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に5’オーバーハング15ヌクレオチド長を有する)、且つデオキシリボヌクレオチドがセンス鎖の24及び25位に位置し(センス鎖の5’の1位から付番する)、各々がアンチセンス鎖のコグネイトヌクレオチドと塩基対合した、非対称構造を有する。5’オーバーハングは修飾ヌクレオチド、好ましくは2’−O−メチルリボヌクレオチド、及び/又はリン酸骨格修飾、好ましくはホスホロチオエートを含む。
別の実施形態において、DsiRNA剤は、センス鎖が40ヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖が2塩基3’−オーバーハングを含む27ヌクレオチド長を有し(従ってこのDsiRNA剤はセンス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に3’オーバーハング15ヌクレオチド長を有する)、且つデオキシリボヌクレオチドがセンス鎖の24及び25位に位置し(センス鎖の5’の1位から付番する)、各々がアンチセンス鎖のコグネイトヌクレオチドと塩基対合した、ある構造を有する。3’オーバーハングはデオキシリボヌクレオチド及び/又はリン酸骨格修飾、好ましくはメチルホスホネートを含む。
dsNAの修飾
二本鎖RNA(「dsRNA」)の効果を阻害する主な要因の一つは、ヌクレアーゼによるdsRNA(例えば、siRNA及びDsiRNA)の分解である。3’−エキソヌクレアーゼは血清中に存在する主要なヌクレアーゼ活性であり、分解を防ぐには、アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドの3’末端の修飾が決定的に重要である(Eder et al.,1991)。ERI−1と呼ばれるRNアーゼ−Tファミリーヌクレアーゼが同定されており、これはsiRNAの調節及び分解に関与する3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する(Kennedy et al.,2004;Hong et al.,2005)。この遺伝子は、マウスにおけるThex1(NM−02067)又はヒトにおけるTHEX1(NM−153332)としても知られ、ヒストンmRNAの分解に関与する;これはまた、siRNAにおける3’−オーバーハングの分解も媒介するが、二重鎖RNAを分解させることはない(Yang et al.,2006)。従って、本発明のdsNAを含め、dsRNAの3’末端安定化が安定性を改善するであろうと予想することは妥当である。
XRN1(NM−019001)は、Pボディ内にある5’−3’エキソヌクレアーゼであり、miRNAによって標的化されるmRNAの分解に関係しているとされており(Rehwinkel et al.,2005)、また、siRNAが指図するとおりの内部切断によって惹起された分解の完了にも関与し得る。XRN2(NM−012255)は、核RNAプロセシングに関与する特徴的な5’−3’エキソヌクレアーゼである。現在のところsiRNA及びmiRNAの分解又はプロセシングに関係しているとはされていないが、これらは両方ともに、RNAを分解することのできる既知のヌクレアーゼであり、考察上重要であり得る。
RNアーゼAは、RNAを分解する哺乳動物における主要なエンドヌクレアーゼ活性である。これはssRNAに特異的であり、ピリミジン塩基の3’末端で切断する。血清中でインキュベートした後質量分析法を行うことにより、RNアーゼA切断と一致するsiRNA分解産物を検出することができる(Turner et al.,2007)。3’−オーバーハングは、RNアーゼ分解に対するsiRNAの感受性を増強する。血清からRNアーゼAが枯渇すると、siRNAの分解が減少する;この分解は、実にいくらかの配列選好性を示し、末端にポリA/U配列を有する配列に関しては悪くなる(Haupenthal et al.,2006)。これは、二重鎖のうち安定性の低い領域が「呼吸」していて、RNアーゼAによる分解に利用可能な一過性の一本鎖種をもたらす可能性を示唆している。RNアーゼA阻害薬を血清に加えてsiRNAの寿命及び効力を改善することができる(Haupenthal et al.,2007)。
21merでは、ホスホロチオエート又はボラノホスフェート修飾がヌクレオシド間リン酸連結を直接安定化させる。ボラノホスフェート修飾RNAはヌクレアーゼ耐性が極めて高く、サイレンシング剤として効力があり、且つ比較的非毒性である。ボラノホスフェート修飾RNAは標準的な化学合成方法を用いて製造することができず、代わりにインビトロ転写(IVT)によって作製する(Hall et al.,2004 and Hall et al.,2006)。ホスホロチオエート(PS)修飾は、RNA二重鎖のいかなる所望の位置にも容易に置くことができ、標準的な化学合成方法を用いて作製することができるが、しかしRNAサイレンシング活性を保つRNA二重鎖内にかかる修飾を使用可能かについては、制限があり得る。
特定の実施形態において、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域が少なくとも1つのホスホロチオエート骨格修飾を有する。一部の実施形態において、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域のあらゆる連結がホスホロチオエート骨格修飾を有する。一部の実施形態において、ガイド鎖の末端5’ヌクレオチドの連結を除き、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域のあらゆる連結がホスホロチオエート骨格修飾を有する。特定の実施形態において、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域が少なくとも1つのメチルホスホネート骨格修飾を有する。一部の実施形態において、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域のあらゆる連結がメチルホスホネート骨格修飾を有する。一部の実施形態において、ガイド鎖の末端5’ヌクレオチドを除き、パッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域のあらゆる連結がホスホロチオエート骨格修飾を有する。
しかしながら、PS修飾は用量依存的毒性を示し、そのため多くの研究者がsiRNAにおける限定的な組み込みを推奨しており、歴史的にはヌクレアーゼからの保護が最も重要な3’末端が支持されていることが注記される(Harborth et al.,2003;Chiu and Rana,2003;Braasch et al.,2003;Amarzguioui et al.,2003)。より広範囲に及ぶPS修飾は強力なRNAi活性に適合し得る;しかしながら、糖修飾(2’−O−メチルRNAなど)の使用が優れていることもある(Choung et al.,2006)。
リボースの2’位に種々の置換を置くことができ、これは概して二重鎖の安定性(Tm)を高め、且つヌクレアーゼ耐性を大幅に改善し得る。2’−O−メチルRNAは、哺乳類リボソームRNA及びトランスファーRNAに見られる天然に存在する修飾である。siRNA中の2’−O−メチル修飾は公知であるが、しかし効力を保つためには二重鎖内における修飾塩基の正確な位置が重要であり、RNAを完全に2’−O−メチルRNAに置換すると、siRNAは不活性になる。例えば、交互の2’−O−メチル塩基を用いるパターンは、非修飾RNAと等価な効力を有することができ、且つ血清中で非常に安定している(Choung et al.,2006;Czauderna et al.,2003)。
2’−フルオロ(2’−F)修飾もまた、dsRNA(例えば、siRNA及びdsNA)機能と適合する;これは、最も一般的には(試薬のコスト及び入手し易さに起因して)ピリミジン部位に置かれ、プリン位置の2’−O−メチル修飾と組み合わせることができる;2’−Fプリンが利用可能であり、これもまた使用することができる。この種の重度に修飾された二重鎖は、インビトロでRNAiを強力に惹起することができ(Allerson et al.,2005;Prakash et al.,2005;Kraynack and Baker,2006)、インビボで使用したときパフォーマンスを改善し、且つ作用持続時間を延ばすことができる(Morrissey et al.,2005a;Morrissey et al.,2005b)。交互の2’−F及び2’−O−Me塩基を含有する極めて強力なヌクレアーゼ安定性の平滑末端19mer二重鎖がAllersonによって教示されている。この設計では、Czaudernaが用いたのと同じパターンで2’−O−Me残基が交互に配置されるが、しかしながら残りのRNA残基は2’−F修飾塩基に変換される。Morrisseyが用いた極めて強力なヌクレアーゼ耐性siRNAは、極めて強力なヌクレアーゼ耐性siRNAをインビボで用いた。2’−O−Me RNA及び2’−F RNAに加えて、この二重鎖は、DNA、RNA、逆位脱塩基残基、及び3’末端PSヌクレオシド間連結を含む。広範な修飾には特定の利益があるが、二重鎖のより限定的な修飾もまたインビボパフォーマンスを改善することができ、これはより単純であるとともに、製造コストも低い。Soutschek et al.(2004)はインビボで二重鎖を用いており、ほとんどが、2個の2’−O−Me RNA塩基及び限定的な3’末端PSヌクレオシド間連結を含むRNAであった。
ロックド核酸(LNA)及びアンロックド核酸(UNA)は、dsRNA(例えば、siRNA及びdsNA)の安定化に使用することのできる別の2’修飾クラスである。効力を保持するLNA組み込みパターンは2’−O−メチル又は2’−F塩基と比べて限られており、そのため限定的な修飾が好ましい(Braasch et al.,2003;Grunweller et al.,2003;Elmen et al.,2005)。限定的な組み込みであっても、LNA修飾を用いると、インビボでのdsRNAパフォーマンスを改善することができ、またオフターゲット効果プロファイルも変化し、又は改善し得る(Mook et al.,2007)。
細胞又は生きている動物に導入された合成核酸は「外来性」と認識され、免疫応答を惹起し得る。免疫刺激はオフターゲット効果の主要なクラスを成し、これが実験結果を劇的に変化させ、細胞死をもたらすことさえあり得る。自然免疫系は、これらの反応を媒介するDNA及びRNAと特異的に相互作用する一群の受容体分子を含み、それらは細胞質に位置するものもあれば、エンドソームに存在するものもある(Marques and Williams,2005;Schlee et al.,2006)。カチオン性脂質又はリポソームによってsiRNAを送達すると、siRNAが細胞質及びエンドソームの両方の区画に曝露され、インビトロ及びインビボの両方で1型インターフェロン(IFN)応答を惹起するリスクが最大となる(Morrissey et al.,2005b;Sioud and Sorensen,2003;Sioud,2005;Ma et al.,2005)。細胞内で転写されるRNAは免疫原性が低く(Robbins et al.,2006)、脂質ベースの方法を用いて送達したとき免疫原性である合成RNAが、機械的手段によって細胞に導入された場合には、インビボであっても免疫刺激を回避し得る(Heidel et al.,2004)。しかしながら、脂質ベースの送達方法は簡便、有効で、広く用いられている。特に、あらゆる細胞型が存在し、且つ免疫応答が生じるリスクが最も高いインビボ適用に対し、免疫応答を防ぐ何らかの総合的戦略が求められている。化学修飾されたRNAの使用は、これらの問題の多く、又は更には全てを解決し得る。
ある種の配列モチーフは他と比べて明らかに免疫原性が高いが、一般に自然免疫系の受容体は、原核生物RNAと比べて哺乳類RNAにより一般的に見出されるある種の塩基修飾の存在又は非存在を区別するように思われる。例えば、プソイドウリジン、N6−メチル−A、及び2’−O−メチル修飾塩基は「自己」として認識され、合成RNAにこれらの残基を含めると、免疫検出を回避する助けとなり得る(Kariko et al.,2005)。非修飾RNAとして強力な免疫刺激性を示す配列を広範囲に2’修飾すると、マウスへの静脈内投与時の免疫応答を遮断し得る(Morrissey et al.,2005b)。しかしながら、免疫検出の回避に広範囲の修飾は不要であり、インビトロ及びインビボの両方で1型IFN応答を遮断するには、siRNA二重鎖の一本鎖における僅か2個の2’−O−メチル塩基の置換が十分であり得る;修飾U及びG塩基が最も有効である(Judge et al.,2006)。更なる利点として、2’−O−メチル塩基の選択的な組み込みにより、オフターゲット効果の大きさを低減することができる(Jackson et al.,2006)。従って、2’−O−メチル塩基の使用は、インビボ適用が意図されるあらゆるdsRNAについて免疫応答の遮断手段として考慮されるべきものであり、ヌクレアーゼ安定性の改善及びオフターゲット効果の可能性の低減という更なる利点を有する。
免疫刺激によって細胞死が起こり得るが、細胞生存の評価は、IFN応答の誘導をモニタするのに適切な方法ではない。IFN応答は細胞死がなくても存在することがあり、細胞死はIFN惹起がない場合にも標的のノックダウンによって起こり得る(例えば、標的遺伝子が細胞の生存に必須である場合)。関連性のあるサイトカインを培養培地で直接計測することができ、かかるアッセイの実施をルーチン化する種々の市販キットが存在する。多数の異なる免疫エフェクター分子を計測し得るが、通常、スクリーニング目的には、トランスフェクション後4時間及び24時間のIFN−α、TNF−α、及びIL−6レベルを調べることで十分である。カチオン性脂質はある種の細胞においていかなる核酸カーゴもなしに免疫応答を惹起し得るため、「トランスフェクション試薬のみの対照」を含めることが重要である。細胞培養作業に関しては、IFN経路誘導の対照を含めることを考慮しなければならない。IFN応答を惹起するリスクが最も高いインビボでの核酸投与時は常に、免疫刺激に関して試験することが不可欠である。
本発明のdsNAは、本明細書において以下にDsiRNAについて記載する修飾パターンのいずれを有することもできる。本発明のdsNA剤には、dsNA剤がダイサーの基質として働くことを妨げるような修飾でない限り、修飾を含めることができる。実際、本発明の一つの意外な発見は、先述のdsNA分子にアンチセンス鎖の5’伸長一本鎖ヌクレオチド領域又はセンス鎖の3’伸長一本鎖ヌクレオチド領域を付加することができ、それによってRNAiの有効性及び持続期間の増進がもたらされるという点であり、但しかかる伸長は伸長分子のなかでダイサープロセシングを妨げない領域(例えば、センス鎖のダイサー切断部位の3’側/アンチセンス鎖のダイサー切断部位の5’側)において行われるものとする。一実施形態において、dsiNA剤のダイサープロセシングを増進する1つ以上の修飾が作製される。第2の実施形態において、より有効なRNAiを生じさせる1つ以上の修飾が作製される。第3の実施形態において、より高いRNAi効果を補助する1つ以上の修飾が作製される。第4の実施形態において、細胞に送達される各dsNA剤分子当たりの効力を高める1つ以上の修飾が作製される。修飾は、3’末端領域、5’末端領域、3’末端領域及び5’末端領域の両方又は場合によっては配列内の様々な位置に組み込むことができる。上記に指摘した制約を考慮した上で、任意の数及び組み合わせの修飾をdsNA剤に組み込むことができる。複数の修飾が存在する場合、それらは同じであっても、又は異なってもよい。塩基、糖部分、リン酸骨格、及びこれらの組み合わせに対する修飾が企図される。いずれの5’末端も、リン酸化することができる。
リン酸骨格に企図される修飾の例としては、ホスホネート類、例えば、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、及びリン酸トリエステル修飾、例えば、アルキルホスホトリエステル類、ロックド核酸(LNA)、アンロックド核酸、モルホリノ、二環式フラノース類似体などが挙げられる。糖部分に企図される修飾の例としては、2’−アルキルピリミジン、例えば、2’−O−メチル、2’−フルオロ、アミノ、及びデオキシ修飾などが挙げられる(例えば、Amarzguioui et al.,2003を参照のこと)。塩基類に企図される修飾の例としては、脱塩基糖、2−O−アルキル修飾ピリミジン類、4−チオウラシル、5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル、及び5−(3−アミノアリル)−ウラシルなどが挙げられる。ロックド核酸、即ちLNA、アンロックド核酸、即ちUNAもまた、組み込むことができる。他の多くの修飾が公知であり、上記の基準が満たされる限り用いることができる。修飾の例はまた、米国特許第5,684,143号明細書、同第5,858,988号明細書及び同第6,291,438号明細書並びに米国特許出願公開第2004/0203145 A1号明細書にも開示されている。他の修飾が、Herdewijn(2000),Eckstein(2000),Rusckowski et al.(2000),Stein et al.(2001);Vorobjev et al.(2001)に開示されている。
企図される1つ以上の修飾は、いずれの鎖にも組み込むことができる。dsNA剤における修飾の配置は、より高い効力及び安定性の付与、毒性の低減、ダイサープロセシングの増進、及び免疫応答の最小化を含め、dsNA剤の特徴に大きい影響を及ぼし得る。一実施形態では、アンチセンス鎖又はセンス鎖又は両方の鎖が1つ以上の2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを有する。別の実施形態では、アンチセンス鎖が2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含有する。別の実施形態では、アンチセンス鎖(stand)が、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含む3’オーバーハングを含有する。アンチセンス鎖はまた、追加的な2’−O−メチル修飾ヌクレオチドも含み得る。
特定の実施形態では、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域、パッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域、又はパッセンジャー鎖の5’一本鎖伸長領域が、少なくとも1個の修飾ヌクレオチド、任意選択で2’−O−メチルリボヌクレオチドを有する。一部の実施形態では、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’一本鎖伸長領域のあらゆるヌクレオチドが、修飾リボヌクレオチド、任意選択で2’−O−メチルリボヌクレオチドである。特定の実施形態では、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域に相補的なオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の修飾ヌクレオチド、任意選択で2’−O−メチルリボヌクレオチドを有する。一部の実施形態では、ガイド鎖の5’一本鎖伸長領域に相補的なオリゴヌクレオチドのあらゆるヌクレオチドが、修飾ヌクレオチド、任意選択で2’−O−メチルリボヌクレオチドを有する。
本発明の特定の実施形態において、dsiNA剤は、ダイサーによるそのプロセシングを増進する1つ以上の特性を有する。これらの実施形態によれば、dsiNA剤は、それがダイサーによってプロセシングされて活性siRNAを生じるような十分な長さ及び以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:(i)dsiNA剤が非対称であり、例えばアンチセンス鎖上に3’オーバーハングを有する、及び(ii)dsiNA剤が、センス鎖上に、ダイサー結合及び活性siRNAへのdsRNA領域のプロセシングの向きを指図する修飾3’末端を有する。特定のかかる実施形態では、センス鎖のうち推定ダイサー酵素切断部位より3’側にある領域及びアンチセンス鎖のうち推定ダイサー酵素切断部位の5’側にある対応する領域における1つ以上の塩基対合デオキシリボヌクレオチドの存在もまた、かかる分子をダイサー酵素切断の適切な向きに向ける働きをし得る。
特定の実施形態において、一本鎖アンチセンス伸長領域の長さは、1〜30ヌクレオチド、1〜15ヌクレオチド、10〜15ヌクレオチド、11〜15ヌクレオチドである。従って、本発明の一本鎖伸長dsNAは、アンチセンス/ガイド鎖の5’末端又はセンス/パッセンジャー鎖の3’末端に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれ以上(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長又はそれ以上)の一本鎖伸長領域を有し得る。
一部の実施形態において、二本鎖核酸の最も長い鎖は36〜66ヌクレオチドを含む。一実施形態において、dsNA剤は、アンチセンス鎖の5’末端がセンス鎖の3’末端にオーバーハングし、又はアンチセンス鎖の3’末端がセンス鎖の5’末端にオーバーハングするような構造を有する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の5’伸長部は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれ以上(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長又はそれ以上)を有し、任意選択で10〜30ヌクレオチド、例えば15ヌクレオチドである。別の実施形態において、dsNA剤は、センス鎖の3’末端がアンチセンス鎖の5’末端にオーバーハングし、及びアンチセンス鎖の3’末端がセンス鎖の5’末端にオーバーハングするような構造を有する。特定の実施形態において、センス鎖の3’伸長部は1〜30ヌクレオチドであり、任意選択で10〜30ヌクレオチド、例えば15ヌクレオチドである。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の3’伸長部は1〜10ヌクレオチドであり、任意選択で1〜6ヌクレオチド、好ましくは1〜4ヌクレオチド、例えば2ヌクレオチドである。別の実施形態において、DsNA剤は、センス鎖の5’末端がアンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングするような構造を有する。特定の実施形態において、センス鎖の5’オーバーハングは4〜30ヌクレオチドであり、任意選択で10〜30ヌクレオチド、例えば15ヌクレオチドである。センス鎖及びアンチセンス鎖の両方がまた、5’リン酸を有してもよい。図34、図35及び図36に示されるとおり、センス鎖及びアンチセンス鎖の異なる5’及び3’末端における伸長部特徴の反復的組み合わせもまた、本発明において企図される。
特定の実施形態において、本発明のdsNAのセンス鎖は少なくとも25ヌクレオチドの全長を有する(例えば、センス鎖は、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド又はそれ以上(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド又はそれ以上)の長さを有する)。特定の実施形態において、センス鎖の長さは、25ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、例えば26〜30ヌクレオチド、又は、27〜30ヌクレオチド長である。関連する実施形態において、アンチセンス鎖は少なくとも36ヌクレオチドの長さを有する(例えば、センス鎖は、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66ヌクレオチド又はそれ以上(例えば、67、28、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80ヌクレオチド又はそれ以上)の長さを有する)。特定のかかる実施形態において、アンチセンス鎖は、37〜57ヌクレオチド長、又は37〜52ヌクレオチド長、又は37〜47ヌクレオチド長、又は42〜62ヌクレオチド長、又は42〜57ヌクレオチド長、又は42〜47ヌクレオチド長の長さを有する。
特定の実施形態において、本発明のDsNAのセンス鎖は、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60ヌクレオチド又はそれ以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70ヌクレオチド又はそれ以上))の全長を有する。特定の実施形態において、センス鎖の長さは、25ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、任意選択で35〜55ヌクレオチド、40〜55ヌクレオチド長、40〜60ヌクレオチド長、又は、45〜60ヌクレオチド長である。関連する実施形態において、アンチセンス鎖は、25、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、又はそれ以上(例えば、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50ヌクレオチド)の長さを有する。特定のかかる実施形態において、アンチセンス鎖は27〜32ヌクレオチド長の長さを有する。
特定の実施形態において、センス鎖のうち推定ダイサー酵素切断部位の3’側にある領域及びアンチセンス鎖のうち推定ダイサー酵素切断部位の5’側にある対応する領域における1つ以上の塩基対合したデオキシリボヌクレオチドの存在が、かかる分子のダイサー酵素切断を誘導する働きをし得る。本発明の例示される特定の薬剤は、センス鎖の5’末端の1位から数えたとき24位又はそれより3’側に位置するセンス鎖デオキシリボヌクレオチドを有し、センス鎖のこの24位又はそれより3’側のデオキシリボヌクレオチドはアンチセンス鎖のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合しているが、一部の実施形態では、デオキシリボヌクレオチド残基を例えばセンス鎖の20位に含めることにより、ダイサーがより短い産物、例えば19mer又は20merを切断するように誘導することもまた可能である。かかる20位デオキシリボヌクレオチドはアンチセンス鎖の対応するデオキシリボヌクレオチドと塩基対合し、それによって最も高頻度に見られるダイサー産物として19merのダイサー媒介切り出しを誘導する(アンチセンス鎖もまた、アンチセンス残基のすぐ3’側に、かかる実施形態におけるセンス鎖の20位デオキシリボヌクレオチド残基と塩基対合する1個又は2個のデオキシリボヌクレオチド残基を含み、アンチセンス鎖のダイサー切断を更に誘導することが注記される)。かかる実施形態において、二本鎖DNA領域(ダイサー切断を遮断する修飾核酸を含む)は、ダイサー切断によって通常好ましくないダイサー切断産物長さであるものが生じるように誘導するため、概して1又は2塩基対より長い長さ(例えば、3〜5塩基対又はそれ以上)を有することになる。また、20mer siRNAのダイサー切り出しを誘導する同様の手法をとることもでき、ここでセンス鎖の1番目のデオキシリボヌクレオチド残基の位置(センス鎖の5’末端にある1位からセンス鎖を見たとき)は、21位に存在する。
特定の実施形態において、本発明のDsNA剤は、概して、ヌクレオチド位置の約5〜約100%(例えば、ヌクレオチド位置の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%)に修飾ヌクレオチドを含み得る。所与のsiNA分子に存在する修飾ヌクレオチドの実際のパーセンテージは、そのsiNAに存在するヌクレオチドの総数に依存する。siNA分子が一本鎖である場合、修飾割合は、一本鎖siNA分子に存在するヌクレオチドの総数を基準とし得る。同様に、siNA分子が二本鎖である場合;修飾割合は、センス鎖、アンチセンス鎖、又はセンス鎖とアンチセンス鎖との両方に存在するヌクレオチドの総数を基準とし得る。加えて、所与のsiNA分子に存在する修飾ヌクレオチドの実際のパーセンテージはまた、そのsiNAに存在するプリン及びピリミジンヌクレオチドの総数に依存することもあり、例えば、ここではsiNA分子に存在する全てのピリミジンヌクレオチド及び/又は全てのプリンヌクレオチドが修飾されている。場合によっては、更にはセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖の100%が完全に修飾されていてもよい。
特定の実施形態において、DsiNA剤のセンス鎖は、センス鎖の3’末端に位置する好適な修飾因子によってダイサープロセシング用に修飾され、即ち、DsiNA剤は、センス鎖修飾によってダイサー結合及びプロセシングの向きを指図するように設計される。好適な修飾因子としては、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドなどのヌクレオチド、及び蛍光分子などの立体障害を有する分子が挙げられる。アシクロヌクレオチドは、通常dNMPに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖を2−ヒドロキシエトキシメチル基で置換する。他のヌクレオチド修飾因子としては、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)の一リン酸ヌクレオチドを挙げることができる。一実施形態において、デオキシリボヌクレオチドが修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3個のヌクレオチド修飾因子、又は2個のヌクレオチド修飾因子がセンス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドを置換する。立体障害を有する分子が利用される場合、それらはアンチセンス鎖の3’末端のリボヌクレオチドに付加される。従って、修飾因子が組み込まれても鎖の長さは変化しない。別の実施形態において、本発明は、DsiNA剤の2個のDNA塩基を置換してアンチセンス鎖のダイサープロセシングの向きを指図することを企図する。本発明の更なる実施形態において、2個の末端DNA塩基がセンス鎖の3’末端上の2個のリボヌクレオチドと置換されてセンス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の5’末端に二重鎖の平滑末端を形成し、2ヌクレオチドRNAオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端に位置する。これは、DNAが平滑末端にあり、且つRNA塩基がオーバーハング末端にある非対称組成物である。本発明の特定の実施形態において、センス鎖の3’末端の最後から2番目及び最後の位置の修飾ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド)は、アンチセンス鎖の対応する修飾ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド)(任意選択で、センス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を有する本発明のDsiNA剤では、アンチセンス鎖の5’末端の最後から2番目及び最後の残基)と塩基対合する。
本発明のDiNA剤のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、細胞の細胞質に見られる条件などの生物学的条件下でアニールする。加えて、DsiNA剤のこれらの配列のうちの一方、特にアンチセンス鎖の領域は少なくとも19ヌクレオチドの配列長さを有し、ここでこれらのヌクレオチドはアンチセンス鎖の3’末端に隣接する21ヌクレオチド領域にあり、標的遺伝子から産生されるRNAのヌクレオチド配列に対し、かかる標的RNAとアニールし及び/又はそのレベルを低下させるのに十分に相補的である。
本発明のDsiNA剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖のうちセンス鎖の推定ダイサー切断部位の3’側及びアンチセンス鎖の推定ダイサー切断部位の5’側にある任意の位置にある1つ以上のデオキシリボヌクレオチド塩基対を有し得る。特定の実施形態において、センス鎖の24〜27位の1、2、3又は4つ全て(センス鎖の5’末端における1位を始点とする)がデオキシリボヌクレオチドであり、これの各デオキシリボヌクレオチドがアンチセンス鎖の対応するデオキシリボヌクレオチドと塩基対合する。特定の実施形態において、アンチセンス鎖の5’領域(例えば、アンチセンス鎖のうち所与のDsiNA分子についての推定ダイサー切断部位の5’側に位置する領域)のデオキシリボヌクレオチドは、DsiNA剤が仕向けられる標的RNAと相補的でない。関連する実施形態では、アンチセンス鎖のうちDsiNA剤の推定ダイサー切断部位の5’側に位置する領域全体が、DsiNA剤が仕向けられる標的RNAと相補的でない。特定の実施形態では、アンチセンス鎖のデオキシリボヌクレオチド又はアンチセンス鎖のうちDsiNA剤の推定ダイサー切断部位の5’側に位置する領域全体が、アンチセンス鎖と標的RNAとの間のアニーリングを可能にするのに十分な条件下でアンチセンス鎖が標的RNAとアニールしたとき、DsiNAのアンチセンス鎖と標的RNAとのアニーリングを増進するのに十分な標的RNAに対する相補性を有しない(例えば、DNA伸長領域を欠いている「コア」アンチセンス鎖配列も、DNA伸長領域の配列で同様に伸長した同じ「コア」アンチセンス鎖配列と等しく十分に標的RNAとアニールする)。
DsNA剤はまた、以下の追加的な特性の1つ以上も有し得る:(a)アンチセンス鎖が典型的21merからの右又は左シフトを有する、(b)鎖が完全には相補的でないこともあり、即ち、鎖が単純なミスマッチ対合を含有し得る、及び(c)センス鎖の5’末端にロックド核酸及びアンロックド核酸(UNA)などの塩基修飾が含まれ得る。「典型的」21mer siRNAは従来技術を用いて設計される。一つの技法では、通常、種々の部位が並行して、又は同じ標的に特異的な幾つかの異なるsiRNA二重鎖を含有するプールが、それらの試薬のうちの1つが有効であることを期待して試験される(Ji et al.,2003)。他の技法は、活性RNAiエフェクター分子が得られる可能性を高める設計ルール及びアルゴリズムを用いる(Schwarz et al.,2003;Khvorova et al.,2003;Ui−Tei et al.,2004;Reynolds et al.,2004;Krol et al.,2004;Yuan et al.,2004;Boese et al.,2005)。siRNAのハイスループット選択が開発されている(米国特許出願公開第2005/0042641 A1号明細書)。潜在的標的部位はまた、二次構造予測によっても分析することができる(Heale et al.,2005)。次にこの21merを使用して、21merの5’末端に3〜9個の追加的なヌクレオチドを含むように右シフトが設計される。これらの追加的なヌクレオチドの配列は、どの配列を有してもよい。一実施形態において、加えられるリボヌクレオチドは標的遺伝子の配列に基づく。この実施形態であっても、標的配列とアンチセンスsiRNAとの間の完全な相補性は必要ない。
本発明のDsNA剤の第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、完全に相補的である必要はない。それらは、生物学的条件下でアニールし且つ標的配列と十分に相補的なsiRNAを生じるダイサーに対する基質を提供するのに実質的に相補的であれば十分である。ロックド核酸、即ちLNA、アンロックド核酸(UNA)は、当業者に周知である(Elman et al.,2005;Kurreck et al.,2002;Crinelli et al.,2002;Braasch and Corey,2001;Bondensgaard et al.,2000;Wahlestedt et al.,2000)。一実施形態において、センス鎖の5’末端にLNAが組み込まれる。別の実施形態において、アンチセンス鎖上に3’オーバーハングを含むように設計された二重鎖においてセンス鎖の5’末端にLNAが組み込まれる。
特定の実施形態において、本発明のDsNA剤は、センス鎖が27塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が29塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する非対称構造を有する。かかる薬剤は、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜4個のデオキシリボヌクレオチドを有してもよく、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。他の実施形態では、センス鎖が28塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が30塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する。かかる薬剤は、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜5個のデオキシリボヌクレオチドを有してもよく、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。更なる実施形態では、センス鎖が29塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が31塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する。かかる薬剤は、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜6個のデオキシリボヌクレオチドを有してもよく、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。更なる実施形態では、センス鎖が30塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が32塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する。かかる薬剤は、任意選択で、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜7個のデオキシリボヌクレオチドを有し、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。他の実施形態では、センス鎖が31塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が33塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する。かかる薬剤は、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜8個のデオキシリボヌクレオチドを有してもよく、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。更なる実施形態では、センス鎖が32塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が34塩基対長及び2塩基3’−オーバーハングを有する。かかる薬剤は、任意選択で、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜9個のデオキシリボヌクレオチドを有し、これらのデオキシリボヌクレオチドのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。特定の更なる実施形態では、センス鎖が33塩基対長を有し、且つアンチセンス鎖が、2塩基3’−オーバーハングを伴う35塩基対長を有する。かかる薬剤は、任意選択で、センス鎖の3’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の3’側の領域)に1〜10個のデオキシリボヌクレオチドを有し、これらのうちの少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、推定ダイサー切断部位の5’側の領域)のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合している。なおも他の実施形態では、これらのDsNA剤の任意のものが、センス鎖の3’末端に、アンチセンス鎖のコグネイトデオキシリボヌクレオチドと塩基対合し得る2個のデオキシリボヌクレオチドを更に含有する非対称構造を有する。
2個の別個のオリゴヌクレオチドを含有する特定のDsNA剤組成物を第3の構造によって連結することができる。第3の構造はDsNA剤に対するダイサー活性を遮断せず、標的遺伝子から転写されたRNAの標的化された破壊を妨げない。一実施形態において、第3の構造は化学的連結基であってもよい。多くの好適な化学的連結基が当該技術分野において公知であり、使用することができる。或いは、第3の構造は、dsNA組成物を構成する2つのオリゴヌクレオチドをアニールしたときにヘアピン構造が作り出されるような形でDsNA剤の2つのオリゴヌクレオチドを連結するオリゴヌクレオチドであってもよい。ヘアピン構造はDsNA剤に対するダイサー活性を遮断せず、標的RNAの標的化された破壊を妨げない。
特定の実施形態において、本発明のDsNA剤は、ダイサーによるそのプロセシングを増進する幾つかの特性を有する。かかる実施形態によれば、DsNA剤は、それがダイサーによってプロセシングされてsiRNAを生じるような十分な長さ及び以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:(i)DsNA剤が非対称であり、例えばセンス鎖上に3’オーバーハングを有する、及び(ii)DsNA剤が、アンチセンス鎖上に、ダイサーがdsRNA領域に結合してそれを活性siRNAにプロセシングする向きを指図する修飾3’末端を有する。これらの実施形態によれば、DsNA剤の最も長い鎖は25〜43ヌクレオチドを含む。一実施形態において、センス鎖は25〜39ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は26〜43ヌクレオチドを含む。得られるdsNAはセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有し得る。オーバーハングは1〜4ヌクレオチド、例えば2ヌクレオチドである。アンチセンス鎖又はセンス鎖はまた、5’リン酸も有し得る。
特定の実施形態において、本発明のDsNA剤は、ダイサーによるそのプロセシングを増進する幾つかの特性を有する。かかる実施形態によれば、DsNA剤は、それがダイサーによってプロセシングされてsiRNAを生じるような十分な長さ及び以下の特性のうちの少なくとも1つを有する:(i)DsNA剤が非対称であり、例えばセンス鎖上に5’オーバーハングを有する、及び(ii)DsNA剤が、アンチセンス鎖上に、ダイサーがdsRNA領域に結合してそれを活性siRNAにプロセシングする向きを指図する修飾3’末端を有する。これらの実施形態によれば、DsNA剤の最も長い鎖は25〜43ヌクレオチドを含む。一実施形態において、センス鎖は25〜43ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は25〜39ヌクレオチドを含む。得られるdsNAはセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有し得る。オーバーハングは1〜4ヌクレオチド、例えば2ヌクレオチドである。アンチセンス鎖又はセンス鎖はまた、5’リン酸も有し得る。
特定の実施形態において、DsiNA剤のセンス鎖は、センス鎖の3’末端に位置する好適な修飾因子によってダイサープロセシング用に修飾され、即ち、DsiNA剤は、ダイサー結合及びプロセシングの向きを指図するように設計される。好適な修飾因子としては、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドなどのヌクレオチド、及び蛍光分子などの立体障害を有する分子が挙げられる。アシクロヌクレオチドは、通常dNMPに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖を2−ヒドロキシエトキシメチル基で置換する。他のヌクレオチド修飾因子としては、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)の一リン酸ヌクレオチドを挙げることができる。一実施形態において、デオキシリボヌクレオチドが修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3個のヌクレオチド修飾因子、又は2個のヌクレオチド修飾因子がセンス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドを置換する。立体障害を有する分子が利用される場合、それらはアンチセンス鎖の3’末端のリボヌクレオチドに付加される。従って、修飾因子が組み込まれても鎖の長さは変化しない。別の実施形態において、本発明は、ダイサープロセシングの向きを指図するためdsNAの2個のDNA塩基を置換することを企図する。更なる実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端上の二重鎖の平滑末端を形成する2個のリボヌクレオチドの代わりにセンス鎖の3’末端に2個の末端DNA塩基が位置し、且つ2ヌクレオチドRNAオーバーハングがアンチセンス鎖の3’末端に位置する。これは、平滑末端にDNAがあり、且つオーバーハング末端にRNA塩基がある非対称組成物である。
特定の他の実施形態において、DsiNA剤のアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の3’末端に位置する好適な修飾因子によってダイサープロセシング用に修飾され、即ち、DsiNA剤は、ダイサー結合及びプロセシングの向きを指図するように設計される。好適な修飾因子としては、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドなどのヌクレオチド、及び蛍光分子などの立体障害を有する分子が挙げられる。アシクロヌクレオチドは、通常dNMPに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖を2−ヒドロキシエトキシメチル基で置換する。他のヌクレオチド修飾因子としては、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)の一リン酸ヌクレオチドを挙げることができる。一実施形態において、デオキシリボヌクレオチドが修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3個のヌクレオチド修飾因子、又は2個のヌクレオチド修飾因子がアンチセンス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドを置換する。立体障害を有する分子が利用される場合、それらはアンチセンス鎖の3’末端のリボヌクレオチドに付加される。従って、修飾因子が組み込まれても鎖の長さは変化しない。別の実施形態において、本発明は、ダイサープロセシングの向きを指図するためdsNAの2個のDNA塩基を置換することを企図する。更なる発明において、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端上の二重鎖の平滑末端を形成する2個のリボヌクレオチドの代わりにアンチセンス鎖の3’末端に2個の末端DNA塩基が位置し、且つセンス鎖の3’末端に2ヌクレオチドRNAオーバーハングが位置する。これもまた、平滑末端にDNAがあり、且つオーバーハング末端にRNA塩基がある非対称組成物である。
センス鎖及びアンチセンス鎖は、細胞の細胞質に見られる条件などの生物学的条件下でアニールする。加えて、dsNAのこれらの配列のうちの一方、特にアンチセンス鎖の領域は、少なくとも19ヌクレオチドの配列長さを有し、ここでこれらのヌクレオチドはアンチセンス鎖の3’末端に隣接し、且つRNA干渉を誘導するのに十分な標的RNAのヌクレオチド配列との相補性を有する。
加えて、DsiNA剤構造は、ダイサー切断によって生じるオリゴヌクレオチドが遺伝子発現の阻害において最も有効であることが確実となるように最適化することができる。例えば、本発明の一実施形態において、DsiNA剤構造の27〜35bpオリゴヌクレオチドが合成され、ここでは遺伝子発現を阻害すると予想される21〜22bpセグメントがアンチセンス鎖の3’末端に位置する。アンチセンス鎖の5’末端に位置する残りの塩基はダイサーによって切断され、切り捨てられることになる。この切断される部分は相同であっても(即ち、標的配列の配列に基づく)、又は非相同であってもよく、核酸鎖の伸長のため加えられ得る。本発明で意外にも突き止められたとおり、かかる伸長は、塩基対合したDNA残基(二本鎖DNA:DNA伸長部)で行うことができ、対応する二本鎖RNA:RNA伸長DsiNA剤と比べて有効性又は効果持続期間が改善した伸長DsiNA剤がもたらされ得る。
米国特許出願公開第2007/0265220号明細書は、27mer DsNAが、化学修飾がなくても、同等の21mer siRNA組成物と比べて血清中安定性の改善を示すことを開示している。アンチセンス鎖に2’−O−メチルRNAを含めるなど、米国特許出願公開第2007/0265220号明細書及び本実施例に詳述されるようなパターンでのDsNA剤の修飾は、5’リン酸の付加と併せたとき、DsNA剤の安定性を改善し得る。合成RNA二重鎖の全ての鎖に5’−リン酸を付加することは、幾らか限られた程度のヌクレアーゼ安定性を付与するための安価な生理的方法であり得る。
本発明のDsNA剤の化学修飾パターンは、かかる薬剤の有効性を増進するように設計される。従って、かかる修飾は、DsNA剤の効力の低下を回避し;DsNA剤のダイサープロセシングの妨害を回避し;DsNA剤の生体液中での安定性を改善し(ヌクレアーゼ感受性を低下させる);又は自然免疫系による検出を遮断又は回避するように設計される。かかる修飾はまた、毒性を回避し、且つ本発明のこのDsNA剤のコスト又は製造の容易さへの影響の増大を回避するようにも設計される。
RNAプロセシングsiRNA
siRNA媒介RNAiのプロセスは、細胞における長いdsRNA分子の存在によって惹起される。RNAiの開始段階でこれらのdsRNA分子がダイサー(2つのRNアーゼIII様ドメインを含有する保存されている酵素ファミリー)によって切断され、21〜23ヌクレオチド(nt)の低分子干渉RNA二重鎖(siRNA)になる(Bernstein et al.2001;Elbashir et al.2001)。このsiRNAは、19〜21塩基対の二重鎖領域及び各鎖上の2ヌクレオチドの3’オーバーハングによって特徴付けられる。RNAiのエフェクター段階で、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれる多量体タンパク質複合体に組み込まれ、ここでsiRNAは、分解する完全に相補的なmRNA基質を選択するためのガイドとして働く。分解は、siRNAと相補的な領域内のmRNAのエンドヌクレアーゼによる切断によって開始される。より正確には、mRNAは、ガイドsiRNAの5’末端から10ヌクレオチドの位置で切断される(Elbashir et al.2001 Genes and Dev.15:188−200;Nykanen et al.2001 Cell 107:309−321;Martinez et al.2002 Cell 110:563−574)。この切断に関与するエンドヌクレアーゼは、アルゴノート2と同定された(Ago2;Liu et al.Science,305:1437−41)。
miRNA
ヒトmiRNAの大多数(70%)−及び恐らくは他の哺乳動物のmiRNAの大多数−はイントロン及び/又はエクソンから転写され、及び約30%は遺伝子間領域に位置する(Rodriguez et al.,Genome Res.2004,14(10A),1902−1910)。ヒト及び動物においては、miRNAは通常、RNAポリメラーゼIIによって転写され(Farh et al.Science 2005,310(5755),1817−1821)、一部の例ではpol IIIによって転写される(Borchert et al.Nat.Struct.Mol.Biol.2006,13(12),1097−1101)。ウイルスがコードする特定のmiRNAはRNAポリメラーゼIIIによって転写され(Pfeffer et al.Nat.Methods 2005,2(4),269−276;Andersson et al.J.Virol.2005,79(15),9556−9565)、一部はウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームに位置する(Pfeffer et al.Nat.Methods 2005,2(4),269−276;Samols et al.J.Virol.2005,79(14),9301−9305)。miRNA転写は、大きいモノシストロン性、バイシストロン性又はポリシストロン性一次転写物(プリmiRNA)の産生をもたらす。単一のプリmiRNAは、長さが約200ヌクレオチド(nt)〜数キロベース(kb)の範囲であり、5’の7−メチルグアノシン(m7)キャップと3’のポリ(A)テールとの両方を有し得る。特徴として、成熟miRNA配列は、プリmiRNA内の不完全なステム−ループ配列の領域に局在化している(Cullen,Mol.Cell.2004,16(6),861−865)。
核におけるmiRNA成熟の第一段階は、RNアーゼIIIドローシャ−DGCR8核マイクロプロセッサ複合体によるプリmiRNAの認識及び切断であり、これにより、5’末端に一リン酸及び3’末端にヒドロキシル基を含む2ntオーバーハングを有する、プレmiRNAと呼ばれる約70ntのヘアピン含有前駆体分子が放出される(Cai et al.RNA 2004,10(12),1957−1966;Lee et al.Nature 2003,425(6956),415−419;Kim Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2005,6(5),376−385)。次の段階は、キャリアータンパク質であるエクスポーチン−5による核から細胞質へのプレmiRNAの核輸送である(Yi et al.Genes.Dev.2003,17(24),3011−3016,Bohnsack et al.RNA 2004,10(2),185−191)。エクスポーチン−5及びGTP結合型のその補因子Ranは、一緒になって2ヌクレオチド3’オーバーハング及び隣接するステム(プレmiRNAの特徴である)を認識及び結合する(Basyuk et al.Nucl.Acids Res.2003,31(22),6593−6597,Zamore Mol.Cell.2001,8(6),1158−1160)。細胞質でGTP加水分解によってプレmiRNAの放出が生じ、次にはこれが細胞エンドヌクレアーゼIII酵素ダイサーによってプロセシングされる(Bohnsack et al.)。ダイサーは、当初は、RNA干渉(RNAi)を媒介するsiRNAの生成におけるその役割が認められた。ダイサーはその補因子TRBP(Trans activating region binding protein;Chendrimata et al.Nature 2005,436(7051),740−744)及びPACT(interferon−inducible double strand−RNA−dependent protein kinase activator;Lee et al.EMBO J.2006,25(3),522−532)と協働する。これらの酵素は、プレmiRNAヘアピンの基部にある3’側2ヌクレオチドオーバーハングに結合して末端ループを取り除き、両末端が5’一リン酸、3’2ヌクレオチドオーバーハング及び3’ヒドロキシル基を有する約21ntのmiRNA二重鎖中間体をもたらす。次に、その5’末端の安定性がエネルギー的に低いmiRNAガイド鎖がRISC(RNA誘導サイレンシング複合体)への取り込みに選択され、一方「パッセンジャー」鎖は遊離して分解される(Maniataki et al.Genes.Dev.2005,19(24),2979−2990;Hammond et al.Nature 2000,404(6775),293−296)。RISCの組成は未だ完全には定義付けられていないが、重要な要素がアルゴノート(Ago)タンパク質ファミリーのメンバーである(Maniataki et al.;Meister et al.Mol.Cell.2004,15(2),185−197)。
次には成熟miRNAがRISCを相補mRNA種に誘導する。標的mRNAが、miRNAを備えたRISCと完全な相補性を有する場合、mRNAが切断及び分解されることになる(Zeng et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2003,100(17),9779−9784;Hutvagner et al.Science 2002,297(55 89),2056−2060)。しかし哺乳類細胞における最も一般的な状況としては、miRNAは不完全な相補性のmRNAを標的化してそれらの翻訳を抑制することにより、対応するタンパク質の発現の低下を生じさせる(Yekta et al.Science 2004,304(5670),594−596;Olsen et al.Dev.Biol.1999,216(2),671−680)。miRNAの5’領域、特に、シード領域と呼ばれる、miRNAのヌクレオチド2〜7又は8(5’末端の1位を始点とする)におけるmiRNAと標的配列とのマッチは、miRNA標的化に本質的に重要であり、このシードマッチはまた、miRNA標的化のコンピュータ予測において広く用いられる基本原理にもなっている(Lewis et al.Cell 2005,120(1),15−20;Brennecke et al.PLoS Biol.2005,3(3),e85)。miRNA−mRNA二重鎖のmiRNA調節は、3’UTRにおける複数の相補部位によって主に媒介されるが、多くの例外がある。miRNAはまた、mRNAの5’UTR及び/又はコード領域も結合し、同様の結果をもたらし得る(Lytle et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007,104(23),9667−9672)。
RNアーゼH
RNアーゼHは、DNA/RNA二重鎖におけるRNAの3’−O−P結合を切断して3’−ヒドロキシル及び5’−リン酸末端産物を生じさせるリボヌクレアーゼである。RNアーゼHは非特異的エンドヌクレアーゼであり、酵素結合二価金属イオンの助けを借りて、加水分解機構によるRNAの切断を触媒する。RNアーゼHファミリーのメンバーは、古細菌及び原核生物から真核生物まで、ほぼ全ての生物に見られる。DNA複製の間に、RNアーゼHは、岡崎フラグメント生成のプライミングに関与するRNAプライマーを切断すると考えられている;しかしながら、RNアーゼH酵素は、より一般的には、十分な長さの任意のDNA:RNAハイブリッド配列(例えば、典型的には、哺乳動物における4塩基対長又はそれ以上のDNA:RNAハイブリッド配列)の切断に用いられ得る。
マイクロRNA及びマイクロRNA様治療薬
マイクロRNA(miRNA)は、鋳型転写物の3’UTRに結合することによって作用し、従ってその鋳型転写物によってコードされるタンパク質の発現を、古典的RNA干渉に関連する、しかしそれとは異なる機構によって阻害することが記載されている。具体的には、miRNAは、その安定性を低下させるよりむしろ、標的転写物の翻訳を低減することによって作用すると考えられる。天然に存在するmiRNAは、典型的には長さ約22ntである。これらは、低分子一時的RNA(stRNA)約70nt長として知られるより大きい前駆体に由来すると考えられる。
3’UTRの範囲内(又は標的転写物内の別の場所、例えば、例えばNotchの反復エレメント及び/又はNotchファミリーの転写物内)で結合し、翻訳を阻害するsiRNAなど、より具体的にはmiRNAなどの干渉剤は、siRNA/鋳型(miRNA/鋳型)二重鎖に多数のミスマッチを許容することができ、特に二重鎖の中心領域の範囲内におけるミスマッチを許容することができる。実際に、天然に存在するstRNAは高頻度でかかるミスマッチを呈し、インビトロで翻訳を阻害することが示されているmiRNAもまた同様であるため、一部のミスマッチは望ましい、又は必須であり得るというエビデンスがある(Zeng et al.,Molecular Cell,9:1−20)。例えば、標的転写物とハイブリダイズしたとき、かかるmiRNAは高頻度で、ミスマッチ領域によって隔てられた完全な相補性の2つのストレッチを含む。このようなハイブリダイズした複合体は、通常、ヌクレオチド対を含む完全な相補性の2つの領域(二重鎖部分)と、例えば、G:A、G:U、G:G、A:A、A:C、U:U、U:C、C:C、G:−、A:−、U:−、C:−等であり得る少なくともシングルミスマッチ塩基対とを含む。かかるミスマッチヌクレオチドは、特にタンデムに存在する場合(例えば、2、3又は4ヌクレオチドのミスマッチ範囲)にはバルジを形成することができ、これはかかるバルジの両側に位置する二重鎖部分を隔てるものであり得る。種々の構造が可能である。例えば、miRNAは複数の非一致(ミスマッチ)範囲を含み得る。非一致(ミスマッチ)範囲は、標的及びmiRNAの両方が非対合ヌクレオチドを含むという意味の対称性を有する必要はない。例えば、一方の鎖のみが非対合ヌクレオチドを含む構造が記載されている(Zeng et al.)。典型的には、miRNA剤内の完全な相補性のストレッチは、少なくとも5ヌクレオチド長、例えば、6、7ヌクレオチド長又はそれ以上であり、一方でミスマッチ領域は、例えば、1、2、3、又は4ヌクレオチド長であり得る。
一般に、任意の特定のsiRNAが、(i)標的転写物の安定性を低下させる、多くの場合にsiRNAと標的との間の完全な相補性が好ましい「古典的」siRNA経路を介すること、また(ii)標的転写物の翻訳が阻害される「代替的」経路(概して動物におけるmiRNA経路として特徴付けられる)によることの両方によって、遺伝子発現を阻害する機能を果たし得る。概して、特定のsiRNAによって機構(i)を介して標的化される転写物は、機構(ii)を介して標的される転写物と異なり得るが、単一の転写物が古典的経路及び代替的経路の両方の標的として働き得る領域を含有し得ることも可能である(用語「古典的」及び「代替的」は、単に便宜上用いられるに過ぎず、概して歴史上の動物細胞におけるかかる機構の発見のタイミングを反映するものと考えられ、いずれか一方の機構の重要性、有効性、又は他の特徴を反映するものではないことに留意されたい)。siRNA設計の一つの共通目標は、潜在的に機構(ii)を介して誘発される効果を含めたオフターゲット効果を最小限に抑えつつ、機構(i)を介して高い特異性で単一の転写物を標的化することであった。しかしながら、本発明の目標の中には、天然に存在するmiRNAの活性を模倣するため、或いは、対応するmiRNAが現在のところ知られていない標的RNAに対する薬剤を作り出すため、設計上ミスマッチ残基を有するRNA干渉剤を提供することがあり、かかるミスマッチを含有するDsiRNA剤(例えばDsiRNAmm剤)の阻害及び/又は治療効果/効力は、かかるミスマッチを許容し、実際にはかかるミスマッチによって増進する可能性がある。
miRNA剤がミスマッチヌクレオチドを許容すること(及び、実際に細胞における上記機構(ii)の存在及び天然の利用)は、機構(i)を介して作用する完全に相補的なsiRNAの「古典的」利用にとって有利な、及び/又はそれを拡大する形でのmiRNAの使用を示唆する。miRNAは天然に存在する分子であるため、miRNAを治療剤として適用することには特徴的な利点があるものと思われる。miRNAは、何億年も進化的にその機能が「微調整」されることによって恩恵を受けている。従って、配列特異的な「オフターゲット」効果が天然に存在するmiRNAで問題となることはなく、ひいては、天然に存在するmiRNAを模倣するように設計された本発明の特定の合成DsiRNA(例えば、DsiRNAmm剤)においても問題となることはないはずである。加えて、miRNAは、上方制御及び下方制御の両方を駆動して(場合によっては、細胞内で両方の機能を同時に果たし、単一のmiRNAが複数の標的RNAに対して広域的に作用して)遺伝子群の発現を調節するように進化しており、その結果、複雑な細胞機能を正確に調節できるようになっている。天然に存在するmiRNAのかかる置換は、正常な増殖、アポトーシス、細胞周期、及びその他の、1つ以上のmiRNAの下方制御によって影響を受けている細胞機能を回復させる目的で、罹患組織に合成miRNA又はmiRNA模倣体(例えば、特定のDsiRNAmm)を導入することを伴い得る。特定の例では、これらのmiRNA調節経路の再活性化によって有意な治療反応が生じている(例えば、心肥大に関するある研究では、miRNA発現カセットのアデノウイルス媒介送達によってmiR−133を過剰発現させると、アゴニスト誘発性心肥大から動物が保護された一方、アンタゴmirによる野生型マウスのmiR−133の相反的な低下によって肥大マーカーの増加が生じた(Care et al.Nat.Med.13:613−618))。
現在まで、600個を超えるmiRNAが、ヒトゲノム内でコードされるものとして同定されており、かかるmiRNAは核及び細胞質内のタンパク質の組み合わせによって発現し、プロセシングされる。miRNAは脊椎動物の間で高度に保存されており、全哺乳類遺伝子の約2%を占める。各miRNAが複数の、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9個又は更には数十〜数百個の異なる遺伝子の発現を調節するものと見られるため、miRNAは「マスタースイッチ」として機能して、複数の細胞経路及び過程を効率的に調節し、連係させることができる。miRNAは、複数の遺伝子の発現を連係させることにより、胚発生、免疫、炎症、並びに細胞の成長及び増殖において重要な役割を果たす。
発現及び機能研究から、特定のmiRNAの発現の変化が種々のヒト疾患に決定的に重要であることが示唆される。増大しつつあるエビデンスが示すところによれば、特定のmiRNAを疾患細胞及び組織に導入することにより、有利な治療反応を生じさせ得る(Pappas et al.,Expert Opin Ther Targets.12:115−27)。ある種のmiRNAは腫瘍抑制因子としての役割が明らかであるため、miRNA療法の有望さは恐らく癌において最も高い。miRNAベースの療法の例えば癌に対する理論的根拠は、少なくとも一部には、以下の観察によって裏付けられる。
(1)miRNAは罹患組織では正常組織と比べて高頻度で誤制御され、発現レベルが変化する。幾つもの研究が、対応する正常組織と比べた癌性組織におけるmiRNAレベルの変化を明らかにしている。多くの場合、発現の変化は、特定のmiRNAの発現の増加又は低下につながる遺伝子突然変異の結果である。ユニークなmiRNA発現シグネチャを有する疾患は診断及び予後判定マーカーとして利用することができ、本発明のDsiRNA(例えば、DsiRNAmm)剤によって標的化することができる。
(2)誤制御されたmiRNAは、癌遺伝子又は腫瘍抑制因子として機能することによって癌の発育に寄与する。癌遺伝子は、その過剰発現又は不適切な活性化が発癌につながる遺伝子として定義される。腫瘍抑制因子は、細胞が癌性になるのを防ぐために必要な遺伝子である;腫瘍抑制因子の下方制御又は不活性化は、よく見られる癌誘導因子である。両タイプの遺伝子とも好ましい薬物標的に相当し、従って標的化することは、特定の癌の分子基盤に対して特異的に作用し得る。発癌性miRNAの例はmiR−155及びmiR−17−92であり;let−7は腫瘍抑制性miRNAの例である。
(3)前臨床動物試験においては、miRNAを投与すると、腫瘍成長の阻止又は低減によって治療反応が生じる。科学文献は、インビトロで、及び動物モデルにおいてもまた、miRNA機能の回復によって癌細胞の成長を防止又は低減し得ることを実証する概念実証研究を提供する。十分に特徴付けられた例は、乳癌及び肺癌モデルにおけるlet−7の抗腫瘍活性である。let−7を模倣するように設計された本発明のDsiRNA(例えば、DsiRNAmm)を使用してかかる癌を標的化することができ、また、本明細書に記載されるDsiRNA設計パラメータを使用して、対応する天然に存在するmiRNAが知られていない標的RNA(例えば、Notch又は他の転写物内のリピート)に対する新規DsiRNA(例えば、DsiRNAmm)剤を作成し、リード治療化合物、例えば、前臨床動物モデルで腫瘍量を低減することが可能な薬剤をスクリーニングすることも可能である。
(4)所与のmiRNAが複数の細胞経路を制御し、従って優れた治療活性を有し得る。その生物学に基づけば、miRNAはゲノムの「マスタースイッチ」として機能して、複数の遺伝子産物を調節し、複数の経路を連係させることができる。miRNAによって調節される遺伝子は、多くが製薬業界によって個々に薬物標的として探究されている従来の癌遺伝子及び腫瘍抑制因子をコードする遺伝子を含む。従って、miRNA療法薬は、複数の疾患及び/又は癌関連遺伝子を標的化することにより、siRNA及び他の形態のリード化合物よりも優れた活性を有し得る。miRNAの誤調節が高頻度で腫瘍発生プロセスの初期イベントであるという観察を所与とすれば、欠損したmiRNAを補充するmiRNA療法薬は、最適な療法であり得る。
(5)miRNAは天然の分子であり、従って非特異的副作用を誘発しにくい。何百万年にもわたる進化が、miRNAの調節ネットワークの発達を助け、miRNAと標的メッセンジャーRNAとの相互作用を微調整してきた。従って、miRNA及びmiRNA誘導体(例えば、天然に存在するmiRNAを模倣するように設計されたDsiRNA)が適切なコンテクストで適用されたときの配列特異的「オフターゲット」効果は、例えあったとしても、僅かであり得る。
siRNA及びmiRNAの物理的特徴は類似している。従って、siRNA(例えば、本発明のDsiRNA)の送達に有効な技術は、合成miRNA(例えば、本発明の特定のDsiRNAmm)の送達においても同様に有効である。
dsNA剤のコンジュゲーション及び送達
特定の実施形態において、本発明は、疾患又は障害を有する又はそれを発症するリスクがある対象の治療方法に関する。かかる実施形態において、dsNAは、疾患又は障害を制御する新規治療剤として作用し得る。本方法は、患者(例えばヒト)に本発明の医薬組成物を投与して、標的RNAの発現、レベル及び/又は活性を低減することを含む。標的RNAによってコードされるポリペプチドの発現、レベル及び/又は活性もまた、本発明のDsNAによって低減し得る。
疾患又は障害の治療においては、疾患又は障害を呈するか、又はそれに関連する細胞又は組織に、DsiRNAを接触させることができる。例えば、標的RNA配列の全て又は一部と実質的に同一のDsNAをインビボ又はインビトロのいずれかで罹患細胞、疾患関連細胞又は感染細胞に接触させ、又は導入してもよい。同様に、標的RNA配列の全て又は一部と実質的に同一のDsNAを、疾患又は障害を有する又はそれを発症するリスクがある対象に直接投与してもよい。
本発明のDsNA剤の治療使用は、複数の異なるDsNA剤配列を含むDsNA剤の製剤の使用を伴うものであり得る。例えば、本明細書に記載される薬剤の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上等を組み合わせて、例えば、1つ以上の標的RNAの複数の異なる領域を標的化する製剤を作製することができる。本発明のDsNA剤はまた、DsNA剤のいずれか一方の鎖が独立に標的RNAの2つ以上の領域を標的化するように構築されてもよい。標的核酸分子の2つ以上の領域を標的化する多官能性DsNA分子の使用は、RNAレベル及び発現の強力な阻害をもたらすものと思われる。例えば、本発明の単一の多官能性DsNAコンストラクトは、標的核酸分子の保存されている領域及び可変的な領域の両方を標的化することができ、従って、例えば、ウイルスの異なる株変異体、又は単一の標的遺伝子によってコードされるスプライス変異体を下方制御又は阻害することが可能である。
本発明のDsNA剤は、別の部分(例えばペプチドなどの非核酸部分)、有機化合物(例えば、色素、コレステロールなど)とコンジュゲート(例えば、そのセンス鎖又はアンチセンス鎖のその5’又は3’末端に)していても、又はコンジュゲートしていなくてもよい。このようにしてDsNA剤を修飾すると、対応する非コンジュゲートDsNA剤と比較したとき、得られるDsNA剤誘導体の細胞取り込みを改善し、又は細胞標的化活性を増強することができ、細胞内のDsNA剤誘導体を追跡するのに有用であり、又は対応する非コンジュゲートDsNA剤と比較してDsNA剤誘導体の安定性が改善される。本発明のdsNAは、GalNAc、葉酸塩、コレステロール、マンノース−6−リン酸にコンジュゲートされる。一実施形態において、本発明の単一のdsNAは、2つ以上のGalNAc分子及び2つ以上の葉酸塩分子及び2つ以上のコレステロール分子及び2つ以上のマンノース−6−リン酸分子又は全ての任意の組み合わせを含む。
GalNAcリガンドは、ヌクレオシド単量体の核酸塩基(即ち実施例6に示されるとおりチミジンのC5位置)に付加し得るのみならず、リンカーで2’−OH(又は3’−OH)を介してリボース糖にもまた付加し得る。コンジュゲーション部位としての2’−OHは、テトラループDsiRNAの場合に特に有用であり、なぜならループの4つのヌクレオチドの2’−OHは溶媒に露出し、その結晶構造に基づいた安定したループの形成に必要な水素結合及び塩基スタッキングに関与しないためである。
様々なリンカーを使用してリガンドを本発明のdsNA剤にコンジュゲートし得る。当該技術分野で広く用いられているリンカーを使用してリガンドをdsNA分子にコンジュゲートすることができ、それらのリンカーの幾つかを表4及び表5に例示する。リガンドとdsNA分子とのコンジュゲーションには、これらのリンカーのいずれを用いてもよい。
詳細には、アセタールリンカーを使用したdsNA剤が、クリックリンカーに匹敵するインビトロ細胞及びインビボ標的化及びノックダウン効力を実証した。リンカーを2’−OHに導入するために用いられるアセタール化学は、従来のアルキル化条件と比較してはるかに穏やかである;従って、2’位への選択的なコンジュゲーションが可能となる。これにより、時間のかかる2’及び3’異性体の混合物の分離をしなくて済み、収率が大幅に改善される。
RNAiインビトロアッセイによるDsiRNA活性の評価
任意選択で、無細胞系においてRNAiを再現するインビトロアッセイを用いてdsNAコンストラクトを評価することができる。例えば、かかるアッセイは、標的RNAに対するdsNA剤での使用に適合させた、Tuschl et al.,1999,Genes and Development,13,3191−3197 and Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33によって記載されるシステム、及びTurbo Dicer(Genlantis)を含めた市販のキットを含む。シンシチウム胚盤葉に由来するショウジョウバエ抽出物を使用して、インビトロでRNAi活性を再構成する。標的RNAは、T7 RNAポリメラーゼを用いた適切なプラスミドからのインビトロ転写によるか、又は化学合成によって作成する。緩衝液(100mM酢酸カリウム、30mM HEPES−KOH、pH7.4、2mM酢酸マグネシウムなど)中において90℃で1分間、続いて37℃で1時間インキュベートすることにより、センス及びアンチセンスdsNA鎖(例えば各20uM)をアニールし、次に溶解緩衝液(例えば100mM酢酸カリウム、pH7.4の30mM HEPES−KOH、2mM酢酸マグネシウム)に希釈する。アニーリングは、TBE緩衝液中アガロースゲル上でゲル電気泳動し、臭化エチジウムで染色することによってモニタし得る。絨毛膜を除去して溶解させた、発酵糖蜜寒天に収集したOregon Rハエの受精後0〜2時間の胚を使用して、ショウジョウバエのライセートを調製する。このライセートを遠心し、上清を単離する。アッセイは、50%ライセート[vol/vol]とRNA(10〜50pM最終濃度)とdsNA(10nM最終濃度)を含有する10%[vol/vol]溶解緩衝液とを含有する反応混合物を含む。この反応混合物はまた、10mMクレアチンリン酸、10ug/mlクレアチンホスホキナーゼ、100um GTP、100uM UTP、100uM CTP、500uM ATP、5mM DTT、0.1U/uL RNasin(Promega)、及び100uMの各アミノ酸も含有する。酢酸カリウムの最終濃度は100mMに調整する。この反応物を氷上で予めアセンブルし、25℃で10分間プレインキュベートした後、RNAを加え、次に25℃で更に60分間インキュベートする。4容積の1.25×Passive Lysis緩衝液(Promega)で反応をクエンチする。標的RNA切断をRT−PCR解析又は当該技術分野において公知の他の方法によってアッセイし、反応からDsiRNAが省かれている対照反応物と比較する。
或いは、内部標識したアッセイ用標的RNAを[α−32P]CTPの存在下でのインビトロ転写によって調製し、スピンクロマトグラフィーによってG50 Sephadexカラムに通し、更なる精製なしに標的RNAとして使用する。任意選択で、標的RNAは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ酵素を使用して5’−32P末端標識される。上記に記載したとおりアッセイを実施し、標的RNA及びRNAiによって生じた特異的RNA切断産物をゲルのオートラジオグラフ上に可視化する。インタクトな対照RNA又はdsNAのない対照反応からのRNA及びアッセイによって生じた切断産物に相当するバンドのPHOSPHOR IMAGER(登録商標)(オートラジオグラフィー)定量化により、切断率を決定する。
本発明の二本鎖核酸分子(dsNA)組成物がタンパク質合成を阻害する能力は、当該技術分野において公知の技法を用いて、例えば、遺伝子転写又はタンパク質合成の阻害を検出することにより、計測することができる。標的RNAのレベル又は活性は、当該技術分野において現在公知の、又は今後開発される任意の好適な方法によって決定することができる。標的RNA及び/又は標的RNAの発現の計測に用いられる方法が、標的RNAの性質に依存するであろうことは理解され得る。例えば、標的RNAがタンパク質をコードする場合、用語「発現」は、標的RNAに由来するタンパク質又はRNA/転写物を指し得る。そのような場合、標的RNAの発現は、標的RNAに対応するRNAの量を計測することによるか、又は当該タンパク質の量を計測することによって決定し得る。タンパク質は、染色法若しくは免疫ブロット法によるか、又はタンパク質が計測可能な反応を触媒する場合には反応速度を計測することによるなど、タンパク質アッセイで計測することができる。かかる方法はいずれも当該技術分野において公知であり、用いることができる。標的RNAレベルを計測する場合、RNAレベルの検出に当該技術分野で認められている任意の方法(例えば、RT−PCR、ノーザンブロット法等)を用いることができる。本発明のdsNA剤でウイルスRNAを標的化する際にはまた、対象、組織、インビトロ或いはインビボでの細胞、又は細胞抽出物における標的ウイルスレベルの低減におけるdsNA剤の有効性の計測もまた、標的ウイルスRNAレベルの低減の程度の決定に用い得ることも予想される。細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物又は任意の他の好適な供給源材料に対し、上記の計測のいずれを行うこともできる。
ヌクレアーゼ耐性アッセイ
dsNA分子のヌクレアーゼ耐性は、50mMトリス−HCl、pH8.5、72mM CaCl、及び14mM MgCl2の緩衝液、最終容積50μl中5×10−3単位/mlのヘビ毒ホスホジエステラーゼ(U.S.Biochemical Corp.)を使用して、0.1μMオリゴヌクレオチドでアッセイする。Bal31ヌクレアーゼアッセイについては、20mMトリス−HCl、pH7.5、10mM NaCl、5mM CaCl2、5mM MgCl2、5mM EDTAの緩衝液(最終容積=100μl)中2×10−3単位/ml Bal31ヌクレアーゼ(Boehringer Mannheim)を使用して、0.1μMオリゴヌクレオチドでdsNA分子のヌクレアーゼ安定性をアッセイする。いずれのヌクレアーゼアッセイについても、指示された時点で5μl反応アリコートを取り出し、ブロムフェノールブルー及びキシレンシアノールゲル追跡用色素を含有する等容積の80%ホルムアミドに添加し、次に95℃で2分間加熱する。次にアリコートを変性ポリアクリルアミド電気泳動法による分析まで−20℃で保管する。定量化は、Molecular Dynamics PhosphorImager(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で実施する。同じプロトコルをリソソーム抽出物及びエンドソーム抽出物で繰り返して、リソソーム環境に対するdsNA分子のヌクレアーゼ耐性を模擬することができる。
細胞取り込みアッセイ
細胞取り込み実験は、Ts’o et al.,Cell−Type Specific and Ligand Specific Enhancement of Cellular Uptake of Oligodeoxynucleoside−Methylphosphonates Covalently Linked with a Neoglycopeptide,YEE(ah−Ga1NAc)s ,Bioconjugate Chem.1995,6,695−701に記載されるプロトコルに従い実施した。
核酸、ベクター、及び宿主細胞の導入方法
本発明のDsNA剤は、細胞へと直接(即ち細胞内に)導入されてもよく;又は細胞外の空洞、間質腔の中、生物の循環中に導入されても、経口的に導入されてもよく、若しくは核酸を含有する溶液浴に細胞又は生物を入れることによって導入されてもよい。血管循環又は血管外循環、血液又はリンパ系、及び脳脊髄液は、核酸を導入し得る部位である。
本発明のDsNA剤は、核酸を含有する溶液の注入、核酸によって被覆された粒子のボンバードメント、核酸の溶液中への細胞又は生物の浸漬、又は核酸の存在下における細胞膜の電気穿孔を含め、当該技術分野において公知の核酸送達方法を用いて導入することができる。脂質媒介担体輸送、化学媒介輸送、及びリン酸カルシウムなどのカチオン性リポソームトランスフェクションなど、核酸を細胞に導入するための当該技術分野において公知の他の方法を用いてもよい。核酸は、以下の活性、即ち細胞による核酸取り込みの向上又は他の形での標的RNAの阻害増加の1つ以上を果たす他の成分と共に導入し得る。
標的RNAを有する細胞は、生殖細胞系列又は体細胞、全能性又は多能性細胞、分裂又は非分裂細胞、実質又は上皮細胞、不死化又は形質転換細胞などであり得る。細胞は幹細胞又は分化細胞であってもよい。分化している細胞型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮細胞、ニューロン、グリア、血球細胞、巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、白血球、顆粒球、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞、及び内分泌腺又は外分泌腺の細胞が挙げられる。
詳細な標的RNA配列及び送達されるDsNA剤材料の用量に応じて、この過程は標的RNAの部分的又は完全な機能喪失をもたらし得る。標的細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%又はそれ以上におけるRNAレベル又は発現(RNA発現又はコードされたポリペプチド発現のいずれも)の低下又は損失が、典型的である。標的RNAレベル又は発現の阻害とは、RNA又はRNAによってコードされるタンパク質のレベルが存在しないこと(又はその観察可能な低下)を指す。特異性とは、細胞の他の遺伝子に対する効果を示すことなく標的RNAを阻害する能力を指す。阻害の結果は、細胞又は生物の外面的な特性(以下で例に示すとおり)を調べることによるか、又はRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ、及び蛍光活性化細胞分析(FACS)などの生化学的技法によって確認することができる。本発明のDsNA剤による1つ又は複数の標的RNA配列の阻害はまた、癌治療についての腫瘍サイズ、ウイルス感染症についてのウイルス負荷/力価など、計測可能な表現型に対するかかるDsNA剤の投与効果に基づきインビボ又はインビトロのいずれかで計測することもできる。ウイルス感染症に関しては、ウイルス負荷又は力価の低下には、例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%又はそれ以上の低下が含まれてもよく、多くの場合に対数単位で計測され、例えば、本発明のDsNA剤を細胞、組織、又は対象に投与することによって、ウイルス負荷又は力価の10倍、100倍、1000倍、105倍、106倍、107倍の低下が実現し得る。
細胞株又は全生物におけるRNA媒介阻害に関しては、タンパク質産物のアッセイが容易なレポーター又は薬剤耐性遺伝子の発現を計測することができる。かかるレポーター遺伝子としては、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(glucoronidase)(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)、及びこれらの誘導体が挙げられる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択可能なマーカーが利用可能である。アッセイによっては、遺伝子発現量の定量化により、本発明による処理のない細胞と比較したとき10%、33%、50%、90%、95%又は99%より高い阻害程度を決定することが可能となる。
注入材料の用量が低く、及びRNAサイレンシング剤投与後の時間が長いほど、阻害される細胞の割合が低くなり得る(例えば、標的細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%、又は95%)。細胞における遺伝子発現の定量化は、標的RNAの蓄積レベル又は標的タンパク質の翻訳レベルで同程度の阻害量を示し得る。例として、阻害効率は、細胞における遺伝子産物の量を評価することにより決定してもよく;阻害性DsNAに用いられる領域外のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブでRNAを検出してもよく、又は当該領域のポリペプチド配列に対して産生される抗体で翻訳後のポリペプチドを検出してもよい。
DsNA剤は、細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能にする量を導入し得る。材料の用量が高いほど(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)、より有効な阻害が生じ得る;また、特定の適用には、低い用量が有用となることもある。
RNA干渉に基づく療法
周知のとおり、RNAi法は、多種多様な生物の多種多様な遺伝子に適用可能であり、これらのコンテクストの各々で本開示の組成物及び方法を利用することができる。本開示の組成物及び方法によって標的化し得る遺伝子の例としては、細胞にとって天然である遺伝子である内因性遺伝子又は細胞にとって通常天然でない遺伝子が挙げられる。限定なしに、これらの遺伝子には、癌遺伝子、サイトカイン遺伝子、イディオタイプ(Id)タンパク質遺伝子、プリオン遺伝子、血管新生を誘導する分子を発現する遺伝子、接着分子、細胞表面受容体、転移に関与するタンパク質、プロテアーゼの遺伝子、アポトーシス遺伝子、細胞周期調節遺伝子、EGF及びEGF受容体を発現する遺伝子、MDR1遺伝子などの多剤耐性遺伝子が含まれる。
より具体的には、本発明の標的mRNAは、細胞タンパク質(例えば、核タンパク質、細胞質タンパク質、膜貫通タンパク質、又は膜結合タンパク質)のアミノ酸配列を指定し得る。別の実施形態において、本発明の標的mRNAは、細胞外タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質又は分泌タンパク質)のアミノ酸配列を指定し得る。本明細書で使用されるとき、タンパク質の「アミノ酸配列を指定する」という語句は、mRNA配列が遺伝子コードの規則に従いアミノ酸配列に翻訳されることを意味する。例示を目的として、以下のタンパク質クラスを列挙する:発生タンパク質(例えば、接着分子、サイクリンキナーゼ阻害薬、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、ウィングドヘリックスファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンホカイン及びこれらの受容体、成長/分化因子及びこれらの受容体、神経伝達物質及びこれらの受容体);癌遺伝子によってコードされるタンパク質(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIM I、PML、RET、SRC、TALI、TCL3、及びYES);腫瘍抑制因子タンパク質(例えば、APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NF I、NF2、RB I、TP53、及びWTI);及び酵素(例えば、ACCシンターゼ及びオキシダーゼ、ACPデサチュラーゼ及びヒドロキシラーゼ、ADP−グルコースピロホスホリラーゼ(glucose pyrophorylase)、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、カルコンシンターゼ、キチナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ(dextriinase)、DNA及びRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、顆粒結合デンプン合成酵素、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、ヘミセルラーゼ(hernicellulase)、インテグラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、フィターゼ、植物成長調節物質合成酵素、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼ及びペプチダーゼ、プルラナーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、RUBISCO、トポイソメラーゼ、及びキシラナーゼ)。
一態様において、本発明の標的mRNA分子は、病理学的状態に関連するタンパク質のアミノ酸配列を指定する。例えば、タンパク質は、病原体関連タンパク質(例えば、宿主の免疫抑制、病原体の複製、病原体の伝染、又は感染の維持に関与するウイルスタンパク質)、或いは宿主への病原体の侵入、病原体若しくは宿主による薬物代謝、病原体ゲノムの複製若しくは組み込み、宿主における感染の確立若しくは伝播、又は次世代の病原体の集合を促進する宿主タンパク質であり得る。病原体としては、RNAウイルス、例えば、フラビウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、レトロウイルス、例えばレンチウイルス、又はDNAウイルス、例えば、アデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、ヘパドナウイルスなどが挙げられる。更なる病原体としては、細菌類、真菌類、蠕虫類、住血吸虫及びトリパノソーマ類が挙げられる。他の種類の病原体としては、哺乳類転移因子を挙げることができる。或いは、タンパク質は、腫瘍関連タンパク質又は自己免疫疾患関連タンパク質であり得る。
標的遺伝子は任意の生物に由来し、又はそれに含まれてもよい。生物は、植物、動物、原虫、細菌、ウイルス又は真菌であり得る。例えば、米国特許第6,506,559号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
dsNA分子の安定性プロファイル、薬物動態(pharamacokinetics)、細胞標的化能力及び体内分布特性は、限定はされないが、Rice et al.(In vivo targeting function of N−linked oligosaccharides with terminating galactose and N−acetylgalactosamine residues,Chiu MH,Tamura T,Wadhwa MS,Rice KG,J Biol Chem.1994 Jun 10;269(23):16195−202)によって教示されるプロトコルに基づく方法を含めた、当該技術分野において公知の好適な方法によって評価される。125I(ヨウ化ナトリウム)、Sephadex G−10、クロラミンT、メタ重亜硫酸ナトリウム、ヘパリン、BSA、HEPES、コラゲナーゼ、塩酸ケタミン、キシラジン塩酸塩(xylazine hydrocholoride)及びICRマウスは、商業的供給業者から入手される。
dsNA分子の放射標識
GalNac、コレステロール、葉酸塩又はマンノース−6−リン酸などのリガンドにコンジュゲートした本発明のdsNA分子を、Rice et al.によって記載される手順を用いて125Iで標識する。放射性ヨウ素化dsNAをSephadexG−10カラム(0.8×25cm)でクロマトグラフィーにかけ、0.15M塩化ナトリウム(pH7.0)で溶出し、0.5ml画分に収集する。例えばGalNAcリガンドを含む各ヨウ素化dsNAの純度を、薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートの原点に1μl(2nCi)をスポッティングすることによって分析し、各dsNAに最適化した比の酢酸エチル:酢酸:ピリジン:水で展開する。室温にて12時間オートラジオグラフィーで露光した後、Phosphor Imager(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)で定量的デンシトメトリーを実施する。ImageQuantソフトウェア(Molecular Dynamics,Sunnyvale,CA)を使用してデンシトメトリートレースを積分し、各ヨウ素化オリゴヌクレオチドについて>95%純度を確立する。
dsNA分子のインビトロ安定性アッセイ
各放射性ヨウ素化オリゴ糖(1.5μl、75nCi)を100μlのヘパリン添加全マウス血液に添加し、37℃でインキュベートする。10、20、及び30分及び1、2、3、4、5、及び6時間でタイムポイント(10μl)を取り出し、上記に記載したとおりTLC及び定量的オートラジオグラフィーを用いて分析する。
薬物動態分析
3〜4匹のマウスでdsNAの薬物動態を実施する。マウスを麻酔し、デュアル頸静脈カニューレ挿入を実施する。GalNAcリガンドを有するdsNAを左静脈に投与する一方、1、3、6、10、15、20、30、40、及び60分で右静脈から血液タイムポイントを取る。ダイレクトγ−カウントによって経時的血液タイムポイントを分析し、その後、60μlの水及び200μlのアセトニトリルを添加することにより、血液からdsNAを抽出する。10分間(13,000×g)の遠心によってタンパク質を沈殿させて、
式1.Cb=Ae−αt+Be−βt
及び50μlの80v/v%アセトニトリルでペレットを2回洗浄すると、80%の放射能の回復が得られる。抽出物を合わせ、Centra−Vapにおいて減圧下で蒸発乾固させ、3μlの水中に再構成する。1μlをTLCプレートにスポッティングし、次にそれを展開して上記に記載したとおりオートラジオグラフィーにかけることにより、各タイムポイントを分析する。各オリゴ糖のトリプリケートデータセットの時間に対するダイレクト血液カウントから薬物動態パラメータを導き出し、次に平均して、平均値及び標準偏差を求める。PCNONLIN(SCI Software,Lexington,KY)で積分式1によって記述される2コンパートメントオープンモデルを用いて、個々のデータセットの繰り返し非線形最小二乗法フィットを達成する。
Cbは、オリゴ糖の血中濃度である。A及びBは定数であり、α及びβは、血漿濃度対時間プロファイルにおける急速減衰相及び緩速減衰相の傾きを特徴付ける混成一次速度定数である。平均滞留時間(MRT)は、式2に従い計算される:
平均滞留時間(MRT)は、オリゴ糖がマウス体内にあった平均時間である(Riegelman and Collier,J.Pharmacokinet.BioPharm.8,509−534,1980)。全身クリアランス(Cltb)は式3を用いて計算され、定常状態時の分布容積(Vdss)は式4に従い計算される(Benet and Galeazzi,J.Pharm.Sci,68,1071−1074,1979)。
式4 Vdss=CLtb*MRT
全身オートラジオグラフィー
本発明のdsNAの標的化及び/又は体内分布は、以下に記載される方法を含めた、当該技術分野において公知の好適な方法によって決定される。
塩酸ケタミン(100mg/kg)及び塩酸キシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によってマウスを麻酔する。右頸静脈にシングルシラスティックカテーテルを挿入し、GalNAcリガンドを有する放射性標識dsNA(0μl、7μCi、生理食塩水中)の静脈内ボーラス用量を投与し、その後、カテーテルを取り外し、静脈を結紮する。30分後、フェノバルビタール(100mg/kg)の致死注射によってマウスを安楽死させる。犠牲後直ちに、マウスをヘキサンドライアイス浴(−70℃)に5分間浸し、4%(w/v)カルボキシメチルセルロースブロックにマウントし、次にそれを−20℃に冷却する。−15℃の温度でクライオミクロトーム(LKB 2250、スウェーデン)でマウスの正中線に近接して25μmの縦断切片を切り出す。これらの切片を粘着テープ(Scotch 810,3M Co.,Minneapolis,MN)で収集し、−15℃で24時間脱水し、次にPhosphor Imagerを用いてオートラジオグラフィーに48時間かける。
dsNAの体内分布アッセイ
上記に記載したとおりマウスを麻酔し、続いてシングルカニューレを右頸静脈に挿入する。dsNA(15μl、2μCi、生理食塩水中)を静脈内投与し、30分間体内分布させた後、頸椎脱臼によってマウスを犠牲にする。主要な器官(肝臓、肺、脾臓、胃、腎臓、心臓、大腸、及び小腸)を採取し、生理食塩水でリンスし、ダイレクトγカウントによって全放射能を計測した。放射能レベルが分布範囲の指標となり、dsNA分子が高濃度化している組織はどれかを決定することが可能になる。
細胞標的化及び送達
上記に記載するアッセイに基づく最適体内分布時間を選択し、dsNA分子の注入を分析する。全身オートラジオグラフィー分析では、全ての組織をスクリーニングして主要な体内分布部位を同定することが可能である。解剖した組織のダイレクトγカウントを用いて全身オートラジオグラフィーによる観察結果を確認する。定量的体内分布解析を用いて、GalNAcリガンドを有するdsNA分子の肝臓標的化効率を決定する。肝非実質細胞と肝実質細胞との放射線量比から、dsNAの細胞標的化が確立される。
結合親和性アッセイ:
結合親和性は、当該技術分野で十分に確立された幾つかの方法によって計測される。結合親和性の計測方法の一つは、実施例20に示されるとおりの蛍光偏光による。同様に用いられる別の方法は、Seth et al(Targeted delivery of antisense oligonucleotides to hepatocytes using triantennary N−acetyl galactosamine improves potency 10−fold in mice,Nucleic Acids Res.2014 Jul;42(13):8796−807.)によって教示されている。
マウス初代肝細胞(100nmol AGP)における競合アッセイ用のα1−酸性糖タンパク質(AGP)の脱シアル化及び125I標識を、1Uノイラミニダーゼアガロースを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)中37℃で16時間インキュベートする。シアル酸アッセイ又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のいずれかによって脱シアル化を確認する。一塩化ヨウ素を用いたヨウ素化を、Atsma et al(Atsma D.E.,Kempen H.J.,Nieuwenhuizen W.,van‘t Hooft ,F.M.,Pauwels E.K.,Partial characterization of low density lipoprotein preparations isolated from fresh and frozen plasma after radiolabeling by seven different methods.J.Lipid Res.1991;32:173−181)によって記載されるとおり達成する。1ミリリットルの脱シアル化α1−酸性糖タンパク質(de−AGP、1mg/ml)及び0.25M NaOH(pH10)中の1Mグリシン0.2mlを、0.25M NaOH(25μl/mgタンパク質)中10mM塩化ヨウ素溶液(7μl/mgタンパク質)、Na125I(2.5μl/mgタンパク質)及び1Mグリシンの混合物に添加する。室温で10分間インキュベートした後、3kDa MWCOスピンカラムを使用して混合物を2回濃縮することにより、125I標識de−AGPを遊離125Iと分離する。Agilent SEC−3カラム(7.8×300mm)及びβ−RAMカウンターを備えたHPLCシステムで標識効率及び純度に関してタンパク質を試験する。
125I標識de−AGP及びGalNAcリガンドを有するdsNAを利用した競合実験を以下のとおり実施する−単離したばかりのマウス肝細胞(106細胞/ml)を6ウェルプレートの2mlの適切な成長培地中にプレーティングする。10%ウシ胎仔血清(FBS)、1×非必須アミノ酸及び1×ピルビン酸ナトリウムを含有するウィリアム培地で初代肝細胞を培養する。細胞を37℃、それぞれ5%及び10%CO2で16〜20時間インキュベートする。次に、実験に先立ち細胞をFBS不含培地で洗浄する。細胞を、2%FBS、10−8M 125I標識de−AGP及び10−11〜10−5Mの範囲の濃度のGalNAc含有dsNAを含む適切な成長培地を含有する1ml競合混合物と共に37℃で30分間インキュベートする。10−2M GalNAc糖の存在下で非特異的結合を決定する。細胞をFBS不含培地で2回洗浄して未結合の125I標識de−AGP及び競合GalNAc−dsNAを除去する。1%β−メルカプトエタノールを含有するQiagenのRLT緩衝液を使用して細胞を溶解する。ライセートを短い10分間凍結融解サイクル後に丸底アッセイチューブに移し、γ−カウンターでアッセイする。非特異的結合を減じた後、125Iタンパク質カウントを最も低いGalNAc−dsNA濃度カウントの値で除す。非線形回帰アルゴリズムを用いてシングルサイト競合結合式に従い阻害曲線をフィッティングする。
免疫原性アッセイ
合成siRNA二重鎖は、哺乳動物における全身投与後及び初代ヒト血液細胞培養物において高レベルの炎症性サイトカイン及びI型インターフェロン、詳細にはインターフェロン−αを誘導することができる。免疫原性レベルは、上記に記載したとおり種々の濃度の目的のdsNA分子の投与前及び投与後にインターフェロン−αの量を計測することによって決定される。合成ポリ(I:C)(Sigma−Aldrich)を使用して、陽性対照としてのPBMCにおける免疫応答を誘発する。24時間のインキュベーション後、培養上清を収集し、供給業者の指示に従いサンドイッチELISA(Invitrogen)によってINF−αをアッセイする。
医薬組成物
特定の実施形態において、本発明は、本発明のDsNA剤を含む医薬組成物を提供する。dsNA剤試料は、好適に製剤化して、遺伝子サイレンシングが起こるべきである場合にそれを誘導するのに十分な分量の試料を細胞に入らせることが可能な任意の手段によって細胞の環境中に導入することができる。dsNAの多くの製剤が当該技術分野において公知であり、dsNAが作用できるように標的細胞に入り込める限り、使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2004/0203145 A1号明細書及び同第2005/0054598 A1号明細書を参照のこと。例えば、本発明のDsNA剤は、リン酸緩衝生理食塩水溶液などの緩衝溶液、リポソーム、ミセル構造、及びカプシドに製剤化することができる。カチオン性脂質を用いたDsNA剤の製剤を使用すると、細胞へのDsNA剤のトランスフェクションを促進することができる。例えば、リポフェクチンなどのカチオン性脂質(米国特許第5,705,188号明細書)、カチオン性グリセロール誘導体、及びポリリジンなどのポリカチオン分子(国際公開第97/30731号パンフレット)を使用することができる。好適な脂質としては、Oligofectamine、Lipofectamine(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.,Boulder,Colo.)、又はFuGene 6(Roche)が挙げられ、これらは全て、製造者の指示に従い使用することができる。
かかる組成物は、典型的には核酸分子と薬学的に許容可能な担体とを含む。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容可能な担体」には、医薬品投与に適合した、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。補助活性化合物もまた、組成物に配合することができる。
医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、又は皮下適用に用いられる溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝液及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張化剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は複数用量バイアルに封入することができる。
注射用途に好適な医薬組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調合用の滅菌粉末が挙げられる。静脈内投与について、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。いずれの場合にも、組成物は無菌でなければならず、易注射針通過性が存在する程度に流動性があるべきである。組成物は製造及び保管条件下で安定しているべきであり、細菌類及び真菌類などの微生物の汚染作用を防ぐものでなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール(polyetheylene glycol)など)、及びこれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトール、及び塩化ナトリウムなど、糖類、多価アルコール類を組成物に含めることが好ましいであろう。吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めると、注射用組成物の持続的吸収をもたらすことができる。
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に、必要に応じて上記に挙げた一つの成分又は成分の組み合わせと共に、所要量の活性化合物を配合し、続いて滅菌ろ過することによって調製し得る。概して、分散液は、塩基性分散媒及び上記に挙げたものからの必要な他の成分を含有する無菌媒体中に活性化合物を配合することによって調製される。滅菌注射用溶液の調製用滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥によって活性成分+任意の追加的な所望の成分の粉末を、予め滅菌ろ過したその溶液から生じさせることである。
経口組成物は、概して不活性希釈剤又は食用担体を含む。経口治療薬投与の目的では、活性化合物は賦形剤と共に配合して、錠剤、トローチ、又はカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物はまた、洗口剤としての使用向けの液体担体を用いて調製することもできる。組成物の一部として、薬剤適合性を有する結合剤、及び/又はアジュバント材料が含まれてもよい。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、又は同様の性質の化合物を含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;デンプン又はラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel、又はコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はSterotesなどの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料などの香味剤。
吸入による投与については、化合物は、好適な噴射剤を含む加圧容器又はディスペンサー(例えば二酸化炭素などの気体、又はネブライザー)からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。かかる方法には、米国特許第6,468,798号明細書に記載されるものが含まれる。
全身投与はまた、経粘膜的又は経皮的手段によってもよい。経粘膜又は経皮投与については、透過させようとする関門に対する適切な浸透剤が製剤中に用いられる。かかる浸透剤は当該技術分野において概して公知であり、例えば経粘膜投与には、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻腔内スプレー又は坐薬の使用によって達成することができる。経皮投与については、活性化合物は、当該技術分野において概して公知のとおり、軟膏(ointments)、軟膏(salves)、ゲル、又はクリームとして製剤化される。
化合物はまた、直腸送達用に坐薬(例えば、ココアバター及び他のグリセリド類などの従来の坐薬基剤と共に)又は停留浣腸の形態で調製することもできる。
化合物はまた、限定はされないが、McCaffrey et al.(2002),Nature,418(6893),38−9(流体力学的トランスフェクション);Xia et al.(2002),Nature Biotechnol.,20(10),1006−10(ウイルス媒介送達);or Putnam(1996),Am.J.Health Syst.Pharm.53(2),151−160,erratum at Am.J.Health Syst.Pharm.53(3),325(1996)に記載される方法を含めた、当該技術分野において公知の方法を用いたトランスフェクション又は感染によって投与することもできる。
化合物はまた、DNAワクチンなど、核酸剤の投与に好適な任意の方法によって投与することもできる。これらの方法としては、遺伝子銃、バイオインジェクター、及び皮膚パッチ並びに無針法、例えば、米国特許第6,194,389号明細書に開示されるマイクロパーティクルDNAワクチン技術、及び米国特許第6,168,587号明細書に開示されるとおりの粉末形態のワクチンによる哺乳類経皮無針ワクチン接種が挙げられる。加えて、特にHamajima et al.(1998),Clin.Immunol.Immunopathol.,88(2),205−10に記載されるとおり、鼻腔内送達が可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6,472,375号明細書に記載されるとおり)及びマイクロカプセル化もまた用いることができる。生分解性の標的化可能なマイクロパーティクル送達システムもまた用いることができる(例えば、米国特許第6,471,996号明細書に記載されるとおり)。
一実施形態において、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含めた、制御放出製剤など、化合物が体内から急速に排出されることを防ぎ得る担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、及びポリ乳酸など、生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤は、標準的な技法を用いて調製することができる。材料はまた、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞に標的化されるリポソームを含む)もまた、薬学的に許容可能な担体として使用することができる。これらは、例えば米国特許第4,522,811号明細書に記載されるとおりの、当業者に公知の方法によって調製することができる。
かかる化合物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%において治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、これは比LD50/ED50として表される。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性の副作用を呈する化合物が用いられてもよいが、非感染細胞に対する潜在的損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減するため、かかる化合物を罹患組織部位に標的化する送達システムを設計するよう注意しなければならない。
ヒトでの使用に向けた様々な範囲の投与量の製剤化には、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータを使用することができる。かかる化合物の投与量は、好ましくは毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療有効用量は、初めに細胞培養アッセイから推定することができる。動物モデルにおいて、細胞培養で決定されるとおりのIC50(即ち、症状の最大半量阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲が実現するように用量が製剤化され得る。かかる情報を用いると、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって計測し得る。
本明細書に定義するとおり、核酸分子の治療有効量(即ち、有効投与量)は、選択の核酸に依存する。例えば、DsNA剤をコードするプラスミドが選択される場合、約1pg〜1000mgの範囲の単回投与量が投与されてもよく;一部の実施形態では、10、30、100、又は1000pg、又は10、30、100、又は1000ng、又は10、30、100、又は1000μg、又は10、30、100、又は1000mgが投与されてもよい。一部の実施形態では、1〜5gの組成物を投与することができる。組成物は1日1回以上〜週1回以上(隔日1回を含む)投与することができる。当業者は、対象を有効に治療するのに必要な投与量及びタイミングには、限定はされないが、疾患又は障害の重症度、前治療、対象の全般的な健康及び/又は年齢、及び他の既存疾患を含めた特定の要因が影響し得ることを理解するであろう。更に、治療有効量のタンパク質、ポリペプチド、又は抗体による対象の治療は単回治療を含んでもよく、又は好ましくは、一連の治療を含んでもよい。
DsNA剤を細胞の環境中に導入する方法は、細胞のタイプ及びその環境の構成に依存し得ることが理解され得る。例えば、細胞が液体中に見られるとき、一つの好ましい製剤は、lipofectamine中など、脂質製剤を伴うものであり、DsNA剤を細胞の液体環境に直接加えることができる。脂質製剤はまた、静脈内、筋肉内、又は腹腔内注射によるか、或いは経口的に又は吸入若しくは当該技術分野において公知のとおりの他の方法によるなどして動物に投与することもできる。製剤が哺乳動物及びより具体的にはヒトなどの動物への投与に好適である場合、製剤はまた、薬学的に許容可能でもある。オリゴヌクレオチドの投与用の薬学的に許容可能な製剤は公知であり、使用することができる。場合によっては、DsNA剤を緩衝液又は生理食塩水中に製剤化して、卵母細胞を用いた研究の場合のように、その製剤化されたDsNA剤を細胞に直接注入することが好ましいこともある。DsNA剤二重鎖の直接注入もまた行われ得る。dsNA(例えばDsNA剤)を導入する好適な方法については、米国特許出願公開第2004/0203145 A1号明細書を参照されたい。
好適な量のDsNA剤が導入されなければならず、これらの量は標準方法を用いて実験的に決定することができる。典型的には、細胞の環境内における個々のDsNA剤種の有効濃度は約50ナノモル濃度以下、10ナノモル濃度以下であり、又は約1ナノモル濃度以下の濃度の組成物を使用することができる。別の実施形態では、多くの状況で、約200ピコモル濃度以下、更には約50ピコモル濃度以下、約20ピコモル濃度以下、約10ピコモル濃度以下、又は約5ピコモル濃度以下の濃度を利用する方法を用いることができる。
本方法は、細胞が生存できる任意の細胞外マトリックスにDsNA剤組成物を加えて実施することができ、但し、DsNA剤組成物は、その効果を及ぼすのに十分な量のDsNA剤が細胞に侵入し得るように製剤化されるものとする。例えば、本方法は、液体培養培地又は細胞成長培地などの液体中、組織外植片、又は哺乳動物及び特にヒトなどの動物を含めた全生物に存在する細胞での使用に適している。
標的RNAのレベル又は活性は、当該技術分野において現在公知の、又は今後開発される任意の好適な方法によって決定することができる。標的RNA及び/又は標的RNAの発現の計測に用いられる方法が、標的RNAの性質に依存するであろうことは理解され得る。例えば、標的RNAがタンパク質をコードする場合、用語「発現」は、標的RNAに由来するタンパク質又はRNA/転写物を指し得る。そのような場合、標的RNAの発現は、標的RNAに対応するRNAの量を計測することによるか、又は当該タンパク質の量を計測することによって決定し得る。タンパク質は、染色法若しくは免疫ブロット法によるか、又はタンパク質が計測可能な反応を触媒する場合には反応速度を計測することによるなど、タンパク質アッセイで計測することができる。かかる方法はいずれも当該技術分野において公知であり、用いることができる。標的RNAレベルを計測する場合、RNAレベルの検出に当該技術分野で認められている任意の方法(例えば、RT−PCR、ノーザンブロット法等)を用いることができる。本発明のdsNA剤でウイルスRNAを標的化する際にはまた、対象、組織、インビトロ或いはインビボでの細胞、又は細胞抽出物における標的ウイルスレベルの低減におけるDsNA剤の有効性の計測もまた、標的ウイルスRNAレベルの低減の程度の決定に用い得ることも予想される。細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物又は任意の他の好適な供給源材料に対し、上記の計測のいずれを行うこともできる。
標的RNAの発現が低下しているかどうかの決定は、RNAレベルの変化を確実に検出し得る任意の好適な方法によることができる。典型的には、この決定は、未消化DsNAを細胞の環境へと、当該のDsNA剤の少なくとも一部分が細胞質に侵入するように導入し、次に標的RNAレベルを計測することにより行われる。同一の未処理細胞で同じ計測を行い、各計測から得られた結果を比較する。
DsNA剤は、薬理学的有効量のDsNA剤と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物として製剤化することができる。薬理学的又は治療的有効量とは、意図した薬理学的、治療的又は予防的結果を生じさせるのに有効なDsNA剤の量を指す。語句「薬理学的有効量」及び「治療的有効量」又は単に「有効量」は、意図した薬理学的、治療的又は予防的結果を生じさせるのに有効なRNAの量を指す。例えば、疾患又は障害に関連する計測可能なパラメータの少なくとも20%の低下があるときに所与の臨床治療が有効であると見なされる場合、当該の疾患又は障害の治療に対する薬物の治療有効量は、当該パラメータの少なくとも20%の低下を生じさせるのに必要な量である。
本発明の好適に製剤化された医薬組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸、腟内及び局所(頬側及び舌下を含む)投与を含め、非経口経路によるなど、当該技術分野において公知の任意の手段によって投与することができる。一部の実施形態において、医薬組成物は静脈内又は非経口部位内(intraparenteral)注入又は注射によって投与される。
一般に、dsNAの好適な投与量単位は、レシピエントの体重1キログラム当たり1日0.001〜0.25ミリグラムの範囲、又は体重1キログラム当たり1日0.01〜20マイクログラムの範囲、又は体重1キログラム当たり1日0.01〜10マイクログラムの範囲、又は体重1キログラム当たり1日0.10〜5マイクログラムの範囲、又は体重1キログラム当たり1日0.1〜2.5マイクログラムの範囲となり得る。dsNAを含む医薬組成物は、1日1回投与することができる。しかしながら、この治療剤はまた、1日を通して適切な間隔で投与される2、3、4、5、6回又はそれ以上の部分用量を含む投与量単位で投与されてもよい。その場合、各部分用量に含まれるdsNAは、1日の総投与量単位を達成するため対応して少なくなければならない。投与量単位はまた、例えば、数日の期間にわたってdsNAの持続的で一貫した放出をもたらす従来の徐放製剤を使用して、数日間にわたる単回投与用に配合することもできる。徐放製剤は当該技術分野において周知である。この実施形態において、投与量単位は、対応して1日用量を複数分含有する。製剤に関わらず、本医薬組成物は、治療下の動物又はヒトにおける標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な分量のdsNAを含有しなければならない。本組成物は、複数のdsNA単位の合計が一緒になって十分な用量を含有するような方法で配合することができる。
細胞培養アッセイ及び動物試験からデータを得て、ヒトに好適な投与量範囲を製剤化することができる。本発明の組成物の投与量は、毒性がほとんど又は全くないED50(公知の方法によって決定されるとおり)を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。本発明の方法で用いられる任意の化合物について、治療有効用量は、初めに細胞培養アッセイから推定することができる。動物モデルにおいて、細胞培養で決定されるとおりのIC50(即ち、症状の最大半量阻害を実現する試験化合物の濃度)を含む化合物の循環血漿濃度範囲が実現するように用量が製剤化され得る。かかる情報を用いると、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中dsNAレベルは、標準方法、例えば高速液体クロマトグラフィーによって計測し得る。
医薬組成物は、投与指示書と共にキット、容器、パック、又はディスペンサーに含まれ得る。
治療方法
本発明は、全体又は一部において、標的RNAの発現及び/又はかかる標的RNAの存在(例えば、ウイルス感染、ウイルスゲノム、カプシド、宿主細胞成分の標的RNAの存在等との関連で)によって引き起こされる疾患又は障害のリスクがある(又はそれに罹り易い)対象を治療する予防的及び療法的方法の両方を提供する。
「治療」、又は「治療する」は、本明細書で使用されるとき、疾患若しくは障害、疾患若しくは障害の症状、又は疾患に罹り易い素因を治癒し、治し、改善し、軽減し、変化させ、修復し、回復させ、向上させ又はそれに影響を与える目的で、疾患若しくは障害、疾患若しくは障害の症状又は疾患若しくは障害に罹り易い素因を有する患者に治療剤(例えば、DsNA剤又はそれをコードするベクター若しくはトランス遺伝子)を適用又は投与すること、或いは患者由来の単離組織又は細胞株に治療剤を適用又は投与することとして定義される。
一態様において、本発明は、治療剤(例えば、DsNA剤又はそれをコードするベクター若しくはトランス遺伝子)を対象に投与することにより、上記に記載したとおりの疾患又は障害を対象において予防する方法を提供する。疾患のリスクがある対象は、例えば、本明細書に記載されるとおりの任意の診断又は予後判定アッセイ又はそれらの組み合わせによって同定することができる。予防的薬剤の投与は、疾患又は障害が予防され、或いはその進行が遅延するように、対象における例えばウイルス粒子の検出前、或いは疾患又は障害に特徴的な症状が現れる前に行われ得る。
本発明の別の態様は、対象を療法的に治療する方法、即ち、疾患又は障害の症状の発生を変化させる方法に関する。これらの方法はインビトロで(例えば、細胞をDsNA剤と共に培養することにより)、或いはインビボで(例えば、DsNA剤を対象に投与することにより)、実施することができる。
予防的及び療法的治療方法の両方に関して、かかる治療は、ファーマコゲノミクスの分野から得られる知識に基づき具体的に調整又は改良され得る。「ファーマコゲノミクス」は、本明細書で使用されるとき、遺伝子配列決定、統計遺伝学、及び遺伝子発現解析などのゲノミクス技術を臨床開発中及び市販の薬物に適用することを指す。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子がどのように薬物に対するその反応を決定するか(例えば、患者の「薬物反応表現型」、又は「薬物反応遺伝子型」)についての研究を指す。従って、本発明の別の態様は、個々の予防的又は療法的治療を本発明の標的RNA分子又は標的RNAモジュレーターのいずれかで当該の個々の薬物反応遺伝子型に従い調整する方法を提供する。ファーマコゲノミクスによれば、臨床医又は医師は、その治療が最も有益となるであろう患者に予防的又は療法的治療を標的化し、毒性薬物関連副作用を被るであろう患者の治療を回避することが可能になる。
治療剤は適切な動物モデルで試験することができる。例えば、本明細書に記載されるとおりのDsNA剤(又はそれをコードする発現ベクター又はトランス遺伝子)を動物モデルで使用して、前記薬剤による治療の有効性、毒性、又は副作用を決定することができる。或いは、治療剤を動物モデルで使用して、かかる薬剤の作用機構を決定することができる。例えば、薬剤を動物モデルで使用して、かかる薬剤による治療の有効性、毒性、又は副作用を決定することができる。或いは、薬剤を動物モデルで使用して、かかる薬剤の作用機構を決定することができる。
本発明の実施には、特に指示されない限り、当該分野の技能の範囲内にある、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養及びトランスジェニック生物学の従来技術が用いられる。例えば、Maniatis et al.,1982,Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,2nd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Sambrook and Russell,2001,Molecular Cloning,3rd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Ausubel et al.,1992),Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons,(定期更新を含む);Glover,1985,DNA Cloning(IRL Press,Oxford);Anand,1992;Guthrie and Fink,1991;Harlow and Lane,1988,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Jakoby and Pastan,1979;Nucleic Acid Hybridization (B.D.Hames and S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation (B.D.Hames and S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);Riott,Essential Immunology,6th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988;Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986);Westerfield,M.,The zebrafish book.A guide for the laboratory use of zebrafish(Danio rerio),(4th Ed.,Univ.of Oregon Press,Eugene,2000)を参照のこと。
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書に記載されるものと同様の又は等価な方法及び材料を用い得るが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、全体として参照により援用される。矛盾が生じる場合、定義を含め、本明細書が優先するものとする。加えて、材料、方法、及び例は説明を目的とするに過ぎず、限定することを意図するものではない。
本発明は以下の実施例を参照して説明され、これらの実施例は例示として提供されるものであり、いかなる形であれ本発明を限定することは意図されない。当該技術分野において周知の標準的な技法又は以下に具体的に記載される技法を利用した。
実施例1 合成方法
オリゴヌクレオチド合成、インビトロ及びインビボ使用
個々のRNA鎖を合成し、標準方法(Integrated DNA Technologies,Coralville,Iowa)によりHPLC精製した。全てのオリゴヌクレオチドは、HPLC分析による化学的純度及び質量分光分析による完全長鎖純度に基づき品質管理リリースした。使用前に等量の各鎖を混合し、RNA緩衝液(IDT)中で短時間100℃に加熱して、次に混合物を室温に放冷することにより、二重鎖RNA DsNAを調製した。
細胞培養及びRNAトランスフェクション
HeLa細胞をATCCから入手し、10%ウシ胎仔血清(HyClone)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(HyClone)に37℃、5%CO2下で維持した。図7、図9、図12、及び図13のRNAトランスフェクションについては、0.1nMの最終濃度の指示されるとおりのDsNAを、Lipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen)を使用して製造者の指示に従いHeLa細胞にトランスフェクトした。簡潔に言えば、各DsNAの2.54、の0.0204ストック溶液を46.54、のOpti−MEM I(Invitrogen)及び14、のLipofectamine(商標)RNAiMAXと混合した。得られた504、混合物を12ウェルプレートの個々のウェルに加え、室温で20分間インキュベートしてDsNA:Lipofectamine(商標)RNAiMAX複合体を形成させた。一方で、HeLa細胞をトリプシン処理し、367細胞/μLの最終濃度で培地中に再懸濁した。最後に、4504、の細胞懸濁液を各ウェルに添加し(最終容積500μL)、プレートをインキュベーターに24時間置いた。
RNA単離及び分析、インビトロ
細胞を2mLのPBSで1回洗浄し、RNeasy Mini Kit(商標)(Qiagen)を使用して全RNAを抽出し、30μLの最終容積に溶出させた。Transcriptor 1st Strand cDNA Kit(商標)(Roche)及びランダムヘキサマーを製造者の指示に従い使用して、1μgの全RNAを逆転写した。得られたcDNAの30分の1(0.66μL)を、3.334、のH2O並びにヒト遺伝子HPRT−1(受託番号NM−000194)及びSFRS9(受託番号NM−003769)遺伝子に特異的な2セットのプライマー及びプローブ:
(配列番号1)Hu HPRTフォワードプライマーF517 GACTTTGCTTTCCTTGGTCAG
(配列番号2)Hu HPRTリバースプライマーR591 GGCTTATATCCAACACTTCGTGGG
(配列番号3)Hu HPRTプローブP554 Cy5−ATGGTCAAGGTCGCAAGCTTGCTGGT−IBFQ
(配列番号4)Hu SFRS9フォワードプライマーF569 TGTGCAGAAGGATGGAGT
(配列番号5)Hu SFRS9リバースプライマーR712 CTGGTGCTTCTCTCAGGATA
(配列番号6)Hu SFRS9プローブP644 HEX−TGGAATATGCCCTGCGTAAACTGGA−IBFQ
を含有する14、の304混合物と共に、54、のiQ(商標)Multiplex Powermix(Bio−Rad)と混合した。
インビボ試料調製及び注入
DsNAをInvivofectamine(商標)で製造者のプロトコル(Invitrogen,Carlsbad,Calif.)に従い製剤化した。簡潔に言えば、マウスのN匹/群及び使用するマウスの体重を決定し、次に治療する各マウス群に必要なDsNA量を計算した。10mg/kg投与量で25g/マウスの4匹のマウスに1ml IVF−オリゴが十分であった。1mg DsNAを1ml Invivofectamine(商標)に加え、ローテータにて室温で30分間混合した。14mlの5%グルコースを使用して製剤化したIVF−DsNAを希釈し、50kDa分子量カットオフスピンコンセントレータ(Amicon)にかけた。スピンコンセントレータは、IVF−DsNAの容積が1ml未満に減少するまで4000rpm、4℃で約2時間スピンさせた。回収されたIVF−DsNAを5%グルコースで1mlに希釈し、動物注射の準備を整えた。
動物注射及び組織回収
ケタミン/キシラジンをi.p.注射することによって動物に外科麻酔をかけた。注射前に各マウスを秤量した。製剤化したIVF−DsNAを100ul/10g体重でi.v.注射した。24時間後、CO2吸入によってマウスを犠牲にした。分析用の組織を採取し、2ml RNAlater(商標)(Qiagen)が入ったチューブに入れ、室温で30分間回転させた後、4℃で一晩インキュベートした。続いて使用時まで、組織を−80℃に保存した。
組織RNA調製及び定量化
約50〜100mgの組織片をTissue Lyser(商標)(Qiagen)で1ml QIAzol(商標)(Qiagen)にホモジナイズした。次に製造者のプロトコルに従い全RNAを単離した。簡潔に言えば、0.2mlクロロホルム(Sigma−Aldrich)をQIAzol(商標)ライセートに添加し、ボルテックスすることにより激しく混合した。14,000rpmで4℃にて15分間スピンした後、水相を収集し、0.5mlのイソプロパノールと混合した。更に14,000rpmで10分間遠心した後、RNAペレットを75%エタノールで1回洗浄し、短時間乾燥させた。単離したRNAを100μl RNアーゼフリー水に再懸濁し、RNeasy(商標)全RNA調製キット(Qiagen)又はSV 96全RNA単離システム(Promega)で製造者のプロトコルに従いクリーンアップに供した。
第1鎖cDNA合成、インビボ
Transcriptor 1st Strand cDNA Kit(商標)(Roche)及びオリゴdTを製造者の指示に従い使用して、1μgの全RNAを逆転写した。得られたcDNAの40分の1(0.66μL)を3.33μLのH2O並びにマウス遺伝子HPRT−1(受託番号NM−013556)及びKRAS(受託番号NM−021284)遺伝子に特異的な2セットのプライマー及びプローブ:
(配列番号7)Mm HPRTフォワードプライマーF576 CAAACTTTGCTTTCCCTGGT
(配列番号8)Mm HPRTリバースプライマーR664 CAACAAAGTCTGGCCTGTATC
(配列番号9)Mm HPR obe P616 Cy5−TGGTTAAGGTTGCAAGCTTGCTGGTG−IBFQ
(配列番号10)Mm KRAS フォワードプライマー F275 CTTTGTGGATGAGTACGACC
(配列番号11)Mm KRAS リバースプライマー R390 CACTGTACTCCTCTTGACCT
(配列番号12)Mm KRAS プローブ P297 FAM−CGATAGAGGACTCCTACAGGAAACAAGT−IBFQ
を含有する1μLの3μM混合物と共に54、のIQ Multiplex Powermix(Bio−Rad)と混合した。
定量RT−PCR
C1000サーマルサイクラー(Bio−Rad)を備えたCFX96リアルタイムシステムを使用して増幅反応を行った。PCR条件は以下であった:95℃で3分;次にサイクル処理95℃で10秒;55℃で1分を40サイクル。各試料についてトリプリケートで試験した。HPRT実験については、相対HPRT mRNAレベルをSFRS9 mRNAレベルに対して正規化し、トランスフェクション試薬+対照ミスマッチ二重鎖で治療したか、又は未治療の対照試料で得られたmRNAレベルと比較した。KRAS例については、相対KRAS mRNAレベルをHPRT−1 mRNAレベルに対して正規化し、5%グルコースで治療したマウスからの対照試料で得られたmRNAレベルと比較した。データはBio−Rad CFX Manager バージョン1.0(インビトロ実施例)又は1.5(インビボ実施例)ソフトウェアを使用して分析した。
実施例2 一本鎖伸長部を有するDsiRNA剤の有効性
一本鎖伸長部を有するDsiRNA剤について、配列特異的標的mRNA阻害の有効性を調べた。具体的には、5’一本鎖ガイド伸長部を有するKRAS−249M及びHPRT標的化DsiRNA二重鎖を20nMの一定濃度でHeLa細胞にトランスフェクトし、24時間後にHPRT発現レベルを計測した(図7及び図9)。トランスフェクションはデュプリケートで実施し、各デュプリケートをそれぞれKRAS−249M及びHPRT発現に関してqPCRによってトリプリケートでアッセイした。
これらの条件下で(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、KRAS−249遺伝子発現は、二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OME、DNA15PS、RNA15PS、及びRNA15PS−2’OMEによって約60〜85%低下した(図7)。これに対して、一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖はKRAS−249遺伝子発現を約90%低下させた。従って、一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖は、KRAS−249のサイレンシングにおいて一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖と同程度に有効であった。全ての一本鎖伸長二重鎖が一本鎖伸長領域にホスホロチオエート骨格修飾を含有した。10ヌクレオチド一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子発現は約75〜85%低下した。15ヌクレオチド一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子発現は60〜70%低下した。概して、10ヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖は、5’ガイド伸長部に存在するヌクレオチドに関わらず、15ヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖と比べてKRAS標的遺伝子発現をより大きく低下させた。詳細には、デオキシリボヌクレオチドを含有するガイド伸長部を有する二重鎖のサイレンシング活性は、リボヌクレオチド及び2’−O−メチルリボヌクレオチドを含有する二重鎖と比較して、15ヌクレオチドの増加した長さに対する感受性がより高かった。KRAS−249の遺伝子発現を標的化する実験で使用した、ダイサーによる5’ガイド鎖伸長二重鎖のプロセシングもまた、インビトロアッセイによって示された(図10)。
同様に、同じ条件下で(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、HPRT1遺伝子発現は、二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OME、DNA15PS、RNA15PS、及びRNA15PS−2’OMEによって約65〜85%低下した(図9)。これに対して、一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖はHPRT1遺伝子発現を約90%低下させた。従って、一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖は、HPRT1のサイレンシングにおいて一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖と同程度に有効であった。全ての一本鎖伸長二重鎖が一本鎖伸長領域にホスホロチオエート骨格修飾を含有した。10ヌクレオチド一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子発現は約80〜85%低下した。15ヌクレオチド一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子発現は60〜80%低下した。概して、10ヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖は、5’ガイド伸長部に存在するヌクレオチドに関わらず、15ヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖と比べてKRAS標的遺伝子発現をより大きく低下させた。詳細には、デオキシリボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドを含有するガイド伸長部を有する二重鎖のサイレンシング活性は、リボヌクレオチドを含有する二重鎖と比較して、15ヌクレオチドの増加した長さに対する感受性がより高かった。HPRT1の遺伝子発現を標的化する実験で使用した、ダイサーによる5’ガイド鎖伸長二重鎖のプロセシングもまた、インビトロアッセイによって示された(図10)。
一本鎖ガイド伸長部を有する二重鎖は、それぞれKRAS−249及びHPRT1のサイレンシングにおいて一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖と同程度に有効であったことから、この発見は、一本鎖ガイド伸長部を有するDsiRNA剤を有効性の損失なしに修飾することを可能にする。
実施例3 一本鎖伸長部に相補的なショートオリゴヌクレオチドと組み合わせた一本鎖伸長部を有するDsiRNA剤の有効性
一本鎖伸長部を有するDsiRNA剤について、一本鎖伸長部に相補的なショートオリゴと組み合わせた配列特異的標的mRNA阻害の有効性を調べた。具体的には、15ヌクレオチド不連続相補体を含む15ヌクレオチド長の5’一本鎖ガイド伸長部を有するKRAS−249M及びHPRT標的化DsiRNA二重鎖を20nMの一定濃度でHeLa細胞にトランスフェクトし、24時間後にHPRT発現レベルを計測した(図12及び図13)。トランスフェクションはデュプリケートで実施し、各デュプリケートをそれぞれKRAS−249M及びHPRT発現に関してqPCRによってトリプリケートでアッセイした。
これらの条件下で(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、KRAS−249遺伝子発現は、不連続相補体RNA15、PS−RNA15、PS−DNA15、PS−2’OMe−RNA15、及び2’OMe−RNA15の存在下における二重鎖DNA15PS(1301+1340)、RNA15PS(1301+1341)、RNA15PS−2’−OME(1301+1342)によって約15〜60%低下した(図12)。一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖はKRAS−249遺伝子発現を約85%低下させた。全ての一本鎖伸長二重鎖が一本鎖伸長領域にホスホロチオエート骨格修飾を含有した。概して、リボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖は、不連続相補体の存在に関わらず、デオキシリボヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖と比べてKRAS標的遺伝子発現をより大きく低下させた。二重鎖DNA15PS(1301+1340)、RNA15PS(1301+1341)、RNA15PS−2’−OME(1301+1342)については、遺伝子発現の低下は、2’OMe−RNA15不連続相補体を伴う又は伴わない場合に同等であった。
同様に、同じ条件下で(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、HPRT1遺伝子発現は、不連続相補体RNA15、PS−RNA15、PS−DNA15、PS−2’OMe−RNA15、及び2’OMe−RNA15の存在下における二重鎖DNA15PS(1001+1353)、RNA15PS(1001+1354)、及びRNA15PS−2’OME(1001+1355)によって約30〜85%低下した(図13)。一本鎖ガイド伸長部のない二重鎖はHPRT1遺伝子発現を約90%低下させた。全ての一本鎖伸長二重鎖が一本鎖伸長領域にホスホロチオエート骨格修飾を含有した。概して、リボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖は、不連続相補体の存在に関わらず、デオキシリボヌクレオチドガイド伸長部を有する二重鎖と比べてKRAS標的遺伝子発現をより大きく低下させた。二重鎖RNA15PS(1301+1341)及びRNA15PS−2’−OME(1301+1342)は、いかなる不連続相補体も含まない同じ二重鎖RNA15PS(1301+1341)及びRNA15PS−2’−OME(1301+1342)と比較して、不連続相補体RNA15、PS−RNA15、PS−2’OMe−RNA15、2’OMe−RNA15の存在下で遺伝子発現の低下の増進を示した。
実施例4 DiRNA剤のインビボ有効性
DNA二重鎖伸長部を有するDsiRNA剤について、単回投与プロトコル又は反復投与プロトコル(例えば、invivoFectamine中10mg/kg単回注射)のいずれかで配列特異的標的mRNA阻害のインビボ有効性を調べた。注射後24時間に肝臓、腎臓、脾臓及びリンパ節組織におけるKRASの発現を計測し、リアルタイムPCR(RT−PCR)をトリプリケートで実施してKRAS発現を評価した。これらの条件下で、一本鎖ガイド伸長DsiRNA剤は、調べた全ての組織で統計学的に有意なレベルのKRAS標的遺伝子阻害を呈した。かかる一本鎖ガイド伸長部DsiRNAで治療した組織のKRASパーセント阻害レベルは、肝臓(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)、脾臓(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%),),腎臓(1910%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%),)及びリンパ節(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%))であった。従って、多くの組織型にわたって本発明の伸長DsiRNAのインビボ有効性が実証された。
本発明の伸長ダイサー基質剤がインビボで特定の標的遺伝子の遺伝子発現を低下させる能力の更なる実証を、本発明のDsiRNAをマウス又は他の哺乳類対象に全身的に(例えば、i.v.又はi.p.注射によって)、或いは組織への直接注射(例えば、眼、脊髄/脳/CNS等への注射)で投与することによって実施した。更なる標的RNAレベルの計測を標準方法によって標的細胞に対して実施した(例えば、Trizol(登録商標)製剤(チオシアン酸グアニジン−フェノール−クロロホルム)と、続くqRT−PCR)、(例えば、肝細胞及び/又は腎細胞のRNAレベルをマウスの注射後にアッセイした;眼細胞を対象の眼注射後にアッセイした;又は脊髄/脳/CNS細胞を対象のそれの直接注射後にアッセイした)。
任意のかかる更なるインビボ実験においては、本発明の伸長ダイサー基質剤(例えば、ガイド5’伸長又はパッセンジャー3’伸長DsiRNA)は、適切な対照(例えば、媒体単独対照、無作為化二重鎖対照、異なる標的RNA対照に対する二重鎖等)と比較したとき、本発明の伸長ダイサー基質剤の投与時にRNAレベルの統計学的に有意な低下が観察された場合に、有効なインビボ剤であると見なすことができる。概して、かかる比較に割り当てられたp値(例えば、対応のない片側t検定によって求められる)が0.05未満であった場合、本発明の伸長ダイサー基質剤(例えば、ガイド5’伸長又はパッセンジャー3’伸長DsiRNA剤)は有効なRNA干渉剤であると見なした。或いは、それ未満であれば本発明の伸長ダイサー基質剤が有効なRNA干渉剤であると分類されるp値閾値は、例えば0.01、0.001等に設定してもよく、それによってよりストリンジェントなフィルタリングを提供し、よりロバストな差を特定し、及び/又は複数の仮説検証を調整するなどすることができる。伸長ダイサー基質剤の有効なものと有効でないものとを区別するため、絶対活性レベル限界値もまた設定することができる。例えば、特定の実施形態において、本発明の有効な伸長ダイサー基質剤は、インビボで標的RNAレベルの統計学的に有意な低下を示すのみならず、例えば、適切な対照と比較したとき、調べた組織又は細胞における標的RNAレベルの少なくとも約10%の低下、約15%の低下、少なくとも約20%の低下、約25%の低下、約30%の低下等もまたもたらすものであった。従って、本発明の伸長ダイサー基質剤(例えば、ガイド5’伸長及びパッセンジャー3’伸長DsiRNA剤)の更なるインビボ有効性試験を実施した。
一本鎖伸長部を有するDsiRNA剤(図14及び図15)は、インビボで肝臓、脾臓、及び腎臓において配列特異的標的KRAS mRNA発現を有効に阻害した。肝臓では、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)が、グルコース単独対照に対して正規化したとき、5’パッセンジャー伸長部を含まないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と比較されるとおりKRAS mRNA発現の阻害を示した(図16〜図18)。DsiRNA剤によるKRAS mRNA発現の阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の肝臓において少なくとも75〜90%であった。肝臓における5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)の阻害量は、5’パッセンジャー伸長部のないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と同等であり、これは陰性グルコース対照と比較して有意であった。
脾臓では、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS 10M)はまた、グルコース単独対照に対して正規化したとき、5’パッセンジャー伸長部を含まないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と比較されるとおりKRAS mRNA発現の阻害を示した(図19〜図21)。DsiRNA剤によるKRAS mRNA発現の阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の脾臓において少なくとも90〜95%であった。脾臓における5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)の阻害量は、5’パッセンジャー伸長部のないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と同等であり、これは陰性グルコース対照と比較して有意であった。
腎臓では、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS 10M)は、グルコース単独対照に対して正規化したとき、5’パッセンジャー伸長部を含まないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と比較されるとおりKRAS mRNA発現の阻害を示した(図22〜図24)。DsiRNA剤によるKRAS mRNA発現の阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の腎臓において少なくとも20〜40%であった。それにも関わらず、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS 3M)及び1339(PS 10M)の阻害量は、5’パッセンジャー伸長部のないDsiRNA剤K249M及び1370(3M)と同等であった。これらの実験では、5’パッセンジャー伸長部のないDsiRNA剤M97Mであって、且つKRASに対して配列特異的でないDsiRNA剤を、陽性対照として使用した。
一本鎖ガイド伸長部を有するDsiRNA剤は、インビボでのKRASのサイレンシングにおいて一本鎖ガイド伸長部のないDsiRNA剤と同程度に有効であったことから、この発見は、DsiRNA剤をインビボでの有効性の損失なしに一本鎖ガイド伸長部で修飾することを可能にする。
本明細書において言及する全ての特許及び刊行物は、本発明が関係する技術分野の当業者の技術水準を示すものである。本開示に引用される参考文献は全て、各参考文献が個々に全体として参照により援用されていると見なすのと同程度に参照によって援用される。
当業者は、本発明が、主題の実施、及び言及される目標及び利点並びにそれに固有のものの達成に良く適合していることを容易に理解するであろう。ここで好ましい実施形態を代表するものとして本明細書に記載する方法及び組成物は例示であり、本発明の範囲の限定として意図されるものではない。当業者にはそれらにおける変更及び他の使用が想起され、それらは本発明の趣旨の範囲内に包含され、特許請求の範囲によって定義される。
当業者には、本明細書に開示される発明に対して、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な置換及び修飾を行い得ることは容易に明らかであろう。従って、かかる追加の実施形態は、本発明及び以下の特許請求の範囲内にある。本発明は、当業者に、RNAi活性の媒介活性が向上した核酸コンストラクトの作成に向けて本明細書に記載される化学修飾の様々な組み合わせ及び/又は置換を試験することを教示する。かかる活性の向上には、安定性の向上、バイオアベイラビリティの向上、及び/又はRNAiを媒介する細胞応答の活性化の向上が含まれ得る。従って、本明細書に記載される具体的な実施形態は限定するものではなく、当業者は、RNAi活性が向上したDsiRNA分子の同定に向けて過度の実験を行うことなく本明細書に記載される修飾の特定の組み合わせを試験し得ることを容易に理解し得る。
本明細書に例示的に記載される本発明は、好適には、本明細書に具体的に開示されない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定はなしに実施することができる。従って、例えば、本明細書における各例で、用語「〜を含んでいる(comprising)」、「〜から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「〜からなる(consisting of)」のいずれかを、他の2つの用語のうちの一方と置き換えることができる。用いられている用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、かかる用語及び表現の使用において、図示及び記載される特徴の任意の均等物又はその一部を除外する意図はなく、しかし特許請求される本発明の範囲内で様々な改良例が可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の任意選択の特徴、改良例及び変形例が当業者によって用いられてもよく、かかる改良例及び変形例は、本説明及び添付の特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の範囲内にあると考えられることが理解されなければならない。
加えて、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群又は他の代替要素群によって記載される場合、当業者は、従って本発明がそのマーカッシュ群又は他の群の任意の個々のメンバー又は部分的なメンバー群によっても記載されることを認識するであろう。
本発明の記載との関連における(特に以下の特許請求の範囲との関連における)用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語の使用は、本明細書に特に指示されない限り、又は文脈上明確に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。用語「〜を含む(comprising)」、「〜を有する(having)」、「〜を含む(including)」、及び「〜を含有する(containing)」は、特に注記されない限り、オープンエンド形式の用語(即ち、「限定はされないが、〜を含む」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に特に指示されない限り、単にその範囲内にある各個別の値に個々に言及するのを省略する方法として役立つことが意図されるに過ぎず、各個別の値は、それが本明細書に個々に記載されたかのように本明細書に援用される。本明細書に記載される方法は全て、本明細書に特に指示されない限り、又はその他、文脈上明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書に提供される全ての例、又は例示用語(例えば「など」)の使用は、単に本発明の理解をより容易にすることを意図しているに過ぎず、特に注記されない限り、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書中のいかなる用語も、任意の特許請求されない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すものと解釈されてはならない。
本明細書には、本発明者らにとって公知の本発明の実施に最良の形態を含め、本発明の実施形態が記載される。前述の説明を読めば、当業者には、それらの実施形態の変形例が明らかになり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてかかる変形例を用いることを予想し、且つ本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものと別様に実施されることを意図する。従って、本発明は、準拠法により認められているとおりの本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される主題の全ての改良例及び均等物を含む。更に、それらの可能な全ての変形例における上述の要素の任意の組み合わせが、本明細書に特に指示されない限り、又はその他、文脈上明確に否定されない限り、本発明に包含される。
実施例5.インビトロ細胞培養アッセイによる標的RNAの核酸阻害の評価
本発明のdsRNAをヒトヘパトーマ(Huh7)細胞に投与し、続いてヒトヘパトーマ(Huh7)細胞において標的mRNAのレベルを計測して、標的転写物に対する本発明のdsRNAの標的発現の低下に関するインビトロ有効性を評価する。
ヒト標的遺伝子ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT1;GenBank受託番号NM−000194及びGI:164518913)に特異的な二本鎖RNAについて、ヒトヘパトーマ(Huh7)細胞における有効性を試験する。前出の標的遺伝子は、当該技術分野で認められている「ハウスキーピング」遺伝子である。ハウスキーピング遺伝子は、ヒト肝細胞において標的遺伝子が強力で一様な発現を有するよう確実にすること、及び種間の発現レベルのばらつきを最小限に抑えることの二重の目的から標的遺伝子として選択される。本発明の幾つかの実施形態が、比較の基準として用いられる対照dsRNAを含め、図37、図38、図39及び図41に示される。HPRT1を標的化する特定のdsRNAが、例えば、図37、図38、図39、及び図41に示される。GAPDH、LMNA、HNRPA1及びATP1B3を標的化するdsRNAの特定の配列も、ヒト肝細胞においてそのそれぞれの転写物を標的化するため、同様に構築し得る。
RNAに標的化されたdsNA分子を本明細書に記載されるとおり設計して合成する。これらの核酸分子は、遺伝子発現を低下させる能力及びダイサー切断活性について、例えば以下の手順を用いてインビボで試験することができる。dsNAの有効性の試験には、2つのフォーマットが用いられる。例えばヒトヘパトーマ(Huh7)細胞を使用して細胞培養物で試薬を試験して、RNA及びタンパク質阻害の程度を決定する。本明細書に記載されるとおりdsNA試薬は特定の標的に仕向けられる。好適なトランスフェクション剤によってこれらの試薬を例えば培養表皮角化細胞に送達した後、RNA阻害を計測する。標的RNAの相対量を計測し、リアルタイムPCRによる増幅モニタリング(例えば、ABI 7700 TAQMAN)を用いて対アクチンと比較する。比較は、無関係の標的又は同じ全長及び化学を有するが各位置で無作為に置換されている無作為化dsNA対照に対して行われるオリゴヌクレオチド配列の混合物に対して行う。標的に仕向けられる一次及び二次リード試薬を最適化する。最適なトランスフェクション剤濃度の選択後、リードdsNA分子でRNA経時的阻害を実施する。加えて、細胞プレーティングフォーマットを用いてRNA阻害を決定することができる。
dsNAコンストラクトについて、例えば以下のプロトコルを用いて標的RNA発現の低下における有効性を試験する。細胞をプレーティングし、約24時間後、トランスフェクション時点で細胞が70〜90%コンフルエントであるように96ウェルプレートに5,000〜7,500細胞/ウェル、100ul/ウェルでトランスフェクトする。トランスフェクションについては、アニールしたdsNAをトランスフェクション試薬(Lipofectamine 2000、Invitrogen)と50μl/ウェルの容積で混合し、室温で20分間インキュベートする。このdsNAトランスフェクション混合物を細胞に添加して、150ulの容積中最終dsNA濃度を50pM、200pM、又は1nMにする。各dsNAトランスフェクション混合物につきトリプリケートで試験する。細胞は、継続的なDsiRNAトランスフェクション混合物の存在下において37℃で24時間インキュベートする。24時間時点で、処理細胞の各ウェルからRNAを調製する。細胞試料の遠心後、上清をトランスフェクション混合物と共に取り出して廃棄し、細胞を溶解させて、各ウェルからRNAを調製する。標的遺伝子及び正規化用の全てに対する対照遺伝子(例えば、アクチン又は36B4、RNAポリメラーゼサブユニット)について、定量的方法(例えば、RT−PCR、ノーザンブロット)によって処理後の標的RNAレベル又は発現を評価する。或いは、細胞を溶解させて、各ウェルから全タンパク質を調製する。処理後の標的タンパク質レベル又は発現をウエスタンブロットによって評価し、シグナルを定量化する。トリプリケートデータを平均し、各処理の標準偏差を決定する。正規化データをグラフにし、適切な対照dsRNA(例えば、逆位対照dsRNA)と比較した本発明のdsRNAによる標的mRNAの低下パーセントを決定する。
従って、本発明のニック入りdsRNA、例えば、ニック入りテトラループ構造は、基準dsRNAと比較して、細胞における特定の標的の遺伝子発現を低下させることが示され得る。テトラループを有するニック入りdsRNAはダイサーによる切断が増進されていることが予想される。従って、ニック入りテトラループ構造を有する本発明のdsRNAは、基準dsRNAと比較して標的遺伝子の発現を低下させ、且つダイサーによる切断を増進する。本発明のニック入りテトラループ構造に包含される構造を有するdsNAは、ヒトヘパトーマ(Huh7)細胞における標的遺伝子のインビトロ発現のロバストに有効な配列特異的阻害薬である。
実施例6.インビトロアッセイによる血清安定性の評価
dsNA剤を50%ウシ胎仔血清中において37℃で様々な時間にわたって(最長24時間)インキュベートすることにより、dsNA剤の血清安定性を評価する。血清を抽出し、PAGEを用いて20%非変性ゲル上で核酸を分離し、Gelstar染色で可視化する。dsNA(任意選択で修飾有り及び無し)について、ヌクレアーゼ分解からの相対的保護レベルを評価する。
実施例7.テトラループを有するニック入りdsRNAのインビボアッセイ
本発明は、細胞における標的遺伝子の発現を低下させるための組成物を提供し、これは、それを必要としている対象の標的遺伝子の発現を低減するのに有効な量の、テトラループを有するニック入りdsRNAに、細胞を接触させることを含む。本発明のdsRNAをマウスに全身投与し、続いて治療したマウスの肝臓試料における標的mRNAのレベルを計測する。この試験は、標的転写物に対する本発明のdsRNAのインビボ有効性を評価する。
以下のマウスハウスキーピング標的遺伝子に特異的な二本鎖RNA剤について、マウス肝臓における有効性を試験する:ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT1;GenBank受託番号NM−013556);グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH;GenBank受託番号NM−008084);ラミンA(LMNA;GenBank受託番号NM−019390);ヘテロ核リボヌクレオタンパク質A1(HNRPA1;GenBank受託番号NM−010447)及びATPアーゼ、Na+/K+輸送、β3ポリペプチド(ATP1B3;GenBank受託番号NM−007502;ATP1B3 mRNA内で2つの異なる位置が標的化された)。
そのそれぞれの転写物を標的化するためアンチセンス鎖上に以下の配列のいずれか一つを含有する、本発明のdsRNAの構造、例えばニック入りテトラループ構造を有する、HPRT1、GAPDH、LMNA、HNRPA1及びATP1B3を標的化するdsRNAの特定の配列を構築する:
HPRT1アンチセンス配列:3’−UUCGGUCUGAAACAACCUAAACUUUAA−5’
GAPDHアンチセンス配列:3’−ACUCGUAGAGGGAGUGUUAAAGGUAGG−5’
LMNAアンチセンス配列:
3’−CUCGAACUGAAGGUCUUCUUGUAAAUG−5’
HNRPA1アンチセンス配列:
3’−GUCCUGACAUAAACACUGAUUAACAUA−5’
ATP1B3アンチセンス配列:
3’−AUCCCUAUGUUACCAUGGAACGGUUGU−5’
ATP1B3アンチセンス配列:
3’−GGUCUGCCUAUAGGUGUUUAUAGCACA−5’
凡例:大文字=RNA残基
体重約25グラムのマウス(CD−1雌)を購入し、飼育し、治療して、犠牲にする。
ニック入りdsRNAが標的転写物の発現を低下させるインビボ有効性を確立する一方で最適ニック入りdsRNA用量及び試料採取時間もまた確立するため実施される初期用量範囲探索及び時点選択試験。これは、例えば(HPRT1)を標的化する2つの独立した活性配列について行われる。試験するdsRNAの種々の用量(50及び200μg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;1用量当たり2.5mL総容積)中に溶解し、マウスに単回ハイドロダイナミック注入として尾静脈から投与する。以下の時点で、投与したマウスから肝臓試料を採取する:投与後24、48及び72時間、及び7日。各群合計4匹の動物をdsRNAで治療して、各投与量/時点につき少なくとも3匹の動物を評価できることを確実にする。
この試験はまた、以下の条件も用いて実施する。試験するdsRNAの用量(200μg)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS;1用量当たり2.5mL総容積)に溶解し、マウスに単回ハイドロダイナミック注入として尾静脈から投与する。投与後24時間で、投与したマウスから肝臓試料を採取する。各群合計7匹の動物をそれぞれのdsRNA剤で治療する。
定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(「qRT−PCR」)を用いて標的mRNAレベルを評価する。オリゴdT及びランダムヘキサマープライミングの混合物を使用してcDNAを合成する。qPCR反応はトリプリケートで実行する。クローニングした線状化アンプリコン標的から得た標準曲線ランに対する外挿によって絶対定量化を実施する。対照を100%として使用してデータを正規化する。100%対照値を求めるため平均した、標的mRNA特異的DsiRNA剤を投与しない全てのマウスに関する標的mRNA発現計測値を対照遺伝子発現レベルと設定することにより、データを正規化する(例えば、GAPDH DsiRNAを注射したマウスについて、HPRT1、LMNA、HNRPA1、ATP1B3−1及びATP1B3−3マウスのセットを全て陰性対照として使用して、正規化した基礎GAPDHレベルを求める。従って、各試験アームにつき7匹の試験マウス及び35匹の対照マウスがいる)。結果の有意性の評価において、P値は対応のない片側t検定を用いて計算する。0.05未満の値を統計学的に有意であると見なす。
治療したマウスの肝臓試料では、本発明のニック入りテトラループdsRNAによる治療に起因して、標的mRNAレベルの低下が観察される。これらの試験の結果は、HPRT1標的配列に対するdsRNA剤が、50マイクログラム及び200マイクログラム又は他の濃度、例えば1μg〜500μg、例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500μgで投与したときインビボで標的mRNAレベルを低下させることを示し、投与後24時間で、遺伝子転写物レベルを低減しないと思われる対照と比較したとき、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%の標的遺伝子転写物発現レベルの低下が観察される。
実施例8.リガンド誘導体の合成
この実施例でGalNacと称されるリガンドN−アセチルガラクトサミンの誘導体を、スキームI:(210頁を参照)
に従い合成した。
a.D2の合成
フラスコに、撹拌子、ベンジルアルコール(90mL,94g、0.87mol、8.0当量、Aldrich 無水)、δ−バレロラクトン(10.0mL、10.8g、0.108mol、1.0当量、Alfa、受領時のまま使用)、及びDowex 50W8X−100樹脂(207mg、Aldrich)を入れた。このフラスコに、N2(窒素)注入針を備えたゴムセプタムを装着し、フラスコを75℃に予熱した油浴中に置いた。混合物を4時間激しく撹拌し、次に油浴の電源を切り、溶液を一晩撹拌させておき、N2(窒素)下で室温に冷却した。澄明な無色の溶液をろ過してDOWEXビーズを取り出し、ビーズ及びフィルタをDCMでリンスした。ロータリーエバポレータでろ液を濃縮して(ジクロロメタン)DCMを除去した。混合物を3バッチのシリカゲル(ISCO)でフラッシュクロマトグラフィー(FC)精製した(各々330gシリカゲルカラム(3バッチ全てについて、同じカラムを再使用した)。330gカラム、5%酢酸エチル(EtOAc)/ヘキサンで平衡化した)。各ランについてカラムに33〜35mLの反応液を注入し、EtOAc/ヘキサン5%〜100%で溶出させた。UV254nm、280nm。3つのカラムからの所望の画分を全て合わせ、蒸発させると、D2が無色の液体として得られた:15.82g(0.076mol、70%)。これをシリカゲルでのFC:220gカラムによって再精製し、EtOAc/ヘキサン5%〜70%、254nm、280nmで溶出させた。所望の画分を合わせ、蒸発させると、無色の液体が得られ、これを完全真空下で24時間乾燥させると、D2 12.60g(56%)が、次のステップで使用するのに十分な純度の無色の液体として得られた。
b.G1’の合成
4gスケール:
オーブン乾燥したフラスコに、GalNAc(G1)(4.360g、11.20mmol、1.00当量)及び撹拌子を入れた。1,2−ジクロロエタン(Aldrich.無水、26mL)を添加すると、乳状の懸濁液が得られた。この混合物に、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)(Alfa、2.8mL、1分かけて)を室温、N2下でシリンジによって添加した。この混合物を室温で30分間撹拌したが、不均一なままであった。フラスコを50℃に予熱した油浴中に置いた。数分以内に反応混合物は均一になった。95分間加熱した後、油浴の電源を切り、フラスコを室温に一晩放冷した。21時間後、アリコートを取り出し、CH3CNで希釈し、質量分析(MS)によって確認した。CI POS:362.1(10)、330.1(100)、210.1(20)、168.1(12)、150.1(28)。
この反応液(琥珀色)を、130mLの氷冷飽和NaHCO3水溶液が入った500mL分液漏斗に注ぎ入れ、反応フラスコをDCM(100mL)でリンスした。ガス発生が弱まった後、相を分離した(下部の有機相は混濁した黄色であり、上部の水相はやや呈色した乳状であった)。水相をDCM(1×50mL)で抽出した。合わせたDCM相をH2O(120mL)及び飽和NaCl水溶液(120mL)で洗浄した。DCM相(澄明、淡黄色)をNa2SO4で乾燥させてろ過し(約100mLのDCMでNa2SO4をリンスした)、ロータリーエバポレータによって濃縮すると、琥珀色の油が得られた。これを完全真空下に室温で一晩乾燥させて(約3.7g)、次にフリーザーに保存した。この材料を更なる精製なしに次のステップで使用した。
20gスケール:
ジクロロメタン(120mL)中ガラクトサミンペンタアセテート(G1)(20.0g、51.0mmol、1.0当量、LC Scientific)の混合物に、室温でTMSOTf(14.0mL、77.0mmol、1.5当量、Alfa)を添加し、反応物を加熱還流し、還流させながら90分間撹拌した。続いて混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を氷冷重炭酸ナトリウム溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させてろ過した。ロータリーエバポレータで濃縮した後、濃いオレンジ色のゴム(約16g)として予想生成物G1’が得られた。この粗生成物を更なる精製なしに使用した。
c.G2の合成
5−ヒドロキシペンタン酸(hydroxpentanoic acid)ベンジルエステルD2(12.44g、59.73mmol、1.75当量)を1,2−ジクロロエタン(80mL、Aldrich 無水)に溶解し、この溶液を粗GalNAc誘導体(G1’)(11.24g、34.13mmol、1.00当量)に添加した。この溶液が均一になったところで、それに乾燥3Å分子篩(10.5g、ビーズ)を添加した。この混合物をN2下に室温で30分間撹拌した。TMSOTf(3.2mL、18mmol、0.52当量)をシリンジによって添加した。この混合物をN2下に室温で一晩撹拌した。反応をMS(CI POS)、及びTLC(シリカゲル、100%EtOAc、PMA又はH2SO4/MeOHで染色)によってモニタした。MS POS:638.3(15)、538.2(100)、438.2(10)、330.1(40)。室温で24時間後、反応をワークアップした。琥珀色の溶液を100mLの飽和NaHCO3水溶液が入った分液漏斗に注ぎ、フラスコ及び篩を80mLのDCMでリンスし、それもまた分液漏斗に添加した。相を分離し、水相を1×80mL DCMで抽出した。合わせた有機相をH2O(100mL)及び飽和NaCl水溶液(100mL)で洗浄した。琥珀色の有機相を乾燥させて(Na2SO4)、ろ過し(紙)、蒸発させると、粘稠性の琥珀色液体が得られた:26.54g(145%)。この粗試料をシリカゲル(ISCO):330gカラムでのFCによって直接精製し、化合物を平衡化したカラムに注入し、8mL DCMでリンスし;0%〜100%EtOAc/ヘキサン、UV254nm、280nmで溶出させた。所望の画分を合わせ、蒸発させると、ほぼ無色の粘稠液が得られた:13.52g(74%)。この材料は少量のGalNAc−OBn(M+1=438)及び少量の「二量体」及び「三量体」(ペンタン酸の相同体)誘導体(M+1=738及び638)で汚染されていた。
d.G2’の合成
出発物質G2(2.42g、4.50mmol、1.0当量)をMeOH(60mL)に溶解し、この溶液をParrジャーに入れた。5%Pd/C(592mg、Aldrich、Degussa E1002 U/W、湿潤)を添加した。このジャーをParr水添器に置き、ジャーの排気及びH2充填を4回行った。次にジャーを48psi(水素)H2に加圧し、室温で一晩振盪した。18時間後、反応を停止させた。ジャーの排気及びN2充填を4回行った。反応混合物のアリコートを取り出し、ろ過し、MeOHで希釈し、MSによって確認した。MS POS:448.2(100)、330.1(65)、210.1(7)、150.1(8);MS NEG:560.2(5)、446.2(100)。反応を完了し、クリーニングした。反応混合物をセライトでろ過し、MeOH(100mL)でリンスした。澄明な無色のろ液を蒸発させて、完全真空下に室温で乾燥させると、無色の泡/ガラス固体:1.70g(84%)のG2’が得られた。
e.G3の合成
ジクロロメタン(100mL)中G2’(2g、4.47mmol)の混合物に、EDC(3.08g、16.06mmol)及びNHS(0.77g、6.71mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物をロータリーエバポレータ(40℃)で濃縮し、残渣を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、EtOAc(2×500mL)で抽出した。合わせた有機溶液を無水Na2SO4で乾燥させて、蒸発させた。この粗G3を次のステップに精製なしに使用した(1.4g、57%)。
実施例9.多価リガンド誘導体の合成
その一例は、トリアンテナリーGalNacであり、これらの分枝GalNac誘導体の合成をスキームIIに示す(211〜213頁を参照)。
a.T5の合成 (3−[2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−3−(2−カルボキシエトキシ)−2−(2−カルボキシエトキシメチル)−プロポキシ]プロパン酸)
フラスコに、3,3’−((2−(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)−2−((2−カルボキシエトキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイル)ビス(オキシ))ジプロピオン酸(T4)(4.39g、9.31mmol、1.0当量)(CAS登録番号:200133−16−0)及びDMF(44mL)を入れ、均一溶液を得た。HOBt・H2O(1.59g、9.30mmol、1.0当量)をN2下に室温で添加し、混合物を均一になるまで約1分間撹拌した。DIEA(9.5mL、54.5mmol、5.9当量)をシリンジによって添加した。HBTU(11.70g、30.9mmol、3.3当量)を一度に添加した。この反応混合物を均一になるまで1〜2分間撹拌した。フラスコを氷水浴に浸し、BOC−1,3−ジアミノプロパン(5.80mL、33.2mmol、3.6当量)をシリンジで約5分かけてゆっくりと添加した。浴を置いたまま反応液(澄明な淡黄色〜琥珀色)をN2下24時間撹拌し、CH2Cl2(350mL)で反応液を希釈し、H2O(150mL)、飽和NaHCO3水溶液(2×150mL)、H2O(150mL)、及び飽和NaCl水溶液(150mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させてろ過し、蒸発させると、粘稠性の琥珀色の液体が得られた。粗材料をSiO2(ISCO)でFC精製した。MeOH/EtOAc 0%〜20%、次に10%MeOH/CH2Cl2で溶出させると、ほぼ無色の粘着性の泡/油:7.17g(82%)T5がもたらされた。
CAS登録番号:1162069−31−9
b.T8の合成 ジ−tert−ブチル(10−アミノ−10−(13,13−ジメチル−5,11−ジオキソ−2,12−ジオキサ−6,10−ジアザテトラデシル)−5,15−ジオキソ−8,12−ジオキサ−4,16−ジアザノナデカン−1,19−ジイル)ジカルバメート
T5(2.84g、3.02mmol)を室温でMeOH(50mL)に溶解し、この溶液をParrジャーに入れた。5%Pd/C(0.6670g、Degussa E1002 U/W、湿潤、Aldrich)を添加した。ジャーをParr水添器に置き、排気及びH2充填を4回行った。ジャーを47psi H2に加圧し、室温で6時間振盪した。ジャーの排気及びN2充填を4回行った。反応混合物をセライトでろ過し、約200mL MeOHでセライトをリンスした。やや混濁したろ液を幾らかのCH2Cl2を含むろ紙でろ過してリンスし、得られた澄明なろ液を蒸発させて、完全真空下で乾燥させると、泡状固体:2.38g(98%)T8が得られた。
c.T9の合成 メチル15,15−ビス(13,13−ジメチル−5,11−ジオキソ−2,12−ジオキサ−6,10−ジアザテトラデシル)−2,2−ジメチル−4,10,17−トリオキソ−3,13,20,23,26,29,32−ヘプタオキサ−5,9,16−トリアザペンタトリアコンタン−35−オエート(T9):
フラスコに、3−オキソ−2、6、9、12、15、18−ヘキサオキサヘニコサン−21−オイック酸(532.0mg、4.06mmol、1.0当量、BroadPharm)、T8(3.385g、4.12mmol、1.0当量)、HBTU(1.888g、4.98mmol、1.2当量)、HOBt・H2O(710.3mg、4.15mmol、1.0当量)、及びDMF(15mL)を入れた。この混合物を澄明且つ均一になるまでN2下で数分間撹拌した。これに、DIEA(1.6mL、9.19mmol、2.3当量)をシリンジで1分かけて添加した。この反応液をN2下室温で41時間撹拌した。溶液をCH2Cl2(180mL)で希釈し、1:1H2O/飽和NaHCO3水溶液(2×70mL)、飽和NaHCO3水溶液(70mL)、及び飽和NaCl水溶液(80mL)で洗浄した。合わせた水相をCH2Cl2(80mL)で抽出し、このCH2Cl2相をH2O(50mL)及び飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄した。合わせたCH2Cl2相をNa2SO4で乾燥させてろ過し、蒸発させると、油が得られた。この粗油をSiO2(ISCO)でFC精製し、(MeOH中0.7M NH3)/CH2Cl2、0%〜10%で溶出させると、油として1.604g(35%)のT9が得られた。
d.T10の合成 (メチル30−アミノ−21,21−ビス((3−((3−アミノプロピル)アミノ)−3−オキソプロポキシ)メチル)−19,26−ジオキソ−4,7,10,13,16,23−ヘキサオキサ−20,27−ジアザトリアコンタノエートトリス(2,2,2−トリフルオロ酢酸)塩(T10):
100mL丸底フラスコの中において、T9(1.5g、1.315mmol)、TFA(6mL)及びジクロロメタン(24mL)の混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレータによって濃縮し、粗生成物を真空下で一晩乾燥させた。精製は不要であり、粗T10(1.55g、収率:定量的)を次のステップで直接使用した。
e.3GT2の合成−メチルエステル:
0℃(氷水浴)のジクロロメタン(45mL)中T10(1.55g、1.315mmol)の溶液にDIPEA(2.29mL、13.15mmol)を添加し、この混合物を5分間撹拌した。G3を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、水相をジクロロメタン(500mL)で抽出した。合わせた有機相をブラインで洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させて蒸発させた。フラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィー(グラジエント溶離法0%〜40%MeOH/CH2Cl2)で残渣を精製した。3GT2−メチルエステルが白色の泡(1.4g、51%)として得られた。
f.3GT3の合成:
3GT2−メチルエステル(1.4g、0.66mmol)をMeOH(30mL)及びH2O(10mL)の溶液に溶解し、LiOH一水和物(1.1g、26.22mmol)を添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。この反応混合物をロータリーエバポレータで濃縮し、次にH2O(10mL)で希釈した。この混合物をpH=3〜4になるまで1N HClで酸性化した。混合物をC18(80g)カラムにロードし、逆相クロマトグラフィー(ISCO)(0%〜60%CH3CN/H2Oのグラジエント溶離法)によって精製した。凍結乾燥後、3GT3が無色の固体として得られた(634mg、55%)。
g.トリアンテナリーGalNAcリガンド(3GT5S)の合成:
DMF(3mL)中3GT3(36mg、0.021mmol)の混合物に、EDC(5.96mg、0.031mmol)及びNHS(6.99mg、0.061mmol)を添加し、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレータ(40℃)で濃縮し、残渣をC18(13g)カラムにロードし、逆相クロマトグラフィー(ISCO)(H2O(0.1%TFA)〜60%CH3CN/H2O(0.1%TFA)のグラジエント溶離法)によって精製した。凍結乾燥後、3GT5Sがオフホワイトの固体として得られた(21mg、55%)。
実施例10.核酸塩基を介して連結したGalNAcを有するN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲートホスホロアミダイト単量体の合成
以下のスキームIIIは、GalNacコンジュゲート単量体(D6)の合成に関わるステップを示す。D3は商業的に得たもので、C5のメチル基に付加されたリンカーを有する修飾チミジンである。
a.D4の合成
メタノール(24mL)中(E)−3−(1−((2R,4S,5R)−5−((ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)メチル)−4−ヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)−2,4−ジオキソ−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン−5−イル)−N−(6−(2,2,2−トリフルオロアセトアミド)ヘキシル)アクリルアミド(D3)(4.55g、5.73mmol、1当量、Glen Research)の溶液に、36mLの濃水酸化アンモニウム溶液(Fisher)を5〜10分かけて添加した。この溶液を室温で撹拌し、MS及びTLCによってモニタした(シリカゲル、100%EtOAc又は10%(MeOH中7M NH3)/DCMのいずれかで溶出し、及びUV又はリンモリブデン酸(PMA)若しくはH2SO4/MeOHのいずれかによる染色で可視化した)。24時間後、なおも少量のSMが残っていた。K2CO3(222mg、1.61mmol、0.28当量)を添加した。この反応混合物を更に15時間撹拌し、15時間経った時点で更なるK2CO3(103mg、0.748mmol、0.13当量)を添加した。溶液を室温で3時間撹拌した。揮発分をロータリーエバポレータ(浴温<33℃)で蒸発させた。MS CI POS:795(1)、753.3(5)、699.3(100)、303.1(20)。残渣を、音波処理を伴い約10%MeOH/DCM(約7mL)に溶解し、この溶液を、平衡化したISCOカラム:80gカラム(ISCO Gold)に入れ、(MeOH中7M NH3)/DCM0.75%〜15%で溶出させた。UV280nm、254nm。所望の画分を合わせて蒸発させると泡の固体が得られ、これをオフホワイトの粉末に砕き、これを完全真空下に室温で数日間乾燥させると、D4:4.17g(定量的)が得られた。
b.D5の合成
5−(((2R、3R、4R、5R、6R)−3−アセトアミド−4、5−ジアセトキシ−6−(アセトキシメチル)テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)オキシ)ペンタン酸(G2’)(1.60g、3.58mmol、1.20当量)を室温で12mLの乾燥DMFに(短時間の音波処理を伴い)溶解した。この溶液に、トリエチルアミン(0.60mL、1.44当量、Aldrich 無水)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt水和物)(0.459g、1.00当量、CHEM−IMPEX)、CMC(1.65g、1.30当量、Aldrich)、及びアミンSM(D4)(2.09g、2.99mmol、1.0当量)をこの順序で添加した。12mLの乾燥DMFを添加して、フラスコをリンスした。溶液を短時間音波処理して僅かに残るSMamine(D4)を溶解した。澄明な溶液をN2下室温で一晩撹拌し、TLCによってモニタした(シリカゲル、100%EtOAc又は10%(MeOH中7M NH3)/DCMのいずれかで溶出し、及びUV又はPMA若しくはH2SO4/MeOHのいずれかによる染色で可視化した)。19時間後、ロータリーエバポレータで反応液を濃縮してほぼ全てのDMFを除去すると(水浴温<39℃)、スラリーが得られた。これをMeOH(数mL)及びDCM(6mL)中に溶解し、平衡化したISCOカラムに入れ、フラッシュクロマトグラフィー:120gシリカゲル、DCM中0.5%〜14%(MeOH中2.3M NH3)によって精製した。UV 214nm、254nm。所望の画分を合わせ、蒸発させると、D5:2.36g(70%)が得られた。
c.D6の合成
D5(2.24g、1.99mmol、1当量)を室温でN2下にジクロロメタン(30mL、Aldrich.無水)に溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(1.40mL、8.18mmol、4.12当量、Aldrich.無水)を添加した。この溶液を数分間撹拌し、次に2−シアノエチルN,N−ジイソプロピルクロロホスホラミダイト(0.90mL、4.0mmol、2.0当量、Toronto Research)をシリンジで約1分間かけて滴下して添加した。得られた澄明なほぼ無色の溶液を室温で撹拌し、TLC:10%(MeOH中7M NH3)/DCM又は10%MeOH/DCM;UV、PMA又はH2SO4/MeOHによってモニタした。3時間後にごく少量のD5が残った(D6はD5と比べてRfが高い)。4.5時間後、反応液を1mL MeOHでクエンチし、5分間撹拌した。次に約5mL容積になるまで濃縮し、平衡化したカラムに入れ、シリカゲル(ISCO):120gカラムでFC精製し、2%〜60%[20%(MeOH中2.33M NH3)]/DCMで溶出させた。所望の画分を合わせ、蒸発させると、ほぼ無色のガラス質の泡状固体が得られ、これを完全真空下に室温で乾燥させると、1.56g(59%)のD6が得られた。
実施例11.ループに4個のN−アセチルガラクトサミン(GalNac)リガンドを有するステム−ループを含むdsNAの合成
ループの単量体にGalNAcリガンドがコンジュゲートしているステム−ループオリゴマーをスキームAに従い生成した(225〜226頁を参照)。
a.センス鎖A2の合成
15mLFalconチューブにおいて、化合物A1(30mg、0.00252mmol)を、脱気した3:1ジメチルアセトアミド/脱イオン水(750μL)に溶解した。2mLシンチレーションバイアルにおいてアジド−Peg11−アミン(Quanta BioDesign、注文番号10524、46mg、(0.00806mmol)を、脱気した3:1ジメチルアセトアミド/脱イオン水(150μl)に溶解した。2mLシンチレーションバイアルにおいて、臭化銅(I)硫化ジメチル錯体16.6mg、0.0806mmol)を、脱気したアセトニトリル(300μL)に溶解した。
peg−アジド溶液をRNA溶液に添加し、続いてCuBrを溶液/スラリーとして添加した。CuBr試薬を添加すると、反応液の色が緑色乃至青色に変わった。この反応混合物を振盪機において40℃で1時間加熱し、LC−MS(2〜40%水/ACN+100mM HFIP及び8.3mMトリエチルアミン勾配、2分間、BEH C18 2.1×50mm)によって反応をモニタした。
LC−MSによって所望の生成物が観察された。0.5Mエチレンジアミン四酢酸、pH8(5ml)で反応をクエンチした。この反応物を振盪機に15分間入れ、次に15mL Millipore 10K膜を使用して水(1×)で透析した(4200rpm、15分、4℃)。
反応混合物をイオン対形成クロマトグラフィー(5〜25%水/アセトニトリル、100mM酢酸トリエチルアンモニウム含有、35分間、XBridge C18 19×150mm)によって精製した。生成物画分をプールし、15mL Millipore 10K膜を使用して水で3回透析し(4200rpm、15分間、4℃)、15mL Falconチューブにおいて凍結乾燥すると、無定形の白色固体、化合物A2(18mg)が得られた。
b.センス鎖A3の合成
1.5mL Eppendorfバイアルにおいて、化合物Organix 1(27.6mg、0.066mmol)を無水DMSO(200uL)に溶解した。別個の15ml falconチューブにおいて、化合物A2(50mg、0.005mmol)を水(2000uL)に溶解し、DMSO(200uL)で希釈した。G3を含有する溶液を、化合物A2を含有する溶液に添加し、続いてトリエチルアミン(30.67ul)を添加した。
得られた溶液を振盪機に置き、所望の生成物の形成に関してUPLC−MSによってモニタした。反応混合物をイオン対形成クロマトグラフィー(5〜40%水/アセトニトリル、100mM酢酸トリエチルアンモニウム含有、35分間、XBridge C18 19×150mm)によって精製した。生成物画分をプールし、15mL Millipore 10K膜を使用して水で3回透析し(4200rpm、15分、及び4℃)、15mL Falconチューブにおいて凍結乾燥すると、無定形の白色固体、センス鎖A3が得られた。
c.二重鎖A5の合成
センス鎖A3(13.08mg)をDI水(5ml)に溶解し、水(0.812ml)中のアンチセンス鎖A4(A3に相補的(complimentary)、商業的に入手した)(0.812mg)が入ったバイアルに添加した。得られた溶液を混合し、90℃に3分間加熱し、室温に5分間放冷した。この溶液を凍結乾燥すると、無定形の白色固体として二重鎖、二重鎖A5が得られた。
実施例12.ループに3個のGalNacリガンドを有するステム−ループdsNAの合成
ループにGalNacコンジュゲート単量体を有するステム−ループオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNacコンジュゲートステム−ループオリゴマーの合成を示し、ここでGalNac単量体はループに限定され、233〜234頁に示されるとおり個数は3個である(スキームB)。
センス鎖B1及びセンス鎖B3の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンスB4と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖B2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A2の合成と同様の方法で合成した。センス鎖B3は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖B5は、上記に記載したとおりの化合物A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例13.ループに分枝状GalNAcリガンドを有するステム−ループdsNAの合成
ループにGalNacコンジュゲート単量体を有するステム−ループオリゴマーを生成した。スキームCは、GalNacコンジュゲートステム−ループオリゴマーの合成を示し、ここでGalNac単量体はループに限定され、スキームC(235〜236頁を参照)に3GT3として示されるとおりのトリアンテナリーGalNAcリガンドを含有する。
センス鎖C1及びC3の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖C4と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖C2は、上記に記載したとおりの化合物A2の合成と同様の方法で合成した。
15ml falconチューブにおいて、センス鎖C2(24mg、0.002mmol)を水(400uL)に溶解し、次にDMSO(1000ul)で希釈した。別個の1.5ml Eppendorfバイアルにおいて、化合物3GTS(40.79mg、0.023mmol)を無水DMSO(150uL)に溶解した。3GTSを含有するこの溶液に、DMSO(50ul)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(8.2ul、0.047mmol)中HATU((1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシジヘキサフルオロホスフェート、8.93mg、0.023mmol)を添加した。5分後、この反応混合物に、センス鎖C2を含有する溶液を添加した。
反応混合物を振盪機に置き、所望の生成物の形成に関してUPLC−MSによってモニタした。反応混合物をイオン対形成クロマトグラフィー(5〜40%水/アセトニトリル、100mM酢酸トリエチルアンモニウム含有、35分間、XBridge C18 19×150mm)によって精製した。生成物画分をプールし、15mL Millipore 10K膜を使用して水で3回透析し(4200rpm、15分、及び4℃)、15mL Falconチューブにおいて凍結乾燥すると、無定形の白色固体、センス鎖C3が得られた。二重鎖C5は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例14.ステムに4個のGalNAcリガンドを有するステム−ループdsNAの合成
ステムにGalNacコンジュゲート単量体を有するステム−ループオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNacコンジュゲートステム−ループオリゴマーの合成を示し、ここでGalNac単量体はステムに限定され、237〜238頁に示されるとおり、個数は4個である(スキームD)。
センス鎖D1及びD3の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖D4と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖D2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A2の合成と同様の方法で合成した。センス鎖D3は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖D5は、上記に記載したとおりの化合物A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例15 アンチセンス鎖の5’伸長部に複数のGalNAcリガンドを有するdsNAオリゴマーの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部領域にGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはアンチセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個である(スキームE、239〜240頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、アンチセンス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。
アンチセンス鎖E1及びE2の相補鎖(complimentary strand)(センス鎖E3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。アンチセンス鎖E2は、上記に記載したとおりのスキームと同様の方法で合成した。二重鎖E4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例16.センス鎖の5’伸長部に複数のGalNAcリガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長部領域にGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個である(スキームF、241〜242頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、センス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。
センス鎖F1及びF2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖F3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖F2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖F4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例17.スペーサーによって隔てられているセンス鎖の5’伸長部上に1個のスペーサーによって隔てられている複数のN−アセチルガラクトサミンリガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長部領域にスペーサーによって隔てられているGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個である(スキームG、243〜244頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、センス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。スペーサーによって隔てられているGalNAcリガンドを含む伸長部はまた、アンチセンス鎖の5’領域に置くこともできる。
センス鎖G1及びG2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖G3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖G2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖G4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例18.センス鎖の5’伸長部上に2個のスペーサーによって隔てられている複数のN−アセチルガラクトサミンリガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長部領域に2個のスペーサーによって隔てられているGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個である(スキームH、245〜246頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数、スペーサーの個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、センス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。スペーサーによって隔てられているGalNAcリガンドを含む伸長部はまた、アンチセンス鎖の5’領域に置くこともできる。
センス鎖H1及びH2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖H3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖H2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖H4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例19.センス鎖の5’伸長部に複数のスペーサーによって二重鎖と隔てられている複数のGalNAcリガンドを有するdsNAオリゴマーの合成
センス鎖の5’伸長部領域に複数のスペーサーによって二重鎖領域と隔てられているGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個であり、複数のスペーサーによって二重鎖と隔てられている(スキームI、247〜248頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数、スペーサーの個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、センス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。スペーサーによって二重鎖と隔てられているGalNAcリガンドを含む伸長部はまた、アンチセンス鎖の5’領域に置くこともできる。
センス鎖I1及びI2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖I3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。センス鎖I2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖I4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例20.アンチセンス鎖の5’伸長部に2個のスペーサーによって隔てられている複数のGalNAcリガンドを有するdsNAオリゴマーの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部領域に2個のスペーサーによって隔てられているGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはアンチセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個である(スキームJ、249〜250頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数、スペーサーの個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、アンチセンス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。スペーサーによって隔てられているGalNAcリガンドを含む伸長部はまた、センス鎖の5’領域に置くこともできる。
アンチセンス鎖J1及びJ2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖J3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。アンチセンス鎖J1、J2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖J4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例21 アンチセンス鎖の5’伸長部に複数のスペーサーによって二重鎖と隔てられている複数のGalNAcリガンドを有するdsNAオリゴマーの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部領域に複数のスペーサーによって二重鎖領域と隔てられているGalNacコンジュゲート単量体を有するdsNAオリゴマーを生成した。以下のスキームは、GalNAcリガンドを含むdsNAオリゴマーの合成を示し、ここでリガンドはアンチセンス鎖の5’領域の伸長部に限定され、個数は4個であり、複数のスペーサーによって二重鎖と隔てられている(スキームK1、252〜253頁を参照)。しかしながら、GalNacコンジュゲート単量体の個数、スペーサーの個数は異なってもよく、GalNAcリガンドの位置もまた、アンチセンス鎖に沿ったどこにでも異なってよい。スペーサーによって二重鎖と隔てられているGalNAcリガンドを含む伸長部はまた、センス鎖の5’領域に置くこともできる。
アンチセンス鎖K1及びK2の相補鎖(complimentary strand)(アンチセンス鎖K3と称される)は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって入手した。アンチセンス鎖K1及びK2は、上記に記載したとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成した。二重鎖K4は、上記に記載したとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成した。
実施例22.培養下のマウス肝細胞に対するGalNAcコンジュゲートDsiRNAのインビトロ自己送達
8〜10週齢のCD−1又はC57−BL/6雌マウスを使用して初代肝細胞を調製した。イソフルラン(isofluorane)を用いてマウスを麻酔した。麻酔後、腹腔を開き、大静脈に18ゲージカテーテルを挿管し、門脈を切断して肝臓から血液を排出させた。肝臓を灌流緩衝液[HBSS、1mM EDTA(Boston Bioproducts)]によって5ml/分の流量で5〜10分間、潅流液が澄明になるまで灌流した。次に肝臓を37℃のコラゲナーゼ緩衝液II[DMEM(Gibco)、1%BSA(Fisher)、0.8mg/mlコラゲナーゼI(Worthington laboratories)]によって5〜10分間灌流した。消化した肝臓を冷溶液III[DMEM(Gibco)、1%BSA(Fisher)]に移し、細かく刻んだ。細胞懸濁液を70μmメッシュ(Corning)に通し、50×gで3分間遠心した。上清を廃棄し、ペレットを冷溶液IIIで更に2回洗浄し、続いて解凍及びプレーティング補助剤(Life Technologies)を含むウィリアム緩衝液で1回洗浄した。肝細胞の生存度及び濃度は、トリパンブルー色素排除法及び血球計のカウントによって推定した。コラーゲンI被覆96ウェルプレート(Corning)に細胞をウェル当たり5×104細胞の濃度でプレーティングし、加湿雰囲気下37℃、5%CO2で4〜5時間インキュベートした。培地を、維持補助剤(Life Technologies)を含むウィリアム培地に交換し、その培地に様々な濃度のGalNAcコンジュゲートオリゴヌクレオチドを添加して、細胞を24時間インキュベートした後、培地を新しくし、細胞を更に24時間成長させた。次に細胞を溶解させて、SV96キット(Promega)を使用してRNAを精製し、Transcriptor第1鎖合成キット(Roche)を使用してRNAを逆転写した。
標的遺伝子の相対量をBio−Rad CFX96システムでの多重qPCRによって計測し、多重ハウスキーピング遺伝子に対して正規化した。未治療対照と比べた選択の転写物の残留パーセントを計算し、非線形回帰によってIC50値を推定した。選択の化合物/コンジュゲートのインビトロ自己送達(トランスフェクション剤を使用しない)データの例を図25A及び図25Bに示す。図25Aは、伸長部を有するdsNA分子の活性を示し、図25Bは、テトラループを有するdsNA分子の活性を示す。伸長部分子は、図中の図形的凡例(digramatic keys)によって示されるとおり、修飾のパターン及び性質が互いに異なる。同様に図25Bのテトラループ分子も、修飾のパターン及び性質が互いに異なる。dsNA分子の配列情報は表3に示す。これらのデータは、5’伸長部及びニック入りテトラループを含むGalNAc dsNAコンジュゲートが培養下の初代肝細胞に低いnM IC50で自己送達することを実証した。
実施例23.CD301に対するインビトロ無細胞結合
一価及びトリアンテナリーのN−アセチルガラクトサミンコンストラクトの結合を、蛍光偏光競合結合アッセイを用いて推定した。トレーサーリガンドは、カスタム合成したFITC−トリアンテナリーN−アセチルガラクトサミンコンストラクト、3GT1’−FITCであった。4μg/mlの一定濃度のマクロファージアシアロ糖タンパク質受容体、CD301(R & D systems)及び50nM 3GT1’−FITCを25℃で結合緩衝液(20mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、1mM CaCl2、0.5mM MgCl2)中において様々な濃度の本発明のdsNAと共にインキュベートした。30分後にSpectramax M5マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で蛍光偏光計測を行った。dsNAコンジュゲートの結合は、CD301からの3GT1’−FITCの変位による偏光単位の低下として推定した。各dsNAコンジュゲートの相対的結合は、非線形回帰及びIC50値の計算によって推定される。選択の化合物/コンジュゲートのインビトロ結合データの例を図13に示す。これらのデータは、5’伸長部及びニック入りテトラループをベースとするdsNAコンジュゲートがASGPrに有効に結合し、多くの場合に、トリスリンカーベースのトリアンテナリーGalNAc(DP2465P:DP2382G)と比較したときより良好な結合親和性を示したことを実証した。
アセタールリンカーを介してGalNAcリガンドに連結したdsNAコンジュゲート(合成については実施例25を参照)と、2’−トリアゾールリンカーを介してGalNAcリガンドに連結したdsNAコンジュゲートとのCD301に対する無細胞結合は同等であった(図48)。これらの2つのdsNA剤は同じ核酸配列及びGalNAcリガンドを含有し、これらの2つの薬剤の間で異なるのはリンカーのみであった。図48からの2’−トリアゾールリンカーを含むdsNAコンジュゲートと、同じトリアゾールリンカーを含むが図48のアセタールリンカーと同じPEGリンカー長さを有するdsNAコンジュゲートとの無細胞結合もまた、同等であった(図49を参照)。これは、2’−トリアゾールリンカーの代わりにアセタールリンカーを使用しても、dsNAコンジュゲートの結合は損なわれなかったことを示している。標的のノックダウン又は受容体との結合の点で、dsNA分子の活性はリンカーの長さの増加又は減少に起因する影響を大きくは受けなかったことが指摘される点は興味深い。アセタールリンカーが核酸合成の厳しさを生き残ることができ、且つインビボ/インビトロ条件下でなおも機能性であって、受容体にコンジュゲートを送達したことが分かった点は意外であった(図48〜図50を参照)。
トリアゾールリンカーを含むがリンカーのPEGセグメントの長さが異なる上記に記載する2つのdsNA GalNAcのインビトロノックダウン効力を試験した。図50は、これらの2つのdsNAコンジュゲートがマウスにおいて同等の固有のノックダウン効力を有したことを示し、リンカーのPEG長さを変更してもdsNA剤のインビボ機能は変化しなかったことを実証している。
GalNAcリガンド、GalNAc含有単量体、及びGalNAcオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を以下の例及び合成スキームに記載する。以下に記載する化合物及び/又はコンジュゲートに用いる具体的なオリゴヌクレオチド配列は、表3に示す。
実施例24.RNAi安定性、免疫原性、及び活性のインビボ評価
野生型の又は罹患した遺伝子操作マウスに、200ul未満の容積で皮下注射又は静脈内注射によって投与した。動物の行動学的又は生理学的変化を観察した。薬物動態学的及び薬力学的分析のため、指示されるとおりの最終投与後24〜168時間で動物をCO2窒息によって犠牲にした。血液及び組織試料を標準手順に従い採取した。mRNA分析のため、組織は、後に標準プロトコルに従いRT−qPCRを実施するまでフリーザーに保存した。ウェスタン及び免疫組織化学分析用の凍結組織もまた採取した。試験経過中は尿試料を採取し、酵素法又はLC/MS法を用いて代謝産物に関してアッセイした。サイトカイン、血球細胞カウント及び血液化学分析を標準手順に従い行った。選択の化合物/コンジュゲートのインビボデータの例を図27、図28、図29及び図30に示す。これらのデータは、センス鎖における5’伸長部及びニック入りテトラループコンストラクトを含むGalNAc dsNAコンジュゲートが、マウスにおいて皮下及び静脈内投与時にインビボで標的mRNAのノックダウン活性を示すことを実証した。
実施例25.2’−アセタールリンカーを介して連結したGalNAcを有するN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲート型ホスホロアミダイト単量体の合成
GalNAcリガンドは、ヌクレオシド単量体の核酸塩基(即ち実施例8、9に示されるとおりチミジンのC5位置)に付加し得るのみならず、リンカーで2’−OH(又は3’−OH)を介してリボース糖にもまた付加し得る。コンジュゲーション部位としての2’−OHは、テトラループDsiRNAの場合に特に有用であり、なぜならループの4つのヌクレオチドの2’−OHは溶媒に露出し、その結晶構造に基づいた安定したループの形成に必要な水素結合及び塩基スタッキングに関与しないためである。リンカーを2’−OHに導入するために用いられるアセタール化学(以下のスキームIV〜VIに図示される、215〜217頁を参照のこと)は、従来のアルキル化条件と比較してはるかに穏やかである;従って、2’位への選択的なコンジュゲーションが可能となる。これにより、時間のかかる2’及び3’異性体の混合物の分離をしなくて済み、収率が大幅に改善される。化合物2〜4の合成をスキームIVに示し、化合物5〜9の合成をスキームVに示し、及び化合物10及び11の合成をスキームVIに示す(215〜217頁を参照)。
a.化合物2の合成
2−(2−アミノエトキシ)エタノール(105.0g)、トリエチルアミン(101.0g)及びトリフルオロ酢酸エチルをフラスコに加え、この混合物を24時間撹拌した。ジクロロメタン(1L)を添加し、この溶液を水(500ml)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、蒸発させると、液体(161.0g)が得られた。
b.化合物3の合成
塩化メチレン(200ml)中化合物2(161.0g)及びパラホルムアルデヒド(24.0)の混合物を氷浴中で撹拌しながら冷却した。無水塩化水素を混合物全体にわたって3時間発泡させた。反応混合物を室温以下にし、2つの澄明な均一層を分離した。有機層を無水塩化カルシウムで乾燥させて、ロータリーエバポレータで濃縮すると、液体(201g)になった。
c.化合物4の合成
得られた化合物3をアセトニトリル(200ml)に溶解し、酢酸ナトリウム(100g)を添加した。混合物を室温で14時間撹拌した。沈殿物をろ去し;ろ液をロータリーエバポレータで液体になるまで濃縮した。残渣を酢酸エチル(100ml)に溶解し、10%炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)及び水(2×50ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、ロータリーエバポレータで濃縮すると、液体(176.0g)になった(MS M−1:272.0)。
d.化合物69の合成
1,2−ジクロロメタン(500ml)中ヌクレオシド5(61.3g)及び化合物4(55g)の窒素下冷溶液(−15℃)に四塩化スズ(18ml)を添加し、この溶液を−12℃に20分間保った。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(500ml)及び塩化メチレン(1L)を添加し、懸濁液を0℃で20分間撹拌した。この懸濁液をろ過し、有機層を分離し、水(200ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、蒸発乾固させた。残渣をシリカゲルでカラムクロマトグラフィー精製した。塩化メチレン−メタノール(100:0〜95:5)でカラムを溶出させて、次に適切な画分を蒸発させると、化合物6が泡として得られた(55.2g)(MS M−1:825.4)。
e.化合物7の合成
ヌクレオシド6(55g)をテトラヒドロフラン(1L)中0.5Mフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物に溶解し、10分間20℃に保ち、蒸発乾固させ、クロロホルム(10ml)で蒸発させて、シリカゲルを含むカラムに適用した。カラムを塩化メチレン−メタノール(100:0〜90:10)で溶出させて、次に適切な画分を蒸発させると、化合物7が泡として得られた(30.5g)(MS M−1:583.2)。
f.化合物8の合成
ピリジン(2×20ml)で蒸発させることによりヌクレオシド7(30.0g)を乾燥させた。残渣を乾燥ピリジン(300ml)に溶解し、ジメトキシトリチル塩化物(18.2g)を添加し、得られた溶液を20℃に16時間保った。MeOH(10ml)を添加し、30分後にこの混合物をほぼ乾固するまで真空濃縮した。残渣を塩化メチレン(500ml)に溶解し、10%重炭酸ナトリウム水溶液(200ml)及び水(2×200ml)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空蒸発させ、トルエン(2×100ml)で蒸発させて、シリカゲルでカラムクロマトグラフィー精製した。カラムを塩化メチレン−メタノール(100:0〜90:5)で溶出させて、次に適切な画分を蒸発させると、化合物8が泡として得られた(40.5g)(MS M−1:885.3)。
g.ホスホラミダイト[化合物9]の合成
ジメトキシトリチル化誘導体8(40.0g)をアルゴン下で600mlジクロロメタンに溶解し、エチル−(ジイソプロピル)アミン(10ml)及び2−シアノエチルジイソプロピルホスホラミドクロリダイト(16.0g)を添加した。この溶液を3時間撹拌した後、TLCによって反応の完了が示された。10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2ml)を添加し、溶液を10分間撹拌し、塩化メチレン(500ml)と炭酸ナトリウム水溶液(300ml)とに分配した。有機相を塩化ナトリウム水溶液(2×300ml)で洗浄し、水相を塩化メチレン(200ml)で逆抽出した。有機物を蒸発させると油が残り、これをシリカゲルでフラッシュ精製すると(ヘキサン−酢酸エチル、20:80)、共蒸発後に生成物が泡として得られた(36.5g)(MS M−1:1085.4)。ヌクレオシド10から上記の記載と同様にして化合物11を作製した。同様にスキームVII(218〜219頁を参照)及びVIII(220頁を参照)は化合物17の生成を示し、化合物17の作製に上述の手順を採用することができる。
実施例26.ループ上にコレステロールリガンドを有するコレステロールコンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
本発明のコレステロールコンジュゲート型dsNA分子は、GalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成用に確立されたプロトコルに従い生成し得る。本発明のコレステロールコンジュゲート型dsNA分子は、標準的なクリックケミストリー法又はアミドケミストリー法による固相後コンジュゲーションを用いることによって合成する。一実施形態において、本発明のコレステロールコンジュゲート型dsNA分子は、コレステロールホスホラミダイトを使用した固相合成によって作製する。
ループにコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームL(256〜257頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物K2は、スキームKb(254〜255頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。一実施形態において、ループにコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAは、例えばスキームL1(258〜259頁を参照)に示されるとおり、アミドケミストリーを用いて生成する。スキームL及びL1は、コレステロールコンジュゲート型ステム−ループdsNAの合成を示し、ここでコレステロール単量体はループに限定され、個数はただ1個である。同様にスキームM(260〜261頁を参照)もコレステロールコンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の合成を示し、ここでコレステロール単量体はループに限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例27.ステムにコレステロールリガンドを有するコレステロールコンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
ステムにコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームN(262〜263頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物K2は、スキームKbに示されるプロトコルに従い生成する。スキームN(262〜263頁を参照)は、コレステロールコンジュゲート型ステム−ループdsNAの合成を示し、ここでコレステロール単量体はステムに限定され、個数はただ1個である。同様にスキームO(264〜265頁を参照)もコレステロールコンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の合成を示し、ここでコレステロール単量体はステムに限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及び相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例28 アンチセンス鎖の5’伸長部にコレステロールリガンドを有するdsNAの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部にコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子を、例えばスキームP(266〜267頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成する。合成に必要な化合物K2は、スキームKb(254〜255頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成し得る。
スキームP1(268〜269頁を参照)は、コレステロールホスホラミダイトを使用したコレステロールコンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここでコレステロール単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定され、個数はただ1個である。しかしながらコレステロールコンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドは、アンチセンス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目、5番目の位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートすることができる。スキームQ(270〜271頁を参照)は、クリックケミストリーを用いたdsNA分子へのコレステロールの固相後コンジュゲーションを示し、ここでコレステロール単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定されるが、個数は複数個である。スキームQ1(272〜273頁を参照)は、コレステロールホスホラミダイトを使用したコレステロールコンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここでコレステロール単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示される二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成するものとする。
実施例29 センス鎖の5’伸長部にコレステロールリガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長部にコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子を、例えばスキームR(274〜275頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成する。合成に必要な化合物K2は、スキームKbに示されるプロトコルに従い生成する。
スキームR1(276〜277頁を参照)は、コレステロールホスホラミダイトを使用したコレステロールコンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここでコレステロール単量体はセンス鎖の5’伸長部に限定され、個数はただ1個である。しかしながらコレステロールコンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドはセンス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目、5番目の位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートされる。先に考察した合成スキームを用いて、コレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドの個数、並びにコレステロールリガンドの位置は変わり、例えばリガンドは、センス鎖に沿ったどこにあってもよい。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例30.センス鎖の5’伸長部に1個以上のスペーサーによって隔てられている複数のコレステロールリガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長領域にコレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドを有するdsNAであって、ヌクレオチドが本発明に係るスペーサーによって隔てられているdsNAを、GalNAcリガンドを含む同様のdsNA分子の合成用に開発されたプロトコルに従い生成する。スキームG、H、I、J及びK(243〜254頁を参照)はGalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成について記載し、ここでリガンドコンジュゲート型ヌクレオチドは1個以上のスペーサーによって隔てられている。コレステロールコンジュゲート型ヌクレオチドは、ステム領域、又はループ領域、センス鎖の5’伸長部、又はアンチセンス鎖の5’伸長部、センス鎖の3’伸長部、又はアンチセンス鎖の3’伸長部又は前記選択肢の任意の組み合わせのいずれかにあってもよい。スキームG、H、I、J及びKはGalNAcリガンドコンジュゲーションに特異的に生成し、コレステロールリガンドコンジュゲートを伴う生成に容易に適合及び改良される。ヌクレオチドに対するリガンドのコンジュゲーション方法は同様であり、クリックケミストリー若しくはアミドケミストリーによる合成後コンジュゲーション又はリガンドホスホラミダイトを用いた固相合成によって行われ得る。
実施例31.ループ上に葉酸塩を有する葉酸塩コンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子を、GalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成用に確立されたプロトコルに従い生成する。本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子は、標準的なクリックケミストリー法又はアミドケミストリー法による固相後コンジュゲーションを用いることによって合成する。一実施形態において、本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子は、葉酸塩ホスホラミダイトを使用した固相合成によって作製する。
ループに葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームU(281〜282頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物S6(クリックケミストリー)又はS13(アミドケミストリー)は、それぞれスキームS(278〜279頁を参照)及びT(280頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。化合物T7及びS13の生成は、先述のとおりのGalNAcコンジュゲートの作製に用いたのと同じプロトコルに従うそれぞれスキームT及びSに示す。一実施形態において、ループに葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAは、例えばスキームU1に示されるとおり、アミドケミストリーを用いて生成する。スキームU(281〜282頁を参照)及びU1(283頁を参照)は、葉酸塩コンジュゲート型ステム−ループdsNAの合成を示し、ここで葉酸塩単量体はループに限定され、個数はただ1個である。同様にスキームV(284〜285頁を参照)及びV1(286〜287頁を参照)は、葉酸塩コンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の合成を示し、ここで葉酸塩単量体はループに限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例32.ステムに葉酸塩を有する葉酸塩コンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
ステムに葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームW(288〜289頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物S6(クリックケミストリー)又はS13(アミドケミストリー)は、それぞれスキームS(278〜279頁を参照)及びT(280頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。スキームW1(290〜291頁を参照)は、アミドケミストリーを用いた葉酸塩コンジュゲート型ステム−ループdsNAの合成を示し、ここで葉酸塩単量体はステムに限定され、個数はただ1個である。同様にスキームX(292〜293頁を参照)及びX1(294〜295頁を参照)は、葉酸塩コンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の合成を示し、ここで葉酸塩単量体はステムに限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例33 アンチセンス鎖の5’伸長部に葉酸塩リガンドを有するdsNAの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部に葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子を、例えばスキームY(296〜297頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成し得る。合成に必要な化合物S6(クリックケミストリー)又はS13(アミドケミストリー)は、それぞれスキームS(278〜279頁を参照)及びT(280頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成し得る。
スキームY1(298〜299頁を参照)は、葉酸塩ホスホラミダイトを使用した葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここで葉酸塩単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定され、個数はただ1個である。しかしながら葉酸塩コンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドは、アンチセンス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目、又は5番目の位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートすることができる。スキームZ(300〜301頁を参照)は、クリックケミストリーを用いたdsNA分子への葉酸塩の固相後コンジュゲーションを示し、ここで葉酸塩単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定されるが、個数は複数個である。スキームZ1(302〜303頁を参照)は、葉酸塩ホスホラミダイトを用いた葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここで葉酸塩単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定されるが、個数は複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例34 センス鎖の5’伸長部に葉酸塩リガンドを有するdsNAの合成
本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子を、GalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成用に確立されたプロトコルに従い生成する。本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子は、標準的なクリックケミストリー法又はアミドケミストリー法による固相後コンジュゲーションを用いることによって合成する。一実施形態において本発明の葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子は、葉酸塩ホスホラミダイトを使用した固相合成によって作製する。
センス鎖の5’伸長部に葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子は、例えばスキームAA(304〜305頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成する。合成用の化合物S6(クリックケミストリー)又はS13(アミドケミストリー)は、それぞれスキームS(278〜279頁を参照)及びT(280頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。
スキームAA1(306〜307頁を参照)は、葉酸塩ホスホラミダイトを使用した葉酸塩コンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここで葉酸塩単量体はセンス鎖の5’伸長部に限定され、個数はただ1個である。しかしながら葉酸塩コンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドは、センス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目又は5番目の位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートすることができる。先に考察した合成スキームを用いて、葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドの個数、並びに葉酸塩リガンドの位置を変えてもよく、例えばリガンドは、センス鎖に沿ったどこにあってもよい。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例35.センス鎖の5’伸長部に1個以上のスペーサーによって隔てられている複数の葉酸塩リガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長領域に葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドを有するdsNAであって、ヌクレオチドがスペーサーによって隔てられているdsNAを、同様のdsNA分子(ここでリガンドはGalNAcである)の合成用に開発されたプロトコルに従い生成する。スキームG、H、I、J及びK(243〜254頁を参照)はGalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成について記載し、ここでリガンドコンジュゲート型ヌクレオチドは1個以上のスペーサーによって隔てられている。葉酸塩コンジュゲート型ヌクレオチドは、センス鎖の5’伸長部、アンチセンス鎖の5’伸長部、センス鎖の3’伸長部、又はアンチセンス鎖の3’伸長部又は前記選択肢の任意の組み合わせにあってもよい。GalNAcリガンドコンジュゲーションに特異的なスキームG、H、I、J及びKは、葉酸塩リガンドコンジュゲートの生成に容易に適合及び改良される。ヌクレオチドへのリガンドのコンジュゲーション方法は類似しており、多くの場合にクリックケミストリー若しくはアミドケミストリーによる合成後コンジュゲーション又はリガンドホスホラミダイトを使用した固相合成によって行われる。スキームV(284〜285頁を参照)及びV1(286〜287頁を参照)は、GalNAcコンジュゲートに関して先述したとおりのクリックケミストリーを利用する固相後コンジュゲーション法を用いた、ループ上に複数の葉酸塩を有する葉酸塩ニック入りテトラループdsNAコンジュゲートの合成を示す。
実施例36.ループ上にマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドを有するマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
本発明のマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型dsNA分子を、GalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成用に確立されたプロトコルに従い生成する。本発明のマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型dsNA分子は、標準的なクリックケミストリー法又はアミドケミストリー法による固相後コンジュゲーションを用いることによって合成する。
ループにマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームAB(308〜309頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物114(クリックケミストリー)又は化合物108(アミドケミストリー)は、それぞれスキームIX(221頁を参照)及びX(222〜223頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。一実施形態において、ループにマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAは、例えばスキームAC(310〜311頁を参照)に示されるとおり、アミドケミストリーを用いて生成する。スキームAB(308〜309頁を参照)及びAC(310〜311頁を参照)は、マンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸(phophate)単量体はループに限定され、合成後方法によって生成する。同様にスキームAD(312〜313頁を参照)及びAE(314〜315頁を参照)は、マンノース−6−リン酸(phophate)ヌクレオシドホスホロアミダイトを使用したマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ステム−ループdsNA分子の固相合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸(phophate)単量体はループに限定される。スキームAD(312〜313頁を参照)では、リガンドマンノース−6−リン酸は2’−トリアゾールリンカーを使用してヌクレオチドに連結され、スキームAEでは、リガンドマンノース−6−リン酸は2’−アセタールリンカーを使用してヌクレオチドに連結される。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例37.ステムにマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドを有するマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ニック入りテトラループdsNAの合成
ステムにマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有するステム−ループdsNAを、例えばスキームAF(316〜317頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーを用いて生成する。合成に必要な化合物114(クリックケミストリー)又は化合物108(アミドケミストリー)は、それぞれスキームIX(221頁を参照)及びX(222〜223頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。スキームAF(316〜317頁を参照)は、クリックケミストリーを用いたマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ステム−ループdsNAの合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸(phophate)単量体はステムに限定され、複数個である。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例38 アンチセンス鎖の5’伸長部にマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドを有するdsNAの合成
アンチセンス鎖の5’伸長部にマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子を、例えばスキームAG(318〜319頁を参照)に示されるとおり、クリックケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成する。合成に必要な化合物114(クリックケミストリー)又は化合物108(アミドケミストリー)は、それぞれスキームIX(221頁を参照)及びX(222〜223頁を参照)に示されるプロトコルに従い生成する。
スキームAG(318〜319頁を参照)は、合成後(postsyntheic)コンジュゲーションを用いたマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型dsNA分子の合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸(phophate)単量体はアンチセンス鎖の5’伸長部に限定される。しかしながらマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドは、アンチセンス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目又は5番目の位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートすることができる。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。マンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート(comjugate)を含有するdsNA分子の同様の変形例をスキームAI、AJ、AK、AL及びAM(322〜331頁を参照)に示す。これらは、先述のとおりのGalNac及びコレステロールコンジュゲート用に設計された同じプロトコルに従い合成される。
実施例39 センス鎖の5’伸長部にマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長部にマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有する本発明のdsNA分子を、例えばスキームAHに示されるとおり、アミドケミストリーによる固相後コンジュゲーションを用いて生成し得る。合成用の化合物114(クリックケミストリー)又は化合物108(アミドケミストリー)は、それぞれスキームIX及びXに示されるプロトコルに従い生成し得る。
スキームAH(320〜321頁を参照)は、アミドケミストリーを用いたマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型dsNA分子の合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸(phophate)単量体はセンス鎖の5’伸長部に限定される。スキームAN(332頁を参照)は、マンノース−6−リン酸−アミダイトを用いたマンノース−6−リン酸コンジュゲート型dsNA分子の固相合成を示し、ここでマンノース−6−リン酸単量体はセンス鎖の5’伸長部に限定される。しかしながらマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型単量体の個数は異なってもよく、例えばリガンドは、センス鎖の5’末端又は3’末端から1番目、2番目、3番目、4番目、5番目若しくは更なる位置又は5番目の位置を越える位置にコンジュゲートすることができる。先に考察した合成スキームを用いて、マンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドの個数、並びにマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドの位置を変えてもよく、例えばリガンドは、センス鎖に沿ったどこにあってもよい。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得られる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示す二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成する。
実施例40.センス鎖の5’伸長部に1個以上のスペーサーによって隔てられている複数のマンノース−6−リン酸(phophate)リガンドを有するdsNAの合成
センス鎖の5’伸長領域にマンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドを有するdsNAであって、ヌクレオチドがスペーサーによって隔てられているdsNAを、同様のdsNA分子(ここでリガンドはGalNAcである)の合成用に開発されたプロトコルに従い生成する。スキームG、H、I、J及びK(243〜254頁を参照)はGalNAcコンジュゲート型dsNA分子の合成について記載し、ここでリガンドコンジュゲート型ヌクレオチドは1個以上のスペーサーによって隔てられている。
マンノース−6−リン酸(phophate)コンジュゲート型ヌクレオチドは、センス鎖の5’伸長部、又はアンチセンス鎖の5’伸長部、又はセンス鎖の3’伸長部、又はアンチセンス鎖の3’伸長部又は前記選択肢の任意の組み合わせにあってもよい。スキームG、H、I、J及びKはGalNAcリガンドコンジュゲーションに特異的に生成し、コレステロールリガンドコンジュゲートを伴う生成に容易に適合及び改良される。ヌクレオチドに対するリガンドのコンジュゲーション方法は同様であり、クリックケミストリー若しくはアミドケミストリーによる合成後コンジュゲーション又はリガンドホスホラミダイトを用いた固相合成によって行われ得る。
例えば、スキームAI、AJ及びAK(322〜327頁を参照)は、マンノース−6−リン酸リガンドを含むdsNAの合成を示し、ここでリガンドはセンス鎖の5’伸長領域に限定され、それぞれ1個又は2個又はそれより多くのスペーサーによって隔てられている。しかしながらマンノース−6−リン酸コンジュゲート型ヌクレオチドの個数は異なってもよく、マンノース−6−リン酸リガンドの位置もまた異なってもよく、例えば、リガンドはセンス鎖に沿ったどこにあってもよい。1個以上のスペーサーによって隔てられているマンノース−6−リン酸リガンドコンジュゲート型ヌクレオチドはまた、アンチセンス鎖及び/又はセンス鎖の5’領域に位置してもよい。スキームAL及びAM(328〜331頁を参照)は、マンノース−6−リン酸リガンドを含むdsNAの合成を示し、ここでリガンドはアンチセンス鎖の5’伸長領域に限定され、それぞれ2個以上のスペーサーによって隔てられている。
前記スキームに示されるとおりのセンス鎖及びその相補アンチセンス鎖は、商業的製造業者から標準的な固相核酸合成手順を用いた合成によって得ることができる。センス鎖は、先述のとおりのセンス鎖A3の合成と同様の方法で合成する。前記スキームに示される二重鎖は、先述のとおりの二重鎖A5の合成と同様の方法で合成するものとする。
実施例41.GalNAcアミダイトシントンの合成
5l H2O中2−(2−クロロエトキシ)エタノール(124.6g)及びナトリウムアジド(130g)を還流させながら一晩加熱した。冷却後、反応混合物をCH2Cl2(3×2000ml)で抽出し、有機層を合わせ、ブライン、無水Na2SO4で洗浄し、ろ過し、減圧下で濃縮すると、2−(2−アジドエトキシ)エタノール、液体105gが得られた。収率:80%(スキームXI、224頁を参照)。2Lの乾燥CH2Cl2中105gの2−(2−アジドエトキシ)エタノール及び200mLのEt3Nの溶液を窒素雰囲気下で0℃に冷却した。この混合物に30分の時間をかけてCH2Cl2(500mL)中メタンスルホニルクロリド(116g)の溶液を滴下して添加し、この溶液を室温に加温し、1.5時間撹拌した。沈殿物をろ去した後、溶媒を蒸発させ、n−ヘキサン及び酢酸エチルの2:1混合物で溶出するカラムクロマトグラフィーによって粗生成物を精製すると、2−(2−アジドエトキシ)エチルメタンスルホネートが淡黄色の油として得られた(126g)。(スキームXI、224頁を参照)。
4Lの乾燥DME中126gの化合物3及び116.5gのカリウムフタルイミドの溶液を窒素雰囲気下に還流させながら18時間加熱した。室温に冷却して真空濃縮した後、得られた残渣を酢酸エチル(10L)で希釈し、固形物をろ過した。ろ液を真空濃縮し、続いてn−ヘキサン及び酢酸エチルの4:1混合物で溶出するカラムクロマトグラフィーによって粗生成物を精製すると、4が無色の固体として得られた(103g)。(スキームXI、224頁を参照)。
2000mLの無水エタノール中100gの化合物4及び40mLの80%ヒドラジン水和物の溶液を55℃で2時間加熱し、その間に白色の沈殿物が形成された。この混合物を室温に冷却して真空濃縮し、その後、粗残渣を2000mLの乾燥CH2Cl2で希釈した。沈殿物をろ去した後、溶媒を乾燥させて真空濃縮すると、淡黄色の油が得られ、これを次のステップで更なる精製なしに使用した(45.7g)。MS M+1:131.0。
化合物6(157g)を乾燥ジクロロメタン(2L)に溶解した。トリエチルアミン(100ml)及びdic(75.7g)を添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。ジクロロメタン(500mL)中化合物5(45.7)を添加し、反応混合物を2時間撹拌した。この混合物を水(1L)で洗浄して濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー精製した。所望の生成物をMeOH−CH2Cl2(0:100〜10:90)で溶出させた。適切な画分を蒸発させると、化合物7が固体として得られた(138.0g)。MS M−1:558.2。
5’−DMT−N6−bz−アデノシン(551.7g;80mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム(283.2g)、ジブチルスズオキシド(DBTO)(238.4g)、及び臭化プロパルギル(338ml)、及び乾燥DMF(2.5)の混合物を50℃で24時間撹拌した。次に混合物を砕氷上に注いだ。この液体をデカントした。ゴム状マスをジクロロメタン(5L)に溶解し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次に濃縮した。粗反応混合物をシリカゲルカラムでクロロホルム:ヘキサン:アセトン(50:40:10〜50:30:20)のグラジエント系を使用して精製した。純5’−DM T−2’−0−プロパルギル−N−bzAの収率は固体として60.5gであった。MS M−1 710.2。
化合物7(71g)及び化合物8(60.5g)をTHF(1L)に溶解した。CuSOS4.5H2O(2.1)及びアスコルビン酸ナトリウム(2.0)を窒素下で添加した。混合物を一晩撹拌した。水(1L)中EDTA(5g)を添加し、30分間撹拌した。トルエン(1L)を添加し、2層を分離した。有機層を蒸発させて、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー精製した。所望の生成物をMeOH−CH2Cl2(0:100〜10:90)で溶出させた。適切な画分を蒸発させると、化合物9が固体として得られた(91.0g)。MS M−1:1269.6。
ジメトキシトリチル化誘導体9(40.0g)をアルゴン下で600mlジクロロメタンに溶解し、エチル−(ジイソプロピル)アミン(10ml)及び2−シアノエチルジイソプロピルホスホラミドクロリダイト(15.0g)を添加した。この溶液を3時間撹拌した後、TLCによって反応完了が示された。10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2ml)を添加し、溶液を10分間撹拌し、塩化メチレン(500ml)と炭酸ナトリウム水溶液(300ml)とに分配した。有機相を塩化ナトリウム水溶液(2×300ml)で洗浄し、水相を塩化メチレン(200ml)で逆抽出した。有機物を蒸発させると油が残り、これをシリカゲル(酢酸エチル)でフラッシュ精製すると、生成物が泡として得られた(34.5g)(MS M−1:1469.6)。
5’−DMT−N2−ibuG(328g)、臭化テトラブチルアンモニウム(177g)、DBTO(150g)、臭化プロパルギル(420ml)及び乾燥DMF(1.3L)の混合物を50℃で24時間撹拌した。次に混合物を砕氷上に注いだ。この液体をデカントした。ゴム状マスをジクロロメタン(5L)に溶解し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次に濃縮した。残渣をシリカゲルカラムでクロロホルム:ヘキサン:アセトン:メタノール(50:30:20:0〜50:30:20:2)のグラジエント系を使用して精製した。純5’−DMT−2’−0−プロパルギル−N2−ibu−Gの収率は、固体として45.0gであった。MS M−1 692.2。
化合物7(18.0g)及び化合物11(15.0g)をTHF(300ml)に溶解した。CuSOS4.5H2O(0.6g)及びアスコルビン酸ナトリウム(0.5g)を窒素下で添加した。混合物を一晩撹拌した。水(0.5L)中EDTA(2.0g)を添加し、30分間撹拌した。トルエン(0.5L)を添加し、2層を分離した。有機層を蒸発させて、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー精製した。所望の生成物をMeOH−CH2Cl2(0:100〜10:90)で溶出させた。適切な画分を蒸発させると、化合物9が固体として得られた(24.0g)。MS M−1:1251.6。
化合物12(24g)をアルゴン下で500mlジクロロメタンに溶解し、エチル−(ジイソプロピル)アミン(8ml)及び2−シアノエチルジイソプロピルホスホラミドクロリダイト(10.0g)を添加した。この溶液を3時間撹拌した後、TLCによって反応完了が示された。10%炭酸水素ナトリウム水溶液(2ml)を添加し、溶液を10分間撹拌し、塩化メチレン(500ml)と炭酸ナトリウム水溶液(300ml)とに分配した。有機相を塩化ナトリウム水溶液(2×300ml)で洗浄し、水相を塩化メチレン(200ml)で逆抽出した。有機物を蒸発させると油が残り、これをシリカゲル(酢酸エチル)でフラッシュ精製すると、生成物が泡として得られた(19.5g)(MS M−1:1451.6)。
化合物13の合成についての同じプロトコルを少し変更して用いて、以下の化合物を作製する。
表3.
N−アセチルガラクトサミンリガンド、N−アセチルガラクトサミン含有ヌクレオチド、及びN−アセチルガラクトサミンオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製は、上記の実施例及び合成スキームに記載される。以下に記載する化合物及び/又はコンジュゲートに使用した具体的なオリゴヌクレオチド配列は、表2に示す。
表4.
本発明に係る有用なリンカーとしては、限定はされないが、表3に提供するリンカーが挙げられる。単一リガンドコンジュゲート型dsNAが2種類以上のリンカーを含み得る。
表5.
本発明に係る有用なリンカーとしては、限定はされないが、表4に提供するリンカーが挙げられる。
表4は、以下の式Yに示される様々な成分の潜在的なリンカー基の組み合わせを示す。
表4は、様々な成分の潜在的なリンカー基の組み合わせを示す。