本発明は、細胞を、細胞内で標的遺伝子の発現を低減するのに有効な量の単離された二本鎖核酸と接触させることを含む、細胞内で標的遺伝子の発現を低減するための組成物及び方法を提供する。本発明のdsNAsは、アンチセンス鎖の5’末端又はセンス鎖の3’末端のいずれかに一本鎖ヌクレオチド領域を所有し、有効なRNA干渉薬剤である(殆どの実施態様では、一本鎖延長部は、少なくとも一つの修飾ヌクレオチド及び/又はホスフェートバックボーン修飾を含む)。驚くべきことに、本明細書に示すように、一本鎖延長ダイサー−基質siRNAs(DsiRNAs)は、対応するDsiRNAsと比較した場合に有効なRNA阻害剤であった。
一本鎖延長DsiRNA薬剤が有効性の低下を有さないという驚くべき発見により、そのような一本鎖DNA−延長ドメインを含まない対応する長さのdsRNA薬剤と比較した場合、有効な状態を維持する一方で、例えば追加の及び/又は別個の官能基に対するDsiRNAsの取り付け、安定化修飾(例えばPS−NA部分)、又は更なる機能性の追加、及び/若しくは例えばそれらの薬剤の薬物動態、薬力学若しくは生体内分布を向上させることが可能な他の修飾形態の包含/パターン化のためのより大きい空間を提供するDsiRNAsの生成が可能となる。
ダイサー−加工後のsiRNA薬剤の活性を同様の長さのdsRNA二重鎖よりも高いレベルに維持するとともに、DsiRNA含有dsNA二重鎖の5’ガイド鎖、3’パッセンジャー鎖又は5’パッセンジャー鎖のいずれかを伸長することによる、新たに発見された能力により提供される利点は、本明細書に提示する結果により強調される。DsiRNA薬剤の5’ガイド鎖、3’パッセンジャー鎖又は5’パッセンジャー鎖のいずれかを、対応するRNAサイレンシング活性の低下を観察することなく延長する能力はまた、所定の官能基をそれらの薬剤に取り付けることを可能にし得、このことは、それらの官能基がより緊密な立体配置内に存在する場合、RNAサイレンシング活性を妨げる能力により不可能である。
加えて、一本鎖延長DsiRNA薬剤は、一本鎖延長DsiRNAsの一本鎖領域と塩基対をなす、例えばガイド鎖の5’の一本鎖延長領域と塩基対をなす第三の短い(1〜16ヌクレオチド長)オリゴヌクレオチドを含んでもよい。第三のオリゴは、一本鎖延長DsiRNA薬剤の使用の以下の利点を提供する:(a)一本鎖延長部を安定化する(特定の理論に束縛されず、単一の鎖延長DsiRNAは、急速に分解し得る)及び(b)標的分子(又は他の活性薬剤)を取り付けることが可能な独立した実体を提供し、該標的分子は次に(標的分子の一本鎖延長DsiRNAに対する直接的な取り付けと対比して)アニーリングを介して、一本鎖鎖延長DsiRNAに連結され得る。
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者により通常理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明で使用される多数の用語の一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and MolecularBiology
(2nd ed. 1994);Cambridge Dictionary of Science and
Technology (Walker ed., 1988);Glossary of genetics,
5thEd., R. Rieger et al., (eds.), Springer Verlag (1991);及びHale & Marham,Harper CollinsDictionary ofBiology (1991)。本明細書で使用される以下の用語は、特に特定されない限り、それらに帰する意味を有する。
本明細書で使用される用語「核酸」は、一本鎖−又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチド及びそれらのポリマーを指す。この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、また所定の場合において、参照ヌクレオチドと同様の様式で代謝される、合成、天然に存在する及び天然に存在しない、既知のヌクレオチド類似体又は修飾バックボーン残基若しくは結合を含有する核酸を包含する。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNAs)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される「ヌクレオチド」は、当技術分野で認識されるように、天然塩基(基準)及び当技術分野にて既知の修飾塩基を含むように使用される。それらの塩基は、概してヌクレオチド糖部分の1’位に位置している。ヌクレオチドは、概して塩基、糖及びホスフェート基を含む。ヌクレオチドは、糖、ホスフェート及び/又は塩基部分において非修飾又は修飾されていてもよい(交換可能にヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、非−天然ヌクレオチド、非−基準ヌクレオチド及びその他とも称される;例えば、全て参照により本明細書に組み込まれるUsman及びMcSwiggen、前出;Ecksteinら、国際PCT公開第WO 92/07065号;Usmanら、国際PCT公開第WO 93/15187号;Uhlman & Peyman、前出、を参照)。Limbach et al, Nucleic Acids Res. 22:2183, 1994に概略されているように、当技術分野にて既知の修飾核酸塩基の数個の例が存在する。核酸分子中に導入され得る塩基修飾のいくつかの非限定的な例には、ヒポキサンチン、プリン、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6−トリメトキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えばリボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば5−ブロモウリジン)又は6−アザピリミジン又は6−アルキルピリミジン(例えば6−メチルウリジン)、プロピン及び他が挙げられる(Burgin et al., Biochemistry 35: 14090, 1996;Uhlman & Peyman、前出)。本態様において「修飾塩基」とは、1’位におけるアデニン、グアニン、シトシン及びウラシル以外のヌクレオチド塩基又はそれらの等価物を意味する。
本明細書で使用される「二本鎖核酸」又は「dsNA」は、二重鎖を形成する二つのオリゴヌクレオチド鎖を含む分子である。dsNAは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。本発明の二本鎖NAsは、RNA干渉経路におけるタンパク質及びタンパク質複合体、例えばダイサー及びRISCの基質である。本発明のdsNAの一つの形態の例示的な構造を、図1A、パネルBに示し、そのような構造は、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)として機能することが可能な領域内のRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA薬剤の第二の鎖の推定されるダイサー切断部位の5’位に位置する一本鎖領域と、を特徴的に含む。本発明のdsNAの他の形態の例示的な構造を図1A、パネルCに示し、そのような構造は、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)して機能することが可能な領域内のRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA薬剤の第一の鎖の推定ダイサー切断部位の3’位に位置する一本鎖領域と、を特徴的に含む。更なる実施態様において、本発明は、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)して機能することが可能な領域内のRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA薬剤の第二の鎖の推定ダイサー切断部位の3’位に位置する、少なくとも一つの修飾ヌクレオチド及び/又はホスフェートバックボーン修飾を含む一本鎖領域と、を特徴的に含む構造を提供する。代替的な実施態様では、本発明は、ダイサー基質siRNA(DsiRNA)して機能することが可能なRNA二重鎖と、DsiRNA/DNA薬剤の第一の鎖の推定ダイサー切断部位の5’位に位置する、少なくとも一つの修飾ヌクレオチド及び/又はホスフェートバックボーン修飾を含む一本鎖領域と、を特徴的に含む構造を提供する。
所定の実施態様において、本発明のDsiRNAsは、ダイサー酵素切断部位(一つ又は複数)に直に隣接する部位において、デオキシリボヌクレオチド残基を所有し得る。例えば、図2に示す全部のDsiRNAs、及び図3に示す6つめ、7つめ、8つめ、9つめ、10個め、11個め及び12個めのDsiRNAsにおいて、デオキシリボヌクレオチドは、(第一の鎖の5’末端残基を1位として開始して)24位、及び24位の3’側の位置(例えば24、25、26、27、28、29、30等)に見出すことができる。デオキシリボヌクレオチドはまた、第一の鎖の20位に相補的なヌクレオチドにて開始する第二の鎖上に配置されてもよく、また、このヌクレオチドの5’方向に位置する第二の鎖上の位置に配置されてもよい。それ故、本発明の所定の有効なDsiRNAsは、そのようなDsiRNAsの第一の鎖、第二の鎖及び/又は両方の鎖内へのデオキシリボヌクレオチドの導入の開始前に、19個の二重鎖のリボヌクレオチドのみ所有する。
本明細書で使用される「二重鎖」は、二つの一本鎖核酸の相互作用により形成される二重の螺旋構造を指す。本発明によれば、二重鎖は、センス及びアンチセンス、又は標的及びアンチセンスである第一の鎖及び第二の鎖を含んでもよい。二重鎖は、一般に、互いに関連して逆平行に配向された二つの一本鎖核酸の間の、塩基の対での水素結合、即ち「塩基対形成」により形成される。本明細書で使用される用語「二重鎖」は、鎖の整合された対が相補的である場合、それらがWatson−Crick塩基対であり得るように整合する、第一の鎖及び第二の鎖の領域を指す。用語「二重鎖」は、5’又は3’末端一本鎖ヌクレオチドを含む一つ又はそれ以上の一本鎖ヌクレオチドを含まない。用語「二重鎖」は、完全に(100%)塩基対をなし得る整合された第一の鎖及び第二の鎖の領域と、第一の鎖の5’末端ヌクレオチドと第一の鎖の3’末端ヌクレオチドとが第二の鎖の対応するヌクレオチドとWatson−Crick塩基対をなす限りにおいて、1、2、3、4又は5個の不対塩基を含む整合された第一の鎖及び第二の鎖の領域とを含む。本明細書で使用される「完全に二重鎖の」は、対をなす5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドとの間の全ヌクレオチドが塩基対をなすことを指す。本明細書で使用される「実質的に二重鎖の」は、第一の鎖の5’末端ヌクレオチドと3’末端ヌクレオチドとの間に1、2、3、4、5個の不対塩基対(連続又は不連続)が存在するような、鎖同士の間の二重鎖を指す。
二重鎖間の対形成は、概してWatson−Crick塩基対形成により生じ、例えばグアニン(G)は、DNA及びRNA中のシトシン(C)と塩基対を形成し(それ故、グアニンデオキシリボヌクレオチドの同族ヌクレオチドは、シトシンデオキシリボヌクレオチドであり、またその逆である)、アデニン(A)は、DNA中のチミン(T)と塩基対を形成し、またRNA中のウラシル(U)と塩基対を形成する。塩基対が形成され得る条件としては、生理学的又は生物学的に関連した条件(例えば細胞内:pH7.2、140mMカリウムイオン;細胞外pH7.4、145mMナトリウムイオン)が挙げられる。更に、二重鎖は、隣接するヌクレオチド間の積み重ね相互作用により安定化される。本明細書で使用される二重鎖は、塩基対形成又は積み重ね相互作用によって確立又は維持され得る。二重鎖は、実質的に相補的な又は完全に相補的であり得る二つの相補的な核酸鎖により形成される(下記参照)。
本明細書で使用される「に対応する」又は「に対応している」は、第二の鎖が1〜6ヌクレオチド長の3’の一本鎖オーバーハングを含むように第一の鎖の1位が前記第二の鎖のヌクレオチドと塩基対をなした際に、前記第二の鎖のヌクレオチド残基が第一の鎖の残基と整合するように、二重鎖に整合された第一の鎖及び第二の鎖の塩基を指す。「に対応する」は、Watson−Crick塩基対の形成を介した対形成を必要とせず、整合された及び不対の第一の鎖/第二の鎖のヌクレオチドと、整合された及び塩基対をなす第一の鎖/第二の鎖のヌクレオチドとの両方を含む。
「相補的な」又は「相補性」は、核酸が、伝統的なWatson−Crick又はHoogsteen塩基対形成のいずれかにより、別の一核酸配列と水素結合を形成できることを意味する。本開示の核酸分子を参照して、核酸分子のその相補的な配列との結合自由エネルギーは、核酸の関連機能、例えばRNAi活性を進行させるのに十分である。核酸分子の結合自由エネルギーの測定は、当技術分野にて周知である(例えばTurner, et al., CSH Symp. Quant.Biol. LII, pp. 123-133, 1987;Frier, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 83:9373-9377, 1986;Turner, et al., J. Am. Chem. Soc. 109:3783-3785, 1987を参照)。パーセント相補性は、第二の核酸配列と水素結合(例えばWatson−Crick塩基対形成)を形成できる核酸分子中の連続的な残基の百分率を示す(例えば10ヌクレオチドを有する第二の核酸配列と塩基対をなす第一のオリゴヌクレオチド中の全部の10ヌクレオチドのうちの5、6、7、8、9又は10ヌクレオチドは、各々、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%相補性である)。パーセント相補性が少なくとも所定の百分率であることを決定するには、第二の核酸配列と水素結合を形成できる(例えばWatson−Crick塩基対形成)核酸分子中の連続的な残基の百分率を計算し、最も近い整数に四捨五入する(例えば、23ヌクレオチドを有する第二の核酸配列と塩基対をなす第一のオリゴヌクレオチド中の全23ヌクレオチドのうちの12、13、14、15、16又は17ヌクレオチドは、各々、52%、57%、61%、65%、70%及び74%を表し;各々、少なくとも50%、50%、60%、60%、70%及び70%相補性を有する)。本明細書で使用される「実質的に相補的な」は、それらが生物学的条件条件下でハイブリダイズ可能な、鎖間の相補性を指す。実質的に相補的な配列は、60%、70%、80%、90%、95%又は更には100%の相補性を有する。加えて、二つの鎖が生物学的条件条件下でハイブリダイズ可能であるか否かを、それらのヌクレオチド配列を調べることにより決定する技術は、当技術分野にて周知である。
アンチセンス鎖に関連して本明細書で使用される「3’領域」は、対応するセンス鎖の1〜19、1〜20又は1〜21位と整合するアンチセンス鎖のヌクレオチドに対して3’方向(アンチセンス鎖上で)である、アンチセンス鎖の連続ヌクレオチドを指す。疑念を避けるために、アンチセンス鎖を指す際、「3’領域」は、推定アルゴノート2(Ago2)切断部位に対して3’方向(5’方向である標的RNA上のヌクレオチドに対応するアンチセンス鎖上の)における、アンチセンス鎖と、その同族標的RNAとの間で形成された二重鎖内のアンチセンスヌクレオチドを包含するものとする。
本発明の薬剤の第一の鎖及び第二の鎖(センス及びアンチセンスオリゴヌクレオチド)は、二重鎖の領域内で完全に相補的である必要はない。一実施態様において、アンチセンス鎖のRNA配列は、一つ又はそれ以上のミスマッチ(1、2、3、4又は5個の連続又は不連続)を含み、即ち本発明による単離された二本鎖核酸の二重鎖のセンス鎖に関連してミスマッチされ、一つ又はそれ以上の(1、2、3、4又は5個の連続又は不連続)修飾ヌクレオチド(塩基類似体)を含む。例示的な実施態様では、そのようなミスマッチは、上記に定義したアンチセンス鎖のRNA配列の3’領域内に生じる。一態様において、2、3、4又は5個のミスマッチ、又は塩基類似体を有する修飾ヌクレオチドは、標的RNA配列がハイブリダイズされた際、標的RNA配列の推定Ago2切断部位のアンチセンス鎖内の3’側である、アンチセンス鎖のRNA配列内に組み込まれる。
ミスマッチ又は低下された熱力学的安定性(詳細には、siRNAsのセンス領域の3’−末端残基/アンチセンス領域の5’−末端残基又はその近辺における)の使用は、おそらくは、iRNAのRISCへの進入により生じるある巻き戻しの律速段階に影響を与えることによって、アンチセンス鎖のRISC中への進入を促進し又は進入に有利に働くことが提案されている。それ故、末端塩基組成物は活性21mer siRNA二重鎖を選択するための設計アルゴリズムに含まれている(Ui−Teiら、2004;Reynoldsら、2004)。
本発明のDsiRNA薬剤にそのようなミスマッチを含ませることにより、それらの薬剤が天然に存在するmiRNAsと類似した阻害効果を発揮することを可能にし得、また場合により、天然に存在するmiRNA標的RNAs(例えば標的転写産物の3’UTR領域)のみではく、それに対する天然に存在する拮抗性miRNAの存在が知られていないRNA配列に対して指向させることができる。例えば、miRNAsと類似し及び/又はmiRNAsとして機能するよう設計された、ミスマッチ塩基対を所有する本発明のDsiRNAsを合成して、天然に存在するmiRNAsにより標的とされない可能性がある遺伝子/転写産物内の反復配列を標的とすることができる(例えば、Notch内の個々の反復が核酸レベルで互いに異なり得る(例えば縮重されている)が、対応する完全なマッチsiRNA薬剤と比較して、ミスマッチを容認し、またより雑多な阻害効果を容認するmiRNA機構を介して有効に標的とすることができる)。そのような実施態様では、阻害効果を発揮するために、ミスマッチ含有DsiRNA薬剤に関する標的RNA切断は、必要であり得又は不必要であり得る。
一実施態様において、本発明の二本鎖核酸分子は、ミクロRNA(miRNA)を含み、又はミクロRNA(miRNA)として機能する。「ミクロRNA」又は「miRNA」とは、mRNA切断、翻訳、抑制/阻害又は異質染色質サイレンシングのいずれかによって標的メッセンジャーRNAの発現を調節する小二本鎖RNAを意味する(例えばAmbros, 2004, Nature, 431, 350-355;Bartel, 2004, Cell, 116, 281-297;Cullen, 2004, Virus Research., 102, 3-9; He
et al., 2004, Nat. Rev. Genet., 5, 522-531 ;及びYing et
al., 2004, Gene, 342, 25-28参照)。一実施態様において、本発明のミクロRNAは、miRNA分子のセンス鎖(例えば第一の鎖)又はセンス領域と、アンチセンス鎖(例えば第二の鎖)又はアンチセンス領域との間、又はmiRNAのアンチセンス鎖又はアンチセンス領域と、対応する標的核酸分子(例えば標的mRNA)との間に、部分的相補性(即ち100%未満の相補性)を有する。例えば、部分的相補性は、二本鎖核酸分子構造内の様々なミスマッチ又は非塩基対ヌクレオチド(例えばヌクレオチドバルジ等の1、2、3、4、5個又はそれ以上のミスマッチ又は非塩基対ヌクレオチド)を含んでもよく、これは、センス鎖又はセンス領域とmiRNAのアンチセンス鎖又はアンチセンス領域との間、又はmiRNAのアンチセンス鎖又はアンチセンス領域と対応する標的核酸分子との間に生じるバルジ、ループ又はオーバーハングをもたらし得る。
多数の塩基に亘って塩基対をなす一本鎖核酸は、「ハイブリダイズ」していると言われる。ハイブリダイゼーションは、一般に、生理学的又は生物学的に関連した条件(例えば細胞内:pH7.2、140mMカリウムイオン;細胞外pH7.4、145mMナトリウムイオン)下で測定される。ハイブリダイゼーション条件は、概して、一価陽イオン及び生物学的に許容され得る緩衝液を含み、二価陽イオン、複合体陽イオン、例えばグルコン酸カリウム由来のグルコン酸塩、ショ糖等の無電荷種、及びサンプル中の水の活性を低減する不活性ポリマー、例えばPEGを含んでも又は含まなくてもよい。そのような条件は、その下で塩基対が形成され得る条件を含む。
ハイブリダイゼーションは、二重鎖を形成している一本鎖核酸の解離に必要な温度、即ち(融点;Tm)により測定される。ハイブリダイゼーション条件はまた、その下で塩基対が形成され得る条件である。様々な厳密性条件を使用してハイブリダイゼーションを測定することができる(例えばWahl, G. M. and S. L.Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel,
A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507参照)。厳密な温度条件は、通常、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含むであろう。50未満の塩基対の長さを有すると予測されるハイブリッドのためのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融点(Tm)よりも5〜10℃低い必要があり、Tmは以下の等式に従って決定される。18未満の塩基対の長さのハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基の#)+4(G+C塩基の#)。長さ18〜49塩基対のハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)、式中、Nは、ハイブリッドの塩基数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(l×SSCに関する[Na+]=0.165M)。例えば、ハイブリダイゼーション測定緩衝液は、表1に示される。
表1
ハイブリダイゼーション条件の有用な変動は、当業者に容易に明かであろう。ハイブリダイゼーション技術は当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis(Science 196: 180, 1977);
Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975);Ausubelら(Current Protocols in MolecularBiology, Wiley Interscience, New
York, 2001);Berger and Kimmel (Antisense to Molecular
Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York);及びSambrook
et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory
Press, New Yorkに記載されている。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド鎖」は、一本鎖核酸分子である。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド(例えば2’修飾を有するヌクレオチド、合成塩基類似体等)又はそれらの組み合わせを含んでもよい。そのような修飾オリゴヌクレオチドは、例えば、向上された細胞取り込み、及びヌクレアーゼの存在下の改善された安定性等の特性により、天然形態よりも好ましい場合がある。
本発明の所定のdsNAsは、キメラdsNAsである。本発明の文脈において、「キメラdsNAs」又は「キメラ」は、各々が少なくとも一つのヌクレオチドから構成される、二つ又はそれ以上の化学的に区別される領域を含むdsNAsである。これらのdsNAsは、一般に、ダイサー基質siRNA(「DsiRNA」)分子を形成するリボヌクレオチド(場合により修飾リボヌクレオチドを含む)を主に含む少なくとも一つの領域を含んでいる。このDsiRNA領域は、例えば従来のホスフェート結合又は修飾ホスフェート結合(例えばホスホロチオエート)を介して、一本鎖ヌクレオチド領域(「一本鎖延長領域」)を含む第二の領域に共有結合し、この第二の領域は、一つ又はそれ以上の有益な特性を付与する(例えば、有効性の増大、例えば効能及び/又はDsiRNA活性の持続時間の増大、認識ドメイン又は特定の位置に対するキメラdsNAのターゲティングの手段としての機能、例えば培養液中の細胞又は対象に投与された際、官能基、ペイロード、検出/検出可能部分の取り付けを改善するための延長領域としての機能、より望ましい修飾及び/又はそのような修飾の改善された空間を可能にする延長領域としての機能等)。この第二の領域は、修飾若しくは合成ヌクレオチド、及び/又は修飾若しくは合成デオキシリボヌクレオチドも含み得る。
本明細書で使用される用語「リボヌクレオチド」は、天然及び合成の、非修飾及び修飾リボヌクレオチドを包含する。修飾は、糖部分に対する変更、塩基部分に対する変更、及び/又はオリゴヌクレオチド中のリボヌクレオチド間の結合に対する変更を含む。本明細書で使用される用語「リボヌクレオチド」は、詳細には、リボース環の2’位に単一のプロトン基を所有するヌクレオチドであるデオキシリボヌクレオチドを除外する。
本明細書で使用される用語「デオキシリボヌクレオチド」は、天然及び合成の、非修飾及び修飾デオキシリボヌクレオチドを包含する。修飾は、糖部分に対する変更、塩基部分に対する変更、及び/又はオリゴヌクレオチド中のデオキシリボヌクレオチド間の結合に対する変更を含む。本明細書で使用される用語「デオキシリボヌクレオチド」は、dsNA薬剤のダイサー切断を可能としない、例えば2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエート−修飾リボヌクレオチド残基等の修飾リボヌクレオチドも含み、これらは、それらの残基の結合部にダイサー切断が起こることを可能としない。
本明細書で使用される用語「PS−NA」は、ホスホロチオエート−修飾ヌクレオチド残基を指す。従って用語「PS−NA」は、ホスホロチオエート−修飾リボヌクレオチド(「PS−RNAs」)及びホスホロチオエート−修飾デオキシリボヌクレオチド(「PS−DNAs」)の両方を包含する。
所定の実施態様において、本発明のキメラDsiRNA/DNA薬剤は、少なくとも23ヌクレオチド長の少なくとも一つの二重鎖領域を含み、該二重鎖領域内で全ヌクレオチドの少なくとも50%が非修飾リボヌクレオチドである。本明細書で使用される用語「非修飾リボヌクレオチド」は、リボース糖の2’位にヒドロキシル(−OH)基を所有するリボヌクレオチドを指す。
所定の実施態様において、本発明のキメラDsiRNA/DNA薬剤は、第一の鎖上の推定ダイサー切断部位の3’側、及び第二の鎖上の推定ダイサー切断部位の5’側に位置する、少なくとも2塩基対のヌクレオチド長の長さを有する少なくとも一つの領域を含み、この少なくとも2塩基対のヌクレオチド長の領域内の全ヌクレオチドの50%は、非修飾デオキシリボヌクレオチドである。本明細書で使用される用語「非修飾デオキシリボヌクレオチド」は、リボース糖の2’位に単一のプロトンを所有するリボヌクレオチドを指す。
本明細書で使用されるアンチセンス鎖、ガイド鎖及び第二のオリゴヌクレオチドは、本発明による所定のダイサー基質分子の同一の鎖を指し;一方、センス鎖、パッセンジャー鎖、及び第一のオリゴヌクレオチドは、所定のダイサー基質の同一の鎖を指す。
本明細書で使用される「アンチセンス鎖」は、標的RNAの配列に対して相補的な配列を有する一本鎖核酸分子を指す。アンチセンス鎖が、塩基類似体を有する修飾ヌクレオチドを含む場合、必ずしもその完全長に亘って相補的ではないが、少なくとも標的RNAとハイブリダイズする必要がある。
本明細書で使用される「センス鎖」は、アンチセンス鎖の配列に対して相補的な配列を有する一本鎖核酸分子を指す。アンチセンス鎖が塩基類似体を有する修飾ヌクレオチドを含む場合、センス鎖は、必ずしもアンチセンス鎖の完全長に亘って相補的ではないが、少なくともアンチセンス鎖とハイブリッドを形成することが可能である必要があり、それ故アンチセンス鎖との二重鎖形成が可能である必要がある。
本明細書で使用される「ガイド鎖」は、標的RNAの配列に対して十分相補的な配列を有してRNA干渉をもたらす、dsNA又はdsNA含有分子の一本鎖核酸分子を指す。ダイサーによってdsNA又はdsNA含有分子が切断された後、RISCと関連して残留したガイド鎖の断片が、RISC複合体の構成成分として標的RNAに結合し、RISCによる標的RNAの切断を促進する。ガイド鎖は、アンチセンス鎖である。
本明細書で使用される「標的RNA」は、標的切断又は立体妨害等の、アンチセンス鎖により案内される調節に付されるRNAを指す。標的RNAは、例えばウイルスゲノムRNA、mRNA、プレ−mRNA又は非コード化RNAであり得る。好ましい標的は、ApoB、Bcl2、Hif−lalpha、Survivin、又はHa.ras、K−ras若しくはN−ras等のp21rasのような、疾病関連のタンパク質をコードするmRNA等のmRNAである。
本明細書で使用される「パッセンジャー鎖」は、ガイド鎖の配列に対して相補的な配列を有する、dsNA又はdsNA含有分子のオリゴヌクレオチド鎖を指す。パッセンジャー鎖は、センス鎖である。
本明細書で使用される「ダイサー」は、dsRNA又はdsRNA含有分子、例えば二本鎖RNA(dsRNA)又はプレ−ミクロRNA(miRNA)を、通常3’末端上に二塩基オーバーハングを有する約19〜25ヌクレオチド長の二本鎖核酸断片に切断する、RNaseIIIファミリーのエンドリボヌクレアーゼを指す。本発明のdsNAsに関連して、本発明のdsNAのdsRNA領域により形成される二重鎖はダイサーにより認識され、二重鎖の少なくとも一つの鎖上においてダイサー基質である。ダイサーはRNA干渉経路の第一のステップを触媒し、これは結果として標的RNAの分解をもたらす。ヒトダイサーのタンパク質配列は、参照により本明細書に組み込まれるNCBIデータベースにてアクセッションナンバーNP_085124で提供されている。
ダイサー「切断」は、以下のように測定される(例えばCollingwood et al., Oligonucleotides 18: 187-200 (2008)参照)。ダイサー切断アッセイにおいて、RNA二重鎖(100pmol)を20μLの20mM Tris pH8.0、200mM NaCl、2.5mM MgC12中で、1単位の組み換えヒトダイサー(ストラタジーン、カリフォルニア州ラホーヤ(LaJolla))と共に37℃で18〜24時間インキュベートする。Performa SR 96−ウェルプレート(エッジバイオシステムズ、メリーランド州ゲイザースバーグ)を使用してサンプルを脱塩する。ダイサーを用いたエレクトロスプレー−イオン化液体クロマトグラフィー質量分析法(ESI−LCMS)の二重鎖RNAs前−及び後処理を、ThermoFinnigan TSQ7000、Xcaliburデータシステム、ProMassデータ加工ソフトウェア及びParadigm MS4 HPLC(Michrom BioResources、カリフォルニア州オーバーン)からなるOligo HTCSシステム(Novatia、ニュージャージー州プリンストン;Hailら、2004)を使用して行う。このアッセイでは、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は更には100%のダイサー基質dsRNA、(即ち25〜35bp dsRNA、好ましくは26〜30bp dsRNA、場合により本明細書に記載するように延長)がより短いdsRNA(例えば19〜23bp dsRNA、好ましくは21〜23bp dsRNA)に切断されるダイサー切断が起こる。
本明細書で使用される「ダイサー切断部位」は、ダイサーがdsRNAを切断する部位を指す(例えば、本発明のdsNAのdsRNA領域)。ダイサーは、一般に、dsRNAのセンス及びアンチセンス鎖の両方を切断する二つのRNaseIIIドメインを含む。RNaseIIIドメインとPAZドメインとの間の平均距離は、ダイサーが生成する短い二本鎖核酸断片の長さを決定し、この距離は変更することができる(MacraeIら(2006)。「Structural basis for double-stranded RNA processing by Dicer」。Science 311 (5758): 195-8。)例えば図2に示すように、ダイサーは、2ヌクレオチド3’オーバーハングを有するアンチセンス鎖を所有する本発明の所定の二本鎖核酸を、アンチセンス鎖の3’末端から21stと22ndヌクレオチドとの間の部位において、及びセンス鎖の5’末端から21stと22ndヌクレオチドとの間の対応する部位において切断して、除去すると推定される。図2に示したものとは異なるdsNA分子の推定される及び/又は一般的なダイサー切断部位は、Macraeらに記載されているものを含む、当技術分野にて認められている方法により同様に同定することができる。図2に示したダイサー切断事象は21ヌクレオチドsiRNAを生成するが、dsNA(例えばDsiRNA)のダイサー切断は、19〜23ヌクレオチド長の長さのダイサー−加工siRNAの生成をもたらし得ることに注目される。実際に、以下により詳細に記載される本発明の一態様では、二本鎖DNA領域は、一般に非優先の19mer siRNAの一般的なダイサー切除を案内する目的で、dsNA中に含められる。
本明細書で使用される「オーバーハング」は、dsNAの5’末端又は3’末端のいずれかに2つ又は4つの遊離末端を有する二重鎖の状況において、不対ヌクレオチドを指す。
所定の実施態様において、オーバーハングは、アンチセンス鎖又はセンス鎖上の3’又は5’オーバーハングである。
本明細書で使用される「標的」は、その発現又は活性が変更される任意の核酸配列を指す。特定の実施態様において、標的は、RISC複合体内のアンチセンス鎖である一本鎖核酸と二重鎖をなすRNAを指す。アンチセンス鎖に対する標的RNAのハイブリダイゼーションは、RISC複合体による加工をもたらす。その結果、RNA、例えばmRNAによりコードされるRNA又はタンパク質の発現が低減される。
本明細書で使用される用語「RNA加工」は、以下により詳細に記載される、siRNA、miRNA又はRNaseH経路の構成成分(例えばドローシャ、ダイサー、アルゴノート2又は他のRISCエンドヌクレアーゼ及びRNaseH)により行われる加工活性を指す(下記の「RNA加工」セクション参照)。この用語は、RNAの5’キャッピングの転写後加工、及び非−RISC−又は非−RNaseH−仲介プロセスを介したRNAの分解とは明確に区別される。そのRNAの「分解」は、例えば脱アデニル化(3’ポリ(A)テールの除去)、及び/又は数個のエンド−又はエキソ−ヌクレアーゼ(例えばRNase III、RNase P、RNase Tl、RNase A(1、2、3、4/5)、オリゴオリゴヌクレオチダーゼ等)のいずれかによる、RNAの本体の一部又は全部のヌクレアーゼ消化等のいくつかの形態をとることができる。
本明細書で使用される「参照」は、基準又は対照を意味する。当業者に明かなように、適切な参照は、1つの要素の効果を決定ために、その1つの要素のみが変更されている。
本明細書で使用される「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、フラノース環又はホスフェート基に対する一つ又はそれ以上の修飾を有するヌクレオチドを指す。例えば、修飾ヌクレオチドは、アデノシンモノホスフェート、グアノシンモノホスフェート、ウリジンモノホスフェート及びシチジンモノホスフェートを含有するリボヌクレオチド、並びにデオキシアデノシンモノホスフェート、デオキシグアノシンモノホスフェート、デオキシチミジンモノホスフェート及びデオキシシチジンモノホスフェートを含有するデオキシリボヌクレオチドを除外する。修飾は、ヌクレオチドを修飾する酵素、例えばメチルトランスフェラーゼによる修飾から生じる天然に存在するものを含む。修飾ヌクレオチドは、合成又は天然に存在しないヌクレオチドも含む。ヌクレオチド内の合成又は天然に存在しない修飾には、2’修飾、例えば2’−メトキシエトキシ、2’−フルオロ、2’−アリル、2’−O−[2−(メチルアミノ)−2−オキソエチル]、4’−チオ、4’−CH2−O−2’−ブリッジ、4’−(CH2)2−O−2’−ブリッジ、2’−LNA及び2’−O−(N−メチルカルバメート)又は塩基類似体を含むものが挙げられる。本開示にて記載される2’−修飾ヌクレオチドに関連して、「アミノ」は、修飾又は非修飾であってもよい2’−NH2又は2’−O−NH2を意味する。そのような修飾基は、例えばEcksteinら、米国特許第5,672,695号及びMatulic−Adamicら、米国特許第6,248,878号に記載されている。
用語「インビトロでの」は、その技術分野にて認識されている意味を有し、例えば精製試薬又は抽出物、例えば細胞抽出物に関与する。用語「インビボでの」もその技術分野にて認識されている意味を有し、例えば生細胞、例えば不死化細胞、初代細胞、細胞株、及び/又は生物中の細胞を含む。
本開示の核酸分子を参照して、dsNAのいずれかの鎖上の所定の位置におけるヌクレオチドは、特定され得る。図1〜3を参照して、本発明のDsiRNAsの位置を表示すための慣習は、表2に示される。
表2 鎖位置に関する付番の慣習の記載
本開示の核酸分子を参照して、修飾はdsNAの鎖上のパターンにて存在し得る。本明細書で使用される「交互の位置」は、規定されたdsNA鎖長に亘って、一つ置きのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドであり、又は各修飾ヌクレオチドの間に非修飾ヌクレオチド(例えば、非修飾リボヌクレオチド)が存在するパターンを指す(例えば5’−ΜΝΜΝΜΝ−3’;3’−MNMNMN−5’;式中、Mは修飾ヌクレオチドであり、Nは非修飾ヌクレオチドである)。修飾パターンは、本明細書に記載する任意の位置付番慣習に従って5’又は3’末端のいずれかの第一のヌクレオチド位置から開始する(所定の実施態様では、1位は、本発明のDsiRNA薬剤の推定ダイサー切断事象の後、鎖の末端残基を参照して指定され;それ故、1位は、常に本発明の加工前薬剤の3’末端又は5’末端残基を構成するわけではない)。交互の位置の修飾ヌクレオチドのパターンは、鎖の完全長を延びてもよいが、所定の実施態様では、各々が少なくとも2、3、4、5、6又は7個の修飾ヌクレオチドを含有する少なくとも4、6、8、10、12、14個のヌクレオチドを含む。本明細書で使用される「交互の位置の対」は、規定されたdsNA鎖長に亘って、二つの連続修飾ヌクレオチドが、二つの連続非修飾ヌクレオチドにより分離されているパターンを指す(例えば5’−MMNNMMNNMMNN−3’;3’−MMNNMMNNMMNN−5’;式中、Mは修飾ヌクレオチドであり、Nは非修飾ヌクレオチドである)。修飾パターンは、本明細書に記載する任意の位置付番慣習に従って5’又は3’末端のいずれかの第一のヌクレオチドの位置から開始する。交互の位置の修飾ヌクレオチドのパターンは、鎖の完全長を延びてもよいが、好ましくは、各々が少なくとも4、6、8、10、12又は14修飾ヌクレオチドを含有する少なくとも8、12、16、20、24、28ヌクレオチドを含む。上記の修飾パターンは例示であり、本発明の範囲の限定を意図するものではないことが強調される。
本明細書で使用される「塩基類似体」は、核酸二重鎖内に組み込まれることができる修飾ヌクレオチド内のヌクレオチド糖部分の1’位(又は、核酸二重鎖に組み込まれることができるヌクレオチド糖部分置換物(substitution)内の等価な位置)に位置する複素環部分を指す。本発明のdsNAsでは、塩基類似体は、概して、通常の塩基グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)及びウラシル(U)を除外したプリン又はピリミジン塩基のいずれかである。塩基類似体は、dsRNAs内の他の塩基又は塩基類似体と二重鎖をなすことができる。塩基類似体は、本発明の化合物及び方法に有用なもの、例えば参照により本明細書に組み込まれるBennerに付与された米国特許第5,432,272号及び米国特許第6,001,983号、並びにManoharanに付与された米国特許公開第20080213891号に開示されているものを含む。塩基の非限定的な例には、ヒポキサンチン(I)、キサンチン(X)、3−D−リボフラノシル−(2,6−ジアミノピリミジン)(K)、3−β−D−リボフラノシル−(1−メチル−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5,7(4H,6H)−ジオン)(P)、イソ−シトシン(イソ−C)、イソ−グアニン(イソ−G)、Ι−β−D−リボフラノシル−(5−ニトロインドール)、l−−D−リボフラノシル−(3−ニトロピロール)、5−ブロモウラシル、2−アミノプリン、4−チオ−dT、7−(2−チエニル)−イミダゾ[4,5−b]ピリジン(Ds)及びピロール−2−カルバルデヒド(Pa)、2−アミノ−6−(2−チエニル)プリン(S)、2−オキソピリジン(Y)、ジフルオロトリル、4−フルオロ−6−メチルベンゾイミダゾール、4−メチルベンゾイミダゾール、3−メチルイソカルボスチリリル、5−メチルイソカルボスチリリル、及び3−メチル−7−プロピニルイソカルボスチリリル、7−アザインドリル、6−メチル−7−アザインドリル、イミダゾピリジニル、9−メチル−イミダゾピリジニル、ピロロピリジニル、イソカルボスチリリル、7−プロピニルイソカルボスチリリル、プロピニル−7−アザインドリル、2,4,5−トリメチルフェニル、4−メチルインドリル、4,6−ジメチルインドリル、フェニル、ナフタレニル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル、スチルベンジル、テトラセニル、ペンタセニル、及びそれらの構造的誘導体が挙げられる(Schweitzer et al., J. Org. Chem., 59:7238-7242 (1994);Berger et al.,
Nucleic Acids Research, 28(15):2911-2914 (2000); Moran et al., J. Am. Chem.
Soc, 119:2056-2057 (1997); Morales et al., J. Am. Chem. Soc, 121:2323-2324
(1999); Guckian et al., J. Am. Chem. Soc, 118:8182-8183 (1996); Morales et al.,
J. Am. Chem. Soc,122(6):1001~1007 (2000); McMinn et al., J. Am. Chem. Soc,
121:11585-11586 (1999); Guckian et al., J. Org. Chem., 63:9652-9656 (1998);
Moran et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 94: 10506-10511 (1997);Das et al., J.
Chem. Soc, Perkin Trans., 1 : 197-206 (2002); Shibata et al., J. Chem. Soc,
Perkin Trans., 1: 1605-1611 (2001); Wu et al., J. Am. Chem. Soc,
122(32):7621-7632 (2000); O’Neill et al., J. Org. Chem., 67:5869-5875 (2002);
Chaudhuri et al., J. Am. Chem. Soc, 117: 10434-10442 (1995);及び米国特許第6,218,108号)。塩基類似体は、普遍的塩基でもあり得る。
本明細書で使用される「普遍的塩基」は、核酸二重鎖内に存在する場合、二重螺旋構造(例えば、ホスフェートバックボーンの構造)を変更することなく、二つ以上の塩基タイプの反対側に位置することができる、修飾ヌクレオチド内のヌクレオチド糖部分の1’位に位置するか又ヌクレオチド糖部分置換物内の等価な位置に位置する複素環部分を指す。加えて、普遍的塩基は、その内部に普遍的塩基が存在する一本鎖核酸の、標的核酸と二重鎖をなす能力を破壊しない。普遍的塩基を含有する一本鎖核酸の、標的核酸と二重鎖をなす能力は、当業者に明かな方法によりアッセイすることができる(例えばUV吸光度、円偏光二色性、ゲルシフト、一本鎖ヌクレアーゼ感受性等)。加えて、融点(Tm)は核酸二重鎖の安定性と相関するため、二重鎖形成が観察される条件、例えば温度を変更して、二重鎖の安定性又は形成を決定することができる。標的核酸とまさに相補的な参照一本鎖核酸と比較すると、普遍的塩基を含有する一本鎖核酸は、相補的な核酸と共に形成された二重鎖よりも低いTmを有する二重鎖を標的核酸と共に形成する。しかしながら、単一のミスマッチを生成するために普遍的塩基が塩基と代替されている参照一本鎖核酸と比較すると、普遍的塩基を含有する一本鎖核酸は、ミスマッチ塩基を有する核酸と共に形成された二重鎖よりも高いTmを有する二重鎖を標的核酸と共に形成する。
いくつかの普遍的塩基は、塩基対形成条件下で、普遍的塩基と、塩基グアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)、及びウラシル(U)の全部との間で水素結合を形成することにより塩基対形成が可能である。普遍的塩基は、単一の相補的な塩基のみと塩基対を形成する塩基ではない。二重鎖では、普遍的塩基は水素結合を形成しない場合があり、又は、反対側の二重鎖の鎖上の、普遍的塩基の反対側のG、C、A、T、及びUの各々と一つの水素結合を形成し、又は二つ以上の水素結合を形成する。好ましくは、普遍的塩基は、反対側の二重鎖の鎖上の、普遍的塩基の反対側の塩基と相互作用しない。二重鎖では、普遍的塩基間の塩基対形成は、ホスフェートバックボーンの二重螺旋構造を変更することなく生じる。普遍的塩基は、積み重ね相互作用により同一核酸鎖上の隣接ヌクレオチド内の塩基とも相互作用し得る。そのような積み重ね相互作用は、特に普遍的塩基が、反対側の二重鎖の鎖上の、普遍的塩基の反対側に位置する塩基と任意の水素結合を形成しない状況において二重鎖を安定化する。普遍的−結合ヌクレオチドの非限定的な例としては、イノシン、1−β−D−リボフラノシル−5−ニトロインドール、及び/又は1−β−D−リボフラノシル−3−ニトロピロールが挙げられる(Quayらに付与された米国特許出願公開第20070254362号;Van Aerschot et al., 5-nitroindazole nucleoside analogue as
ambiguous nucleoside. Nucleic Acids Res. 1995 Nov l l;23(21):4363-70;Loakes et al.,3-Nitropyrrole and 5-nitroindole as universal bases in
primers for DNA sequencing and PCR.Nucleic Acids Res. 1995 Jul l
l;23(13):2361-6;Loakes and Brown, 5-Nitroindole as an
universal base analogue.Nucleic Acids Res. 1994 Oct l l ;22(20):4039-43)。
本明細書で使用される「ループ」は、特定の一本鎖ヌクレオチド領域に隣接した相補的な領域が、相補的な領域の間の一本鎖ヌクレオチド領域が二重鎖形成又はWatson−Crick塩基対形成から除外されるようにハイブリダイズする、核酸の一本鎖から形成された構造を指す。ループは、任意の長さの一本鎖ヌクレオチド領域である。ループの例は、ヘアピン、ステムループ又は延長ループ等の構造で存在する不対ヌクレオチドを含む。
本明細書で使用される、dsRNAの文脈における「延長ループ」は、一本鎖ループと、更にループに隣接した1、2、3、4、5、6個又は20個までの塩基対又は二重鎖とを指す。延長ループでは、ループの5’側に隣接するヌクレオチドが、ループの3’側に隣接するヌクレオチドと二重鎖を形成する。延長ループは、ヘアピン又はステムループを形成してもよい。
本明細書で使用される、dsRNAの文脈における「テトラループ」は、隣接するWatson−Crickハイブリダイズヌクレオチドの安定性に寄与する、安定な二次構造を形成する4つのヌクレオチドからなるループ(一本鎖領域)を指す。理論に制限されるものではないが、テトラループは、隣接するWatson−Crick塩基対を積み重ね相互作用により安定化し得る。加えて、テトラループ内の4つのヌクレオチド間の相互作用には、非−Watson−Crick塩基対形成、積み重ね相互作用、水素結合及び接触相互作用が挙げられるがこれらに限定されない(Cheong et al., Nature 1990 Aug 16;346(6285):680-2; Heus and Pardi,
Science 1991 Jul 12;253(5016): 191-4)。テトラループは、4つの無作為塩基からなる単純なモデルループ配列から期待されるものよりも高い、隣接二重鎖の融点(Tm)の上昇を与える。例えば、テトラループは、10mM NaHPO4中で、少なくとも2塩基対の長さの二重鎖を含むヘアピンに少なくとも55℃の融点を与え得る。テトラループは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。RNAテトラループの例には、テトラループのUNCGファミリー(例えばUUCG)、テトラループのGNRAファミリー(例えばGAAA)、及びCUUGテトラループが挙げられる。(Woese et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1990 Nov;87(21):8467-71;Antaoet et al., Nucleic Acids Res. 1991 Nov l l;19(21):5901-5)。DNAテトラループの例には、テトラループのd(GNNA)ファミリー(例えばテトラループのd(GTTA)、d(GNRA)ファミリー、テトラループのd(GNAB)ファミリー、テトラループのd(CNNG)ファミリー、テトラループのd(TNCG)ファミリー(例えばd(TTCG))が挙げられる。(Nakano et al. Biochemistry, 41 (48), 14281 -14292, 2002.; SHINJI et al. Nippon Kagakkai Koen Yokoshu VOL.78th; NO.2; PAGE.731
(2000)。)
本明細書で使用される「増大する」又は「向上させる」は、アッセイにて参照と比較して少なくとも5%、正に変更することを意味する。変更は、アッセイにて参照と比較して5%、10%、25%、30%、50%、75%又は更には100%であってもよい。「ダイサー切断を向上させる」とは、ある量のdsRNA又はdsRNA含有分子のダイサーによる加工が、より大量のダイサー切断dsRNA生成物をもたらし、又は本開示のインビボ若しくはインビトロでのアッセイにおいて、ダイサー切断反応が同一の量の参照dsRNA又はdsRNA含有分子の加工と比較してより急速に起こり、又はダイサー切断がdsNA内の特定の、好ましい部位に指向され、及び/若しくは切断生成物の好ましい集団のより高い普及をもたらす(例えば、本明細書に記載するDNA残基を含めることにより)ことを意味する。一実施態様において、dsNA分子の向上された又は増大されたダイサー切断は、適切な参照dsNA分子で観察されたレベルよりも高い。別の実施態様では、dsNA分子の向上された又は増大されたダイサー切断は、不活性又は弱毒化分子で観察されたレベルよりも高い。
本明細書で使用される「低減する」は、アッセイにて参照と比較して少なくとも5%、負に変更することを意味する。変更は、アッセイにて参照と比較して5%、10%、25%、30%、50%、75%又は更には100%であってもよい。「低減された発現」とは、本開示のインビボ又はインビトロでのアッセイにおいて、遺伝子の発現、又は一つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットをコードするRNA分子若しくは等価なRNA分子のレベル、又は標的遺伝子によりコードされる一つ若しくはそれ以上のタンパク質若しくはタンパク質サブユニットのレベル若しくは活性が、核酸分子(例えばdsRNA分子又はdsRNA含有分子)の不在下で観察されたレベルよりも低いことを意味する。一実施態様において、dsNA分子による阻害、下方調節又は低減は、不活性又は弱毒化分子の存在下で観察されたレベルよりも低い。別の実施態様では、dsNA分子による阻害、下方調節又は低減は、例えばスクランブル配列又はミスマッチを有するdsNA分子の存在下で観察されたレベルよりも低い。別の実施態様では、本開示の核酸分子による遺伝子発現の阻害、下方調節又は低減は、核酸分子の不在下よりも核酸分子の存在下でより高い。
本明細書で使用される「細胞」は、原核生物(例えば細菌)及び真核生物(例えば哺乳動物又は植物)細胞の両方を含むことを意味する。細胞は、細胞又は生殖系列起源であってもよく、全能性又は多能性であってもよく、分裂又は非分裂であってもよい。細胞はまた、配偶子又は胚、幹細胞又は完全に分化した細胞から誘導され又はそれらを含んでもよい。それ故、用語「細胞」は、その通常の生物学的条件を維持することを意味し、例えば、鳥、植物、及び例えば、ヒト、雌牛、羊、類人猿、猿、豚、犬及び猫を含む哺乳動物等の任意の生物中に存在してもよい。所定の態様において、用語「細胞」は、詳細には、一つ又はそれ以上の単離された本開示のdsNA分子を含む、ヒト細胞等の哺乳動物細胞を指す。特定の態様では、細胞は、標的核酸のRNA干渉をもたらすdsRNAs又はdsRNA含有分子を所有し、またRNAiに必要なタンパク質及びタンパク質複合体、例えばダイサー及びRISCを含む。
本明細書で使用される「動物」は、哺乳動物、特にヒトを含む多細胞、真核生物を意味する。本発明の方法は、一般に、有効量の、本明細書の式の構造を有する薬剤等の本明細書の薬剤を、それを必要とする哺乳動物、特にヒトを含む対象(例えば動物、ヒト)に投与することを含む。そのような処置は、疾病若しくはその徴候に苦しむ、又は疾病若しくはその徴候を有する、又は疾病若しくはその徴候に罹りやすい、又は疾病若しくはその徴候の危険性を有する対象、特にヒトに好適に投与されるであろう。
「薬学的に許容され得る担体」とは、本開示の核酸分子の所望の活性に最も好適である物理学的位置内での該核酸分子の有効な分布を可能にする組成物又は製剤を意味する。
本発明は、真核生物細胞内で標的遺伝子の発現を低減することが可能な、同一の薬剤中に二本鎖RNA(「dsRNA」)二重鎖及びDNA含有延長領域−殆どの実施態様においてdsDNA二重鎖−の両方を含有する組成物と、それらを調製する方法とに関する。dsRNA領域の鎖の一つは、標的遺伝子から転写されるRNAの破壊を案内できる、約15〜約22ヌクレオチドの範囲の長さのヌクレオチド配列の領域を含む。それらの薬剤のdsDNA二重鎖領域は、標的RNAと必ずしも相補的ではなく、従ってその場合、標的RNAの破壊を案内できるヌクレオチド配列の領域の標的RNAハイブリダイゼーションを向上させない。本発明の二本鎖NAsは、化学的に結合された鎖を所有してもよく、又は、場合により第一の鎖及び第二の鎖と結合するテトラループを含む延長ループも所有し得る。いくつかの実施態様では、テトラループを含有する延長ループは、センス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の5’末端、又は両方に存在する。
一実施態様において、本発明のdsNAは、長さ18〜30nts(例えば、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29及び30nts)の二本鎖RNA二重鎖領域を含む。
本発明による「延長」DsiRNA薬剤は、「ガイド延長」(ダイサー基質中にアンチセンス鎖を加えるのに必要な、26〜30塩基アンチセンス配列に加えて分子上に存在するアンチセンス鎖の5’末端におけるヌクレオチド領域)又は「パッセンジャー延長」(ダイサー基質中にセンス鎖を加えるのに必要な、25〜30塩基センス配列に加えて場合により分子上に存在するセンス鎖の3’末端におけるヌクレオチド領域;又はダイサー基質中にセンス鎖を加えるのに必要な、25〜30塩基配列に加えて場合によりセンス鎖上に存在するセンス鎖の5’末端におけるヌクレオチド領域)のいずれかに分類され得る。従って、本明細書で使用される用語「延長された」は、1〜6個の一本鎖ヌクレオチドのアンチセンス(又は第二の鎖若しくはガイド鎖)3’オーバーハングを指すことを意味せず;本明細書で使用される「延長された」は、ダイサー基質分子の反対側の末端、即ち5’延長アンチセンス鎖を指し、ここで延長領域は10〜30、好ましくは10〜15ヌクレオチド長であり、又は3’延長センス鎖を指し、ここで延長領域は10〜30、好ましくは10〜15ヌクレオチド長である。5’延長アンチセンス鎖は一本鎖であってもよく、場合によりアンチセンス鎖の5’延長一本鎖領域に対して相補的な、好ましくは完全に(100%)相補的な第三の核酸分子と二重鎖をなし得る。従って、いくつかの実施態様では、即ち第三の核酸分子が存在する場合、アンチセンス鎖の5’延長領域は一本鎖ではなく、二重鎖又は二本鎖領域である。好ましくは本発明によれば、5’延長アンチセンス領域に対して相補的な第三の核酸分子、即ちセンス領域は、同族5’延長アンチセンス領域が存在しない限り存在しない。
本発明のDsiRNA/dsDNA薬剤は、延長された第二の鎖(例えばアンチセンス)5’領域又は延長された第一の鎖(例えばセンス)3’領域を有さないDsiRNAsに対して、薬剤の以下の特性を高めることができる:インビトロでの有効性(例えば効能及び効果の持続時間)、インビボでの有効性(例えば効能、効果の持続時間、薬物動態、薬力学、細胞内取り込み、低下された毒性)。所定の実施態様において、第二の鎖の5’延長領域又は第一の鎖の3’延長領域は、場合によりアプタマー又はその断片等の追加の薬剤(又はその断片);各々が配列非選択的に又は配列特異的に第二の鎖の5’延長ヌクレオチド領域又は第一の鎖の3’延長領域に結合できる天然の又は外因的に導入される部分のための結合部位(例えば「デコイ」結合部位)が提供されてもよい(例えば、本発明の薬剤の第二の鎖の5’延長ヌクレオチド領域は、一つ又はそれ以上の転写因子認識配列を含むように設計することができ、及び/又は第二の鎖の5’延長ヌクレオチド領域は、プローブ、マーカー等のための配列特異的な認識ドメインを提供することができる)。
本明細書で使用される用語「薬物動態」は、それによって薬物が身体により吸収、分布、代謝及び排除される過程を指す。本発明の所定の実施態様では、5’延長第二の鎖pr3’延長第一の鎖DsiRNA薬剤の、適切な対照DsiRNAに対して向上された薬物動態は、それらの薬剤の増大された吸収及び/若しくは分布、並びに/又は、それらの薬剤が投与された対象からの、第二の鎖の5’延長DsiRNA薬剤若しくは第一の鎖の3’延長DsiRNA薬剤の遅延された代謝及び/若しくは排除を指す。
本明細書で使用される用語「薬力学」は、生命体に対する薬物の作用又は効果を指す。本発明の所定の実施態様では、適切な対照DsiRNAに対する、第二の鎖の5’延長DsiRNA薬剤又は第一の鎖の3’延長DsiRNA薬剤の向上された薬力学は、それらの薬剤が投与された対象に対する、各々、第二の鎖の5’延長DsiRNA薬剤又は第一の鎖の3’延長DsiRNA薬剤の、適切な対照DsiRNAに対して増大された(例えばより強力な、又はより延長された)作用又は効果を指す。
本明細書で使用される用語「安定化」は、選択された環境内(例えば細胞又は生物内)での向上された薬剤持続の状態を指す。所定の実施態様において、本発明の第二の鎖の5’延長DsiRNA又は第一の鎖の3’延長DsiRNA薬剤は、適切な対照DsiRNAに対して向上された安定性を有する。そのような向上された安定性は、分解酵素(例えばヌクレアーゼ)又は他の薬剤に対するそれらの薬剤の向上された持続により達成され得る。
10〜30、好ましくは10〜315ヌクレオチドの、場合による第三の核酸センス分子が分子中に存在する、本発明による5’アンチセンス延長ダイサー基質に関して上述された特性に加えて、この第三のセンス分子は、分子全体を安定化し、及び/又は、例えば効能を増大させ、作用若しくは効果を延長し、薬力学若しくは薬理学的効果を向上させ、及び/又はアプタマー若しくはその断片等の追加の薬剤(若しくはその一部分);ダイサー基質中に加わるときに、第三の分子に結合し及びかくして第三の分子により支持される、天然の又は外因的に導入される部分(例えば標識)のための結合部位(例えば「デコイ」結合部位)を提供する等、別の利点を付与するよう機能し得る。
DsiRNA設計/合成
より長い25〜約30ヌクレオチドのdsRNA種(DsiRNAs)は、19〜23mer siRNA薬剤と比較して、効能及び作用持続時間の観点から予想外に有効なRNA阻害を与えることが以前に示された。dsRNA加工機構の根底にある理論に束縛されるものではないが、より長いdsRNA種は、細胞の原形質内でダイサー酵素の基質としての役割を果たすと考えられる。本発明のdsNAをより短いセグメントに切断することに加えて、ダイサーは、切断dsNAに由来する一本鎖切断生成物を、標的遺伝子の又は標的遺伝子に由来する原形質RNAの破壊に関与するRISC複合体に組み込むことを促進すると考えられる。以前の研究(Rossiら、米国特許出願第2007/0265220号)は、ダイサーによるdsRNA種(詳細には、DsiRNA薬剤)の切断性が、dsRNA種の増大された効能及び作用持続時間に対応することを示している。本発明は、少なくとも部分的に、ダイサー切断の部位に案内されるRNA阻害剤の設計を提供し、それによりダイサー切断生成物の好ましい種が生成される。
DsiRNA加工のモデルにおいて、ダイサー酵素はDsiRNA薬剤に結合し、19〜23位のヌクレオチドにおけるDsiRNAの切断をもたらし、DsiRNA薬剤のアンチセンス鎖のダイサーPAZドメイン−関連3’オーバーハング配列から除去される。このダイサー切断事象は、パッセンジャー(センス)鎖の3’末端及びガイド(アンチセンス)鎖の5’末端に位置していたそれらの二重鎖の核酸の切断をもたらす。DsiRNAの切断は、一般に、各末端に2−塩基オーバーハングを有する19mer二重鎖を与える。今、図2にモデリングするように、このダイサー切断事象は、RISC構成成分としての標的mRNAの配列特異的な阻害を案内することが可能な21〜23ヌクレオチドのガイド(アンチセンス)鎖を生成する(又は、より長いガイド鎖の3’オーバーハングが存在する所定の場合では24〜27ヌクレオチドのガイド鎖がダイサー切断により生じる)。
本発明のDsiRNA薬剤の第一及び第二のオリゴヌクレオチドは、二重鎖の領域内において完全に相補的である必要はない。一実施態様において、センス鎖の3’−末端は、一つ又はそれ以上のミスマッチを含む。一態様において、約二つのミスマッチがセンス鎖の3’末端に組み込まれる。別の実施態様では、本発明のDsiRNAは、25〜66の範囲内のヌクレオチド長の二つのRNAオリゴヌクレオチドを含有する二本鎖RNA分子であり、互いにアニールされた場合、センス鎖の3’−末端(アンチセンス鎖の5’−末端)上に二つのヌクレオチドミスマッチを有する。ミスマッチの使用又は熱力学的安定性の低下(詳細には3’−センス/5’−アンチセンス位における)は、おそらくは、iRNAのRISCへの進入により生じるある巻き戻しの律速段階に影響を与えることによって、アンチセンス鎖のRISC中への進入を促進し又は進入に有利に働くことが提案されている(Schwarzら、2003;Khvorovaら、2003)。それ故、末端塩基組成物は活性21mer siRNA二重鎖を選択するための設計アルゴリズムに含まれている(Ui−Teiら、2004;Reynoldsら、2004)。本実施態様のdsRNA領域のダイサー切断により、ミスマッチを含む小さい末端部−末端配列は、アンチセンス鎖と不対のまま残留するか(3’−オーバーハングの一部となる)、又は最終的な21−mer siRNAから完全に切断されるであろう。従って、これらの特定の「ミスマッチ」形態は、RISCの最終的なRNA構成成分におけるミスマッチとして存続しない。ダイサー基質のセンス鎖の3’−末端における塩基ミスマッチ又はセグメントの不安定化が、おそらくはダイサーによる加工を促進することにより、RNAi内の合成二重鎖の効能を改善したことの発見は、25〜30mer dsRNAs(本明細書で「DsiRNAs」とも称される;Rossiら、米国特許出願第2005/0277610号、米国特許出願第2005/0244858号及び米国特許出願第2007/0265220号)の設計及び使用を記載している過去の業績における驚くべき発見であった。ミスマッチを所有する薬剤の、例示的なミスマッチ又はゆらぎ塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U、I:A、I:U及びI:Cである。それらの薬剤の塩基対強度は、例えばグアニン及びアデニンヌクレオチドの2−アミノ−又は2,6−ジアミノ修飾を含む、それらの薬剤のヌクレオチドの修飾によっても減弱され得る。
DsiRNA薬剤組成物の例示的な構造
本発明の組成物は、前駆体分子であるdsNAを含有し、即ち本発明のdsNAは、インビボで加工されて、活性の小さい干渉核酸(siRNA)を生成する。dsNAはダイサーによって活性siRNAに加工され、活性siRNAはRISC中に組み込まれる。
一態様において、本発明は、少なくとも8個の連続リボヌクレオチドを有する第一の鎖又は第二の鎖を有する、RNA干渉(RNAi)用の組成物を提供する。所定の実施態様において、本発明のDsiRNAは、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又はそれ以上(例えば鎖の24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、26又はそれ以上、完全長まで)のリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド(2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエート結合)を有する。所定の実施態様において、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドは連続的である。
一態様において、本発明は、二本鎖核酸の領域内に一つ又はそれ以上のデオキシリボヌクレオチドを所有する、RNA干渉(RNAi)用の組成物を提供し、前記一つ又はそれ以上のデオキシリボヌクレオチドは、推定センス鎖ダイサー切断部位の3’側に位置し、また対応して推定アンチセンス鎖ダイサー切断部位の5’側に位置する。一実施態様において、パッセンジャー鎖の24位からパッセンジャー鎖の3’末端ヌクレオチド残基までと対応する、及びそれ故パッセンジャー鎖の24位からパッセンジャー鎖の3’末端ヌクレオチド残基までと塩基対をなす、ガイド鎖ヌクレオチドの間の及びガイド鎖ヌクレオチドを含む、ガイド鎖の少なくとも一つのヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドである。いくつかの実施態様では、二本鎖核酸は、推定センス鎖ダイサー切断部位の3’に、対応して推定アンチセンス鎖ダイサー切断部位の5’に位置する二本鎖核酸の領域内に、塩基対をなす一つ又はそれ以上のデオキシリボヌクレオチドを所有する。
所定の実施態様において、本発明のDsiRNA薬剤は、以下のいずれかの例示的な構造を有してもよい:
一つのそのような実施態様において、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
関連した実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNAであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により、1〜10である。「E」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「I」=a不連続性、であり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜15、又は場合により、1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
関連した実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNAであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
関連した実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
追加の実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今、上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧΧN*ΧΧΖΝ−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。
一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
上記に示したいずれかの構造において、センス鎖又はアンチセンス鎖のどちらかの5’末端は、場合によりホスフェート基を含む。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「E」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、「I」=a不連続性であり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今、上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
関連した実施態様において、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今、上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
別のそのような実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*ZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*−5’
を含み、
式中「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今、上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
関連した実施態様では、DsiRNAは:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XX−5’
を含み、
式中、「X」=RNAであり、「X」=2’−O−メチルRNAであり、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、0〜10個のRNAモノマーを含む場合によるオーバーハングドメインであり、−所定の実施態様では、「Y」は、場合により2’−O−メチルRNAモノマーである、1〜4個のRNAモノマーを含むオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチドであり、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、場合により1〜30、又は場合により1〜15、又は場合により1〜10である。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、場合により0、1、2、3、4又は5である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖である。一実施態様において、上部鎖はセンス鎖であり、下部鎖はアンチセンス鎖である。代替的に、下部鎖はセンス鎖であり、上部鎖はアンチセンス鎖であり、ここで2’−O−メチルRNAモノマーが、今、上記の図に示した下部鎖ではなく上部鎖に沿って交互の残基に配置されている。
一実施態様においては、伸長したDsiRNA剤は、Dicer切断の特定の方向を介して機能するように具現化された部位に位置するデオキシリボヌクレオチドを含むものを提供する。このような分子の例示的な構造を以下に示す:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXDD−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXXZN−5’
(式中、「X」=RNA、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい0〜10個のRNA単量体で構成される任意のオーバーハングドメインであり、−特定の実施態様においては、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい1〜4個のRNA単量体で構成されるオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上であるが、1〜30であってもよく、又は1〜15であってもよく、又は1〜10であってもよい。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、0、1、2、3、4又は5であってもよい。)一実施態様においては、上の鎖はセンス鎖であり、下の鎖はアンチセンス鎖である。また、下の鎖はセンス鎖であり、上の鎖はアンチセンス鎖である。
上記構造は、その主なプロセシング後形態として最小の21量体二重鎖を切断することをDicerに強要するように具現化される。上記構造の下の鎖がアンチセンス鎖である実施態様においては、アンチセンス鎖の5’末端の最後及び最後から2番目の残基における2個のデオキシリボヌクレオチド残基の位置は、オフターゲット効果を低下させる可能性がある(以前の研究は、オフターゲット効果を低下させるためのアンチセンス鎖の5’末端から少なくとも最後から2番目の位置に2’−O−メチル修飾を示した。例えば、米国特許出願公開第2007/0223427号を参照されたい。)
関連実施態様においては、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXDD|EN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXXZN−5’
(式中、「X」=RNA、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい0〜10個のRNA単量体で構成される任意のオーバーハングドメインであり、−特定の実施態様においては、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい1〜4個のRNA単量体で構成されるオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上であるが、1〜30であってもよく、又は1〜15であってもよく、又は1〜10であってもよい。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、0、1、2、3、4又は5であってもよい。)一実施態様においては、上の鎖はセンス鎖であり、下の鎖はアンチセンス鎖である。また、下の鎖はセンス鎖であり、上の鎖はアンチセンス鎖である。
関連実施態様においては、DsiRNAは以下を含む:
5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN *XXDDZN−3’
3’−YXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DDXX−5’
(式中、「X」=RNA、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい0〜10個のRNA単量体で構成される任意のオーバーハングドメインであり、−特定の実施態様においては、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい1〜4個のRNA単量体で構成されるオーバーハングドメインであり、「D」=DNA、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、及び「N」=1〜50又はそれ以上であるが、1〜30であってもよく、又は1〜15であってもよく、又は1〜10であってもよい。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、0、1、2、3、4又は5であってもよい。)一実施態様においては、上の鎖はセンス鎖であり、下の鎖はアンチセンス鎖である。また、下の鎖はセンス鎖であり、上の鎖はアンチセンス鎖である。
上記構造のいずれかにおいて、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの5’末端にはリン酸基を含んでいてもよい。
一実施態様においては、本発明は、第2の鎖の対応するヌクレオチドと対を形成する第1の鎖の5’末端及び3’末端ヌクレオチドの間に対を形成しない塩基を有しない、完全な二重鎖領域を含む、第1の鎖及び第2の鎖の間に二本鎖領域を実質的に有する二重鎖核酸を提供する。他の実施態様においては、本発明は、第2の鎖の対応するヌクレオチドと対を形成する第1の鎖の5’末端及び3’末端ヌクレオチドの間に、1組の対を形成しない塩基対、2組の対を形成しない塩基対、3個の対を形成しない塩基対、4個の対を形成しない塩基対、及び5個の対を形成しない塩基対を含む、実質的に二重鎖領域を有する二重鎖核酸を提供する。一実施態様においては、対を形成しない塩基対は連続的である。他の実施態様においては、対を形成しない塩基対は非連続的である。
本明細書で用いられる場合、「DsiRNAmm」は、DsiRNAのセンス及びアンチセンス鎖によって形成される二重鎖の1、2、3又は4個のミスマッチ塩基対を含む「ミスマッチ寛容領域」を有するDsiRNAを意味し、このようなミスマッチは、DsiRNAの二重鎖領域のいずれかの末端の2組の末端塩基対の間に位置する部位におけるDsiRNA内に位置する(従って含んでいない)。ミスマッチ塩基対は、対応する標的核酸の突出するAgo2切断部位の位置に関連して本明細書において定義される「ミスマッチ寛容領域」内に位置する。ミスマッチ寛容領域は、標的鎖の突出するAgo2切断部位の「上流」に位置する。この関連における「上流」は、DsiRNA二重鎖の最も5’−部分であると考えられ、ここで、5’は、DsiRNA二重鎖のセンス鎖の方向を意味する。従って、ミスマッチ寛容領域は、標的核酸の突出するAgo2切断部位に対応するセンス(パッセンジャー)鎖上の塩基の上流であり;又はDsiRNAmmのアンチセンス(ガイド)鎖に言及する場合、ミスマッチ寛容領域は、標的核酸の突出するAgo2切断部位に対して相補的である塩基の下流に位置する、すなわち、DsiRNAmmのアンチセンス鎖の最も3’−部分(アンチセンス鎖の1位がアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドである場合)としても記述することができる。
一実施態様においては、例えば、ミスマッチ寛容領域は、二重鎖のセンス鎖の5’末端で開始するヌクレオチドから番号付けをした場合に、塩基対3〜9の間に位置し、含まれる。従って、本発明のDsiRNAmmは、右方向に伸長したDsiRNAのセンス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれかに単一のミスマッチ塩基対を有する(ここで、1位がセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、9位が、センス鎖配列に対応する標的RNA配列の突出するAgo2切断部位のすぐ5’であるセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施態様においては、センス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンスの対応するミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、DsiRNAmm標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内のミスマッチ塩基対にて破壊され、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で同様に破壊される)。他の実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、対応する標的RNA配列ヌクレオチドと塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内のミスマッチ塩基対にて破壊され、それにもかかわらず、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で維持される)。
上述したようなミスマッチ寛容領域(ミスマッチ領域)内に1個のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、センス鎖の3、4、5、6、7、8又は9位のいずれかにおいてミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は3個追加のミスマッチ塩基対を更に含んでいてもよい。好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対は、センス鎖の3、4、5、6、7、8及び/又は9位に(また、アンチセンス鎖の対応する残基に)存在する。1個の追加のミスマッチ塩基対がDsiRNAmm内に存在する一実施態様においては、センス鎖の2個のミスマッチ塩基対は、例えば、センス鎖の4位及び6位の両方のヌクレオチドに存在し得る(また、ミスマッチはアンチセンス鎖の対応するヌクレオチド残基に存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤においては、ミスマッチは連続的に(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続位置に)存在し得る。また、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列と塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、4及び5位でなく、3及び6位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、センス鎖の3及び6位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖の2個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対の間に位置する、0、1、2、3、4又は5個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する、特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿って3個連続で)存在し得る。また、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、5、6及び7位でなく、3、4及び8位にミスマッチヌクレオトドを有するDsiRNAmmについては、センス鎖の3及び4位のミスマッチ残基はお互いに隣接しているが、センス鎖の4及び8位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖の3個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3又は4個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する、特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿って四連で)存在し得る。また、アンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖のヌクレオチドは、アンチセンス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、4及び6位でなく、3、5、7及び8位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、センス鎖の7及び8位のミスマッチ残基はお互いに隣接しているが、センス鎖の3及び5位のミスマッチ残基は、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する−同様に、センス鎖の5及び7位のミスマッチ残基も、アンチセンス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応するアンチセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するセンス鎖の4個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2又は3個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
他の実施態様においては、本発明のDsiRNAmmは、左方向に伸長したDsiRNAのアンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位のいずれかに単一のミスマッチ塩基対を有するミスマッチ寛容領域を含む(1位はアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、13位はアンチセンス配列と十分に相補的な標的RNA配列の突出するAgo2切断部位のアンチセンス鎖内のすぐ3’(下流)であるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施態様においては、DsiRNAmmのセンス鎖に関してアンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、DsiRNAmm標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内でミスマッチ塩基対にて破壊され、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で同様に破壊される)。他の実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、その対応する標的RNA配列ヌクレオチドと塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内でミスマッチ塩基対にて破壊され、それにもかかわらず、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で維持される)。
上述したようなミスマッチ寛容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位のいずれかにミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対を含んでいてもよい。好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の13、14、15、16、17、18、19、20又は21位に(また、センス鎖の対応する残基に)存在する。1個の追加のミスマッチ塩基対がDsiRNAmm内に存在する一実施態様においては、アンチセンス鎖の2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の14位及び18位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチは、またセンス鎖の対応するヌクレオチド残基に存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤においては、ミスマッチは連続的に(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続的位置に)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列との塩基対を形成するヌクレオチドにより散在し得る(例えば、14及び15位でなく、13及び16位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の13及び16位のミスマッチ残基が、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって散在している)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のアンチセンス鎖の2個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対の間に位置する0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って三連で)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、15、16及び17位ではなく、13、14及び18位においてミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の13及び14位のミスマッチ残基は、お互いに隣接するが、アンチセンス鎖の14及び18位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在し得る。)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の3個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4、5又は6個のマッチする塩基対と一緒に存在する。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に存在し得る(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って四連で)。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、14及び16位においてではなく、13、15、17及び18位においてミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖の17及び18位のミスマッチ残基はお互いに隣接するが、アンチセンス鎖の13及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基にマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在し、同様に、アンチセンス鎖の15及び17位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在し得る)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の4個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4又は5個のマッチする塩基対と一緒に存在する。
更なる実施態様においては、本発明のDsiRNAmmは、左方向に伸長したDsiRNAのアンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位の任意の位置において単一のミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有する(1位はアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、11位は、アンチセンス鎖配列と十分に相補的な標的RNA配列の突出するAgo2切断初のアンチセンス鎖内においてすぐ3’(下流)であるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である。特定の実施態様においては、DsiRNAmmのセンス鎖に関してアンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位のいずれかにおいてミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンスのミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、DsiRNAmm標的RNA配列ともミスマッチ塩基配列を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内でミスマッチ塩基対にて破壊され、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で同様に破壊される)。他の実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、この同じアンチセンス鎖ヌクレオチド塩基は、その対応する標的RNA配列ヌクレオチドと塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性はDsiRNAmm内でミスマッチ塩基対によって破壊され、それにもかかわらず、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で維持される)。
上述のように、ミスマッチ寛容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18又は19位にミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対を更に含んでいてもよい。好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのこれら1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の11、12、13、14、15、16、17、18及び/又は19位に(及びセンス鎖の対応する残基に)存在する。DsiRNAmm内に1個の追加のミスマッチ塩基対が存在する一実施態様においては、アンチセンス鎖の2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の14位及び18位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチは、またセンス鎖の対応するヌクレオチド残基に存在し得る)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤においては、ミスマッチは連続的に(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って連続的位置に)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列と塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、13及び14位でなく、12及び15位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の12及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって散在する。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の2個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対間に位置する、0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する、特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿って三連で)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、15、16及び17位でなく、13、14及び18位にミスマッチヌクレオトドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の13及び14位のミスマッチ残基はお互いに隣接しているが、アンチセンス鎖の14及び18位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の3個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4、5又は6個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
4個のミスマッチ塩基対を有する、特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、センス鎖ヌクレオチド配列に沿って四連で)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、14及び16位でなく、13、15、17及び18位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の17及び18位のミスマッチ残基はお互いに隣接しているが、アンチセンス鎖の13及び15位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する−同様に、アンチセンス鎖の15及び17位のミスマッチ残基も、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の4個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4又は5個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
更なる実施態様においては、本発明のDsiRNAmmは、左方向に伸長したDsiRNAのアンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位のいずれかに単一のミスマッチ塩基対を有する(1位はアンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドであり、15位はアンチセンス鎖配列と十分に相補的な標的RNA配列の突出するAgo2切断部位のアンチセンス鎖内のすぐ3’(下流)であるアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である)。特定の実施態様においては、DsiRNAmmのセンス鎖に関してアンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位のいずれかにミスマッチ塩基対ヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、DsiRNAmm標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内でミスマッチ塩基対にて破壊され、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で同様に破壊される)。他の実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチ塩基対ヌクレオチドは、DsiRNAmmのセンス鎖配列の対応するヌクレオチドとミスマッチ塩基対を形成するだけでなく、この同じアンチセンス鎖ヌクレオチドは、その対応する標的RNA配列ヌクレオチドと塩基対を形成する(従って、アンチセンス鎖配列とセンス鎖配列との間の相補性は、DsiRNAmm内でミスマッチ塩基対にて破壊され、それにもかかわらず、相補性は、DsiRNAmmのアンチセンス鎖配列と標的RNA配列との間で維持される)。
上述したようなミスマッチ寛容領域内に単一のミスマッチ塩基対を有する本発明のDsiRNAmm(例えば、アンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22又は23位のいずれかにミスマッチヌクレオチド残基を有するDsiRNAmm)は、1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対を含んでいてもよい。好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのこれらの1、2又は3個の追加のミスマッチ塩基対は、アンチセンス鎖の15、16、17、18、19、20、21、22及び/又は23位に(また、センス鎖の対応する残基に)存在する。1個の追加のミスマッチ塩基対がDsiRNAmm内に存在する一実施態様においては、アンチセンス鎖の2個のミスマッチ塩基対は、例えば、アンチセンス鎖の16位及び20位の両方のヌクレオチドに存在し得る(ミスマッチは、またセンス鎖の対応するヌクレオチド残基に存在する)。
2個のミスマッチ塩基対を有するDsiRNAmm剤においては、ミスマッチは連続的に(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続的位置に)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列と塩基対を形成するヌクレオチドにより散在し得る(例えば、17、18及び19位でなく、16及び20位にミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の16及び20位のミスマッチ残基が、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在している)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のアンチセンス鎖の2個の残基(センス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対の間に位置する0、1、2、3、4、5、6又は7個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
3個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って三連で)存在し得る。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、18、19及び20位ではなく、16、17及び21位においてミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについては、アンチセンス鎖の16及び17位におけるミスマッチ残基は、お互いに隣接するが、アンチセンス鎖の17及び21位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在し得る。)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の3個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4、5又は6個のマッチする塩基対と一緒に存在する。
4個のミスマッチ塩基対を有する特定のDsiRNAmm剤については、ミスマッチは連続的に存在し得る(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って四連で)。また、センス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、センス鎖配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、18及び20位においてではなく、17、19、21及び22位においてミスマッチヌクレオチドを有するDsiRNAmmについて、アンチセンス鎖の21及び22位のミスマッチ残基はお互いに隣接するが、アンチセンス鎖の17及び19位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在し、同様に、アンチセンス鎖の19及び21位のミスマッチ残基は、センス鎖の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在し得る)。例えば、対応するセンス鎖配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の4個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2、3、4又は5個のマッチする塩基対と一緒に存在する。
明瞭さの理由により、上記DsiRNAmm剤内のミスマッチヌクレオチド残基の位置は、DsiRNAmmのセンス又はアンチセンス鎖のいずれかの5’末端残基に関して番号付けされている。アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域(ミスマッチ領域)内に位置する番号付けは、アンチセンス鎖の5’末端付近の変異により、突出するAgo2切断部位に移動し得る。従って、アンチセンス鎖又はセンス鎖のいずれかの中の好ましいミスマッチ部位の位置は、突出するAgo2切断部位に対する、このようなミスマッチの近くを許容されるとして同定することもできる。従って、好ましい一実施態様においては、DsiRNAmmのセンス鎖のミスマッチヌクレオチドの位置は、対応する標的RNA配列の突出するAgo2切断部位のすぐ5’(上流)に位置するセンス鎖のヌクレオチド残基である。他の好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのセンス鎖のミスマッチヌクレオチドは、突出するAgo2切断部位の2ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の3ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の4ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の5ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の6ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の7ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の8ヌクレオチド5’(上流)、突出するAgo2切断部位の9ヌクレオチド5’(上流)に位置するセンス鎖のヌクレオチド残基に位置する。
単一のミスマッチを含む、5’でガイドする単一鎖の伸長したDsiRNAs(DsiRNAmm)の例には、以下の構造が含まれる。(このようなミスマッチ含有構造は、以下に示す他の例示的なDsiRNA構造にも組み込まれる)。
5’−XXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXΜXXXXXXXXXXXXXXXXXXXΝ*XXZN−5’
5’−XXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
5’−XXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXΜXXXXXXXXXXXXXXXXXΝ*XXZN−5’
5’−XXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXΜXXXXXXXXXXXXXXXXΝ*XXZN−5’
5’−XXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXΜXXXXXXXXXXXXXXXΝ*XXZΝ−5’
5’−XXXXXXXXMXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
3’−YXXXXXXXXΜXXXXXXXXXXXXXXΝ*XXZN−5’
(式中、「X」=RNA、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい0〜10個のRNA単量体で構成される任意のオーバーハングドメインであり、−特定の実施態様においては、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい1〜4個のRNA単量体で構成されるオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、1〜30であってもよく、又は1〜15であってもよく、又は1〜10であってもよい。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、0、1、2、3、4又は5であってもよく、「D」=「DNA」、「M」=鎖をアニーリングした時に他の相補鎖の対応する「M」残基と塩基対(水素結合)を形成しない核酸残基(RNA、DNA、又は非天然若しくは修飾核酸))。このような薬剤の任意の残基は2’−OメチルRNA単量体であってもよく、上述したように、下の(第二の)鎖の3’−末端残基から開始する2’−O−メチルRNA単量体の他の位置決めは、前記DsiRNAmm剤においても用いることができる。上記ミスマッチ構造について、上の鎖はセンス鎖であり、下の鎖はアンチセンス鎖である。
特定の実施態様においては、本発明のDsiRNAは、DsiRNAの2本の鎖内にミスマッチ塩基対として必ずしも存在するのでない標的RNA配列に関して存在するミスマッチを含んでいてもよく−従って、DsiRNAは、DsiRNAの第一及び第二の鎖の間に完全な相補性を有していてもよく、更に標的RNAに関してミスマッチ残基を有していてもよい(ここで、特定の実施態様においては、有効性及び/又は効能及び/又は効果の期間を促進するのに有利である)。ミスマッチがアンチセンス鎖及び標的RNAの間に存在する特定の実施態様においては、ミスマッチの位置は、標的領域の突出するAgo2切断部位の5’に位置するセンス鎖の配列に対応する位置においてアンチセンス鎖内に位置し−例えば、標的配列の突出するAgo2切断部位に相補的であるアンチセンス残基の3’に対してアンチセンス鎖内に位置するアンチセンス鎖残基である。
標的配列に関して単一のミスマッチ残基を有する例示的な25/27量体のDsiRNAsには、以下の構造が含まれる。
標的RNA配列:5’−. .AXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−EXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−..XAXXXXXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...AXXXXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−BXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XAXXXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXAXXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXAXXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXAXXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXAXXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXAXXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXXAXXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
標的RNA配列:5’−...XXXXXXXXAXXXXXXXXXX...−3’
DsiRNAmmセンス鎖:5’−XXXXXXXXBXXXXXXXXXXXXXXN*DD−3’
DsiRNAmmアンチセンス鎖:3’−XXXXXXXXXXEXXXXXXXXXXXXXXN*XXZN−5’
(式中、「X」=RNA、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい0〜10個のRNA単量体で構成される任意のオーバーハングドメインであり、−特定の実施態様においては、「Y」は、2’−O−メチルRNA単量体であってもよい1〜4個のRNA単量体で構成されるオーバーハングドメインであり、「Z」=DNA、RNA又は修飾ヌクレオチド、「N」=1〜50又はそれ以上であるが、1〜30であってもよく、又は1〜15であってもよく、又は1〜10であってもよい。「N*」=0〜15又はそれ以上であるが、0、1、2、3、4又は5であってもよく、「D」=「DNA」、「p」=リン酸基、「E」=鎖をアニーリングした時に他の相補(標的)鎖の対応する「A」RNA残基と塩基対(水素結合)を形成しない、また、対応する「B」残基(「B」残基はRNA、DNA、又は非天然若しくは修飾核酸であってもよい)と塩基対を形成しなくてもよい核酸残基(RNA、DNA、又は非天然若しくは修飾核酸))。このような薬剤の任意の残基は2’−OメチルRNA単量体であってもよく、例えば、上述したように、下の(第二の)鎖の3’−末端残基から開始する2’−O−メチルRNA単量体の他の位置決め、又は本明細書で開示される2’−O−メチル及び/又は他の修飾の他のパターンは、前記DsiRNA剤においても用いることができる。
上記に例示した構造に加え、本発明のDsiRNAsは、標的RNA再列と更なるミスマッチを形成する1、2又は3個の更なる残基を有していてもよい。このようなミスマッチは連続的であっても、標的RNA配列とマッチした塩基対を形成するヌクレオチドによって散在していてもよい。マッチした塩基対を形成するヌクレオチドによって散在する場合、ミスマッチ残基は、このようなミスマッチ形成残基の間に1、2、3、4、5、6、7又は8個の塩基対を形成したヌクレオチド間隔で、単一の鎖内でお互いに離れていてもよい。
上述したDsiRNAmm剤については、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖ヌクレオチドについてのDsiRNAs内の好ましい位置(更に、対応するセンス鎖ヌクレオチドとミスマッチを形成しても、しなくてもよい)は、DsiRNA内の突出するAgo2切断部位に対して相補的であるアンチセンス鎖配列の3’(下流)に位置するアンチセンス鎖領域内にある。従って、好ましい一実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖のミスマッチヌクレオチドの位置(標的RNA配列に関する)は、対応する標的RNA配列の突出するAgo2切断部位のアンチセンス鎖配列内のすぐ3’(下流)に位置するアンチセンス鎖のヌクレオチド残基である。他の好ましい実施態様においては、DsiRNAmmのアンチセンス鎖(標的RNA配列に関する)のミスマッチヌクレオチドは、対応する、突出するAgo2切断部位の2ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の3ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の4ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の5ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の6ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の7ヌクレオチド5’(上流)、対応する、突出するAgo2切断部位の8ヌクレオチド5’(上流)、又は対応する、突出するAgo2切断部位の9ヌクレオチド5’(上流)、に位置するアンチセンス鎖のヌクレオチド残基に位置する。
アンチセンスの2個のミスマッチを形成するヌクレオチドを有するDsiRNA剤においては(ここで、ミスマッチを形成するヌクレオチドは、標的RNA配列に関してミスマッチを形成する)、ミスマッチは連続的に存在し得る(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿った連続的位置において)。また、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列と塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、14及び15位でなく、13及び16位にミスマッチを形成するヌクレオチドを有するDsiRNAについては、センス鎖の13及び16位(5’末端から開始し)のミスマッチ残基は、標的RNA配列の対応する残基とマッチする塩基対を形成する2個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対塩基対を形成するアンチセンス鎖の2個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ形成塩基対(標的RNA配列に関して)の間に位置する、0、1、2、3、4又は5個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
3個のミスマッチ(標的RNA配列に関して形成されるミスマッチ)を形成する塩基対を有するDsiRNA剤については、ミスマッチ形成ヌクレオチドは連続的に存在し得る(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って三連で)。また、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、15、16及び17位でなく、13、14及び18位にミスマッチを形成するヌクレオチドを有するDsiRNAについては、アンチセンス鎖の13及び14位のミスマッチ残基はお互いに隣接するが、アンチセンス鎖の14及び18位のミスマッチ形成残基は、標的RNA配列の対応する残基とマッチする塩基対を形成する3個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対塩基対を形成するアンチセンス鎖の3個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチ形成塩基対の間に位置する、0、1、2、3又は4個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
4個のミスマッチ(標的RNA配列に関して形成されるミスマッチ)を形成する塩基対を有するDsiRNA剤については、ミスマッチ形成ヌクレオチドは連続的に存在し得る(例えば、アンチセンス鎖ヌクレオチド配列に沿って四連で)。また、標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖のヌクレオチドは、標的RNA配列とマッチする塩基対を形成するヌクレオチドによって散在し得る(例えば、14及び16位でなく、13、15、17及び18位にミスマッチを形成するヌクレオチドを有するDsiRNAについては、アンチセンス鎖の17及び18位のミスマッチを形成する残基はお互いに隣接しているが、アンチセンス鎖の13及び15位のミスマッチを形成する残基は、標的RNA配列の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する−同様に、アンチセンス鎖の15及び17位のミスマッチ残基も、標的RNA配列の対応する残基とマッチする塩基対を形成する1個のヌクレオチドによって散在する)。例えば、対応する標的RNA配列とミスマッチ塩基対を形成するアンチセンス鎖の4個の残基(アンチセンス鎖のミスマッチ寛容領域内に位置する)は、これらのミスマッチを形成する塩基対のいずれか2個の間に位置する0、1、2又は3個のマッチする塩基対と一緒に存在し得る。
DsiRNAmm及びDsiRNA剤の特定の構造を例示するために、上記DsiRNAmm及び他のDsiRNAの構造を開示する。上記DsiRNAmm及びDsiRNAの構造の設計は、例えば、後述するような(例えば、ミスマッチを含むDsiRNAmm)、伸長したDsiRNA剤のDsiRNAmm形態を生成するために適合され得る。上記で例示されるように、DsiRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間に単一のミスマッチ(又は2、3若しくは4個のミスマッチ)を有するが、DsiRNAのセンス及びアンチセンス鎖との間に完全な相補性を保持し得るDsiRNAsを設計することもできる。
以下に例示するDsiRNA剤は、これらの二重鎖及び/又は標的RNA整列構造内に挿入欠失(in/del)構造を有する点に更に留意されたい。従って、本発明のDsiRNAsは、例えば、標的RNA配列と比較してアンチセンス鎖配列、及び/又はセンス鎖配列と比較してアンチセンス鎖配列中にin/delのバリエーションを有するように設計することができ、このようなin/delヌクレオチドの配置のための好ましい位置は、ミスマッチ及び/又はミスマッチを形成する塩基対の位置について上述した位置に対応する。
特定の実施態様においては、上記構造のいずれかの「D」残基は、少なくとも1個のPS−DNA又はPS−RNAを含む。上記構造の「D」残基は、Dicer切断を素対する少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。
一実施態様においては、DsiRNA剤は、25塩基長を有するセンス鎖、2塩基の3’−オーバーハングを有する42ヌクレオチド長を有するアンチセンス鎖(また、従って、DsiRNA剤は、センス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に15ヌクレオチド長の5’オーバーハングを有する)、センス鎖の24及び25位に位置するデオキシリボヌクレオチド(センス鎖の5’において1位から番号受け)、及びアンチセンス鎖の同種ヌクレオチドと対形成した各塩基を有する非対称構造を有する。5’オーバーハングは、修飾ヌクレオチド、好ましくは2’−O−メチルリボヌクレオチド、及び/又はリン酸骨格修飾、好ましくはホスホロチオエートを含む。
他の実施態様においては、DsiRNA剤は、40塩基長を有するセンス鎖、2塩基の3’−オーバーハングを有する27基ヌクレオチド長を有するアンチセンス鎖(また、従って、DsiRNA剤は、センス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に15ヌクレオチド長の3’オーバーハングを有する)、センス鎖の24及び25位に位置するデオキシリボヌクレオチド(センス鎖の5’において1位から番号受け)、及びアンチセンス鎖の同種ヌクレオチドと対形成した各塩基を有する構造を有する。3’オーバーハングは、デオキシリボヌクレオチド及び/又はリン酸骨格修飾、好ましくはメチルホスホネートを含む。
DsiRNAsの修飾
二重鎖RNAs(「dsRNAs」)の効果を阻害する1つの主要な要因は、ヌクレアーゼによるdsRNAs(例えば、siRNAs及びDsiRNAs)の分解である。3’−エキソヌクレアーゼは、血清中に存在する主要なヌクレアーゼ活性であり、DNAオリゴヌクレオチドのアンチセンスの3’−末端の修飾は、分解を防止するのに重要である(Ederら、1991)。RNアーゼ−Tファミリーヌクレアーゼは、siRNAsの制御及び分解に関与する3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するいわゆるERI−Iとして同定された(Kennedyら、2004;Hongら、2005)。この遺伝子は、マウスにおけるThex1(NM_02067)又はヒトにおけるTHEX1(NM_153332)としても知られ、ヒストンmRNAの分解に関与し;また、siRNAsにおける3’−オーバーハングの分解を媒介するが、二重鎖RNAを分解しない(Yangら、2006)。従って、本発明のDsiRNAsを含むdsRNAの3’−末端の安定化が、安定性を改善すると予想することは合理的である。
XRN1(NM_019001)は、p−体中の5’→3’エキソヌクレアーゼであり、miRNAにより標的とされるmRNAの分解に関与しており(Rehwinkelら、2005)、siRNAによる内部切断によって方向付けられるように開始する分解を完了することに関与している。XRN2(NM_012255)は、各RNAプロセシングに関与する、異なる5’→3’エキソヌクレアーゼである。これまでは、siRNAs及びmiRNAの分解又はプロセシングに関与していないが、これらは、両者とも、RNAを分解し得る公知のヌクレアーゼであり、これらを考慮することも重要である。
RNアーゼAは、RNAsを分解する哺乳動物における主要なエンドヌクレアーゼ活性である。これはssRNAに特異的であり、ピリミジン塩基の3’−末端で切断する。RNアーゼA切断によるSiRNA分解産物は、血清におけるインキュベーション後、質量分析によって検出することができる(Turnerら、2007)。3’−オーバーハングは、RNアーゼ分解に対するsiRNAsの感受性を増強する。血清からのRNアーゼAの喪失は、siRNAsの分解を減少させ;この分解はある程度の配列優先度を示し、末端にポリA/U配列を有する配列に対して低下している(Haupenthalら、2006)。これは、二重鎖のより低い安定領域が「呼吸し」、RNアーゼAによる分解を利用できる一過性の一本鎖種を提供し得る可能性を示唆する。RNアーゼ阻害剤を血清に添加し、siRNAの長寿命及び能力を改善し得る(Haupenthalら、2007)。
21量体においては、ホスホロチオエート又はボラノホスフェート修飾は、ヌクレオシド間ホスフェート結合を直接的に安定化する。ボラノホスフェート修飾RNAは、高度にヌクレアーゼ耐性であり、サイレンシング薬剤として強力であり、比較的無毒である。ボラノホスフェート修飾RNAは、標準的な化学的合成法を用いて製造することができず、その代わりにインビトロにおける転写(IVT)によって製造される(Hallら、2004及びHallら、2006)。RNAサイレンシング活性を保持するRNA二重鎖内でこのような修飾を用いる能力が制限され得るにもかかわらず、ホスホロチオエート(PS)修飾は、任意の所望の位置にてRNA二重鎖において容易に配置することができ、標準的な化学的合成法を用いて製造することができる。
特定の実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域は、少なくとも1個のホスホロチオエート骨格修飾を有する。ある実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域のあらゆる結合は、ホスホロチオエート骨格修飾を有する。ある実施態様においては、ガイド鎖の末端5’ヌクレオチドの結合を除き、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域のあらゆる結合はホスホロチオエート骨格修飾を有する。特定の実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域は、少なくとも1個のメチルホスホネート骨格を有する。ある実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域及又はパッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域は、メチルホスホネート骨格修飾を有する。ある実施態様においては、パッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域のあらゆる結合は、ガイド鎖の末端5’ヌクレオチドを除き、ホスホロチオエート骨格修飾を有する。
しかし、PS修飾は、用量依存的毒性を示し、ほとんどの研究者は、siRNAsにおける限定的な組み込みを推奨し、歴史的には、ヌクレアーゼからの保護が最も重要である場合、3’末端を選択することに注意されたい(Harborthら、2003;Chiu及びRana(2003);Braaschら、2003;Amarzguiouiら、2003)。より広範なPS修飾は、強力なRNAi活性と適合し得る;しかし、糖修飾(例えば2’−O−メチルRNA)の使用が優れているであろう(Choungら、2006)。
様々な置換をリボースの2’−位置にて配置することができ、これは、一般に二重鎖安定性(Tm)を上昇させ、ヌクレアーゼ耐性を非常に改善することができる。2’−O−メチルRNAは、哺乳動物リボソームRNA及び転移RNAにおいて見い出される天然に存在する修飾である。siRNAsにおける2’− O−メチル修飾は公知であるが、二重鎖内の修飾された塩基の正確な位置は、能力を保持するために重要であり、RNAの2’−O−メチルRNAでの完全な置換は、siRNAを不活性化するだろう。
例えば、交互に2’−O−メチル塩基を使用するパターンは、修飾されていないRNAと同等の能力を有することができ、血清において全く安定である(Choung ら、2006;Czaudernaら、2003)。
また、2’−フルオロ(2’−F)修飾は、dsRNA(例えば、siRNA及びDsiRNA)機能と相性がよく;これは、最も一般的には、ピリミジン部位に配置され(試薬コスト及び利用能のため)、プリン位置における2’−O−メチル修飾と組み合わせることができ;2’−Fプリンを利用でき、用いることもできる。かなりの程度まで修飾された、この種の二重鎖はインビトロにおけるRNAiの強力なトリガーであり得(Allersonら、2005;Prakashら、2005;Kraynack及びBaker(2006)、性能を改善し、作用期間を拡張し得る(Morrissey ら、2005a;Morrisseyら、2005b)。高度に強力な、交互に2’−F及び2’−O−Me塩基を含むヌクレアーゼ安定な、平滑な19量体二重鎖がAllersonによって教示されている。この設計においては、交互の2’−O−Me残基が、Czaudernaによって使用されるものと同一のパターンで位置するが、残りのRNA残基は、2’−F修飾された塩基に変換される。Morrisseyによって使用される高度に強力な、ヌクレアーゼ耐性のsiRNAは、インビボで高度に強力な、ヌクレアーゼ耐性のsiRNAを使用した。2’−O−Me RNA及び2’−F RNAに加え、この二重鎖は、DNA、RNA、反転した脱塩基残基及びび3’末端PSヌクレオシド間結合を含む。広範な修飾は、一定の利益を有するが、二重鎖のより限定された修飾も、インビボの性能を改善することができ、より単純であり、製造コストが低い。Soutschek ら(2004)は、インビボで二重鎖を使用して、大部分が2個の2’−O−Me RNA塩基及び限定された3’末端PSヌクレオシド間結合を有するRNAであった。
ロックド核酸(LNA)は、dsRNA(例えば、siRNA及びDsiRNA)を安定化するために用いることができる、種々の種類の2’−修飾である。能力を保持するLNA組み込みのパターンは、2’−O−メチル又は2’−F塩基よりも制限されるので、限定された修飾が好ましい(Braaschら、2003;Grunwellerら、2003;Elmenら、2005)。限定された組み込みでさえ、LNA修飾の使用は、インビボでのdsRNA性能を改善することができ、またオフターゲット効果プロフィールを変化させ、又は改善し得る(Mookら、2007)。
細胞又は生きている動物に導入された合成核酸は、「外来である」と認識され、免疫応答を引き起こし得る。免疫刺激は、オフターゲット効果の主要なクラスを構成し、これは、実験結果を劇的に変え、更に細胞死を引き起こし得る。選定性の免疫系は、これらの反応を介在するDNA及びRNAと特異的に相互作用する受容体分子のコレクションを含み、そのいくつかは原形質に位置し、そのいくつかはエンドソームにある(Marques及びWilliam、2005;Schleeら、2006)。カチオン性脂質又はリポソームによるsiRNAsの送達は、細胞質及びエンドソームの両方の区画にsiRNAをさらし、インビトロ及びインビボで1型インターフェロン(IFN)反応を引き起こす危険性を最大にする(Morrisseyら、2005b;Sioud及びSorensen(2003);Sioud、2005;Maら2005)。細胞内で転写されたRNAは、あまり免疫原性がなく(Robbinsら、2006)、脂質をベースとする方法を用いて送達された場合に免疫原性である合成RNAは、機械的手段によって細胞に導入された場合に、インビボでさえ、免疫刺激を避けることができる(Heidelら、2004)。しかし、脂質をベースとする送達方法は、便利で、有効で、かつ広く使用されている。全てのタイプの細胞が存在し、免疫応答を発生する危険性が最高である、免疫応答を防止するためのいくつかの一般的な戦略が、特にインビボの適用のために必要である。化学修飾RNAの使用は、これらの問題のほとんど、又は全てを解決し得る。
特定の配列モチーフは、他のものよりも明らかに免疫原性であるが、一般の先天性の免疫系の受容体は、特定の塩基修飾の有無を区別するように思われ、これは、原核生物のRNAにおいてよりも哺乳動物RNAにおいてより共通に見いだされるる。例えば、シュードウリジン、N6−メチル−A及び2’−O−メチル修飾塩基は、「自己」として認識され、合成RNAにおけるこれらの残基の包含は、免疫検出を避けるのに役立ち得る(Karikoら、2005)。修飾されていないRNAとして強い免疫賦活性である配列の広範な2’−修飾は、マウスに静脈内に投与された場合に、免疫応答を遮断し得る(Morrisseyら、2005b)。しかし、広範な修飾は、免疫検出を逃れるために必要ではなく、siRNA二重鎖の単一の鎖におけるわずか2個の2’−O−メチル塩基の置換は、インビトロ及びインビボの両方における1型IFN反応を遮断するために十分であり得;修飾U及びG塩基が最も有効である(Judgeら、2006)。更なる利益として、2’−O−メチル塩基の選択的な組み込みは、オフターゲット効果の大きさを小さくすることができる(Jacksonら、2006)。従って、2’−O−メチル塩基の使用は、免疫応答を遮断する手段としてインビボでの適用が意図される全てのdsRNAについて考慮されるべきであり、ヌクレアーゼ安定性を改善し、オフターゲット効果の可能性を減少させる更なる利益を有する。
細胞死は、免疫刺激により引き起こされ得るが、細胞生存度を評価することは、IFN反応の誘導をモニターするための適切な方法ではない。IFN反応は、細胞死を伴わずに存在し得、細胞死は、IFN誘発の非存在下での標的ノックダウンにより生じ得る(例えば、標的にされた遺伝子が細胞生存にとって必須である場合)。関連したサイトカインは、培地内で直接測定することができ、このようなアッセイをルーチンで行うようにする様々な市販のキットが存在する。多数の異なる免疫エフェクター分子を測定することができるが、スクリーニング目的のためには、通常、トランスフェクションの4及び24時間後におけるIFN−α、TNF−α及びIL−6のレベルを試験することで十分である。カチオン性脂質は、任意の核酸積荷の非存在下で特定の細胞における免疫応答を誘発し得るので、「トランスフェクション試薬のみのコントロール」を含むことが重要である。IFN経路誘導のためにコントロールを含ませることを、細胞培養研究のために考慮すべきである。IFN反応を誘発する危険性が最高である、インビボで核酸を投与する場合はいつでも、免疫刺激について試験することが必須である。
修飾によって、DsiRNA剤がDicerのための基質として役に立つことを妨げない限り、修飾を本発明のDsiRNA薬剤に包含させることができる。実際に、本発明の1つの意外な発見は、アンチセンス鎖の5’単一鎖伸長ヌクレオチド領域又はセンス鎖の3’単一鎖伸長ヌクレオチド領域は、前述のDsiRNA分子に付着することができ、RNAiの有効性及び期間の延長をもたらすということであり、ただし、このような伸長は、Dicerプロセシングを妨げない伸長分子の領域において実施される(例えば、センス鎖のDicer切断部位の3’/アンチセンス鎖のDicer切断部位の5’)ことを条件とする。一実施態様においては、DsiRNA剤のDicerプロセシングを増強する1以上の修飾が実施される。第二の実施態様においては、より有効なRNAi生成をもたらす1以上の修飾が実施される。第三の実施態様においては、より大きなRNAi効果を支持する1以上の修飾が実施される。第四の実施態様においては、細胞に送達されるそれぞれのDsiRNA剤分子あたりより大きな能力をもたらす1以上の修飾が実施される。修飾は、3’末端領域、5’末端領域において、3’末端及び5’末端領域の両方において、又はある例においては、配列内の種々の位置において組み込むことができる。上記で言及した制限に留意して、任意の修飾の数及び組み合わせをDsiRNA剤に組み込むことができる。複数の修飾が存在する場合、これらは同じであっても、又は異なっていてもよい。塩基、糖部分、ホスフェート骨格及びこれらの組み合わせに対する修飾が想定される。いずれの5’末端をリン酸化することもできる。
ホスフェート骨格について想定される修飾の例には、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、及びアルキルホスホトリエステルのようなホスホトリエステル修飾、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ、二環式フラノース類似体等を含むホスホネートが含まれる。糖部分について想定される修飾の例には、2’−O−メチル、2’−フルオロ、アミノ及びデオキシ修飾のような2’−アルキルピリミジン等が含まれる(例えば、Amarzguiouiら、2003を参照されたい)。塩基群について想定される修飾の例には、無塩基糖、2−O−アルキル修飾されたピリミジン、4‐チオウラシル、5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル及び5−(3−アミノアリル)−ウラシル等が含まれる。ロックド核酸又はLNAのものも組み込むことができる。その他の多くの修飾が公知であり、上記の基準を満たす限り、用いることができる。修飾の例は、米国特許第5,684,143号、第5,858,988号及び第6,291,438号に、並びに米国特許出願公開第2004/0203145号(A1)においても開示されている。その他の修飾は、Herdewijn(2000)、Eckstein(2000)、Rusckowskiら、(2000)、Steinら(2001);Vorobjevらに開示されている。
想定される1以上の修飾は、いずれの鎖にも組み込むことができる。DsiRNA剤における修飾の配置は、DsiRNA剤の特徴に大いに影響を及ぼすことができ、より優れた能力及び安定性を与えること、毒性を減少させること、Dicerプロセシングを増強すること、及び免疫応答を最小化することを含む。一実施態様においては、アンチセンス鎖若しくはセンス鎖又は両方の鎖は、1以上の2’−O−メチル修飾されたヌクレオチドを有する。他の実施態様においては、アンチセンス鎖は、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含む。他の実施態様においては、アンチセンス鎖は、2’−O−メチル修飾されたヌクレオチドで構成される3’オーバーハングを含む。アンチセンス鎖は、また、追加の2’−O−メチル修飾されたヌクレオチドを含み得る。
特定の実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域、パッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域、又はパッセンジャー鎖の5’単一鎖伸長領域は、2’−O−メチルリボヌクレオチドであってもよい、少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを有する。ある実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域又はパッセンジャー鎖の3’単一鎖伸長領域のあらゆるヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチドであってもよい、修飾リボヌクレオチドである。特定の実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖臨調領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチドであってもよい、少なくとも1個の修飾オリゴヌクレオチドを有する。ある実施態様においては、ガイド鎖の5’単一鎖伸長領域に相補的なオリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチドであってもよい、修飾リボヌクレオチドである。
本発明の特定の実施態様においては、DsiRNA剤は、Dicerによるそのプロセシングを増強する1以上の特性を有する。これらの実施態様によれば、DsiRNA剤は、Dicerによってプロセシングされて活性なsiRNA及び以下の特性の少なくとも1を生じるように、十分な長さを有する:(i)例えば、DsiRNA剤は、非対称であるアンチセンス鎖上の3’オーバーハングを有し、及び(ii)DsiRNA剤は、Dicer結合の方向及び活性なsiRNAへのdsRNA領域のプロセシングを方向付けるために、センス鎖上に修飾された3’末端を有する。このような特定の実施態様においては、 Dicer酵素切断の突出する部位に対して3’であるセンス鎖の領域及びDicer酵素切断の突出する部位の5’であるアンチセンス鎖の対応する領域における1以上の塩基対形成したデオキシリボヌクレオチドの存在は、Dicer酵素切断の適切な方向性のために、このような分子を正しい位置に配置するためにも役に立ち得る。
特定の実施態様においては、5’単一鎖アンチセンス伸長領域(5’アンチセンス伸長)又は3’単一鎖センス伸長領域(3’センス伸長)の長さは、1〜30ヌクレオチドであり、1〜15ヌクレオチドであってもよく、好ましくは10〜15ヌクレオチドであり、更に好ましくは11〜15ヌクレオチドである。従って、本発明の単一鎖伸長DsiRNAは、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、又はそれ以上(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又はそれ以上)のヌクレオチドである、アンチセンス/ガイド鎖の5’末端において、又はセンス/パッセンジャー鎖の3’末端において、単一鎖伸長領域を有する。
ある実施態様においては、二重鎖核酸中の最も長い鎖は36〜66ヌクレオチドを含む。一実施態様においては、DsiRNA剤は、アンチセンス鎖の5’末端がセンス鎖の3’末端に突出し、アンチセンス鎖の3’末端がセンス鎖の5’末端に突出するような構造を有する。特定の実施態様においては、アンチセンス鎖の5’オーバーハングは1〜30ヌクレオチドであり、10〜30ヌクレオチドであってもよく、例えば15ヌクレオチドである。他の実施態様においては、DsiRNA剤は、センス鎖の3’末端がアンチセンス鎖の5’末端に突出し、アンチセンス鎖の3’末端がセンス鎖の5’末端に突出するような構造を有する。特定の実施態様においては、センス鎖の3’オーバーハングは1〜30ヌクレオチドであり、10〜30ヌクレオチドであってもよく、例えば15ヌクレオチドである。特定の実施態様においては、アンチセンス鎖の3’オーバーハングは1〜10ヌクレオチドであり、1〜6ヌクレオチドであってもよく、好ましくは1〜4ヌクレオチドであり、例えば2ヌクレオチドである。他の実施態様においては、DsiRNA剤は、センス鎖の5’末端がアンチセンス鎖の3’末端に突出するような構造を有する。特定の実施態様においては、センス鎖の5’オーバーハングは4〜30ヌクレオチドであり、10〜30ヌクレオチドであってもよく、例えば15ヌクレオチドである。センス及びアンチセンス鎖の両方は、5’ホスフェートを有していてもよい。
特定の実施態様においては、本発明のDsiRNAのセンス鎖は、25ヌクレオチド〜30又はそれ以上のヌクレオチド(例えば、センス鎖は25、26、27、28、29、30又はそれ以上(例えば、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40又はそれ以上の長さ)のヌクレオチドを有する)の全長を有する。特定の実施態様においては、センス鎖の長さは25ヌクレオチド〜30ヌクレオチド長であり、26〜30ヌクレオチド長であってもよく、27〜30ヌクレオチド長であってもよい。関連実施態様においては、アンチセンス鎖は、36〜66又はそれ以上のヌクレオチド(例えば、センス鎖は236、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66又はそれ以上(例えば、67、28、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80又はそれ以上の長さ)のヌクレオチドを有する)の全長を有する。このような特定の実施態様においては、アンチセンス鎖は37〜57ヌクレオチド長、又は37〜52ヌクレオチド長、又は37〜47ヌクレオチド長、又は42〜62ヌクレオチド長、又は42〜57ヌクレオチド長、又は42〜47ヌクレオチド長の長さを有する。
特定の実施態様においては、本発明のDsiRNAのセンス鎖は、25ヌクレオチド〜60又はそれ以上のヌクレオチド(例えば、センス鎖は25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60又はそれ以上(例えば、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70又はそれ以上の長さ)のヌクレオチドを有する)の全長を有する。特定の実施態様においては、センス鎖の長さは25ヌクレオチド〜30ヌクレオチド長であり、35〜55ヌクレオチド長であってもよく、40〜55ヌクレオチド長であってもよく、40〜60ヌクレオチド長であってもよく、45〜60ヌクレオチド長であってもよい。関連実施態様においては、アンチセンス鎖は、25〜36又はそれ以上のヌクレオチド(例えば、センス鎖は25、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36又はそれ以上(例えば、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50又はそれ以上の長さ)のヌクレオチドを有する)の全長を有する。このような特定の実施態様においては、アンチセンス鎖は27〜32ヌクレオチド長を有する。
特定の実施態様においては、Dicer酵素切断の突出する部位の3’であるセンス鎖の領域における、またDicer酵素切断の突出する部位の5’であるアンチセンス鎖の対応する領域における1以上の塩基対形成したデオキシリボヌクレオチドの存在は、このような分子のDicer酵素切断をもたらすように役に立ち得る。本発明の特定の例示された薬剤は、センス鎖の5’末端にて位置1から計数するときに24位より3’に位置するセンス鎖デオキシリボヌクレオチド、およびアンチセンス鎖の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対形成するセンス鎖のデオキシリボヌクレオチドのこの位置24又はより3’を有するが、ある実施態様においては、例えば、センス鎖の20位におけるデオキシリボヌクレオチド残基の包含を介して、より短い産物、例えば19量体又は20量体を切断するようにDicerを方向付けることも可能である。このような20位のデオキシリボヌクレオチド塩基は、アンチセンス鎖の対応するデオキシリボヌクレオチドと対形成し、これにより、最も一般的なDicer産物として19量体のDicerを媒介した切除に方向づける(アンチセンス鎖は、また、更にアンチセンス鎖のDicer切断に方向付けるために、このような実施態様におけるセンス鎖の20位のデオキシリボヌクレオチド残基と塩基対を形成するアンチセンス残基のすぐ3’に1個又は2個のデオキシリボヌクレオチド残基を含んでいてもよいことに留意されたい)。このような実施態様においては、二重鎖DNA領域(Dicer切断を遮断する修飾核酸を含む)は、通常は好ましくないDicer切断産物の長さであるものを生成するようにDicer切断に方向付けるために、1個又は2個の塩基対を超える長さ(例えば、3〜5又はそれ以上の塩基対)を通常は有するであろう。21位に存在するセンス鎖の第1のデオキシリボヌクレオチド残基の位置で(センス鎖の5’末端にて1位からセンス鎖を調査する場合に)、20量体のsiRNAsのDicer切除に方向付けるために、平行アプローチを採用してもよい。
特定の実施態様においては、DsiRNA剤のセンス鎖は、センス鎖の3’末端に位置する適切な修飾因子によってDicerプロセシングについて修飾され、すなわち、DsiRNA剤は、センス鎖修飾を介してDicer結合およびプロセシングの向きを方向付けるように設計される。適切な修飾因子は、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドのようなヌクレオチド、及び蛍光分子のような立体障害型分子を含む。アシクロヌクレオチドは、2−ヒドロキシエトキシメチル基を、通常dNMPsに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖と置換する。その他のヌクレオチド修飾因子は、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)のモノホスフェートヌクレオチドを含む。一実施態様においては、デオキシリボヌクレオチドは修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3種のヌクレオチド修飾因子又は2種のヌクレオチド修飾因子が、センス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドと置換される。立体障害型分子が利用される場合、これらは、アンチセンス鎖の3’末端にてリボヌクレオチドに付着される。従って、鎖の長さは、修飾因子の組み込みにより変化しない。他の実施態様においては、本発明は、アンチセンス鎖のDicerプロセシングの向きを方向付けるために、DsiRNA剤における2個のDNA塩基を置換することを想定する。本発明の更なる実施態様においては、2個の末端DNA塩基は、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の5’末端で二重鎖の平滑末端 を形成するセンス鎖の3’末端上の2個のリボヌクレオチドと置換され、2個のヌクレオチドRNAオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に位置する。これは、平滑末端上のDNA及びオーバーハング末端上のRNA塩基と非対称の構成である。本発明の特定の実施態様においては、センス鎖の3’末端の最後から2番目および最後の位置の修飾されたヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド)は、アンチセンス鎖の対応する修飾ヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド)(場合により、センス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端にて平滑末端を有する本発明のDsiRNA剤におけるアンチセンス鎖の5’末端の最後から2番目及び最後の残基)と塩基対形成する。
本発明のDsiRNA剤のセンス及びアンチセンス鎖は、細胞の原形質において見い出される条件のような、生物学的条件下でアニーリングされる。更に、DsiRNA剤の、特にアンチセンス鎖の、配列の1つの領域は、少なくとも19ヌクレオチドの配列長さを有し、これらのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に隣接した21ヌクレオチドの領域内にあり、標的遺伝子から産生されるRNAのヌクレオチド配列に対して、このような標的RNAとアニーリングし、及び/又はレベルを低下させるほど十分に相補的である。
本発明のDsiRNA剤は、センス鎖の突出しりDicer切断部位の3’及びアンチセンス鎖の突出するDicer切断部位の5’に位置するセンス及びアンチセンス鎖の任意の位置に位置する1以上のデオキシリボヌクレオチド塩基対を有していてもよい。特定の実施態様においては、センス鎖の24〜27位(センス鎖の5’ 末端にて1位から開始)の1、2、3又は4個全てがデオキシリボヌクレオチドであり、各デオキシリボヌクレオチドが、アンチセンス鎖の対応するデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。特定の実施態様においては、アンチセンス鎖の5’領域のデオキシリボヌクレオチド(例えば、所定のDsiRNA分子について突出するDicer切断部位の5’に位置するアンチセンス鎖の領域)は、DsiRNA剤が方向づけられる標的 RNAに対して相補的でない。関連実施態様においては、DsiRNA剤の突出するDicer切断部位の5’に位置するアンチセンス鎖の全ての領域は、DsiRNA薬剤が方向づけられる標的RNAに対して相補的でない。特定の実施態様においては、アンチセンス鎖のデオキシリボヌクレオチド又はDsiRNA剤の 突出するDicer切断部位の5’に位置するアンチセンス鎖の全ての領域は、アンチセンス鎖がアンチセンス鎖と標的RNAとの間のアニーリングが可能な十分な条件下で標的RNAにアニーリングされる場合に標的RNAに対するDsiRNAのアンチセンス鎖のアニーリングを増強するほど、標的RNAに対して十分に相補的でない(例えば、DNA拡張領域を欠く「コア」アンチセンス鎖配列は、同じ「コア」アンチセンス鎖配列もDNA伸長領域の配列で伸長したので、標的RNAに同程度によくアニーリングされる)。
DsiRNA剤は、また、以下の更なる1以上の特性を有してもよい:(a)アンチセンス鎖は、典型的な21量体から右又は左に変化を有する、(b)鎖は、完全に相補的でなくてもよく、すなわち、鎖は、単純なミスマッチ対形成を含んでいてもよく、及び(c)ロックド核酸のような塩基修飾がセンス鎖の5’末端に含まれてもよい。「典型的な」21量体siRNAは、従来の技術を用いて設計される。1つの技術において、種々の部位を平行して、又は1種の試薬が有効であろうことが望まれる同じ標的に特異的ないくつかの異なるsiRNA二重鎖特異的を含むプールにおいて、共通に試験を行なう(Jiた、2003)。その他の技術は、活性なRNAiエフェクター分子を得る可能性を増大させるために、設計則およびアルゴリズムを用いる(Schwarzら、2003;Khvorovaら、2003;Ui−Teiら、2004;Reynoldsら、2004;Krolら、2004;Yuanら、2004;Boeseら、2005)。siRNAの高スループット選択も開発されている(米国特許出願公開第2005/0042641号(A1))。潜在的な標的部位は、また、二次構造予測によって解析することができる(Healeら、2005)。次いで、この21量体を用い、21量体の5’末端上の3〜9個の更なるヌクレオチドを含むように右シフトを設計する。これらの更なるヌクレオチドの配列は、任意の配列を有していてもよい。一実施態様においては、付加されるリボヌクレオチドは標的遺伝子の配列をベースとする。本実施態様においてさえ、標的配列とアンチセンスsiRNAとの間の完全な相補性は、必要でない。
本発明のDsiRNA剤の第1及び第2のオリゴヌクレオチドは、完全に相補的であることは必要でない。これらは、生物学的条件下でアニーリングするように、また、標的配列と十分に相補的なsiRNAを産生するDicerのための基質を提供するように、実質的に相補的であることを必要とするのみである。ロックド核酸(又はLNAのもの)は当業者に周知である(Elmanら、2005;Kurreckら、2002;Crinelliら、2002;Braasch及びCorey、2001;Bondensgaardら、2000;Wahlestedtら、2000)。一実施態様においては、LNAは、センス鎖の5’末端にて組み込まれる。他の実施態様においては、LNAは、アンチセンス鎖上の3’オーバーハ ングを含むように設計二重鎖中のセンス鎖の5’末端にて組み込まれる。
特定の実施態様においては、本発明のDsiRNA剤は、センス鎖が27塩基対長を有し、アンチセンス鎖が2塩基の3’−オーバーハングを有する29塩基対の長さを有する、非対称構造を有する。このような薬剤は、1〜4個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。他の実施態様においては、センス鎖は28塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は、2塩基の3’− オーバーハングを有する30塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜5個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つはアンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。更なる実施態様においては、センス鎖は29塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は、2塩基の3’−オーバーハングを有する31塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜6個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。更なる実施態様においては、センス鎖は、30塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は、2塩基の3’−オーバーハングを有する32塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜7個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer 切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。他の実施態様においては、センス鎖は31塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は、2塩基の3’−オーバーハングを有する33塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜8個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。更なる実施態様においては、センス鎖は32塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は2塩基の3’−オーバーハングをもつ34塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜9個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’ 末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。更なる特定の実施態様においては、センス鎖は33塩基対の長さを有し、アンチセンス鎖は、2塩基の3’−オーバーハングを有する35塩基対の長さを有する。このような薬剤は、1〜10個のデオキシリボヌクレオチドの間の、センス鎖の3’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の3’領域)を有していてもよく、その少なくとも1つは、アンチセンス鎖の5’末端領域(具体的には、突出するDicer切断部位の5’領域)の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成する。更に他の実施態様においては、これらのDsiRNA薬剤のいずれもが、リボヌクレオチドのうちの2個に代え、センス鎖の3’末端にて2個のデオキシリボヌクレオチドを更に含む非対称構造を有し;これらの2個のデオキシリボヌクレオチドは、アンチセンス鎖の同種のデオキシリボヌクレオチドと塩基対を形成していてもよい。
2個の別々のオリゴヌクレオチドを含む特定のDsiRNA剤組成物を、第3の構造によって連結することができる。第3の構造は、DsiRNA薬剤に対するDicer活性を遮断せず、標的遺伝子から転写されるRNAの定方向破壊を妨げないであろう。一実施態様においては、第3の構造は化学的連結基であってもよい。多くの適切な化学的連結基が当該技術分野において公知であり、用いることができる。また、第3の構造は、dsNA組成物を構成する2個のオリゴヌクレオチドのアニーリングによりヘアピン構造が生じるような様式で、DsiRNA薬剤の2個のオリゴヌクレオチドを連結するオリゴヌクレオチドであってもよい。ヘアピン構造は、DsiRNA薬剤に対するDicer活性を遮断せず、標的RNAの定方向破壊を妨げないであろう。
特定の実施態様においては、本発明のDsiRNA剤は、Dicerによるプロセシングを増強するいくつかの特性を有する。このような態様によれば、DsiRNA薬剤は、DicerによってプロセスされてsiRNA及び以下の特性の少なくとも1つを生じるように、十分な長さを有する:(i)DsiRNA薬剤は非対称であり、例えば、センス鎖上に3’オーバーハングを有し、(ii)DsiRNA薬剤は、Dicer結合の向き及びdsRNA領域の活性なsiRNAへのプロセシングを方向づけるように、アンチセンス鎖上に修飾された3’末端を有する。これらの実施態様によれば、DsiRNA剤中の最も長い鎖は、25〜43ヌクレオチドを含む。一実施態様においては、センス鎖は25〜39ヌクレオチドを含み、アンチセンス鎖は26〜43ヌクレオチドを含む。得られるdsNAは、センス鎖の3’末端にオーバーハングを有していてもよい。オーバーハングは、1〜4ヌクレオチド、例えば2ヌクレオチドである。アンチセンス又はセンス鎖は、5’ホスフェートを有していてもよい。
特定の実施態様においては、DsiRNA剤のセンス鎖は、センス鎖の3’末端に位置する適切な修飾因子によってDicerプロセシングのために修飾され、すなわち、DsiRNA剤は、Dicer結合およびプロセシングの向きを方向付けるように設計されている。適切な修飾因子は、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドのようなヌクレオチド、及び蛍光分子のような立体障害型分子を含む。アシクロヌクレオチドは、2− ヒドロキシエトキシメチル基を、通常dNMPsに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖と置換する。その他のヌクレオチド修飾因子は、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、 2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)のモノホスフェートヌクレオチドを含んでいてもよい。一実施態様においては、デオキシリボヌクレオチドは修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3種のヌクレオチド修飾因子又は2種のヌクレオチド修飾因子が、センス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドに置換される。立体障害型分子が利用される場合、これらは、アンチセンス鎖の3’末端にてリボヌクレオチドに付着される。従って、鎖の長さは、修飾因子の組み込みにより変化しない。他の実施態様においては、本発明は、Dicerプロセシングの向きを方向付けるために、dsNA中の2個のDNA塩基を置換することを想定する。更なる実施態様においては、2個の末端DNA塩基は、アンチセンス鎖の5’末端お及びセンス鎖の3’末端で二重鎖の平滑末端を形成する3’末端上の2個のリボヌクレオチドと置換され、2個のヌクレオチドRNAオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に位置する。これは、平滑末端上のDNA及びオーバーハング末端上のRNA塩基と非対称の構成である。
他の特定の実施態様においては、DsiRNA剤のアンチセンス鎖は、アンチセンス鎖の3’末端に位置する適切な修飾因子によってDicerプロセシングのために修飾され、すなわち、DsiRNA剤は、Dicer結合及びプロセシングの向きを方向づけるように設計されている。適切な修飾因子は、デオキシリボヌクレオチド、ジデオキシリボヌクレオチド、アシクロヌクレオチドのようなヌクレオチド、及び蛍光分子のような立体障害型分子を含む。アシクロヌクレオチドは、2−ヒドロキシエトキシメチル基を、通常dNMPsに存在する2’−デオキシリボフラノシル糖と置換する。その他のヌクレオチド修飾因子は、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ −3’−チアシチジン(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、並びに3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)及び2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)のモノホスフェートヌクレオチドを含んでいてもよい。一実施態様においては、デオキシリボヌクレオチドは修飾因子として用いられる。ヌクレオチド修飾因子が利用される場合、1〜3種のヌクレオチド修飾因子又は2ヌクレオチド修飾因子が、センス鎖の3’末端上のリボヌクレオチドに置換される。立体障害型分子が利用される場合、これらは、アンチセンス鎖の3’末端にてリボヌクレオチドに付着される。従って、鎖の長さは、修飾因子の組み込みにより変化しない。他の実施態様においては、本発明は、Dicerプロセシングの向きを方向付けるために、DsiRNA剤中の2個のDNA塩基を置換することを想定する。更なる実施態様においては、2つの末端DNA塩基は、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端で二重鎖の平滑末端を形成する3’末端上の2個のリボヌクレオチドに置換され、2個のヌクレオチドRNAオーバーハングは、アンチセンス鎖の3’末端上に位置する。これは、また平滑末端上のDNA及びオーバーハング末端上のRNA塩基と非対称の構成である。
センス及びアンチセンス鎖は、細胞の原形質において見いだされる条件のような生物学的条件下でアニーリングされる。更に、DsiRNA剤の、特にアンチセンス鎖の、配列の1つの領域は、少なくとも19ヌクレオチドの配列長さを有し、これらのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に隣接しRNA干渉を方向付けるほど、標的RNAのヌクレオチド配列に十分に相補的である。
更に、DsiRNA薬剤構造は、Dicerの切断により産生されるオリゴヌクレオチドセグメントが遺伝子発現を阻害するのに最も有効であるオリゴヌクレオチドの部分であるであろうことを保証するように最適化することができる。たとえば、本発明の一実施態様においては、遺伝子発現を阻害するであろうことが予想さ れる21〜22塩基対の断片がアンチセンス鎖の3’末端に位置する、27〜35塩基対のオリゴヌクレオチドのDsiRNA剤構造が合成される。アンチセンス鎖の5’末端に位置する残りの塩基は、Dicerによって切断され、廃棄されるであろう。この切断された部分は、相同的(すなわち、標的配列の 配列に基づき)又は非相同的であること、並びに核酸鎖を伸長するために付加することができる。意外なことに、本発明において同定されたように、このような伸長は、塩基対形成したDNA残基で実施することができ(二重鎖DNA:DNA伸長)、対応する二重鎖RNA:RNA−伸長DsiRNA剤よりも改善された有効性又は効果の期間を有する伸長DsiRNA剤をもたらす。
米国特許出願公開第2007/0265220号は、27量体のDsiRNAsが、化学的修飾の非存在でさえ、相当する21量体のsiRNA組成物を上回る血清中における改良された安定性を示すことを開示している。米国特許出願公開第2007/0265220号において、及び本明細書の実施例において開示されたようなパターンの、アンチセンス鎖における2’−O−メチルRNAの包含などのDsiRNA薬剤の修飾は、5’ホスフェートの付加と対にした場合に、DsiRNA薬剤の安定性を改善し得る。合成RNA二重鎖における全ての鎖に対する5’−ホスフェートの付加は、ヌクレアーゼ安定性の程度をある程度制限させるための、安価かつ生理的な方法であろう。
本発明のDsiRNA剤の化学的修飾パターンは、このような薬剤の有効性を増強するように設計されている。従って、このような修飾は、DsiRNA薬剤の能力を減少させることを回避するように;DsiRNA剤のDicerプロセシングの妨害を回避するように;DsiRNA剤の生体液における安定性を改善する(ヌクレアーゼ感受性を減少させる)ように;又は選定性の免疫系による検出を遮断し、もしくは避けるように設計されている。このような修飾は、また毒性になることを回避し、並びに本発明の本DsiRNA剤を製造の際の費用又は容易さへの影響を増大させことを回避するように設計されている。
RNAプロセシング
siRNA
siRNAによって媒介されるRNAiのプロセスは、細胞内における長いdsRNA分子の存在下で誘発される。RNAiの開始工程の際に、これらのdsRNA分子は、2種のRNアーゼIII様のドメインを含む酵素の保存されたファミリーであるDicerによって21〜23ヌクレオチド(nt)低分子干渉RNA二重鎖(siRNAs)に切断される(Bernsteinら、2001;Elbashirら、2001)。siRNAsは、19〜21塩基対の二重鎖領域及び各鎖上の2個のヌクレオチド3’オーバーハングによって特徴づけられる。RNAiのエフェクター工程の際に、siRNAsは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれる多量体タンパク質複合体に組み込まれ、これらが、分解のための完全に相補的なmRNA基質を選択するためのガイドとしての役割を果たす。分解は、siRNAに対して相補的な領域内のmRNAのエンドヌクレアーゼ的切断によって開始される。更に正確に言うと、mRNAは、ガイドするsiRNAの5’末端から10位のヌクレオチドにて切断される(Elbashir et al.,2001 Genes and Dev.15:88−200;Nykanenら、2001 Cell 107:309−321;Martinez et al.,2002 Cell 110:563−574)。この切断に関与するエンドヌクレアーゼは、Argonaute2として同定された(Ago2;Liu et al.,Science、305:1437−41)。
miRNA
大部分のヒトmiRNA(70%)−及びおそらくその他の哺乳類の大部分のmiRNA−は、イントロン及び/又はエキソンから転写され、約30%は遺伝子間領域に位置する(Rodriguez et al.,Genome Res.2004,14(10A),1902−1910)。ヒトおよび動物において、miRNAは、通常、RNAポリメラーゼIIによって(Farh et al.Science 2005,310(5755),1817−1821)、また、ある場合には、pol IIIによって転写される(Borchert et al.Nat.Struct.Mol.Biol.2006,13(12),1097−1101)。特定のウイルスのコードされたmiRNAは、RNAポリメラーゼIIIによって転写され(Pfeffer et al.Nat.Methods 2005,2(4),269−276;Andersson et al.J.Virol.2005,79(15),9556−9565)、いくつかは、ウイルス遺伝子のオープンリーディングフレームに位置する(Pfeffer et al.Nat.Methods 2005,2(4),269−276;Samols et al.J.Virol.2005,79(14),9301−9305)。miRNAの転写は、大きなモノシストロン性、双シストロン性、又は多シストロン性の一次転写物(pri−miRNA)の産生をもたらす。単一のpri−miRNAは、長さが約200ヌクレオチド(nt)から数キロベース(kb)までの範囲であり、5’7−メチルグアノシン(m7)キャップ及び3’ポリ(A)テールの両方を有し得る。特徴的には、成熟したmiRNA配列は、pri−miRNA内の不完全なステム−ループ配列の領域に局在化される(Cullen,Mol.,Cell 2004,16(6),861−865)。
核内でのmiRNA成熟の第1工程は、RNアーゼIII Drosha−DGCR8核マイクロプロセッサ複合体によるpri−miRNAの認識及び切断であり、これにより、5’末端にてモノホスフェート及び3’末端にてヒドロキシル基を有する2−ntオーバーハングを有するpre−miRNAと呼ばれる、〜70 ntのヘアピンを含む前駆体分子を放出する(Cai et al.RNA 2004,10(12),1957−1966;Lee et al.Nature 2003,425(6956),415−419;Kim Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2005,6(5),376−385)。次の工程は、キャリアータンパク質であるエクスポーチン−5による核から原形質へのpre−miRNAの核輸送である(Yi et al.Genes.Dev.2003,17(24),3011−3016,Bohnsack et al.RNA 2004,10(2),185−191)。エクスポーチン−5及びその補因子RanのGTP結合した形態は、共に、pre−miRNAの特徴である2ヌクレオチド3’オーバーハング及び隣接するステムを認識し、結合する(Basyuk et al.Nucl.Acids Res.2003,31(22),6593−6597,Zamore Mol.Cell.2001,8(6),1158−1160)。原形質において、GTP加水分解により、pre−miRNAの放出をもたらし、次いでこれが細胞エンドヌクレアーゼIII酵素 Dicerによって処理される(Bohnsackら)。Dicerは、RNA干渉(RNAi)を媒介するsiRNAsを生成する際のその役割について、最初に認識された。Dicerは、その補因子 TRBP(トランス活性化領域結合タンパク質;Chendrimata et al.Nature 2005,436(7051),740−744)及びPACT(インターフェロン誘導性二重鎖−RNA依存性プロテインキナーゼ活性化因子;Lee et al.EMBO J.2006,25(3),522−532)と協力して作用する。これらの酵素は、pre−miRNAヘアピンの塩基にて3’の2個のヌクレオチドオーバーハング にて結合し、末端ループを除去し、5’モノホスフェート、3’の2個のヌクレオチドオーバーハング及び3’ヒドロキシル基を有する両末端有数r、約21ntのmiRNA二重鎖中間体をもたらす。次いで、その5末端がエネルギー的にあまり安定でないmiRNAガイド鎖が、RISC(RNA誘導サイレンシング複合体)に組み込まれるために選択され、それと同時に、「パッセンジャー」鎖は、放出され、分解される(Maniataki et al.Genes.Dev.2005,19(24),2979−2990;Hammond et al.Nature 2000,404(6775),293−296)。RISCの組成は、十分に定義されないままであるが、重要な成分は、Argonaute(Ago)タンパク質ファミリーのメンバーである(Maniataki et al.;Meister et al.Mol.Cell.2004,15(2),185−197)。
次いで、成熟したmiRNAは、RISCは相補的mRNA種に方向付けられる。標的mRNAがRISCを備えたmiRNAに対して完全な相補性を有する場合、mRNAは切断され、分解されるであろう(Zeng et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2003,100(17),9779−9784;Hutvagner et al.Science 2002,297(55 89),2056−2060)。しかし、哺乳動物細胞において最も共通の状況として、miRNAは、不完全な相補性を有するmRNAを標的とし、これらの翻訳を抑制し、対応するタンパク質の発現の減少をもたらす(Yekta et al.Science 2004,304(5670),594−596;Olsen et al.Dev.Biol.1999,216(2),671−680)。miRNAの5’領域、特にシード領域と呼ばれるmiRNAの(5’末端にて位置1から開始し)ヌクレオチド2〜7又は8におけるmiRNAと標的配列との間のマッチはmiRNAターゲティングにとって本質的に重要であり、このシードマッチは、またmiRNA ターゲティングのコンピュータ予測においても広く用いられる重要な原理になった(Lewis et al.Cell 2005,120(1),15−20;Brennecke et al.PLoS Biol.2005,3(3),e85)。miRNA−mRNA二重鎖のmiRNA制御は、主に3’UTRにおける複数の相補部位を介して媒介されるが、これには多くの例外がある。miRNAは、また5’UTR及び/又はmRNAのコード領域にも結合し得、同様の結果をもたらす(Lytle et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2007,104(23),9667−9672)。
RNアーゼH
RNアーゼHは、DNA/RNA二重鎖におけるRNAの3’−OP結合を切断して、3’−ヒドロキシル及び5’−ホスフェート末端産物を産生するリボヌクレアーゼである。RNアーゼHは、非特異的エンドヌクレアーゼであり、酵素結合した二価の金属イオンによって補助される加水分解メカニズムを介してRNAの切断を触媒する。RNアーゼ Hファミリーのメンバーは、始原菌及び原核生物から真核細胞までのほとんど全ての微生物において見い出されている。DNA複製の際に、RNアーゼHは、岡崎フラグメントの生成をプライミングする役割を担うRNAプライマーを切断すると考えられているが; RNアーゼH酵素は、より般的には、十分な長さの任意のDNA:RNAハイブリッド配列(例えば、通常は、哺乳類における長さが4以上の塩基対のDNA:RNAハイブリッド配列)を切断するために用いることができる。
マイクロRNA及びマイクロRNA様治療薬
マイクロRNAs(miRNA)は、鋳型転写物の3’UTRに対する結合によって作用し、これにより、古典的なRNA干渉に関連があるが、異なるメカニズムによって鋳型転写物によってコードされるタンパク質の発現を阻害することが開示されている。具体的には、miRNAは、その安定性を減少させることによるのではなく、むしろ標的転写物の翻訳を減少することによって作用すると考えられる。天然に存在するmiRNAは、通常は、長さが約22ntである。これらは、約70ntの長さの小分子RNAとして公知のより大きな前駆体に由来すると考えられる。
3’UTR内に(又は標的転写物のその他の場所、例えば、ノッチ又はノッチファミリーの転写物の、繰り返しエレメントにおいて)結合し、翻訳を阻害する、siRNAsのような、また、より具体的にはmiRNAなどの干渉薬剤は、siRNA/鋳型(miRNA/鋳型)二重鎖における多数のミスマッチを許容し、特に二重鎖の中心領域内のミスマッチを許容し得る。実際に、インビトロにおける翻訳を阻害することが示されたmiRNAのように、天然に存在するstRNAsは、このようなミスマッチをしばしば示すので、いくつかのミスマッチが望ましく、又は必要とされ得るという証拠がある(Zeng et al.,Molecular Cell,9:1−20)。例えば、標的転写物とハイブリダイズした場合に、このようなmiRNAは、しばしば、ミスマッチの領域によって分離された完全に相補的な2つのストレッチを含む。このようなハイブリダイズした複合体は、一般に、ヌクレオチド対を含む完全な相補性の(二重鎖部分)、及び少なくとも単一のミスマッチ塩基対の2つの領域を含み、これは、例えば、G:A、G:U、G:G、A:A、A:C、U:U、U:C、C:C、G:−、A:−、U:−、C:−等であってもよい。このようなミスマッチのヌクレオチドは、特に直列に存在する場合(例えば、2、3又は4個のヌクレオチドのミスマッチの領域)、このようなバルジのいずれかに隣接して位置する二重鎖部分を分離するバルジを形成し得る。種々の構造が可能である。例えば、miRNAは、複数の非同一(ミスマッチ)の領域を含んでいてもよい。同一でない(ミスマッチ)の領域は、標的およびmiRNAの両方が対を形成しないヌクレオチドを含むとい う意味で、対称形であることは必要ない。例えば、1本の鎖のみが対を形成しないヌクレオチドを含む構造が開示されている。(Zengら)。通常は、miRNA剤内の完全な相補性のストレッチは、長さが少なくとも5ヌクレオチド、例えば長さが6、7又はそれ以上のヌクレオチドであるが、ミスマッチの領域は、例えば、長さが1、2、3、又は4ヌクレオチドでもよい。
一般に、任意の特定のsiRNAは:(i)標的転写物の安定性が減少し、siRNA及び標的の間の完全な相補性がしばしば好まれる「古典的な」 siRNA経路を介して、及び更に(ii)標的転写物の翻訳が阻害される「他の」経路(一般に、動物におけるmiRNA経路として特徴づけられる)によって、両方で遺伝子発現を阻害するように機能し得る。一般に、単一の転写物が、その古典的及び代わりの経路のための標的として役に立つことができる領域を含み得るが、メカニズム(i)を介して特定のsiRNAによって標的にされる転写物は、メカニズム(ii)を介して標的にされる転写物とは異なるであろう。(「古典的」及び「代わりの」という用語は、単に便宜のために用いられ、一般に、動物細胞におけるこのようなメカニズムの発見の歴史的タイミングを反映すると考えられるが、重要性、有効性又はいずれのメカニズムのその他の特徴を反映しない点に留意されたい)。siRNA設計の1つの 共通の目標は、メカニズム(i)を介して、優れた特異性で単一の転写物を標的にし、メカニズム(ii)を介して潜在的に誘発されるこれらの効果を含むオフターゲット効果を最小にすることであった。しかし、天然に存在するmiRNAの活性を模倣する目的のため、又は対応するmiRNAが現在公知でない標的RNAに対して向けられた薬剤を創造することのいずれかのために、このようなミスマッチに寛容であり、実際は、おそらく増強されるこのようなミスマッチを含むDsiRNA薬剤(例えば、DsiRNAmm薬剤)の阻害性及び/又は治療的有効性/能力により、設計によってミスマッチ残基を有する RNA干渉薬剤を提供することが本発明の目標の一つである。
ミスマッチヌクレオチドについてのmiRNA剤の寛容性(また、実際には、細胞内での上記メカニズム(ii)の存在および天自然な使用)は、メカニズム(i)を介して作用する完全に相補的なsiRNAsの「古典的な」使用に対して有利であり、及び/又はこれにより拡張される様式でのmiRNAの使用を示唆する。miRNAは、天然に存在する分子であるので、治療的薬としてmiRNAに適用する際に異なる利点がある可能性がある。miRNAは、数億年のこれらの機能の進化の「微調整」からも利益を得る。従って、配列特異的「オフターゲット」効果は、天然に存在するmiRNAで、又は天然に存在するmiRNAを模倣するように設計された本発明の特定の合成DsiRNAs(例えば、DsiRNAmm剤)での拡張により、問題とならないはずである。更に、miRNAは、遺伝子の群の発現を調整するように進化しており、駆動の上方制御及び下方制御の両方を操作し(特定の例においては、複数の標的RNAに無差別に作用する単一のmiRNAで、細胞内で同時に両方の機能を実施する)、複雑な細胞機能を正確に調整することができる。天然に存在するmiRNAのこのような置換は、正常な増殖、アポトーシス、細胞周期及び1以上のmiRNAの下方制御によって影響を受けるその他の細胞の機能を回復する試みにおいて、合成miRNA又はmiRNA擬態(例えば、特定のDsiRNAmms)を病気の組織に導入することを含み得る。特定の例においては、これらのmiRNAで調節される経路の再活性化により、有意な治療反応を生じた(例えば、心肥大での1つの研究において、miRNA発現カセットのアデノウイルスが媒介する送達によるmiR−133の過剰発現は、アゴニストで誘導される心肥大から動物を保護したが、相反的に、アンタゴミアによる野生型マウスにおけるmiR−133の減少は、肥大マーカーの増大をもたらした(Care et al.Nat.Med.13:613−618)。
現在まで、600を超えるmiRNAがヒトゲノム内でコードされることが同定されており、このようなmiRNAは、核および原形質内でのタンパク質の組み合わせによって発現し、プロセシングされる。miRNAは、脊椎動物内で高度に保存されており、全ての哺乳動物遺伝子の約2%を含む。各miRNAが、複数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9又は数十から何百もの異なる遺伝子の発現十を調節すると思われるので、miRNAは、「マスタースイッチ」として機能して、効率的に複数の細胞経路およびプロセスを調節し、連繋することができる。複数の遺伝子の発現を連繋することにより、miRNAは、胚発生、免疫、炎症、並びに細胞の成長及び増殖において重要な役割を果たす。
発現及び機能研究は、特異的miRNAの発現の変化が多様なヒト疾患に重要であることを示唆する。あがってきた証拠は、疾患細胞及び組織への特異的miRNAの導入により、好ましい治療的反応を誘発し得ることを示す(Pappas et al.,Expert Opin Ther Targets.12:115−27)。miRNA療法の将来性は、腫瘍抑制因子としての特定のmiRNAの明らかな役割のため、おそらく癌において最も大きい。癌のための miRNAに基づいた治療のための理論的根拠は、たとえば、少なくとも部分的には、以下の観察によって支持される:
(1)miRNAは、正常組織と比較した場合に、疾患組織において、変化したレベルにてしばしば誤って調節され、発現する。多数の研究は、これらの対応する正常組織と比較して、癌組織において変化したmiRNAのレベルを示していた。多くの場合、発現の変化は、特定のmiRNAの発現の増加又は減少を引き起こす遺伝的な突然変異の結果である。独特のmiRNA発現サインを有する疾患は、診断及び予後マーカーとして利用することができ、本発明のDsiRNA(例えば、DsiRNAmm)剤で標的にすることができる。
(2)誤って調節されたmiRNAは、癌遺伝子又は腫瘍抑制因子として機能することによって、癌発症に寄与する。癌遺伝子は、その過剰発現又は不適切な活性化が腫瘍形成を引き起こす遺伝子として定義される。腫瘍抑制因子は、癌性になることから細胞を維持するために必要とされる遺伝子であり;腫瘍抑制因子の下方制御又は不活性化は、癌の共通の誘導因子である。このような標的は、特定の癌に対して分子基盤に特異的に作用し得るので、両タイプの遺伝子は好ましい薬物標的となる。発癌性miRNAの例は、miR−155及びmiR−17−92であり;let−7は、腫瘍抑制性miRNAの例である。
(3)miRNAの投与は、前臨床動物試験において、腫瘍増殖成長を遮断し、又は減少させることによって、治療的反応を誘発する。科学文献は、miRNA機能を修復することにより、インビトロにおける、更に動物モデルにおける癌細胞の増殖を防止することができ、又は減少させることができることを証明する概念実証研究を提供する。十分に特徴づけられた例は、乳癌及び肺癌についてのモデルにおけるlet−7の抗腫瘍活性である。let−7を模倣するように設計されている本発明のDsiRNAs(例えば、DsiRNAmms)は、このような癌を標的とするために用いることができ、治療的リード化合物(例えば、前臨床動物モデルにおいて腫瘍量を減少させることができる薬剤)をスクリーニングするために、同等の天然に存在するmiRNAが公知でない(例えば、ノッチ又はその他の転写物内の繰り返し)標的RNAに対して方向付けられる新たなDsiRNA(例えば、DsiRNAmm)剤を生成するために、本明細書に開示したDsiRNA設計パラメーターを用いることも可能である。
(4)所定のmiRNAは、複数の細胞経路を制御し、その結果、優れた治療的活性を有し得る。これらの生物学に基づき、miRNAは、ゲノムの「マスタースイッチ」として機能し、複数の遺伝子産物を調節し、複数の経路を連繋し得る。miRNAによって調節される遺伝子は、従来の癌遺伝子及び腫瘍抑制因子をコードする遺伝子を含み、これらの多くは、医薬品工業による薬物標的として個々に追跡されている。従って、miRNA療法は、複数の疾患及び/又は癌関連遺伝子を標的にすることによってsiRNAs及びリード化合物のそ形態より優れた活性を有し得る。miRNAの誤った制御が腫瘍形成のプロセスの初期の事象ことが多いという観察を考慮すると、失われたmiRNAを置換するmiRNA治療は、最適な療法である可能性がある。
(5)miRNAは天然の分子であり、従って、あまり特異的な副作用を誘発しにくい。何百万年の進化も、miRNAの調節ネットワークを発達させることを補助し、標的メッセンジャーRNAとmiRNAとの相互作用を微調整した。従って、miRNA及びmiRNA誘導体(例えば、天然に存在するmiRNAを模倣するように設計されたDsiRNAs)は、適当な状況において適用された場合に、もしあってもほとんど配列特異的「オフターゲット」効果を有さないであろう。
siRNAs及びmiRNAの物理的特徴は類似している。従って、siRNAs(例えば、本発明のDsiRNAs)を送達するのに有効である技術は、同様に、合成miRNA(例えば、本発明の特定のDsiRNAmms)を送達するのにも有効である。
DsiRNA剤の抱合及び送達
特定の実施態様においては、本発明は、疾患又は障害を患っているか、又は発症する危険性のある被験者を治療するための方法に関する。このような実施態様においては、DsiRNAは、疾患又は障害を制御するための新規な治療薬として作用し得る。本発明の方法は、本発明の医薬組成物を患者(例えば、ヒト)に投与することを含み、その結果、標的RNAの発現、レベル及び/又は活性が減少する。標的RNAによってコードされるポリペプチドの発現、レベル及び/又は活性は、また本発明のDsiRNAによって減少させられる可能性がある。
疾患又は障害の治療において、DsiRNAは、疾患若しくは障害を示すか、又は関連する細胞又は組織と接触させることができる。例えば、標的RNA配列の全て又は一部と実質的に同一のDsiRNAを、疾患を患っている、疾患に関連した、若しくは感染した細胞と、インビボ若しくはインビトロで接触させても、又は導入してもよい。同様に、標的RNA配列の全て又は一部と実質的に同一のDsiRNAを、疾患又は障害を患っているか、又は発症する危険性のある被験者に直接投与してもよい。
本発明のDsiRNA剤の治療的使用は、複数の異なるDsiRNA剤配列を含むDsiRNA剤の製剤の使用を含み得る。たとえば2以上、3以上、4以上、5以上の、本明細書に開示した薬剤を組み合わせて、例えば、1以上の標的RNAの複数の異なる領域を標的とする製剤を製造することができる。本発明のDsiRNA薬剤は、またDsiRNA薬剤の鎖が標的RNAの2つ以上の領域を独立して標的とするように構築してもよい。標的核酸分子の1つ以上の領域を標的とする多機能性DsiRNA分子の使用により、RNAレベル及び発現の強力な阻害をもたらされることが予想される。例えば、本発明の単一の多機能性DsiRNA構築物は、標的核酸分子の保存された領域及び可変領域を標的とすることができ、これにより、単一の標的遺伝子によってコードされる、例えばウイルスの異なる株変異体又はスプライス変異の下方制御又は阻害が可能となる。
本発明のDsiRNA剤は、他の部分(例えば、ペプチド等の非核酸部分)、有機化合物(例えば、色素、コレステロール等)に抱合(例えば、そのセンス又はアンチセンス鎖の5’又は3’末端にて)してもよく、縫合しなくてもよい。このようにしてDsiRNA薬剤 を修飾することにより、対応する、縫合していないDsiRNA薬剤と比較して、生じるDsiRNA薬剤誘導体の細胞の取り込みが改善され、又は細胞の標的活性を増強し得、細胞におけるDsiRNA薬剤誘導体を追跡するために有用であり、又は対応する抱合していないDsiRNA薬剤と比較して、DsiRNA薬剤誘導体の安定性を改善し得る。
DsiRNA活性を評価するためのRNAiインビトロアッセイ
無細胞系におけるRNAiを再現するインビトロアッセイを、DsiRNA構築物を評価するために用いてもよい。例えば、このようなアッセイは、標的RNAに対して向けられたDsiRNA薬剤で用いるために使用するために適合されたTuschl et al.,1999,Genes and Development,13,3191−3197及びZamore et al.,2000,Cell,101,25−33に開示されたシステム、及びTurbo Dicer(Genlantis)を含む市販のキットが含まれる。合胞性胞胚葉に由来するショウジョウバエ(Drosophila)抽出物が、インビトロでのRNAi活性を再構成するために用いられる。標的RNAは、T7 RNAポリメラーゼを用いる適切なプラスミドからのインビトロでの転写を介して、又は化学的合成を介して生成する。センス及びアンチセンスDsiRNA鎖(例えば、各20μM)を緩衝液(100mM酢酸カリウム、30mM HEPES−KOH、pH7.4、2mM酢酸マグネシウム等)において、90℃で1分間、次いで37℃で1時間インキュベーションしてアニーリングさせ、次いで溶解緩衝液(例えば、100mM酢酸カリウム、30mM HEPES−KOH、pH7.4、2mM酢酸マグネシウム)で希釈する。アニーリングは、TBE緩衝液中のアガロースゲルによるゲル電気泳動によって観察することができ、臭化エチジウムで染色することができる。ショウジョウバエ可溶化液は、脱塩素化して溶解化した発酵させたモラセス寒 天上に収集したOregon Rハエからの0〜2時間齢胚を使用して調製する。可溶化液を遠心分離して、上清を単離する。アッセイは、DsiRNA(10nM終濃度)を含む、50%の可溶化液[vol/vol]、RNA(10〜50pM終濃度)及び10%[vol/vol]の溶解緩衝液を含む反応混合物を含む。また、反応混合物は、10mMクレアチンリン酸、10μg/mLのクレアチンホスホキナーゼ、100μm GTP、100μM UTP、100μM CTP、500μM ATP、5mM DTT、0.1U/μL RNasin(Promega)及び100μMのそれぞれのアミノ酸も含む。酢酸カリウムの終濃度は、100mMに調整する。反応は、氷上で予め組み立
てて、RNAを添加する前に25℃にて10分間事前に沈殿させ、次いで、更に25℃で60分間インキュベートする。4容積の 1.25×Passive Lysis BufferPromega)で反応を停止する。標的RNA切断は、RT−PCR解析又は当該技術分野において公知のその他の方法によってアッセイして、反応からDsiRNAを除いた対照反応と比較する。
また、アッセイのための内部標識された標的RNAは、[アルファ−32P]CTPの存在下においてインビトロでの転写によって調製し、スピンクロマトグラ フィーによってG50セファデックスカラム上に通し、更に精製することなく標的RNAとして用いる。場合により、標的RNAは、T4ポリヌクレオチドキナーゼ酵素を用いて、5’−32P末端標識させる。アッセイは、上述の通りに実施し、標的RNAと、RNAiによって生成する特異的RNA切断産物とをゲルのオートラジオグラフで視覚化する。切断の割合は、DsiRNA及びアッセイによって生成する切断産物のない対照反応からの無処置の対照RNA又はRNAを示すバンドの、PHOSPHOR IMAGER(登録商標)(オートラジオグラフィー)定量化によって測定する。
核酸、ベクター及び宿主細胞を導入する方法
本発明のDsiRNA剤は、細胞の中に(すなわち、細胞内に)直接導入してもよく;又は細胞外に空洞、間隙内に、微生物の循環内に導入し、経口的に導入してもよく、又は核酸を含む溶液に細胞若しくは微生物を浸すことによって導入してもよい。血管又は脈管外循環、血液又はリンパ系及び脳脊髄液は、核酸を導入してもよい部位である。
本発明のDsiRNA剤は、核酸を含む溶液注射、核酸によって覆われた粒子による照射、核酸の溶液に細胞若しくはは微生物を浸漬すること、又は核酸の存在下にで細胞膜エレクトロポレーションを含む当該技術分野において公知の核酸送達方法を用いて導入することができる。脂質を介する担体輸送、化学的担体輸送及びリン酸カルシウムのようなカチオン性リポソームトランスフェクション等の、核酸を細胞に導入するために当該技術分野において公知のその他の方法を用いてもよい。核酸は、以下の活性の1以上を実施する、その他の成分と一緒に導入してもよい:細胞による核酸取り込みを増強する、又はその他の標的RNAの阻害を増大する。
標的RNAを有する細胞は、生殖系列又は体細胞から、全能性又は多能性、分裂してもいても、又は分裂していなくても、甲状腺実質又は上皮、不死化され、又は形質転換されていても、又はその他でもよい。細胞は、幹細胞又は分化した細胞であってもよい。分化した細胞タイプには、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮、ニューロン、グリア、血球、骨髄巨核球、リンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、塩基好性、肥満細胞、白血球、顆粒球、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝細胞及び内分泌又は外分泌腺の細胞が含まれる。
特定の標的RNA配列及び送達されるDsiRNA剤の材料の用量に依存し、このプロセスは、標的RNAに対して部分的又は完全な機能喪失をもたらし得る。標的とされた細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくは99%以上のRNAレベル若しくは発現(RNA発現又はコードされるポリペプチド発現)の減少又は喪失が例示される。標的RNAレベル又は発現の阻害は、RNA又はRNAでコードされるタンパク質のレベルの非存在(又は観察可能な減少)を意味する。特異性は、その他の細胞の遺伝子に対して明らかな効果を伴わずに標的RNAを阻害する能力を意味する。阻害の結果は、細胞又は微生物の外部特性の検査によって(下記の実施例に示すように)、又はRNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイでの遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロッティング、放射免疫アッセイ(RIA)、その他の免疫アッセイ及び蛍光標示式細胞分取器(FACS)のような生化学的な技術によって確認することができる。 本発明のDsiRNA剤による標的RNA配列の阻害は、また、インビボ又はインビトロのいずれかで、癌治療については腫瘍サイズ等の測定可能な表現型、ウイルス感染疾患についてはウイルスの負荷/力価、その他により、このようなDsiRNA薬剤の投与の効果に基づいて測定することができる。ウイルス 感染疾患については、ウイルスの負荷又は力価の減少は、細胞、組織又は被験者に対する本発明のDsiRNA剤の投与を介して達成することができる、例えば50%、60%、70%、80%、90%、95%又は99%以上の減少を含むことができ、対数条件、例えば、ウイルスの負荷又は力価の10倍、100倍、1000倍、105倍、106倍、107倍の減少により測定される。
細胞系又は微生物全体におけるRNAによって媒介される阻害については、そのタンパク質産物が容易にアッセイされるリポーター又は薬物耐性遺伝子の発現を測定することができる。このようなリポーター遺伝子には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータガラクトシダーゼ(LacZ)、ベータグルコロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)及びその誘導体が含まれる。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキセート、フォスフィノスリシン、ピューロマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性を与える複数の選択可能なマーカーを利用できる。アッセイに依存し、遺伝子発現の量の定量化により、本発明によって治療されない細胞と比較して、10%、33%、50%、90%、95%又は99%より優れた阻害の程度を決定することができる。
より低用量の注射用材料及びRNAサイレンシング剤の投与の後により長時間、より小さな細胞の画分(例えば、標的にされた細胞の少なくとも10%、20%、50%、75%、90%又は95%)における阻害を生じ得る。細胞における遺伝子発現の定量化は、標的RNAの蓄積又は標的タンパク質の翻訳のレベルにて、類似の阻害の量を示し得る。一例として、阻害の効率は、細胞内での遺伝子産物の量を評価することによって決定してもよく;RNA は、阻害性DsiRNAについて用いた領域の外側のヌクレオチド配列を有するハイブリダイゼーションプローブで検出してもよく、又は翻訳されたポリペプチドは、その領域のポリペプチド配列に対して生じる抗体で検出してもよい。
DsiRNA剤は、細胞あたり少なくとも1コピーの送達が可能な量で導入してもよい。高用量の材料(例えば、細胞あたりの少なくとも5、10、100、500又は1000コピー)は、より有効な阻害を生じ;低用量は、また特異的適用のために有用であり得る。
RNA干渉をベースとする療法
公知の通り、RNAi法は、種々の生物における多種多様の遺伝子に適用でき、開示された組成物及び方法を、これらの状況のそれぞれにおいて利用することができる。開示された組成物及び方法によって標的とし得る遺伝子の例には、細胞に対して天然である遺伝子である内因性遺伝子、又は通常、細胞に対して天然でない遺伝子が含まれる。限定されないが、これらの遺伝子には、癌遺伝子、サイトカイン遺伝子、イディオタイプ(Id)タンパク質遺伝子、プリオン遺伝子、脈管形成を誘導する分子を発現する遺伝子、細胞接着因子のための遺伝子、細胞表面受容体、転移に関与するタンパク質、プロテアーゼ、アポトーシス遺伝子、細胞周期調整遺伝子、EGF及びEGF受容体を発現する遺伝子、MDR1遺伝子のような多剤耐性遺伝子が含まれる。
より具体的には、本発明の標的mRNAは、細胞タンパク質(例えば、核、細胞質、膜貫通又は膜会合タンパク質)のアミノ酸配列を特定することができる。他の実施態様においては、本発明の標的mRNAは、細胞外タンパク質(例えば、細胞外マトリックスタンパク質又は分泌タンパク質)のアミノ酸配列を特定することができる。本明細書で用いられる場合、タンパク質の「アミノ酸配列を特定する」という表現、mRNA配列が遺伝子暗号の規則に従ってアミノ酸配列に翻訳されることを意味する。タンパク質の以下のクラスを説明の目的のために挙げる:発生タンパク質(例えば、細胞接着分子、サイクリンキナーゼ阻害剤、Wntファミリーメンバー、Paxファミリーメンバー、Wingedヘリックスファミリーメンバー、Hoxファミリーメンバー、サイトカイン/リンフォカイン及びこれらの受容体、成長/分化因子、及びこれらの受容体、神経伝達物質及びこれらの受容体);癌遺伝子でコードされるタンパク質(例えば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、EBRB2、ETSI、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SRC、TALI、TCL3及びYES);腫瘍抑制因子タンパク質(例えば、APC、BRCA1、BRCA2、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53及びWTI);及び酵素(例えば、ACCシンターゼ及びオキシダーゼ、ACPデサチュラーゼ及びヒドロキシラーゼ、ADPグルコースピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミルグルコシダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、カルコンシンターゼ、キチナーゼ、 シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリイナーゼ(dextriinases)、DNA及びRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルカナーゼ、グルコースオキシダーゼ、顆粒結合したデンプンシンターゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、ヘルニセルラーゼ、インテグラーゼ、イヌリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポオキシゲナーゼ、リゾチーム、ノパリンシンターゼ、オクトピンシンターゼ、ペクチンエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、フィターゼ、植物生長調節剤シンターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテイナーゼ及びペプチダーゼ、プラナーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、RUBISCOs、トポイソメラーゼおよびキシラナーゼ)。
一態様においては、本発明の標的mRNA分子は、病的状態と関連するタンパク質のアミノ酸配列を特定する。例えば、タンパク質は、病原体関連タンパク質(例えば、宿主の免疫抑制、病原体の複製、病原体の伝達又は感染の維持に関与するウイルスタンパク質)、又は宿主への病原体の侵入、病原体若しくは宿主による薬物代謝、病原体ゲノムの複製若しくは組込み、宿主における感染の確立若しくは伝播、又は病原体の次世代の構築を促進する宿主タンパク質であってもよい。病原体には、フラビウイルス、ピコルナウイルス、ラブドウイルス、フィロウイルス、レンチウイルスを含むレトロウイルスのようなRNAウイルス、又はアデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、細胞拡大ウイルス、ヘパドナウイルスもしくはその他のようなDNAウイルスが含まれる。更なる病原体には、細菌、真菌、蠕虫、住血吸虫及びトリパノゾームが含まれる。その他の種類の病原体には、哺乳動物転位因子を含み得る。また、タンパク質は、腫瘍関連タンパク質又は自己免疫疾患関連タンパク質であってもよい。
標的遺伝子は、任意の微生物に由来しても、又は含まれていてもよい。生物は、植物、動物、原虫、細菌、ウイルス又は真菌であってもよい。例えば、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6,506,559号を参照されたい。
医薬組成物
特定の実施態様においては、本発明は、本発明のDsiRNA剤を含む医薬組成物を提供する。DsiRNA剤試料は、それが存在する場合に、試料の十分な部分が細胞に入り遺伝子サイレンシングを誘導することを可能にする任意の手段によって適切に製剤化し、細胞の環境に導入することができる。dsNAのための多くの製剤が当該技術分野において公知であり、dsNAが作用し得るようにそれが標的細胞に入ることができる限り使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2004/0203145号(A1)及び第2005/0054598号(A1)を参照されたい。例えば、本発明のDsiRNA剤は、リン酸緩衝生理食塩溶液、リポソーム、ミセル者構造及びカプシドのような緩衝溶液中に製剤化することができる。カチオン脂質を含むDsiRNA剤の製剤は、細胞へのDsiRNA薬剤のトランスフェクションを促進するために用いることができる。
例えば、リポフェクチン(米国特許第5,705,188号)のようなカチオン性脂質、カチオン性グリセロール誘導体及びポリリジン(公開されたPCT国際出願WO 97/30731)のようなポリカチオン性分子を用いることができる。適切な脂質は、オリゴフェクトアミン、リポフェクトアミン(Life Technologies)、NC388(Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.,Boulder、Colo.)、又はFuGene6(Roche)が含まれ、これらのすべては、製造業者の説明書に従って用いることができる。
このような組成物は、通常は核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬品投与において適合である生理食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌及び抗真菌薬、等張薬及び吸収遅延剤等を含む。追加の活性化合物も、組成物に組み入れることができる。
医薬組成物は、その意図された投与の経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口投与、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所的)、経粘膜、及び直腸投与が含まれる。非経口的、皮内若しくは皮下適用のために使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含んでもよい:注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒のような無菌の希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンのような抗菌物質;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩のような緩衝液、及び塩化ナトリウム又はブドウ糖のような張性調整剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムのような酸又は塩基で調整することができる。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ又は多回投与バイアルに封入することができる。
注射可能な使用に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌の粉末が含まれる。静脈内の投与については、適切な担体には、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL.TM(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、簡単な注射可能性である程度に液体であるべきである。これは、製造条件及び貯蔵下で安定であるべきであり、細菌及び真菌のような微生物の混入作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体のポリエチレングリコール等)およびこれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合に必要とされる粒径の維持によって、また表面活性物質の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成し得る。多くの場合に、組成物中に、等張化剤、例えば、マニトール(manitol)、ソルビトール、塩化ナトリウムのような糖累、多価アルコールを含む ことが好ましいだろう。注射可能な組成物の長期にわたる吸収は、組成物中に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有させることによって実施することができる。
無菌の注射可能な溶液は、必要に応じてろ過滅菌後に、上記に列挙した成分の1種又は組み合わせで、適切な溶媒において必要とされる量で活性化合物を組み入れることによって調製することができる。一般に、分散剤は、活性化合物を無菌の媒体に組み入れることによって調製され、これには、基本的な分散媒及び上記に列挙したものからの必要とされるその他の成分を含む。無菌の注射可能な溶液の調製のための無菌の粉末の場合、好ましい調製法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これによって、以前に滅菌ろ過された溶液から活性成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
経口組成物は、一般に不活性な希釈剤又は食用の担体を含む。経口治療的投与の目的のためには、活性化合物は、賦形剤と共に組み入れることができ、錠剤、トローチ又はカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で用いられる。経口組成物は、また口内洗浄液として液体担体を用いて調製することができる。薬学的に適合性の結合剤及び/又は補助材料は、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含んでいてもよい:微晶質セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンのような結合剤;デンプン又はラクトース、アルギン酸、Primogel又はトウモロコシデンプンのような崩壊剤等の賦形剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステローツのような潤滑剤;コロイド性二酸化ケイ素のような流動促進剤;ショ糖又はサッカリンのような甘味料;又はハッカ、サリチル酸メチル又はオレンジ香味料のような香味薬。
吸入による投与のためには、化合物は、エアゾール噴霧の形態で、適切な噴霧剤、例えば二酸化炭素を含む加圧容器若しくはディスペンサー、又はネブライザーから送達される。このような方法には、米国特許第6,468,798号に開示されたものが含まれる。
また、全身投与は、経粘膜又は経皮手段によることができる。経粘膜又は経皮的投与のためには、浸透するバリアに対して適当な透過剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、一般に当該技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与のために、洗浄剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体含む。経粘膜投与は、鼻内噴霧または坐薬を使用することによって達成し得る。経皮投与のためには、活性化合物を当該技術分野において一般に公知の軟膏、膏薬、ゲル又はクリームに製剤化する。
また、化合物は、直腸送達のための坐薬(たとえば、カカオ脂および他のグリセリドのような従来の座薬基剤と共に)又は保持浣腸の形態で調製することができる。
化合物は、またMcCaffrey et al.(2002),Nature,418(6893),38−9(流体力学的なトランスフェクション);Xia et al.(2002),Nature Biotechnol.,20(10),1006−10(ウイルスを媒介した送達);又はPutnam(1996),Am.J.Health Syst.Pharm.53(2),151−160,erratum at Am.J.Health Syst.Pharm.53(3),325(1996)に開示された方法を含むが、これらに限定されない、当該技術分野において公知のトランスフェクション又はまたは感染を使用する方法によって投与することができる。
また、化合物は、DNAワクチン等の核酸薬剤の投与に適した任意の方法によって投与することができる。これらの方法は、遺伝子銃、バイオインジェクション及び皮膚パッチ、並びに針のない方法(たとえば米国特許第6,194,389号に開示された微小粒子DNAワクチン技術、及び米国特許第6,168,587号に開示したような粉末形状ワクチンによる哺乳動物の経皮の針なしワクチン接種を含む。更に、Hamajima et al.1998)Clin.Immunol.Immunopathol.,88(2),205−10に記載されているように、鼻腔内送達も可能である。リポソーム(例えば、米国特許第6,472,375号に記載されているような)及びマイクロカプセル化も使用することができる。また、生物分解可能な標的可能な微小粒子送達系を用いることができる(例えば、米国特許 第6,471,996号に記載されているような)。
一実施態様においては、一つの態様において、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御された放出製剤のような、体からの迅速除去から化合物を保護するであろう担体と共に調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸のような生物分解性の、生物学的適合性を有するポリマーを用いることができる。このような製剤は、標準的な技術を用いて調製することができる。材料は、またAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から市販されている。また、リポソーム型懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染細胞に標的とされるリポソームを含む)を薬学的に許容される担体として用いることもできる。これらは、当業者に公知の方法にしたがって調製することができる(例えば、米国特許第 4,522,811号に開示されているとおり)。
このような化合物の毒性及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%にとって致命的な用量)及びED50(集団の50%にとって治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性及び治療効果の用量比は、治療指数であり、LD50/ED50 比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物を用いてもよいが、非感染細胞への潜在的損傷を最小化し、これにより、副作用を減少させるために、感染した組織の部位にこのような化合物をターゲットする送達系を設計するように注意するべきである。
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータを用い、ヒトに使用するための投薬量の範囲を製剤化する際に用いることができる。このような化合物の投薬量は、好ましくはほとんど毒性がないED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、使用される投薬形態及び利用される投与の経路に応じて、この範囲内で変更してもよい。本発明の方法において使用される任意の化合物については、治療的に有効な用量は、初めに細胞培養アッセイから推測することができる。用量は、細胞培養において決定されるように、IC50を含む循環血漿濃度範囲(すなわち、症状の半分最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するように動物モデルにおいて
処方してもよい。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いることができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
本明細書で定義されるように、核酸分子の治療上有効な量(すなわち、有効な投薬量)は、選択される核酸に依存する。例えば、DsiRNA剤をコードするプラスミドが選択される場合、約1pg〜1000mgの範囲の単一用量量を投与してもよく;ある実施態様においては、10、30、100若しくは1000pg又は10、30、100若しくは1000ng、又は10、30、100若しくは1000μg、又は10、30、100又は1000mgを投与してもよい。ある実施態様においては、1〜5gの組成物を投与してもよい。組成物は、1日当たり1回又は複数回〜1週当たり1回又は複数回投与してもよく;一日おきに一回を含む。当業者であれば、疾患又は障害の重症度、以前の治療、被験者の全体的な健康及び/又は年齢、並びにその他の存在する疾患を含むが、限定されない、一定の要因が被験者を効率的に治療するために必要とされる投薬量及びタイミングに影響を与え得ることを認識す
るであろう。更に、タンパク質、ポリペプチド又は抗体の治療上有効な量での被験者の治療は、単一の治療を含んでもよく、又は好ましくは、一連の治療を含んでもよい。
DsiRNA剤を細胞の環境に導入する方法は、細胞のタイプ及びその環境の構成に依存するであろうことを認識することができる。例えば、細胞が液体内で見い出される場合に、1つの好ましい製剤は、リポフェクトアミン中のような脂質製剤であり、DsiRNA剤は、細胞の液体環境に直接添加してもよい。脂質製剤は、また静脈内、筋肉内若しくは腹腔内注射によるか、又は経口によるか、又は吸入若しくは当該技術分野において公知であるその他の方法等によって動物に投与することができる。製剤が哺乳類及びより具体的にはヒトのような動物への投与に適するとき、製剤は、また薬学的に許容される。オリゴヌクレオチドを投与するための薬学的に許容される製剤は公知であり、用いることができる。ある場合には、卵母細胞での研究と同様に、緩衝液又は生理食塩水溶液中にDsiRNA剤を製剤化して、細胞に製剤化したDsiRNA薬剤を直接注射することが好ましいであろう。DsiRNA剤二重鎖の直接注射を行ってもよい。dsNA(例えば、DsiRNA剤)を導入する適切な方法については、米国特許出願公開第2004/0203145号(A1)を参照されたい。
DsiRNA薬剤の適切な量を導入しなければならず、これらの量は、標準的な方法を用いて経験的に決定することができる。通常は、細胞の環境に おける個々のDsiRNA剤種の有効な濃度は、約50ナノモル以下、10ナノモル以下であるか、又は約1ナノモル以下の濃度の組成物を用いることができる。他の実施態様においては、方法は約200ピコモル以下の濃度を用い、更に約50ピコモル以下、約20ピコモル以下、約10ピコモル以下、約5ピコモル以下の濃度を多くの環境において用いることができる。
本発明の方法は、その中で細胞が生きることができる任意の細胞外マトリックスへのDsiRNA剤組成物の添加によって実施することができ、ただしDsiRNA剤組成物は、DsiRNA剤の十分な量が細胞に入ってその効果を及ぼすことができるように製剤化される。例えば、本発明の方法は、液体培養若しくは細胞増殖培地のような液体中で、組織外植体において、又は哺乳類及び特にヒトのような動物を含む生物全体において存在する細胞で用いるために受け入れられる。
標的RNAのレベル又は活性は、現在当該技術分野において公知、又は後で開発される任意の適切な方法によって測定することができる。標的RNA及び/又は標的RNAの発現を測定するために使用される方法は、標的RNAの性質に依存することを認識することができる。例えば、標的 RNAがタンパク質をコードする場合、「発現」という用語は、標的RNAに由来するタンパク質又はRNA/転写物をいうことができる。このような場合には、標的RNAの発現は、標的RNAに対応するRNAの量又はそのタンパク質の量を測定することによって決定し得る。タンパク質は、染色又は免疫ブロットのようなタンパク質アッセイ法によって、又はタンパク質が測定することができる反応を触媒する場合、反応速度を測定することによって測定することができる。このような方法の全ては、当該技術分野において公知であり、使用することができる。標的RNAレベルが測定される場合、RNAレベルを検出するための任意の当該技術分野で認識される方法を使用することができる(例えば、RT−PCR、ノーザンブロッティング等)。本発明のDsiRNA剤でウイルスRNAを標的とする際に、また、インビトロ又はインビボのいずれかの、被験体、組織における、細胞での、又は細胞抽出物における標的ウイルスのレベルの減少におけるDsiRNA薬剤の有効性の測定を使用して、標的ウイルスRNAレベルの減少の程度 を決定することができることも予想される。上記の測定のいずれも、細胞、細胞抽出物、組織、組織抽出物又は任意のその他の適切な供与材料で実施することができる。
標的RNAの発現が減少されたかどうかの決定は、RNAレベルの変化を確実に検出できる任意の適切な方法による。通常は、決定は、そのDsiRNA薬剤の少なくとも一部が原形質に入るように消化されていないDsiRNAを細胞の環境に導入すること、次いで標的RNAのレベルを測定することによって実施される。同じ測定を同一の未処置の細胞で行い、それぞれの測定から得られる結果を比較する。
DsiRNA剤は、DsiRNA薬剤の薬理学的に有効な量及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化することができる。薬理学的又は治療的に有効な量は、意図された薬理学的、治療的又は予防的結果を生じるために有効なDsiRNA剤の量を意味する。「薬理学的に有効な量」及び「治療上有効な量」又は単に「有効量」という表現は、意図された薬理学的、治療的又は予防的結果をもたらすのに有効なRNAの量をいう。例えば、疾 患又は障害と関連する測定可能なパラメーターの少なくとも20%の減少がある場合に、所定の臨床的治療が有効であるとみなされる場合、その疾患又は障害の治療のための薬物の治療上有効な量は、少なくともそのパラメーターの20%の減少を遂行するために必要な量である。
適切に製剤化された本発明の医薬組成物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、経直腸、経膣及び局所的(頬側及び舌下を含む)投与を含む非経口的経路等によって当該技術分野において公知の任意の手段によって投与することができる。ある実施態様においては、医薬組成物は、静脈内又は内部非経口的注入若しくは注射によって投与される。
一般に、dsNAの適切な投薬量単位は、1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.001〜0.25ミリグラムの範囲、又は1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.01〜20マイクログラムの範囲、又は1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.01〜10マイクログラムの範囲、又は1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.10〜5マイクログラムの範囲、又は1日あたり受容者の体重1キログラムあたり0.1〜2.5マイクログラムの範囲である。dsNAを含む医薬組成物は、1日1回投与することができる。しかし、治療的薬剤は、また1日の全体にわたって適切な間隔にて投与される2、3、4、5、6回以上のサブ用量を含む投薬量単位で投薬してもよい。その場合、各サブ用量に含まれるdsNAは、合計で1日の投薬量単位を達成するために、対応してより少なくなければならない。投薬量単位は、例えば、数日の期間にわたってdsNAの持続性及び一貫した放出を提供する従来の持効性製剤を用い、数日にわたって単一用量のために調合することができる。持効性製剤は、当該技術分野において周知である。この実施態様においては、投薬量単位は、対応する複数の1日量を含む。製剤に関係なく、医薬組成物は、治療される動物又はヒトにおける標的遺伝子の発現を阻害するために十分な量のdsNAを含まなければならない。組成物は、dsNAの複数の単位の合計が共に十分な用量を含むような方法で構成することができる。
ヒトのために適した投薬量範囲を製剤化するために、細胞培養アッセイ及び動物試験からデータを得ることができる。本発明の組成物の投薬量は、毒性がほとんどないED50(公知の方法により決定する通り)を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、使用される投薬形態及び利用される投与経路に依存し、この範囲内で変更してもよい。本発明の方法において使用される任意の化合物については、治療的に有効な用量は、初めに細胞培養アッセイから推測することができる。用量は、細胞培養において決定されるように、IC50を含む循環血漿濃度範囲(すなわち、症状の半分最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を達成するように動物モデルにおいて処方してもよい。このような情報は、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために用いること
ができる。血漿中のdsNAのレベルは、標準的な方法によって、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定してもよい。
医薬組成物は、投与のための説明書と共に、キット、容器、パック又はディスペンサーに含めることができる。
治療法
本発明は、全体的にあるいは部分的に、標的RNAの発現及び/又はこのような標的RNAの存在によって(例えば、ウイルス感染、ウイルスゲノムの標的RNAの存在、カプシド、宿主細胞成分等の状況において)起こる疾患又は障害の危険性のある(又は感受性の)被験者を治療する予防的及び治療的な方法の両方を提供する。
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」は、疾患又は障害、疾患又は障害の症状又は疾患についての素因を治療し、治癒し、軽減し、解放し、変化させ、直し、寛解させ、改善し、又は影響を及ぼすための目的で、患者に対する治療的薬剤(例えば、DsiRNA薬剤又はベクター又はこれをコードする導入遺伝子)の適用若しくは投与又は疾患若しくは障害、疾患若しくは障害の症候又は疾患若しくは障害への素因を有する患者から単離された組織若しくは細胞系に対するの治療薬の適用若しくは投与として定義される。
一態様においては、本発明は、治療薬(例えば、DsiRNA剤又はベクター又はこれを導コードする導入遺伝子)を被験者に投与することによ り、被験者において、上記の通りの疾患又は障害を予防するための方法を提供する。疾患の危険性のある被験者は、例えば、本明細書において記述されるような、診断若しくは予後のアッセイのいずれか又は組み合わせによって同定することができる。予防的薬剤の投与は、例えば、被験体におけるウイルス粒子の検出又は疾患若しくは障害に特徴的な症候の出現の前に行うことができ、その結果、疾患又は障害は、防止され、又はその進行が遅れる。
本発明の他の態様は、被験者を治療的に処置する、すなわち、疾患又は障害の症状の発病を変化させる方法に関する。これらの方法は、インビトロで(例えば、DsiRNA剤と共に細胞を培養することによって)、又は、インビボで(例えば、被験者にDsiRNA剤を投与することによって)実施することができる。
予防的及び治療的な処置の方法に関して、このような治療は、薬理ゲノミクスの分野から得られる知識に基づき、特異的に調整してもよく、又は改変してもよい。本明細書で用いられる場合、「薬理ゲノミクス」は、臨床開発における、及び市場での薬物に対する遺伝子配列決定、統計遺伝学及び遺伝子発現解析のようなゲノム技術の適用を意味する。より具体的には、この用語は、患者の遺伝子がどのように彼又は彼女の薬物に対する反応を決定するか(例えば、患者の「薬物反応表現型」又は「薬物反応遺伝子型」)の研究を意味する。従って、本発明の他の態様は、その個体の薬物反応遺伝子型に従って、本発明の標的RNA分子又は標的RNAモジュレーターのいずれかでの個体の予防的又は治療的な処置に調整するための方法を提供する。薬理ゲノミクスにより、臨床医又は医師が治療から最も利益を得るであろう患者に対して予防的又は治療的な処置を標的にすること、及び毒性のある薬物に関連した副作用を受けるであろう患者の治療を回避することができる。
治療剤は、適切な動物モデルにおいて試験することができる。例えば、本明細書において開示されたDsiRNA剤(又は発現ベクター又はこれをコードする導入遺伝子)を動物モデルにおいて用い、前記薬剤での治療の有効性、毒性又は副作用を判定することができる。又は、治療剤を動物モデルにおいて用い、このような薬剤の作用機構を決定することができる。例えば、薬剤を動物モデルにおいて用い、このような薬剤での治療の有効性、毒性又は副作用を判定することができる。又は、薬剤を動物モデルにおいて用い、このような薬剤の作用メカニズムを決定することができる。
本発明の実施には、特に明記しない限り、化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養及びトランスジェニック生物学の従来の技術を使用し、これらは、当該技術分野の技術内である。例えば、Maniatis et al.,1982,Molecular Cloning(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,2nd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Sambrook and Russell,2001,Molecular Cloning,3rd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Ausubel et al.,1992),Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,including periodic updates);Glover,1985,DNA Cloning(IRL Press,Oxford);Anand,1992;Guthrie and Fink,1991;Harlow and Lane,1988,Antibodies,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.);Jakoby and Pastan,1979;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);Riott,Essential Immunology,6th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford,1988;Hogan et al.,Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986);Westerfield,M.,The zebrafish book.A guide for the laboratory use of zebrafish(Danio rerio),(4th Ed.,Univ.of Oregon Press,Eugene,2000)を参照されたい。
特に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語及び科学用語は、共通に、本発明が属する当業者によって理解するのと同じ意味を有する。本明細書において開示されたものに類似又は均等な方法及び材料は、本発明の実施又は試験において用いることができるが、適切な方法及び材料は、後述する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許及びその他の参照文献は、これらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先するだろう。更に、材料、方法及び実施例は、説明のためのみであり、限定することを意図するものではない。
本発明は、以下の実施例を参照することにより説明され、これらは実例として提供され、いずれの様式においても本発明を限定するとして意図されない。当該技術分野において周知の標準的技術又は以下に具体的に記述した技術を利用した。
実施例1−方法
オリゴヌクレオチド合成、インビトロにおける使用
標準的な方法に従い、個々のRNA鎖を合成し、HPLCにより精製した(Integrated DNA Technologies、Coralville、Iowa)。全てのオリゴヌクレオチドは、HPLC解析による化学的純度及び質量分析解析による全長 鎖の純度に基づいて品質管理して切り離した。二重鎖RNAのDsiRNAsは、同量の各鎖を混合し、RNA緩衝液(IDT)中で100℃で一時的にに加熱し、次いで混合物を室温に冷却することにより、使用直前に調製した。
オリゴヌクレオチド合成、インビボにおける使用
標準的な方法に従い、個々のRNA鎖を合成し、HPLCにより精製した(OligoFactory、Holliston、MA)。全てのオリゴヌクレオチドは、HPLC解析による化学的純度及び質量分析解析による全長鎖の純度に基づいて品質管理して切り離した。二重鎖RNAのDsiRNAsは、同量の各鎖を混合し、RNA緩衝液(IDT)中で100で一時的に加熱し、次いで混合物を室温に冷却することにより、使用直前に調製した。
細胞培養及びRNAトランスフェクション
Hela細胞をATCCから得、5%のCO2下、37℃で、10%のウシ胎児血清(HyClone)を補充したダルベッコの修飾イーグル培地(HyClone)に維持した。図7、9、12及び13のRNAトランスフェクションについては、記載したように、また、製造業者の説明書に従い、Lipofectamine(商標)RNAiMAX(Invitrogen)を用い、最終濃度0.1nMでDsiRNAsをトランスフェクトした。すなわち、各DsiRNAの0.02μMのストック溶液2.5μLを、46.5μLのOpti−MEMI(Invitrogen)及び1μLのLipofectamine(商標)RNAiMAXと混合した。得られた50μLの混合液を12ウェルプレートの個々のウェルに加え、室温で20分間インキュベートし、DsiRNA:Lipofectamine(商標)RNAiMAX複合体を形成させた。一方、Hela細胞をトリプシン処理し、367細胞/μLの最終濃度になるように培地に再懸濁した。最終的に、450μLの細胞懸濁液を各ウェルに加え(最終容積500μL)、プレートをインキュベータ中に24時間置いた。
インビトロにおける、RNA分離及び解析
細胞を2mLのPBSで一度洗浄し、総RNAをRNeasy Mini Kit(商標)(Qiagen)を用いて抽出して、30μLの最終容積において溶出した。1μgの総RNAを、製造業者の説明書に従って、Transcriptor 1st Strand cDNA Kit(商標)(Roche)及びランダムなヘキサマーを用いて逆転写させた。得られたcDNAの1/30(0.66μL)を、3.33μLのH2O 及び1μLのヒト遺伝子HPRT−1(受け入れ番号NM_000194)及びSFRS9(受け入れ番号NM_003769)遺伝子に特異的な2セットのプライマー及びプローブを含む3μMの混合物と共に、5μLのiQ(商標)Multiplex Powermix(Bio−Rad)と混合した:
Hu HPRTフォワードプライマーF517 GACTTTGCTTTCCTTGGTCAG(配列番号:1)
Hu HPRTリバースプライマーR591 GGCTTATATCCAACACTTCGTGGG(配列番号:2)
Hu HPRTプローブ P554Cy5−ATGGTCAAGGTCGCAAGCTTGCTGGT−IBFQ(配列番号:3)
Hu SFRS9フォワードプライマーF569 TGTGCAGAAGGATGGAGT(配列番号:4)
Hu SFRS9リバースプライマーR712 CTGGTGCTTCTCTCAGGATA(配列番号:5)
Hu SFRS9プローブ P644 HEX−TGGAATATGCCCTGCGTAAACTGGA−IBFQ(配列番号:6)
インビボにおける試料調製及び注射
製造業者のプロトコール(Invitrogen、Carlsbad、CA)に従い、DsiRNAをInvivofectamine(商標)中に製剤化した。すなわち、簡潔には、N/グループのマウス及び使用するマウスの体重を測定し、次いで処理されるマウスの各グループに必要なDsiRNAの量を算出した。1mLのIVF−oligoは、10mg/kgの投薬量で、25g/マウスの4匹のマウスに十分であった。1mgのDsiRNAを、1mlのInvivofectamine(商標)に添加して、ローテーターで30分間、室温で混合した。製剤化したIVF− DsiRNAを希釈するために14mlの5%グルコースを用い、50kDaの分子量を分画する回転コンセントレータ(Amicon)に適用した。IVF−DsiRNAの容積が1ml未満になるまでスピンコンセントレータを4℃で〜2時間、4000rpmにて回転させた。回収したIVF− DsiRNAを、1mLの5%グルコースで希釈して、動物注射のために準備した。
動物の注射及び組織収集
動物を、ケタミン/キシラジンで腹腔内注射によって、外科的麻酔に供した。それぞれのマウスを、注射の前に体重測定した。製剤化したIVF−DsiRNAを、100μl/体重10gにて静脈注射した。24時間後に、マウスを、CO2吸入によって屠殺した。解析のための組織を収集して、2mLのRNAlater(商標)(Qiagen)を含む試験管に入れ、室温で30分間観点させ、4℃で一晩のインキュベーションした。組織は、使用まで−80℃にて貯蔵した。
組織RNA調製及び定量
約50〜100mgの組織を、Tissue Lyser(商標)(Qiagen)上にて1mlのQIAzol(商標)(Qiagen)中でホモジナイズした。次いで、製造業者のプロトコールに従って、総RNAを単離した。すなわち、0.2mLのクロロホルム(Sigma−Aldrich)をQIAzol(商標)可溶化液に加え、撹拌することによって、激しく混合した。4℃で15分間、14,000rpmで遠心した後、水相を集め、0.5mlのイソプロパノールと混合した。10 分間、14,000rpmで更に遠心した後、RNAペレットを75%のエタノールで一度洗浄して、短時間乾燥した。
単離したRNAを、100μlのRNアーゼを含まない水に再懸濁し、製造業者のプロトコールに従ってRNeasy(商標)total RNA preparation kit(Qiagen)又はSV 96 total RNA IsolationSystem(Promega)によるクリーンアップに供した。
インビトロにおける第一の鎖cCNA合成
製造業者の説明書にし従ってたがって、Transcriptor 1st Strand cDNA Kit(商標)(Roche)及びオリゴdTを使用して逆転写した。得られたcDNAの1/40(0.66μL)を、3.33μLのH2O及び1μLのマウス遺伝子HPRT−1(受け入れ番号NM_013556)及びKRAS(受け入れ番号NM_021284)遺伝子に特異的な2セットのプライマー及びプローブを含む3μMの混合物と共に、5μμLのIQ Multiplex Powermix(Bio−Rad)と混合した:
Mm HPRTフォワードプライマーF576 CAAACTTTGCTTTCCCTGGT (配列番号:7)
Mm HPRTリバースプライマーR664 CAACAAAGTCTGGCCTGTATC(配列番号:8)
Mm HPRTプローブP616 Cy5−TGGTTAAGGTTGCAAGCTTGCTGGTG−IBFQ(配列番号:9)
Mm KRASフォワードプライマーF275 CTTTGTGGATGAGTACGACC(配列番号:10)
Mm KRASリバースプライマーR390 CACTGTACTCCTCTTGACCT(配列番号:11)
Mm KRASプローブP297 FAM−ACGATAGAGGACTCCTACAGGAAACAAGT−IBFQ(配列番号:12)
定量的RT−PCR
C1000サーマルサイクラーを備えたCFX96 Real−time system(Bio−Rad)を、増幅反応のために使用した。PCR条件は、以下の通りだった: 95℃で3分間;次いで、95℃で10秒;55℃で1分間を40サイクル繰り返した。それぞれの試料を、三連で試験した。HPRTの実施例については、相対的なHPRT mRNAレベルをSFRS9 mRNAレベルで標準化し、トランスフェクション試薬プラス対照のミスマッチ二重鎖で処理したか、又は未処理の対照試料において得られたmRNAレベルと比較した。KRASの実施例については、相対的なKRAS mRNAレベルをHPRT−1 mRNAレベルで標準化し、5%グルコースで処理したマウスからの対照試料において得られたmRNAレベルと比較した。データは、Bio−Rad CFX Manager version1.0(インビトロ実施例)又は1.5(インビボ実施例)ソフトウェアを使用して解析した。
実施例2−一本鎖伸長を有するDsiRNA剤の効果
一本鎖伸長を有するDsiRNA剤を、配列特異的標的mRNAの阻害の効果について試験を行った。具体的には、KRAS−249M、及び5’一本鎖ガイド伸長を有するHPRT−標的DsiRNA二重鎖を、20mMの一定濃度でHeLa細胞にトランスフェクションし、24時間後にHPRT発現レベルを測定した(図7及び9)。トランスフェクションは二連で実施し、各二連を、三連でKRAS−249M及びHPRT発現についてqPCRによりアッセイした。
この条件下(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、KRAS−249遺伝子の発現は、二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OME、DNA15PS、RNA15PS、並びにRNA15PS−2’OMEによって60〜85%低下した。比較すると、一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖は、KRAS−29遺伝子発現を約90%減少させた。従って、一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖は、一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖としてKRAS−249のサイレンシングに有効であった。全ての一本鎖伸長二重鎖は、一本鎖伸長領域内にホスホロチオエート骨格の修飾を含んでいた。10ヌクレオチドの一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子発現が約75〜85%低下した。15ヌクレオチドの一本鎖ガイド伸長を有する、二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249遺伝子の発現は60〜70%低下した。一般に、5’ガイド伸長内に存在するヌクレオチドにもかかわらず、10ヌクレオチドのガイド伸長を有する二重鎖は、15ヌクレオチドのガイド伸長を有する二重鎖よりも、KRAS標的遺伝子発現を減少させる。特に、デオキシリボヌクレオチドを含むガイド伸長を有する二重鎖のサイレンシング活性は、リボヌクレオチド及び2’−O−メチルリボヌクレオチドを含む二重鎖と比較し、15ヌクレオチドの増加した長さに対し、より感受性であった。KRAS−249の遺伝子発現を標的とする実験において用いられた、Dicerによる5’ガイド鎖伸長二重鎖の処理は、インビトロアッセイにおいても見出された。
同様に、同じ条件下(0.1nM二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、HPRT1遺伝子発現は、二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OME、DNA15PS、RNA15PS及びRNA15PS−2’−OMEにより、約65〜85%低下した(図9)。比較すると、一本鎖ガイド伸長を有していない二重鎖は、HPRT1遺伝子発現を約90%低下させた。従って、一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖は、一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖と同じくらい、HPRT1のサイレンシングに効果がある。全ての一本鎖伸長二重鎖は、一本鎖伸長領域内に、ホスホロチオエート骨格修飾を含んでいた。10ヌクレオチドの一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249の遺伝子発現は約80〜85%低下した。15ヌクレオチドの一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖DNA10PS、RNA10PS、RNA10PS−2’−OMEについては、KRAS−249の遺伝子発現は60〜80%低下した。一般に、一般に、5’ガイド伸長内に存在するヌクレオチドにもかかわらず、10ヌクレオチドのガイド伸長を有する二重鎖は、15ヌクレオチドのガイド伸長を有する二重鎖よりも、KRAS標的遺伝子発現を減少させる。特に、デオキシリボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドを含むガイド伸長を有する二重鎖のサイレンシング活性は、リボヌクレオチドを含む二重鎖と比較し、15ヌクレオチドの増加した長さに対し、より感受性であった。HPRT1の遺伝子発現を標的とする実験において用いられた、Dicerによる5’ガイド鎖伸長二重鎖の処理は、インビトロアッセイにおいても見出された(図10)。
一本鎖ガイド伸長を有する二重鎖は、一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖と同じくらい、KRAS−249及びHPRT1、それぞれのサイレンシングにおいて効果があるので、この発見は、効果を喪失することなく一本鎖ガイド伸長を有するDsiRNA剤の修飾を可能にする。
実施例3
一本鎖伸長に相補的な短いオリゴヌクレオチドと組み合わせた一本鎖伸長を有するDsiRNA剤の効果
一本鎖伸長を有するDsiRNA剤を、一本鎖伸長と相補的な短いオリゴと組合せ、配列特異的標的mRNAの効果について試験した。具体的には、15ヌクレオチドの不連続な相補体を含む、15ヌクレオチド長の5’一本鎖ガイド伸長を有するKRAS−294M及びHPRT−標的DsiRNA二重鎖を、20nMの固定濃度でHeLa細胞に導入し、24時間後に、HPRTの発現レベルを測定した(図12及び13)。トランスフェクションを二連で実施し、各二連を、それぞれqPCRにより、KRAS−249の遺伝子発現及びHPRT発現について三連でアッセイした。
これらの条件下(0.1nMの二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、KRAS−249遺伝子の発現は、不連続な相補体RNA15、PS−RNA15、PS−DNA15、PS−2’OMe−RNA15及び2’OMe−RNA15の存在下、二重鎖DNA15PS(1301+1340)、RNA15PS(1301+1341)、RNA15PAS−2’−OME(1301+1342)により、約15〜60%低下した(図12)。一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖は、KRAS−249遺伝子の発現を約85%低下させた。全ての一本鎖伸長二重鎖は、一本鎖伸長領域内にホスホロチオエート骨格の修飾を含んでいた。一般に、不連続な相補体の存在にもかかわらず、リボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドガイド伸長を有する二重鎖は、デオキシリボヌクレオチドガイド伸長を有する二重鎖よりも、KRAS標的遺伝子の発現を減少させる。二重鎖DNA15PS(1301+1340)、RNA15PS(1301+1341)、RNA15PAS−2’−OME(1301+1342)については、遺伝子発現の低下は、2’OMe−RNA15不連続相補体を含むか含まない場合とで同程度であった。
同様に、同じ条件下(0.1nMの二重鎖、Lipofectamine(商標)RNAiMAXトランスフェクション)、HPRT1遺伝子の発現は、不連続な相補体RNA15、PS−RNA15、PS−DNA15、PS−2’OMe−RNA15及び2’OMe−RNA15の存在下、二重鎖DNA15PS(1001+1353)、RNA15PS(1001+1354)、RNA15PAS−2’−OME(1001+1355)により、約30〜85%低下した(図13)。一本鎖ガイド伸長を有しない二重鎖は、HPRT1遺伝子の発現を約90%低下させた。全ての一本鎖伸長二重鎖は、一本鎖伸長領域内にホスホロチオエート骨格の修飾を含んでいた。一般に、不連続な相補体の存在にもかかわらず、リボヌクレオチド又は2’−O−メチルリボヌクレオチドガイド伸長を有する二重鎖は、デオキシリボヌクレオチドガイド伸長を有する二重鎖よりも、KRAS標的遺伝子の発現を減少させる。二重鎖DNA15PS(1301+1341)及びRNA15PAS−2’−OME(1301+1342)は、不連続な相補体RNA15、PS−RNA15、PS−2’OMe−RNA15、2’OMe−RNA15の存在下、任意の不連続な相補体を有しない、同じ二重鎖DNA15PS(1301+1341)及びRNA15PAS−2’−OME(1301+1342)と比較し、遺伝子発現の低下が増強されることが示された。
実施例4−DsiRNA剤のインビボにおける効果
DNA二重鎖伸長を有するDsiRNA剤について、単一投与プロトコール又は繰り返し投与プロトコールのいずれか(例えば、インビボのフェクトアミンの10mg/kgの単回注射)における配列特異的標的mRNAのインビボにおける効果を調べた。肝臓、腎臓、脾臓及びリンパ腺組織におけるKRASの発現を、三連で実施するリアルタイムPCR(RT−PCR)により注射24時間後に測定し、KRASの発現を評価した。これらの条件下、一本鎖ガイド伸長DsiRNA剤は、調べた全ての組織においてKRAS標的遺伝子阻害の統計的に有意なレベルを示した。このような一本鎖ガイド伸長DsiRNAで処置された組織におけるKRASの阻害レベルの割合は、肝臓(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)、脾臓(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)、腎臓(1910%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)、及びリンパ腺(10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)であった。従って、本発明の伸長されたDsiRNAsのインビボにおける効果は、多くの組織型にわたって証明された。
インビボにおいて特定標的遺伝子の遺伝子発現を低下させる、本発明の伸長されたDicer基質剤の能力の更なる証明は、マウス又は他の哺乳動物被験者への、全身(例えば、静脈腹腔注射)、又は組織への直接注射(例えば、目、脊髄/脳/中枢神経系等への注射)により、実施された。追加の標的RNAレベルの測定は、標準法(例えば、Trizol(登録商標)調製(グアニジウムチオシアネート−フェノール−クロロホルム)に続くqRT−PCR)により、標的細胞により実施した(例えば、肝臓及び/又は腎臓細胞中のRNAレベルを、以下のマウスの注射に続いてアッセイし;眼細胞を、被験者の眼細胞への直接注射に続いてアッセイし;脊髄/脳/中枢神経系を被験者への脊髄/脳/中枢神経系への直接注射に続きアッセイした)。
このような任意の更なるインビボ実験において、本発明の伸長されたDicer基質剤(例えば、ガイド5’伸長又はパッセンジャー3’伸長DsiRNA)は、本発明の伸長されたDicer基質剤を投与した場合に、適切なコントロール(例えば、媒体単独のコントロール、ランダムな二重鎖コントロール、種々の標的RNAコントロールに向けられた二重鎖等)と比較し、RNAレベルの統計的に有意な低下が観察されれば、効果的なインビボ剤であると考えることができる。このような比較に割り当てられるp−値(例えば、対応のない片側T−検定(1 tailed, unpaired T−test)により生成)は0.05未満であり、本発明の伸長されたDicer基質剤(例えば、ガイド5’伸長又はパッセンジャー3’伸長DsiRNA剤)は、効果的なRNA干渉剤であると考えられた。また、効果的なRNA干渉剤として本発明の拡張Dicer基質剤を分類するために、p−値のしきい値を設定することができ、例えば、0.01、0.001等で、より厳格なフィルタリングを提供するために、より堅牢な違いを識別し、及び/又は複数の仮説検定等を調整する。効果的及び非効果的な伸長されたDicer基質剤を区別するために、絶対的な活性レベルの限界を設定することもできる。例えば、特定の実施態様においては、本発明の効果的なDicer基質剤は、インビボにおける標的RNAレベルの統計的に有意な低下だけでなく、適切なコントロールと比較し、試験を行った組織又は細胞において、標的RNAの少なくとも約10%の低下、約15%の低下、少なくとも約20%の低下、約25%の低下、少なくとも約20%の低下、約25%の低下、約30%の低下等を発揮する。従って、本発明の伸長されたDicer基質剤(例えば、ガイド5’伸長及びパッセンジャー3’伸長DsiRNA剤)のインビトロにおける更なる有効性試験を実施した。
一本鎖伸長を有するDsiRNA剤(図14及び15)は、肝臓、脾臓及び腎臓において、インビボで配列特異的標的KRAS mRNAの発現を効果的に阻害した。肝臓においては、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)は、グルコースのみのコントロールに対して標準化した場合に、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNA剤と比較し、KRAS mRNA発現の阻害を示した(図16〜18)。DsiRNA剤によるKRAS mRNAの阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の肝臓中で、少なくとも75〜90%であった。肝臓中の、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)の阻害の総計は、陰性コントロール、グルコースと比較して有意である、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNA剤のものと同程度であった。
脾臓においては、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)は、グルコースのみのコントロールに対して標準化した場合に、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNA剤と比較し、KRAS mRNA発現の阻害をも示した(図19〜21)。DsiRNA剤によるKRAS mRNAの発現の阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の脾臓中で、少なくとも90〜95%であった。脾臓中の、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)の阻害の総計は、陰性コントロール、グルコースと比較して有意である、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNA剤のものと同程度であった。
腎臓においては、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)は、グルコースのみのコントロールに対して標準化した場合に、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNAと比較し、KRAS mRNA発現の阻害を示した(図22〜24)。DsiRNA剤によるKRAS mRNAの発現の阻害は、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)を注射した動物の腎臓中で、少なくとも20〜40%であった。それにもかかわらず、5’パッセンジャー伸長DsiRNA剤1371(PS3M)及び1339(PS10M)の阻害の総計は、5’パッセンジャー伸長K249M及び1370(3M)を有しないDsiRNA剤のものと同程度であった。これらの実験において、5’パッセンジャー伸長M97Mを有さず、KRASに対して配列特異的でないDsiRNA剤が陽性コントロールとして用いられた。
一本鎖ガイド伸長を有するDsiRNAは、インビボでKRASのサイレンシングに、一本鎖伸長を有しないDsiRNA剤と同等に効果的であり、この発見は、インビボで効果を喪失することなく、一本鎖ガイド伸長を有するDsiRNA剤の修飾を可能にする。
本明細書において言及した全ての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野における当業者の技術のレベルを示す。本開示において引用した全ての参考文献は、それぞれの参考文献が参照により個々にその全体が援用されたのと同様に参照により本明細書に組み入れられる。
当業者であれば、本発明が目的を実行し、言及される目標及び利点、並びにその中に固有のものを得るのに十分に適することを容易に認識するであろう。好ましい実施態様の現在の代表として本明細書に開示された方法及び組成物は例示的であり、本発明の範囲についての限界として意図されない。その中の変形及びその他の用途が当業者に思い浮かぶであろうし、それは、本発明の精神内に包含され、請求項の範囲によって定義される。
本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、種々の置換及び改変を、本明細書に開示された本発明に行うことができることが、当業者には容易に明らかであろう。従って、このような更なる実施態様は、本発明及び以下の請求項の範囲内である。本発明は、RNAi活性を媒介するために改善された活性を有する核酸構築物を産生することに向けた本明細書に開示された化学的修飾の種々の組み合わせ及び/又は置換を試験することを当業者に教示する。このような改善された活性は、改善された安定性、生物学的利用能の改善、及び/又はRNAiを媒介する細胞反応の活性の改善を含む。従って、本明細書に開示された具体的態様は限定的でなく、当業者であれば、本明細書に開示された改変の特異的な組み合わせが改良されたRNAi活性を有するDsiRNA分子を同定することに向けて過度の実験なしで試験することができることを容易に認識することができる。
本明細書に適切に実例として記述された本発明は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素又は要素類、限定又は限定類なく実施することができる。従って、例えば、本明細書におけるそれぞれの例において、「含む」、「本質的にからなる」及び「からなる」という用語のいずれも、その他の2つの用
語のいずれと置換してもよい。用いられた用語及び表現は、記述の用語として使用され、限定的ではなく、このような用語及び表現の使用において示され、記載された特徴、又はその一部の任意の均等物を除外することは意図されないが、種々の改変が請求項の発明の範囲内で可能であることが認識される。従って、本発明を、好ましい態様によって具体的に開示したが、本明細書に開示される概念の随意の特徴、改変及び変形が当業者に
よって使用されてもよいこと、及びこのような改変及び変形は、明細書及び添付の特許請求の範囲によって定義されるとおり、本発明の範囲内であるものと考えられることを理解すべきである。
更に、本発明の特徴又は態様は、マーカッシュ群又は変形例のその他の群に関して記載されており、当業者であれば、本発明が、マーカッシュ群又はその他の群のメンバーの任意の個々メンバー又はサブグループに関して、これにより記載されることを認識するであろう。
「一つの」及び「該」、並びに本明細書に記述される状況における(特に、以下の特許請求の範囲の状況における)同様の指示物は、他に本発明において記載されるか、又は状況によって明らかに否定されない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈される。「含む」、「有する」、「含む」及び「含む」は、特に明記しない限り、制限のない用語として解釈される(すなわち、「含むが、限定されない」ことを意味する)ものと解釈される。本明細書におけるある値の範囲の説明は、特に明記しない限り、範囲内に入るそれぞれ値について個々に言及するのを簡略する方法として役に立つことを単に意図し、それぞれの別々の値は、それがあたかも本明細書に詳述されるかのように、本明細書内に組み入れられる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書において特に明記しない
限り、又は状況によって明らかに否定することができない限り、任意の適切な順位で行うことができるか。本明細書に提供されるすべての例又は例示的な言語(例えば、「等の」)の使用は、他に請求されない限り、単に本発明をよりよく解釈することのみを意図し、本発明の範囲に対して限定を与えるというわけではない。明細書における言語は、本発明の実施に必須なものとして任意の請求されていない要素を示すものとして解釈すべきでない。
本発明を実施するための発明者が知っている最良の形態を含む本発明の態実施様が、本明細書に開示されている。これらの実施態様の変形は、前述の記載を読み込むと、
即座に当業者に明らかになるであろう。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用することを予想し、本発明者らは、本発明について、本明細書に具体的に記述されたもの以外のその他のものが実施されることを意図する。従って、本発明には、準拠法によって可能にされるように、本願明細書に添付の特許請求の範囲に詳述された主題の全ての改変及び均等物が含まれる。更に、その全ての可能な変形の上記の要素のいずれの組み合わせも、本明細書に
おいて特に明記しない限り、又は状況によって明らかに否定されない限り、本発明によって包含される。