JP2018206743A - アルカリ二次電池用の非焼結式正極及びこの非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池 - Google Patents

アルカリ二次電池用の非焼結式正極及びこの非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】連続充電時の正極の膨潤を抑制し、連続充電を行った場合の電池の寿命を従来よりも延ばすことができる非焼結式正極及びこの非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池を提供する。【解決手段】ニッケル水素二次電池2は、セパレータ28、正極24及び負極26からなる電極群22を備え、正極24は、正極芯材44、及び、正極芯材44に充填されている正極合剤46を有する正極本体40と、正極本体40の表面部41に存在する表面層42とを備え、正極合剤40は、正極活物質である水酸化ニッケルを含み、表面層42は、ニッケルを含んでいる。【選択図】図4

Description

本発明は、アルカリ二次電池用の非焼結式正極及びこの非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池に関する。
アルカリ二次電池に用いられる正極には、焼結式正極及び非焼結式正極が知られている。
焼結式正極は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、ニッケルめっきが施されたパンチングメタルシートにより形成された正極芯材にニッケル粉末を保持させ、これらを焼結させることにより得られた多孔質ニッケル焼結基板が準備される。この多孔質ニッケル焼結基板は、硝酸ニッケル水溶液等のニッケル塩溶液に浸漬され、続いて、アルカリ水溶液に浸漬される。このような工程を経て、多孔質ニッケル焼結基板中に正極活物質である水酸化ニッケルを生成させることにより、焼結式正極が製造される。この焼結式正極は、多孔質ニッケル焼結基板の集電性能が高いため大電流放電特性に優れるといった利点がある反面、基板の多孔度を大きくすることが困難であるため、正極活物質である水酸化ニッケルの量を増加させ難く、高容量化には限界がある。また、焼結式正極の製造は、多段階の工程を経るため、製造作業が煩雑となる。よって、焼結式正極の製造には、製造コストが嵩むといった問題がある。
一方、非焼結式正極は、正極活物質である水酸化ニッケルの微粒子を含む正極活物質スラリを三次元網目構造の発泡ニッケル(正極芯材)に充填し、乾燥後、加圧成形することにより製造される(例えば、特許文献1)。この非焼結式正極は、水酸化ニッケルの充填量を増やせるので、単位体積当たりの容量が大きく、焼結式正極よりも高容量化が図れる。また、焼結式正極に比べ製造作業は簡便であり、製造コストを低く抑えることができる。このため、アルカリ二次電池においては、非焼結式正極が広く用いられている。
ここで、アルカリ二次電池の一つとして、密閉型のニッケル水素二次電池が知られている。この密閉型のニッケル水素二次電池は、有底筒形状の外装缶内に電極群がアルカリ電解液とともに収容され、外装缶の上端開口が封口体により封止され密閉されることにより製造される。前記した電極群は、正極と負極とが、これらの間にセパレータを介在させた状態で重ね合わされて形成されている。
ところで、ニッケル水素二次電池が過充電状態となると、正極においては酸素ガスが発生する。この酸素ガスの発生量が増えると密閉型の電池内の圧力が上昇し、安全弁が作動してアルカリ電解液が漏れるといった不具合が生じる。このような不具合を回避するため、密閉型のニッケル水素二次電池においては、正極容量よりも負極容量を大きく設定する、いわゆる正極規制方式が採用されている。この正極規制方式を採用することにより、過充電時に正極で発生した酸素ガスは、セパレータを通って負極に達し、負極における余剰容量分の水素吸蔵合金の表面で起こる吸収反応により吸収される。このように、密閉型のニッケル水素二次電池においては、過充電になったとしても、酸素の吸収反応が起こる機能を備えているので、電池の内圧上昇は抑制される。
特開昭60−131765号公報
近年、アルカリ二次電池は、様々な用途に使用されており、その一つの使用例として、バックアップ電源が挙げられる。
バックアップ電源においては、通常、連続充電が行われる。このように連続充電が行われると正極は、常に過充電の状態となり、常に酸素ガスが発生している状態となる。
ここで、非焼結式正極は、焼結式正極に比べ、正極芯材と正極活物質との間及び正極活物質同士の間の結着強度が弱い。このように、結着強度が比較的弱い非焼結式正極において酸素ガスが常に発生すると、正極芯材と正極活物質との間及び正極活物質同士の間が所々引き剥がされ、正極内において比較的大きな気泡状の空間が多数生じ易くなる。このように、正極内に比較的大きな気泡状の空間が生じると、正極は膨化し、当該空間にはアルカリ電解液が取り込まれ、いわゆる正極の膨潤が起こる。正極の膨潤が起こると、それにともないセパレータにおいてアルカリ電解液が減少し、いわゆるドライアウト現象が起こる。その結果、電池の寿命は短くなる。
このようなドライアウト現象が起こることを抑制するために、予め電池内にアルカリ電解液を多く注入する対応が考えられる。しかしながら、電池の内部の容積は決まっているので、電池内に注入するアルカリ電解液の量を増やすと、その分だけ活物質の量を減らさざるを得ない。このように、電池の容量に直接関わる構成要素である活物質の量が減ると、所望の電池容量を確保することが難しくなる。また、電池の内圧と漏液とのバランスを考慮すると、比較的多い量のアルカリ電解液を電池内に注入することは難しい場合がある。
このように、連続充電が必要なバックアップ電源に用いられる電池の寿命を改善することは未だ十分にはなされていない。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、連続充電時の正極の膨潤を抑制し、連続充電を行った場合の電池の寿命を従来よりも延ばすことができる非焼結式正極及びこの非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池を提供することにある。
本発明によれば、正極芯材、及び、前記正極芯材に充填されている正極合剤を有する正極本体と、前記正極本体の表面部に存在する表面層とを備え、前記正極合剤は、正極活物質である水酸化ニッケルを含み、前記表面層は、ニッケルを含む、アルカリ二次電池用の非焼結式正極が提供される。
前記表面層は、ニッケルを含む薄膜で形成されている構成とすることが好ましい。
前記薄膜は、蒸着膜及びめっき膜の何れかである構成とすることが好ましい。
前記表面層は、ニッケルを含んでおり、多数の貫通孔を有する孔あき箔で形成されている構成とすることが好ましい。
前記孔あき箔は、ラスメタル及びパンチングメタルの何れかである構成とすることが好ましい。
更に、本発明によれば、外装缶と、前記外装缶内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含み、前記正極は、上記した何れかの非焼結式正極である、アルカリ二次電池が提供される。
本発明の非焼結式正極は、ニッケルを含む表面層を備えており、電池を連続充電した際、この表面層の部分で優先的に酸素ガスが発生するので、正極内部での酸素ガスの発生は少なくなる。このため、正極の内部においては、酸素ガスの発生にともなう比較的大きな気泡状の空間の発生を抑えることができ、正極の膨潤を抑制することができる。その結果、ドライアウト現象が起こり難くなり、連続充電した場合の電池の寿命を従来よりも延ばすことができる。このため、本発明の非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池は、連続充電が必要なバックアップ電源に用いられた場合の寿命が、従来よりも長いものとなる。
本発明の一実施形態に係るニッケル水素二次電池を部分的に破断して示した斜視図である。 正極芯材の表面部近傍の一部を概略的に示した断面図である。 正極芯材に正極合剤が充填されて形成された正極の中間製品の表面部近傍の一部を概略的に示した断面図である。 表面層として蒸着膜を用いた非焼結式正極の表面部近傍の一部を概略的に示した断面図である。 表面層としてラスメタルを用いた非焼結式正極の表面部近傍の一部を概略的に示した断面図である。 電池の横断面の透視画像である。
以下、本発明が適用されるアルカリ二次電池について図面を参照して説明する。本発明が適用されるアルカリ二次電池としては特に限定されないが、例えば、図1に示すようなAAサイズの円筒型のニッケル水素二次電池(以下、電池という)2に本発明を適用した場合を例に説明する。
図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の開口には、封口体11が固定されている。この封口体11は、蓋板14及び正極端子20を含み、外装缶10を封口するとともに正極端子20を提供する。蓋板14は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。即ち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
ここで、蓋板14は中央に中央貫通孔16を有し、そして、蓋板14の外面上には中央貫通孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
通常時、中央貫通孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、中央貫通孔16を開き、この結果、外装缶10内から中央貫通孔16及び正極端子20のガス抜き孔(図示せず)を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28を含んでおり、これらは正極24と負極26との間にセパレータ28が挟み込まれた状態で渦巻状に巻回されている。即ち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁面と接触している。即ち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極24に接続され、その他端が蓋板14に接続されている。従って、正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30は上部絶縁部材32に設けられたスリット39を通して延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。このアルカリ電解液は、電極群22に含浸され、正極24と負極26との間での充放電反応を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH、LiOHを溶質として含むアルカリ電解液を用いることが好ましい。
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。
正極24は、図4に示すように、正極本体40と、この正極本体40の表面部41に存在する表面層42とを備えている。
上記した正極本体40は、正極芯材44、及び、この正極芯材44に充填された正極合剤46を有している。
このような正極芯材44としては、三次元網目構造を有する導電性の材料により形成される。具体的には、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体、あるいは、発泡ニッケルを用いることができる。
正極合剤46は、正極活物質粒子及び結着剤を含む。この結着剤は、正極活物質粒子同士を結着させるとともに正極合剤を正極芯材44に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次の水酸化ニッケル粒子が用いられる。なお、これら水酸化ニッケル粒子の表面には、オキシ水酸化コバルトを含む導電層が形成されている態様とすることが好ましい。また、これら水酸化ニッケル粒子には、必要に応じて、亜鉛やコバルトを固溶させることが好ましい。
また、正極合剤46には、必要に応じて、導電材及び正極添加剤を加えることが好ましい。
導電材としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH))などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。
正極添加剤は、正極の特性を改善するために添加されるものであり、例えば、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化亜鉛等を用いることができる。
正極本体40の表面部41に存在する表面層42は、ニッケルを含んでいる。詳しくは、この表面層42は、ニッケルを主体とする材料により形成されている。ニッケルを主体とする材料としては、例えば、純度99.5%以上の純ニッケル、あるいは、ニッケルが他の元素よりも多く含まれているニッケル合金を採用することができる。
ニッケルは、正極活物質である水酸化ニッケルよりも充電受け入れ性の低い材料である。このような充電受け入れ性の低い材料の部分においては、電池を連続充電した際に、過充電による酸素ガスが発生する反応が優先的に起こる。正極の表面部分に充電受け入れ性の低い材料を位置付けると、電池を連続充電した際には、主に正極の表面部分で酸素ガスが発生する。このため、正極の表面部分以外、すなわち、正極の内部の正極活物質が充填されている部分では酸素ガスの発生が、正極の表面部分よりも少なく抑えられる。このため、正極芯材と正極活物質との間、及び、正極活物質同士の間において、酸素ガスの発生にともなう空間が生じ難くなる。これにより、正極に取り込まれるアルカリ電解液の量を少なく抑えられ、正極が膨潤することが抑制される。その結果、ドライアウト現象が起こることを抑制でき、連続充電を行った場合の電池の寿命を延ばすことができる。
ここで、充電受け入れ性とは、充電可能な最大容量に対して、実際に放電可能な容量の割合をいい、充電されやすさを示すもので、充電受け入れ性が高いと充電されやすく、充電受け入れ性が低いと充電されにくいことを示す。
ここで、正極本体40の表面部41を表面層42で完全に覆ってしまうと、アルカリ電解液と正極活物質との接触が断たれてしまい充放電反応を阻害してしまうので、通液性は確保された状態で表面層42が形成される。つまり、表面層42は、正極本体40の表面部を部分的に覆うように形成されている態様とすることが好ましい。
正極24は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子からなる正極活物質粉末、水及び結着剤を含む正極合剤スラリを調製する。なお、必要に応じて、導電材の粉末及び正極添加剤の粉末も添加して正極合剤スラリを調製する。
次に、正極芯材44として、例えば、図2に示すような、発泡ニッケル44のシートを準備する。図2は、発泡ニッケル44のシートの表面部近傍の一部を表した断面図である。なお、発泡ニッケル44は、実際には複雑な三次元網目構造であるが、この図2においては、概略的に表現してある。
そして、得られた正極合剤スラリは、発泡ニッケル44に充填され、その後、乾燥処理が施される。このようにして、発泡ニッケル44に正極合剤46が充填されている正極の中間製品54が製造される(図3参照)。
次いで、ニッケルを含む表面層42を形成する。
表面層42を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、薄膜を形成する方法、箔を担持させる方法等が挙げられる。
まず、薄膜を形成する方法について説明する。
上記のようにして得られた正極の中間製品54をロール圧延し、所定の厚さに加工した後、所定寸法に切断して正極本体40を製造する。そして、この正極本体40の表面部41にスパッタリング法、蒸着法、あるいは、めっき法を用いて、純ニッケル又はニッケル合金の薄膜を形成する。このようにして、図4に示すような、発泡ニッケル44、及び、この発泡ニッケル44に充填された正極合剤46を有している正極本体40と、正極本体40の表面部41に存在し、ニッケルを含んでいる薄膜48(表面層42)とを備えている正極24が得られる。
ここで、正極本体40の表面部41は、多数の正極活物質粒子がランダムに積み重なって形成されており、ポーラスな状態であるので、アルカリ電解液の通液性は電池反応を阻害しない程度の良好な状態である。このような状態の正極本体40の表面部41にニッケルの蒸着等を行うと、ニッケルの薄膜48は、正極本体40の表面部41の状態に倣って形成されるので、アルカリ電解液の通りを完全に遮断することはなく、通液性は維持される。つまり、表面部41に薄膜48が存在してもアルカリ電解液の通液性は維持され、電池反応は阻害されない。
次に、箔を担持させる方法について説明する。
上記のようにして得られた正極の中間製品54の表面部分56にニッケルを含む孔あき箔50を重ね合わせる。そして、この状態で、中間製品54と当該孔あき箔50とを一緒にロール圧延し、所定の厚さに加工した後、所定寸法に切断する。上記したニッケルを含む孔あき箔50としては、ニッケル製又はニッケル合金製のラスメタル、あるいは、ニッケル製又はニッケル合金製のパンチングメタルを用いることが好ましい。このようにして、図5に示すような、発泡ニッケル44、及び、この発泡ニッケル44に充填された正極合剤46を有している正極本体40と、正極本体40の表面部41に存在し、ニッケルを含んでいる孔あき箔50(表面層42)とを備えている正極24が得られる。
ここで、ラスメタルやパンチングメタル等の孔あき箔50は、厚さ方向に複数の貫通孔52を備えているので、正極本体40の表面部41に存在していても、正極本体40の表面部41を完全に覆うことはなく、図5に示すように、部分的に覆うのみである。このため、表面部41に孔あき箔50が存在しても、正極本体40におけるアルカリ電解液の通液性は維持され、電池反応は阻害されない。
次に、負極26について説明する。
負極26は、帯状をなす導電性の負極芯材を有し、この負極芯材に負極合剤が保持されている。
負極芯材は、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤は、負極芯材の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯材の両面上にも層状にして保持されている。
負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、導電材及び結着剤を含む。この結着剤は水素吸蔵合金粒子、負極添加剤及び導電材を互いに結着させると同時に負極合剤を負極芯材に結着させる働きをなす。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマーを用いることができ、導電材としては、カーボンブラックや黒鉛を用いることができる。また、必要に応じて負極添加剤を添加しても構わない。
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、一般的なニッケル水素二次電池に用いられるものが好適に用いられる。
また、負極26は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子からなる水素吸蔵合金粉末、導電材、結着剤及び水を混練して負極合剤ペーストを調製する。得られた負極合剤ペーストを負極芯材に塗着し、乾燥させる。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が付着した負極芯材にロール圧延及び裁断を施す。これにより負極26が製造される。
以上のようにして製造された正極24及び負極26は、セパレータ28を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群22が形成される。
このようにして得られた電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内にはアルカリ電解液が所定量注入される。その後、電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた蓋板14により封口され、本発明に係る電池2が得られる。得られた電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
なお、図3〜5では、発泡ニッケル44については、図2と同様に概略的に表現してあり、また、表面層42としての薄膜48及び孔あき箔50についても概略的に表現してある。
[実施例]
1.電池の製造
(実施例1)
(1)正極の製造
ニッケルに対して亜鉛3質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛及び硫酸コバルトを計量し、これらを、アンモニウムイオンを含む1Nの水酸化ナトリウム水溶液に加え、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に10Nの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させ、ここでの反応中、pHを13〜14に安定させて、水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛及びコバルトを固溶したベース粒子を生成させた。
得られたベース粒子を10倍の量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥した。なお、得られたベース粒子は、平均粒径が10μmの球状をなしている。
次に、得られたベース粒子をアンモニア水溶液中に投入し、その反応中のpHを9〜10に維持しながら硫酸コバルト水溶液を加えた。これにより、ベース粒子を核として、この核の表面に水酸化コバルトが析出し、厚さ約0.1μmの水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子を得た。ついで、この中間体粒子を80℃の環境下にて酸素を含む高温空気中に対流させ、45分間の加熱処理を施した。これにより、前記中間体粒子の表面の水酸化コバルトが導電性の高いオキシ水酸化コバルトとなる。つまり、オキシ水酸化コバルトの導電層が形成される。その後、斯かるオキシ水酸化コバルトの導電層を備えた粒子を濾取し、水洗いしたのち、60℃で乾燥させた。このようにして、ベース粒子の表面にオキシ水酸化コバルトからなる導電層を有した正極活物質粒子の集合体である正極活物質の粉末を得た。
次に、製造した正極活物質の粉末100質量部に、0.3質量部の酸化イットリウムの粉末、0.3質量部の酸化ニオブの粉末、0.2質量部のHPCの粉末、0.3質量部のPTFEのディスパージョン液を混合して正極活物質スラリを調製し、この正極活物質スラリを正極芯材としての発泡ニッケルに充填した後、乾燥させた。これにより、発泡ニッケルに正極活物質粒子が充填された正極の中間製品を得た。
得られた中間製品は、ロール圧延により、厚さが0.52mmとされた後、所定寸法に切断され、所定形状の切断片(正極本体40)を得た。
次いで、得られた正極本体40を真空蒸着装置にセットし、正極本体40の表面部41に、純度99.5%のニッケルを真空蒸着した。このとき、ニッケルの蒸着膜(薄膜)の付着量は、0.05mg/cmとした。
以上のようにして、正極本体40と、正極本体40の表面部41にニッケルの薄膜48(表面層42)が存在する正極24を製造した。なお、この正極24は、水酸化ニッケルの理論容量289mAh/gより、正極1枚当たりの容量が1000mAhになるように正極活物質の充填量を調整してある。
(2)水素吸蔵合金及び負極の製造
まず、12質量%のLa、88質量%のSmを含む希土類成分を調製した。得られた希土類成分、Mg、Ni、Alを計量して、これらがモル比で0.90:0.10:3.40:0.10の割合となる混合物を調製した。得られた混合物は、誘導溶解炉で溶解され、その溶湯が鋳型に流し込まれた後、室温(25℃程度)まで冷却され水素吸蔵合金のインゴットとされた。
次いで、このインゴットに対し、アルゴンガス雰囲気下にて温度1000℃で10時間保持する熱処理を施した。そして、当該インゴットは、熱処理後、室温(25℃程度)まで冷却された。熱処理後のインゴットより採取したサンプルにつき、高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって組成分析を行った。その結果、水素吸蔵合金の組成は、(La0.12Sm0.880.90Mg0.10Ni3.40Al0.10であった。
次に、熱処理後の水素吸蔵合金のインゴットをアルゴンガス雰囲気中で機械的に粉砕し、水素吸蔵合金粒子の集合体である粉末を得た。ここで、得られた水素吸蔵合金の粉末につき、篩い分けを行い、400メッシュ〜200メッシュの間に残る水素吸蔵合金の粉末を選別した。
得られた水素吸蔵合金の粉末100質量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.4質量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.1質量部、スチレンブタジエンゴム(SBR)のディスパージョン(固形分50質量%)1.0質量部(固形分換算)、カーボンブラックの粉末1.0質量部、及び水30質量部を添加して混練し、負極合剤のペーストを調製した。
この負極合剤のペーストを負極芯材としての鉄製の孔あき板の両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。なお、この孔あき板は60μmの厚みを有し、その表面にはニッケルめっきが施されている。
ペーストの乾燥後、水素吸蔵合金の粉末が付着した孔あき板を更にロール圧延して体積当たりの合金量を高めた後、裁断し、AAサイズ用の負極26を得た。
(3)ニッケル水素二次電池の製造
得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を製造した。ここでの電極群22の製造に使用したセパレータ28は、ポリプロピレン繊維製不織布を発煙硫酸でスルフォン化処理した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して得られたスルフォンセパレータであり、その厚みは0.14mm(目付量60g/m)であった。
一方、KOH、NaOH及びLiOHを計量し、これらKOH、NaOH及びLiOHをイオン交換水に投入し、総濃度が7.0Nであり、KOHが5.0N、NaOHが1.0N、LiOHが1.0NとなるKOHが主体のアルカリ電解液を準備した。
次いで、有底円筒形状の外装缶10内に上記した電極群22を収納するとともに、準備したアルカリ電解液を2.2ml注液した。この後、封口体11で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量1000mAhのAAサイズのニッケル水素二次電池2を製造した。
(4)初期活性化処理
電池2を、25℃の環境下に1日間放置後、0.1Cの充電電流で16時間の充電を行った。その後、当該電池2を60℃の恒温槽の中に入れ、12時間放置した。その後、当該電池2を恒温槽から取り出し、25℃の環境下で3時間放置して冷却した後、0.2Cの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させた。このような充放電作業を2回繰り返すことにより初期活性化処理を行った。このようにして、電池2を使用可能状態とした。
(実施例2)
正極の中間製品の表面にニッケルのラスメタルを載置した状態でロール圧延を行い、ニッケルの真空蒸着は行わなかったことにより、正極本体40の表面部にニッケルのラスメタルにより形成された表面層42が存在する正極24を製造したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池2を製造した。
本実施例で用いたラスメタルは、純度99.5%のニッケル製の箔に切り目を入れて引き延ばして形成されたメッシュ形状をなしており、メッシュの骨格部と、この骨格部分の間に形成された菱形の貫通孔(開口)とを含んでいる。ここで、ラスメタルとしては、箔の厚さは0.02mm、開口の長辺寸法は1.0mm、開口の短辺寸法は0.5mm、骨格部の幅は0.08mmであるものを用いた。
(比較例1)
ニッケルの真空蒸着を行わなかったことにより、表面層42が存在しない正極24を製造したことを除いて、実施例1と同様にして、使用可能状態のニッケル水素二次電池を製造した。
2.ニッケル水素二次電池の評価
(1)連続充電特性
実施例1〜2、比較例1の初期活性化処理済みの電池に対し、25℃の環境下にて、0.1C(100mAh)で1ヶ月間連続充電を行った。
連続充電後の電池について、以下に示すような手順で、正極の厚みの変化率及びセパレータ中のアルカリ電解液の含有率を求めた。その結果を正極の厚みの変化率及びセパレータ中のアルカリ電解液の含有率として表1に示した。
(i)正極の厚みの変化率
まず、初期活性化処理後であって連続充電する前の電池を、X線CTスキャナ装置(東芝ITコントロールシステム株式会社製TOSCANER−32300μFD)にセットし、電池の横断面の透視画像を得た。測定条件は、管電圧が200kV、管電流が154μA、フルスキャンが360°、シングルモードが1024×1024、ビュー数が800であった。
得られた電池の断面の透視画像を図6に示す。この図6において、白い渦巻き状の部分が負極26であり、この負極26の間に存在している灰色の部分が正極24である。ここで、正極24の巻き始めとなる部分を示す基準線Aから角度が40度となる位置に測定線Bを想定する。そして、この測定線Bと交差する負極26の一回り目と二回り目との間の長さ(図6中参照符号Tで示す範囲の長さ)を測定し、この長さを正極の連続充電前の厚みとする。
次いで、1ヶ月の連続充電を行った後の電池についても上記と同様にして測定線Bと交差する負極26の一回り目と二回り目との間の長さTを測定し、この長さを正極の連続充電後の厚みとする。
そして、以下の(I)式から、連続充電の前から後にかけての正極の厚みの変化の比率を求めた。得られた結果を、正極の厚みの変化率として表1に示した。この正極の厚みの変化率の値が大きいほど正極は膨化していることを示す。
正極の厚みの変化率[%]=(連続充電後の厚み−連続充電前の厚み)/連続充電前の厚み×100・・・(I)
(ii)セパレータ中のアルカリ電解液の含有率
1ヶ月の連続充電を行った後の電池をグローブボックスに入れ、当該グローブボックス内に不活性ガスである窒素ガスを送り込み、グローブボックス内に滞留していたガスを窒素ガスに置き換える形で滞留していたガスを除去する、いわゆる窒素パージを行った。窒素パージされている状態のグローブボックス内において、電池を解体し、正極、負極、セパレータを取り出してそれぞれの質量を測定した。これにより、正極、負極及びセパレータのそれぞれに関し、アルカリ電解液を含む総質量を求めた。
次いで、正極、負極及びセパレータをイオン交換水で洗浄後、真空乾燥させた。そして、乾燥後の正極、負極及びセパレータのそれぞれに関し、質量を測定した。これにより、正極、負極及びセパレータのそれぞれに関し、アルカリ電解液を含まない乾燥質量を求めた。
次に、正極の総質量から正極の乾燥質量を減算し、正極に含まれていたアルカリ電解液の質量(以下、正極中の液量という)を求めた。更に、負極の総質量から負極の乾燥質量を減算し、負極に含まれていたアルカリ電解液の質量(以下、負極中の液量という)を求めた。更に、セパレータの総質量からセパレータの乾燥質量を減算し、セパレータに含まれていたアルカリ電解液の質量(以下、セパレータ中の液量という)を求めた。
次に、正極中の液量と、負極中の液量と、セパレータ中の液量とを合計し、正極、負極及びセパレータ、すなわち電極群に含まれていたアルカリ電解液の総量を求めた。
そして、以下の(II)式から、連続充電後にセパレータの中に保持されていたアルカリ電解液の量が、電極群(正極、負極及びセパレータ)の全体に含まれているアルカリ電解液の量に対してどの程度の比率であるかを求めた。得られた結果を、セパレータ中のアルカリ電解液の含有率として表1に示した。このセパレータ中のアルカリ電解液の含有率の値が大きいほど連続充電後にセパレータ中に保持されていたアルカリ電解液の量が多く、ドライアウト現象を起こし難いいことを示している。
セパレータ中のアルカリ電解液の含有率[%]=セパレータ中の液量/アルカリ電解液の総量×100・・・(II)
(2)考察
(i)実施例1〜2の電池は、正極の厚みの変化率が21〜24%であり、正極の厚みの変化率が50%である比較例1の電池に比べて、連続充電後の正極の厚さの変化が少ないことがわかる。また、実施例1〜2の電池は、セパレータ中のアルカリ電解液の含有率が21〜23%であり、セパレータ中のアルカリ電解液の含有率が16%である比較例1の電池に比べて、連続充電後にセパレータ中に保持されているアルカリ電解液の量が多いことがわかる。
比較例1の電池の正極は、ニッケルを含む表面層を備えていない従来型であり、電池を連続充電した場合に、正極の内部から表面部にかけて全体的に酸素ガスが発生する。この酸素ガスの発生にともない、正極芯材と正極活物質との間及び正極活物質同士の間には、当該酸素ガスに起因する比較的大きな気泡状の空間が多数生じたものと考えられる。その結果、正極が膨化し、正極の厚みが比較的厚くなったものと考えられる。このように、正極が膨化すると隣接するセパレータを押圧し、セパレータ中のアルカリ電解液は押し出される。そして、押し出されたアルカリ電解液は、正極内に発生した空間に吸収される。このことは、セパレータ中のアルカリ電解液の含有率が16%と少ない値となっていることからも明らかである。
比較例1の電池においては、正極の膨潤が起こっており、その結果、ドライアウト現象により電池の寿命は短くなると考えられる。
これに対し、実施例1、2の電池の正極は、ニッケルを含む表面層を備えている。ニッケルは、正極活物質としての水酸化ニッケルよりも充電受け入れ性が低い。電池を連続充電した場合、充電受け入れ性が低い材料の部分で優先的に酸素ガスが発生する。このため、酸素ガスの発生は、正極の表面部で優先的に起こり、正極内部では比較的起こり難い。酸素ガスが正極の表面部で重点的に発生することにより、正極の内部では、酸素ガス発生にともなう空間の発生は抑制される。正極内において空間の発生が抑制されれば、その分だけ、正極の膨化は抑制されるとともに正極に吸収されるアルカリ電解液の量は少なくなる。正極の膨化が少なければ、セパレータ中から押し出されるアルカリ電解液の量も少なくなる。このため、正極の膨潤が抑制され、セパレータにおいてはアルカリ電解液が減少し難くなる。その結果、ドライアウト現象は抑制され、電池の寿命は長くなると考えられる。
(ii)実施例1の正極の厚みの変化率は24%であるのに対し、実施例2の正極の厚みの変化率は21%であり、電池を連続充電した際に、実施例2の正極の方が実施例1の正極よりも膨化し難いことがわかる。また、実施例1のセパレータ中のアルカリ電解液の含有率は21%であるのに対し、実施例2のセパレータ中のアルカリ電解液の含有率は23%であり、電池を連続充電した際に、実施例2の方が実施例1よりもセパレータのアルカリ電解液が減少し難いことがわかる。
これは、ニッケル製のラスメタルが、正極が変形することを物理的に抑制する効果も奏し、正極の膨化がより抑えられたためであると考えられる。
(iii)以上より、本発明によれば、連続充電時における電池の寿命を延ばすことができる非焼結式正極を得ることができると言える。そして、本発明に係る非焼結式正極を備えたアルカリ二次電池は、連続充電時における寿命特性に優れた電池となると言える。
なお、本発明は、上記したニッケル水素二次電池に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、例えば、ニッケルカドミウム二次電池等、他のアルカリ二次電池であってもよい。
2 ニッケル水素二次電池
22 電極群
24 正極
26 負極
28 セパレータ
40 正極本体
42 表面層
44 正極芯材(発泡ニッケル)
46 正極合剤
48 薄膜
50 孔あき箔

Claims (6)

  1. 正極芯材、及び、前記正極芯材に充填されている正極合剤を有する正極本体と、
    前記正極本体の表面部に存在する表面層と
    を備え、
    前記正極合剤は、正極活物質である水酸化ニッケルを含み、
    前記表面層は、ニッケルを含む、
    アルカリ二次電池用の非焼結式正極。
  2. 前記表面層は、ニッケルを含む薄膜で形成されている、請求項1に記載のアルカリ二次電池用の非焼結式正極。
  3. 前記薄膜は、蒸着膜及びめっき膜の何れかである、請求項2に記載のアルカリ二次電池用の非焼結式正極。
  4. 前記表面層は、ニッケルを含んでおり、多数の貫通孔を有する孔あき箔で形成されている、請求項1に記載のアルカリ二次電池用の非焼結式正極。
  5. 前記孔あき箔は、ラスメタル及びパンチングメタルの何れかである、請求項4に記載のアルカリ二次電池用の非焼結式正極。
  6. 外装缶と、前記外装缶内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、
    前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含み、
    前記正極は、請求項1〜5の何れかに記載の非焼結式正極である、アルカリ二次電池。
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