JP2018205712A - 異方性膜形成用組成物、異方性膜、及び光学素子 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、これらの偏光膜にはヨウ素が二色性物質として広く使用されてきた。しかしながら、ヨウ素は昇華性が大きいために、偏光膜を用いた偏光素子として使用した場合、その耐熱性や耐光性が十分ではなかった。また、その消光色が深い青色となるため、全可視スペクトル領域に亘って、理想的な無彩色の偏光素子とは言えなかった。
従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた異方性膜を用いる場合、該異方性膜に接着層を設け、接着層の保護フィルムを貼り合わせ、該保護フィルムを貼り合せた偏光膜をディスプレイ製造ラインに移送し、ディスプレイ製造ラインで保護フィルムを剥がし、異方性膜を基板等に貼合するというプロセスが取られている。これをガラスや透明フィルム等の基板上に、湿式成膜法を用いて異方性膜を形成する方法に置き換えれば、前記の従来のポリマーに有機系の色素を含浸させた異方性膜を用いる方法と比較して、製造プロセスを簡略化でき、生産性向上に寄与するものと考えられる。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
平均一次粒子径1nm〜500nmのフィラーを含有していることを特徴とする異方性膜形成用組成物。
[2]
前記フィラーが金属酸化物である、[1]に記載の異方性膜形成用組成物。
[3]
前記金属酸化物がシリカ及び/又はアルミナである、[2]に記載の異方性膜形成用組成物。
[4]
前記フィラーを全固形分中に0.1〜50重量%含有していることを特徴とする[1]〜[3]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
[5]
前記組成物が、更に色素を含むことを特徴とする[1]〜[4]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
[6]
前記組成物が、更に酸性基及び塩基性基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする[1]〜[5]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
[7]
前記塩基性基がアミノ基を含むものである、[6]に記載の異方性膜形成用組成物。
[8]
前記酸性基がスルホ基を含むものである、[6]又は[7]に記載の異方性膜形成用組成物。
[9]
前記酸性基の少なくとも一部が塩型の酸性基であり、前記塩型の酸性基の対カチオンが、リチウムイオン及び/又はナトリウムイオンである、[6]〜[8]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
[10]
前記酸性基及び/又は前記塩基性基が、芳香族性の部分構造を有しないものである、[6]〜[9]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
[11]
[1]〜[10]の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物を用いて形成された、異方性膜。
[12]
[11]に記載の異方性膜を含む、光学素子。
なお、本明細書で引用された文献等に開示された内容の一部または全部をここに引用し、本明細書の開示内容として取り入れる。
吸収、屈折等の光学的異方性を有する膜としては、例えば、直線偏光膜、円偏光膜等の偏光膜、位相差膜、導電異方性膜等がある。本発明の異方性膜は、偏光膜、位相差膜及び導電異方性膜に用いられることが好ましく、偏光膜に用いられることがより好ましい。
まず、本発明の異方性膜形成用組成物について説明する。
該異方性膜形成用組成物の態様としては、異方性膜形成用組成物が相分離を引き起こさない状態であれば、溶液であっても、液晶であっても、分散状態であってもよいが、異方性膜形成用組成物として液晶相の状態であることが、溶剤が蒸発した後に形成される異方性膜が高配向度に形成される観点から好ましい。なお、本実施の形態において、液晶相の状態であるとは、具体的には、『液晶の基礎と応用』(松本正一・角田市良著、1991)の1〜16ページに記載されているように、液体と結晶の双方の性質を示す液晶状態であり、ネマティック相、コレステリック相、スメクティック相又はディスコティック相であることをいう。特に、溶液中での秩序性が低く、粘度が低い傾向にあるため、液晶相はネマティック相が好ましい。
(フィラーの種類)
本発明の異方性膜形成用組成物およびかかる組成物から形成した異方性膜は、膜表面にフィラーを含有するため、膜表面に凹凸を形成して他の基材との接着面積が減少し、付着性が低下すると考えられる。また、フィラー添加により異方性膜の弾性率が高くなるため、付着性が低下すると考えられる。さらにフィラーを添加することにより、異方性膜の屈折率と消衰係数を低下させるため、異方性膜を光学素子として用いた場合に、異方性膜と隣接する層との屈折率差、及び消衰係数の差を小さくすることが可能であり、結果として界面反射を低減することが可能と考えられる。
異方性膜形成用組成物に使用可能なフィラーは特に制限はなく、例えば、無機フィラーであり、具体的には、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セレン、酸化イットリウム、酸化セリウムなどの金属酸化物、窒化ケイ素などの金属窒化物、硫化パラジウム、硫化カドニウムなどの金属硫化物等が挙げられる。
フィラーはこれらの1種のみからなるものであっても良く、2種以上からなるものであっても良い。これらのうち、フィラーの安定性の観点から酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物が好ましく、中でも色素、高分子化合物との親和性の観点で酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含むものがより好ましく、異方性膜形成用組成物の安定性の観点では酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含むものが更に好ましい。これらのフィラーは、溶媒、あるいは液晶との相互作用を制御するため、特定の有機物で表面を修飾されていても良く、分散剤等と共用されても良い。異方性膜およびかかる膜から作製した光学素子の反射率を低減する観点から、酸化ケイ素が特に好ましい。
フィラーの製造法は特に限定されず、気相法、ゾルゲル法、溶融金属噴霧酸化法、コロイド沈殿法、アーク放電などの任意の方法で製造することができる。
フィラーは分散安定性や劣化抑制のために、表面被覆処理が施されていてもよく、表面被覆は均質でも不均質でもよい。表面被覆の具体的な材料としては、無機材料又は有機材料であり、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素などの金属酸化物、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸などの有機酸等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。中でも異方性膜形成用組成物の安定性の観点では金属酸化物又は金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物が更に好ましい。
その他にも、フィラーの分散安定性の観点から、フィラーには、プラズマ表面改質処理やメカノケミカル処理などが施されていてもよい。
本発明のフィラーの平均一次粒子径は好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下、特に好ましくは90nm以下、とりわけ好ましくは70nm以下、ことさら好ましくは50nm以下、好ましくは1nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上、特に好ましくは10nm以上である。例えば、1nm以上500nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましく、7nm以上100nm以下がさらに好ましく、10nm以上90nm以下がよりさらに好ましく、10nm以上70nm以下がことさら好ましく、10nm以上50nm以下がよりことさら好ましい。
前記下限値以上とすることで異方性膜の付着性を抑制し、組成物中でのフィラーの分散安定性が向上する傾向がある。また前記上限値以下とすることで、フィラーによる異方性膜中の色素の配向阻害を抑制し、フィラーを添加しても高い偏光度を維持できる傾向がある。また、異方性膜の屈折率及び消衰係数を下げる傾向があり、隣接層との間で起こる界面反射を低下させる傾向がある。
なお、粒子の平均一次粒子径は本発明の組成物、又は組成膜から形成される異方性膜のTEM(透過電子顕微鏡)、SEM(走査電子顕微鏡)写真像から一次粒子を確認して、30個の平均値として求めることができる。また、上記の方法による測定が困難な場合、動的光散乱法で評価してもよい。
異方性膜形成用組成物中において、全固形分に対するフィラー含有量(全固形分中の重量%)は好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは0.7%以上、特に好ましくは1.0%以上、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下、とりわけ好ましくは10%以下である。例えば、0.1%以上50%以下が好ましく、0.5%以上30%以下がより好ましく、0.7%以上20%以下がさらに好ましく、1.0%以上15%以下がよりさらに好ましく、1.0%以上10%以下がことさら好ましい。
前記下限値以上とすることで異方性膜の付着性を抑制し、異方性膜の屈折率及び消衰係数を下げ、反射率を低減する傾向があり、また前記上限値以下とすることで、異方性膜の偏光度、透明性が高くなる傾向がある。
(分散剤の種類)
本発明の異方性膜形成用組成物は、フィラーの分散安定性向上のために、通常分散剤として市販されている低分子分散剤、高分子分散剤、バインダー樹脂以外の樹脂を含有させることも可能である。中でも組成物中でのフィラーの分散安定性の観点で、高分子分散剤を配合することが好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等を挙げることができる。これらの分散剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
本発明の異方性膜形成用組成物が分散剤を含む場合、その含有量(全固形分中の重量%)は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。例えば、0.1重量%以上50重量%以下が好ましく、0.5重量%以上30重量%以下がより好ましく、1重量%以上20重量%以下がさらに好ましく、2重量%以上10重量%以下がよりさらに好ましく、2重量%以上5重量%以下がことさら好ましい。
前記下限値以上とすることで組成物中におけるフィラーの分散安定性が向上する傾向があり、また前記上限値以下とすることで、異方性膜の偏光度、透明性が高くなる傾向がある。
(高分子化合物の種類)
本発明に用いることができる好ましい高分子化合物(ポリマー(繰返し単位を有する重合体))は、酸性基及び/又は塩基性基を有する高分子化合物(以下、本明細書において「高分子化合物」と表すことがある。)である。
上記高分子化合物は親水性が高いため、異方性膜形成用組成物中のフィラーの分散安定性を高める観点で好ましい。さらに高分子化合物を添加することにより、異方性膜の屈折率と消衰係数が低下する傾向にあるため、異方性膜を偏光膜や反射防止膜に用いた場合に、異方性膜と隣接する層との界面反射を低減することが可能となる場合がある。
また、上記高分子化合物を用いることで、以下の理由により耐湿性の高い異方性膜が形成可能と推察される。
基本的には、塩基性基又は酸性基は水分子との相性が良く、吸湿性を持つため、異方性膜は水分を吸着しやすい性質がある。異方性膜中において、色素は、その異方性を発現するため、ある程度の大きさを有する集合体を形成する。特許文献6に記載のアミノ酸などの化合物は、この色素集合体をつなぎ、固定していると推定される。このつなぎとなっているアミノ酸などの化合物同士は弱い水素結合で結ばれており、水分を吸湿する事によりその会合力が弱くなる。そのため、色素集合体の動きを抑制できず、析出やひび割れが起こってしまうと推定される。一方で、上記高分子化合物を用いることにより、アミノ酸などの化合物同士の弱い水素結合のネットワークの一部を強固な共有結合に置き換えることとなる。従って、水分が吸着しても、色素の集合体の動きを抑制した状態を維持できると推定される。
また、色素単独で形成する異方性膜は脆くなる傾向にあるため硬度が低くなるが、上記高分子化合物を添加することで可塑剤的な効果により脆さが解消され、硬度が向上すると推定される。
本発明の異方性膜を形成するには、相分離を起こさない液晶性の組成物を形成する事が好ましい。そのためには、色素と高分子化合物が会合体を形成し、且つ、色素同士が積層した色素集合体が形成されることが必要である。後述するが、色素は、水溶性を発現させるために、酸性基又は塩基性基を有する場合がある。塩基性基は通常正電荷又はカチオン性を、酸性基は通常負電荷又はアニオン性を有する。そのため、色素と高分子化合物が会合対を形成するためには、高分子化合物は塩基性基又は酸性基を有する必要がある。このとき、高分子化合物が酸性基又は塩基性基のどちらか一方の基のみを有する場合、色素と強く会合するか、強く反発を引き起こすかのいずれかが起こると推定される。前者の場合、高分子化合物を介して色素会合体同士が架橋され、均一な液晶相の形成が困難となる。一方、後者の場合、同じ電荷を有するが故に色素と高分子化合物がそれぞれ独自の凝集体を形成し、相分離状態となってしまうと推定される。そのため、高分子化合物は塩基性基と酸性基を同時に有することが好ましい。
酸性基及び塩基性基とは、それぞれ、酸性基は7未満、塩基性基は7以上のpKaを有する官能基のことである。なお、pKaとは、濃度酸解離定数Kaの逆数の対数値、すなわち−log Kaである。
酸性基の少なくとも一部は塩型の酸性基であってもよく、酸性基の対カチオンとしては、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていても良いアンモニウム、有機アミン等が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1以上、6以下の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1以上、6以下の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1以上、6以下の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず、複数種混在していてもよい。溶解性の観点から、イオン化傾向が高いアルカリ金属の塩が望ましい。特に、リチウム及び/又はナトリウムが好ましく、色素と高分子化合物とを含む組成物の相分離を抑制し、溶解性を向上する観点から、リチウムが特に好ましい。また、色素と高分子化合物とを含む組成物からなる膜の二色比を高める観点からも、リチウムが特に好ましい。
塩基性基の少なくとも一部は塩型の塩基性基であってもよく、塩基性基の塩型としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸の塩、酢酸、ギ酸等の有機酸の塩が挙げられる。
分子量が上記下限値以上であることで耐湿性が得られる傾向にあり、分子量が上記上限値以下であることで溶解性が得られる傾向にある。
一方で、不飽和結合やフェニレンのような芳香族性を有する部分構造を有さない方が望ましい。不飽和結合や芳香族性を有する部分構造を有さないことで、不飽和結合部が色素のπ-πスタックを阻害することを抑制し、異方性膜形成用組成物が液晶性を得て、異方性膜の偏光度を向上できる傾向にある。
一方で、不飽和結合やフェニレンのような芳香族性を有する部分構造を有さない方が望ましい。不飽和結合やフェニレンのような芳香族性を有する部分構造を有さないことで、色素のπ-πスタックを阻害することを抑制し、異方性膜形成用組成物が液晶性を得て、異方性膜の偏光度を向上できる傾向にある。
同様に、側鎖の鎖長は短い方が好ましい。側鎖が短いことで、色素の会合を阻害することを抑制できる傾向にある。そのため、側鎖は、最も主鎖から離れた原子(H原子を除く)までの原子数が2以上、10以下であることが好ましく、より好ましくは8以下である。
塩基性基と酸性基の同一主鎖中の比率は、特に限定されない。液晶性を維持する観点からは、塩基性基/(塩基性基+酸性基)の数値が0.05より大きいことが好ましく、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上であり、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましく、0.5以下がよりさらに好ましく、0.4以下がことさら好ましい。例えば、0.05より大きく0.8以下が好ましく、0.1以上0.7以下がより好ましく、0.2以上0.6以下がさらに好ましく、0.2以上0.5以下がよりさらに好ましく、0.2以上0.4以下がことさら好ましい。
上記下限値以上とすることで、色素と高分子化合物との相溶性が向上する傾向にある。上記上限値以下とすることで、色素と高分子化合物との会合により色素間の積層が進み、組成物の液晶性が向上し、異方性膜の偏光度が向上する傾向にある。
なお、高分子化合物が、複数の種類の塩基性基及び酸性基を有する場合、二つ以上の基は、同一の基であっても異なる基であっても良い。
上記高分子化合物は親水性が高いため、フィラーを含有する本発明の異方性膜形成用組成物において、その分散安定性を高める観点で好ましい。さらに高分子化合物を添加することにより、異方性膜の屈折率と消衰係数が低下する傾向にあるため、異方性膜を偏光膜や反射防止膜に用いた場合に、異方性膜と隣接する層との界面反射を低減することが可能となる場合がある。
高分子化合物の含有量(全固形分中の重量%)は特に制限されない。高分子化合物は異方性膜形成用組成物の全固形分に対して、90重量%以下が好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、70重量%以下であることがさらに好ましく、60重量%以下であることが特に好ましい。一方、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、3重量%以上がさらに好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がとりわけ好ましく、40重量%以上がことさら好ましい。例えば、0.1重量%以上90重量%以下が好ましく、1重量%以上90重量%以下がより好ましく、5重量%以上80重量%以下がさらに好ましく、10重量%以上70重量%以下がよりさらに好ましく、20重量%以上60重量%以下がことさら好ましく、30重量%以上60重量%以下がよりことさら好ましく、40重量%以上60重量%以下がさらにことさら好ましい。
高分子化合物の含有量を上記上限値以下とすることで、異方性膜の偏光度が高くなる傾向がある。高分子化合物の含有量を上記下限値以上とすることで、異方性膜の脆さを抑制し、硬度を向上し、反射率を低減する傾向がある。また高分子化合物の含有量が上記範囲であることで、耐湿性に優れる傾向にある。
本明細書において色素とは、可視光領域の波長の少なくとも一部を吸収する物質又は化合物を意味する。
本発明に用いることができる色素としては、水溶性有機色素又は二色性色素が用いられる。また、色素は、配向制御のため液晶性を有する色素であることが好ましい。ここで、液晶性を有する色素とは、溶剤中でリオトロピック液晶性を示す色素を意味する。
本発明で用いられるリオトロピック液晶性を示す色素としては、塗布により異方性膜を形成するために、水又は有機溶媒に可溶であることが好ましい。さらに好ましいものは、「有機概念図−基礎と応用」(甲田善生著、三共出版、1984年)で定義される無機性値が有機性値よりも小さな化合物である。なお、水溶性とは、室温で色素が水に、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上溶解することをいう。
また、上記色素は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特にアゾ色素において、スルホ基、カルボキシル基、ホスホ基及びホスフィン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有することが、異方性膜の水への溶解、脱落、割れ等の発生を抑制し、さらに光学特性の劣化を小さくする効果を得ることができる傾向にある。これらの中でも、アゾ色素がスルホ基を有することが特に好ましい。
色素としては、例えば、特開2006−079030号公報、特開2010−168570号公報、特開2007−302807号公報、特開2008−081700号公報、特開平09−230142号公報、特開2007−272211号公報、特開2007−186428号公報、特開2008−69300号公報、特開2009−169341号公報、特開2009−161722号公報、特開2009−173849号公報、特開2010−039154号公報、特開2010−180314号公報、特開2010−266769号公報、特開2010−031268号公報、特開2011−012152号公報、特開2011―016922号公報、特開2010−100059号公報、特開2011−141331号公報、特開2011−190313号公報、特表平08−511109号公報、特表2001−504238号公報、特開2006−48078号公報、特開2006−98927号公報、特開2006−193722号公報、特開2006−206878号公報、特開2005−255846号公報、特開2007−145995号公報、特開2007−126628号公報、特開2008−102417号公報、特開2012−194357号公報、特開2012−194297号公報、特開2011−034061号公報、特開2009−110902号公報、特開2011−100059号公報、特開2012−194365号公報、特開2011−016920号公報等に記載の色素が挙げられる。
製造時に色素が塩型で得られた場合はそのまま使用してもよいし、所望の塩型に変換(塩交換)してもよい。塩交換の方法としては、公知の方法を任意に用いることができ、例えば以下の方法が挙げられる。
2)塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換する方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換する方法。
有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。
これらの塩型の場合、その種類は1種類に限らず複数種混在していてもよい。また、本発明において、色素は単独で使用することができるが、これらの2種以上を併用してもよく、また、配向を低下させない程度に前記例示色素以外の色素を配合して用いることもできる。これにより各種の色相を有する異方性膜を製造することができる。
異方性膜形成用組成物中の色素濃度(配合用色素を使用する場合、配合用色素を含む。)としては、異方性膜の成膜条件にもよるが、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。例えば、0.01重量%以上50重量%以下が好ましく、0.1重量%以上30重量%以下がより好ましい。
色素濃度が前記範囲であることで、均一な薄膜塗布ができる異方性膜形成用組成物の粘度が得られ、且つ、色素が析出しない傾向にある。また、異方性膜において十分な二色比等の異方性を得られる傾向にある。
溶剤としては、水、水混和性のある有機溶剤又はこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
上記溶剤を用いた場合、異方性膜形成用組成物の全固形分濃度は好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下、例えば、好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上30質量%以下、よりさらに好ましくは15質量%以上25質量%以下となるように調液して使用される。前記下限値以上とすることで所望の膜厚の異方性膜を形成できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで異方性膜の膜厚均一性が向上する傾向がある。
異方性膜形成用組成物がリオトロピック液晶相を発現していれば、より異方性膜中での高い配向が得られる傾向にあるため、さらに好ましい。
異方性膜形成用組成物のpHは、特に限定されるものではないが、好ましくは、4.0以上、さらに好ましくは5.0以上、最も好ましくは5.5以上である。また、好ましくは12以下、さらに好ましくは11以下、最も好ましくは10以下である。pHの数値が上記上限値以下であることで、高分子化合物の塩基性基がカチオン化され、色素との相溶性が向上し、相分離(析出)を抑制する傾向にある。また、pHの数値が上記下限値以上であることで、酸性基がアニオン化され、異方性膜形成用組成物中において、色素と高分子化合物の過度な相互作用による相分離を抑制できる傾向にある。
異方性膜形成用組成物には、さらに必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤、カップリング剤、pH調整剤、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、グリシルグリシン、グリシルグリシルグリシン、セリン、プロリン、システイン、シスチン、グルタミン、6−アミノヘキサン酸、国際公開第2005/069048号公報に記載のアミノ酸、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、タウリン等の酸性基及び塩基性基を有する低分子化合物等の添加剤を配合することができる。添加剤により、濡れ性、塗布性、異方性膜形成用組成物の安定性等を向上させ得る場合がある。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性及びノニオン性のいずれも使用可能である。その添加濃度は、特に限定されるものではないが、異方性膜形成用組成物中の濃度として、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上である。また、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下である。例えば、0.0001質量%以上0.8質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
界面活性剤の濃度がこの範囲であることで、界面活性剤の添加効果が得られ、且つ、色素分子の配向を阻害しない傾向にある。
異方性膜形成用組成物中での異方性材料の造塩や凝集等の不安定性を抑制する等の目的のために、公知の酸/アルカリ等のpH調整剤等を、異方性膜形成用組成物の構成成分の混合の前後或いは混合中のいずれかで添加してもよい。なお、前記以外の添加剤として“Additive for Coating”,Edited by J.Bieleman,Willey−VCH(2000)に記載の公知の添加剤を用いることもできる。
本発明の異方性膜形成用組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、色素、その他の添加剤及び溶剤等を混合し、0〜100℃で撹拌、振盪して色素を溶解する。難溶性の場合は、ホモジナイザー、ビーズミル分散機等を用いてもよい。
本発明の異方性膜形成用組成物の製造方法として、組成物中の異物等を除去する目的でろ過工程を有していてもよい。ろ過以外の組成物中の異物等を除去する方法としては、特開2012−53388号公報に記載の遠心分離を用いる方法もある。
本発明の異方性膜は、本発明の異方性膜形成用組成物を用いて形成することができる。
本発明の異方性膜の単体透過率42.5%における偏光度は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは91%以上である。偏光度は高いほど好ましい。偏光度が特定値以上であることで、後述する光学素子、特に偏光素子として有用である。
本発明の異方性膜を液晶ディスプレイ用の偏光素子として使う場合は、異方性膜の配向特性は二色比を用いて表すことができる。二色比は通常8以上あれば偏光素子として機能するが、15以上が好ましく、20以上がさらに好ましく、25以上がさらに好ましく、30以上が特に好ましい。また、二色比は高いほど好ましい。二色比が特定値以上であることで、後述する光学素子、特に偏光素子として有用である。
D=Az/Ay
ここで、Azは異方性膜に入射した光の偏光方向が色素の配向方向に平行な場合に観測される吸光度であり、Ayはその偏光方向が垂直な場合に観測される吸光度である。それぞれの吸光度は同じ波長のものを用いれば特に制限なく、目的によっていずれの波長を選択してもよいが、異方性膜の配向の度合を表す場合は、異方性膜の極大吸収波長における値を用いることが好ましい。
例えば、偏光度を高くする場合には、透過率は50%以下であることが好ましい。透過率が特定範囲であることで、下記の光学素子として有用であり、特にカラー表示に用いる液晶ディスプレイ用の光学素子として有用である。
本発明の異方性膜は、湿式成膜法により作製することが好ましい。
本発明でいう湿式成膜法とは、異方性膜形成用組成物を基板上に何らかの手法により付与し、溶剤が乾燥する過程を経て色素等を基板上で配向・積層させる方法である。湿式成膜法では、異方性膜形成用組成物を基板上に付与すると、すでに異方性膜形成用組成物中で、又は溶剤が乾燥する過程で、色素自体が自己会合することにより微小面積での配向が起こる。この状態に外場を与えることにより、マクロな領域で一定方向に配向させ、所望の性能を有する異方性膜を得ることができる。この点で、いわゆるポリビニルアルコール(PVA)フィルム等を、色素を含む溶液で染色して延伸し、延伸工程だけで色素を配向させることを原理とする方法とは異なる。なお、ここで外場とは、あらかじめ基板上に施された配向処理層の影響、せん断力、磁場等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
湿式成膜法における異方性膜形成用組成物を基板上へ付与する方法としては、例えば、塗布法、ディップコート法、LB膜形成法、公知の印刷法等が挙げられる。またこのようにして得た異方性膜を別の基板に転写する方法もある。これらの中でも、本発明は塗布法を用いることが好ましい。
異方性膜の配向方向は、通常、塗布方向と一致するが、塗布方向と異なっていてもよい。なお、本実施の形態において異方性膜の配向方向とは、例えば、偏光膜であれば、偏光の透過軸又は吸収軸であり、位相差膜であれば、進相軸又は遅相軸のことである。
スロットダイコート法に用いるダイコーターは、一般的に塗布液を吐出する塗布機、いわゆるスリットダイを備えている。該スリットダイは、例えば、特開平2-164480号公報、特開平6-154687号公報、特開平9-131559号公報、「分散・塗布・乾燥の基礎と応用」(2014年、株式会社テクノシステ、ISBN9784924728707 C 305)、「ディスプレイ・光学部材における湿式コーティング技術」(2007年、情報機構、ISBN9784901677752)、「エレクトロニクス分野における精密塗布・乾燥技術」(2007年、技術情報教会、ISBN9784861041389)等に開示されている。これら公知のスリットダイは、フィルムやテープなどの可撓性を有した部材やガラス基板のような硬い部材であっても塗布が実施できる。
本発明の異方性膜形成用組成物は、塗布装置への給液が容易であり、スロットダイコート法での塗布を行う場合にも、実用に耐える塗布速度で塗布することができ、生産性の高い異方性膜製造プロセスを構築することができる。一方で近年、設備投資やメンテナンスに関して低コストで、かつ高速塗布により生産性の向上を両立できる方法として、バーコーターによる塗布プロセスの構築が課題となっており、本発明の異方性膜形成用組成物はバーコーターにも好適に用いることができる。
なお、異方性膜形成用組成物の塗布温度としては、通常0℃以上80℃以下、好ましくは40℃以下である。また、異方性膜形成用組成物の塗布時の湿度は、好ましくは10%RH以上、さらに好ましくは30%RH以上であり、好ましくは80%RH以下である。
これらの中でも、得られた異方性膜を特開2009−199075号公報、特開2007−241267号公報等に記載の方法で処理し、水に対して不溶性の異方性膜とすることが、後工程の容易さ、耐久性等の点から好ましい。
感光性樹脂は特に限定されず、国際公開第2016/017782号と同様に、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(光硬化性単量体)、カチオン重合性基含有化合物等が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
異方性膜の不要部分を除去してパターニングする観点で、感光性樹脂(ラジカル重合性不飽和基含有化合物)が好ましい。アルカリ現像する場合、アルカリ可溶性樹脂と感光性樹脂とを組み合わせて用いることが好ましい。ここで、アルカリ可溶性樹脂はアルカリ水溶液に溶解する樹脂であれば特に制限されず、例えば(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂は下記(A)で表される重合体のように、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位以外に、その他の単量体を共重合体成分として含んでいてもよい。
ここで「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
本発明の光学素子は、本発明の異方性膜を含む。
本発明において、光学素子は、光吸収の異方性を利用し直線偏光、円偏光、楕円偏光等を得る偏光素子、位相差素子、屈折異方性や伝導異方性等の機能を有する素子を表す。これらの機能は、異方性膜形成プロセスと基板や有機化合物(色素や透明材料)を含有する組成物の選択により、適宜調整することができる。本発明では、偏光素子として用いることが最も好ましい。
本発明の偏光素子は、本発明の異方性膜を有するものであれば他の如何なる膜(層)を有するものであってもよい。例えば、基板上に配向膜を設け、該配向膜の表面に、異方性膜を形成することにより製造することができる。
また、偏光素子は異方性膜だけに限らず、偏光性能を向上させる、機械的強度を向上させる等の機能を有するオーバーコート層;粘着層又は反射防止層;配向膜;位相差フィルムとしての機能、輝度向上フィルムとしての機能、反射又は反射防止フィルムとしての機能、半透過反射フィルムとしての機能、拡散フィルムとしての機能などの光学機能を有する層;等、と組み合わせて使用してもよい。具体的には、前述の様々な機能を有する層を塗布や貼合等により積層形成し、積層体として使用してもよい。
これらの層は、製造プロセス、特性及び機能に合わせ適宜設けることができ、その積層の位置、順番等は特に限定されない。例えば、上記各層を形成する位置は、異方性膜の上に形成してもよく、また、異方性膜を設けた基板の反対面に形成してもよい。一方、上記各層を形成する順番は、異方性膜を形成する前でも形成した後でもよい。
位相差フィルムとしての機能を有する層は、以下のような方法で得られた位相差フィルムを、偏光素子を構成する他の層に貼合等を行うことにより、形成することができる。
位相差フィルムは、例えば、特開平2−59703号公報、特開平4−230704号公報等に記載の延伸処理を施したり、特開平7−230007号公報等に記載された処理を施したりすることにより形成することができる。
輝度向上フィルムは、例えば、特開2002−169025号公報及び特開2003−29030号公報に記載されるような方法で微細孔を形成すること、又は、選択反射の中心波長が異なる2層以上のコレステリック液晶層を重畳することにより形成することができる。
拡散フィルムとしての機能を有する層は、例えば、偏光素子を構成する他の層に微粒子を含む樹脂溶液をコーティングすることにより、形成することができる。
本発明の光学素子は、基板上に塗布などにより異方性膜を形成することで偏光素子を得ることができるという点から、フレキシブルディスプレイ等の用途にも好適に使用することができる。
なお、下記の実施例における物性、製造条件および評価結果等の各種数値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と下記実施例の値との組合せまたは実施例同士の値の組合せで規定される範囲であってもよい。
以下の記載において、「部」は「質量部」を示し、「%」は「重量%」を示す。
4−アミノベンズアミド5.45重量部、および水200重量部に塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.00重量部を加えてジアゾ化し、水240重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)8.93重量部とpH=2〜3でカップリングを行った後、中和、塩析して析出固体を濾過分離し、モノアゾ化合物のウエットケーキを得た。
このモノアゾ化合物のウエットケーキをN−メチルピロリドン220重量部、および水110重量部に溶解し、塩酸酸性条件下、亜硝酸ナトリウム3.00重量部を加えてジアゾ化し、水200重量部に溶解した8−アミノ−2−ナフタレンスルホン酸(1,7−クレーブ酸)8.93重量部とpH=2〜3でカップリングを行った後、塩析して析出物を取り出した。水に溶解して水酸化ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコールを加えて析出固体を濾過分離し、得られたウエットケーキを乾燥することにより、下記式(I−1)で表されるアゾ色素のナトリウム塩31.1重量部を得た。
色素A1と、アリルアミンとアリルスルホン酸ナトリウムが4:6のモル比で含まれる共重合体である酸性基及び塩基性基を有する高分子化合物C1(重量平均分子量:1700)とを30:70の重量比率で混ぜ、固形分濃度が16.5%の溶液になるようにイオン交換水を添加した。その後、80℃で90分攪拌し、異方性膜形成用組成物Aを調製した。
比較例1における色素と高分子化合物の混合比を30:70(重量比)としたままフィラーB1(ビックケミー・ジャパン社製、BYK−3600、平均一次粒子径40nm)を全固形分中に5%添加し、固形分濃度が16.5%の溶液になるようにイオン交換水を添加した。その後、80℃で90分攪拌し、異方性膜形成用組成物Bを調製した。
色素A1と、高分子化合物C1(重量平均分子量:1700)と、添加剤D1(トリグリシン)とを30:60:10の重量比率で混ぜ、固形分濃度が17.6%の溶液になるようにイオン交換水を添加した。その後、80℃で90分攪拌し、異方性膜形成用組成物Cを調製した。
比較例2における色素A1、高分子化合物C1、添加剤D1の混合比を30:60:10(重量比)としたままフィラーB2(日産化学工業社製、スノーテックスCM、平均一次粒子径20〜25nm)を全固形分中に1%添加し、固形分濃度が17.7%の溶液になるようにイオン交換水を添加した。その後、80℃で90分攪拌し、異方性膜形成用組成物Dを調製した。
フィラーB2の全固形分中に対する添加量を5%とし、固形分濃度を18.8%に変更したこと以外は実施例2と同様に、異方性膜形成用組成物Eを作製した。
フィラーB2の全固形分中に対する添加量を10%に変更したこと以外は実施例3と同様に、異方性膜形成用組成物Fを作製した。
フィラーB1をB3(日産化学工業社製、スノーテックスC、平均一次粒子径10〜15nm)で置き換え、固形分濃度を17.1%に変更したこと以外は実施例4と同様に、異方性膜形成用組成物Gを作製した。
フィラーB1をB4(日産化学工業社製、スノーテックス20L、平均一次粒子径40〜50nm)で置き換え、固形分濃度を16.9%に変更したこと以外は実施例2と同様に、異方性膜形成用組成物Hを作製した。
実施例1〜6、比較例1〜2で調製した異方性膜形成用組成物をそれぞれガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布後、風乾し、異方性膜を作製した。
得られた異方性膜の透過率及び偏光度は、グラムトムソン偏光子を備える分光光度計(大塚電子(株)社製、製品名「RETS−100」)を用いて測定した。異方性膜に直線偏光の測定光を入射し、測定により得られる400nm〜800nmの透過率波長依存性(Ty(λ)、Tz(λ)、Tm(λ))から、以下に示される計算により、測定素子の単体透過率(Tm)[%]及び偏光度(PE)を算出した。
Tm[%]=ΣV(λ)D65(λ)Tm(λ)/ΣV(λ)D65(λ)×100
Ty[%]=ΣV(λ)D65(λ)Ty(λ)/ΣV(λ)D65(λ)×100
Tz[%]=ΣV(λ)D65(λ)Tz(λ)/ΣV(λ)D65(λ)×100
PE ={(Ty−Tz)/(Ty+Tz)}1/2×100
Ts[%]=Tm[%]=(Ty+Tz)/2
Tm(λ):各波長における基材付き異方性膜の単体透過率
Tz(λ):各波長における基材付き異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する透過率
Ty(λ):各波長における基材付異方性膜の偏光軸(透過軸)方向の偏光に対する透過率
D65(λ):各波長における物体色の測定用光源強度(CIE、ISOの基準光強度)
V(λ):国際照明委員会、国際度量衡総会により定められる比視感度波長依存性
空気を参照とした単体透過率42.5%における偏光度を評価した。
実施例1〜6、比較例1〜2で調製した異方性膜形成用組成物をそれぞれガラス基板上にアプリケーターを用いて塗布後、風乾し、異方性膜を作製した。
常温で相対湿度71%雰囲気下に、得られた異方性膜を1日放置した。その後、PETフィルムを塗膜に荷重0.025kgf/mm2をかけて押し付け、剥離後のPETフィルムへの塗膜の付着性を観察し、下記基準にて評価した。
×:付着が多い場合
○:ほとんど付着していない場合
フィラーを添加していない比較例1と比較し、フィラーを添加した実施例1は、偏光度は0.5%低下したのみで、付着性を低減することができた。
また、フィラーを添加していない比較例2と比較し、フィラーを添加した実施例2〜6は、偏光度は0.1〜0.4%低下したのみで、付着性を低減することができた。
これらの結果から、フィラーを含有する本発明の異方性膜形成用組成物は、高い偏光度を維持したまま、付着性を低減可能であることが示された。
Claims (12)
- 平均一次粒子径1nm〜500nmのフィラーを含有していることを特徴とする異方性膜形成用組成物。
- 前記フィラーが金属酸化物である、請求項1に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記金属酸化物がシリカ及び/又はアルミナである、請求項2に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記フィラーを全固形分中に0.1〜50重量%含有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記組成物が、更に色素を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記組成物が、更に酸性基及び塩基性基を有する高分子化合物を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記塩基性基がアミノ基を含むものである、請求項6に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記酸性基がスルホ基を含むものである、請求項6又は7に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記酸性基の少なくとも一部が塩型の酸性基であり、前記塩型の酸性基の対カチオンが、リチウムイオン及び/又はナトリウムイオンである、請求項6〜8の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
- 前記酸性基及び/又は前記塩基性基が、芳香族性の部分構造を有しないものである、請求項6〜9の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物。
- 請求項1〜10の何れか1項に記載の異方性膜形成用組成物を用いて形成された、異方性膜。
- 請求項11に記載の異方性膜を含む、光学素子。
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