〔一実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
(駆動装置100の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動装置100の構成を示す平面図である。なお、以下の説明では、便宜上、図中X軸方向(各回転軸の軸方向)を上下方向としているが、駆動装置100の取り付け方向や駆動対象の動作等によって、必ずしも図中X軸方向が上下方向になるとは限らない。
図1に示す駆動装置100は、2つのモータ(第1のモータ101および第2のモータ151)を備えており、これら2つのモータの回転を、第1の駆動伝達系および第2の駆動伝達系によって出力ギヤ108に伝達し、当該出力ギヤ108を回転させる構成を有している。出力ギヤ108は、出力軸109に圧入されており、出力軸109とともに回転する。なお、本実施形態では、第1のモータ101および第2のモータ151にDCブラシレスモータを用いているが、本発明は、DCモータであっても転用可能である。
駆動装置100において、第1のモータ101の駆動軸101Aの回転は、第1の駆動伝達系によって減速され、出力ギヤ108へと伝わる。第1の駆動伝達系は、複数段のギヤおよび複数の回転軸(第1ピニオン軸102、第1ギヤ103、第2ピニオン軸104、第2ギヤ105、第3ピニオン軸106、および第3ギヤ107)を有して構成されている。第1の駆動伝達系は、第1のモータ101の駆動軸101Aとともに、ハウジング120内に収容されている。但し、第1のモータ101の駆動軸101Aは、ハウジング120の底面に取り付けられた第1のモータ101から、ハウジング120の内部へと挿入されている。
また、駆動装置100において、第2のモータ151の駆動軸151Aの回転は、第2の駆動伝達系によって減速され、出力ギヤ108へと伝わる。第2の駆動伝達系は、複数段のギヤおよび複数の回転軸(第1ピニオン軸152、第1ギヤ153、第2ピニオン軸154、第2ギヤ155、第3ピニオン軸156、および第3ギヤ157)を有して構成されている。第2の駆動伝達系は、第2のモータ151の駆動軸151Aとともに、ハウジング120内に収容されている。但し、第2のモータ151の駆動軸151Aは、ハウジング120の底面に取り付けられた第2のモータ151から、ハウジング120の内部へと挿入されている。
また、駆動装置100において、第1の駆動伝達系に対しては、当該第1の駆動伝達系の回転を制動するための、ブレーキ機構130(第1のブレーキ機構)が設けられている。また、駆動装置100において、第2の駆動伝達系に対しては、当該第2の駆動伝達系の回転を制動するための、ブレーキ機構180(第2のブレーキ機構)が設けられている。
ブレーキ機構130は、第1ピニオン軸102と同軸上(第1ピニオン軸102におけるハウジング120の上面から突出した部分)に設けられている。同様に、ブレーキ機構180は、第1ピニオン軸152と同軸上(第1ピニオン軸152におけるハウジング120の上面から突出した部分)に設けられている。このようにブレーキ機構130,180を配置したことにより、駆動装置100は、全体的なサイズが横幅方向(図中X軸方向およびY軸方向)に拡大してしまうことを抑制することが可能となっている。
このように構成された駆動装置100は、例えば、第1のモータ101の駆動軸101Aの回転方向と、第2のモータ151の駆動軸151Aの回転方向とを互いに異ならせることにより、出力ギヤ108のバックラッシュ(ギヤ間の隙間)を低減することができる。
また、駆動装置100は、例えば、第1のモータ101の駆動軸101Aの回転方向と、第2のモータ151の駆動軸151Aの回転方向とを互いに一致させることにより、出力ギヤ108を高トルク(2つのモータ101,151の出力トルクの合成トルク)で回転駆動することができる。
(第1の駆動伝達系の具体的な構成)
ここで、図2を参照して、第1の駆動伝達系の具体的な構成について説明する。なお、第2の駆動伝達系については、以下に説明する第1の駆動伝達系と同様の構成であるため、説明を省略する。
図2は、本発明の一実施形態に係る駆動装置100における第1の駆動伝達系の具体的な構成を示す断面図である。図2に示すように、駆動装置100は、ハウジング120内において、5つの回転軸(第1のモータ101が有する駆動軸101A、第1ピニオン軸102、第2ピニオン軸104、第3ピニオン軸106、および出力軸109)が、いずれも上下方向(図中Z軸方向)を軸方向として、互いに並行に並べて設けられている。駆動軸101Aは、第1のモータ101が有する回転軸であり、ハウジング120の底面に取り付けられた第1のモータ101から、ハウジング120の底面を貫通して、ハウジング120の内部へと挿入されている。第1ピニオン軸102、第2ピニオン軸104、第3ピニオン軸106、および出力軸109の各々は、ハウジング120内に固設された上下一対のベアリング110によって、両端が回転自在に支持されている。これにより、各回転軸間は、所定の距離精度が保たれている。
また、ハウジング120内において、4つのギヤ(第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ107、および出力ギヤ108)が配置されている。第1ギヤ103は、第1ピニオン軸102に圧入されており、駆動軸101Aに形成されているギヤと噛み合う。第2ギヤ105は、第2ピニオン軸104に圧入されており、第1ピニオン軸102に形成されているギヤと噛み合う。第3ギヤ107は、第3ピニオン軸106圧入されており、第2ピニオン軸104に形成されているギヤと噛み合う。出力ギヤ108は、出力軸109に圧入されており、第3ピニオン軸106に形成されているギヤと噛み合う。
このように構成された駆動装置100は、第1のモータ101が、図6で後述する制御基板210の制御によって駆動されると、第1のモータ101の駆動軸101Aが回転する。駆動軸101Aは、そのギヤ部分において第1ギヤ103と噛み合いつつ、回転することによって、第1ギヤ103に回転力を伝える。
第1ギヤ103は、第1ピニオン軸102とともに回転する。第1ピニオン軸102は、そのギヤ部分において第2ギヤ105と噛み合いつつ、回転することによって、第2ギヤ105に回転力を伝える。
第2ギヤ105は、第2ピニオン軸104とともに回転する、第2ピニオン軸104は、そのギヤ部分において第3ギヤ107と噛み合いつつ回転することによって、第3ギヤ107に回転力を伝える。
第3ギヤ107は、第3ピニオン軸106とともに回転する、第3ピニオン軸106は、そのギヤ部分において出力ギヤ108と噛み合いつつ回転することによって、出力ギヤ108に回転力を伝える。
出力ギヤ108は、出力軸109とともに回転する。出力軸109の先端側(図中Z軸正側)には、その一部がハウジング120の上面から露出する円盤状の出力フランジ111が装着されている。出力フランジ111は、出力軸109とともに回転する。出力フランジ111は、駆動装置100から出力される回転力を、当該回転力を利用して動作する装置(例えば、ロボットアーム等)に伝えるための部材である。出力フランジ111は、出力ギヤ108と一体的に形成されており、これによって、高い剛性が得られている。
出力フランジ111の回転速度は、第1のモータ101の回転速度に対し、4つのギヤ(第1ギヤ103、第2ギヤ105、第3ギヤ107、および出力ギヤ108)によって減速されたものとなる。したがって、これら4つのギヤの歯数を調整して、減速比を調整することにより、出力フランジ111の回転速度を、所望の回転速度まで減速させることができる。なお、図1および図2に示す例では、各ギヤが前段の回転軸と噛み合う構成を採用している関係上、前段のギヤよりも、後段のギヤの直径を大きく(すなわち、歯数を多く)している。すなわち、複数段のギヤの大小関係は、以下のとおりである。
第1のモータ101の駆動軸101Aに形成されているギヤ<第1ギヤ103<第2ギヤ105<第3ギヤ107<出力ギヤ108
このように、第1の駆動伝達系は、前段のギヤと後段のギヤとが互いに重なりあう構成を採用したことにより、全体的なサイズが横幅方向(図中X軸方向およびY軸方向)に拡大してしまうことを抑制することが可能となっている。
出力フランジ111の回転力は、当該回転力を利用して動作する装置に伝えられる。例えば、出力フランジ111の回転力を、ロボットアームの回転に使用する場合、出力フランジ111を、ロボットアームの関節の回転軸と接続することで、ロボットアームを回転させることが可能となる。この際、出力フランジ111の表面から突出したピン111Aを、ロボットアームの関節の回転軸にはめ込むことで、出力フランジ111の回転方向の位置合わせおよび滑り止めが可能となる。
出力フランジ111は、ハウジング120内において、出力軸109とともに、軸方向(図中Z軸方向)に僅かに移動可能に設けられている。加えて、出力フランジ111は、出力軸109とともに、弾性部材112(例えば、皿ばね等)によって、出力フランジ111の表面を取付対象に押し付ける方向(図中Z軸正方向)に付勢されている。これにより、出力フランジ111は、取付対象の表面に対して、より確実に面接触することが可能となっている。
制御基板210は、第1のモータ101の内部に設けられたエンコーダ101B(回転角検知センサ)によって検知された第1のモータ101の回転角から、ロボットアームの動作角度を算出することが可能である。すなわち、制御基板210は、エンコーダ101Bの出力値に基づいて、第1のモータ101の回転角を制御することにより、ロボットアームの動作角度を、所望の角度とすることができる。
なお、ロボットアームの動作角度をより正確に検出するために、図2に示すように、制御基板210の裏面における出力軸109の端部と対向する位置に、出力フランジ111(出力軸109)の回転角を検出する角度センサ210Bを設けるようにしてもよい。この角度センサ210Bとして、例えば、磁気式エンコーダを用いる場合、出力軸109の端部に円形の永久磁石を埋め込み、角度センサ210BのホールICによって、出力軸109の回転に伴う永久磁石のS極とN極との切り替わりを検知することで、出力フランジ111(出力軸109)の回転角を検知することが可能となる。制御基板210は、角度センサ210Bによって検知された出力フランジ111の回転角に基づいて、第1のモータ101および第2のモータ151を制御することにより、ロボットアームの動作角度を、より正確に所望の角度とすることができる。
(ブレーキ機構130)
図3は、図2に示すブレーキ機構130の拡大断面図である。ブレーキ機構130は、第1の駆動伝達系の回転を制動する。これにより、例えば、第1のモータ101の回転を停止させたときに、ブレーキ機構130によって第1の駆動伝達系の回転を制動することで、駆動装置100による駆動対象(例えば、ロボットアーム)が、重力等の影響によって自動的に降下してしまうことを防止することができる。
図1および図2に示すように、ブレーキ機構130は、第1ピニオン軸102と同軸上に設けられている。具体的には、ブレーキ機構130は、第1ピニオン軸102における、ハウジング120の上面から突出した部分に設けられている。
図3に示すように、ブレーキ機構130は、出力フランジ111と同一面(ハウジング120の上面)上に設けられている。ブレーキ機構130は、入力軸(駆動軸101A)側に設けられており、出力フランジ111は、出力軸(出力軸109)側に設けられている。これにより、ハウジング120の上面のスペースが有効に利用されており、駆動装置100の全体的なサイズの大型化を抑制することが可能となっている。
ブレーキ機構130としては、第1ピニオン軸102の回転を制動するための、公知の様々なブレーキ機構を採用することが可能であるが、例えば、本実施形態では、図3に示す構成を採用している。
図3に示すように、ブレーキ機構130は、ハウジング131、ロータハブ132、およびブレーキ本体133を有して構成されている。
第1ピニオン軸102は、その一部がハウジング120の上面から、ハウジング131の内部へと突出している。ハウジング131の内部において、第1ピニオン軸102の先端には、ロータハブ132が装着されている。ロータハブ132は、ピンにより力を伝達し、抜け止めのネジによって第1ピニオン軸102に固定されている。これにより、ロータハブ132は、第1ピニオン軸102とともに回転する。
ロータハブ132は、ブレーキ本体133の内部の摩擦板と噛み合うように正方形になっている。これにより、第1ピニオン軸102が回転すると、その回転はロータハブ132を介して、ブレーキ本体133の内部の摩擦板に伝わり、これにより、当該摩擦板が回転するようになっている。
ブレーキ本体133は、摩擦板、パッド、ばね、ソレノイドを有する。ブレーキの使用時には、パッドが、ばねの力によって、摩擦板に押し付けられる。これにより、パッドと摩擦板との間の摩擦力により、第1ピニオン軸102の回転が制動される。ソレノイドは、ブレーキの未使用時には、通電されることによって、パッドが摩擦板に当接しないように、パッドを吸引する。すなわち、ソレノイドは、ブレーキの未使用時には、常に所定の電流が流れるため、発熱源となる。
ハウジング131には、ブレーキ本体133の発熱を逃がすための、ヒートシングが設けられてもよい。これにより、ブレーキ本体133の発熱が第1のモータ101に伝わり難くし、第1のモータ101が温度上昇により異常停止してしまうことを抑制することができる。他の構成例として、例えば、ハウジング131を駆動対象(例えば、ロボットアーム等)に接触させて、当該駆動対象を介して、ハウジング131の発熱を逃がすようにしてもよい。
なお、ブレーキ機構130は、図3に示す構成以外の構成であってもよい。例えば、ロータハブ132の代わりに、円板に穴が開いた形状のストップ板を取り付け、その穴にソレノイドの軸を差し込むことで、第1ピニオン軸102の回転を制動する構成を採用してもよい。この場合、摩擦板にパッドを押し付ける構成よりも、小さな力でブレーキをかけることが可能となり、上述したブレーキ本体133の発熱の観点からも、有利な方法と言える。
(制御基板210の構成)
本実施形態の駆動装置100は、制御基板210をさらに備える。制御基板210は、第1のモータ101および第2のモータ151の駆動制御を行う装置である。制御基板210は、コネクタ210Aを介して、上位コントローラから位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtが入力される。そして、制御基板210は、コネクタ210Aを介して、第1のモータ101および第2のモータ151を駆動するための制御信号を、第1のモータ101および第2のモータ151へ出力する。図2に示すように、制御基板210は、ハウジング120の底面、且つ、出力軸109と重なる位置に設けられている。すなわち、図2に示すように、ハウジング120の底面には、第1のモータ101、第2のモータ151、および制御基板210が設けられており、第1のモータ101および第2のモータ151は、入力側(駆動軸101Aおよび駆動軸151A側)に配置されており、制御基板210は、出力側(出力軸109側)に配置されている。
(駆動伝達系の配置)
図4および図5は、本発明の一実施形態に係る駆動装置100における各駆動伝達系の配置を説明するための図である。
図4の駆動装置100と図5の駆動装置100とでは、ハウジング120の形状が異なり、その他の点では同一である。図5の駆動装置100では、第1のモータ101にフランジ101Cが設けられており、第2のモータ151にフランジ151Cが設けられている。これに応じて、図5の駆動装置100では、ハウジング120の外形状の一部が、フランジ101Cおよびフランジ151Cの外形状に沿うものとなるように、拡大されている。
図4および図5に示すように、駆動装置100においては、第1の駆動伝達系のギヤ列と、第2の駆動伝達系のギヤ列とは、両者の間に互いに接触しない程度の間隔を有して、概ね同方向に(比較的狭角なV字状に)延伸している。
特に、駆動装置100においては、出力ギヤ108の軸中心Oと、第1の駆動伝達系の最終段の第3ギヤ107の軸中心A1とを通る直線を直線L1(第1の直線)とし、出力ギヤ108の軸中心Oと、第2の駆動伝達系の最終段の第3ギヤ157の軸中心A2とを通る直線を直線L2(第2の直線)とした場合において、直線L1と直線L2とに挟まれた領域内に、第1のモータ101の軸中心、第2のモータ151の軸中心、第1の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心、第2の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心、ブレーキ機構130の軸中心、およびブレーキ機構180の軸中心が、全て収まっている。
加えて、出力ギヤ108の外形と、第1のモータ101の外形との接線を接線L3とし、出力ギヤ108の外形と、第2のモータ151の外形との接線を接線L4とした場合において、接線L3と接線L4とに挟まれた領域内に、第1のモータ101、第2のモータ151、第1の駆動伝達系の複数段のギヤ、第2の駆動伝達系の複数段のギヤ、ブレーキ機構130、ブレーキ機構180が、全て収まっている。
このように第1の駆動伝達系および第2の駆動伝達系を配置したことにより、駆動装置100は、ハウジング120の横幅方向(図中Y軸方向)のサイズを小型化することが可能となっており、ハウジング120の形状を、図4に示す形状または図5に示す形状(但し、これらに限らない)とすることができる。
また、第1の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心、および、第2の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心を、直線L1と直線L2とに挟まれた領域内に配置したことで、駆動装置100全体の重心を、駆動装置100の図中O点からX軸方向に離すことができる。これを実現するため、駆動装置100では、第1の駆動伝達系の複数段のギヤおよび第2の駆動伝達系の複数段のギヤを、直線状ではなく、図4および図5に示すように、駆動装置100の横幅方向(図中Y軸方向)における中心に向かって折れ曲がった線形状に配置されている。これにより、アーム全体の重心を腕の根元に近づけることが可能である。また場合によっては、カウンターウエイトの効果でアーム自重によって作用する出力軸負荷トルクを低減することができる。
なお、ハウジング120には、駆動装置100を駆動対象に固定するための固定ネジ711を貫通させるための、3つのネジ穴120Bが形成されている。特に、ハウジング120の中央において、第1の駆動伝達系と第2の駆動伝達系との間に、1つのネジ穴120Bが形成されている。これにより、この位置に変えてネジ穴120Bをハウジング120の縁部に形成した場合と比較して、ハウジング120の横幅方向(図中Y軸方向)のサイズが増加してしまうことを防いでいる。
(制御基板210の構成)
図6は、本発明の一実施形態に係る制御基板210の構成を示す図である。図6に示すように、制御基板210は、位置・速度制御部213、ドライバ223、およびドライバ224を備えている。制御基板210は全ての機能を回路で実行する他、それらの機能の一部をソフトウェア(CPU)によって実行するものであっても良い。また、制御基板210は、複数の回路又は複数のソフトウェアによって実行されるものであっても良い。
ここで、図6に示すように、第1のモータ101は、エンコーダ101Bを有している。具体的には、エンコーダ101Bは、第1のモータ101の駆動軸101Aに設けられており、第1のモータ101のエンコーダ信号enc1を出力する。エンコーダ信号enc1は、制御基板210の位置・速度制御部213に供給され、位置・速度制御部213によって第1のモータ101の位置および速度のPID(Proportional Integral Differential)制御に用いられる。
また、図6に示すように、第2のモータ151は、エンコーダ151Bを有している。具体的には、エンコーダ151Bは、第2のモータ151の駆動軸151Aに設けられており、第2のモータ151のエンコーダ信号enc2を出力する。エンコーダ信号enc2は、制御基板210の位置・速度制御部213に供給され、位置・速度制御部213によって第2のモータ151の位置および速度のPID制御に用いられる。
位置・速度制御部213は、上位コントローラから入力される位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、エンコーダ101Bから出力される第1のモータ101のエンコード信号enc1とに基づき、第1のモータ101のPID制御を行う。その結果、位置・速度制御部213は、第1のモータ101の駆動軸101Aの位置および速度を、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtに一致させるための、第1のモータ101の電圧指令値drvoutをドライバ223へ出力する。ドライバ223は、入力された電圧指令値drvoutに応じて、第1のモータ101の駆動信号(DCモータ、DCブラシレスモータ等、モータ形態に合わせた駆動信号)を生成し、当該駆動信号を第1のモータ101へ出力する。これにより、第1のモータ101の駆動軸101Aが回転することとなる。
また、位置・速度制御部213は、上位コントローラから入力される位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、エンコーダ151Bから出力される第2のモータ151のエンコード信号enc2とに基づき、第2のモータ151のPID制御を行う。その結果、位置・速度制御部213は、第2のモータ151の駆動軸151Aの位置および速度を、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtに一致させるための、第2のモータ151の電圧指令値drvoutをドライバ224へ出力する。ドライバ224は、入力された電圧指令値drvoutに応じて、第2のモータ151の駆動信号(DCモータ、DCブラシレスモータ等、モータ形態に合わせた駆動信号)を生成し、当該駆動信号を第2のモータ151へ出力する。これにより、第2のモータ151の駆動軸151Aが回転することとなる。
ここで、位置・速度制御部213は、第1のモータ101および第2のモータ151の各々の電圧指令値を制御するオフセット制御を行うことで、これら2つのモータ101,151と出力ギヤ108との間のバックラッシュを解消しつつ、これら2つのモータ101,151を駆動することができる。すなわち、位置・速度制御部213は、電圧制御によりバックラッシュを解消させることができるため、従来の電流制御によるバックラッシュを解消させる方法と比較して、低コストでバックラッシュを解消することができる。以下、図7〜図10を参照して、位置・速度制御部213によるオフセット制御について説明する。
(オフセット制御の具体例)
図7は、本発明の一実施形態に係る位置・速度制御部213によるオフセット制御の具体例を表すグラフである。図7のグラフにおいて、横軸は、オフセット制御による制御前の入力電圧指令値drvinを表しており、縦軸は、オフセット制御による制御後の出力電圧指令値drvoutを表している。また、図7のグラフにおいて、実線は、第1のモータ101の電圧指令値を表しており、点線は、第2のモータ151の電圧指令値を表している。
図7の例において、まず、位置・速度制御部213は、図中Aに示すように、第1のモータ101に対して、出力ギヤ108を駆動方向とは逆方向に駆動させるオフセット電圧offsetが加わるように、第1のモータ101の電圧指令値(オフセット電圧指令値)を出力する。その状態で、位置・速度制御部213は、第2のモータ151に対して、オフセット電圧offsetの絶対値と同値の電圧が加わりつつ、出力ギヤ108を駆動方向に駆動させる駆動電圧が徐々に加わるように、第2のモータ151の電圧指令値を制御する。これにより、出力ギヤ108に対し、2つのモータ101,151の双方から互いに逆方向の駆動力が加えられるため、出力ギヤ108と2つのモータ101,151との間のバックラッシュが解消されることとなる。なお、オフセット電圧offsetは、ギヤ間の隙間を解消するためのものであり、外部負荷がかからないため、駆動電圧の5%程度で十分である。
次に、位置・速度制御部213は、図中Bに示すように、駆動電圧drvlimitにおいて、第2のモータ151の出力が限界値に達すると、第2のモータ151に駆動電圧drvlimitが印加された状態を維持するように、第2のモータ151の電圧指令値を制御する。その状態で、位置・速度制御部213は、第1のモータ101に対して、出力ギヤ108を駆動方向に駆動させる駆動電圧が徐々に加わるように、第1のモータ101の電圧指令値を制御する。これにより、出力ギヤ108に対し、2つのモータ101,151の双方から互いに同方向の駆動力が加えられるため、出力ギヤ108の駆動トルクを高めることができる。このとき、図中Aで第2のモータ151の駆動電圧を上昇させるときと同じ上昇率で、第1のモータ101の駆動電圧を上昇させるようにするとよい。
そして、位置・速度制御部213は、図中Cに示すように、駆動電圧drvlimitにおいて、2つのモータ101,151の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,151の双方に対して、駆動電圧drvlimitが印加された状態を維持するように、これら2つのモータ101,151の各々の電圧指令値を制御する。
なお、図7の例において、図中A'〜C'は、図中A〜Cと逆方向に各モータを駆動する例を表しており、図中A〜Cと対称的である。
(位置・速度制御部213の機能構成)
図8は、本発明の一実施形態に係る位置・速度制御部213の機能構成を示す図である。
図8に示すように、位置・速度制御部213は、第1選択部401、第2選択部402、MMC(マルチモータ制御部)403、およびMMC404を備えている。
第1選択部401および第2選択部402は、それぞれ、エンコーダ101Bから出力された第1のモータ101のエンコーダ信号enc1、および、エンコーダ151Bから出力された第2のモータ151のエンコーダ信号enc2が入力される。そして、第1選択部401および第2選択部402は、それぞれ、エンコーダ信号enc1、エンコーダ信号enc2、または、エンコーダ信号enc1とエンコーダenc2との平均値を選択し、選択された信号に応じた、位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetを出力する。
MMC403は、上位コントローラから、速度目標値vtgtおよび位置目標値xtgtが入力される。また、MMC403は、第1選択部401から出力された位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetが入力される。そして、MMC403は、入力された各信号に基づいてPID制御行うことによって入力電圧指令値drvinを生成し、図7に示したように、入力電圧指令値drvinから出力電圧指令値drvoutへの変換を行い、第1のモータ101のための出力電圧指令値drvoutをドライバ223へ出力する。また、MMC403は、生成された入力電圧指令値drvinを、制御電圧contout2として、MMC404に出力する。また、MMC403は、入力電圧指令値drvinの代わりに、MMC404から出力された制御電圧contout2を用いて、出力電圧指令値drvoutへの変換を行うことができる。
MMC404は、上位コントローラから、速度目標値vtgtおよび位置目標値xtgtが入力される。また、MMC404は、第2選択部402から出力された位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetが入力される。そして、MMC404は、入力された各信号に基づいてPID制御行うことによって入力電圧指令値drvinを生成し、図7に示したように、入力電圧指令値drvinから出力電圧指令値drvoutへの変換を行い、第2のモータ151のための出力電圧指令値drvoutをドライバ224へ出力する。また、MMC404は、生成された入力電圧指令値drvinを、制御電圧contout1として、MMC403に出力する。また、MMC404は、入力電圧指令値drvinの代わりに、MMC403から出力された制御電圧contout1を用いて、出力電圧指令値drvoutへの変換を行うことができる。
(MMC403の機能構成)
図9は、本発明の一実施形態に係る位置・速度制御部213が備えるMMC403の機能構成を示す図である。なお、MMC404の機能構成は、MMC403の機能構成と同様であるため、図示および説明を省略する。
図9に示すように、MMC403は、PIDコントローラ411、MUX(マルチプレクサ)412、オフセットコンバータ413を備えている。
PIDコントローラ411は、速度目標値vtgt、位置目標値xtgt、位置検知信号xdet、速度検知信号vdetが入力される。そして、PIDコントローラ411は、これら各信号に基づいてPID制御行うことによって入力電圧指令値drvinを生成し、当該入力電圧指令値drvinをMUX412へ出力する。
MUX412は、外部入力信号pwm_exgに基づいて、PIDコントローラ411から出力された入力電圧指令値drvin、または、MMC404から出力された制御電圧contout2を選択して出力する。
オフセットコンバータ413は、図5に示したように、入力電圧指令値drvin(または制御電圧contout2)から出力電圧指令値drvoutへの変換を行い、当該出力電圧指令値drvoutをドライバ223へ出力する。
なお、オフセットコンバータ413には、各種パラメータとして、drvlimit、offset、offset_sel、offset_onが入力される。drvlimitは、モータの出力が限界値に達するときの電圧である。offsetは、駆動電圧とは反対側にかけるオフセット電圧値である。offset_selは、正側に駆動電圧を印加するか、負側に駆動電圧を印加するかの選択値である。offset_onは、オフセット制御を行うか否かの選択値である。これらのパラメータは、例えば、制御基板210が備えるメモリ等に予め格納されている。
(第1選択部401の機能構成)
図10は、本発明の一実施形態に係る位置・速度制御部213が備える第1選択部401の機能構成を示す図である。なお、第2選択部402の機能構成は、第1選択部401の機能構成と同様であるため、図示および説明を省略する。
図10に示すように、第1選択部401は、検出部421、検出部422、MUX423、およびMUX424を備えている。
検出部421は、第1のモータ101のエンコーダ101Bから出力されたエンコーダ信号enc1が入力される。このエンコーダ信号enc1は、互いに位相差(例えば、90度)をもつエンコーダ信号enc1aおよびエンコーダ信号enc1bを含んでいる。そして、検出部421は、エンコーダ信号enc1aおよびエンコーダ信号enc1bに基づいて、位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetを生成して、これら2つの信号をMUX423およびMUX424の各々に出力する。
検出部422は、第2のモータ151のエンコーダ151Bから出力されたエンコーダ信号enc2が入力される。このエンコーダ信号enc2は、互いに位相差(例えば、90度)をもつエンコーダ信号enc2aおよびエンコーダ信号enc2bを含んでいる。そして、検出部422は、エンコーダ信号enc2aおよびエンコーダ信号enc2bに基づいて、位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetを生成して、これら2つの信号をMUX423およびMUX424の各々に出力する。
MUX423およびMUX424は、それぞれ、エンコーダ信号enc1、エンコーダ信号enc2、または、エンコーダ信号enc1とエンコーダenc2との平均値を選択し、選択された信号に応じた、位置検知信号xdetおよび速度検知信号vdetを出力する。この際、位置検知信号xdetの選択は、外部入力信号xdetselに基づいて行われる。また、速度検知信号vdetの選択は、外部入力信号vdetselに基づいて行われる。
以上説明したように、本実施形態の駆動装置100によれば、出力ギヤ108の軸中心Oと、第1の駆動伝達系の第3ギヤ107の軸中心A1とを通る直線を直線L1とし、出力ギヤ108の軸中心Oと、第2の駆動伝達系の第3ギヤ157の軸中心A2とを通る直線を直線L2とした場合において、直線L1と直線L2とに挟まれた領域内に、第1のモータ101の軸中心、第2のモータ151の軸中心、第1の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心、第2の駆動伝達系の複数段のギヤの各々の軸中心、ブレーキ機構130の軸中心、およびブレーキ機構180の軸中心が、全て収まっている。これにより、本実施形態の駆動装置100によれば、ハウジング120の横幅方向(図中Y軸方向)のサイズを小型化することが可能となる。すなわち、本実施形態の駆動装置100によれば、当該駆動装置100の全体的なサイズの大型化を抑制できるように、各駆動伝達系を設けることができる。
〔実施例〕
図11は、本発明の実施例に係るロボット700の一部概略構成を示す図である。図11にその一部(ロボットアームの関節部分)を示すロボット700は、産業用ロボット、家庭用ロボット等、ロボットアームを備える様々な用途のロボットが対象となり得る。図11に示すように、ロボット700は、支持体710、駆動装置100、およびアーム本体730を備えている。
アーム本体730は、「駆動対象」の一例であり、その末端部分に有する回転軸710Aにおいて、支持体710によって回転自在に軸支されている。アーム本体730は、駆動装置100から出力される回転力によって、回転軸710Aを中心として回転可能である。
駆動装置100は、実施形態で説明したとおり、第1のモータ101および第2のモータ151の回転を、第1の減速機構および第2の減速機構によって出力フランジ111に伝達し、出力フランジ111を回転させる装置である。図11に示すように、駆動装置100は、出力フランジ111の回転軸が、アーム本体730の回転軸710Aと一致するように、支持体710の内部に配置され、複数の固定ネジ711によって、支持体710の内側に固定される。このとき、駆動装置100は、ハウジング120の表面から支持体710の方向(図中Z軸正方向)に向かって突出したピン113が、支持体710の内側に形成された凹み部に嵌め込まれる。これにより、駆動装置100本体の位置決めを容易に行うことができるようになっており、駆動装置100の着脱作業の容易性を向上することができる。
出力フランジ111は、複数の固定ネジ712によって、アーム本体730に固定される。これにより、出力フランジ111が回転すると、当該出力フランジ111に固定されたアーム本体730が回転することとなる。アーム本体730の回転方向および回転量(回転角度)の制御は、上位コントローラから第1のモータ101および第2のモータ151の回転方向および回転量(回転角度)を制御することによって、実現される。
出力フランジ111の先端には、インロー111Bが取り付けられており、当該インロー111Bがアーム本体730の凹み部に嵌め込まれることにより、出力フランジ111の中心が位置決めされる。また、出力フランジ111の表面から突出したピン111Aを、アーム本体730の他の凹み部にはめ込むことで、出力フランジ111の回転方向の位置決めおよび滑り止めがなされる。
このように構成された本実施例のロボット700は、実施形態の駆動装置100を用いたことにより、第1のモータ101および第2のモータ151の回転を減速および制動可能としつつ、駆動装置100の全体サイズの大型化を抑制することができるため、例えば、支持体710の比較的狭いスペース内に駆動装置100を設置することができる等、駆動装置100の設置位置に関する柔軟性を高めることが可能となる。
(駆動装置100の具体的な取り付け構成例)
図12は、本発明の実施例に係るロボット700における、駆動装置100の具体的な取り付け構成例を示す図である。図12では、支持体710に固定された駆動装置100を、ハウジング120の底面側から表している。
図12に示すように、駆動装置100は、ロボット700が備える支持体710の内側に配置され、3本の固定ネジ711によって、支持体710の内側に固定される。各固定ネジ711は、ハウジング120に形成されたネジ穴120Bを貫通して、支持体710の内側にネジ止めされる。このように、ハウジング120の底面側から、駆動装置100をネジ止め固定することにより、出力フランジ111に取り付けられるアーム本体730のレイアウトに影響されず、固定ネジ711に容易にアクセスできるため、メンテナンス性を向上させることができる。
図4および図5に示したように、ハウジング120には、3つのネジ穴120Bが形成されており、そのうちの一つは、ハウジング120の中央において、第1の駆動伝達系と第2の駆動伝達系との間に形成されている。これにより、ネジ穴120Bをハウジング120の縁部に形成した場合と比較して、ハウジング120の横幅方向(図中Y軸方向)のサイズが増加してしまうことを防止することができる。
また、図12に示すように、制御基板210は、ハウジング120の底面、且つ、出力軸109と重なる位置に、ハウジング120の外周部からはみ出すことなく設けられている。すなわち、図12に示すように、ハウジング120の同一面上に、第1のモータ101、第2のモータ151、および制御基板210が設けられており、第1のモータ101および第2のモータ151は、入力側(駆動軸101Aおよび駆動軸151A側)に配置されており、制御基板210は、出力側(出力軸109側)に配置されている。このような位置(空きスペース)に制御基板210を配置したことにより、制御基板210を設置するための専用のスペースを、駆動装置100に別途形成する必要がなくなるため、駆動装置100のサイズが拡大してしまうことを防止することができる。
また、図12に示すように、ハウジング120における制御基板210の周辺の外周部には、部分的に内側に向かって凹んだ凹部120Cが形成されている。この凹部120Cには、支持体710の外周部の対向する位置に形成されている凸部710B(リブの肉厚部分)を逃がすことができるようになっており、すなわち、支持体710のサイズを拡大することなく、ハウジング120と支持体710との干渉を防ぐことができるようになっている。
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について詳述したが、本発明はこれらの実施形態および実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
例えば、上記実施例では、本発明の駆動装置をロボットアームの駆動に適用する例を説明したが、本発明の駆動装置は、当該駆動装置から出力される回転力を利用して動作するものであれば、如何なる駆動対象にも適用することが可能である。
一例として、本発明は、MFP(MultiFunction Peripheral)等の画像形成装置において、各種ローラ(例えば、給紙ローラ、紙搬送ローラ等)を駆動する構成に適用することができる。また、他の一例として、本発明は、シート状のプリプレグや、紙幣等を搬送する搬送装置において、搬送ローラを駆動する構成に適用することができる。その他、本発明は、例えば自動車やロボットやアミューズメント機器等において、2つのモータによって駆動される回転軸の回転運動により、動力を得ることを目的とする構成に適用することができる。
また、上記実施形態において、制御基板210の配置を、例えば図13に示すように変形してもよい。図13は、本発明の一実施形態に係る駆動装置100における制御基板210の配置の変形例を示す図である。図13に示す例では、制御基板210が駆動装置100の本体の外部に設けられている。この変更に伴い、制御基板210が設けられていた位置には、センサ基板170が設けられている。そして、角度センサ210Bは、センサ基板170の出力軸109の端部と対向する位置に設けられている。角度センサ210Bの検出信号は、センサ基板170に設けられているコネクタ170Aを介して、制御基板210へ出力される。