JP2018203971A - 芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法、並びに芳香族ジヒドロキシ化合物 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法、並びに芳香族ジヒドロキシ化合物 Download PDF

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Norikazu Konishi
範和 小西
敏樹 門田
Toshiki Kadota
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Abstract

【課題】高い流動性、薄肉成形性を有し、さらには色相、透明性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、アルコールに溶解した際に、該溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である化合物を少なくとも1種類含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物と、を重合するステップ、を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。(式(1)中、R1は炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R2、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂に関する。詳しくは、薄肉成形性、透明性、衝撃強度、耐折り曲げ性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法に関する。
パーソナルコンピュータ、タブレットPC、スマートフォン等にて使用されるディスプレイデバイスには、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一・効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
上記の様な導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近ではディスプレイの薄肉化に伴い導光板の厚みも薄くなっているためPMMAでは材料の機械強度が不十分となり、比較的高い機械強度を有するポリカーボネート樹脂に置き換えられつつある。
従来のポリカーボネート樹脂は、PMMAに比べて溶融流動性が低く、成形加工性が著しく悪いという欠点を有しているため、上述のような成形体の原料として適用するために、成形性改善の検討がなされてきた。
例えば、特許文献1には、導光板用材料向けのポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が10000〜15000の芳香族ポリカーボネート樹脂が、特許文献2には、導光板用材料向けのポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量11000〜22000の芳香族ポリカーボネート樹脂がそれぞれ記載されている。これらの手法は、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げ、溶融流動性を向上させることによりポリカーボネート樹脂の成形性を向上させる手法であるが、通常、高分子材料は分子量の低下に伴い、当然機械強度の低下する傾向にある。よって、上述のようなポリカーボネート樹脂においても同様に機械強度が低下し、成形加工性及び製品としての実用強度は十分ではなかった。
これに対し、従来のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に、更に新たなジヒドロキシ化合物をモノマーとして加えて成形性を改善する方法も提案されている。例えば、特許文献3には、ビスフェノールAとビスフェノールEとからなる流動性が改良されたポリカーボネート樹脂が記載されており、特許文献4〜5においても、特定のビスフェノール化合物を用いて流動性を改良したポリカーボネート樹脂が記載されている。また、可塑剤などの流動改質剤を添加することや、オリゴマー、ABS等の流動性が高い樹脂を添加することも知られている。しかしながら、このようなポリカーボネート樹脂もまた、耐熱性が極端に低いため実使用に耐えられないといった課題や、導光板を得るのに足る流動性や耐衝撃性が不十分であるため薄肉成形体が得られないといった課題を有していた。
特開2010−37380号公報 特開2013−139097号公報 特開平5−1144号公報 特開平6−128371号公報 特開昭59−131623号公報
上述のような導光板用途においては、一般のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂における粘度平均分子量10000〜15000品相当の流動性が必要であり、近年では特に粘度平均分子量10000〜13000品相当の高い流動性が求められる。しかしながら、上述の特許文献1〜5に記載のポリカーボネート樹脂では、上述の流動性領域にした場合の、衝撃強度が著しく低いために、製品強度が保てないのみならず、成形時の段階においても割れが発生するという課題を有していた。
本発明は、上記課題に鑑み、上述のような高い流動性、薄肉成形性を有し、さらには色相、透明性、衝撃強度に優れた、流動改質剤としても使用可能な芳香族ポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定波長の吸収が少ない特定の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂が、薄肉成形体を成形する際に必要な高い流動性を有すると共に、高い機械強度をも有し、且つ、色相、透明性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]〜[9]に存する。
[1]下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、アルコールに溶解した際に、該溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である化合物を少なくとも1種類含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物と、を重合するステップ、を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
Figure 2018203971
(式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
[2]前記重合ステップは、前記ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とをアルカリ触媒存在下で重合させる、[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[3]前記重合ステップは、エステル交換法により行われる、[1]または[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[4]前記重合ステップにおいて、エステル交換反応後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を実質的に固化することなくエステル交換触媒を失活させる、[1]から[3]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5]前記重合ステップにおいて、エステル交換触媒に対して0.5当量以上、50当量以下、失活剤を添加する、[4]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6]前記芳香族ジヒドロキシ化合物をアルコールに溶解した溶解液の、波長760nmの吸光度が0.0140以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の製造方法により得られるポリカーボネート樹
脂。
[8]芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とに由来する下記式(2)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、
前記芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、アルコールに溶解した際の溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である、芳香族ポリカーボネート樹脂。
Figure 2018203971
(式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
[9]下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、該化合物をアルコールに溶解した際に、該溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である、芳香族ジヒドロキシ化合物。
Figure 2018203971
(式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂によれば、薄肉成形性、衝撃強度に優れ、且つ色相、透明性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂材料を提供することができる。このような芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂ガラス窓のような大型成形品を得ようとする場合や導光板のような薄肉成形体を得ようとした場合においても、強度及び色相、透明性が共に優れる成形体を生産性高く得ることができ産業上極めて利用価値が高い。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式(2)で表されるカーボネート構造単位を含むことを特徴とする。
Figure 2018203971
式(2)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
このような特定のカーボネート構造を有することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性と衝撃強度や折り曲げ強度、繰り返し疲労強度といった強度のバランスが顕著に良好なものになる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂において、上述のカーボネート構造単位のRは、炭素数が増加するにつれ、溶融時の流動性が向上する。これは、本構造の様なアルキル鎖を有することで、溶融時の高分子鎖の絡まりを適度に阻害し、ポリマー同士の摩擦を低減することにより高い流動性を発現することができるためである。
アルキル鎖を更に延長した場合、高い流動性は発現するものの、耐熱性や機械強度が著しく低下し、また長鎖脂肪鎖の結晶化性が上がり本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の透明性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。そのため、上述のカーボネート構造単位のRの炭素数は、1以上24以下が好ましく、6以上18以下であることが更に好ましい。
上述の炭素数1〜24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−イコシル基、n−ヘンイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、n−テトラコシル基などが挙げられるが、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基が好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性と耐衝撃性をより効果的に高めることができる。
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペン
チル基、メチルヘキシル基、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
ジメチルプロピル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基、トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
ブチルプロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。
なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
式(2)で表されるカーボネート構造単位中のR、及びRは、炭素数1〜15の一価炭化水素基を表す。炭素数1〜15の一価炭化水素基を有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性や強度、硬度、耐薬品性等を向上させることができる。炭素数1〜15の一価炭化水素基としては、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数2〜15のアルケニル基等が挙げられるが、これらは直鎖状であっても分岐状であっても、環状であってもよい。このような一価炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられるが、なかでもメチル基が好ましい。
また、カーボネート構造単位中のa及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表すが、なかでも0〜2の整数が好ましく、0〜1の整数がより好ましく、0であることがさらに好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述の式(2)で表されるカーボネート構造
単位のみで構成されても共重合体でも、上述のカーボネート構造単位とは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を1種類以上含む共重合体であってもよい。また、共重合形態としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等、種々の共重合形態を選択することができる。
芳香族ポリカーボネート中、式(2)で表されるカーボネート構造単位は1mоl%以上含まれることが好ましく、2.5mоl%以上含まれることがより好ましく、4mоl%以上含まれることがより好ましい。上限は49mоl%以下であってよく、36.5mоl%以下であってよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の流れ値(Q値)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、JIS(1999年度版) K7210 付
属書Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、240℃、160kgf/cmの条件で測定した流れ値(Q値)が、6以上(単位:10−2cm/sec)であることが好ましい。Q値は、溶融粘度の指標であり、MVR(メルトボリュームレート)やMFR(メルトフローレート)と異なり、実際の射出成形と近い、剪断速度の高い領域での溶融粘度を表している。このQ値が高い方が、流動性が良好であり、成形加工性が高いことを示す。上述の導光板のような薄肉成形体を成形するためには、上記のQ値は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、25以上であることが特に好ましい。一方、Q値の上限は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた諸物性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常80以下であり、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下である。
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値を上記範囲に制御する際には、Q値の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、Q値が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値を制御してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は特に制限はないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常9000〜24000である。粘度平均分子量が上記下限値以下の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の強度が不十分となる傾向にあり、また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、流動性が不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは10000以上、より好ましくは11000以上、さらに好ましくは11500以上であり、また好ましくは17500以下、より好ましくは16000以下である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
Figure 2018203971
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の固有粘度(dL/g)は特に制限はなく、また上述の粘度平均分子量と相関するが、通常0.24〜0.54であるが、好ましくは0.26以上、より好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.29以上であり、また好ましくは0.42以下、より好ましくは0.39以下である。
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた諸物性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常10〜2000ppmである。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量として、好ましくは20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上であり、さらに好ましくは100ppm以上であり、一方で、好ましくは1700ppm以下、より好ましくは1500ppm以下、さらに好ましくは1200ppm以下である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、生産性をより向上させることができ、また前記範囲の上限値以下であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって上記範囲に調整することができる。例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂をエステル交換反応によって重縮合して製造する場合は、カーボネート形成性化合物エステルと芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を上記範囲に調整することができる。
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
なお、末端水酸基濃度の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。複数のジヒドロキシ化合物からなる芳香族ポリカーボネート樹脂共重合においては、対応するジヒドロキシ化合物を共重合比率に応じて混合したサンプルを最低3水準の濃度で用意し、該3点以上のデータから検量線を引いた上で芳香族ポリカーボネート樹脂共重合の末端水酸基量を測定する。また、検出波長は546nmとする。
芳香族ポリカーボネート樹脂の色相
本発明では、色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂が提供される。芳香族ポリカーボネート樹脂の色相は、YI値(イエローインデックス値)が通常5以下であり、3以下であることが好ましい。また上下限は限定されないが、通常−0.3以上である。
YI値は、原料に用いる芳香族ジヒドロキシ化合物の波長760nmの吸光度を適度な値とすることで低下させることができる。
なお、色相はASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価できる。具体的には、装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM−5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択する。シャーレ測定用校正ガラスCM−A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM−A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行っ
た。
白色校正板CM−A210を用いて測定を行い、Lが99.40±0.05、aが0.03±0.01、bが−0.43±0.01、YIが−0.58±0.01となることを確認する。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行うった。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いる。YI値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。
芳香族ジヒドロキシ化合物
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上記式(2)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な、芳香族ジヒドロキシ化合物を少なくとも1種類及び任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
式(2)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物については、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、が挙げられる。
Figure 2018203971
式(1)中、R、R、R、a及びbの定義及び好ましい例は上述の式(2)と同様である。
式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物は、アルコールに溶解した溶解液の、芳香族ジヒドロキシ化合物特有の吸収を示す波長255nmの吸光度(A255)に対する波長760nmの吸光度(A760)の比(A760/A255)が4.5×10−3以下であることが好ましく、より好ましくは4.2×10−3以下であり、更に好ましくは4.0×10−3以下である。一方下限値は特に制限はないが、1.0×10−3以上が芳香族ジヒドロキシ化合物の製造コスト上、好ましい。
上記アルコール溶解液の、波長760nmの吸光度(A760)は通常0.0100以上であり、0.0110以上であることが好ましく、また通常0.0140以下であり、0.0133以下であることが好ましい。
なお、吸光度の測定方法は後述する。
式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下が挙げられる。1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)デカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ノナタデカン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)イコサン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1−(2−ヒドロキシフェニル)−1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)オクタン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ノナン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)デカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ウンデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘキサデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘプタデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)オクタデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ノナタデカン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)イコサン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘンイコサン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ドコサン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフ
ェニル)ドコサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)トリコサン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)テトラコサン、
1−(2−ヒドロキシ−3−メチル−フェニル)−1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、なかでも熱安定性と色相、衝撃強度の観点より、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
が特に好ましい。
また式(2)で表されるカーボネート構造単位を形成する、その他のジヒドロキシ化合物については、特に制限はなく、分子骨格内に芳香環を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であっても、芳香環を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよい。また、種々の特性付与の為に、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物であってもよい。
上述のその他のジヒドロキシ化合物として、好適に使用されるものは、耐熱性、熱安定性、強度の観点より、芳香族ジヒドロキシ化合物である。このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビナフチル、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、
1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、
4,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(4−プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルエタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5−ジメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−プロピル−5−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−tert−ブチル−シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、上述のその他のジヒドロキシ化合物としては目的に応じて下記脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いてもよい。このような脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−2−プロピルプロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、デカン−1,10−ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4−テトラメチル−シクロブタン−1,3−ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’−オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキ
シメチル)ナフタレン、1,6−ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’−ビフェニルジメタノール、4,4’−ビフェニルジエタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2−エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2−エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,4−エポキシシクロヘキサン、1−メチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、2,3−エポキシノルボルナン、1,3−エポキシプロパン等の環状エーテル類;
イソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の酸素含有複素環ジヒドロキシ化合物類等が挙げられる。
なお、脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。
また、カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(3)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
Figure 2018203971
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、R及びRが、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりR及びRは、共にアリール基であることが好ましく、下記式(4)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
Figure 2018203971
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0〜5の整数を表す。
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチ
ルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4−メチルフェニル)カーボネート、ビス(4−クロロフェニル)カーボネート、ビス(4−フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
芳香族ジヒドロキシ化合物の吸光度
式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の特定波長に対する吸光度は、エタノールなどのアルコールに溶解し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製V−630)にて分析することができる。分析条件は以下の通りである。
セル:光路長 50mm、石英セル
測定範囲:900〜250nm
データ間隔:1nm
UV/visバンド幅:1.5nm
走査速度:400nm/min
光源切換:340nm
光源:D2/WI
フィルタ切換:ステップ
尚、溶媒として用いたアルコールの特定波長の吸収を排除するため、対照光束には該アルコールを使用し、また、ベースラインは該アルコールにて設定する。アルコールには特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノールなどを用いることができる。
通常、芳香族ジヒドロキシ化合物の場合、芳香環由来の吸収が200〜320nmの波長に見られる。本発明で見出した760nmの吸収は通常、青紫色を意味する。
本発明においては、芳香族ジヒドロキシ化合物の純度により、芳香環由来の吸収及び波長760nmでの吸収の分析値が異なるため、芳香族ジヒドロキシ化合物アルコール溶解液の、波長760nmの吸光度(A760)を波長255nmの吸光度(A255)で割り返した値、すなわち(A760)/(A255)を、芳香族ジヒドロキシ化合物を特徴付けるパラメータとして定義した。(A760)/(A255)は、通常、4.5×10−3以下であることが好ましく、より好ましくは4.2×10−3以下であり、更に好ましくは4.0×10−3以下である。一方下限値は特に制限はないが、1.0×10−3以上が芳香族ジヒドロキシ化合物の製造コスト上、好ましい。
(A760)/(A255)を適当な値に設定する手段としては、芳香族ジヒドロキシ化合物の製造時において、原料の選定や精製方法による不純物低減、乾燥において、熱履歴を低減することなどが挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、従来から知られている
重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
界面重合法
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10〜12にコントロールするために、5〜10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10〜12、好ましくは10〜11になる様にコントロールするために、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’−ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’−ジメチルアニリン、N,N’−ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o−n−ブチルフェノール、m−n−ブチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、o−イソブチルフェノール、m
−イソブチルフェノール、p−イソブチルフェノール、o−t−ブチルフェノール、m−t−ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール、o−n−ペンチルフェノール、m−n−ペンチルフェノール、p−n−ペンチルフェノール、o−n−ヘキシルフェノール、m−n−ヘキシルフェノール、p−n−ヘキシルフェノール、p−t−オクチルフェノール、o−シクロヘキシルフェノール、m−シクロヘキシルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、o−n−ノニルフェノール、m−ノニルフェノール、p−n−ノニルフェノール、o−クミルフェノール、m−クミルフェノール、p−クミルフェノール、o−ナフチルフェノール、m−ナフチルフェノール、p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12〜35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9−(4−ヒドロキシフェニル)−9−(4−メトキシフェニル)フルオレン;9−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−9−(4−メトキシ−3−メチルフェニル)フルオレン;4−(1−アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p−t−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール及びp−クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0〜40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)〜数時間(例えば、6時間)である。
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、1.01〜1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02〜1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100〜320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
ここで、本発明の芳香族ポリカーボネートは、アルカリ触媒存在下では、顕著に熱履歴や酸化の影響を受け、色相の悪化に繋がる。そのため、反応温度は320℃以下、過度の減圧により、機器からの酸素の漏れ込みを防ぐため、0.05mmHg程度までを下限とした減圧条件を選択することが好ましい。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
溶融重縮合反応を連続式で行う場合は、反応液の重合度に合わせて3〜5槽の重合反応槽で順次反応を進行させることが好ましい。これにより、各重合槽の反応温度、反応圧力、撹拌動力、反応器形式を各重合槽における樹脂の特性、粘度に応じて適当な条件を選定することができ、生産効率が上がる。
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有賛成化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、より好ましくは3当量以上であり、また、通常50当量以下、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下である。さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンの合成)
(製造例1)
フェノール(204.2質量部)を50℃に加温し融解させた後、パラトルエンスルホン酸(16.5質量部)及び純水(13.1質量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(128.0質量部)を4時間かけて滴下した。滴下後、50℃で2時間熟成した後、25%水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させた。5.0%重炭酸ナトリウム水溶液及び7.7%リン酸2水素ナトリウム水溶液でpHを6に調整した後、トルエン及び純水を加え、無機塩を除去した。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンおよびヘプ
タンから晶析した。濾過により、固液分離を行い74.8質量部の含溶媒サンプルを得た。含溶媒サンプルの内、18質量部を棚段乾燥機にて65℃で48時間、窒素雰囲気下で乾燥することで、白色粉末として15.3質量部の目的の化合物を得た。得られたサンプルの純度は99.51質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の3.63×10−3等量であった。
(製造例2)
製造例1で固液分離を行ったサンプルの内、18質量部を棚段乾燥機にて75℃で48時間、窒素雰囲気下で乾燥することで、白色粉末として15.3質量部の目的の化合物を得た。得られたサンプルの純度は99.57質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の3.88×10−3等量であった。
(製造例3)
製造例1で固液分離を行ったサンプルの内、18重量部をコニカルドライヤーにて65℃で48時間、窒素雰囲気下で乾燥することで、白色粉末として15.3重量部の目的の化合物を得た。得られたサンプルの純度は99.52質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の4.11×10−3等量であった。
(製造例4)
製造例1で固液分離を行ったサンプルの内、18質量部をコニカルドライヤーにて65℃で48時間、窒素雰囲気下で乾燥することで、白色粉末として15.4質量部の目的の化合物を得た。得られたサンプルの純度は99.54質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の4.21×10−3等量であった。
(製造例5)
フェノール(102.1質量部)を50℃に加温し融解させた後、パラトルエンスルホン酸(8.25質量部)及び純水(7.03質量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(40.0質量部)を4時間かけて滴下した。滴下後、50℃で4時間熟成した後、25%水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させた。20%クエン酸3ナトリウム水溶液及び6.3%に調整した硫酸ナトリウム水溶液でpHを4.5に調整した後、トルエン及び純水を加え、無機塩を除去した。反応混合物からフェノールを減圧留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析した。濾過により、固液分離を行い63.0質量部の含溶媒懸濁サンプルを得た。含溶媒懸濁サンプルの内、30.0質量部をナウター乾燥機にて75℃で48時間、窒素雰囲気下で乾燥することで、白色粉末として13.3質量部の目的の化合物を得た。得られたサンプルの純度は99.2質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の4.53×10−3等量であった。
(製造例6)
製造例5の固液分離で得られたサンプル33.0質量部に、純水を60.0質量部加えた後、溶媒を3.0質量部留去した。残懸濁液を濾過により固液分離し、23.5質量部の含溶媒サンプルを得た。得られたサンプルの純度は99.4質量%であった。波長760nm、波長255nmでの吸光度をそれぞれ測定した。波長760nmでの吸光度は波長255nmでの吸光度の4.42×10−3等量であった。
なお、上記製造例で製造した化合物の分析等は、以下のとおり行った。
(芳香族ヒドロキシ化合物の純度分析)
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所製LC−2010)にて分析した。条件は以下の通りである。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
(芳香族ジヒドロキシ化合物の吸光度)
サンプル2.5質量部をエタノール(和光純薬製、特級)22.5質量部に溶解させた。得られた溶液を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光製V−630)にて分析した。分析条件は以下の通りである。
セル:光路長 50mm、石英セル
測定範囲:900〜250nm
データ間隔:1nm
UV/visバンド幅:1.5nm
走査速度:400nm/min
光源切換:340nm
光源:D2/WI
フィルタ切換:ステップ
(芳香族ポリカーボネートの製造)
ジフェニルカーボネートを5.67質量部、ビスフェノールAを4.02質量部及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカンを2.68質量部混合し、さらに触媒として炭酸セシウム0.04質量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.5μmolとなるように添加して原料混合物を調製した。
次に該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを第2反応器に圧送した。尚、第2反応器は内容量200Lであり、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備しており、内圧は大気圧、内温は240℃に制御していた。
次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを38rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は250℃
とした。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
(実施例1)
製造例1で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
(実施例2)
製造例2で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
(実施例3)
製造例3で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
(実施例4)
製造例4で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
(比較例1)
製造例5で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
(実施例5)
製造例6で合成した1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、三菱ケミカル社製ビスフェノールA及び三菱ケミカル社製ジフェニルカーボネートを用いて上記製造方法にて芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。樹脂の物性を表1に示す。
Figure 2018203971
以上の結果より、原料として用いる下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の、アルコール溶解液の吸光度と、芳香族ポリカーボネート樹脂の色相との間には良好な
相関がみられることがわかる。原料として用いる下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の、アルコール溶解液の吸光度は、合成時の操作による不純物影響と考えられ、乾燥時の熱劣化や、不純物の混入によるものであると考えられる。
しかしながら、本発明において注目した波長760nmの吸収は、青紫色を示す吸収であり、芳香族ポリカーボネートの色相として用いる指標のYIは、黄色味を評価する指標である。詳細な反応機構は不明であるが、原料中の青味成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂中の黄色味成分の前駆体であり、重合の過程において変化したものと推測される。
よって、式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物のアルコール溶解液において、波長760nmの吸光度をビスフェノール類特有の吸収波長である波長255nmで割り返した値、すなわち(A760)/(A255)が4.5×10−3以下である式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として用いることで、高い流動性且つ良好な色相の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られることが明らかとなった。
Figure 2018203971
式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。
(参考例1)
ジフェニルカーボネートを5.67重量部、ビスフェノールAを5.75重量部混合し、さらに触媒として炭酸セシウム0.04重量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.5μmolとなるように添加して原料混合物を調製した。次に該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを第2反応器に圧送した。尚、第2反応器は内容量200Lであり、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備しており、内圧は大気圧、内温は250℃に制御していた。
次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを38rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後
、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は250℃とした。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。
得られた芳香族ポリカーボネートはMvが11900と低分子量であったのに対し、240℃におけるQ値が24.9と本発明の芳香族ポリカーボネートと比較して、流動性と強度のバランスが不十分であった。

Claims (9)

  1. 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、アルコールに溶解した際に、該溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である化合物を少なくとも1種類含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物と、を重合するステップ、を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
    Figure 2018203971
    (式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
    に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
  2. 前記重合ステップは、前記ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とをアルカリ触媒存在下で重合させる、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  3. 前記重合ステップは、エステル交換法により行われる、請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  4. 前記重合ステップにおいて、エステル交換反応後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を実質的に固化することなくエステル交換触媒を失活させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  5. 前記重合ステップにおいて、エステル交換触媒に対して0.5当量以上、50当量以下、失活剤を添加する、請求項4に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  6. 前記芳香族ジヒドロキシ化合物をアルコールに溶解した溶解液の、波長760nmの吸光度が0.0140以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法により得られるポリカーボネート樹脂。
  8. 芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とに由来する下記式(2)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、
    前記芳香族ジヒドロキシ化合物は、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、アルコールに溶解した際の溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である、芳香族ポリカーボネート樹脂。
    Figure 2018203971
    (式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
    に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
  9. 下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物であって、該化合物をアルコールに溶解した際に、該溶解液の、波長255nmの吸光度に対する波長760nmの吸光度の比が4.5×10−3以下である、芳香族ジヒドロキシ化合物。
    Figure 2018203971
    (式(1)中、Rは炭素数が1〜24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立
    に炭素数1〜15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。)
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