図1は、本発明の結束バンドの一例である一体型結束バンドを示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。結束バンド11は、ストラップ12およびストラップ12の一方の端部において当該ストラップと一体化されたヘッド13とを備える。ストラップ12の一方の主面上には、歯14が列設されており、歯14のエッジが伸長する方向はストラップ12の短手方向である。ヘッド13は、ヘッド13を貫通してストラップ12を挿入可能な通路15を有する。通路15には、ストラップ12をその他方の端部から通路15に挿入する方向に移動させるときには歯14と噛み合わず、ストラップ12を通路15から引き抜く方向に移動させるときには歯14と噛み合う爪16が配置されている。
結束バンド11における、ストラップ12が挿入された状態のヘッド13の拡大図を図2に示す。図2に示すように、ストラップ12に並んで設けられている歯14の形状は鋸状であり、爪16におけるストラップ12と接触する面は歯14の形状と対応する形状を有する。爪16は可撓性を有しており、ストラップ12を通路15に挿入する方向(図2の矢印Aの方向)へ移動させようとすると、爪16が歯14から離れる方向に撓むことで、歯14と爪16とが噛み合うことなく、ストラップ12は当該方向へ移動できる。これとは逆に、ストラップ12をヘッド13の通路15から引き抜く方向(図2の矢印Bの方向)へ移動させようとすると、爪16は撓むことなく歯14と噛み合って、ストラップ12の上記方向への移動が(即ちストラップ12の後退が)抑止される。
図3に示すように、このような結束バンド11について、ストラップ12を結束対象物17を巻くようにループ状に変形させ、ヘッド13の通路15に挿入して歯14と爪16とを噛み合わせることで、歯14と爪16とが噛み合った位置からストラップ12が後退することなく結束対象物17を結束できる。
上記具体例においては、ストラップ12の歯14と爪16とが噛みあうことによって、ストラップ12の後退が抑止される構造としているが、ストラップ12が後退することなく結束対象物17を結束できるのであれば、このような構造に限定されるものではない。また、結束バンドの再利用を可能にするために、爪16がストラップ12の歯14から離脱し、任意のタイミングでストラップを引き抜く方向(図2の矢印Bの方向)への移動が可能となる構造としてもよい。
さらに、本発明の結束バンドは、図1に示す一体型結束バンドでなく、ストラップとヘッドが分離した分離型結束バンドであってもよい。
本発明の結束バンドは、全体もしくは一部がポリプロピレン樹脂組成物から構成されている。具体的には、全体がポリプロピレン樹脂組成物で構成された結束バンドとしては一体型結束バンドが好ましい。また、ストラップとヘッドの少なくとも一方がポリプロピレン樹脂組成物で構成された分離型結束バンドが好ましい。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、またはプロピレンとエチレンもしくは炭素数が4〜20のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数が4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらの中ではエチレンまたは炭素数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。これらのオレフィン(エチレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィン)は、プロピレンとランダム共重合体を形成してもよく、またはブロック共重合体を形成してもよい。これらのオレフィンから導かれる構成単位の含有量は、ポリプロピレン樹脂中に5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。即ち、ポリプロピレン樹脂中におけるプロピレン構成単位の含有量は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は1〜100g/10分であるのが好ましく、3〜50g/10分であるのがより好ましい。
ここで、MFRは、JIS K 7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。
ポリプロピレン樹脂のMFRが1g/10分未満であると、得られる樹脂組成物の流動性が低下し、100g/10分を超えると、得られる樹脂組成物の機械物性が低下する傾向にある。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値が6〜30であるものが好ましく、7〜20であるものがより好ましく、8〜18であるものがさらに好ましい。
また、本発明に用いるポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値から求められるZ平均分子量(Mz)/重量平均分子量(Mw)の値が4〜15であるものが好ましく、4.5〜15であるものがより好ましく、5〜10であるものがさらに好ましい。
ポリプロピレン樹脂を製造する方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒又はメタロセン触媒を用いて、プロピレンを単独重合する方法、又はプロピレン以外のオレフィン(エチレンおよび炭素数が4以上のα−オレフィン)から選ばれる1種以上のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物及び助触媒成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法や溶液重合法、溶媒の不存在下に行われる液相重合法や気相重合法、及びそれらを連続的に行う気相−気相重合法や液相−気相重合法が挙げられ、これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリプロピレン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。これら重合方法は、プロピレンの単独重合、およびプロピレンとオレフィンの共重合のいずれにも適用することができる。
なお、本明細書において「単独のポリプロピレン樹脂」とは、樹脂成分として上記のポリプロピレン樹脂のみを含むものをいう。
本発明において、ポリプロピレン樹脂に配合される液晶ポリマーは、異方性溶融相を形成するポリエステルまたはポリエステルアミドであり、当該技術分野においてサーモトロピック液晶ポリエステルまたはサーモトロピック液晶ポリエステルアミドと呼ばれるものであれば特に限定されない。
異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明における液晶ポリマーは光学的に異方性を示すもの、即ち、直交偏光子の間で検査したときに光を透過させるものである。試料が光学的に異方性であると、たとえ静止状態であっても偏光は透過する。
本発明で用いる液晶ポリマーを構成する重合性単量体としては、例えば芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族アミノカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、これら化合物は1種のみであってもよく、2種以上の化合物を組み合わせてもよいが、少なくとも1種のヒドロキシ基およびカルボキシル基を有する重合性単量体を含むことが望ましい。
液晶ポリマーを構成する重合性単量体は、前記化合物の1種以上が結合してなるオリゴマー、つまり1種以上の前記化合物から構成されるオリゴマーであってもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度ならびに結晶融解温度を調節し易いという観点から、4−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,4’−ジカルボキシビフェニルおよび4,4’’−ジカルボキシターフェニル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性を効果的に高められる観点から、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸がより好ましい。
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテルおよび2,2’−ジヒドロキシビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび2,6−ジヒドロキシナフタレンからなる群から選択される1種以上の化合物が好ましく、ハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルからなる群から選択される1種以上の化合物がより好ましい。
芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドおよび2,2’−ジアミノビナフチル、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中でも、得られる液晶ポリマーの耐熱性および機械強度のバランスをとりやすい観点から、4−アミノフェノールが好ましい。
芳香族ジアミンの具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのアミド形成性誘導体が挙げられる。
脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ならびにそれらのアシル化物が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどの脂肪族ジオールを含有するポリマーを、前記の芳香族オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよびそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などと反応させてもよい。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸およびヘキサヒドロテレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、重合時の反応性に優れる観点から、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸が好ましい。
本発明で用いる液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、ジヒドロキシテレフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、トリメリット酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸またはこれらのアルキル、アルコキシもしくはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体を重合性単量体として含むものであってもよい。これらの重合性単量体の使用量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
本発明で用いる液晶ポリマーは、本発明の目的を損なわない範囲で、チオエステル結合を含むものであってもよい。このような結合を与える重合性単量体としては、メルカプト芳香族カルボン酸、および芳香族ジチオールおよびヒドロキシ芳香族チオールなどが挙げられる。これらの重合性単量体の含有量は、他の重合性単量体の合計量に対して10モル%以下であるのが好ましい。
本発明に用いる液晶ポリマーとしては、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中20モル%以上含み、かつ、結晶融解温度が290℃以下である全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用される。
本発明に用いる全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]で表される繰返し単位を全繰返し単位中20モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは21〜55モル%、さらに好ましくは22〜45モル%含むものである。式[I]で表される繰返し単位が全繰返し単位中20モル%未満である場合、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が高くなる傾向があり好ましくない。
式[I]でされる繰返し単位を与える単量体としては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリマーを構成する、式[I]でされる繰返し単位以外の主たる繰返し単位は、(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位、(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位および(3)芳香族ジオキシ繰返し単位が挙げられる。
(1)芳香族オキシカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
(2)芳香族ジカルボニル繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、得られる液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、結晶融解温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
(3)芳香族ジオキシ繰返し単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにそれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では、重合時の反応性や得られる液晶ポリエステルの特性などの点から、ハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが好ましい。
本発明に好適に用いる全芳香族液晶ポリエステルとしては、示差走査熱量計により測定される結晶融解温度が290℃以下のものが好ましく、170〜285℃であるものがより好ましく、175〜250℃であるものがさらに好ましく、180〜230℃であるものが特に好ましい。
尚、本明細書および特許請求の範囲において、「結晶融解温度」とは、示差走査熱量計(Differential scanning calorimeter、以下DSCと略す)によって、昇温速度20℃/minで測定した際の結晶融解温度ピーク温度から求めたものである。より具体的には、液晶ポリエステル樹脂の試料を、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持し、次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却した後に、再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を液晶ポリエステル樹脂の結晶融解温度とする。測定用機器としては、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000等を用いることができる。
結晶融解温度が290℃以下である全芳香族液晶ポリエステルを用いることにより、ポリプロピレン樹脂の分解を抑制しつつ全芳香族液晶ポリエステルをブレンドでき、ポリプロピレン連続相中に全芳香族液晶ポリエステルが均一に分散したポリプロピレン樹脂組成物が得られる。
全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が290℃を上回る場合、ポリプロピレン樹脂への分散が不十分になると共に、混練時や成形加工時にポリプロピレンの分解が進行するため、ポリプロピレンが有する機械物性、耐熱性、成形性などの優れた特性が得られなくなるおそれがある。また、全芳香族液晶ポリエステルの結晶融解温度が170℃を下回る場合、ポリプロピレン連続相中での全芳香族液晶ポリエステル相の分散が不均一となる傾向がある。
本発明に用いる液晶ポリマーにおいて、以下の式[I]および式[II]で表される繰返し単位を含む全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用される。
また、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、以下の式[I]および式[II]で表される繰返し単位から構成される全芳香族液晶ポリエステルが好適に使用される。
[式中、a、bは、各繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステル中での組成比(モル%)であり、以下の式を満たすものである:
20≦a≦50、および
50≦b≦80
さらに、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、以下の式[I]〜[IV]で表される繰返し単位により構成される全芳香族液晶ポリエステルが特に好適に使用される。
[式中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ一種以上の2価の芳香族基を表し、p、q、rおよびsは、各繰返し単位の全芳香族液晶ポリエステル中での組成比(モル%)であり、以下の式を満たすものである:
0.4≦p/q≦2.0、
2≦r≦15、および
2≦s≦15]。
本発明の一つの好ましい態様において、上記式[I]〜[IV]で示される繰返し単位の組成比は、p+q+r+s=100モル%である。
また、本明細書および特許請求の範囲において、「2価の芳香族基」とは、エステル結合を形成することができる置換基を2つ有する芳香族基を意味する。
上記の好適な全芳香族液晶ポリエステルは式[I]および式[II]で表される繰り返し単位を、両者のモル比率(p/q)が0.4〜2.0、好ましくは0.6〜1.8、特に好ましくは0.8〜1.6となるように含むものである。
一つの態様において、本発明において好ましく用いられる全芳香族液晶ポリエステルは、式[I]および式[II]で表される繰返し単位を、それぞれ、35モル%〜48モル%含むものが好ましく、38モル%〜43モル%含むものが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられる全芳香族液晶ポリエステルは、上記の量の式[I]および式[II]で表される繰返し単位を必須の構成単位として含むものであり、式[I]および式[II]で表される繰り返し単位を上記のモル比率で含むことにより、290℃以下という低い結晶融解温度を安定して示すものである。
また、本発明において好ましく用いられる全芳香族液晶ポリエステルは、式[III]および式[IV]で表される繰返し単位を、それぞれ好ましくは2〜15モル%、より好ましくは5〜13モル%含むものであり、式[III]および式[IV]で表される繰り返し単位の含有量は、等モルであるのが好ましい。
式[I]で表される繰返し単位を与える単量体は上述した通りである。
式[II]で表される繰返し単位を与える単量体としては、パラヒドロキシ安息香酸ならびに、そのアシル化物、エステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性の誘導体が挙げられる。
式[III]で表される繰返し単位を与える単量体としては、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエ−テル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレンなどの芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのアシル化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
式[IV]で表される繰返し単位を与える単量体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エ−テルなどの芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル誘導体、酸ハロゲン化物などのエステル形成性誘導体が挙げられる。
一つの好ましい態様において、式[III]および式[IV]で表される繰返し単位は、式[III]中のAr
1が、
および/または
であり、
式[IV]中のAr
2が、
および/または
であるものである。
本発明に用いる液晶ポリマーの製造方法に特に限定はなく、前記の単量体成分によるエステル結合を形成させる公知のポリエステルの重縮合法、たとえば溶融アシドリシス法、スラリー重合法などを用いることができる。
溶融アシドリシス法とは、本発明に用いる液晶ポリマーを製造するのに適した方法であり、この方法は、最初に単量体を加熱して反応物質の溶融液を形成し、反応を継続することにより溶融ポリマーを得るものである。なお、縮合の最終段階で副生する揮発物(たとえば酢酸、水など)の除去を容易にするために真空を適用してもよい。
スラリー重合法とは、熱交換流体の存在下で反応させる方法であって、固体生成物は熱交換媒質中に懸濁した状態で得られる。
溶融アシドリシス法およびスラリー重合法のいずれの場合においても、液晶ポリマーを製造する際に使用する重合性単量体成分は、常温において、ヒドロキシル基をアシル化した変性形態、すなわち低級アシル化物として反応に供することもできる。低級アシル基は炭素原子数2〜5のものが好ましく、炭素原子数2または3のものがより好ましい。特に好ましくは前記単量体成分のアセチル化物を反応に用いる方法が挙げられる。
単量体の低級アシル化物は、別途アシル化して予め合成したものを用いてもよいし、液晶ポリマーの製造時にモノマーに無水酢酸等のアシル化剤を加えて反応系内で生成せしめることもできる。
溶融アシドリシス法またはスラリー重合法のいずれの場合においても反応時、必要に応じて触媒を用いてもよい。
触媒の具体例としては、ジアルキルスズオキシド(たとえばジブチルスズオキシド)、ジアリールスズオキシドなどの有機スズ化合物;二酸化チタン、三酸化アンチモン、アルコキシチタンシリケート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物;カルボン酸のアルカリおよびアルカリ土類金属塩(たとえば酢酸カリウム);ルイス酸(たとえばBF3)、ハロゲン化水素(たとえばHCl)などの気体状酸触媒などが挙げられる。
触媒の使用割合は、通常モノマーに対し10〜1000ppm、好ましくは20〜200ppmである。
このような重縮合反応によって得られた液晶ポリマーは、溶融状態で重合反応槽より抜き出された後に、ペレット状、フレーク状、または粉末状に加工され、ポリプロピレン樹脂との混合に供される。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂組成物のポリプロピレン樹脂と液晶ポリマーとの配合比は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、液晶ポリマー0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは2重量部以上、さらに好ましくは3重量部以上、特に好ましくは5重量部以上である。
また、ポリプロピレン樹脂組成物のポリプロピレン樹脂と液晶ポリマーとの配合比は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、液晶ポリマー100重量部以下、好ましくは70重量部以下、より好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下、特に好ましくは20重量部以下である。
ポリプロピレン樹脂100重量部に対する液晶ポリマーの比率が0.1重量部を下回ると、耐候性改良効果が十分に得られないおそれがあり、100重量部を上回るとコスト高になると共に、ポリプロピレンの有する柔軟性や靭性などのしなやかな機械特性が損なわれるおそれがある。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂組成物は、混合に際して、ポリプロピレン樹脂と液晶ポリマーの相溶性を向上させる目的で、相溶化剤を添加しても良い。ここで、相溶化剤とは、混合ポリマーを構成する各ポリマーの相の界面に局在し、それらの相間の界面張力を低下させる機能を有するものをいう。
相溶化剤としては、本発明の目的が達成される限り特にその種類は限定されないが、従来から知られているもの、例えば特開2014−148616等に記載のものを用いることができる。相溶化剤を添加する場合、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の量で添加することができる。
本発明において、さらに耐候性を向上させる目的で、耐候性改良剤を添加しても良い。本明細書において、「耐候性改良剤」とは、紫外線吸収作用、ラジカル捕捉作用、酸化防止作用、光安定作用等を有することにより、それが配合された材料の耐候性を改良することができる化合物をいう。
耐候性改良剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアジン系化合物、ヒンダードアミン系化合物、シンナミル系化合物などの様々な種類の化合物が挙げられ、これらの耐候性改良剤は、単独で使用しても二種以上を混合して使用してもよい。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸三水和物、ビス(2−ヒドロキシ−3−ベンゾイル−6−メトキシフェニル)メタン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−オクチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−ラウリル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−クミルフェニル)メタン、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−オクチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−(2H−5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)オクタン、1,2−エタンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゾエート)、1,12−ドデカンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−シクロヘキサンジイルビス(3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゾエート)、1,4−ブタンジイルビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルエタノエート)、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジイルビス(3−(5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルエタノエート)、1,6−ヘキサンジイルビス(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネート)、p−キシレンジイルビス(3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシトルイル)マロネート、ビス(2−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−オクチルフェニル)エチル)テレフタレート、ビス(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−プロピルトルイル)オクタジオエート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドエチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドオクチル−4−メチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−フタルイミドメチル−4−クミルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(フタルイミドメチル)フェノール等が挙げられる。
サリチル酸エステル系化合物としては、例えば、フェニルサルチレート、2,4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、例えば、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシロキシフェノール等が挙げられる。
ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
その他の耐候性改良剤としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチル−オキサリック酸ビスアニリド、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
これらの中で、ポリプロピレン樹脂との相溶性と物性への影響が少ない点からベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系、ベンゾエート系、トリアジン系、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
耐候性改良剤を用いる場合、耐候性改良剤の配合量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.03〜3重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部である。耐候性改良剤の配合量が0.01重量部未満の場合、耐候性改良効果が発揮されないおそれがあり、5重量部を超える場合、ポリプロピレン樹脂組成物の成形性や耐熱性が低下する傾向がある。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物には、無機充填材および/または有機充填材、以下に説明する他の添加剤、および他の樹脂成分から選択される一種以上を含有させてもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物に含有し得る無機充填材および/または有機充填材は、繊維状、板状または粒状のものであってよい。無機充填材としては、例えばガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、および酸化チタン等が挙げられる。有機充填材としては、アラミド繊維等が挙げられる。これらの中では、物性とコストのバランスが優れている点で、ガラス繊維、タルクおよびマイカが好ましい。これら充填材は、2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物に含有し得る、無機充填材および/または有機充填材の合計量は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは5〜100重量部である。前記の無機充填材および/または有機充填材の合計量がポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して200重量部を超える場合には、成形加工性が低下する傾向や、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる傾向がある。
前記の無機充填材および/または有機充填材の合計量が0.1重量部以上であると、充填材の含有量に応じた機械強度の向上効果を実現させることができる。
本発明においてポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩(ここで高級脂肪酸とは、炭素原子数10〜25のものをいう)、ポリシロキサン、フッ素樹脂などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などを含有してもよい。これらの添加剤は1種のみを含有してもよく、または2種以上を組み合わせて含有してもよい。
ポリプロピレン樹脂組成物における他の添加剤の合計量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。他の添加剤の合計量がポリプロピレン樹脂100重量部に対して10重量部を超える場合には、ポリプロピレン樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向や、熱安定性が悪くなる傾向がある。他の添加剤の合計量が0.1重量部以上であると、添加剤含有量に応じた添加剤の機能を実現することができる。
また、本発明に用いるポリプロピレン樹脂組成物を成形するに際し、上記他の添加剤のうち高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を、予め、液晶ポリマーのペレット表面に付着せしめてもよい。
本発明の結束バンドは、ポリプロピレン樹脂よび液晶ポリマー以外に他の樹脂成分を添加してもよい。他の樹脂成分としては、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、およびその変性物、ならびにポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。他の樹脂成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて含有することができる。他の樹脂成分の含有量は特に限定的ではないが、一つの典型的な例において、他の樹脂成分の合計量は、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、特に0.1〜80重量部である。
本発明に用いるポリプロピレン樹脂組成物は、上記のポリプロピレン樹脂および液晶ポリマーを、必要により上記の相溶化剤、耐候性改良剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分、添加剤と共に、混練機で溶融混練することにより製造することができる。相溶化剤、耐候性改良剤、無機充填材および/または有機充填材、他の樹脂成分および添加剤は、予めポリプロピレン樹脂または液晶ポリマーのいずれかに配合してもよく、また、ポリプロピレン樹脂および液晶ポリマー、および所望により相溶化剤を配合して得られたポリプロピレン樹脂組成物を成形加工する際に配合してもよい。
混練機としては、バンバリーミキサー、ニーダー、一軸もしくは二軸押出し機などが使用される。
このようにして得られたポリプロピレン樹脂組成物は、公知の方法、例えば射出成形や押出成形等によって、結束バンドに成形加工される。
本発明の結束バンドを構成するポリプロピレン樹脂組成物は、単独のポリプロピレン樹脂と比較して流動性に優れる。
本発明の結束バンドを構成するポリプロピレン樹脂組成物の曲げ弾性率は、2.5GPa未満が好ましく、より好ましくは2.3GPa未満であり、さらに好ましくは2.0GPa未満である。また、本発明の結束バンドを構成するポリプロピレン樹脂組成物の曲げ弾性率は、0.5GPa以上が好ましく、より好ましくは1.0GPa以上であり、さらに好ましくは1.3GPa以上である。
本明細書において、曲げ弾性率は短冊状曲げ試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を使用し、ASTM D790に準拠して測定され、値が小さいほど柔軟性に優れることを示す。
本発明の結束バンドのストラップ部分の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜3mmである。
本発明の結束バンドのループ引張強度は185N以上が好ましく、より好ましくは200N以上であり、さらに好ましくは215N以上である。
本明細書において、ループ引張強度は長さL=200mm、幅W=5mm、厚みD=1.4mmの結束バンドを使用し、SAE AS23190に準拠して測定され、値が大きいほど結束対象物を結束した状態における結束バンドの強度が大きいことを示す。
本発明の結束バンドは、柔軟性、ループ引張強度、耐候性に優れ、従来の結束バンドに比べて長寿命で、信頼性の高い結束が可能となるため、自動車分野、建築分野、屋外設置の日用品分野などに特に好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
合成例、実施例および比較例における略号は以下の化合物を表す。
〈液晶ポリマーの合成に用いた重合性単量体〉
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
TPA:テレフタル酸
〈実施例および比較例で用いた樹脂〉
LCP:液晶ポリマー
PP:ポリプロピレン
(ポリプロピレン樹脂)
実施例において、ポリプロピレン樹脂として以下のものを使用した。
PP:プライムポリマー社製プライムポリプロ J106G(ホモポリマータイプ)
合成例1および2で得られたLCPは、以下の方法にて結晶融解温度を測定した。
〈結晶融解温度〉
示差走査熱量計としてセイコーインスツルメンツ(株)製Exstar6000を用いて、試料を室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)を測定した後、Tm1より50℃高い温度で10分間保持する。次いで、20℃/分の降温条件で室温まで試料を冷却し、さらに再度20℃/分の昇温条件で測定した際の吸熱ピークを観測し、そのピークトップを示す温度を結晶融解温度(Tm)とした。
[合成例1(LCP−1)]
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器にBON6、POB、HQおよびTPAを、以下の表1に示す組成比で、総量5モルとなるように仕込み、次いで酢酸カリウム0.05g(全モノマーに対し67モルppm)および全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
重合は、窒素ガス雰囲気下に室温〜150℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ210℃まで速やかに昇温し、同温度にて30分間保持した。その後、335℃まで3時間かけ昇温した後、30分かけ20mmHgにまで減圧を行ない、所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器内容物を取り出し、粉砕を行い、LCP樹脂のペレットLCP−1を得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
得られたLCP−1のDSCにより測定された結晶融解温度は221℃であった。
[合成例2(LCP−2)]
モノマー組成を表1に示す組成に変更すること以外は、合成例1に準拠して、LCP−2を得た。得られた各LCPの結晶融解温度を併せて表1に示す。
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、合成例で得られたLCP−1を表2に示す量でドライブレンドし、2軸押出機(日本製鋼(株)製、TEX−30)を用いて、表2に示すシリンダ温度にてコンパウンドして、LCP−1がブレンドされたポリプロピレン樹脂組成物のペレットを得、引張強度、耐候性および曲げ弾性率を以下の方法で測定した。
〈耐候性〉
各樹脂について、射出成形によって厚さ3.2mmのASTM1号ダンベル状引張試験片を作製し、INSTRON5567(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D638に準拠して引張強度を算出した。
次いで上記と同様の試験片を、スガ試験機(株)製スーパーキセノン・ウェザーメーター(SX−75)を用いて、JIS K7350−2に準拠する下記の条件で2000時間まで処理し、処理後の試験片について引張強度を算出し、その値を耐候性試験後の値とした。また、初期値(処理時間0時間における値)に対する保持率を求めた。
試験条件:
放射照度(300〜400nm):60W/m2
暴露サイクル:102分照射後、18分照射及び水噴霧
槽内ブラックパネル温度:63℃
槽内温度制御:なし
相対湿度制御:あり(50%)
〈曲げ弾性率〉
射出成形機(日精樹脂工業(株)製UH1000−110)を用いて、短冊状試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mm)を作製した。曲げ試験は、3点曲げ試験をINSTRON5567(インストロンジャパンカンパニイリミテッド社製万能試験機)を用いて、ASTM D790に準拠して測定した。
[実施例2〜3および比較例1〜2]
合成例1〜2で合成したLCP−1〜LCP−2およびPPの各樹脂について、引張強度、耐候性および曲げ弾性率を以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
次いで、LCP−1〜LCP−2およびPPの各樹脂について、射出成形により、図1に示す長さL=200mm、幅W=5mm、厚みD=1.4mmの結束バンドを作製し、以下の方法によりループ引張強度を評価した。結果を表2に示す。
〈ループ引張強度〉
SAE AS23190に準拠して測定した。測定は、引張速度を25mm/分、使用マンドレルをφ29mmとして行った。
ポリプロピレン樹脂組成物から構成される本発明の結束バンドは、柔軟性、ループ引張強度および耐候性において優れた特性を示すものであった。
一方、ポリプロピレン樹脂のみから構成される結束バンド(比較例1)は、柔軟性には優れるものの、ループ引張強度、および耐候性が不十分であった。