以下、図面に基づき、本発明の移植機の一実施の形態の苗移植機について説明する。
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態の苗移植機の側面図を示し、図2に平面図を示す。
野菜などの苗を移植する苗移植機1は、図1、図2に示すように、走行車輪としての左右一対の前輪2および後輪3を備えた走行車体15と、走行車体15の前部に配置され、ボンネット109で覆われたエンジン12およびミッションケース4(主伝動ケースとも呼ぶ)と、走行車体15の後部に配置された、苗(図7参照)を圃場に植え付けるべく植付具11を上下揺動させる苗植付装置300と、その苗を収容したトレイ20を供給するトレイ供給装置100と、そのトレイ供給装置100のトレイ20の育苗ポット21から苗を取りだして植付具11へ供給する取出装置200と、苗の植付深さを一定に保つためのセンサ板710を含む植付深さ調整機構700(図13参照)と、鎮圧輪13、操縦ハンドル8、及び操作ハンドル8の中央部に配置された操作部600等を備えて構成されている。尚、トレイ供給装置100、及び取出装置200については、図7〜図11を用いて後述する。
エンジン12から出力される回転動力は、ミッションケース4により分岐され、左右一対の走行伝動ケース9を介して左右一対の後輪3に伝動されるとともに、ミッションケース4の後側に設けられた植付伝動装置18にも伝動される構成である。
即ち、本実施の形態の苗移植機1では、育苗ポット21から苗を取り出して圃場の畝部に植付けるべく、ミッションケース4からの動力が植付伝動装置18に伝動されて、チェーンベルト202を介して取出装置200に伝動されるとともに、その植付伝動装置18に取り付けられた苗植付装置駆動機構400を介して植付具11に伝達される。
また、ミッションケース4から植付伝動装置18に伝動された動力の一部は、図2に示す通り、縦送り駆動チェーンベルト181を介して、後述する縦送り駆動軸151に伝達される。縦送り駆動時に伝達された動力の一部は、ギア機構182を介して後述するリードカム軸171に伝達される。これら縦送り駆動チェーンベルト181やギア機構182は苗送り伝動ケース180(図2参照)に収納されている。
尚、苗植付装置300、及び苗植付装置駆動機構400については、図3〜図4を用いて後述する。
また、ミッションケース4の後端の左右方向に配置された左右フレーム16の後部には、右寄りの位置に延びる主フレーム17を設けている。該主フレーム17の後端部には左右端側から後方に延びた操縦ハンドル8を設け、この操縦ハンドル8が主フレーム17および左右フレーム16を介してミッションケース4に支持された構成となっている。
これにより、作業者は、走行車体15の後方を歩きながら操縦ハンドル8で走行車体15の操向操作を行うことが出来る。
即ち、本実施の形態の苗移植機1は、左右一対の前輪2、2及び左右一対の後輪3、3によって畝Uを跨いだ状態で走行車体15を進行させながら、トレイ20に収容されている苗を畝Uの上面に自動的に植え付けることが出来る構成である。
また、図1に示す通り、左の操縦ハンドル8の根本部の左側には、植付作業を行うときの走行速度の切り替え、及び、走行モードの切り替えを行う変速レバー190が設けられている。ここで、本実施の形態の変速レバー190は、本発明の走行変速装置の一例にあたる。尚、変速レバー190については、図5〜図6を用いて後述する。
また、走行部には、走行車体15に対し左右一対の後輪3、3を上下動させて、走行車体15の姿勢及び車高を制御する機体制御機構500が設けられている。
機体制御機構500には、左右一対の後輪3の走行伝動ケース9と走行車体15との間において、後輪3の上げ下げによって走行車体15を昇降する油圧昇降シリンダ10と、走行車体15を左右傾斜させる水平用油圧シリンダ14とが設けられており、この油圧昇降シリンダ10を伸縮作動させると、左右一対の後輪3が同方向に同量だけ走行車体15に対し上下動し、走行車体15が昇降する。
また、油圧昇降シリンダ10は、ミッションケース4の上部に取り付けられた油圧切替バルブ部40(図1参照)に固着して設けられ、ミッションケース4に取り付けられた油圧ポンプからの油圧を切り替える油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブ(図示省略)を操作することにより作動する構成である。
尚、昇降操作バルブには、後述する昇降操作レバー81(図12参照)がケーブル82を介して連結されるとともに、後述するカウンタアーム760(図13参照)がロッド765を介して連結されている。
また、ミッションケース4の右側には振り子式の左右傾斜センサ41が設けられており、この左右傾斜センサ41の検出により油圧切替バルブ部40に備えられた水平操作バルブ(図示省略)を介して水平用油圧シリンダ14を作動させ、左側の後輪3のみを上下動させて、畝Uの谷部の凹凸に関係なく走行車体15を左右水平に維持すべく構成されている。
尚、本実施の形態の機体制御機構500が、本発明の昇降機構の一例にあたり、本実施の形態の昇降操作レバー81が、本発明の昇降操作具の一例にあたる。
次に、図3、図4を用いて、上述した苗植付装置300、及び苗植付装置駆動機構400について更に説明する。
図3は、苗植付装置300と苗植付装置駆動機構400の左側面図である。また、図4は、苗植付装置駆動機構400の概略左側面図である。
苗植付装置300は、図3に示す通り、苗を圃場に植付ける植付具11と、植付具11を上下方向に揺動させるための互いに平行に配置された上アーム311と下アーム312を有する揺動リンク機構310と、下アーム312に第1連結軸321を介して回動自在に取り付けられ、揺動リンク機構310を上下動させる上下動アーム320を備えている。第1連結軸321は上下動アーム320に固定されている。
尚、上下動アーム320を回動させるための上下動アーム駆動軸440は、苗植付装置駆動機構400から突き出して設けられており、その先端部に上下動アーム320が固定されている。
更に苗植付装置300は、図3に示す通り、下アーム312に第2連結軸341を介して回動可能に取り付けられるとともに植付具11を開閉させる開閉アーム340と、第1連結軸321に固定されるとともに、第2連結軸341を中心として開閉アーム340の先端部に第3連結軸343を介して回動自在に取り付けられた開閉ローラ342の外周縁部に当接しながら回動することにより、開閉アーム340を前後方向に揺動させる開閉カム322と、一端部351が開閉アーム340の先端部の第3連結軸343に連結され、
他端部352が植付具11の開閉機構11a側に連結された開閉用連結ケーブル350と、を備えている。
ここで、上述した揺動リンク機構310について更に説明する。
即ち、揺動リンク機構310は、図3に示す通り、苗植付装置駆動機構400を収納したケーシング401の前側上端部401aに、上端が上前軸313aに回動自在に支持され、下端が下前軸314aを介して回動自在に連結支持板315に連結された前揺動アーム316aと、苗植付装置駆動機構400を収納したケーシング401の後側上端部401bに、上端が上後軸313bに回動自在に支持され、下端が下後軸314bを介して回動自在に連結支持板315に連結された後揺動アーム316bとを備え、連結支持板315に設けられた上軸316に、上述した上アーム311の前端部が回動自在に連結され、
且つ、連結支持板315の下後軸314bに、上述した下アーム312の前端部が回動自在に連結されているとともに、上アーム311及び下アーム312のそれぞれの後端部が、植付具11の支持板317に設けた回動上軸317aと回動下軸317bに回動自在に連結されている。
尚、本実施の形態の苗が、本発明の移植物の一例にあたる。
上記構成により、苗植付装置駆動機構400において上下動アーム駆動軸440に回転駆動力が伝動されると、上下動アーム駆動軸440に固定されている上下動アーム320が矢印Aの方向に回動することにより、下アーム312及び上アーム311が上下に揺動を繰り替えるとともに前後への揺動も行われて、植付具11による苗の植付動作が、畝Uに対して所定の間隔で自動的に行われる。
また、この植付動作の際、第1連結軸321が固定されている上下動アーム320が、矢印Aの方向に回動すると、第1連結軸321に固定されている開閉カム322が開閉ローラ342の外周縁部に当接しながら回動するので、開閉アーム340が第2連結軸341を中心にして前方向(反時計方向)に揺動(回動)する。その動作にともなって、開閉用連結ケーブル350の一端部351が前方向に引っ張られるので、開閉機構11aが植付具11を開くべく動作する。
また、開閉アーム340が第2連結軸341を中心にして後方向(時計方向)に揺動(回動)すると、開閉機構11aに設けられた植付具11を常に閉じる方向に付勢する付勢ばね(図示省略)の作用により、開閉用連結ケーブル350の一端部351が後方向に引っ張られるので、開閉機構11aが植付具11を閉じるべく動作する。
上記構成により、上下動アーム320の駆動が1軸のため構造がシンプルであるとともに、上下動アーム320、開閉アーム340、及び開閉カム322をコンパクトに構成でき、植付作動を円滑に行える。
次に、平面視で苗植付装置300より右側に配置(図2参照)された苗植付装置駆動機構400における上下動アーム駆動軸440への伝動の入り切りを行うクラッチ機構について、主として図4を用いて更に説明する。
苗植付装置駆動機構400は、図4に示す通り、植付伝動装置18から出力される植付作業の駆動力を植付クラッチ420に伝動するための第1ギア410と、第1ギア410からの駆動力を受けて上下動アーム駆動軸440への伝動を「入り」状態にするか「切り」状態にするかを切り替える植付クラッチ420と、植付クラッチ420が「入り」状態のときに駆動力が伝動される、植付クラッチ420の伝動軸421に対して固定されている伝動ギア421aから駆動力を受ける第2ギア430と、第2ギア430と同軸に固定された小径ギア430aと噛み合って上下動アーム駆動軸440に駆動力を伝動するための、上下動アーム駆動軸440に固定された第3ギア450とを、それぞれ回動可能に配置している。ここで、植付クラッチ420の伝動軸421は、植付クラッチ420が「切り」状態のときは、回動せずに停止しており、第2ギア430への駆動力の伝動は行わない。
尚、本実施の形態の植付クラッチ420として、従来の定位置停止クラッチを使用しても良い。
また、苗植付装置駆動機構400は、図4に示す通り、植付クラッチ420の伝動下流側に設けられ上下動アーム駆動軸440に固定されるとともに、植付クラッチ420を「入り」状態から「切り」状態に強制的に切り替えるために円形状の外周縁部の一部に形成された凹部441aを有する間欠用カム441と、一端部460aが植付クラッチ420から離れるか又は当接するかによって、当該植付クラッチ420におけるクラッチの入り状態と切り状態の切り替えを行わせる、回動支点461にて回動自在に支持された側面視で略「へ」の字形状の第アーム460とを備えている。
また、苗植付装置駆動機構400は、図4に示す通り、引っ張りばね480の引っ張り力に対抗して第1アーム460の他端部460bを可動プレート472を介して矢印Bの方向に吸引することで、回動支点461を中心として第1アーム460の一端部460aを矢印C方向に回動させて、植付クラッチ420を「切り」状態から「入り」状態へ切り替える動作を行わせるソレノイド470を備え、ソレノイド470の吸引力が植付クラッチ420の「入り」状態への切り替え動作に有効に作用すべく、ソレノイド470の取り付け位置の調節可能な取り付け調整用長孔471aが設けられているとともに、ケーシング401の下方位置に固定されたソレノイド固定板471と、第1アーム460の回動支点461に一端部462aが固定され、第1アーム460の動作と連動して他端部462bが間欠用カム441の外周縁部に当接する第2アーム462と、を備えている。
また、上述した引っ張りばね480は、第1アーム460を植付クラッチ420が「切り」状態となる方向に、且つ、第2アーム462の他端部462bを間欠用カム441の外周縁部に押し付ける方向に付勢するためのばねである。
尚、本実施の形態のソレノイド470が、本発明の駆動装置の一例にあたる。
以上の構成によれば、植付クラッチ420の伝動下流側に設けられた間欠用カム441を使用して、植付クラッチ420を「入り」状態から「切り」状態に出来、簡単な構成の間欠植付機構が実現出来る。
また、第1アーム460と第2アーム462とが、回動支点461を中心として一体回動する構成とし、且つ、その回動支点461を植付クラッチ420の伝動軸421よりも間欠用カム441側に配置したことにより、第1アーム460と第2アーム462とが合理的で且つコンパクトに構成出来る。
また、重量物であるソレノイド470をケーシング401の下方に配置したことにより、苗移植機1の低重心化が図れる。
次に、図4を参照しながら、苗植付装置駆動機構400における上下動アーム駆動軸440への伝動の入り切りを行う植付クラッチ420と間欠用カム441の動作を中心に、項目Aから項目Cの3つの場面に分けて、それぞれ説明する。
A.ソレノイド470に通電(パルス信号による短時間の通電)されると、ソレノイド470の先端の可動プレート472が、引っ張りばね480の引っ張り力に対抗して矢印Bの方向に吸引されて、第1アーム460の一端部460aと第2アーム462の他端部462bが、回動支点461を中心として反時計方向(図4の矢印C参照)に回動する。
これにより、第1アーム460の一端部460aが植付クラッチ420から離れることで、下記のi)とii)の動作が行われる。
i)当該植付クラッチ420が「入り」状態となり、伝動軸421が回動することで、第2ギア430側へ駆動力が伝達されて、第3ギア450を介して上下動アーム駆動軸440が回動を開始するとともに、ii)第2アーム462の他端部462bが間欠用カム441の外周縁部に形成された凹部441aから離れ(この直前まで、第2アーム462の他端部462bは間欠用カム441の凹部441aに位置しつつ、植付クラッチ420が「切り」状態にあり、上下動アーム駆動軸440は回動を停止している)、凸状の外周縁部441bに沿いながら、間欠用カム441と上下動アーム320が回動を続ける。
即ち、既にソレノイド470への通電は停止されており矢印Bへの吸引力は発生していないが、第2アーム462の他端部462bが、間欠用カム441の凸状の外周縁部441bに沿った状態が維持されている間は、第1アーム460の一端部460aが植付クラッチ420から離れているので、当該植付クラッチ420は「入り」状態を維持することが出来る。そして、上下動アーム320の回動により植付具11(図3参照)は上下動(植付動作)を続けて、間欠用カム441が1回転するまでの間に、植付具11は1回だけ植付動作を実行する。
B.その後、間欠用カム441が1回転して、第2アーム462の他端部462bが間欠用カム441の凹部441aに到達すると、引っ張りばね480の引っ張り力により、第1アーム460が時計方向に回動するとともに、第1アーム460の一端部460aが植付クラッチ420に当接することで、下記のi)とii)の動作が行われる。
i)植付クラッチ420は「切り」状態となり、伝動軸421の回動が停止することで、第2ギア430側へ駆動力が伝達されなくなるので、上下動アーム駆動軸440は回動を停止するとともに、ii)第2アーム462の他端部462bが間欠用カム441の外周縁部に形成された凹部441aに留まったまま(この直前まで、第2アーム462の他端部462bは間欠用カム441の凸状の外周縁部441bに沿いつつ、植付クラッチ420が「入り」状態にあり、上下動アーム駆動軸440は回動を続けている)、間欠用カム441と上下動アーム320は回動を停止し続けるので、植付具11(図3参照)は上下動(植付動作)を停止し続ける。
C.更にその後、任意のタイミングでソレノイド470が通電されると、植付クラッチ420が「入り」状態となり、上記項目Aで説明した動作を開始する。
上記構成によれば、ソレノイド470に通電する、上記任意のタイミングを制御することにより、植付具11の上下動(植付動作)が停止している時間を調節できるものである。これにより、簡単な構成で間欠植付が可能となる。
尚、ソレノイド470を通電させるタイミング、即ち、ソレノイド470の作動周期は、作業者が設定する植付株間と走行速度(後述する「植付1(低速)」又は「植付2(高速)」)とに基づいて、制御部800により決定される。これについては、主として図12と図14を用いて更に後述する。
次に、図5、図6を用いて、上述した変速レバー190を中心に更に説明する。図5は、変速レバー190の斜視図であり、図6はミッションケース4の変速ギア機構を説明する概略断面図である。
変速レバー190は、図5に示す通り、「前進」走行、「中立(停止)」、及び「後進」走行の3つの走行モードの切り替えと、植付作業を行うときの走行速度を低く設定する「植付1」と、走行速度を高く設定する「植付2」の切り替えを行う為のレバーであり、作業者が手動で回動出来る構成になっている。
また、変速レバー190の先端部、即ち、作業者が手で握る部分であるノブ192と反対側の変速レバー端部191は、ミッションケース4の変速ギア機構の一端に連結されている。
変速ギア機構は、シャフト193にスライド移動可能に保持された大小一対のギア194と、シャフト193に平行にスライド可能に配置され、一端側196aがミッションケース4の外に突き出しており、他端側に5つの貫通孔196bが形成されており、大小一対のギア194をスライド移動させるギアシフトプレート195が途中に固定された棒状の変速用シフタ196と、貫通孔196bの開口部にばね196cで押圧されて配置されたスチールボール196dとを備え、変速用シフタ196の一端側196aには、変速用シフタ196が変速レバー190の回動動作に連動して軸方向にシフト移動可能な構成とすべく、変速レバー端部191に固定され、その変速レバー端部191の回動軸に直交する方向に突き出した連結板197の先端部197aに連結されている。
また、連結板197の根本部には突起部197bが形成されている。そして、変速レバー190による植付作業を行うときの走行速度の切り替えを検知するために当該突起部197bの近傍に配置された第1変速スイッチ198と第2変速スイッチ199のそれぞれのスイッチ可動プレート198a、199aを、その突起部197bが、変速レバー190の回動位置に応じて、押圧したり、押圧しなかったり出来る構成である。
即ち、変速レバー190が、低速の走行速度で植付作業を行う「植付1」に切り替えられた場合、第1変速スイッチ198がONし、且つ、第2変速スイッチ199がOFFしている。
一方、変速レバー190が、高速の走行速度で植付作業を行う「植付2」に切り替えられた場合、第1変速スイッチ198がOFFし、且つ、第2変速スイッチ199がONしている。
また、変速レバー190が、「中立(停止)」モードの位置に切り替えられた場合、第1変速スイッチ198がOFFし、且つ、第2変速スイッチ199がONしている。
また、変速レバー190が、「前進」モード、及び、「後進」モードの何れに設定されても、第1変速スイッチ198がOFFし、且つ、第2変速スイッチ199がOFFしている。
何れの場合でも、それぞれのスイッチからON情報、又はOFF情報を制御部800に送る構成である為、制御部800は、変速レバー190により、「植付1」が設定されているのか、「植付2」が設定されているのか、それとも「中立(停止)」モードが設定されているのかを判定することが出来る(図14参照)。
本実施の形態において、変速レバー190が「中立(停止)」モードに設定されていることを、制御部800に判定させる構成としたことにより、走行車体15が走行を停止しているときに、制御部800からソレノイド470に通電指令を出して、植付クラッチ420を「入り」状態として、植付具11を作動させることが可能となり、中立モードで、植付具11の伝動確認が出来るという効果を発揮する。
尚、制御部800による上記判定結果の、植付株間の制御等への活用については更に後述する。
また、図6に示された、連結板197と大小一対のギア194の位置は、変速レバー190が「前進」走行のモードに設定されている場合と、「後進」走行のモードに設定されている場合の、両方の場合について、それぞれ実線で描いた。
以上の構成により、変速レバー190が、図5に示した「前進」から「後進」の5つの内の何れのモードに設定されるのかに応じて、変速用シフタ196が軸方向にスライド移動することで、大小一対のギア194がスライド移動して、連結相手となるギア(図示省略)が変更される。
次に、図7(a)、図7(b)、図8を用いて、上述したトレイ供給装置100について更に説明する。
図7(a)は、トレイ供給装置100の斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のX部の拡大斜視図である。図8は、トレイ供給装置100のトレイ縦送り装置120の構成を示す概略側面図である。
トレイ20は、複数の育苗ポット21を縦横に連設したもので、プラスチックで形成されていて、可撓性を保持する構成になっている。各育苗ポット21は表面側で連結し、裏面は独立した形態となっている。
トレイ供給装置100は、トレイ20の底部を支持する前下がりに傾斜したトレイ搬送路111を有する苗置台110と、トレイ20をトレイ搬送路111に沿って縦方向に間歇的に送るトレイ縦送り装置120と、トレイ搬送路111を有する苗置台110を左右方向に移動させるトレイ搬送路移動装置170(図2参照)と、縦送り駆動チェーンベルト181やギア機構182を収納した苗送り伝動ケース180(図2参照)と、を備える。
また、トレイ縦送り装置120は、トレイ20の裏面側から、当該裏面側に突き出した育苗ポット21同士の間に入り、下方に移動することでトレイ20を育苗ポット21の横一列分だけ送り、その後、育苗ポット21同士の間から抜け出して、育苗ポット21の横一列分だけ上方に移動する構成のトレイ送りロッド121を有している。トレイ送りロッド121は、中央部121aがトレイ搬送路111の下部に設けられた退避溝111aに出入り可能に構成され、両端部121bは直角に折り曲げられて、トレイ搬送路111の両サイドより外側に位置しており、トレイ20がトレイ搬送路111上を移動する際に、
邪魔にならない構成である。
更に、トレイ供給装置100は、退避溝111aの下流側であってトレイ搬送路111の両サイドの端面部において、トレイ送りロッド121の動きを規制するための左右一対のロッドガイドプレート112を備えている。このロッドガイドプレート112の上端縁部には、トレイ送りロッド121の中央部121aの両端で下流側に突き出した突起部121abが進入可能な切り欠き部112aが形成されている(図7(b)参照)。
即ち、この切り欠き部112aは、トレイ送りロッド121の中央部121aが、下方に移動した後、育苗ポット21同士の間から抜け出すまでの間において、一時的にトレイ送りロッド121の中央部121aの両端の突起部121abを保持して、育苗ポット21に入れられている苗の重みでトレイ20が下方へずれ動くことを規制する構成である。尚、トレイ送りロッド121の中央部121aの軌跡については、図8を用いて後述する。
また、トレイ搬送路移動装置170は、トレイ搬送路111の裏面側に設けられ、苗移植機1の本体側から駆動力を得て、トレイ搬送路111を有する苗置台110を左右方向に移動させるリードカム軸171と、リードカム軸171より上方に設けられ、トレイ搬送路111を有する苗置台110の左右方向への移動を案内する案内レール155とを有している。
尚、本実施の形態のトレイ搬送路移動装置170は、本発明の横送り装置の一例にあたり、本実施の形態のトレイ縦送り装置120は、本発明の縦送り装置の一例にあたる。
また、トレイ搬送路111は、リードカム軸171と、トレイ搬送路111の内側上部に設けられた左右移動を案内する案内レール155により支持されている。これにより、案内レール155はリードカム軸171と離れた位置でトレイ搬送路111を支えるため、左右方向への移動時にがたつきが少ない。
トレイ搬送路111と押え枠25との間に挟み込むようにしてトレイ20を苗載台110の上方から差し込むと、トレイ20の裏面側の溝部にトレイ送りロッド121の先端部が係合した状態となり、この状態でトレイ送りロッド121が側面視で略四角形の軌跡Aを描いて回動することにより、トレイ20がトレイ搬送路111に沿って斜め下方に間欠的に縦送りされる構成である。
尚、トレイ送りロッド121を用いて、トレイ20の縦送りを間欠的に行う機構については、更に後述する。
ところで、取出装置200は、苗置台110の下端部に対向する位置に配置されており、取出爪210の先端が軌跡Kを描く様に作動して、横方向に移動する育苗ポット21から、順次、苗を取り出して植付装置7に供給する構成である。
次に、主として図9、図10を用いて、本実施の形態の苗移植装置1に設けられた取出装置200の構成を中心に説明する。
図9は、取出装置200の概略斜視図であり、図10は、図9の紙面の左上奥側から右下手前側を見た、取出装置200の概略側面図である。
図9、図10に示す通り、取出装置200は、苗移植機1の本体に固定された取出装置固定部材201に回動可能に保持されて、チェーンベルト202を介して本体側の駆動源の動力で矢印B方向に回動する駆動軸203により同方向に回動する駆動アーム220と、駆動アーム220の先端側部220aに、一端部230aが回動自在に連結された連結アーム230と、取出装置固定部材201に固定ピン201a、201bによって保持され、外形が略アルファベットのJ文字の形状を呈した板状部材であって、トレイ供給装置100に近い側が直線状であり遠い側が略R状に立ち上がった形状を呈した案内溝241を有する案内部240と、を備えている。
また、取出装置200は、案内溝241に対してがたつくことなく且つスムーズにスライド移動可能に挿入された、後述するカム軸271と一体である第1の被案内部材245と、第2の被案内部材247とが連結され、それら被案内部材が連結された側面の一端側から突き出して略直角に折り曲げられた折り曲げ部251を有する基板250と、基板250の折り曲げ部251から垂直に突き出して、回動自在に保持された左右一対の取出爪保持ピン252L、252R、根元部がそれぞれ左右一対の取出爪保持ピン252L、252Rに取付られ、先端部の幅がピンセット状に細くなっている、育苗ポット21内の苗を取り出す一対の取出爪261L、261Rと、一対の取出爪261L、261Rの対向する内面部の根元部側にその両端が取り付けられた引っ張りバネ263とを有する取出部材260と、を備えている。
また、取出装置200は、基板250に回動自在に貫通した、上記第1の被案内部材254と一体であるカム軸271を有したカム270であって、そのカム270の外周部の厚みに関して、上記一対の取出爪261L、261Rの内面部に設けられた左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触する際、その外周部の場所によって厚みが変化している外周部272と、そのカム270の最外縁部のカム軸271の軸中心からの距離(外径ともいう)に関して、その最外縁部の場所によってその外径が変化している最外縁部273とを備えたカム270と、基板250に回動自在に連結され、カム270の最外縁部273の外径の変化により、一対の取出爪261L、261Rに沿って、育苗ポット21から取り出して一対の取出爪261L、261Rで保持されている苗を押し出す押出機構280と、を備えている。
また、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aは、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されている。また、カム軸271と一体である第1の被案内部材245は、駆動アーム220の回転力によって、第1ギア291、第2ギア292、第3ギア293から構成された伝達機構290を介して回動させられ、駆動アーム220の駆動周期に合わせてカム軸271へ駆動力を伝達する構成である。
また、カム270の外周部272が、一対の取出爪261L、261Rの内面側に設けられた左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触する際、カム270の外周部272の厚みの変化と、引っ張りバネ263の復元力との相互作用により、一対の取出爪261L、261Rを開閉させる構成である。
次に、上記伝達機構290について更に説明する。
即ち、第1ギア291は、駆動アーム220の先端側部220aに固定されており、連結アーム230に対しては、第1回動軸291aを介して回動自在に取り付けられている。また、第3ギア293は、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端部245bに固定されており、第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aが、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されているため、第3ギア293は、連結アーム230に対して回動自在に保持されている。従って、第3ギア293は、第1の被案内部材245と一体で回動する。また、第2ギア292は、連結アーム230の中央位置において回動自在に取り付けられており、第1ギア291及び第3ギア293の両方に挟まれて、双方のギアと嵌合している。
次に、上記押出機構280について、主として図10を参照しながら更に説明する。押出機構280は、一対の取出爪261L、261Rで保持されている苗を押し出す、先端部281aが直角に折り曲げられ取出爪261L、261Rの先端部の幅に合わせた切欠部281bが形成された押出ロッド281と、略直角状に折り曲げられた連結棒282であって、その一方の先端部282aが押出ロッド281の後端部に設けられた後端孔部281cに回動自在に挿入されて、抜け防止のワリピン(図示省略)で保持された連結棒282と、連結棒282の他方の先端部282bが上端部283aに固定され、下端部283bが基板250に対して押出アーム連結軸283dにより回動自在に取付られ、中央部の引っ張りバネ保持用第1突起283cが設けられた押出アーム283と、一端が引っ張りバネ保持用第1突起283cに引っ掛けられ、他端が基板250に固定された引っ張りバネ保持用第2突起250aに引っ掛けられた押出アーム引っ張りバネ284と、を備えている。
そして、カム270が矢印B方向に回動した際、最外縁部273の内で他の部分273aより外径が大きい突出部273bが、引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、押出アーム引っ張りバネ284が引き延ばされ、押出アーム283は、図10において反時計方向に回動さられて、連結棒282で連結された押出ロッド281が後退する構成である(矢印C参照)。また、カム270が矢印B方向に回動した際、最外縁部273の内で突出部273bより外径が小さい他の部分273aが、引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、押出アーム引っ張りバネ284が縮まり、押出アーム283は、図10において時計方向に回動さられて、連結棒282で連結された押出ロッド281が突き出てくる構成である(矢印D参照)。押出ロッド281が突き出してくる度に、押出ロッド281の先端部281aに設けられた切欠部281bを、一対の取出爪261L、261Rの先端部が通過することになるので、その先端部に付着していた土等が取り除かれる構成である。
ここで、押出ロッド281は、上部が平面状に構成されているが、これにより、一対の取出爪261L、261Rに苗の葉がからむのを防止出来る。
以上の構成において、次に、図9〜図11を参照しながら、取出装置200の動作を説明する。上述した通り、案内部240は、苗移植機1の本体に固定された取出装置固定部材201にしっかりと固定されているため動かない。
駆動アーム220の回動に伴って、連結アーム230が揺動するが、その動きは、案内部240に形成された案内溝241を貫通して基板250に連結されている第1の被案内部材245により規制される。
一方、連結アーム230の動きに伴って、基板250も揺動するが、基板250は、第1の被案内部材245の他に、第2の被案内部材247が、案内溝241を貫通している為(但し、第2の被案内部材247は連結アーム230には連結されていない)、その動きは、案内溝241に沿った往復移動を繰り返す。基板250には、取出部材260が取り付けられている為、取出部材260も基板250と同様の動きをし、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、図10、図11に示す軌跡Kを描く。
ここで、図11は、駆動アーム220の回動の位置と、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置との概略の対応関係を示す模式図である。図11に示す、駆動アーム220の回動の位置P1〜P6は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置K1〜K6に対応する。尚、軌跡Kを示す破線上に記載した矢印は、動作方向を示している。
図11に示す通り、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K1から位置K2に向かう動作は、育苗ポット21から苗を抜き取る動作に対応している。位置K1から位置K2までの軌跡Kが直線状になっていることから、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21から真っ直ぐに後退する。この時、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpには、引っ張りバネ263の復元力により、互いに近づく方向の力が作用しており、育苗ポット21から抜き取った苗を保持することが出来る。尚、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作については、押出ロッド281の動作と合わせて、更に後述する。
尚、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K6から位置K1に向かう動作は、苗取出位置にあるトレイ20の育苗ポット21内の苗に対して、一対の取出爪261L、261Rを挿入させる動作に対応しており、位置K1から位置K2に向かう軌跡Kとほぼ同じ経路を逆向きに移動するので、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21にほぼ真っ直ぐに挿入される。この時、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpには、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用しており、双方の先端部が開いた状態で、育苗ポット21に進入出来る。
これにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、トレイ20、育苗ポット21、及び苗自体を傷付けることが無い。
尚、位置K1から位置K2までの軌跡K、及び、位置K6から位置K1までの軌跡Kが、概ね直線状になっているのは、案内溝241のトレイ供給装置100に近い側が直線状に形成されている為である。
次に、位置K2から位置K3に向かうに従って、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、それまで育苗ポット21に対向していた姿勢から略下方に向けて急激に姿勢を変化させ、位置K4まで移動した時には、先端部261Lp、261Rpは、ほぼ真下を向いている。
尚、この様に、略下方に向けて急激に姿勢を変化させるのは、案内溝241のトレイ供給装置100から遠い側が、略R状に立ち上がった形状に形成されている為である。
そして、丁度その時、その先端部261Lp、261Rpの下方には、上死点に向けて軌跡T1(図1参照)上の上昇工程にある植付装置7の苗投入口(図示省略)が上方に向いており、位置K4から位置K5の間において、押出ロッド281により一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpから押し出された苗が、植付装置7の苗投入口に落下し、植付具11へ供給される。尚、押出ロッド281の動作については、更に後述する。
次に、位置K5から位置K6に向かうに従って、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、それまで略下方に向けていた姿勢を次の育苗ポット21に対向出来る様に急激に姿勢を変化させて、位置K1まで移動した時には、先端部261Lp、261Rpは、新たな育苗ポット21に挿入されている。
図11に示す、駆動アーム220の回動の位置と、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの軌跡K上の位置との概略の対応関係から分かる様に、位置K4から位置K5に向かう動作は、上述した位置K1から位置K2に向かう動作に比べてゆっくり行われるので、育苗ポット21からの苗の取出は素早く行えて、且つ植付装置7への苗の放出を確実に行える。
この様な動作が行われるのは、連結アーム230が、駆動アーム220より前方(トレイ供給装置100の抜き取り位置)側に設けられているためである。また、駆動アーム220が、連結アーム230に比べて、トレイ供給装置100の抜き取り位置から遠い為、苗を取り出す時に苗に接触することが無く、邪魔にならない。
次に、主として図9、図10、図11を参照しながら伝達機構290と押出機構280の動作を中心に説明する。
図9に示す通り、駆動アーム220のB方向への回動により、駆動アーム220の先端側部220aに固定された第1ギア291は、駆動アーム220の回動支点220bを中心としてB方向へ公転する。第1ギア291は、連結アーム230に対して第1回動軸291aを介して回動自在に取り付けられており、第2ギア292を介して、第3ギア293をB方向に回動させる。第3ギア293は、カム軸271と一体である第1の被案内部材245の先端部245bと固定されており、且つ、第1の被案内部材245の先端近傍縁部245aが、連結アーム230の他端部230bに回動可能に連結されているため、
第3ギア293の回動により、カム軸271を介して、カム270がB方向に回動する。即ち、駆動アーム220の駆動周期に合わせてカム270が回動する。
カム270は、場所によって厚みが変化している外周部272と、場所によってカム軸271の軸中心からの距離(外径)が変化している最外縁部273を有しており、図10に示す通り、最外縁部273の内で突出部273bは、他の部分273aより外径が大きく、カム軸271の軸中心から同じ距離にある外周部272の内で第1の範囲272aの厚みは、残りの肉厚部分である第2の範囲272bの厚みに比べて薄く設定されている。
以上の構成のもとで、駆動アーム220の駆動周期に同期してカム270が回動する際、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K6から位置K1に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、カム270の外周部272の内、肉厚部分である第2の範囲272bが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用しており、双方の先端部が開いた状態である。
一方、この時、カム270の最外縁部273の内、突出部273bが、引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触していることにより、押出アーム引っ張りバネ284が引き延ばされ、押出アーム283は、図10において反時計方向に回動して(矢印C参照)、連結棒282で連結された押出ロッド281が後退した状態を維持する。
よって、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、育苗ポット21に進入して、苗を取り出すことが出来る。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K1から位置K2に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、位置K1から位置K2に向かう動作を開始すると同時に、カム270の外周部272の内、肉薄部分である第1の範囲272aが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力により、互いに近づく方向に移動するので、双方の先端部が閉じた状態になる。
一方、この時、カム270の最外縁部273の内、突出部273bが、依然として引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触していることにより、押出アーム引っ張りバネ284が引き延ばされ、押出アーム283は、図10において反時計方向に回動した状態を維持しており(矢印C参照)、連結棒282で連結された押出ロッド281が後退した状態を維持している。よって、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、取り出した苗を先端部にしっかりと保持することが出来、そのまま、植付装置7側へ移動して行く。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K4から位置K5に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、位置K4から位置K5に向かう動作を開始すると同時に、カム270の最外縁部273の内、突出部273bに代わり他の部分273aが、引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、押出アーム引っ張りバネ284の復元力で、押出アーム283は、瞬時に、図10において時計方向に回動した状態となり(矢印D参照)、連結棒282で連結された押出ロッド281が押し出されると同時に、押出ロッド281の先端部281aの切欠部281bが、一対の取出爪261L、261Rの先端部を押し広げながら移動する。
これにより、押出ロッド281の先端部281aにより一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpから押し出された苗が、植付装置7の苗投入口に落下し、植付具11へ供給される。この時、押出ロッド281の先端部281aの切欠部281bが、一対の取出爪261L、261Rの先端部を押し広げながら移動することになるので、その先端部に付着していた土等が同時に取り除かれる。
次に、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、位置K5から位置K6に向かう動作を行う時の一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの開閉動作、及び、押出ロッド281の動作は次の通りである。
即ち、カム270の外周部272の内、肉薄部分である第1の範囲272aに代わり肉厚部分である第2の範囲272bが、左右一対の爪先端幅規制突起262L、262Rの先端面と接触することにより、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpは、引っ張りバネ263の復元力に対抗して、互いに遠ざかる方向の力が作用して、双方の先端部が開いた状態に変化する。
一方、位置K6の近傍に来た時、カム270の最外縁部273の内、他の部分273aに代わり突出部273bが、引っ張りバネ保持用第1突起283cの根元部の外周縁部に接触することにより、押出アーム引っ張りバネ284が引き延ばされ、押出アーム283は、図10において反時計方向に回動さられて(矢印C参照)、連結棒282で連結された押出ロッド281が後退した状態に変化する。
尚、上記実施の形態では、一対の取出爪261L、261Rを根元部から先端部に亘り、一体もので同一の金属製の板部材で構成されている場合について説明したが、これに限らずの先端側について、取り外しが可能で弾性を有した例えばゴム板や、樹脂板で構成されていても良い。これにより、引っ張りバネ263の復元力で先端部が苗をつかんでも、先端側の弾性によりゴム板の方が変形するので、苗を潰さないという効果を発揮する。
また、押出ロッド281は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが位置K6の近傍に移動するまでは、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpの上方を覆う様に構成されているが、これにより、位置K5から位置K6に移動する際に、トレイ20上の苗の葉が一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpに引っ掛かるのを防止出来る。
また、押出ロッド281は、一対の取出爪261L、261Rの先端部261Lp、261Rpが、育苗ポット21に挿入される時の挿入速度に合わせて、後退させる構成としており、これにより、苗の葉が端部261Lp、261Rpに絡まるのを防止出来る。
次に、再び、図7、図8を参照しながら、トレイ供給装置100のトレイ送りロッド121を間欠的に駆動させる機構を中心に更に説明する。
図8に示す通り、トレイ縦送り装置120は、(1)上述したトレイ送りロッド121と、(2)トレイ送りロッド121の両端部121bの上側先端部121b1が固定され、片方が内側に湾曲した湾曲縁部131aを有する突起状カム131が下部に形成された送りロッドアーム130と、(3)根元部141が、苗置台110の側板110aに回動自在に支持され、先端部の先端軸部142で送りロッドアーム130を回動自在に支持する、下端縁部に第1凹部143a、第2凸部143b、第3凹部143cが側面視で滑らかに連続して形成された送りアーム140と、(4)苗移植機1の動力原から得た駆動力により矢印E方向に回動する縦送り駆動軸151を取出装置200側から見て、縦送り駆動軸151の中央位置と右端位置の2箇所にそれぞれ固定され、先端部に牽制ローラ152を回動自在に有する縦送り駆動アーム150と、を備える。
また、送りアーム140の先端部の先端軸部142と、苗置台110の側板110aの下部110a1との間には、送りアーム140に常に下向きに引っ張る力が印加される様に、送りアーム引っ張りバネ160が取り付けられている。また、送りアーム140の根元部141には、送りロッドアーム130の上端部に取り付けられたピン132に一方端が取り付けられた送りロッドアーム引っ張りバネ161の他方端を保持するバネ取付ロッド163が固定されている。
次に、図7、図8を参照しながら、トレイ送りロッド121の間欠的な動作について説明する。
リードカム軸171の回動により、苗置台110が右方向すなわち矢印F方向(図7参照)に向けて移動しているとする。その時、縦送り駆動軸151は矢印E方向に回動している(図8参照)。
その間において、取出装置200は、右端の育苗ポット21から順次、苗を取り出して植付装置7に苗を供給しており、その後、苗置台110が最右端に移動した時点で、最左端の育苗ポット21の苗が取出装置200により取り出される。これにより、育苗ポット21の横一列分の全ての苗が取り出されたことになる。
この時、縦送り駆動軸151と共に矢印E方向に回動している、縦送り駆動軸151の右端に固定されている縦送り駆動アーム150の先端部に回動自在に取り付けられている牽制ローラ152が、送りアーム140の第1凹部143aとの接触を開始した後、少し遅れて送りロッドアーム130の湾曲縁部131aとの接触を開始する構成であるので、トレイ送りロッド121は、送りアーム140の時計回りの回動に伴い一旦上昇移動した後、先端部の先端軸部142aを中心に反時計回りに回動を開始する。
即ち、トレイ送りロッド121が、矢印121a0(図7(b),図8参照)の方向に一旦上昇移動することにより、それまで切り欠き部112a(図7(b)参照)に保持されていたトレイ送りロッド121の突起部121ab(図7(b)参照)が、切り欠き部112aから抜け出すと共に、それまで育苗ポット21の裏側の隙間21aで待機していたトレイ送りロッド121の中央部121aも、その隙間21aの範囲内で矢印121a0の方向に上昇移動する。その後、送りロッドアーム130が、先端部の先端軸部142を中心に反時計回りに回動を開始することにより、トレイ送りロッド121の中央部121aは、矢印121a1(図8参照)の方向に移動する。尚、切り欠き部112aの切り欠き深さは、トレイ送りロッド121の中央部121aが隙間21aの範囲内で移動できる程度に設定されている。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152が送りロッドアーム130の湾曲縁部131aとの接触を続けているため、トレイ送りロッド121の中央部121aは退避溝111aに位置した状態を維持している。この時、同時に牽制ローラ152が送りアーム140の第1凹部143aから第2凸部143bに向けて移動するので、送りアーム140は更に時計回りに回動し、トレイ送りロッド121の中央部121aは、結果的に、退避溝111aに位置した状態を維持しつつ、矢印121a2(図8参照)の方向に移動する。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152が送りロッドアーム130の湾曲縁部131aと非接触状態となると同時に、送りロッドアーム引っ張りバネ161の復元力により送りロッドアーム130が先端部の先端軸部142を中心に時計回りに瞬時に回動することで、トレイ送りロッド121の中央部121aは、隙間21aから育苗ポット21の一列分だけ上側に位置する隙間21bに向けて、矢印121a3に示す様に移動する。
その後、更に、牽制ローラ152が回動を続けると、牽制ローラ152は、送りアーム140の第3凹部143cと接触しながら移動するので、送りアーム引っ張りバネ160の復元力により送りアーム140が下方に引っ張られて、トレイ送りロッド121の中央部121aは、結果的に、隙間21bに位置した状態を維持しつつ、矢印121a4(図8参照)の方向に移動するとともに、トレイ送りロッド121の中央部121aの突起部121abが切り欠き部112aに保持される。
そして、矢印121a4(図8参照)の方向に移動したトレイ送りロッド121の中央部121aは、育苗ポット21の裏側の育苗ポット同士の隙間に位置した状態を維持しており、苗置台110が、矢印G方向、即ち左方向に移動を開始すると、取出装置200は、左端の育苗ポット21から順次、苗を取り出して植付装置7に苗を供給し、その後、苗置台110が最左端に移動した時点で、最右端の育苗ポット21の苗が取出装置200により取り出される。これにより、育苗ポット21の横一列分の全ての苗が取り出されたことになる。
また、この間は、トレイ送りロッド121の中央部121aの突起部121abが切り欠き部112aに保持されているので、育苗ポット21に入れられている苗の重みでトレイ20が下方へずれ動くことを防止出来る。
尚、育苗ポット21の横一列分の全ての苗が取り出されると、上記と異なり、縦送り駆動軸151の中央位置に固定されている縦送り駆動アーム150の先端部に回動自在に取り付けられている牽制ローラ152が、送りロッドアーム130の湾曲縁部131aと、送りアーム140の第1凹部143aとの接触を開始する。
上記の動作を繰り返すことにより、トレイ20は、右方向又は左方向に移動されるとともに、育苗ポット21の一列分だけ間欠的に縦送りされる。
これにより、コンパクトな構造のトレイ縦送り装置120が得られる。また、案内レール155と、リードカム軸171の簡単な構造でトレイ搬送路111を左右移動可能に支持出来る。
また、トレイ送りロッド121の中央部121aは、トレイ搬送路111の平面部111bに配置されているので、トレイ20が内側に撓むことがないので、育苗ポット21の裏側において、一定幅の隙間21a、21bを確保出来るため、トレイ送りロッド121が隙間21a、21bに確実に入ることが出来る。
また、トレイ搬送路111の平面部111bの下流側に曲面部111cが設けられているので、トレイ20はその曲面にそって撓む。そのため、トレイ送り時に、トレイ送りロッド121が、矢印121a2の方向に移動している時でも、その撓みが抵抗となって、
トレイ20が下流側にずれることが防止される。
次に、図12を参照しながら、操作ハンドル8の左右一対のハンドルグリップ8L、8Rの近傍に配置された各種操作レバー、及び操作部600について説明する。図12は、操作ハンドル8の左右一対のハンドルグリップ8L、8Rの近傍に配置された各種操作レバー、及び操作部600を説明する平面図である。
図12に示す通り、操作ハンドル8の左側のハンドルグリップ8Lの近傍には、主クラッチレバー80が設けられ、右側のハンドルグリップ8Rの近傍には、油圧昇降シリンダ10を作動させる昇降操作レバー81が設けられている。
昇降操作レバー81は、「下げ」、「中立」、「上げ」の3段階に手動切り替え可能に構成されており、「下げ」位置に切り替えると、油圧昇降シリンダ10が走行車体15を下降させるべく作動し、後述するセンサ板710(図13参照)により下降が停止されると共に、後述する植付入り切りボタン620(図12参照)がON状態であれば、植付クラッチ420が「入り」状態となり、植付作業が開始される。
また、昇降操作レバー81を「中立」位置に切り替えると、植付作業を停止させ、「上げ」位置に切り替えると、油圧昇降シリンダ10が走行車体15を上昇させるべく作動する。
また、図12に示す通り、操作パネル601には、その左端から右端に向けて順に、(1)走行車体15の走行を停止させた状態で植付具11のみ作動させるための空植操作ボタン610と、(2)昇降操作レバー81が、走行車体15を下降させる下降操作位置に操作された際、その下降操作に連動して植付具11を作動させる状態と、その下降操作に連動させない状態との何れかに切り替える植付入り切りボタン620と、(3)少なくとも植付株間を表示する表示部630と、(4)少なくとも植付株間を調節する調節ボタン640と、が配置されている。
尚、植付入り切りボタン620は空植操作ボタン610と電気的には直列に繋がっているので、空植操作ボタン610をON操作する際には、植付入り切りボタン620もON操作することにより、植付具11が作動する。
ここで、表示部630について更に説明する。本実施の形態の苗移植機1では、変速レバー190により、低速走行による植付作業を行う「植付1」が指定されるか、それとも、高速走行による植付作業を行う「植付2」が指定されるかに応じて、表示部630に表示可能な植付株間の範囲を異ならせている。
具体的には、変速レバー190を「植付1(低速走行)」に設定したときは、作業者が設定可能な植付株間の範囲は、22cm〜40cmであり、変速レバー190を「植付2(高速走行)」に設定したときは、作業者が設定可能な植付株間の範囲は、32cm〜70cmであることが、制御部800のメモリ部810に予め初期設定されている。これら初期設定値は、それぞれ変更可能に構成されている。例えば、「植付1」と「植付2」の速度比を変更した場合、操作部600において、植付株間の範囲を変更するモードに切り替えた後、調節ボタン640を用いて、植付株間の範囲をそれぞれ独立して変更設定出来る構成である。
本実施の形態では、変速レバー190が「植付1」と「植付2」の何れに設定されているかを第1変速スイッチ198と第2変速スイッチ199からの出力信号に応じて判定した制御部800(図14参照)は、表示部630に対してその判定結果に対応した指令を出す。これにより、作業者が設定可能な植付株間の範囲が表示される。
即ち、表示部630の左半分の領域に、作業者が設定可能な植付株間の範囲である上限と下限が同時に表示され、且つ、右半分の領域に、植付株間のセンター値を仮の値として表示する構成である。
作業者は、表示部630の左半分の表示領域に表示された植付株間の範囲内において、表示部630の右半分の表示領域に表示されている仮の値を、所望の株間に変更すべく、調節ボタン640を操作する。
こうして作業者により設定された植付株間を実現する為に、制御部800は、(i)調整ボタン640により設定された植付株間の数値情報と、(ii)変速レバー190により「植付1」と「植付2」の何れが設定されたかを判定する為の、第1変速スイッチ198と第2変速スイッチ199からのON信号の有無と、を利用して、植付クラッチ420を「入り」状態にする為の、ソレノイド470の作動周期を決定し、その決定した作動周期に従って、ソレノイド470を通電させる。
これにより、変速レバー190により指定された走行速度(「植付1(低速)」、「植付2(高速)」)に対応した、植付株間の範囲が表示可能な表示部630を利用することで、指定された走行速度に対応した植付株間の範囲内で、作業者は適正な植付株間を設定することが出来る。
例えば、走行速度を遅いモードに設定した時は、狭い植付株間で植え付けることになる。その為、植付具の作動速度が極端に速くならないので、植付精度の向上を図ることができる。また、走行速度を速いモードに設定した時は、広い植付株間で植え付けることになる。その為、作業能率を向上させることができる。
つまり、本実施の形態の苗移植機1によれば、例えば、狭い植付株間で植え付けたいときは、走行速度を遅くし植付具の作動速度が極端に速くならないようにして、植付精度の向上を図ることができ、広い植付株間で植え付けたいときは、走行速度を速くして作業能率を向上させることができる。
また、圃場や走行速度等の作業条件に対応して、適正な植付株間に設定出来る。
即ち、例えば、傾斜地において植付作業を行う場合、上り傾斜面と下り傾斜面で、同じ植付株間を実現するためには、走行車体15のスリップを考慮した植付株間の設定が必要となる。本実施の形態では、「植付1」と「植付2」で、双方に対応する植付株間の範囲において、重複した範囲を設定したことにより、上り傾斜面と下り傾斜面で、同じ植付株間を実現することが可能となる。
具体的には、本実施の形態では、重複した植付株間の範囲は、32cm〜40cmである。そこで、上り傾斜面では、スリップを考慮して、変速レバー190を、高速走行が可能な「植付2(高速)」に設定して、植付株間を33cmに設定する。
一方、下り傾斜面では、スリップを考慮して、変速レバー190を、低速走行が可能な「植付1(低速)」に設定して、植付株間を30cmに設定する。
これにより、実際の植付株間は、上り傾斜面で31.5cm、下り傾斜面で31.5cmが実現出来る。
また、「植付1」と「植付2」とで、植付株間の調節範囲を異ならせることにより、傾斜地の上り下りに対応することの他、広い株間で植え付けるときは走行速度を速くして作業能率を向上させる効果もある。
尚、本実施の形態のメモリ部810は、本発明の格納部の一例にあたり、本実施の形態の制御部800は、本発明の決定部の一例にあたる。また、本実施の形態の調整ボタン640は、本発明の株間切り替え部の一例にあたる。
ここで、再び、操作パネル601の説明に戻る。即ち、上記構成により、植付入り切りボタン620が、操作パネル601の中央部付近に配置されているので、操作がし易い。
また、空植操作ボタン610が、他の操作ボタンが配置された上面601aとは異なる後面601bの左側に配置されているので、作業者による誤操作を低減することが出来る。
また、表示部630が、操作パネル601の中央付近に配置されているため、確認し易い。
調整ボタン640は、上側に株間を広げる方向に変化させる「上げ」プッシュスイッチ640aと、下側に株間を狭める方向に変化させる「下げ」プッシュスイッチ640bとを備えている。
上記構成により、「上げ」プッシュスイッチ640a、「下げ」プッシュスイッチ640bを操作することで、株間を示す数値がダイレクトに表示部630に表示されるので、作業者が株間を認識し易い。
次に、主として図13、図14を参照しながら、植付深さ調整機構700と、植付入り切りボタン620と、昇降操作レバー81等の操作に基づいて、植付の入り切りを行うソレノイド470等の動作を制御する制御部800を中心に説明する。
図13は、植付深さ調整機構700の概略構成を示す左側面図であり、図14は、制御部800への入出力を説明する概略ブロック図である。
図13に示す通り、植付深さ調整機構700は、(1)圃場面701に接することで苗の植付深さを一定に保持する、底面が緩やかに湾曲したセンサ板710と、(2)側面視で略L字形状の板状部材であって、L字の屈曲部が回動支持軸721により走行車体15に対して回動可能に支持され、後方に延びる一端部722がセンサ板710の前端部711と回動支持軸722aを介して回動自在に連結されると共に、上方に延びる他端部723が、作業者が手動で操作してセンサ板710の垂直(上下)方向の位置を設定する深さレバー730の動きを伝達する伝達ロッド740の先端部741と回動自在に連結された深さアーム720と、(3)深さアーム720を主フレーム17から揺動自在に吊り下げるスプリング750と、(4)側面視で略L字形状の板状部材であって、L字の屈曲部が回動支持軸761により走行車体15に対して回動可能に支持され、回動支持軸761の下部に長孔762が形成されていると共に、上端部763に連結された引っ張りスプリング766により、回動支持軸761を軸芯として矢印Y方向に回動すべく付勢され、油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブ(図示省略)に対して、前端部764がロッド765で連結されたカウンタアーム760と、(5)カウンタアーム760の長孔762の前端側に入り切り検知レバー771が位置すべく、カウンタアーム760上に配置された植付スイッチ770と、(6)一端部781に設けられた連結ピン781aが長孔762内に挿入され、他端部782が連結軸783を介してセンサ板710の上端部712と回動自在に連結されたセンサロッド780と、を備えている。
また、センサロッド780が、センサ板710の上方向への揺動によるセンサ板710の上端部712の矢印Z方向の揺動に連動することで、その一端部781の前端縁部781bが、入り切り検知レバー771を押す方向に移動し、植付スイッチ770をONさせる構成である。
上記構成によれば、深さアーム720がスプリング750で吊り下げされているので、深さアーム720と深さレバー730の連結部分のガタツキを無くし、深さレバー730により設定された深さが安定する。尚、スプリング750は、深さアーム720を吊り下げる構成であるが、これに限らず例えば、深さアーム720を主フレーム側に押し付ける構成であっても良い。
また、上記構成によれば、カウンタアーム760は、センサ板710を押し下げる方向に引っ張りスプリング766で引っ張られているので、センサロッド780とカウンタアーム760によるガタツキを無くすことが出来る。
また、引っ張りスプリング766の弾性力を変えることで、センサ板710を押す力を変えることが出来る。
次に、図14を参照しながら、操作パネル601の下方に設けられた制御部800によるソレノイド470の制御方法について説明する。
図14に示す通り、制御部800には、少なくとも植付入り切りボタン620からの入り切り信号と、昇降操作レバー81の切り替え信号と、植付スイッチ770からの入り切り信号が入力され、これらの入力信号により、ソレノイド470にパルス信号が出力される構成である。
以上の構成のもとで、主として図12〜図14を参照しながら、制御部800の動作を中心に説明する。
ここでは、苗移植装置1を圃場の所定位置に移動させた後、(1)植付作業を開始しようとする場面、その後、(2)圃場内を植付作業しながら走行する場面、そして、(3)畝の端まで来て旋回する場面に分けて説明する。
(1)植付作業を開始しようとする場面:
苗移植装置1を圃場の所定位置に移動させたとき、植付入り切りボタン620は「入り」状態に、昇降操作レバー81は「上げ」位置に、それぞれ設定されており、走行車体15の車高は高い位置にあるものとする。
また、作業者は、変速レバー190を「植付1」に設定したとする。これにより、第1変速スイッチ198がONとなり、第2変速スイッチ199がOFFとなり、第1変速スイッチ198からのみON信号が、制御部800に送られる。制御部800は、第1変速スイッチ198からのON信号を受け取り、且つ、第2変速スイッチ199からのON信号を受け取らなかったので、「植付1(低速)」が設定されたと判定して、メモリ部810に予め格納されている、「植付1(低速)」に対応する植付株間の範囲「22cm〜40cm」を読み出して、表示部630の左半分の表示領域に表示させる。
作業者は、表示部630に表示された植付株間の範囲を見て、所望の植付株間である50cmが、その範囲に入っていないことを確認した後、変速レバー190を操作して、「植付2(高速)」に切り替える。そうすると今度は、表示部630の左半分の表示領域に、植付株間の範囲「32cm〜70cm」が表示されると共に、右半分の表示領域に植付株間の仮の値として51cmが表示される。
作業者は、調節ボタン640を押して、仮の値の51cmを自らが所望する50cmに変更する。これにより、植付株間の設定が完了する。
次に作業者が、昇降操作レバー81を「下げ」位置に操作して、走行車体15の車高を下げることにより、センサ板710が走行車体15と共に圃場面701に向けて下がる。
センサ板710が圃場面701に接するとセンサ板710の前端部711が矢印Z方向(図13参照)に回動するので、センサロッド780の前端縁部781bが、入り切り検知レバー771を押す方向に移動し、植付スイッチ770をONさせることにより、植付スイッチ770からのON信号が制御部800に入力される。
制御部800は、植付入り切りボタン620から「入り」状態を示す信号と、昇降操作レバー81から「下げ」位置を示す信号と、植付スイッチ770から「ON」信号と、をAND条件の下で受け付けたことにより、ソレノイド470を通電させる信号を出力する。
これにより、植付クラッチ420は「切り」状態から「入り」状態に切り替わり、植付作業が開始される。
即ち、制御部800が、上記各種信号を受けて、植付条件が満たされたと判断すると、先ず植付クラッチ420を「入り」状態に切り替えて、植付具11を作動させる構成としたので、作業者が昇降操作レバー81を操作する等して植付作業を開始したとき、即座に植付具11が1株目の苗を植え付ける。これにより、圃場の端から植付動作を開始出来る。
尚、本実施の形態のセンサ板710と植付スイッチ770とを包含する構成は、本発明の高さ検出部の一例にあたる。
(2)圃場内を植付作業しながら走行する場面:
ここでは、昇降操作レバー81は「下げ」位置にあり、センサ板710は圃場面701の凹凸に応じて上下動しているものとする。
また、制御部800は、ソレノイド470に対して、所定の作動周期で通電させるべく、パルス信号をその作動周期で出力する。従って、植付クラッチ420は、ソレノイド470が通電されることにより「入り」状態になると共に間欠用カム441が回動を開始して1回転し終わると(つまり、苗の植付動作を1回し終わると)「切り」状態に戻るという一連の動作を、当該作動周期で繰り返す。
これにより、植付作業が間欠的に行われて、所望の植付株間が実現される。
ここで、所定の作動周期は、作業者により指定された「植付2(高速)」に対応した走行速度、及び作業者により選択された植付株間の値である50cmとに基づいて、制御部800により決定される。尚、所定の作動周期は、制御部800内のタイマーによりカウントされる。
センサ板710の上下動に応じて、油圧昇降シリンダ10が次の通り動作する。即ち、センサ板710が上方に動くと、センサ板710の前端部711が回動支持軸722aを中心に矢印Z方向に移動するとともに、センサロッド780の一端部781に設けられた連結ピン781aが長孔762の前縁部を押す方向に移動すると、カウンタアーム760が回動支持軸761を軸芯として図13中において時計方向に回動し、この動きがロッド765を介して、油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブ(図示省略)に伝達されて、油圧昇降シリンダ10が伸びる方向に作動して、走行車体15の車高が高くなる。
一方、センサ板710が下方に動くと、センサ板710の前端部711が回動支持軸722aを中心に矢印Z方向と反対方向に移動するとともに、センサロッド780の一端部781に設けられた連結ピン781aが長孔762の前縁部から離れる方向に移動すると、引っ張りスプリング766の引っ張り力によりカウンタアーム760が回動支持軸761を軸芯として矢印Y方向に回動し、この動きがロッド765を介して、油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブ(図示省略)に伝達されて、油圧昇降シリンダ10が短くなる方向に作動して、走行車体15の車高が低くなる。
上記動作により、圃場面701に凹凸があっても、苗の植付深さを一定に保持することが出来る。
(3)畝の端まで来て旋回する場面:
この場面では、作業者は、植付作業を中断させるために、昇降操作レバー81を「下げ」位置から「中立」位置に移動させる。
これにより、制御部800は、昇降操作レバー81からの、「中立」位置を示す信号を受けて、ソレノイド470に対するパルス信号の出力を停止する。これにより、植付クラッチ420は「入り」状態から「切り」状態に切り替わった後は、「切り」状態を維持し続けるので、植付作業が中断される。
更に、作業者は、走行車体15を隣の畝に向けて旋回させるために、昇降操作レバー81を「中立」位置から「上げ」位置に移動させる。
この昇降操作レバー81の操作に応じたケーブル82の動きに連動して、油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブ(図示省略)が作動し、油圧昇降シリンダ10が伸びる方向に移動することにより、走行車体15の車高が高くなる。
この時、センサ板710は下がり、植付スイッチ770がOFF状態になるが、制御部800からは何も信号は出力されない。
尚、植付クラッチ420は「切り」状態を維持しており、植付作業が中断したままの状態が継続されている。そこで作業者は、走行車体15を旋回させる。
次に作業者は、昇降操作レバー81を「上げ」位置から「中立」位置を経て「下げ」位置に移動させると、昇降操作レバー81の操作に応じたケーブル82の動きに連動して、油圧切替バルブ部40に備えられた昇降操作バルブが作動し、油圧昇降シリンダ10が短くなる方向に移動することにより、走行車体15の車高が低くなり始める。尚、昇降操作レバー81の上記操作により、昇降操作レバー81が「下げ」位置にあることを示す信号が制御部800に対して出力される。
そして、走行車体15の車体が降下して、やがてセンサ板710が圃場面701に接すると、上記項目(1)で説明したのと同様に、植付スイッチ770がONし、その信号が制御部800に入力される。
植付入り切りボタン620は「入り」状態のままであるので、制御部800は、植付入り切りボタン620から「入り」状態を示す信号と、昇降操作レバー81から「下げ」位置を示す信号と、植付スイッチ770から「ON」信号と、をAND条件の下で受け付けたことにより、ソレノイド470を通電させる信号を出力する。即ち、制御部800は、上記と同様に、ソレノイド470に対して、所定の作動周期で通電させるべく、パルス信号をその作動周期で出力する。
これにより、植付クラッチ420は「切り」状態から「入り」状態に切り替わり、再び植付作業が開始される。
尚、この場合、作業者が昇降操作レバー81を操作する等して再び植付作業を開始したとき、制御部800内のタイマーのカウントがリセットされる構成としたので、次の畝でも即座に植付具11が1株目の苗を植え付ける。これにより、常に圃場の端から植付動作を開始出来る。
上記構成により、植付入り切りボタン620を「入り」状態にしておくことにより、昇降操作レバー81を操作するだけで、上記の(1)植付作業を開始してから、その後、(2)圃場内を植付作業しながら走行し、そして、(3)畝の端まで来て旋回した後、再び植付作業をするという一連の作業を連続して行える。
次に、エンジン12とミッションケース4(図2参照)との間に油圧ポンプ850を配置した構成について、主として図15を用いて説明する。図15は、エンジン12とミッションケース4との間に油圧ポンプ850を配置した構成について説明する側面図である。
図15に示す通り、第1伝動ベルト855は、エンジン12からの駆動力を受けて回転するエンジンプーリ860と主伝動ケース4へ駆動力を伝達するためのミッションプーリ865との間に掛けられている。第2伝動ベルト870は、エンジン12からの駆動力を受けて回転するエンジンプーリ860と油圧ポンプ850を回動させるための油圧プーリ875との間に掛けられている。
第1伝動ベルト855と第2伝動ベルト870は、左右並列に配置されている。また、第1テンションアーム880の先端部には、第1伝動ベルト855にテンションをかけるための第1テンションプーリ881が回動自在に取り付けられている。第2テンションアーム882の先端部には、第2伝動ベルト870にテンションをかけるための第2テンションプーリ883が回動自在に取り付けられている。
第1テンションアーム880と第2テンションアーム882は、左右並列に配置され、且つ、同じ軸885を中心として回動自在に取り付けられている。
以上の構成により、動力伝動機構の構成の簡略化が図れるとともに、コンパクト化が図れる。
上記の移植機は、操作パネル601の調節ボタン640の操作と、第1変速スイッチ198と第2変速スイッチ199のうち選択されている側に基づき、制御部800のメモリ部810に記録された植付株間が自動設定され、所定のタイミングでソレノイド470を作動させて植付クラッチ420を入状態にして、植付具11に苗を植え付けさせる構成である。
しかしながら、圃場を走行するときは、圃場の凹凸や傾斜、前輪2及び後輪3のスリップ等の影響により、設定された植付株間に対して実際の植付株間が狭くなる、または広くなることがある。設定された植付株間と実際の植付株間の差が僅か、例えば作業者が目視しても略等間隔で植え付けられているように見えていれば、一畝当たりの苗の植付本数が減ることや、植付後の苗の生育に影響は殆ど生じないので問題は僅少である。
一方、作業者が目視して植付株間が等間隔ではなく、苗同士の間隔が空き過ぎていると、一つの畝に植付可能な本数の苗が植え付けられず、苗が余ると共に、苗の生育後の作物の収量が減少する問題が生じる。
一方、苗同士の間隔が狭過ぎると、一つの畝に予定以上の苗が植え付けられて苗同士の間隔が狭くなり、風通しや日当たりが悪く、生育不良や病害虫により苗が枯れてしまう問題が生じる。
上記の問題を解消すべく、図1に示すとおり、主フレーム17に鎮圧輪13を支持する鎮圧輪支持アーム13aを回動自在で、且つ操作部600から鎮圧輪13の作用高さ調節、及び鎮圧輪13を圃場面から離間させる操作を可能に設ける。そして、該鎮圧輪支持アーム13aに植付具11が植え付けた苗を検知する第1苗検知センサ900を設ける。
該第1苗検知センサ900は、CCDカメラやカラーセンサであり、範囲内の所定の色の画素を検知し、検知された画素の分布に基づき、前記制御部800は、苗の有無、苗の地表からの長さ(植付深さ)、苗の植付位置、苗の植付姿勢等を判定する。
なお、画素数で苗を判定するときは、緑系統の画素数を基準とするが、苗の色合いが緑色でないもの、例えばムラサキキャベツの苗等を対象とするときは、判定する画素を操作部600、または機外のリモコン(タブレット端末)等に設ける画素変更スイッチ650で選択できる構成とする。
あるいは、CCDカメラ等で撮影した画像を、畝面や圃場面等の茶系統の色が黒色、苗等が白色に処理される所謂二値化し、白色の面積(画素数)で苗の有無、苗の植付深さ、苗の植付位置を判定する構成としてもよい。判定を白か黒かのみで行うことができ、制御部800にかかる処理負荷が軽減される。
なお、上記の苗の植付位置とは、一例として、植付作業を行う畝において、走行車体15の進行方向に直交する方向、即ち左右方向の位置のことを示す。畝上における苗の植付位置は、一つの畝に何条分の苗を植えるかによって変更される。一つの畝に一条植える場合は、畝の左右中央部でも、左右中央部から左右どちらかに偏倚した位置でも、苗の種類や圃場の環境等に合わせて適宜設定可能であるが、一つの畝に二条以上植える場合は、植付株間と同様に苗同士の左右間隔を空ける必要があり、植付位置が制限される。
また、上記の苗の植付姿勢とは、圃場面に対する苗の姿勢を示すものである。苗の植付は、種類によって圃場面に対して垂直な姿勢とするものだけでなく、根張りの良さや果実の発生箇所を考慮して傾斜姿勢で植え付けるものがある。
前記第1苗検知センサ900は、長さ、幅、色、姿勢などの、苗が適切に植え付けられて畝に存在しているかどうかを検知する必要があるが、第1苗検知センサ900の検知結果と制御部800の処理だけでは多種多様な苗に対応できない可能性がある。
そこで、図12に示すとおり、前記操作パネル601にUSBコネクタ、SDカードスロット等のメモリスロット660を設け、該メモリスロット660に苗に関するデータを記録したUSBメモリ、SDカード等の苗情報ストレージ661を差し込むと、制御部800は該苗情報ストレージ661に記録されたデータや、メモリ部810に記録された設定植付株間等を参照し、第1苗検知センサ900が検知した画素情報から苗の植付の有無、植付深さ、植付株間、植付姿勢等が適切であるかどうかを判断できる構成としてもよい。
なお、苗情報ストレージ661には複数の苗のデータを記録し、苗情報ストレージ661がメモリスロット660に差し込まれると、前記表示部630に苗のデータ名称を表示し、調節ボタン640を押すと別のデータ名称を表示する構成としてもよい。さらに、頻繁に使用する苗のデータについては、メモリ部810に保存しておき、苗情報ストレージ661が無い場合でも苗のデータをメモリ部810から読み込み可能にしてもよい。
上記構成により、制御部800の判定基準を選択された苗のデータに基づいて一括して変更できるので、第1苗検知センサ900の検知情報に対して誤判定が生じにくくなり、異常な苗の植え付けを早期に作業者に気付かせやすくなり、苗を植え直す作業工数が抑えられる。
また、複数のデータを選択可能とすることにより、複数の苗情報ストレージ661を作業者が持ち歩く必要が無く、目的の苗情報ストレージ661を見つける手間がかからず、作業能率の低下が防止される。
そして、メモリ部810に苗のデータを記録しておき、いつでも読み込み可能とすることにより、使用頻度の高い苗については苗情報ストレージ661を持ち歩くことなく設定を呼び出せるので、作業能率の低下が一層防止される。
上記構成の別例としては、図16で示すとおり、前記メモリスロット660にUSBケーブル835を差し込み、データストレージ831(HDD、SSD等)を備えるタブレット端末830等と有線接続する、あるいは制御部800に無線通信装置820を設けて無線接続し、該データストレージ831に記録された苗のデータをタブレット端末830側で選択して制御部800に送信し、苗の植付の有無、植付深さ、植付株間、植付姿勢等が適切であるかどうかを判断できる構成としてもよい。
上記の構成では、タブレット端末830の画面を利用して苗のデータの閲覧や選択ができるので、操作が容易であり、作業能率が向上する。
また、データストレージ831は苗情報ストレージ661に比べて基本的に大容量であるので、より多くの苗のデータを記録、及び選択することができ、作業能率が向上する。
なお、タブレット端末830には、苗のデータを選択すると共に、制御部800に送信する操作を行うためのGUIを備える作業アプリケーション832をインストールしておくと、より操作性が向上する。該作業アプリケーション832には、前記調節ボタン640(「上げ」プッシュスイッチ640a,「下げ」プッシュスイッチ640b)と同様に、前記ソレノイド470の作動間隔を変更する株間切替アイコン833(上げアイコン833a,下げアイコン833b)を設けると、機体から離れた作業者が植付株間を遠隔操作することができる。植付株間の切替操作を行うときは、走行を停止させておく必要があるので、後述する走行クラッチ入切アクチュエータ970を作動させ、走行クラッチ機構960の入切を切り替え、走行車体15の走行と停止を切り替える、走行切替アイコン834を設けると、なお遠隔操作しやすくなる。
図17に示すとおり、前記第1苗検知センサ900が植え付けられた苗を検知したとき、制御部800に内蔵され得るタイマーは、その時間を記録する。そして、該第1苗検知センサ900が苗を検知する度に、記録された時間と前回の苗の植付時の時間から、苗を一株植え付ける際に要する時間、即ち実植付時間RTを測定する。また、前記制御部800は、変速レバー190の操作位置が「植付1」と「植付2」のどちらに操作されているか、及び調節ボタン640の操作による植付株間の設定に基づき、理論上の苗を一株植え付ける際に要する時間、即ち理想植付時間Tを算出する。
そして、前記制御部800は、理想植付時間Tと実植付時間RTを比較し、理想植付時間Tと実植付時間RTの差の絶対値が、メモリ部810に記録された設定許容時間TA以上であるときは、植付株間が広がり過ぎている、または植付株間が狭過ぎると判断する。このとき、前記制御部800は、操作パネル601に設けるブザーやランプなどの報知装置602を作動させ、植付株間の異常を作業者に報知する。
なお、植付株間が広がり過ぎるときは、傾斜等により走行車体15が滑り降りるような、後輪3の回転によらずに移動している状態や、苗が投入されずに植付具11が植付動作を行い、苗が植え付けられない欠株が発生している、等の原因が考えられる。
前記第1苗検知センサ900は、植え付けられた苗を基準として苗の有無等を検知するものであるので、欠株の発生についても検知することができる。例えば、第1苗検知センサ900が植付クラッチ420の入切やソレノイド470の作動を検知するものであると、植付具11に苗が投入されていなくても、植付動作をすると植付が正常に行われたと判定してしまう。
一方、植付株間が狭くなり過ぎるときは、ソレノイド470が誤動作して植付クラッチ420が入状態のままとなり、間欠的な苗の植え付けが不可能になる故障が発生していることが原因として考えらえる。
植付株間の異常を検知すると報知装置602が作動することにより、苗の植付作業を早期に中断できるので、異常な植付株間で植え付けられている苗の植え直し回数が抑えられ、作業に要する時間と労力が軽減される。
また、一つの畝に予定数の苗を設定した植付株間で植え付けることができるので、苗が余ることが防止されると共に、苗の生育環境を良好にでき、生育の安定や収量の増加、品質の向上が図られる。
前記走行車体15は、圃場面との接地抵抗や凹凸、前後及び左右方向の傾斜、前輪2や後輪3のスリップ等の影響を受けて走行しており、大きな影響を受けると、影響が略発生していない場合に比べて、設定した植付株間における苗の植付位置に対する走行車体15の位置が、前方に出過ぎている、または植付位置に到達していない、ということになり、苗の植付株間が設定と異なることがある。圃場の影響により植付株間が乱れ続けると、苗同士の間隔が狭まり過ぎる箇所や広がり過ぎる箇所が不規則に発生し、苗の植付精度の低下や、これによる生育不良の発生等の問題が生じる。
上記の植付株間が設定と異なる問題は、圃場の条件次第では連続して発生し得る。このとき、問題の発生を防止すべく、図14に示すとおり、前記ミッションケース4から左右の走行伝動ケース9に伝動する走行伝動軸(図示省略)に被検知回転体841を設け、該被検知回転体841の所定部位を検知すると走行伝動軸の一回転と判定する走行回転センサ840を設ける。前記被検知回転体841の所定部位とは、凹部または凸部を形成する箇所、または色、光や音波等の反射率が他の箇所と異なるような処理を施す箇所のことを示す。
図18に示すとおり、前記制御部800は、第1苗検知センサ900が複数の、例えば二ヵ所の苗の植付が完了するまでの時間を測定すると共に、二ヵ所の苗の植付が完了するまでの走行回転センサ840が検知した回転数から、走行車体15の移動距離と移動速度を算出する。
前記植付具11による苗の植付に要する時間は、故障または苗付具11の動作を阻害していない限りは略同じ時間となるので、複数回の植え付け動作に要する時間と、走行回転センサ840が検知した回転数に基づく走行車体15の移動距離及び移動速度から算出される時間を比較することにより、走行車体15の影響による植付株間の乱れが生じているかどうかを判定することができる。
設定した植付株間に対して走行車体15の移動量が不足し、植付株間を乱していると判定したとき、前記制御部800は、作業者が設定した植付株間よりも広い株間になるよう、ソレノイド470の作動間隔を長くする。
一方、設定した植付株間に対して走行車体15の移動量が過剰になり、植付株間を乱していると判定したとき、前記制御部800は、作業者が設定した植付株間よりも狭い株間になるよう、ソレノイド470の作動間隔を短くする。
これにより、走行車体15の移動が阻害される状況では、植付具11の作動間隔が長くなることで、苗の植付株間が狭まり過ぎることが防止される。
一方、走行車体15が過度に移動する状況では、植付具11の作動間隔が短くなることで、苗の植付株間が広がり過ぎることが防止される。
なお、植付株間の変更は、第1苗検知センサ900が複数回の苗の植付を検知するまでの時間と、走行車体15の走行距離の差が大きいほど広く、または狭くすることで、植付株間の乱れを防止する。ソレノイド470の作動タイミングを変更することによる植付株間は、1cm単位で変更できるので、誤差が小さ過ぎる場合を除き、適切な株間の設定が可能である。
上記の植付株間の変更は、苗の植付二回分の時間と走行距離を判断基準としているが、あまり頻繁にソレノイド470の作動間隔が変更されると、かえって植付株間が切り替えられ、余計に苗の植付精度が乱れる恐れもある。従って、より多い苗の植付回数、例えば苗の植付五回分の経過時間とその間の走行距離に基づきソレノイド470の作動間隔を変更する構成とすると、頻繁な植付株間の変更が行われることが防止され、苗の植付精度の低下が防止される。
前記センサ板710が畝面と接触して回動すると、油圧昇降シリンダ10が伸縮して前記左右の走行伝動ケース9を下方回動させて走行車体15の車高を高くする構成である。
これにより、走行車体15及び植付具11の圃場面までの間隔を大きくすることができるので、苗の植付深さが深くなり過ぎることが防止され、苗の葉部が十分な日光を受けられ、生育が良好になる。
一方、前記センサ板710が畝面から離間して回動すると、油圧切替バルブ部40が作動して前記左右の走行伝動ケース9を上方回動させて走行車体15の車高を低くする構成である。
これにより、走行車体15及び植付具11の圃場面までの間隔を小さくすることができるので、苗の植付深さが浅くなり過ぎることが防止され、苗が倒れたり、根部付近が気温の影響を受けることがなく、苗が弱ったり枯れたりすることが防止される。
しかしながら、センサ板710の角度が適切でも、圃場の土質等の条件によっては、苗の植付深さが乱れることがある。
本件の構成では、前記第1苗検知センサ900が苗の植付深さDRを苗の画素数で判定しているので、センサ板710が回動しなくても植付深さが適切であるかどうかの判定が可能である。したがって、制御部800は、メモリ部810に記録された、あるいは苗情報ストレージ661やデータストレージ831に記録された苗のデータに基づく植付深さDと、検知された画素数に基づく実際の苗の植付深さDRを比較し、データに基づく植付深さDと実際の植付深さDRの差を算出し、植付深さが適切か否かを判定可能に構成する。
そして、図13及び図19に示すとおり、前記センサ板710を上下回動させる切替シリンダ713を設け、実際の苗の植付深さDRがデータに基づく植付深さDよりも深いときは、該切替シリンダ713を作動させてセンサ板710を下方回動させて畝面に接触させる。これにより、油圧昇降シリンダ10が前記左右の走行伝動ケース9を下方に回動させて走行車体15の車高を高くするので、植付具11の苗の植付深さが浅くなり、実際の苗の植付深さDRとデータに基づく植付深さDとの差が略無くなる適切な植付深さとなる。
一方、実際の苗の植付深さDRがデータに基づく植付深さDよりも浅いときは、該切替シリンダ713を作動させてセンサ板710を上方回動させて畝面から離間させて回動させる。これにより、油圧昇降シリンダ10が前記左右の走行伝動ケース9を上方に回動させて走行車体15の車高を低くするので、植付具11の苗の植付深さが深くなり、実際の苗の植付深さDRとデータに基づく植付深さDとの差が略無くなる適切な植付深さとなる。
前記植付具11の畝に対する植付位置は、一例として、畝の左右方向中央位置で、植付姿勢は畝面に対して略垂直になることが望ましい。しかしながら、畝の左右の畝溝の深さが左右で異なっていると、走行車体15は左右一側が左右他側よりも上方に位置する、左右方向の傾斜姿勢になってしまい、苗の植付位置は畝の左右中央位置からずれると共に、植付姿勢は傾斜姿勢となってしまう。これにより、苗が倒れたり、根部が畝内からはみ出し、気温等の影響で枯れてしまう問題が生じる。
これを防止すべく、ローリングシリンダ14により左右の走行伝動ケース9の一方を上方回動、下方を下方回動させることにより走行車体15を圃場面による傾斜とは反対方向に傾斜させることで、走行車体15及び植付具11を畝面に対して垂直に近い姿勢に保つ構成がある。
しかしながら、ローリングシリンダ14による走行車体15の傾斜が不十分であると、苗の植付位置が僅かに畝の左右中心からずれたり、苗が多少なりとも傾斜した姿勢となることがある。
これに対応すべく、前記第1苗検知センサ900は、制御部800は、メモリ部810に記録された、あるいは苗情報ストレージ661やデータストレージ831に記録された苗のデータに基づく苗の植付姿勢や植付位置と、実際の苗の植付位置、植付姿勢を比較し、差異に合わせて前記ローリングシリンダ14の伸縮量を変更し、走行車体15の傾斜量を変更する。
これにより、苗の植付位置が本来植え付けたい位置からずれることや、植付姿勢が傾斜姿勢になることを防止できるので、機体が左右傾斜しやすい圃場でも、苗の植付精度が向上する。
なお、前記第1苗検知センサ900は、前記鎮圧輪13と略同じ前後位置で、且つ植付具11よりも機体後方に配置する。
これにより、第1苗検知センサ900は、植付具11が植え付けた苗を確実に検知することができるので、植付深さや植付位置の検知精度が向上する。
前記トレイ供給装置100は、左右方向に移動することで、苗が縦横に複数投入されたトレイ20から取出装置200によって苗を一株ずつ取り出させ、植付具11に投入して一株ずつ植え付けるものであると共に、左右端部まで移動するとトレイ20を所定量機体下方側に移動させ、次の左右方向の苗の列を取出装置200の苗の取り出し位置に移動させる構成である。
このとき、種子が発芽しなかった、苗が早い段階で枯れて無くなった等の理由により、トレイ20に苗が無い個所があると、取出装置200は何も取ることはできず、植付具11にも苗を供給することはできない。
すると、植付具11は苗の植付動作を正常に行っても、苗が植え付けられない欠株が発生することになり、作業者は欠株の生じた位置に手作業で苗を植え付けねばならず、余分な時間と労力がかかることになる。
これを防止すべく、図8、図10及び図11に示すとおり、前記取出装置200の取出爪210のうち、苗取り作用域から離間した位置に、トレイ20に取り出す苗があるかどうかを検知する第2苗検知センサ950を設け、取出爪210がトレイ20に向かう前に苗の有無を検知する。なお、図9にも取出装置200が記載されているが、他の機構の説明を円滑にするため、第2苗検知センサ950の記載は省略する。
前記制御部800は、第2苗検知センサ950が苗を取り出す位置に苗を検知しないと、図21に示すとおり、操作パネル601に設けるブザーやランプなどの報知装置602を作動させ、欠株が発生したことを作業者に報知する。
これにより、作業者はその場で欠株の発生を把握できるので、走行車体15を前進させつつ、欠株の生じた場所に手作業で苗を植えることができる。植付具11が畝面に突入した直後は、植付具11が形成した植付穴が明確に残っているので、その場所に苗を植え付ければ植付株間をほぼ一定に保つことができる。時間が経過すると、周囲に盛り上げられた土が風等によって植付穴に戻されるので、手作業で苗を植え付けるべき位置を探す必要が生じ、植付株間が乱れるおそれがある。
なお、上記の欠株の発生は、植付作業中は走行車体15が常に前進しており、植付具11が同じ場所で畝面に向かえないことにより生じる。走行車体15が移動しなければ、植付具11は同じ場所で畝面に向かうので、トレイ20の苗が無い箇所の隣に苗があれば、欠株を発生させることなく苗の植付を行うことができる。
しかしながら、欠株の発生が報知された時に、作業者ができるだけ速やかに走行車体15の走行を停止させても、走行車体15は苗を植え付ける位置よりも前進した位置で停止することになる。このため、作業者はトレイ20を常に目視するなどして、欠株の発生を予見して走行を停止させねばならず、不要な労力を作業者に費やさせることになる。
この不要な労力を費やすことなく、欠株が発生し得るタイミングで走行車体15の走行を停止させ、その場で苗を植え付けさせるべく、図22に示すとおり、前記ミッションケース4に設ける走行クラッチ機構960の入切を切り替える走行クラッチ入切アクチュエータ970を設ける。そして、前記制御部800は、前記第2苗検知センサ950がトレイ20の取り出し位置に苗が無いことを検知すると、走行クラッチ入切アクチュエータ970を作動させ、走行クラッチ機構960を切状態に切り替え、左右の走行伝動ケース9への伝動を遮断し、走行車体15の前進を停止させつつ、トレイ供給装置100や取出装置200、及び植付具11への伝動は遮断しない、所謂空植え状態(その場植え状態)に切り替える。
これにより、前記トレイ供給装置100に載置されたトレイ20は左右方向に送られ、取出装置200は取出爪210で次の苗の取り出しを行い、植付具11は畝面に突入した位置と同じ位置に苗の植付を行うことができる。
前記第2苗検知センサ950がトレイ20の取出位置に苗があることを検知し、且つ前記第1苗検知センサ900が植え付けられた苗を検知すると、苗は設定した植付株間に対応する位置に植え付けられたことになる。このとき、制御部800は、走行クラッチ入切アクチュエータ970を作動させ、走行クラッチ機構960を入状態に切り替え、走行車体15の前進を開始させる。
これにより、欠株を発生させることなく苗の植付を行うことができるので、植付株間が乱れることが防止されると共に、欠株が発生した位置に苗を手作業で植える作業が不要になり、作業能率が向上する。
なお、前記第2苗検知センサ950は、取出爪210が取り出した後も、植付具11に苗を渡すまでは存在を検知することができる。前記取出爪210が取り出した苗は、植付具11に渡されるまでに風や機体の振動等により脱落することがあるので、第2苗検知センサ950の苗の検知から所定時間、即ち植付具11の上方で苗を落下させるまでの時間が経過するまでに第2苗検知センサ950が苗を検知しなくなると、走行クラッチ入切アクチュエータ970を作動させ、走行クラッチ機構960を切状態に切り替えて、空植え状態に切り替えて欠株を防止する構成としてもよい。この時間は、メモリ部810に記録する。
前記制御部800は、上記のとおり、ソレノイド470や回転センサ840等の作動回数を記録すると共に、この記録した数値やメモリ部810に記録された情報から、移動距離や作動時間を算出することができる。
これを利用して、エンジン始動後のソレノイド470の作動回数と、機体の作動時間から、燃費を算出する。「作動時間(分)÷ソレノイド470の作動回数=燃費係数」である。
該燃費係数が低いほど、時間内の植付作業範囲が長く、燃費が良いことになる。逆に、作動時間が長い割に燃費係数が高いときは、植付作業を行わない状況でエンジン12を作動させ続けていたと考えられる。
この燃費係数は、表示部630に表示可能とすると共に、エンジン12を切ってもメモリ部810に格納され、次にエンジン12を作動させて植付作業を行い、新たな燃費係数が算出されるまでは確認可能とする。
なお、燃費係数が算出された際、前記苗情報ストレージ661やデータストレージ831に、当該燃費係数、算出時点の日付及び時間(例:年/月/日/時/分/秒)、植え付けた苗の種類等と関連付けて記録すると、燃費改善の参考資料としたり、同一の作業を別の作業者が行う際、比較的近い燃費で作業を行わせることができる。