JP2018197811A - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができる静電潜像現像用トナーを提供する。【解決手段】静電潜像現像用トナーが、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子10を、複数含む。トナー母粒子は、トナーコア11及びシェル層12を備える。シェル層12の厚さは50nm以上200nm以下である。ナノインデンテーション法により測定された、シェル層12の表面のナノインデンテーション硬さは、250MPa以上980MPa以下である。温度90℃のトナーの貯蔵弾性率は、1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下である。温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される比率σQ/σDは、0.05以上0.20以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。例えば、特許文献1に記載されるトナー粒子は、第一の結着樹脂が第二の結着樹脂を被覆したコアシェル構造を有する。硬いシェル層をコアの表面に形成することによって、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没することを抑制している。詳しくは、特許文献1に記載されるトナーでは、ナノインデンテーション法でのトナー1粒子表面の硬さの値が1〜3GPaである。
特開2009−156902号公報
しかしながら、特許文献1に開示される技術だけでは、優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができる静電潜像現像用トナーを提供することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記トナー母粒子は、コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備える。前記シェル層の厚さは、50nm以上200nm以下である。ナノインデンテーション法により測定された、前記シェル層の表面のナノインデンテーション硬さは、250MPa以上980MPa以下である。温度90℃の前記トナーの貯蔵弾性率は、1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下である。温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、前記トナーの体積基準の粒度分布の標準偏差σDに対する、前記トナーの個数基準の帯電量分布の標準偏差σQの比率σQ/σDは、0.05以上0.20以下である。
本発明によれば、優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができる静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子の断面構造の一例を示す図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーについて、シェル層の表面の荷重−変位曲線を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーのG’温度依存性曲線を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの個数基準の帯電量分布を示すグラフである。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの体積基準の粒度分布を示すグラフである。
本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−750」)を用いて測定した値である。また、酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。また、数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の各々の測定値は、何ら規定していなければ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
本願明細書中では、未処理のシリカ粒子(以下、シリカ基体と記載する)も、シリカ基体に表面処理を施して得たシリカ粒子(表面処理されたシリカ粒子)も、「シリカ粒子」と記載する。表面処理剤で疎水化されたシリカ粒子を「疎水性シリカ粒子」と、表面処理剤で正帯電化されたシリカ粒子を「正帯電性シリカ粒子」と、それぞれ記載する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。画像形成に適したキャリアの例としては、フェライトキャリア(フェライト粒子の粉体)が挙げられる。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。長期にわたってトナーに対するキャリアの十分な帯電付与性を確保するためには、樹脂層がキャリアコアの表面を完全に覆っていること(すなわち、樹脂層から露出するキャリアコアの表面領域がないこと)が好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料(例えば、フェライトのような強磁性物質)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。樹脂層を構成する樹脂の例としては、フッ素樹脂(より具体的には、PFA又はFEP等)、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が挙げられる。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。キャリアの個数平均1次粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、電子写真装置の像形成部(例えば、帯電装置及び露光装置)が、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。続けて、電子写真装置の現像装置(詳しくは、トナーを含む現像剤がセットされた現像装置)が、トナーを感光体に供給して、感光体に形成された静電潜像を現像する。トナーは、感光体に供給される前に、現像装置内で、キャリア、現像スリーブ、又はブレードとの摩擦により帯電する。正帯電性トナーは正に帯電する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(詳しくは、帯電したトナー)が感光体に供給され、供給されたトナーが感光体の静電潜像に付着することで、感光体上にトナー像が形成される。消費されたトナーは、補給用トナーを収容するトナーコンテナから現像装置へ補給される。
続く転写工程では、電子写真装置の転写装置が、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、電子写真装置の定着装置(定着方式:加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着)がトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。転写工程の後、感光体上に残ったトナーは、クリーニング部材(例えば、クリーニングブレード)により除去される。なお、転写方式は、感光体上のトナー像を、中間転写体を介さず、記録媒体に直接転写する直接転写方式であってもよい。また、定着方式は、ベルト定着方式であってもよい。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む。トナー母粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備える。シェル層の厚さは、50nm以上200nm以下である。ナノインデンテーション法により測定された、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さ(以下、「ナノインデンテーション硬さHIT」と記載する場合がある)は、250MPa以上980MPa以下である。温度90℃のトナーの貯蔵弾性率(以下、「貯蔵弾性率G’90」と記載する場合がある)は、1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下である。温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、トナーの体積基準の粒度分布の標準偏差に対する、トナーの個数基準の帯電量分布の標準偏差の比率は、0.05以上0.20以下である。以下、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、トナーの体積基準の粒度分布の標準偏差を「標準偏差σD」と記載する場合がある。また、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、トナーの個数基準の帯電量分布の標準偏差を「標準偏差σQ」と記載する場合がある。また、標準偏差σDに対する標準偏差σQの比率を「比率σQ/σD」と記載する場合がある。比率σQ/σDは、標準偏差σQを標準偏差σDで除した値に相当する。
図1に、上記基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子の一例を示す。図1は、トナーに含まれるトナー粒子10の断面構造を示す図である。
図1に示されるトナー粒子10は、トナー母粒子と、外添剤(複数の外添剤粒子13)とを備える。外添剤は、トナー母粒子の表面に付着している。トナー母粒子は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを備える。シェル層12は、実質的に樹脂から構成される。シェル層12は、例えば、トナーコア11の表面全域を完全に覆っている。ただしこれに限られず、シェル層12は、トナーコア11の表面を部分的に覆っていてもよい。外添剤は、外添剤粒子13として、例えば、シリカ粒子、酸化チタン粒子、及び樹脂粒子からなる群より選択される1種以上の粒子を含む。
図2に、前述の基本構成を有するトナーについて、ISO−14577(微小押し込み試験の国際規格)に準拠したナノインデンテーション法により測定されたシェル層の表面の荷重−変位曲線(縦軸:荷重、横軸:変位)の一例を示す。こうした荷重−変位曲線から、ナノインデンテーション硬さHITを求めることができる。ナノインデンテーション硬さHITは、式「HIT=Fmax/Ap」のように表される硬さである。式中、Fmaxは最大荷重であり、Apは、圧子と測定対象との接触投影面積である。Apは、圧子形状と圧痕深さとから推定できる。
図2に示す荷重−変位曲線の測定では、Berkovich圧子を用いて測定対象に荷重(縦軸)を加えた。そして、圧子の変位量(横軸)を連続的に測定しながら、荷重を増加させる第1過程(負荷過程)と、荷重を保持する第2過程(保持過程)と、荷重を減少させる第3過程(除荷過程)とを経て、図2に示す荷重−変位曲線を得た。詳しくは、シェル層の表面に圧子を押し込み、一定速度で荷重を増加させて、負荷開始から所定の時間(詳しくは、10秒間)かけて荷重を所定の大きさ(最大荷重)にした。そして、その荷重(最大荷重)で所定の保持時間(詳しくは、1秒間)保った後、除荷を開始し、一定速度で荷重を減少させて、除荷開始から所定の時間(詳しくは、10秒間)かけて荷重をゼロにした。図2に示す荷重−変位曲線では、ナノインデンテーション硬さHITが281MPaである。
図3に、前述の基本構成を有するトナーのG’温度依存性曲線(縦軸:貯蔵弾性率、横軸:温度)の一例を示す。図3は、40℃以上140℃以下の温度範囲におけるトナーの貯蔵弾性率の温度依存性を示している。詳しくは、図3は、レオメーターを用いて、トナーの温度を40℃から一定速度(昇温速度2℃/分)で上昇させながら、振動周波数1Hzの条件で各温度におけるトナーの貯蔵弾性率を測定した結果である。図3に示すG’温度依存性曲線では、トナーの温度が上昇にするにつれて貯蔵弾性率が小さくなっている。図3に示すG’温度依存性曲線では、貯蔵弾性率G’90が1.9×104Paである。
図4に、前述の基本構成を有するトナーの個数基準の帯電量分布の一例を示す。図4に示す帯電量分布に関して、横軸は「Q/D(電荷量/粒子径)」(単位:fC/μm)であり、縦軸は頻度(個数割合)である。こうした帯電量分布から、標準偏差σQを求めることができる。図4に示す帯電量分布では、標準偏差σQが0.11fC/μmである。
図5に、前述の基本構成を有するトナーの体積基準の粒度分布の一例を示す。図5に示す粒度分布に関して、横軸は「粒子径」(単位:μm)であり、縦軸は頻度(体積割合)である。こうした粒度分布から、標準偏差σDを求めることができる。図5に示す粒度分布では、標準偏差σDが1.80μmである。
図2〜図5に示す特性を有するトナーでは、比率σQ/σDが0.06(=0.11/1.80)である。
前述の基本構成を有するトナーでは、貯蔵弾性率G’90が1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下である。すなわち、定着時の加熱によりトナーの貯蔵弾性率が適度に小さくなる。このため、前述の基本構成を有するトナーは、低温定着性に優れる。貯蔵弾性率G’90を1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下にするためには、トナーコアが、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有することが好ましい。トナーコアに結晶性ポリエステル樹脂を含有させることで、トナーコアにシャープメルト性を付与できる。
上記のような、低温で溶融するトナーコアをシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。また、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることで、トナーの流動性を向上させることができる。
外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)は、内添剤とは異なり、トナー母粒子の内部には存在せず、トナー母粒子の表面(トナー粒子の表層部)のみに選択的に存在する。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させることができる。外添剤は、シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に付着する。トナー母粒子と外添剤粒子とは、互いに化学反応せず、化学的ではなく物理的に結合する。トナー母粒子と外添剤粒子との結合の強さは、攪拌条件(より具体的には、攪拌時間、及び攪拌の回転速度等)、外添剤粒子の粒子径、外添剤粒子の形状、及び外添剤粒子の表面状態などによって調整できる。
トナー粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制するためには、外添剤粒子がトナー母粒子の表面に強く結合していることが好ましい。埋め込みによる機械的結合で、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を固定してもよい。しかし、外添剤粒子によってトナーの流動性を向上させるためには、外添剤粒子がトナー母粒子の表面に弱く結合していること(例えば、粒子径の小さい球状の外添剤粒子が回転可能な状態でトナー母粒子の表面に付着していること)が好ましい。トナー母粒子の表面を外添剤粒子が回転しながら移動できることで、トナーの流動性が向上すると考えられる。トナーの流動性を向上させるための外添剤粒子は、主にファンデルワールス力又は静電気力によってトナー母粒子の表面に付着していることが好ましい。
前述の基本構成を有するトナーでは、トナーの帯電量分布が適度にシャープである。詳しくは、前述の基本構成を有するトナーでは、比率σQ/σDが、0.5以上2.0以下である。トナーの粒度分布がシャープになる(すなわち、標準偏差σDが小さい)ほど、トナーの帯電量分布もシャープになる(すなわち、標準偏差σQが小さくなる)傾向がある。このため、前述の基本構成では、標準偏差σQの数値範囲ではなく、比率σQ/σDの数値範囲を規定している。
トナーが前述の基本構成を有することで、上記のようなシャープな帯電量分布を長期にわたって維持できるようになる。前述の基本構成を有するトナーは、優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができる。以下、上記基本構成の作用及び効果について詳述する。
2成分現像方式の一般的な画像形成装置において、現像装置にセットされたキャリアは、劣化して使用できなくなるまで交換されず、継続して使用される。他方、現像装置にセットされたトナーは、画像の形成によって消費され、消費された分は、トナーコンテナから現像装置へ補給される。キャリアの使用期間が長くなるにつれて、キャリアの帯電付与性(トナーを帯電させる性能)は低下する傾向がある。また、トナー粒子がストレスを受けると、外添剤がトナー母粒子の表面に埋没し、トナーの帯電性が低下する傾向がある。キャリアの帯電付与性及び/又はトナーの帯電性が変動すると、トナーの帯電量にばらつきが生じ、トナーの帯電量分布がブロードになる傾向がある。そして、トナーの帯電量分布がブロードになると、トナーの帯電不足などに起因して、かぶりが生じ易くなる。
トナーの帯電性の変動を抑制する一般な手法として、シェル層を硬くして、トナー母粒子の表面への外添剤の埋没を抑制することが知られている。例えば、シェル層を硬くするために、シェル層にメラミン樹脂を含有させることが知られている。しかし、硬いシェル層を使用して、十分なトナーの低温定着性を確保するためには、シェル層の厚さを20nm程度まで薄くする必要がある。また、シェル層を硬くし過ぎると、外添剤の固定化強度が弱くなり、トナー母粒子から外添剤が脱離し易くなるという問題がある。このため、上記のような手法では、トナーの帯電性の変動を十分に抑制することは難しい。
本願発明者は、上記手法とは真逆の発想により、厚さ50nm以上200nm以下の軟らかいシェル層(詳しくは、ナノインデンテーション硬さHITが250MPa以上980MPa以下であるシェル層)でトナーコアを覆うことによって、トナーの帯電性の変動を十分に抑制することに成功した。軟らかいシェル層でトナーコアが覆われることで、トナー粒子の外添剤保持性が向上すると考えられる。また、シェル層を適度に厚くすることで、トナー粒子間の帯電性のばらつきを抑制できると考えられる。シェル層が厚過ぎないことで、十分なトナーの定着性を確保し易くなる。トナー粒子の外添剤保持性を向上させるためには、シェル層のナノインデンテーション硬さHITが250MPa以上500MPa以下であることが特に好ましい。
シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子においてシェル層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層と交差する4箇所)の各々でシェル層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(シェル層の厚さ)とする。トナーコアとシェル層との境界は、例えば、トナーコア及びシェル層のうち、シェル層のみを選択的に染色することで、確認できる。TEM撮影像においてトナーコアとシェル層との境界が不明瞭である場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中で、シェル層に含まれる特徴的な元素のマッピングを行うことで、トナーコアとシェル層との境界を明確にすることができる。
例えば、シェル層を構成する樹脂がアクリル酸系樹脂である場合、一般的には、数平均分子量(Mn)100000以上のアクリル酸系樹脂が使用される。シェル層を構成するアクリル酸系樹脂の典型的な例としては、Mnが約25万であるアクリル酸系樹脂が挙げられる。こうしたMnの大きいアクリル酸系樹脂を含有するシェル層のナノインデンテーション硬さHITは、非常に大きく、2000MPa以上になる傾向がある。これに対し、本願発明者は、数平均分子量(Mn)25000以上95000以下のアクリル酸系樹脂を含有する厚さ120nm以上200nm以下のシェル層を形成することで、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITを250MPa以上980MPa以下にすることに成功した(例えば、後述するトナーTA−7)。
また、本願発明者は、厚さ50nm以上100nm以下のシェル層について、下記式(A)で表される繰返し単位でシェル層の主鎖を形成し、ポリ(メタ)アクリル酸でシェル層中に架橋構造を形成することによって、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITを250MPa以上980MPa以下にすることに成功した。また、本願発明者は、厚さ50nm以上100nm以下のシェル層について、下記式(A)で表される繰返し単位でシェル層の主鎖を形成し、シェル層中に架橋構造を形成しないことによって、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITを250MPa以上980MPa以下にすることに成功した。
Figure 2018197811
式(A)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。R1が置換基を有するアルキル基を表す場合の置換基の例としては、フェニル基が挙げられる。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基が特に好ましい。
下記式(1)で表される化合物を重合させることで、式(A)で表される繰返し単位をシェル層中に導入できる。以下、式(A)で表される繰返し単位を「単位(A)」と、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と、それぞれ記載する。
Figure 2018197811
式(1)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。R1が置換基を有するアルキル基を表す場合の置換基の例としては、フェニル基が挙げられる。R1としては、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基が特に好ましい。
ビニル化合物は、炭素二重結合「C=C」により付加重合(「C=C」→「−C−C−」)して、高分子(樹脂)になり得る。ビニル化合物の重合体において、ビニル化合物に由来する繰返し単位は、炭素二重結合「C=C」により付加重合していると考えられる。ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物である。ビニル化合物の例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、又はスチレンが挙げられる。
単位(A)で構成される炭素鎖に対して、ポリ(メタ)アクリル酸は架橋剤として機能する。化合物(1)とポリ(メタ)アクリル酸とを混合して、架橋反応が起きる条件にすることで、ポリ(メタ)アクリル酸が、単位(A)で構成される炭素鎖間に架橋構造を形成する。詳しくは、単位(A)のオキサゾリン基と(メタ)アクリル酸のカルボキシル基との結合によって、シェル層中に架橋構造が形成される。
単位(A)は、未開環のオキサゾリン基を有する。未開環のオキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。未開環のオキサゾリン基は、カルボキシル基、芳香族性スルファニル基、及び芳香族性水酸基と反応し易い。例えば、単位(A)が、ポリエステル樹脂(式(B)中では、R0と表す)のカルボキシル基と反応すると、下記式(B)に示すようにオキサゾリン基が開環し、アミドエステル結合が形成される。式(B)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表す。以下、式(B)で表される繰返し単位を、単位(B)と記載する。
Figure 2018197811
トナーコアがポリエステル樹脂を含有する場合には、単位(A)のオキサゾリン基が、トナーコア中のポリエステル樹脂(式(B)中のR0)のカルボキシル基と反応することで、単位(B)が生成すると考えられる。トナーコアとシェル層との間に強固な結合(詳しくは、共有結合)が形成されることで、トナーコアからのシェル層の脱離が抑制されることになる。
一般に、トナーコアは、粉砕コア(粉砕トナーとも呼ばれる)と重合コア(ケミカルトナーとも呼ばれる)とに大別される。粉砕法で得られたトナーコアは粉砕コアに属し、凝集法で得られたトナーコアは重合コアに属する。前述の基本構成を有するトナーにおいて、トナーコアは、ポリエステル樹脂を含有する粉砕コアであることが好ましい。粉砕コアは、前述の軟らかいシェル層との相性が良い。トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立を図るためには、トナーコアが、溶融混練された1種以上の結晶性ポリエステル樹脂と1種以上の非結晶性ポリエステル樹脂とを含有することが特に好ましい。トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立を図るためには、粉砕コアは、非結晶性ポリエステル樹脂として、軟化点90℃以下の第1非結晶性ポリエステル樹脂と、軟化点100℃以上の第2非結晶性ポリエステル樹脂とを含有することが特に好ましい。
十分なトナーの耐熱保存性及び帯電性を確保するためには、シェル層が、トナーコアの表面領域のうち、80%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましい。シェル層はトナーコアの表面全域を覆っていてもよい。前述の基本構成を有するトナーでは、シェル層が優れた外添剤保持性を有する。このため、シェル層に付着した外添剤は、トナー粒子から脱離しにくい。トナーコアの表面領域のうちシェル層が覆っている領域の面積割合(以下、シェル被覆率と記載する)は、電子顕微鏡でトナー粒子(例えば、予め染色されたトナー粒子)の表面を撮影し、得られた撮影像を、市販の画像解析ソフトウェアを用いて解析することで、測定できる。
画像形成に適したトナーを得るためには、外添剤が、次に示すような、複数の正帯電性シリカ粒子を含むことが特に好ましい。複数の正帯電性シリカ粒子がそれぞれ、主にファンデルワールス力又は静電気力によってトナー母粒子の表面に付着している。複数の正帯電性シリカ粒子の個数平均1次粒子径が15nm以上30nm以下である。複数の正帯電性シリカ粒子の総量が、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上4.5質量部以下である。
画像形成に適したトナーを得るためには、トナー母粒子の体積中位径(D50)が6.5μm以上9.0μm以下であることが好ましい。
次に、トナーの製造方法について説明する。以下、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
トナーコアの作製方法の好適な例としては、粉砕法又は凝集法が挙げられる。これらの方法は、結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕した後、分級する。これにより、トナーコアが得られる。粉砕法は、凝集法よりも容易にトナーコアを作製できることが多い。
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
シェル層の形成方法の例としては、in−situ重合法、液中硬化被膜法、又はコアセルベーション法が挙げられる。より具体的には、水溶性のシェル材料を溶かした水性媒体中にトナーコアを入れた後、その水性媒体を加熱することにより、シェル材料の重合反応を進行させて、トナーコアの表面にシェル層を形成する方法(第1シェル形成方法)が好ましい。
また、シェル層の形成において、シェル材料として樹脂粒子(例えば、樹脂分散液)を使用してもよい。より具体的には、樹脂粒子とトナーコアとを含む液(例えば、水性媒体)中で、トナーコアの表面に樹脂粒子を付着させた後、液を加熱することにより、樹脂粒子の膜化を進行させて、トナーコアの表面にシェル層を形成する方法(第2シェル形成方法)が好ましい。液を高温に保っている間に、トナーコアの表面において樹脂粒子同士の結合(ひいては、各樹脂粒子における架橋反応)を進行させることができる。
水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
塩基性物質(より具体的には、アンモニア、又は水酸化ナトリウム等)及び/又は開環剤(より具体的には、酢酸等)を含む液中でトナーコアの表面にシェル層を形成してもよい。オキサゾリン基を含むシェル材料を使用する場合、塩基性物質及び開環剤の各々の量を変えることで、シェル層中に含まれる未開環のオキサゾリン基の量を調整できる。液中における塩基性物質の量が多いほど未開環のオキサゾリン基の量が増える傾向がある。塩基性物質がカルボン酸を中和(トラップ)することで、オキサゾリン基の開環反応(カルボニル基への求核付加反応)が抑制されると考えられる。他方、開環剤はオキサゾリン基の開環反応を促進するため、液中における開環剤の量が多いほど未開環のオキサゾリン基の量が減る傾向がある。
次に、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。
[トナーコア]
トナーコアは結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。トナーコアとシェル層との結合性(反応性)を高めるためには、結着樹脂の酸価が10mgKOH/g以上であることが好ましい。
トナーコアの結着樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、トナーコアが、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性ポリエステル樹脂とを含有することが特に好ましい。
トナーコアに含有される結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性ポリエステル樹脂に関しては、トナーコアの質量に対して、結晶性ポリエステル樹脂の総量が10質量%以上15質量%以下であり、非結晶性ポリエステル樹脂の総量が60質量%以上80質量%以下であり、非結晶性ポリエステル樹脂の総量と結晶性ポリエステル樹脂の総量との合計量が75質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。
トナーコアに含有される非結晶性ポリエステル樹脂に関しては、数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であり、分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)が9以上21以下であることが特に好ましい。
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコール(より具体的には、以下に示すような、脂肪族ジオール、ビスフェノール、又は3価以上のアルコール等)と1種以上の多価カルボン酸(より具体的には、以下に示すような2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸等)とを縮重合させることで得られる。また、ポリエステル樹脂は、他のモノマー(多価アルコール及び多価カルボン酸のいずれでもないモノマー)に由来する繰返し単位を含んでいてもよい。
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、α,ω−アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、又は1,12−ドデカンジオール等)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、芳香族ジカルボン酸(より具体的には、フタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸等)、α,ω−アルカンジカルボン酸(より具体的には、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は1,10−デカンジカルボン酸等)、α,ω−アルカンジカルボン酸に側鎖が付与されたジカルボン酸(より具体的には、アルキルコハク酸、又はアルケニルコハク酸等)、不飽和ジカルボン酸(より具体的には、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、又はグルタコン酸等)、又はシクロアルカンジカルボン酸(より具体的には、シクロヘキサンジカルボン酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂(結着樹脂)の好適な例としては、1種以上の炭素数2以上12以下のα,ω−アルカンジオール(例えば、炭素数2のエチレングリコール)と、1種以上の炭素数4以上10以下のα,ω−アルカンジカルボン酸(より具体的には、炭素数10のセバシン酸等)と、1種以上のスチレン系モノマー(より具体的には、スチレン等)と、1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、メタクリル酸ブチル)とを含む単量体(樹脂原料)の重合物が挙げられる。スチレン系モノマーの例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、ヒドロキシスチレン(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、又はm−ヒドロキシスチレン等)、又はハロゲン化スチレン(より具体的には、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレン等)が挙げられる。アクリル酸系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
トナーコアが適度なシャープメルト性を有するためには、トナーコア中に、結晶性指数0.90以上1.20以下の結晶性ポリエステル樹脂を含有させることが好ましい。樹脂の結晶性指数は、樹脂の融点(Mp)に対する樹脂の軟化点(Tm)の比率(=Tm/Mp)に相当する。非結晶性樹脂については、明確なMpを測定できないことが多い。樹脂のMp及びTmの各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。結晶性ポリエステル樹脂の結晶性指数は、結晶性ポリエステル樹脂を合成するための材料の種類又は使用量(配合比)を変更することで、調整できる。トナーコアは、結晶性ポリエステル樹脂を1種類だけ含有してもよいし、2種以上の結晶性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
軟化点60℃以上90℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂の好適な例としては、アルコール成分として、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物及び/又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)を含み、酸成分として、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸)及び/又はα,ω−アルカンジカルボン酸(例えば、アジピン酸)を含み、3価以上のカルボン酸を含まない非結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
軟化点100℃以上130℃以下の非結晶性ポリエステル樹脂の好適な例としては、アルコール成分として、ビスフェノール(例えば、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物及び/又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物)を含み、酸成分として、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸)及び/又はα,ω−アルカンジカルボン酸(例えば、アジピン酸)と、3価以上のカルボン酸(例えば、トリメリット酸)とを含む非結晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。画像形成に適したトナーを得るためには、着色剤の量が、トナーコアの質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。画像形成に適したトナーを得るためには、離型剤の量が、トナーコアの質量に対して3質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤(より具体的には、有機金属錯体又はキレート化合物等)を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれらの合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
前述の基本構成を有するトナーでは、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITが250MPa以上980MPa以下である。
前述の基本構成を有するトナーを得るためには、シェル層の厚さが120nm以上200nm以下であり、シェル層が、数平均分子量25000以上95000以下のアクリル酸系樹脂(より好ましくは、数平均分子量40000以上65000以下のアクリル酸系樹脂)を含有することが特に好ましい。数平均分子量25000以上95000以下のアクリル酸系樹脂に関しては、質量平均分子量(Mw)が175000以上225000以下であり、分子量分布(詳しくは、比率Mw/Mn)が3.5以上4.5以下であり、ガラス転移点(Tg)が65℃以上95℃以下であり、軟化点(Tm)が95℃以上120℃以下であることが特に好ましい。
前述の基本構成を有するトナーを得るためには、シェル層の厚さが50nm以上100nm以下であり、シェル層が、前述の化合物(1)(例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル)と、ポリ(メタ)アクリル酸(例えば、ポリアクリル酸)とを含む単量体(樹脂原料)の重合物を含有することが特に好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを添加することで、シェル層の被覆性が向上する傾向がある。
前述の基本構成を有するトナーを得るためには、シェル層の厚さが50nm以上100nm以下であり、シェル層が、前述の化合物(1)(例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル)とを含み、(メタ)アクリル酸を含まない単量体(樹脂原料)の重合物を含有することが特に好ましい。
[外添剤]
前述の基本構成を有するトナーでは、トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子)が付着している。
外添剤粒子としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が好ましく、正帯電性シリカ粒子が特に好ましい。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数の水酸基(−OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、水酸基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。例えば、アミノ基を有するシランカップリング剤を用いてシリカ基体の表面を処理した場合、シランカップリング剤の水酸基(例えば、水分によりシランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解されて生成する水酸基)がシリカ基体の表面に存在する水酸基と脱水縮合反応(「A(シリカ基体)−OH」+「B(カップリング剤)−OH」→「A−O−B」+H2O)する。こうした反応により、アミノ基を有するシランカップリング剤とシリカとが化学結合することで、シリカ粒子の表面にアミノ基が付与されて、正帯電性シリカ粒子が得られる。より詳しくは、シリカ基体の表面に存在する水酸基が、端部にアミノ基を有する官能基(より具体的には、−O−Si−(CH23−NH2等)に置換される。アミノ基が付与されたシリカ粒子は、シリカ基体よりも強い正帯電性を有する傾向がある。また、アルキル基を有するシランカップリング剤を用いた場合には、疎水性シリカ粒子が得られる。より詳しくは、上記脱水縮合反応により、シリカ基体の表面に存在する水酸基を、端部にアルキル基を有する官能基(より具体的には、−O−Si−CH3等)に置換することができる。このように、親水性基(水酸基)の代わりに疎水性基(例えば、炭素数1以上3以下のアルキル基)が付与されたシリカ粒子は、シリカ基体よりも強い疎水性を有する傾向がある。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。
Figure 2018197811
表1中、「シェル材料」に関して、「SA−1」、「SA−2」、「SB−1」、及び「SB−2」は、下記のとおりであった。また、「無し」は、シェル材料を添加しなかったことを意味する。
シェル材料SA−1は、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」、モノマー組成:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン/アクリル酸ブチル、固形分濃度:25質量%)の固形分濃度を10質量%に希釈した液であった。
シェル材料SA−2は、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−300」、モノマー組成:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン、固形分濃度:10質量%)であった。
シェル材料SB−1は、後述の方法で調製されたサスペンションSB−1であった。シェル材料SB−2は、後述の方法で調製されたサスペンションSB−2であった。
表1中、「架橋剤」に関して、「CL−1」及び「CL−2」は、下記のとおりであった。また、「無し」は、架橋剤を添加しなかったことを意味する。
架橋剤CL−1は、アクリル酸系ポリマー(株式会社日本触媒製「アクアリック(登録商標)HL−415」、成分:ポリアクリル酸、性状:水溶液、固形分濃度:45質量%)の固形分濃度を10質量%に希釈した液であった。
架橋剤CL−2は、アクリル酸系ポリマー(株式会社日本触媒製「アクアリック(登録商標)AS−58」、成分:ポリアクリル酸、性状:白色粉末)を水に溶かして得た、固形分濃度10質量%の水溶液であった。
表1中、「アンモニア」は、濃度1質量%アンモニア水溶液を意味する。「アンモニア」の量が「0」mLであることは、濃度1質量%アンモニア水溶液を添加しなかったことを意味する。
Figure 2018197811
表2中、「APES」は非結晶性ポリエステル樹脂を示し、「CPES」は結晶性ポリエステル樹脂を示している。また、表2における「量(単位:wt%)」は、トナーコアの質量(すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、離型剤、及び着色剤の合計量)に対する各材料の質量割合を示している。
以下、トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、Tg(ガラス転移点)、Mp(融点)、及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tg及びMpの測定方法>
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg及びMpを求めた。具体的には、試料(例えば、樹脂)15mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を150℃から10℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び10℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のMp及びTgを読み取った。吸熱曲線中、融解熱によるピーク温度が試料のMp(融点)に相当する。また、吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTmを読み取った。S字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[材料の準備]
(結晶性ポリエステル樹脂CPESの合成)
温度計、ガラス製の窒素導入管、攪拌装置(ステンレススチール製の攪拌羽根)、及び流下式コンデンサー(熱交換器)を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、エチレングリコール69gと、セバシン酸214gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)54gとを入れた。続けて、そのフラスコをマントルヒーターにセットした。そして、窒素導入管を通じてフラスコ内に窒素ガスを導入し、フラスコ内を窒素雰囲気(不活性雰囲気)にした。続けて、窒素雰囲気で、フラスコ内容物を攪拌しながら2時間かけて温度235℃まで昇温させた。昇温後、窒素雰囲気かつ温度235℃の条件で、反応率が95質量%以上になるまで、フラスコ内容物を攪拌しながら反応(縮重合反応)させた。反応率は、式「反応率=100×実際の反応生成水量/理論生成水量」に従って計算した。
続けて、フラスコ内容物を160℃まで冷却し、スチレン156gとメタクリル酸n−ブチル195gとジ−tert−ブチルペルオキシド0.5gとの混合液を1時間かけて一定速度でフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコ内容物の温度を160℃に保って、フラスコ内容物をさらに30分間攪拌した(熟成工程)。続けて、フラスコ内を昇温及び減圧し、減圧雰囲気(圧力8kPa)かつ温度200℃の条件で、フラスコ内容物を1時間反応させた後、180℃まで冷却した。続けて、フラスコ内を常圧に戻し、フラスコ内にラジカル重合禁止剤(4−tert−ブチルカテコール)を加え、2時間かけて一定速度でフラスコ内容物を温度210℃まで昇温させて、温度210℃で1時間反応させた。続けて、フラスコ内を減圧し、減圧雰囲気(圧力40kPa)かつ温度210℃の条件で、フラスコ内容物を2時間反応させた。その結果、結晶性ポリエステル樹脂CPESが得られた。得られた結晶性ポリエステル樹脂CPESの結晶性指数(=Tm/Mp)は0.90以上1.20以下であった。
(非結晶性ポリエステル樹脂APES−1の合成)
温度計、ガラス製の窒素導入管、攪拌装置(ステンレススチール製の攪拌羽根)、及び流下式コンデンサー(熱交換器)を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールA・EO(エチレンオキサイド)2モル付加物100gと、ビスフェノールA・PO(プロピレンオキサイド)2モル付加物100gと、テレフタル酸50gと、アジピン酸30g、2−エチルヘキサン酸錫(II)54gとを入れた。続けて、窒素導入管を通じてフラスコ内に窒素ガスを導入し、フラスコ内を窒素雰囲気(不活性雰囲気)にした。続けて、窒素雰囲気で、フラスコ内容物を攪拌しながら温度235℃まで昇温させて、窒素雰囲気かつ温度235℃の条件で、フラスコ内容物を攪拌しながら、樹脂原料(ビスフェノールA・EO2モル付加物、ビスフェノールA・PO2モル付加物、テレフタル酸、及びアジピン酸)が全て溶解するまでフラスコ内容物を反応(縮重合反応)させた。続けて、フラスコ内を減圧し、減圧雰囲気(圧力8.0kPa)かつ温度235℃の条件で、反応生成物(ポリエステル樹脂)のTmが所定の温度(90℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、ガラス転移点(Tg)30℃、軟化点(Tm)90℃の非結晶性ポリエステル樹脂APES−1が得られた。
(非結晶性ポリエステル樹脂APES−2の合成)
温度計、ガラス製の窒素導入管、攪拌装置(ステンレススチール製の攪拌羽根)、及び流下式コンデンサー(熱交換器)を備えた容量10Lの4つ口フラスコ内に、ビスフェノールA・EO(エチレンオキサイド)2モル付加物100gと、ビスフェノールA・PO(プロピレンオキサイド)2モル付加物100gと、テレフタル酸60gと、2−エチルヘキサン酸錫(II)54gとを入れた。続けて、窒素導入管を通じてフラスコ内に窒素ガスを導入し、フラスコ内を窒素雰囲気(不活性雰囲気)にした。続けて、窒素雰囲気で、フラスコ内容物を攪拌しながら温度235℃まで昇温させて、窒素雰囲気かつ温度235℃の条件で、フラスコ内容物を攪拌しながら、樹脂原料(ビスフェノールA・EO2モル付加物、ビスフェノールA・PO2モル付加物、及びテレフタル酸)が全て溶解するまでフラスコ内容物を反応(縮重合反応)させた。
続けて、フラスコ内に無水トリメリット酸10gを加えて、フラスコ内を減圧し、減圧雰囲気(圧力8.0kPa)かつ温度235℃の条件で、反応生成物(架橋ポリエステル樹脂)のTmが所定の温度(110℃)になるまで、フラスコ内容物を反応させた。その結果、ガラス転移点(Tg)50℃、軟化点(Tm)110℃の非結晶性ポリエステル樹脂APES−2が得られた。
(非結晶性ポリエステル樹脂APES−3の合成)
非結晶性ポリエステル樹脂APES−3の合成方法は、樹脂原料として、ビスフェノールA・EO2モル付加物100gとビスフェノールA・PO2モル付加物100gとテレフタル酸50gとアジピン酸30gとに代えて、ビスフェノールA・EO(エチレンオキサイド)2モル付加物50gとビスフェノールA・PO(プロピレンオキサイド)2モル付加物150gとテレフタル酸80gとを使用した以外は、非結晶性ポリエステル樹脂APES−1の合成方法と同じであった。得られた非結晶性ポリエステル樹脂APES−3に関しては、ガラス転移点(Tg)が38℃、軟化点(Tm)が70℃であった。
(サスペンションSB−1及びSB−2の調製)
所定のアクリル酸系樹脂を出発原料とした。サスペンションSB−1の調製では、数平均分子量(Mn)100000、質量平均分子量(Mw)500000、分子量分布(詳しくは、比率Mw/Mn)5.0、ガラス転移点(Tg)62.9℃、軟化点(Tm)147.9℃のアクリル酸系樹脂を出発原料とした。サスペンションSB−2の調製では、数平均分子量(Mn)50000、質量平均分子量(Mw)200000、分子量分布(詳しくは、比率Mw/Mn)4.0、ガラス転移点(Tg)70.2℃、軟化点(Tm)100.8℃のアクリル酸系樹脂を出発原料とした。シェル層が形成された後においても、上記物性値に変化はなかった。これらアクリル酸系樹脂はそれぞれ、実質的にアクリル酸アルキルエステルのみを含む単量体(樹脂原料)の重合物であった。
機械式粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル T250」)を用いて、設定粒子径10μmの条件で、上記出発原料(アクリル酸系樹脂)を粉砕して、粉砕物を得た。続けて、得られた粉砕物100gと、アニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標)E−27C」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエ一テル硫酸ナトリウム)2gと、0.1N−水酸化ナトリウム水溶液50gとを混合して、分散液を得た。続けて、得られた分散液にイオン交換水を加えて、全量500gのスラリーを調製した。
続けて、得られたスラリーを、ステンレス製の耐圧丸底容器に投入した。続けて、高速剪断乳化装置(エム・テクニック株式会社製「クレアミックス(登録商標)CLM−2.2S」)を用いて、温度140℃、圧力0.5MPa、ローター回転速度20000rpmの条件で、容器内のスラリーを30分間剪断分散した。その後、5℃/分の速度でスラリーを冷却しながら、容器内の温度が50℃になるまで、ローター回転速度15000rpmの条件で、スラリーを攪拌し続けた。
続けて、得られた50℃のスラリーを常温(約25℃)まで冷却して、固形分濃度が20質量%になるようにスラリーにイオン交換水を加えて、アクリル酸系樹脂粒子の分散液(サスペンションSB−1及びSB−2)を得た。
(トナーコアC−1〜C−3の作製)
FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−20B」)を用いて、表2に示す種類及び量の非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂(前述の手順で合成した結晶性ポリエステル樹脂CPES)12質量部と、離型剤(エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−8」)9質量部と、着色剤(カーボンブラック:三菱化学株式会社製「MA100」)9質量部とを混合した。例えば、トナーコアC−1の作製では、35質量部の非結晶性ポリエステル樹脂APES−1と、35質量部の非結晶性ポリエステル樹脂APES−2と、12質量部の結晶性ポリエステル樹脂CPESと、9質量部の離型剤(ニッサンエレクトールWEP−8)と、9質量部の着色剤(MA100)とを混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、材料供給速度100g/分、軸回転速度150rpm、設定温度(シリンダー温度)100℃の条件で溶融混練した。その後、得られた混練物を冷却した。続けて、冷却された混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)」)を用いて、設定粒子径2mmの条件で粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミルRS型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(コアンダ効果を利用した風力分級機:日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6.7μmのトナーコアが得られた。
[トナーの製造方法]
トナーTA−1〜TA−7及びTB−2〜TB−6の各々の製造では、次に示すシェル層形成工程、洗浄工程、及び乾燥工程を経て、トナーコアの表面にシェル層を形成した。トナーTB−1の製造では、下記シェル層形成工程、洗浄工程、及び乾燥工程を行わず、上記トナーコアC−1をそのままトナー母粒子として用いた。
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水100mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、表1に示す種類及び量のシェル材料をフラスコ内に添加し、フラスコ内容物を攪拌した。例えば、トナーTA−1の製造では、シェル材料SA−1(エポクロスWS−700の希釈液)10gをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−5の製造では、シェル材料SA−2(エポクロスWS−300)80gをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−2の製造では、シェル材料SA−2(エポクロスWS−300)10gをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−7の製造では、シェル材料SB−2(サスペンションSB−2)3gをフラスコ内に添加した。また、トナーTB−5及びTB−6の各々の製造では、シェル材料SB−1(サスペンションSB−1)3gをフラスコ内に添加した。
続けて、表1に示す種類のトナーコア(各トナーに定められたトナーコアC−1〜C−3のいずれか)100gをフラスコ内に添加して、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。例えば、トナーTA−1〜TA−7の各々の製造では、100gのトナーコアC−1をフラスコ内に添加した。また、トナーTB−3の製造では、100gのトナーコアC−2をフラスコ内に添加した。また、トナーTB−6の製造では、100gのトナーコアC−3をフラスコ内に添加した。
続けて、フラスコ内にイオン交換水100mLを添加した。続けて、濃度1質量%アンモニア水溶液を、表1に示す量だけフラスコ内に添加した。例えば、トナーTA−1〜TA−5の各々の製造では、濃度1質量%アンモニア水溶液4mLをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−6の製造では、濃度1質量%アンモニア水溶液8mLをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−7の製造では、濃度1質量%アンモニア水溶液を添加しなかった。
続けて、回転速度150rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内の温度を0.5℃/分の速度で60℃まで昇温させた。
トナーTA−1〜TA−4、TB−3、及びTB−4の各々の製造では、フラスコ内の温度が60℃に到達した後、表1に示す種類及び量の架橋剤を、一定の速度でフラスコ内に添加した。例えば、トナーTA−1及びTA−2の各々の製造では、架橋剤CL−1(アクアリックHL−415の希釈液)2gをフラスコ内に添加した。また、トナーTA−3及びTA−4の各々の製造では、架橋剤CL−2(アクアリックAS−58の水溶液)2gをフラスコ内に添加した。なお、トナーTA−1〜TA−4、TB−3、及びTB−4以外のトナーの製造では、架橋剤を添加しなかった。
続けて、回転速度100rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内の温度を60℃に1時間保った。続けて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。pHの調整には、濃度1質量%アンモニア水溶液を使用した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、多数のトナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、得られたトナー母粒子を、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子の粉体が得られた。
(外添工程)
続けて、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、トナー母粒子100質量部と、正帯電性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、内容:表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子、個数平均1次粒子径:約20nm)3質量部とを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6)が得られた。
各試料(トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6)について、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHIT(押込み硬さ)と、貯蔵弾性率G’90(詳しくは、温度90℃のトナーの貯蔵弾性率)と、比率σQ/σD(詳しくは、体積基準の粒度分布の標準偏差σDに対する個数基準の帯電量分布の標準偏差σQの比率)とを、それぞれ測定した結果を、表3に示す。また、各試料(トナーTA−1〜TA−7及びTB−2〜TB−6)について、シェル層の厚さを測定した結果は、表1に示している。ただし、トナーTB−1に関しては、シェル層がないため、測定しなかった。
Figure 2018197811
例えば、トナーTA−1に関しては、貯蔵弾性率G’90が1.0×104Paであり、比率σQ/σDが0.06であった。また、トナーTA−1に関して、シェル層の厚さは50nmであり、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITは281MPaであった。これらの測定方法は、次に示すとおりであった。
<シェル層の厚さの測定方法>
トナー(測定対象:トナーTA−1〜TA−7及びTB−2〜TB−6のいずれか)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。続けて、測定された4箇所の長さの算術平均値を、測定対象である1個のトナー粒子のシェル層の厚さとした。測定対象(トナー)に含まれる20個のトナー粒子についてそれぞれシェル層の厚さを測定し、20個の個数平均値を測定対象(トナー)の評価値(シェル層の厚さ)とした。
<ナノインデンテーション硬さHITの測定方法>
ISO−14577に準拠する方法でシェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITを測定した。測定装置としては、超微小押し込み硬さ試験機(株式会社エリオニクス製「ENT−3100」、荷重制御:電磁力式、測定方式:光変位計、測定分解能:0.3pm、除振:アクテイブ除振装置)を用いた。測定条件は、次に示すとおりであった。
(測定条件)
圧子:稜間角115°の円錐形状Berkovich圧子
雰囲気:真空(約175Pa)
駆動ステップ(Z方向):0.1nm
負荷時間:10秒間
荷重保持時間:1秒間
除荷時間:10秒間
測定部位:10箇所
シェル層に対して上記条件で負荷及び除荷を行って、荷重が0μNから最大荷重まで変化する間と、荷重が最大荷重から0μNまで変化する間との各々について、圧子の変位量を記録し、荷重−変位曲線を得た。なお、最大荷重は、圧子(Berkovich圧子)の押込み深さが1nm以上10nm以下になるように設定した。
得られた荷重−変位曲線から、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さHITを求めた。シェル層の表面における10箇所の測定部位の各々について測定値(ナノインデンテーション硬さHIT)を得て、得られた10個の測定値のうち、大きい側の2個(すなわち、最大値、及び2番目に大きい値)と小さい側の2個(すなわち、最小値、及び2番目に小さい値)とを除いた6個の測定値の算術平均値を、1個のトナー粒子の評価値(ナノインデンテーション硬さHIT)とした。
測定対象(トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のいずれか)ごとに100個のトナー粒子についてそれぞれ上記測定を行い、100個のトナー粒子の各々の評価値(ナノインデンテーション硬さHIT)を得て、得られた100個のトナー粒子の評価値の算術平均値を、トナー(測定対象)の評価値(ナノインデンテーション硬さHIT)とした。
<貯蔵弾性率G’90の測定方法>
トナー(測定対象:トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のいずれか)0.1gをペレット成形機にセットし、トナーに圧力5MPaを加えて、直径10mm、厚さ1.2mmの円柱状のペレットを得た。続けて、得られたペレットを測定装置にセットした。測定装置としては、レオメーター(アントンパール社製「PhysicaMCR−301」)を用いた。測定装置のシャフト(詳しくは、モーターで駆動されるシャフト)の先端には、測定治具(パラレルプレート)を取り付けた。ペレットは、測定装置のプレート(詳しくは、ヒーターで加熱されるヒート台)上に載せた。プレート上のペレットを110℃まで加熱して、ペレット(トナーの塊)を一度溶融させた。トナー全体が溶融したところで、溶融したトナーに上から測定治具(パラレルプレート)を密着させて、平行な2枚のプレート(上:測定治具、下:ヒート台)の間にトナーを挟んだ。そして、トナーを40℃まで冷却した。その後、測定装置を用いて、測定温度範囲40℃〜200℃、昇温速度2℃/分、振動周波数1Hz、ひずみ1%の条件で、トナーの貯蔵弾性率温度依存性曲線(縦軸:貯蔵弾性率、横軸:温度)を測定した。そして、得られた貯蔵弾性率温度依存性曲線から、温度90℃の貯蔵弾性率G’90を読み取った。
<比率σQ/σDの測定方法>
次に示す方法で測定した標準偏差σQ及び標準偏差σDから、比率σQ/σDを算出した。
(標準偏差σQの測定方法)
評価機として、カラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5400DN」)を用いた。評価機の現像装置内の現像ローラーは、マグネットロールと、現像スリーブとを備えていた。非回転のマグネットロールの周りを現像スリーブが回転できるように、マグネットロールのシャフトと現像スリーブとがフランジを介して接続されていた。評価機の現像スリーブの表面に5mmのギャップを介して円筒状の電極を対向させた。その電極に直流電源の一端を電気的に接続し、直流電源の他端を電気的に接地した。
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製カラープリンター「FS−C5400DN」用のキャリア)100質量部と、トナー(測定対象:トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のいずれか)8質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、現像剤(2成分現像剤)を得た。そして、得られた現像剤を上記評価機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5400DN」)にセットし、その評価機を用いて、常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)環境下で、印字率8%の連続印刷を10万枚の紙(A4サイズの印刷用紙)に対して行った。その後、現像装置から現像剤を取り出して、評価用現像剤を得た。続けて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で、評価用現像剤3gを上記評価機の現像装置に充填して、現像スリーブを回転速度500rpmで回転させることで、現像スリーブの表面に評価用現像剤を担持させた。引き続き回転速度500rpmで現像スリーブを回転させながら、上記直流電源を用いて、電解強度1kV/cmの条件で、現像スリーブの表面からトナーのみを電解分離して、トナーを回収した。そして、回収されたトナーを帯電量・粒子径分布測定機(ホソカワミクロン株式会社製「イースパートアナライザ(登録商標)EST−II」)にセットし、トナーの帯電量分布を測定した。イースパートアナライザは、電場(一定強度の電界)及び音響場(一定周波数の空気振動)の影響による粒子の運動をレーザードップラー法で検知して、個々の粒子の帯電量と粒子径とを同時に計測する装置である。測定された帯電量分布に関して、横軸は「Q/d(電荷量/粒子径)」であり、縦軸は頻度(個数割合)であった。得られたトナーの帯電量分布に基づき、Q/d(電荷量/粒子径)の標準偏差σQを求めた。
(標準偏差σDの測定方法)
電解液(ベックマン・コールター株式会社製「ISOTON−2」)50mLに、標準偏差σQの測定に用いたトナー(詳しくは、前述の10万枚連続印刷後に現像スリーブの表面に担持させて、前述の電解分離により回収したトナー)20mg及びアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mLを添加した。続けて、得られたトナーの分散液に対して、超音波分散器(アズワン株式会社販売「VS−D100」)を用いて、周波数20kHzで3分間超音波照射を行った。その結果、測定用分散液が得られた。続けて、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて、アパーチャ径100μm、測定粒子数50000の条件で、測定用分散液におけるトナー母粒子の体積粒度分布を測定した。そして、測定された体積粒度分布に基づき、標準偏差σDを求めた。
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6)の評価方法は、以下のとおりである。
(評価用現像剤の調製)
温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のいずれか)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤(2成分現像剤)を得た。
(最低定着温度)
上述のようにして調製した評価用現像剤(2成分現像剤)を用いて画像を形成して、最低定着温度を評価した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着装置を備えるプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。評価用現像剤を評価機の現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6のいずれか)を評価機のトナーコンテナに投入した。
上記評価機を用いて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下、90g/m2の紙(A4サイズの印刷用紙)に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、ソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着装置に通した。
最低定着温度の評価では、定着温度の測定範囲が100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を100℃から5℃ずつ(ただし、最低定着温度付近では2℃ずつ)上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。
定着装置に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となるように折り曲げ、布帛で被覆した1kgの分銅を用いて、折り目上の画像を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。最低定着温度が110℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が110℃を超えれば×(良くない)と評価した。
(かぶり濃度)
前述のようにして調製した評価用現像剤(2成分現像剤)を評価機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5400DN」)にセットし、その評価機を用いて、常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)環境下で、印字率8%の連続印刷を10万枚の紙(A4サイズの印刷用紙)に対して行った。
上記連続印刷後、上記評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に印刷した。そして、反射濃度計(X−Rite社製「SpectroEye(登録商標)」)を用いて、印刷された記録媒体におけるサンプル画像の空白部と、印刷していないベースペーパー(未印刷紙)との各々について、反射濃度を測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を算出した。
FD=(空白部の反射濃度)−(未印刷紙の反射濃度)
かぶり濃度(FD)が0.006未満であれば○(良い)と評価し、かぶり濃度(FD)が0.006以上であれば×(良くない)と評価した。
[評価結果]
トナーTA−1〜TA−7及びTB−1〜TB−6の各々について、低温定着性(最低定着温度)及びかぶり濃度を評価した結果を、表4に示す。
Figure 2018197811
トナーTA−1〜TA−7(実施例1〜7に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、トナーTA−1〜TA−7ではそれぞれ、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含んでいた。トナー母粒子は、トナーコアと、トナーコアの表面を覆うシェル層とを備えていた。シェル層の厚さは、50nm以上200nm以下であった(表1参照)。ナノインデンテーション硬さHIT(ナノインデンテーション法により測定された、シェル層の表面のナノインデンテーション硬さ)は250MPa以上980MPa以下であった(表3参照)。貯蔵弾性率G’90(温度90℃のトナーの貯蔵弾性率)は1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下であった(表3参照)。比率σQ/σD(詳しくは、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、トナーの体積基準の粒度分布の標準偏差に対する、トナーの個数基準の帯電量分布の標準偏差の比率)は0.05以上0.20以下であった(表3参照)。
また、トナーTA−1〜TA−7の各々に関して、トナー粒子のSEM撮影像を画像解析したところ、シェル層は、トナーコアの表面領域のうち、80%以上100%以下の面積を覆っていた。
トナーTA−1〜TA−7はそれぞれ、表4に示すように、優れた低温定着性を有し、連続印刷においても、シャープな帯電量分布を維持して、高画質の画像を継続的に形成することができた。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー粒子
11 トナーコア
12 シェル層
13 外添剤粒子

Claims (10)

  1. トナー母粒子と、前記トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記トナー母粒子は、コアと、前記コアの表面を覆うシェル層とを備え、
    前記シェル層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、
    ナノインデンテーション法により測定された、前記シェル層の表面のナノインデンテーション硬さは、250MPa以上980MPa以下であり、
    温度90℃の前記トナーの貯蔵弾性率は、1.0×103Pa以上1.0×105Pa以下であり、
    温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で印字率8%の10万枚連続印刷を行った後に測定される、前記トナーの体積基準の粒度分布の標準偏差σDに対する、前記トナーの個数基準の帯電量分布の標準偏差σQの比率σQ/σDは、0.05以上0.20以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. ナノインデンテーション法により測定された、前記シェル層の表面のナノインデンテーション硬さは、250MPa以上500MPa以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記シェル層の厚さは、50nm以上100nm以下であり、
    前記シェル層は、下記式(A)で表される繰返し単位と、架橋剤による架橋構造とを含み、
    前記架橋構造は、前記式(A)で表される繰返し単位のオキサゾリン基と、前記架橋剤としてのポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基との結合による架橋構造である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
    Figure 2018197811
    [式(A)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。]
  4. 前記コアは、ポリエステル樹脂を含有し、
    前記シェル層は、下記式(B)で表される繰返し単位をさらに含む、請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。
    Figure 2018197811
    [式(B)中、R1は、式(A)中のR1と同一の基を表し、R0は、前記コア中の前記ポリエステル樹脂を表す。]
  5. 前記シェル層の厚さは、50nm以上100nm以下であり、
    前記シェル層は、下記式(1)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ポリ(メタ)アクリル酸とを含む単量体の重合物を含有する、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
    Figure 2018197811
    [式(1)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。]
  6. 前記シェル層の厚さは、50nm以上100nm以下であり、
    前記シェル層は、下記式(A)で表される繰返し単位を含み、架橋構造を含まない、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
    Figure 2018197811
    [式(A)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。]
  7. 前記シェル層の厚さは、50nm以上100nm以下であり、
    前記シェル層は、下記式(1)で表される化合物と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含み、(メタ)アクリル酸を含まない単量体の重合物を含有する、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
    Figure 2018197811
    [式(1)中、R1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。]
  8. 前記シェル層の厚さは、120nm以上200nm以下であり、
    前記シェル層は、数平均分子量25000以上95000以下のアクリル酸系樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  9. 前記コアは、非結晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂とを含有する粉砕コアであり、
    前記シェル層は、前記コアの表面領域のうち、80%以上100%以下の面積を覆っており、
    前記外添剤は、複数の正帯電性シリカ粒子を含み、
    前記複数の正帯電性シリカ粒子はそれぞれ、主にファンデルワールス力又は静電気力によって前記トナー母粒子の表面に付着しており、
    前記複数の正帯電性シリカ粒子の個数平均1次粒子径は、15nm以上30nm以下であり、
    前記複数の正帯電性シリカ粒子の総量は、前記トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上4.5質量部以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  10. 前記粉砕コアは、前記非結晶性ポリエステル樹脂として、軟化点90℃以下の第1非結晶性ポリエステル樹脂と、軟化点100℃以上の第2非結晶性ポリエステル樹脂とを含有する、請求項9に記載の静電潜像現像用トナー。
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