JP2018196172A - 電気自動車用永久磁石同期電動機の制御方法とその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】永久磁石同期電動機を採用した従来の電気自動車では、基底速度以上の界磁弱め制御による一次銅損が増加することによって基底速度以上の効率が低下する問題があった。又、界磁弱め制御によって速度上昇に反比例してトルクが低下するために、加速性能が低下する問題があった。加えて、界磁弱め電流によってモータトルクが変化するために、要求トルクを得るためのトルク成分電流の決定が難しく制御装置が複雑になる問題があった。又、このためにトルクを指令値に一致させることが難しかった。
【解決手段】本発明では、基底速度以上の界磁弱め制御を採用せず電圧制御で制御する。又、トルク制御とトルク/相電流比最大制御を同時に行なう。この結果、全速度範囲にて効率が改善され、加速性能が向上する。トルク制御によって、トルク成分電流が自動的に調整されるので、制御装置が簡単になりトルクは、指令値に一致する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明では、基底速度以上の界磁弱め制御を採用せず電圧制御で制御する。又、トルク制御とトルク/相電流比最大制御を同時に行なう。この結果、全速度範囲にて効率が改善され、加速性能が向上する。トルク制御によって、トルク成分電流が自動的に調整されるので、制御装置が簡単になりトルクは、指令値に一致する。
【選択図】図1
Description
この発明は、電気自動車用永久磁石同期電動機のトルク制御の制御方法とその装置に関する。
従来方式の電気自動車用永久磁石同期電動機は、基底速度迄は、永久磁石の磁束を一定にした電圧制御によって、基底速度以上は、界磁弱め制御によって永久磁石の磁束を弱めて高速運転を行なう様に構成されている。従来方式の構成例を図3に示している。つまり、永久磁石同期電動機は、PWMインバータ、極座標変換器、q軸電流制御器、d軸電流制御器、3相/2相電流変換器、電流指令切替器、界磁弱め電流指令器、トルク/電流指令器で構成されたベクトル制御装置によって、ベクトル制御方式によるトルク制御を実行する。ここで、ドライバーの要求トルク指令は、トルク/電流指令器によってq軸電流指令、d軸電流指令に変換され、q軸、d軸それぞれの電流制御を遂行する。
図3の従来方式のベクトル制御装置の構成について説明する。10のPMSMは、ベクトル制御装置で制御される永久磁石同期電動機で、11のLは、永久磁石同期電動機(PMSM)10で駆動される負荷を、12のPGは、永久磁石同期電動機(PMSM)10の磁極位置を検出する磁極位置検出器を表わしている。310、311は、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電流を検出するための電流センサで、3相/2相電流変換器308によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電流ibs(A)、ics(A)を同期速度で回転する座標のq軸電流iq(A)とd軸電流id(A)に変換される。但し、ias(A)は、図示していないが、ibs(A)、ics(A)の公知のベクトル演算によって検出する。q軸電流iq(A)とd軸電流id(A)は、それぞれq軸電流指令iqs*(A)、d軸電流指令ids*(A)と加算器312、313で加算され、その偏差は、q軸電流制御器304、d軸電流制御器305にそれぞれ与えられている。q軸電流制御器304、d軸電流制御器305は、同期速度で回転する座標のq軸電圧Vq*(V)とd軸電圧Vd*(V)を演算する。極座標演算器306は、Vq*(V)とVd*(V)によって、極座標形式の電圧ベクトルの大きさ│Vs*│(V)とd軸を基準座標とする位相角δ1*(rad)を演算する。位相角δ1*(rad)は、磁極位置検出器(PG)12で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の磁極回転角度θr(rad)に加算器314で加算され、電圧│Vs*│(V)の極座標角度θ1*(rad)を生成する。大きさ│Vs*│(V)と角度θ1*(rad)の電圧指令ベクトルは、PWMインバータ307に与えられ、PWMインバータ307は、電圧ベクトル指令と同じ電圧を出力する様に構成されている。次に、トルク/電流指令器301は、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)を速度検出器(ND)309で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の回転速度N(rpm)によって、電圧制御の場合の電流指令iqsv*(A)と界磁弱め制御の場合のトルク指令Treff*(p.u.)を生成する様に構成されている。電流指令切替器302は、図示していないが、速度検出器(ND)309の出力N(rpm)によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度以下の電圧制御範囲では、接点1と2が閉路し、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度以上の界磁弱め制御範囲では、接点1と3が閉路する様に構成されている。界磁弱め電流演算器303は、トルク/電流指令器301からトルク指令Treff*(p.u.)を受け取り、速度検出器(ND)309の出力(ND)309によって、界磁弱め制御時のq軸電流指令iqsf*(A)とd軸電流指令ids*(A)を生成する様に構成されている。
次に、図3の動作について説明する。電流センサ310、311によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電流ibs(A)、ics(A)を検出し、3相/2相電流変換器308によって、同期速度で回転する座標のq軸電流iq(A)とd軸電流id(A)を検出している。q軸電流iq(A)とd軸電流id(A)は、それぞれq軸電流指令iqs*(A)、d軸電流指令ids*(A)と加算器312、313で加算され、それぞれの偏差は電流制御器304、305に与えられ、それぞれの偏差が小さくなる向きに電流制御が遂行される。電流制御器304、305の出力で、同期速度で回転する座標のq軸電圧Vq*(V)とd軸電圧Vd*(V)を演算し、極座標変換器306によって、極座標形式の電圧ベクトルの大きさ│Vs*│(V)とd軸を基準座標とする位相角δ1*(rad)を演算する。位相角δ1*(rad)は、磁極位置検出器(PG)12で検出された永久磁石同期電動機(PMSM)10の回転角度θr(rad)と加算器314で加算され、電圧ベクトルの極座標角度θ1*(rad)を演算する。大きさ│Vs*│(V)と角度θ1*(rad)の電圧指令ベクトルは、PWMインバータ307に与えられ、PWMインバータ307は、電圧ベクトル指令と同じ電圧を出力する様にPWMインバータ307のゲートパルスが生成する。よって、q軸電流指令iqs*(A)、d軸電流指令ids*(A)によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10のベクトル制御によるトルク制御が遂行される。トルク/電流指令器301は、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)と永久磁石同期電動機(PMSM)10のp.u.速度n(p.u.)、(ここに、n=N/NB、NB(rpm)は、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度)によって、電圧制御時のq軸電流(p.u.)の指令値と界磁弱め制御時のトルク指令(p.u.)の指令値を生成する。ここに、q軸電流(p.u.)=(q軸電流/d−q座標のベース電流)で、トルク(p.u.)=(トルク/ベーストルク)である。従来方式の界磁弱め制御では、基底速度迄は、速度に対して一定で、基底速度以上では、速度に反比例して低下するトルク(p.u.)を演算する。速度に対して一定のトルク指令(p.u.)は、トルク(p.u.)×IB=iqsv*(A)として出力される。ここで、IBは、d−q座標のベース電流(A)である。他方、基底速度以上で速度に反比例して低下するトルク指令は、トルク指令(p.u.)=Treff*(p.u.)として出力され、界磁弱め電流演算器303に与えられる。界磁弱め電流演算器303は、選択された界磁弱め制御方式に従って、Treff*(p.u.)から界磁弱めd軸電流指令ids*(A)を演算し、出力する。例えば、直接界磁弱め制御方式が採用されている場合には、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度迄は、d軸電流指令ids*(A)がゼロで、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度以上では、永久磁石同期電動機(PMSM)10の速度上昇に対応して、永久磁石同期電動機(PMSM)10の誘起電圧がほぼ一定になるd軸電流ids*(A)を演算する。この場合、d軸電流ids*(A)は、速度の上昇に対してその絶対値が段々大きくなる。他方、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度以上のq軸電流指令iqsf*(A)は、トルク指令Treff*(p.u.)に対応して、速度の上昇に反比例して段々小さくなる。ここで、永久磁石同期電動機(PMSM)10の発生トルクは、q軸電流のみならず、上記の界磁弱め電流指令ids*(A)によって生成されるd軸電流の影響を受ける。つまり、永久磁石同期電動機(PMSM)10の発生トルクをトルク/電流指令器301で指令されたトルクTreff*(p.u.)に一致する様にするためには、前記d軸電流指令ids*(A)と永久磁石同期電動機(PMSM)10の電気定数に対応して、q軸電流指令iqsf*(A)を調整しなければならない。
一般に、任意の速度の界磁弱めd軸電流に対して永久磁石同期電動機の発生トルクをトルク指令に一致する様にq軸電流を決定する演算は簡単ではない。多くの場合、特殊な関数発生器やROMテーブルを追加することによって、q軸電流を修飾する方法が採用されている。つまり、それだけ制御装置が複雑になっている。永久磁石同期電動機の界磁弱めトルク制御は、この様な手段を加えて、発生トルクがトルク指令に一致する様に制御されている。
一般に、任意の速度の界磁弱めd軸電流に対して永久磁石同期電動機の発生トルクをトルク指令に一致する様にq軸電流を決定する演算は簡単ではない。多くの場合、特殊な関数発生器やROMテーブルを追加することによって、q軸電流を修飾する方法が採用されている。つまり、それだけ制御装置が複雑になっている。永久磁石同期電動機の界磁弱めトルク制御は、この様な手段を加えて、発生トルクがトルク指令に一致する様に制御されている。
調査したが、本発明と同一特許は発見出来なかった。
電気自動車のトルク特性に関する先行技術として図書「CRC PRESS」発行、「Modern Electric,Hybrid Electric and Fuel Cell Vehicles」P35,FIGUR 2.12に従来方式の速度−トルク、速度−出力特性が開示されている。
電気自動車用永久磁石同期電動機のトルク特性は、基底速度迄定トルク特性、基底速度以上は、定出力特性とするのが一般的である。つまり、道路が平坦ではない市街地の走行速度を基底速度とし、平坦な高速道路の走行を最高速度に選定し、基底速度迄を定トルク特性によって大きなトルクを得、基底速度以上は、定出力特性として速度の上昇に反比例して低下する逓減トルク特性を得る方法であった。確かに、市街地走行の場合には、速度が低いために風抵抗成分は小さく、走行抵抗としては、定トルク特性の勾配抵抗成分が大部分を占めている。逆に、高速道路での高速走行では、勾配抵抗成分は小さく殆ど風抵抗成分が占めている。つまり、トルク特性としては、基底速度迄を定トルク特性、基底速度以上を定出力特性とすることが理に適っていると云える。然しながらこの様な現行の方式では、加速性能の向上に対しては、永久磁石同期電動機の容量が不足する問題が生じている。例えば、平均的な勾配抵抗を基底速度で走行する条件で設計された電動機容量の場合、加速性能をアップするには、電動機容量を150%程度に選定する必要があった。ここで、基底速度を市街地走行速度の50Km/Hに選定し、高速道路走行の最高速度を140Km/Hに選定されている場合、50Km/H迄は定トルク特性、50Km/H以上から140Km/H迄を定出力特性とする従来方式の駆動を考える。この場合、50Km/Hから
140Km/H迄は定出力特性によって最大トルクは、基底速度の最大トルクから速度に反比例して逓減し、最高速度で1/2.8に低下する。このために、速度の自乗で増加する風抵抗成分による走行抵抗によって加速トルクが激減し、加速時間が大きく延びる。従来方式の界磁弱め制御では、前述の様に、電動機容量を150%程度以上に選定しない限り、加速性能の評価基準、例えば、ゼロ速度から100Km/H速度迄の加速時間10
sec以内と云う性能を達成することが困難であった。
140Km/H迄は定出力特性によって最大トルクは、基底速度の最大トルクから速度に反比例して逓減し、最高速度で1/2.8に低下する。このために、速度の自乗で増加する風抵抗成分による走行抵抗によって加速トルクが激減し、加速時間が大きく延びる。従来方式の界磁弱め制御では、前述の様に、電動機容量を150%程度以上に選定しない限り、加速性能の評価基準、例えば、ゼロ速度から100Km/H速度迄の加速時間10
sec以内と云う性能を達成することが困難であった。
永久磁石同期電動機を基底速度以上で定出力特性とするには、速度上昇に対応して負のd軸電流を固定子側から供給し、永久磁石同期電動機の磁束を弱めなければならない。このd軸電流は、速度の上昇につれてその大きさが段々大きくなる。他方、定出力特性によってq軸電流は、速度の上昇に反比例して段々小さく出来る。然しながら、q軸電流とd軸電流のベクトル和である相電流は、界磁弱め制御の高速運転領域でかなり大きくなってしまう。界磁弱め制御の速度範囲が大きい場合には、永久磁石同期電動機の定格相電流を超える場合が生じている。そのために、永久磁石同期電動機の界磁弱め制御の高速運転の効率が低下すると云う問題が指摘されている。
永久磁石同期電動機の界磁弱め制御では、前述の様に、発生トルクが界磁弱め制御d軸電流の影響を受ける。つまり、q軸電流指令を決定するには、この影響を織り込んで決定しなければならない。この対策として、特殊な関数発生器を挿入する方法やROMテーブルによる方法が提案されている。ROMテーブルの方法は、速度とd軸電流、並びに、永久磁石同期電動機の電気定数に対応して、発生トルクがトルク指令に一致するq軸電流を予め計算し、その結果をROMテーブルとして記憶せしめ、界磁弱め制御実行中に、このテーブルからq軸電流を順次読み出して設定するものである。この様に界磁弱め制御では、q軸電流の決定が簡単ではないために、従来方式の界磁弱め制御トルク制御では、制御装置が複雑にならざるを得なかった。
界磁弱め制御の高速運転中に界磁弱め制御d軸電流制御が失敗した場合や、或いは、電源消失等の事故が発生すると、永久磁石同期電動機の界磁弱め制御をしない場合の磁束による誘起電圧が、PWMインバータに過電圧として印加される問題があった。
永久磁石同期電動機を基底速度迄定トルク特性とし、基底速度以上を界磁弱め制御によって定出力特性とする従来方式では、定出力特性制御領域の永久磁石同期電動機の誘起電圧をほぼ一定に制御出来るために、永久磁石同期電動機を制御するインバータ容量を小さく設計出来ると云う長所がある。然しながら、反面、定トルクと定出力の速度範囲を一度決定すると、実現出来る速度−最大トルク特性が定まってしまうと云う問題がある。例えば、決定された速度−最大トルク特性を超える最大トルク特性が要求された場合、電動機と制御装置を変更しない限り困難であった。つまり、速度−最大トルク特性変更の柔軟性に欠けていた。
この様な課題を解決するために、請求項1の発明は、永久磁石同期電動機とこの該電動機を制御するPWMインバータ、このPWMインバータによって該電動機をベクトル制御するベクトル制御装置を置き、該電動機のトルクを制御する方法とその装置に於いて、永久磁石同期電動機のトルクを制御するトルク制御器とd軸電流、q軸電流の検出値と該電動機の電気定数によって該電動機の発生トルクを検出し、これを前記トルク制御器にフィードバックして、トルク制御を遂行する様に構成する。また、要求トルクから所要のトルク−速度指令を演算する手段とd軸電流指令を演算する手段を置く。トルク指令は、要求トルク、最大トルク設定手段、出力設定手段によって、電気自動車駆動に要求される所要の速度−トルク指令を演算する。他方、d軸電流指令は、前記の演算された速度−トルク指令から、トルク/相電流比が最大になるd軸電流を演算する。演算されたトルク指令をトルク制御器に、d軸電流指令をd軸電流制御器に与え、トルク制御とd軸電流制御を遂行する。この様に構成し、制御することによって、従来方式の様に永久磁石同期電動機の界磁弱め制御を行なうことなく、停止から最高速度迄、該電動機の電圧制御によって正確なトルク制御を遂行すると共に、加速性能と効率に優れる電気自動車用永久磁石同期電動機のトルク制御方法とその制御装置を提供する
請求項2の発明は、基底速度より大きく最高速度よりも小さい任意の高速度を選定し、選定した高速度から最高速度迄は、請求項1の速度−最大トルク指令によるトルク制御に電圧制限制御を重畳する。例えば、車の基底速度を50Km/Hとし、最高速度を140Km/Hとした場合、任意の高速度を100Km/Hに選定し、100Km/H速度から140Km/H速度迄は、請求項1のトルク制御に電圧制限制御を重畳する。つまり、請求項1のトルク制御を遂行しつつ、選定した高速度から電圧制限制御が可能になる。その結果、請求項1の方法に比べ、インバータの容量を低減することが可能になる。
請求項3の発明は、請求項1の発明の速度−最大トルク指令を生成するための最大トルク設定器と出力設定器の設定値を直接に、或いは、遠方からの電気信号によってそれぞれ調整出来る様に構成し、速度−最大トルク指令の形を調整出来る様にした発明である。この結果、負荷特性に適合するトルク−速度指令の形を追求することが出来る。例えば、最大トルクを2.0(p.u.)に、出力を1.0(p.u.)に設定した場合、基底速度の1/2速度迄は、最大トルクが2.0(p.u.)一定で、1/2速度以上では、出力が1.0(p.u.)一定になる逓減トルク指令が得られる。或いは、最大トルク設定を1.0(p.u.)、出力を2.0(p.u.)に設定した場合、基底速度の2倍の速度迄は、最大トルクが1.0(p.u.)一定で、2倍の速度以上では、出力が1.0(p.u.)一定になる逓減トルク指令が得られる。この様に請求項3の発明は、最大トルクと出力の設定値を直接に、又は、遠方から調整することによって、速度−最大トルク指令の形を負荷特性に対して最適な形に設定することが容易になる。
請求項1では、q軸電流制御器の前段にトルク制御器を置き、d軸電流、q軸電流と永久磁石同期電動機の電気定数によって該電動機のトルクを検出して、フィードバックするトルク制御系を構成している。更に、ドライバーの要求トルク指令から、電気自動車のトルク指令とd軸電流指令を演算するトルク/d軸電流指令器を設けて、該電動機のベクトル制御によるトルク制御を遂行している。この結果、正確なトルク制御が可能となっている。特に、高速運転に於いては、従来方式の様に界磁弱め制御を採用しない。電圧制御によってトルク制御を行なうので従来方式の界磁弱め制御方式よりも高速運転での効率が良いと云う効果がある。また、最大トルク設定器と出力設定器を設け、速度に対する最大トルク指令の形を調整出来る様に構成している。加えて、ドライバーの要求トルク指令が、最大トルクと出力設定で設定された最大トルク−速度指令特性より内側である場合には、ドライバーの要求トルク指令が優先され、ドライバーの要求トルク指令に一致するトルク制御が遂行される。従って駆動装置、つまり、永久磁石同期電動機とPWMインバータの許容最大トルクと許容最大電流以内で、ドライバーの要求トルク指令に忠実に従うトルク制御が遂行される。つまり、安全であると共に車の操縦が容易になる効果がある。また、ドライバーの要求トルク指令に対して各種の安全制御装置からのトルク指令を優先する制御も提示されている。例えば、道路状況に対応して車輪スリップを防止するためのトルク制限制御等がある。この様な要求に対して、優先指令されたこのトルク制限指令に忠実に従うことが出来る。それだけより正確な車輪スリップ防止制御が可能になり、安全性を高める効果がある。また、既に述べた様に本発明は、従来方式の様な界磁弱め制御を採用しない。よって、界磁弱め制御の失敗や電源消失事故による過電圧の問題を避けることが出来る。その分だけ設備の安全性が高いと云える。
請求項1の優れた加速性能は、直接的に車の走りの性能を高める効果がある。また、車の安全な運転に寄与出来る。例えば、一般道路から高速道路へ進入する際、ドライバーらの大きな加速トルクの要求に対して、出力設定を1.0(p.u.)より大きく設定しておくことによって駆動装置を変更することなく、従来方式の界磁弱め制御より大きな加速トルクを車に与えることが出来る。それだけ操縦が容易になり、安全性を高める効果がある。
請求項1の効率に優れる特性は、ハイブリッド電気自動車への応用で燃費を改善し、また、電気自動車への応用で航続距離を延長出来る効果がある。
請求項2で述べた電圧制限制御は、電圧制限開始速度を高めに、例えば、基底速度の2倍の速度から動作する様に設計することにより電圧制限制御をしない請求項1の発明に比べ、永久磁石同期電動機を制御するPWMインバータの容量を小さくすることが出来る効果がある。特に、電圧制限開始速度と最高速度との比を、例えば、1.5程度に設計することによりPWMインバータの容量を低減し、高速運転時の効率の低下を抑制した設計が可能である。つまり、コスト/性能比に優れた制御装置を実現出来る効果がある。
トルク/相電流比を最大にする制御によって、永久磁石同期電動機の一次銅損が低下し、電気自動車の燃費改善や航続距離延長に寄与出来ることを述べた。トルク/相電流比を最大にする制御は、該電動機とPWMインバータに適当な過負荷耐量を持たせることにより、登坂性能を向上すると云う制御に応用出来る。例えば、実施例のq軸インダクタンス/d軸インダクタンスの比は1.5であるが、トルク/相電流比を最大にする制御によって本例では、最大トルク1.5(p.u.)の設定でトルク1.49(p.u.)/相電流1.147(p.u.)、最大トルク2.0(p.u.)の設定でトルク1.992(p.u.)/相電流(1.417)p.u.の性能が得られている。つまり、該電動機とPWMインバータの過負荷耐量を150%に設計しておけば、基底速度以下で最大約200%のトルクが利用出来ることになる。それだけ、登坂性能を高める効果がある。
請求項3の発明では、最大トルク設定と出力設定を直接に、或いは、電気信号にて変更出来る様に構成されているので、企画された車の負荷特性に対し、走りの性能と燃費や電力消費量の両面を検討して、最適な最大トルク−速度特性を追求することが出来る。つまり、負荷特性との適合を容易にした電気自動車の制御装置を実現出来る効果がある。また、運転中の走行条件の変動に対応するため、最大トルクと出力の設定を変更する電気信号を受信出来る様に設計しておけば、例えば、雨天時に最大トルクを1.0(p.u.)以下の0.75(p.u.)に切り替える等の制御が可能になり、より安全な運転が期待出来る。
永久磁石同期電動機と可変電圧・可変周波数装置、例えば、インバータ装置によって該電動機のベクトル制御によるトルク制御を行なう様に構成する。この構成に於いて、トルク制御器と該電動機のトルクを検出手段によってトルク制御ループを構成する。他方、ドライバーの要求トルク指令から最大のトルク指令とトルク/相電流比を最大にするd軸電流指令を演算する手段を置く。この様な構成によって、基底速度から最高速度迄該電動機の界磁弱め制御を行なうことなく、正確なトルク制御を遂行すると共に優れた加速性能と効率を達成する。
上記構成に於いて、基底速度以上の任意の高速度から最高速度迄、電圧制限制御を行なう電圧制限制御手段を追加して可変電圧・可変周波数装置、例えば、インバータ装置の容量の低減を達成する。
上記構成に於いて、最大トルクと出力を設定する手段を追加し、該電動機の最大トルク−速度特性を手動操作又は、外部信号によってそれぞれの設定値を変更出来る様に構成する。ドライバーの要求トルクは、設定された最大トルク−速度特性と比較され、低いトルク指令が優先される様に構成されている。この様な構成によって、車の安全運転を達成すると共に最大トルク−速度特性で設定されたトルク以内で、ドライバーの自由な運転を可能にする。
上記構成に於いて、基底速度以上の任意の高速度から最高速度迄、電圧制限制御を行なう電圧制限制御手段を追加して可変電圧・可変周波数装置、例えば、インバータ装置の容量の低減を達成する。
上記構成に於いて、最大トルクと出力を設定する手段を追加し、該電動機の最大トルク−速度特性を手動操作又は、外部信号によってそれぞれの設定値を変更出来る様に構成する。ドライバーの要求トルクは、設定された最大トルク−速度特性と比較され、低いトルク指令が優先される様に構成されている。この様な構成によって、車の安全運転を達成すると共に最大トルク−速度特性で設定されたトルク以内で、ドライバーの自由な運転を可能にする。
図1は、本発明の実施の形態を示す構成図を示している。10のPMSMは、ベクトル制御装置で制御される永久磁石同期電動機で、11のLは、永久磁石同期電動機(PMSM)10で駆動される負荷を、12のPGは、永久磁石同期電動機(PMSM)10の磁極位置を検出する磁極位置検出器を表わしている。110、111は、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電流を検出するための電流センサで、3相/2相電流変換器108によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電流ibs(A)、ics(A)を、同期速度で回転する座標のq軸電流iq(A)とd軸電流id(A)に変換される。但しias(A)は、図示していないが、ibs(A)、ics(A)の公知のベクトル演算によって検出する。q軸電流iq(A)とd軸電流id(A)は、それぞれq軸電流指令iqs*(A)、d軸電流指令ids*(A)と加算器112、113で加算され、その偏差は、q軸電流制御器104、d軸電流制御器105にそれぞれ与えられている。q軸電流制御器104、d軸電流制御器105は、同期速度で回転する座標のq軸電圧Vq*(V)とd軸電圧Vd*(V)を演算する。極座標演算器106は、Vq*(V)とVd*(V)によって極座標形式の電圧ベクトルの大きさ│Vs*│(V)とd軸を基準座標とする位相角δ1*(rad)を演算する。位相角δ1*(rad)は、磁極位置検出器(PG)12で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の磁極回転角度θr(rad)に加算器114で加算され、電圧│Vs*│(V)の極座標角度θ1*(rad)を生成する。大きさ│Vs*│(V)と角度θ1*(rad)の電圧指令ベクトルは、PWMインバータ107に与えられ、PWMインバータ107は、電圧ベクトル指令と同じ電圧を出力する様に構成されている。
次に、トルク/d軸電流指令器101は、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)を速度検出器(ND)109で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の回転速度N(rpm)と最大トルク設定手段、出力設定手段によって所要の速度−トルク指令Tref*(N・m)を演算する。他方、前記の演算された速度−トルク指令から、トルク/相電流比が最大になるd軸電流ids0*を演算する。Tref*(N・m)は、加算器114でトルク検出器103によって検出したトルクTe*(N・m)と加算され、その結果をトルク制御器102に与え、トルク制御系を構成している。
次に、トルク/d軸電流指令器101は、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)を速度検出器(ND)109で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の回転速度N(rpm)と最大トルク設定手段、出力設定手段によって所要の速度−トルク指令Tref*(N・m)を演算する。他方、前記の演算された速度−トルク指令から、トルク/相電流比が最大になるd軸電流ids0*を演算する。Tref*(N・m)は、加算器114でトルク検出器103によって検出したトルクTe*(N・m)と加算され、その結果をトルク制御器102に与え、トルク制御系を構成している。
電圧制限制御器117は、図示されていないが、電圧設定器、電圧比較器、一次遅れ関数器と比例増幅器、又は、PI増幅器で構成されている。電圧制御器117の出力idsL*(A)は、加算器116によってd軸電流指令ids0*(A)に加算される。その結果は、リミッタ115に与えられ、リミッタ115の出力がd軸電流制御器の指令値ids*(A)となっている。
図2によって、トルク/d軸電流指令器101の構成と動作を説明する。ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)から、実際のトルク指令Tref*(N・m)を演算する動作を説明する。ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)は、直線指令器(LAC)201でランプ指令に変換され、その出力は、最大トルク値を設定するリミッタ(LIM)202に与えられる。リミッタ(LIM)202の設定値は、例えば、±2.0(p.u.)である。定数器(F)203は、リミッタ(LIM)202の最大トルク値を調整する係数器で、例えば、0.5から1.0の範囲に設定される。定数器(F)203の出力の一つは、加算器221に与えられ、もう一つは、一次遅れ関数器(LAG)204に与えられる。一次遅れ関数器(LAG)204は、掛算器205を介して、一次遅れ関数器(LAG)211の出力を調整する。他方、図1の速度検出器(ND)109で検出された永久磁石同期電動機(PMSM)10の速度N(rpm)は、定数器(1/NB)213の値を乗じて速度Nn(p.u.)に変換されている。ここに、NBは、永久磁石同期電動機(PMSM)10の基底速度(rpm)である。乗算器206は、この速度Nn(p.u.)とトルク指令Tref*(N・m)のp.u.値であるTrefn*(p.u.)との積で出力を演算する。つまり、Trefn*×Nn=Pn*(p.u.)を演算している。この出力Pn*(p.u.)は、定数器(G)207に設定された出力設定値、例えば、1.0(p.u.)と加算器222で代数的に加算される。リミッタ(LIM)208は、加算器222の加算結果が負の場合にその出力をゼロにし、加算結果が正であれば、加算器222の加算結果を比例増幅器(AMP)209に与える。この場合、リミッタ(LIM)208は、その出力最大値を、例えば、3.0に制限する。比例増幅器(AMP)209の出力側に置かれた定数器(H)210は、符号変換器で−1.0が設定されており、その出力は、一次遅れ関数器(LAG)211に与えられている。一次遅れ関数器(LAG)211の出力は、掛算器205を通して加算器221に与えられている。つまり、定数器(G)207の設定値を出力の設定値とし、リミッタ(LIM)208、比例増幅器(AMP)209、定数器(H)210、一次遅れ関数器(LAG)211、乗算器205、206をフィードバックループとする出力一定制御回路を構成している。ここに、比例増幅器(AMP)209のゲインと一次遅れ関数器(LAG)211の時定数は、上記のフィードバック系が安定になる数値に設定される。勿論、比例増幅器(AMP)209は、PI制御器に置き換えることも出来る。この様にして、トルク指令Trefn*(p.u.)が演算され、定数器(TB)212によってトルク指令Tref*(N・m)に変換されて出力される。ここに、定数器(TB)は、永久磁石同期電動機のベーストルク(N・m)である。
次に、同じく図2よって、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)から、トルク/相電流比が最大になるd軸電流指令ids0*(A)を演算する回路の構成と動作について説明する。トルク指令Trefn*(p.u.)に、定数器(A)214を加算器223で加算し、定数器(1/B)215の値を乗ずることにより、トルク/相電流比が最大になる相電流isn*(p.u.)を推定している。推定した相電流isn*(p.u.)に、定数器(C)216を乗じた値と定数器(D)217の値を加算器224で代数的に加算して、トルク/相電流比が最大になるd軸電流を推定している。この値は、一次遅れ関数器(LAG)218に与えられ、定数器(E)219に設定された定数−1.0によってその符号が変更され、d軸電流idsn*(p.u.)が得られている。d軸電流idsn*(p.u.)に定数器(IB)220を乗じてd軸電流指令idsn0*(p.u.)が出力される。ここに、IBは、同期速度で回転するd−q座標のベース電流(A)である。
トルク/相電流比が最大になるd軸電流の演算方法を説明する。このd軸電流を解析的に求める方法は公知である。ここでは、直線回帰式による方法を採用した。実施例の永久磁石同期電動機について、相電流isn(p.u.)をパラメータとして、d軸電流idsn(p.u.)の絶対値との関係を求めると図4の特性が得られた。図4から、相電流isn(p.u.)に対する最大トルクTenmax(p.u.)とd軸電流の絶対値Abs idsn(p.u.)の関係を求めると図5の様に近似的な直線関係が得られた。よって、図5からそれぞれの直線回帰式を求めた。図2のTref*(p.u.)からisn*(p.u.)を演算する定数A、Bは、この直線回帰式の定数である。同様に、C、Dは、isn*(p.u.)からisnの絶対値を演算する直線回帰式の定数である。図6は、この直線回帰式の方法でd軸電流を計算して指令した場合、トルク指令Trefn*(p.u.)に対する演算トルクTen(p.u.)と実際のトルクTen*(p.u.)、並びに、相電流isn*(p.u.)を計算したものである。トルク指令Trefn*(p.u.)が0.5以下では、演算トルクTen(p.u.)と実際トルクTen*(p.u.)に弱干の差が認められるが、トルク指令Trefn*(p.u.)が0.5以上では、ほぼ一致していることが示されている。図7は、図2のトルク/d軸電流指令器の単独の特性を例示したものである。図7では、図2のリミッタ(LIM)202の値を2.0、定数器(F)203の値を1.0、定数器(G)207の値を1.0に設定し、停止から2.0p.u.速度迄20secで加速する加速指令を与えて加速した場合のシミュレーション結果を、X軸を速度にしてプロットしたものである。図示の様に、0.5(p.u.)速度迄トルク指令Trefn*(p.u.)は、設定値2.0一定で、0.5(p.u.)速度以上では、出力Pn*(p.u.)が1.0一定になる様に、q軸電流指令とd軸電流指令が出力されていることが示されている。
次に、本発明の請求項1に関する動作を図1によって説明する。図1に於いて、q軸電流制御回路とd軸電流制御回路より右側の回路構成、つまり、q軸電流指令iqs*(A)とd軸電流指令ids*(A)より右側の回路構成は、図3の従来方式の界磁弱め制御の永久磁石同期電動機のベクトル制御装置の構成と同一であるので、この部分の詳細な説明を割愛して説明する。図1の101は、既に述べた様にその詳細を図2で示したトルク/d軸電流指令器であり、ドライバーの要求トルク指令Tref0*(p.u.)からトルク指令Tref*(N・m)を出力する。このトルク指令Tref*(N・m)は、加算器114によって、トルク検出器103で検出された永久磁石同期電動機(PMSM)10のトルクTe*(N・m)と代数的に加算され、その結果をトルク制御器102に与えている。トルク制御器102は、比例増幅器と一次遅れ関数器、又は、PI増幅器と一次遅れ関数器である。トルク制御器102は、q軸電流指令値を演算するもので、その出力iqs*(A)は、加算器112によってq軸電流iq(A)と代数的に加算されている。つまり、q軸電流制御器104、極座標変換器106、PWMインバータ107、3相/2相電流変換器108によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10のq軸電流を指令値に一致する様に制御する。ここで、トルク検出器103は、q軸電流iq(A)、d軸電流id(A)の検出値と永久磁石同期電動機(PMSM)10の電気定数によって、該電動機のトルクを検出している。勿論、このトルクの検出方法の代案として、永久磁石同期電動機(PMSM)10の電力を測定し、これを角速度で割算してトルクを求める公知の方法も採用出来る。他方、トルク/d軸電流指令器101は、前述の方法でトルク/相電流比を最大にするd軸電流を演算し、d軸電流指令ids0*(A)を出力する。ここで、電圧制限制御器117は、本発明の請求項2に関わる制御器で、請求項の1では電圧制限制御器117と加算器116の回路は削除される。従って、d軸電流指令ids0*(A)は、リミッタ(LIM)115を通してd軸電流指令ids*(A)となる。d軸電流指令ids*(A)は、加算器113でd軸電流id(A)と代数的に加算されている。つまり、d軸電流制御器105、極座標変換器106、PWMインバータ107、3相/2相電流変換器108によって、永久磁石同期電動機(PMSM)10のd軸電流を指令値に一致する様に制御する。ここで、リミッタ(LIM)115は、d軸電流指令ids0*(A)がd軸電流の絶対値が許容最大値を超えない様にする目的と、ids0*(A)が演算誤差等で正の値になった場合、その出力をゼロにする目的で挿入した保護装置である。q軸電流制御器104、d軸電流制御器105のそれぞれの出力であるq軸電圧Vq*(V)とd軸電圧Vd*(V)によって、極座標演算器106は、極座標形式の電圧ベクトルの大きさ│Vs*│(V)とd軸を基準座標とする位相角δ1*(rad)を演算する。位相角δ1*(rad)は、磁極位置検出器(PG)12で検出した永久磁石同期電動機(PMSM)10の磁極回転角度θr(rad)に加算器114で加算され、電圧│Vs*│(V)の極座標角度θ1*(rad)を生成する。大きさ│Vs*│(V)と角度θ1*(rad)の電圧指令ベクトルは、PWMインバータ107に与えられ、PWMインバータ107は、電圧ベクトル指令と同じ電圧を出力する様に制御する。つまり、以上の構成と制御によってトルク/d軸電流指令器101のトルク指令Tref*(N・m)とd軸電流指令ids0*(A)をそれぞれの指令値として、ベクトル制御によって永久磁石同期電動機(PMSM)10のトルクを制御する。
請求項2の発明では、図1の電圧制限制御器117と加算器116が追加される。電圧制限制御器117は、永久磁石同期電動機(PMSM)10の電圧が設定電圧以上になった場合、電圧制限制御を行なうd軸電流idsL*(A)を出力する。d軸電流idsL*(A)は、加算器116にてd軸電流指令ids0*(A)に代数的に加算され、電圧制限制御を行なう。この場合、永久磁石同期電動機(PMSM)10の相電圧の推定値として、極座標変換器106の出力である相電圧│Vs*│(V)を電圧制限制御器117にフィードバックし、電圧設定器の設定値と比較している。つまり、この相電圧値が電圧設定器の設定電圧を超過すれば、電圧制限制御d軸電流idsL*(A)を出力する。但し、この電圧制限制御を安定にするために、一次遅れ関数器の時定数と比例増幅器、又は、PI増幅器のゲインを調整している。
請求項1に述べた正確なトルク制御について説明する。図2のリミッタ(LIM)202の値を2.0、定数器(F)203の値を1.0、定数器(G)207の値を1.5に設定した場合の加速特性をシミュレーションで求めた。この結果を第8図に示している。ここで、負荷トルクは、勾配抵抗の定トルク成分を0.5(p.u.)とし、また、風抵抗成分の係数を0.222としている。図9と図10は、リミッタ(LIM)202の値を2.0、定数器(F)203の値を0.75に設定し、図9では、定数器(G)207の値を1.5に設定し、図10では、定数器(G)207の値を2.0に設定した場合のそれぞれの加速特性を示している。図8、図9、図10に示す様に、トルク指令Trefn*(p.u.)とトルクTen(p.u.)は良く一致しており、正確なトルク制御が遂行されている。
請求項1に述べた加速性能が優れていることを説明する。従来方式の界磁弱め制御では、基底速度の最大トルクを1.0(p.u.)に設定すれば、基底速度迄最大トルクが、1.0(p.u.)で、基底速度以上では、出力が1.0(p.u.)の定出力となる逓減トルク特性になる。ここで比較のために、請求項1の発明で最大トルクを1.0(p.u.)に設定する。但し、出力設定を1.5(p.u.)に設定する。ここで、勾配抵抗の定トルク成分を0.05(p.u.)とし、風抵抗成分の係数を0.083に設定している。この条件で加速特性のシミュレーションを行なった。この結果、2.0(p.u.)速度迄の加速時間は、発明の請求項1の方式では、7.5sec、従来方式の界磁弱め制御方式では、11.3secとなった。また、始動から12.0sec後の速度は、それぞれ2.358(p.u.)速度と、2.03(p.u.)速度となった。発明の方式が加速性能に優れていることが分かる。
本発明の請求項1に述べた効率が優れていることを説明する。従来方式の界磁弱め制御では、永久磁石の磁束を弱めるために、速度の上昇につれてその絶対値が段々大きくなる負のd軸電流を電源側から供給しなければならない。q軸電流は、ほぼ速度の上昇に反比例して減少するけれども、q軸電流とd軸電流のベクトル和である相電流は、高速運転でかなり大きくなってしまう。そのために、従来方式の界磁弱め制御方式では、一次銅損が増加し効率が低下する。また、請求項2に関わる電圧制限制御の開始速度を、例えば、基底速度の2倍速度の様に高い速度に設定することにより、電圧制限制御範囲を1:1.5以下になる様に設計して、電圧制限に必要なd軸電流の増加を抑制している。図11は、基底速度の最大トルクを1.0(p.u.)とし、基底速度迄定トルク、基底速度以上3.0(p.u.)速度迄定出力特性とする条件で、従来方式の界磁弱め制御と発明の方式の請求項2の場合の相電流を比較したものである。発明の方式では、基底速度以下と基底速度以上に於いて相電流が小さくなっている。相電流の低下によって、その電流の自乗で一次銅損が減少する。図示例では、3.0(p.u.)速度に於ける発明方式の銅損は、従来方式の界磁弱め制御の約52%に低下している。請求項1の場合、請求項2に関わる電圧制限制御がないので、図11の発明の方式の特性にて速度2.0(p.u.)から滑らかに低下する特性になるので3.0(p.u.)速度の銅損は更に低下する。効率特性は、トルク/相電流比(p.u./p.u.)(=トルク効率)によっても評価出来る。図12は、図2のリミッタ(LIM)202の値を2.0、定数器(F)203の値を0.5、定数器(G)207の値を1.0に設定し、電圧制限設定値Vsrefn*(p.u.)を2.0(p.u.)に設定して加速特性のシミュレーションを行ない、その結果をX軸に速度を、Y軸にトルク、q軸電流、d軸電流、並びに、トルク効率を取ってプロットしたものである。但し、シミュレーシンで設定した負荷トルクは、定トルク成分を0、風抵抗成分の係数を0.0314に設定している。図に示す様にトルク効率は、基底速度以下で約1.2、電圧制限開始速度2.0(p.u.)付近で1.1と良好な特性が得られている。本発明の請求項2では、2.0(p.u.)速度以上で電圧制限制御を行なうために電圧制限領域で図示の様にトルク効率が低下している。この結果、図12では、2.8(p.u.)速度で約0.7に低下している。従来方式の界磁弱め制御方式のトルク効率は図示していないが、基底速度から界磁弱め制御に必要なd軸電流が供給されるために、図12のトルク効率特性より明らかに下側にくる特性となる。つまり、発明の方式のトルク効率が従来方式の界磁弱め制御方式よりも優れている。
本発明の請求項2に関する電圧制限特性を図13に示している。図13では、図2のリミッタ(LIM)202の値を2.0、定数器(F)203を0.5、定数器(G)207を1.5に設定し、電圧制限制御器117の設定値を2.0(p.u.)に設定して、加速特性をシミュレーションしている。ここで、負荷トルクは、定トルク成分を0.05(p.u.)、風抵抗成分の係数を0.037に設定している。電圧抑制制御設定点から、電圧制限制御のためのd軸電流が供給されるために、リラクタンストルクが若干増加している。しかし、リラクタンストルクの増加分に相当するだけ磁石トルクが小さくなり、発生トルクは、指令トルクに一致する様に制御されている。つまり、電動機電圧は2.0(p.u.)に制限され、しかもトルク制御動作も安定であることが示されている。
本発明の請求項3で述べたトルク特性を負荷特性に適合せしめるためには、最大トルク設定と出力設定を変更して、それぞれ異なる最大トルク−速度特性が得られることを述べている。このことは、前掲の図8、図9、図10の加速特性によって説明出来る。例えば、図8では、最大トルクを2.0(p.u.)に、出力を1.5(p.u.)に設定することにより0.75(p.u.)速度迄最大トルク2.0(p.u.)で、0.75(p.u.)速度以上では、出力が1.5(p.u.)一定となる逓減トルクの特性が得られている。また、図10では、最大トルクを1.5(p.u.)に、出力を2.0(p.u.)に設定することにより1.333(p.u.)速度迄最大トルク1.5(p.u.)で、1.333(p.u.)速度以上では、出力が2.0(p.u.)一定となる逓減トルクの特性が得られている。同様に、図9では、最大トルクを1.5(p.u.)に、出力を1.5(p.u.)に設定することにより1.0(p.u.)速度迄最大トルク1.5(p.u.)で、1.0(p.u.)速度以上では、出力が1.5(p.u.)一定となる逓減トルクの特性が得られている。しかも、請求項3で述べた様に最大トルクの設定値と出力の設定値は、直接に又は、電気信号によって調整出来る様に構成されているので、停止中は勿論、運転中に於いてより望ましい最大トルク−速度特性に調整することが出来る。
本発明の実施例としては、モデル試験装置によって性能の確認を行なったのみである。モデル試験装置は、永久磁石同期電動機0.4KW、6P、負荷機は、0.4KW、4P誘導電動機に空気抵抗を模擬するファンを直結し、直流ダイナミックブレーキによって摩擦抵抗負荷を与えられる様に構成されている。永久磁石同期電動機は、安川電機製A1000インバータによって、ベクトル制御によるトルク制御として動作する様に構成し、上記項0022で述べた制御を行なうために、安川電機製のMP−2310、デジタルコントローラのソフトウエアによって実行した。
本発明は、電気自動車、又は、ハイブリッド電気自動車の駆動装置を製造している自動車産業、又は、自動車関連産業に利用される。
10:永久磁石同期電動機(PMSM)、11:負荷(L)、12:磁極位置検出器(PG)、101:トルク/d軸電流指令器、102:トルク制御器、103:トルク検出器、104,304:q軸電流制御器、105,305:d軸電流制御器、106,306:極座標変換器、107,307:PWMインバータ、108,308:3相/2相電流変換器、109,309:速度検出器(ND)、110,111,310,311:電流センサ、112,113,114,116,221,222,223,224,312,313,314:加算器、115,202,208:リミッタ(LIM)、117:電圧制限制御器、201:直線指令器(LAC)、203:定数器(F)、204,211,218:次遅れ関数器(LAG)、205,206:掛算器、207:定数器(G)、209:比例増幅器(AMP)、210:定数器(H)、212:定数器(TB)、213:定数器(1/NB)、214:定数器(A)、215:定数器(1/B)、216:定数器(C)、217:定数器(D)、219:定数器(E)、220:定数器(IB)、301:トルク/電流指令器、302:電流指令切替器、303:界磁弱め電流演算器
Claims (3)
- 永久磁石同期電動機と可変電圧・可変周波数制御装置、例えば、インバータ装置によって、該電動機のベクトル制御によるトルク制御を行なう様に構成した電気自動車用永久磁石同期電動機の制御方法とその装置に於いて、q軸電流制御器の前段にトルク制御器を置き、該電動機のトルクを検出する手段、例えば、d軸電流、q軸電流の検出値と該電動機の電気定数によって、該電動機のトルクを検出し、これを前記のトルク制御器にフィードバックしてトルク制御ループを構成する。また、ドライバーの要求トルク指令から、トルク指令とトルク/相電流比を最大にするd軸電流指令を演算する手段、すなわち、トルク/d軸電流指令器を置く。トルク/d軸電流指令器のトルク指令は、ドライバーの要求トルクが設定されたトルクを超える場合、設定された最大トルクを指令する。このトルク指令は、前記のトルク制御器に与えられる。d軸電流指令は、d軸電流制御器に与えられる。この様な構成によって基底速度から最高速度迄、該電動機の界磁弱め制御を行なうことなく、正確なトルク制御を遂行すると共に、加速性能と効率に優れることを特長とする電気自動車用永久磁石同期電動機の制御方法とその装置。
- 上記の請求項1の構成に於いて、永久磁石同期電動機の電圧を制限する電圧制限制御手段を追加し、その出力をd軸電流指令に重畳することにより、基底速度以上の任意の高速度から最高速度迄、該電動機の電圧制限制御を行なう様に構成し、請求項1のトルク制御を遂行すると共に電圧制限制御によって、最大速度での電圧を抑制し、請求項1の方法よりもインバータ容量の低減を可能としたことを特長とする電気自動車用永久磁石同期電動機の制御方法とその装置。
- 請求項1の発明では、最大トルクを設定する手段と出力を設定する手段を置き、永久磁石同期電動機の出力が設定出力に到達する迄は、設定された最大トルクを、設定出力以上では、設定出力を定出力とする逓減トルクを演算し指令する様に構成されている。請求項3は、最大トルクの設定値と出力の設定値を手動操作によって、又は、外部信号にて変更出来る手段を追加して、最大トルク−速度特性を調整出来る様に構成する。ここで、ドライバーの要求トルクがこの最大トルク−速度特性のトルク値を超える場合には、この最大トルク−速度特性のトルクがトルク制御信号となる。逆に、ドライバーの要求トルクがこの最大トルク−速度特性のトルクより小さい場合には、ドライバーの要求トルクがトルク信号となる様に制御する。この様に構成し制御することによって、設定された最大トルク−速度特性のトルク範囲以内でドライバーの要求トルク指令に忠実に従うトルク制御を遂行し、車の安全運転を達成すると共に、最大トルク−速度特性を調整することによって、トルク特性を負荷特性に適合せしめることを可能としたことを特長とする電気自動車用永久磁石同期電動機の制御方法とその装置。
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JP (1) | JP2018196172A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN111525860A (zh) * | 2020-05-28 | 2020-08-11 | 西门子(上海)电气传动设备有限公司 | 电机最大转矩电流比控制方法、装置和计算机可读介质 |
WO2021002120A1 (ja) * | 2019-07-02 | 2021-01-07 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | インパクト工具 |
CN112636652A (zh) * | 2020-12-22 | 2021-04-09 | 东南大学 | 一种永磁电机弱磁控制策略 |
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2017
- 2017-05-12 JP JP2017095482A patent/JP2018196172A/ja active Pending
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