以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面は、概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
<電力変換システム1の概要>
図1に示すように、本実施形態の電力変換システム1は、電動機制御装置10と、直流電源20と、平滑コンデンサ30とを備える。また、電動機制御装置10は、電力変換器40と、制御装置60とを備える。なお、電力変換器40には、電動機50が電気的に接続されている。
(直流電源20)
直流電源20は、直流電力を出力する。直流電源20は、直流電力を出力することができれば良く、限定されない。直流電源20は、例えば、鉛蓄電池(バッテリ)、リチウムイオン電池、発電装置(例えば、燃料電池)などを用いることができる。また、直流電源20は、公知の交流発電機などを用いて、直流電力を生成することもできる。この場合、直流電源20は、公知の整流回路および平滑回路などを用いて、交流発電機が出力する交流電力を整流し平滑して、直流電力を生成することができる。
また、直流電源20は、例えば、公知の昇圧コンバータなどを用いて、低電圧の直流電力を昇圧することもできる。この場合、直流電源20は、例えば、公知の昇圧型チョッパコンバータなどの非絶縁型の昇圧コンバータを用いることができる。また、直流電源20は、例えば、公知のフライバック型コンバータ、フォワード型コンバータなどの絶縁型の昇圧コンバータを用いることもできる。
(平滑コンデンサ30)
平滑コンデンサ30は、直流電源20から出力された直流電力を平滑する。直流電源20の正極側20pは、平滑コンデンサ30の正極側30pと接続されている。直流電源20の負極側20nは、平滑コンデンサ30の負極側30nと接続されており、パワーグランド(直流電源20を含む高電圧側の回路の基準電位)と接続されている。平滑コンデンサ30は、例えば、電解コンデンサを用いることができる。直流電源20から供給された直流電力は、平滑コンデンサ30によって平滑されてリップルが低減される。
(電力変換器40)
電力変換器40は、複数のスイッチング素子(本実施形態では、三組の一対のスイッチング素子41)が開閉制御されることにより、直流電力(本実施形態では、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力)を交流電力に変換して、変換された交流電力を電動機50に給電する。図1に示すように、三組の一対のスイッチング素子41は、フルブリッジ接続されている。三組の一対のスイッチング素子41の各々は、平滑コンデンサ30の正極側30pに接続される正極側スイッチング素子4xpと、平滑コンデンサ30の負極側30nに接続される負極側スイッチング素子4xnとが直列接続されている。なお、本実施形態の電力変換器40は、三相の電力変換器であり、xは、u、v、wのうちのいずれかである。例えば、正極側スイッチング素子4upは、U相の正極側スイッチング素子を示しており、負極側スイッチング素子4unは、U相の負極側スイッチング素子を示している。
正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、公知の電力用スイッチング素子を用いることができる。正極側スイッチング素子4xpおよび負極側スイッチング素子4xnは、例えば、公知の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)などを用いることができる。
図1に示すように、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御端子4gと、入力端子4cと、出力端子4eと、還流ダイオード4dとを備えている。例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)では、制御端子4gは、ゲート端子に相当し、入力端子4cは、コレクタ端子に相当し、出力端子4eは、エミッタ端子に相当する。制御端子4gは、駆動回路61bを介して、制御装置60と接続されている。複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpの各々は、制御装置60から出力される駆動信号に基づいて開閉制御される。
制御端子4gと出力端子4eとの間の電圧を制御電圧Vgeとする。例えば、制御電圧Vgeがローレベル(所定電圧値以下の状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に遮断された開状態に制御される。一方、制御電圧Vgeがハイレベル(所定電圧値を超えている状態)のときには、入力端子4cと出力端子4eとの間が電気的に導通された閉状態に制御される。
還流ダイオード4dは、例えば、スイッチング素子のボディダイオード(寄生ダイオード)を用いることができる。また、ボディダイオードの代わりに、還流ダイオードを別途設けて、入力端子4cと出力端子4eとの間に並列接続することもできる。還流ダイオード4dは、スイッチング素子が開状態のときに、出力端子4e側から入力端子4c側に向かう電流経路を形成する。これにより、スイッチング素子の開閉に伴って生じる逆電流から当該スイッチング素子を保護することができる。
複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpについて上述したことは、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnについても同様に言える。制御装置60は、電力変換器40の複数のスイッチング素子(三組の一対のスイッチング素子41)を開閉制御して、電力変換器40を制御する。
例えば、電力変換器40は、制御装置60の指令に基づいて、複数(三つ)の正極側スイッチング素子4xpのうちの一の正極側スイッチング素子4xpと、複数(三つ)の負極側スイッチング素子4xnのうちの一の負極側スイッチング素子4xnとが閉状態にされ、他のスイッチング素子が開状態にされる。閉状態にされる一の正極側スイッチング素子4xpおよび一の負極側スイッチング素子4xnの相(U相、V相、W相)は、異なる。制御装置60が閉状態にするスイッチング素子の組み合わせを順に変更することにより、電力変換器40は、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力を交流電力に変換することができる。
図1に示すように、正極側スイッチング素子4xpと負極側スイッチング素子4xnとの間には、出力端子42xが設けられている。出力端子42xと、電動機50の相端子43xとの間は、電力ケーブル44xによって電気的に接続されている。電力ケーブル44xは、電力変換器40によって変換された交流電力を電動機50に給電する。なお、xは、u、v、wのうちのいずれかである。
(電動機50)
電動機50は、固定子51と回転子52とを備えている。電動機50は、例えば、固定子51および回転子52が同軸に配設されるラジアル空隙型の円筒状電動機である。なお、電動機50は、アキシャル空隙型の円筒状電動機であっても良い。また、電動機50は、インナー型の円筒状電動機であっても良く、アウター型の円筒状電動機であっても良い。インナー型の円筒状電動機は、回転子52が、固定子51の内方(電動機50の軸心側)に設けられる。アウター型の円筒状電動機は、回転子52が、固定子51の外方に設けられる。
固定子51は、複数のスロットが形成されている固定子鉄心(図示略)と、電機子巻線(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)とを備えている。固定子鉄心は、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向に複数積層されて形成されている。複数のスロットには、電機子巻線が巻装されている。電機子巻線は、銅などの導体(コイル)が巻き回されて形成されており、導体表面がエナメルなどの絶縁層で被覆されている。電機子巻線の断面形状は、限定されるものではなく、任意の断面形状とすることができる。例えば、電機子巻線は、断面円形状の丸線、断面多角形状の角線などの種々の断面形状の導体(コイル)を用いることができる。また、電機子巻線は、複数のより細いコイル素線を組み合わせた並列細線を用いることもできる。並列細線を用いる場合、単線の場合と比べて電機子巻線に発生する渦電流損が低減され、電動機50の効率が向上する。また、コイル成形に要する力を低減することができるので、コイルの成形性が向上してコイル製作が容易になる。
電機子巻線は、分布巻(例えば、同心巻、波巻、重ね巻など)または集中巻などの公知の方法で巻装することができる。また、図1に示すように、電機子巻線(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)は、Y結線で接続することができる。同図では、中性点を中性点51nで示している。なお、電機子巻線(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)は、Δ結線で接続することもできる。
図2に示すように、回転子52は、回転子鉄心52aと、複数(本実施形態では、八つ)の永久磁石52bと、シャフト52cとを備えている。同図は、回転子52の軸線方向(同図の紙面垂直方向)視の模式図であり、これらの配置を模式的に示している。回転子鉄心52aは、薄板状の電磁鋼板(例えば、ケイ素鋼板)が軸線方向(同図の紙面垂直方向)に複数積層されて円柱状に形成されている。回転子鉄心52aには、シャフト52cが設けられており、シャフト52cは、回転子鉄心52aの軸心を軸線方向に沿って貫通している。シャフト52cの軸線方向両端部は、ベアリングなどの軸受部材(図示略)によって、回転可能に支持されている。
回転子鉄心52aには、複数(八つ)の永久磁石52bが埋設されている。具体的には、回転子鉄心52aには、周方向に等間隔で、複数の磁石収容部(図示略)が設けられている。複数の磁石収容部には、所定磁極対分(本実施形態では四磁極対分であり、八つ)の永久磁石52bが埋設されている。永久磁石52bは、例えば、公知のフェライト系磁石や希土類系磁石を用いることができる。永久磁石52bの製法は、限定されない。永久磁石52bは、例えば、樹脂ボンド磁石や焼結磁石を用いることができる。樹脂ボンド磁石は、例えば、フェライト系の原料磁石粉末と樹脂などを混合して、射出成形などによって回転子鉄心52aに鋳込み形成することができる。焼結磁石は、例えば、希土類系の原料磁石粉末を磁界中で加圧成形して、高温で焼き固めて形成することができる。なお、固定子51のスロット数および回転子52の磁極数は、限定されない。
(制御装置60)
制御装置60は、電力変換器40を含む電力変換システム1を制御する。より詳細には、制御装置60は、電力変換器40の複数のスイッチング素子(三組の一対のスイッチング素子41)をパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御によって開閉制御する。図3に示すように、制御装置60は、公知の中央演算装置60a、記憶装置60bおよび入出力インターフェース60cを備えており、これらは、バス60dを介して接続されている。
中央演算装置60aは、CPU:Central Processing Unitであり、種々の演算処理を行うことができる。記憶装置60bは、第一記憶装置60b1および第二記憶装置60b2を備えている。第一記憶装置60b1は、読み出しおよび書き込み可能な揮発性の記憶装置(RAM:Random Access Memory)であり、第二記憶装置60b2は、読み出し専用の不揮発性の記憶装置(ROM:Read Only Memory)である。
また、図1に示すように、制御装置60は、直流電圧検出器61aと、駆動回路61bと、電流検出器61cと、位置検出器61dとを備えている。直流電圧検出器61aは、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力の直流電圧を検出する。具体的には、直流電圧検出器61aは、例えば、抵抗値が既知の複数の抵抗器によって当該直流電圧を分圧して、分圧された直流電圧を制御装置60に出力する。制御装置60は、公知のA/D変換器(図示略)などによって分圧された直流電圧値を知得し、平滑コンデンサ30によって平滑された直流電力の直流電圧(電力変換器40に入力される直流電圧)を知得することができる。
駆動回路61bは、制御装置60から出力される駆動信号を増幅する駆動回路であり、例えば、公知のドライバ回路を用いることができる。なお、図1では、電力変換器40の各スイッチング素子の制御端子4gと、駆動回路61bとの間の接続は、記載が省略されている。
電流検出器61cは、電力変換器40から出力される出力電流を検出する。本実施形態では、電流検出器61cは、電力ケーブル44uおよび電力ケーブル44vに設けられており、U相電流IuおよびV相電流Ivを検出する。本明細書では、電流検出器61cによって検出されたU相電流IuをU相電流検出値Iu_fbといい、電流検出器61cによって検出されたV相電流IvをV相電流検出値Iv_fbという。なお、W相電流Iwは、0からU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbをそれぞれ減じて算出することができる。電流検出器61cは、公知の電流検出器(例えば、カレントトランスを使用した電流検出器、シャント抵抗器を使用した電流検出器など)を用いることができる。
位置検出器61dは、固定子51に対する回転子52の位置を検出する。位置検出器61dは、公知の位置検出器(例えば、レゾルバ、エンコーダ、ホールセンサなど)を用いることができる。なお、制御装置60は、上述した検出器以外にも種々の検出器を設けることができる。
図3に示す中央演算装置60aは、第二記憶装置60b2に記憶されている電力変換器40の制御プログラムを第一記憶装置60b1に読み出して、制御プログラムを実行する。また、上述した検出値などは、絶縁部(図示略)および入出力インターフェース60cを介して、制御装置60に入力される。中央演算装置60aは、入出力インターフェース60c、絶縁部(図示略)および図1に示す駆動回路61bを介して、電力変換器40の各スイッチング素子に開閉信号を出力して、電力変換器40を開閉制御する。なお、絶縁部は、制御装置60を含む低電圧側の回路と、直流電源20を含む高電圧側の回路とを電気的に絶縁する。絶縁部は、例えば、公知のフォトカプラなどを用いることができる。
<電動機制御装置10>
図4に示すように、本実施形態の制御装置60は、制御ブロックとして捉えると、三相/二相変換部71と、回転数算出部72と、電流指令値設定部73と、電流制御部74と、二相/三相変換部75と、損失騒音推定部76と、キャリア周波数制御部77と、パルス幅変調信号生成部78とを備えている。
図2に示すように、永久磁石52bの主磁束方向をd軸方向とし、d軸方向と電気的に直交する方向をq軸方向とする。電動機50のdq座標系における電圧方程式は、下記数1で表すことができる。
但し、d軸方向の電圧をd軸電圧Vdで表し、q軸方向の電圧をq軸電圧Vqで表す。また、電機子巻線(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)の各相コイルの巻線抵抗を巻線抵抗Rで表す。さらに、d軸方向のインダクタンスであるd軸インダクタンスをd軸インダクタンスLdで表し、q軸方向のインダクタンスであるq軸インダクタンスをq軸インダクタンスLqで表す。また、d軸方向の電流をd軸電流Idで表し、q軸方向の電流をq軸電流Iqで表す。さらに、回転子52の角速度を角速度ωで表し、誘起電圧定数を誘起電圧定数Φで表す。また、微分演算子は、微分演算子p(=d/dt)で表す。
制御装置60は、d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refをそれぞれ設定して、電力変換器40を制御する。より詳細には、制御装置60は、d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refに基づいてd軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_refを設定して、電力変換器40を制御する。但し、d軸電流指令値Id_refは、d軸方向の電流指令値をいい、q軸電流指令値Iq_refは、q軸方向の電流指令値をいう。また、d軸電圧指令値Vd_refは、d軸方向の電圧指令値をいい、q軸電圧指令値Vq_refは、q軸方向の電圧指令値をいう。
(三相/二相変換部71)
三相/二相変換部71は、d軸電流算出値Id_fbおよびq軸電流算出値Iq_fbを算出する。d軸電流算出値Id_fbは、d軸方向の電流算出値をいい、q軸電流算出値Iq_fbは、q軸方向の電流算出値をいう。図4に示すように、三相/二相変換部71には、電流検出器61cによって検出されたU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbが入力される。既述したように、W相電流Iwは、0からU相電流検出値Iu_fbおよびV相電流検出値Iv_fbをそれぞれ減じて算出することができる。W相電流Iwの検出値(算出値)をW相電流検出値Iw_fbとする。また、三相/二相変換部71には、位置検出器61dによって検出された回転子52の回転角(回転位置θ)が入力される。
三相/二相変換部71は、U相電流検出値Iu_fb、V相電流検出値Iv_fbおよびW相電流検出値Iw_fb、並びに、回転位置θを用いて、下記数2に基づいてd軸電流算出値Id_fbおよびq軸電流算出値Iq_fbを算出する。なお、回転位置θは、例えば、U相電流検出値Iu_fb、V相電流検出値Iv_fbおよびW相電流検出値Iw_fbの経時変化から推定することもできる。また、回転位置θは、例えば、電機子巻線(U相コイル51u、V相コイル51v、W相コイル51w)の各相電圧の経時変化から推定することもできる。
(回転数算出部72)
回転数算出部72は、回転子52の回転数を算出する。図4に示すように、回転数算出部72には、位置検出器61dによって検出された回転子52の回転角(回転位置θ)が入力される。回転数算出部72は、例えば、回転位置θを時間微分して回転子52の回転数を算出することができる。なお、制御装置60は、公知の回転数検出器を用いて、回転子52の回転数を測定することもできる。回転数算出部72によって算出された回転子52の回転数を回転数算出値Nm_fbで表す。回転数算出部72によって算出された回転数算出値Nm_fbは、後述する損失騒音推定部76に対して出力される。
(電流指令値設定部73)
電流指令値設定部73は、d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refを算出する。d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refの算出方法は、限定されない。電流指令値設定部73は、所要トルクに対して電機子電流が最小になるように、d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refを設定すると好適である。
図5は、トルクと電機子電流との間の関係の一例を示している。曲線L11は、所要トルク(トルク指令値Trq_ref)が一定のときのd軸電流指令値Id_refとq軸電流指令値Iq_refとの関係(電機子電流の電流ベクトルの関係)の一例を示している。電機子電流の電流ベクトルが曲線L11上に設定されることにより、所要トルクが得られる。矢印L12は、曲線L11で示す所要トルクを得るときに電機子電流が最小になる電流ベクトルを示している。直線L13は、曲線L11の極値における接線を示している。つまり、電機子電流の電流ベクトルが直線L13で示す接線と直交するときに、所要トルクを得るときの電機子電流が最小になる。
所要トルクが増加するとトルク指令値Trq_refが増大され、曲線L11は、曲線L11aに移動する。矢印L12aは、このときに電機子電流が最小になる電流ベクトルを示している。一方、所要トルクが減少するとトルク指令値Trq_refが低減され、曲線L11は、曲線L11bに移動する。矢印L12bは、このときに電機子電流が最小になる電流ベクトルを示している。なお、同図の横軸は、d軸を示し、縦軸は、q軸を示している。
制御装置60は、所要トルクに応じて、トルク指令値Trq_refを設定する。図4に示すように、電流指令値設定部73には、トルク指令値Trq_refが入力される。電流指令値設定部73は、トルク指令値Trq_refに対して電機子電流が最小になるように、d軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refを設定する。所要トルク(トルク指令値Trq_ref)に対応するd軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refは、予め算出され、例えば、マップ、テーブル、関係式(多項式)などに変換されて、図3に示す第二記憶装置60b2に記憶される。電流指令値設定部73は、電力変換器40の制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置60b2から第一記憶装置60b1にマップ等を読み出す。これにより、電流指令値設定部73は、所要トルク(トルク指令値Trq_ref)に対応するd軸電流指令値Id_refおよびq軸電流指令値Iq_refを容易に設定することができる。
(電流制御部74)
電流制御部74は、d軸電流指令値Id_refに基づいて、d軸電圧指令値Vd_refを算出する。また、電流制御部74は、q軸電流指令値Iq_refに基づいて、q軸電圧指令値Vq_refを算出する。具体的には、d軸電圧指令値Vd_refは、d軸電流算出値Id_fbがd軸電流指令値Id_refと一致するように算出される。また、q軸電圧指令値Vq_refは、q軸電流算出値Iq_fbがq軸電流指令値Iq_refと一致するように算出される。電流制御部74は、d軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_refを算出することができれば良く、限定されない。
図4に示すように、本実施形態では、電流制御部74は、減算器74aと、PI制御部74bと、減算器74cと、PI制御部74dとを備えている。減算器74aには、d軸電流指令値Id_refと、d軸電流算出値Id_fbとが入力される。減算器74aは、d軸電流指令値Id_refからd軸電流算出値Id_fbを減じて偏差ΔIdを算出する。減算器74aによって算出された偏差ΔIdは、PI制御部74bに対して出力される。本実施形態では、PI制御部74bは、d軸電流算出値Id_fbがd軸電流指令値Id_refと一致するように、比例制御および積分制御を行う。
PI制御部74bは、比例演算器74b1と、積分演算器74b2と、加算器74b3とを備えている。比例演算器74b1は、偏差ΔIdに比例ゲインKpdを乗じた演算結果を出力する。積分演算器74b2は、偏差ΔIdを積分した積分値に積分ゲインKidを乗じた演算結果を出力する。加算器74b3は、比例演算器74b1の演算結果と、積分演算器74b2の演算結果とを加算する。そして、PI制御部74bは、加算器74b3の演算結果をd軸電圧指令値Vd_refとして出力する。なお、PI制御部74bは、偏差ΔIdを微分した微分値に微分ゲインを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。つまり、PI制御部74bは、比例制御、積分制御および微分制御を行うPID制御部とすることができる。この場合、加算器74b3は、比例演算器74b1の演算結果と、積分演算器74b2の演算結果と、微分演算器の演算結果とを加算する。
一方、減算器74cには、q軸電流指令値Iq_refと、q軸電流算出値Iq_fbとが入力される。減算器74cは、q軸電流指令値Iq_refからq軸電流算出値Iq_fbを減じて偏差ΔIqを算出する。減算器74cによって算出された偏差ΔIqは、PI制御部74dに対して出力される。本実施形態では、PI制御部74dは、q軸電流算出値Iq_fbがq軸電流指令値Iq_refと一致するように、比例制御および積分制御を行う。
PI制御部74dは、比例演算器74d1と、積分演算器74d2と、加算器74d3とを備えている。比例演算器74d1は、偏差ΔIqに比例ゲインKpqを乗じた演算結果を出力する。積分演算器74d2は、偏差ΔIqを積分した積分値に積分ゲインKiqを乗じた演算結果を出力する。加算器74d3は、比例演算器74d1の演算結果と、積分演算器74d2の演算結果とを加算する。そして、PI制御部74dは、加算器74d3の演算結果をq軸電圧指令値Vq_refとして出力する。なお、PI制御部74dは、PI制御部74bと同様に、偏差ΔIqを微分した微分値に微分ゲインを乗じた演算結果を出力する微分演算器を備えることもできる。
このように、電流制御部74は、例えば、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)のうちの少なくとも比例制御(P制御)および積分制御(I制御)によって、d軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_refを算出することができる。なお、比例ゲインKpdおよび積分ゲインKid、並びに、比例ゲインKpqおよび積分ゲインKiqは、図3に示す第二記憶装置60b2に記憶されている。これらの制御ゲインは、電力変換器40の制御プログラムとともに、起動時に第二記憶装置60b2から第一記憶装置60b1に読み出される。
比例ゲインKpdを大きくする程、偏差ΔIdを短時間に低減することができる。また、積分ゲインKidを大きくする程、偏差ΔIdによるオフセット(定常偏差)を短時間に解消することができる。さらに、微分ゲインを大きくする程、偏差ΔIdの振動を短時間に収束させることができる。これらの制御ゲインは、例えば、シミュレーション、実機による調整などによって予め取得しておくと良い。以上のことは、q軸電圧指令値Vq_refを算出する制御ゲイン(比例ゲインKpq、積分ゲインKiqおよび微分ゲイン)についても同様に言える。
なお、d軸電圧指令値Vd_refは、比例ゲインKpdおよび積分ゲインKidを用いて、下記数3で表すことができる。また、q軸電圧指令値Vq_refは、比例ゲインKpqおよび積分ゲインKiqを用いて、下記数4で表すことができる。いずれもラプラス演算子をラプラス演算子sで表す。
(二相/三相変換部75)
二相/三相変換部75は、二相の電圧指令値(d軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_ref)から三相の電圧指令値(U相電圧指令値Vu_ref、V相電圧指令値Vv_refおよびW相電圧指令値Vw_ref)を算出する。図4に示すように、二相/三相変換部75には、電流制御部74によって算出されたd軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_refが入力される。また、二相/三相変換部75には、位置検出器61dによって検出された回転子52の回転角(回転位置θ)が入力される。二相/三相変換部75は、d軸電圧指令値Vd_refおよびq軸電圧指令値Vq_ref並びに回転位置θを用いて、dq座標軸の逆変換を行い、U相電圧指令値Vu_ref、V相電圧指令値Vv_refおよびW相電圧指令値Vw_refを算出する。
(損失騒音推定部76)
損失騒音推定部76は、キャリア周波数Fcを少なくとも因子に含む応答曲面法によって、電力変換器損失推定値Liおよび電動機損失推定値Lm、並びに、駆動騒音推定値Lsを算出する。電力変換器損失推定値Liは、電力変換器40の損失推定値をいう。電力変換器40の損失は、電力変換器40の入力電力と出力電力との電力差に相当する。電動機損失推定値Lmは、電動機50の損失推定値をいう。電動機50の損失は、電動機50の入力電力と出力電力との電力差に相当する。駆動騒音推定値Lsは、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音推定値をいう。本実施形態では、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音には、キャリア周波数Fcの周波数帯の騒音が含まれる。
応答曲面法(RSM:Response Surface Methodology)は、離散的なデータを連続的な曲面で近似する手法であり、作成された近似式を応答曲面モデルという。応答曲面モデルを作成することによって、特性を可視化することができ、影響が大きい因子(設計変数)の検討が容易になる。一例として、最小二乗法による多項式近似、離散的なデータを補間するRBF(Radial Basis Function)などが挙げられる。本実施形態では、多項式近似による手法を例に説明するが、これに限定されるものではない。
また、すべての条件について、サンプリングデータを取得することは困難である。そのため、サンプリングデータの取得において、実験計画法が用いられる。実験計画法は、少ない実験(測定データ)で効率的に多くの情報を取得することができる。一例として、L27直交表が挙げられる。L27直交表は、三水準直交表であり、27通りの条件について、サンプリングデータを取得する。なお、L27直交表で示される27通りの条件について、複数回(例えば、三回)、サンプリングデータを取得して、サンプリングデータ間のばらつきを考慮しても良い。また、サンプリングデータと応答曲面モデルとのフィッテング度について、例えば、公知の決定係数R2などの指標を用いて、検証することもできる。このように、実験計画法によるサンプリングデータの取得、応答曲面法(RSM)による最適解の算出方法については、種々の公知の手法を用いることができる。
本実施形態では、パルス幅変調制御(PWM制御)における搬送波の周波数であるキャリア周波数Fcを少なくとも因子に含む。また、損失騒音推定部76は、電動機50のトルク指令値Trq_ref、電動機50の回転数検出値若しくは回転数算出値Nm_fb、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧検出値Vdc_fb、および、キャリア周波数Fcを因子とすると好適である。
キャリア周波数Fcに応じて、複数のスイッチング素子(本実施形態では、三組の一対のスイッチング素子41)のスイッチング回数が増減する。そのため、キャリア周波数Fcの増減に応じて、電力変換器40の損失(スイッチング損失)が増減する。また、キャリア周波数Fcに応じて、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音(特に、電力変換器40の駆動に伴う騒音)が変動する。本実施形態では、電力変換器40の損失および電動機50の損失、並びに、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音を低減する最適なキャリア周波数Fcを設定するので、キャリア周波数Fcが少なくとも因子に含まれる必要がある。
また、電動機50の損失の一例として、銅損、鉄損および機械損が挙げられる。電動機50の出力トルク(トルク指令値Trq_ref)に応じて、電機子電流が増減する。電機子電流が増減すると、銅損が増減し、電動機50の損失が増減する。また、電動機50の回転数(回転数検出値若しくは回転数算出値Nm_fb)に応じて、逆起電力(誘起電圧)が増減する。逆起電力が増減すると、鉄損が増減し、電動機50の損失が増減する。よって、損失騒音推定部76は、電動機50のトルク指令値Trq_ref、電動機50の回転数検出値若しくは回転数算出値Nm_fbを因子とすると好適である。
後述するように、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧検出値Vdc_fbに基づいて、パルス幅変調制御(PWM制御)における変調率が算出される。そして、変調率と搬送波(三角波)とに基づいて、複数のスイッチング素子(本実施形態では、三組の一対のスイッチング素子41)の開閉信号が生成される。そのため、キャリア周波数Fcが同じであっても、直流電圧(直流電圧検出値Vdc_fb)に応じて、複数のスイッチング素子の開状態の時間が変動し、電力変換器40の損失(スイッチング損失)が増減する。よって、損失騒音推定部76は、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧検出値Vdc_fbを因子とすると好適である。
図4に示すように、損失騒音推定部76には、制御装置60によって設定されたトルク指令値Trq_refと、回転数算出部72によって算出された回転数算出値Nm_fbと、直流電圧検出器61aによって検出された直流電圧検出値Vdc_fbとが入力される。また、損失騒音推定部76は、図3に示す第一記憶装置60b1において、周波数テーブル(図示略)を備えている。周波数テーブルには、所定ピッチ(例えば、数キロヘルツピッチ)で、キャリア周波数Fcが昇順に格納されている。損失騒音推定部76は、周波数テーブルに格納されている複数のキャリア周波数Fcから一のキャリア周波数Fcを順に選択する。そして、損失騒音推定部76は、選択されたキャリア周波数Fcと、上述した入力値(トルク指令値Trq_ref、回転数算出値Nm_fbおよび直流電圧検出値Vdc_fb)とを用いて、応答曲面モデル(後述する多項式を含む)を作成する。
図6Aは、電動機損失推定値Lmとキャリア周波数Fcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電動機損失推定値Lmを示し、横軸は、キャリア周波数Fcを示している。曲線L21は、応答曲面法によって算出された電動機損失推定値Lmの変動例を示している。図6Bは、電力変換器損失推定値Liとキャリア周波数Fcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電力変換器損失推定値Liを示し、横軸は、キャリア周波数Fcを示している。曲線L22は、応答曲面法によって算出された電力変換器損失推定値Liの変動例を示している。図6Cは、駆動騒音推定値Lsとキャリア周波数Fcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、駆動騒音推定値Lsを示し、横軸は、キャリア周波数Fcを示している。曲線L23は、応答曲面法によって算出された駆動騒音推定値Lsの変動例を示している。図6Dは、特性Defとキャリア周波数Fcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、特性Defを示し、横軸は、キャリア周波数Fcを示している。領域DZ1は、応答曲面法によって算出された特性Defの一例を示している。
図6Aの曲線L21に示すように、キャリア周波数Fcの増減に対する電動機損失推定値Lmの変動幅は、電力変換器損失推定値Liおよび駆動騒音推定値Lsの各変動幅と比べて、小さい。第一電動機損失推定値Lm1は、キャリア周波数Fcが第一キャリア周波数Fc1のときの電動機損失推定値Lmを示している。図6Bの曲線L22に示すように、キャリア周波数Fcの増減に対して、電力変換器損失推定値Liは、極小値をもつ。第一電力変換器損失推定値Li1は、キャリア周波数Fcが第一キャリア周波数Fc1のときの電力変換器損失推定値Liを示しており、極小値に相当する。図6Cの曲線L23に示すように、キャリア周波数Fcが増加する程、駆動騒音推定値Lsは、減少する。第一駆動騒音推定値Ls1は、キャリア周波数Fcが第一キャリア周波数Fc1のときの駆動騒音推定値Lsを示している。
図6Dの領域DZ1に示すように、キャリア周波数Fcが増加すると、特性値(特性Def)は、第一キャリア周波数Fc1までは、次第に減少する。キャリア周波数Fcが第一キャリア周波数Fc1より増加しても、特性値(特性Def)の変動幅は、小さく、略一定である。このように、領域DZ1の突部が最も低くなるときの特性は、電力変換器40の損失および電動機50の損失、並びに、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音が低減される望ましい特性と言える。このようにして、損失騒音推定部76は、最適なキャリア周波数Fc(第一キャリア周波数Fc1)を取得することができ、このときの電力変換器損失推定値Li(第一電力変換器損失推定値Li1)、電動機損失推定値Lm(第一電動機損失推定値Lm1)および駆動騒音推定値Ls(第一駆動騒音推定値Ls1)を取得することができる。
なお、損失騒音推定部76は、トルクTrq、回転数Nmおよび直流電圧Vdcに対する特性を得ることもできる。図7Aは、電動機損失推定値LmとトルクTrqとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電動機損失推定値Lmを示し、横軸は、トルクTrqを示している。曲線L31は、応答曲面法によって算出された電動機損失推定値Lmの変動例を示している。図7Bは、電力変換器損失推定値LiとトルクTrqとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電力変換器損失推定値Liを示し、横軸は、トルクTrqを示している。曲線L32は、応答曲面法によって算出された電力変換器損失推定値Liの変動例を示している。図7Cは、駆動騒音推定値LsとトルクTrqとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、駆動騒音推定値Lsを示し、横軸は、トルクTrqを示している。曲線L33は、応答曲面法によって算出された駆動騒音推定値Lsの変動例を示している。図7Dは、特性DefとトルクTrqとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、特性Defを示し、横軸は、トルクTrqを示している。領域DZ2は、応答曲面法によって算出された特性Defの一例を示している。
図7Aの曲線L31に示すように、トルクTrqが増加する程、電動機損失推定値Lmは、増加する。第一電動機損失推定値Lm1は、トルクTrqが第一トルクTrq1のときの電動機損失推定値Lmを示している。図7Bの曲線L32に示すように、トルクTrqが増加する程、電力変換器損失推定値Liは、増加する。第一電力変換器損失推定値Li1は、トルクTrqが第一トルクTrq1のときの電力変換器損失推定値Liを示している。図7Cの曲線L33に示すように、トルクTrqの増減に対する駆動騒音推定値Lsの変動幅は、電力変換器損失推定値Liおよび電動機損失推定値Lmの各変動幅と比べて、小さい。第一駆動騒音推定値Ls1は、トルクTrqが第一トルクTrq1のときの駆動騒音推定値Lsを示している。図7Dの領域DZ2に示すように、トルクTrqが増加する程、特性値(特性Def)は、増加する。これは、トルクTrqの増加に対して、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsのいずれもが増加することによる。
図8Aは、電動機損失推定値Lmと回転数Nmとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電動機損失推定値Lmを示し、横軸は、回転数Nmを示している。曲線L41は、応答曲面法によって算出された電動機損失推定値Lmの変動例を示している。図8Bは、電力変換器損失推定値Liと回転数Nmとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電力変換器損失推定値Liを示し、横軸は、回転数Nmを示している。曲線L42は、応答曲面法によって算出された電力変換器損失推定値Liの変動例を示している。図8Cは、駆動騒音推定値Lsと回転数Nmとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、駆動騒音推定値Lsを示し、横軸は、回転数Nmを示している。曲線L43は、応答曲面法によって算出された駆動騒音推定値Lsの変動例を示している。図8Dは、特性Defと回転数Nmとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、特性Defを示し、横軸は、回転数Nmを示している。領域DZ3は、応答曲面法によって算出された特性Defの一例を示している。
図8Aの曲線L41に示すように、回転数Nmの増減に対する電動機損失推定値Lmの変動幅は、駆動騒音推定値Lsの変動幅と比べて、小さい。第一電動機損失推定値Lm1は、回転数Nmが第一回転数Nm1のときの電動機損失推定値Lmを示している。図8Bの曲線L42に示すように、回転数Nmの増減に対する電力変換器損失推定値Liの変動幅は、駆動騒音推定値Lsの変動幅と比べて、小さい。第一電力変換器損失推定値Li1は、回転数Nmが第一回転数Nm1のときの電力変換器損失推定値Liを示している。図8Cの曲線L43に示すように、回転数Nmが増加する程、駆動騒音推定値Lsは、減少する。第一駆動騒音推定値Ls1は、回転数Nmが第一回転数Nm1のときの駆動騒音推定値Lsを示している。図8Dの領域DZ3に示すように、回転数Nmが増減しても、特性値(特性Def)は、略一定である。なお、回転数Nmが極めて大きくなると、特性値(特性Def)は、減少する。
図9Aは、電動機損失推定値Lmと直流電圧Vdcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電動機損失推定値Lmを示し、横軸は、直流電圧Vdcを示している。曲線L51は、応答曲面法によって算出された電動機損失推定値Lmの変動例を示している。図9Bは、電力変換器損失推定値Liと直流電圧Vdcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、電力変換器損失推定値Liを示し、横軸は、直流電圧Vdcを示している。曲線L52は、応答曲面法によって算出された電力変換器損失推定値Liの変動例を示している。図9Cは、駆動騒音推定値Lsと直流電圧Vdcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、駆動騒音推定値Lsを示し、横軸は、直流電圧Vdcを示している。曲線L53は、応答曲面法によって算出された駆動騒音推定値Lsの変動例を示している。図9Dは、特性Defと直流電圧Vdcとの間の関係の一例を示している。同図の縦軸は、特性Defを示し、横軸は、直流電圧Vdcを示している。領域DZ4は、応答曲面法によって算出された特性Defの一例を示している。
図9Aの曲線L51に示すように、直流電圧Vdcの増減に対する電動機損失推定値Lmの変動幅は、駆動騒音推定値Lsの変動幅と比べて、小さい。第一電動機損失推定値Lm1は、直流電圧Vdcが第一直流電圧Vdc1のときの電動機損失推定値Lmを示している。図9Bの曲線L52に示すように、直流電圧Vdcが増加する程、電力変換器損失推定値Liは、増加する。第一電力変換器損失推定値Li1は、直流電圧Vdcが第一直流電圧Vdc1のときの電力変換器損失推定値Liを示している。図9Cの曲線L53に示すように、直流電圧Vdcが増加する程、駆動騒音推定値Lsは、増加する。第一駆動騒音推定値Ls1は、直流電圧Vdcが第一直流電圧Vdc1のときの駆動騒音推定値Lsを示している。図9Dの領域DZ4に示すように、直流電圧Vdcが第一直流電圧Vdc1までは、特性値(特性Def)の変動幅は、小さく、略一定である。直流電圧Vdcが第一直流電圧Vdc1より増加すると、特性値(特性Def)は、次第に増加する。
なお、第一トルクTrq1は、トルク指令値Trq_refに相当し、第一回転数Nm1は、回転数算出値Nm_fbに相当し、第一直流電圧Vdc1は、直流電圧検出値Vdc_fbに相当する。また、図6A、図7A、図8Aおよび図9Aにおいて、縦軸は、同じレンジで図示されている。このことは、図6B、図7B、図8Bおよび図9Bについても同様であり、図6C、図7C、図8Cおよび図9Cについても同様であり、図6D、図7D、図8Dおよび図9Dについても同様である。さらに、特性(特性Def)は、三次元で図示することもできる。
図10Aは、電動機損失推定値Lmに係り、キャリア周波数FcとトルクTrqと特性Defとの間の関係の一例を示している。同図の第一軸は、キャリア周波数Fcを示し、第二軸は、トルクTrqを示し、第三軸は、特性Defを示している。曲面Cs1は、電動機損失推定値Lmにおけるキャリア周波数FcとトルクTrqとの交互作用を示している。図10Bは、電力変換器損失推定値Liに係り、キャリア周波数FcとトルクTrqと特性Defとの間の関係の一例を示している。同図の第一軸は、キャリア周波数Fcを示し、第二軸は、トルクTrqを示し、第三軸は、特性Defを示している。曲面Cs2は、電力変換器損失推定値Liにおけるキャリア周波数FcとトルクTrqとの交互作用を示している。図10Cは、駆動騒音推定値Lsに係り、キャリア周波数FcとトルクTrqと特性Defとの間の関係の一例を示している。同図の第一軸は、キャリア周波数Fcを示し、第二軸は、トルクTrqを示し、第三軸は、特性Defを示している。曲面Cs3は、駆動騒音推定値Lsにおけるキャリア周波数FcとトルクTrqとの交互作用を示している。
このように、損失騒音推定部76は、キャリア周波数FcとトルクTrq(トルク指令値Trq_refに相当)との交互作用に係る特性Defを取得することができる。損失騒音推定部76は、他の交互作用に係る特性Def(例えば、キャリア周波数Fcと回転数Nm(回転数算出値Nm_fbに相当)との交互作用に係る特性Def)についても、同様に取得することができる。また、損失騒音推定部76は、上述した因子の各々について、二次の推定値(電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Ls)を算出して、特性Defを取得することもできる。
さらに、損失騒音推定部76は、定常項と一次項と交互作用項とからなる多項式を用いて、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsをそれぞれ算出し、多項式の各係数は、応答曲面法によって算出された偏回帰係数を用いて設定されると好適である。電力変換器損失推定値Liを示す多項式は、偏回帰係数Ki1〜Ki10を用いて、下記数5で表すことができる。同様に、電動機損失推定値Lmを示す多項式は、偏回帰係数Km1〜Km10を用いて、下記数6で表すことができる。また、駆動騒音推定値Lsを示す多項式は、偏回帰係数Ks1〜Ks10を用いて、下記数7で表すことができる。
なお、数5〜数7において、キャリア周波数Fc、トルクTrq(トルク指令値Trq_refに相当)、回転数Nm(回転数算出値Nm_fbに相当)および直流電圧Vdc(直流電圧検出値Vdc_fbに相当)は変数である。また、電力変換器損失推定値Liにおける定常項を電力変換器損失定常項Ciで表し、電動機損失推定値Lmにおける定常項を電動機損失定常項Cmで表し、駆動騒音推定値Lsにおける定常項を駆動騒音定常項Csで表す。さらに、偏回帰係数Ki1〜Ki4は、多項式の一次項の係数であり、偏回帰係数Ki5〜Ki10は、多項式の交互作用項の係数である。同様に、偏回帰係数Km1〜Km4は、多項式の一次項の係数であり、偏回帰係数Km5〜Km10は、多項式の交互作用項の係数である。偏回帰係数Ks1〜Ks4は、多項式の一次項の係数であり、偏回帰係数Ks5〜Ks10は、多項式の交互作用項の係数である。
また、損失騒音推定部76は、定常項と一次項と交互作用項と二次項とからなる多項式を用いて、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsをそれぞれ算出することもできる。この場合も、多項式の各係数は、応答曲面法によって算出された偏回帰係数を用いて設定されると好適である。この場合、電力変換器損失推定値Liを示す多項式は、偏回帰係数Ki1〜Ki14を用いて、下記数8で表すことができる。同様に、電動機損失推定値Lmを示す多項式は、偏回帰係数Km1〜Km14を用いて、下記数9で表すことができる。また、駆動騒音推定値Lsを示す多項式は、偏回帰係数Ks1〜Ks14を用いて、下記数10で表すことができる。
なお、数8は、多項式の二次項を含む点で、数5と異なる。偏回帰係数Ki11〜Ki14は、多項式の二次項の係数である。同様に、数9は、多項式の二次項を含む点で、数6と異なる。偏回帰係数Km11〜Km14は、多項式の二次項の係数である。数10は、多項式の二次項を含む点で、数7と異なる。偏回帰係数Ks11〜Ks14は、多項式の二次項の係数である。
(キャリア周波数制御部77)
キャリア周波数制御部77は、損失騒音推定部76によって算出された電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsに基づいて、キャリア周波数Fcの適正値を判定する判定値Jを算出して、判定値Jが最小になるときのキャリア周波数Fcを出力する。また、キャリア周波数制御部77は、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsをそれぞれ正規化して、正規化された各推定値を加算して判定値Jを算出すると好適である。
図6A〜図6Cに示す例において、例えば、電力変換器損失推定値Liの想定される最大値を1とする。このとき、キャリア周波数制御部77は、電動機損失推定値Lmの想定される最大値が1になるように、電動機損失推定値Lmを変換(正規化)する。また、キャリア周波数制御部77は、駆動騒音推定値Lsの想定される最大値が1になるように、駆動騒音推定値Lsを変換(正規化)する。図6Aに示す第一電動機損失推定値Lm1、図6Bに示す第一電力変換器損失推定値Li1および図6Cに示す第一駆動騒音推定値Ls1は、いずれも正規化された推定値とする。キャリア周波数制御部77は、第一電動機損失推定値Lm1と、第一電力変換器損失推定値Li1と、第一駆動騒音推定値Ls1とを加算して、判定値Jを算出する。
また、キャリア周波数制御部77は、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsのうちの少なくとも一つの推定値を重み付けして、重み付けされた推定値を含む各推定値を加算して判定値Jを算出することもできる。例えば、本実施形態の電力変換システム1が、ハイブリッド自動車などの車両の駆動用電動機を含む電力変換システムに用いられる場合を想定する。この場合、キャリア周波数制御部77は、車両の周囲環境、使用状態(例えば、走行状態)などに応じて、重み付けを行うことができる。
例えば、夜間は、昼間と比べて、騒音を重視する場合が多い。この場合、キャリア周波数制御部77は、駆動騒音推定値Lsに対して、重み付けを行うと良い。これにより、キャリア周波数制御部77は、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音を重視した最適なキャリア周波数Fcを出力することができる。また、例えば、外気温が高く、車両の走行状態が低速度の場合、電力変換器40の損失を重視する場合が想定される。この場合、キャリア周波数制御部77は、電力変換器損失推定値Liに対して、重み付けを行うと良い。これにより、キャリア周波数制御部77は、電力変換器40の損失を重視した最適なキャリア周波数Fcを出力することができる。同様に、電動機50の損失を重視した重み付けを行うこともできる。
図11は、損失騒音推定部76およびキャリア周波数制御部77における制御手順の一例を示すフローチャートである。まず、損失騒音推定部76は、因子のうち、トルク指令値Trq_ref、回転数算出値Nm_fb、直流電圧検出値Vdc_fbを取得する(ステップS11)。次に、損失騒音推定部76は、因子のうち、キャリア周波数Fc(i)を取得する(ステップS12)。キャリア周波数Fc(i)は、0以上n(nは整数)以下の変数であるカウンタiを用いて表されるキャリア周波数Fcである。既述したように、周波数テーブルには、所定ピッチ(例えば、数キロヘルツピッチ)で、キャリア周波数Fcが昇順に格納されている。損失騒音推定部76は、周波数テーブルに格納されている複数のキャリア周波数Fcから、カウンタiで示される一のキャリア周波数Fcを選択する。カウンタiの初期値は、0(ゼロ)に設定されており、損失騒音推定部76は、まず、キャリア周波数Fc(0)を取得する。
次に、損失騒音推定部76は、特性(損失および騒音)の推定を行う(ステップS13)。具体的には、損失騒音推定部76は、上述した因子を含む応答曲面法によって、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsを算出する。そして、キャリア周波数制御部77は、損失騒音推定部76によって算出された電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsに基づいて、判定値Jを算出する。算出された判定値Jを今回判定値J1とする(ステップS14)。
次に、キャリア周波数制御部77は、今回判定値J1が最小判定値J0より小さいか否かを判断する(ステップS15)。最小判定値J0は、キャリア周波数制御部77によって算出された判定値Jを保存する変数(バッファ)である。今回判定値J1が最小判定値J0より小さい場合(Yesの場合)、キャリア周波数制御部77は、出力するキャリア周波数Fcである出力キャリア周波数Fc_outに、今回のキャリア周波数Fc(i)を代入する(ステップS16)。また、キャリア周波数制御部77は、最小判定値J0に、今回判定値J1を代入する(ステップS17)。そして、制御は、ステップS18に移行する。なお、今回判定値J1が最小判定値J0より大きい場合(Noの場合)、ステップS16およびステップS17に示す処理を行わずに、制御は、ステップS18に移行する。
次に、キャリア周波数制御部77は、カウンタiがカウンタ最大値IMAXであるか否かを判断する(ステップS18)。カウンタ最大値IMAXは、周波数テーブルに格納されているキャリア周波数Fcの数に合わせて設定される定数である。カウンタiがカウンタ最大値IMAXと一致する場合(Yesの場合)、制御は、一旦、終了する。カウンタiがカウンタ最大値IMAXと一致しない場合(Noの場合)、キャリア周波数制御部77は、カウンタiをカウントアップする(ステップS19)。具体的には、キャリア周波数制御部77は、カウンタiを一つ増加させる。そして、制御は、ステップS12に戻り、カウンタiがカウンタ最大値IMAXと一致するまで、上述した処理および判断が繰り返される。このようにして、キャリア周波数制御部77は、判定値Jが最小になるときのキャリア周波数Fcを出力することができる。
(パルス幅変調信号生成部78)
パルス幅変調信号生成部78は、キャリア周波数制御部77から出力されたキャリア周波数Fcを用いて、電力変換器40の複数のスイッチング素子(本実施形態では、三組の一対のスイッチング素子41)の開閉信号を生成する。既述したように、キャリア周波数制御部77から出力されたキャリア周波数Fcを出力キャリア周波数Fc_outとする。図4に示すように、パルス幅変調信号生成部78には、二相/三相変換部75によって算出された三相の電圧指令値(U相電圧指令値Vu_ref、V相電圧指令値Vv_refおよびW相電圧指令値Vw_ref)と、直流電圧検出器61aによって検出された直流電圧検出値Vdc_fbと、キャリア周波数制御部77から出力されたキャリア周波数Fc(出力キャリア周波数Fc_out)とが入力される。パルス幅変調信号生成部78は、パルス幅変調制御(PWM制御)における搬送波(三角波)の周波数を出力キャリア周波数Fc_outに設定する。
また、パルス幅変調信号生成部78は、三相の電圧指令値を直流電圧検出値Vdc_fbで除して変調率を算出する。パルス幅変調信号生成部78は、算出された変調率と、出力キャリア周波数Fc_outに設定された搬送波(三角波)とに基づいて、パルス幅変調制御(PWM制御)によるパルス信号(開閉信号)を生成する。具体的には、電圧指令値が搬送波と比べて大きいときに、スイッチング素子は、閉状態に設定され、電圧指令値が搬送波と比べて小さいときに、スイッチング素子は、開状態に設定される。生成されたパルス信号(開閉信号)は、図1に示す駆動回路61bを介して、電力変換器40の各スイッチング素子の制御端子4gに付与される。
様相1に係る電動機制御装置10によれば、制御装置60は、損失騒音推定部76とキャリア周波数制御部77とパルス幅変調信号生成部78とを備える。損失騒音推定部76は、パルス幅変調制御における搬送波の周波数であるキャリア周波数Fcを少なくとも因子に含む応答曲面法によって、電力変換器40の損失推定値である電力変換器損失推定値Liおよび電動機50の損失推定値である電動機損失推定値Lm、並びに、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音推定値である駆動騒音推定値Lsを算出する。キャリア周波数制御部77は、損失騒音推定部76によって算出された電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsに基づいて、キャリア周波数Fcの適正値を判定する判定値Jを算出して、判定値Jが最小になるときのキャリア周波数Fcを出力する。パルス幅変調信号生成部78は、キャリア周波数制御部77から出力されたキャリア周波数Fc(出力キャリア周波数Fc_out)を用いて、電力変換器40の複数のスイッチング素子(三組の一対のスイッチング素子41)の開閉信号を生成する。これらにより、様相1に係る電動機制御装置10は、電力変換器40の損失および電動機50の損失、並びに、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音を低減する最適なキャリア周波数Fcを設定して、電力変換器40を開閉制御することができる。
様相2に係る電動機制御装置10によれば、様相1に係る電動機制御装置10において、損失騒音推定部76は、電動機50のトルク指令値Trq_ref、電動機50の回転数検出値若しくは回転数算出値Nm_fb、電力変換器40に入力される直流電力の直流電圧検出値Vdc_fb、および、キャリア周波数Fcを因子とする。そのため、損失騒音推定部76は、電力変換器40の損失および電動機50の損失、並びに、電力変換器40および電動機50の駆動に伴う騒音の主な要因を因子として、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsを算出することができる。
応答曲面法によって作成された近似式(応答曲面モデル)を二次以上の次数の項を含む多項式で表す場合、特定の条件下では、推定値の算出精度が向上するが、特定の条件以外の条件では、逆に、推定値の算出精度が低下する可能性があり、汎用性が低下する可能性がある。具体的には、近似式を二次以上の次数の項を含む多項式で表す場合、電動機50に関する定数(例えば、巻線抵抗R、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、誘起電圧定数Φなど)のばらつきによる影響を受け易くなる。
様相3に係る電動機制御装置10によれば、様相1または様相2に係る電動機制御装置10において、損失騒音推定部76は、定常項と一次項と交互作用項とからなる多項式を用いて、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsをそれぞれ算出し、多項式の各係数は、応答曲面法によって算出された偏回帰係数を用いて設定される。そのため、損失騒音推定部76は、例えば、電動機50に関する定数(例えば、巻線抵抗R、d軸インダクタンスLd、q軸インダクタンスLq、誘起電圧定数Φなど)のばらつきによる影響を受け難く、電動機50の個体差による推定精度の悪化を軽減することができる。
様相4に係る電動機制御装置10によれば、様相1〜様相3のいずれか一つの様相に係る電動機制御装置10において、キャリア周波数制御部77は、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsをそれぞれ正規化して、正規化された各推定値を加算して判定値Jを算出する。そのため、キャリア周波数制御部77は、単位系の異なる複数の推定値から判定値Jを算出することができ、最適なキャリア周波数Fcを容易に設定することができる。
様相5に係る電動機制御装置10によれば、様相1〜様相3のいずれか一つの様相に係る電動機制御装置10において、キャリア周波数制御部77は、電力変換器損失推定値Li、電動機損失推定値Lmおよび駆動騒音推定値Lsのうちの少なくとも一つの推定値を重み付けして、重み付けされた推定値を含む各推定値を加算して判定値Jを算出する。そのため、キャリア周波数制御部77は、例えば、周囲環境、使用状態などを考慮した最適なキャリア周波数Fcを容易に設定することができる。
<その他>
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、電動機50の制御方法は、ベクトル制御に限定されるものではない。制御装置60は、公知の駆動制御(例えば、矩形波駆動など)を行うことができる。また、電動機制御装置10は、例えば、ハイブリッド自動車などの車両の駆動用電動機を含む電力変換システム1に用いると好適である。
<付記項>
本発明は、電動機制御装置10の制御方法として、捉えることもできる。損失騒音推定工程は、損失騒音推定部76が行う制御に対応し、キャリア周波数制御工程は、キャリア周波数制御部77が行う制御に対応し、パルス幅変調信号生成工程は、パルス幅変調信号生成部78が行う制御に対応する。電動機制御装置10の制御方法においても、電動機制御装置10について既述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
(付記項1)
複数のスイッチング素子が開閉制御されることにより直流電力を交流電力に変換して前記変換された前記交流電力を電動機に給電する電力変換器と、
前記電力変換器の前記複数のスイッチング素子をパルス幅変調制御によって前記開閉制御する制御装置と、
を備える電動機制御装置の制御方法であって、
前記パルス幅変調制御における搬送波の周波数であるキャリア周波数を少なくとも因子に含む応答曲面法によって、前記電力変換器の損失推定値である電力変換器損失推定値および前記電動機の損失推定値である電動機損失推定値、並びに、前記電力変換器および前記電動機の駆動に伴う騒音推定値である駆動騒音推定値を算出する損失騒音推定工程と、
前記損失騒音推定工程によって算出された前記電力変換器損失推定値、前記電動機損失推定値および前記駆動騒音推定値に基づいて、前記キャリア周波数の適正値を判定する判定値を算出して、前記判定値が最小になるときの前記キャリア周波数を出力するキャリア周波数制御工程と、
前記キャリア周波数制御工程によって得られた前記キャリア周波数を用いて、前記電力変換器の前記複数のスイッチング素子の開閉信号を生成するパルス幅変調信号生成工程と、
を備える電動機制御装置の制御方法。
(付記項2)
前記損失騒音推定工程は、前記電動機のトルク指令値、前記電動機の回転数検出値若しくは回転数算出値、前記電力変換器に入力される前記直流電力の直流電圧検出値、および、前記キャリア周波数を因子とする付記項1に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項3)
前記損失騒音推定工程は、定常項と一次項と交互作用項とからなる多項式を用いて、前記電力変換器損失推定値、前記電動機損失推定値および前記駆動騒音推定値をそれぞれ算出し、
前記応答曲面法によって算出された偏回帰係数を用いて、前記多項式の各係数を設定する付記項1または付記項2に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項4)
前記キャリア周波数制御工程は、前記電力変換器損失推定値、前記電動機損失推定値および前記駆動騒音推定値をそれぞれ正規化して、正規化された各推定値を加算して前記判定値を算出する付記項1〜付記項3のいずれか一項に記載の電動機制御装置の制御方法。
(付記項5)
前記キャリア周波数制御工程は、前記電力変換器損失推定値、前記電動機損失推定値および前記駆動騒音推定値のうちの少なくとも一つの推定値を重み付けして、前記重み付けされた推定値を含む各推定値を加算して前記判定値を算出する付記項1〜付記項3のいずれか一項に記載の電動機制御装置の制御方法。