以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
(A)第1実施例
(a)はんだ印刷機の構成
図1及び図2に、本発明のはんだ印刷機10を示す。はんだ印刷機10は、回路基板にクリームはんだを印刷するための作業機である。はんだ印刷機10は、基板搬送保持装置20と、マスク保持装置22と、撮像装置23と、スキージ装置24と、はんだ供給装置26と、制御装置(図8参照)28とを備えている。なお、図1は、はんだ印刷機10を側方からの視点において示す図であり、図2は、はんだ印刷機10を上方からの視点において示す図である。
基板搬送保持装置20は、図3乃至図6に示すように、コンベア装置50と、基板保持装置52と、基板昇降装置54とを有している。図3は、基板搬送保持装置20を斜め上方からの視点において示す図であり、図4は、基板搬送保持装置20を上方からの視点において示す図である。また、図5は、図4のAA線からの視点において示す図であり、図6は、図4のBB線からの視点において示す図である。
コンベア装置50は、1対のガイドレール60,62と、各ガイドレール60,62に設けられたコンベアベルト66を有している。1対のガイドレール60,62は、互いに平行に配設されており、各ガイドレール60,62は、1対の支持脚70を介して昇降台72の上面において支持されている。なお、ガイドレール60,62の延びる方向をX方向、そのX方向に水平に直行する方向をY方向、X方向及びY方向の両方に直交する方向をZ方向と称する。
また、各ガイドレール60,62の側面には2個のプーリ74,76がY方向を軸心として配設されている。それら2個のプーリ74,76は、各ガイドレール60,62の両端部に配設されている。なお、ガイドレール60とガイドレール62とは、互いのプーリ74,76の配設面が対向する状態で配設されている。そして、コンベアベルト66が、各ガイドレール60,62のプーリ74,76に巻き掛けられており、コンベアベルト66は、電磁モータ(図8参照)78の駆動により周回する。
なお、コンベアベルト66の周回方向は、図5での時計回りの方向とされている。これにより、コンベアベルト66の上に回路基板(図6参照)80を載置することで、回路基板80は、プーリ74が配設されている側からプーリ76が配設されている側に向かって、コンベアベルト66によって搬送される。つまり、コンベアベルト66の上面が、コンベア装置50の搬送面となる。また、プーリ74が配設されている側を上流側と称し、プーリ76が配設されている側を下流側と称する。
また、コンベア装置50は、幅変更装置(図8参照)81を有しており、ガイドレール60とガイドレール62との間の距離を変更することが可能とされている。詳しくは、ガイドレール62を支持する1対の支持脚70は、Y方向にスライド可能とされている。そして、それら1対の支持脚70は、電磁モータ(図8参照)82の駆動によりY方向の任意の位置に移動する。この際、それら1対の支持脚70により支持されているガイドレール62は、ガイドレール60と平行な状態で、ガイドレール60に対して接近・離間する。これにより、ガイドレール60とガイドレール62との間の距離が変更される。このように、ガイドレール60とガイドレール62との間の距離が変更されることで、種々のサイズの回路基板80を搬送することが可能となる。
また、基板保持装置52は、支持テーブル83と、複数の支持ピン84と、テーブル昇降機構85と、クランプ装置86とを有している。支持テーブル83は、概して矩形をなし、X方向に延びるように、1対のガイドレール60,62の間に配置されている。そして、複数の支持ピン84が、3×3列に並んだ状態、つまり、X方向に3列に並び、Y方向に3列に並んだ状態で、支持テーブル83の上に立設されている。
また、支持テーブル83は、テーブル昇降機構85を介して、昇降台72の上面に配設されており、テーブル昇降機構85は、電磁モータ(図8参照)88の駆動により支持テーブル83を昇降させる。なお、支持テーブル83の昇降によって、支持テーブル83の上面に配設された複数の支持ピン84は、コンベアベルト66の上面より下方に位置する箇所と、コンベアベルト66の上面より数mm上方に位置する箇所との間で昇降する。
これにより、回路基板80が、コンベアベルト66のX方向における中央の位置まで搬送された状態で、支持テーブル83がテーブル昇降機構85によって上昇することで、回路基板80が、複数の支持ピン84によって、コンベアベルト66の上面から持ち上げられる。なお、コンベアベルト66のX方向における中央の位置、つまり、回路基板80が支持ピン84によりコンベアベルト66から持ち上げられる位置を、作業位置と記載する。また、支持テーブル83がテーブル昇降機構85によって下降することで、回路基板80がコンベアベルト66の上面に載置される。
また、クランプ装置86は、1対のクランパ90と、1対の板バネ92とを有している。クランパ90は、概して棒状をなし、クランパ90の長さ寸法が、支持テーブル83のX方向における長さ寸法と略同じとされている。そして、1対のクランパ90は、それのX方向における両端と支持テーブル83のX方向における両端とがY方向において一致するように、ガイドレール60,62の上面に配設されている。つまり、1対のクランパ90は、上方からの視点において、支持テーブル83を挟むように配設されている。
また、クランパ90の断面形状は、図6に示すように、四角形状をなし、対向する2つの角部が直角とされ、残りの2つの角部の一方が鋭角とされ、他方が鈍角とされている。そして、クランパ90の直角の角部がガイドレール60,62の外側の角部の上に配設され、クランパ90の鈍角の角部がコンベアベルト66の上方に延び出す状態で、クランパ90がガイドレール60,62の上に配設されている。なお、1対のガイドレール60,62の一方から他方に向かう側を内側と称し、その内側と反対側を外側と称する。
このように、クランパ90がガイドレール60,62の上面に配設されることで、クランパ90の下面100は概して水平面となる。また、クランパ90の外側の側面102と、クランパ90の下面100との角部は直角であるため、その側面102は、概して鉛直面となる。また、クランパ90の上面104と、クランパ90の側面102との角部は鋭角であるため、上面104は内側に向かうほど下降する傾斜面となり、斜め上方を向いている。また、クランパ90の内側の側面106とクランパ90の上面104との角部は直角であるため、側面106は内側に向かうほど上昇する傾斜面となり、斜め下方を向いている。
また、クランパ90の外側の側面102と、ガイドレール60,62の外側の側面とは面一とされており、板バネ92が、X方向に延びるように、クランパ90の外側の側面102の下端部と、ガイドレール60,62の外側の側面の上端部とに沿って配設されている。そして、板バネ92の上端部が、クランパ90の外側の側面102に固定され、板バネ92の下端部が、ガイドレール60,62の外側の側面に固定されている。このような構造により、クランパ90は、ガイドレール60,62の上面において、板バネ92の下端部を中心に搖動する。
なお、1対のクランパ90の配設高さは、作業位置に搬送された回路基板80がテーブル昇降機構85によってコンベアベルト66から持ち上げられた高さと同じとされている。また、1対のクランパ90の側面106の下端の間の距離が、回路基板80のY方向の寸法より長くなり、1対のクランパ90の側面106の上端の間の距離が、回路基板80のY方向の寸法より短くなるように、1対のガイドレール60,62の間の距離が、幅変更装置81によって調整されている。
このため、回路基板80がテーブル昇降機構85によってコンベアベルト66から持ち上げられることで、回路基板80のY方向における両縁が、クランパ90の側面106に接触する。そして、回路基板80がテーブル昇降機構85によって、更に持ち上げられることで、クランパ90が、回路基板80の両縁によって、外側に向かって付勢される。この際、クランパ90は、板バネ92の弾性力に抗して、外側に向かって揺動する。そして、回路基板80の上面が、クランパ90の上面104と同じ高さとなるまで、回路基板80がテーブル昇降機構85によって上昇する。
これにより、図7に示すように、回路基板80が、板バネ92の弾性力により互いに接近する方向に付勢された1対のクランパ90の側面106において挟持される。つまり、クランプ装置86では、回路基板80が、1対のクランパ90の側面106において、板バネ92の弾性力によって挟持される。このため、クランパ90の側面106を、クランプ面106と記載する。なお、回路基板80の両縁がクランパ90のクランプ面106に接触している際に、ガイドレール62は、幅変更装置81の作動によって、ガイドレール60に接近する方向に僅かにスライドする。この際、回路基板80の上面と、クランパ90の上面104とが同じ高さとなった場合に、クランパ90の上面104が、回路基板80の上面と平行とされる。つまり、クランパ90の上面104と回路基板80の上面とが平行となるように、ガイドレール60,62の間の距離が幅変更装置81によって調整される。これにより、クランパ90の上面104と回路基板80の上面とが面一となる。
また、基板昇降装置54は、図3乃至図5に示すように、上記昇降台72と、台昇降機構96とを有している。台昇降機構96は、電磁モータ(図8参照)98の駆動により昇降台72を昇降させる。これにより、昇降台72の上に配設されたコンベア装置50及び基板保持装置52が、基板昇降装置54によって昇降する。つまり、クランプ装置86によってクランプされた状態の回路基板80が、基板昇降装置54によって昇降する。
マスク保持装置22は、図1に示すように、基板搬送保持装置20の上方に配設されたマスク支持台110と、そのマスク支持台110の上面に配設されたマスク固定機構112とを有している。マスク支持台110の中央部には、開口部(図示省略)が形成されており、その開口部を覆うように、マスク116がマスク支持台110の上に載置される。そして、マスク支持台110の上に載置されたマスク116が、マスク固定機構112によって固定的に保持される。
なお、マスク支持台110に形成されている開口部は、基板搬送保持装置20により搬送される回路基板80より大きくされている。そして、クランプ装置86によってクランプされた回路基板80が、基板昇降装置54によって上昇することで、マスク固定機構112によって保持されたマスク116の下面に密着する。また、クランプ装置86によってクランプされた回路基板80が、基板昇降装置54によって下降することで、マスク116の下面から離間する。
撮像装置23は、図1及び図2に示すように、カメラ移動装置120と、カメラ122と、ストッパ124とを有している。カメラ移動装置120は、1対のスライドレール126と、Yスライダ128と、Xスライダ130とを含む。1対のスライドレール126は、基板搬送保持装置20とマスク保持装置22との間において、互いに平行かつ、Y軸方向に延びるように配設されている。Yスライダ128は、1対のスライドレール126によってスライド可能に保持されており、電磁モータ(図8参照)132の作動により、Y方向にスライドする。Xスライダ130は、Yスライダ128の下面側にX方向にスライド可能に取り付けられており、電磁モータ(図8参照)136の作動により、X方向にスライドする。なお、スライドレール126は、基板搬送保持装置20の基板昇降装置54と上下方向において重なっておらず、Yスライダ128が、基板昇降装置54の上方から移動することで、回路基板80は、撮像装置23と当接することなく、基板昇降装置54により上昇される。
カメラ122は、Xスライダ130の下面側に取り付けられている。カメラ122は上下に視野を持つ。ストッパ124は、概して棒状をなし、Xスライダ130の下面側に、下方に延び出す状態で取り付けられている。これにより、カメラ122及びストッパ124は、基板搬送保持装置20の上方において任意の位置に移動可能とされている。なお、ストッパ124は、ストッパ昇降装置(図8参照)138を有しており、Xスライダ130から下降、若しくは、Xスライダ130に向かって上昇可能とされている。
スキージ装置24は、スキージ移動装置150と、1対のスキージ152,154と、スキージ昇降装置156とを有している。スキージ移動装置150は、1対のスライドレール158とスライダ160とを含む。1対のスライドレール158は、マスク保持装置22の上方において、互いに平行かつ、Y軸方向に延びるように配設されている。スライダ160は、1対のスライドレール158にスライド可能に取り付けられており、電磁モータ(図8参照)162の作動により、Y方向にスライドする。また、1対のスキージ152,154の各々は、概して矩形の板状をなし、可撓性を有する素材により形成されている。1対のスキージ152,154は、互いに向かい合うとともに、X軸方向に延びるように配設され、スライダ160の下方において、スキージ昇降装置156によって保持されている。そのスキージ昇降装置156は、1対のスキージ152,154を個別に昇降させる。
はんだ供給装置26は、クリームはんだを供給する装置であり、クリームはんだを吐出する吐出口170が、はんだ供給装置26の下面に形成されている。また、はんだ供給装置26は、スライダ160のY軸方向における側面の略中央部に固定されている。これにより、はんだ供給装置26は、スキージ移動装置150の作動によりY軸方向の任意の位置に移動する。
制御装置28は、図8に示すように、コントローラ180と、複数の駆動回路182と、画像処理装置186とを備えている。複数の駆動回路182は、上記電磁モータ78,82,88,98,132,136,162、ストッパ昇降装置138、スキージ昇降装置156、はんだ供給装置26に接続されている。コントローラ180は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路182に接続されている。これにより、基板搬送保持装置20、スキージ装置24等の作動が、コントローラ180によって制御される。また、コントローラ180は、画像処理装置186にも接続されている。画像処理装置186は、カメラ122によって得られた画像データを処理するものであり、コントローラ180は、画像データから各種情報を取得する。
(b)はんだ印刷機の作動
はんだ印刷機10では、上述した構成によって、回路基板80が作業位置まで搬送され、クランプ装置86によってクランプされる。続いて、クランプされた回路基板80が、基板昇降装置54によって上昇されることで、マスク116の下面に密着する。なお、マスク116には、回路基板80のパッド等のパターンに合わせて貫通孔(図示省略)が形成されている。そして、マスク116にクリームはんだが塗布されることで、マスク116の貫通穴を介して、クリームはんだが回路基板80に印刷される。
具体的には、回路基板80がはんだ印刷機10に搬入され、コンベアベルト66によって下流側に搬送される。また、回路基板が作業位置に搬送される前に、撮像装置23において、Xスライダ130が、カメラ移動装置120によって、作業位置の下流側の上方に移動され、Xスライダ130に取り付けられているストッパ124が下降される。この際、ストッパ124は、それの先端がコンベアベルト66の上面より下方に位置するまで、下降される。これにより、コンベアベルト66によって搬送される回路基板80が、ストッパ124の先端部に当接し、回路基板80が作業位置に停止する。なお、ストッパ124への回路基板80の当接に伴って、コンベアベルト66の作動が停止する。
次に、回路基板80が作業位置において停止すると、ストッパ124が上昇する。続いて、基板搬送保持装置20において、支持テーブル83が上昇し、回路基板80がコンベアベルト66から持ち上げられ、クランプ装置86によってクランプされる。そして、回路基板80がクランプ装置86によってクランプされると、Xスライダ130に取り付けられているカメラ122によって、クランプ装置86によってクランプされた回路基板80に設けられたマークと、マスク116に設けられたマークとが撮像される。
そして、撮像データに基づいて、回路基板80とマスク116との位置ずれを計算する。また、回路基板80の停止位置,回路基板80の種類等がコントローラ180によって分析される。その後、昇降台72が基板昇降装置54によって上昇される。これにより、クランプ装置86によってクランプされた回路基板80が、コンベア装置50とともに上昇し、マスク116の下面に密着する。この際、回路基板80の上面と、クランプ装置86のクランパ90の上面104とは面一とされているため、回路基板80は、マスク116の下面に殆ど隙間の無い状態で密着する。
次に、はんだ供給装置26によって、マスク116の上面にクリームはんだが供給される。次に、1対のスキージ152,154の一方が、スキージ昇降装置156によって下降され、その下降されたスキージの先端がマスク116の上面に接触する。そして、そのスキージが、スキージ移動装置150によってY方向に移動することで、クリームはんだが、スキージによって、掻き取られる。この際、クリームはんだは、マスク116の貫通穴の内部に充填され、回路基板80に印刷される。これにより、回路基板80への印刷作業が完了する。
続いて、回路基板80への印刷作業が完了すると、昇降台72が下降され、回路基板80が、昇降台72とともに下降することで、マスク116の下面への密着が解除される。また、昇降台72の下降中、若しくは、昇降台72の下降が開始するタイミングで、クランプ装置86による回路基板80のクランプが解除され、支持テーブル83が下降する。これにより、クランプの解除された回路基板80が、コンベアベルト66の上面に載置される。そして、コンベアベルト66が周回されることで、回路基板80が下流側に搬送され、はんだ印刷機10から搬出される。
(c)下反り状態の回路基板のクランプ
はんだ印刷機10の基板搬送保持装置20では、上述したように、クランプ装置86において、回路基板80を挟持するクランパ90のクランプ面106が斜め下方を向いており、クランパ90は、板バネ92の弾性力に抗して搖動可能とされている。そして、回路基板80の上昇に伴って、回路基板80の両縁がクランプ面106に接触し、クランパ90を板バネ92の弾性力に抗して搖動させる。これにより、回路基板80が、1対のクランパ90のクランプ面106において、板バネ92の弾性力によって挟持される。このように、基板搬送保持装置20では、回路基板80がクランプされることで、反りが生じた回路基板80であっても、適切にクランプすることが可能とされている。
具体的には、従来の基板搬送保持装置200では、図9に示すように、クランプ装置として、固定クランパ202と可動クランパ204とが設けられている。なお、基板搬送保持装置200は、固定クランパ202と可動クランパ204とを除いて、基板搬送保持装置20と略同じ構成である。このため、固定クランパ202及び可動クランパ204を中心に説明し、同様の機能の構成要素については、基板搬送保持装置20と同じ符号を用いて、説明を省略する。
固定クランパ202は、概して棒状をなし、X方向に延びるように、ガイドレール60の上面に固定されている。一方、可動クランパ204は、概して棒状をなし、X方向に延びるように、ガイドレール62の上面に、Y方向にスライド可能な状態で配設されている。そして、可動クランパ204は、固定クランパ202から離間する方向に、コイルスプリング(図示省略)の弾性力によって付勢されている。また、可動クランパ204は、エアシリンダ(図示省略)の駆動により、コイルスプリングの弾性力に抗して固定クランパ202に接近する。なお、固定クランパ202及び可動クランパ204の断面形状は、概して長方形状とされており、固定クランパ202及び可動クランパ204のクランプ面206は、鉛直面とされ、上面208は、水平面とされている。
そして、回路基板80が、図10に示すように、回路基板80の上面と、固定クランパ202及び可動クランパ204の上面208とが同じ高さとなるまで、回路基板80がテーブル昇降機構85の作動により持ち上げられる。この際、可動クランパ204がエアシリンダの作動によって、固定クランパ202に接近することで、回路基板80が固定クランパ202と可動クランパ204とによって挟持される。
一方で、反りが生じた回路基板80、例えば、回路基板80の縁部が中央部より上方に突出した状態(以下、「下反り状態」と記載する場合がある)の回路基板80について説明する。このような下反り状態の回路基板80が、平坦な回路基板80と同様に、テーブル昇降機構85の作動により持ち上げられると、図11に示すように、回路基板80の両縁が、固定クランパ202及び可動クランパ204の上面208より上方に位置する。このような状態で、固定クランパ202が可動クランパ204に接近する方向にスライドしても、固定クランパ202と可動クランパ204とによって、回路基板80をクランプすることはできない。
このため、例えば、下反り状態の回路基板80の両縁を上方から押える押圧装置を、基板搬送保持装置200に配設することが考えられる。押圧装置を用いれば、下反り状態の回路基板80を平坦にすることが可能となり、固定クランパ202と可動クランパ204とによって、回路基板80をクランプすることが可能となる。しかしながら、押圧装置の配設により、基板搬送保持装置200の構造が複雑化し、コストが増大する。さらに言えば、押圧装置による回路基板80の押圧工程が必要となり、タクトタイムが長くなることで生産性が低下する。
また、押圧装置の押えによって、下反り状態の回路基板80を平坦にしても、回路基板80をマスク116の下面に密着させる際に、押圧装置による回路基板の押えを解除する必要がある。この際、押圧装置の押えにより平坦な形状とされていた回路基板が、下反り状態に戻る場合がある。このような場合には、固定クランパ202と可動クランパ204とによる回路基板80のクランプが解除され、印刷作業を行うことができなくなる。
このようなことに鑑みて、基板搬送保持装置20では、上述したように、クランプ装置86において、回路基板80を挟持するクランパ90のクランプ面106が斜め下方を向いており、クランパ90は、板バネ92の弾性力に抗して搖動可能とされている。このような構造のクランプ装置86において、下反り状態の回路基板80が、テーブル昇降機構85の作動により上昇すると、図12に示すように、回路基板80の両縁がクランプ面106に接触する。そして、回路基板80の更なる上昇に伴って、回路基板80の両縁が、クランパ90を外側に向かって付勢することで、クランパ90が板バネ92の弾性力に抗して搖動する。この際、回路基板80の両縁に、板バネ92の弾性力と、クランプ面106との摩擦力とによって、回路基板80の上昇に抗する力が生じる。これにより、下反り状態の回路基板80が、平坦な回路基板80に矯正される。
また、回路基板80の上昇時に、ガイドレール62が、幅変更装置81の作動によって、ガイドレール60に接近する方向に僅かにスライドする。この際、図7に示すように、回路基板80の上面と、クランパ90の上面104とが同じ高さとなった場合に、クランパ90の上面104と回路基板80の上面とが平行となるように、ガイドレール62がスライドし、ガイドレール60,62の間の距離が幅変更装置81によって調整される。これにより、クランパ90の上面104と回路基板80の上面とが面一となった状態で、回路基板80が1対のクランパ90により挟持される。このため、回路基板80の上面を、マスク116の下面に殆ど隙間の無い状態で密着することが可能となり、適切な印刷作業が担保される。
また、クランパ90の上面104とクランプ面106とは直行しているため、クランプ面106が鉛直面となる。これにより、矯正された平坦な回路基板80が、鉛直なクランプ面106によって、挟持されることで、回路基板80に反りを生じさせることなく、回路基板80を適切に挟持することが可能となる。
さらに言えば、回路基板80が1対のクランパ90により挟持されている際に、クランパ90は、板バネ92の弾性力によって、回路基板80の縁を下方に向かって付勢している。つまり、下反り状態の回路基板80を平坦に矯正する力が維持された状態で、回路基板80は1対のクランパ90により挟持されている。これにより、平坦に矯正された回路基板80の下反り状態への復元を防止した状態で、回路基板80を1対のクランパ90により挟持することが可能となる。
このように、基板搬送保持装置20では、押圧装置を用いることなく、下反り状態の回路基板80が平坦な回路基板80に矯正される。これにより、押圧装置の配設による構造の複雑化、コストの増大を防止することが可能となる。また、基板搬送保持装置20では、回路基板80が持ち上げられる際に、下反り状態の回路基板80が平坦な回路基板80に矯正される。つまり、回路基板80を矯正する工程と、回路基板80が持ち上げられる工程とが同時に行われる。これにより、回路基板80を矯正する工程を単独で行う必要が無くなり、タクトタイムの短縮を図ることが可能となる。
(B)第2実施例
第1実施例の基板搬送保持装置20では、クランパ90が板バネ92により搖動可能に支持されているが、第2実施例の基板搬送保持装置210では、図13に示すように、クランパ212が支持軸214により搖動可能に支持されている。以下に、第2実施例の基板搬送保持装置210に説明する。なお、第2実施例の基板搬送保持装置210は、クランパ212及び、クランパ212を支持するガイドレール216を除いて、第1実施例の基板搬送保持装置20と略同じ構成である。このため、クランパ212及びガイドレール216を中心に説明し、同様の機能の構成要素については、基板搬送保持装置20と同じ符号を用いて、説明を省略する。
具体的には、ガイドレール216は、第1実施例のガイドレール60,62と略同形状とされており、支持脚70により昇降台72の上面において支持されている。ただし、ガイドレール216の上面は、ガイドレール60,62と異なり、段付き形状とされており、段差面217と、その段差面217から上方に突出する突出部218とから構成されている。段差面217は、ガイドレール216の上面の内側に形成されており、水平面とされている。また、突出部218は、ガイドレール216の外側の縁部に沿って形成されており、段差面217から鉛直方向に延び出している。このため、段差面217と突出部218とのなす角度は直角とされている。
クランパ212は、概して棒状をなし、ガイドレール216の段差面217において、X方向に延びるように配設されている。クランパ212の断面形状は、四角形状をなし、隣り合う2つの角部が直角とされており、残りの2つの角部の一方が鈍角とされ、他方が鋭角とされている。そして、クランパ90は、直角の2つの角部が上方に位置した状態で、鋭角の角部において、X方向に延びる支持軸214によって搖動可能に支持されている。
このため、クランパ212の内側の側面、つまり、クランプ面220と、クランパ212の上面222とのなす角度および、クランパ212の外側の側面224と、クランパ212の上面222とのなす角度が、直角とされている。また、クランパ212のクランプ面220と、クランパ212の下面226とのなす角度が鈍角とされ、クランパ212の外側の側面224と、クランパ212の下面226とのなす角度が鋭角とされている。
そして、クランパ212が外側に向かって揺動した際に、クランパ212の外側の側面224が突出部218に接触することで、クランパ212の外側への搖動が規制される。一方、クランパ212が内側に向かって揺動した際に、クランパ212の下面226が段差面217に接触することで、クランパ212の内側への搖動が規制される。なお、クランパ212の外側の側面224と、ガイドレール216の突出部218との間に、圧縮コイルスプリング228が配設されている。これにより、クランパ212は、圧縮コイルスプリング228の弾性力によって、内側に向かって付勢されている。
また、支持軸214は、ガイドレール216の段差面217と突出部218との角部の近傍に配設されており、クランパ212が外側に向かって揺動し、クランパ212の外側の側面224が突出部218に接触した際に、側面224は鉛直面となる。このため、クランパ212の外側の側面224が突出部218に接触した際に、クランパ212の上面222は水平面となり、クランプ面220は鉛直面となる。なお、コンベア装置50の搬送面、つまり、コンベアベルト66の上面は、水平面とされている。このため、クランパ212の外側の側面224が突出部218に接触した際に、クランプ面220はコンベア装置50の搬送面と直行し、クランパ212の上面222はコンベア装置50の搬送面と並行となる。
また、クランパ212が内側に向かって揺動し、クランパ212の下面226が段差面217に接触した際に、段差面217が水平面であるため、クランパ212の下面226も水平面となる。そして、そのクランパ212の下面226とクランプ面220とは鈍角であるため、クランプ面220は、内側に向かうほど上昇する傾斜面となり、斜め下方を向いている。
このような構造の基板搬送保持装置210では、第1実施例の基板搬送保持装置20と同様に、下反り状態の回路基板80が平坦に矯正された状態で、1対のクランパ212によって挟持される。具体的には、下反り状態の回路基板80が、テーブル昇降機構85の作動により上昇すると、図14に示すように、回路基板80の両縁が、クランパ212のクランプ面220に接触する。そして、回路基板80の更なる上昇に伴って、回路基板80の両縁が、クランパ212を外側に向かって付勢することで、クランパ212が圧縮コイルスプリング228の弾性力に抗して搖動する。この際、回路基板80の両縁に、圧縮コイルスプリング228の弾性力と、クランパ212のクランプ面220との摩擦力とによって、回路基板80の上昇に抗する力が生じる。これにより、下反り状態の回路基板80が、平坦な回路基板80に矯正される。
また、回路基板80の上昇時に、1対のガイドレール216の一方が、幅変更装置81の作動によって、他方のガイドレール216に接近する方向に僅かにスライドする。そして、図15に示すように、ガイドレール216のスライドと、クランパ212の外側に向かう搖動とに伴って、クランパ212の外側への搖動がガイドレール216の突出部218により規制される。この際、回路基板80の上面と、クランパ212の上面222とが同じ高さとなった場合に、クランパ212の上面222と回路基板80の上面とが平行となるように、ガイドレール216がスライドし、1対のガイドレール216の間の距離が幅変更装置81によって調整される。これにより、クランパ212の上面222と回路基板80の上面とが面一となった状態で、回路基板80が1対のクランパ212により挟持される。
また、クランパ212の外側への搖動がガイドレール216の突出部218により規制された状態で、クランパ212のクランプ面220は鉛直面となる。これにより、矯正された平坦な回路基板80が、鉛直なクランプ面220によって、挟持されることで、回路基板80に反りを生じさせることなく、回路基板80を適切に挟持することが可能となる。
さらに言えば、回路基板80が1対のクランパ212により挟持されている際に、クランパ212は、圧縮コイルスプリング228の弾性力によって、回路基板80の縁を下方に向かって付勢している。つまり、下反り状態の回路基板80を平坦に矯正する力が維持された状態で、回路基板80は1対のクランパ212により挟持されている。これにより、平坦に矯正された回路基板80の下反り状態への復元を防止した状態で、回路基板80を1対のクランパ212により挟持することが可能となる。このように、第2実施例の基板搬送保持装置210においても、第1実施例の基板搬送保持装置20と同様の効果を奏することが可能となっている。
ちなみに、上記実施例において、基板搬送保持装置20は、基板搬送保持装置の一例である。コンベア装置50は、コンベア装置の一例である。回路基板80は、基板の一例である。支持ピン84は、支持部材の一例である。クランプ装置86は、クランプ装置の一例である。クランパ90は、挟持部材の一例である。板バネ92は、弾性体の一例である。上面104は、上面の一例である。クランプ面106は、挟持面の一例である。基板搬送保持装置210は、基板搬送保持装置の一例である。クランパ212は、挟持部材の一例である。突出部218は、規制部材の一例である。クランプ面220は、挟持面の一例である。上面222は、上面の一例である。圧縮コイルスプリング228は、弾性体の一例である。
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、はんだ印刷機10の基板搬送保持装置20,210に、本発明が適用されているが、装着作業機等の種々の対基板作業機の基板搬送保持装置に、本発明を適用することが可能である。
また、上記実施例では、クランパ90の上面104とクランプ面106とのなす角度、および、クランパ212の上面222とクランプ面220とのなす角度は、90度とされているが、90度未満であってもよい。つまり、クランパ90,212の上面104,222とクランプ面106,220とのなす角度は、90度以下であればよい。クランパ90,212の上面104,222とクランプ面106,220とのなす角度を、90度以下にすることで、クランパ90,212により回路基板80が挟持された際に、回路基板80の上面より上方に、クランパ90,212の上面104,222は突出しない。これにより、回路基板80の上面をマスク116に隙間なく、密着させることが可能となる。