JP2018195596A - 絶縁電線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導体と、導体の外周に配置される被覆層と、を備え、被覆層は、導体側から順に、難燃剤を含む樹脂組成物から形成される難燃層と遮水層とを最外層が難燃層となるように交互に積層させて形成され、遮水層が樹脂と酸化防止剤および銅害防止剤の少なくとも1つとを含有する樹脂組成物から形成されている、絶縁電線が提供される。
【選択図】図1
Description
導体と、
前記導体の外周に配置される被覆層と、を備え、
前記被覆層は、前記導体側から順に、難燃剤を含む樹脂組成物から形成される難燃層と遮水層とを最外層が前記難燃層となるように交互に積層させて形成され、
前記遮水層が樹脂と酸化防止剤および銅害防止剤の少なくとも1つとを含有する樹脂組成物から形成されている、絶縁電線が提供される。
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁電線について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
導体11としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、金属線の外周に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、金属線を撚り合わせた集合撚り導体を用いることもできる。導体11の外径は、絶縁電線1に求められる電気特性に応じて適宜変更することが可能であり、例えば1.0mm〜6.0mmである。
導体11の外周には被覆層20が設けられている。本実施形態では、被覆層20は、2層の難燃層21,21の間に1層の遮水層22を介在させ、最外層が難燃層21となるように積層させて形成されている。つまり、被覆層20は、導体11側から順に難燃層21、遮水層22および難燃層21の3層を積層させて形成されている。以下、被覆層20において、遮水層22で被覆されて内部に位置する難燃層21を内部難燃層21a、最外層に位置する難燃層21を外部難燃層21bとして説明する。
内部難燃層21aは、難燃剤を含む樹脂組成物から形成され、例えば、難燃剤を含む樹脂組成物を導体11の外周に押し出して形成される。難燃剤を含む内部難燃層21aは被覆層20の難燃性に寄与する。また、内部難燃層21aは、遮水層22で被覆されることによって絶縁電線1を水に浸漬させて直流安定性を評価するときに水の浸透が抑制されるので、絶縁信頼性が高く、被覆層20の直流安定性にも寄与することになる。すなわち、内部難燃層21aは、難燃性だけでなく、直流安定性にも寄与しており、難燃絶縁層として機能する。
遮水層22は、飽和吸水率が0.5%以下であり、吸水量や水の拡散係数が小さくなるように構成されていることが好ましい。遮水層22は、遮水性が高く、水が浸透しにくいので、被覆層20の内部に位置する内部難燃層21aへの水の浸透を抑制することができる。なお、遮水層22は実質的に難燃剤を含まず難燃性に劣るが、後述の外部難燃層21bで被覆されて保護されている。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等を用いることができ、その中でもペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えばジドデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等を用いることができ、その中でもテトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタンが好ましい。
これらの酸化防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
外部難燃層21bは、内部難燃層21aと同様に、難燃剤を含む樹脂組成物から形成され、例えば、難燃剤を含む樹脂組成物を導体11の外周に押し出して形成されている。外部難燃層21bは、被覆層20表面に位置し、内部難燃層21aのように遮水層22で被覆されていないので水が浸透しやすく、直流安定性には寄与しないものの、難燃性に劣る遮水層22を被覆して被覆層20全体としての難燃性の低下を抑制する。
続いて、被覆層20の積層構造について説明する。
好ましい。
内部難燃層21aは、厚さが50μm〜150μmであることが好ましい。
外部難燃層21bは、遮水層22を被覆し、その燃焼を抑制するので、その厚さを200μm以上とすることが好ましい。一方、上限値については400μm以下とすることが好ましい。
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
遮水層22によれば、内部難燃層21aへの水の浸透を抑制し、内部難燃層21aの絶縁信頼性を維持できるので、内部難燃層21aを、難燃性だけでなく、直流安定性にも寄与する難燃絶縁層として機能させることができる。これにより、図3に示す従来の絶縁電線100のように直流安定性に寄与する絶縁層120を形成することなく、所望の直流安定性を維持することができる。絶縁層120は所望の直流安定性を得るために厚く形成する必要がある一方、遮水層22は遮水性を示す程度に薄く形成すればよいので、絶縁層120の代わりに遮水層22を形成することで、その厚さの差の分だけ絶縁電線1の外径を細くすることが可能となる。
また、遮水層22は、実質的に難燃剤を含まず、被覆層20の難燃性を低下させるおそれがあるが、遮水層22を外部難燃層21bで被覆することで、被覆層20全体としての難燃性を高く維持することができる。
したがって、本実施形態によれば、絶縁電線1において、難燃性と直流安定性とを高い水準で両立しつつ、その外径を細くすることが可能となる。
これに対して、本実施形態では、同じ外径の導体11に対して、厚さ0.05mm〜0.15mmの内部難燃層21aと、厚さ0.05mm〜0.15mmの遮水層22と、厚さ0.2mm〜0.4mmの外部難燃層21bとを積層させればよく、絶縁電線1の外径としては2.2mm〜5.7mmの範囲にまで細径化することができる。
例えば、従来の絶縁電線100において、導体サイズを1SQ(導体径1.25mm)とする場合、導体110の外周に設けられる絶縁層120や難燃層130を含む被覆層の厚さ(被覆厚)を0.6mmとする必要があり、電線外径が2.6mmとなるが、本実施形態では、内部難燃層21aや遮水層22などを含む被覆層の被覆厚を0.45mm〜0.5mm程度まで薄くすることができ、電線外径を2.2mm〜2.3mmまで細径化することができる。
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA1):三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV260」(VA量:28%、MFR:6)
・エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA2):三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV170」(VA量:33%、MFR:1)
・高密度ポリエチレン(HDPE、d:0.951g/cm3、MFR:0.8):プライムポリマー株式会社製「ハイゼックス5305E」
・低密度ポリエチレン(LDPE、d:0.921g/cm3、MFR:1):宇部興産株式会社製「UBE C450」
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、d:0.922g/cm3、MFR:2.5):株式会社プライムポリマー製「SP2030」
・マレイン酸変性ポリマ:三井化学株式会社製「タフマーMH7020」
・水酸化マグネシウム(シラン処理):アルベマール株式会社製「H10A」
・水酸化マグネシウム(脂肪酸処理):アルベマール株式会社製「H10C」
・水酸化アルミニウム(脂肪酸処理):アルベマール株式会社製「OL107C」
・混合系の酸化防止剤:株式会社アデカ製「AO−18」
・フェノール系酸化防止剤:BASF株式会社製「イルガノックス1010」
・銅害防止剤:BASF株式会社製「イルガノックスMD1024」
・着色剤:旭カーボン株式会社製「FTカーボン」
・滑剤(ステアリン酸亜鉛):日東化成株式会社製
上述の材料を下記表1に示す組成で配合して難燃層を形成するための難燃材料を調製した。具体的には、EVA1を85質量部とマレイン酸変性ポリマを15質量部とシラン処理された水酸化マグネシウムを80質量部と脂肪酸処理された水酸化マグネシウムを120質量部と混合系の酸化防止剤を1質量部と着色剤を2質量部と滑剤を1質量部とを加圧ニーダで混練することよってペレット状の難燃材料1を得た。
同様に、表1に示すように組成を適宜変更し、難燃材料2〜難燃材料7をそれぞれ調製した。
なお、加圧ニーダでは開始温度を40℃、終了温度を190℃として混錬を行った。
続いて、上述の材料を下記表2に示す組成で配合して遮水層を形成するための遮水材料を調製した。具体的には、HDPEを100質量部とフェノール系酸化防止剤を1質量部と銅害防止剤を0.5質量部とを加圧ニーダで混練することによって遮水材料1を調製した。
同様に、表2に示すように組成を適宜変更し、遮水材料2〜遮水材料4をそれぞれ調製した。
なお、加圧ニーダでは開始温度を40℃、終了温度を190℃として混錬を行った。
(実施例1)
続いて、調製した難燃材料および遮水材料を用いて絶縁電線を作製した。
具体的には、外径が1.25mmのスズめっき銅導線の外周に難燃材料1、遮水材料1および難燃材料1をそれぞれの所定の厚さで3層同時に押し出し、電子線を8Mradで照射することで各材料を架橋させ、実施例1の絶縁電線を作製した。作製した絶縁電線は、内部難燃層の厚さが50μm、遮水層の厚さが50μm、外部難燃層の厚さが400μm、被覆層の全体の厚さが500μm、電線外径が2.25mmであった。また、遮水層は、ゲル分率が36%となるような架橋度であることが確認され、飽和吸水率が0.3%であることが確認された。実施例1の絶縁電線の各構成を下記表3にまとめる。なお、3層同時押出は、短軸押出機を3台使用し、クロスヘッド内で合流させることにより行った。各クロスヘッドの温度は190℃とした。
実施例2〜10では、難燃材料や遮水材料の種類、内部絶縁層や遮水層、外部難燃層の各層の厚さを表3に示すように適宜変更した以外は実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
比較例1では、表3に示すように外部難燃層を形成せず、内部難燃層の上に遮水層を設けて被覆層を形成した以外は実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
比較例2では、表3に示すように遮水層を形成せず、被覆層を難燃層1層で形成した以外は実施例1と同様に絶縁電線を作製した。
作製した絶縁電線を以下の方法により評価した。各評価結果を表3にまとめる。
絶縁電線の直流安定性を、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験により評価した。具体的には、絶縁電線を85℃で3%濃度の塩水中に浸漬させて1500Vを課電し、絶縁破壊するまでの時間を測定した。本実施例では、絶縁破壊するまでの時間が240時間以上であれば、直流安定性が高いものとして○を、240時間未満であれば、直流安定性が低いものとして×と評価した。
絶縁電線の難燃性を、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験により評価した。
具体的には、垂直に支持した絶縁電線に対してバーナーの炎を1分間当てた後、炎を外して、上側固定部と炭化上端部との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満であれば、難燃性に優れるものとして○を、そうでなければ×とした。
絶縁電線の耐熱性を、EN50264−1に準拠した試験により評価した。
具体的には、まず、作製した絶縁電線から導体(スズめっき銅導線)を引き抜き、サンプルを作製した。このサンプルを135℃の恒温槽に168時間投入した。そして、加熱前の初期状態のサンプルと加熱後のサンプルのそれぞれに対して引張試験を行い、初期状態からの変化率として、引張強さ残率および伸び残率を求めた。本実施例では、それぞれが±30%以内であれば耐熱性に優れるものとして○を、それ以外であれば耐熱性が低いものと判断して×と表記した。
表3に示すように、実施例1〜10では、電線外径を細径化しながらも、直流安定性と難燃性とを高い水準で両立できることが確認された。
実施例3では、遮水層の飽和吸水率を0.1%と低くするとともに、難燃層における難燃剤の配合量を100質量部として実施例1(200質量部)や実施例4(150質量部)よりも少なくすることで、被覆層を吸水しにくく形成したため、短絡するまでの時間を長くでき、直流安定性を高くできることが確認された。
また、比較例2では、遮水層を設けずに難燃層のみで被覆層を形成したため、高い難燃性は得られるものの、短絡するまでの時間が短く、直流安定性が不十分であることが確認された。しかも、酸化防止剤および銅害防止材を含む遮水層を形成していないため、被覆層全体としての耐熱性を十分に確保できないことが確認された。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周に配置される被覆層と、を備え、
前記被覆層は、前記導体側から順に、難燃剤を含む樹脂組成物から形成される難燃層と遮水層とを最外層が前記難燃層となるように交互に積層させて形成され、
前記遮水層が樹脂と酸化防止剤および銅害防止剤の少なくとも1つとを含有する樹脂組成物から形成されている、絶縁電線が提供される。
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記遮水層を形成する樹脂組成物は、前記樹脂100質量部に対して前記酸化防止剤および前記銅害防止剤の少なくとも1つを0.1質量部以上2質量部以下含有する。
付記2の絶縁電線において、好ましくは、
前記遮水層は、前記遮水層を形成する樹脂組成物を架橋させた架橋体から形成され、前記架橋体のゲル分率が40%以上100%以下である。
付記1〜3のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記遮水層を形成する前記樹脂が低密度ポリエチレンである。
付記1〜4のいずれかの絶縁電線において、好ましくは、
前記被覆層は、前記導体側から順に前記難燃層、前記遮水層および前記難燃層の3層を積層させて形成され、
前記遮水層の内側にある前記難燃層の厚さが50μm以上150μm以下、
前記遮水層の厚さが50μm以上150μm以下、
前記遮水層の外側にある前記難燃層の厚さが200μm以上400μm以下である。
11 導体
20 被覆層
21 難燃層
21a 内部難燃層
21b 外部難燃層
22 遮水層
Claims (5)
- 導体と、
前記導体の外周に配置される被覆層と、を備え、
前記被覆層は、前記導体側から順に、難燃剤を含む樹脂組成物から形成される難燃層と遮水層とを最外層が前記難燃層となるように交互に積層させて形成され、
前記遮水層が樹脂と酸化防止剤および銅害防止剤の少なくとも1つとを含有する樹脂組成物から形成されている、絶縁電線。 - 前記遮水層を形成する樹脂組成物は、前記樹脂100質量部に対して前記酸化防止剤および前記銅害防止剤の少なくとも1つを0.1質量部以上2質量部以下含有する、請求項1に記載の絶縁電線。
- 前記遮水層は、前記遮水層を形成する樹脂組成物を架橋させた架橋体から形成され、前記架橋体のゲル分率が40%以上100%以下である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
- 前記遮水層を形成する前記樹脂が低密度ポリエチレンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁電線。
- 前記被覆層は、前記導体側から順に前記難燃層、前記遮水層および前記難燃層の3層を積層させて形成され、
前記遮水層の内側にある前記難燃層の厚さが50μm以上150μm以下、
前記遮水層の厚さが50μm以上150μm以下、
前記遮水層の外側にある前記難燃層の厚さが200μm以上400μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の絶縁電線。
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