以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.送信信号の信号特性
図1を用いてUSBでの送信信号の信号特性の劣化を説明する。図1は車載の電子機器のシステムの一例を示すものであり、メインコントローラー200(ホストコントローラー)にはUSB−HUB210が接続される。例えばUSB−HUB210のアップストリームポートがメインコントローラー200に接続され、ダウンストリームポートには、SD211(SDカード)、BT212(ブルートゥース(登録商標))、DSRC213(Dedicated Short Range Communications)などのデバイスが接続される。
またケーブル224を有するケーブルハーネス220のUSBレセプタクル226には、スマートフォンなどの携帯型端末装置250が接続される。メインコントローラー200とUSBレセプタクル226の間には、充電回路221、静電気保護回路222、短絡保護回路223などが設けられている。
図1では、ケーブル224は車内において例えば内装を避けて配線されるため、ケーブル長が例えば1〜3mというように長くなり、寄生容量等が生じる。また充電回路221、静電気保護回路222、短絡保護回路223などの回路に起因する寄生容量等も生じる。これらの寄生容量等が原因となって、メインコントローラー200が有するUSBの送信回路(HS)の送信信号の信号特性が劣化する。
USBの認証テストにおいては、送信信号の波形がアイパターンの禁止領域と重ならないようにすることが要求される。しかしながら、図1において車内で引き回されるケーブル224が長くなったり、充電回路221、静電気保護回路222、短絡保護回路223などの回路に起因したりして、寄生容量等が生じると、送信信号の信号品質が悪化してしまう。このため、適正な信号転送を実現できず、アイパターンの認証テスト(例えばニアエンドの認証テスト)をパスできないという課題がある。またUSBのHSモードの通信時において、バスに対して大きな寄生容量が付加されたり、スイッチノイズが伝播されてしまうと、HSモードの通信品質が劣化してしまうという課題もある。
2.回路装置
以上のような課題を解決できる本実施形態の回路装置10の構成例を図2に示す。本実施形態の回路装置10は、物理層回路11、12と、処理回路20と、バススイッチ回路40と、スイッチ信号生成回路70を含む。またスイッチ信号生成回路70はチャージポンプ回路80を含む。なお回路装置10は図2の構成には限定されず、これらの一部の構成要素を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
物理層回路11(第1の物理層回路)には、USB規格のバスBS1(第1のバス)が接続される。物理層回路12(第2の物理層回路)には、USB規格のバスBS2(第2のバス)が接続される。物理層回路11、12の各々は、物理層のアナログ回路により構成される。物理層のアナログ回路は、例えばHS、FS用の送信回路、受信回路、各種の検出回路、プルアップ抵抗回路などである。なお、USBを介して受信したシリアルデータをパラレルデータに変換するシリアル/パラレル変換回路や、パラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路や、エラスティックバッファーや、NRZI回路などのリンク層に相当する回路は、処理回路20に含まれる。例えばUSBのトランシーバマクロセルのうちのリンク層等に相当する回路は処理回路20に含まれ、送信回路、受信回路、検出回路等のアナログ回路が物理層回路11、12に含まれる。
バスBS1は例えばメインコントローラー側が接続されるバスであり、バスBS2は例えばペリフェラルデバイス側が接続されるバスである。但し本実施形態はこのような接続構成に限定されるものではない。バスBS1、BS2は、差動信号を構成する信号DP、DM(第1、第2の信号)などの信号線を含むUSB規格(広義には所与のデータ転送の規格)のバスである。バスBS1、BS2は電源VBUS、GNDの信号線を含むことができる。
処理回路20は、転送処理や各種の制御処理を行う回路であり、ゲートアレイなどの自動配置配線によるロジック回路などにより実現できる。なお処理回路20をCPU、MPU等のプロセッサーにより実現してもよい。そして処理回路20は、バスBS1から物理層回路11を介して受信したパケットを物理層回路12を介してバスBS2に送信(転送)し、バスBS2から物理層回路12を介して受信したパケットを物理層回路11を介してバスBS1に送信(転送)する転送処理を行う。例えばバスBS1側からバスBS2側に、或いはバスBS2側からバスBS1側に、パケットフォーマットを変更することなくパケットを転送する。このとき処理回路20は、当該転送処理において、パケットのビットの再同期化処理を行う。例えばパケットの受信の際には、回路装置10で生成されたクロック信号に基づいてパケットの各ビットをサンプリングする。パケットの送信の際には、回路装置10で生成されたクロック信号に同期してパケットの各ビットを送信する。
バススイッチ回路40は、バスBS1とバスBS2の接続(電気的な接続)をオン又はオフにする。即ち、バスBS1とバスBS2を電気的に接続したり、電気的に非接続にする。バスBS1とバスBS2の接続をオン又はオフにする(電気的に接続又は非接続にする)とは、例えばバスBS1のDP、DMの信号線とバスBS2のDP、DMの信号線の間に設けられるスイッチ素子(第1、第2のスイッチ素子)などをオン又はオフにすることである。
具体的には後述の図4に示すようにバススイッチ回路40は、期間T1(第1の期間)において、バスBS1とバスBS2の接続をオンにする。即ち、バススイッチ回路40は、バスBS1とバスBS2の間に設けられるスイッチ素子を有し、期間T1において、当該スイッチ素子がオンになる。これにより、バスBS1に接続されるメインコントローラー200(広義には第1の装置)とバスBS2に接続されるペリフェラルデバイス260(広義には第2の装置)とが、USBのバスにより直接にUSBの信号転送を行うことが可能になる。また後述の図5に示すようにバススイッチ回路40は、期間T2(第2の期間)において、バスBS1とバスBS2の接続をオフにする。即ち、期間T2において、バスBS1とバスBS2の間に設けられるスイッチ素子がオフになる。処理回路20は、この期間T2において、上記の転送処理を行う。
また図2に示すように本実施形態の回路装置10はスイッチ信号生成回路70を含む。スイッチ信号生成回路70は、バスBS1とバスBS2の接続のオン及びオフを制御するスイッチ信号SWSを生成して、バススイッチ回路40に供給する。そしてスイッチ信号SWSにより、図4の期間T1ではバススイッチ回路40のスイッチ素子がオンになり、図5の期間T2では当該スイッチ素子がオフになる。なおバススイッチ回路40が複数のスイッチ素子を有する場合には、スイッチ信号生成回路70は、これらの複数のスイッチ素子をオン又はオフにする複数のスイッチ信号SWSを供給する。
そしてスイッチ信号生成回路70は、クロック信号に基づきチャージポンプ動作を行うチャージポンプ回路80を有する。チャージポンプ動作は、電荷を遷移させ、入力電圧と、キャパシターに充電された電圧とを重畳させることで出力電圧を得る方式の回路動作である。スイッチ信号生成回路70は、チャージポンプ回路80により昇圧された昇圧電源電圧に基づいてスイッチ信号SWSを生成する。例えばチャージポンプ回路80は、通常の電源電圧よりも高い電圧の昇圧電源電圧をチャージポンプ動作により生成する。例えばバススイッチ回路40のスイッチ素子を構成するトランジスターのしきい値電圧をVthとし、電源電圧をVDとした場合に、チャージポンプ回路80は、VH>VD+Vthとなる昇圧電源電圧VHを生成する。スイッチ信号生成回路70は、この昇圧電源電圧に基づいてスイッチ信号SWSを生成する。チャージポンプ回路80は、スイッチ信号生成回路70が有する回路(バッファー回路又はレベルシスター等)の電源電圧として、昇圧電源電圧を供給し、これらの回路はこの昇圧電源電圧に基づき動作する。
このように本実施形態では、バスBS1、BS2を電気的に接続又は非接続にするバススイッチ回路40を設けている。そしてスイッチ信号生成回路70は、チャージポンプ回路80により昇圧された昇圧電源電圧に基づいてスイッチ信号SWSを生成して、バススイッチ回路40に供給している。このように昇圧電源電圧に基づくスイッチ信号SWSを用いれば、バススイッチ回路40のスイッチ素子を適切にオン又はオフにすることが可能になり、例えば後述の図4の期間T1の転送経路TR1での信号の適切なやり取りが可能になる。即ちスイッチ素子を構成するトランジスターのゲートに、昇圧電源電圧に基づくスイッチ信号SWSを供給することで、当該トランジスターを適切なオン状態にすることが可能になる。例えば前述のように昇圧電源電圧をVH>VD+Vthとすることで、スイッチ素子を通過する電圧範囲に制限ができるのを防止できる。またトランジスターのオン抵抗を十分に小さくすることが可能なる。またスイッチ素子を例えば第1導電型(例えばN型)のトランジスターだけで構成することで、当該第1導電型トランジスターのドレイン容量等に起因する寄生容量を低減することが可能になり、図5の期間T2での通信品質の劣化を抑制できるようになる。
また本実施形態ではチャージポンプ回路80は、バスBS1とバスBS2の接続がオンであるときにチャージポンプ動作を行うと共に、バスBS1とバスBS2の接続がオフであるときにもチャージポンプ動作を行う。ここでチャージポンプ動作は、連続的な動作だけではなく、間欠的な動作であってもよい。
例えば図4の期間T1において、チャージポンプ回路80がチャージポンプ動作を行い、チャージポンプ回路80の昇圧電源電圧に基づくスイッチ信号SWSがバススイッチ回路40のスイッチ素子に供給され、当該スイッチ信号SWSによりバスBS1とバスBS2の接続がオンになる。スイッチ素子がN型トランジスターである場合にはハイレベル(アクティブ)のスイッチ信号SWSがN型トランジスターのゲートに供給されてN型トランジスターがオンになる。一方、図5の期間T2のようにバスBS1とバスBS2の接続がオフであるときにも、チャージポンプ回路80がチャージポンプ動作を行い、チャージポンプ回路80の昇圧電源電圧に基づくスイッチ信号SWSがバススイッチ回路40のスイッチ素子に供給される。スイッチ素子がN型トランジスターである場合にはローレベル(非アクティブ)のスイッチ信号SWSがN型トランジスターのゲートに供給される。
このように期間T2においてもチャージポンプ回路80がチャージポンプ動作を行うようにすれば、期間T2から期間T1に切り替わった場合にも、適切な電圧レベルのスイッチ信号SWSをバススイッチ回路40のスイッチ素子に供給できるようになる。即ち、期間T2においてチャージポンプ動作をオフにしてしまうと、期間T2から期間T1の切り替わり時にチャージポンプ動作をオフからオンに切り替えた場合に、チャージポンプ動作による昇圧電圧は直ぐには立ち上がらないため、バススイッチ回路40のスイッチ素子を適切にオフできないおそれがある。スイッチ素子がN型トランジスターである場合には、スイッチ信号SWSをハイレベルの昇圧電圧に立ち上げるのに時間を要してしまい、期間T1においてN型トランジスターを適切にオンできなくなってしまう。
この点、本実施形態では、バスBS1とバスBS2の接続がオフである期間T2においても、チャージポンプ回路80がチャージポンプ動作を行うため、期間T2から期間T1に切り替わった際に、適切な昇圧電源電圧のレベルとなるスイッチ信号SWSを、バススイッチ回路40のスイッチ素子に供給できるようになる。
またチャージポンプ回路80は、図4の期間T1において、周波数f1(第1の周波数)のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行い、図5の期間T2において、周波数f1よりも低い周波数f2(第2の周波数)のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行う。
例えば期間T1においては、チャージポンプ回路80が、高い周波数f1のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行うことで、適切に昇圧された昇圧電源電圧に基づくスイッチ信号SWSをバススイッチ回路40に供給できる。一方、期間T2においては、チャージポンプ回路80が、遅い周波数f2のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行うことで、チャージポンプ動作に起因するスイッチノイズを低減でき、チャージポンプ回路80がノイズ源となり期間T2での通信(HSモード)の特性が劣化するのを抑制できる。例えば期間T2においては、バススイッチ回路40のスイッチ素子をオフできればよいため、周波数f2が低いことが原因で昇圧電源電圧のレベルが低下するのはある程度許容される。例えばスイッチ素子がN型トランジスターである場合には、期間T1においては、適切に昇圧されたハイレベルのスイッチ信号SWSをN型トランジスターに供給して、N型トランジスターをオンにする必要がある。これに対して期間T2においては、スイッチ信号SWSの電圧レベルはローレベルになるため、周波数f2が低くなることで昇圧電源電圧の電圧レベルが低下しても、それほど大きな悪影響はない。そして周波数f2が低くなることで、チャージポンプ動作に起因するスイッチノイズを低減でき、期間T2での通信特性が劣化するのを抑制できる。
またスイッチ信号生成回路70は、バスアクティビティーがなくなってから所与の期間が経過した後に、クロック信号CKの周波数(クロック周波数)を、周波数f2から周波数f1に変化させる。即ち低い周波数f2から高い周波数f1に変化させる。この所与の期間は、例えば2ms以上の長さの期間(例えば2ms以上で3ms未満の長さの期間)である。バスアクティビティーがなくなるとは、例えばパケットがバス上で転送されていない状態である。例えばUSBでは、バスアクティビティーがなくなってから3msが経過すると、リセット要求又はサスペンド要求のいずれが行われたかの判定が行われる。このため例えば2ms程度の期間が経過した場合には、クロック信号CKの周波数を、周波数f2から周波数f1に戻す。即ち、チャージポンプのクロック周波数を高い周波数f1に戻して、適切な昇圧電源電圧が生成されるようにする。これにより、期間T1において、バススイッチ回路40のスイッチ素子を適正にオンさせることが可能になり、スイッチ素子を通過する電圧範囲に制限ができてしまう事態の発生を抑制できる。
図3は本実施形態の回路装置10の詳細な構成例である。図3では、回路装置10が、バスモニター回路30とクロック信号生成回路50を更に含んでいる。また充電回路221用のバスBS3が更に設けられている。
充電回路221は、例えばUSBのBC1.2の仕様(Battery Charging Specification Rev1.2)に準拠した動作を行う回路である。BC1.2では、例えば500mA以下というVBUSの電源制限が例えば2A以下というように拡張されている。図3において充電回路221は例えばレギュレーター回路等を有し、外部電源が供給されてVBUSの給電を行う。また、従来はマスター側からスレーブ側にしか電源供給できなかったものが、BC1.2ではスレーブ側からマスター側にも電源供給できるようになった。例えばペリフェラルデバイス260がマスターの役割になり、メインコントローラー200がスレーブの役割になった場合にも、スレーブであるメインコントローラー200からマスターであるペリフェラルデバイス260に対してVBUSの電源を供給できる。
BC1.2を実現するためには、充電回路221は、充電調停期間において、ペリフェラルデバイス260との間でDP、DMを用いた信号転送を行い、BC1.2のプロトコルを実行する必要がある。このためバススイッチ回路40は、後述の図13で説明するように、充電調停期間(BC1.2のプロトコルの実行期間)では、充電回路221に接続されるバスBS3(第3のバス)とバスBS2(第2のバス)の接続をオンにする(オフからオンに切り替える)。例えばバスBS3とバスBS2の間に設けられるスイッチ素子をオンにして、充電回路221がペリフェラルデバイス260との間でDP、DMを用いた信号転送を実行できるようにする。こうすることで、充電調停期間において、BC1.2のプロトコルを実行して、充電の調停処理を行うことが可能になる。例えば、適切な充電電流に設定できるので、充電スピードを上げることができる。
また図3に示すように回路装置10はバスモニター回路30を含み、バスモニター回路30は、バスBS1、BS2のモニター動作を行う。例えばバスBS1、BS2の少なくとも一方の状態を監視するモニター動作を行う。具体的には物理層回路11や物理層回路12(少なくとも一方の物理層回路)からの信号に基づいて、バスBS1やバスBS2(少なくとも一方のバス)の状態を監視するモニター動作を行う。そしてバススイッチ回路40は、バスモニター回路30でのモニター結果に基づいて、バスBS1とバスBS2の接続(電気的な接続)をオン又はオフにする。例えばバススイッチ回路40は、バスモニター回路30でのモニター結果に基づいて、バスBS1とバスBS2の接続を期間T1においてオンにし、期間T2においてオフにする。そして処理回路20は、期間T2において(少なくとも期間T2の一部において)、図5に示す転送処理を行う。即ち、バスBS1から物理層回路11を介して受信したパケットを物理層回路12を介してバスBS2に送信し、バスBS2から物理層回路12を介して受信したパケットを物理層回路11を介してバスBS1に送信する転送処理を行う。これにより、パケットのビットの再同期化処理が行われ、USBの送信信号の信号特性の劣化を改善した高品質な信号転送を実現できるようになる。
具体的には、バスモニター回路30は、スイッチ制御のための制御信号をスイッチ信号生成回路70に出力する。即ちバスモニター回路30は、期間T1においてバスBS1、BS2の接続をオンにし、期間T2においてバスBS1、BS2の接続をオフにすることを指示する制御信号を、スイッチ信号生成回路70に出力する。スイッチ信号生成回路70は、バスモニター回路30からの制御信号(モニター結果)に基づいて、期間T1において、スイッチ信号SWS(スイッチング制御信号)をアクティブ(例えばハイレベル)にして、スイッチ素子をオンにする。またバスモニター回路30からの制御信号に基づいて、期間T2において、スイッチ信号SWSを非アクティブ(例えばローレベル)にして、スイッチ素子をオフにする。またバスモニター回路30は、期間T2において処理回路20により転送処理を行わせる。例えばバスモニター回路30は、処理回路20に対する転送処理の指示信号(許可信号)をアクティブにする。
また図3に示すように回路装置10は、チャージポンプ用のクロック信号CKを生成して、チャージポンプ回路80に供給するクロック信号生成回路50を含む。クロック信号生成回路50は、回路装置10で用いられる各種のクロック信号を生成する回路であり、例えば発振回路52を含む。発振回路52には、外付け部品である発振子及びキャパシター(不図示)が接続される。発振子は例えば水晶振動子等により実現される。そして発振回路52は、発振子の発振動作を行って、発振信号に基づくクロック信号を生成する。またクロック信号生成回路50はPLL回路(不図示)を含むことができ、PLL回路は、生成されたクロック信号に基づいて、パケットの再同期化処理用のDLL回路に用いられる多相のクロック信号を生成する。
そしてクロック信号生成回路50は、期間T2において、バスBS1及びバスBS2により転送されるパケットの信号に基づいて、チャージポンプ用のクロック信号CKを生成する。具体的にはSOFのパケットに基づいてクロック信号CKを生成する。例えばEOP(End Of Packet)に基づいてクロック信号CKを生成する。またクロック信号生成回路50は、データパケットの転送期間において、チャージポンプ回路80に供給するクロック信号CKを停止する。そしてクロック信号CKを停止してから所与の設定期間が経過したときに、クロック信号CKの信号レベルを、第1、第2の電圧レベルの一方の電圧レベルから他方の電圧レベルに変化させる。これらの詳細については後述する。
処理回路20は、リンク層回路22、リピーターロジック回路24などを含む。リンク層回路22は、リンク層に相当する処理を行う回路である。リンク層回路22は、例えばUSBにより受信したシリアルデータをパラレルデータに変換するシリアル/パラレル変換処理や、パラレルデータを送信用のシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換処理や、NRZIの符号化や復号化のための処理などを行う。リピーターロジック回路24は、バスBS1側から受信したパケットをバスBS2側に送信し、バスBS2側から受信したパケットをバスBS1側に送信するためのロジック処理を行う。例えば、受信したパケットの各ビットはクロック信号を用いてサンプリングされ、サンプリングにより得られたシリアルデータがパラレルデータに変換される。そして、NRZIなどの各種のロジック処理が行われた後のパラレルデータが、シリアルデータに変換されて、回路装置10内のクロック信号に同期して送信される。このようにすることで、パケットのビットの再同期化処理(リシンクロナイズ)が実現される。
図4、図5、図6は本実施形態の回路装置10の動作説明図である。本実施形態ではバスモニター回路30は、後述の図16で詳細に説明するように、物理層回路11、12からの信号に基づいて、バスBS1、BS2の状態を監視するモニター動作を行う。そしてバススイッチ回路40は、バスモニター回路30でのバス状態のモニター結果に基づいて、バスBS1とバスBS2の接続のオン、オフのためのスイッチ動作を行う。
具体的には図4に示すように、期間T1では、バススイッチ回路40はバスBS1、BS2の接続をオンにする。例えばスイッチ信号生成回路70からのスイッチ信号SWS(スイッチング制御信号)がアクティブになることで、DP、DMの信号線の各々に対応して設けられたスイッチ素子がオンになり、バスBS1、BS2が電気的に接続される。これにより、バスBS1に接続されるメインコントローラー200と、バスBS2に接続されるペリフェラルデバイス260(例えば図1の携帯型端末装置250)は、バスBS1、バススイッチ回路40、バスBS2の転送経路TR1において、USBの信号転送を行うことが可能になる。即ち、信号DP、DMを用いた信号転送が可能になる。
一方、図5に示すように、期間T1の後の期間T2では、バススイッチ回路40はバスBS1とバスBS2の接続をオフにする。例えばスイッチ信号生成回路70からのスイッチ信号SWSが非アクティブになることで、信号DP、DMの各々に対応して設けられたスイッチ素子がオフになり、バスBS1、BS2が電気的に非接続になる。そして処理回路20は、この期間T2において(期間T2の少なくとも一部において)、バスBS1、BS2の間で物理層回路11、12を介してパケットを転送する転送処理を行う。即ち図5の転送経路TR2でのパケットの転送処理が行われる。例えば期間T2において、バスモニター回路30からの転送処理の指示信号(許可信号)がアクティブになることで、処理回路20は転送経路TR2でのパケットの転送処理を開始する。この転送処理では、パケットのビットの再同期化処理が行われて、信号品質の改善が実現される。
図6は、図3のように充電回路221用のバスBS3が設けられた場合の回路装置10の動作説明図である。図6では、バススイッチ回路40は、充電調停期間において、充電回路221に接続されるバスBS3とバスBS2の接続をオンにする。例えばバスBS3とバスBS2の間において信号DP、DMの各々に対応して設けられたスイッチ素子が、充電調停期間においてオンになり、バスBS3とバスBS2が電気的に接続される。これにより例えば充電回路221とペリフェラルデバイス260との間で、例えばBC1.2のプロトコルが実行されて、充電の調停処理等が実現される。そして、この充電調停期間(BC1.2のプロトコル実行期間)の後に、図4の期間T1に切り替わって、転送経路TR1での信号転送が行われる。その後に、図5の期間T2に切り替わって、転送経路TR2でのパケットの転送処理が行われる。
以上のように本実施形態では、バスBS1、BS2間で物理層回路11、12を介したパケット転送を行う処理回路20と、バスBS1、BS2の接続のオン、オフを行うバススイッチ回路40が設けられる。このようにすれば、例えばバスBS1、BS2での信号の信号特性が劣化している場合にも、図5の転送経路TR2でのパケットのビットの再同期化処理により、信号特性の劣化を改善できるようになる。
例えば図1のようにケーブル224が長かったり、大きな寄生容量や寄生抵抗が転送経路に存在したりする場合には、信号特性が大きく劣化してしまい、適正な信号転送を実現できないという問題がある。この点、例えばメインコントローラー200と携帯型端末装置250(ペリフェラルデバイス)との間に本実施形態の回路装置10を配置すれば、劣化した信号特性を改善できるようになる。従って、メインコントローラー200と携帯型端末装置250との間での適正な信号転送を実現できるようになる。
また本実施形態では、バスモニター回路30によりバスBS1、BS2の状態がモニターされ、モニター結果に基づいて、バススイッチ回路40によりバスBS1、BS2の接続のオン、オフが行われる。従って、例えばHSモードによる高速なパケット転送が行われる前の期間T1において、図4に示すようにバススイッチ回路40によりバスBS1、BS2を電気的に接続できるようになる。これにより、この期間T1においては、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間で、信号DP、DMを用いた信号転送を行うことが可能になり、HSモードのパケット転送の前段階での種々のやり取りが可能になる。そして期間T2では、図5に示すように、バスBS1、BS2の接続がオフになり、転送経路TR2でのHSモードのパケット転送が行われるようになる。そして、このパケット転送の際には、パケットのビットの再同期化が行われるため、図1で説明したような信号特性の劣化が改善された高品質のパケット転送を実現できる。
なお、図1に示すUSB−HUB210は、USB規格のプロダクトIDやベンダーIDを有している。これに対して本実施形態の回路装置10はこのようなプロダクトIDやベンダーIDを有しておらず、この点において本実施形態の回路装置10はUSB−HUB210とは異なる。
また信号特性の劣化を改善する回路装置として、信号DP、DMの振幅調整や開口調整をアナログ回路により行うリドライバーと呼ばれる回路装置もある。しかしながら、リドライバーは、図5の転送経路TR2のようなパケット転送を行うものではないため、劣化した信号の信号特性を再同期化処理により改善することはできず、この点において本実施形態の回路装置10とは異なる。
また図4〜図6のペリフェラルデバイス260は、CarPlayやUSBのOTG(On-The-GO)のように、マスター(ホスト)の役割とスレーブ(デバイス)の役割を交換できるデバイスであってもよい。例えば図1の携帯型端末装置250が、CarPlay等を行うことが可能なペリフェラルデバイス260であったとする。この場合に、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260(携帯型端末装置250)の間に、信号特性の劣化の改善のためのUSB−HUBを配置する手法も考えられる。しかしながら、ペリフェラルデバイス260がマスターになった場合には、USB−HUBのダウンストリームポートに、マスターであるペリフェラルデバイス260が接続されることになってしまい、適正なパケット転送を実現できないという問題がある。
この点、本実施形態の回路装置10は、USB−HUBとは異なり、例えば図4〜図6のバスBS2に接続されるペリフェラルデバイス260の役割が、マスターに切り替わった場合にも、これに対応できるという利点がある。例えばマスターやスレーブの役割についての切替処理や設定処理は、期間T1において行えばよい。そして、ペリフェラルデバイス260の役割がマスター又はスレーブに決定した後に、期間T2において図5に示すような転送経路TR2でのパケット転送を行えばよい。従って本実施形態の手法によれば、ペリフェラルデバイス260がCarPlay等のデバイスであっても、適正なパケット転送を実現できるという利点がある。
3.スイッチ信号生成回路、バススイッチ回路、クロック信号生成回路の詳細
図7にスイッチ信号生成回路70、バススイッチ回路40の詳細な構成例を示す。スイッチ信号生成回路70は、チャージポンプ回路80とコントロール回路72を含む。チャージポンプ回路80は、チャージポンプのイネーブル信号ENCPとクロック信号CKが入力され、電源電圧VD、VSに基づいて昇圧電源電圧VHを生成する。そして生成された昇圧電源電圧VHを、コントロール回路72の対応する回路に供給する。
コントロール回路72は、インバーター回路IV1〜IV4、レベルシフター74、76、NAND回路NA1、NA2を含む。NAND回路NA1、NA2、インバーター回路IV3、IV4によりバッファー回路が構成されている。
スイッチ信号生成回路70には、スイッチ信号生成のイネーブル信号ENSWとセレクト信号SELが入力される。レベルシフター74は、イネーブル信号ENSWとその反転信号が入力され、チャージポンプ回路80からの昇圧電源電圧VHに基づいてレベルシフト動作を行い、レベルシフトされたイネーブル信号ENHを出力する。レベルシフター76は、セレクト信号SELとその反転信号が入力され、チャージポンプ回路80からの昇圧電源電圧VHに基づいてレベルシフト動作を行い、レベルシフトされたセレクト信号SELH、XSELHを出力する。XSELHはSELHの反転信号である。レベルシフター74、76の、「I」、「XI」は、各々、正転入力端子、反転入力端子を表し、「Q」、「XQ」は、各々、正転出力端子、反転出力端子を表す。
そしてバッファー回路を構成するNAND回路NA1、NA2、インバーター回路IV3、IV4は、レベルシフター74、76からのイネーブル信号ENH、セレクト信号SELH、XSELHに基づいて、スイッチ信号SWS1、SWS2(図2、図3のスイッチ信号SWS)を生成して、バススイッチ回路40に出力する。
バススイッチ回路40は、トランジスターTN1、TN2、TN3、TN4を含む。トランジスターTN1〜TN4はバススイッチ回路40のスイッチ素子を構成する。
具体的にはトランジスターTN1、TN2は、図2、図3のバスBS1、BS2の接続をオン又はオフするスイッチ素子に対応する。例えばトランジスターTN1は、バスBS1のDP1の信号線とバスBS2のDP2の信号線の間に設けられる。トランジスターTN2は、バスBS1のDM1の信号線とバスBS2のDM2の信号線の間に設けられる。
トランジスターTN3、TN4は、図3のバスBS2、BS3の接続をオン又はオフするスイッチ素子に対応する。例えばトランジスターTN3は、バスBS2のDP2の信号線とバスBS3のDP3の信号線の間に設けられる。トランジスターTN4は、バスBS2のDM2の信号線とバスBS3のDM3の信号線の間に設けられる。
そしてイネーブル信号ENSW(ENH)がローレベルになると、スイッチ信号の生成動作がディスイネーブルに設定される。この場合には、スイッチ信号SWS1、SWS2がローレベルになることで、N型のトランジスターTN1〜TN4がオフになり、バスBS1とバスBS2の間及びバスBS2とバスBS3の間の接続がオフになる。
一方、イネーブル信号ENSW(ENH)がハイレベルになると、スイッチ信号の生成動作がイネーブルに設定される。この状態で、セレクト信号SELがハイレベル(VDレベル)になると、レベルシフト後のセレクト信号SELHがローレベル(VSレベル)になり、セレクト信号XSELHがハイレベル(VHレベル)になる。これにより、スイッチ信号SWS1がハイレベル(VHレベル)になり、スイッチ信号SWS2がローレベル(VSレベル)になる。この結果、トランジスターTN1、TN2がオンになると共にトランジスターTN3、TN4がオフになり、バスBS1とバスBS2の接続がオンになり、バスBS2とバスBS3の接続がオフになる。従って、図4に示すような期間T1でのメインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間での信号のやり取りが可能になる。
一方、イネーブル信号ENSWがハイレベルになって、スイッチ信号の生成動作がイネーブルに設定された状態で、セレクト信号SELがローレベル(VSレベル)になると、レベルシフト後のセレクト信号SELHがハイレベル(VHレベル)になり、セレクト信号XSELHがローレベル(VSレベル)になる。これにより、スイッチ信号SWS1がローレベル(VSレベル)になり、スイッチ信号SWS2がハイレベル(VHレベル)になる。この結果、トランジスターTN3、TN4がオンになると共に、トランジスターTN1、TN2がオフになり、バスBS2とバスBS3の接続がオンになり、バスBS1とバスBS2の接続がオフになる。従って、図6に示すようなペリフェラルデバイス260と充電回路221との間での信号のやり取りが可能になる。
また本実施形態ではバススイッチ回路40は、第1導電型トランジスターにより構成されるスイッチ素子を有している。第1導電型トランジスターは、N型及びP型の一方の導電型のトランジスターである。図7では、バススイッチ回路40が有する第1導電型トランジスターは、N型のトランジスターTN1〜TN4になっている。例えばトランジスターTN1〜TN4の基板はVSの電圧レベルに設定されている。
例えばバススイッチ回路40のスイッチ素子のオン抵抗を下げるためには、スイッチ素子をトランスファーゲート(CMOS構造の伝送ゲート)で構成する手法が考えられる。トランスファーゲートではN型トランジスターとP型トランジスターが並列に接続されるため全体のオン抵抗を下げることができる。
しかしながら、トランスファーゲートを用いると、N型トランジスターとP型トランジスターが並列に接続される構成になるため、バスBS1、BS2に付加される寄生容量が大きくなってしまい、図5の期間T2でのHSモードでの通信特性が劣化してしまう。
この点、図7では、N型トランジスターなどの片チャンネルの第1導電型トランジスターだけでバススイッチ回路40のスイッチ素子が構成されている。従って、バスBS1、BS2に付加される寄生容量を小さくでき、トランスファーゲートを用いる手法に比べて、図5の期間T2でのHSモードでの通信特性の劣化を低減できる。
そして本実施形態では、チャージポンプ回路80からの昇圧電源電圧VHに基づくスイッチ信号SWS1、SWS2(SWS)を用いて、N型のトランジスターTN1〜TN4のオン、オフが制御される。従って、トランジスターTN1〜TN4のゲートに、例えばVH>Vth+VDとなる電圧レベルのスイッチ信号SWS1、SWS2が入力されるようになるため、トランジスターTN1〜TN4を通過する電圧範囲に制限ができるのを抑制できる共にトランジスターTN1〜TN4のオン抵抗を低減できる。なお本実施形態ではスイッチ素子としてトランスファーゲートを用いる変形実施も可能である。
図8はチャージポンプ回路80の動作説明図である。図8ではチャージポンプ回路80は、キャパシターCA1、CA2、CBを用いてチャージポンプ動作を行う。キャパシターCA1、CA2、CBは、回路装置10に内蔵のキャパシターであることが望ましいが、外付けのキャパシター(コンデンサー)であってもよい。内蔵キャパシターである場合には、キャパシターCA1、CA2は、例えばMIM(Metal-Insulator-Metal)のキャパシターなどにより実現できる。キャパシターCBは、ゲート容量によるキャパシター、ポリシリコン−ポリシリコンのキャパシター、或いはMIMのキャパシターなどにより実現できる。
図8のH1では、VD(高電位側電源電圧)のノードとVS(低電位側電源電圧)のノードの間にキャパシターCA1、CA2が直列に接続される。またキャパシターCBは、一端がVHのノードに接続され、他端がVSのノードに接続されている。従って、VS=0Vであり、CA1、CA2の容量値が同じであるとすると、CA1、CA2の各キャパシターの端子間電圧はVD/2になる。次に、H2に示すように、VHのノードとVDのノードの間に並列にキャパシターCA1、CA2が接続される。これにより、VH=VD+VD/2の昇圧動作が行われるようになる。そしてチャージポンプ動作では、クロック信号CKに基づいて図8のH1の接続状態とH2の接続状態が交互に切り替わる。
図9はチャージポンプ回路80の詳細な構成例である。チャージポンプ回路80は、トランジスターTA1〜TA3、TB1〜TB5、キャパシターCA1、CA2、CBを含む。トランジスターTA3はN型トランジスターであり、それ以外はP型トランジスターである。クロック信号AP、BP、ANは、クロック信号CKに対応するチャージポンプ用のクロック信号であり、クロック信号CKに基づき生成される。クロック信号AP、BPは、互いに排他的にローレベル又はハイレベルになり、例えば互いにノンオーバラップの信号になっている。クロック信号ANはクロック信号APの反転信号である。またイネーブル信号ENCPがローレベル(非アクティブ)になり、トランジスターTB5がオンになると、VHのノードとVDのノードが接続され、チャージポンプ回路80の動作がディスエーブルに設定される。
キャパシターCBは、VHのノードとVSのノードの間に設けられ、例えば容量値が可変のキャパシターとなっている。クロック信号AP、ANがアクティブになると、トランジスターTA1、TA2、TA3がオンになる。APは、ローレベルがアクティブのレベルとなる信号であり、ANは、ハイレベルがアクティブのレベルとなる信号である。トランジスターTA1、TA2、TA3がオンになることで、図8のH1に示す接続状態になる。即ち、VDのノードとVSのノードの間にキャパシターCA1、CA2が直列に接続された状態になる。
一方、クロック信号BPがアクティブになると、トランジスターTB1、TB2、TB3、TB4がオンになる。BPは、ローレベルがアクティブのレベルとなる信号である。トランジスターTB1、TB2、TB3、TB4がオンになることで、図8のH2に示す接続状態になる。即ち、VHのノードとVDのノードの間にキャパシターCA1、CA2が並列に接続された状態になる。そしてクロック信号CKに基づいて、クロック信号AP、AN、BPがアクティブ又は非アクティブになることで、図8のH1の接続状態とH2の接続状態が交互に切り替わり、VDを昇圧した昇圧電源電圧VH=VD+VD/2が生成される。例えばVD=3.0V〜3.6Vであれば、VH=4.5V〜5.4Vになり、図7のバススイッチ回路40のトランジスターTN1〜TN4のゲートに対して、VD+Vth以上(例えばVth=0.6〜1.0V)の電圧を印加できるようになる。従って、バスを通過する信号の電圧範囲がVS(=0V)〜VDである場合に、VD+Vthよりも高い昇圧電源電圧VH=VD+VD/2を、N型のトランジスターTN1〜TN4のゲートに印加して駆動できるため、トランジスターTN1〜TN4を通過する電圧範囲に制限ができてしまうのを抑制できる。即ち、バスBS1側からVS〜VDの電圧範囲の信号が入力された場合に、バスBS2側にVS〜VDの電圧範囲の信号として出力できるようになる。またバスBS2側からVS〜VDの電圧範囲の信号が入力された場合に、バスBS1側にVS〜VDの電圧範囲の信号として出力できるようになる。
図10はFSモードからHSモードへの切り替え時の本実施形態の動作を説明する図である。図4に示す期間T1では、後述の図13で説明するように、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間でFSモード(LSモード)での信号転送が行われる。即ち図4の転送経路TR1において信号DP、DMを用いたFSモードでの信号転送が行われる。一方、図5に示す期間T2では、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間でHSモードでの信号転送が行われる。即ち図5の転送経路TR2においてHSモードでのパケット通信が行われる。
そして図10のE1ではバスステートがFSモードからHSモードに切り替わっているが、このE1の切り替えタイミングの前の期間T1では、E2に示すようにチャージポンプ用のクロック信号CKが周波数f1(第1の周波数)に設定されている。例えば10KHz〜100KHz程度の周波数f1のクロック信号CKに基づいて、図8、図9で説明したチャージポンプ回路80がチャージポンプ動作を行う。このように高い周波数f1でチャージポンプ動作を行うことで、図7のチャージポンプ回路80が、十分な電源供給能力で、コントロール回路72のバッファー回路(IV3、IV4、NA1、NA2)やレベルシフター74、76に対して、昇圧電源電圧VHを供給できるようになる。従って、適切に電圧レベルが昇圧されたスイッチ信号SWS1、SWS2をバススイッチ回路40のトランジスターTN1〜TN4に供給できる。これにより、トランジスターTN1〜TN4を通過する電圧範囲に制限ができてしまうのを抑制できると共に、トランジスターTN1〜TN4のオン抵抗を低減できるようになる。例えば期間T1での信号転送を適正に行うためには、トランジスターTN1〜TN4のオン抵抗を小さくする必要があり、そのためにはトランジスターTN1〜TN4のゲート幅Wを十分に大きくする必要がある(例えばW=100μm〜1000μm)。そしてゲート幅が大きくなると、トランジスターTN1〜TN4のゲート容量が大きくなるため、コントロール回路72のバッファー回路(IV3、IV4、NA1、NA2)に昇圧電源電圧VHを供給するチャージポンプ回路80の電源供給能力を高める必要がある。図10のE2に示すようにチャージポンプ用のクロック信号CKを高い周波数f1に設定することで、チャージポンプ回路80の電源供給能力を高めることができる。
また本実施形態では、バスBS1とバスBS2の接続がオンになる期間T1(FSモード)において、E2に示すようなクロック信号CKを用いてチャージポンプ回路80にチャージポンプ動作を行わせると共に、バスBS1とバスBS2の接続がオフになる期間T2(HSモード)においても、E3に示すようなクロック信号CKを用いてチャージポンプ回路80にチャージポンプ動作を行わせている。
即ち、バスBS1とバスBS2の接続がオフになる期間T2では、図7のトランジスターTN1〜TN4をオフさせるために、スイッチ信号SWS1、SWS2がローレベルになるため、本来ならばチャージポンプ回路80による昇圧電源電圧VHの生成は不要である。しかしながら、チャージポンプ回路80が起動して、適正な昇圧電源電圧VHを供給できるようになるまでには、例えば数十ms程度というような長い起動時間が必要になる。従って、期間T2においてチャージポンプ回路80を完全に停止してしまうと、期間T2から期間T1に切り替わった際に、チャージポンプ回路80の長い起動時間がタイムラグとなって、適正な昇圧電圧レベル(VH)のスイッチ信号SWS1、SWS2をトランジスターTN1〜TN4に供給できなくなってしまう。このため、トランジスターTN1〜TN4を通過する電圧範囲に制限が生じたり、オン抵抗が高くなってしまい、期間T1(FSモード)での信号転送に不具合が発生してしまう。
これに対して本実施形態では図10のE3に示すように、期間T2(HSモード)においても、クロック信号生成回路50がチャージポンプ用のクロック信号CKをチャージポンプ回路80に供給して、チャージポンプ回路80を動作させている。従って、期間T2から期間T1に切り替わった際に、適正な昇圧電圧レベルのスイッチ信号SWS1、SWS2をトランジスターTN1〜TN4に供給することが可能になる。これにより、トランジスターTN1〜TN4を通過する電圧範囲に制限が生じる事態や、オン抵抗が高くなってしまう事態を防止でき、期間T1での適正な信号転送を実現できるようになる。
更に本実施形態ではチャージポンプ回路80は、期間T1においては図10のE2に示すように周波数f1のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行い、期間T2においては、周波数f1よりも低い周波数f2のクロック信号CKに基づきチャージポンプ動作を行う。即ち期間T2では期間T1に比べてクロック信号CKの周波数を低くする。例えば後述の図13においてホストチャープK/J後のHSアイドルの期間において、バススイッチ回路40のスイッチ素子をオンからオフに切り替える場合には、この切り替えタイミングにおいて、クロック信号CKを周波数f1からf2に切り替える。
このようにすればチャージポンプ回路80のチャージポンプ動作によるスイッチノイズが、期間T2でのHSモードのパケット通信に及ぼす悪影響を低減できるようになる。即ち、HSモードでは小振幅の差動信号を用いてパケット通信が行われるため、期間T1のような高い周波数f1でチャージポンプ動作が行われると、チャージポンプ動作によるスイッチノイズが原因で通信エラー等の不具合が生じるおそれがある。
この点、本実施形態では期間T2においては図10のE3に示すようにクロック信号CKを低い周波数f2に設定している。これによりスイッチノイズが原因で通信エラーの不具合が生じるのを抑制できるようになる。一方、FS(LS)の通信が行われる期間T1では、バススイッチ回路40のスイッチ素子をオンにするが、スイッチ素子を通過する信号は電圧駆動であるため、チャージポンプ動作のスイッチノイズの影響は少ない。このため、速い周波数f1のクロック信号CKで通常通りにチャージポンプ動作を行わせる。
例えば本実施形態では、期間T2において、バスBS1、BS2により転送されるパケットの信号に基づいて、チャージポンプ用のクロック信号CKを生成する。例えば図10のE4に示すように、SOF(Start Of Frame)のパケットに基づいて、クロック信号CKを生成する。具体的にはSOFのEOP(End Of Packet)に基づいてクロック信号CKを生成する。例えばUSBでは、HSモードのアイドル期間において125μs毎にSOFのパケットが送出され、SOFの最後にはEOPが設定される。HSモードでは、EOPはビットスタッフィング無しの8ビットのNRZの01111111で示される。このSOFの例えばEOPによりトグルカウンターを動作させる。例えばトグルカウンターのトグル動作を行わせて、トグル動作のタイミングで、クロック信号CKを第1の電圧レベル(例えばローレベル)から第2の電圧レベル(例えばハイレベル)に変化させたり、第2の電圧レベルから第1の電圧レベルに変化させる。例えば、立ち上がりタイミングや立ち下がりタイミングがSOF(EOP)に同期するようにクロック信号CKを生成する。このようにすることで、期間T2において、SOFなどのパケットを有効利用して、低い周波数f2のクロック信号CKを生成し、チャージポンプ回路80にチャージポンプ動作を行わせることが可能になる。そしてEOPを用いることで、SOFの送出期間を避けたタイミングでクロック信号CKを動作させることが可能になる。
また本実施形態ではHSモードの通信期間であるデータパケットの転送期間において、チャージポンプ回路80に供給されるクロック信号CKを停止する。クロック信号CKを停止するとは、例えばクロック信号CKの電圧レベルを第1、第2の電圧レベルの一方の電圧レベルから他方の電圧レベルに変化させないことである。例えば図10のE5、E6では、バスアクティブとなって、HSのデータパケットの通信が行われている。このようなHSモードの通信期間においては、E7に示すようにクロック信号CKを、例えばローレベルなどの所定電圧レベルに固定して停止する。即ち、クロック信号CKをマスクして、チャージポンプ回路80が動作しないようにする。こうすることで、チャージポンプ回路80のチャージポンプ動作が停止し、チャージポンプ動作に起因するスイッチノイズが、HSモードのパケット通信に悪影響を及ぼすのを抑制できるようになる。そしてデータパケットの通信が終了し、HSアイドル期間になったら、E8、E9に示すようにSOFのパケットに基づきクロック信号CKを動作させる。
図11はHSモードの通信期間での本実施形態の詳細な動作を説明する図である。本実施形態では図10のE7に示すようにHSモードの通信期間においてクロック信号CKをマスクして停止している。しかしながら、この通信期間が長くなった場合に、クロック信号CKを停止したままにすると、図7のコントロール回路72でのリーク電流等が原因となって、昇圧電源電圧VHの電圧レベルが徐々に低下してしまう。この結果、期間T2から期間T1に切り替わる際のチャージポンプ回路80の起動時間が長くなってしまい、この長い起動時間がタイミングラグとなって、適正な昇圧電圧レベルのスイッチ信号SWS1、SWS2をトランジスターTN1〜TN4に供給できなくなってしまう。
そこで本実施形態ではクロック信号CKを停止してから所与の設定期間が経過したときに、クロック信号CKの信号レベルを、第1、第2の電圧レベルの一方の電圧レベルから他方の電圧レベルに変化させる。
例えば図11のF1ではバスアクティブとなってHSモードの通信期間が開始している。この場合に、例えばトグルカウンターの最後のトグル動作のタイミングの後、F2に示すような所与の設定期間TSが経過すると、F3に示すようにクロック信号CKの信号レベルを、例えばローレベル(第1、第2の電圧レベルの一方の電圧レベル)からハイレベル(他方の電圧レベル)に変化させる。その後、設定期間TSが経過すると、F4に示すようにクロック信号CKの信号レベルを、例えばハイレベルからローレベルに変化させる。このようにすれば、HSモードの通信期間が長くなってしまった場合にも、必要最小限の周波数のクロック信号CKを用いてチャージポンプ動作を行うことが可能になる。従って、期間T2から期間T1に切り替わった際に、適正な昇圧電圧レベルのスイッチ信号SWS1、SWS2をトランジスターTN1〜TN4に供給することが可能になり、上記したような問題が発生するのを防止できるようになる。
例えばHSモードの通信期間中には、回路装置10のレジスターに設定される通信中フラグが立ち、チャージポンプ回路80に供給されるクロック信号CKが停止する。一方、クロック信号CKに対しては最大停止時間(最小クロック周波数)を設定し、停止時間が最大停止時間以上(最小クロック周波数以下)にならないように、クロック信号CKを管理する。例えばチャージポンプ回路80の安定化容量の値やリーク電流値から、昇圧電源電圧VHの電圧変化の時定数τを求める。そしてこの時定数τに基づいて、昇圧電源電圧VHが、例えばVD+Vthを下回らないような時間を、最大停止時間として求め、図11の設定期間TSを、最大停止時間以下の長さに設定する。具体的には設定期間TSを例えば1ms程度の長さに設定する。こうすることで、HSモードの通信期間中にクロック信号CKを停止した場合にも、昇圧電源電圧VHが例えばVD+Vthを下回らないようになり、上記したような問題が発生するのを防止できる。
また本実施形態では、バスアクティビティーがなくなってから所与の期間が経過した後に、クロック信号CKの周波数を、周波数f2から周波数f1に変化させる。この所与の期間は例えば2ms以上の長さの期間である。例えば図12のG1では、SOFの送出が停止し、バスがSE0の状態になり、バスアクティビティーがなくなった状態になっている。USBでは、バスアクティビティーがなくなってから3ms以上経過すると、リセット要求が行われたか、或いはサスペンド要求が行われたかが判断される。そこで図12のG2では、SOFの送出が停止し、バスアクティビティーがなくなってから、所与の期間TWA(例えば2ms以上で3ms未満の期間)が経過すると、G3、G4に示すように、クロック信号CKを、周波数f2から周波数f1に変化させる。即ち図10のE2、E3でf1からf2に変化した周波数を、f2からf1に戻す。このように高い周波数f1のクロック信号CKをチャージポンプ回路80に供給することで、チャージポンプ回路80は、適正な電源供給能力で昇圧電源電圧VHを図7のコントロール回路72に供給できるようになる。これにより、適正な昇圧電圧レベルのスイッチ信号SWS1、SWS2により、トランジスターTN1〜TN4を適正にオン状態に設定できるようになる。以上のようにすることで、低ノイズで高品質なHS通信を実現するバススイッチ制御手法を実現できるようになる。
4.詳細な動作例
次にバススイッチ回路40でのスイッチ素子の切り替えにおける本実施形態の詳細な動作例について説明する。図13はケーブルアタッチ後のUSBの動作シーケンスを示す信号波形図である。図13は、差動の信号DP、DMの各種状態と、バススイッチ回路40のスイッチ素子のオン、オフ状態を示している。
図13においてBCスイッチとUSBスイッチはバススイッチ回路40に設けられるスイッチ素子である。具体的にはBCスイッチは、バススイッチ回路40において、図6のバスBS3とバスBS2の間に設けられるスイッチ素子である。即ち図7のトランジスターTN3、TN4により実現されるスイッチ素子である。USBスイッチは、バススイッチ回路40において、バスBS1とバスBS2の間に設けられるスイッチ素子である。即ち図7のトランジスターTN1、TN2により実現されるスイッチ素子である。転送処理のオフ、オンは、図5の転送経路TR2での転送処理のオフ、オンを示している。
ケーブルアタッチ(タイミングt1)の後、前述したBC1.2のプロトコルが実行される。BC1.2のプロトコルが実行されるB1に示す期間が充電調停期間である。
次に、デバイス側(ペリフェラルデバイス)がプルアップ抵抗をオンにすることで、信号DPの電圧がプルアップされて、FSモードに移行する(t2)。即ち、FSアイドルに移行し、一定時間、何もなければ、サスペンド状態に移行する。
次に、ホスト側(メインコントローラー)がリセットを開始すると(t3)、プルアップされていた信号DPの電圧がLレベルになる。これをデバイス側が検知し、デバイス側がデバイスチャープKを送出する(t4)。その後、一定時間経過が経過すると、デバイス側はデバイスチャープKを停止する(t5)。すると、ホスト側がホストチャープK/Jを実行する(t6)。デバイス側は、ホストチャープK/Jを検出することで、ホスト側がHSモードに対応していることを認識して、HSターミネーションをオンにする(t7)。これにより信号DP、DMの振幅が例えば400mVに低下して、HSモードに移行する。そしてホスト側がリセットを終了すると(t8)、HSアイドルに移行し、ホスト側はSOFの送出を開始する(t9)。
本実施形態では、バスBS3とバスBS2を接続するBCスイッチのイネーブル、ディスエーブルの設定が可能になっている。BCスイッチがイネーブルに設定されている場合、図13の期間B1に示す充電調停期間(BC1.2のプロトコル実行期間)においては、状態B2に示すようにBCスイッチがオンになり、USBスイッチがオフになる。例えば図6において、BCスイッチがオンになることで、バスBS3とバスBS2の接続がオンになり、USBスイッチがオフになることで、バスBS1とバスBS2の接続がオフになる。これにより、充電回路221とペリフェラルデバイス260との間で、信号DP、DMを用いた充電調停等のための信号処理が可能になる。
FSモードに移行すると、状態B3に示すようにUSBスイッチがオンになり、BCスイッチはオフになる。USBスイッチがオンになることでバスBS1とバスBS2の接続がオンになり、BCスイッチがオフになることで、バスBS3とバスBS2の接続がオフになる。これにより図4に示すように、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間で、信号DP、DMを用いた転送経路TR1での信号転送が可能になる。このとき、状態B4に示すように、図5の転送経路TR2での転送処理はオフになっている。
そして本実施形態では、バスBS1とバスBS2の接続のオン、オフの切替タイミング(期間T1、T2の切替タイミング)が、図13の期間B5に示す範囲内のタイミングに設定される。即ち、少なくともデバイスチャープKの開始タイミング(t4)の後に、バスBS1とバスBS2の接続がオンからオフに切り替わる(期間T1からT2に切り替わる)。或いは、少なくともホストチャープK/Jの終了タイミング(t8)の後に、バスBS1とバスBS2の接続がオンからオフに切り替わる。例えば少なくともデバイスチャープKの開始タイミング(t4)の後であって、例えばSOF送出の開始タイミング(t9)の前において、バスBS1とバスBS2の接続がオンからオフに切り替わり、図5の転送経路TR2での転送処理がオフからオンに切り替わる。
なお、BCスイッチがディスエーブルに設定されている場合には、状態B2、B3に示すようなBCスイッチのオン、オフの切替は行われず、状態B7に示すようにBCスイッチはオフのままになる。また切替タイミングは、期間B5の範囲内のタイミングであるため、図13では、USBスイッチのオン、オフの切替タイミングや転送処理のオン、オフの切替タイミングの範囲を点線で示している。
このように本実施形態では、少なくともデバイスチャープKの開始タイミング(t4)の後に、バススイッチ回路40が、バスBS1とバスBS2の接続をオンからオフに切り替え、処理回路20が図5の転送経路TR2での転送処理を開始する。例えば、デバイスチャープKの開始タイミングの後に、USBスイッチがオン(B3)からオフ(B6)に切り替わり、処理回路20の転送処理がオフ(B4)からオン(B6)に切り替わる。
即ち、デバイスチャープKの開始(t4)が検出された場合には、デバイス側がHSモードに対応していると判断できる。一方、ホスト側がHSモードに非対応であることは極めて希である。このため、デバイスチャープKの開始(t4)が検出された場合に、USBスイッチをオンからオフに切り替えて、処理回路20によるHSモードの転送処理をオフ(ディスエーブル)からオン(イネーブル)に切り替えることができる。従って、期間B5内の切替タイミングは、少なくともデバイスチャープKの開始タイミング(t4)の後のタイミングであればよい。
或いは、ホスト側がHSモードに非対応である可能性も考慮して、例えばホストチャープK/Jの開始(t6)が検出された場合に、USBスイッチをオンからオフに切り替え、処理回路20によるHSモードの転送処理をオフからオンに切り替えてもよい。
例えば本実施形態では、少なくともホストチャープK/Jの終了タイミング(t8)の後に、バススイッチ回路40が、バスBS1とバスBS2の接続をオンからオフに切り替え、処理回路20が図5の転送経路TR2での転送処理を開始してもよい。
このようにすれば、例えばホスト側及びデバイス側の双方がHSモードに対応していると判断され、HSモードに完全に切り替わったと判断された後に、処理回路20の転送処理を適正に開始できるようになる。
このように図13の期間B5内の切替タイミングは、少なくともデバイスチャープKの開始タイミング後であればよい。但し、切替によるグリッジの発生による悪影響も考慮する必要がある。従って、切替タイミングは、信号DP、DMの所定の電圧レベル(例えばLレベル)に設定されている期間内であることが望ましい。例えば図13のタイミングt5〜t6の間の期間やt8〜t9の間の期間などである。
以上のように本実施形態では、図13の期間B5の切替タイミングの前においては、状態B3に示すようにUSBスイッチをオンにすることで、ホスト側とデバイス側の間でUSBのバス上での信号のやり取りが可能になる。バスモニター回路30は、USBのバス上での信号のやり取りをモニターする。そして、例えばデバイスチャープKやホストチャープK/Jの検出により、HSモードの転送が可能であると判断したら、USBスイッチをオンからオフに切り替え、処理回路20による転送処理をオフからオンに切り替える。こうすることで、ホスト側とデバイス側の間での信号のやり取りの後に、HSモードの転送処理に適正に移行することが可能になる。
また図13の期間B1に示すような図6の充電回路221による充電調停期間においては、状態B2に示すようにBCスイッチをオンにして、USBスイッチをオフにする。こうすることで、例えば図6において充電回路221とペリフェラルデバイス260との間での適正な充電の調停処理を実現することが可能になる。
図14は、HSモードの転送においてリセットが行われた場合の動作シーケンスを示す信号波形図である。ホスト側は、HSモードでは、125μs(t11、t12)ごとにSOFのパケットを送出する。ホスト側がリセットを開始すると(t12)、FSモードに移行し、パケットがバス上に無くなってから3ms以上経過すると、デバイス側はHSターミネーションをオフし、プルアップ抵抗をオンにする(t13)。そしてデバイス側は、バスの状態がSE0であることが確認されたため(t14)、リセットが開始されたと判断し、デバイスチャープKを送出する。これに対してホスト側がホストチャープK/Jを送出することで、FSモードからHSモードに移行する。
図14のC1に示すように、本実施形態では、ホストがリセットを開始した場合に、USBスイッチがオフからオンに切り替わり、処理回路20の転送処理がオンからオフに切り替わる。即ち、リセットが行われた場合に、バススイッチ回路40がバスBS1とバスBS2の接続をオフからオンに切り替え、処理回路20が転送処理を停止する。
このようにすれば、例えばHSモードの転送中にリセットが行われた場合に、バスBS1、BS2を電気的に接続して、例えばメインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間で、信号DP、DMを用いた信号転送を行うことが可能になる。その後、例えば図14の期間C2に示す範囲内の切替タイミングにおいて、USBスイッチがオンからオフに切り替わり、処理回路20の転送処理がオフからオンに切り替わる。これにより、ホスト側とデバイス側の間での信号のやり取りの後に、HSモードの転送処理に適正に移行することが可能になる。
図15はHSモードの転送からサスペンド、レジュームに移行する場合の動作シーケンスを示す信号波形図である。ホスト側がサスペンドを開始すると(t22)、FSモードに移行し、パケットがバス上に無くなってから3ms以上経過すると、デバイス側はHSターミネーションをオフし、プルアップ抵抗をオンにする(t23)。そしてデバイス側は、バスの状態がJであることが確認されたため(t24)、サスペンドが開始されたと判断する。そしてホスト側がレジュームを開始し(t25)、レジュームが終了すると(t26)、デバイス側はレジュームの終了と同時に、サスペンドに入った時点のモードに戻す。そしてプルアップ抵抗をオフし、HSターミネーションをオンにして、HSモードに戻る。
図15のD1に示すように、本実施形態では、ホストがサスペンドを開始した場合にも、USBスイッチがオフからオンに切り替わり、処理回路20の転送処理がオンからオフに切り替わる。即ち、サスペンドが行われた場合に、バススイッチ回路40がバスBS1とバスBS2の接続をオフからオンに切り替え、処理回路20が転送処理を停止する。
このようにすれば、例えばHSモードの転送中にサスペンドが開始した場合に、バスBS1、BS2を電気的に接続して、例えばメインコントローラー200とペリフェラルデバイス260との間で、信号DP、DMを用いた信号転送を行うことが可能になる。
そしてサスペンドの後、ホスト側がレジュームを行うことで、図15のD2に示すように、USBスイッチがオンからオフに切り替わり、処理回路20の転送処理がオフからオンに切り替わる。即ち本実施形態では、サスペンドが行われた後、リジュームが行われた場合に(レジュームの終了タイミングで)、バススイッチ回路40がバスBS1とバスBS2の接続をオンからオフに切り替え、処理回路20が転送処理を開始する。このようにすれば、サスペンド後のレジュームにより、HSモードのデータ転送を適正に再開できるようになる。なお、サスペンドからリセットへの移行の動作シーケンスは、ケーブルアタッチからFSアイドルの後においてサスペンドからリセットに入る動作シーケンスと同様になる。
図16は物理層回路(11、12)の構成例である。この物理層回路は、プルアップ抵抗Rpu、スイッチ素子SW_Rpu、SW_Dm、プルダウン抵抗Rpd1、Rpd2を含む。スイッチ素子SW_Rpuは制御信号Rpu_Enableに基づいてオン又はオフにされる。これによりプルダウン動作が実現される。また物理層回路は、HSモード用の送信回路HSD(カレントドライバー)、LS/FSモード用の送信回路LSD(ドライバー)、抵抗Rs1、Rs2を含む。また物理層回路は、HSモード用の差動の受信回路HSR(データレシーバー)、スケルチの検出回路SQL(トランスミッションエンベロープディテクター)、LS/FSモード用の差動の受信回路LSR(データレシーバー)、切断の検出回路DIS(ディスコネクションエンベロープディテクター)、シングルエンドの受信回路DP_SER、DM_SER(レシーバー)を含む。
そして本実施形態では物理層回路を構成するアナログ回路からの信号に基づいて、バスモニター回路30でのバスのモニター動作が行われる。具体的には図16に示すように、例えばHSモード用の差動の受信回路HSR、スケルチ用の検出回路SQL、LS/FSモード用の差動の受信回路LSR、切断の検出回路DIS、或いはシングルエンドの受信回路DP_SER、DM_SERからの信号に基づいて、バスモニター回路30はバスのモニター動作を行う。即ち、これらのアナログ回路からの信号に基づいて、デバイスチャープK、ホストチャープK/J、アイドル、リセット、サスペンド、レジューム、SE0、J、K、バスリセット、或いはHS切断などのバスの各状態を、バスモニター回路30はモニターできる。そしてバスモニター回路30は、モニター結果に基づいて、図13、図14、図15で説明したようにバススイッチ回路40のスイッチ素子(USBスイッチ、BCスイッチ)をオン又はオフにする制御を行ったり、処理回路20の転送処理をオン又はオフにする制御を行う。こうすることで、バスの状態を適切に判断した適正なバススイッチ回路40のスイッチ制御や処理回路20の転送制御を実現できるようになる。
また本実施形態では図16に示すように、期間T1において、物理層回路11、12のHSモード用の送信回路HSDが動作オフ又は省電力モードに設定される。即ち本実施形態では、期間T1においては、バススイッチ回路40がバスBS1、BS2の接続をオンにして、メインコントローラー200とペリフェラルデバイス260の間で転送経路TR1での直接の信号のやり取りを可能にしている。そしてバスモニター回路30は、物理層回路11、12の一方の物理層回路からの信号に基づいてバスのモニター動作を行う。
この場合に、物理層回路11、12のHSモード用の送信回路HSDについては、HSの転送処理が行われないため、動作する必要がない。そこで期間T1では、例えばバスモニター回路30(又は処理回路20)は、HSモード用の送信回路HSDを動作オフ又は省電力モードに設定する。こうすることで、HSモード用の送信回路HSDにおいて無駄に電力が消費されてしまうのを防止でき、低消費電力化を図れるようになる。
5.電子機器、ケーブルハーネス
図17に、本実施形態の回路装置10を含む電子機器300の構成例を示す。この電子機器300は、本実施形態の回路装置10とメインコントローラー200(広義には処理装置)を含む。メインコントローラー200はバスBS1に接続される。例えばバスBS1を介してメインコントローラー200と回路装置10は接続される。また回路装置10のバスBS2には例えばペリフェラルデバイス260が接続される。
メインコントローラー200(処理装置)は、例えばCPU又はMPU等のプロセッサーにより実現される。或いはメインコントローラー200を各種のASICの回路装置により実現してもよい。またメインコントローラー200は、複数の回路装置(IC)や回路部品が実装された回路基板により実現されてもよい。ペリフェラルデバイス260としては、例えば図1のような携帯型端末装置250などを想定できるが、これには限定されない。ペリフェラルデバイス260はウェアラブル機器などであってもよい。
電子機器300は、記憶部310、操作部320、表示部330を更に含むことができる。記憶部310は、データを記憶するものであり、その機能はRAMやROMなどの半導体メモリーやHDD(ハードディスクドライブ)などにより実現できる。操作部320は、ユーザーが入力操作を行うためのものであり、操作ボタンやタッチパネルディスプレイをなどの操作デバイスにより実現できる。表示部330は、各種の情報を表示するものであり、液晶や有機ELなどのディスプレイにより実現できる。なお操作部320としてタッチパネルディスプレイを用いる場合には、このタッチパネルディスプレイが操作部320及び表示部330の機能を兼ねることになる。
本実施形態により実現される電子機器300としては、例えば車載機器、印刷装置、投影装置、ロボット、頭部装着型表示装置、生体情報測定機器、距離、時間、流速又は流量等の物理量を計測する計測機器、基地局又はルーター等のネットワーク関連機器、コンテンツを配信するコンテンツ提供機器、或いはデジタルカメラ又はビデオカメラ等の映像機器などの種々の機器を想定できる。
図18に本実施形態の回路装置10を含むケーブルハーネス350の構成例を示す。ケーブルハーネス350は、本実施形態の回路装置10とケーブル360を含む。ケーブル360はUSB用のケーブルである。またケーブルハーネス350はUSBレセプタクル370を含んでもよい。或いはケーブルハーネス350は図1の静電気保護回路222、短絡保護回路223などを含むものであってもよい。ケーブル360は例えば回路装置10のバスBS2に接続される。回路装置10のバスBS1側には例えばメインコントローラー200(処理装置)等が接続される。このケーブルハーネス350は、例えば車内において配線を引き回すなどの用途に用いられる。なおケーブルハーネス350は車用以外のハーネスであってもよい。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。また回路装置、電子機器、ケーブルハーネスの構成・動作や、スイッチ信号生成処理、チャージポンプ処理、バスモニター処理、バススイッチ処理、転送処理等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。