以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1に示す本発明の第1実施形態による回転慣性質量ダンパ1は、後述する回転マス21の回転慣性質量を変更可能に構成されており、シリンダ2と、シリンダ2内に軸線方向に摺動自在に設けられたピストン3と、ピストン3と一体のピストンロッド4と、シリンダ2に接続された第1連通路5及び第2連通路6を備えている。
シリンダ2は、円筒状の周壁2aと、周壁2aの軸線方向の両端部にそれぞれ設けられた円板状の第1端壁2b及び第2端壁2cを、一体に有している。これらの周壁2a、第1及び第2端壁2b、2cで画成された空間は、ピストン3によって第1流体室2dと第2流体室2eに区画されている。第1及び第2流体室2d、2eには、作動流体HFが充填されており、作動流体HFは、粘性を有する適当な流体、例えばシリコンオイルで構成されている。
また、シリンダ2の第1端壁2bには、軸線方向に外方に突出する凸部2fが同心状に一体に設けられている。凸部2fの内側には、ピストンロッド4を部分的に収容するための空間が形成されており、凸部2fの第1端壁2bと反対側の端部には、自在継手を介して、第1取付具FL1が設けられている。さらに、上記の第1及び第2端壁2b、2cの中心には、ロッド案内孔2g、2hがそれぞれ形成されている。ピストンロッド4は、シリンダ2内に軸線方向に延び、その軸線方向の中央部がピストン3に一体に連結されており、ロッド案内孔2g、2hにシールを介して液密に挿入されている。また、ピストンロッド4の一端部は、凸部2f内の空間に収容され、ピストンロッド4の凸部2fと反対側の部分は、第2端壁2cから外方に延びており、ピストンロッド4の他端部には、自在継手を介して、第2取付具FL2が設けられている。
また、ピストン3の外周面は、シールを介して、シリンダ2の周壁2aの内周面に液密に接しており、ピストン3の径方向の外端部には、軸線方向に貫通する複数の第1連通孔3a及び第2連通孔3b(それぞれ1つのみ図示)が形成されている。第1及び第2連通孔3a、3bの各々は、第1及び第2流体室2d、2eに連通しており、第1連通孔3aには第1リリーフ弁11が、第2連通孔3bには第2リリーフ弁12が、それぞれ設けられている。
第1リリーフ弁11は、いわゆる常閉弁として構成され、弁体と、これを閉弁方向に付勢するばねを有しており、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定の上限値よりも小さいときには、第1連通孔3aを閉鎖し、上限値に達したときには、第1連通孔3aを開放する。これにより、第1及び第2流体室2d、2eが第1連通孔3aを介して互いに連通し、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が、第2流体室2e側に逃がされることによって、上記の上限値以下に制限される。
同様に、第2リリーフ弁12は、弁体と、これを閉弁方向に付勢するばねを有しており、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が上限値よりも小さいときには、第2連通孔3bを閉鎖し、上限値に達したときには、第2連通孔3bを開放する。これにより、第1及び第2流体室2d、2eが第2連通孔3bを介して互いに連通し、第2流体室2e内の圧力が、第1流体室2d側に逃がされることによって、上限値以下に制限される。なお、第1及び第2リリーフ弁11、12の上限値を互いに異なる値に設定してもよい。
また、ピストン3は、図1及び図2に示すシリンダ2内の所定の中立位置を初期位置としており、外力が一度も入力されていないときには、この中立位置に位置している。
前記第1及び第2連通路5、6は、ピストン3が摺動可能なシリンダ2内の範囲の全体において、ピストン3をバイパスし、第1及び第2流体室2d、2eに連通するように、シリンダ2に接続されており、互いに並列に設けられている。また、第1及び第2連通路5、6は、例えば円形の断面を有し、両者5、6の断面積(作動流体HFが流れる方向に直交する面の面積)は、シリンダ2の断面積(軸線方向に直交する面の面積)よりも小さな値に設定されており、第1及び第2連通路5、6には、第1及び第2流体室2d、2eと同様、作動流体HFが充填されている。なお、図1では便宜上、第1及び第2連通路5、6内の作動流体HFの符号の図示を省略している。
また、回転慣性質量ダンパ1は、第1連通路5内の作動流体HFの流動を回転運動に変換する歯車モータMと、歯車モータMに連結された回転マス21と、第2連通路6の開度を変更可能なバルブ7と、バルブ7を駆動するための駆動機構8をさらに備えている。歯車モータMは、例えば外接歯車型のものであり、ケーシング22と、ケーシング22に収容された第1ギヤ23及び第2ギヤ24を有している。なお、歯車モータMとして内接歯車型のものを用いてもよい。
ケーシング22は、第1連通路5の中央部に一体に設けられており、互いに対向する2つの出入口22a、22bを介して、第1連通路5内に連通している。また、第1及び第2ギヤ23、24はそれぞれ、スパーギヤで構成され、第1及び第2回転軸25、26に一体に設けられるとともに、互いに噛み合っている。第1及び第2回転軸25、26はそれぞれ、第1連通路5に直交する方向に水平に延び、ケーシング22に回転自在に支持されており、第1回転軸25はケーシング22の外部に突出している。また、第1及び第2ギヤ23、24の互いの噛合い部分は、ケーシング22の出入口22a、22bに臨んでいる。さらに、ケーシング22から突出した第1回転軸25の部分には、上記の回転マス21が同軸状に一体に設けられている。回転マス21は、比重の比較的大きな材料、例えば鉄で構成され、円板状に形成されている。
また、図1及び図2に示すように、第2連通路6は、シリンダ2に接続されるとともにシリンダ2の軸線方向に直交する方向に延びる一対の接続通路6a、6aと、接続通路6a、6aの間にシリンダ2と平行に延びる平行通路6bを一体に有している。第1及び第2流体室2d、2eとの接続通路6a、6aの連通位置は、第1連通路5のそれと、シリンダ2の径方向(軸線方向と直交する方向)において重なっている。
前記バルブ7は、ゲート式の開閉弁であり、第2連通路6の平行通路6bに設けられた弁箱7aと、弁箱7aに移動自在に収容された弁体7bを有している。弁箱7aは、6つの壁部を組み合わせた直方体の箱状に形成されており、これらの6つの壁部のうち、平行通路6bと直交するとともに互いに対向する2つの壁部が、平行通路6bに接続されている。また、弁箱7aの内側には、直方体状の収容穴7cが6つの壁部により画成されており、収容穴7cは、平行通路6bの長さ方向と直交する方向に延びるとともに、その入口がシリンダ2と反対側に位置している。さらに、弁箱7aの上記の2つの壁部の各々には、第2連通路6の断面形状と同じ形状(円形)の連通口7dが形成されている。これらの連通口7d、7dは、収容穴7cを間にして互いに対向するように配置され、平行通路6bに連通しており、収容穴7cは、連通口7d、7dを介して平行通路6bに連通している。連通口7dの径は、平行通路6bの径と同じ大きさに設定されており、収容穴7cの長さ及び幅は、連通口7dの径よりも大きな値に設定されている。
弁体7bは、直方体状に形成され、その外周面には、シール(図示せず)が貼り付けられており、図1〜図3に示す所定の開放位置と、図5及び図6に示す所定の閉鎖位置との間で、弁箱7a内を移動自在である。また、弁体7bは、開放位置に位置しているときには、その一端部が収容穴7cの入口側の壁部にシールを介して液密に嵌合し、その他端部が弁箱7aから外方に突出するとともに、他端が駆動機構8の後述する第2連結部8bに当接しており、連通口7d、7dを完全に開放している。このように、弁体7bが開放位置に位置しているときには、連通口7d、7dが弁体7bで閉鎖されずに開放状態に保持され、ひいては、第2連通路6の平行通路6bが開放状態に保持される。
また、弁体7bは、上記の閉鎖位置に位置しているときには、その一端が収容穴7cの底壁に当接するとともに、その大部分が収容穴7cに液密に嵌合した状態で、連通口7d、7dを完全に閉鎖している。このように、弁体7bが閉鎖位置に位置しているときには、第2連通路6の平行通路6bが閉鎖状態に保持される。
なお、バルブ7には、弁体7bを復帰させるための復帰ばねが設けられていない。
駆動機構8は、例えば断面が矩形の金属棒で互いに一体に構成された第1連結部8a及び第2連結部8bと、第2連結部8bに一体に設けられた一対の押圧部8c、8c及び当接部8d、8dを有している。第1連結部8aは、第2連通路6の接続通路6aの長さ方向と同じ方向に延びており、その一端部が、ボルトやナットなどの金具(図示せず)を介して、ピストンロッド4の第2フランジFL2の近傍の部分に固定されている。これにより、駆動機構8は、ピストンロッド4を介してピストン3に連結されており、ピストン3と連動可能である。第2連結部8bは、第1連結部8aの他端部からシリンダ2の軸線方向に延びており、第2連通路6の平行通路6bに沿って平行に延びている。
一対の押圧部8c、8cは、第2連結部8bから平行通路6b側に突出しており、バルブ7の弁体7bを中心として、弁体7bとの間に所定の間隔を存した状態で互いに対称に配置されている。また、各押圧部8cは、平行通路6bに沿って、後述する所定の第1外側区間INO1と同じ長さで延びており、その厚さが弁体7b側に向かうほど漸減するテーパ状に形成されている。各当接部8dは、直方体状に形成されており、押圧部8cに連続するとともに、平行通路6bに沿って延びている。当接部8dの厚さは、当接部8d側の押圧部8cの端の厚さと同じ大きさに設定されている。
以上の構成の回転慣性質量ダンパ1は、例えば、図7に示す免震構造の構造物Bに適用され、構造物Bの上下の梁BU、BDに、免震装置(図示せず)と並列に連結される。この場合、下梁BDは、構造物Bを支持する基礎に設けられた基礎梁であって、免震装置は、構造物Bの振動を長周期化させるように構成されており、積層ゴムタイプのものや、ボールベアリングを有する2つのスライダを組み合わせたタイプのものなど、種々のものを用いることができる。
また、図7に示すように、回転慣性質量ダンパ1の第1及び第2取付具FL1、FL2は、第1連結部材EN1及び第2連結部材EN2にそれぞれ取り付けられる。これらの第1及び第2連結部材EN1、EN2は、鋼材で構成され、上下の梁BU、BDにそれぞれ取り付けられており、上梁BUから下方に、下梁BDから上方に、それぞれ延びている。以上により、回転慣性質量ダンパ1のシリンダ2及びピストンロッド4はそれぞれ、第1及び第2連結部材EN1、EN2を介して、下梁BD及び上梁BUに連結されており、回転慣性質量ダンパ1は、上下の梁BU、BDの間に水平に延びている。
なお、図7では便宜上、第1及び第2連通路5、6などの一部の構成要素の図示を省略している。また、構造物Bへの回転慣性質量ダンパ1の連結手法は任意であり、他の適当な手法を採用してもよいことは、もちろんである。
次に、回転慣性質量ダンパ1の動作について説明する。構造物Bが振動するのに伴い、上下の梁BU、BDの間に水平方向の相対変位が発生すると、この相対変位が、第1及び第2連結部材EN1、EN2を介して、シリンダ2及びピストンロッド4に外力として伝達されることにより、シリンダ2とピストンロッド4が軸線方向に相対的に移動し、ピストン3がシリンダ2内を摺動する。
この場合、ピストン3が第1流体室2d側(図1の左方)に摺動したときには、第1流体室2d内の作動流体HFの一部が、ピストン3で第1連通路5に押し出されることによって、第1連通路5内に第2流体室2e側(右方)への作動流体HFの流動が生じる。これとは逆に、ピストン3が第2流体室2e側(右方)に摺動したときには、第2流体室2e内の作動流体HFの一部が、ピストン3で第1連通路5に押し出されることによって、第1連通路5内に第1流体室2d側(左方)への作動流体HFの流動が生じる。
この作動流体HFの流動は、歯車モータMにより回転運動に変換され、その第1及び第2ギヤ23、24が回転し、第1ギヤ23と一体の第1回転軸25及び回転マス21が回転する結果、回転マス21の回転慣性質量による反力が発生する。
前述したように、第2連通路6が、第1連通路5と並列に設けられるとともに第1及び第2流体室2d、2eに連通している。このため、ピストン3がシリンダ2内を摺動するのに伴い、第1及び第2流体室2d、2eの一方の流体室内の作動流体HFは、第2連通路6が開放されているときには、ピストン3で第2連通路6にも押し出され、第2連通路6内に他方の流体室側への作動流体HFの流動が生じる。
以上から明らかなように、第2連通路6の開度の変更により第2連通路6内の作動流体HFの流量が変化すると、第1連通路5内の作動流体HFの流動(流量)が変化し、それにより回転マス21の回転量が変化することによって、回転マス21の回転慣性質量が変更される。第2連通路6の開度は、シリンダ2内を移動するピストン3と連動して駆動機構8がバルブ7を駆動することにより、変更される。
具体的には、シリンダ2及びピストン3に入力される構造物Bの振動(上下の梁BU、BDの間の相対変位)が比較的小さく、図2及び図3に示すように、それによりシリンダ2内をピストン3が摺動している範囲が中立位置を含む所定の内側区間INIであるときには、駆動機構8の第2連結部8bや押圧部8cがピストン3と連動して第2連通路6の平行部6bに沿って移動するものの、バルブ7の弁体7bが、第2連結部8bに当接したままで駆動されず、前述した開放位置に保持される結果、第2連通路6は開放状態に保持される。これにより、ピストン3の移動に伴って作動流体HFが第2連通路6内を流動することで、第1連通路5内の作動流体HFの流量は比較的小さくなり、それにより回転マス21の回転量が小さくなる結果、回転マス21の回転慣性質量は比較的小さくなる。
そして、振動が比較的大きくなり、図4に示すように、ピストン3が、シリンダ2内の上記の内側区間INIよりも軸線方向の両外側の所定の第1外側区間INO1、INO1の一方を摺動するようになると、弁体7bが、駆動機構8の押圧部8cで押圧されることによって、前述した閉鎖位置側に駆動される。この場合、押圧部8cが前述したようにテーパ状に形成されているため、押圧部8cによる閉鎖位置側への弁体7bの駆動量、すなわち、バルブ7による第2連通路6の閉じ度合は、中立位置からのピストン3の変位が大きくなるほど、より大きくなる。これにより、ピストン3の摺動に伴う第2連通路6内の作動流体HFの流量が小さくなることによって、第1連通路5内のそれがより大きくなる結果、回転マス21の回転慣性質量はより大きくなる。
また、振動がさらに大きくなり、ピストン3がシリンダ2内の上記の第1外側区間INO1、INO1よりも軸線方向の両外側の所定の第2外側区間INO2、INO2の一方を摺動する直前に、弁体7bは、押圧部8cによる押圧により閉鎖位置に駆動され、第2連通路6がバルブ7で完全に閉鎖される。そして、図5に示すように、ピストン3が第2外側区間INO2を摺動しているときには、弁体7bは、当接部8dに押圧されずに当接するとともに、閉鎖位置に位置する。
また、弁体7bは、上述したように閉鎖位置に位置した後には、図6に示すように、シリンダ2内をピストン3が軸線方向に往復動する過程で第2外側区間INO2以外の区間を摺動しても、閉鎖位置に位置したままになり、第2連通路6がバルブ7で閉鎖された状態に保持される。バルブ7による第2連通路6の閉鎖により、作動流体HFが第2連通路6を流動しなくなることで、ピストン3の摺動に伴う第1連通路5内の作動流体HFの流量がさらに大きくなる結果、回転マス21の回転慣性質量はさらに大きくなる。
さらに、回転慣性質量ダンパ1では、第1及び第2連通路5、6内に、第1又は第2流体室2d、2e側への作動流体HFの流動が生じるのに伴って、作動流体HFの粘性抵抗による反力が発生する。なお、閉鎖位置に位置した弁体7bは、その後のメンテナンス時に、保守者によって開放位置に戻される。
以上のように、第1実施形態によれば、図2〜図6を参照して説明したように、第2連通路6の開度を変更可能なバルブ7が、ピストン3と連動する駆動機構8によって駆動される。この場合、構造物Bの振動が比較的小さく、それによりシリンダ2内をピストン3が摺動している範囲が内側区間INI内であるときには、第2連通路6がバルブ7で開放状態に保持され、それにより、第1連通路5内の作動流体HFの流量が比較的小さくなる。そして、振動が比較的大きくなり、それによりピストン3が第2外側区間INO2を摺動した以後には、第2連通路6がバルブ7で閉鎖されるとともに、閉鎖状態に保持され、それにより、第1連通路5内の作動流体HFの流量が比較的大きくなる。
以上により、構造物Bの振動が比較的小さいときに、比較的小さい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、振動が比較的大きくなった以後に、比較的大きい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、それぞれ得ることができる。したがって、地震動が比較的小さいときに、回転慣性質量ダンパ1が伸縮しやすくなり、これと並列に設けられた前記免震装置を十分に機能させることができる。また、地震動が比較的大きいときに、回転慣性質量ダンパ1の反力を十分に得ることができ、ひいては、構造物Bの振動を適切に抑制し、早期に収束させることができる。
さらに、ピストン3が第1外側区間INO1を摺動しているときに、ピストン3の変位が大きくなるほど、第2連通路6を徐々に閉じることができる。したがって、ピストン3に入力される振動が増大するのに応じて、回転マス21の回転慣性質量を急に増大させずに、徐々に増大させることができる。
次に、図8〜図12を参照しながら、本発明の第2実施形態による回転慣性質量ダンパ31について説明する。この回転慣性質量ダンパ31は、第1実施形態と比較して、第2連通路6に設けられたバルブ32の構成が主に異なっている。図8〜図12において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
このバルブ32は、第1実施形態のバルブ7と同様にゲート式の開閉弁で構成されており、ピストン3の摺動位置に応じた第2連通路6の開閉動作がバルブ7のそれと反対になるように、構成されている。すなわち、バルブ32は、ピストン3の摺動範囲が内側区間INI内であるときには、第2連通路6を閉鎖状態に保持し、第1外側区間INO1を摺動しているときに、第2連通路6を徐々に開き、第2外側区間INO2を摺動する直前に第2連通路6を完全に開放し、第2外側区間INO2を摺動した後に、第2連通路6を開放状態に保持するように、構成されている。
具体的には、バルブ32は、第2連通路6の平行通路6bに設けられた弁箱32aと、弁箱32aに移動自在に収容された弁体32bを有している。弁箱32aは、第1実施形態のバルブ7の弁箱7aと同様に構成されており、弁箱7aの収容穴7c及び連通口7d、7dとそれぞれ同様に構成された収容穴32c及び連通口32d、32dが設けられている。
弁体32bは、第1実施形態の弁体7bと比較して、その厚さ方向に貫通する円形の連通孔32eが形成されている点のみが異なっており、図8に示す所定の閉鎖位置と、図10に示す所定の開放位置との間で、弁箱32a内を移動自在である。この連通孔32eの径は、連通口32dの径と同じ値に設定されている。また、弁体32bは、閉鎖位置に位置しているときには、その一端部側の部分が収容穴32cの入口側から連通口32d、32dよりも底側の壁部にシールを介して液密に嵌合し、連通口32d、32dを完全に閉鎖しており、その他端部が弁箱32aから外方に突出するとともに、他端が前述した駆動機構8の第2連結部8bに当接している。このように、弁体32bが閉鎖位置に位置しているときには、連通口32d、32dが弁体32bで閉鎖状態に保持され、ひいては、第2連通路6の平行通路6bが閉鎖状態に保持される。
さらに、弁体32bは、上記の開放位置に位置しているときには、その一端が収容穴32cの底壁に当接するとともに、その大部分が収容穴32cに液密に嵌合し、弁体32bの連通孔32eが連通口32d、32dと完全に一致して連通している。このように、弁体32bが開放位置に位置しているときには、第2連通路6の平行通路6bが開放状態に保持される。
なお、図8〜図11では便宜上、歯車モータMや回転マス21の図示が省略されているが、両者M、21は、第1実施形態と同様に第1連通路5に設けられている。
以上の構成の回転慣性質量ダンパ31は、例えば、図12に示す制振構造の構造物B’に適用され、構造物B’の上下の梁BU’、BD’に、第1実施形態の場合と同様に第1及び第2連結部材EN1、EN2を用いて連結される。なお、図12では便宜上、第1及び第2連通路5、6などの一部の構成要素の図示を省略している。また、構造物B’への回転慣性質量ダンパ31の連結手法は任意であり、他の適当な手法を採用してもよいことは、もちろんである。
構造物B’の振動中、上下の梁BU、BDの間の水平方向の相対変位は、第1及び第2連結部材EN1、EN2を介して、シリンダ2及びピストンロッド4に外力として伝達され、それにより、シリンダ2とピストンロッド4が軸線方向に相対的に移動し、ピストン3がシリンダ2内を摺動する。この場合、バルブ32は、前述した駆動機構8により、ピストン3の摺動位置に応じて次のようにして駆動される。
すなわち、構造物B’の振動(上下の梁BU’、BD’の間の相対変位)が比較的小さく、それによりシリンダ2内をピストン3が摺動している範囲が前述した内側区間INI内であるとき(図8参照)には、弁体32bは、第1実施形態の弁体7bと同様に駆動機構8の第2連結部8bに当接して駆動されず、閉鎖位置に保持される。このように第2連通路6がバルブ32で閉鎖されることにより、作動流体HFが第2連通路6を流動しなくなることで、第1連通路5内の作動流体HFの流量は比較的大きくなり、それにより回転マス21の回転量が大きくなる結果、回転マス21の回転慣性質量は大きくなる。
また、構造物B’の振動が比較的大きくなり、図9に示すように、それによりピストン3が前述した第1外側区間INO1を摺動しているときには、弁体32bが、駆動機構8の押圧部8cで押圧され、開放位置側に駆動される。この場合、押圧部8cが前述したようにテーパ状に形成されているため、押圧部8cによる開放位置側への弁体32bの駆動量、すなわち、バルブ32による第2連通路6の開き度合は、中立位置からのピストン3の変位が大きくなるほど、より大きくなる。これにより、ピストン3の摺動に伴う第2連通路6内の作動流体HFの流量が大きくなることによって、第1連通路5内のそれがより小さくなる結果、回転マス21の回転慣性質量はより小さくなる。
また、構造物B’の振動がさらに大きくなり、それによりピストン3が前述した第2外側区間INO2を摺動する直前に、弁体32bは、押圧部8cによる押圧により開放位置に駆動され、第2連通路6がバルブ32で完全に開放される。そして、図10に示すように、ピストン3が第2外側区間INO2を摺動しているときには、弁体32bは、当接部8dに押圧されずに当接するとともに、開放位置に位置する。
また、弁体32bは、上述したように開放位置に位置した後には、図11に示すように、シリンダ2内をピストン3が往復動する過程で第2外側区間INO2以外の区間を摺動しても、開放位置に位置したままになり、第2連通路6がバルブ32で開放された状態に保持される。バルブ32による第2連通路6の開放により、ピストン3の摺動に伴う第2連通路6内の作動流体HFの流量がさらに大きくなることによって、第1連通路5内のそれがさらに小さくなる結果、回転マス21の回転慣性質量はさらに小さくなる。
なお、開放位置に位置した弁体32bは、第1実施形態の場合と同様、その後のメンテナンス時に、保守者によって閉鎖位置に戻される。
以上のように、第2実施形態によれば、図8〜図11を参照して説明したように、第2連通路6の開度を変更可能なバルブ32が、ピストン3と連動する駆動機構8によって駆動される。この場合、構造物B’の振動が比較的小さく、それによりシリンダ2内をピストン3が摺動している範囲が内側区間INI内であるときには、第2連通路6がバルブ32で閉鎖状態に保持される。そして、振動が比較的大きくなり、それによりピストン3が第2外側区間INO2を摺動した以後には、第2連通路6がバルブ32で開放されるとともに、開放状態に保持される。以上により、構造物B’の振動が比較的小さいときに、比較的大きい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、振動が比較的大きくなった以後に、比較的小さい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、それぞれ得ることができ、ひいては、回転慣性質量ダンパ31が連結される要素(例えば構造物B’)の損傷を防止しながら振動を適切に抑制することができる。
また、ピストン3が第1外側区間INO1を摺動しているときに、ピストン3の変位が大きくなるほど、第2連通路6を徐々に開くことができる。したがって、ピストン3に入力される振動が増大するのに応じて、回転マス21の回転慣性質量を急に減少させずに、徐々に減少させることができる。
なお、第1及び第2実施形態では、ピストン3の摺動に伴う第1連通路5内の作動流体HFの流量を調整するためのバルブ7、32(以下の第1及び第2実施形態のバリエーションの説明において総称する場合、「流量調整用バルブ」という)を第2連通路6に設けているが、これに代えて、第1連通路5に設けてもよい。図20は、第1連通路5にバルブ7を設けた場合における回転慣性質量ダンパを示している。この場合には、ピストン3に入力される振動が比較的小さく、それによりピストン3が摺動している範囲が内側区間INI内であるときには、第1連通路5が開放状態に保持され、ピストン3に入力される振動が比較的大きく、それによりピストン3が第2外側区間INO2を摺動した以後に、第1連通路5が閉鎖される。これにより、振動が比較的大きくなった以後に、回転マス21が回転しなくなり、ピストン3の摺動に伴って作動流体HFは第2連通路6のみを流動し、回転慣性質量ダンパはいわゆる粘性ダンパとして機能する。
また、第1連通路5にバルブ32を設けた場合には、バルブ7を設けた場合とは逆に、ピストン3に入力される振動が比較的小さいときに、ピストン3の摺動に伴って作動流体HFは第2連通路6のみを流動し、回転慣性質量ダンパは粘性ダンパとして機能する。
上記のように第1連通路5に流量調整用バルブ(バルブ7、32)を設ける場合、本発明における第2連通路として、ピストン3に形成された軸線方向に貫通する連通孔(後述する第3及び第4連通孔3c、3dを参照)を用いてもよい。
あるいは、第1及び第2連通路5、6の両方に流量調整用バルブを設けてもよい。この場合、両連通路5、6の各々に設けられた流量調整用バルブによる開度の変更により第1連通路5内の作動流体HFの流量を適切に調整するために、第1及び第2連通路5、6用の流量調整用バルブは、ピストン3の摺動位置に対する開閉動作が互いに反対になるように、構成される。すなわち、例えば、第1実施形態のように第2連通路6にバルブ7を設けた場合には、第1連通路5には、バルブ32が設けられ、これとは逆に、第2実施形態のように第2連通路6にバルブ32を設けた場合には、第1連通路5には、バルブ7が設けられる。このように第1及び第2連通路5、6の両方に流量調整用バルブを設けた場合には、両連通路5、6内を流動することで発生する作動流体HFの粘性抵抗が、第1及び第2連通路5、6の開度の変更前後で変化するのを、抑制することができる。
また、第1及び第2実施形態では、流量調整用バルブを、いわゆるON−OFF弁として構成し、第2連通路6を開放及び閉鎖(閉鎖及び開放)可能に、すなわち第2連通路6の開度を全開と全閉(全閉と全開)から成る2つの開度に変更可能に構成しているが、全開及び全閉の一方とそれら以外の適当な所定の中間開度とからなる2つの開度に変更可能に、あるいは、全開及び全閉以外の適当な2つの所定の中間開度に変更可能に、構成してもよい。
さらに、第1及び第2実施形態では、ゲート式のバルブ7、32を用いているが、他の適当なバルブ、例えば、グローブバルブや、ニードルバルブ、バタフライバルブ、ボールバルブなどを用いてもよい。これらのバタフライバルブやボールバルブのように、レバーに連結された弁体が回動するバルブを用いた場合には、駆動機構は次のように構成される。すなわち、シリンダ内のピストンが摺動している範囲が内側区間(外側区間よりも内側の区間)内であるときには、駆動機構の押圧部がレバーを押圧しないことで弁体を駆動せず、シリンダ内の第1外側区間をピストンが摺動しているときに、押圧部がレバーを押圧して弁体を駆動するとともに、シリンダ内の第2外側区間をピストンが摺動した以後に、押圧部がレバーを押圧しなくなることで、弁体が、第2外側区間を摺動する直前に駆動された状態に保持される。
また、第1及び第2実施形態で説明した駆動機構8は、あくまで一例であり、リンク機構などを用いて構成してもよい。さらに、第1及び第2実施形態では、本発明における開度変更機構として、バルブ7、32及び駆動機構8を用いているが、本出願人による特開2016−153591号公報の図6や図16などに開示された、ピストン3で駆動される閉鎖機構を用いてもよい。あるいは、この特開2016−153591号公報の図16などに開示された閉鎖機構の開閉動作が反対になるように構成した開放機構を用いてもよい。
また、これまでに述べた第1及び第2実施形態に関するバリエーションは、本発明の趣旨の範囲内で適宜、組み合わせて適用可能である。
次に、図13及び図14を参照しながら、本発明の第3実施形態による回転慣性質量ダンパ41について説明する。この回転慣性質量ダンパ41は、第1実施形態と比較して、バルブ7に代えて第1バルブ42及び第2バルブ43が第2連通路6に設けられていることと、駆動機構8が削除されていることが、主に異なっている。図13及び図14において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13及び図14に示すように、第1及び第2バルブ42、43は、第2連通路6の平行通路6bの中央部に設けられている。図14に示すように、平行通路6bの中央部は、2つに分岐する第1分岐通路6c及び第2分岐通路6dになっており、これらの第1及び第2分岐通路6c、6dに、第1及び第2バルブ42、43がそれぞれ設けられている。なお、図13では便宜上、第1及び第2分岐通路6c、6dの図示を省略している。
第1及び第2バルブ42、43の各々は、常閉弁として構成されており、弁体42a(43a)と、弁体42a(43a)を閉弁方向に付勢するばね42b(43b)を有している。第1バルブ42は、第1分岐通路6cを、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値よりも小さいときに閉鎖し、所定値以上のときに開放する。第1バルブ42による第1分岐通路6cの開放によって、第1及び第2流体室2d、2eが、第2連通路6を介して互いに連通する。上記の所定値は、前述した第1及び第2リリーフ弁11、12について設定された上限値よりも小さな値に設定されている。
第2バルブ43は、第2分岐通路6dを、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が所定値よりも小さいときに閉鎖し、所定値以上のときに開放する。第2バルブ43による第2分岐通路6dの開放によって、第2及び第1流体室2e、2dが、第2連通路6を介して互いに連通する。
また、回転慣性質量ダンパ41は、例えば、第2実施形態の場合と同様に制振構造の構造物B’に適用され、そのシリンダ2及びピストン3が構造物B’の上下の梁BU’、BD’にそれぞれ連結される(前述した図12参照)。構造物B’の振動に伴う上下の梁BU’、BD’の間の水平方向の相対変位は、シリンダ2及びピストン3に伝達され、それによりピストン3がシリンダ2内を摺動する。それに伴い、第1及び第2流体室2d、2eの一方内の作動流体HFの一部が、ピストン3で第1連通路5に押し出されることで、第1連通路5内に第1及び第2流体室2d、2eの他方側への作動流体HFの流動が生じる。この作動流体HFの流動は、歯車モータMで回転運動に変換された状態で回転マス21に伝達され、それにより回転マス21が回転する。
また、第2連通路6が、第1連通路5と並列に設けられるとともに第1及び第2流体室2d、2eに連通しているため、第2連通路6の開度の変更により第2連通路6内の作動流体HFの流量が変化すると、第1連通路5内の作動流体HFの流量が変化し、それにより回転マス21の回転量が変化することによって、回転マス21の回転慣性質量が変更される。第2連通路6の第1及び第2分岐通路6c、6dの開度はそれぞれ、第1及び第2バルブ42、43により上述したように変更される。
これにより、第3実施形態によれば、ピストン3に入力される構造物B’の振動(上下の梁BU’、BD’の間の相対変位)が比較的小さく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値よりも小さいときには、第1及び第2バルブ42、43がそれぞれ第2連通路6を閉鎖状態に保持する。また、ピストン3に入力される振動が比較的大きく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上のときには、第1及び第2バルブ42、43がそれぞれ第2連通路6を開放する。以上により、構造物B’の振動が比較的小さいときに、比較的大きい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、振動が比較的大きくなったときに、比較的小さい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、それぞれ得ることができ、ひいては、回転慣性質量ダンパ41が連結される要素(例えば構造物B’)の損傷を防止しながら振動を適切に抑制することができる。
なお、第3実施形態では、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上のときに第2連通路6を開放する第1及び第2バルブ42、43を設けているが、図21に示すように、両者42、43の一方と、4つのチェック弁CVを組み合わせ、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上のときに、この一方のバルブ42により第2連通路6を開放するように構成してもよい。図21において、ハッチング付きの矢印は、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値以上の場合における作動流体HFの流動方向を示しており、中抜きの矢印は、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が所定値以上の場合における作動流体HFの流動方向を示している。
また、第3実施形態では、第2連通路6を第1及び第2分岐通路6c、6dに分岐させるとともに、両者6c、6dに第1及び第2バルブ42、43をそれぞれ設けているが、第2連通路6を分岐させずに、第2連通路6に第1及び第2バルブ42、43の一方を設けてもよい。
図22は、第2連通路6(平行通路6b)を分岐させずに、第2連通路6に第1バルブ42を設けた場合の両者6b、42の断面を拡大して示している。この場合には、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときに、回転マス21の回転慣性質量を所望の大きさに減少させることができる。一方、この第2連通路6に第2バルブ43を設けた場合には、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときに、回転マス21の回転慣性質量を所望の大きさに減少させることができる。
次に、図15及び図16を参照しながら、本発明の第4実施形態による回転慣性質量ダンパ51について説明する。第4実施形態による回転慣性質量ダンパ51は、第3実施形態と比較して、第2通路6の平行通路6bの中央部が2つに分岐していないことと、平行通路6bの中央部に、第1及び第2バルブ42、43に代えて、バルブ52が設けられていることが、主に異なっている。図15及び図16において、第1及び第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
このバルブ52は、いわゆる常開弁として構成されており、図16に示すように、弁箱53と、弁箱53に収容された弁体54と、弁体54を付勢する第1ばね55及び第2ばね56を有している。弁箱53は、筒状の周壁と、周壁の軸線方向の両端部の各々に一体に設けられた板状の端壁を有しており、これらの一対の端壁には、第1連通口53a及び第2連通口53bがそれぞれ形成されている。第1及び第2連通口53a、53bは、例えば、円形状に形成され、それらの径が平行通路6bの径と同じ大きさに設定されており、互いに同心状に配置されている。
また、弁箱53の一対の端壁は、平行通路6bに接続されており、弁箱53の内部は、第1及び第2連通口53a、53bを介して、平行通路6b内に連通している。さらに、弁箱53の周壁には、板状の支持壁53cが一体に設けられており、支持壁53cは、第1連通口53aと第2連通口53bの間に配置され、弁箱53内を2つの空間に仕切っている。支持壁53cには、厚さ方向に貫通する支持孔53d及び複数の孔53eが形成されており、支持孔53dは、第1及び第2連通口53a、53bと同軸状に配置され、複数の孔53eは、支持孔53dの周りに配置されている。弁箱53内における支持壁53cの両側の2つの空間は、これらの孔53eを介して互いに連通している。
上記の弁体54は、上記の支持孔53dに挿入された軸部54aと、軸部54aの両端部にそれぞれ同軸状に一体に設けられ、支持壁53cの両側にそれぞれ配置された第1開閉部54b及び第2開閉部54cを有しており、支持孔53dを介して支持壁53cに軸線方向に移動自在に、すなわち第1及び第2連通口53a、53bの並び方向に移動自在に、支持されている。第1及び第2開閉部54b、54cの各々は、頂部が比較的鈍角の錐体状に形成され、第1及び第2連通口53a、53bとそれぞれ同じ形状の横断面を有しており、その底部が軸部54aに一体に設けられている。また、第1及び第2開閉部54b、54cの各々の底部の横断面の面積は、第1及び第2連通口53a、53bのそれよりも大きな値に設定されている。
また、第1及び第2ばね55、56は、圧縮コイルばねで構成されており、それらのばね定数は互いに同じ値に設定されている。また、第1ばね55は第1開閉部54bと支持壁53cの間に、第2ばね56は第2開閉部54cと支持壁53cの間に、それぞれ圧縮された状態で配置されており、第1ばね55は、第1開閉部54bを含む弁体54を第1連通口53a側に付勢し、これとは逆に、第2ばね56は、第2開閉部54cを含む弁体54を第2連通口53b側に付勢している。シリンダ2内をピストン3が摺動していないときには、弁体54は、これらの第1及び第2ばね55、56による付勢によって、図16(a)に示す弁箱53内の所定の開放位置に位置している。この状態では、第1及び第2開閉部54b、54cは、第1及び第2連通口53a、53bに臨んでおり、両連通口53a、53bは開放されている。
また、シリンダ2内のピストン3の摺動により第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときには、図16(b)に示すように、この作動流体HFの圧力の作用によって、弁体54は、第1ばね55の付勢力に抗して第2連通口53b側に駆動され、それにより、その第2開閉部54cが第2連通口53bを閉鎖する。この状態では、第2開閉部54cの頂部が、第2連通口53bに挿入されるとともに、その縁部全体に液密に当接している。
さらに、シリンダ2内のピストン3の摺動により第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が上記の所定値以上のときには、図16(c)に示すように、この作動流体HFの圧力の作用によって、弁体54は、第2ばね56の付勢力に抗して第1連通口53a側に駆動され、それにより、その第1開閉部54bが第1連通口53aを閉鎖する。この状態では、第1開閉部54bの頂部が、第1連通口53aに挿入されるとともに、その縁部全体に液密に当接している。
また、回転慣性質量ダンパ51は、例えば、第1実施形態の場合と同様に免震構造の構造物Bに適用され、そのシリンダ2及びピストン3が構造物Bの上下の梁BU、BDにそれぞれ連結される(前述した図7参照)。構造物Bの振動に伴う上下の梁BU、BDの間の水平方向の相対変位は、シリンダ2及びピストン3に伝達され、それによりピストン3がシリンダ2内を摺動する。それに伴う作動流体HFや回転マス21の動作は、第1及び第3実施形態の場合と同様であり、第2連通路6の開度は、バルブ52により上述したように変更される。
これにより、第4実施形態によれば、ピストン3に入力される構造物Bの振動(上下の梁BU、BDの間の相対変位)が比較的小さく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値よりも小さいときには、バルブ52により第2連通路6が開放状態に保持される。また、ピストン3に入力される振動が比較的大きく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上のときには、バルブ52により第2連通路6が閉鎖される。以上により、構造物Bの振動が比較的小さいときに、比較的小さい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、振動が比較的大きくなったときに、比較的大きい所望の大きさの回転マス21の回転慣性質量を、それぞれ得ることができ、ひいては、第1実施形態の場合と同様に構造物Bの振動を適切に抑制することができる。
なお、第4実施形態では、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上のときに限って第2連通路6を閉鎖するように、バルブ52を構成しているが、第1又は第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときに限って第2連通路6を閉鎖するように、バルブを構成してもよい。図23は、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときに限って第2連通路6を閉鎖するように構成されたバルブ81を示している。図23において、バルブ52と同じ構成要素については、同じ符号を付している。
図23に示すように、バルブ81は、バルブ52と比較して、その弁体82の構成と、第1及び第2ばね55、56に代えて、ばね83及びスペーサ84が設けられていることが、異なっている。弁体82は、バルブ52の軸部54a及び第2開閉部54cとそれぞれ同様に構成された軸部82a及び開閉部82bと、軸部82aの第1連通口53a側の端部に一体に設けられた板状の受圧部82cを有している。
上記のばね83は、支持壁53cと受圧部82cの間に圧縮された状態で配置されており、受圧部82cを含む弁体82を、第1連通口53a側に付勢している。スペーサ84は、筒状に形成され、弁体82の軸部82aが挿入されており、その両端が支持壁53cと開閉部82bにそれぞれ当接している。シリンダ2内をピストン3が摺動していないときには、弁体82は、ばね83による付勢と、スペーサ84による当接によって、図23(a)に示す弁箱53内の所定の開放位置に位置している。この状態では、受圧部82c及び開閉部82bは、第1及び第2連通口53a、53bにそれぞれ臨んでおり、両連通口53a、53bが開放されている。
また、シリンダ2内のピストン3の摺動により第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときには、図23(b)に示すように、この作動流体HFの圧力の作用によって、弁体54は、ばね83の付勢力に抗して第2連通口53b側に駆動され、それにより、その開閉部82bが第2連通口53bを閉鎖する。
一方、シリンダ2内のピストン3の摺動により第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が上昇し、この作動流体HFの圧力が作用しても、弁体82は、スペーサ84の当接により第1連通口53a側に駆動されず、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力の大きさにかかわらず、図23(a)に示す開放位置に位置する。
なお、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が所定値以上のときに限って第2連通路6を閉鎖するようにバルブを構成する場合には、開閉部82bと受圧部82cの位置関係、及びスペーサ84とばね83の位置関係をそれぞれ、図23の場合と逆にすればよい。ここで、受圧部82cの形状は、開閉部82bの形状と異なっているが、開閉部82bの形状と同じにしてもよいことは、もちろんである。
また、第3及び第4実施形態では、第1及び第2バルブ42、43ならびにバルブ52を、いわゆるポペットバルブで構成しているが、他の適当なバルブ、例えばスプールバルブで構成してもよい。さらに、第3及び第4実施形態では、第1及び第2バルブ42、43ならびにバルブ52を、第1及び第2流体室2d、2e内のそれぞれの作動流体HFの圧力が第2連通路6を介して作用することで作動するように、構成しているが、第2連通路6と並列に設けられた連通路を介して作用することで作動するように、構成してもよい。このことは、後述する低圧用及び高圧用バルブ62、72についても、同様にあてはまる。
また、第3及び第4実施形態では、本発明における第2連通路として、ピストン3をバイパスしてシリンダ2に接続された第2連通路6を用いているが、ピストン3に形成された、軸線方向に貫通する連通孔(後述する第3及び第4連通孔3c、3dを参照)を用いるとともに、この連通孔に、第1及び第2バルブ42、43や、バルブ52を設けてもよい。さらに、第3及び第4実施形態に関し、本発明における開度変更機構として、特開2007−231601号公報に開示された減衰バルブAssy50、第2油圧シリンダ30a、30b及び中継バルブAssy40を有する機構を用いてもよい。
さらに、第1〜第4実施形態では、第1及び第2流体室2d、2eへの第1及び第2連通路5、6の連通位置を、シリンダ2の径方向において互いに重なるように設けているが、互いに重ならないように設けてもよい(特開2015−206381号公報参照)。また、第1〜第4実施形態では、第1及び第2連通路5、6を、シリンダ2内のピストン3が摺動可能な範囲の全体において、ピストン3をバイパスし第1及び第2流体室2d、2eに連通するように、シリンダ2に接続しているが、ピストン3が摺動可能な範囲の一部において、ピストン3をバイパスし第1及び第2流体室2d、2eに連通するように、シリンダ2に接続してもよい。
次に、図17〜図19を参照しながら、本発明の第5実施形態による回転慣性質量ダンパ61について説明する。この回転慣性質量ダンパ61は、第4実施形態と比較して、第2連通路6に代えて、ピストン3に形成された第3連通孔3c及び第4連通孔3dが設けられていることと、これらの第3及び第4連通孔3c、3dに低圧用バルブ62及び高圧用バルブ72がそれぞれ設けられていることが、主に異なっている。図17では、便宜上、低圧用及び高圧用バルブ62、72を、その内部構成を示さずに簡略化して示しており、第1及び第4実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1及び第4実施形態と異なる点を中心に説明する。
図17〜図19に示すように第3及び第4連通孔3c、3dは、ピストン3の軸線方向に貫通するとともに、第1及び第2流体室2d、2eに連通しており、互いに並列に、かつ、前述した第1及び第2連通孔3a、3bと並列に設けられている。図18及び図19に示すように、低圧用及び高圧用バルブ62、72は、弁箱63(73)と、弁箱63(73)に収容された弁体64(74)と、弁体64を付勢する第1ばね65(75)及び第2ばね66(76)を有している。図18及び図19と図16との比較から明らかなように、低圧用及び高圧用バルブ62、72は、第4実施形態のバルブ52と同様に構成されているので、以下、それらの構成及び動作について簡単に説明する。
低圧用バルブ62の弁箱63(高圧用バルブ72の弁箱73)の内部は、第1及び第2連通口63a、63b(73a、73b)を介して、第3連通孔3c(第4連通孔3d)に連通している。また、弁箱63(73)の支持壁63c(73c)には、支持孔63d(73d)が形成されており、弁箱63(73)内における支持壁63c(73c)の両側の部分は、支持壁63c(73c)に形成された複数の孔63e(73e)を介して互いに連通している。弁体64(74)は、第1及び第2連通口63a、63b(73a、73b)の並び方向に移動自在に、弁箱63(73)内に収容されている。弁体64(74)の軸部64a(74a)は、弁箱63(73)の支持壁63c(73c)の支持孔63d(73d)に挿入されており、弁体64(74)の円錐状の第1及び第2開閉部64b、64c(74b、74c)は、支持壁63c(73c)の両側に配置されている。
また、第1及び第2ばね65、66(75、76)は、圧縮コイルばねで構成され、それらのばね定数は互いに同じ値に設定されており、第1ばね65(75)は、第1開閉部64b(74b)を含む弁体64(74)を第1連通口63a(73a)側に付勢し、これとは逆に、第2ばね66(76)は、第2開閉部64c(74c)を含む弁体64(74)を第2連通口63b(73b)側に付勢している。さらに、低圧用バルブ62の第1及び第2ばね65、66のばね定数は、高圧用バルブ72の第1及び第2ばね75、76のばね定数よりも小さな値に設定されている。
シリンダ2の第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値よりも小さいときには、低圧用及び高圧用バルブ62、72の弁体64、74が、図18及び図19に示す開放位置にそれぞれ位置し、それにより、第3及び第4連通孔3c、3dが開放状態にそれぞれ保持される。
また、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が第1所定値以上で、かつ、第2所定値(>第1所定値)よりも小さいときには、低圧用バルブ62の弁体64が第2連通口63bを閉鎖し(バルブ52を示す図16(b)参照)、それにより第3連通孔3cが閉鎖されるとともに、高圧用バルブ72の弁体74が依然として開放位置に位置し、それにより第4連通孔3dが開放状態に保持される。さらに、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が第1所定値以上で、かつ、第2所定値よりも小さいときには、低圧用バルブ62の弁体64が第1連通口63aを閉鎖し(バルブ52を示す図16(c)参照)、それにより第3連通孔3cが閉鎖されるとともに、高圧用バルブ72の弁体74が依然として開放位置に位置し、それにより第4連通孔3dが開放状態に保持される。
また、第1流体室2d内の作動流体HFの圧力が第2所定値以上のときには、低圧用及び高圧用バルブ62、72の弁体64、74が第2連通口63b、73bをそれぞれ閉鎖し、それにより第3及び第4連通孔3c、3dの両方が閉鎖される。さらに、第2流体室2e内の作動流体HFの圧力が第2所定値以上のときには、低圧用及び高圧用バルブ62、72の弁体64、74が第1連通口63a、73aをそれぞれ閉鎖し、それにより第3及び第4連通孔3c、3dの両方が閉鎖される。
以上により、第5実施形態によれば、ピストン3に入力される構造物Bの振動が比較的小さく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値よりも小さいときには、低圧用及び高圧用バルブ62、72により第3及び第4連通孔3c、3dが開放状態に保持される。これにより、ピストン3の摺動に伴い、作動流体HFが第3及び第4連通孔3c、3dの両方を流動するので、それにより第1連通路5内の作動流体HFの流量が小さくなることによって、回転マス21の回転慣性質量は小さくなる。
また、ピストン3に入力される振動が中程度で、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値以上で、かつ第2所定値よりも小さいときには、低圧用バルブ62により第3連通孔3cが閉鎖されるとともに、高圧用バルブ72により第4連通孔3dが開放状態に保持される。これにより、ピストン3の摺動に伴い、作動流体HFが第3連通孔3cを流動せずに、第4連通路3dを流動するので、それにより第1連通路5内の作動流体HFの流量が大きくなることによって、回転マス21の回転慣性質量は大きくなる。
さらに、ピストン3に入力される振動が比較的大きく、それにより第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第2所定値以上であるときには、低圧用及び高圧用バルブ62、72により第3及び第4連通孔3d、3eがそれぞれ閉鎖される。これにより、ピストン3の摺動に伴い、作動流体HFが第3及び第4連通路3c、3dを流動しなくなるので、それにより第1連通路5内の作動流体HFの流量が大きくなることによって、回転マス21の回転慣性質量は大きくなる。
以上のように、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力に応じ、入力される振動が増大するのに応じて、回転マス21の回転慣性質量を所望の大きさにきめ細かく増大させることができるので、前記免震装置と適切に協働して、構造物Bの振動をより適切に抑制することができる。また、第3及び第4連通孔3c、3dを形成することによって、本発明における第2連通路を簡易に構成することができる。
なお、第5実施形態では、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値以上のときに限って第3連通孔3cを閉鎖するように、低圧用バルブ62を構成しているが、第1又は第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力が第1所定値以上のときに限って第3連通孔3cを閉鎖するように、低圧用バルブを構成してもよい。このことは、高圧用バルブ72についても同様に当てはまる。この場合における低圧用及び高圧用バルブの構成については、前述した図23を参照されたい。
あるいは、第3連通孔3cを少なくとも一対の連通孔で構成するとともに、これらの一対の第3連通路に、低圧用バルブ62に代えて、第4実施形態で説明した第1及び第2バルブ42、43と同じ常閉式のバルブをそれぞれ設け、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値以上のときに限って、第3連通孔を開放するように構成してもよい。このことは、第4連通孔3d及び高圧用バルブ72についても同様に当てはまる。
また、第5実施形態では、本発明における第2連通路として、第3及び第4連通孔3c、3dから成る2つの第2連通路を用いるとともに、第2連通路の開度を変更するバルブとして、開度の変更特性が互いに異なる低圧用及び高圧用バルブ62、72から成る2つのバルブを用いているが、それらの数は3つ以上でもよい。さらに、第5実施形態では、本発明における第2連通路として、ピストン3に形成された第3及び第4連通孔3c、3dを用いているが、互いに並列に設けられ、ピストン3をバイパスする2つ(複数)の第2連通路を用いてもよい。
さらに、第4及び第5実施形態では、本発明における第1及び第2付勢手段として、圧縮コイルばねで構成された第1及び第2ばね55、65、75、56、66、76をそれぞれ用いているが、他の適当な付勢手段、例えば、皿ばねやゴムなどを用いてもよい。
また、第3〜第5実施形態ではそれぞれ、第1及び第2バルブ42、43、バルブ52、ならびに低圧用及び高圧用バルブ62、72(以下、総称する場合「流量調整用バルブ」という)を、第2連通路6(第3及び第4連通孔3c、3d)に設けているが、第1連通路5に設けてもよい。第1及び第2バルブ42、43を第1連通路5に設けた場合には、第1連通路5は、第1及び第2分岐通路6c、6dと同様に分岐され、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値以上で、すなわち振動が比較的大きいときに限って、第1連通路5内を作動流体HFが流動し、それにより回転マス21の回転慣性質量による反力が発生する。この場合、図21を参照して説明した第1及び第2バルブ42、43の一方とチェック弁CVを組み合わせた構成を採用してもよい。
また、上記のように第1連通路5にバルブ52を設けた場合には、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ所定値よりも小さく、すなわち振動が比較的小さいときに限って、第1連通路5内を作動流体HFが流動し、それにより回転マス21の回転慣性質量による反力が発生する。
さらに、低圧用及び高圧用バルブ62、72を第1連通路5に設けた場合には、第1連通路5が、互いに並列にシリンダ2及び歯車モータMに接続された2つの第1連通路で構成され、これらの第1連通路に、低圧用及び高圧用バルブがそれぞれ設けられる。また、この場合、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値よりも小さく、すなわち振動が比較的小さいときに、2つの第1連通路内を作動流体HFが流動し、それにより回転マス21の比較的大きい回転慣性質量による反力が発生する。
また、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第1所定値以上で、かつ第2所定値よりも小さく、すなわち振動が中程度のときに、高圧用バルブに対応する第1連通路内を作動流体HFが流動し、それにより回転マス21の比較的小さい回転慣性質量による反力が発生する。さらに、第1及び第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力がそれぞれ第2所定値以上で、すなわち振動が比較的大きいときに、2つの第1連通路が低圧用及び高圧用バルブでそれぞれ閉鎖され、第2連通路6(第3及び第4連通孔3c、3d)のみを作動流体HFが流動し、回転慣性質量ダンパは粘性ダンパとして機能する。また、この場合、第1連通路及びバルブの数は、2つに限らず、3つ以上でもよい。
あるいは、第1連通路5に、常閉式の第1及び第2バルブ42、43の一方を設けてもよく、また、図23を参照して説明した常開式のバルブ81(あるいは開閉部82bと受圧部82cの位置関係及びスペーサ84とばね83の位置関係をそれぞれ逆にしたバルブ)を設けてもよい。ここで、受圧部82cの形状は、開閉部82bの形状と異なっているが、開閉部82bの形状と同じにしてもよいことは、もちろんである。あるいは、第1連通路を複数の第1連通路で構成するとともに、第1又は第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力に応じて開弁する圧力値が互いに異なる複数の常閉式のバルブ、又は、閉弁する圧力値が互いに異なる複数の常開式のバルブを、第1連通路に設けてもよい。以上のように、第1又は第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力に応じて第1連通路5の開度が変更されるように、回転慣性質量ダンパを構成してもよい。
また、第3〜第5実施形態では、流量調整用バルブ(第1及び第2バルブ42、43、バルブ52、ならびに低圧用及び高圧用バルブ62、72)を、第2連通路6(第3及び第4連通孔3c、3d)のみに設けているが、第1及び第2連通路5、6の両方に設けてもよい。この場合、両連通路5、6の各々に設けられた流量調整用バルブによる開度の変更により第1連通路5内の作動流体HFの流量を適切に調整するために、第1及び第2連通路5、6用の流量調整用バルブは、作動流体HFの圧力に対する開度の変更特性が互いに反対になるように、構成される。
すなわち、例えば、第3実施形態のように第2連通路6に常閉式の第1及び第2バルブ42、43を設けた場合には、第1連通路5には、常開式のバルブ52が設けられ、これとは逆に、第4実施形態のように第2連通路6に常開式のバルブ52を設けた場合には、第1連通路5には、常閉式の第1及び第2バルブ42、43が設けられる。これらの場合、第1及び第2バルブ42、43が開弁する圧力値、及び、バルブ52が閉弁する圧力値は、互いに同じ値に設定される。また、例えば、第5実施形態のように第3及び第4連通孔3c、3dに常開式の低圧用及び高圧用バルブ62、72をそれぞれ設けた場合には、第1連通路5は、互いに並列の2つの第1連通路で構成されるとともに、これらの2つの第1連通路の各々に、常閉式のバルブが設けられる。2つの第1連通路の一方及び他方にそれぞれ設けられたバルブが開放する圧力値は、低圧用バルブ62の第1圧力値及び高圧用バルブ72の第2圧力値に、それぞれ設定される。
このように第1及び第2連通路5、6の両方に流量調整用バルブを設けた場合には、両連通路5、6内を流動することで発生する作動流体HFの粘性抵抗が、第1及び第2連通路5、6の開度の変更前後で変化するのを、抑制することができる。
また、上記のように第1及び第2連通路5、6の両方に流量調整用バルブを設ける場合、第1又は第2流体室2d、2e内の作動流体HFの圧力に応じて、第1及び第2連通路5、6の開度が変更されるように、回転慣性質量ダンパを構成してもよい。
さらに、第3〜第5実施形態では、流量調整用バルブを、いわゆるON−OFF弁として構成し、第2連通路6を開放及び閉鎖可能に、すなわち第2連通路6の開度を全開と全閉から成る2つの開度に変更可能に構成しているが、全開及び全閉の一方とそれら以外の適当な所定の中間開度とからなる2つの開度に変更可能に、あるいは、全開及び全閉以外の適当な2つの所定の中間開度に変更可能に、構成してもよい。
あるいは、第2連通路の開度を、作動流体HFの圧力に応じて2つの所定開度の間で連続的に変更可能に、又は3つ以上の所定開度に段階的に設定(変更)可能に、流量調整用バルブを構成してもよい。これらのいずれの場合にも、所定開度には、全開及び全閉の少なくとも一方や、全開と全閉の間の所定の中間開度が含まれる。また、前者(連続的に変更可能)の場合、流量調整用バルブは、例えば、その弁体が軸線方向に先細りのテーパ状に形成されるとともに、弁箱の連通口の壁部(弁座)と弁体との隙間、すなわち開度が軸線方向に連続的に変化するように、構成される。さらに、後者(段階的に変更可能)の場合、流量調整用バルブは、例えば、弁箱に対する弁体の互いに異なる複数の移動範囲において、並列に設けられた複数のばねが弁体をその初期位置側に付勢するように、構成される。これらはあくまで一例であり、他の適当な構成を採用してもよいことは、もちろんである。
また、これまでに述べた第3〜第5実施形態に関するバリエーションは、本発明の趣旨の範囲内で適宜、組み合わせて適用可能である。
さらに、本発明は、説明した第1〜第5実施形態(以下、総称して「実施形態」という)に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における流動変換機構として、歯車モータMを用いているが、他の適当な機構、例えば、特許第5191579号の図5などに記載されたスクリュー機構や、特許第5161395号の図2などに記載されたピストンがナットに一体に設けられたボールねじ、あるいは、ベーンモータやプランジャモータ(ピストンモータ)などを用いてもよい。流動変換機構としてこのボールねじを用いる場合には、流動変換機構や第1連通路を、特開2014−137108号公報や、特開2014−163447号公報、特開2014−211176号公報に開示されるように、構成してもよい。
また、実施形態では、ピストンロッド4を、シリンダ2の片側に突出するように設けているが、両側に突出するように設けてもよいことは、もちろんであり、また、ピストンロッド4に代えて、ケーブルなどのように引張り方向にのみ剛性を発揮する部材を、ピストン3に連結してもよい。
さらに、実施形態では、シリンダ2の凸部2f内に、ピストンロッド4を部分的に収容するための空間が形成されているが、この空間に、作動流体HFを充填し、サブピストンを設けるとともに、このサブピストンをピストンロッド4の一端部に一体に設けて、それにより、通常の粘性ダンパの機能を付加してもよい。
図24は、第1実施形態に関し、凸部2f内の空間に、作動流体HFを充填するとともに、ピストンロッド4の一端部に連結したサブピストン91を軸線方向に移動可能に設けた場合の回転慣性質量ダンパを示している。この場合、サブピストン91には、軸線方向に貫通する連通孔(オリフィス)や、調圧弁、リリーフ弁が設けられる。また、この場合、サブピストン91に関し、特開2017−53402号公報や、特開2013−130203号公報、特開2009−19383号公報などに開示された構成を採用し、その減衰性能を変更可能に構成してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成(形状や、サイズ、個数、配置などを含む)を適宜、変更することが可能である。