JP2018193486A - 波長変換材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】無機ナノ蛍光体粒子の量子効率に優れた波長変換部材を作製することが可能な波長変換材料の製造方法を提供する。【解決手段】露点−10℃以下の環境でガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする波長変換材料の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、無機ナノ蛍光体粒子を用いた波長変換材料の製造方法に関する。
近年、発光ダイオード(LED)や半導体レーザー(LD)等の励起光源を用い、これらの励起光源から発生した励起光を、蛍光体に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる発光装置が検討されている。また、蛍光体として、量子ドット等の無機ナノ蛍光体粒子を用いることが検討されている。量子ドットは、その直径を変えることにより蛍光波長の調整が可能であり、高い発光効率を有する(例えば、特許文献1〜3参照)。
無機ナノ蛍光体粒子は通常、樹脂等により封止して用いられる。しかしながら、封止材として樹脂を用いた場合、励起光の照射によって無機ナノ蛍光体粒子から発生する熱により樹脂が変色するという問題がある。そこで、比較的耐熱性に優れたガラスにより無機ナノ蛍光体粒子を封止することが検討されている(例えば特許文献4参照)。
無機ナノ蛍光体粒子の封止材としてガラスを使用した場合、波長変換部材自体の耐熱性及び耐水性には優れるものの、無機ナノ蛍光体粒子の量子効率が低くなりやすいという問題がある。
以上に鑑み、本発明は、無機ナノ蛍光体粒子の量子効率に優れた波長変換部材を作製することが可能な波長変換材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の波長変換材料の製造方法は、露点−10℃以下の環境でガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする。本発明者等が鋭意検討した結果、無機ナノ蛍光体粒子の量子効率が低くなるのは、無機ナノ蛍光体粒子が、ガラス粉末に吸着した水分と反応することにより劣化することが原因であることを見出した。そこで、露点−10℃以下という水分の少ない環境でガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することにより、ガラス粉末の吸着水分との反応による無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制でき、結果として無機ナノ蛍光体粒子の量子効率の劣化を抑制できることがわかった。
本発明の波長変換材料の製造方法において、露点−10℃以下の環境でガラス塊を粉砕してガラス粉末を得た後、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することが好ましい。ガラス塊を粉砕してガラス粉末を作製する際にも、ガラス粉末表面に水分が吸着しやすい。そこで、露点−10℃以下の環境でガラス塊を粉砕してガラス粉末を得た後、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することにより、ガラス粉末の吸着水分量をより一層低減することができる。
本発明の波長変換材料の製造方法は、露点−10℃以下の環境でガラス塊を粉砕してガラス粉末を得た後、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする。
本発明の波長変換材料の製造方法において、無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径が1〜100nmであることが好ましい。
本発明の波長変換材料の製造方法において、無機ナノ蛍光体粒子が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSbから選択される少なくとも一種、または、これら二種以上の複合体からなる量子ドット蛍光体であることが好ましい。
本発明の波長変換材料の製造方法において、ガラス粉末の屈伏点が380℃以下であることが好ましい。このようにすれば、波長変換材料の焼結温度が低くなるため、焼結時における無機ナノ蛍光体粒子の劣化を抑制しやすくなる。
本発明の波長変換材料の製造方法において、ガラス粉末がSnO−P2O5系ガラスまたはSnO−P2O5−F系ガラスからなることが好ましい。SnO−P2O5系ガラス粉末及びSnO−P2O5−F系ガラス粉末は容易に屈伏点を低くすることができるため、比較的低温での焼結が可能となる。
本発明の波長変換材料の製造方法において、ガラス粉末の平均粒子径が0.1〜100μmであることが好ましい。
本発明の波長変換部材の製造方法は、上記の方法により製造された波長変換材料を焼結することを特徴とする。
本発明によれば、無機ナノ蛍光体粒子の量子効率に優れた波長変換部材を作製することが可能な波長変換材料を提供することができる。
本発明の波長変換材料の製造方法は、露点−10℃以下の環境でガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする。
ガラス粉末としては、屈伏点が低いSnO−P2O5系ガラス、SnO−P2O5−F系ガラス、SnO−P2O5−B2O3系ガラス等のSn及びPをベースとしたガラスが好ましい。なかでも屈伏点を低くすることが容易であるSnO−P2O5−F系ガラスを使用することが好ましい。SnO−P2O5−F系ガラスの具体的な組成としては、カチオン%で、Sn2+ 10〜90%、P5+ 10〜70%、アニオン%で、O2− 30〜99.9%、F− 0.1〜70%を含有するものが挙げられる。以下に、各成分の含有量をこのように限定した理由を説明する。なお、特に断りがない場合、以下の各成分の含有量に関する説明において、「%」は「カチオン%」または「アニオン%」を意味する。
Sn2+は化学耐久性や耐候性を向上させる成分である。また、屈伏点を低下させる効果もある。Sn2+の含有量は10〜90%、20〜85%、特に25〜82.5%であることが好ましい。Sn2+の含有量が少なすぎると、上記効果が得にくくなる。一方、Sn2+の含有量が多すぎると、ガラス化しにくくなったり、耐失透性が低下しやすくなる。
P5+はガラス骨格の構成成分である。また、光透過率を高める効果を有する。また、失透を抑制したり、屈伏点を低下させる効果も有する。P5+の含有量は10〜70%、15〜60%、特に20〜50%であることが好ましい。P5+の含有量が少なすぎると、前記効果が得にくくなる。一方、P5+の含有量が多すぎると、Sn2+の含有量が相対的に少なくなって、耐候性が低下しやすくなる。
なお、P5+とSn2+の含量は50%以上、70.5%以上、75%以上、80%以上、特に85%以上であることが好ましい。P5+とSn2+の含量が少なすぎると、耐失透性や機械的強度が低下しやすくなる。P5+とSn2+の含量の上限は特に限定されず、100%であってもよいが、他の成分を含有する場合は、99.9%以下、99%以下、95%以下、さらには90%以下としてもよい。
カチオン成分として、上記成分以外にも以下の成分を含有させることができる。
B3+、Zn2+、Si4+及びAl3+はガラス骨格の構成成分であり、特に化学耐久性を向上させる効果が大きい。B3++Zn2++Si4++Al3+の含有量は0〜50%、0〜30%、0.1〜25%、0.5〜20%、特に0.75〜15%であることが好ましい。B3++Zn2++Si4++Al3+の含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。また、溶融温度の上昇に伴いSn金属等が析出し、光透過率が低下しやすくなる。また、屈伏点が上昇しやすくなる。なお、耐候性を向上させる観点からは、B3++Zn2++Si4++Al3+を0.1%以上含有させることが好ましい。なお本明細書において、「○+○+・・・」は該当する各成分の合量を意味する。
B3+、Zn2+、Si4+及びAl3+の各成分の好ましい含有量範囲は以下の通りである。
B3+はガラス骨格を構成する成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。B3+の含有量は0〜50%、0.1〜45%、特に0.5〜40%であることが好ましい。B3+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。
Zn2+は融剤として作用する成分である。また、耐候性を向上させ、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へのガラス成分の溶出を抑制したり、高温多湿状態でのガラス表面の変質を抑制したりする効果がある。また、Zn2+はガラス化を安定にする効果もある。以上に鑑み、Zn2+の含有量は0〜40%、0.1〜30%、特に0.2〜20%であることが好ましい。Zn2+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。
Si4+はガラス骨格を構成する成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。Si4+の含有量は0〜20%、特に0.1〜15%であることが好ましい。Si4+の含有量が多すぎると、屈伏点が高くなりやすい。また、未溶解による脈理や気泡がガラス中に残存しやすくなる。
Al3+は、Si4+やB3+とともにガラス骨格を構成することが可能な成分である。また、耐候性を向上させる効果があり、特に、ガラス中のP5+等の成分が水中へ選択的に溶出することを抑制する効果が大きい。Al3+の含有量は0〜20%、特に0.1〜15%であることが好ましい。Al3+の含有量が多すぎると、耐失透性や光透過率が低下する傾向がある。さらに、溶融温度が高くなって、未溶解による脈理や気泡がガラス中に残存しやすくなる。
Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+(アルカリ土類金属イオン)は融剤として作用する成分である。また、耐候性を向上させ、研磨洗浄水等の各種洗浄溶液中へのガラス成分の溶出を抑制したり、高温多湿状態でのガラス表面の変質を抑制したりする効果がある。また、ガラスの硬度を高める成分である。但し、これらの成分の含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。よって、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+の含量は0〜10%、0〜7.5%、0.1〜5%、特に0.2〜1.5%であることが好ましい。
Li+は、アルカリ金属酸化物のなかで最も屈伏点を低下させる効果が大きい成分である。また、但し、Li+は分相性が強いため、その含有量が多すぎると、耐失透性が低下しやすくなる。また、Li+は化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、Li+の含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
Na+は、Li+と同様に屈伏点を低下させる効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、脈理が生成しやすくなる。また、耐失透性が低下しやすくなる。また、Na+は化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、Na+の含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
K+も、Li+と同様に屈伏点を低下させる効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、耐候性が低下する傾向がある。また、耐失透性が低下しやすくなる。また、K+は化学耐久性を低下させやすく、光透過率も低下させやすい。従って、K2Oの含有量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。
なお、Li+、Na+及びK+の含量は0〜10%、0〜5%、0〜1%、特に0〜0.1%であることが好ましい。Li+、Na+及びK+の含量が多すぎると、失透しやすくなり、化学耐久性も低下する傾向がある。
上記成分以外にも、La3+、Gd3+、Ta5+、W6+、Nb5+、Ti4+、Y3+、Yb3+、Ge4+、Te4+、Bi3+及びZr4+等を合量で10%まで含有させることができる。
Ce4+、Pr3+、Nd3+、Eu3+、Tb3+及びEr3+等の希土類成分、Fe3+、Ni2+、Co2+は光透過率を低下させる成分である。よって、これら成分の含有量は各々0.1%以下であることが好ましく、含有させないことがより好ましい。
In3+は失透傾向が強いため、含有しないことが好ましい。
なお、環境上の理由から、Pb2+及びAs3+を含有しないことが好ましい。
アニオン成分であるF−は屈伏点を低下させる作用や光透過率を高める効果を有する。但し、その含有量が多すぎると、溶融時の揮発性が高くなり脈理が発生しやすくなる。また、耐失透性が低下しやすくなる。F−の含有量は0.1〜70%、1〜67.5%、5〜65%、2〜60%、特に10〜60%であることが好ましい。なお、F−を導入するための原料としては、SnF2の他、La、Gd、Ta、W、Nb、Y、Yb、Ge、Mg、Ca、Sr、Ba等のフッ化物が挙げられる。
なお、F−以外のアニオン成分としては、通常、O2−を含有する。つまり、O2−の含有量は、F−の含有量に応じて決定される。具体的には、O2−の含有量は30〜99.9%、32.5〜99%、35〜95%、40〜98%、特に40〜90%であることが好ましい。
SnO−P2O5系ガラスとしては、モル%で、SnO 50〜80%、P2O5 15〜40%、ZrO2 0〜3%、Al2O3 0〜10%、B2O3 0〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Li2O+Na2O+K2O 0〜10%、MgO 0〜10%、CaO 0〜3%、SrO 0〜2.5%、BaO 0〜2%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜11%及びZrO2+Al2O3+MgO 0〜10%を含有し、SnO/P2O5 1.6〜4.8であるものが挙げられる。
ガラス粉末の平均粒子径は0.1〜100μm、1〜80μm、5〜60μm、10〜50μm、特に15〜40μmであることが好ましい。ガラス粉末の平均粒子径が小さすぎると、焼結時に気泡が発生して、波長変換部材の機械的強度が低下するおそれがある。また、波長変換部材中における光散乱の程度が大きくなって発光効率が低下する場合がある。一方、ガラス粉末の平均粒子径が大きすぎると、無機ナノ蛍光体粒子が波長変換部材中に均質に分散されにくくなり、その結果、波長変換部材の発光効率が低下するおそれがある。なお、本明細書において、平均粒子径はJIS−R1629に準拠して測定した値(D50)を指す。
ガラス粉末の屈伏点は380℃以下、300℃以下、特に200℃以下であることが好ましい。ガラス粉末の屈伏点が高すぎると、それに応じて波長変換部材製造時の焼結温度も高くなるため、無機ナノ蛍光体粒子が劣化しやすくなる。一方、ガラス粉末の屈伏点の下限は特に限定されないが、現実的には100℃以上、特に120℃以上である。ここで屈伏点とは、熱機械分析装置(TMA)での測定において、試験片が最大の伸びを示した点、即ち試験片の伸びが停止した値を指す。
無機ナノ蛍光体粒子としては、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSb等の量子ドット蛍光体が挙げられる。これらは単独、または二種以上を混合して使用することができる。あるいは、これら二種以上の複合体(例えば、CdSe粒子表面がZnSにより被覆されたコアシェル構造体)を使用してもよい。また、無機ナノ蛍光体粒子としては、量子ドット蛍光体以外にも、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、希土類硫化物、アルミン酸塩化物及びハロリン酸塩化物等の無機粒子からなるものを使用することもできる。これらは単独、または二種以上を混合して使用することができる。無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、1〜100nm、1〜50nm、1〜30nm、1〜15nm、さらには1.5〜12nm程度である。
波長変換部材の発光効率は、無機ナノ蛍光体粒子の種類や含有量、及び波長変換部材の厚みによって変化する。発光効率を高めたい場合、波長変換部材の厚みを薄くして蛍光や励起光の透過率を高めたり、無機ナノ蛍光体粒子の含有量を多くして、蛍光量を増大させることで調整すればよい。ただし、無機ナノ蛍光体粒子の含有量が多くなりすぎると、製造時に焼結しにくくなり、気孔率が大きくなって、励起光が効率良く無機ナノ蛍光体粒子に照射されにくくなったり、波長変換部材の機械的強度が低下しやすくなるなどの問題が生じる。一方、無機ナノ蛍光体粒子の含有量が少なすぎると、十分な発光強度が得にくくなる。従って、波長変換部材における無機ナノ蛍光体粒子の含有量は0.01〜30質量%、0.05〜10質量%、特に0.08〜5質量%の範囲で適宜調整することが好ましい。
ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合は、露点−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、特に−40℃以下の環境で行うことが好ましい。ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合時の露点が高すぎると、ガラス粉末に水分が吸着しやすくなる。そのため、無機ナノ蛍光体粒子が、ガラス粉末に吸着した水分と反応することにより劣化しやすくなり、結果として無機ナノ蛍光体粒子の量子効率が低下しやすくなる。ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合時の露点の下限値は特に限定されないが、現実的には−100℃以上である。
無機ナノ蛍光体粒子が量子ドットである場合は、通常、有機分散媒等に分散した状態で取り扱われる。そこで、無機ナノ蛍光体粒子が分散した有機分散媒にガラス粉末を混合した後、有機分散媒を揮発させることにより、波長変換材料を得ることができる。
なお、ガラス粉末は、通常、原料粉末を溶融して得られた溶融ガラスを成形してなるガラス塊を粉砕することにより得られる。ここで、ガラス塊を粉砕してガラス粉末を得る工程を、露点−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、特に−40℃以下の環境で行うことが好ましい。このようにすれば、ガラス塊の粉砕工程でガラス粉末表面に水分が吸着することを抑制できる。なお、ガラス塊粉砕時の露点の下限値は特に限定されないが、現実的には−100℃以上である。
ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合工程と、ガラス粉末を作製する際のガラス塊の粉砕工程の両方を行うことが、ガラス粉末表面への水分吸着を効果的に抑制できる点で好ましい。ただし、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合工程と、ガラス粉末を作製する際のガラス塊の粉砕工程のいずれか一方のみを行うことによっても、ガラス粉末表面への水分吸着を抑制する効果を得ることができる。
波長変換材料を焼成して焼結することにより、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子の混合粉末の焼結体からなる波長変換部材を得ることができる。焼成温度は、ガラス粉末の屈伏点±50℃以内であることが好ましい。具体的には、焼成温度は、380℃以下、300℃以下、200℃以下、特に180℃以下であることが好ましい。焼成温度が高すぎると、無機ナノ蛍光体粒子が劣化したり、無機ナノ蛍光体粒子とガラス粉末が反応して波長変換部材の発光効率が低下しやすくなる。一方、焼成温度が低すぎると波長変換材料の焼結が不十分になり、波長変換部材の気孔率が大きくなる傾向がある。その結果、波長変換部材における光散乱が強まり、蛍光(あるいは励起光)の取り出し効率が低下しやすくなる。また、水分が波長変換部材内部に侵入しやすくなり、無機ナノ蛍光体粒子が水分と反応して劣化する恐れがある。よって、焼成温度は130℃以上であることが好ましい。
波長変換材料を焼結する際の環境は、大気雰囲気でもよいが、ガラス粉末の変性、無機ナノ蛍光体粒子の失活、金型の酸化による劣化等の不具合を抑制するため、減圧雰囲気や不活性雰囲気、特にランニングコストを考慮して窒素雰囲気であることが好ましい。なお、波長変換材料を焼結する際の露点を低くすることにより、ガラス粉末への水分の吸着を抑制することができる。具体的には、波長変換材料を焼結する際の露点は、−10℃以下、−20℃以下、−30℃以下、特に−40℃以下であることが好ましい。なお、波長変換材料焼結時の露点の下限値は特に限定されないが、現実的には−100℃以上である。
なお、波長変換材料を加熱プレスすることにより、ガラス粉末の軟化流動が促進され、極めて短時間で焼結することが可能となる。よって、焼成時における無機ナノ蛍光体粒子にかかる熱エネルギーを大幅に抑制することができ、無機ナノ蛍光体粒子の熱劣化を顕著に抑制することが可能となる。また、薄型の波長変換部材を容易に製造することができる。
波長変換部材の形状は、通常、矩形板状や円盤状等の板状である。この場合、波長変換部材の厚みは0.03〜1mm、0.05〜0.5mm、特に0.1〜0.3mmであることが好ましい。波長変換部材の厚みが小さすぎると、機械的強度に劣る傾向がある。一方、波長変換部材の厚みが大きすぎると、焼結時間が長くなり無機ナノ蛍光体粒子が劣化しやすくなる。あるいは、焼結が不十分になる傾向がある。
波長変換部材は、LEDやLD等の励起光源と組み合わせることにより発光デバイスとして使用することができる。
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
(実施例)
(a)無機ナノ蛍光体粒子分散液の作製
無機ナノ蛍光体粒子(CdSe/ZnS、平均粒子径=約3nm)を分散媒であるトルエンに1質量%の濃度で分散させることにより、無機ナノ蛍光体粒子分散液を得た。
(a)無機ナノ蛍光体粒子分散液の作製
無機ナノ蛍光体粒子(CdSe/ZnS、平均粒子径=約3nm)を分散媒であるトルエンに1質量%の濃度で分散させることにより、無機ナノ蛍光体粒子分散液を得た。
(b)ガラス粉末の作製
原料としてSnO、SnF2、P2O5を用い、カチオン%で、Sn2+ 56.3%、P5+ 43.7%、アニオン%で、F−24.8%、O2− 75.2%のガラス組成となるように調合したバッチを石英ビーカーに投入し、窒素雰囲気にした電気炉内にて680℃で5分間溶融した。得られた溶融ガラスをインゴット状に成形することによりガラス塊を得た。ガラス塊を、露点−50℃のドライルーム内で乳鉢を用いて粉砕することによりガラス粉末(平均粒子径=25μm、屈伏点=150℃)を得た。
原料としてSnO、SnF2、P2O5を用い、カチオン%で、Sn2+ 56.3%、P5+ 43.7%、アニオン%で、F−24.8%、O2− 75.2%のガラス組成となるように調合したバッチを石英ビーカーに投入し、窒素雰囲気にした電気炉内にて680℃で5分間溶融した。得られた溶融ガラスをインゴット状に成形することによりガラス塊を得た。ガラス塊を、露点−50℃のドライルーム内で乳鉢を用いて粉砕することによりガラス粉末(平均粒子径=25μm、屈伏点=150℃)を得た。
なお、露点−50℃のドライルーム内で、乳鉢を用いてガラス塊を粉砕して篩にかけることにより、別途、平均粒子径1000〜3000μmのガラス粉末を得た。得られたガラス粉末について水分吸着量をガス分析により測定したところ、ガラス粉末1g当たり7000μgであった。
(c)波長変換材料及び波長変換部材の作製
上記で得られたガラス粉末0.5gと無機ナノ蛍光体粒子分散液0.3μgを、露点−50℃のドライルーム内で混合することにより波長変換材料を得た。得られた波長変換材料を、引き続き露点−50℃のドライルーム内でプレス成形することにより、円板状の圧粉体を得た。
上記で得られたガラス粉末0.5gと無機ナノ蛍光体粒子分散液0.3μgを、露点−50℃のドライルーム内で混合することにより波長変換材料を得た。得られた波長変換材料を、引き続き露点−50℃のドライルーム内でプレス成形することにより、円板状の圧粉体を得た。
プレス金型の下型の上に圧粉体を載置し、その上にプレス金型の上型を載置し、窒素雰囲気中180℃で30秒間予熱した後、1分間プレスした。これにより、板状の波長変換部材が得られた。
(比較例)
ガラス塊を粉砕する工程、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子分散液を混合して波長変換材料を作製する工程、波長変換材料をプレス成形して圧紛体を作製する工程の各工程を、通常の大気中(露点8℃)で行ったこと以外は、実施例と同様にして波長変換部材を作製した。
ガラス塊を粉砕する工程、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子分散液を混合して波長変換材料を作製する工程、波長変換材料をプレス成形して圧紛体を作製する工程の各工程を、通常の大気中(露点8℃)で行ったこと以外は、実施例と同様にして波長変換部材を作製した。
なお、大気中(露点8℃)で、乳鉢を用いてガラス塊を粉砕して篩にかけることにより、別途、平均粒子径1000〜3000μmのガラス粉末を得た。得られたガラス粉末について水分吸着量をガス分析により測定したところ、ガラス粉末1g当たり12000μgであった。
(発光量子効率の測定)
得られた波長変換部材について、発光量子効率を測定した。その結果、比較例の波長変換部材の発光量子効率を1.0とした場合、実施例の波長変換部材の発光量子効率は3.2であった。
得られた波長変換部材について、発光量子効率を測定した。その結果、比較例の波長変換部材の発光量子効率を1.0とした場合、実施例の波長変換部材の発光量子効率は3.2であった。
なお、発光量子効率は下記式により算出される値を指し、浜松ホトニクス社製の絶対PL量子収率装置を用いて測定した。
発光量子効率={(発光としてサンプルから放出されたフォトン数)/(サンプルより吸収されたフォトン数)}×100(%)
Claims (9)
- 露点−10℃以下の環境でガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする波長変換材料の製造方法。
- 露点−10℃以下の環境でガラス塊を粉砕してガラス粉末を得た後、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする請求項1に記載の波長変換材料の製造方法。
- 露点−10℃以下の環境でガラス塊を粉砕してガラス粉末を得た後、ガラス粉末と無機ナノ蛍光体粒子を混合することを特徴とする波長変換材料の製造方法。
- 無機ナノ蛍光体粒子の平均粒子径が1〜100nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の波長変換材料の製造方法。
- 無機ナノ蛍光体粒子が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、GaN、GaAs、GaP、AlN、AlP、AlSb、InN、InAs及びInSbから選択される少なくとも一種、または、これら二種以上の複合体からなる量子ドット蛍光体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の波長変換材料の製造方法。
- ガラス粉末の屈伏点が380℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の波長変換材料の製造方法。
- ガラス粉末がSnO−P2O5系ガラスまたはSnO−P2O5−F系ガラスからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の波長変換材料の製造方法。
- ガラス粉末の平均粒子径が0.1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の波長変換材料の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造された波長変換材料を焼結することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
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JP2017098910A JP2018193486A (ja) | 2017-05-18 | 2017-05-18 | 波長変換材料の製造方法 |
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